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Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

3月24日 

https://www.yomiuri.co.jp/local/akita/feature/CO038652/20190320-OYTAT50000/
県病院協会長 小棚木均さん(65)
《1》医師不足県が対策を
 
2019/03/20 05:00 読売新聞 秋田

 29日告示、4月7日投開票の県議選を前に、医療、自殺対策、女性活躍、外国人労働者の受け入れ、地場産業振興――の五つの県政課題について、識者の意見を聞く。



 医師偏在の解消に向けた対策は、国も進めている。ただ、全国でも人口減が特に深刻な本県では、実態に即した独自の施策を考える必要がある。少子高齢化の最先端にあり、全国の歩調に合わせても問題の解決へは向かわないと考えられるからだ。

 行政が急務とするべきは1次医療を支えるシステムの構築だ。

 今、1次医療は地域の開業医の尽力で成り立っている。しかし、医師の高齢化も進んでおり、事業承継がうまくいっていないという側面がある。

 医師の「都会志向」もある。都市部の医療設備が整った医療機関で、多くの症例をこなすことで、専門性を高めることができるだろう。「働き方改革」が叫ばれる今の時代、地方の一人勤務の診療所では24時間、365日気が抜けない状態となるため敬遠するのも無理はない。

 地方の診療所の周辺にある病院も、診療報酬改定や新システムの導入などで経営が厳しく、多くの医師を受け入れる体力が損なわれているのが現状だ。患者数が多ければ、診療報酬も増え、病院経営が持ちこたえることもできるだろうが、人口減に歯止めがかからない状態では、先行きは厳しい。

 県民に身近な1次医療の態勢を充実させるため、財政状態が厳しいことは分かるが、県はもっとお金をかけるべきだ。

 一方、高度医療については、秋田市などの拠点となる都市に集約するのが現実的だろう。

 「良い医者がいる」と聞けば、患者さんはよその地域の医療機関でも出向いていくのが実際のところだと思う。高度な治療を2次医療圏の中で完結させようとこだわっているのは、行政や医療関係者だけではないだろうか。

 様々な症状に対応できる総合病院を整備するのはもちろんだ。併せて、患者さんが圏域をまたいで医療機関にかかりやすくなるように、救急車に準ずるような新たな公的交通手段を導入するなど、交通アクセスの整備にも力を入れるべきだと考える。

 人口減が進む中、提供する医療サービスはどうあるべきか。20年後、30年後を見据えた長期的な対策が求められている。

(聞き手・杉本和真)

「偏在指標」ワースト7位
 厚生労働省がまとめた医師の充足状況を示す「医師偏在指標」(暫定値)で、秋田県(180.6)は47都道府県(平均238.3)で7番目に低いことが判明。さらに全国335の2次医療圏別では、上小阿仁村と北秋田市で構成される「北秋田医療圏」(69.6)が最下位となっている。



https://www.m3.com/news/iryoishin/667239
シリーズ 真価問われる専門医改革
専攻医のシーリング、「県、基本領域別」への変更検討
厚労省・医師専門研修部会、時期や詳細は今後の検討課題
 
レポート 2019年3月23日 (土)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省は、新専門医制度における専攻医数の上限(シーリング)の方法を見直し、「都道府県別、基本領域別」に設定することを、3月22日の医道審議会医師分科会医師専門研修部会(部会長:遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)で提案、おおむね了承された。ただし、時間切れで内容の詳細な議論には至らず、見直し時期については意見が分かれた。日本専門医機構は厚労省提案を基にシーリングの在り方を検討、その結果を踏まえ、本部会で検討する(資料は、厚生労働省のホームページ。22日の本部会の他の議論は、『23のサブスペ連動研修、「4月開始」は見送り』を参照)。

 現行のシーリングは、5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)で、14の基本領域(外科、産婦人科、臨床検査、病理、総合診療を除く)で、過去の採用実績を基に設定している。対象とする地域、基本領域が違うだけでなく、将来の医師需要を踏まえて設定し、医師不足地域の専攻医を増やすことを目的としている点で、厚労省提案は現行のシーリングと大きく異なる。

 具体的には、2016年の医師数が、医師の働き方改革を進めた場合に必要な医師数や将来の必要医師数(例えば、2024年)を上回る「都道府県、基本領域」について、シーリングを設定する。ただし、救急科と総合診療については対象外とする。これらのデータは、厚労省の医師需給分科会で議論されている(『2036年度に47都道府県で「必要医師数」確保へ』を参照)。同分科会では、「医師多数県」と「医師少数県」を設定し、医師偏在の解消を狙う。東京都、大阪府、福岡県は「医師多数県」だが、神奈川県と愛知県は「医師多数県」ではないことも、厚労省はシーリングを見直す理由として挙げた。

 シーリングの対象となった「都道府県、基本領域」では、「医師少数県」と連携プログラムを組むことを必須とする。

 ただし、「医師多数県」と「医師少数県」のいずれにも該当しない県の専攻医減少を防ぐため、「地域貢献率」(研修プログラムの所在地以外の都道府県で研修する専攻医の割合)も指標として、研修プログラムの定員を検討する。

 シーリングの考え方は支持、データの精査は必要

 認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、「医師偏在対策ということで、医師偏在指標が出た。愛知県や神奈川県は、医師多数県でなかった」と指摘した上で、シーリングの方法を見直すという厚労省の提案自体は支持するが、「それ以外はこの(限られた)時間では判断できない」とコメント。

 日本病院会常任理事の牧野憲一氏は、「シーリングの考え方は賛成。将来の医師の需給予測と働き方改革を踏まえ、どれだけの医師を養成していくかを考えないと、地域医療は崩壊する」と厚労省提案を支持。

 長野県知事の阿部守一氏も、「医師の偏在是正につがる方向でのシーリングは、しっかりかけてもらいたい」と述べ、連携プログラムで「医師少数県」に行く仕組みを強化すべきと提案。

 ただし、「考え方はいいが、医師多数県や医師少数県の基になる数字には納得していない」といった意見も出た。

 参考人として出席した日本専門医機構理事長の寺本民生氏は、2019年度研修開始の専攻医数は、東京都のシーリングに限って、前年度比5%減としたことを説明した上で、「5%の根拠ははっきりしていないが、その社会への影響を検証した上で、次の検討をすべきだ」と指摘し、2020年度研修からシーリングを見直すのは「時期尚早」とした。さらにシーリングに一番関係するのは専攻医であり、医師偏在解消は専攻医だけの問題なのか、その辺りは慎重に考えてもらいたいと求めた。

 日本医師会常任理事の釜萢敏氏も、「地域医療を崩壊させないように、調整していくことが必要だが、専門医の問題で、診療科偏在の全て解決するわけではない。あまり重きを起きすぎると、専攻医は、シーリングをかけられることを苦痛に思う」と述べた。また厚労省が示したデータについても、関係者が納得できるよう検証する必要性を指摘した。



https://www.medwatch.jp/?p=25500
公立病院等、診療実績踏まえ「再編統合」「一部機能の他病院への移管」を2019年夏から再検証―地域医療構想ワーキング  
2019年3月20日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 今年(2019年)3月までに、全国の地域医療構想調整会議において、まず「公立病院および公的等病院の機能改革」に関する合意を行うこととなっている。ただし、その合意内容について妥当性等を疑問視する声もあることから、厚生労働省で「地域で公立・公的病院等が担っている機能について、近隣の民間病院等で代替できないか」などを今夏(2019年夏)までに分析し、その結果を踏まえて、必要があれば「公立病院および公的等病院の機能改革」内容について厚生労働省から再検証・検討を要請する―。

3月20日に開催された「地域医療構想ワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)で、こういった方向が概ね固められました(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。厚労省は早速、分析に入る考えです。
 
ここがポイント!
1 がん手術や心筋梗塞治療などの診療実績を見て、公立・公的病院等の機能を分析
2 診療実績の分析から、公立病院等の機能を「他の民間病院で代替できないか」を再検証
3 病院の再編統合が進み寡占状態になった際、医療サービスの質が低下していないか検証を

がん手術や心筋梗塞治療などの診療実績を見て、公立・公的病院等の機能を分析

地域医療構想の実現に向けて、各地域医療構想調整会議(以下、調整会議)では、まず今年度中(2019年3月まで)に「地域の公立病院・公的病院等の機能改革等」に関する合意を得ることになっています。昨年(2018年)12月末時点の合意状況を見ると、ベッド数ベースで、▼公立病院は48%(2018年9月末から9ポイント向上)▼公的病院等60%(同8ポイント向上)―となっており、現在、最終的な調整論議が行われている最中です。

ただし、「合意を急ぐ」あまり、「形だけの機能改革」「現状追認」にとどまっているケースもあると指摘され、ワーキングでは「合意内容の検証が必要」と判断しています。

この点、厚労省は(1)地域の医療提供体制の詳細な分析を行う(2)分析結果を踏まえて、各調整会議で「「地域の公立病院・公的病院等の機能改革等」を再検証・検討する―という2段階で検証する枠組みを示しました。

まず(1)の分析については、以下の17項目について、地域の公立病院・公的病院等と民間病院等が、どのような診療実績を有しているのかを調べます。詳細な分析内容については、今後、ワーキング構成員とさらに詰めていくことになります。

【分析項目】
▽がん手術の実績(▼肺・呼吸器▼消化器(消化管/肝胆膵)▼乳腺▼泌尿器/生殖器―)
▽がん化学療法の実績
▽がん放射線治療の実績
▽心筋梗塞等の心血管疾患の診療実績(▼心筋梗塞▼外科手術が必要な心疾患―)
▽脳卒中の診療実績(▼脳梗塞▼脳出血(くも膜下出血を含む)―)
▽救急医療の実績(▼救急搬送等の医療▼大腿骨骨折等―)
▽小児医療の実績
▽周産期医療の実績
▽災害医療の実績
▽へき地医療の実績
▽研修・派遣機能の実績

 これら17項目それぞれについて、病床機能報告データなどをもとに今夏(2019年夏)までに厚労省で分析。その結果は各地域医療構想調整会議等に提示されるとともに、分かりやすく整理した形で公表もされます。

例えば、胃がん手術について、A公立病院が地域の大多数の症例に対応していれば、その公立病院・公的病院等は「地域において、他の民間病院ではできない機能を担っている」と考えることができます。

また、乳がん手術について、A公立病院とB民間病院とが、それぞれ半数程度の症例を診ている場合、「競合している」「すみ分けている」などと考えることができるでしょう。

一方、救急医療について、多くの公立病院・公的病院等で対応している場合、「分担をしている」ケースもあれば、「症例や医師等の医療資源が分散し、非効率になっている」ケースもあると考えられます。
地域医療構想ワーキング(1)の3 190130
 

診療実績の分析から、公立病院等の機能を「他の民間病院で代替できないか」を再検証

厚労省はこうした分析結果を踏まえて、地域の公立病院・公的病院等のうち、次のようなケースでは「調整会議で、機能改革内容(合意内容)を再検証する必要がある」と見ています。

(I)上記17項目のうち1つ以上の項目で、▼構想区域内に「一定数以上の診療実績を持つ医療機関」が複数あり、近接している▼診療実績が特に少ない―場合には、当該項目(機能)について、他の医療機関への代替可能性がある

(II)上記17項目のうち大半の項目で、▼構想区域内に「一定数以上の診療実績を持つ医療機関」が複数あり、近接している▼診療実績が特に少ない―場合には、当該公立病院・公的病院等は、再編統合を検討する必要がある

 前者(I)の「ある機能(例えば、胃がん手術)について他医療機関での代替可能性あり」との分析結果が示された公立病院・公的病院等については、調整会議において、当該機能を他医療機関に統合するべきか否かを、ベッド数も含めて改めて議論することになります。例えば、A県立病院の消化器外科(40床)とB民間病院の消化器外科(40床)とで、胃がん症例を同程度診ている場合、「A県立病院の胃がん手術機能を、B民間病院の消化器外科に集約できないか」「集約できるとして、スタッフ・設備等・患者などもB民間病院の消化器外科にどう移管していくか」「合計80床であるが、地域の人口減少動向を踏まえて60床に削減してはどうか」などといった点を調整会議で、改めて検討することになります。

また後者(II)の「多くの機能について他医療機関での代替可能性あり、または診療実績が特に少ない」との分析結果が示された公立病院・公的病院等については、調整会議において、当該病院を他医療機関と再編・統合すべきか否かを検討することになります。例えば、診療実績の低いC市立病院を、近隣のD県立病院に統合するなどのイメージです。

ところで17項目の分析結果で、例えば「胃がん手術についてA公立病院とB民間病院とが地域患者の半数程度ずつを診ている」ことが分かったとして、機械的に「胃がん手術はB病院に集約する」との結論が導かれるものではありません。例えば「ベッド数の関係でA・B病院で患者を分け合っている」ケースもあれば、「A病院が合併症などのある重症患者を診ており、B病院では比較的軽症の患者を診ている」ケースもあるでしょう。調整会議での再検証では、こうした点も十分に考慮することが求められます。

さらに、「医師の働き方改革が進められる中で、機能集約などによってかえって医師の負担が重くならないか」、「機能集約をすることで医師偏在が助長されないか」、「公立病院では補助金が投入され、公的病院等では税制上の優遇があり、民間病院と必ずしも同じ競争条件ではない」などの点も調整会議で勘案することが必要です。

  
調整会議での再検証・検討期限は今後検討していくことになります。厚労省は「新公立病院改革プランの対象期間が、2020年度を終期とすることが標準である」点を考慮する必要があると指摘しており、ここからは「2020年度央までに調整会議で再検証・検討する」ことなどが考えられますが、中川俊男構成員(日本医師会副会長)は「再検証とは、これまで2年間、調整会議で行ってきた議論を1からやり直すことを意味する。拙速な議論(例えば、従前の合意内容を安易に追認してしまうなど)を調整会議で行っても意味がない」と指摘しており、今後、具体的な再検証方法などについてワーキングで詰めていくことになります。

公立病院・公的病院等の機能改革に関するスケジュールは、次のように整理できるでしょう。

▽厚労省が今夏(2019年夏)までに地域の各医療機関の診療実績等を分析する

▽分析結果に基づいて、厚労省が「機能集約」「病院の再編統合」などを検討する必要性がある公立病院・公的病院等をピックアップし、調整会議に「機能改革の再検証・検討」を要請する(今夏目途)

▽調整会議で機能分化・再編統合の必要性について、地域の詳しい事情を踏まえながら再検証・検討する(検討期限については、今後、さらに検討)

▽再検証・検討結果に基づいて、機能集約や再編統合を各地域で進める(順次)


病院の再編統合が進み寡占状態になった際、医療サービスの質が低下していないか検証を

 ところで、一口に「機能集約や再編統合を進めよ」と言っても、地域の特性や病院の設立母体などによって、さまざまな課題があります。こうした課題について十分に検討し、打開策を準備しなければ、機能集約・再編統合は画餅に帰してしまいます。

3月20日のワーキングでは、田渕典之参考人(日本赤十字社医療事業推進本部技監)から、公的病院等において機能集約や再編統合を進めるにあたっての課題がいくつか整理されました。

まず、統合等を行う場合、多大なコストが発生します。例えば、A病院とB病院を統合し、新C病院を建築する場合には、莫大な費用がかかります。新病院建築には至らずとも、機能集約等を行えば、「増床」「設備整備」などに相当のコストがかかります。また、統合を良しとせず職場を去るスタッフも一定程度、出てくると考えられ、想定外の退職金が発生することも考えられます。さらにスタッフを引き留めるために「給与水準を高いほうに合わせる」ことなどが行われますが、その際には人件費が高騰します。

自治体病院が関係する統合再編では、こうしたコストについて公費による補填が行われることがあり(後述するようにこの点での課題もある)、また一般企業では、統合後の収益増(収益増を見込んで統合するケースが大半)によりコスト回収できます。しかし、公立病院等(例えば日赤)では補填の原資もなく、現行の診療報酬の下では「大幅な収益増」を見込むことも難しいでしょう。田渕参考人は「コスト回収」の視点が極めて重要であると指摘しています。

また、再編統合などが進めば、当然、地域において「寡占」状態が発生します。その際、「透明性やガバナンスの確保」が極めて重要となります。もちろん、医療者には高潔な方が多いのですが、一般的に「寡占状態が生じれば、経営管理が緩くなり、サービスの質が低下しがちである」という点を無視することも危険です(正しい競争こそがサービスの質を向上させる)。「診療の質が低下していないか」「患者の満足度が低下していないか」「コスト管理が適正になされているか」などを十分に把握していくことも、今後の重要な検討課題となるでしょう。

 
なお、青森県弘前市(津軽医療圏)において、2019年度には弘前市立病院と国立病院機構が統合した新たな急性期の中核病院が発足します。▼病床を削減する(従前の弘前市立病院250床+国立病院機構弘前病院342床(合計592床)→新中核病院では400-450床)▼病院運営を国立病院機構が担う(多くのケースでは自治体が運営権を希望するが、このケースでは首長が英断し、市民もこれを受け入れた)―などの特徴をもつ画期的な統合再編事例で、中川構成員は「全国の統合再編のモデルケースになる」と高く評価しています。

ただし、新中核病院への移行期間中である現在、▼スタッフのモチベーションが下がり、退職も少なくない(自治体立病院勤務を望むスタッフも少なくない)▼新病院建設等の営繕費用(コスト)などが嵩む―という大きな課題もあります。上述の田渕参考人は「自治体病院に関しては、統合コストを自治体が補填する」ことを指摘しており、事実、弘前市でも補填が行われるのですが、「原資の工面」「コストの平準化」などに大きな苦労をする実態もあるようです。

 
今後、厚労省の分析結果を踏まえ、調整会議で「機能集約や再編統合すべき」との再検証・検討が出てきますが、実際の再編統合等に向けた課題の整理や対応策も幅広く検討していくことが各所で求められるでしょう。



https://www.m3.com/news/iryoishin/666764
シリーズ 地域医療構想
17項目で診療実績「見える化」、公立・公的病院の再編後押し
構想区域別に2019年年央までに公表、「代替可能性あり」なら統合も
 
レポート 2019年3月20日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(座長:尾形裕也・九州大学名誉教授)は3月20日の第20回会議で、地域医療構想の進捗状況を把握するため、9領域で計17項目について診療実績の分析を進めることを了承した。構想区域別に、がん、心血管疾患や脳卒中、救急医療などの各領域について、各病院がどのくらいの症例や手術を担っているかなどを「見える化」するのが狙い(資料は、厚労省のホームページ)。

 分析は厚労省が行い、「他の医療機関による役割の代替可能性がある公立・公的医療機関等」の有無について、下記のような結果とともに、2019年年央までに各都道府県に通知する。「代替可能性」の有無は、人口当たりの診療実績、医療機関間の距離等など「一定の基準」を設けて判断する。この基準は分析を進める過程で今後、検討・決定する。地域医療構想調整会議では、「代替可能性がある」とされた役割について検証・協議し、結論を得ることが求められる。

地域医療構想の分析、検証の方向性

・1つ以上の分析項目について、「代替可能性がある」と分析された公立公的医療機関等を、「他の医療機関による役割の代替可能性がある公立・公的医療機関等」と位置づける。
・「他の医療機関による役割の代替可能性がある公立・公的医療機関等」のうち、大半の分析項目について「代替可能性がある」と分析された公立・公的医療機関等については、「再編統合の必要性について特に議論が必要な公立・公的医療機関等」と位置づける。

 地域医療構想については、「2017 年度以降、個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応方針の速やかな策定に向けて、地域医療構想調整会議において2年間程度で集中的な検討を進める」とされていた。特に公立・公的医療機関等については、「新公立病院改革プラン」「公的医療機関等2025プラン」を策定し、民間医療機関との役割分担を踏まえ、公立・公的医療機関等でなければ担えない分野へ重点化された具体的対応方針であるかを確認することを求めた。今回の分析・検証は、それが実現しているかを評価するのが狙い。

 20日の会議では、厚労省が分析に入るなど、基本的な方向性が了承された。ただ、その検証の仕方については、日本医師会副会長の中川俊男氏は、「検証はものすごい大仕事。一から議論をやり直すこと。そのためには調整会議も数段活性化させなければいけない」と述べ、本ワーキンググループで引き続き議論するよう求めた。厚労省は2019年年央に向けて、分析と並行して、検証の仕方について議論を深めると回答した。

 各地域の調整会議では、分析結果を受け、再編・統合の要否などを検討していくことになる。その結論を得る期限は未定で、今後の検討課題となる。健康保険組合連合会理事の本多伸行氏からは、新公立病院改革プラン等が2020年度に終わることを踏まえ、「再編・統合は難しいと思うが、あまり長引くとかえって不安をあおることになる。計画は可及的速やかに公表すべき」との声が上がった。一方で、中川氏は、これまで新公立病院改革プラン等が、あまり議論なく、調整会議で合意されてきた経緯を問題視し、「それを見直そうということ。拙速にならないようにしっかりとやった方がいい」と指摘した。

 そのほか、全日本病院協会副会長の織田正道氏からは、「公立・公的病院の統廃合は、全国で進んでいるが、うまく行っている事例ではなく、まずかった事例を参考にして統合のやり方を検討していかなければいけない」との意見も上がった。

 全国自治体病院協議会会長の小熊豊氏によると、全国876の自治体病院のうち、400近くが再編・統合され、経営形態の移行が終わっている。2020年度までにさらに五十数病院が再編・統合等の予定だという。


 公立・公的の「統合コスト」が課題

 20日の会議では、青森県弘前市と日本赤十字社へのヒアリングも行われた。公的・公立医療機関の再編・統合がテーマで、両者とも「統合コスト」、つまり2病院を統合する際に、統合までの過渡期において診療機能の転換が段階的に進むことで、その期間中は収入が低下したり、職員の退職手当あるいは雇用確保等の資金が必要になってくるという課題を指摘した。

 「津軽地域保健医療圏における中核病院の整備」では、国立病院機構弘前病院(342床)、弘前市立病院(250床)を再編・統合した中核病院の新設が進められている。弘前市健康福祉部長の外川吉彦氏は、「病院廃止に伴い、資金不足になると予想し、かなり多めに想定していたが、現実になるとかなりつらい。今は過渡期ということで、市の一般会計で支えるしかないが、なかなか厳しい。何らの資金を使って、平準化したい」と説明。

 日本赤十字社医療事業推進本部の田渕典之氏は、全国の3つの日赤病院の再編・統合の事例を紹介。「病院の利益率は数%で、統合コストを賄うことが可能な診療報酬体系になっていない。統合コストをどう考えるかがカギとなる。過去に成功している再編・統合事例は、自治体病院が片方にあり、“大きな財布”を持っている。これを公的、民間病院などにも広げていくためには、特に大規模の病院ではどう考えるかが重要になっていく」との考えを述べた。



 「国立病院機構主体の統合・再編」を支持する市長が当選

 津軽地域保健医療圏は、8市町村から成る。5つの公立病院のうち、国立病院機構弘前病院と弘前市立病院を再編・統合し中核病院にするとともに、他の3病院は回復期、慢性期病院への転換を進める方針。

 弘前市立病院の病床稼働率は、ピーク時は90%を超えるが、平均80%くらいだという。「決して低くない。これで再編・統合を進めるのは結構、思い切ったことだと思う」(中川氏)。

 もっとも、当初は国立病院機構が運営主体になるとの話でスタート。その後、市民等の意見を受け、市長が「市が中核病院の整備運営の主体になる可能性を示した」と発言し、議論が難航。2018年4月の市長選挙で、国立病院機構主体の再編を進める市長が当選し、交代。2018年10月にようやく再編・統合の基本協定の締結に至った。

 中川氏は、「市長選挙では、『市立病院を守らなければ負ける』と言われるが、この場合は逆だったのか。市立病院を国立病院機構にお願いして、弘前は身軽になることを市民が選択したということか」と質問。外川氏は、自身の感触と断りつつ、「中核病院ができる姿を市民が早く見たかったのだろう。県から提案があったものをベースにして進めていく、という市長を選ばれた。財政的な部分についてはそれほど大きな議論にならなかった」と回答した。

 本多氏は、再編・統合を進めるポイントについて質問。外川氏は、「最初は譲り合わなかったが、どちらか一方が主導するのではなく、お互いが譲歩し合うことで条件が整った」と説明。「協議の再開に当たって、顔を合わせ、自分たちが思うことを話す回数が格段に増えた。お互いに思うことが分かり、目指すところは一緒なんだ、ということで、最終的には協定にまで進んだのだと思う」(外川氏)。


 「日赤は本部主導か」との指摘に反論

 田渕氏が紹介したのは(1)兵庫県の県立柏原病院と柏原赤十字病院(2019年)、(2)広島県の庄原赤十字病院の地域医療連携推進法人への参加(2018年)、(3)北海道の道立北見病院の指定管理(北見赤十字病院との一括管理、2018年)――の3事例だ。「その他、統廃合の日赤への打診が、一桁だが、来ている」(田渕氏)。

 日赤病院全体の許可病床数は、2016年の3万4654床から、2018年には3万4358床へと、2年間で296床減少した。16病院の平均は20.5床減(1床減から49床減)。

 織田氏は、地域医療連携推進法人への参加で、「二重ガバナンスになる」との説明に対し、「現場で話し合われたことを追認するならいいが、そこで話し合われたことを否定していてはうまくいかない」と指摘。田渕氏は、「地域の意思を尊重することは重要」と答えつつも、災害医療などの日赤が担うべき事業との整合性なども勘案する必要があるとした。

 中川氏は、「地域医療連携推進法人は、日赤が入るのにやりにくいので、制度を見直すべきだと言うが、それは本末転倒。地域医療を支えるのは現場の医療機関であり、日赤がやりやすいように作ったわけではない。構想区域単位で物事を考えなければいけない。日赤本部の指示で、全国の地域医療構想を進めると考えているのであれば、決定的な間違い」と手厳しく批判。さらに「日赤と公的・公立病院とは、一般会計からの繰り入れの違いがあると言うが、医療法人の立場から言えば、はるかに日赤は優遇されている」とも指摘した。

 これに対し、田渕氏は、「地域医療構想の中で、いろいろな調整を経て、日赤の公的医療機関等2025プランが成立する。また水面下で進んでいる事例も、地元医師会などと話し合いながら進めている。日赤本部が全てリードして決めていくことは全くない」と反論した。



https://wired.jp/2019/03/19/why-your-doctor-should-also-be-a-scientist/
医学の発展には、臨床と研究をつなぐ「フィジシャン・サイエンティスト」の養成が不可欠だ  
019.03.19 TUE 09:00 Wired Promotion

医師として患者を診察しながら研究者でもある「フィジシャン・サイエンティスト」。臨床医療と基礎研究の橋渡し役として医学に革新をもたらす存在と認識されているものの、米国では“絶滅”寸前にまでなっている。医師の臨床志向が強まるなか、その役割を再認識し、改めて養成を強化すべきときが来ている──。ニューヨーク工科大学の生物医学教授による提言。

TEXT BY KURT AMSLER
TRANSLATION BY TOMOYUKI MATOBA/GALILEO

メリーランド大学の研究チームが、神経因性疼痛と呼ばれる神経の機能不全または損傷に起因する痛みの治療に関して、ブレイクスルーになりうる発見をなし遂げた。神経因性疼痛に苦しむ患者は米国だけで1億人を数え、その医療費は毎年5,000億ドル(約54〜55兆円)に上る。

神経因性疼痛の症状は、実際にけがを負って痛みを感じる状態とは異なる。だが、患者が訴える苦痛の度合いは、軽い不快感から耐えきれないほどの激しいものまで、広範囲にわたる。メリーランド大学のチームがこのほど開発したのは、超音波を使って痛みを消失させる新たな技術だ。

この研究チームは、一風変わった特徴をもつ。メンバー全員が医師であると同時に、科学者・研究者でもあるのだ。チームのメンバーたちは専門教育を受けた医療従事者として患者を治療するだけでなく、研究を通じて新たな薬剤や治療法の開発も手がけている。

「フィジシャン・サイエンティスト」は絶滅寸前

米国では、医師と研究者を兼ねる「フィジシャン・サイエンティスト(physician-scientist)」の不足が深刻だ。残念ながら、絶滅寸前の危機を迎えていると言っても過言ではない。いま何か手を打たなければ、患者の命を救う次世代の治療法は、日の目を見ずに失われてしまうかもしれない。

フィジシャン・サイエンティストの強みは何か。それは、典型的なラボの研究者とは異なり、臨床経験から学び得た患者側の視点をもっている点だろう。

フィジシャン・サイエンティストたちは、さまざまな薬剤の相互作用や、重要な外科手術の成功と失敗、患者一人ひとりの反応の違いを目の当たりにしてきた。こうした経験をラボにもち帰り、患者のニーズにあった研究に狙いを定め、成果を得るまでの時間を一気に縮めることができる。

正式な教育訓練を受けたうえ、医学学位に加えて生物学または物理科学の博士号も取得しなければならないという高いハードルがある。だからこそ、なせる技なのだ。

近年も相次いだ功績

メリーランド大学のチームが画期的な発見を発表してまもなく、今度はロサンジェルス市内の大規模な研究病院、シダーズ・サイナイ医療センターのフィジシャン・サイエンティストが、よくあるタイプの心不全に関連する血中たんぱく質を発見した。従来の研究では、明確なバイオマーカーは見つかっていなかった。この発見によって、将来的に簡単な血液検査で、深刻な心疾患の発症リスクを診断する手法を開発できるだろう。

こうした例は、枚挙にいとまがない。2018年6月には、オレゴン健康科学大学のフィジシャン・サイエンティストチームが、がん細胞の転移を阻止する成分に関する論文を発表。数年前には、サンディエゴのシンテロン研究所のフィジシャン・サイエンティストチームが、アルツハイマー病と2型糖尿病に共通する、未知の分子的経路を発見した。

このような画期的な発見は、まさにフィジシャン・サイエンティストの得意分野だ。臨床医療と学術研究をミックスすることで、素晴らしい成果が生まれることを見事に証明している。

助言者としての役割も

フィジシャン・サイエンティストの貢献はこうした例だけにとどまらない。研究の知見を生かし、患者が適切にインフォームドコンセントを行えるようアドヴァイスする役割も果たしているのだ。

例えば、イリノイ大学のフィジシャン・サイエンティストで博士号をもつジャリーズ・レーマンは、自身が執筆した『サイエンティフィック・アメリカン』の記事で、こんな体験を取り上げた。

ある患者がタイの民間クリニックで、物議を醸している心疾患治療法を提案されたと相談に来た。タイの医師たちは、進行した心疾患を治療するため、大金をはたけば骨髄液の注入を行うと述べたという。それは骨髄液中の幹細胞が、損傷を受けた心臓弁や心室、神経を修復するという内容だった。

心疾患治療で幹細胞を利用する研究のスペシャリストでもあるレーマンは、その治療法がインチキだと見破った。そもそも骨髄液に含まれる幹細胞はごくわずかであり、注入には健康上の甚大なリスクを伴う。この患者は彼の説得のおかげで、危険な治療を受けずに済んだ。

いまや絶滅寸前に

このようにヘルスケア業界には、薬剤や医療器具に関する一見すると魅力的なマーケティングがはびこっている。患者が本物を見極めるにはフィジシャン・サイエンティストたちのような専門家の知恵が必要だが、状況は厳しい。

米国医師会の調査によると、もとよりわずかだったフィジシャン・サイエンティストの数は、2003年から12年に約6パーセント減少。いまやフィジシャン・サイエンティストは、医師100人につきたった1人しかいない計算となる。

医療界のイノヴェイションに向け、次世代を担うフィジシャン・サイエンティストの養成は待ったなしだ。現行でも、連邦助成金制度があるが、その大部分が各分野ですでに業績を確立しているフィジシャン・サイエンティストに交付されている。こうした状況を考えれば、若いフィジシャン・サイエンティストを育てるための配分額を増やすことが解決の鍵となりそうだ。

米国医師会雑誌(JAMA)に寄せられた論文によると、12年から17年、米国立衛生研究所(NIH)が小児医療研究助成を交付した対象者は、10人中6人が研究主幹レヴェルのフィジシャン・サイエンティストだった。たいていの若いフィジシャン・サイエンティストは、助成金を得られなければ研究を諦め、臨床医療に専念する道を選ぶだろう。

研究助成金を上積みし、若いフィジシャン・サイエンティストの支援に充てることで、がんやアルツハイマー病などの治療のブレイクスルーを生む可能性がある。

教育機関がいまできること

大学などの高等教育機関にも取り組める対策はある。従来の医学学位しか取得できない学校は、フィジシャン・サイエンティスト養成プログラムを設けるべきだ。優秀な若い人材が集まり、学校にとってもメリットがある。

わたしが所属するニューヨーク工科大学オステオパシー(整骨医学)部は最近、オステオパシー学位と博士号の両方を取得できる7年制プログラムをスタートさせた。

フィジシャン・サイエンティストは、科学理論と臨床医学を橋渡しする存在だ。わたしたちには、その地位向上に努める義務がある。

カート・アムスラー|KURT AMSLER
ニューヨーク工科大学オステオパシー(整骨医学)部の生物医学教授。医学博士。



https://www.m3.com/news/iryoishin/666734
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
自民党PT、時間外労働上限「慎重に設定すべき」
取りまとめを承認、個別事項は今後も議論
 
レポート 2019年3月20日 (水)配信水谷悠(m3.com編集部)

 自民党厚生労働部会医師の働き方改革に関するプロジェクトチーム(PT、座長は羽生田俊参院議員)」は3月20日、PTとしての取りまとめ案を議論し、承認した。近く根本匠厚生労働大臣に提出する。医師の時間外労働の上限時間について「上限時間ありきで改革を進めるべきではなく、患者目線、医療安全、医療の質の確保を優先し、慎重に検討したうえで設定すべき」などとする内容で、羽生田氏は4月以降も議論の場を設ける考えを示し、「タスク・シフティングや、病院の中でどういうシステムがつくれるか、市や県の制度上の問題点なども着手していきたい。できる限り並行して動いていきたい」と述べた。

取りまとめは以下の通り。

 本PTは、政府による「働き方改革実行計画」を踏まえ、医師の働き方改革に関し、本年3月末までに方向性を打ち出すために昨年1月31日に設置された。各種団体等からのヒアリングを始め、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」の検討状況の報告を受けるとともに議論を重ねて来た。

 医師の働き方改革は、①医師の健康の確保②地域医療の適正な確保という二本の柱を基本に検討することを確認した。

 昨年12月18日には、当直翌日の勤務軽減や勤務間インターバルの確保、地域医療を確保するための医療機関への財政支援など医師の健康の確保と地域医療の確保を両立するための対応等を求める中間提言を取りまとめ、政府に要請を行った。この中間提言の各事項については、その後の厚生労働省の検討会においても議論されるとともに、来年度政府予算においても必要な経費が盛り込まれているところである。

 本来、医師の時間外労働の上限時間は、どのような上限時間が制度上設定されようとも具体的な対応を検討・実行したうえでその効果を基に時間を設定することが望ましい。上限時間ありきで改革を進めるべきではなく、患者目線、医療安全、医療の質の確保を優先し、慎重に検討したうえで設定すべきである。

 この対応には①医師でなければできない業務②他の職種へ移管できる業務③病院のシステム及び地域の制度などの見直しが必要な業務に分類し、それぞれの項目を丁寧に検討し対応して行くことが必要である。また時間外労働の発生要因の一つに、国民の医療や医療保険への充分な理解、医療機関への正しいかかり方などを啓発・教育する必要性と国民の意識改革の必要性を確認した。また働き方改革を実行していくうえでの基本は医療安全であり、医療安全を基本に推進されなければならない。

 医師のみならず医療機関で働くすべての職員の勤務環境の改善が重要であり、ワークライフバランスを中心とした柔軟性のある働き方を実行する。また種々の検討事項については、必要があれば法律改正も含めて検討する。ICT の活用は医療者の時間外勤務の改善に有用であり十分な検討をする必要がある。

 また働き方改革については、勤務医だけでなく、地域医療を支える診療所の医師など医療機関の管理者についても適切に取り組まれる必要があることに十分留意する必要がある。

 働き方改革を実行するためには相応の財源が必要であり、医療者の健康確保、地域医療の確保、人材の確保、タスクシフト、ICTの推進、国民の意識改革等々のための充分な財源の確保を強く要望する。またこれからの5年間に働き方改革を進めて行くためには丁寧な議論が必要であり、本PTで引き続き検討する。

引き続き検討が必要な事項

○医師の健康の確保
 ・医療安全を基盤として、医師の健康をしっかりと確保する
 ・連続勤務時間の規制と勤務問インターバルの確保
 ・健康確保措置の確実な実行
 ・研鑽・研究を妨げることのないような、医師本人の希望や働く意欲を十分考慮した柔軟性のある制度の実現
 ・医師の健康と地域医療の両立を担保できるような上限時間の設定
 ・国民への医療機関へのかかり方の啓発

○地域医療の適正な確保
(1)医師でなければ行えない業務あるいは医師が行うべき業務
 ・応招義務の法的解釈の明確化
 ・研讃や研究の扱いの整理
 ・医療安全に配慮したタスクシェアの実行
 ・医師でなければできない業務と移管可能な業務の整理

(2)医師以外の医療職に業務移管、いわゆるタスクシフト、できる業務
 ・現行法律上可能な行為の確実な実行
 ・医療安全を前提とした業務移管の可能性の検討
 ・医師事務の軽減の為の対応策と検証
 ・業務移管される側の負担増への対応

(3)それぞれの医療機関内やその地域での制度やシステムに関わる業務
 ・過不足無き国民(患者)への診療(医療)提供体制の構築
 ・国民(患者)から見た医療の質の向上
 ・国民の医療機関のかかり方の啓発
 ・複数主治医制の検討と国民の意識改革
 ・副業・兼業の際の労働時間の取扱の整理
 ・地域医療資源の集約化の検討
 ・救急搬送の適正化の検討
 ・医師の将来需給を検討しつつ適正な医師数及び医師養成数の検討と検証
 ・医師養成システム及び専門医の適正な検討
 ・地域枠を含めた医学部定員数及び医師数の適正数・適正配置や将来推計の検討と検証
 ・医学の進歩・研究を阻害することのない体制の検討
 ・女性医師及びワークライフバランスに適した支援体制の検討

○財源の確保
 ・タスクシフトとタスクシェア等を行う際の人員増加や環境整備・体制構築の為の支援
 ・AIや事務軽減に資するシステム整備導入に伴う機器や設備の支援
 ・「医師の健康の確保」「地域医療の適正な確保」「女性医師支援」に資する為の財源確保



https://news.yahoo.co.jp/byline/yamadajun/20190320-00118973/
本当に医者が死なせたのか?「人工透析中止」問題で続く“偽善報道”への大いなる疑問  
山田順 | 作家、ジャーナリスト、出版プロデューサー
3/20(水) 17:59 Yahoo ニュース

「人工透析中止」により患者が死亡した問題が、大きな波紋を呼んでいる。この報道を始めた毎日新聞は、3月20日付の記事で「『再開要請』聞き入れず、都が認定 病院を指導へ」としている。 

 私は、3年前に腎臓を悪くして大きな手術をした経験があるので、この問題を注視してきたが、当初から報道がおかしいと感じてきた。

 それは、ほとんどのメディアが、ともかく命はなによりも大切、医者は患者の命をどうしても助けるべきだという思いにとらわれすぎているからだ。もっと、「死」という現実を直視し、医療とはなにかと真剣に考えなければならない。

 ところが、これまでの報道を見ていると、ほぼどのメディアも医療側に問題があったという視点でしか報道していない。舞台は、東京都・公立福生病院。ここで、昨年、人工透析治療の中止を希望した女性患者(44)が死亡したことが問題の発端だが、その患者さんは死の前日、透析再開を希望したという。しかし、透析中止(見合わせる)に際しては、すでに意思確認書を書いていて、夫もその意思に同意していたという。

 となると、再開を希望した死の直前の状態がどうだったかは別として、中止の意思は明確だったと考えざるをえない。透析の中止は、即「死」を意味する。それをわからずにサインする人間はいない。

 したがって、この患者さんは「死にたい」と願ったと思うほかない。その願いを、医療側は透析の中止で叶えたのだから、このどこに問題があるのだろうか?

 日本では、「安楽死」は認められていない。ただ、終末期医療の停止による「尊厳死」は認められている。したがって、今回、医師は患者の意思を尊重して、尊厳死を受け入れたことになる。

 ところが、毎日新聞が告発報道したため、その後の報道はすべてそれに引っ張られてしまった。以下、ざっと挙げると、ほぼどのメディアも医療側を非難している。

「人工透析中止、死への誘導ではないのか」(神戸新聞)、「自殺幇助に近い」(テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』コメンテーター玉川徹)、「医師の判断で透析患者を殺してもいいのか」(プレジデントオンライン、沙鴎一歩)、「茂木健一郎氏『看過できない』透析中止問題で持論述べる」(日刊スポーツ)、「透析患者の僕だから言える『透析中止事件』の罪」(ダイヤモンドオンライン、竹井善昭)、「人工透析中止 徹底検証が求められる」(北海道新聞)----etc.

 これらの報道は、私に言わせると、いずれも“偽善報道”だ。“エセヒューマニズム”である。なぜなら、患者の意思が「死にたい」にあるとすれば、医者はそれを無視して、最期まで生かさなければいけないと言っているのと同じだからだ。

 もちろん、いまとなれば患者の意思を確かめる方法はない。しかし、死の前日、痛みと苦しみのなかで再開を訴えたと想像すると、それ以前の意思のほうを尊重すべきだろう。それとも、意思確認書はただの紙きれに過ぎないのか?

 意思確認書は、いまではどこの病院でも用意されていて、終末期医療に関してどこまで延命治療をするか、患者の意思を尊重するようにつくられている。患者は、悩み抜いた末に最終的な結論として、これにサインする。したがって、医者がそれを逸脱した医療をすることはありえない。

 もちろん、医者の使命は最善を尽くして患者を救うことである。しかし、「救うこと=生かすこと」ではない。どんなに治療しても救うことができない病気がある。それが、腎機能の慢性的な低下で、最終的な救命方法は腎移植である。

 これまでの報道を見ると、病院側に説明不足があったり、担当外科医の透析技術に問題があったりしたことも指摘されている。また、日本透析医学会が示したガイドライン(これは高齢の終末期患者に対してのもの)に沿っていなかったこともあるかもしれない。

 しかし、これらはいずれも、この問題の本質ではない。この問題の本質は、患者の意思が明確かどうかの一点にある。前記したように、透析中止は、死を意味する。患者も夫も、透析を中止することが死を意味することを知らなかったはずがない。それでも、それを望んだのは、苦しみに耐えてどうしても助からない命を生きるより、死を選んだほうがいいと考えたからだろう。その意思は尊重しなければならない。

 欧州諸国が、尊厳死ばかりか安楽死まで認めるようになったのには紆余曲折がある。安楽死先進国とされるオランダの場合、安楽死を拒否された寝たきり患者が、それなら絶食をして餓死すると宣言、苦しみぬいて死んだことが、全面解禁の引き金になった。人には自分の人生を自分で決める権利がある。死を選ぶのもその権利の一つというのが、安楽死合法化の背景にあった考え方だ。

 つまり、オランダでは死にたいという意思を持った患者を無理に生かし続けたことが問題視されたのである。

 ところが、日本ではメディアが尊厳死すら認めようとしない。人間が人間らしく死ぬことを許さず、心も体もボロボロになるまで、医療側に治療を続けろと強制する。メディアは、本当に人間を尊重しているのだろうか?

 日本の人工透析には、大きな問題点がある。それは、これが腎移植の「つなぎ治療」であるにもかかわらず、最終的な延命治療になっていることだ。言い方は悪いが、日本は「透析天国」(透析患者数が諸外国に比べて圧倒的に多い国)である。しかも、透析患者数は年々増加していて、2016年には全国で32万9609人にも上っている。

 その原因は、腎移植がほとんど行われていないこと、また透析に保険が効くこと、透析が病院と製薬メーカーの利権になっていることにある。

 それを考えると、透析でしか生きるための選択肢が与えられていない日本の腎臓病治療のあり方を問題にするほうが、メディアの本来の役割ではないかと思う。

「透析天国」が解消され、腎移植が普及すれば、今回の患者さんも助かった可能性がある。



https://www.medwatch.jp/?p=25474
地域住民同士の互助を進め、医療・介護等の専門家の知恵も借りて「地域づくり」進めよ―厚労省・大島老健局長  
2019年3月19日|介護保険制度 MedWatch

 未曾有の少子高齢化を迎える我が国においては、今後、介護をはじめとする「地域づくり」を、市町村が地域住民を巻き込んで進め、これを国や都道府県がバックアップしていくことが必要となる。このためには、地域の高齢者に「通いの場」などに集ってもらうこと、地域住民同士の助け合い(互助)を進めていくこと、医療・介護・福祉の専門家に知恵を出し合ってもらうことが重要となる―。

 厚生労働省老健局の大島一博局長は、3月19日の「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」で、このような内容を盛り込んだ「これからの地域づくり戦略 3部策―集い・互い・知恵を出し合い―」(1.0版)を詳説しました(関連記事はこちら)。

 市長村や都道府県との協議を通じて、逐次、バージョンアップ(版を改める)していくことになります。
 
ここがポイント!
1 まず、地域の高齢者などに「通いの場」に集ってもらう
2 地域の高齢者の日常生活を支援する「互助」の基盤づくりを進める
3 医療・介護・福祉の専門家の知恵を借り、制度でカバーしきれない課題を解決する

まず、地域の高齢者などに「通いの場」に集ってもらう

2025年度には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急速に増加していきます。その後、2040年にかけて、高齢化のスピードは鈍化するものの、社会保障の支え手となる現役世代人口が急速に減少していくことが分かっています。減少する若人(現役世代)で、増加する高齢者を支えなければならず、介護保険制度をはじめとする社会保障制度の基盤は極めて脆くなっていきます。

このため、介護保険制度における給付と負担の見直しを進めると同時に、「介護予防も含めた健康づくり」「認知症高齢者対策」「質の高い介護サービス提供」などを進めることが重要となりますが、厚労省では「介護も生活の一部であり、自治体が生活の課題を広く把握し、解決することが今後、極めて重要になってくる」と捉え、介護分野にとどまらない「地域づくり3部策」を作成したものです。

 3部策は、名称どおり(1)集い(2)互い(3)知恵を出し合い―の3つのパートで構成されています。

まず(1)「集い」の部では、体操などの「通いの場」を数多く設置することを提案しています。歩いて5-10分程度の身近な場所で、軽い体操をしたり、お茶を飲みながらお喋りをする場を設置し、そこに住民がお客さんだけでなく、ホストとして主体的に参加するものです。
 
 すでに各地でさまざまな「通いの場」が設けられていますが、日本医療研究開発機構(AMED)の研究によれば、「通いの場への参加者」のほうが、そうでない方に比べて虚弱の割合が低いことが明らかになっています。虚弱が進めば、要支援、要介護状態となり、併せて医療の必要性も高まるため、医療費・介護費が高まる(保険料の上昇につながる)ことはもちろん、住民のQOLが大きく低下してしまいます。健康づくりのためには、まず「通いの場」により多くの高齢者に来てもらうことが重要です。
 
こうした「通いの場」の整備費用は、2018年度から実施されているインセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)の対象にもなるため、各地でより多く設置することが求められます。

もっとも、「通いの場」が地域の高齢者に知れ渡り、「行ってみよう」と思うようになるまでには時間がかかります。「脳の健康教室」(タブレット端末を使用して指先を動かすトレーニングを実施)や「もの作り教室」(木工作品作りを実施)などを展開する熊本県長洲市でも、2009年の事業実施から3年間は参加人数が低迷していましたが、粘り強く事業を継続し、2017年には参加者は当初の10倍に急増しています。
 
また「通いの場」の先行事例から学べるポイントして、▼手軽・気軽・身軽(自治体や住民の負担が大きくならないように)▼住民参加型―の2点があげられそうです。後者については、茨城県で実施している「シルバーリハビリ体操指導士養成講座」が参考になるでしょう。専門家の研修を受けた住民を「指導士」として茨城県知事が認定し、地域住民に対応の普及を図る仕組みで、指導士は▼1級:講習会の講師を務める▼2級:地域活動のリーダーを務める▼3級:地域活動の実践に当たる―の3区分あり、例えば「3級の人は地域住民に体操を教えるとともに、2級や1級を目指す」ことで地域の活性化が図られているといいます。

さらに東京都西東京市では、医師会・歯科医師会・薬剤師会と協働で「フレイルチェック」等を「通いの場」においてセットで実施。虚弱高齢者の早期発見につなげると同時に、一般に「地域参画が難しい」と考えられている男性高齢者が「フレイルサポーター」として地域活動に積極的に参加するという大きな成果が得られています。

また、山口県防府市のように、「通いの場」を、例えば商業施設(スーパーマーケットやショッピングモールなど)に併設することで、「買い物支援」サービスなどを実施することも重要でしょう。「買い物のついでに体操教室にも寄っていこう」と感じ、より通いやすくなることが期待できる(通ってもらうことが重要)とともに、第2部の「互助」の基盤づくりにもつながります。


地域の高齢者の日常生活を支援する「互助」の基盤づくりを進める

次に(2)「互い」の部では、地域の高齢者を支える「互助の基盤」づくりを提案しています。

「介護が必要となっても、可能な限り住み慣れた地域での生活を可能とする」ことを目指し、各地域で地域包括ケアシステムの構築が進められています。▼住まい▼医療▼介護▼予防▼生活支援―を一体的に提供するものですが、例えば、「ごみの分別」「電球の取り換え」「役所での諸手続き」「病院への付き添い」「買い物支援」などは、オフィシャルなサービス(公助)よりも、身近な地域住民の助け合い(互助)により馴染みがあるでしょう。

こうした互助の取り組みを自治体がサポートしていくことが、地域包括ケアシステムの構築を含めた「地域づくり」において欠かせないと厚労省は指摘しています。

例えば、▼生活支援コーディネーター(SC)の養成やSC協議体の設置▼介護ボランティアの養成▼認知症サポーター・チームオレンジ(仮称)▼認知症地域支援推進員▼住まいの確保支援・生活支援―などの「互助基盤」を作成し、展開することなどが考えられます。
 
このうち「認知症サポーター・チームオレンジ(仮称)」は、厚労省が2019年度からの構築を目指している仕組みで、認知症サポーター研修を修了した人が、ステップアップ研修を受講し、チーム(チームオレンジ)を組んで、認知症の方が専門的なサービスを受けられるようになるまでの「空白期間」を支援するものです。
 
また「住まいの確保支援」は、京都府京都市や福岡県福岡市で進められているもので、社会福祉協議会などの「地域の支援団体」と不動産業者等が連携し、例えば「高齢者の見守りサービスを社会福祉協議会が行うので、安心して部屋を貸せる」(大家さんにとっては独居高齢者の健康状態などを考え、部屋を貸すことをためらうケースも少なくない)環境を整えるといった取り組みなどです。

もちろん、新たな「互助の基盤」づくりには、大きな障壁があります(住民自らに「助け合おう」という意識をもってもらうところから始めなければならない)。このため大島老健局長は、「まず生活支援コーディネーターを育成し、宮城県多賀城市のように、例えばお茶のみスペースを設けた街の商店について、地域の集いの場や見守りの場として機能する『お宝』であることを再発見するなどの取り組みから進めてはどうか」と提案しています。
 
こうした互助の取り組みも、前述した「インセンティブ交付金」の対象となるケースがあります。


医療・介護・福祉の専門家の知恵を借り、制度でカバーしきれない課題を解決する

 さらに(3)「知恵を出し合い」の部は、地域の医療・介護・福祉の専門家が集い、制度ではカバーしきれていない地域課題の解決を求めるものです。

この点、介護保険制度には「地域ケア会議」が位置付けられ、「個別事案を積み上げ、地域課題の解決につなげる」ことが求められていますが、「うまく地域ケア会議が機能しない」ケースも少なくないようです。厚労省はこの背景には、▼会議の目的などが共有されていない▼開催数が少なく、経験が蓄積されていない▼個別ケースの検討に終始してしまっている―という課題があると分析。

地域ケア会議の活性化に向けて、▼会議の目的を「その人(要支援者・要介護者)にとって普通の生活を取り戻すために、何ができるのか」という点に絞る(目的の明確化)▼市町村が主体的に地域ケア会議を数多く開催する(まず、やってみる)▼各種専門職の知恵とともに、介護保険サービス以外の資源(上述の生活支援コーディネーターなど)も広く活用する▼対応が欠けている施策については、市長村が制度化を行う―ことが提案されました。

例えば、愛知県豊明市や奈良県生駒市では、地域包括ケア会議の目的を可能な限りシンプルにし、明確化しています(「本人の望む自立は何か」→「自立阻害要因は何か」→「現在のサービス提供体制で解決できるか」など)。
 
また埼玉県和光市や長崎県佐々町では、日常生活圏域ニーズ調査(個別高齢者を訪問するなどした、形だけではないニーズの掘り起こし調査)に基づいて、地域住民のニーズを詳細に把握し、これを介護保険事業計画に反映させることで「ニーズにマッチした介護サービス体制の構築」が可能になっています。

もっとも、こうした取り組みをすべての市町村で今すぐに実施することは難しいでしょう。大島老健局長は「まず(1)の『集い』、(2)の『互い』を全市町村で進めてもらい、(3)の『知恵を出し合い』は余力のある市町村から実施してもらう」という考えも示しています。なお(3)の「知恵を出し合い」に関しては、都道府県による市町村のバックアップも重要な要素となります。

 
 なお、こうした「地域づくり」を進めるためには、市町村の体制整備や地域の風土づくりも重要となります。大島老健局長は、例えば▼担当課長・係長に、地域づくりに「向く人」を「長く」配置し、成果評価も長い目で行う▼「地域のことは地域で解決する」という自主性・自律性の認識を地域住民にも持ってもらう▼医療・介護の専門職や職能団体との良好な関係を構築する―ことなどを提案。さらに、上述したインセンティブ交付金や地域医療介護総合確保基金を活用することで「大規模な事業実施も可能となる」ことを紹介しています。

厚労省では、今後、市町村や都道府県と協議を行い、逐次、3部策のバージョンアップを行い、「地域づくり」の推進に役立ててもらいたいと期待を寄せています。



https://www.nikkei.com/article/DGXMZO4279801022032019L60000/
地域医療維持へ日光の挑戦 病院連携、市の調整カギ
(北関東フォーカス)
 
ヘルスケア 北関東・信越
2019/3/22 22:00日本経済新聞 電子版

栃木県日光市や地元の病院、診療所が4月に地域医療連携推進法人を設立する。人口減と高齢化で地域の医療ニーズの変化が見込まれるなか、連携して地域医療の維持を目指す。病院間の役割分担をはっきりさせるのに加え、人材確保に共同で取り組むなどの目標を掲げる。ただ、母体の異なる医療機関が足並みをそろえるのは容易ではない。事務局を置く市の調整力が問われそうだ。

地域医療連携推進法人は2017年度に始まった新しい制度だ。設立する法人「日光ヘルスケアネット」は北関東で初、全国でも8番目となる。県医師会の太田照男会長は制度創設を知り、「日光地域にうってつけの仕組みだ」と直感したという。背景には市の厳しい医療環境がある。

少子高齢化の進展で市人口は45年に15年比で4割強も減る一方、75歳以上の割合は3分の1に達する見通し。県内の市町のなかでも人口構成の変化は著しく、急性期の患者の減少とがんや脳卒中といった疾患の回復期や通院が必要な慢性期の患者の増加が予測される。

日光市は平成の大合併で全国でも3番目に広い市となったが、市内に500床を超える総合病院はない。医療需要の変化には独協医大日光医療センターや今市病院など7つの民間病院が連携して対応する必要がある。足並みがそろわずに患者の奪い合いとなれば、「共倒れの可能性もある」と県医療政策課は危機感を募らせた。

急激な人口減は医師や看護師など地域医療の担い手確保にも痛手だ。鹿沼市も含めた県西地域で働く医師や看護師の人数(人口10万人当たり)は、いずれもすでに県平均を大きく下回っている。各病院ごとの採用では限界があり、奨学金の共同設立など連携を深める必要もあった。

県や医師会は18年1月、市や7病院などを集めた勉強会を始めた。当初は参加病院から「経営の自由度が奪われる」と不安視する声も上がったが、協議を重ねて懸念を払拭。1年余りで法人設立にこぎ着けた。28日の知事認定を経て、4月1日付でまず市と8病院3診療所が参画する形で発足する。

日光ヘルスケアネットの事業目標は患者の容体に応じた病院間の紹介・逆紹介に始まり、共同での採用・研修、医薬品購入、病床の融通など多岐にわたる。ある病院関係者は「患者の紹介・逆紹介については、当院などですでに取り組んでおり比較的スムーズに拡大できる」とみる。

その他の分野については病院経営に直結するだけに、実現までは曲折が予想される。人材確保などは現時点では全くの白紙で実施までに数年はかかる見通し。病院関係者のなかには「具体化は難航するのではないか」といぶかる向きもある。

法人設立を主導した県は認可者のため今後はオブザーバーに回り、協議のかじ取り役は法人の事務局を置く日光市が担うこととなる。ただ、公立病院を持たない市は医療行政に関する専門人材を欠く。県は3月末に退職する国保医療課長を事務局長として派遣するなどして支援する。

県医師会の太田会長は「日光モデルがうまくいけば、県内の他地域でも応用できる」と期待を寄せる。法人設立にとどまらない連携深化の成果を得られるのか、県内の医療関係者の注目も集まるなかの始動となる。

(宇都宮支局 上月直之)



https://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201903/CK2019032202000151.html
【茨城】
なめがた地域医療センター 入院・救急受け入れ縮小へ
 
2019年3月22日 東京新聞

 JA県厚生連が四月から、運営する土浦協同病院なめがた地域医療センター(行方市)の病床数を五分の一に減らし、診療時間外の救急受け入れをとりやめる方針を示している。厳しい経営状況が理由。近く正式決定の予定だが、鹿行地域の医療の中核でもあり、地域医療への影響に不安の声が上がっている。(水谷エリナ)

 JA県厚生連によると、センターは二〇〇〇年六月に開院。内科や外科、産婦人科など診療科目は二十五科、病床数は百九十九床を数える。重症の救急患者に対応する三次救急医療機関として、救命救急センターに準ずる「地域救命センター」に県が指定している。

 経営的には開院から黒字はなく、本年度の赤字見込みは約五億円、累計で約六十億円に上る。医師確保も難しく、三次救急の受け入れができていない状況にもある。

 このため、四月から病床数を四十床に減らし、夜間や休日の救急受け入れをやめる。縮小分は本院の土浦協同病院(土浦市)で対応し、センターの外来は維持する。担当者は「土浦協同病院の強みを生かしたい」と説明する。

 一方、縮小方針に対し「事前の説明がなく驚き、いかがなものかと憤慨している」と本紙の取材に語るのは行方市の鈴木周也市長。「命に関わる問題で、地域医療の崩壊につながる恐れがある」と懸念する。

 鈴木市長によると、鹿行地域の医療においてセンターは大きな役割を果たしており、体制を維持してほしい思いは周辺の五市長間で共通しているという。今後の対応には「五市で県やJA県厚生連などに要望を続け、国にも要望したい」と話す。

 県医療政策課の担当者は「JA県厚生連との協議内容を踏まえ、対応を検討したい」としている。

意見交換会であいさつする額賀福志郎衆院議員(右から2人目)=行方市のなめがた地域医療センターで

◆機能縮小方針受け周辺市長ら 医療体制確保で協議へ
 土浦協同病院なめがた地域医療センターの機能縮小問題で、鹿行地域の市長や国会議員、県議が「鹿行地域医療に関する対策会議」をつくり二十一日、センター内でJA県厚生連と意見交換した。

 意見交換では、地域住民が安心できる医療体制をとれるよう、二〇二〇年三月末までに具体的な支援策をまとめることが決まった。JA県厚生連とは、土浦協同病院や地域の医療機関と連携して、現在の医療体制を維持できるよう協議することで合意した。

 対策会議は鹿嶋、潮来、神栖、行方、鉾田の五市の市長と衆院議員一人、県議三人で構成。座長には行方市の鈴木周也市長が就任した。今後、県や国などの関係部署の職員も加える方針という。(水谷エリナ)



https://www.medwatch.jp/?p=25193
わずか4か月で「地域医療支援病院」の基準満たした京都中部総合医療センター  
2019年3月20日|GHCをウォッチ MedWatch

 人口14万人弱の京都府南丹医療圏を支える急性期病院の京都中部総合医療センター(京都府南丹市、464床)。辰巳哲也病院長のリーダーシップの下、2019年1月から「地域医療支援病院」になりました。承認の背景には、短期間で医療連携を一気に推し進めた「驚異の4か月」があります。

 地域医療支援病院は、「かかりつけ医を支援する病院」として、1997年の医療法改正時に創設されました。診療所などで対応しきれない重症患者の受け入れや、高額な医療機器を共同利用できる機能などが期待されています(趣旨、役割、承認要件の詳細は下図参照)。

 二次医療圏当たり一つ以上存在することが望ましいとされている地域医療支援病院ですが、南丹医療圏は京都府で唯一、地域医療支援病院がない二次医療圏。同センターは、南丹医療圏で唯一、施設基準を満たす200床を超える急性期病院だったのです。

 辰巳病院長は、地域医療支援病院の認定に向けた取り組みを本格化させた2017年11月当時を、「僕はあきらめない人間なので、やると決めたら絶対にやる。今できないという人間は、来年もできない」と振り返ります。なぜなら、地域医療支援病院の認定を宣言した2017年度の半分が過ぎた2017年9月時点で、紹介率は45.7%(上図の承認要件③の目標50%)、逆紹介率は56.5%(同70%)。とても年度内に基準を満たすのは難しい状況だったからです。

 こうした状況下、同センターは限られた時間の中で、どのようにして地域医療支援病院の基準を満たすことに成功したのか――。辰巳病院長へのインタビュー記事も交えて、その全貌に迫ります。

 詳細は以下の記事タイトルと主なポイントをご確認いただき、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのホームページに掲載した事例紹介記事(『「地域医療支援病院」認定を決めた「驚異の4か月」舞台裏』)をご覧ください。

「地域医療支援病院」認定を決めた「驚異の4か月」舞台裏
今できなければ来年もできない
不安が希望に変わった瞬間
変わり始めた院内
増収効果5000万円
【病院長インタビュー】「患者のため」に勝る原動力はない
https://www.ghc-j.com/case/consulting/case-1905/



https://www.m3.com/news/iryoishin/667185
シリーズ 真価問われる専門医改革
23のサブスペ連動研修、「4月開始」は見送り
厚労省・医師専門研修部会、「専攻医の不利益回避」は必要
 
レポート 2019年3月22日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省は、3月22日の医道審議会医師分科会医師専門研修部会(部会長:遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)で、4月から開始予定だった日本専門医機構認定の連動研修について、「開始を見送るべきではないか」と提案、了承された。内科、外科、放射線の3つの基本領域で、計23のサブスペシャルティ領域との連動研修が予定されていた(資料は、厚生労働省のホームページ)。

 参考人として出席した同機構理事長の寺本民生氏や、日本内科学会と日本外科学会の代表は、機構認定の連動研修を認めるよう要望したが、委員からは「専攻医の不利益にならない手立てが必要」という意見は出たものの、厚労省提案を認めた。

 寺本氏は本部会後、「4月からの連動研修については、プログラム通りに動いていただき、日本専門医機構としては(サブスペシャルティ領域との連動研修が)認められた段階で、追認できるようにデータを蓄積していきたい」と語った。早急に専攻医や研修の責任者らに電子メール等でその趣旨を伝える方針。3月28日には日本専門医機構の社員総会が予定されており、遅くともそれまでには対応する。今後、同機構は蓄積したデータを用い、サブスペシャルティ領域や機構認定の連動研修の在り方を検証するとともに、本部会で了承を得ることを目指す。


(2019年3月22日の「医道審議会医師分科会医師専門研修部会」資料)
 卒後2年間の医師臨床研修が国の制度であるのに対し、2018年度からスタートした新専門医制度は、日本専門機構が運営する制度。新専門医制度が地域医療に影響する場合などに、国が同機構と基本領域を担う18学会に意見を言える仕組みは、2018年の医師法改正で新設された。サブスペシャルティ領域でも専門医数は、消化器内科は約1万4000人、循環器内科は約1万2500人であるなど、基本領域に匹敵する規模の領域があり、その在り方は地域医療に影響を及ぼす可能性が高い。

 新専門医制度は、基本領域とサブスペシャルティ領域の「二階建て」。連動研修は、基本領域の研修の一部に、サブスペシャルティ領域の研修を組み込み、トータルの研修期間を短縮するのが狙い。4月からの連動研修開始が見送られたのは、連動研修の在り方が問題視されたのではなく、そもそもサブスペシャルティ領域として何を認めるかが明確になっていないと判断されたため。

 日本専門医機構は、「サブスペシャルティ専門研修制度認定のための基準」(3月15日付)を本部会に提出したが、厚労省医政局医事課長の佐々木健氏は、「根拠を持った、エビデンスベースの議論ができるような状況にあるかを考えてもらいたい。私はそうした状況にないと思っており、このままで進めると、地域医療への影響について、自信をもって大丈夫と言うことはできない。実際に研修を受けている専攻医の不利益をどう回避するかを併せて考えていくことを前提に、もう少し立ち止まって議論すべきではないか」と厚労省提案の理由を説明した。

 サブスペシャルティ領域の在り方は、前回の本部会でも問題視する声が出ていた(『「サブスペ、乱立は避けるべき」、一部の領域に不要論』を参照)。寺本氏は3月18日の記者会見で、23領域については連動研修の開始を認めてもらう方針を語っていたが、関係者が納得できるデータ等を示すに至らなかった(『23のサブスペシャルティ領域、厚労省審議会での「追認」目指す』を参照)。

 厚労省「機構はサブスペの状況を把握しているのか」
 寺本氏は、「質を担保しつつ、早期に専門医を社会に送り出すのが使命であり、その意味で連動研修を組み込んだ研修プログラムを作った」と説明。内科ではJ-OSLER、外科ではNCDという症例登録システムがあることから、連動研修の管理も可能であるなどと説明し、4月からの連動研修開始を求めた。日本専門医機構のサブスペシャルティ領域検討委員会委員長の渡辺毅氏も、「全てが連動研修ではない、また既に手を挙げている専攻医がいる」と述べ、「連動研修においては、サブスペシャルティ領域の研修が基本領域の研修を脅かす可能性がある」といった批判も当たらないとした。

 これに対し、委員からは連動研修に反対、もしくは懐疑的な意見が大半を占めた。日本精神科病院協会常務理事の野木渡氏は、「考え方が逆。連動研修ありきで作るよりも、サブスペシャルティ領域に行った時に専攻医が優秀だったら、(研修を)早めに切り上げることができるようにすればいいのではないか」と述べたほか、「消化器内科など分かりやすいものはいいが、それ以外は見直すべき」と指摘し、老年病などをその例として挙げた。

 長野県知事の阿部守一氏は、「今後、どんな専門医が必要なのかをしっかり考えて養成していくことが必要。地域に必要なのは、専門分化した医師ではなく、ジェネラルな医師であり、制度が適合しているのか」と問いかけた。

 一方で、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科地域医療人材育成講座教授の片岡仁美氏は、「混乱を避ける必要がある」と述べ、23のサブスペシャルティ領域について、「ある程度、理解でき、歴史的な事実もある。老年病も大切な領域」と連動研修の開始を支持。

 その他にも、委員からさまざまな意見が出たが、厚労省医政局医事課は、この4月から都道府県が医師確保計画の策定を始めるなど、「サブスペシャルティ領域の在り方は、都道府県にとって非常に大きな問題。基本領域と同様に、サブスペシャルティ領域についても、どのくらいの専攻医がどのくらいの期間、どこで研修するかについて、法律上、都道府県に情報提供しなければいけない。日本専門医機構としてそれを把握しているかを聞かせてもらいたい」と質した。

 寺本氏は、「外科では、どのサブスペシャルティに行くかは把握しており、日本専門医機構は各領域から報告いただいている。内科でも、各学会でそれを把握している。それをわれわれの方に報告してもらう。それで数値は出てくるだろう」と回答。

 そこで議論を仕切る形で、強い口調で発言したのが佐々木課長だ。

 「既に専門研修を始めている方のことを一番大事に考えなければいけないが、今回の新専門医制度が1年間立ち止まって考えなければならなくなった原点を考えれば、やはり地域医療への影響がどうなっていくかが非常に重要。日本専門医機構として数字を把握しているとのことなので、できればわれわれも早くそれを拝見したい。都道府県にもデータを示して、地域医療への影響についての意見を聞く時間はぜひいただきたい。われわれは国会で決めた法律を施行する立場。機構がもしまだ持っておらず、各学会が持っているのであれば、それを早急に示してもらえるのかどうか、いつ示してもらえるのか、年度内と言っても、あと1週間と少ししかない。本当にその期間で示していただき、かつわれわれが都道府県の意見を聞くことができるかどうかも考えていただき、議論していただきたい。それで4月から初めていいのか、という結論を今日は出していただきたい」

 日本専門医機構や学会の反論も通じず

 佐々木課長発言に続き、聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長の山内英子氏は、「いろいろ出ている意見をまとめ、またデータも4月までに出さなければいけない段階で、無理に初めてしまうことの方が、専攻医にとって不利益になると思う」と述べた。専攻医に配慮し、連動研修の制度ができた場合には、症例数を後付けで連動研修として認めることも保証した上で、サブスペシャルティ領域の議論を本部会で続けるべきだと主張した。

 認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏も、「連動研修の話は、ある時、突然出てきた。まだ懸念が払拭されない中で、見切り発車することは避けるべき。その後、皆が納得して認めていいという段階になってから始めるべき」とコメント。

 これらの意見に対し、日本専門医機構副理事長の兼松隆之氏は、「内科や外科では、サブスペシャルティ領域と連動研修をどのようにしていくかの話し合いをしている。長年の積み重ねがあって、ここまで来た。学会は23領域の連動研修が認められたということで、会員に通知して準備をしていると聞いている。連動研修を見送るのではなく、スタートさせることを考えてもらいたい」と求めた。

 しかし、日本医師会常任理事の釜萢敏氏は、「事務局案(厚労省案)に賛成。サブスペシャルティ領域は、関係者が納得しないと認められないことを理解してもらいたい」と返した。ただし、専攻医に不利益があってはいけないことから、「しっかりと研修の履歴を残して、日本専門医機構認定のサブスペシャルティ領域となった時に、それが生きる形にしてもらいたい」と要望。

 全国町村会副会長の棚野孝夫氏も、「時期尚早という思いはある。サブスペシャルティ領域の乱立を避け、分かりやすい形にすることが大事」と述べ、日本専門医機構がサブスペシャルティ領域候補となる102学会に、レビューシート(各学会が持つ専門医制度を確認するための書式)を送付したことを踏まえ、「辞退した学会は幾つあるのか。どのような基準で認定していくのか」と尋ねた。

 寺本氏は、「全てを認めるという意味ではなく、各学会がどんな専門医制度をやっているかをレビューシートで把握する。最終的に、サブスペシャルティ領域として認めるか否かは透明性を持って示す」と答えた。

 続いて日本内科学会の前専門部会長の宮崎俊一氏も、「相当慎重にサブスペシャルティ領域を承認したといういきさつがある。非常に長い期間で形成されたものであることを理解してもらいたい。それこそが社会に浸透したことの裏返しではないか」などと現状を説明。連動研修についても、地域医療が悪化しないよう、研修期間もフレキシブルな設計にしていることなどを訴え、開始を認めるよう求めた。

 ここで再び、佐々木課長が発言。まず「参考人の意見も貴重だが、委員の意見で決めてもらいたい」と求め、その上で次のように続けたのだった。

 「根拠を持った、エビデンスベースの議論ができるような状況にあるかを考えてもらいたい。私はそうした状況にないと思っており、このままで進めると、地域医療への影響について、自信をもって大丈夫と言うことはできない。実際に研修を受けている専攻医の不利益をどう回避するかを併せて考えていくことを前提に、もう少し立ち止まって議論すべきではないか」

 これを受け、遠藤座長が次のように提案し、異論が出ず、議論は終了した。

 「われわれは地域医療への影響を考え、厚労大臣に伝えなければいけない。データが出ておらず、十分なプロセスを踏むことができず、4月からの日本専門医機構認定の連動研修を開始することを認めていいのか、というのが、厚労省提案の一番目。二番目は、その連動研修の在り方について、基礎的な分野についておろそかになるのではないか、地域偏在を招くのではないかなどの懸念について、機構に検証をしていただきたいということ。さらに、サブスペシャルティ領域をどう考えるかという議論がまだ続くので、本部会でも検討を進める。これらが厚労省の提案であり、さらに委員からは専攻医に不利益が生じないような手立てを講じてほしいという意見があった。この案について特段、反対、意見がある方はいるか。なければ、『専攻医の不利益を回避する』という一文を入れて、厚労省の原案をこの部会の結論としていいか」



https://www.m3.com/news/iryoishin/666898
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
医師の時間外 「1860時間」に反対、厚労省に要望書提出
「医師の働き方を考える会」、署名も5500人超す
 
レポート 2019年3月22日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 医師をはじめとする医療関係者らで構成する「医師の働き方を考える会」は3月22日、医師の時間外労働の上限を「1860時間」ではなく、他の職種と同様に、過労死ライン(960時間)を目安とすることなど、4項目から成る要望書を厚生労働省に提出した。同会が実施している「1860時間」への反対署名も、5500人を超えたという。同会は3月25日にも、自民党厚生労働部会長の小泉進次郎氏に要望書を提出予定だ。

 提出後の記者会見で、同会の共同代表で東京過労死家族会で活動する中原のり子氏は、厚労省医政局長の吉田学氏宛に提出し、懇談したことを説明。「医師の過労死があってはならないが、今のこの働き方では過労死は減らないのではないか」と危機感を募らせ、過労死した遺族の苦しみなどを吉田局長に訴えたという。厚労省の検討会では、時間外労働を過労死ラインの年間960時間の2倍近い1860時間とする方向で議論されている(『医師の働き方改革、報告書取りまとめへ大詰め』を参照)。

 吉田局長は、「世の中から医師の過労死をなくそうという点では、医政局も全く同じ立場。現状の労働時間がいいとは思っていない」と受け止めたものの、「他方で地域医療は大事で、さまざまな工夫がいる」と述べ、3月末までに検討会の報告書をまとめるのは、規定路線だと説明したという。さらに、▽医学生からSNSやメールで多数意見が寄せられており、真摯に受け止めるものの、中には制度を誤解しているケースがあり、正確な情報発信に努めていく、▽今後、2024年度の時間外労働の上限規制が始まる2024年度に向けてさまざまなルールづくりが必要になるとともに、それ以前の段階でも長時間労働をなくするためのさまざまなプロジェクトを実施していく必要がある、▽在職中の医師の過労死数等について、どんなデータがあるか、把握が可能か調べてみたい――と語ったという。

「医師の働き方を考える会」 の要望書
1.時間外労働上限は他の職種と同様に過労死ライン(脳・心臓疾患に係る労災認定基準)を目安とする。
2.医療機関に宿日直許可状況など36協定の内容公開と、当直を含めた医師の就労データ収集と公開を義務付ける。
3.過労による健康被害を予防する対策については、産業医の面談に留まらず、適切な対応を行うことを医療機関に義務付けるとともに、時間外労働上限が960時間を超える状況であっても、健康被害が発生した場合の労災認定基準は960時間であることを報告書に明記する。
4.労務管理違反に対する管理者への罰則規定適用を徹底し、その監督を行い、労働者からの相談を受け付ける第三者機関を設置する。

 会見には、筑波大学医学群医学類6年生の前島拓矢氏、都内の病院に勤務する30代の産婦人科医、全国医師ユニオン代表の植山直人氏、過労死問題を長年扱ってきた弁護士の尾林芳匡氏が出席。

 前島氏は、この4月からの初期臨床研修を前に、「ちゃんと人間らしい生活ができるかが不安。時間外労働の上限は1860時間なので、過重労働させられる懸念がある。厚労省は若い世代の声を反映してもらいたい」と訴えた。専門を選ぶ際、希望の診療科があっても、長時間労働を懸念し、避けることを考える医学生もいるという現実を説明。

 産婦人科医は、今回の働き方改革で、労働時間管理等が始まること自体は一歩前進であるものの、「1860時間」については、医療安全を守る観点からも「危ない」水準であると指摘した。「長時間労働で、仲間を亡くすことは二度とあってはならない」と心情を述べたほか、産婦人科や救急など、激務とされQOL悪いイメージがある診療科に若手が来なければ、現場は一層激務に陥る「負の循環」になることが懸念されるとした。

 植山氏は、「1860時間」は、憲法上、労働基準法上で問題があるとした上で、研修医等が該当することについて、「根拠がないのではないか。EUではこうした基準が設けられていないのに、なぜ日本だけが、過労死ラインの2倍の基準なのか」と指摘した。

 尾林氏は、約30年過労死の救済に取り組んできた立場から、今の過労死水準である「1カ月当たりの時間外労働80時間」は、厚労省自身が、医学的な知見を基に定めたものであるにもかかわらず、なぜ医師だけが「1860時間」が認められるのかと問題視した。

 「自ら命を断ってしまった医師も現実に複数存在」
 要望書では、先の4項目を解説として、「医療体制を守るためとはいえ、医師という職種のみ、基準を変えることは妥当ではないと考える。働きすぎ、健康を害し、自ら命を断ってしまった医師も現実に複数存在する。生命を守ることを職務とする医師として、二度と同様のことが起こることは看過できない」と訴えている。

 現在、医師の労働時間や宿日直、各々の医療機関における36協定の締結状況などを把握していない医療機関も少なくないことから、これらの把握は働き方改革を進める上で不可欠であるため、データを収集し公開とすることも求めた。

 ただし、一部の医療機関では、960時間を超える労働によらなければ医療の安定提供ができない場合も存在すると考えるとし、このような労働状況に際しては、健康被害予防として産業医による面接にとどまらず、積極的に休息を取らせるなど、より厳重な対策を講じることを明記することを求めた。その他、▽規定時間である時間外960時間を超える勤務を行い健康被害が起こった場合には、労災とすることを明記、▽労働者である医師の保護の観点から、36協定締結時に管理者から不当な圧力がかかり長時間労働が強制されないよう医療機関を監督する、▽労働状況に関し労働者が相談できる窓口の設置、▽雇用者罰則規定の適応の徹底――などを要望。



https://www.medwatch.jp/?p=25449
消化器内視鏡など23学会・領域のサブスペ認定に理解を求める、専攻医は安心して連動研修実施を―日本専門医機構  
2019年3月18日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 新専門医制度における「サブスペシャリティ領域」(2階部分)について、内科・外科・放射線科の各基本領域から「サブスペシャリティ領域とすべき」とされた23学会・領域(後述)は、日本専門医機構がすでに「認定済」である。今後、医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」で追認してもらうべく、各学会・領域の社会的意義などについて説明し、理解を得られるよう努力する―。

 日本専門医機構の寺本民生理事長は3月18日の定例記者会見で、このような考えを述べました。

 なお万が一、医師専門研修部会での追認に遅れが生じたとしても、「遡及追認」などにより専攻医の研修に影響が出ないような対応が図られる見込みであり、寺本理事長はメディ・ウォッチらに対し「安心して連動研修に臨んでほしい」と強調しています。
 
機構がすでに認定した23サブスペ学会・領域、社会的意義を改めて医道審に報告
 新専門医制度は、「専門医の質の担保」と「国民への分かりやすさ」を基本理念として今年度(2018年度)から全面スタートしました。以下の19「基本領域」(1階部分)と「サブスペシャリティ領域」(2階部分)の2層構造となっています。

【基本領域】(1)内科(2)外科(3)小児科(4)産婦人科(5)精神科(6)皮膚科(7)眼科(8)耳鼻咽喉科(9)泌尿器科(10)整形外科(11)脳神経外科(12)形成外科(13)救急科(14)麻酔科(15)放射線科(16)リハビリテーション科(17)病理(18)臨床検査(19)総合診療—の19領域

 サブスペシャリティ領域については、「国民への分かりやすさ」という基本理念を踏まえ、日本専門医機構と基本領域学会とで「認定する基準」(整備基準)を設け、その基準に合致する学会・領域のみを認定することとなっています(例えば、地方の中核的病院で標榜されている診療科や、国民の「どこに専門医がいるのか知りたい」とのニーズの強い診療科など)(関連記事はこちらとこちら)。

 ところで、内科・外科・放射線科の各基本領域では、一部の学会・領域を「サブスペシャリティ領域とすべき」と推し、すでに日本専門医機構で「サブスペシャリティ領域とする」との認定を行っています。具体的には、以下の23学会・領域で、例えば、「消化器病」では、基本領域の「内科」と連動した研修(内科・消化器のいずれの領域でも重症な症例を経験した場合、内科と消化器病のいずれにおいても「経験済」とカウントするなど)を実施することで、より効率的な研修が可能となり、より早期に専門医資格を取得し、優れた医療を国民に提供できるようになると期待されています(連動研修はこの4月(2019年4月)からスターとします)。

【内科領域】
▼消化器病▼循環器▼呼吸器▼血液▼内分泌代謝▼糖尿病▼腎臓▼肝臓▼アレルギー▼感染症▼老年病▼神経内科▼リウマチ▼消化器内視鏡▼がん薬物療法―

【外科領域】
▼消化器外科▼呼吸器外科▼心臓血管外科▼小児外科▼乳腺▼内分泌外科―

【放射線領域】
▼放射線治療▼放射線診断―
 
 
しかし、2月22日に開催された医師専門研修部会では、この認定済の23学会・領域に対し「一部(消化器内視鏡など)、国民にとって分かりにくいものがあるのではないか」「整備基準(サブスペシャリティ領域として認定するための基準)をまず策定し、その上で認定を行うべきではないか」との意見が出されました(いわば「待った」がかかった)(関連記事はこちら)。

こうした意見を踏まえて寺本理事長は、23学会・領域の社会的意義を改めて整理し、3月22日開催予定の医師専門研修部会で「23学会・領域をサブスペシャリティ領域として認めることの必要性・重要性・妥当性」を説き、理解を得たいとの考えを強調しています(追認を求める)。

なお、これら23学会・領域については、すでに機構において「サブスペシャリティ領域」としての認定を受けています。新専門医制度では「プロフェッショナルオートノミー」の下に制度が構築され、ただし「地域医療に悪影響がある」ような場合には、厚生労働大臣の意見を踏まえて制度の見直しを行うことになり、医師専門研修部会で「まだ追認について結論を出せない」との見解が示される可能性もゼロではありません。

この場合、これら学会・領域の研修がどうなるのか気になりますが、23学会・領域の各研修プログラムは連動研修を念頭に置いて組まれていることから、仮に「未確定」であっても4月から連動研修をスタートし、後に「遡及して追認する」など、専攻医に不利益が生じないような対応が図られることになるでしょう。寺本理事長は、メディ・ウォッチらに対し、「23学会・領域で研修を受けている専攻医も、安心して研修に臨んでほしい」とのメッセージを述べています。

 
なお、新専門医制度において、初めての基本領域の研修は、基幹病院と連携施設とで、年次ごとに定められた研修プログラムに則って研修を受ける「プログラム制」が原則とされています。

しかし、地域枠出身の医師(勤務地が限定される)や、出産・育児・介護などのライフイベントによって定められた年次の研修を受けられない医師、パワーハラスメントなどを受け別の施設での研修が必要となる医師などでは、期限の定めを設けずに研修を受け、基準を充足した時点で専門医試験の受験資格を認める「カリキュラム制」の研修を選択することも可能で、2019年度には、80名程度の専攻医が当初からカリキュラム制を選択すると見られています。
 
日本専門医機構では、すでに「1か月フルタイムでの勤務を1単位とし、プログラム制研修と同等以上の単位取得等を新専門医資格取得試験の要件とする」などの方針を固めていますが(関連記事はこちら)、基本領域学会では「カリキュラム制研修の整備基準」がまだ整っていません。この点について寺本理事長は、各学会の整備基準策定は「6月頃になる」(2019年6月頃)になるとの見通しを明らかにしました。カリキュラム制の専攻医も4月から各病院研修をスタートし、「整備基準の策定後に、4月に遡って単位が認定される」(4月から整備基準策定までに経験した症例などは、すべて認定される)ことになる見込みです。



https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/opinion/orgnl/201903/560244.html
私の視点
「専門医数のシーリングは意味がない」
全国自治体病院協議会名誉会長邉見公雄氏に聞く
 
2019/3/18 聞き手:山崎大作=日経メディカル

へんみ きみお氏
1968年京都大学医学部卒。京都逓信病院などを経て、87年赤穂市民病院院長。2008 年から2018年まで全国自治体病院協議会会長を務めた。全国自治体病院協議会名誉会長、赤穂市民病院名誉院長。


 全国自治体病院協議会(JMHA)の会長として、新専門医制度について「医師の偏在を進め、地域医療に対して悪影響を与える」と指摘し続けてきた邉見公雄氏。それを回避するために、都市部の専攻医の数にシーリング(上限)を設けるよう働きかけてきたが、昨年末、その考えを変えたという。

─長年、新専門医制度が施行されると地域医療が崩壊するという主張をしてこられました。

 新専門医制度は「良い専門医を作る」「国民に分かりやすい専門医を作る」のが目的だが、その副作用として地域医療が崩壊する。その考えは今も変わらないが、これまでは東京都など医師の集まる都市部の専攻医の数にシーリング(上限)を設ければ医師の集中を緩和できると思っていた。

 だが昨年末、希望する地域での研修に外れてしまった専攻医の話を聞き、考えを改めた。シーリングで選から漏れた専攻医は、他の地域で研修するのではなく、浪人して次年度に受験したり、診療科を変えて元々希望していた地域に残っていた。シーリングさえかければ、都市部への医師集中に歯止めがかけられると思っていたが、全くそんな効果はなかった。

 各学会は「東京など都市部に所属する専攻医が、周辺の地域にローテートするので問題ない」と主張しているが、逆に地方の専攻医が東京に研修に来ている。学会の言い分は必ずしも正しくない。昨年、徳島県と佐賀県の小児科専攻医は0人だった。このような事態が続けば、当該県のその診療科は滅びる。大学に医師がいなくなって、教授にも当直が課せられるようになっては問題だ。

 我々が頭で考えていることと、当事者が考えることは異なる。我々は「住めば都」と考えてきた。今の若い医師たちは「都に住みたい」という思いが強いようだ。

─多くの症例を経験できる都市部に専攻医が集中するのはやむを得ないのではありませんか。

 職人気質の医師にとって、自分の専門領域のことだけを集中して勉強したい時期があるのは分かる。私もそうだった。勉強熱心な専攻医たちが、より良い教育が受けられる地域や施設に集まるのは当然のことだ。大学以外の場にも多くの専攻医を集めるために、1つの都道府県内に基幹施設を複数設置する試みもあるが、専攻医が集まるのは、いい指導医がいる特定の医療機関だけだろう。

 専門医の養成に当たっては、まず国がそれぞれの専門医の必要数を提示すべきだ。それに応じて学会が地域ごとの定員を定めればいい。それなら、地域住民も納得するはずだ。専門医数を絞って、その分、総合診療に従事する医師を増やす。地方では専門医よりも総合診療医の方が求められているのだから。現在、1年間に専攻医の研修プログラムに進む8500人のうち、総合診療を専攻するのは160人程度しかいない。せめて500人は超えてほしい。

─地方の医療提供体制の現状についてどう評価されていますか。

 北海道や九州の病院を訪ねると、院長や事務長が医師探しに飛び回っていて病院にいない。ダメな医者でもクビにできない状況になっている。とにかく頭数が必要だからだ。都市部と地方とで、住民は同じ保険料を支払っているにもかかわらず、地方ではまともな医療が受けられない。344の二次医療圏のうち、お産ができない医療圏が約50もある。

 都市部では医師を選べるが、地方は医師を選べない。「どんな医師でもいてくれればいい」という地域と、ドクターショッピングができるほど潤沢に医師がいる地域との差が激しすぎる。医師が少ない地域では、仮にいい専門医がいたとしても、その専門性で助かる患者は年に1人いるかどうか。むしろ、けがをしたときに縫ってくれる、吐いているときに制吐薬を注射してくれる、痛みがあるときに痛み止めを処方してくれる、そんな医師が求められる。研修医でもいい。地方はそんなに技術的に優れた医師を求めているわけではない。

─では、医師の地域偏在はどのように解決していけばよいのでしょうか。

 若い人が勉強したいというのを止めることはできない。大学入試の時点で将来働く場所を決めておくか、開業の際に地方での勤務経験を必須の条件にするか。その2つしか選択肢はないのではないか。

 大学医学部は東京都に集中している。これを一部移転し、自治医科大学方式にして全寮制で教育すればいい。東北医科薬科大学や国際医療福祉大学の医学部が新設された際には、そのような特色のある大学になることを期待したのだが……。

 とはいえ、若い人ばかりに偏在対策を押し付けるわけにはいかない。だから、ベテランになって開業する際に、地方での勤務を義務付ければいい。例えば、都市部で開業するなら、専門と関係なく離島などで 2~3年、総合診療医として働いてもらうのはどうか。地方は給与が高いことが多いので開業資金をためるのにも役立つ。

 現在、新専門医制度では、5都府県で専攻医の採用数にシーリングをかけているが、東京でも多摩地区などでは医師が不足している。都内でも全ての地域で医師が充足しているわけではない。住民人口に応じて医師を配置するという方法もあるが、鳥取県など幾つかの県の人口は東京都の世田谷区1区よりも少ない。人口密度が低い地域では医療へのアクセスが非常に悪くなってしまう。考えれば考えるほど難しい問題で、最終的には政府と国民が決めるべきことだと思う。



https://www.medwatch.jp/?p=25420
重症患者割合の向上に向け、地域連携の強化による「医師からの患者紹介」をさらに重視せよ―2017年受療行動調査(確定数)  
2019年3月18日|医療・介護行政全般 MedWatch

 入院患者の過半数、外来患者の4割り近くは「医師からの紹介」で病院を選択しており、重症患者の獲得が重要となる中では、「地域の医療機関との連携」をさらに強化する必要がある。また、入院患者が「不満」に感じる事項として「食事関連」などがあげられ、高齢の入院患者の増加に伴い「説明を受けていない」と感じる患者も1割近くいることなどを冷静に受け止める必要がある―。

 こういった状況が、厚生労働省が3月15日に公表した2017年の「受療行動調査(確定数)の概況」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(2017年の概数の分析記事はこちら)。

ここがポイント!
1 患者が病院を選ぶ際の最大の理由は「医師の紹介」である
2 入院では「食事」や「プライバシー」、外来では「待ち時間」で患者の不満大きい
3 入院患者の1.8%は「医師から説明を受けていない」と感じていることを受け止めよ
4 特定機能病院でも8%超の患者が、いわゆる社会的入院
5 特定機能病院でも、3割の患者が依然「紹介状」持たず


患者が病院を選ぶ際の最大の理由は「医師の紹介」である
 受療行動調査は、3年に一度、一般病院の患者を対象として「受療の状況」や「医療への満足度」などを調べるものです。すでに昨年(2018年)9月に概数が公表されており、重複部分もありますが、改めて調査結果を眺めてみましょう。

今般の2017年調査は、2017年10月に14万5700人(入院5万188人、外来9万5512人)から回答が得られました。患者の受診している病院の内訳は、次のとおりです。
▼特定機能病院:26.4%(入院29.8%、外来24.6%)
▼500床以上の大病院:33.6%(入院35.2%、外来32.8%)
▼100-499床の中病院:24.4%(入院22.7%、外来25.3%)
▼99床未満の小病院:8.2%(入院4.3%、外来10.2%)
▼療養病床を有する病院:7.5%(入院8.0%、外来7.2%)

 まず「病院を選んだ理由」を見てみると、入院・外来のいずれでも「医師による紹介」が最も多くなりました。外来では38.1%、入院では51.6%にのぼっています(複数選択)。

 2018年度の診療報酬改定では、入院料等の報酬体系が大きく見直され、看護配置などの「基本部分」と、重症患者受け入れ状況などの「実績部分」を組み合わせるものとなりました。急性期病棟はもちろん、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟、さらには療養病棟においても「重症患者をどれだけ多く受け入れている」かが報酬設定の重要要素となっています。今般の調査結果からは、「重症患者の受け入れには、他院からの紹介が極めて重要な要素である」ことが裏付けられています(関連記事はこちら)。

 また入院では▼専門性の高い医療の提供:25.7%▼医師・看護師が親切:25.0%—などが、外来では▼交通の便:27.2%▼専門性の高い医療の提供:24.1%—などが病院選択の重要要素となっていることも分かります(複数回答)。
 
 さらに病院情報の入手元として、入院では▼家族・知人・友人の口コミ:72.2%▼医療機関の相談窓口:25.1%▼医療機関の発するインターネットの情報:14.5%―などが、外来では▼家族・知人・友人の口コミ:70.5%▼医療機関の発するインターネットの情報:21.2%▼医療機関の相談窓口:16.4%▼医療機関・行政以外のインターネットの情報:12.1%―などが多くなっています(複数回答)。

 自院の機能等について、病院のホームページやパンフレットなどでPRすることも非常に重要な時代になっています。
 

入院では「食事」や「プライバシー」、外来では「待ち時間」で患者の不満大きい

 次に、患者の「満足度」を見てみると、全体では、入院患者の67.8%、外来患者の59.3%が「満足」と答えており、「不満」と感じる人は入院・外来ともに4.3%にとどまっています。

 病院の種類別に、「満足」と答えた入院患者の割合を見てみると、▼特定機能病院:76.7%▼大病院:74.8%▼中病院:69.9%▼小病院:67.4%▼療養病床を有する病院:63.5%—となっておいます。

逆に「不満」と答えた入院患者の割合は、▼特定機能病院:3.5%▼大病院:3.4%▼中病院:4.0%▼小病院:4.2%▼療養病床を有する病院:4.9%—となっています。

大規模な病院ほど、「満足」度が高まり、「不満」を感じる患者が減る傾向があります。これは病院選択時点ではなく、入院中の患者の見解であり、冷静に受け止める必要があります。
 
また項目別の満足度(「満足」と答えた患者の割合)を見てみると、入院では▼医師による診療・治療内容:70.7%(3年前の前回調査に比べて1.0ポイント向上)▼医師以外のスタッフの対応:70.0%(同0.4ポイント向上)▼医師との対話:65.9%(同0.7%向上)―で高く、▼食事内容:43.5%(同0.9ポイント低下)▼病室でのプライバシー保護:56.1%(同0.2ポイント低下)▼病室・浴室・トイレ等:57.0%(同0.2ポイント低下)―では、やや低めになっています。満足度の高い項目では、より満足度が高まり、低い項目では低下しており、「食事などでの工夫」が「選ばれる病院」としての重要要素になってきそうです。

 一方、外来では、▼医師以外のスタッフの対応:58.9%(同0.3ポイント向上)▼医師との対話:57.2%(同1.0ポイント向上)▼医師による診療・治療内容:55.5%(同1.1ポイント向上)―で満足度が高い状況は入院と同じですが、満足度そのものは入院に比べると低めに出ています。

また、外来でとくに満足度の低い項目として、「診療までの待ち時間」(28.9%)があげられます。病院の種類別に見ると、▼特定機能病院:満足22.9%・不満37.8%▼大病院:満足23.7%・不満35.2%▼中病院:満足26.5%・不満27.7%▼小病院:満足37.2%・不満18.7%▼療養病床を有する病院:34.7%・不満18.4%—となっており、大規模病院で「待ち時間に不満を感じる人が多い」傾向にあるようです。

もっとも、「軽症で紹介状を持たずに、かつ予約をせずに特定機能病院や大病院を訪れ、結果として待ち時間が長くなっているのではないか」との疑問も生じます。軽症患者が特定機能病院等の外来に多く訪れれば、本来「特定機能病院を受診すべき重症な紹介患者」の医療アクセスを阻害してしまうほか、医師の外来負担を重くすることにもなります。「医師の働き方改革」においては、「患者が上手に医療機関を受診するよう促していく」ことが非常に重要な施策の1つに位置付けられており、「適正な外来受診」をさまざまな機会を通じて周知していくことが重要でしょう。
 
なお、入院期間が長くなるにつれ、患者の満足度は下がっていきます。いかに整った療養環境であっても、「自宅の気楽さ」などには勝てず、「入院期間の長期化によって患者のQOLが下がっていく。より早期の退院がQOL向上にとって重要である」ことが再確認できます。
 

入院患者の1.8%は「医師から説明を受けていない」と感じていることを受け止めよ

 さらに、入院患者が「医師からの説明」をどのように感じて、受け止めているのかを見てみましょう。

 診断や治療方針にについて「医師から説明を受けた」と答えた患者は、入院・外来ともに95%程度に達しているものの、1-2%程度の患者が「説明を受けていない」と答えていることが分かりました(入院では1.8%、外来では0.6%)。

医師からの説明がなされない事例はなかなか考えにくいですが、患者と医師とでは知識量等に圧倒的な差があり、医師が「説明した」と思っても、患者が「説明を受けていない」と感じるケースがあると考えられます。高齢化が進行し、認知機能や聴力等が低下した患者が増える中では、こうしたケースがますます増加すると考えられます。一方で、説明を「主治医」のみが行うとすれば、その負担が過重になります。現在の医療はチームで行われており、主治医以外の医師、看護師・薬剤師などのメディカルスタッフ、さらにソーシャルワーカーや事務職員も含めた全てのスタッフが協働し、患者への説明についても可能な範囲でのタスク・シェア、タスク・シフティングを進めていくことが必要でしょう。

 さらに、医師の説明が十分であったかどうかを見てみると、「十分であった」と感じた患者は入院66.7%・外来59.7%にとどまり、入院の26.6%、外来の34.7%は「まあまあ十分であった」、入院の6.7%、外来の5.7%は「十分ではなかった」と答えています。こうした点からも、患者への説明に関するタスク・シェア、タスク・シフティングの重要性が伺えます。・
  
一方、患者が「説明に対する疑問や意見を医師に伝えられたかどうか」を見てみると、入院の83.3%・外来の88.8%は「十分に伝えられた」としていますが、入院の6.9%・外来の6.2%は「伝えられなかった」と感じていることも分かりました。「伝えられなかった」背景には、「時間が限られている」「気おくれしてしまった(医師にこんなことを聞いてよいのかわからない)」など、さまざまな要素があると考えられます。疑問の放置は、満足度の低下につながることはもちろん、「医療の質」にも関係するケースが少なくありません(痛みを我慢してしまうなど)。外来では「相談支援窓口」の設置や周知、入院では「患者に最も身近な看護師の工夫や気配り」(日々の会話の中から、疑問点をピックアップする意識を持つ)などが重要でしょう。
 

特定機能病院でも8%超の患者が、いわゆる社会的入院

ところで、入院患者が「今後の治療・療養」についてどのような希望を持っているのかを見てみると、「完治するまでこの病院にいたい」という声が特定機能病院でも44.7%あり、「他の病院や診療所、介護施設などへの転院・退院」を希望する声はそれぞれ数%にとどまっています。
 
これが病院・病床の機能分化・連携を阻む壁の一つとなっているとも考えられます。例えば、急性期治療を終えた患者に「ここでの治療は終わったので、より自宅に近いリハビリ病院に転院してはどうか」と提案すると、患者・家族は「大病院に見捨てられた」などと感じることもあるかもしれません。また、こういった事態が「患者切り捨て」と報道されてしまうこともあります。

「医療提供体制の在り方」について。一般国民・患者に分かりやすく周知していくことがこれまで以上に必要でしょう(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

 
なお、退院許可が出た場合でも「自宅療養ができない」患者(いわゆる社会的入院)の割合を見ると、全体では23.6%(3年前の前回調査から2.3ポイント減少)で、病院の種類別では、▼特定機能病院:8.3%▼大病院:10.0%▼中病院:14.7%▼小病院:20.6%▼療養病床を有する病院:35.1%―となっています。
 
徐々に減少はしているものの、入院患者の2割、特定機能病院でも1割近くが「社会的入院」であることは、依然として大きな課題です。なお、同居人のいる場合「社会的入院の割合は18.0%(一般病床に12.4%)にとどまりますが、同居人のいない場合には35.4%(同26.6%)に跳ね上がり、「家族介護」という要素が重要になってくることを再確認できます。
 
自宅療養できない理由を見ると、▼入浴や食事などの介助サービス:39.7%▼家族の協力:31.9%▼療養に必要な用具(車椅子、ベッドなど):25.0%▼緊急時の医療機関への連絡体制:23.0%▼医師・看護師などの定期的な訪問:22.7%▼療養のための指導(服薬・リハビリなど):21.9%—など多岐にわたっています。

しかし、これらの中には、例えば「車医師や介護用のベッドなどでは、介護保険の福祉用具貸与により自己負担が軽減される」、「訪問診療や訪問看護については、多くの地域では適切な紹介によりサービスが確保できる」など、既に制度的な手当てがなされており、患者・家族により十分な説明を行うことで解決可能な部分もあります。

一方で、「家族の協力」などは病院側ではいかんともしがたく、他分野からの支援や協力など、より広範な「退院支援」「自宅療養の支援」策を検討する必要もありそうです。

特定機能病院でも、3割の患者が依然「紹介状」持たず

最後に、外来患者が「最初にどの医療機関を受診したか」を病院種別に見てみましょう。

「最初から、今日来院した病院を受診した」、つまり他院からの紹介などを受けていない患者の割合は、▼特定機能病院:30.4%(前回調査から6.3ポイント減)▼大病院:40.2%(同7.5ポイント減)▼中病院:56.2%(同3.4ポイント減)▼小病院:64.6%(同0.7ポイント増)▼療養病床を有する病院:64.1%(同2.5ポイント減)—となっており、特定機能病院や大病院では「他の医療機関からの紹介患者」が増加していることが確認できました。外来の機能分化が進んでいることが分かります。
 
 ただし、「依然として3割の患者は特定機能病院を紹介状を持たずに受診している」と見ることもできます。こうした患者から、「なぜ、身近なかかりつけ医などを受診せず、直接に大規模病院を受診するのか」「紹介状を持たずに受診した場合の特別料金をどう感じているのか(負担にならないと感じているのか、いくらであれば負担と感じるのか)」などを詳しく聴取し、さらなる外来機能分化に向けた取り組みの基礎資料とすることも重要でしょう。
 



https://www.m3.com/news/iryoishin/663311
シリーズ 平成の医療史30年
大学の研究力低下、二つの“荒波”が原因【平成の医療史30年◆大学編】
清水孝雄・前東京大学医学部長に聞く◆Vol.1
 
スペシャル企画 2019年3月22日 (金)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

 臨床、教育、研究――。これら3本柱を担い、医療をけん引している大学医学部とその付属病院。平成の時代を振り返ると、論文数が伸び悩むなど、日本の大学の相対的な研究力低下が指摘されている(『2000年代以降、科学立国の危機に』を参照)。2007年度から4カ年にわたり東京大学医学部長を務めた清水孝雄氏は、1990年代に進んだ大学院重点化のほか、国立大学については2004年度の法人化による運営費交付金削減という、二つの“荒波”がその原因と見る。清水氏に、大学を取り巻く研究環境がこの30年間にどのように変わったのか、お聞きした(2019年1月7日にインタビュー。全2回の連載)。

――大学の研究環境を変えた一つが、1990年代に進められた大学院重点化かと思います。


清水孝雄氏は、国立大学の研究力低下の一番の要因は、2004年度の国立大学の法人化にあるとみる。
 一般論ですが、大学院重点化には、二つの大きな問題があると思います。一つは、定員を増やしすぎたこと。大学院生の定員を学部生の1.5倍程度に設定し、全国的には重点化前の2.5倍になりましたが、教員の増員はなかったため、教員一人当たりの仕事は増えたため、研究の質低下につながった。「1.5倍」は明らかに多すぎだったでしょう。大学院生を増やすのだったら、教員数を増やし、それなりの設備も充実させなければいけないと思うのです。しかも、文科省からは、「1.5倍」とした定員を充足させていないと、いろいろと注文を付けられるので、学力が十分に伴わない場合でも入学させていたケースもあるでしょう。「大学院生の適正な数はどのくらいか」について、十分な議論がなされなかったのです。

 もう一つの問題は、大学院重点化の際に、講座の数を増やしたため、小規模の講座に細分化してしまったことです。それまでは「教授と准教授が各1人、助教2人」といった単位が普通でした。特に生命科学の分野ではチームで取り組む研究が多く、そうした体制が必要だったのですが、重点化に伴い、「教授または准教授1人、助教1人」といった講座が増えたのです。PIの数が増えることは良い、という発想があったと思います。

 大学院重点化は、「教授ポストが増え、ありがたい」ということで、飛び付いた大学が多いのですが、小所帯の講座に大学院生がたくさん入ってくる事態を招いてしまった。大型研究費をたくさん確保できる講座は、ポスドクや研究員などを雇用することができますが、そうでない講座は運営が相当大変になったと思います。

――そもそもなぜ大学院重点化を進めたのでしょうか。

 学部だけではなく、大学院で研究すれば、研究力が上がる――。もともとはナイーブな発想からだったと思うのです。しかし、やり方に問題があった。

 ただ東大医学部について言えば、臨床系は、例えばもともと大きな講座だった第三内科を糖尿病代謝、循環器内科、血液内科などと細分化して教授を増やしたため、それに対応するだけのスタッフを確保できました。一方、基礎の講座はあまり変えませんでしたので、臨床系と基礎系ともに「教授と准教授、助教最低2人」という体制は基本的には維持できました。

――大学院重点化についての見直しなどは、行われていないのでしょうか。

 二つの講座が協力して、機能的には一つのユニットとして運営したり、教授が二つの講座を兼任するなどの工夫をしているケースはあると思います。また、大学院生数の適正化も開始されています。

――大学院重点化で、本来の目的である研究力強化にはつながったのでしょうか。何をもって研究力とするかは難しいところですが。

 トップジャーナルに掲載された論文数などは、米国はもちろん、中国などでもどんどん伸びているのに対して、日本では増えないどころか減っています。先進国の中で、生命科学分野を含め、トータルの論文数が減っているのは、日本くらいではないでしょうか。

――中国をはじめ、欧米以外の国でも研究が盛んになり、かつテクノロジーの進歩で研究のスピードが上がる中で、大型研究費を獲得し、チームで取り組むべきところ、小規模の講座では太刀打ちができなかったのでは。

 そうですね。規模の大きい講座においては、研究テーマを分けてグループで取り組むことはできますが、反対に講座を細分化してしまうと、それらを統合することは簡単ではありません。

 さらに研究力の低下について言えば、やはり一番の原因は、2004年度の国立大学の法人化です。いつまでも国立大学のままであるのは、あまりいいことではないので、法人化は必要だったと思いますが、運営費交付金が毎年1%ずつ減らされているのに加えて、教員の定員も同様に毎年1%程度ずつ削減されたのが問題でした。これら二つはかなり致命的です。現実には大学単位ではなく、各学部単位で定員削減が進められましたが、医学部の場合、実収入につながる臨床系の教員ではなく、基礎系や社会医学系の教員を減らすケースが多かった。予算を削減された大学にとっては、大学が生き残る上でやむを得ない措置でした。また、法人と言っても、さまざまな制約や国の管理があり、中途半端な状態です。

 法人化に当たって、研究費の使い方も変わりました。運営費交付金は各大学が自分たちの考えで、計画的にその使途を決めることができます。日本学術振興会の科学研究費も、ボトムアップの発想で進めることのできる研究費です。運営費交付金削減の代わりに増えたのが、文部科学省や厚生労働省などがトップダウン的に課題を決め、期限(最大5年)を切ったプロジェクト型(課題設定型)の研究費や補助金です。研究活動に充当される資金はトータルとしては減らなくても、研究テーマが限定される上、研究費が期限付きのために、教員も任期付き雇用を増やさざるを得なくなりました。また、事務作業量が大幅に増えました。教員を疲弊させています。

 その上、比較的短期に達成できるテーマを選ぶことになり、すごく“当たる”こともあれば、研究不正に結び付く懸念もあるなど、いろいろな問題が起きていると思います。任期付きの教員もかなり増えてきていて、40代前半くらいの方も結構います。こうしたさまざまな変化が、法人化後に急速に進んできました。

――課題設定型となると、独自の研究に取り組みにくくなる一面もある。

 そうだと思います。

――課題の設定は、どのように行うのでしょうか。またそのやり方は妥当なのでしょうか。

 文科省や厚労省が官僚だけで決めているのではなく、研究者や産業界など、さまざまな分野の有識者等を集めた審議会で議論します。ただし、最終的には省単位、省の中の局単位で決め、公募します。

――AMED(日本医療研究開発機構)が2015年度に発足したわけですが、課題設定の方法や研究費の配分などには変化があったのでしょうか。

 明らかに良くなったのは、文科省、厚労省、経産省の3省の情報共有、連携が進み、研究テーマの重複も減ったことでしょう。しかし一方で、テーマ設定などについては問題があり、NIH(米国立衛生研究所)と異なり、AMEDの中に、しっかりとしたブレイン組織がなく、全体の政策立案のシステムができていません。理事長のリーダーシップも発揮できていないように感じます。結局、各省庁、各局が出資した割合に応じて予算を確保し、研究を公募するなど、基本的なところは変わっていません。AMEDの意思決定をどのように行っていくか、また適切なピア・レビュー体制を取れるかは、第二期に向けて、重要な課題だと思います。

――お話をお聞きしていると、平成の30年間、研究の追い風となるような改革は行われていなかったように思うのですが。国立大学の法人化にしても、「臨床が忙しくなったために、研究に割く時間が少なくなった」といった声も聞きます。

 それはその通りだと思います。付属病院の収入は、大学の運営費交付金と匹敵する額だからです。以前は、臨床に従事する中で、いろいろな問題意識を感じて、研究に何年間か従事したり、海外に留学したりしていました。今は現場が忙しくて「そんなことをやっている時間はない」となり、それも医学の研究力を落としている要因です。平成の間、良くなった点がないかというとそうでもなく、間接経費の導入、研究費の一部が基金化されたこと、産学の連携がスムーズになったことなどはあります。

 また、強調したいのは、東大やいくつかの研究大学に資金を集中しすぎるのも問題です。東大で育った人材も全て東大で研究を全うできるわけではなく、必ず別の機関に移るわけです。移る先の疲弊が見えると、東大の若手研究者の意欲も落ちます。



https://www.m3.com/news/iryoishin/663310
シリーズ 平成の医療史30年
「最後の砦」大学に財政的支援を【平成の医療史30年◆大学編】
山本修一・国立大学附属病院長会議常置委員会委員長に聞く◆Vol.3
 
スペシャル企画 2019年3月21日 (木)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――大学病院にとっては、ここに来て、「医師の働き方改革」という課題もクローズアップされるようになりました。

 千葉大でも、働き方改革は進めています。例えば、タスクシフティング。2019年4月採用に向けて、「診療看護師」を募集しています。ただ、研修期間は現場で働く看護師が減り、戻ってきても、例えば入院基本料算定に必要な看護師配置とは別に置くことになるので、その分、人件費がかかります。十数人配置するとしたら、合計1億円を超えてしまう。


「今のままでは、30年後の日本の医療レベルは低下しかねない」と警鐘を鳴らす、山本修一氏。
――医師の業務の一部を「診療看護師」が担うようになり、医師はその分を医師にしかできない業務に専念すれば、診療収入が上がるけれども、実際には医師の労働時間の短縮が先決であるため、そうはならない。

 その通りです。医師の働き方改革は、社会問題化しており、世間の関心も高い。だからこそ、公開の場であれだけの議論をしているわけです。この議論が、改革を進めるための財政的な支援につながることを期待しています。

――先生は、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」の構成員です。医師の時間外労働の上限については「1900~2000時間」という案が出され、議論になっています(インタビューは2019年1月18日に実施)。

 大学病院の勤務医で難しいのは、病院で臨床に従事する傍ら、大学に戻れば研究者であるという点です。大学の他学部の研究者たちは、時間外労働規制の適用対象外です。

 病院にいる間は、タイムカードを使って時間管理が可能。しかし、例えば、たまたま外来が早く終わり、午後3時で臨床の仕事を終え、研究室に行って実験を始めたとしましょう。夕方、いったん自宅に帰り、夕食を食べてまた午後9時ころに戻ってきて、午前0時まで研究していた時に、どこまでを勤務時間として扱うのか。あるいは午後10時すぎまでオペをしていて、翌日は丸1日「研究日」として病院勤務がない場合もあります。

 初期研修医あるいは専攻医、つまり教員になる前の医師たちは、今、議論されている枠組みの対象でいいと思います。ただ問題は、助教以上、いわゆる教員。臨床以外にも、研究、教育に従事する職種の時間外労働は、本来であれば厚労省の検討会の議論では解決できない問題です。

 同検討会は、1月11日に「とりまとめ骨子」を公表しました。そこに一文だけ、「さらに、大学病院における研究を行う医師に対する労働時間制度の運用実態に鑑み、医師の研究を阻害しないような研究者のために必要な議論を開始すべきではないかとの意見もあった」と入りました。けれども研究者の労働時間管理は、日本学術会議まで巻き込んだ、医師以外の全体の研究者の議論にまで発展すると問題は複雑化してしまう。現実には難しいでしょう。

――先生は、大学の教員医師については、どんな時間外労働規制がいいとお考えでしょうか。

 基本的には裁量労働制にして、例えば午後5時以降、診療に従事した場合には、時間外手当を付けるなど、大学教員でもある勤務医の多様な働き方が可能な管理にしていただきたいと思います。

――大学は、最先端の医療や研究、あるいは教育などを担っているため、その魅力の故に、労働環境は厳しくても、あるいは給与は低くても医師が勤務している現状があります。

 「大変だ」と言いつつも、今後もそうした思いで大学病院に勤務する医師は続くでしょうが、一方で辞めてしまい、一般病院に就職する医師もたくさんいるわけです。どうつなぎ留めていくかが課題です。例えば、医師の給与を上げる原資もありません。

 それにはわれわれ自身も努力はしていきますが、繰り返しになりますが、やはり社会が大学病院の役割を考える必要があると思います。社会のためになぜ大学病院が必要か、必要ならどのように支援、維持していくかです。

 今の大学病院であっても、収益を簡単に改善する方法はあります。眼科であれば、診療所でもできる白内障手術を数多くやれば、収益は確実に良くなります。千葉大だって、毎日100件だってできるでしょう。でもそれは本来の大学病院の役割とは違うでしょう。

――医療機能の分化を進める国の方針とは、反します。

 そうであれば、「最後の砦」として大学病院を位置付けるなら、また医学研究に取り組み、新しい医療を切り拓くことを期待するなら、そのための支援が必要だということ。今のままでは、30年後の日本の医療レベルは低下しかねません。しかし、一般の方には身近な話題でないためか、残念ながらピンと来ないようですね。

――これまで国立大学附属病院長会議などから、大学病院の役割や改善策を提示しても、なかなか届かなかった。

 一つには、私たちがおとなしかったのかもしれません。それに病院長が短いサイクルで交代してしまうので、病院長在任中は問題意識を持っていても、それがうまく継承されにくいという問題もあります。大学および大学病院が抱える問題を理解してもらうために、これまで以上に情報発信をしていかないといけないと思っています。



https://www.m3.com/news/iryoishin/663309
シリーズ 平成の医療史30年
大学勤務医の臨床の比重増加、経営悪化で【平成の医療史30年◆大学編】
山本修一・国立大学附属病院長会議常置委員会委員長に聞く◆Vol.2
 
スペシャル企画 2019年3月17日 (日)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――その上、国立大学病院にとっては、控除対象外消費税の問題もあります。2014年度に消費税率が5%から8%に引き上げられた際、特定機能病院の補てん率は61.7%という結果でした(『2019年度消費増税対応は基本診療料で、「議論の整理」(案)了承』を参照)。

 その通りです。2019年10月の税率10%への引き上げの際は、見直され、特定機能病院全体では補てん率が100%近くになるとのことですが、それはあくまで平均値。われわれは、病院の規模によって補てん不足が億単位でばらつくことを以前から主張してきました。その点は今回も改善される見通しはありません。

 厳しい経営環境が続く中、45ある国立大学病院全体の2017年度の決算は、前年度より18億円のマイナス 。また、医業による収益差額は31億円のマイナスで、前年度より悪化しています。それに運営費交付金が12億円入っても、収支は均衡しません。病院だけでなく、国立大学そのものが今、存続の危機なのではないかと思っています。収入は授業料と運営費交付金がほぼ全て。それ以外の特許料収入などはごくわずか。経営改善につながる手立てがなかなか見当たりません。

 大学病院がこうした厳しい環境に置かれているのは、そもそも医療界、ひいては社会が大学病院に何を期待しているのか、役割は何か、医療の中でどう位置付けるのか、あるいは社会としてどう支えるかが明確になっていないことが大きいと思っています。

――それはどのような意味なのでしょうか。

 大学は、臨床、教育、研究の3つの柱を担っています。臨床面で言えば、「大学は最後の砦」とよく言われます。他で治せなかった患者さんが大学病院に来るわけで、もちろん一生懸命に治療はしますが、コストがその分、かかります。けれども、診療報酬で優遇されるのは、DPCの大学病院本院群の係数と入院基本料くらい。いずれも特定機能病院として高い点数が付いていますが、それは収入全体から見ればわずか。それ以外は、全く他の一般病院と同じ土俵で仕事をしなければいけません。

 DPCは、診断群分類別の評価ですが、あくまで「平均値」をベースに点数を設定しています。正規分布の端に位置するような、多くの医療資源を要する患者さんを診る割合が大きい大学病院では、採算が合いにくくなります。ICUの加算も同様で、2週間を過ぎれば加算はなくなりますが、2週間を超えてしまう重症の患者さんは少なくありません。

 また患者さんは「大学病院だから」と信頼して受診されます。それは有り難いことなのですが、その分、医療の内容や医療安全に対する目は厳しい。大学病院は、専門的で高度な医療が要求されます。しかも、医療が進展するスピードは速く、それにキャッチアップするとともに、高い安全性が求められます。

 大学病院には、臨床以外にも、研究という重要な役割があります。当院は全国で12カ所ある臨床研究中核病院の一つですが、倫理委員会をはじめ、体制を整え、維持するための持ち出しの方が多いのが現状です。

――厳しい環境の中で、医師をはじめ、医療従事者の献身的な努力で大学病院は成り立っている。

 献身的な努力というか、使命感なんですかね。いくら大変であっても、私たちはやめるわけにはいきません。


山本修一氏は、「医療界、ひいては社会が大学病院に何を期待しているのか」を明確にすべきと強調。
――そのひずみなどは現れているのでしょうか。

 まずは大学病院として経営を安定させないといけない。結局、高度先進医療ばかりやっていたのでは、今の診療報酬体系では、経営が厳しいわけです。場合によっては、一般病院でもできるような医療までを手を出さざるを得ないというひずみは出てきています。

――法人化の前後、そして今との比較で、臨床、研究、教育にかける比重は変わってきているのでしょうか。

 臨床が忙しくなっており、教育、研究のウエイトが下がっています。収益を上げるために、われわれ経営陣はいかに数多くの患者さんに受診してもらい、しっかり診療して、地域の医療機関等にお戻しするかに腐心する。急性期病院として機能分化もあり、病床の稼働率、回転率ともに上げなければならず、以前なら1カ月くらい入院していたような患者さんでも、今は病状が安定したら、10日くらいで退院している。当然、労働密度の上昇につながるわけです。

――先生のご専門である眼科であれば、日帰り手術も増えた。

 その通りです。やや古いデータですが、国立大学病院の場合、臨床系教員が診療等に従事する時間の割合は、2002年のは35.8%から、2013年には51.5%まで増えています。一方で、研究に充てる時間は、28.8%から2割を切り、17.7%になっています。今の時点で調査すれば、診療等の時間はさらに増えていると思います。

――これは国立大学に限らないことですが、2004年度の臨床研修必修化で、大学で臨床研修を行う若手が減少した影響もあると思います。必修化前は、7割以上が大学病院で研修していましたが、今は5割弱のまま回復の兆しはありません。

 確かにその通りです。ただし、千葉大に関して言えば、新専門医制度により、後期研修医(専攻医)が増えています。以前は1学年約100人だったのですが、今は150人くらいになっています。千葉県は医師不足なので、東京都や神奈川県と違い、シーリング(専攻医の上限)がかからなかったことが大きいと思います。

 まずは専門医を目指す若手に対して、より良い研修環境を提供することが大事。問題はその先で、専門研修が終わった後、最先端の医療をやりたい、研究をしたいという医師をつなぎ留めるために、いかに魅力のある大学、病院にするかということです。



https://www.m3.com/news/iryoishin/667134
時間外・休日の病状説明を選定療養として提案へ、日病協
10連休対応は人員配置基準の緩和など要望
 
レポート 2019年3月22日 (金)配信水谷悠(m3.com編集部)

 日本病院団体協議会は3月22日の代表者会議で、選定療養に導入するべき事例として、「時間外や休日に患者や家族側の都合で病状説明を行った場合」を提案することを決めた。議長の山本修一氏(国立大学附属病院長会議常置委員長)は、「各病院が患者へ要望しているが、より踏み込んで選定療養の対象にしてはどうかと、満場一致で承認された。医師の負担軽減を推進したいということで、時間外の仕事だということを社会に知っていただくことが重要だ」と述べた(「選定療養として導入すべき事例等」の募集は厚生労働省のホームページ)。


 院内でインフルエンザ感染者が出た場合に、同室の患者に抗インフルエンザ薬を予防投与する場合についても提案する。山本氏は「病室に余裕があれば隔離するという方法が取れるが、冬場はどこも病室が一杯で予防投与も選択肢の一つになり得る」と述べた。過去にも提案し、採用されなかったことがあるという。

 新天皇即位に伴う10連休の対応では、人員配置基準やオーバーベッドの緩和、レセプト提出の受付期限、処方箋の有効期間の猶予について、今月中に取りまとめて根本匠厚生労働大臣に提出する。



https://www.m3.com/news/general/667206
在宅診療にこだわり、南相馬を去る 京都の医師の3年間  
その他 2019年3月23日 (土)配信朝日新聞

 東京電力福島第一原発事故で一時休診した南相馬市立小高病院(小高区)の院長(管理者)が22日、最後の診療を終えた。3年前に京都から単身で移り住み、患者とのつながりを大切にした。しかし運営を巡り、市との溝が深まり、病院を去ることになった。

 「先生がいなくなるのは本当に惜しい。どうもありがとうございました」

 22日正午前、小高区長会長の林勝典さん(71)が病院を訪れ、院長の藤井宏二医師(63)と両手を握り合った。藤井医師は「京都からも見てますから」と応じた。

 藤井医師は京都第二赤十字病院(京都市)を辞め、2016年4月から小高病院で働き、その後唯一の常勤医になった。きっかけは1995年の阪神大震災だった。救護班として現地に入ったが、装備や連絡態勢が不十分で思うように活動できず、無力感を覚えた。いつかは被災地のために力になりたい――。持ち続けていた思いが強くなったのは60歳が近づいたころだ。東日本大震災が起き、「今度こそ役に立ちたい」と決意した。

 小高病院は14年4月、3年1カ月ぶりに外来診療を再開した。震災前はベッド数99床で7科がある地域唯一の総合病院だったが、外来診療に限られていた。医師も足りず、インターネットで医師を募集していた。妻(59)に相談すると、料理の本を渡され「早く行き」と背中を押してくれた。

 病院棟は配管などが壊れて使えず、リハビリ施設を改修して使う。高齢者を中心に毎日約20人が訪れ、藤井医師と非常勤医3人、看護師3人で内科や外科の診察をする。

 小高区の大部分では2年半前、避難指示が解除された。しかし、居住する人は3169人(2月末)と、震災前の約3割にとどまり、65歳以上の高齢者が半分を占める。足が悪かったり、車など移動の手段を持たなかったり、通院さえ大変な患者が多い。

 そこで藤井医師が力を入れたのが、在宅診療だった。2回のうち1回は医師が患者の自宅に行き、1回はタブレット端末を持った看護師が患者宅を訪れ、診察室のパソコンとつないで、遠隔で診察する。

 看護師が測る体温や血圧などの情報もパソコンに送られる。10分ほどの問診だが、「顔を見て話しすると、笑顔が出て満足してくれる」(藤井医師)。約20人が在宅医療を利用し、藤井医師は「地域の現状に合っている」と手応えを感じていた。

 しかし、今年2月に状況が一変した。市の市立病院改革プラン策定委員会が、小高病院に将来的に19床の入院機能を回復させる素案を発表した。それを支持する門馬和夫市長と、方向性の違いが決定的になった。



https://www.m3.com/news/general/666788
東京医科大は全額不交付 日大は35%減額 私学助成  
大学 2019年3月21日 (木)配信朝日新聞

 日本私立学校振興・共済事業団は20日、今年度の私立大学等経常費補助金(私学助成)の交付額を発表した。医学部で不適切入試が発覚した8私大は、「入学者選抜の公正性を害する」とされて減額された。特に前理事長と前学長が贈賄罪で起訴された東京医科大は、全額不交付となった。

 東京医科大は来年度も不交付となる。「十分な改善努力を行った」と判断されれば減額幅が徐々に小さくなるが、全額が交付されるようになるのは早くても5年後だ。アメリカンフットボール部の悪質タックル発覚後の理事会の対応も問題視された日本大は35%、岩手医科、昭和、順天堂、北里、金沢医科、福岡の6大学は25%減額された。

 一方、東京福祉大は「学校法人の管理運営が適正を欠く」として50%減額された。女性教職員に対する強制わいせつ罪で懲役2年の実刑が確定した元理事長を運営に関与させないと文科省に報告していたのに、実際には関与させていた点が問題とされた。(増谷文生)



https://www.m3.com/news/general/666620
読み解きワード:医師需給 偏在の解消が必要  
地域 2019年3月20日 (水)配信毎日新聞社

 医師の過不足のことを「医師需給」と言います。厚生労働省は将来の需給推計で「2028年ごろからは医師が余る」とする一方、「36年時点で医師が足りない地域や診療科がある」との推計もしています。一見矛盾する二つの試算から、どのような対策が求められるのでしょうか。【酒井雅浩】

 ◇全体数は右肩上がり 28年以降「過剰」に

 国内の医師数は右肩上がりに増えている。これは高齢化で引退・死亡する医師より、医学部を卒業して新たに医師になる人の方が多いからだ。00年代後半に地方の医療崩壊が叫ばれ、08年から大学医学部が一定期間その地方で働くことを義務付ける「地域枠」を設けて定員を増やしたことも、その傾向を強めた。

 一方、人口減少により、必要な医師数は徐々に減る。厚労省の検討会は昨年4月、医師が過労死認定の目安となる「月80時間」を上限に残業すると仮定した場合、28年ごろに約35万人で需給の均衡が取れ、以降は医師が余るとの推計をまとめた。医学部生が国家試験に合格し、臨床研修を終えるのは10年ほどかかるため、今春の新入生が一人前の医師になる頃は「供給過剰」になっている可能性がある。

 とはいえ、この推計は全体数だけを見たもので、実際には地域や診療科によって過不足が生じる「偏在」が起こる。日本の医師はどこでも開業でき、専門とする診療科も自由に選べるため、偏在の解消は簡単ではない。

 厚労省は働き方改革の一環で、これまで規制がなかった医師の残業時間も24年度から法律で上限を設ける方針だ。地域医療に従事する医師らは一般労働者より長時間の勤務を容認する構えだが、偏在対策が進まないまま規制が始まれば、地域の医療提供体制に支障が出かねない。

 ◇大都市、地方で二極化 医療の質に影響も

 医師の地域偏在を考える際に大切なのは「必要な医師数」をどう見積もるかだ。

 これまで厚労省は、都道府県ごとの10万人当たりの医師数で過不足を比較してきたが「実態を表していない」との指摘があった。そこで新たに、人口構成の将来予測▽年齢・性別による受診率▽昼夜の人口差▽医師の年齢構成や男女比、労働時間――なども考慮した「医師偏在指標」を算出。指標を基に16年の上位16都府県を「医師多数区域」、下位16県を「医師少数区域」と指定し、大学医学部の地域枠を少数区域の県向けに重点的に割り当てて将来的な偏在解消を図ることにした。

 それでも政府が医師偏在を解消する目標としている36年時点で、12道県で医師が不足する見通しだ。これは若手医師の地域定着を進めるなど最大限の対策を取った場合の想定で、医師不足地域はもっと広がっている可能性もある。

 一方で「全く対策を取らない」と仮定した場合でも、東京、大阪など13都府県では医師が過剰となる。過剰の地域では医師1人当たりの診療経験が必然的に乏しくなり「医療の質」確保の観点からも偏在対策が求められる。

 ◇残業規制で不足深刻化か 自主的な是正に期待

 診療科別の医師数は時代に応じ変動している。1994年から16年までに麻酔科はほぼ2倍、放射線科は7割、精神科は6割増えた一方、外科や産婦人科は横ばいだった。

 診療科の偏在も、放置はできない。医師が増えていない産婦人科や外科、さらに救急科の医師は労働時間が長い傾向にあり、厚労省の16年調査ではそれらの科の約半数の勤務医が残業月80時間を超えていた。上限規制が導入されると、医師不足が一層深刻化する恐れが大きい。

 そのため厚労省は、医療費の算定データから、診療科ごとの将来必要な医師数と、その数を満たすために毎年新たに養成しなければならない医師数を推計した。内科は16年の11万2978人に対し、36年には12万7167人と大幅な増加が必要。精神科は16年で1万5691人いるが、36年は1万4003人で足りる。今は人手不足が著しい産婦人科も、少子化の影響で必要数が減る見通しだ。

 厚労省は医療界の「プロフェッショナル・オートノミー(専門家による自律)」は引き続き尊重しつつ、診療科別の必要な養成数などを示すことで自主的な偏在是正に期待する。それでも解消しなければ、都道府県ごとの医師定員を設けるなど新たな対策の検討も必要になるだろう。



https://www.m3.com/news/general/666449
洲本の4診療所、累積赤字6億超に 一般会計から補てんへ  
地域 2019年3月19日 (火)配信神戸新聞

 兵庫県洲本市立の4国民健康保険診療所の赤字が、2018年度末までの累積で約6億600万円と見込まれることが18日、分かった。人件費や施設維持などにより、18年度だけで最大約7600万円の赤字が想定される。市は一般会計から4国保診療所の特別会計に繰り出し、赤字を補てんする措置を取る方針だ。

 同日の市会教育民生常任委員会で、市幹部が明らかにした。

 市によると、五色(洲本市五色町都志大日)、鮎原(同市五色町鮎原西)、堺(同市五色町上堺)、上灘(同市相川組)の4国保診療所の累積赤字は、診療報酬に対して人件費などが膨らみ、17年度決算で約5億3千万円に上る。18年度の単年度赤字は、変動の可能性はあるが、現時点で約7600万円を見込み、これまでの分と合わせて約6億600万円になる計算だ。

 市は診療所の特別会計で赤字が出ても、一般会計から補てんしないことを原則としてきた。だが、今回、3月補正予算案に約6億600万円を計上し、補てんで累積赤字を解消させる考え。市は鮎原診療所を10月から閉鎖して民間移譲し、五色診療所の入院事業の休止を検討する方針を明らかにしている。事業整理に合わせた措置により、「持続可能な地域医療体制を目指す」という。

 常任委では、市幹部が鮎原診療所の民間移譲についても言及。「(診療所の建物の)無償譲渡も一つの選択肢」と述べた。



  1. 2019/03/24(日) 12:07:10|
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