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地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

3月3日 

https://www.carenet.com/news/general/carenet/47580
会員医師が感じる医師不足・偏在の問題 
ケアネット  2019/02/28

 2月15日に厚生労働省において「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第28回)」が開催され、将来の医師数不足、診療科による医師数偏在に関する資料が公開された。CareNet.comでは、この発表をうけ、「現在・将来の医師不足、偏在について」をテーマに緊急アンケートを会員医師に行った。今回、その結果がまとまったのでお伝えする。

 調査は、2019年2月20日にCareNet.comの医師会員を対象に、インターネット上で実施。回答者総数は340名。

約6割の医師が「医師不足、診療科偏在を実感」
 Q1で「今回発表された医師不足や偏在、将来の推計の数字への実感の有無」を質問したところ、「実感できる」という回答が58.2%、「実感できない」という回答が41.8%だった。

 Q2でそれぞれの理由について聞いたところ、「実感できる」と回答した会員医師では、「東京一極集中への懸念」「医師の都会志向」を危惧する声が一番多く、続いて「外科、小児科、産婦人科医の成り手不足」「小児科医の高齢化、産科の閉院」「開業する医師の増加」など診療科の偏在を心配する声が多かった。また、「医局人事の崩壊」「地方での医療崩壊」「医師の就業環境が悪化の一途」など医療全般や労働環境からの声もあった。

 一方、「実感できない」と回答した会員医師では、「医師数だけは足りている」「患者の過剰受診が問題」「医師が医療に専念できない環境に問題」など医師の人数よりもその働き方や偏在への是正を求める声が多かった。

医師不足はマイナー診療科を超えた!
 Q3で「医師が不足していると思う診療科」を質問したところ、「産婦人科」(175)、「外科」(155)、「小児科」(139)、「内科」(136)、「救急科」(119)、「病理科」(77)、「麻酔科」(58)、「脳神経外科」(57)の順番で多かった(以上は複数回答)。少子化による人口減少社会の中で「産婦人科」「小児科」の担い手が減少、多忙な勤務環境や訴訟リスクなどから「外科」「救急科」を目指す医師が少なくなっているだけでなく、地方の医療機関では高齢者医療の担い手である内科医師の不足も顕在化しつつあることが示唆された。

地方で勤務する医師には特別な配慮を
 Q4で「医師不足・偏在」への解決策について質問したところ、「病院・診療所・クリニックの適正配置」(155)、「診療報酬で地域差を設ける」(119)、「医師の就業の流動性」(107)、「患者の診療抑制の実施」(100)、「専門医制度の改革」(76)などの順番で多かった(以上は複数回答)。

 また、具体的な提言について質問したところ「地方勤務医師の専門医資格の緩和」「地域枠採用の医師の拡大と固定化」「医師免許の2段階化」など、地方と都会で働く医師に差を設ける施策を求める声が多かった。また、医療制度全般では「外科の診療報酬増額」「患者の多い診療科の診療報酬減額」「大学医学部の再編成と地域義務医療の創設」など診療報酬制度や医学教育制度への変革を求める声があった。

 今回の調査の詳細と、寄せられた具体的なコメントなどはCareNet.comに掲載中。

■参考
医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第28回)

■関連記事
推計1万6,226人の内科医が2030年に不足
16県が医師少数、改正医療法で是正となるか?
(ケアネット 稲川 進)



https://www.medwatch.jp/?p=25136
医師偏在対策まとまる、2019年度に各都道府県で「医師確保計画」定め、2020年度から稼働―医師需給分科会(2) 
2019年3月1日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 お伝えしているように、厚生労働省の「医師需給分科会」(「医療従事者の需給に関する検討会」の下部組織)が2月27日に医師偏在対策に関する意見とりまとめを行いました(第4次中間とりまとめ)(関連記事はこちら)。

 医師偏在の解消に向け、法律の改正を行い(医療法・医師法)、膨大なデータを駆使した精緻な議論の結果である今回の第4次中間とりまとめには、構成員からも「画期的である」との賞賛の声が出ています。
 
ここがポイント!
1 医師多数の地域から、医師少数の地域への「医師派遣」などを強力に進める
2 医師多数の地域、医師偏在を進めないよう、「医師派遣」等の実施は原則不可
3 将来の医師不足に対応するため、医学部に地域枠・地元枠を設定
4 外来医師が多い地域での新規開業、在宅医療や初期救急の実施が必要に


医師多数の地域から、医師少数の地域への「医師派遣」などを強力に進める

 医師偏在対策は、都道府県が新たに作成する3年を1期とした「医師確保計画」(2020年度からの当初計画のみ4年計画)に沿って進めます。第4次取りまとめの内容をもとに、偏在対策の概要を眺めてみましょう。

 医師確保計画には、▼医師確保に向けた方針▼医師確保の目標値▼具体的な医師確保策―を盛り込みますが、「医師が少数の地域」と「医師が多数の地域」とでは、そもそもの方針の立て方が異なってきます。医師の養成数には限りがある(2017年度の医学部入学定員は9420人)ため、「医師が多数の地域」が「もっともっと医師が必要だ」と考えて医師確保を進めれば、「医師が少数の地域」での医師確保がますます難しくなってしまうためです。
 
そこでまず、1つ1つの都道府県・医療圏について「医師が多数なのか、少数なのか」を客観的に把握することが求められます。このため、「人口10万対医師数」に▼地域の性・年齢別人口(年齢や性別によって受療率は大きく異なる)▼地域医師の性・年齢別数(医師の年齢や性別によって医療提供量が大きく異なる)―などを加味した、新たな「医師偏在指標」を設定。これを用いて全国の都道府県・医療圏の「医師配置状況」に順位をつけ、▼上位3分の1を医師多数3次医療圏・医師多数区域▼下位3分の1を医師少数3次医療圏・医師少数区域―と定めました(関連記事はこちらとこちら)。

医師少数とされた地域では、3年後(1期の医師確保計画終了時点、当初は4年後)に「現在の下位3分の1ラインに到達できる」ように、医師確保の方針・目標数を設定し、医師確保施策を進めていきます。
医師需給分科会(2)の4 190130
 
一方、医師少数でない地域では、医師確保計画の中に「他地域からの医師確保」方針などを盛り込むことは原則としてできません(偏在が進んでしまうため)。ただし、医師多数と判断された都道府県でも、一部に医師少数の地域が存在することもあり、また将来は医師が少数になる可能性もあります(人口増等で医療ニーズが増加するなど)。こうした場合には、もちろん「医師確保」に向けた施策などを盛り込むことが可能です(関連記事はこちら)。

 どの地域が医師少数なのか、多数なのかについては、すでに候補が厚労省から示されています。今後、各都道府県で「患者の流出入」の調整を行い、最終決定がなされます。

【医師少数の都道府県】(候補)
▼岩手県▼新潟県▼青森県▼福島県▼埼玉県▼茨城県▼秋田県▼山形県▼静岡県▼長野県▼千葉県▼岐阜県▼群馬県▼三重県▼山口県▼宮崎県―の16県

【医師少数の2次医療圏】(候補)
▼秋田県北秋田▼北海道宗谷▼北海道日高▼山梨県峡南▼鹿児島県曽於▼岩手県宮古▼茨城県鹿行▼茨城県筑西・下妻▼愛知県東三河北部▼静岡県賀茂▼鹿児島県熊毛▼北海道南檜山▼福島県相双▼北海道根室▼熊本県阿蘇▼石川県能登北部▼岡山県高梁・新見▼島根県雲南▼秋田県湯沢・雄勝▼千葉県山武⾧生夷隅▼茨城県常陸太田・ひたちなか―など112医療圏

●全体の状況(候補)はこちら

 なお、産科・小児科については「特別の考えに基づく対策」を採ることを、既にメディ・ウォッチでお伝えしています(関連記事はこちら)。


医師多数の地域、医師偏在を進めないよう、「医師派遣」等の実施は原則不可

 医師確保のための施策は、「他地域からの医師派遣」などの短期的施策と、「大学医学部での地域枠・地元枠設定」などの長期的施策に分けられます。医師の不足状況に応じて、これらを組み合わせていきます。

 後者の地域枠等については、効果が出るまでに時間がかかる(医学部入学から医師免許取得・初期臨床研修修了まで早くでも8年間が必要)ため、「今、医師が不足している」という状況には対応できません。一方、前者の「医師派遣」では、「いずれ派遣を終えて帰ってしまう」ため、継続的な仕組みが構築されない限りは、一時的な効果しかありません。このため、「現在の医師不足」へは短期的施策によって、「将来の医師不足」へは長期的施策と短期施策の組み合わせによって対応することが原則となります。

 このため、短期的施策は、「医師多数3次医療圏・医師多数地域」では採用できず(医師偏在が進んでしまうため)、「医師少数」の地域などでのみ実施できます。その際、どの地域に派遣を要請すればよいのかが分かるように、国において「医師のキャリアなどを可視化した全国データベース」を構築することになります。
 医師多数区域では、偏在の助長を防ぐために、「他地域からの医師派遣など」を医師確保計画に盛り込むことはできない(好ましくない)(その1、2次医療圏)
 
 また「医師少数区域等での勤務」を認定する仕組みも、短期的施策の1つと考えることができそうです。
 6か月以上(1年以上が望ましい)、医師少数区域等で勤務した医師を厚生労働大臣が認定するもので、2020年4月以降に初期臨床研修を受ける医師では、この「認定」がない限り、「医師派遣機能などを有する地域医療支援病院」の管理者(主に院長)になることができません。なお、卒後10年以上のベテラン医師では、「断続的な勤務」(例えば週に2日、医師少数区域等で勤務する)の合計が180日となれば、この認定を受けることができます(関連記事はこちらとこちら)。

 医師少数区域等を抱える都道府県では、「医師が勤務したくなる」ような支援(「若手医師が医師少数区域等で勤務する環境整備」のためのプログラム整備など)を積極的に行うことが必要です。

 また、医師需給分科会では、各団体が自ら「病院管理者の要件として、認定制度を活用する」と考えることへの期待も寄せています。


将来の医師不足に対応するため、医学部に地域枠・地元枠を設定

 長期的施策(地域枠等)は、「将来の医師不足」に対応するものです(今般の改正医療法・医師法で、都道府県知事が大学医学部に地域枠等設定を要請できることとなった)。将来、医師がどれだけ不足するかは、地域ごとに「将来の医療ニーズ」と「将来の医療供給数」とを勘案して把握することができます。

 ところで、医師を無計画に増員していけば、人口減少社会にある我が国では、いずれ医師過剰となり、例えば「医師の生活維持が困難になる」「不適切な過剰な医療提供を行う」といった弊害がでてしまいます。そこで、医療ニーズを勘案して、精緻に「医学部の入学定員」を設定しています(恒久定員、医師偏在に対応するための臨時定員)。このうち臨時定員については2021年で一旦廃止され、2022年度以降は、医師の働き方改革などを踏まえた需給バランスを踏まえて検討しなおすことになっています。

 こうした点を踏まえ、医師需給分科会では次のような方針を固めました(関連記事はこちらとこちら)。

【将来、「医師少数」となる都道府県】
○うち、「医師が少数の2次医療圏」がある都道府県
→都道府県知事が大学医学部に対して、▼地域枠(恒久定員:上記青色部分)の設置・増員▼地元者枠の設置・増員▼地域枠(臨時定員:上記赤色部分、詳細は今後議論))の設置・増員―を要請できる

○うち、「医師が少数の2次医療圏」のない都道府県
→該当なし

【将来、「医師多数」となる都道府県】
○うち、「医師が少数の2次医療圏」がある都道府県
→都道府県知事が大学医学部に対して、▼地域枠の設置・増員(恒久定員:上記青色部分)のみ要請できる(後述するように「地元枠」設置は不可)

○うち、「医師が少数の2次医療圏」のない都道府県
→地域枠等の設置・増員要請はできない

 なお、地域枠は、専ら「地域の特定の2次医療圏の医療機関に勤務することを条件に奨学金等を貸与する」もので、都道府県内で「医師少数の2次医療圏」における医師確保(2次医療圏間の医師偏在を是正する)機能を持ちます。一方、地元枠は、「地元出身者には奨学金貸与等をせずとも、地元の医療機関に定着する」というエビデンスから、各都道府県において医師を確保する(都道府県間の医師偏在を是正する)機能を持ちます。

 このため、地域枠は「医師少数の2次医療圏(医師少数地域)」がある場合に、地元枠は「医師少数の都道府県」において設置要請が可能となります。

 厚労省の試算では、「将来も医師少数」となる都道府県は限られており(▼北海道▼青森県▼岩手県▼秋田県▼福島県▼群馬県▼埼玉県▼新潟県▼長野県▼静岡県▼山口県▼宮崎県―の12道県)、ここが「地元枠」「臨時定員を活用した地域枠」の設定候補になると考えられます。

 一方、「将来も医師少数」となる区域(2次医療圏)はほとんどの都道府県にあり、「恒久定員における地域枠」の設定は、ほぼ全都道府県で可能になると思われます。
●全体のデータはこちら(厚労省、医師需給分科会のサイト)


外来医師が多い地域での新規開業、在宅医療や初期救急の実施が必要に

 なお、「自由開業制が医師偏在を助長している」との議論もあり、医師需給分科会では、まず▼外来医師(クリニック)の状況を見える化する▼外来医師が多数な地域での新規開業には、「在宅医療」「初期救急(夜間・休日の診療)」「公衆衛生(学校医、産業医、予防接種等)」の機能を求める▼地域において外来医療のあり方を議論する―仕組み創設を提言しました(関連記事はこちら)。

 こうした仕組みの効果を見て、将来、「より強力に自由開業に一定の制限を加える必要がある」といった議論が行われる可能性もあります。

 
 近く、親組織(医療従事者の需給に関する検討会)との合同会議で正式とりまとめを行い、これをもとに厚労省で「医師確保計画」作成のための指針(ガイドライン)等を策定します。各都道府県は指針(ガイドライン)等に基づいて2019年度中に「医師確保計画」を作成し、2020年度から各種の医師確保策を進めることになります。

 取りまとめにあたり、「大学医学部での教育過程において、地域医療の重要性をより強力に伝えるべき」(福井次矢構成員:聖路加国際大学学長ら多数)、「国民の『上手な医療のかかり方』の重要性等をより強く説いていくべき」(権丈善一構成員:慶應義塾大学商学部教授)などの意見が出ています。

 
 なお、診療科別・都道府県別の地域偏在対策に関する研究も厚労省で進められています。そこでは、「医師の働き方改革」の方向に合わせ、診療科別に「年間960時間を超える時間外労働を行っている医師を、960時間までに抑える」形で医療ニーズを把握していく考えが示されています(関連記事はこちらとこちら)。

 

https://www.m3.com/news/iryoishin/662417
医療従事者の需給に関する検討会
2036年度に47都道府県で「必要医師数」確保へ
医師需給分科会第4次取りまとめ、「医師偏在の見える化」がカギ
 
レポート 2019年2月27日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会」の第29回医師需給分科会(座長:片峰茂・長崎大学前学長)が2月27日に開催され、二次、三次医療圏の医師偏在指標や医師確保計画の方針などを盛り込んだ「第4次中間取りまとめ(案)」を、修文を座長一任の上、了承した(資料は、厚労省のホームページ)。

 厚労省は3月下旬に開催予定の「医療従事者の需給に関する検討会」との合同部会に諮った後、医師確保計画の策定方針を作成、3月末までに都道府県に通知する。都道府県は4月から医師確保計画を策定、2020年度から計画を実行に移す。マクロ、つまり全国平均では2028年頃に医師需給は均衡すると推計されるが、医師の偏在解消、つまり全ての都道府県において医療ニーズを満たす医師を確保するのは2036年度が目標となる(『「医師少数区域」は「下位33.3%」、111の2次医療圏』を参照)。


 今後の医師偏在対策の一番のポイントは、「医師偏在」の実態の見える化だ。医師が多い地域から少ない地域へと医師が移動することを期待する。その際に活用するのが、「医師偏在指標」。人口10万人当たりの医師数に、将来の人口構成の変化や患者の流出入などを加味して、二次、三次医療圏(都道府県)単位で算出する。その下位33.3%を「医師少数区域」、上位33.3%を「医師多数区域」に設定する(『医師最多は東京都、最少は岩手県、2倍の格差』を参照)。

 医師偏在解消に取り組む主体は都道府県で、大学なども参加する地域医療対策協議会を開催し、「医師偏在指標」などを基に、地域医療支援センターが行う医師の派遣調整などについて議論する。医師少数区域等に6カ月以上勤務する医師を厚労大臣が認定する仕組みや、医学部地域枠の卒業生なども活用して、医師確保を進める。「医師偏在」の見える化は、外来医療のほか、診療科別では産科・小児科でも行う(『「外来医師多数区域」での新規開業、2020年度以降厳しく』、『産科医と小児科医、都道府県で2.2倍の格差』を参照)。

 医学部定員は、2008年度から続いてきた臨時定員増の全てが2021年度に期限を迎える。2022年度以降の臨時定員は、医師の働き方改革に関する検討会などの結論も踏まえ、今後、改めて議論の場を設ける。

 「第4次中間取りまとめ(たたき台)」は2月18日の第28回医師需給分科会で提示され、おおむね了承を得ていた(『医師偏在対策、第4次中間取りまとめ(たたき台)を提示』を参照)。

 大学教授にも医師少数区域での勤務経験求める声
 「第4次中間取りまとめ(案)」はおおむね了承、幾つか修正、追加意見などが出た。

 医師確保対策の一つとして新設されるのが、医師少数区域等における勤務経験を厚生労働大臣が認定する仕組み。地域医療支援病院のうち医師派遣・環境整備機能を有する病院の管理者要件とすることが、認定のインセンティブの一つ。慶應義塾大学商学部教授の権丈善一氏は、「対象病院の範囲を拡大していくことが重要」と述べ、地域医療支援病院等以外でも、病院側が自発的に認定医師を管理者要件にできるような表現にするよう求めた。

 過去の議論で、大学関係者の要件にも加えるべきだとの意見が出ており、この日の会議でも同様の議論があった。全国医学部長病院長会議の前会長の新井一氏は、「将来的な方向性として、大学に残る医師であっても、地域医療にエクスポージャーすることは必要だろう。そうした方向で検討してはどうか」と提案。

 文科省高等教育局医学教育課長の西田憲史氏は、「認定医師を大学病院の病院長の要件とすることは、将来の検討対象となり得るだろうが、医学部教授全体について、となると、大学の人事そのものの話になるので、難しいのではないかと考えている」と回答した。

 地域枠、「別枠方式」の把握、公表へ
 医学部地域枠の卒業生をいかに地元に定着させるかも、重要になる。2020年度以降は、臨時定員における地域枠は、一般枠とは別枠の募集定員を設ける「別枠方式」しか認められなくなる。別枠方式の方が地元定着率が高いためだ(『2018年度の地域枠充足率81.6%、24府県が「8割未満」』を参照)。

 認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、「手挙げ式はやめて、別枠方式とすることにより、どれだけ地域枠が埋まるかを確認する必要がある」と述べ、実態を継続的に把握するだけでなく、その公表を求めた。

 医師確保計画においては、都道府県知事が大学に対し、地域枠の創設または増員を要請できる。恒久定員枠、あるいは臨時定員枠に設けることになるが、新井氏は、恒久定員に占める地域枠の割合については「5割という数字が独り歩きしないよう、慎重になってもらいたい」と要望した。過去の議論で、「5割程度までは可能ではないか」といった意見があったからだ。

 厚労省医政局医事課は、2022年度以降の医学部定員については、恒久定員に地域枠を設け、それでもなお地域枠が足りない場合に臨時定員を認めるかどうかという議論になると説明した。文科省によると、地域枠には幾つかの種類があり、広義の地域枠の占める割合は平均1割程度だという。

 適切な受診呼びかける国民への啓発も必要
 「第4次中間取りまとめ(案)」の「地域住民に対して、医療のかかり方に関する啓発を行っていくことも、限られた医師で医療を提供していくうえで重要」との一文について、権丈氏は、国民が適切に医療機関を受診するよう国民の努力義務を定めた、2014年6月に成立した改正医療法第6条2の3の一文を追加するよう提案。本改正は、2013年8月の社会保障制度改革国民会議報告書が基になっているとし、「疲弊おびただしい医療現場を守るためにも、フリーアクセスを『必要な時に必要な医療にアクセスできる』と理解する」という説明の追加も求めた。

 その他、今回の取りまとめは、医師の地域偏在対策が主眼だが、聖路加国際大学学長の福井次矢氏は、診療科偏在を是正する必要性を強調。特に総合的な診療を担う医師の養成数を議論し、提示することを求めた。「どのくらいジェネラルな医師を養成するかによって、他科の必要医師数などが変わってくる」とした。

 全日本病院協会副会長の神野正博氏も、「問題は診療科偏在が解消されていないことであり、ここがものすごく医師需給に影響してくるのではないか」と述べ、早急な検討を求めた。

 日本医師会副会長の今村聡氏は、福井氏の発言に対し、総合診療の専攻医はさほど多くはない一方、地域には、総合的な診療能力を発揮しているかかりつけ医がいるとし、「できるだけ多くの医師にそうした力を発揮してもらうかが重要ではないか」と述べ、総合的な診療能力を持つ人がどのくらいか、という議論はいいが、総合診療の専攻医の割合を決めるのは問題だと釘を刺した。

 「画期的な取りまとめ」との指摘も
 岩手医科大学理事長の小川彰氏は、地域医療対策協議会の役割が重要になるものの、現状では温度差があるとし、「同じスタンダードで、できるのか。厚労省が介入しないとやっていけないのではないか」と指摘。厚労省医政局地域医療計画課は、丸投げではなく、都道府県の医師確保計画を把握するほか、具体的な助言、好事例を共有、担当者レベルの人材育成支援などに取り組んでいくと回答。

 小川氏は会議の最後に、次のように発言した。「過去の医師需給推計では、(医師不足対策等の)方法は打ち出されなかったが、今回はかなり突っ込んだ議論をし、第4次中間取りまとめになった。多少不満は残るが、今回の医師需給分科会の議論ほど着実に進んだものはなく、その意味では画期的な取りまとめになった」。



https://www.m3.com/news/iryoishin/661496
真価問われる専門医改革
47都道府県別の「診療科別、2036年の必要医師数」暫定版公表
診療科偏在解消に向け「専攻医数でコントロール」を検討
 
レポート 2019年2月25日 (月)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省は2月22日の医道審議会医師分科会医師専門研修部会(部会長:遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)で、47都道府県別の「診療科ごとの将来必要な医師数の見通し(たたき台)」を公表した。18の基本領域別の医師数の2036年までの将来推計で、全国推計は2月18日の医師需給分科会で公表されていた(『内科、外科など10科は必要数増、精神科など8科は減』を参照 https://www.m3.com/news/iryoishin/660394)。

 厚労省は「今後、専門医制度を通じて専攻医の診療科偏在や地域偏在を是正するために、都道府県別診療科別の必要医師数の活用を具体的に検討してはどうか」と提案、委員からは異論は出なかった(資料は、厚労省のホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03730.html)。


内科と小児科の推計例(2019年2月22日「医師専門研修部会」の参考資料7 https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000482825.pdf)
 日本病院会常任理事の牧野憲一氏は、専攻医の募集人数(定員数)は、研修を希望する医師数の約2倍になることから、「好きな領域に行けるので、不足する領域の医師はいつまで経っても不足する。不足する領域で医師を確保できる募集の仕方を今後、考えるべきではないか」と提案した。

 聖路加国際病院副院長の山内英子氏は、「いつどんな形で、これから専門医を目指す人に情報提供していくのか」と質問。厚労省医政局医事課は、今回のたたき台はあくまで暫定版であり、医師需給分科会で出された意見を踏まえて修正を加えていくことから、「具体的な時期はまだ言えない」と答えた。

 日本医師会常任理事の釜萢敏氏は、医師需給分科会についての報道で、「医師が足りなくなり、養成しなければいけない、といった論調の報道が多かったが、これまでのマクロの医師養成数と整合性が取れているのか」と確認した。厚労省医政局医事課は、診療科別の将来推計とマクロの推計は整合性が取れていると回答。同省は、医師需給分科会で医師不足対策の議論を進めているが、その際、「将来時点(2036年)において全国の医師数が全国の医師需要に一致する場合の医師偏在指標の値(全国値)を算出し、地域ごとに、将来時点の医師偏在指標が全国値と等しい値になる医師数を必要医師数とする」などとし、2036年までには医師需給が均衡することを前提としている。

 「診療科ごとの将来必要な医師数の見通し(たたき台)」は、従来の人口10万人当たりの医師数という指標ではなく、(1)診療科ごとの医師の需要を決定する代表的な疾病・診療行為を抽出し、診療科と疾病・診療行為の対応表を作成、(2)現状の医療の姿を前提とした人口動態・疾病構造変化を考慮した診療科ごとの医師の需要の変化を推計し、現時点で利用可能なデータを用いて、必要な補正を行った将来の診療科ごとの医師の需要を推計――という手法で実施(詳細は、2月22日「医師専門研修部会」の資料3を参照)。



https://www.m3.com/news/kisokoza/661899
埼玉県、医師確保事業に7億7000万円、2019年度予算案 
2019年2月27日 (水)配信m3.com地域版
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 埼玉県は2月20日、2019年度当初予算案を発表した。保健医療部全体では昨年度比マイナス1.1%の1750億2041万円の予算を計上。医師確保事業に7億6916万円を計上する。県の予算全体では、1兆8884億6000万円で、前年度より227億円、1.2%の増となっている「医師確保対策の推進」として7億6919万円を計上した。

事業の概要は

 (1)埼玉県総合医局機構の推進 1億156万円

  臨床研修医の県内医療機関への誘導、若手医師が安心して地域医療に従事できるキャリア形成支援、地域医療教育センターの運営など、埼玉県総合医局機構において一元的・総合的な医師確保対策を実施する。

 (2)医学生・研修医の誘導・定着促進 6億5519万円

  医学生や研修医に奨学金や研修資金を貸与することにより、医師が不足している診療科や医師不足地域(特定地域)への医師の誘導・定着を促進する。

 (3)医師にとって魅力ある「埼玉ブランド」の構築(新規)1243万円

 最先端の知識・技術を習得するための留学支援制度の創設や、外部機関による臨床研修プログラム評価制度の県内臨床研修病院への導入促進により、研修医等の若手医師にとって魅力的な「埼玉ブランド」を構築し、医師の確保・定着と質の高い医師の育成を図る。


 医師の不足及び医師の偏在を解消するため、医学生に奨学金を貸与すること等により医師の確保を図るとともに、若手医師へのキャリア形成支援や地域医療教育センターによる医師等の教育・研修環境の向上により、医師の県内医療機関への誘導・定着を図る狙いだ。

 看護職員確保対策の推進として予算総額10億4447万円を計上した。

事業概要は

 (1)看護職員の養成  6億5338万円

看護職員を新たに育成するため、看護師等養成所の運営に必要な経費の一部を補助するとともに、看護学生の実習受入れを拡充する施設を対象に実習指導者の養成などを支援する。

 (2)潜在看護職員の復職支援  3129万円

 ・ナースセンターにおいて、資格を持ちながら就業していない方を対象に、 無料の職業紹介を実施するとともに、離職時の届出制度を活用した情報提供・相談体制を強化する。

 ・ 離職している方の技術的な不安を解消し復職を支援するため、県内各地の病院など医療現場での講習会や個人の希望や経験に応じた採血などの基礎技術に特化した講習会を実施する。

 (3)離職防止・職場定着の促進  3億5979万円

 ・子どもを持つ看護職員等の離職防止と復職を支援するため、病院内保育所を運営する医療機関に対して、その運営に必要な経費の一部を補助する。

 ・新人看護職員の早期離職の防止、職場定着及び看護の質を向上させるため、看護実践能力の修得を図る新人看護職員研修の実施を支援する。
 急速な高齢化による医療ニーズの増大が見込まれており、看護職員の更なる確保を図るため、看護職員の養成、復職支援、離職防止・職場定着を促進する。

 保険診療部の担当者は、新規事業である埼玉ブランドの構築について、「留学支援」、「外部評価制度の導入支援」の2つの事業を柱としていると説明。「留学支援に関しては海外留学を対象とし、1人最高1年間、最大300万円で2名の支援を予定している。外部評価制度の導入支援については、臨床研修の第三者機関による評価の導入を目的として、県内の臨床研修病院36カ所の内、今年度は10カ所への支援を目標としている。初回費用の50万円を支援する予定」とコメントした。

 新規事業では地域医療体制を充実させるため「医療提供体制のあり方の検討」「救急医療体制の充実」「移行期医療支援体制の整備」の3事業を策定した。

 「医療提供体制のあり方の検討」では2317万円を計上。国保データベースを活用し、県内の医療需要を把握。需要を踏まえた医療提供体制と保険・医療・介護予防をすすめる取組を検討する。

(1)有識者等を含む検討プロジェクトチーム  45万円
(2)国保データベース(KDB)加工及び分析業務委託 2205万円
(3)ビッグデータ分析ОJT研修参加費  66万円
が主な事業。データの分析により、医療課題の見える化と対応策を目標とする。

 「救急医体制の充実」には予算総額  920万円を計上。

(1)救急医療情報システム機能強化費  600万円
(2)救急医療機関外国人対応サポート事業 320万円
の2事業を柱としている。救急医療情報システムにスマートフォンなどを活用した新たな機能を追加し、救急搬送の更なる迅速・円滑化を図るとともに、救急病院から後方病院への円滑な転院を支援する。 また、ワールドカップ開催などで急増が見込まれるため、救急病院等における外国人患者の円滑な受入れも推進する。

 「移行期医療支援体制の整備」には590万円の予算をあて、移行期医療支援センター(県内医療機関を想定)を開設し、以下の事業を行う。

(1)小児期医療機関と成人期医療機関の連携促進
(2)在宅介護や緊急時対応も含めた、受け入れ医療機関の確保
(3)各医療機関の取組支援及び患者の自立(自律)
 支援在宅緩和ケアの推進には2186万円の予算をあて

(1)在宅緩和ケア地域支援事業 1301万円
(2)在宅緩和ケア地域連携構築事業  885万円 を行う。

 患者のための薬局のかかりつけ機能の強化推進に予算総額 490万円を計上し、2つの事業を行う。

 (1)認知症対応薬局の推進(新規)

薬局での窓口対応で薬剤師が認知症の疑いのある人に早期に気付き、受診を勧めたり、 地域包括支援センターやかかりつけ医などと連携したりすることにより、早期に対応 できる体制を築く。
 (2)ポリファーマシー対策の推進(継続)

 複数の疾患を抱え多剤を処方される高齢者を対象に、保険者、医師及び薬剤師が連 携してポリファーマシー(多剤併用による薬物有害事象の発生)対策を実施することにより、患者本位の安全な薬物療法と医療費の適正化を推進する。

 病院事業会計全体では昨年比7.8%増の707億8822万円の予算を計上。新規事業として、
1.循環器・呼吸器病センターにおける「脳神経センター」の設置 2億1609万円
2.がんセンターにおける総合診療体制の構築 2億4256万円
の取り組みを行う。

 県立病院の診療体制の強化を行う。医療ニーズの高度化、多様化に対応する必要から、県立病院の診療体制を整備・強化し、脳血管内治療を必要とする救急患者や心臓疾患等の合併症があるがん患者の受入体制を構築し、高度で専門的な医療を提供する。

 経営形態の見直しを目的として、地方独立行政法人化の準備 1億9392万円を計上した。



https://blogos.com/article/360171/
医大入試の男女別枠は是か非か 
日本財団2019年02月25日 15:01
(産経新聞【新春正論】2019年2月21日掲載)
日本財団会長 笹川陽平

医学部不正入試をめぐり昨年12月、個人ブログに「天下の暴論か?」と題して各大学医学部の定員をあらかじめ「男子〇名、女子〇名」と決め、それぞれ成績順に合格者を決めたらどうか、私見を記したところ、賛成、反対を含め多数の意見をいただいた。

皮膚科、眼科に偏る女性医師
合否判定が募集要項に即して厳正に行われるべきは言うまでもなく、女子や浪人生を不利に扱った各大学の対応を肯定するつもりはない。しかし、急速な高齢化で医師不足が深刻化する中、女性医師が皮膚科や眼科などに偏る現実を前にすると、外科や救急などハードな医療を維持していくには、どうしても多くを男性医師に頼らざるを得ない現実がある。

厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、日本の医師数は2016年、約31万9500人。女性医師は約6万7500人、全体の21.1%に上る。

全国の病院で働く医師の性別を診療科別に見ると、女性医師のトップは皮膚科が54.3%。以下、産婦人科、眼科、産科などが40%台前半で続き、外科は乳腺外科など一部を除き1桁台。男性医師に比べ診療科の広がりが欠ける傾向にある。

 医師不足が進む地域医療が、医師の献身的な努力でようやく成り立っている現実が指摘されて久しい。昨年6月に成立した働き方改革関連法では医師の残業規制が適用除外となり、厚労省はその後、地域医療に携わる勤務医の残業上限時間を年1900~2000時間とする案を示している。

一般労働者の約2倍を超す数字で、もともと地域医療への女性医師の進出は少なく、当面、地域医療の多くは男性医師頼みの状況にある。

こうした現実を受け、「試験結果だけで判定すると女性医師ばかりが増え、地域医療や救急医療が崩壊しかねない」と危惧する医療関係者の声も何度か耳にした。男性より女性が成績上位を占める傾向は医学部に限らず一般企業の入社試験でも顕著、小論文や面接で加点して男性社員の採用を増やすケースが多いと聞く。

「医学部入試でも同様の対応がなされ、医学部関係者にとって不正入試は、ある意味で常識だった」との声もある。

「地域枠」は地元出身を優遇
それならば、当面は男性医師に多くを頼らざるを得ない医療現場の実態を広く説明した上で、最初から男性の定員枠を女性より多めに設定する方法もあるのではないか。筆者の提案は深刻な医師不足を前にした“応急策”の色合いが強いが、医療の現状を前にすれば国民の理解を得られる余地も大きいと考える。

地域の医師不足解消に向け1997年に札幌医科大、兵庫医科大で始まった「地域枠」も、地域医療に従事する意思のある地元出身者を優遇する点で、形の上では「機会均等」、「公平性」を欠く。一般入試に比べ入試偏差値もやや低い傾向にあるようで、国家試験合格後、9年間、地元の医療機関で働けば奨学金の返済を免除する、などの優遇措置も採られている。

2017年度には71大学、全医学部定員の18%、1674人分までに広がり、札幌医科大のように定員110人のうち90人を地域枠が占める大学もある。政府の後押しもあるが、特段の批判が出ないのは、それだけ地元住民が地域医療の確保を強く求めている、と言っても過言ではない。

日本の女性医師の比率はOECD(経済協力開発機構)加盟36カ国の中でも最低水準にあるが、2000年以降16年までに比率は6.7ポイント、人数も3万人以上増えた。医師国家試験の合格率も、2018年は男性の89.1%に対し女性は92.2%と女性が男性を2%〜3%上回る傾向が続いている。女性医師は今後も確実に増える。

問題とすべきは将来の医療の確保
要は20年、30年後に医療を少しでも健全な形で引き継ぐには何が必要か、換言すれば、人口が減少する縮小社会の中で高齢者を中心に急増する医療需要にどう応えていくか、という問題である。

院内保育や短時間勤務制度など女性医師が子育てを両立できる職場環境や男性が育児や介護、家事に参加する社会環境の整備が進めば、多くの女性医師が30歳代で離職する事態も緩和される。

外科や内科などへの女性医師の進出も間違いなく増え、多くの診療科で男性医師と女性医師のバランスが取れるようになれば、男女平等の本来の入学試験に戻れば済む。

繰り返して言えば、入試要項で男女平等を謳いながら、現実の入試で差別をしたのは各大学の姿勢が厳しい批判にさらされ私学助成金のカットを招いたのは止むを得ない。メディアの報道も不正入試を追求するあまり、医療の課題や将来に向けた問題提起が二の次になった感が否めない。

少子高齢化の中で国民の医療をどう育んでいくか、世界共通の課題である。最先端を行く日本が医師の育成を含め、今後の医療にどう取り組んでいくか、世界が注目している。報道関係者には新しい時代の国民医療の在り方について実のある提案を望みたい。



https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190226-00010000-jij-sctch
奨学金・修学資金はお得か=医学部「地域枠」の特徴は? 
2/26(火) 17:15配信 時事通信

 医学部の奨学金・修学資金は、どのような大学で給付がされるのか。大学時代に奨学金を利用した場合、貸与型給付金であれば卒業後に返済しなければならず、苦労をしている人も多いようで、たびたびニュースにも取り上げられています。では医学部の場合は、学費が高額になりますが、これらのことがどのようになっているのか。

 ◇地域医療を支える入試枠
 その説明の前に、ほぼ医学部だけに存在する「地域枠入試」という入試区分に触れる必要があります。ご存じの方も多いかと思いますが、「地域枠入試」は、主に地方での医師不足や診療科の偏在が問題となっている地域で、将来、地元の医療を支えてくれる受験生のために行われる入学試験枠です。
 「地域枠入試」には、主に次のような特徴が考えられます。

(1)医師不足の解消
(2)地元占有率が高まる(他県からの受験者が減少)
(3)本当に医師になりたい人が合格する(面接試験も重視)
(4)地方においては、少し入りやすい大学も出てきた
(5)現役合格率のアップ(出願資格を現役生に限った場合)
(6)奨学金・修学資金の貸与によって、一般家庭からの進学者の増加

 今回の話では(6)の内容が関係します。

 国公立、私立を問わずにほぼ全ての大学が「地域枠」での入学者に対して、奨学金・修学資金の貸与を行っています。「一般入試」や「推薦入試」「センター利用入試」の中で「地域枠」を募集する大学が多いですが、入学後に希望者を募る大学もあります。大学によって異なるため注意が必要です。

 ◇生活費の支給も
 例えば、先述の順天堂大学を例に挙げると、「東京都地域枠」「新潟県地域枠」「千葉県地域枠」「埼玉県地域枠」「静岡県地域枠」の五つの地域枠があります。「東京都地域枠」の奨学金=正式名称「東京都地域医療医師奨学金(特別貸与奨学金)制度」=は、6年間総額の学納金に加えて、月額10万円の生活費も支給されます。これだと一般家庭の受験生でも順天堂大学に通うことは可能です。

 一般的な奨学金と医学部地域枠の奨学金は、どのように違うのか。

 ほとんどの「地域枠入試」は、『貸与』という形式で奨学金を支給しています。それでは医学部卒業後に全額を返済しなければならないかと言えば、その限りではありません。一定条件を満たせば返還が免除されます。順天堂大学の「東京都地域枠」の場合には、大まかには次の二つの条件を満たすことです。

(1)大学を卒業した日から2年以内に実施される医師国家試験に合格し、合格後は速やかに医師免許を取得すること。
(2)医師免許取得後、直ちに、東京都内の地域で、小児医療、周産期医療、救急医療、へき地医療を担う医療機関において、奨学金貸与期間の1.5倍の期間、医師として従事すること。

 ◇9年間は大学に拘束
 「奨学金貸与期間の1.5倍の期間」ですから、通常は大学に6年間在籍しますので、卒業後に9年間は卒業した大学に拘束されることとなります。

 なお返済免除に関する条件などは大学ごとに異なります。地域枠に関しては、各大学のホームページや、公益財団法人へき地ネットをご参照ください。

 参考までに、支給金額の大きな大学のみをまとめています。

 学納金が支給・貸与される「地域枠入試」は、経済的理由から医学部受験を諦めなければならない人にとっては朗報ではないかと思います。ただし、「地域枠入試」の場合には、出願の際には多くの大学で出身高校や出身地の制限がある場合があります。順天堂大学の場合には、「東京都地域枠」や「千葉県地域枠」の場合には出願条件の制限がありますが、「新潟県地域枠」「埼玉県地域枠」「静岡県地域枠」については制限がありません。

 ◇「地域枠入試」は、よく考えて受験を!
 そして、本当に地域医療のために尽力したいとの気持ちがなければいけませんが、これに関しては、面接試験で医師志望の理由とともに、しっかりと面接官にアピールできなければなりません。

 一般枠入試で入学した場合、医学部卒業後は初期の研修先として全国から自分の希望する医療機関を選択することができます(臨床研修マッチングプログラム)。また、例えば、将来は研究医となりiPS細胞を研究したいと考えていた場合、そのような進路の選択が可能です。しかし、「地域枠入試」で入学・卒業した場合は、少なくとも9年間は自分の進路を自分自身で決定できない可能性があります。

 「地域枠」での入学を考えている場合には、自分が受験を考えている大学について、卒業の条件などがどのようになっているのかを調べた上で、受験をしなければなりません。

 それでも「地域医療への貢献」と「学納金」また、大学によっては志願者倍率や合格に必要な偏差値が一般入試よりも低い大学も多いことから、「地域枠入試」は一考の余地があると思います。(医系専門予備校メディカルラボ 山本雄三)



https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190228-OYTET50039/
医師充足度、最大2・2倍差…産科・小児科の都道府県別推計 
2019年2月28日  読売新聞

 医師が都市に集中し、地方で不足する「偏在」の解消を目指している厚生労働省は27日、産科医と小児科医の都道府県別の充足度について、両科とも最大2・2倍の開きがあったとの推計結果を明らかにした。

 単純な人口比の医師数ではなく、医師の性別や年齢、患者の需要などの影響も加えた指標で示した。値が大きい方が充足度が高い。

 産科で1位は東京(18・4)で、秋田(15・8)、和歌山(14・3)と続いた。最下位は新潟(8・2)で、熊本(8・6)、福島(8・8)の順だった。

 小児科では1位が鳥取(173・8)で、東京(142・4)、京都(140・6)が続いた。最下位は茨城(78・3)で、埼玉(79・0)、鹿児島(82・7)の順だった。

 医師全体の偏在指標でみると、1位は東京で、最下位の岩手とは1・9倍の開きがあった。値はいずれも暫定値としている。

 厚労省は、この日開かれた有識者検討会に産科、小児科の推計結果を示すとともに、医師の偏在解消策などを盛り込んだ中間とりまとめ案について大筋で了承を得た。
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https://gentosha-go.com/articles/-/20156
連載勤務医の「キャリア&資産形成」戦略【第3回】
「医局ブランド」ではもう稼げない!? 医学部教授の懐事情
藤城 健作2019.2.28医師向け勤務医キャリア設計資産形成開業医
 

今回は、医学部教授というブランド力の変遷と、2004年に施行された「新研修医制度」が医局に与えた影響を考察します。※医師を取り巻くキャリア環境が激変しています。医局に頼ってきた従来とは異なり、自らキャリアを形成し、開業医を目指す医師が増えているのです。しかし、安易な開業が取り返しのつかない失敗を招く場合もあります。本連載では、開業医を志す医師に向け、開業を成功に導くポイントと、開業を磐石なものにする資産形成の方法を解説します。

かつては様々な収入源があった「医局の教授」だが…
大学病院の医局は、多くの人がドラマの「白い巨塔」でイメージするように、医学会の頂点に君臨する存在として認識されていました。

大学病院のなかには、外科医局、産婦人科医局など数十の「医局」と呼ばれる組織が存在し、それぞれの医局には数十人から数百人の医師が所属。医局のなかにもピラミッドが存在していました。

医師としての出世コースにおいてゴールになる「教授」を頂上として、助教授(准教授)、講師、助手(助教)、医員、研修医という明確な序列があったのです。

一般的に大学病院で教授のポストに収まるには、大学を卒業してから20年から30年ぐらいかかると言われています。長年かけてようやくたどり着ける教授の地位。医局におけるその力は絶大でした。

有力な大学医局は多くの関連病院を持っており、医局員は自分で就職先を探す必要がありません。それは就職先に困らないということを意味しています。

ただし、それは医局のサポートがある場合だけ。医局を牛耳る教授に睨まれれば一転して就職先が閉ざされ、医師であるのにもかかわらず職にあぶれてしまう危険性と表裏一体だったのです。

医局は関連病院の人事権をも掌握しており、博士号を授けるだけではなく、市中病院への就職も教授の推薦が重要という時代もありました。このような絶大な権力を持った医局では教授同士の派閥争いも激しく、派閥争いに負けると地位を追われることも珍しくありませんでした。

大学病院から支給される給料は第2回でご紹介した通りさほど多くはなく(関連記事『医師の年収…開業医と勤務医ではどのくらいの差があるのか?』参照)、教授になってもそれほど高給取りというわけではありません。

しかし、教授の年収は給料で決まるのではなく、教授の肩書きを利用したアルバイトによって決まります。

有名な教授ともなれば、大学病院だけでなく、他の病院にアルバイトに出かけることもあります。そうしたアルバイトの年間報酬が500万円以上になることも珍しくないのです。

たとえば、大学病院でも特別診療として特別な患者に対して回診することで1回5万円から10万円の報酬を得られるという話もあります。そのほかにも、人手が不足している病院に対して教授の力で若手医師を配置することで、その病院から大きな報酬を得ることもできていたそうです。また、芸能人や政治家などを相手にした完全個室の病院などでは、教授のブランドを求めて半日で10万円ぐらいのアルバイト料を払ってくれるケースもあったといいます。

他にも、医局の絶対君主制が機能していた時代には、医師が博士号を取得する際、研究費の名目で教授に数十万円を渡すこともざらにあったようです。

地方病院に医師を派遣するときの謝礼や仲人のお礼、製薬会社からの袖の下、講演料や原稿料・・・医局の頂点に立つ教授になれば、さまざまな収入源を駆使して懐を暖めることができたのです。

「新研修医制度」施行で、医局に属さない研修医が急増
しかし、近年、大学医局の衰退によって教授のブランド価値は大きく低下し、アルバイトの収入も減っているといわれています。

そのきっかけとなったのが2004年4月、新研修医制度の施行です。新研修医制度とは、医師免許を取ったばかりの新人医師が、2年間特定の医局に属さずに多数の科を回るという制度です。

この制度に合わせて導入されたのが、医師臨床研修マッチング制度です。臨床研修を受けようとする研修医と臨床研修を行う病院の研修プログラムをお互いの希望を含めて、一定の規則に従って、コンピューターでマッチングするシステムです。

自分自身や研修先の希望に基づいてマッチングする研修の仕組みが導入されたおかげで、出身大学の大学病院の医局に属さずに、待遇の良い市中病院で研修を行う研修医が増えたといわれています。

新研修医制度が導入された2004年、大学病院で研修する研修生の数は4216名だったのに対して、臨床研修病院の研修生の数は3784名でした。ところが、それから13年後の2017年、臨床研修病院の研修生の数が5285名であったのに対して、大学病院の研修生の数は3738名。臨床研修病院の研修生の数が大きく増えたのです。

藤城 健作
ウェルス・コンサルティング株式会社 代表取締役社長



https://www.medwatch.jp/?p=25046
消化器内視鏡や老年病、新専門医制度のサブスペシャリティ領域認証に「待った」―医師専門研修部会 
2019年2月25日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 2018年度から全面スタートした新専門医制度について、基本領域の2階部分となる「サブスペシャリティ領域」をどう認定するかが議論になっている。これまでに内科学会等から推薦されている23領域のうち、「消化器内視鏡」や「老年病」については、「国民への分かりやすさ」という視点からサブスペシャリティ領域として妥当と言えるだろうか―。

12月11日に開催された医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」(以下、専門研修部会)で、こういった議論が行われました。

日本専門医機構と関係学会で、「サブスペシャリティ領域としての必要性」などを改めて精査し、3月の次回専門研修部会で改めて検討されます。
 
ここがポイント!
1 サブスペシャリティ領域候補の消化器内視鏡や老年病に「分かりにくい」との指摘
2 カリキュラム制の選択、より専攻医が柔軟に行えるようにすべき
3 診療科別の必要医師数、「都道府県別の数値」も厚労省が提示


サブスペシャリティ領域候補の消化器内視鏡や老年病に「分かりにくい」との指摘

 新専門医制度は、「専門医の質の担保」と「国民への分かりやすさ」を基本理念として今年度(2018年度)から全面スタートしています。従前、各学会が独自に専門医を認定していたため、「質の担保が難しく、国民に分かりにくい」との批判があり、学会と日本専門医機構とが連携し、研修プログラムの設定や専門医の認定等を行う仕組みを設けています。

 以下の19「基本領域」(1階部分)と「サブスペシャリティ領域」(2階部分)の2層構造となっています。

【基本領域】(1)内科(2)外科(3)小児科(4)産婦人科(5)精神科(6)皮膚科(7)眼科(8)耳鼻咽喉科(9)泌尿器科(10)整形外科(11)脳神経外科(12)形成外科(13)救急科(14)麻酔科(15)放射線科(16)リハビリテーション科(17)病理(18)臨床検査(19)総合診療—の19領域

 サブスペシャリティ領域については、「国民への分かりやすさ」という基本理念を踏まえ、日本専門医機構と基本領域学会とで「認証する基準」(整備基準)を設け、その基準に合致する学会・領域のみを認証することとなっています。

現在、サブスペシャリティ領域への認証を希望する学会に対し、「研修体制は整っているか」「国民への認知はなされているか(基幹的な病院に当該分野の診療科はあるか)」などの項目について自己レビューを求め、そのレビューシートに基づく事前審査が始まっています。今後、「認証する基準」(整備基準)を設定し、その基準をクリアしているかを審査(本審査)することになります(関連記事はこちらとこちら)。

事前審査の希望は、約90の学会・領域から出されており、その中には、すでに基本領域学会である内科・外科・放射線科の各基本領域から「サブスペシャリティ領域とすべき」とされた23学会・領域も含まれています。例えば、「消化器病」については、基本領域である「内科」と連動して研修ことで、より効率的に症例経験を積むことができるとされ、この4月(2019年4月)からサブスペシャリティ領域としての研修が始まることになります(関連記事はこちら)。

【内科領域】
▼消化器病▼循環器▼呼吸器▼血液▼内分泌代謝▼糖尿病▼腎臓▼肝臓▼アレルギー▼感染症▼老年病▼神経内科▼リウマチ▼消化器内視鏡▼がん薬物療法―

【外科領域】
▼消化器外科▼呼吸器外科▼心臓血管外科▼小児外科▼乳腺▼内分泌外科―

【放射線領域】
▼放射線治療▼放射線診断―

 
しかし、2月22日に開催された専門研修部会では、この23学会・領域の一部に「待った」がかかりました。

例えば、「消化器内視鏡」領域。この領域について、▼日本肝臓学会▼日本消化器病学会▼日本消化器内視鏡学会―の3学会が連名で「サブスペシャリティ領域」を希望し、基本領域学会である内科学会が「消化器分野は非常に幅広く、患者数も多く、すべてをカバーすることは難しい。消化器内視鏡の分野は、社会的にも既に存在が確立している。行政の行う健診でも『内視鏡使用』が必須とされてきている」といった状況を踏まえ、サブスペシャリティ領域として認証する方針が固められているものです。

これに対し、専門研修部会では、「一般国民からは、『消化器病』と『消化器内視鏡』とどう違うのは分からないのではないか」(棚野孝夫構成員:全国町村会副会長、北海道白糠町長)、「学会の要請を1つ1つ聞いていれば、サブスペシャリティ領域が乱立し、国民に分かりにくくなってしまう」(山内英子構成員:聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長)という意見が相次ぎました。山内構成員は、「乳腺外科分野では、マンモグラフィの技術等に関する研修・試験を行い、それを専門医とは別に認定する仕組みを設けている。内視鏡に関しても、消化器病分野の専門医資格とは別の認定としたほうがよい」とも提案しています。

また、老年病についても、「若人とは異なる薬剤治療などを行う必要がある」「複数の疾患を抱えることが多く、臓器別でなく、全人的に診る必要性が高い」「小児が成人のミニチュアではないことと同じように、老年者も若人の延長というわけにはいかない」といった点を考慮して、内科分野のサブスペシャリティ領域として認証する方針が固められていますが、「医師であれば老年の診察は誰でもできるはずである」(立谷秀清委員:全国市長会会長、福島県相馬市長)、「かえって患者はかかりにくいのではないか」(棚野構成員)といった厳しい声が出ています。

さらに専門研修部会では、「サブスペシャリティ領域とは何か」を明確にした上で、「認証の基準」を設け、その基準に合致する学会・領域をサブスペシャリティ領域として認証すべき、との指摘も数多くだされました。

牧野憲一構成員(日本病院会常任理事)は、「基本領域は、その分野について標準的治療を習得した『詳しい医師』レベルなのに対し、サブスペシャリティ領域の一部では、相当な『エキスパート』のイメージを持つ。一般国民に同じ『専門医』として理解できるだろうか」と指摘。この点、寺本民生参考人(日本専門医機構理事長)は「専門医制度で育成する専門医はエキスパートではない。取得領域について標準的治療を習得し、ある程度の知識を持つ医師である」旨を説明しています。基本領域のみの専門医もいれば、サブスペシャリティ領域も習得した専門医もおり、少し一般国民には難しいかもしれず、十分な「説明」「PR」が必要でしょう。

また立谷構成員は、「内科や外科といった基本領域がメインであり、サブスペシャリティ領域はあくまで補完である。『自分の専門分野しか診ない』という医師の存在が地域医療確保における大きな課題となっている。サブスペシャリティ領域に重きを置けば本末転倒になるのではないか」との見解を示しています。

こうしたさまざまな指摘を踏まえ、日本専門医機構と関係医学会では、サブスペシャリティ領域の「認定の基準」(整備基準)を早期に設定するとともに、上記の23学会・領域についての審査を行うことが求められるでしょう。その結果を専門研修部会にあげ、構成員の了承を得ることが必要になります。

 なお、サブスペシャリティ領域については、次のように類型化して、「認定の基準」(整備基準)の在り方を考える方向も探られています。

【A型】日常診療を担い、医療需要が高く、偏在対策が講じられるべき領域(例えば、循環器内科などのイメージ)→研修体制は都道府県単位で整備する(各都道府県に研修施設を設定するなど)

【B型】専門性が高く集約化が進むものの、単独領域として一定の患者数が見込まれる領域(例えば、小児がんなどのイメージ)→研修体制はブロック単位で整備する(関東ブロックに1つ専門研修施設を整備するなど)

【C型】特殊性が高く、研修を行える施設が限られる領域(例えば、臨床遺伝など)→研修体制に地理的要件は設けない(全国に数か所の専門研修施設を整備するなd)

一部のサブスペシャリティ領域では、上述の「連動」研修が、この4月から行われることになっており、専攻医(新専門医の資格取得を目指す後期研修医)に不安・混乱が生じないようにしなければなりません。なお、仮に専門研修部会の了承が得られず、連動研修部分のサブスペシャリティ領域としての認証が4月に間に合わない場合について、釜萢敏構成員(日本医師会常任理事)は「遡及して単位取得を認めることが必要」と提案しています。


カリキュラム制の選択、より専攻医が柔軟に行えるようにすべき

 また2月22日の専門研修部会では、「カリキュラム制」の整備についても議論が行われました。

 新専門医制度では、年次ごとに定められた研修プログラムに則って研修を行う「プログラム制」による研修が原則となっています。基幹施設と連携施設で研修施設群を作り循環型の研修を行うもので、「初めての基本領域の研修では、集中的に必要な標準治療を学ぶ必要がある」と説明されています。

 ただし、医師免許取得後に定められた医療機関での勤務が求められる自治医大出身の医師や、出産・育児・介護などで一時休職しなければならない医師では、このプログラム制に沿った研修が困難となります。そこで、期限の定めを設けずに研修を受け、基準を充足した時点で専門医資格取得を可能とする「カリキュラム制」(単位制)による研修も認められています。

日本専門医機構では、カリキュラム制の対象となる医師について、▼義務年限を有する医科大学卒業生、地域医療従事者(地域枠医師など)▼出産、育児、介護等のライフイベントにより、休職、離職を選択する医師▼海外、国内留学する医師▼その他領域学会と日本専門医機構が認めた「相当の合理的理由」のある場合(パワーハラスメントを受けたなど)―とし、また、「1か月フルタイムでの勤務を1単位とし、プログラム制研修と同等以上の単位取得等を新専門医資格取得試験の要件とする」などの方針を固めています(関連記事はこちら)。

この方針に対して大きな異論は出ていませんが、「カリキュラム制選択をより柔軟に行えるようにすべき」「カリキュラム制の研修認定施設は、柔軟に認定すべき」との指摘が立谷構成員や牧野構成員らから出されています。カリキュラム制堅守はすべての学会で設けることとなっていますが、現状では、十分な整備がなされていないようであり、早急な検討・整備が求められます。


診療科別の必要医師数、「都道府県別の数値」も厚労省が提示

なお、厚労省からは「診療科別の必要医師数の見通し」(たたき台)も報告され、都道府県別の数値も示されました(関連記事はこちら)。

現状でも「大きく不足している」と試算された、外科と内科について見てみると、2036年(医師偏在解消の目標年)の医療ニーズを満たすための「年間の医師養成数」は、次のようになっています。また2018年度の専攻医登録状況と比較し、不足分・過剰分をカッコ内に単純計算で示しました。カッコ内が「不足●」となっている場合には、2018年度の専攻医登録が、2036年の医療ニーズ充足までに「●名の医師不足」状態となっていることを示します(あくまで単純計算ですが)。なお、全体と都道府県合計とは、ここでは合致しません。

【内科】全体で2978名(不足307)
▼北海道:137名(不足40)▼青森県:39名(不足21)▼岩手県:37名(不足16)▼宮城県:56名(不足5)▼秋田県:28名(不足12)▼山形県:32名(不足11)▼福島県:57名(不足36)▼茨城県:85名(不足44)▼栃木県:50名(不足15)▼群馬県:55名(不足30)▼埼玉県:214名(不足144)▼千葉県:175名(不足90)▼東京都:222名(過剰314)▼神奈川県:224名(不足46)▼新潟県:66名(不足22)▼富山県:28名(不足9)▼石川県:22名(過剰17)▼福井県:20名(不足7)▼山梨県:22名(不足3)▼長野県:61名(不足26)▼岐阜県:47名(不足17)▼静岡県:111名(不足67)▼愛知県:187名(不足54)▼三重県:45名(不足5)▼滋賀県:34名(不足6)▼京都府:37名(過剰48)▼大阪府:163名(不足54)▼兵庫県:130名(過剰17)▼奈良県:30名(不足2)▼和歌山県:16名(不足7)▼鳥取県:13名(過剰2)▼島根県:13名(不足1)▼岡山県:35名(過剰31)▼広島県:67名(不足20)▼山口県:36名(不足22)▼徳島県:14名(不足5)▼香川県:23名(不足10)▼愛媛県:34名(不足12)▼高知県:14名(不足6)▼福岡県:84名(過剰73)▼佐賀県:17名(過剰2)▼長崎県:26名(過剰8)▼熊本県:35名(不足7)▼大分県:25名(不足過剰なし)▼宮崎県:31名(不足22)▼鹿児島県:34名(不足4)▼沖縄県:35名(不足4)―

【外科】全体は1217名(不足410)
▼北海道:51名(不足17)▼青森県:12名(不足6)▼岩手県:12名(不足4)▼宮城県:19名(過剰1)▼秋田県:9名(過剰1)▼山形県:10名(不足5)▼福島県:17名(不足6)▼茨城県:26名(不足15)▼栃木県:17名(不足2)▼群馬県:20名(不足19)▼埼玉県:73名(不足56)▼千葉県:56名(不足30)▼東京都:123名(過剰54)▼神奈川県:88名(不足46)▼新潟県:24名(不足16)▼富山県:10名(不足4)▼石川県:10名(不足4)▼福井県:7名(不足5)▼山梨県:7名(不足6)▼長野県:19名(不足5)▼岐阜県:19名(不足3)▼静岡県:34名(不足27)▼愛知県:75名(不足24)▼三重県:16名(不足9)▼滋賀県:13名(不足4)▼京都府:16名(過剰7)▼大阪府:74名(不足3)▼兵庫県:49名(不足19)▼奈良県:12名(不足9)▼和歌山県:8名(不足2)▼鳥取県:5名(過剰2)▼島根県:6名(不足3)▼岡山県:15名(過剰10)▼広島県:23名(不足5)▼山口県:11名(不足7)▼徳島県:6名(不足1)▼香川県:9名(不足5)▼愛媛県:11名(不足6)▼高知県:6名(不足5)▼福岡県:41名(不足2)▼佐賀県:7名(不足3)▼長崎県:10名(不足4)▼熊本県:16名(不足4)▼大分県:10名(不足2)▼宮崎県:9名(不足6)▼鹿児島県:14名(不足3)▼沖縄県:14名(不足5)―



https://www.yomiuri.co.jp/local/fukushima/news/20190226-OYTNT50186/
小高病院「赤字でも継続」 入院機能 南相馬市 住民向け説明会 
2019/02/27 05:00 読売新聞

 東京電力福島第一原発事故後に入院機能を休止している南相馬市立小高病院について、市は26日、小高区内で住民説明会を開催した。市の担当者は、集まった帰還住民ら約100人に、将来的な入院機能の再開を目指す考えを改めて示した。


 同病院を巡っては、地元医師会などでつくる委員会が、人手不足の解消を図り19床の入院機能を整備するとした素案を、門馬和夫市長に提出している。一方、市側と考えが異なるとして、ただ1人の常勤医が退職届を提出する事態となっている。

 会場の住民からは、「病院があれば不安も解消される、と思って帰還した。病院が今後どうなっていくのか不安だ」との意見が出た。また、「病院の赤字を市の財政で負担できるのか」との質問もあり、門馬市長が「赤字でも市民に必要ならば、国の補助を受けたり、市の税金の一部を回したりしても継続しないといけない」と述べて理解を求めた。

 市は原町区でも2月27日、説明会を開催する。3月12日までは、住民からの意見を公募している。



https://www.medwatch.jp/?p=25051
2019年の10連休、診療報酬に関する施設基準等の一時的な緩和を―日病協 
2019年2月25日|医療現場から MedWatch

 今年(2019年)の10連休において、一部の医療機関に患者が集中することも予想される。その際に診療報酬に関する施設基準を一時的に満たせなくなる可能性もあり、一定の要件緩和をしてほしい―。

 日本病院団体協議会は2月22日の代表者会議で、厚生労働省に宛てて近くこうした要望を行う方針を固めました。
 
一時的な定員超過などが生じる可能性あり、診療報酬上の配慮を

 今上天皇陛下が今年(2019年)4月30日に退位され、皇太子殿下が5月1日に新たな天皇に即位されます。これに伴い、政府は4月27日から5月6日まで「10連休」とすることを決定しました(天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律)。

 10連休の間には、医療機関の稼働が縮小することになると考えられるため、救急患者などが一部の稼働医療機関に集中することが予想されます。その際、一時的に入院患者数が増加し、診療報酬の施設基準(例えば、看護配置など)を満たせなくなる可能性もあります。

 また、急性期病院から回復期・慢性期機能を持つ病院への転院等が一時的に困難になることも予想され、この場合、急性期病院において「重症度、医療・看護必要度」の基準を一時的に満たせなくなる可能性もあります。

国立大学附属病院長会議や日本病院会、全日本病院協会など15の病院団体で構成される「日本病院団体協議会」では、こうした可能性を踏まえ、一時的な「診療報酬に関する施設基準等のな緩和」を厚労省に要望する考えをまとめました。

具体的な要望内容は今後さらに詰められますが、山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長)から、▼10連休中の人員配置基準緩和▼救急患者の集中による定員超過入院にかかる減算緩和▼レセプト提出期限の延長―などが例示されました。

10連休中の医療確保に関しては、すでに厚労省から「都道府県ごとに救急医療機関などの稼働状況を調べ、必要な連携体制を確保するとともに、十分な情報提供を行う」、「休日加算などについては、従前どおり算定でき、投与日数制限を超える医薬品投与などを可能とする」旨の通知が発出されています。今般予定される日病協要望は、さらなる配慮を求めるものと言えるでしょう。



https://www.medwatch.jp/?p=25113
病院の人材確保・育成費用、厳しい経営環境の中で「医業費用の1.52%」と大きなシェア占める―日病 
2019年2月28日|医療現場から MedWatch

 医療の質向上のためには、「医療人材の確保・研修」に係るコストを投下する必要がある。日本病院会の会員病院を対象に行った調査では、病院の医業費用の「1.52%」を研究費、研修費、福利厚生費、諸会費、寄付金に充てていることが分かった。病院経営が厳しく、限られた財源しかない中で、比較的高額な費用を人材・確保に投下している現状が伺える―。

 2月26日の日本病院会・定例記者会見において、万代恭嗣副会長(JCHO東京山手メディカルセンター名誉院長)と医業税制委員会の安藤文英委員長(西福岡病院理事長)から、こういった状況が報告されました(日病のサイトはこちら)(関連記事はこちらとこちら)。
 
ここがポイント!
1 費用の1.52%を人材確保・育成に投下することは、病院に大きな負荷
2 認定看護師の資格取得研修中も、7割超の病院が給与・賞与を全額支給


費用の1.52%を人材確保・育成に投下することは、病院に大きな負荷

 医療の質向上は、すべての医療機関にとって永遠の命題と言え、その一環として「優秀な医療人材の確保」が極めて重要となります。このためには相応のコストが必要ですが、病院経営が厳しさを増す中では、このコスト捻出にも大きな苦労を伴います。

 こうした背景を受けて日病では、会員病院を対象に「医療人材確保と育成に係る費用」に関する調査を実施。321施設から有効回答が得られました(有効回答率は12.9%)。

回答病院の内訳を見ると、我が国の病院全体とは大きく異なる構成(▼全体では公的等の割合が18.9%だが、今回調査では62.0%と公的等の割合が大きい▼全体では200床以上病院の割合が小さい(31.5%)が、今回調査では74.1%と大きい―など)となったため、結果分析に当たっては「日本の病院の状況に近い姿」への補正が行われています。

補正を行ったうえで、321病院の「100床当たり医業収入」合計を見ると7296億7491万円。対して「100床当たり医業費用」合計は、7555億8188万円で、収支差額はマイナス259億円余り(マイナス3.43%)の赤字となっています。先頃発表された日病・全日本病院協会・日本医療法人協会合同の「2018年度 病院経営定期調査」では、病院の医業損益はマイナス6.46%となっており、安藤委員長は「近しい数字である」とし、今般の調査結果の信頼性を強調しています(関連記事はこちら)。

さらに日病では、「医療人材確保と育成に係る費用」として▼研究費▼研修費▼福利厚生費▼諸会費(学会費用など)▼寄付金―に着目。これら費用の合計は114億5116万円で、あり「100床当たり医業費用」の1.52%を占めています。

医業税制委員会では、この「1.52%」という数字について「ほとんどの病院の収支差額がマイナス(赤字)である中、全費用の1.52%をこの領域に充当するのは経営上、大変な負荷である」とし、病院が多大な努力をしている現状を強調するとともに、人材確保・育成に向けたさらなる支援の必要性(助成など)を訴えています。なお、現在の各種助成(地域医療介護総合確保基金や人材開発支援助成金など)については、交付を受けている病院が少なく、ハードル(交付要件)の高さが妥当かどうかも検証していく必要がありそうです。


認定看護師の資格取得研修中も、7割超の病院が給与・賞与を全額支給


次に、人材確保・育成に関する費用の中身を少し見てみると、▼95.3%の病院が雑誌、書籍等の購読料を負担している▼90.3%の病院が各種学会年会費を負担している▼98.1%の病院が各種学会等参加費を負担している▼97.5%の病院が各種学会等旅費を負担している▼64.2%の病院が研究経費を負担している▼94.1%の病院が内部研修会・勉強会の費用を負担している▼95.0%の病院が外部研修会・勉強会の費用を負担している―ことが分かりました。また8割程度の病院が住宅費等の補助を行う一方で、従業員の慰安や懇親会等の費用については、補助を行っている病院は4割程度にとどまっており、内容に応じた傾斜を付けていることも分かります。

 
さらに、外部研修・技術習得への支援状況について「認定看護師」「専門看護師」を例にとって見てみましょう。

まず認定看護師については、321医療機関中、272医療機関・84.7%に総数2951人が配置されています。認定されるためには、一定期間(6か月以上)、日本看護協会の所定プログラムを受講する必要などがあります。つまり病院を離れることとなりますが、▼75.7%の病院では、その期間中「研修扱い」(33.0%)または「出張扱い」(42.7%)とする▼期間中の給与・賞与について、71.0%の病院では「全額支給」する▼受講費用(入学金、受講料、旅費など)について、60.1%の病院が「公費として全額・一部負担」をし、9.3%の病院が「奨学金として助成」をし、4.7%の病院が「補助金として助成」をする―など、さまざまな形でバックアップをしています。なお、認定資格取得のために「退職」を求める病院はありませんでした。医業税制委員会では、優秀な看護師確保とともに診療報酬の獲得に向けて多くの病院が努力していると見ています。

また専門看護師については、321医療機関中、117医療機関・36.4%に総数288人が配置されています。やはり資格取得のための研修受講などに対し病院のバックアップが一定程度ありますが、認定看護師に比べて履修期間が長い(2年)ため、▼期間中「研修扱い」(11.8%)または「出張扱い」(15.0%)とする病院は28.3%にとどまる▼期間中の給与・賞与を「全額支給」する病院は27.7%で、給与等の支払いを「なし」とする病院も12.1%ある―状況です。ただし、受講費用(入学金、受講料、旅費など)については、回答のあった病院(152%)のうち3分の2で何らかの支援(公費として病院負担:78病院、奨学金で助成:14病院、補助金で助成:3病院)が行われています。

なお、「特定行為研修を修了した看護師」については、まだ若い制度(2015年10月からスタート)であるため、配置は56病院・17.4%にとどまり、費用助成などを行っている病院も少数派にとどまっています。

 
また、人材確保・育成全般に関する病院の考え方を見ると、▼45.8%が「人材の過不足で病院経営が阻害されている」と感じている▼31.8%が「自院のみでの人材育成に限界があると感じている▼人材育成ツールとしては、「院内研修」「育成プログラム実施」「院外セミナー」などが多く用いられている▼42.1%がグループ病院、39.3%が外部病院、20.2%が教育専門機関に人材育成への連携を求めている▼離職防止策としては「医師事務作業補助者や看護補助者の配置」(88.5%)、「子育て・介護中の職員への配慮」(87.9%)、「メンタルヘルス対策、ハラスメント対策等」(72.6%)、「ワークライフバランスの確保に向けた風土づくり」(72.0%)、「多職種による役割分担等」(68.8%)などが多い―ことなどが明らかになりました。

なお、医業税制委員会では、公立病院等には補助金が投入されている状況を横目で見ながら、「人材の育成・確保において設立母体の違いによる差があってはならない。人材育成・確保に関するコストの補填は、診療報酬本体の中に組み込んでいくべき」旨も提言しています。今回の調査からは、「公立病院等と私的病院等との間で、人材育成・確保に投下する費用には明確な差はない」ようです。補助金等の投入に鑑みれば、「民間病院において人材の育成・確保により大きなコストを投下しなければならない(大きなコストを投下しなければ医療従事者が確保できない)」と見ることもでき、それが今般の提言につながっているものと推察されます。



https://www.medwatch.jp/?p=25083
医師の働き方改革論議、「地域医療をどう確保するか」などの議論なく遺憾―日病・相澤会長 
2019年2月26日|医療現場から MedWatch


 医師の働き方改革に向けた議論が進められ、原則960時間以内(いわゆるA水準)、救急など地域医療確保に不可欠な場合には当面1860時間以内(いわゆるB水準)などの時間外労働上限案が提示されている。しかし、病院側では「想像を絶する努力」をしなければ、これをクリアすることはできない。またB水準医療機関として特定される要件として、「救急車受け入れ台数が年間1000件以上」などが示されているが、病院団体への事前のすり合わせもなく、非常に遺憾である。怒りすら覚える―。

日本病院会の相澤孝夫会長は、2月26日の定例記者会見でこのような見解を述べました。
 
 なお、同日の記者会見では、ほかに▼医療人材確保・育成費用に関する調査結果▼新専門医制度に関するアンケート調査結果―の報告も行われており、これらは別稿でお伝えします。
時間外上限クリアには、医師増員が必要だが、地域には医師がいない
厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」(以下、検討会)の議論が大詰めを迎えています。これまでに、勤務医の時間外労働上限(いわゆる36協定を結んでも超過できない基準)について、▼原則として年960時間以内・月100時間未満(いわゆるA水準)▼救急医療機関など地域医療確保のために必要な特例水準として年1860時間以内(いわゆるB水準)▼研修医など医療技能獲得のために必要な水準として年1860時間(いわゆるC1・C2水準)―という案が厚労省から示されています(関連記事はこちらとこちら)。
 
これら上限は2024年4月から適用されることとなり、すべての医療機関で「労働時間の管理」を徹底した上で、「労働時間の短縮」を可能な限り進め、A水準(年間960時間以内)クリアを目指すことになります。

ただし、救急医療機関などでは、労働時間短縮をしてもなおA水準をクリアすることが難しいと考えられるため、一定の要件を満たすことを条件に都道府県知事の特定を受けた上で、B水準(年間1860時間以内)クリアを目指すことになります(関連記事はこちらとこちら)。
 
2月23日の日病常任理事会では、「こうした上限をクリアするためには医師の増員が必要となるが、費用が嵩むことは当然として、そもそも地域に医師がいない。タスク・シフティング(業務移管)の必要性も言われるが、業務のシフトを受ける看護師等の教育も必要となり、そこでも費用が嵩むと同時に、やはり地域での看護師確保も難しい。想像を絶する努力をしなければ上限クリアはできない」との悲鳴が出ていることを相澤会長は紹介しました。

また、個別病院の努力には限界があるため、地域で、例えば「救急患者が各病院に分散されるような体制を組む」(1病院に救急患者が集中すれば、当該病院の医師負担が過重になってしまうため)などの、機能分化・連携の強化がどうしても必要となります。しかし、「病院の機能分化・連携の強化は20年以上も前から指摘されているが、十分には進んでない。これをあと5年間(2024年3月まで)で進められるのか」といった疑問の声も多数出ているといいます。

さらに、上限クリアにおいては、「宿日直」が労働と扱われるのか、労働ではないと扱われるのかが、非常に重要となります。例えば、週に1回、16時間の宿日直があったとして、これが「労働である」とされれば、それだけで時間外労働が768時間になってしまいます。この点について、検討会では「労働とみなされない宿日直許可の基準」を、現代の医療実態に沿ったものに改訂することが決まっていますが、その見直し内容は必ずしも明確になっておらず、医療現場での不安は非常に大きいようです(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

こうしたことを考えれば、上限クリアをするために「診療時間の縮小」や「救急搬送患者の受け入れ制限」などをしなければならない病院の出てくる可能性も小さくありません。これでは、「地域医療を守る」ことはできず、また病院によっては「経営の維持」が困難になるところも出てきそうです。相澤会長は、「時間外労働の上限をはじめとする働き方改革の制度づくりの議論はなされているが、その上で、どう地域医療を守るのか、といった議論がまったくなされていない」と指摘。

さらに、B水準(1860時間以内)として特定されるための要件として、「2次・3次救急医療機関」で、かつ「年間の救急車受け入れ台数が1000件以上」などの要件案が示されていますが、「同じ救急車受け入れでも、夜間と日中、平日と休祭日では、まった意味合いが異なる。1000件の根拠はどこにあるのか」と疑問を呈した上で、「要件案を示す前に病院団体と、実現可能性などをすり合わせるべきだが、そうしたことが一切ない。極めて遺憾であり、怒りすら覚える」と強い調子で述べました。

検討会では、「医師の健康確保」と「地域医療の確保」とは、トレードオフの関係(一方を求めれば、他方を犠牲にしなければならない)にはない、ことが確認され、「両立」が不可欠とされています。しかし、「労働時間の短縮」論議は、その必要性も含めてさまざま指摘・提案がされますが、「どのように地域医療を確保していくのか、どういった体制を組んで救急患者に対応するのか」などの議論は活発とは言い難い状況です。検討会では、「働き方改革」に関する制度を固める(2019年3月までに結論を得なければならない)場であり、後に、別の場などで「地域医療確保」論議を行うことになると思われますが、この議論が不十分な点に医療現場の不安は大きくなっているようです。



https://www.m3.com/news/iryoishin/662413
「二次医療圏の考え方を整理しないと」四病協
働き方改革、2024年度までの対応を懸念
 
レポート 2019年2月27日 (水)配信水谷悠(m3.com編集部)

 四病院団体協議会は2月27日の総合部会で、厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」や「医師の働き方改革に関する検討会」の内容について議論した。終了後に記者会見した全日本病院協会会長の猪口雄二氏は、「公立・公的と民間の役割分担になるであろうということはみんな理解しているが、約300の二次医療圏、構想区域を一つの規則で動かしていくのは無理なのではないか。そもそも二次医療圏の考え方を整理しないといけないのでは」などの意見が出たことを紹介した(地域医療構想に関するWGについては『病床機能報告「稼働病床数」は廃止、3項目を見直し』などを参照 https://www.m3.com/news/iryoishin/661408 )。


 WGで厚労省が提出した資料では、「公立・公的病院等」と「民間医療機関」で色分けした図やグラフが多くあった。地域医療支援病院は「公立・公的病院等」に分類されているが、民間の地域医療支援病院もあるため、総合部会では「不正確ではないか」との指摘があったという。また、大半が構想区域と一致する二次医療圏自体が人口数万人から数百万人まで幅があることや、ある医療圏に急性期病院が集中して隣にはない、これは良くないという議論になったとしても、「交通網が整備されて患者が行き来できれば何の問題もないではないか」という意見も出た。

 猪口氏は「調整会議で話して公立は公、民ができることは民でという考え方は出ているが、実際には人口が減っているところで公のベッドを減らしましょうと書いていても全然減らないで、地域包括ケア病棟に鞍替えをするとかいう話もある」と指摘。調整会議でそうした指摘が出ても、医療機関が減らすことを拒否しても法的拘束力がないため、「あと6年で2025年だから、本当に有効な動きになるのかどうか」という危惧が出席者からは上がったという。

働き方改革「5年間でどうなるか」

 医師の働き方改革に関する検討会については、最終的な結論がまもなく出る見通しだが、2024年度に時間外労働時間の上限などが適用されることになった場合に「(それまでの)5年間でどうなるのか」という危機感が示されたという。

 猪口氏は例として、これまで大学病院などで当直に対し時間外勤務手当は付けずに、それよりも少ない当直料で運用してきているが、「これを整理しないといけないが、そうすると今よりも医師の数がうんと必要になる。大学病院も基幹病院的なところも医師がふんだんにいるわけではないので、大変だ」と指摘。2016年に労働基準監督署から是正勧告を受けて診療体制を縮小するなどの対策をした聖路加国際病院を例に挙げ、「東京は急性期の病院がいっぱいあるので、他の病院がカバーする形で社会問題にはならないが、全国一斉に始まるとどうなるか」と説明した。



https://www.medwatch.jp/?p=25040
公立病院等の機能、▼代表的手術の実績▼患者の重症度▼地理的状況―の3点で検討・検証せよ―地域医療構想ワーキング 
2019年2月25日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 全国の地域医療構想調整会議において、今年度(2018年度)中にまず「公立病院および公的等病院の機能改革」に関する合意を行い、その合意内容の妥当性等を検証していくことになる。その際、(1)がんなどの代表的な手術等の診療実績(2)手術以外の診療実績や患者像(3)地理的条件―を確認し、公立病院・公的病院等(以下、公立病院等)が民間病院ではなしえない機能を担っているかを見ていくこととしてはどうか―。

 2月22日に開催された「地域医療構想ワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)で、こういった方向が概ね固められました。
 
ここがポイント!
1 手術実績が拮抗していても、患者の重症度を見ると「棲み分け」の可能性も出てくる
2 人口減少進む中では「急性期病院の集約」が喫緊の課題、医療圏の見直しも必要
3 病床報告制度見直し、2019年度から「病棟の築年数」報告も必要に


手術実績が拮抗していても、患者の重症度を見ると「棲み分け」の可能性も出てくる

 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急速に増加していくと見込まれます。そうした中では、より効果的かつ効率的な医療提供体制を構築することが求められ、各地域医療構想調整会議(以下、調整会議)において「地域医療構想の実現」に向けた議論が進められています。

調整会議では、まず「公立病院等の機能改革等」について、今年度(2018年度)中に合意を得ることとなっています。そこでは、「公立病院等でなければ担えない医療機能への重点化」が1つの指針として掲げられており、具体的な公立病院等が担うべき機能として、▼高度急性期・急性期機能▼山間へき地・離島など過疎地等における一般医療▼救急・小児・周産期・災害・精神などの不採算・特殊部門の医療▼がんセンター、循環器病センターなどの高度・先進医療▼研修の実施等を含む広域的な医師派遣拠点機能―など例示されています。

 前回(1月30日)のワーキングでは、各地域医療構想区域(以下、構想区域)において、「胃がん・結腸がん・直腸がんの手術」「乳がんの手術」「冠動脈バイパス手術」「脳動脈瘤クリッピング手術」などの代表的な手術を、どの病院がどの程度実施しているかという診療実績を見ていく方向が確認されました。代表的な手術実績を厚労省で分析したところ、多くの構想区域は次の4パターンに分類できそうなことが分かってきています(他のパターンも存在する可能性がある)(関連記事はこちら)。

【パターン(ア)】手術(例えば胃がんや乳がんなど)を相当程度実施する公立・公的等病院と民間病院とが存在する構想区域

【パターン(イ)】手術を一定程度実施する病院(公立・公的等、民間の双方)が数多く存在する構想区域(東京や大阪などの大都市に多いパターン)

【パターン(ウ)】複数の公立・公的等病院が一定程度の手術を実施する構想区域

【パターン(エ)】複数の病院に手術が拡散し、いずれの病院でも手術実績が低い構想区域
地域医療構想ワーキング(1)の3 190130
 
 ただし、【パターン(ア)】のような構想区域でも、例えば「公立病院等と民間病院とが『競合』している」構想区域もあれば、「公立病院等が重症患者を引き受け、民間病院では比較的軽症患者を診ている、という具合に『棲み分け』をしている」構想区域もあるでしょう。

そこで厚労省は、「手術以外の診療実績や患者の状態(患者像)を確認する」必要があると考えています。

例えば、実在のB構想区域では、代表的な手術の1つとされる「胃がん・結腸がん・直腸がんの手術」実績について、民間のA病院と公立病院等のB病院とか拮抗していますが(【パターン(ア)】に該当)、患者像を見ると「A病院が重症の患者(観血的動脈圧測定や人工呼吸器を実施)を多く受け入れている」ことや、手術以外の化学療法や放射線治療について「A病院がより多く実施している」ことが分かりました。B病院では、「公立病院等でなければ担えない機能」を、現時点では十分には果たしていないようです。

一方、別の実在するA構想区域では、複数の公立病院等が存在し、代表的な手術の1つである「胃がん・結腸がん・直腸がんの手術」についてそれぞれ一定の実績を持っています(【パターン(ウ)に該当】。しかし、患者像や手術以外の化学療法等の実績を見ると、「A・B・C3つの公立病院等では、重症患者を受け入れ、化学療法等も実施している」のに対し、公立病院等のD病院では「重症患者等の受け入れ実績が低い」ことが分かりました。この場合、D病院では、やはり「公立病院等でなければ担えない機能」を、現時点では十分には果たしていないようです。

 さらに厚労省では、「各病院の地理的状況を勘案する必要がある」と考えています。

 例えば上記のA構想区域では、実績のやや低いD病院は、A病院・B病院と近接しており(自動車で10-15分程度の距離)、D病院の手術機能等をA・B病院に移管したとしても、患者のアクセスを大きく阻害する可能性は小さいでしょう。

 また上記のB構想区域では、重症患者等の受け入れ実績がやや低い公立病院等のB病院と、A病院(重症患者を多く受け入れ)とは、一定程度近い場所に位置しています(自動車で25分程度)。この場合、民間のA病院のキャパシティが許せば、公立病院等のB病院が持つ手術機能等をA病院に移管することも選択肢の1つに入ってきそうです。

一方、別の実在するC構想区域では、多くの病院がありますが、2つの公立病院等が代表的な手術の1つである「胃がん・結腸がん・直腸がんの手術」を数多く実施(【パターン(ウ)】に該当)。重症患者等の受け入れも、両病院ともに積極的に行っていることが分かります。さらに、地理的状況を見ると、両病院は自動車で80分もかかる離れた場所に位置しており、A・Bいずれかに機能を集中した場合、例えば急性心筋梗塞や脳梗塞・脳出血などの緊急を要する患者に、適切な医療提供をできなくなる恐れが出てきます。こうした場合には、安易に「再編・統合」を考えることは危険でしょう。

このように、「公立病院等の機能改革等」に当たっては、次の3つの視点で検討・検証していくことが重要となります。

【視点1】:「胃がん・結腸がん・直腸がんの手術」「乳がんの手術」「冠動脈バイパス手術」「脳動脈瘤クリッピング手術」などの代表的な手術を、どの病院が、どの程度実施しているかという診療実績を見ていく(パターン(ア)から(エ)のいずれか、あるいは別のパターンとなるか)

【視点2】:手術以外の診療実績や患者像を確認し、「棲み分け」をしているのか、「競合しているのか」を見ていく

【視点3】:地理的条件(位置関係や移動に要する時間など)を確認し、再編・統合等による医療提供体制への影響を見ていく

 こうした方向はワーキングでも確認されましたが、例えば「地理的条件については、近隣の構想区域(2次医療圏)も併せて考えるべきである」(今村知明構成員:奈良県立医科大学教授)、「構想区域はもちろん、より広域的な都道府県単位での医療提供体制の確保も重要だ。そのため、都道府県単位の構想区域でも、十分な検討をする必要がある」(織田正道構成員:全日本病院協会副会長)といった注文も付いています。

 さらに中川俊男構成員(日本医師会副会長)は、「個別医療機関のキャパシティや、担当医師の状況などは、各調整区域でなければ把握しきれない。視点1-3を指標として、地域の状況を十分に勘案する必要がある」と強調。厚労省も同じ考えを示しています。


人口減少進む中では「急性期病院の集約」が喫緊の課題、医療圏の見直しも必要

調整会議で議論を進め、「病院の再編・統合が必要になる」との結論が出た場合でも、実際の再編・統合には大きな課題があります。とくに、経営母体が異なる場合には、「職員の身分・待遇をどう考えるのか」などの調整が難しくなります。

この点に関連し、2月22日のワーキングでは、▼自治体立の弘前市民病院と国立病院機構の弘前病院の再編(2022年の新病院スタートを目指す)▼市立の酒田市立酒田病院と県立の山形県立日本海病院の再編(日本海総合病院として2008年スタート)―の事例についてヒアリングが行われました。

後者は、稀有な「市立病院と県立病院との合併『成功』事例」として知られ、メディ・ウォッチでも、栗谷義樹理事長にインタビューを行っています。日本海総合病院では、統合後に診療実績が大きく向上するとともに、経営も改善。結果として自治体からの法定外繰入金が大幅に縮小しています。

さらに栗谷理事長は、今後、地域で人口減少が加速度的に進むことを踏まえ、▼急性期基幹病院の集約化(症例の確保による医療の質の向上はもちろん、働き方改革においても重要な要素となる)▼医療圏の見直し(より広域から患者を受け入れなければ、急性期病院の経営基盤が安定しない)▼行政によるアクセスへの予算確保(集約化により、患者のアクセスは一定程度悪化するため対策が必要)―が緊急に必要であると訴えています。

また、前者では、250床の市立病院(弘前市民病院)と342床(国立病院機構弘前病院)を再編・統合し、142床ダウンサイジングした中核病院を新設することになりますが、「統合までの間に、看護師等の退職が続く。新中核病院の発足までに、どのように両病院の機能を維持するかが当面の重要課題である」ことが紹介されました。

さらに、設立母体の異なる病院同士の再編・統合では、個別病院間の協議・調整(人事やクリニカルパス、使用薬剤など)はもちろん、設立母体同士(ここでは国立病院機構や自治体)の協議・調整の重要性も指摘されています。そこでは「住民への十分な説明」も重要となるでしょう。一般の住民は「医療機関へのアクセス」を重要事項と捉えがちですが、実は「医療機関が複数あり、症例が拡散すれば、医療の質が下がってしまう」という点を、丁寧に説明していくことが非常に重要と考えられます。


病床報告制度見直し、2019年度から「病棟の築年数」報告も必要に

なお、2月22日のワーキングでは、病床機能報告制度の見直しに関する議論も行いました。一般病床・療養病床を持つすべての医療機関(病院・有床診療所)は、毎年、自院の機能と、将来担おうと考えている機能、さらには診療実績などを都道府県に報告することが義務付けられています(病床機能報告)。この報告内容は、調整会議の論議においても極めて重要となるため、適切な報告が求められます。

一方で、報告を実施する医療機関の負担にも配慮する必要があります。過重な負担では正確な報告ができなくなってしまうためです。

厚労省は、こうした点を勘案し、▼2019年度の報告から「病棟ごとの築年数」の報告を求める(建て替え時期の目安を把握するため)▼2020年度の報告から「稼働病床数」の報告を廃止する(許可病床数と近似するため)▼2021年度から「通年データ」の報告を求める(6月単月の診療実績では、季節変動を勘案できないため)―という3点の見直しを提案しています。

見直し方向に異論は出ていませんが、「稼働病床数の報告廃止」について中川構成員は「2019年度から見直すべき」と提案。厚労省では「廃止の影響などを踏まえ、2020年度見直しとしたい」と考えており、今後の調整が待たれます。



https://www.medwatch.jp/?p=25092
<新専門医制度スタート後、地域の基幹病院で専攻医(研修医)数は激減―日病・末永副会長 
2019年2月27日|医療現場からMedWatch

 新専門医制度がスタートし、地域の基幹病院での専攻医数は激減した。大学病院での研修が増加していると考えられ、新専門医制度の改善に向けた幅広い議論が今なお必要である―。

 日本病院会の末永裕之副会長は、2月26日の定例記者会見で、こういった考えを明らかにしました(日病のサイトはこちら https://www.medwatch.jp/?p=25083)。
 
ここがポイント!
1 日本病院会の役員病院を対象に緊急アンケートを実施
2 基本・サブスペシャリティ領域、そもそもの「専門医の在り方」など改めて議論すべき


日本病院会の役員病院を対象に緊急アンケートを実施

 今年度(2018年度)から新専門医制度が全面スタートしました。従前、各学会が独自に行っていた専門医の養成・認定について、学会と日本専門医機構が協働して、統一的な基準で行うことで、「専門医の質の担保」「国民への分かりやすさ」を目指すものです。

 もっとも、「質を追求するあまり、専門医を養成する施設の基準が高くなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されてしまうのではないか」との声が医療現場に根強く、日本専門医機構、学会、都道府県、厚生労働省が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」こととしています。例えば、「従前、後期研修施設であった医療機関を、新制度下での連携施設等に組み込む」「東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の5都府県では、基本領域ごとの専攻医採用数に上限を設ける」などの対策が図られています。

ただし、こうした対策にもかかわらず、医療現場では「新専門医制度により、医師の地域偏在等が進んでいるのではないか」との指摘が後を絶ちません。このため日本病院会では「感覚ではなく、データに基づいて新専門医制度を検証する必要がある」と考え、日病役員が所属する病院を対象にアンケート調査を実施。73病院(回答率9割超)からの回答を分析した結果が、末永副会長から発表されたものです。

まず、2017年度の後期研修医(専門医資格取得を目指す研修医)数と、2018年度の専攻医(新専門医資格取得を目指す研修医)数とを比較すると、次のように大きく減少していることが分かりました。

【全 体】  2017年度:615名 → 2018年度:387名(マイナス228名・37.1%)
【内 科】  2017年度:238名 → 2018年度:151名(マイナス87名・36.6%)
【小 児】  2017年度:49名 → 2018年度:27名(マイナス22名・44.9%)
【皮膚科】  2017年度:11名 → 2018年度:4名(マイナス名7名・63.6%)
【精神科】  2017年度: 7名 → 2018年度:4名(マイナス3名・42.9%)
【外 科】  2017年度:99名 → 2018年度:67名(マイナス32名・32.3%)
【整形外科】 2017年度:39名 → 2018年度:20名(マイナス19名・48.7%)
【産婦人科】 2017年度:28名 → 2018年度:18名(マイナス10名・35.7%)
【眼 科】  2017年度:18名 → 2018年度:8名(マイナス名10名・55.6%)
【耳鼻咽喉科】2017年度:15名 → 2018年度:2名(マイナス13名・86.7%)
【泌尿器科】 2017年度:17名 → 2018年度:12名(マイナス5名・29.4%)
【脳神経外科】2017年度:14名 → 2018年度:13名(マイナス1名・7.1%)
【放射線科】 2017年度:14名 → 2018年度:9名(マイナス5名・35.7%)
【麻酔科】  2017年度:19名 → 2018年度:10名(マイナス9名・47.4%)
【病 理】  2017年度: 3名 → 2018年度:5名(プラス2名・66.7%)
【臨床検査】 2017年度: 0名 → 2018年度:0名(プラスマイナス0名)
【救急科】  2017年度:29名 → 2018年度:21名(マイナス8名・27.6%)
【形成外科】 2017年度: 8名 → 2018年度:8名(プラスマイナス0名)
【リハビリテーション科】2017年度:1名 → 2018年度:2名(プラス1名・50%)
【総合診療】 2017年度: 6名 → 2018年度:6名(プラスマイナス0名)

 この大幅減少について末永副会長は、「従前は地域の病院で専門研修(後期研修)を受けていたが、相当数が大学病院で研修を受けるようになったと考えられる。特に内科と外科の減少は大きく、このままでは地域で内科・外科を担う医師がいなくなってしまう。非常に大きな危機感を持っており、待ったなしの対策が必要である」と強調しました。

 新専門医制度のスタート前には病院団体を中心に、「大学病院が、地域の基幹病院からも医師(指導医)を引き挙げ、また研修医の確保もままならなくなるのではないか」との危惧がありましたが、これを裏付けるデータとなってしまいました。地域の基幹病院で医師確保がさらに難しくなっている状況が明らかになったと言えるでしょう。なお、ここからは地域偏在が進んでいるのかを見ることはできません。


基本・サブスペシャリティ領域、そもそもの「専門医の在り方」など改めて議論すべき

 このように、病院団体の懸念が一部実際のものとなっていることも手伝い、新専門医制度に対し、病院経営者は次のように厳しい評価を行っています。

▼43.8%が新専門医制度の開始は「時期尚早」と考えている

▼74.0%が新専門医制度で「地域偏在・診療科偏在が進む」と考えている

▼43.1%が新専門医制度の「新整備指針」(基本規定)を全面的に見直すべきとし、52.8%が修正の必要ありと考えている(問題なしはわずか4.2%)

▼基本領域については84.9%が、サブスペシャリティ領域については86.1%が、「見直し」「再検討」が必要と考えている

▼78.1%が「日本専門医機構に問題あり」と考えており、具体的には「学会主導である」「事務局体制に不備がある」などと考えている

 
また「専門医」の在り方については、現在、3年間の基本領域に関する研修を終えた医師から「専門医」を名乗れる(広告できる)方向で検討が進められていますが、26.4%は「サブスペシャリティ領域を終えてから名乗るべきではないか」と考え、中には「少なくとも10年以上の臨床経験がなければ『専門医』を名乗るべきではない」「基本領域の専門医と、サブスペシャリティ領域の専門医を分けた呼称とすべきではないか」との指摘もあります。

一般国民からすれば、専門医という呼称からは、どうしても「エキスパート医師」を想像しがちであり、今般のアンケート結果からも、「国民に分かりにくい部分がある」と考えている医師も相当程度いることが分かりました。今後の、広告に関する検討(医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会での議論)においても、こうした問題・課題が浮上してくる可能性があります。

 
もっとも批判ばかりではありません。今回のアンケートでは、新専門医制度の改善に向けて、次のような提案も行われています。相反する提案もありますが、まさに「意見が割れている」部分であり、医道審議会・医師分科会「医師専門研修部会」も含めた検討が期待されます。

▼地域・診療科偏在を解消するために、「地域ごとの、基本診療科ごとの医療需要把握を行う」「医師の計画的配置を行う」「総合医を育成する」「自由開業を制限する」ことなどを検討すべき

▼専門医はどのような医師かと言う議論を、「国民から見て理解しやすい専門医」といった原点に立ち返って議論するべき(あわせて能力に応じた呼称設定なども)

▼専門医や指導医にも診療上の利点(診療報酬上の加算など)を付与すべき

▼専門医制度と地域偏在対策とは切り離して考えるべき

▼各領域の地域ごとのニーズを算出し、それに合わせた専攻医の定員上限を設けるべき

▼専攻医数のせいぜい1.1-1.2倍を定員上限とすべき(現在は2倍超)

▼3年の研修で、本当に専門医レベルに達しているのか疑問も残り、十分に検討すべき

▼専攻医の給与体系を含めた処遇の在り方を明確にし、身分保障を行うべき



https://www.m3.com/news/iryoishin/660324
シリーズ 佐々江龍一郎の「英国GP、日本に戻る」
「病気ではなく患者を治療しろ」人生に関わる英国GP
なぜ日本は高度医療を提供しているのに患者の満足度が低いのか
 
オピニオン 2019年3月2日 (土)配信
佐々江龍一郎(NTT東日本関東病院総合診療科・国際診療部総合診療医)

 英国の家庭医の診療所で勤務していると机の上にある沢山の書類、絶え間ない患者からの電話と家庭訪問の要求などで忙殺されそうになることがある。英国の家庭医ひとりにつき登録患者は平均約1500人、フルタイムの家庭医がひとつの診療所に4~5人勤務しているとすると、診療所単位では大体6000~8000人を受け持つことになる。この数には近年大きな変化はないのだが、日本と同様に高齢化社会の到来、そして従来総合病院で診ていた患者を可能な限りプライマリーケア(家庭医)にシフトする長年の政策の結果、家庭医が担当する疾患の範囲は明らかに拡大し、また患者個々の病態も複雑化してきている。

 英国では勤務時間が増えることはないが、昨今では社会からの安全性、医療および接遇の質、EBMに対する期待も増し、患者と触れ合う時間が相対的に削られて来ている印象を受ける。診療以外の仕事に忙殺されそうな時には原点に戻り、何故自分が家庭医になったのかを考えることにしていた。

 私が2005年に英国ノッティンガム大学医学部を卒業した年に、英国でも研修制度改革があった。従来の制度では研修医が労働者として扱われ教育の側面が不十分であったことが問題視され、Modernising Medical Careerという機関のもと、研修制度は一新された。その結果、日本の初期研修と似たFoundation programという二年間の初期研修プログラムが必修化された。そして、私たちはその新プログラムの第一期生であった。2段階のマッチングを経て、私は、母校の関連病院を選択、勤務する事になった。新制度では旧制度とは異なり、家庭医療(GP)が選択科の中に積極的に組み込まれていたことも特徴的だった。

 私が家庭医療の初期研修を行なった診療所は5人のパートナーで経営されており、そこは家庭医療専門研修医の研修施設でもあった。初期研修医は通常家庭医が患者ひとりに対して10分の診察を行うところ、30分ほどの時間を与えられ、問診、診察、指導医への報告、フィードバック、そして必要があれば指導医とともに患者を診察して学ぶという実質的な研修をする。家庭医寮を肌で触れる経験するには、理想的な環境である。私の指導医はDr H、普段は笑顔が印象的な優しい先生だったが、ある日私が診た患者についてプレゼンテーションをしたところ、彼は珍しくきつい口調でこう言った。

 「Practicing General practice requires you treating a patient and not just the disease. We need to go back and listen to the patient」(家庭医寮では病気を治療するだけではなく、患者を治療をする必要がある。戻ってもう一度患者の話を聞こう)。

 この時診察をした48歳の女性患者は、長年原因不明の動機や息切れなどに苦しみ、様々な症状を訴えていた。これまで総合病院にも紹介されあらゆる検査を受けていたが、いずれも明らかな異常が指摘されず、途方に暮れていた。そんな患者に対し、私は症状や鑑別疾患ばかりに気をとられ、彼女の精神的や社会的な背景について何一つ問診を行なっていなかった。

 その後Dr Hとともに患者を再度診察したが、衝撃的だったのは彼女がDr Hを見た瞬間、私としゃべっていた時とは打って変わり、昔からの友人を見たかのような笑顔になったことだった。Dr Hは患者から彼女の不幸な結婚生活、叶わなかった夢や自己表現の難しさといった悩みを限られた時間の中で巧みに聞き出していた。診察が終わる頃には患者は笑顔になり、特に薬も要することなく満足な笑みを浮かべて帰って行った。病院での先進医療だけでは救えない患者がいることを身に染みて感じた瞬間であった。

 私が家庭医療に惹かれたのはこうした人間的な側面である。英国の病院は日本の様にフリーアクセスではないため、全ての患者は近所のいくつかの家庭医診療所から選択・登録する。緊急でない限り、患者はまずこの診療所の家庭医にかかることになり、必要があれば病院への紹介を受ける。つまり、家庭医は継続的に同じ患者を診る環境にあるため、医師と患者は常に二人三脚の関係となり、医師の患者に対する理解度は病気のみならず私生活にまで及び、深い。沢山の患者に対して医療以上に彼らの人生に関わり、地域へ貢献しているという実感も湧きやすいのだ。

 例えば看取りの時である。長い間を知っている患者を家で看取ることは医師にとって非常につらいことではあるが、同時に患者や家族が普段は見せない感情を垣間見ることができる。安らかに死を迎える患者の周りに輪になり、家族の方々が口を揃えて私に言うのだ、「長い間家族を支えてくれてきた先生には心から感謝しています、彼も天にいっても感謝をしているはずです」と。こうした何気ない言葉が、私にとって大変な時の支えであった。クリスマスの時期になると家庭医の診療所は決まって患者からのギフト、手紙で埋め尽くされる。地域の患者からの満足感と喜びが、まさに英国家庭医の活動の原動力となっていると感じる。

 英国では家庭医に対する患者の満足度は非常に高い。英国政府が2018年に220万人の患者を対象にしたGP Patient survey という大規模調査によると、診療所受診の総合評価に、「よい」と答えたのは83.8%(回答数75万人)にのぼる。一方、2014年のNHKの国際比較調査グループの調査によると、日本の医師の治療に満足している人は70%、医師を信頼している人は62%。統計に参加した31カ国中22位と、順位は高くない。

 ある日本人の医師がこんなことを言っているのを思い出す。「なぜ日本はこんなに高度医療を提供して、医療アクセスは良好なにも、患者満足度は低いのだろうか」と。これについて私は、「患者が求めているのは、単に高度医療やアクセスの良い医療だけではないからだ」と考える。継続的な関係から築かれた揺るぎない信用と安心感、患者中心のコミュニケーションや全人的なアプローチなど、人間的な側面が患者の満足度につながっていると英国の家庭医の経験から私は感じている。私も家庭医後期研修医時代には患者との診療をビデオで撮り、指導医と共にそれをよく振り返っていた。このため、現在英国の家庭医療では標準化されたコミュニケーションスタイルが定着している。

 日本ではかかりつけ医制度が広がりつつあるが、医療連携の「継続性」だけではなく、医師患者の関係を「継続」し、それをもとに包括的な「人間味」のある医療を提供できるようになれればと考える。


佐々江龍一郎
NTT東日本関東病院総合診療科・国際診療部 総合診療医

1981年4月生まれ。2005年英国ノッティンガム大学医学部卒業。英国の家庭医診療専門医の資格を取得し、キングスミル病院、ピルグリム病院、テームズミードヘルスセンター、WEST4家庭医療クリニックなど、英国内の医療機関で約12年間家庭医として活躍。2016年に日本の医師免許を取得し、帰国。2017年からNTT東日本関東病院総合診療科、国際診療部に勤務。



  1. 2019/03/03(日) 11:16:54|
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