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Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

4月28日 

https://biz-journal.jp/2019/04/post_27606.html
連載 石原結實「医療の常識を疑え!病気にならないための生き方」
厚労省、医師の残業時間上限を「過労死ラインの2倍」案…生活習慣病患者の増加も要因
 
文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士
2019.04.23  Business Journak

 医師の働き方改革に関する検討会は、去る3月28日に「地域医療」を担う勤務医と研修医らの残業時間の上限を年間「1860時間」(一般勤務医の残業時間の上限=年間960時間)という報告書をまとめた(2024年から運用)。

 今年4月から一般労働者に適用される「年間の残業時間=720時間」の2倍以上、1カ月当たりに換算すると「155時間」で過労死ライン(80時間)の約2倍という無茶苦茶なものだ。

 地域医療を担う勤務医の労働時間を急激に減らした場合、「患者らに及ぼす影響が甚大だから」ということで、こういう判断がなされた。

 私が医師になった1970年代の中頃は医師数が約13万人で、医師不足が叫ばれ各県、1医大の施策のもと、医学部(医大)の数は約40校から約80校に増設され、今では医師数は約32万人に増加した。

 それでもなお「医師不足」が続いている。

 2024年に診療科ごとに必要とされる医師数に達するには、現状では内科医が約1万4000人、外科医が約6000人不足している、とする検討結果が去る2月22日、厚労省より発表された。

 医師不足と共に深刻な問題が、毎年高騰していく医療費である。

 1955年に2388億円だった国民医療費は、

・1975年:6兆4779億円
・1995年:26兆9577億円
・2005年:33兆1289億円

と、増加の一途をたどり、2015年には42兆3644億円とまさに天文学的な数字になってしまった。ちなみに1兆円をわかりやすくいうと、2740年前の縄文時代より毎日(毎年じゃない)100万円ずつ使い続けて達成できる金額なのである。

 この40年間で医師数も倍増し、医療機器の精度も向上し、栄養状態も改善したのに、病気、病人は減るどころか、毎年増加していき、医療費が国家の財政を圧迫している。1250兆円にも膨れ上がった日本の借金の一大要因が、医療費の高騰である。

 人口1人当たりの国民医療費は、
・65歳未満:18万4900円
・65歳以上:74万1900円
・75歳以上:92万9000円

となっている。

 現在70歳以上の人たちは毎日平均6種類の薬を服用しており、1947~49年に生まれた「団塊の世代」の人たちが75歳以上の後期高齢者になる2025年には、世界に冠たる日本の国民皆保険制度が崩壊するのではないか、という「2025年問題」が顕在化しつつあり、社会問題化している。
 去年、厚労省の某局長と会食させていただいた折、この「2025年問題」を私が切り出したところ、局長もすでに深い憂慮の念を持っておられた。

予防医学の重要性

 医師たちも当局も、人間は年齢を重ねるごとに病気が増え、その結果医療費が当然かさんでくると思っておられるようだが、必ずしも正解ではない。40代から高血圧、糖尿病、痛風、脳卒中、脳虚血性心臓病で苦しんでいる人が少なくない一方、80代でも90代でも薬なしで元気に生活しておられる人もいらっしゃる。

 今年71歳になる私も、幼少時は風邪をよく引き、肺炎にも数回かかり、高校時代には原因不明の下痢に悩んだ。しかし、大学生になってからウエイトトレーニングを始め、ニンジン2本、リンゴ1個を刻んでジューサーにかけてつくる生ジュースを毎日愛飲し、和食中心の食生活を心がけるようになってから、この50年間病気らしい病気にかかったことはなく、健康保険証も、歯の治療とイボの除去でかかったときに数回使ったのみである。

 高血圧、虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)、痛風、脳梗塞からがんに至るまで、「生活習慣病」と命名されているくらいなのだから、誤った生活習慣を正せばこうした病気の予防もできるし、改善もできるのである。

 現代医学は誤った生活習慣によって起きた「生活習慣病」の治療に、膨大な費用と時間をかけている。その結果、「天文学的な医療費」と「医師の長時間に及ぶ過酷な労働」という問題が発生していることを認識すべきだ。

 医師たちは「年間1860時間」もの過酷な残業を「強制」される大きな要因が「生活習慣病」であることを肝に銘じて、今後、予防医学にこそ目を向け、力を入れるべきである。

「誤った生活習慣」を端的に言うと、「食べすぎ」と「運動不足(による体温低下)」に要約される。

 私はこの40年間で恥ずかしながら約330冊の拙著を上梓したが、これまでのベストセラーが『「食べない」健康法』(PHP文庫)の約15万部と『「体を温める」と病気は必ず治る』(三笠書房)の約50万部である。

 このことからも、一般の人々も「食べすぎ」と「運動不足(冷え)」こそが病気や不調の原因であると潜在意識下に認識されていることが推察できる。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)




https://www.m3.com/news/kisokoza/669644
医療過疎地に医師を。埼玉県総合医局機構の取り組み-埼玉県保健医療部医療人材課河野貴久氏に聞く◆Vol.1 
2019年4月24日 (水)配信m3.com地域版

 人口10万人あたりの医師数がワースト1位と、医師不足が課題になっている埼玉県だが、実は近年、医師の増加数および増加率は全国トップクラスとなっている。医師数を着実に増やす埼玉県の取り組みについて、埼玉県保健医療部医療人材課の河野貴久氏に話を伺った。(2018年10月27日インタビュー、計2回連載の1回目)

――医師確保に取り組む埼玉県総合医局機構が立ち上がった2013年頃、埼玉県が抱えてきた医療的な課題はどんなものがあったのでしょうか。
 これは全国的にも同様の傾向ですが、「地域偏在」と「診療科偏在」が挙げられます。特に県北エリアや秩父エリアなど都心から遠い地域は、都市部に比べて交通が不便で人口が少なく、そういった場所は医師数も少ないです。これらは、現在でも解消されたわけではありません。

 医師不足を考えるにあたって、本県と他県で大きく違うこととして国公立の医学部がないことが挙げられます。国公立の医学部がない都道府県は、埼玉県と岩手県と栃木県の3県しかありません。ただし、私立であれば、栃木県には2大学があります。埼玉県と岩手県だけは、国公立の医学部どころか、医学部自体が1大学しかないのです。

 国公立と私立では学費が大きく違い、6年間の授業料は、前者が約350万円であるのに対し、後者では平均約3200万円と、10倍近くの開きがあります。そのため、医学部を志望する人でも、家庭の事情などによっては私立を選択できません。すると、どうしても県外の国公立に行くしかないわけです。

 県外の大学に入学すると、そのまま居ついたり、大学の附属病院で勤務したりすることも多く、それが埼玉県にとっては医学生の流出に繋がります。また国公立大学は、都道府県における医師派遣機能の中心となっていることが多く、本県においてはそれらの機能が他県に比べて弱かったのではないでしょうか。

 こうしたことから、医師を育成する土壌が、国公立の医学部がある県より多少不利になっているのは事実だと思います。

――こうした課題を解決すべく、埼玉県総合医局機構が立ち上がったわけですね。
 はい。埼玉県総合医局機構というのは、バーチャルな組織です。県医師会と県が特に中心となって、埼玉医科大学や県内の医療機関などと一体になり、医師の確保を盛り上げていこうということで立ち上げました。事務局は埼玉県庁が担っています。

 厚生労働省の調査によると、埼玉県の医師数は1万1667人で全国9位(2016年12月31日時点)です。ただし、人口10万人あたりの医師数だと最下位となってしまいます。とはいえ、埼玉県の医師数は着実に増えてきているのも事実なのです。2014年から2016年を見てみると、医師の増加数が609人、増加率が5.5%で、ともに全国3位。特に臨床研修医をはじめとした若手医師が着実に増えています。埼玉県総合医局機構の創設が2013年12月なので、我々の取り組みも、多少は医師の流入数増加に寄与できているのかなと考えています。

 埼玉県総合医局機構のトップは、埼玉県医師会の金井忠男会長にお願いしていて、その下に、医局機構の運営を協議する運営協議会と、実質的な医師確保を議論する3つの委員会を設けています。奨学金の対象者をはじめとした医師の確保・派遣に取り組む「医師確保・派遣委員会」、医師の確保には医師のキャリア支援が非常に重要になってきますので、それを検討するための「医師キャリア形成支援委員会」、そしてさいたま新都心駅から徒歩5分の場所にある、地域医療教育センターを運営する「地域医療教育センター委員会」です。

――それぞれの具体的な取り組みを教えてください。
 「医師確保・派遣委員会」では医師の確保・派遣に取り組んでいます。なかでも特に力を注いでいるのが奨学金制度です。月に20万円、6年間で1440万円の奨学金を医学生の方に貸与します。大きく分けて2種類あり、一つは、指定の大学に通う医学生にお貸しする「地域枠医学生奨学金」。埼玉医科大学、順天堂大学、日本医科大学に協力していただいています。もう一つが「県外医学生奨学金」で、大学は特に指定せず、県外の大学に進学された方に貸与するものです。ちなみに、前者は出身地を問わず、後者は埼玉県の出身者が対象です。

 返済免除の条件については「県内の臨床研修病院における2年間の臨床研修」。加えて、「県内にある病院の小児科・産科・救命救急センターでの7年間の勤務」もしくは「特定地域(特に医師が不足している地域)の公的医療機関での7年間の勤務」という、合計9年間の勤務となります。この返済免除の条件により、埼玉県で働いていただける医師を確保しようという施策です。2018年度までで約260人に貸与しています。

 またほかにも、医師不足地域の臨床研修病院を回るバスツアーや、医学生向けの交流会などを開催し、埼玉県の魅力を医学生に伝えるさまざまな取り組みを行っています。

――奨学金を利用して、免除の条件を満たさず返金する人もいるのではないでしょうか。
 そういった方も今後出てくる可能性はあると思います。返済免除の条件を、医師不足地域での勤務と定めている県は多く、埼玉県ではまだありませんが実際にそうした事例が出ています。そのための検討を行っているのが「医師キャリア形成支援委員会」なのです。

構成・取材・文 ・撮影=井上良太(シーアール)



https://www.news-postseven.com/archives/20190423_1358391.html
国公立大医学部に異変 「東大・京大より地元医学部」顕著に 
2019.04.23 07:00  NEWSポストセブン

大学受験で地方の国公立大医学部を目指す傾向が年々強まっている

 医師不足が叫ばれて久しいが、近年の大学受験を振り返ってみると、国公立大学の医学部人気が続き、各大学とも定員を増やしているという。その背景とは何か──。大学通信・常務取締役の安田賢治氏が、「国公立大学医学部合格高校ランキング」とともにレポートする。

 * * *
 国公立大医学部人気が続いている。特に西日本を中心に進学トップ校での人気が高い。きっかけとなったのは、医学部の定員増だ。

 2006年に医師不足が深刻な自治体を対象に「新医師確保総合対策」が実施され、さらに2007年に「緊急医師確保対策」により全都道府県での定員増が認められるようになった。その結果、2008年から医学部定員が増え、その後も増加が続いている。

 この対策が始まる前に7625人が定員だったが、今年は9420人になった。この間1555人、20%以上定員が増えたことになる。医学部を新設した東北医科薬科大、国際医療福祉大を除き、全大学が定員を増やしている。

 もっとも増やしたのは順天堂大で90人から50人増えて140人になった。国公立大では福島県立医科大が80人から130人、筑波大が100人から140人に増やしている。

 いうまでもなく医学部は最難関学部だが、定員が増えている一方で、少子化により受験生数は減っていることから、国公立大医学部が以前より入りやすくなった。受験生も難関大の理学部や工学部に進学しても、大学院に進学するのが当たり前になりつつあり、修業年限が6年なら国公立大の医学部に進学しようとの考えが広がっていった。そのうえ、近年の高校生は「困っている人を助けたい」考えが強く、医師はうってつけの職業だ。

 それだけではない。保護者の考えが変わってきたこともある。少子化で子どもの数が少なく、できるだけ手元に置いておきたい気持ちが強くなった。受験生も地元大学進学を第一に考えるようになったが、地方では優秀な理系学生の就職先が限られることも影響し、その結果、東大、京大の医学部を除く理系より、地元の国公立大の医学部を目指す傾向が強くなったのだ。しかも、医師免許を入手すれば、地元に戻って医師として働くことも可能だ。

 難易度でも東大、京大の理系に合格できる力があれば、合格可能な国公立大医学部は少なくない。特に手に職をつけたいと考える女子受験生に、医学部人気が高まっている。その結果、東大、京大より医学部との考えが強くなってきた。東大の地元関東地方からの入学者が増えている。

 また、中高一貫校では保護者が医師という場合も多く医学部人気は高い。最近では難関中高で、文系、理系分けの際に理系を選ぶ生徒が多いという。進路指導教諭が「増えているのは理系というより医系」というほどの人気ぶりだ。山中伸弥京大教授が2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことも人気に拍車をかけた。医学の分野で研究という道もあることが分かったからだ。

 その人気の国公立大医学部に強い学校はどこなのだろうか。


 トップは12年連続で東海(愛知)で、今年は116人が合格している。男子校で、日本でもっとも医師を生み出している学校だ。内訳を見ると、地元の名古屋大に29人、名古屋市立大に23人合格している。この2大学では全国トップの合格者数だ。他にも近隣の三重大9人、岐阜大8人で、東海地区の大学で合格者の6割近くを占めている。

 2位は灘(兵庫)の90人。京大26人、東大理III 21人、大阪大10人など。この3大学は全国トップの合格者数だ。今年は卒業生219人中、文系は30人未満だったという。8割以上が理系で、医学部志望者が多かった。医学部現役合格者は58人で、全国トップだった。

 3位は洛南(京都)の78人だ。元は男子校だったが、共学化後、医学部合格者が増えている。洛南は長らく京大合格者数トップだったが、ここ2年は大阪の府立高の北野にトップを奪われている。この4年は国公立大医学部合格者数が京大合格者数(京大医学部合格者を両方とも含んでいる)を上回っている。やはり医学部人気が高い。

 4位はラ・サール(鹿児島)の68人、5位は開成(東京)の65人、6位は甲陽学院(兵庫)の63人だ。ここまではすべて私立の中高一貫校で、洛南を除くとすべて男子校だ。

 7位は公立の札幌南(北海道)と久留米大付設(福岡)の56人。札幌南は北海道大21人、札幌医科大22人で、この2大学の合格者数トップだ。旭川医科大にも9人が合格し、北海道の3大学で合格者の9割以上を占め、強さを発揮している。

 9位は東大寺学園(奈良)、10位は昭和薬科大附(沖縄)で、開成を除くとすべて首都圏外の学校だ。首都圏には国公立大医学部の設置が少ないこともある。東京に2校、千葉に1校、神奈川に1校の4校しかない。近畿の2府4県には、8校も設置されている。この差は大きいようだ。女子校トップは13位の四天王寺(大阪)の46人、次いで20位の桜蔭(東京)の39人だった。

 大学別の合格者トップ校を見ると、医学部のある50大学のうち、地元の学校以外がトップだったのは、東大、京大、大阪大の灘、千葉大の開成、奈良県立医科大の大阪星光学院(大阪)の5大学だけだ。他は地元のトップ校が合格者数1位だ。

 なぜ地元高校が強いかというと、医師不足に悩む自治体にある大学では地域枠を設け、地元の受験生を優遇しているためだ。他県から受験に来て、地元に定着しない医師を減らすことが狙いだ。そのため、今までトップ校からしか医学部合格が厳しかったが、最近では2番手校からの合格者が増え、医学部合格校のすそ野が広がっている。

 国公立大医学部志望者にスベリ止めはないと言われる。それは学費の問題だ。

 初年度納入金が国立大では標準額で81万7800円だが、大学通信によれば、私立大では平均で738万にもなる。およそ国公立大の9倍で、6年間で3000万円を超える。この差を考えると、国公立大志望者が私立大を併願するのが難しいことになる。

 今後も国公立大医学部人気は衰えそうもない。東大は地方からの受験生を増やそうと躍起だが、地元国公立大の医学部に地方の優秀な受験生が進学する限り、なかなか思い通りにいきそうもない。



https://www.ehime-np.co.jp/article/news201904260091
新居浜で県市長会
医師確保など、15項目要望へ
 
2019年4月26日(金)(愛媛新聞)

 県市長会(会長・大城一郎八幡浜市長)の2019年度春期会議が25日、新居浜市垣生3丁目のマリンパーク新居浜であり、医師確保対策や災害の復旧支援など15項目の要望を四国市長会に提出することを決めた。任期満了に伴う役員改選では、新しい会長に新居浜市の石川勝行市長を選んだ。任期は5月1日から2年間。

 要望は10市から16項目が上がり、内容が同じ項目を一括して提出する。地方の医師確保について、大洲市の二宮隆久市長は医師を適正配置する仕組みの構築を求め「全国的に医師数は増加しているが、高齢化や地域偏在が進み、地方の医師不足は深刻化している」と述べた。

 西日本豪雨災害の復旧に関して、宇和島市の岡原文彰市長は「非住家の被害認定に多大な時間と労力を要した。復旧復興の遅れは地域の衰退につながる」と説明し、認定基準の明確化を訴えた。

 大規模災害時に支援する自治体を割り当てる「カウンターパート」方式が効果的に働いたことなどを受け、各市長から積極的な活用や自治体担当者同士の「顔の見える関係」構築の継続を求める声が相次いだ。

 四国市長会は5月21日に高知県安芸市で開かれる。



https://mainichi.jp/articles/20190425/k00/00m/040/013000c
青森の“無医村”に整形外科診療所を開業「医師偏在に風穴を」 
毎日新聞2019年4月25日 07時41分 青森県

 人口約2000人の青森県下北半島・佐井村。2008年から常勤医がいない“無医村”状態が続くこの村に今月13日、整形外科診療所「さいクリニック」がオープンした。開設したのは、青森市で整形外科医院を開く大竹進医師(68)。月1回、片道4時間をかけて赴き、1泊2日で診察にあたる。「月1回では無医村解消にはならないと思うが、医師不足や医師偏在に風穴を開けたい」と話している。【井川加菜美】

 「膝を曲げられますか?」。初日の13日午後、大竹医師は穏やかな声で尋ねながら、病歴や症状を電子カルテに打ち込んでいった。診察を受けていたのは、膝の痛みを訴えて来院した奥本和子さん(81)。これまで2カ月に1度、隣接する大間町の大間病院に出向いて痛み止めなどをもらっていたという。

 高齢化率が4割を超える村では、整形外科は関節の痛みなどを抱える高齢者の需要が高い。「身近なところに専門医がいるのはありがたい。最後の短い人生を『痛い、痛い』と言わずに過ごしたいと思って来たんです」。奥本さんはホッとした様子でそう話した。

 国の地域医療構想に伴う病院の再編統合で、常勤の医師が村からいなくなった。現在は、大間病院の医師が福浦地区を月3回、牛滝地区を月1回訪れて診察を行うほか、平日は大間病院への送迎バスが1日2往復する。だが、診療日が祝日と重なれば医師は来ず、むつ市の病院も遠距離で診察に時間もかかることから受診をためらう人が少なくない。

 樋口秀視村長は「十和田市や(フェリーで)函館市まで通院する高齢者もいる。通院するとしても家族の付き添いが必要で、仕事を休まなければならない。医療や教育を十分に整えなければ人口は流出する。そのためにも、医師の獲得は悲願だった」と話す。

診察は月2日
 診療所は平屋建てで、約132平方メートル。敷地は村が国有地を買い取って無償貸与し、大竹医師が建設費や医療設備費など約6000万円を負担した。第2土曜の午後と翌日の日曜午前が診察日で、看護師や放射線技師らも同行する。大竹医師は「患者をより専門的な病院につなぐのも診療所の役割。整形外科は入り口で、村の健康づくりにも貢献したい」と話す。

 初回の13、14両日には計38人が来院した。大竹医師によると、膝や肩、背中、腰の痛みのほか、中には血圧が200を超える人もいたという。大竹医師は「それでもみんな我慢している。我慢なんですって。何時間もかけて病院に行くよりは我慢する。通販で痛み止めを買って飲んでいるという患者さんもいた」と明かした。

 将来は関西から医師を呼び、短期滞在してもらいながら診療する構想も抱く。「伊丹空港から飛行機で函館空港へ。そこからフェリーでつなげば3時間半で来られる。私が青森市内から車で片道4時間かけて来るより早い」。大竹医師は「あと数年かかるかな」と言いつつも、「どうにか医師偏在を解消できないか、というのが私の夢なんです」と力を込めた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/673014
シリーズ 真価問われる専門医改革
新専門医制、基本領域別のシーリング導入へ、2020年度から
日本専門医機構、地域別も見直し、専攻医募集は遅延予定

 
レポート 2019年4月22日 (月)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本専門医機構理事長の寺本民生氏は4月22日の記者会見で、2020年度研修開始の専攻医募集から、基本領域別のシーリング(専攻医の募集定員の上限)を導入する方針を明らかにした。19の基本領域のうち、外科など、医師不足とされる基本領域には配慮する方向で検討する。現在は、東京、神奈川、愛知、大阪、福岡の5都府県で14領域(外科、産婦人科、病理、臨床検査、総合診療を除く)についてシーリングが設定されているが、神奈川と愛知は外すことを検討するなど、地域別のシーリングも併せて見直す。

 5月に開催予定の厚生労働省の医道審議会医師分科会医師専門研修部会で、日本専門医機構としての地域別、診療科別のシーリング案を提示する予定。当初4月中に2020年度分のシーリングを提示する予定だったが、1カ月程度ずれ込むことになるため、専攻医募集も9月1日開始の予定だったが、遅れる見通し。「9月中には開始したい」(寺本理事長)。

 基本領域別のシーリングは、3月22日の医師専門研修部会で厚労省が提案していた(『専攻医のシーリング、「県、基本領域別」への変更検討』を参照)。2016年の医師数が、医師の働き方改革を進めた場合に必要な医師数や将来の必要医師数(例えば、2024年)を上回る「都道府県、基本領域」について、シーリングを設定するという案だ。シーリングの対象となった「都道府県、基本領域」では、「医師少数県」と連携プログラムを組むことなどを求める方針も示した。

 2019年度分のシーリングは、東京都だけ前年度比5%減で設定され、それ以外の県は2018年度分と同じ考え方だった。寺本理事長は3月22日の医師専門研修部会で、その影響を検証した上で、次の検討をすべきだとし、2020年度分からシーリングを見直すのは「時期尚早」と発言していた。

 基本領域別のシーリング導入に方針転換したことについて、寺本理事長は、「医師の診療科偏在は大きな問題。(その解消は)我々日本専門医機構にかなり委ねられている。そこを考える上で、時宜を得たデータが出てきたと思う」と述べた上で、次のように説明した。「私としても数値が出てこない段階で、次々変えていくのは問題だと考えていた。ある程度、皆が納得できるデータがあれば、我々アカデミアとしても受け止めるべきだと考え、検討することになった」。

 4月に2回、基本領域の学会が集まる場を設置、厚労省から説明を受け、各学会の意見を聞いた。「おおむねどの学会も、方向性については了解できるが、問題が内在しているとの意見もあった」(寺本理事長)。厚労省の将来の必要医師数推計はDPCデータを基にしているため、例えば精神科の場合、措置入院に要する医師数が含まれていないほか、放射線科や麻酔科などの中央診療部門の必要医師数の推計方法などが見えないなどの指摘が挙がったという。寺本理事長は「今出ている数値についての検討は、させていただく必要があるのでは、と思っている」と述べた。

 2019年度研修開始の専攻医は8615人
 2019年4月から研修開始の専攻医数は、8615人。2018年4月開始は8410人で、約200人増加した。「シーリングについては、完全に守られた。ただし、残念ながら、総合診療専門医は、2018年度は184人だったが、今年度は179人にとどまった」と寺本理事長は述べた。

 寺本理事長が講演した4月20日に開催された臨床研修研究会でも、総合診療専門医はもっと増やす必要があるが、なぜ増えないのか、という議論があったと紹介(『「卒前・卒後シームレスな医師養成が進展」、厚労省』を参照)。「総合診療専門医のキャリアパスが見えない」という意見があったことから、総合診療専門医と他の基本領域の専門医を取得するダブルボードと、サブスペシャルティ専門医の在り方などを検討していく方針を示した。

 その他、サブスペシャルティ専門医については、整備指針を固めるほか、内科、外科、放射線科の3つの基本領域で予定している計23領域の連動研修については、事前審査のためのレビューシートの内容を精査し、次回の医師専門研修部会に提出して、連動研修を認めるよう求めていく。



https://www.nikkei.com/article/DGXKZO44224190V20C19A4EA2000/
公立病院とは 赤字拡大で財政圧迫の自治体増える  
2019/4/26 日本経済新聞

▼公立病院 公的な病院のうち都道府県や市町村など地方自治体が開設した病院。不採算の救急や小児医療、災害対応などの役割があり、母体自治体が一定の経費を負担している。第2次大戦後に民間病院より先に公立病院の整備が進んだ。市町村立には小規模な病院が多い。近年は病院の赤字拡大で財政が圧迫される自治体が増え、収支改善が課題になっている。

2007年に総務省は「公立病院改革ガイドライン」で経営の効率化や再編、経営形態の見直しなどの改革プラン策定を要請。地方では診療所化、統合再編、独立行政法人への転換などの取り組みが増えた。現在は独法化も含めて約900病院が存在し、日本全体の病院数の11%、ベッド数の14%を占める。

少子高齢化に対応した医療提供体制を描く都道府県の「地域医療構想」にあわせて、15年には新しい改革プランの策定が求められた。公立病院の役割は(1)山間へき地など過疎地での一般医療(2)救急・小児・周産期などの不採算部門(3)がんセンターなど高度・先進医療の提供(4)医師派遣の拠点――の4つと示された。



https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190424-00000142-kyodonews-soci
公立病院、統合・再編へ 厚労省、医療費抑制狙い 
4/24(水) 20:12配信 共同通信

 国や自治体の公立病院、日赤などの公的病院について、厚生労働省は24日、手術件数などを分析し治療実績が乏しい場合は統合や再編を促すことを決めた。夏にも具体的な病院名を公表し、地域での議論を求める。

 分散している医療機能を集約し、病院ベッド数を減らして医療費を抑制する狙い。効率的な体制にして医師の働き方改革につなげる目的もある。ただ、対象病院は縮小や廃止となる可能性があるため、反発も招きそうだ。

 各都道府県が将来の医療提供体制について定めた「地域医療構想」の一環。



https://www.chunichi.co.jp/article/feature/iryou/list/CK2019042302000273.html
【ホンネ外来発】休日診療「8時間待ち」 善意の当番医「負担限界」
緊急性低い受診も一因
 
中日新聞 2019年4月23日

 二月二十六日付「ホンネ外来」で紹介した投稿「インフル 8時間待ちで受診断念」。休日当番医のクリニックが患者であふれ、受診できなかった状況を伝えた。本紙には「同じような目に遭った」との声が寄せられた一方、医師や看護師からは「休日当番医は過酷。医療機関の事情も分かって」と理解を求める意見もあった。間もなく十連休。混乱を防ぐには? (花井康子)

 投稿したのは、石川県の女性(53)だ。一月末の日曜に発熱し、激しい悪寒と喉の痛みがあった。インフルエンザを疑い、休日当番医の内科クリニックへ。しかし、「八時間待ち」と言われ、受診を諦めたという。「休日、しかもインフルエンザが大流行していた時期。仕方のない部分はあるが、何らかの対応はできないのか」と意見を寄せた。

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 愛知県内の男性(46)からも似たような訴えがあった。昨冬の休日、三八度を超える熱で近くの当番医の内科クリニックへ行ったところ、最終受け付けの時間前だったにもかかわらず「インフルエンザの人が多く、診きれないので早めに締め切った」と断られたという。

 一方、医療関係者からは現場の過酷さを嘆く声が。今年一月の日曜、休日当番医を務めたという愛知県内の内科開業医の男性は「インフルエンザの患者が詰めかけ、食事も取れずトイレ以外は休憩もなし。本当に大変だった」。診療開始前の午前八時半ごろから患者が並び、通常の二・五倍もの人が受診。時間内に受け付けを済ませた人の診療は夜十時まで終わらず、看護師ら他のスタッフも立ちっ放しで仕事をこなした。「水分を取る暇もなく、脱水症状を心配するほど」と看護師長。近隣では、朝から翌日未明まで診療が終わらなかったクリニックが何軒もあったという。

 これほど大変でも翌月曜は通常通り開院しないといけない。当番は、二、三カ月に一度、回ってくる。男性によると、当番医の報酬は休日一日当たり二万円程度。スタッフへの休日手当などを考えると決して多くない。「善意で協力しているが限界」と言う。

 こうした大混雑を招く原因の一つが、軽症で緊急性がない患者が受診を求める「コンビニ受診」だ。例えば、インフルエンザでも、水分を取って安静にしていれば、一日待って、かかりつけ医にかかっても命に関わるようなことは少ない。だが、受診者の中には「家族に患者がいるので(症状が出ていない)きょうだいや親も検査を」などと安易に当番医の元にくる人が少なくない。また、症状がそれほど重くなくても「インフルエンザという診断書がないと翌日休めない」といった理由で来院する人も目立つという。

 男性は「医師は休日を返上している。『当番医はいるのが当たり前ではない』と分かってほしい」と訴える。

軽症なら平日の時間内に
 休日や夜間に比較的軽症の救急患者を受け入れることを目的とした開業医による「在宅当番医制度」。自治体と郡や市の医師会が協約を結び、会員の医師が輪番で担当する仕組みだ。厚生労働省によると二〇一七年三月末現在、全国六百地区で導入されている。例えば、愛知県では地域の位置関係などを基に、県内を二十七地区に分けて初期救急医療体制を敷いており、うち十八地区で当番医制を取り入れている。

 当番医が回ってくる頻度は地区によって差がある。医師の数が不足している地方ではどうしても負担が大きい。小児科や内科など需要の多い診療科に当番が偏りがちなのではないかという指摘もある。医師にとっては、当日のスタッフ確保も悩みの種だ。

 大分県では昨年二月、津久見市の四十代の男性医師が、市医師会が当番医制度を会員に強制するのは違法として、大分地裁に提訴した。市医師会が一昨年七月、当番医について「特段の事情がない限り、受けなければいけない」という規定を決議したことを受けたものだ。今年三月、医師会が制度の在り方を検討することなどで和解したが、課題を浮き彫りにした。

 特別料金を取る、受診は住んでいる地区の当番医に限る-など、医師の負担を軽くするための方法を求める声もある。しかし、医療費が高くなると、患者が受診をためらう原因に。また、当番医制度を含め休日・夜間の医療体制が手薄な地域もあるため、地区ごとの受診を厳格化すると、患者が重症化する恐れもある。

 医師法で、医師は正当な理由なしに診療を拒むことはできないと定められている。大事なのは、受診する側が常識を持って行動すること。愛知県の担当者は「休日や夜間の体制は医師らの善意で支えられている。軽症の場合は時間内の受診を」と呼び掛ける。

 四月末からの十連休は混雑が予想される。持病がある人は薬をもらっておくなど、前もってかかりつけ医に相談しておくことが必要だ。厚労省などがホームページで公開している各自治体の医療体制リストも参考になる。



https://www.m3.com/news/iryoishin/672774
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
「外科医こそ率先して働き方改革を」、迫井厚労省審議官
第119回日本外科学会定期学術集会「特別企画」、「年2000時間」超は認めず
 
レポート 2019年4月22日 (月)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省大臣官房審議官の迫井正深氏は4月19日、大阪市で開催された第119回日本外科学会定期学術集会の特別企画「国民が期待する外科医療―行政の視点も考慮して―」に登壇、外科は産婦人科、救急と並んで長時間労働の“御三家”であり、外科医不足の中核要因は「変わらない職務環境」であるとし、外科医が率先して「働き方改革」に取り組む必要性を訴えた。

 厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」の議論では、時間外労働の上限規制の例外をめぐって、最後まで議論が紛糾。過労死ラインの年960時間の約2倍に当たる、「年1860時間」という結論にも異論がくすぶる。「医師の約1割は、年2000時間を超えている。これを容認するのではなく、まずやろうとしているのは、『年2000時間を超えるようなことは許さない。一切なくす、認めない』ということ」と述べ、将来的には例外なく過労死ラインを下回る水準を目指すと説明。


迫井氏は、審議官の立場で「医師の働き方改革に関する検討会」に関わった。
 働き方改革は、医療界だけではなく、社会全体の問題であるという視点も強調。2040年頃までは高齢者人口が増加する一方、生産年齢人口が減少、医療・福祉分野の就業割合が今は8人に1人だが、2040年には6人に1人になるというデータを示し、医療の生産性向上が不可欠であるとした。具体的な取り組みとしては、特に労働時間の管理、36協定の自己点検、タスク・シフティング(業務の移管)の推進――の3つを強調した。「働き方改革を奇禍とする、チャレンジ(労働時間管理)の徹底を」(迫井氏)。

 迫井氏は厚労省公表のデータを用いつつ、「個人の見解」と断った上で、約25分にわたり講演。医師以外の職種はこの4月から、医師については5年後の2024年4月から時間外労働の上限規制がかかる。「医師の働き方改革に関する検討会」がこの3月に報告書をまとめたばかりであり、フロアからは多くの質問が挙がった。

 ホワイトカラー・エグゼンプションの対象に勤務医はならないのか、との質問には、迫井氏は「労働時間の管理の仕方については例外的な扱いはしない。ただし、時間外労働の上限規制については例外的な扱いをするという制度上の整理だ」と説明した。

 「大学病院の外科医は、術後の患者管理、教育、研究もやっている。もう少し大学に対する手当てが必要」という要望には、迫井氏は「そんなに予算が増えるわけではない。まして人口は今後、増えるどころか、足りなくなる。やり方を変えよう、という話だ。そこを変えてもらわないと、若い人達が来てくれないのではないか」と回答。

 フロアからは、民間病院と異なり、大学病院でタスク・シフティングが進まないのは、「給与体系の問題だと思う。民間病院では医師の給与が一番高いので、安い給料の人達をたくさん雇用してカバーする。一方、大学病院では、看護師などの給与は結構いいが、医師の給与はそれほど高くはない」との意見も挙がった。迫井氏は、「働き方改革を進めるには、時間管理をしていくことになる。長い目で見ていくと、今の給与体系がフィックスされるとは、私は考えていない」と答え、時間管理を実施し、全ての職種で労働時間と仕事の内容の把握ができれば、給与体系の変更にもつながり得るとした。

 さらに、「しらばくれていれば、何とかなると考えている管理者が多い」など、働き方改革に消極的な病院を問題視する意見も出た。迫井氏は、「今までは、(未払いの時間外手当を支払うなど)お金で済んでいたが、労働基準法に違反すれば、5年後には刑事罰の対象になる」と、今回の労基法改正の内容を説明した。

  働き方改革は社会の問題
 迫井氏はまず外科医を取り巻くデータを紹介。1994年と比べた人口10万人当たりの診療科別医師数は、大幅に伸びた診療科がある一方、外科は一時期は減少し、ようやく水準まで戻ってきた。外科志望者が少ないのは、労働時間が長く、時間外労働が多いことなどが理由であるとし、「働き方改革を考えていかないと、外科医の魅力が高まらない」と指摘。

 続けて迫井氏は、働き方改革は社会全体の課題である点も強調した。日本の人口の歴史的推移を提示し、「人類史上、地球史上、異常な時代を生きている」と説明した。明治以降、急速に人口は増加したが、「2010年を100とすると、2090年には半分以下になるという、人口超減少時代が到来している」。

 2040年までを見通すと、「働き手が減っていくにもかかわらず、需要は伸びる」時代。一方で、生産年齢人口は米国、イギリスでは増え、ドイツも維持できる。日本は労働生産性が低い現状もある。

 医療・福祉分野の就業割合は、今は8人に1人だが、2040人は6人に1人になると推計されている。「解決策は、高齢者にもう少し働いてもらうこと。もう一つは、労働生産性を上げること、これこそが働き方改革」。

 「年2000時間を超えるようなことは許さない」
 1週間の労働時間が「週60時間」を超える雇用者の割合を見ると、医師は37.5%で職種別で最も多い。中でも多いのは、外科、産婦人科、救急だ。

 厚労省は、例外的に認める時間外労働の上限について当初、「年1920~2000時間」と提示。最終的には「年1860時間」となった。「医師の約1割は、年2000時間を超えている。これを容認するのではなく、これを変えたいと思って提案した。いろいろ報道されたが、まずやろうとしているのは、『年2000時間を超えるようなことは許さない。一切なくす、認めない』ということ。そして将来的には通常のセクターと同じように、過労死ラインを切るように、と言っている」。

 勤怠管理は「当たり前のこと」
 迫井氏は、働き方改革で取り組むべき課題の中でも、特に労働時間の管理、36協定の自己点検、タスク・シフティング(業務の移管)の推進――の3つに取り組む重要性を強調。

 「時間管理をできるわけはない、とよく聞くが、『普通のことをやってください』と言っているだけ。社会全体で生産性を上げていこうとしている中で、『医師は特別だ、医療は特別だ』といった話ではない。医療サービス自体は特別だと思うが、労働という意味での医療については、しっかり管理していくのが当たり前であり、これを進めていくことが、外科医不足の解決につながる」

 迫井氏は、労働時間の管理の結果、業務の在り方を見直していくことになるものの、「外科系のサービスを減らしていくプライオリティーは低いと思う。外科診療は必要だ、だからもっとやってくれとなり、重点的にやるためにはタスク・シフティングをどう進めるのか、という話になる。メリハリの付いた評価になると思う」と見通した。タスク・シフティングの推進に向け、2020年度から開始する特定行為研修制度の「パッケージ研修」が始まる。迫井氏は、大学病院での取り組みを期待した(『日本外科学会、「大学病院で特定行為のパッケージ研修を」』を参照)。

 診療報酬は治療効果に基づく評価が基軸
 迫井氏は、厚労省保険局医療課長として、2018年度診療報酬改定を担当した。講演では「ロボット支援手術」についても言及。同改定では、12件のロボット支援下内視鏡手術の保険適用が認められたが、点数は腹腔鏡下手術と同点数。

 「相当異論もあり、批判もあった」と迫井氏は明かした。「(ロボット支援手術の実施は)若手外科医のモチベーション効果がある、という話も聞くが、患者から見ると、アウトカムはどう違うのか、何か目に見えるメリットがあるのかという問題」と述べ、診療報酬は治療効果に基づく評価が基軸であり、医療側の事情だけを考慮すべきではないとした。

 最後に、外科医の概念は時代とともに変化するものの、外科医が不要になることはあり得ず、「与えられた条件、与えられたスタッフ、与えられた手術室、機材という条件下で、最善を尽くす治療医。医療の本質であり、永遠に求められるもの」などと総括し、講演を締めくくった。



https://www.m3.com/news/iryoishin/673834
「医師少数区域の支援」全地域医療支援病院の責務、厚労省提案
抜本的見直し論も根強く、「診療報酬で評価を」
 
レポート 2019年4月25日 (木)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省は4月25日、「第16回特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」(座長:遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)に対し、地域医療支援病院に、医師少数区域等を支援する機能として3つを挙げ、いずれかを満たすことを新たな要件とし、全支援病院の責務とすることを提案した(資料は、厚労省のホームページ)。

 医師偏在対策として、医師少数区域等で勤務した医師を厚労大臣が認定(以下、認定医師)する仕組みが2020年度から始まる。そのインセンティブの一つとして、認定医師であることを「医師少数区域等を支援する機能を有する地域医療支援病院」の管理者の要件とする。対象は当初、「地域医療支援病院の一部」と想定されていたが、全地域医療支援病院を対象とするのが、今回の厚労省案。支援病院の承認を受けているのは、2018年12月現在、全国で607病院。

 「医師少数区域等を支援する機能」とは、下図の2の(1)から(3)の3つ。いずれかを実施しているのは地域医療支援病院の73.7%。厚労省は併せて、「かかりつけ医等の支援機能」も、実情に応じて要件に追加できるよう提案した。

 厚労省提案に対し、構成員の賛否は分かれ、前回会議と同様にそもそも地域医療支援病院の在り方を見直すべきとの議論も展開された(『地域医療支援病院、「2つの機能」追加に向け議論開始』を参照)。

 日本病院会会長の相澤孝夫氏は、地域の実情に応じて、少し幅を持たせて地域医療支援病院の要件を考えていく方針は支持。全国自治体病院協議会会長の小熊豊氏も、地域医療支援病院の今の要件は、都市部の診療所を支援するものになっているとし、「医師少数区域の支援機能を追加することは役立つ」とした。

 一方で、「(前回会議で)抜本的な検討が必要と言ったのに、なぜこうした提案をしたのか」と問題視したのは、政策研究大学院大学教授の島崎謙治氏。日本医師会副会長の中川俊男氏も、「この提案は全然違うのではないか。(地域医療支援病院は)一定の役割を終えたというのは、皆の認識になってきている」と語気を強め、地域医療支援病院に求められる4機能は他の医療機関でも実施しているとし、診療報酬で評価していくべきと指摘した。

 厚労省は第16回会議の議論を踏まえ、引き続き検討を続け、今夏を目途に一定の取りまとめを行う予定。

 地域医療支援病院と地域包括ケア病棟への紹介の流れ

 相澤氏は、診療報酬上で地域包括ケア病棟が評価されて以降、かかりつけ医からの紹介の流れが変わったと指摘。誤嚥性肺炎、軽度の心不全、手術を必要としない骨折などは地域包括ケア病棟に、手術等を必要とする患者は地域医療支援病院に、という流れだ。「これをどう受け止めて地域医療を構築していくかが重要。この視点を持ち、もう一度、しっかり議論しなければいけないと思う」と述べた。ただし、地域医療支援病院の創設により、医療機能の分化が進んだことは評価し、地域の実情に応じて、少し幅を持たせて地域医療支援病院の要件を考えていく方針は支持。

 これに対し、島崎氏は、「個別に診療報酬で評価していく方が、地域ごとに適切な評価ができるのではないか」と述べたほか、例えば福岡県には、10以上の地域医療支援病院を有する2次医療圏もあるとし、「資源配分上もゆがみが生じているのではないか」と指摘した。

 中川氏は、この発言を踏まえ、福岡県の実態を産業医科大学教授の松田晋哉氏に尋ねた。

 松田氏は、「福岡県医師会では、常に話題になっている。一番大きな問題は、要件さえ満たせば、拒否することはできないこと」と回答。また同じような機能を果たしているのに、紹介率の要件などを満たせないために地域医療支援病院として承認されないケースがあることも問題であるほか、2次医療圏をまたいだ支援機能も要件として考えるべきとの意見も出ているという。「名称の問題より、機能の問題」と述べ、地域医療支援病院の有無ではなく、地域の医療機関の支援機能を有する病院があるかどうかが問題であるとした。

 中川氏は、(1)紹介患者に対する医療の提供、(2)救急医療の提供、(3)医療機器の共同利用の実施、(4)地域の医療従事者に対する研修の実施――という地域医療支援病院に求められる4機能は、「他の病院でもやっている」と述べ、地域医療支援病院には入院診療加算があるが、個別の機能についても診療報酬で評価すべきだとした。

 健康保険組合連合会理事の本多伸行氏も、厚労省案に沿って承認要件を見直すとしても、一定の考え方(ビジョン)を示す必要があるとし、「承認要件と診療報酬上の評価の在り方は整理していく必要がある」と述べた。

 「地域医療支援病院は重要」との回答は9割だが……
 
 厚労省が今回の提案の根拠の一つとしたのは、2018年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「地域医療支援病院等の医療提供体制上の位置づけに関する研究」(研究代表者:伏見清秀・東京医科歯科大学)。2019年1月21日から2月12日にかけて、都道府県(悉皆調査・回答率100%)、地域医療支援病院(同88.4%)、郡市区医師会(同67.6%)を対象に実施。

 「二次医療圏において、今後も地域医療支援病院は重要だと考えられるか」との問いには、「非常に重要」「どちらかといえば重要」の合計が、いずれも9割と高率だった。「地域医療支援病院が担うべき機能」としては、「紹介患者への診療」が最多で、「救急医療」「医師確保に資する体制整備」が続いた。

 しかし、中川氏は「重要か」と聞かれれば、地域医療支援病院という制度そのものではなく、各地域にある具体的病院を想起し、「重要」と答えると指摘、「このまま地域医療支援病院を存続すべきという回答であるとは言えない」とした。日本医師会が2012年に都道府県医師会を対象に実施した調査では、「廃止も含めて制度を見直すべき」という意見が合計 72.3%だったことを紹介した。



https://www.cbnews.jp/news/entry/20190425130730
地域医療支援病院、都道府県の9割が「重要」
厚生労働省の研究班調査結果、在宅や救急に期待も
 
2019年04月25日 13:20

 地域医療支援病院について、都道府県の9割が「重要」と考えていることが、厚生労働省の研究班の調査で分かった。都道府県は地域医療支援病院に対し、かかりつけ医・在宅医療への支援や二次・三次救急医療を担うことなどを期待している。【新井哉】

 地域医療支援病院に関しては、かかりつけ医らを支援し、効率的な医療提供体制の構築を図るため、紹介患者に対する医療提供の整備(紹介率)、救急医療の提供能力(救急車による搬送患者数)などが、都道府県知事が承認する際の要件となっており、全国に約600病院ある。

 調査は1月21日から2月12日まで、都道府県の地域医療支援病院の承認を担当する部局を対象に行われ、全都道府県から回答を得た。地域医療支援病院の重要性を聞いたところ、「非常に重要」と答えた都道府県の割合が53.2%で最も高かった。「どちらかといえば重要」(38.3%)を含めて9割の都道府県が「重要」との認識を示した。

 地域医療支援病院が目指すべき病院像に関する回答(自由記載)については、医療従事者の確保や在宅医療など、地域の実情に応じて不足する機能を提供する中核的な医療機関としての役割を期待したり、循環器を中心とした二次・三次救急を担うことを求めたりする都道府県があった。

 また、承認要件を満たすだけでなく、「かかりつけ医からの紹介患者に対する医療の提供」「かかりつけ医との医療機器の共同利用」などの必要性に言及する回答もあったという。



https://www.m3.com/news/iryoishin/673580
シリーズ 社会保障審議会
2040年の医療提供体制構築に向け「三位一体」改革推進
「次元が違う局面。多元連立方程式を解くような話」との意見も
 
レポート 2019年4月24日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省は4月24日の社会保障審議会医療部会(部会長:永井良三・自治医科大学学長)で、2040年の医療提供体制の構築に向けて、地域医療構想、医師・医療従事者の働き方改革、医師偏在対策を「三位一体」で推進していく方針を示し、各検討会・分科会等の進捗状況を説明した(資料は、厚労省のホームページ)。

 「三位一体」との表現には、政策研究大学院大学教授の島崎謙治氏が、「三位一体かどうかは別として、これらが関連しているのは事実。さらに地域包括ケア、さらに(都道府県化を進めた)国保改革なども関係する。これまでとはディメンジョン(次元)が違う局面に入った。複雑な多元連立方程式を解くような話」と述べ、地域の実情、それに対する解も異なることから、都道府県での対応、それを担う人材育成の重要性などを指摘した。

 厚労省医政局総務課長の北波孝氏は、「三位一体という表現をしたが、相互に連関して、どう対応していくかが課題であると捉えている」とし、島崎氏の指摘の通り、地域の多様性も踏まえて対応していくことが必要であるとし、国としても全国知事会や自治体と積極的に意見交換をするほか、研修会や人材養成などをはじめ、都道府県が主体的に取り組めるよう国として支援していく方針を説明した。

 日本病院会会長の相澤孝夫氏は、「三位一体の改革と言っているが、全然三位一体になっていない」と問題視。例えば、医師偏在対策は、病院に限らず全体の話である一方、地域医療構想は病院の話であるほか、「地方ではすごい勢いで人口の変化が始まっている」と述べ、2次医療圏同士が合併、あるいは隣接する2次医療圏の連携を考えなければいけないにもかかわらず、2次医療圏単位での議論が進んでいるなどとし、「現実とのギャップがあって、現場は混乱している」と指摘した。医師の働き方改革など、さまざまな改革が相次ぐことも混乱を招いているとし、「収束する方向に取り組んでもらいたい」と求めた。

 地域医療構想の実現に向け、国の支援を求める声
 地域医療構想については「地域医療構想に関するワーキンググループ」(『17項目で診療実績「見える化」、公立・公的病院の再編後押し』を参照)、医師の働き方改革については「医師の働き方改革に関する検討会」(『医師の働き方報告書取りまとめ、「改革」スタートへ』を参照)、医師偏在対策については「医師需給分科会」(『2036年度に47都道府県で「必要医師数」確保へ』を参照)でそれぞれ議論している。

 3つの改革の中でも、医療部会で多くの意見が出たのは地域医療構想について。着実な実現に向けて、国の支援を求める意見が出た。2017年度と2018年度の2年間が、集中的な検討を進める期間だった。2年間で合意に至った具体的対応方針の内容を検証するため、手術件数をはじめ「診療実績」などを見える化し、各構想区域の現状を分析する方針。

 ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、「地域医療構想の調整会議自体が、都道府県によってばらつきがある。問題点の抽出ができても、調整までには至らない。手術件数などの見える化をされていることは分かったが、さらにもう少し強く調整をやっていかないことには、進まないのではないか」と述べたほか、医療提供体制に関する理解を深めるための地域住民への啓発の必要性を指摘。

 厚労省医政局地域医療計画課長の鈴木健彦氏は、「地域医療構想アドバイザーという第三者を入れて議論を活性化させている。また診療実績の見える化を進めることで、もう少し突っ込んだ議論ができるのではないか」などと述べ、「国としても積極的に関与し、例えば、調整会議にこちらから出向くことを視野に入れながら検討していく」と付け加えた。

 健康保険組合連合会常務理事の河本滋史氏も、「地域医療構想の進捗は不十分であり、今回、診療実績のデータを分析して、再編統合の必要性等を議論するのは意味がある。しかし、厚労省の進捗管理や議論のサポートがないと、なかなか議論が進まない」と指摘。また急性期機能だけでなく、回復期、慢性期機能の議論がどのように進んでいくのかとも尋ねた。

 鈴木課長は、急性期から慢性期まで順に議論していく流れになるとしたものの、「まだ高度急性期、急性期機能の議論が不十分であれば、我々のデータ(診療実績データなど)を基に議論してもらいたい」と求めた。

 その他、医師偏在対策については、日本医師会常任理事の釜萢敏氏が、「診療科別の必要医師数が提示されたが、果たして妥当なエビデンスなのか、幅広く検証し、合意形成していくことが必要」と求めた。日本精神科病院協会会長の山崎学氏からも、必要医師数の算定方法等を質す意見が出た。

 厚労省医政局医事課長の佐々木健氏は、「一定の仮定を置いた、いろいろな前提条件を持つ数字。各学会から意見をもらい、さらに精緻化を進める」と回答した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/673287
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
「黒船来襲」働き方改革は待ったなし
第119回日本外科学会定期学術集会「特別企画」、外科医の未来は?
 
レポート 2019年4月23日 (火)配信水谷悠(m3.com編集部)

 「働き方改革は黒船来襲、待ったなし」――。第119回日本外科学会定期学術集会で4月20日に行われた特別企画「外科医にとっての働き方改革とは」で、司会を務めた東京慈恵会医科大学Chairmanの大木隆生氏は、こう言って改革を呼びかけた。医師の時間外労働時間の上限は2024年4月施行だが、それ以外の部分は本来、既に行っている必要がある。大木氏は「36協定締結や客観的な労務管理をやっていなければ、労働基準監督署が今日入ってきたら即アウトだ。待ったなしという理解の上で話を聞いてほしい」と呼びかけた。

 まず、厚生労働省医政局の堀岡伸彦氏(医師養成等企画調整室室長兼勤務環境改善室室長補佐)が登壇。大木氏は、「我々にとってラッキーだったのは、元外科医の堀岡先生が働き方改革のリーダーシップをとって外科医の立場を念頭にやってくださっていることだ」と紹介した。

 堀岡氏は「医師の『働き方改革』のゆくえ」と題して、この3月に取りまとめられた「医師の働き方改革に関する検討会」の報告書(『医師の働き方報告書取りまとめ、「改革」スタートへ』を参照)について解説し、「これで十分とは思っていないが、今までと比べれば大改革だ」と指摘。「地域医療確保暫定特例水準」の年1860時間を超えている医師が会場には多くいるとみられ、全国には約2万人いると説明した上で、「5年後には1人もいてはいけない。1人でもいれば管理者に罰則がかかる」。さらに、連続勤務時間制限や勤務間インターバルについて、「厚労省はこれを厳しく見ていくつもりだ。例えば当直明けでは午後の内視鏡はできない。朝のカンファレンスが午前8時に始まるとすれば、その9時間前には病院から出ていないといけない。これは本当に黒船だ」と強調した(『「外科医こそ率先して働き方改革を」、迫井厚労省審議官』も参照)。

 同検討会で構成員を務めた社会医療法人ペガサス馬場記念病院理事長の馬場武彦氏は、「宿直の在り方が大きな鍵になってくる」として宿日直について解説。宿日直勤務の許可を労基署から取っていれば、宿日直の時間は時間外労働時間から除かれることになるが、1949年(昭和24年)に出された医師、看護師等の宿直の許可基準が「非情に厳しい。いわゆる寝当直以外は、労基署が入ってくると『宿直ではない』と言われてしまう」と指摘。報告書では「基準を現代化する」こととなっており、今後厚労省から出される通知で「少しは改善があるのではと思う」と述べた。

「働き方改革のグラウンド・ゼロ」電通執行役員が講演

 続いて、2015年の末に新入社員が過労自殺し、日本社会に「働き方改革」の嵐を巻き起こす要因となった電通について、大木氏は「働き方改革のグラウンド・ゼロ」と紹介し、執行役員の大内智重子氏が登壇。同氏は2016年10月から午後10時の一斉消灯や、2017年度からは2年間、社長が労働環境改革推進本部長を務めての改革を行い、今年度からは事業とのバランスを取りながら行っていることを説明。「対症療法では無理で、本質的な改革を会社として本腰を入れなければいけないということでスタートした」と述べた。

「ある若手外科医の1週間」が一変

 昭和大学外科学講座消化器・一般外科学部門講師の大塚耕司氏は、同大学の取り組みを紹介。働き方改革の社会的潮流が起こる前から、手術手技のマニュアル化による統一や患者病状説明書の作成によるインフォームド・コンセント(IC)の統一・短縮、若手術者の手術時間調整などの対策を行い、「臨床を重視し、その中で若手教育・時間短縮を考慮」という方針を採ってきた。しかし、なかなか労働時間短縮が実現しない状況で働き方改革の波が押し寄せた。そこで、IC開始時間を午後5時までに制限、日曜のICは禁止し、患者・家族主導ではなく医師の事情に合わせることを説明する文書を作成。医療事務の増員も行った。

 激しい議論を経つつも、2017年からは各病院で順次、シフト表を用いた勤務管理を導入。こうしたさまざまな取り組みの結果、若手外科医の一週間は、当直や時間外が減り、完全休日も月に1日あるかどうかだったのが4~8日取れるようになったという。処遇改善や時間外勤務手当てなどで支出は増えているが、患者1人当たりの収入が増えるなどの理由で収入も増加しているとみられるという。シフト制のメリットとしては、各医師に時間に対する意識の高まりが見られたことや、予定して休みを取れるようになったことなどが挙げられた。

 福島県立医科大学肝胆膵・移植外科学講座教授で看護師特定行為研修センターを担当している見城明氏は、修了者にタスク・シフティングをしていく上での課題として医療機関の風土やマインドの変革、統一基準の設定などによる質の担保や受講者数の増加、PA(Physician Assistant)やNP(Nurse Practitioner)に類似した活動を行うなどの修了者の権限拡大などが必要だと説明。

 2016年6月に労基署の改善勧告を受けて働き方改革を推進してきた聖路加国際病院小児外科部長の松藤凡氏は、課題として医師の適正配置、勤務と研鑽の指標の必要性や、医師のタスク・シフティングを行うには、シフトされる側の看護師のタスク・シフティング、他職種の育成や確保も必要であることなどを挙げた。

 がん研有明病院消化器センター消化器外科副医長の熊谷厚志氏は、スウェーデンで2年間勤務していた経験から、日本では「メスを入れたからには看取りまでするのが外科医」、スウェーデンでは「治療の中の手術という部分を担当するのが外科医」という違いを紹介。スウェーデンのようなやり方をするには、外科医以外のマンパワーを充実させることが必要だと説明。スウェーデンの外科医に「あなたが患者なら日本が最高、医師(外科医)ならスウェーデンが最高だ」と話したエピソードを紹介した。

 慶應義塾大学外科准教授の篠田昌宏氏は、これまでは病棟が点在し、それぞれにチームがあり、チーム毎にそれぞれ患者を診ていたが、2018年に新病棟が完成して一つのフロアに全ての外科の患者が集まり、診療側も臓器ごとの編成になったことを紹介。また、効率化としてあまり意味がないのでは、と思われた慣習の廃止や、休日にICや緊急でない処置・検査などを行うことを禁止し、休日を完全当番制にして担当者以外の来院を禁止するなどの対策も行ったと説明した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/672787
「卒前・卒後シームレスな医師養成が進展」、厚労省
第37回臨床研修研究会、2020年度にも各種見直し予定
 
レポート 2019年4月21日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省医政局医事課医師臨床研修推進室長の岡部渉氏は4月20日、東京都内で開催された第37回臨床研修研究会で、「卒前・卒後の一貫したシームレスな医師養成と2020年度から適用される医師臨床研修制度の見直しについて」をテーマに講演した。


 卒前教育については、診療参加型臨床実習を充実させるため、医学生が実施可能な「医行為」を2018年夏に整理した。医師国家試験は、公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)が行う共用試験(CBT)の合格基準が各大学で2015年度から統一化されたことを踏まえ、2018年度から出題数を500題から400題に変更済み。臨床実習の成果を評価するために6年次に受ける「Post-CC OSCE」は、CATOが実施主体となり、2019年度に試行、2020年度から正式実施される予定。

 卒後の医師臨床研修についても、卒前の臨床実習との整合性を図れるよう、到達目標、方略、評価を変更するほか、必修科目が現行の3科から7科に増加、一般外来での研修追加、地域枠学生についてのマッチングでの限定選考、臨床研修病院の指定等の都道府県への権限移譲、基礎研究医プログラム設定など、多岐にわたる見直しを行う(『2020年度からの初期研修の見直し案を了承、7科必修化へ』などを参照)。

 今後の検討課題として、共用試験(CBT/OSCE)、医学教育のモデル・コア・カリキュラム、医師国家試験、臨床研修の各制度について、よりシームレスな卒前・卒後教育を実践するため、同時改訂ができる方向で検討する。

 フロアからは、臨床実習時間数の増加に伴い、大学病院以外での実習が増えている現状も踏まえ、「一般病院等で、患者の同意を得て、侵襲的な医行為を実施するのは容易ではない」とし、患者啓発の必要性を指摘する声が上がった。岡部氏は、共用試験やスチューデント・ドクターについて、公的な位置付けを求める意見が出ていることから、2019年度に厚労省として検討する方針であると、回答した。

 「卒前・卒後の医師養成がシームレスになればなるほど、臨床研修は2年も要らないのではないか、という議論も出てくるのでは」との質問も出た。岡部氏は個人的な見解と断りつつ、「臨床実習において、臨床研修でやっているようなことができるようになれば、将来的にはそうした議論も出てくるのではないか」と述べつつ、診療参加型の臨床実習が実践できていない大学がある現状も指摘した。

 連動研修できなければ、内科専攻医減少の懸念も
 第37回臨床研修研究会は、「新研修制度のシームレスな運用に向けて」と「研修医の働き方改革:現状と取り組み」という二つのテーマのシンポジウムの後、岡部氏、文部科学省高等教育局医学教育課企画官の荒木裕人氏が講演した。

 「新研修制度のシームレスな運用に向けて」の登壇者の一人が、日本専門医機構理事長の寺本民生氏。新専門医制度が2018年度から開始したばかりであり、サブスペシャルティ専門医の在り方などが議論になっている最中だけに、この問題のほか、総合診療専門医の在り方、専門医取得のインセンティブについて、フロアから複数の質問が寄せられた。

 サブスペシャルティ専門医については、基本領域の専門医との連動研修を認めるか否かが論点(『23のサブスペ連動研修、「4月開始」は見送り』を参照)。寺本氏は、「連動研修は、例えば内科研修の場合、循環器や呼吸器などでの研修実績をサブスペシャルティ専門医の研修実績としても認めるということ。基本領域の研修を侵して専門研修に入るわけではないことを理解してもらいたい」と説明。

 2018年度および2019年度の専攻医の中には、連動研修ができるとして研修を開始した人もいるとし、「これがダメとなると、専攻医の人生に大きな影響を与える」と指摘、さらに内科専門医に限れば、2年間の初期臨床研修で内科専門医の研修項目の多くを済みであるとし、「連動研修ができないとなれば、内科専門研修としても非常に大きなデメリット。これが続くと、内科専攻医がさらに減ってしまうのではないか」との懸念が呈せられた。

 寺本氏は、内科系ではJ-OSLER、外科系ではNCDで経験症例の登録をしていることから、連動研修が認められた段階で、それらがさかのぼってサブスペシャルティ専門医の研修実績となるのでは、と回答。「現段階で2階建ての部分として認められるという理解でいいか」との確認に、「そう私は望んでいる」と応じた。

 専門医取得のインセンティブ、第一は「広告」
 専門医取得のインセンティブについては、「例えば、専門医を取得した時に、メリットがはっきりしない、取得しないデメリットもはっきりしない」との質問が出た。

 寺本氏は、「日本専門医機構として、広告できるようにもっていくことが第一」と回答。現行法上では、広告が可能なのは、学会認定の専門医。「2021年度からは、日本専門医機構認定の専門医が誕生するので、広告ができる状態になることを望んでいる。両方が広告可能となれば、徐々に機構認定の専門医に移行していくのだろう」(寺本氏)。

 診療報酬で専門医を評価する考え方については、「診療報酬で何らかのインセンティブを考えていかないと、恐らく医師の診療科偏在の解消は難しいだろう。しかし、医療費総額、その配分の問題にもなり、非常に微妙な問題だと認識している」と寺本氏は見通した。

 総合診療専門医、キャリアパス見えないことが課題
 総合診療の専攻医は2018年度と2019年度ともに約180人。寺本氏は、「他の基本領域とは異なり、基本学会がなく、機構自体がこれを担っており、大変」とした上で、人数が伸び悩む理由を述べた。「認知度が十分ではなく、医学教育の中でも総合診療に関する教育が必ずしも多くはない。さらに新専門医制度の中で、ダブルボードあるいはサブスペシャルティ専門医として何が取得できるのかなど、キャリアパスが見えてこないことが、総合診療専門医の課題だろう」。

 シンポジストの一人、地域医療機能推進機構(JCHO)理事長の尾身茂氏も、「総合診療専門医については、ロールモデルがなく、将来何が起きるかが分からない」などと指摘し、「全ての医師が総合診療専門医になる必要はないが、180人はいかにも少ない。患者のため、そして日本の医療の財源のためになることが分かるようになれば、選ぶ人も増えるのではないか」と述べた。

 フロアからも、総合診療専門医養成の必要を指摘する声が複数上がった。



  1. 2019/04/28(日) 07:31:52|
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