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Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

10月7日 

https://www.medwatch.jp/?p=22737
消費税問題、税率が20%、30%に上がることも踏まえ「抜本的な対応」も検討すべき―日病・相澤会長 
2018年10月3日|医療保険制度 MedWatch

 医療に係る消費税問題について、病院経営が逼迫している点を踏まえて、当面は三師会(日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会)と四病院団体協議会(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会)の提言に沿って「特別の診療報酬プラス改定を維持した上で、個別医療機関の補填の過不足を調整する」ことで対応すべきだが、消費税率が今後20%、30%と上がっていくことも見据え「抜本的な対応」についても協議していく必要がある―。

 日本病院会の相澤孝夫会長は10月2日の定例記者会見で、このような考えを述べました。
 
ここがポイント!
1 当面は、病院経営の厳しさ踏まえて三師会・四病協の提言に沿った対応が必要
2 医師の働き方改革、安易に結論を急がず、慎重な検討が必要

当面は、病院経営の厳しさ踏まえて三師会・四病協の提言に沿った対応が必要

 保険医療については「消費税は非課税」であることから、医療機関等が納入業者から物品等を購入する際に支払った消費税は、患者や保険者に転嫁できず、医療機関等が最終負担しています(いわゆる「控除対象外消費税」と呼ばれる)。このため、物価や消費税率が上がれば、医療機関等の負担が大きくなるため、1989年の消費税導入時から「医療機関等の消費税負担を補填するために、特別の診療報酬プラス改定を行う」(以下、消費税対応改定)こととなっています(消費税導入時の1989年度、消費税率引き上げ時の1997年度および2014年度)。
 
しかし、診療報酬の算定状況は個々の医療機関等で区々であることから、個別医療機関の消費税負担を過不足なく調整することは極めて困難です。2014年度の消費税対応改定の結果分析でも、▼病院全体の補填状況は85.0%にとどまる(2016年度)▼特定機能病院に至っては61.7%の補填しかなされていない(同)—ことが明らかになっています(関連記事はこちらとこちら)。

来年(2019年)10月には「8%から10%への消費税率引き上げ」が予定されており、この状況を放置すれば、ますます「病院経営の逼迫」「補填のバラつき」が進む恐れがあります。そこで三師会と四病協では、こうした問題を解消するために、次のような仕組みを新たに創設することを提言。厚生労働省も来年度(2019年度)の税制改正に向けて同様の要望を行っています(関連記事はこちらとこちら)。

(1)特別の診療報酬プラス改定(消費税対応改定)による補填方法を維持する

(2)その上で、個別の医療機関ごとに、▼診療報酬本体に含まれる消費税補填相当額▼控除対象外消費税の負担額(医薬品・特定保険医療材料を除く)—を比較し、医療機関の申告に基づいて「個別の過不足」に対応する

 相澤会長は、昨今、病院経営状況が極めて厳しくなっている背景には、2014年度消費税対応改定による「補填不足・バラつき」が大きく影響しているとし、当面、「三師会・四病協提言に沿った対応をとるしかない」と強調しました。

 その一方で、消費税率が将来20%、30%と引き上げられていった場合、「診療報酬プラス改定の維持は難しくなる」とも見通し、「抜本的な対応」について改めて検討していくことが必要との考えも示しています。

 消費増税に対応するために診療報酬のプラス改定を行えば、それは患者負担・保険者負担にも跳ね返りますが、これは「消費税非課税」の趣旨と矛盾する側面もあります。このため、日病内部には「診療報酬プラス改定での対応には限界がある。別の手法を考えた方がよい」との指摘も強いと言います。相澤会長は、「『消費税率を大幅に引き上げる』となってから検討したのでは遅い」とし、国民も交えて、抜本的な検討を早急にしていくことの重要性を強調しています。

医師の働き方改革、安易に結論を急がず、慎重な検討が必要

 また「医師の働き方改革」について、厚労省の検討会(医師の働き方改革に関する検討会)では、これまでに▼宿日直許可基準を現在の医療実態を踏まえて見直す▼自己研鑽について「労働に近いもの」「純粋な自己研鑽に当たるもの」などに区分けしていく—方向が示されていますが、相澤会長は「ある程度の幅を持たせるべき」と指摘しています(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。

 例えば、前者の宿日直許可基準に関しては、仮に「救急外来でどこまでの処置は業務に該当しない」「入院患者の急変について、どこまでの対応は業務に該当しない」などと厳密なラインを引いたとしても、医療現場では「救急外来にも夜間の患者急変時にも必要な対応を必ずとる」(「看護師に指示を出すのみ」などの対応はあり得ない)ため、そうしたラインは「極めて非現実的である」と相澤会長は指摘。

 また、業務の内容などは、医療機関等の立地条件(都市部で医療資源が豊富なのか、地方で医療資源が少ないのか、など)や病院の種類(急性期か慢性期か、など)に応じて大きく異なり、一律のラインを引くことは極めて難しいでしょう。さらに、例えば後者の自己研鑽については、さまざまな要素が複雑に絡み合っており、一律に●●は労働、●●は純粋な自己研鑽と言いきることは難しく、「安易にラインを引いた場合、医師の業務範囲が狭くなり、現場が回らなくなる(さらに医療の質も下がってしまう)」懸念もあると相澤会長は指摘します。

相澤会長は、医師の働き方改革には、このような難しい問題があり「安易に結論を急げば将来に禍根を残す」とし、慎重に議論していく必要性を訴えています。



https://www.medwatch.jp/?p=22797
「ここに行けば正しい医療情報が得られる」サイト構築等の検討を―厚労省・上手な医療のかかり方広める懇談会 
2018年10月5日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 患者・国民が「正しい医療の情報」を入手するためのサイトなどを構築することで、患者側も安心でき、不要・不急な医療機関受診などを減らし、医師の負担軽減が一定程度はかれるのではないか。ただし、「分かりやすく」「おしゃれなデザイン」であることが必要不可欠であり、国・医療機関・患者団体・マスメディアなどが協働していくことが求められる―。

 厚生労働省が10月5日に開催した「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」(以下、懇談会)の初会合で、構成員からこういった意見が多数出されました。
 
ここがポイント!
1 「医師の働き方改革」と同時に、国民に「適切な医療のかかり方」を広めることが必要
2 医療情報が氾濫する中で、「正しい情報」を入手できるサイト等の必要性高まる
3 まず#8000、#7119のPRを充実してはどうか

「医師の働き方改革」と同時に、国民に「適切な医療のかかり方」を広めることが必要

 医師の過重労働を減らし、医療の質の維持・向上を図り、医療安全を確保するために「医師の働き方改革」が求められています。その際、患者側が「上手に医療機関にかかる」ことが同時に求められます(関連記事はこちら)。
 
 「医師の時間外労働の上限を●時間までとする」「医師の業務の一部を他職種に移管する」などの制度的手当を行っても、患者・国民側が「医療機関が空いているので、夜間に受診しよう」などと考えていたのでは、医師が過重労働からは解放されないからです。

10月5日の懇談会では、こうした患者側の意識・行動変容をどう促していくか、と言う観点で自由討議が行われました。そこでは、「適切な医療情報提供」の必要性を指摘する声が数多くでています。

医療情報が氾濫する中で、「正しい情報」を入手できるサイト等の必要性高まる

医療に関する情報はネット上にあふれるほどあります。しかし、実態は玉石混交で「何が正しい情報なのか」「どこに知りたい情報が掲載されているのか」が極めて分かりにくくなっています。佐藤尚之構成員(ツナグ代表取締役)は、「震災の折に行政からは非常に重要な情報が発信されたが、検索しにくく、かつ表現が難しすぎた。そこで、コピーライターにわかりやすく翻訳してもらい、『助け合いジャパン』のサイトに載せるなどした」旨の経験を紹介。

また鈴木美穂構成員(マギーズ東京共同代表理事)も、「●●という疾病にはこういうタイプがあり、こういう治療法がある、などの情報を整理し、ワンストップで提供できるようなサイトが必要」と指摘。ただし、鈴木構成員は「おしゃれで、分かりやすい」サイトにしなければ国民側はアクセスしないとも述べています。

さらに医療提供者の代表として参画する城守国斗構成員(日本医師会常任理事)も、こうした意見に賛同し、「ここに行けば正しい医療情報が入手できる」というサイトを、行政・医療機関・国民が協働して構築すべきとコメントしました。

 
ところで、医療機関情報を網羅的に入手できるツールとして、各都道府県の「医療機能情報提供制度」(医療情報ネット)があり、ここの医療機関検索サイトでは、都道府県内の病院・診療所の詳細な情報(機能、設備、診療報酬の届け出状況など)を入手できます。まさに、構成員が提案する「正しい医療情報」サイトと言えるものです。しかし、当該サイトの認知度はあまりに低く、また厚労省や各都道府県のコーポレイトサイト(ホームページ)のトップページから当該サイトにたどり着くことは、そう容易ではありません。「情報の正しさ」「既存資源の活用」などを考えれば、「医療機能情報提供制度」(制度内の医療機関検索サイト)のリニューアルが現実的な選択肢となり、今後の予算確保などが期待されます。

もっとも、佐藤構成員は「SNSのコアユーザーは900万人程度と推計され、実は1億人あまりの日本国民は、それほど活用していない。インターネットの検索サイトも、地方ではあまり活用されていないというデータもある。ネットを過信してはいけない」とも指摘。また吉田昌史構成員(宮崎県延岡市健康福祉部地域医療対策室総括主任)は、「高齢者の中にはネットを使いこなせない人も少なくない。世代に応じた情報提供方法を検討する必要がある」とコメントしており、適切な医療情報の提供に当たって、「ネット情報は医療情報を提供する1つのツールに過ぎない」点をきちんと認識しておくことが重要です。

なお、いかに「おしゃれで」「わかりやすい」医療情報サイトを構築したとしても、その運用には多くの苦労が伴います。たしかに新サイト等の構築時には、関係者も熱心に参画します。しかし運用段階になると、その「熱」も冷め、一部の人のみが運用に携わりますが、限界もあり、「情報の更新などが疎かになる」→「利便性が下がる」→「利用者・閲覧者が減る」→「運用担当者のモチベーションが下がる」→「さらに情報更新が疎かになる」という負のスパイラルに陥りがちです。こうした点についても、事前に十分に検討しておくことが必要でしょう。

 さらに、いかに優れたサイトを構築・運用しても、「本当に見てほしい、知ってほしい無関心層」に情報を確実に届けることは非常に難しいのが実際です。こうした「情報提供の限界」も踏まえた議論が期待されます。

まず#8000、#7119のPRを充実してはどうか

 不要・不急の医療機関受診を適正化するために、国と各都道府県は「子ども医療電話相談事業(#8000)」と「救急相談センター(#7119)」を開設しています。例えば、夜間に子どもの具合が悪くなった際、「様子を見るべきか、医療機関を受診すべきか、救急車を要請すべきか」が一般人にはなかなか判断できず、「大事に至ってはいけない」と考え、救急搬送の要請等をしてしまいがちです。その際、まず#8000に電話することで、担当の小児科医・看護師から「どう対応すればよいか」の指示を得られるものです。

この仕組みについても認知度が低く、デーモン閣下構成員(アーティスト)は「厚労省から聞いて初めて知った。まず、この素晴らしい仕組みのPR・周知を行うべきではないか」との考えを述べています。
 
なお、「医師の負担軽減のために、患者にも上手な医療機関へのかかり方を考えてもらう」となれば、一部の患者や国民は「受診抑制をするのか」と誤解しがちです。この点、根本匠厚生労働大臣は「決して受診抑制を目指すものではない」と強調していますが、豊田郁子構成員(患者・家族と医療をつなぐ特定非営利活動法人架け橋理事)は、「都市部で医師不足ではない地域で、『医師の負担が過重』と伝えても患者や国民には理解されにくい。丁寧に説明していくことが必要」と訴えました。豊田構成員は「高齢者等ではインターネットを十分に活用できない人も少なくない。医療機関の多職種による患者支援を充実する必要がある」とも指摘しています。
 
懇談会では、月1回程度のペースで議論を深め、今年(2018年)12月頃に議論の経過などを「医師の働き方改革に関する検討会」に報告する予定です。その際、例えば都道府県の「医療機能情報制度における医療機関検索サイト」のリニューアル案などができていれば、そうした成果物を報告することなども考えられそうです。



https://www.m3.com/news/iryoishin/631952
労基署の介入、医療不信時の警察と同じ違和感 - 山口育子・認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長に聞く◆Vol.2
働き方改革「医療の特殊性を踏まえて」
 
インタビュー 2018年10月5日 (金)配信聞き手・まとめ:高橋直純(m3.com編集部)

――改めて審議会の委員の活動についてお話をお伺いします。2017年度は国で29、医療団体なども含めると、95の委員会に参加していたとのことですね。
 患者会の方は、自分たちの疾患に対してプラスになる施策を得ることが目的だと思いますが、COMLは特定の疾患に対する団体ではないのでお声がけいただくことが多いのだと思います。

 そのような立場で、どのような働きをすべきかを試行錯誤してきましたが、一番大きな変わり目が2015年3月に群馬大学と東京女子医科大学が特定機能病院承認取り消しになったことを受けて設置された「大学病院等の医療安全に関するタスクフォース」です(『6月から集中立ち入り検査、特定機能病院』を参照)。

 3人の顧問のうちの1人として参加し、22病院の集中立ち入りに同行。厚労省や地方厚生局の職員も含めて誰よりも多く行ったのだそうです。その全てでリポートを作り、最終的には総合的なリポートを3枚にまとめて提出しました。2017年度から特定機能病院では医療安全監査委員会を設置することが求められるようになり、委員には「医療を受ける者その他の医療従事者以外の者」が外部から参加することが義務付けられました。私も8病院で委員を務めています。

――いわゆる団体選出の委員だと、その組織の事務方や調査担当とともに発言内容を検討することも多いと思います。山口さんもブレーンと相談したりするのでしょうか。
 定まったブレーンがいるわけではありませんが、さまざまな方から情報をいただきます。また、意識していろいろな立場の人の意見を聞くようにはしています。患者代表のような位置付けで呼ばれますが、これまでに2万件の相談を聞いてきたことが私の発言の基礎になっています。

 ただ、患者の声としても、いろいろな方が発言する方が健全だと思って、現在は発言する人を養成する取り組みもしています。それまであった「医療で活躍するボランティア養成講座」をリニューアルする形で、基礎コース「医療をささえる市民養成講座」を開催しています。基礎コースを修了した人を対象に「医療関係会議の一般委員養成講座」を昨年度から始めました。7回の講座で、最後に模擬検討会で合否判定をして、合格者の中から希望者を「COML委員バンク」に登録するようにしています。模擬検討会には厚労省の医系薬系技官の課長補佐レベルの方々が協力してくださっています。既に7人がバンクに登録されて、実際に委員会などでも活動し始めています。委員会に参加する際の肩書は「COML委員バンク登録会員」で通用しています。

――厚労省の使い勝手のいい委員が選ばれる可能性はないでしょうか。
 見ていただくと分かると思いますが、現在の厚労省の審議会などは形ばかりのアリバイ作りの場ではなく、侃々諤々議論が行われていると思っています。私も厚労省が嫌がる意見を出すこともあります。それでも委員になってくれと言われるわけです。最後の模擬検討会での採点基準も、その人の考えの内容を採点しているのではなく、きちんと的を射た内容をタイミングよく、分かりやすく適切に発言できるかということに視点を置いています。

――COMLができてから28年間、または山口さんが理事長になってから日本の医療はどのように変わってきたとお感じでしょうか。
 全体的には良く変わってきたと思っています。私が患者になった頃は情報が完全に閉ざされていた時代で、患者のことより医療者の都合が優先されて、全部決められていたわけです。しかし、時代とともに情報提供が積極的に行われるようになり、コミュニケーションや接遇にも意識が向くようになりました。今はふんぞり返っている医師なんてほんとに減りました。

――著書のタイトルでもある「賢い患者」には、どのようにしたらなれるのでしょうか。
 子どもの頃からの意識付けだと思っています。その一翼を担えればと思い、仲間たちと2014年に「いのちとからだの10か条」を作成しました。

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――医師の働き方改革など医療提供体制に関連する委員会でもご発言されていますね。
 例えば当直明けの手術など患者から見ても危険なことは、改善する必要があるだろうと思います。ただ、今の働き方改革の議論を聞いていると時短ばかりに目が行きすぎていて、もっと多様な働き方を認めることが大事だと思うのです。やはり私は医師であれば研修医や専攻医のときなど集中的に学ばないといけない時期が必ずあって、それを一律時間でくくってしまうと成長にブレーキがかかってしまうことになるのではと思います。

 他の職業と同じようなことを医療に求めたときに、医師不足の地域では完全に崩壊してしまいます。だから、医療の特殊性を踏まえて、具体的に考えていく必要があると思います。現在、労基署が医療機関に入っているというニュースが多いですが、医療への不信感が高まったときに、医療のことを理解してない警察がズカズカ医療現場に入っていった際に抱いた違和感と同じものを感じています。

 地域偏在も何とかしないといけない。同じ日本の中にいて医師がころころ代わっても、来てもらえるだけましという地域もあります。どの地域でも安心して医療が受けられる仕組みづくりができるかが求められています。

 もちろん働く人の環境も整えなくてはならず、そのためには、患者も医師の実態を知らなくてはいけないです。電話相談でも「何でこんな重症の患者がいるのに夏休み取るんだ」とか、「夜中でも何で駆けつけてこないんだ」と言う人もいますが、それを求めていたら医療制度自体がつぶれてしまいますよね。それに、夜遅くや土日に説明を求めて医師の負担を増やしていることも見直し、「家族が病気で医師から説明を受けるので、仕事を抜けさせてください」と言えるように、社会全体として理解していく必要があると思っています。



https://www.m3.com/news/iryoishin/631949
シリーズ 2018秋◆著者インタビュー
29の政府審議会で委員「医療を受ける側の声を」-山口育子・認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長に聞く◆Vol.1
電話相談は月150件、医療不信ピーク時の3分の1
 
インタビュー 2018年10月1日 (月)配信聞き手・まとめ:高橋直純(m3.com編集部)

 「賢い患者になりましょう」と呼びかけ、医療に関する電話相談や病院訪問などを行う認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏がこのほど、岩波新書で『賢い患者』を発刊した。COMLは1990年に発足、電話相談や病院訪問などだけでなく、医療政策を決める検討の場にも患者代表として参画することが多い。山口氏は2017年度、29の政府審議会委員、95の医療関連の委員を務めた。新刊に込めた思い、患者の医療参加のあり方、創始者・辻本好子氏の思い出などを聞いた(2018年9月8日にインタビュー。全3回の連載)。

――m3.comの記者は日々、厚労省の審議会などを取材していますが、山口さんがいつも参加しているような印象があります。どのくらいの委員会に参加しているのでしょうか。
 昨年度は厚労省、文科省を合わせて、政府の審議会などでは29の委員会に呼んでいただいております。そのほか、医療関係団体の役員や、倫理審査委員会の委員、特定機能病院の医療安全監査委員会などを合わせると年間95の委員会で委員を務めていました。京大病院の医療安全監査委員会では委員長を仰せつかっており、依頼があったときは「何かの間違いですか」と驚いて電話したほどです。

――たくさんの委員への依頼が来るのはなぜでしょうか。

山口育子・認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長
 1990年代後半ぐらいから、ちらほらとCOMLに依頼が届くようになりました。最初は大阪府の会議などでしたが、次第に厚労省からも依頼が来るようになりました。だんだん医療政策を議論する場に、患者の立場の委員を誰か入れなくてはという空気になってきました。

 私はこのような会議に出るまでに、医療に関する2万件以上の電話相談を受けてきました。一般の人がどう考えるか、どんなことに不安を持つのか、今までどんな迷いがあったか、山のようにお聞きしてきていることを私の中の基礎にして、発言しています。

 国の会議では傍聴者が100人以上になることもあり、最初の頃は「患者の立場の人間が何を言うんだ」と刺すような視線を感じていました。私自身も「ずれたこと言っていないだろうか」「流れの中でこのタイミングでいいんだろうか」と悩みながら、試行錯誤してきました。

 一般の立場での参加が私1人しかいないという会議も多いので、必ず1回以上発言することを自分に課してきました。私が発言しなかったら、医療を受ける立場の者の発言が一切入らないことになってしまうから。今まで1回も発言しなかったのは、残り15分しか参加できなかった会議だけです。

――改めてですが、COMLはどのような団体なのでしょうか。
 1990年9月に活動をスタートしました。「賢い患者になりましょう」と呼びかけて、患者が自立・成熟し、主体的に医療参加することを目指しています。患者と医療者が対立するのではなく、“協働” する医療の実現が目的です。創始者・辻本好子が「医療を受けるときも、ほかの消費活動と同じように、しっかり吟味、選択しよう」と、Consumer Organization For Medicine and Law の頭文字を取って「COML(コムル)」と名付けました。

 ただ、活動を続けて行く中で、「お金を払っているのだから、良い医療を提供して」みたいな風潮が世間で出てきて、そういう意味で使っていたわけではないので、今は英語名称は使っていません。強いて言うなら、ConsumerよりはCommunicationの意味が強いです。

 辻本はもともと愛知県在住だったのですが、知り合いだった大阪の弁護士さんたちが「大阪に出てくるなら支援するよ」と言ったことがきっかけで、本気にして大阪で立ち上げました。大阪はNP0活動においても「やってみなはれ精神」が生きていて、何となく面白そうなことやっているというだけで話が進むところもあります。東京に姉妹グループを作ろうとした際は、組織の裏付けや規約を求める声が多くて、なかなか進みませんでした。

――活動経費はどのようにまかなっているのでしょうか。
 現在は認定NPOなので、会員からの会費と、寄付金扱いになる賛助会員費、あとは事業収入です。一番多いのは私の講演による収入ですが、それだと不安定なので、今は団体賛助会員の拡大を目指しています。

――どのような活動をしているのでしょうか。
 活動の柱は電話相談で、これまでの総数は6万件を超えています。現在は月150件前後ですが、医療不信が過熱していた2003、2004年頃は月500件を超えていました。1999年から目に見えて不信感を訴える相談が増え始めて、ピークが2003年、2004年でした。最近は本を出版し、メディアで紹介される機会が増えた影響で少し増える傾向にあります。電話相談を受けているのはボランティアも含めて、研修を受けたスタッフ10人程度です。

――新刊『賢い患者』では、たくさんの相談事例が具体的に紹介されています。
 その人が“医療”だと思ったことで電話をかけてこられるので、内容はとても幅広いですね。最近、多いのは症状について相談。特に精神疾患の方の相談は10年前からすると倍増して、全体の2割を超えるようになりました。情報社会になったことで逆に基本的なことを相談してくる方も増えている印象です。次に多いのはやはりドクターへの不満です。

 年に2回、医療者の協力を得ながら「COML110番」という集中相談をやっていますが、7月に開催したときに毎日放送がお昼のローカルニュースで紹介してくれ、放送が流れた瞬間から5台の電話が一斉に鳴り出しました。何であんな一瞬にして相談したいことが思い浮かぶのか不思議なぐらい。2日間で130件も届きました。ニーズはあるんだなと感じています。相談は無料で、ご負担は電話代だけです。医療者からの相談も届くのですよ。

――普通の人にとっては、医療について相談できる場がないということでしょうか。
 病院の患者支援室、健保組合・ 生命保険などの健康ダイヤル、がんだったらがん診療連携拠点病院の中の相談センターなどもあります。行政機関では都道府県や保健所に設置されている医療安全支援センターも相談を受けていますが、そこの初任者研修には長年COMLから講師を派遣しています。

 それらこれらの相談機関との違いですが、私どもは時間を制限せずに十分にお聞きすることにしています。もちろん私たちが医療に介入した答えを出すわけではなく、「何でお医者さんに質問できないのか」「聞いたけど分からないというなら、どんな聞き方をしたのか」をお聞きして、相談に至った背景を把握していくと、次にどんな行動を取ればいいかというアドバイスはできます。

 本来、医療者とコミュニケーションを取ってそこで解決できるのが一番良いと思いますが、やっぱり今は医療現場が忙しすぎることや、患者さんの側もちょっと遠慮しすぎていたり、不信感を持っていたりで、直接のやり取りができてないことはあると思います。

――他にも「模擬患者の研修」や「病院探検隊」などもされていますね。
 OSCE(オスキー:客観的臨床能力試験)の中には医療面接があり、模擬患者役をする人を派遣しています。2020年度からは臨床実習修了後のOSCEも予定され、そのトライアルも始まっています。そこに派遣する模擬患者は標準化されてマニュアル的ですが、もっとコミュニケーション能力を高めてもらうためのSimulated Patientと呼ばれる模擬患者も派遣しています。これは、患者の症状や背景を詳しく設定して演技をするということになりますが、台詞があるわけではなく、その人のキャラクターがにじみ出てきます。設定の数は100を超えています。

 演技やアドリブ力も重要ですが、相手とのコミュニケーションで自分がどんな気持ちになったか、自分の心の動きをしっかりと捉えて、きちんとフィードバックできることが求められます。自分の心の動きに鈍感だったらできないことに加え、俯瞰して自分を見られるような人でないとつとまらないです。

 最盛期は年間120回ぐらい派遣していましたが、最近は60回ほどでしょうか。私ども以外にも大学を中心に模擬患者を養成しているところは増えてきています。

――「病院探検隊」はどのような活動でしょうか。
 これまで88の医療機関から依頼を受けて“出動”しました。大学病院では8病院、診療所なども多いです。患者視点で医療機関を改善しようとしているのは時代の変化だと感じます。待合室一つをとっても、実際に患者として待つのと、働いている人が見ているのとでは感じ方が違いますよね。医療者が見えてないところが見えるのです。

 2015年には慶應義塾大学病院から「臨床研究中核病院に名乗りを上げたら、厚労省から待ったがかかった。患者目線の欠落と言われた」とのことでした。そこで立ち上げられた病院改革タスクフォースの委員になり、病院側の強い要望で1カ月後に病院探検隊を実施。フィードバック内容をポイントにして改革が進められました。2016年には慶大病院の院長の勧めもあり、千葉大学医学部附属病院の院長からもお声がかかりました。

 さまざまな地域で、地域の人たちで病院探検隊を結成し、患者の視点を入れて改革する病院が増えることが夢の一つでもあります。



https://www.medwatch.jp/?p=22692
新たな指標用いて「真に医師が少ない」地域を把握し、医師派遣等を推進―医師需給分科会 
2018年10月1日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

地域における「医師の多い少ない」は現在、「人口10万対医師数」を用いて判断しているが、ここに「地域住民の年齢・性別」「医師の年齢・性別」「患者の流出入」などを加味して「真に医師が不足している」区域を適切に把握する。その上で、相対的に医師多数区域から、医師少数区域への医師派遣などを促していく—。

9月28日に開催された「医師需給分科会」(「医療従事者の需給に関する検討会」の下部組織)で、こういった方向が概ね了承されました。

また診療科偏在の是正も重要テーマとなっていますが、▼まず「産科・小児科」について暫定的な偏在指標を定めて、医師確保対策を進める▼外科を初めとする他の診療科についても、偏在指標の検討を進め、将来的に「医師養成計画」などにも反映させていく—方針が概ね固められています。
 
ここがポイント!
1 地域の人口だけでなく、「性別・年齢別の受療率」や「患者の流出入」なども勘案
2 医師偏在指標に基づき「真に医師が少数の地域」を抽出、そこに重点的に医師派遣
3 診療科別の医師偏在指標も今後検討、ただし産科・小児科について「暫定指標」を設置
4 医学部の地域枠、「趣旨に沿わない運用」をしている大学も一部に

地域の人口だけでなく、「性別・年齢別の受療率」や「患者の流出入」なども勘案

医師の地域偏在・診療科偏在が大きな課題となっています。「医師需給分科会」と「医療従事者の需給に関する検討会」では、昨年(2017年)後半に偏在対策是正案を検討し、それをもとにした改正医療法・医師法が今年(2018年)7月に成立しました。

改正法では、▼医師少数区域等で勤務した医師を評価する制度▼都道府県における医師確保対策の実施体制の強化(新たな「医師確保計画」を策定など)▼医師養成過程を通じた医師確保対策の充実▼地域の外来医療機能の偏在・不足等への対応—などに関する枠組みを設けており、今後、施行にむけて具体的な仕組みを医師需給分科会などで詰めていくことになります。

 
9月28日の医師需給分科会では、まず都道府県における「医師確保計画」の策定に向けて、(1)医師偏在指標の策定(2)医師少数区域・医師多数区域の設定―を議題としました。今年度(2018年度)中に厚労省で、偏在指標などを定めた「医師確保計画」作成のための指針を設け、来年度(2019年度)に各都道府県で「医師確保計画」を策定。翌2020年度から具体的な医師確保対策を稼働させるスケジュールになります。

まず(1)の「医師偏在指標」について見ていきましょう。

現在でも、医師の地域偏在を是正するために「2次医療圏における人口10万対医師数」を指標とし、さまざまな取り組みが行われています。ただし、この「人口10万対医師数」だけでは、地域の医療ニーズを的確に把握できておらず、「真に医師が少なく、医療ニーズに対応しきれていない」地域のあぶり出しが十分になされていない(結果として医師偏在対策が十分に機能していない)との指摘があります。

そこで厚労省は、「人口10万対医師数」に次のような要素を加味した、新たな「医師偏在指標」を設け、これを基にした偏在対策を進める考えを提示しました。

(i)年齢や性別によって受療率は大きく異なる(乳幼児・高齢者では受療率が高く、地域の医療ニーズは多くなる)ため、「地域の年齢・性別の構成」を調整する

(ii)患者の流出入(例えば、東京都では、「昼間の人口は多いが、夜間の人口は少ない」、さらに「近隣県から多くの患者が受診する」といった患者の移動がある)を勘案する

(iii)「医師が比較的多い2次医療圏」の中にも、「医師が少数の区域」がある点を勘案する

(iv)医師の年齢・性別によって医療提供量が異なる(例えば、高齢になると労働時間が短くなりがちで、高齢医師の多い地域では、より多くの医師が必要となる)ため、「医師の年齢・性別の構成」を勘案する

 
 2次医療圏ごとに、次の計算式で「医師偏在指標」を算出し、比較することで「A医療圏では、B医療圏に比べて相対的に医師数が多い(少ない)」と判断し、「真に医師が少ない(多い)地域」を抽出することが可能となります。

●医師偏在指標=標準化医師数/[地域の人口 ÷ 10万 × 地域の標準化受療比

・標準化医師数とは、「年齢・性別の平均労働時間を調整した勘案した医師数」である[Σ性年齢階級別医師数×(生年齢階級別平均労働時間÷全医師の平均労働時間)]

・地域の標準化受療比とは、「受療率について、地域の年齢・性構成の違いを調整したもの」である[地域の期待受療率÷全国の期待受療率(Σ【全国の生年齢階級別受療率×地域の性年齢階級別人口】/地域の人口)]

また(ii)の患者の流出入については、都道府県ごとに「昼間・夜間人口の実態に応じた重み付け」「患者住所地を基にした流出入の調整」を行います。(iii)の「2次医療圏の中にある医師少数区域」については、後述する別途の対応を行うことも提案されました。

 なお、無床診療所の地域偏在という問題もあります。無床診療所は都市部に多く、医師数は多くなりますが、入院医療ニーズは対応できません。こうした問題について厚労省は、まず「診療所の地域偏在に関して現状分析」を行い、それをもとに対応策を検討する考えを改めて説明しました。

  
 こうした考え方に医師需給分科会の構成員からは、特段の異論は出ていませんが、いくつか「将来を見据えた提案」がなされています。

 例えば山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「患者に適切な受療を促すような取り組みをしなければならない(さもなければ医師が何人いても不足してしまう)」と指摘。この点、医師働き方改革の一環として、厚労省で別途の検討が進められます(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。

 また、医師偏在指標では「相対的な医師の多い少ない」は分かりますが、「絶対量」は明らかになりません。福井次矢構成員(聖路加国際大学学長)は、将来的に「本来、医師が何人必要なのか」という点も検討課題とするよう要請しています。後述するように「医師の多い地域」から「医師の少ない地域」への医師派遣等が進められますが、「医師の多い地域」で医師が「充足しているのか、本来、必要な人員が確保されているのか」は明らかになっておらず、こうした点も将来的に考慮しなければならないと福井構成員は強調しているのです。仮に「医師の多い地域でも、本来必要な人員は確保されていない」のであれば、そこから医師を派遣すれば、当該地域の医師にも「さらに過度の負担」が強いられることにつながってしまうことから、将来的には重要な検討テーマになってきそうです。

 一方、北村聖構成員(国際医療福祉大学医学部長)は、「臨床に携わる医師養成には8年(学部教育6年、初期臨床研修2年)かかるが、8年後には人口動態や疾病構造も変わる。そうした点も考慮すべき」と提案。今後検討テーマとなる「将来の医師養成計画」などの中で、こうした点が勘案されることになるでしょう。また、各都道府県の作成する「医師確保計画」は3年単位となっており、定期的に最新の人口動態等を踏まえたアップデートが行わることになります。

医師偏在指標に基づき「真に医師が少数の地域」を抽出、そこに重点的に医師派遣

 前述の医師偏在指標(計算式)によって、全国335の2次医療圏すべてについて、医師の「相対的な多い少ない」が、数値化されます。厚労省は、この数値に基づいて、▼上位の地域を「医師多数区域」▼下位の地域を「医師少数区域」—と設定。医師多数区域から医師少数区域への医師派遣等を促していくことになります。具体的に、医師少数区域を「下位●か所」とするのか「下位●%」とするのか、などは、今後、施策の詳細なども踏まえて検討していくことになります。

 また、前述(iii)のように、「2次医療圏全体では医師少数ではないが、その中にある『真に医師が不足している区域』」については、都道府県と厚生労働大臣が協議した上で、「医師少数区域」と設定できる仕組みとなる模様です。「市町村単位」や、より小さな「中学校区単位」など、協議によって柔軟に「医師少数区域」を設定できるような仕組みが期待されます。

 この考え方も医師需給分科会で了承され、今後、具体的な「基準」(上記の「下位●%」など)を詰めていくことになります。その際、「道路事情なども勘案すべき」(神野正博構成員・全日本病院協会副会長)、「実際に医師派遣が行われるよう、『週単位での医師派遣』などの好事例を各都道府県に示していく必要がある」(永井康徳構成員・医療法人ゆうの森理事長)といった提案がなされています。

診療科別の医師偏在指標も今後検討、ただし産科・小児科について「暫定指標」を設置

 医師偏在は「地域」だけではなく、「診療科」でも大きな問題となっています。ただし、前述の医師偏在指標では、「地域の医師数が多いか、少ないか」を把握できますが、例えば「外科医が少ないのか、小児科医が少ないのか」などは把握できません。

そこで厚労省は、「診療科別の医師偏在指標」策定にも取り組む考えを示しています。そこでは、診療科ごとに「関連の極めて高い疾患や診療行為」等を設定し、当該疾患の受療率や、人口動態、将来の技術進展などの要素を総合的に勘案していくことになります。ただし、データ取集や分析には時間がかかるため、2019年度に各都道府県が作成する「医師確保計画」には盛り込まず、「将来の医師養成計画」などに反映させることになりそうです(例えば、新専門医制度における基本領域ごとの専攻医定員上限などに反映させる)。

ただし、▼産科▼小児科―の2診療科については、医療計画における「5疾病・5事業および在宅医療」の中に盛り込まれた政策医療であることや、地域の医療ニーズが高いことなどを踏まえ、「暫定的な医師偏在指標」を設定し、これを都道府県の作成する「医師確保計画」(2019年度に作成)に盛り込むことになりました(将来の医師養成計画などにおいては、前述した「診療科別の医師偏在指標」を、精密に検討して設定し、これを用いる)。

産科では、地域における▼15-49歳女性人口当たりの分娩件数▼性・年齢等による平均労働時間—を基準とし、小児科では、地域における▼性・年齢調整を行った15歳未満人口▼性・年齢等による平均労働時間—をベースに「暫定的な偏在指標」を設定する方向が確認されています。

医学部の地域枠、「趣旨に沿わない運用」をしている大学も一部に

ところで、現在でも地域偏在是正に向けた重要施策の1つとして「大学医学部の地域枠」がありますが、羽鳥裕構成員(日本医師会常任理事)は「一部大学では、入学後に『地域枠』への手上げをさせるなど、地域枠を十分に活用していない(例えば地域枠として10名の定員増を行うが、実際の地域枠は1、2名とするなど)」ことを問題視。

この点、医療法・医師法改正案の審議において、衆議院では「地域枠は、地域枠以外の入学枠と『峻別』した上で学生の募集をすることにより、必要な地域枠学生の確保が確実になされるよう厚労省と文部科学省が必要な対応を行う」旨の附帯決議(いわば宿題事項)がなされており、羽鳥構成員の指摘したような大学の対応は好ましくありません。

全国医学部長病院長会議の前会長である新井一構成員(順天堂大学学長)も「一部大学において地域枠の趣旨に添わない運用がなされている事例があり、課題と認識している」とコメントしており、今後、必要な是正対策がとられそうです。



https://www.m3.com/news/iryoishin/633717
「2018年、後世に影響が及ぶ重要な議論の年」
第60回全日本病院学会、吉田厚労省医政局長が特別講演
 
2018年10月6日 (土)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 10月6日に東京都で開催された第60回全日本病院学会で、厚生労働省医政局長の吉田学氏が、「より良い医療に向けて~医療をめぐる最近の動きから」と題して特別講演。「当面の主な課題」として、地域医療構想の着実な推進、医師偏在対策、「医師の働き方改革」の具体化などを挙げ、「2018年は、後世にまで影響を及ぼす重要な議論が行われている年」と位置付けた。

 さらに2025年に向けた議論と、団塊ジュニア世代が高齢者になる2040年に向けた議論を並行して進めるために、「少し先を見ながら、物事を進めていかなければいけない」と長期的な視点の必要性を指摘。これらの議論を進める際、「改めてより良い医療とは何かを少し立ち止まって考える必要がある。大きな文脈の中で、より良い医療に向けて、何が具体的な課題であるかを考えていかなければいけない」との見解も述べた。

 吉田局長が「当面の主な課題」として挙げたのは、地域医療構想の着実な推進、医師偏在対策、「医師の働き方改革」の具体化、医薬品産業の振興・医薬品流通の改善、技術進歩への対応・研究開発の進行、情報通信技術の実装「データヘルス」――の6つだ。「もちろん、2019年度税制改正・ヨハン編成に向けた対応も」「さらに2040年に向けた、さらなる議論も」と付け加えた。

 地域医療構想「進捗は地域差が大きい」

 地域医療構想は、47都道府県で策定を終え、地域医療構想調整会議で現在、実現に向けた議論が進められている。吉田局長は、「骨太の方針2018」で、「地域医療構想の実現に向けた個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応方針について、昨年度に続いて集中的な検討を促し、2018年度中の策定を促進する」とされ、特に公的・公立医療機関について、先行して議論を進めることを政府決定していると紹介。調整会議の進捗は、(1)議論がキックオフしているか、(2)具体的に物事が進んでいるか――という2段階で見ていく必要があるとした。47都道府県別の進捗状況には「地域差が大きい」と指摘し、前に進めていくために、各地域の取り組み状況を「見える化」するなどの工夫をしている。地域医療構想は、在宅医療や介護施設等の整備とも関係してくることから、「地域医療構想は、都道府県が進めていくが、実際には(介護保険を担当する基礎自治体である)市町村と一緒にやっていくことが必要」とも指摘した。

 医師偏在対策「マクロの数より地域偏在対策」

 医師偏在対策については、今年の通常国会で医療法・医師法を改正した。「医学部入学定員は、2008年度から増員を続け、2017年度は9420人で、過去最高になった。地域枠も増え、その卒業生が積み上がっていくので、2025年には、1万人くらいの地域枠出身者が働くというボリュームになる」(吉田局長)。しかし、増えた医師は大都市部に集中する傾向があることから、「医師の偏在は前よりも厳しくなっている。マクロの数を増やすよりも、地域や診療科の偏在に取り組んでいくことが必要ではないか」と述べた。

 その上で、改正医療法・医師法に盛り込んだ医師偏在対策を紹介。「医師偏在指標」については、吉田局長は、「できれば今年度中に取りまとめを行い、各都道府県で、二次医療圏単位で、どこが医師少数区域、医師多数区域かを検討してもらう」と説明(『医師偏在指標、全国一律に「医師多数区域」「医師少数区域」を設定』を参照)。

 さらに、都道府県における医師確保対策の実施体制、医師養成過程を通じた医師確保対策の充実などの施策も紹介。新専門医制度については、国が日本専門医機構に意見を言う仕組みが法改正で導入された(『専攻医採用数「実はシーリング超え」、3都府県、延べ6領域』を参照)。「最適解は難しいかもしれないが、関係者とコミュニケーションを取りつつ、かつプロフェッショナル・オートノミーも発揮していただきながら、うまくいくようにしていきたい」(吉田局長)。

 「医師の働き方改革」、労働時間だけの問題にあらず

 吉田局長は、「働き方改革」は、医師に限らず、オールジャパンでの取り組みであると説明。週60時間を超えて働いている医師が少なくない中、「オールジャパンで改革を進める中で、どう調和を図っていくかが課題」であるとした。

 厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」は、今年2月に「中間論点整理」と「緊急的な取り組み」を取りまとめた(『次回以降「本丸」の上限規制など議論』を参照)。働き方改革は、労働時間だけの問題では終わらないとし、(1)今後目指していく医療提供の姿(医療のかかり方、タスク・シフティングなど)、(2)医師の特殊性を含む医療の特性(応召義務の制度など)、(3)医師の働き方に関する制度上の論点(時間外労働の上限時間数の設定等)――という3つの柱で議論を進めていると説明。「できれば年内、あるいは年明けに一定の取りまとめ案を出し、年度末に意見を集約していきたい」(吉田局長)。



https://www.m3.com/news/iryoishin/632851
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
安易な働き方改革「禍根を残す心配ある」
日病・相澤会長が懸念、消費税問題も
 
レポート 2018年10月2日 (火)配信水谷悠(m3.com編集部)

 日本病院会会長の相澤孝夫氏は10月2日の定例記者会見で、議論が進む医師の働き方改革について「あまり安易にやると禍根を残すのでは、という心配がある」と述べ、宿日直や自己研鑽の扱いをどのように決めるか、慎重な議論が必要という見解を示した。9月29日の常任理事会では、働き方改革と、控除対象外消費税問題を主に議論した。

 働き方改革では、「医師の健康を守り、同時に地域医療を守る」ことは当然だが、現実には病院ごと、地域ごとの事情など、さまざまな問題があることは出席者間で共通の認識だったという。宿日直については、いわゆる手待ち時間をどうするか、これを全て勤務時間にするとなると「そのままやれば病院が持たない。基準をきちんとつくるのがいいか、おおよその時間でくくるのがいいか」という懸念が出た。また、細かく規定しすぎると、「狭い範囲でしか医師が行動できなくなる」という声もあったという。また、多くの医師がアルバイトで他院の当直を行うが、これは勤務時間に入るのか、という疑問も上がった。

 自己研鑽についても、研修医や専攻医をどう捉えるのか、OJTの時間があるために、勤務時間をどう設定するのかなど、相澤氏は「よほど議論をしないと、医師の健康と地域医療の確保の両立は難しいのではないか」との見方を示した。

 控除対象外消費税問題では、「三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)と四病院団体協議会の提言でいくしかないのではないか。病院間の差があまり出ないようにしてほしい」との意見があったという(『消費税率10%「新たな仕組み」で対応、三師会と四病協が提言』を参照)。相澤氏は、今後消費税率が20%や30%に増税されることもあり得るとして、現在の初診料や入院基本料に上乗せする方式では額も大きくなり、病院ごとの差も大きくなっていく危険があるため、「これ以上増えるとなると、限界がある」と説明。そのため、「将来的にどうするかを早めに議論していく必要がある」と述べた。



https://www.medwatch.jp/?p=22706
2020年度の「第7次医療計画中間見直し」に向け、5疾病5事業等の進捗状況を確認―医療計画見直し検討会 
2018年10月1日|医療計画・地域医療構想 MED WATCH

 2020年度の「第7次医療計画の中間見直し」に向けて、都道府県における「5疾病5事業および在宅医療」における指標の活用状況などを把握し、課題を抽出する。また「中間見直し」においては、指標の見直しは、追加など小幅にとどめ、2024年度からの第8次医療計画に向けて、大幅な見直しを検討する―。

 9月28日に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった方向が確認されました。
 
ここがポイント!
1 2019年度に国で「見直し指針」を定め、2020年度に各都道府県で医療計画を中間見直し
2 5疾病5事業等の評価指標、都道府県での活用状況は項目によって大きなバラつき

2019年度に国で「見直し指針」を定め、2020年度に各都道府県で医療計画を中間見直し

 2018年度から新たな医療計画(第7次医療計画)がスタートしました。従前は「5年」計画でしたが、地域医療介護総合確保法(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律、2014年)により「6年」計画に改められました。3年単位の介護保険事業(支援)計画と足並みを揃えるためです(関連記事はこちら)。

 ただし、「6年」は長期間であるため、医療現場の実態を踏まえ3年目に「中間見直し」を行うこととなりました。第7次計画については、2020年度が中間見直し年にあたります。厚生労働省は9月28日の検討会に、▼各都道府県における「5疾病5事業および在宅医療」の状況などを定期的に把握する▼2019年度中に国で「医療計画作成指針」を見直す▼2020年度に各都道府県で医療計画の中間見直しを行う―というスケジュール案を提示し、了承されました。

 なお2020年度の「中間見直し」では、都道府県の負担等も考慮して、それほど大規模な見直しを行わず、主に「5疾病5事業および在宅医療」に関する指標の追加などがメインとなる見込みです。さらに、その後の状況なども踏まえて、2024年度の第8次医療計画において、大規模な見直しも検討されます。

5疾病5事業等の評価指標、都道府県での活用状況は項目によって大きなバラつき

 9月28日の検討会では、各都道府県における「5疾病5事業および在宅医療」に関する指標の策定状況なども報告されました。

 医療計画では、病床数の整備目標などのほかに、「5疾病5事業および在宅医療」の整備目標なども定めます。その際、一定の指標をおいて目標の進捗状況を確認し、PDCAサイクルを回していくことが求められます。

例えば5疾病のうち、がん医療については、予防・早期発見に関して「がん検診受診率」や「年齢調整罹患率」など、治療に関して「がん診療連携拠点病院数」「がん患者の年齢調整死亡率」など、療養支援に関して「末期のがん患者に対し在宅医療を提供する医療機関数」「がん患者指導の実施件数」「入院緩和ケアの実施件数」「外来緩和ケアの実施件数」「がん性疼痛緩和の実施件数」などが指標となっています。取り組み状況を、統一指標に基づいて評価することで、各都道府県において「自県は近隣県に比べて進捗が遅れている。さらなる取り組みを進めるために病院団体や関係学会と一層の連携を強めよう」などの行動変容につなげることが期待されているのです。

しかし、各都道府県における指標の設定状況を見てみると、例えば「がん検診受診率」(全都道府県の77%で設定)、「がん患者の年齢調整死亡率」(同64%)などは、多くの自治体で活用されていますが、「年齢調整罹患率」(同17%)や「がん診療連携拠点病院数」(同15%)、「入院緩和ケアの実施件数」(同2%)、「外来緩和ケアの実施件数」(2%)などは限られた活用にとどまっています。

「脳卒中」や「心血管疾患」など他の疾病・事業でも、同様の状況にあることも明らかとなっています。

一定程度統一された指標に基づかなれば、都道府県間の取り組み状況の比較は難しく、多くの都道府県で指標の設定が望まれます。また、状況を総合的に把握するためには、細かい指標設定が必要となりますが、それは都道府県・医療機関等の負担増にもつながります。検討会では、「都道府県によって医療資源の状況なども異なる」(城守国斗構成員:日本医師会常任理事)、「細かな指標を定めれば、そこにばかり目が行っています。大枠の指標にとどめてはどうか」(織田正道構成員:全日本病院協会副会長)という指摘も出ており、2024年度の第8次医療計画に向けて「指標の在り方」を改めて検討していくことになりそうです(「中間見直し」で、大幅な見直しをすることは困難)。

 
なお、関連して厚生労働省は「地域医療構想調整会議において、5疾病5事業および在宅医療の体制に関する議論が行われているか」という資料も提示しました。例えば、がん医療については、20の自治体で議論が行われています。この点、織田構成員や加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)らは、「地域医療構想調整会議では、まず公立病院や公的病院等の機能分化について議論を進めることになっている。詳細な医療機能に関する議論を求めているように見え、混乱を招くのではないか」と指摘。厚労省も「各都道府県において『地域医療構想調整会議において、5疾病5事業および在宅医療の詳細を議論しなければならない』と誤解しないよう努める」との考えを示しています。

ただし、一昨年(2016年)12月の検討会意見では、「将来の医療提供体制を構築していくための方向性を共有するため、構想区域における医療機関であって、地域における救急医療や災害医療等を担う医療機関が、どのような役割を担うか明確にすることが必要である。その際に、『構想区域の救急医療や災害医療等の中心的な医療機関が担う医療機能』などを踏まえ、地域医療構想調整会議で検討を進める」旨が確認されており、5疾病5事業および在宅医療の中でも、▼救急医療▼災害医療—については、地域医療構想調整会議において、中心となる医療機関の機能などを確認しておく必要があることを忘れはいけません。

  

https://www.medwatch.jp/?p=22745
2016年度1人当たり医療費の地域差、最大の要因は「後期高齢者の入院受診率」—厚労省 
2018年10月4日|医療保険制度 MEDWATCH

 2016年度の1人当たり医療費(市町村国保+後期高齢者医療)は全国では54万3931円だが、都道府県別に見ると最高の福岡県(64万6488円)と最低の新潟県(47万1857円)との間では1.37倍の格差がある。医療費の地域差には、入院における受診率と1件当たり日数(つまり在院日数)、入院外における1件当たり日数が大きく関係している—。

厚生労働省は9月28日に、2016年度の「医療費の地域差分析」を公表し、こういった状況を明らかにしました(厚労省のサイトはこちら)(前年度の記事はこちら)。

ここがポイント!
1 医療費「西高東低」の傾向は依然継続
2 入院医療費の地域差、「受診率」が大きく影響、不要な入院がないか検証が必要
3 入院外医療費の地域差、「1件当たり日数」が大きく影響、不要な受診や訪問はないか
4 入院医療費には「後期高齢者の受診率」が大きく影響、社会的入院が生じていないか
5 年齢調整後の1人当たり医療費、市町村別に見ると北海道雨竜町が最高


医療費「西高東低」の傾向は依然継続

 2025年度には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、今後、医療・介護ニーズが急速に増加するため、「医療費の適正化」対策が重視されています。この点、「1人当たり医療費には大きな地域格差があり、これを是正していく必要がある」ことが骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)でも指摘されています(関連記事はこちら)。

地域別の医療費は、「地域の人口」と「当該地域の1人当たり医療費」に分解することができます。ただし、1人当たり医療費は年齢との関係が強く、また地域によって年齢構成は区々であるため、「1人当たり医療費の地域差」を分析するにあたっては、「地域ごとの年齢構成(高齢者割合など)の差」を調整することが重要です。

市町村国保加入者と後期高齢者医療制度加入者を合計した「1人当たり年齢調整後医療費」は2016年度には、全国54万3931円となりました。都道府県別に見ると、最高は福岡県の64万6488円(全国の1.189倍、前年度に比べて0.005ポイント低下)。次いで、高知県64万1114円(同1.179倍、同0.007ポイント低下)、佐賀県63万5168円(同1.168倍、同増減なし)と続きます。

また、最も低いのは新潟県の47万1857円(同0.867倍、同増減なし)。次いで、岩手県48万1479円(同0.885倍、同0.007ポイント低下)、千葉県48万6182円(同0.894倍、同0.006ポイント上昇))、静岡県47万8000円(同0.890倍)などと続きます。最高の福岡県と最低の新潟県では1.37倍の開きがありますが、前年度からわずかですが地域差が縮小している状況が伺えます。

医療費の地域差を、日本地図を色分けした医療費マップで見てみると、「西日本で高く、東日本で低い」(西高東低)傾向が依然として継続しています。
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市町村国保+後期高齢者医療における都道府県別の「年齢調整後の1人当たり医療費」をマップ化したもの。西日本と北海道で高く、東日本で低い
 
入院医療費の地域差、「受診率」が大きく影響、不要な入院がないか検証が必要

 では、1人当たり医療費の地域差が生じる原因はどこにあるのでしょう。この考察には、医療費を次の3要素に分解することが有用です。

▼1日当たり医療費:単価(単価の高低の評価は容易には行えませんが、例えば「不必要な検査をしていないか」「後発品の使用は進んでいるか」などを考えるヒントになります)

▼1件当たり日数:1回の入院や外来でどれだけの日数、医療機関にかかるのか(例えば、同じ疾病、同じ重症度の患者間で入院日数が大きく異なれば、「退院支援がうまくきのうしているのか」などを考えるヒントになります)

▼受診率:どれだけの頻度で医療機関にかかるのか(例えば「頻回受診、重複受診がないか」などを考えるヒントになります)

また医療費の地域差に、「入院」「入院外」「歯科」がどれだけ影響しているのかを見ると、「入院」の影響が大きいことが分かりました。
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市町村国保+後期高齢者医療の地域差への寄与度は、入院医療費が最も大きいことがわかる
 
そこで、入院医療を3要素に分解して、地域差にどの要素が影響しているのか(寄与度)を見てみると、入院医療費の高い地域(高知県、福岡県、鹿児島県など)では「受診率と1件当たり日数が医療費を高める方向に寄与し、1日当たり医療費は低くする方向に寄与している」傾向があることが分かりました(前年度と同じ傾向)。また、入院医療費の小さな地域(静岡県、新潟県、岩手県など)では「受診率が医療費を低くする方向に寄与している」ことも分かります(やはり前年度と同じ傾向)。
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市町村国保+後期高齢者医療における「入院医療費の地域差」を3要素に分解したもの、「受診率」の要素が強く影響していることがわかる
 
大づかみに、次のような傾向があると言えそうです。
▽「1日当たり医療費」は、医療費の高い地域では「医療費を低くする」方向に、医療費の低い地域では「医療費を高める」方向に寄与する(1件当たり日数の低い地域では、短い入院期間中に濃密な医療を行うため、必然的に単価が高くなる)

▽「1件当たり日数」は、医療費の高い地域では「医療費を高める」方向に、医療費の低い地域では「医療費を低くする」方向に寄与する

▽「受診率」は、医療費の高い地域では「医療費を高める」方向に、医療費の低い地域では「医療費を低くする」方向に寄与する

 とくに「受診率」が入院医療費の地域差に大きく寄与していることが分かります。「入院医療が必要な疾病の罹患率に違いがある」のか、「入院が不要であるにもかかわらず、入院医療を提供している」のか、など詳細な分析が待たれます。

入院外医療費の地域差、「1件当たり日数」が大きく影響、不要な受診や訪問はないか

 次に、入院外医療費(調剤を含む)について、同様に▼1日当たり医療費▼1件当たり日数▼受診率—の3要素に分解した寄与度を見てみると、入院外医療費の高い地域(広島県、大阪府、佐賀県など)では「受診率と1件当たり日数が医療費を高める方向に寄与し、1日当たり医療費は低くする方向に寄与している」傾向が、逆に入院外医療費の小さな地域(新潟県、沖縄県、富山県など)では「受診率や1件当たり日数が医療費を低くする方向に寄与している」傾向があることが分かります(入院と同じ構造)。
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市町村国保+後期高齢者医療における「入院外医療費の地域差」を3要素に分解したもの、「1件当たり日数」の要素が強く影響していることがわかる
 
入院外については、「1件当たり日数」が地域差に大きく寄与していることが分かり、「一連の治療において、不必要な外来受診・訪問診療などが行われていないか」確認する必要がありそうです。

入院医療費には「後期高齢者の受診率」が大きく影響、社会的入院が生じていないか

 また医療費において、「どの年齢層の医療費が地域差に寄与しているのか」を見ると、高齢者、とくに75歳以上の後期高齢者の影響が大きなことが分かります。

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市町村国保+後期高齢者医療における「医療費の地域差」を年齢階層に分解したもの、「高齢者」の要素が強く影響していることがわかる
 
 そこで、高齢高齢者に限定して、入院医療費(やはり地域差への寄与度は入院外や歯科に比べて入院で大きい)を3要素に分解し、地域差にどの要素が影響しているのか(寄与度)を見てみると、「市町村国保+後期高齢者医療」と同様に、▼受診率▼1件当たり日数―が、地域差に大きく影響している、つまり「入院医療費の高い地域では、後期高齢者の受診率が高く、入院日数も長い」ことが分かりました。
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後期高齢者医療における「入院医療費の地域差」を3要素に分解したもの、「受診率」の要素が強く影響していることがわかる
 
「本当に入院医療が必要な医療で、入院をしているのか」「いわゆる社会的入院などの是正は進んでいるのか」などを適切に分析する必要があるでしょう。

年齢調整後の1人当たり医療費、市町村別に見ると北海道雨竜町が最高

 次に、市町村別に「市町村国保+後期高齢者医療の1人当たり実績医療費」(年齢調整をしていない)を見てみると、最も高いのは高知県大豊町の93万1830円。次いで高知県馬路村92万1224円、北海道雨竜町90万7190円、北海道積丹町89万456円、高知県北川村87万3927と続きます。前年度は高知県の自治体が上位を独占していましたが、やや様相が変わってきています。

 逆に1人当たり実績医療費が低いのは、下から東京都御蔵島村27万9309円、長野県川上村31万169円、東京都青ヶ島村31万6262円、沖縄県北大東村32万9493円、福島県檜枝岐村33万2012円となっており、離島や山間地が目立ちます(医療資源が少ないため、必然的に医療費が低くなる)。

 また年齢構成を調整した上で、医療費が全国平均からどれだけ乖離しているのかを示す「地域差指数」を市町村別に見てみると、もっとも高いのは北海道雨竜町の1.469で、北海道積丹町1.391、北海道壮瞥町1.384、高知県奈半利町1.356、高知県芸西村1.354と続きます。

逆に地域差指数が低い自治体は、長野県売木村0.640、長野県天龍村0.648、新潟県津南町0.657、山形県大蔵村0.662、東京都小笠原村0.665となっています



https://www.medwatch.jp/?p=22775
地域包括ケア病棟の質向上を目指し、「急性期大病院の地域包括ケア病棟」の実態把握が必要―地ケア病棟協・仲井会長 
2018年10月5日|医療保険制度 MEDWATCH

 「急性期の大病院内に設置された地域包括ケア病棟」の中にも、「自院の急性期後患者の受け入れ」だけでなく、「在宅や介護施設からの患者受け入れ」に力を入れているところがあるかもしれない。地域包括ケア病棟でもっとも重要な「在宅復帰支援・在宅医療提供」をより充実・向上させるため、実態を把握し、細分化などを検討する必要がある―。

 地域包括ケア病棟協会の仲井培雄会長は10月4日に定例記者会見に臨み、こういった要望を厚生労働省に宛てて行ったことを明らかにしました(関連記事はこちら)。
 
200床以上の急性期ケアミクス型の地域包括ケア病棟では、質の低下が懸念される

 2018年度の診療報酬改定では、入院料の再編・統合が行われ、地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料(以下、地域包括ケア病棟入院料)についても、例えば次のような見直しが行われました(関連記事はこちら)。

(1)200床未満の病院に設置され、診療実績が高い(自宅等からの入棟患者割合:10%以上、自宅等からの緊急患者受け入れ件数:3か月で3人以上、在宅医療の提供など)病棟については、高額の基本報酬を設定する(入院料1・3)
 
(2)救急・在宅等支援病床初期加算(1日につき150点)を、急性期病棟からの患者受け入れを評価する【急性期患者支援病床初期加算】(1日につき150点)と、在宅や老健施設、介護医療院などからの患者受け入れ、治療方針に関する患者・家族等の意思決定を支援することを評価する【在宅患者支援病床初期加算】(1日につき300点)とに区分する
 
(3)在宅復帰先から「老人保健施設」を除外する
 
 仲井会長は、とくに200床未満の病院に設置された地域包括ケア病棟等では、「在宅復帰先が狭まった」(3)ことや、「在宅患者の受け入れを強化して高い加算を取得する」(2)ことが、post acute患者のより積極的な受け入れと、在宅復帰促進・在宅医療提供につながり、結果として「診療実績の充実」(1)に結びついている状況を説明。これらはすべて関連して、地域包括ケア病棟において最も重要な「在宅復帰支援・在宅医療提供機能」が充実してきていると分析しています。
 
 ところで、地域包括ケア病棟協会では、かねてから地域包括ケア病棟を次の3つに分類(独自分類)し、それぞれの動向を調査するとともに、進むべき方向等を模索しています(関連記事はこちら)。
▼急性期一般入院料(従前の10対1・7対1)病棟と併設し、病院全体で急性期機能を最重視している【急性期ケアミクス型】

▼施設全体として、他病院からの「高度急性期・急性期の治療を終えた患者」が概ね半分以上を占める【post acute連携型】

▼急性期ケアミクス型・post acute型のどちらでもない【地域密着型】

 このうち【地域密着型】との【post acute連携型】は、ほとんどが200床未満の病院に設置されており(地域密着型の9割、post acute型の8割5分弱)、上記の2018年度改定の効果が如実に現れています。地域包括ケア病棟協会の調査(500病院が回答)では、【地域密着型】の76.9%、【post acute連携型】の75.4%が、上記(1)の入院料1・3取得または取得予定となっています。在宅復帰に力を入れ、かつ在宅医療等に力を入れることで診療実績を高め、高い基本報酬を算定するものです。今後も、在宅復帰支援・在宅医療提供に力を注いでいくことが期待されます。

一方、【急性期ケアミクス型】では、200床以上の病院も多く(4割強)、また「自院の高度急性期・急性期病棟での治療を終えた患者」が大半を占めているため、上記(1)の入院料1・3を取得または取得予定の病院は46.8%と半数に届きません。さらに(2)の【在宅患者支援病床初期加算】も取得していない場合には、「在宅復帰支援・在宅医療提供などの実態が見えず、post acute機能に関する検証が行われない。結果として機能・質の低下が懸念される」と仲井会長は不安視します。
 
この点、そもそも【急性期ケアミクス型】には、「地域の急性期基幹病院で、旧7対1(現在の急性期一般入院料1)を維持するために重症度、医療・看護必要度の低くなった患者を、回復期機能等の他院に転院させたいが、医療資源が少ない(近隣に病院がない)ため、それが叶わない。そこで、自院の急性期病棟の一部を地域包括ケア病棟に転換した」という病院が多く、新設された入院料1・3との親和性は低いようにも思えます(大規模で、自院の急性期病棟からの転棟患者がほとんど)。
しかし、仲井会長は、「200床以上の病院では入院料1・3を取得できず、これは『在宅復帰支援』機能などの地域包括ケア病棟の質を評価・検証していないに等しく、機能・質が低下してしまいかねない」「200床以上の病院でも、在宅復帰機能を強化し『ときどき入院、ほぼ在宅』を支える病院もあるのではないか」と推測。今後、200床以上の急性期ケアミクス型病院の実態を詳しく調べた上で、▼診療実績▼質の評価―を検討してはどうか、と厚労省に提言を行っています。

200床以上病院の地域包括ケア病棟でも、在宅や介護施設で急変した患者を積極的に受け入れ、上記(2)の【在宅患者支援病床初期加算】(1日につき300点)を算定することは可能です。しかし、この加算の取得よりも「自院の急性期一般入院料1(旧7対1)の維持のほうが、より重要である」と考え、事実上、自院の急性期後患者の受け入れのみに特化する病棟では、地域包括ケア病棟に求められる機能の1つ(sub acute機能:地域の急変患者の受け入れ機能)を満たしていないことになります。これでは、2014年度の診療報酬改定で地域包括ケア病棟が創設された際の、▼post acute機能(急性期後患者の受け入れ)▼sub acute機能(地域の急変患者の受け入れ)▼在宅復帰支援機能―の「すべてを提供することが求められる」との厚労省保険局医療課の創設趣旨に反することになってしまいます。
 
今後の実態調査により、例えば「200床以上の急性期ケアミクス型の中にも、sub acute機能に力を入れている病棟がある」ことなどが明らかになった暁には、上記(1)(2)とは異なる、別途の評価の道が整備される可能性も出てくることでしょう。今後の、地域包括ケア病棟協会の調査に注目が集まります。



http://blogos.com/article/329610/
医療の東西格差 西日本に医学部が偏在している理由とは 
NEWSポストセブン2018年10月05日 07:00
※SAPIO2018年9・10月号

国民皆保険の制度下では病院に支払う受診料は全国一律。提供される医療サービスも同じと考えがちだ。だが、実際は東日本と西日本の医療環境は厳然たる格差がある。医療行政などを研究する医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏が問題の本質に迫る。

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人、モノ、金……あらゆる面で東京を中心とする「首都圏一極集中」が指摘されて久しい。だが、こと医療に関しては西日本のほうが整っているのが実情だ。

まず、関東には医師が少ない。ひとりの医師が診察できる患者数は物理的に限界があるから、絶対数でなく人口比で見るべきだ。

厚生労働省によると、人口10万人あたりの医師数が最も多いのが徳島県の315.9人、次いで京都府314.9人、高知県306.0人、最も少ないのが埼玉県160.1人、次いで茨城県180.4人、千葉県189.9人となっている(「2016年医師・歯科医師・薬剤師調査」より)。

なぜ関東に医師が少ないのか。最大の要因は大学医学部が圧倒的に西日本に偏在していることだ。

例えば、人口約398万人の四国には4つの医学部があるが、人口約4260万人の関東には25しかなく、人口比では2倍近い差がある。国立大学医学部に限れば、関東には5つで四国はすべてが国立大だから、実に9倍もの差がある。

筆者らの調べでは、医学部卒業生は出身大学の近くで就職する「地産地消」の傾向が強いことがわかった。医学部が多い地域ほど医師が多くなる。就職後に地域をまたいで移動する医師もいるが、それは一部であり影響は限定的だ。

西日本に医学部が偏在しているのは、明治政府を仕切ったのが西国雄藩だったことが関係している。鹿児島大や九州大など歴史が古い九州の国立大学医学部は、幕藩体制下の教育機関である藩校を前身としている。一方、戊辰戦争の戦後処理により、佐幕派の東北・関東周辺諸藩は武装解除させられると同時に、藩校も廃止の憂き目に遭った。

さらに1970年代に進められた「一県一医大構想」もその状況に拍車をかけた。戊辰戦争で勝者となった西国雄藩は、薩摩藩=鹿児島県、土佐藩=高知県のようにそのまま独立を維持したが、敗者は11の藩が合わさった福島県のように、周辺の諸藩と合併させられた。そのため、人口が少ない西日本の県にも医学部がつくられたというわけだ。

医療の東西格差の背景にはこうした賊軍差別があるのだ。

●かみ・まさひろ/1968年兵庫県生まれ。1993年、東京大学医学部卒業。1999年、同大学大学院医学系研究科博士課程修了。東京大学医科学研究所特任教授などを経て2016年よりNPO法人医療ガバナンス研究所を立ち上げ、研究活動を続けている。『日本の医療格差は9倍』(光文社新書)、『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)など著書多数。



  1. 2018/10/07(日) 10:48:28|
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