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Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

8月5日 

https://www.asahi.com/articles/ASL824PXZL82UBQU00G.html
東京医大、女性受験者を一律減点「医師不足解消のため」
2018年8月2日14時10分 朝日新聞

 東京医科大学が今年2月に実施した医学部医学科の一般入試で、受験者側に説明のないまま女子受験者の点数を一律に減点し、合格者数を調整していたことが関係者への取材でわかった。こういった点数操作は遅くとも2010年ごろから続いていたとみられる。同大は、前理事長らが不正合格をめぐって東京地検特捜部に在宅起訴されており、来週にも入試に関する調査結果を公表する。

 同大医学科の今年の一般入試は、1次でマークシート方式の筆記試験を行い、合格ラインを超えた受験者だけが2次の面接と小論文などに進む仕組み。募集要項で男女別の定員は定められていなかった。

 関係者によると、同大では1次の結果について、女子の点数に一定の係数をかけて一律に減点。その結果、今年の一般入試の受験者計2614人(男子61%、女子39%)のうち、1次試験の合格者は男子67%、女子33%で、2次試験を経た最終合格者は男子82%(141人)に対し、女子は18%(30人)に下がり、男女で差が出ていた。

 関係者によると、こうした調整は長年続き、10年の一般入試の合格者の男女比で、女子が4割弱と前年を大幅に上回ったことで加速。「女性は大学卒業後に出産や子育てで、医師現場を離れるケースが多い。医師不足を解消するための暗黙の了解だった」(同大関係者)として、女子の合格者を全体の3割以下に抑える調整が行われてきたという。

 同大幹部は取材に対し「同じ点数なら男子を優先合格させる調整はしていたが、女子の一律減点は許されない」と話した。同大は取材に対し「事実関係を把握していない。内部調査を行っており、適宜公表する」としている。

 文科省の担当者は「入試の募集要項に男女比の調整を明記していれば、大学の責任で実施できる。東京医大がそうした説明をしないまま調整をしていたなら問題だ」としている。

 同大の今年2月の試験をめぐっては、私大支援事業の選定で便宜を図ってもらった見返りに文部科学省前局長の息子を不正合格させたとして、前理事長の臼井正彦被告(77)と前学長の鈴木衛被告(69)の2人が贈賄罪で在宅起訴されている。



https://www.huffingtonpost.jp/2018/08/01/toukyouika-joseisabetu_a_23494326/
東京医大だけじゃない?入試での男女差別。医師らが証言「医大全体にあるとまことしやかに噂されていた」
入試の面接で、女子学生は「結婚・出産」についての対応を聞かれていたという話も。

Shino Tanaka 錦光山 雅子 Masako Kinkozan
2018年08月02日 15時18分 JST | 更新 23時間前 ハフポスト
時事通信社

東京医科大が入試で女子受験生に対して一律に減点していたことを読売新聞などが報じた。

入試での点数操作は女性の入学人数を3割程度に抑えるためで、2010年前後に始まっていたとされる。女子学生の減点のほか、一部の男子受験生に加点することもあったという。同大によると、2018年度は、医学部医学科入学者120人のうち、女性は23人。 受験したのは男子1596人、女子1018人で、筆記がある1次試験の合格率は男子が18.9%、女子が14.5%となった。面接などの2次試験を経て最終的に合格したのは男子が8.8%、女子が2.9%だった。

東京医科大広報部はハフポスト日本版の取材に対し「現在内部調査中。不正入試事件についての捜査にも関わるので、コメントは差し控えたい」と答えた。また、8月上旬をめどに内部調査がまとめられ、公表を予定している。「結果が分かり次第、対応を検討します」と話した。

「噂はあった」

入試段階での「男女差別」が明らかになり、SNSなどでは衝撃が走っている。だが、医師らからは、女子学生の入学を抑制しようとする大学の存在は知られていた、という証言もある。

40代の勤務医で国立大医学部を卒業した男性は、私立ではなく国公立大であっても「私たちが受験生だった頃も、男子有利の大学があるという噂はありました」という。男女別だけではなく「浪人生や再受験生に対し不利な大学というのを、予備校の先生たちから説明された記憶はあります。どこまで根拠のある話かはわかりませんが、模試の偏差値と入試合否の関係から推察していたのかもしれません」と語る。

一方、「健診の現場などで女性医師のニーズは高いと感じる」と話す。その理由には、「病気でもないのに異性に見られたくない、という女性受診者が多いのでは」という。「診断能力には男女差がないと理解されているんだと思う。男性医師の診断能力が高いのだとしたら、男性医師希望という声が聞こえてきそうなものですから」

そのうえで「東京医大のいう『女性は男性の1/3』などというのは我々の実感とはかけ離れている。育児や家事で病院から離れるというのは、女性に育児や家事を押し付けているからにほかならない。女性医師に出勤してもらいたいなら、その配偶者に頑張ってもらえばいい。そのあたりは医師だけが特別ではないと思う」という。

妊娠中、教授は「この子はもう一流の循環器内科医としては望めない」

東京医科大が女子学生の合格を抑えていたとすれば、その理由は何か。報道によると、東京医科大は大学系列の病院で女性医師が結婚や出産で離職すると、医師不足につながるなどの理由を挙げているという。

だが、受験生に説明もなく、性別で差別していたことに、取材に応じた女性医師たちからは「憤りを感じる」「浅はかでその場しのぎの考えが情けない」との声が上がった。

大学病院の循環器内科に入局した女性医師は結婚して出産を控えていた時期、自分のことを「この子はもう一流の循環器内科医としては望めないね」と、教授からほかの医師に言われていたことがあるという。この背景に「医療現場に差別思想が蔓延している」現状を指摘する。

別の大学病院に勤めている育児休業中の20代の女性医師は「妊娠出産した女性医師は、医局の出世コースから遠のくというイメージが出来上がっている」という。「男性医師のほとんどは、妻が専業主婦。女性医師の妊娠出産について理解度が低すぎる。そんな医局に育休明けで戻るのはホラー」と話す。

「いくら医療先進国でも、男尊女卑の思想が染み付く日本は先進国とは言い難い。医師不足や女性医師の仕事復帰などの根本的な問題に目を背け、女子減点という浅はかでその場しのぎの考えが情けない」

「日本に帰りたくなくなった」

アメリカでがん専門医として働いている30代女性は、こう語る。

「男7割女3割の入学比率は、割とスタンダードだった。二次試験の面接で加点や減点があると聞いていた。実力があれば女子も加点があるかもと信じて多くの受験生は頑張る。でもマークシートで機械的にふるい落とされるとしたら、切なすぎる」

ただ、女性医師になってからも、ハードルは様々なところにある。

「ハラスメントは学生時代も医師になってからも続く。留学したいとか言うと『先生は女の子だから無理だよ』と言われる意味不明な世界だった」

「私は卒後4年目に渡米してアメリカでがん専門医として働いていますが、職場で性別を理由として差別を受けたことはない。いつか日本の医療に貢献したいとは思いますが、こんな現状ではますます日本に帰りたくなくなりました」

多浪受験生の間でも「男女差別」?

多浪で医学部を受験している娘をもつ母親は「多浪の女子学生も差別されていると感じる」と話す。

「聖マリアンナ医大は、昨年度から女子学生は現役と一浪だけになりました。比較的多浪に寛容といわれ、実際男子は2浪以上の入学者も多数いるにもかかわらず、です」

同大のホームページに掲載されている入試データをみると、2016年度入学まで多浪(2浪以上)の女子合格者を受け入れていたが、2017年度からは2年連続でゼロ。代わりに現役、1浪の女子学生が増えている。多浪は男子学生ばかりになった。

入試の面接で「結婚、出産」を聞かれる異常さ

この女性の娘は、2017年度に受けた、別の私立医大の入試面接で、次のようなやりとりが2度繰り返されたという。

面接官:「女性だと、結婚とか出産とか大変だと思うけど、大丈夫?」
娘:「はい」
面接官:「大丈夫?」
娘:「はい」
面接官:「本当に大丈夫?」
娘:「あ...はい」

入試面接で、女子受験生だけに結婚や出産について聞かれることは珍しくない。

2007年度に地方の国立大医学部の入学試験を受けた経験のある女性の場合は、こうだった。

女性:「頑張ります」
面接官:「具体的には?」
女性:「結婚は考えていません。実家は病院ではないので戻って就職することも考えていません。医師になったら、そこの環境で判断します」
面接官:「でも結婚したくなるかもよ」
女性:「結婚や出産より大事な役割があると思っています」
女性は振り返る。

「国立大の医学部では、特に『その大学のある地方にとどまること』を気にして、結婚・出産を聞いていた感じでした。『覚悟を見せた!』と意気揚々と面接室を出たのを覚えています」

「滑り止めに受けた私立医大では、ダイレクトに『女の人は妊娠や出産、結婚でやめる人が多い。仕事の大切さについてどう考えているか』と問われた記憶があります」

予備校でも、こうした面接に備えた想定問答を作っていたという。

「予備校の医学部受験コースは、入試面接の『模範解答集』を受験生に配布していて、『結婚出産について聞かれたら』という項目もありました。『体力があり、長く働き続ける』ことをPRしなさいと助言していた記憶があります」

「国立大学の医学部に合格したのですが、入学後の講義で、男性の教授が公然と『結婚して関東に戻って医局を離れる"食い逃げ"が多い』とまで言ってましたから。地方国立大学の"食い逃げ"が多いのは、男性も同じ。医局に残りたくなくて男性も逃げていきますよ。女性だけじゃない」

医学部の受験情報サイト「医学部受験マニュアル」によると、東京女子医大を除く医大・医学部で、女子比率が高いのは、富山大学で、女子学生の比率は54%と男子より多い。次の埼玉医科大は47%。次いで、愛知医大、東京医科歯科大学と続く。女子比率が4割以上の共学の大学は、判明している51校のうち、11校だった。51校で一番低いのは東京大で比率は16%。次いで東北医科薬科大の19%だった。

このサイトでは、「30年前の医学部における女子学生の割合が10%程度であったことを考えると、間違いなく女子医学生の割合は上がっている」としながらも現状を次のように指摘、入試対策をしっかり準備するよう呼びかけている。

「公然と女子の合格者を下げることはしなくても、女子が苦手にしがちな数学の難易度を上げたり、女子が比較的多く選択する生物の難易度を上げる、面接の配点を下げるなどにより間接的に女子の合格率を下げている大学もあるようです」



https://www.huffingtonpost.jp/2018/08/02/drtanebuarticle_a_23494408/
東京医大以外でも「女子合格率、医学部だけ低いのは不自然」女性医師が指摘 
「医学部以外の学部の入試ではすでに、女子学生の合格率が男子学生を上回ってます」

2018年08月03日 11時58分 JST | 更新 2018年08月03日 13時26分 JST ハフポスト
錦光山 雅子 Masako Kinkozan

東京医科大が入学試験で女子受験者を一律減点していたと読売新聞など各社が8月2日に報じた。

大学医学部の女子合格率の偏りは、以前から指摘されていた。

女性医師らで作る「日本女性医療者連合」のサイトには、「女性医師を『増やさない』というガラスの天井」という論考が掲載されている。

この論考を書いた、同会理事で「女性クリニックWe富山」(富山市)種部恭子院長に、今回の報道や論考について話を聞いた。

15年間も3割台前半の「不自然」

「医師国家試験」の合格者に占める女性の割合は90年代急速に増え、2000年には3割台に乗りました。この時点では、じきに4割も超え、将来的には医師の働き方も改善されていくだろうと期待していました。


ところが、2016年度まで15年間、ずっと3割前半のまま変わらずに来ています。国家試験の受験者に占める女性の割合も3割台で、合格率は女性の方が高い。

では、その上流にある医学部入試ではどうなのか、「学校基本調査」を過去にさかのぼって調べました。
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医師国家試験の男女比率の推移=「女性医師を「増やさない」というガラスの天井 ~医師・医学生の女性比率に関する分析」より抜粋

医学部だけ、女子の合格率が低いまま

下のグラフは学部別の男女の合格率を比べたグラフです。女性と男性の合格率が同じなら1.0、女性の合格率が多いなら1.0以上になります。

理学部は男女の合格率はほぼ並び、工学部はすでに女性の合格率が男性を上回っています。一方、女子の合格率が男子より低いのは医学部だけになっています。全体の流れからすれば、不自然な傾向だと感じました。
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種部 恭子さん

女子の入試合格率が低いのは、東京医科大のような私立だけではありません。国立、公立もです(下のグラフ参照)。
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医学部合格率の男女比=「女性医師を「増やさない」というガラスの天井 ~医師・医学生の女性比率に関する分析」より抜粋

日本の医療界は「男性中心のまま」

アメリカでは、病院でも研究機関でも意志決定の層に女性が日本よりもずっと多いこともあり、性別関係なく働ける環境や仕組みに改善されてきました。

ところが日本の医療界では「男女共同参画」自体、いまだにイロモノ扱いで、学会も厚生労働省も医師会も、女性医師のドロップアウトにつながっている根本的、構造的なジェンダーハラスメント問題に切り込もうとしてきませんでした。ほとんど何も変わっていないと思います。

今回の東京医大の問題では医師不足の原因が、女性医師の離職であるかのように言われているのが腹立たしい限りです。

日本の医療は、圧倒的多数の男性中心に発展してきたため、人材や労働の環境で多様性に欠けています。医師の過重労働が変わらないのも男性医師が、家事育児などの「家庭責任」を担わずにきたことも大きい。医師同士が結婚した後、キャリアからフェードアウトしていくのは、ほとんどが女性です。

日本の医療は公的資金で賄われ、診療報酬を政府がコントロールし、大学の医学部の定員も医療政策に基づいて決められています。「公共財」である医療を担う人材の選抜で、恣意的に男女比を操作しているのが事実なら、許されないことだと考えています。



https://www.huffingtonpost.jp/2018/08/03/tmu_a_23495098/
東京医大、海外メディアは「女性医師は家庭持つと職場を追われる」と報道
日本と比べてみると…。

2018年08月03日 14時43分 JST | 更新 2018年08月03日 14時43分 JST ハフポスト
ハフポスト日本版編集部

東京医科大が入試の得点を一律に減らして女子合格者数を抑えていた問題を、海外メディアも相次いで報じている。

最初に報じた読売新聞は「女性医師が結婚や出産で離職すれば、系列病院の医師が不足する恐れが背景にあったとされる」とし、大学幹部の「必要悪」との発言を報じている。

フランスのAFP通信は、この点について「一般的に高学歴であるにも関わらず、日本の女性は家庭を持つと、この国の悪名高き長時間労働によって、職場を追われてしまう」。また、安倍首相の「女性活躍(ウーマノミクス)」方針についても言及し、「進展のスピードは遅い」と指摘している。

ロイター通信は「安倍晋三首相は、『女性が輝く』社会づくりを掲げているが、少子化にも関わらず女性は現在も就労では苦戦しており、出産後の職場復帰もハードルがある」として、女性の働く環境の問題として報じている。

台湾の中央通信では、ネットでは「男子しか歓迎しないなら『東京男子医大』に名前を変えればよい」と皮肉られているとも紹介している。



https://www.yomiuri.co.jp/national/20180801-OYT1T50132.html
外科では女性医師敬遠がち「女3人で男1人分」
2018年08月02日 16時30分 読売新聞

 東京医科大(東京)医学部医学科の一般入試で、同大が女子受験者の得点を一律に減点し、合格者数を抑えていたことが明らかになった。同大出身の女性医師が結婚や出産で離職すれば、系列病院の医師が不足する恐れがあることが背景にあったとされる。水面下で女子だけが不利に扱われていたことに対し、女性医師や女子受験生からは「時代遅れだ」との声が上がる。

 「いわば必要悪。暗黙の了解だった」。同大関係者は、女子の合格者数を意図的に減らしていたことについてそう語る。

 この関係者によると、同大による女子合格者の抑制は2011年頃に始まった。10年の医学科の一般入試で女子の合格者数が69人と全体(181人)の38%に達したためだ。医師の国家試験に合格した同大出身者の大半は、系列の病院で働くことになる。緊急の手術が多く勤務体系が不規則な外科では、女性医師は敬遠されがちで、「女3人で男1人分」との言葉もささやかれているという。

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https://www.m3.com/news/iryoishin/619997
東京医大事件「説明責任に尽きる」、山下AJMC会長
「事実確認待つ」と静観、私立大入試に「裁量は尊重」とも

レポート 2018年8月1日 (水)配信大西裕康(m3.com編集部)

 全国医学部長病院長会議(AJMC)会長の山下英俊氏(山形大学医学部長)は7月31日の記者会見で、東京医科大学の前理事長・臼井正彦氏と前学長・鈴木衞氏が7月24日に起訴されたことに関連し、私立大の入試・学生選抜について、大学の裁量権を尊重しつつも国民の納得できる制度であるべきとの認識を示した上で、「説明責任という問題に尽きる」との考えを示した。

 AJMCとして声明などを発表したり、再発防止対策に取り組む考えはあるかとの質問に対しては、「どういうことが行われたのかは報道の内容しか知らない。全体の流れ、問題点を見極めて判断することになると思う」と述べるにとどめた。

 山下氏は、大学入試に不正が入り込む余地について「まず国立大学にはルールがあり、個人(の恣意的な不正)によって、というのは効きようがない」と説明。私立大については、「将来、医師に必要な人材であるかを見極める方法は色々でいい」と指摘した上で、「国民の皆さんに納得していただける制度を、大学の裁量権を尊重しながら、(AJMCから)発信が必要であればしていきたい」と述べた。

 東京医大事件については、会見に出席した副会長の羽生田正行氏(愛知医科大学病院長)も「あくまで私見」と前置きした上で、「金銭の授受は論外だが、クリアにするなら、学生の選抜を評価する組織が公的な責任を持ってやらなければならない」との考えを示した。一方で、「一般論として入試にバイアスをかけてはいけないという話はおかしい。例えば『地域枠』は見事なバイアス。公平性を担保した上ではやっていいと思う。

入試改革は必要

 一方、山下・羽生田両氏とも、東京医大の事件とは関係なく、医学部の入試改革は必要との考えを強調した。山下氏は、「入試の問題は、今後の医学部定員をどうするかという問題と絡んで大きく動いていくと思う」との認識。現状については、「適性のある学生を選ぶために面接試験をする時、医師として頑張ってくれる、地域医療にも貢献する、そういう考えをまとめてきちんと伝える、という能力をわれわれは見極めたいが、面接する教員の負担が大きくなる」と指摘し、「入試制度自体の検討が必要」と強調。「例えば米英は長い期間、複数の先生が数時間インタビューして見極めていく」とも述べた。羽生田氏も「ある程度、一般論として、入試の在り方の検討などから入っていきたい」と述べた。



http://blogos.com/article/315331/
東京医科大学の女性差別入試は日本社会を劣化させ日本経済も衰退させるもの
2018年08月02日 18:42 BLOGOS
(井上伸)

(グラフ等 略)

 東京医科大学が2月に実施した医学部医学科の一般入試で、女性受験者の点数を一律に減点し、女性の合格者数を減らしていたことが判明しました。大学側は「女性は大学卒業後に出産や子育てで、医師現場を離れるケースが多い。医師不足を解消するため」「いわば必要悪。暗黙の了解だった」とし、女性の合格者を全体の3割以下に抑える調整が行われてきたとのことです。こうした女性差別は日本社会を劣化させ日本経済もさらに衰退させるものです。

 下のグラフは、OECDの「ジェンダー白書」に掲載されている「男女差別の解消と経済成長の見通し(各国のGDPで、単位は10億米ドル)」に、私が「男女差別が解消するシナリオでのGDP」が「男女差別に変化なしのシナリオでのGDP」の何%にあたるかを書き加えたものです(男女差別は2010年の各国水準を起点にしています)。グラフを見て分かるように、「男女差別が解消するシナリオでのGDP」が最も高くなるのが、119%の日本です。男女差別を解消すると、アメリカやフランスの109%より、経済成長が10%も日本は高くなるとOECDは見通しているのです。

 そして、OECDの「ジェンダー白書」は、男女差別を解消すると日本のように経済成長が大きくなる国は、「大きな男女差別が存在するため、結果として女性労働力の有効活用による経済成長の可能性が高くなる。逆に男女差別が小さい国では、プラス効果は限定的になる」「政府と雇用主にとって今後の重要な課題は、女性が働くことにもっと魅力を感じるような労働条件と賃金の実現を進めること」「男女がもっと平等に有償・無償労働に参加する必要があり、そのために職場慣行をそれぞれの労働への需要を満たすのに適したものに変えることが必要」と指摘しています。世界的に見ても最悪レベルの女性差別が存在する日本のような国は、そもそも経済成長そのものを妨げているわけです。それなのに、さらに女性差別を日本社会で助長する東京医科大学の行為は経済成長をも低下させるものです。

 また、世界経済フォーラムの2017年版ジェンダーギャップ指数(男女格差指数)の世界順位で、以下のように安倍政権で2017年は114位と過去最低を記録しています。

 この世界経済フォーラムの「男女格差指数(経済活動への参加・機会)」(※100に近いほど平等)とIMFの「1人当たり名目GDP(年平均為替レートベースでの米ドル換算)」(※いずれも2017年のデータ)でグラフを作ってみたものが以下です。

 上のグラフにあるように、女性が経済活動に参加する国ほど経済成長するのです。2017年版ジェンダーギャップ指数で男女平等度が2位のノルウェーのエルナ・ソルベルグ首相は、読売新聞のインタビューに以下のように答えています。



 ――なぜ男女平等か。

 「一義的には公平性の問題だ。だが、経済的な理由もある。女性が経済活動に参加すると国内総生産(GDP)が増加する。ノルウェーでは女性の77%が働くが、北海油田が産出する石油よりもGDPに貢献しているという研究もある」

 「高福祉なのになぜ経済成長が可能なのかとよく聞かれるが、公的な育児支援が充実していれば、家庭と仕事を両立できる。所得格差が大きく育児支援が貧弱な国では、保育サービスを買える裕福な女性でないと仕事もできないし、政治にも参加できない」

 ――日本では「すべての女性が輝くことができる社会」を成長戦略の中心に位置づけているが、道のりは遠い。

 「重要なのは仕事と家庭のバランスだ。どちらか一方を選ぶべきではない。選択を迫ると、子どもの数も働く女性も少なくなる」

 ――2000年にノルウェーで男女平等を取材した時、男性からもっと育児に参加したいという訴えが増えていると聞いた。

 「この20~30年、育児は男性にとってますます重要になっている。育休の父親割り当て制度など、父親が早期から育児に関われるよう法制度も整備された」

読売新聞2018年3月3日付 [編集委員が迫る]「男女不平等」幸せですか エルナ・ソルベルグ氏




 ノルウェー首相が指摘している「一義的には公平性の問題だ。だが、経済的な理由もある。女性が経済活動に参加すると国内総生産(GDP)が増加する。ノルウェーでは女性の77%が働くが、北海油田が産出する石油よりもGDPに貢献しているという研究もある」という言葉を、日本社会が理解して女性差別を解消してしかない限り、日本社会の劣化と日本経済の衰退は止まるわけがないと思います。



http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2018080402000117.html
社説 女性差別入試 文科省は一斉調査を
2018年8月4日 中日新聞

 身勝手にあきれる。得点操作で女性への門戸を狭めた疑いのある東京医科大は女性医師の離職率の高さを理由としているという。受験生の疑念を晴らすためにも文科省は不正に厳しく対応すべきだ。

 関係者によると、得点操作は以前から暗黙の了解として行われ、年度ごとに一定の係数を掛けて、一律に点数を減らしていたという。女子の合格者を全体の三割前後に抑える目的だったとされる。二〇一八年度、女子が合格者に占める割合は17・5%だった。

 大学は内部調査の結果を来週にも公表予定というが、受験勉強を重ねた揚げ句、何も知らされず人生を変えられた女子受験生たちにすみやかに謝罪し、救済措置や補償を考える必要がある。

 大学側は、系列病院の医師不足を避けたいという思惑があったという。結婚や出産を機に仕事を辞める女性も多いとされ、実際、医籍登録後十二年の女性医師の就業率は73%で男性より16ポイント以上低い。

 ではなぜ、女性医師は家族を持ったときにキャリアを諦めてしまうのか。背景には性別を問わず過酷な労働実態がある。一六年、厚生労働省研究班が初めて実施した大規模調査では、二十代勤務医は週平均五十五時間働き、これに当直や病院外などでの待機時間が十二時間以上加わる。

 誰もが長時間労働をしているもとでは、子どものお迎えなどの事情で早く帰る医師がいれば、その肩代わりは過重と受け取られる。仕事と家庭の両立を目指しても、上司や家庭の無理解で燃え尽きていくという現実もあるようだ。長時間労働で何とか成り立ついびつな職場を支えるために、入試をゆがめるのは本末転倒ではないか。

 ほかの大学で同様の不正はないか、文部科学省は直ちに調査する必要がある。

 幹部が同大の不正入試を巡って受託収賄の罪に問われている渦中だけに、監督官庁としてどう対応するか、人々はより厳しく見つめている。

 近年、医師国家試験合格者に占める女性の比率はずっと、30%台で推移している。入試という「入り口」で、ガラスの天井が生み出されているのではないかという疑念の声もある。

 医師として多様な人材がいた方が、患者にとっては安心につながり、医療の「質」も高まる。これを機に、性にかかわらず働きやすい環境づくりを加速するべきだ。



https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20180803-OYT1T50127.html
社説 東医入試疑惑 受験生への説明責任を果たせ
2018年08月04日 06時00分 読売新聞

 公正・公平が大原則の大学入試で、女性という理由だけで内密に減点する。事実であるなら、受験生への背信行為だというほかない。

 入試不正を巡る汚職事件に揺れる東京医科大の今年の医学部一般入試で、女子受験者の得点を一律に減点し、合格者数を抑えていた疑惑が明るみに出た。

 関係者は認めたが、大学側は「把握していない」という。あいまいな説明では、受験生は到底、納得できまい。大学として、過去の入試を含めて調査を徹底し、事実を明らかにせねばならない。

 マークシート方式による1次試験の結果が出た後に、女子受験生の得点に一定の係数をかけて減点していたとみられる。

 今年の1次試験の合格率は、男子18・9%、女子14・5%だった。小論文や面接を経た最終合格率は、男子8・8%、女子2・9%と差が開いていた。恣意しい的操作をうかがわせる結果ではないか。

 入学定員を男女ごとに設定すること自体に問題はない。

 ただし、事前にそれを公表するのが前提となる。東京医大は、受験生には一切伏せたまま、2011年ごろから女子の得点を減らしたり、合格率を一定の割合に抑えたりしていた疑いがある。

 林文部科学相が一般論として、「女子を不当に差別する入試は、断じて認められない」との見解を示したのは当然だ。

 東京医大では、10年の入試で女子の合格者数が全体の4割近くに達した。これをきっかけに、減点などを始めたとの指摘がある。

 大学を卒業した医師の多くは、系列の病院で勤務する。関係者は「女子は結婚や出産を機に離職することが多い。男性医師が大学病院を支えるという意識が学内に強い」と説明している。

 経営判断として、医師不足への危機感があったとしても、女子を入試の段階で意図的に排除しようとする手法は許されまい。女性医師が働きやすい環境を整えるのが、大学の務めだろう。

 厚生労働省は、出産で離職した女性医師の復職に注力している。有識者会議は2月、女性医師への支援の必要性を強調した緊急提言をまとめた。東京医大の姿勢は、こういった流れにも逆行する。

 全国の医学部の入学志願者に対する入学者の割合は昨年、男子が6・6%、女子は5・9%だった。男女の差は理学部や工学部などに比べて、顕著だった。

 東京医大の事例が、氷山の一角である可能性はないのか。



https://www.asahi.com/articles/ASL842TYNL84UBQU007.html
四国電力が医学部生奨学金 原発周辺の医師不足解消狙い
前田智  2018年8月4日14時00分 朝日新聞

 四国電力は来年度から、伊方原発がある愛媛県伊方町や隣接する同県八幡浜市などでの医師確保と原子力災害に備えた医療体制を整備するため、愛媛大の医学部生を対象にした奨学金貸与事業を始める。11月をめどに財団を設立し、毎年2人、計16人に奨学金を6年間貸与する。6日に愛媛大、八幡浜市立八幡浜総合病院と連携書を締結する。

 来年度から8年間、毎年2人ずつ奨学生を募集。年間180万円を6年間(計1080万円)貸与する。奨学生が南予地域を中心とした指定医療機関に7年間勤務し、うち最後の2年間は原子力災害の拠点病院になっている市立八幡浜総合病院を中心に勤務すれば、奨学金の返済を免除する。

 診療科目に限定はなく、地域医療に関わるという気持ちを第一に選考。専門性を高めるため3年程度、四国外での研修も考慮する。

 伊方原発は1号機、2号機の廃炉がすでに決まり、3号機(運転停止中)だけが残っている。地元からも電力以外の活性化を考えてほしいと要望があったといい、玉川宏一副社長は「地域の医師不足解消は喫緊の課題で、いささかなりとも寄与できれば」と話した。



https://digital.asahi.com/articles/ASL7Z5369L7ZUBQU013.html?rm=293
新専門医制度で東北の医師不足に拍車 研修で若手が流出
角津栄一2018年8月1日15時00分 朝日新聞

 宮城県登米市の市立診療所が8月、医師不足で休診する。その背景とされるのが、今春導入された「新専門医制度」だ。若手医師が専門医の研修先として、大都市部の医療機関を選ぶ傾向が強まったという。東北地方の医療関係者は、医師不足に拍車がかかると危機感を募らせている。

 5月に登米市立登米診療所が8月から休診することが公表されると、診療継続を求める約3300人分の住民署名が提出され、6月市議会では議員から市側の対応を批判する意見が相次いだ。

 市が、医師を確保できなかった理由の一つとして挙げたのが、新専門医制度。2年間の臨床研修を終えた若手医師が、専門医研修を受ける医療機関を選ぶ仕組みだ。

 「多くの症例数や経験豊かな指導医を求めて、東京など大都市にある大学病院や著名な民間病院に流れる」と、地方の医療関係者は指摘してきたが、その恐れが現実のものとなった形だ。

「地域枠」でも研修で県外へ

 制度を運用する日本専門医機構によると、東北6県で臨床研修を終えた医師37人が東京都内の研修施設に登録した。研修医のうち地元に残る割合を示す「定着率」も宮城を除く東北5県は70%台から90%台の見通しだ。

 青森県では、県内勤務を条件とする「地域枠」で弘前大医学部に入学した若手医師十数人が、県外の研修先を選んだ。県は「地域枠で入学した医師は地域勤務を義務づけられている。研修施設に地域枠卒医師であることを周知するべきだ」と、制度の見直しを主張。東北6県も6月、地域枠卒の医師が県外の研修施設に登録できない仕組みを政府に要望した。

 「新制度は地域医療の衰退につながる」と導入に反対してきた「専門医制度の『質』を守る会」メンバーで、仙台厚生病院医学教育支援室長の遠藤希之(まれゆき)医師は「年齢が近い若い先輩がいる病院を研修先に選ぶ傾向が強い。地方での医師の高齢化が一層進む可能性がある」と指摘する。

「国の政策関与が必要」

 小児科医や産婦人科医は安心して出産・子育てをする環境に欠かせない存在だ。しかし、専門医の研修先は大都市に集中し、東北の産婦人科の研修登録者は宮城8人、山形4人、青森、秋田、福島各3人、岩手1人。人口減に悩む地方での医療環境にも影響しかねない。

 産科医不足に悩む岩手県では今春、県南部の民間病院が分娩(ぶんべん)をやめるなど分娩施設が減りつつある。県産婦人科医会顧問の小林高(たかし)医師は若手医師の呼び込み策として「専門志向が強い若い医師向けに、年に何日間か海外も含めて学会に参加できる制度を設ける。必要な予算は、国が過疎化対策として考えてもいいのでは」と提言する。

 東北は面積が広く、医療機関へのアクセスに時間がかかる地域が多い。可住地面積当たりの医師の人数は全国平均の243人を大きく下回り、岩手66人、秋田70人などとなっている。

 地域医療を支える公立病院でつくる全国自治体病院協議会の副会長で、前岩手県立中央病院長の望月泉氏は言う。「医師の偏在は都道府県の努力だけでは限界があり、国の政策関与が必要だ。欧米では専門医の数が地域ごとに決められ、質の担保と偏在を調整する制度もあり、検討の余地はある」



http://www.medwatch.jp/?p=21800
医学部卒業前の「臨床実習」強化、「医学生の医行為」の法的位置づけ明確に―医学部長病院長会議
2018年8月1日|医療現場から MedWatch

 大学医学部では、医学部を卒業し、医師国家試験に合格した時点で「全身を診ることができ、病態を理解し、緊急対応が必要か否かを判断し、必要な場合には専門医へのコンサルトを含めた適切な対応を行える」医師の養成を目指す。このためには医学部卒業前において「臨床実習」を強化することが求められ、そこでは医学生の行う医行為の法的位置づけを明確にする必要がある―。

 全国医学部長病院長会議の山下英俊新会長(山形大学医学部長)は、7月31日に開催した初の記者会見で、このような考えを強調しました。
 
 また、会見では2017年度における研修医実態調査結果も報告され、「大都市部の大学病院や旧帝国大学病院などを目指す研修医・専攻医が多いが、そこから多数の医師が関連病院に出向している」実態が再確認されています。

ここがポイント!
1 医師免許取得時点で「全身を診て、緊急時には必要な対応をとれる」医師の養成を
2 「大学病院は教育の場でもある」点を踏まえた診療報酬改定に期待
3 旧7帝大医学部に医師が集中しているが、その半数が出向し、地域医療を守っている

医師免許取得時点で「全身を診て、緊急時には必要な対応をとれる」医師の養成を

 全国医学部長病院長会議では、先ごろ、新会長として山下英俊氏(山形大学医学部長)、新副会長として羽生田正行氏(愛知医科大学病院病院長)を選出しました。

 山下新会長は、「卒然、卒後の医学教育改革を進める必要がある」ことを強調。5月の総会で次の2つの方針が確認されたことを紹介しています。
(1)大学医学部では、医学部を卒業し、医師国家試験に合格した時点(医師免許取得時点)で「全身を診ることができ、病態を理解し、緊急対応が必要か否かを判断し、必要な場合には専門医へのコンサルトを含めた適切な対応を行えることを含め、幅広い診療を行える」医師の養成を目指す

(2)(1)を推進するために、卒前教育を充実する必要があり、▼CBT(医学医療に関する知識の修状況を審査する、Computer Based Testing)・OSCE(技術や態度などを確認する、Objective Structured Clinical Examination)を公的に位置付ける▼医学生による医行為の法的担保を行う―ことなどを目指す

 山下新会長は、いわば「初期臨床研修の一部」を学部教育に前倒しすることで、初期臨床研修に入った時点で一定程度の診療を行えるようになると指摘。現在、初期臨床研修医は年間1万人誕生します。こうした研修医が、「研修の当初から一定の診療を実施でき、さらに専門的な知識・技術の修得に向けた研鑽に励む」こととなれば、地域医療に従事する医師が年間1万人増加することになり、地域の医師偏在解消に一定程度の効果があると考えられます。

 学部教育(卒前教育)・初期臨床研修・専門医研修(後期臨床研修)が、全体として前倒しされるイメージですが、日本専門医機構の前副理事長として「新専門医制度の初動」にも深く関わった山下新会長は、「新専門医制度では、当該領域について重要な症例のすべてを理解し、きちんと説明できる医師を養成することとなった。『自身の専門領域を決め、専門医資格を取得する』ことを1つのマイルストーン(到達点)として、ここから逆算して、卒前教育で臨床実習の充実が不可欠と考える」との考えも示しています。

 ただし、初期研修の一部を前倒しして、医学部教育の中に盛り込むとなれば、「医師免許を持たない、医学生が医行為を行う」ことになります。例えば「注射をする」行為1つをとっても、患者の身心に侵襲を与えるため、行為を外形的に見れば「傷害罪」の構成要件に該当しますが、医行為である場合には「正当行為」(刑法35条)として違法性が阻却されます(犯罪とはならない)。医学生が行う医行為も同様で、違法性はありません。ただし、医行為にはさまざまな種類があるため、難易度や患者への侵襲の度合いを考慮した「医学生が指導医の下で実施できる医行為」(いわゆる前川レポート、門田レポート)が定められています。

 この点、山下新会長は「大学病院であれば、経験上、臨床実習として医学生が行う医行為を適切に受け入れられる(いわば医学生の医行為に慣れている)が、一般病院では『医学生が医行為を実施して良いのか。法律上の問題はないのか』との疑問を持つケースも少なくない」と指摘。例えば、厚生労働省が「医学生の行う一定の医行為には違法性がない」旨などを通知などが、違法性阻却に関する法的な担保を行い、一般病院でも医学生が積極的に医行為を実施できる(もちろん指導医の下で)環境を整備するよう、強く働きかける考えも示しました。

「大学病院は教育の場でもある」点を踏まえた診療報酬改定に期待

 また羽生田新副会長は、病院長(病院の経営者、管理者)の立場から▼医師の働き方改革の在り方▼診療報酬改定―などの面にも注目した取り組みを行っていくことを強調。

 例えば後者の診療報酬については、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」等の見直しに触れ、「大学病院では、通常の診療に加えて、医学生の教育の場でもあり、幅広い患者を受け入れなければならない。この点を考慮して看護必要度等を考えるよう、きちんと発言していく」とコメント。一般病棟では、看護必要度に基づく重症患者割合が厳格化されてきており、2018年度診療報酬改定では急性期一般入院料1(従前の7対1一般病棟)では30%以上(DPCデータを用いる看護必要度IIでは25%以上)となりました。大学病院(特定機能病院)では、これより若干緩めの「28%以上」(同23%以上)に設定されましたが、やはり従前よりは厳格化されています。すると、医学生教育のために「比較的、重症度の低い患者」を受け入れることが困難となり(逆に受け入れれば経営が困難になる)、教育に支障が出てしまうことを羽生田副会長は危惧しているのです。
 また、このほど明らかになった「消費増税の補填不足」問題についても、安定した地域医療を守るため、将来の医師を育てるために「必要な原資を確保しなければならない」点を強調しています。

旧7帝大医学部に医師が集中しているが、その半数が出向し、地域医療を守っている

 7月31日の記者会見では、2017年度の「全国大学附属病院 研修医に関する実態調査」結果が、守山正胤・地域医療検討委員会委員長(大分大学医学部長)から報告されました。そこからは、例えば、次のような状況が明らかになりました。
 
【国立大学医学部(旧帝国大学医学部を除く、以下同じ)】
▽後期研修(専門医研修)を受ける医師(いわば入局者数)は、自大学医学部の卒業生数に比べて59.5%にとどまる(自大学から100名の医師が生まれたとして、入局するのは他大学出身者も含めて60人にとどまる、というイメージ)
▽卒業生のうち、37.9%が後期研修(専門医研修)先として自大学を選び、後期研修医に占める自大学出身者の割合は63.7%となっている

【旧帝国大学医学部】
▽後期研修を受ける医師(入局者数)は、自大学医学部の卒業生数に比べて117.0%にのぼる(自大学から100名の医師が生まれたとして、入局するのは他大学出身者も含めて117人に増加する、というイメージ)

▽卒業生のうち、42.0%が後期研修先として自大学を選び、後期研修医に占める自大学出身者の割合は35.9%となっている

 ここからは「旧帝大に、他大学から多くの医師が集結している」状況が伺えます。しかし、山下新会長は「単純に旧帝大に集結する状況を批判することはできない。後期研修医1年目の出向率調査結果を見ると、旧帝大では49.3%にのぼり、他の国立大学(26.8%)の2倍近い。この旧帝大からの出向によって地域医療が守られている実態もある」と述べ、全体を俯瞰した「医師確保対策」を検討しなければならないと強調しています。
 
 

https://www.asahi.com/articles/ASL846W1RL84UBQU00F.html
妊産婦の受け入れ中止へ 医師派遣なくなる宮崎の病院
菊地洋行2018年8月4日21時00分 朝日新聞

 宮崎県串間市は1日、来年度から市民病院(同市西方、黒木和男院長)で妊婦の出産や入院の受け入れができなくなると発表した。理由は産婦人科の医師不足。非常勤医による週2、3日程度の外来診察や妊婦健診は来年度以降も続けるという。

 同病院は市内で唯一、出産を扱ってきた。来年度から市内の妊婦は、日南市など市外の医療機関に通うことになり、妊婦本人や家族の負担が増えそうだ。

 病院の平尾伸之事務長によると、産婦人科(8床)には宮崎大医学部が常勤医を派遣してきたが、4月に大学側から「来年度以降の医師派遣が困難になった」と通知があった。

 市は大学側に派遣継続を要望する一方、医師派遣会社などにも依頼してきたが、見通しが立たないため受け入れ断念を決めたという。平尾事務長は「引き続き医師確保に向けて努力するが、来年4月以降に出産する妊婦の方に知らせるため発表した」と話した



https://toyokeizai.net/articles/-/229314
「財政破綻の夕張」で起きた地域医療の現実
今、私たちが夕張市民から学ぶべき事は何か

森田 洋之 : 医師、南日本ヘルスリサーチラボ代表
2018/08/02 8:00 東洋経済オンライン

病床の削減、医師不足、医療費の高騰など、医療や医療費に関する報道が後を絶たない。そうしたなかで、医療経済学的知見から問題提起をした『医療経済の嘘』が話題となっている。
著者の森田医師はなぜ医療経済分野を志したのか――その原点は、かつて医師として赴任した「夕張市」にあった。「財政破綻」「医療崩壊」「市として高齢化率日本一」――数々の悪条件に取り囲まれた夕張市に赴任した森田医師が見た夕張における医療の現実とは。

ある日突然「病院」がなくなった夕張市

夕張市の病院閉鎖は2007年の「夕張市の財政破綻」がきっかけでした。当時は日本中の大ニュースでした。

夕張市の財政破綻で「夕張市立総合病院が閉院」となりましたが、正確には、病院がなくなって診療所になりました。具体的には、財政破綻前の夕張市には、171床の市立総合病院があったのですが、それが市の財政破綻で維持できなくなって、19床の診療所になったのです。旧病院の建物の一部を使って、小さな診療所と老健(介護施設)40床に縮小しました。

ちなみに、医療法では19床までが「診療所」で20床以上が「病院」と決まっています。細かい法律の話は置いておいて、とにかく、市内の病床数が突然約10分の1に減ったということです。さらに、それまであった外科とか小児科とか透析医療などはすべてなくなってしまいました。また、市内に数件の開業医院はありますが、入院できる医療機関はここだけです。

もちろん市外に行けば、総合病院はありますし、救急車を1時間ちょっと飛ばせば、札幌にも行けます。交通事故の大ケガとか、心臓の急な発作とか、そういう場合はドクターヘリで札幌の病院へ搬送となります(逆に言うと、ドクターヘリが出動するほど距離があるということでもあります)。

街から総合病院がなくなって、町のお医者さん的なイメージの医療だけになっちゃった、簡単に言うとこんな感じですね。

(グラフ:『医療経済の嘘』より森田医師作成)(略)

財政破綻・病院閉鎖前後の夕張市の社会・医療に関するさまざまなデータをご紹介します。

まず、数字に端的に表れたのが、医療費です。特に「高齢者1人あたりの診療費」です。

北海道全体と比較するとわかりやすいですね。

こちらの図(略)のような感じになっています。

病院閉鎖後、夕張市の医療費は減っています。

しかし、北海道の高齢者1人あたりの医療費は、右肩上がりに増えています。

これは、北海道だけの傾向ではありません。全国的にもそうですし、他の先進国でもほぼまったく同じように高齢者1人あたりの医療費は右肩上がりに増えています。

ただ、たとえ医療費が安くなっても、そのために市民の病気が増えたり、手遅れになる人が増えてしまったり、命を落とすような人が増えてしまったら、それはまったくいいことではありません。

では、病院閉鎖後に市民の健康はどうなったのでしょうか。病死者が山ほど増えたりはしませんでした。

夕張市民の死亡総数と死亡率を見てみると、実は病院閉鎖前後でほとんど変化がありません。そのグラフ(略)が下記です。

上が死亡総数つまり実数の推移で、下が男女別の死亡率の推移です。

こう言うと、「高齢者とか重い病気の人が財政破綻で市外に引っ越したからでは?」という指摘をいただくのですが、私も当初その可能性を考えました。

医療がなくなって不安なのは、高齢の方や重い病気の方々ですから。でも、いろいろデータを見てみるとそうでもなさそうでした。

というのは、まず人口動態を見ると、実は高齢者人口はまったく減っていません。財政破綻・病院閉鎖のあとも変わらず一貫して増えているのです。

また、医療が頻繁に必要な病気の患者さんの代表格が人工透析の患者さんですが、病院閉鎖で市内では人工透析もできなくなったので、市外へ引っ越す透析患者さんが多いかと思ったのですが、調べたら人工透析の患者さんも減っていなかった。

ですので、死亡数(率)が変わらなかったことや医療費が減ったことを、人口移動で説明するのは無理があります。

夕張市で増えた「死因」とは?

さらに死因別で見ると、実は男女ともに、死因第1位のガン、2位の心疾患、3位の肺炎がおおむね低下しています。

ですが、よく考えると計算が合いません。

死因上位3疾患だけでも死亡総数の相当の割合を占めるはずですから、この3疾患の死亡率がこれだけ下がっているのに総死亡率が横ばいなら、何かの死亡率が増えていなければ数が合いませんよね。実は、死亡率が増えているものがあるのです。それは「老衰」です。

老衰は病気ではなく、自然に命が枯れていく「状態」です。でも、国で決められた死亡診断書の「死因の種類」の1番には、「病死及び自然死」と書かれています。

老衰は自然死ですので立派な死因の1つです。これまでは日本人の死因のずっと下位のほうだったのですが、ここ数年で一気に上位に上がってきて、今は死因の5位にまでなっています。

でも、夕張市の場合は増え方が違います。

このグラフは、夕張市の死亡総数のうち「老衰死」の割合の推移です。ちなみに、全国平均で言うと、全死亡数の6〜7%というところです。

「財政破綻で病院がなくなって、しっかり検査できないから、『老衰』ということになっているのでしょうか?」というご意見もよくいただくのですが、実際に夕張の臨床現場にいた医者の立場から1つ言えるのは、「死亡診断書に老衰と書くのは、実は簡単なことではない」ということです。

「老衰」を受け入れるには信頼関係も覚悟も必要

検査をして病気が判明して、それが原因で患者さんが亡くなったというのはわかりやすく、医師としてご家族にも説明がしやすい。その日、初めて患者さんを診る医師でも、それなら死亡診断書を書けます。

それに比べて老衰は、あくまでも自然死という「状態」であって「病気」ではない。ですので、「老衰」であるということをご本人・ご家族に受け入れていただくためには、医療側と患者・家族側との間に信頼関係が必要で、ご家族にとっても、それを受け入れるための時間と覚悟が必要なのです。

たとえ100歳の婆ちゃんでも、それまで走り回るくらい元気だった方の急病のときは、総合病院などに行ってちゃんと検査してもらいます。

老衰と診断できるのは、たとえば超高齢の患者さんが、特に大きな病気もなく徐々に体力が弱ってこられた場合とか、あるいは介護施設などでご家族が「父はもう高齢でだんだん体力も弱ってきていますから、なにかあっても札幌で検査とかではなく、最大限夕張でできることをしていただいたら、あとは自然に看取ってください」と言われるような場合です。

医療側としてはいろいろな疾患の否定もしなければいけないし、また、その老衰を受け入れるまでの気持ちの変化にも寄り添っていくわけですから、結構時間と労力が必要な大事なプロセスです。

検査して「病名」をつけるほうが科学的・論理的だし、医師としてはかっこいいけど、それはあくまでも医者の立場からの世界観であって、だんだん体力が衰えてきた超高齢患者さんを、病名を付けずに老衰と診断する勇気も地域医療では時に必要だと、私は思うのです。

次は1年間に市民が救急車を何回呼ぶかという話ですが、夕張市は小さい市ながら独自で消防署を持っているので、このデータは簡単に把握できます。

先述のように、病院閉鎖で夕張市には救急病院がなくなってしまいました。インフルエンザとか、ちょっとした肺炎くらいなら市内の診療所で対応できますが、心筋梗塞の発作とか交通事故の大ケガとか、いわゆる重症症例は市外の病院に救急搬送されます。ということで、救急車が病院に到着するまでの時間は以前の約2倍に伸びてしまいました。

近くに救急病院もなくなった。救急車も時間がかかるようになった。すると、「何かあったら手遅れにならないように、ちょっとした症状でもすぐに救急車を呼ぶ人が増えるんじゃないか?」という予想もできます。

でも事実は真逆で、夕張市の救急出動は約半分になりました。

夕張市は人口がすごい勢いで減っていますが、前のグラフ(略)のように人口が10年で半分になったかというとそこまで減ってはいない。

しかも、救急症例の多くは高齢者です。

夕張市では総人口は減っていましたが、高齢者人口(75歳以上)は増えていました。

高齢化率もずっと上昇傾向です。それなのに救急出動件数が半分になったのは、いったいなぜなのでしょう。

在宅医療が増えた夕張市の現実

それはこのデータ(略)と関係があるのかもしれません。

介護施設での看取り率と訪問診療の患者数の推移です。上のグラフ(略)が訪問診療、いわゆる在宅医療の患者数です。

もう1つ、夕張市内には特別養護老人ホーム、「特養」とか「特老」というものですね。そこの看取り率が市内特養での看取り率です。

「病院がなくなって入院できなくなったから在宅医療に追い出されたのでは?」と考えられる方もいるかもしれません。

でも、実は私がいた頃の診療所では、19床のうち平均5〜6床しか病床は埋まっていませんでした。

ですので、入院しようと思えば簡単にできたのです。

でも患者さんの希望をしっかり聞くと、入院を希望される方がほとんどいなかった。その結果、在宅医療が増えていきました。

これが財政破綻後の夕張市で起こったことです。



https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33628140R30C18A7LB0000/
病院同士でのやりとり視野 地域間、医師偏在の対策に
2018/8/1付日本経済新聞 地域経済

 医師の数は地域や診療科による偏りが大きく、医師不足が深刻な地域は多い。厚生労働省が発表した2016年末における各都道府県別の人口10万人当たりの医師数は埼玉県が最下位で160.1人。315.9人と最も多い徳島県の半数程度にとどまる。また医師の数が多くても、高度な専門技術を持つ人材が豊富にいるとは限らない。

 こうした中、ICTによる地域間の情報共有が、人材の育成やノウハウの共有面で果たす役割は大きい。EIZOの技術は主に、病院内で手術映像を送ることを想定しているが、将来的には手術映像の病院間でのやりとりを提案することも想定される。EIZOだけの取り組みでは難しいが、通信などのインフラが整えば、県などをまたいで即時にきれいな映像が送信できるようになる。

 病院ごとに人材の偏りがあり得意分野が違っても、映像を通じ助言することでノウハウを共有。人材育成や高度な医療の提供につなげられる。

(毛芝雄己)



https://mainichi.jp/articles/20180731/k00/00m/040/163000c
厚労省
医師働き方改革で「不急の時間外控えて」

毎日新聞2018年7月31日 06時00分(最終更新 7月31日 06時00分)

 医師の働き方改革に関連し、厚生労働省は来年度から、国民に対し「適切な医療機関のかかり方」を初めて周知する。医療機関などを通じ、身近なかかりつけ医を持つことなどを呼び掛ける。不急の時間外での診察が減るよう国民の意識を変える狙い。来年度予算の概算要求に関連経費を盛り込む。

 6月に成立した働き方改革関連法は残業時間の罰則付き上限規制を初めて設けたが、医師は2024年4月まで規制の対象から外された。一方、厚労省の16年の調査によると、病院の常勤医の4割が週60時間以上働いていた。法定労働時間(週40時間)を勘案すると、過労死の労災が認められる基準の目安となる「1カ月の残業80時間」に相当する。

 医師が長時間労働になりやすいのは「正当な理由なく患者を断ってはならない」という医師法上の「応招義務」があるからだ。厚労省は、医師の長時間労働是正には急を要しない診療時間外の診察や外来患者を減らすことが必要と判断した。

 具体的には、医療機関や自治体、健康保険組合など関係団体を通じ、病院に頼らず地域の診療所などをかかりつけ医とするよう促すほか、夜間・休日診療所の情報の提供、救急搬送などで受診する症状の目安などを周知する。企業に対しても、診療時間内に受診できる環境の整備や、従業員の家族の診療時に利用できる休暇の制度化などを求める。関係機関や企業を巻き込むことで国民意識への働き掛けを強める考えだ。

 省内に検討会を設け、国民に働き掛ける仕組み作りも検討する。例えば、小児科医不足の地域などでは深夜や軽症の受診を控え、医師の負担を軽減しようという市民の取り組みがある。こうした活動を全国に広げることなどが想定される。

 ただ、患者が必要な医療を受けにくくなる懸念もある。厚労省担当者は「過度な受診抑制にならないよう、身近なかかりつけ医を作って受診の相談をしてほしい」と話す。【酒井雅浩】



https://www.buzzfeed.com/jp/briannasacks/40-people-keep-working-at-hospital?utm_term=.hl8E3WG9r#.am35YDPoR
家を失っても患者をケアし続ける医師たちがいる 彼らは山火事で家を失った
「病院を訪れる人たちは重い病気にかかっていて助けを必要としています」

2018/08/4 07:01 BuzzFeed News Reporter
Brianna Sacks

7月23日、カリフォルニア州レディング近郊の乾燥した雑木林に駐車していた車から出火した。強風にあおられ火は燃え広がり、大規模な森林火災となっている。

レディングを含む州北中部シャスタ郡では3万8000人を超える人々が避難を余儀なくされた。この火災で消防士2人を含む6人が死亡、少なくとも800棟が焼失した。

カリフォルニア州ではこの「カー火災」以外にも、17箇所で同時に山火事が発生。1万2000人を超える消防士たちが、現在も昼夜を問わず消火活動に取り組んでいる。

27日、カリフォルニア州のブラウン知事は連邦政府に対し、支援を要請。トランプ大統領は非常事態宣言を発令し、連邦政府から各エリアへの支援を行うと発表している。

カリフォルニア州において山火事は珍しいものではなく、高温と乾燥の続く夏には毎年発生している。しかし、今年は過去10年で最悪のレベルにあると専門家は指摘している。

家を失いながらも、出勤を続け、床で眠り、患者のケアを続ける人々がいる。

カリフォルニア州レディング — 月曜日の朝、白衣を直しながら、ミシェル・ウッズ(Michele Woods)さんは患者のカルテに丹念に目を通す。

カリフォルニア州レディングにあるディグニティ・ヘルス病院に務めるウッズさんは、激しく燃え、動きを予測するのも困難な今回の火災で家を失った。しかし、同じ状況に置かれている多数の同僚たちと共に看護シフトをこなすことで、受けたショックと苦痛がいくらか和らいだという。

ディグニティ・ヘルス・ノース・ステートに務める医師や従業員約40人が、ここ1週間で家を失ったにもかかわらず、出勤を続け、床で眠り、そして約145人の患者の世話をしている。

広報担当のマイク・マンガス氏によると、患者の多くは「重病」で、より緊急の処置や治療が必要だという。

「病院を訪れる人たちは重い病気にかかっていて助けを必要としています」と緩和ケアナースとして務めるウッズさんは言う。

「病院は絶対に負けません。私たちは家族です。私たちが患者のためにしていることは、お互いのためなのです。今では互いを思いやるコミュニティーになっています」

午前3時半頃に夫と一緒に非難してから数時間後、ウッズさんは、12年間住んだ歴史ある炭鉱の町オールド・シャスタの自宅を失ったことを知った。ウッズさんの娘、義理の息子、孫息子は火災で家を失い、現在5人の家族はホテルの狭い一室で暮らしている。

「茫然としています」とウッズさんは言う。「今は、うまく言い表すことができません。できるだけいつも通りの生活に戻ることが大事で、私にとってそれは、病院に毎日出勤することです」

ウッズさんの同僚のエドワード・ザワダ医師もまた、もう妻と一緒に家のソファーに座ることも、自分が書いたり集めたりした本を開くこともないという現実と格闘している。

それでも家を失ったことを知った数時間後、救命医療を専門とする彼は病院にいた。

「働くことが私のアイデンティティーです」と70歳のザワダさんは言う。「火災のために透析治療が遅れてしまった数多くの重症患者を前にして、救うのが非常に難しいのが現状です」

彼と他の職員は「遅れを取り戻そう」と忙しく、1日にだいたい20人から30人の患者を診ているという。その間も、すでに6人の命を奪ったカー火災は広がり続けている。火災が施設に侵入する恐れがあったときには、新生児集中治療室から6人の赤ちゃんを懸命に避難させた。

彼は、「患者が優先です」と語りながらも、「喪失と次に何をすべきかを見極めることへの絶え間ない不安」に襲われ始めたことを認める。それでも、「病院が全力を尽くさなければ、うまくはいきません」とザワダさんは付け加えた。

「災害時にはただでさえ、医療従事者が不足します」とザワダさんは言う。「ですから、家を失うことで医療従事者の不足がさらに加速してしまうのがとても気がかりです」

病院の献身的な姿勢は、住民が人々や区域全体を失ってしまったことを悲しむ中、互いに団結するコミュニティーを反映している。

山火事によって4万人近くが強制的に家を追われ、高校や教会など、定員を超えて人が増え続ける仮設避難所に移ることを余儀なくされた。

食べ物や散髪の無料提供の張り紙が店にはられ、街角には服やペットフードをすぐにも必要としている人のために寄付センターがバラバラと出現している。

「この体験を通じて、私たちは人の命がいかに大切であるかにようやく気づきました」と、涙をふきながらウッズさんは語る。

「私たちはレディングを捨てません。外はしばらくの間はめちゃくちゃかもしれませんが、私たちは立ち上がり、いつものように靴を履きます。きっと何とかなるはずです」

この記事は英語から翻訳されました。翻訳:千葉雄登
https://www.buzzfeednews.com/article/briannasacks/hospital-workers-redding-carr-fire

<G3註:これが医者の本能>



https://www.m3.com/news/iryoishin/620342
横倉会長「大変な怒りを覚える」、消費税補填率調査結果
認知症薬品、「治療薬」ではなく、「進行抑制薬」に

レポート 2018年8月2日 (木)配信高橋直純(m3.com編集部)

 日本医師会の横倉義武会長は8月1日の定例記者会見で、厚生労働省の消費税率8%への引き上げに伴う診療報酬の補填状況調査結果に誤りがあった問題について、「大変な怒りを感じている。2014年度改定時で『消費税引き上げについて対応する』と示され、そしてわれわれには医療機関ごとに応ができたと報告を受けていたにもかかわらず、実際的には全くなかった」と述べた(『中川日医副会長「厚労省の二重、三重の不手際」、消費税補てん率調査にミス』を参照)。

 厚労省が2014年度の「控除対象外消費税の診療報酬による補てん状況」について再調査したところ、病院の補てん率に誤りがあったことが明らかになった。2015年11月公表データでは、病院全体の補てん率は102.36%だったが、新たな調査では82.9%と補てん不足に転じており、新たな調査結果について「特に急性期の病院に大きな補填不足がでている。会内で経緯を検証し、補填不足で経営が上手くいっていないところにどうやって補填するかは再検討して強く申し入れる」と強調。

 補填の在り方については、「診療報酬で補填をする限界があった。他の方法をいくつかの組み合わせないと、医療機関が存続できないと心配している」と述べた。

認知症薬品、「治療薬」ではなく、「進行抑制薬」に

 また、「より適切な医学・医療用語の使用について」として、薬剤について全てを「治療薬」と呼ぶのではなく、効能効果によっては「軽度改善薬」、「進行抑制薬」などと呼ぶことを提案した。横倉会長は、フランスで認知症治療薬が保険適用を外れるというニュースを受けて議論になったと説明。「治らないから保険適用から外せとなると、かえって患者さんにとっても不都合がある。誤解を与えているので、それぞれの薬の役割を明確にした方がいい」と説明し、今後、厚労省や製薬会社と議論をしていく考えを示した。



https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3360340031072018000000/
地域枠義務放棄の研修医9人 初めて実態明らかに
科学&新技術 BP速報
2018/7/31 18:00 日経メディカル Online

 厚生労働省は2018年4月から初期臨床研修を開始した医師について、地域枠で入学し臨床研修中に従事要件があるにもかかわらず、当該府県での研修を行わずに他地域の病院で現在研修している医師が9人いることを7月26日明らかにした。臨床研修中に従事要件のある地域枠は764人で、国試不合格者1人を含めると1.3%が地域枠を離脱したことになる。これまでも地域枠の研修医が、本来研修すべき場所ではない地域で勤務しているケースがあることが問題となっていたが、実態が明らかになったのは初めて。

■雇用した病院へのペナルティー新設へ

 7月26日に行われた厚労省の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会では、2017年度に域外の地域枠の学生とマッチングした9病院に事情をヒアリングした。各病院は、(1)貸与金を返却して地域枠から外れていた、(2)自治体や本人も含めて制度を誤解していた、(3)1次で当該県でマッチングしなかった――などをマッチングした理由として挙げた。

 また、厚労省があらかじめ地域枠を設定していた自治体からのヒアリングでは、「償還の意志があれば、法的に阻止することができず、認めざるを得ない」「在学中または初期臨床研修修了後に離脱する意志を表示している者がいる」などの意見が出された。研修医本人についても、「9人中7人は自己都合で地域枠を離脱している。2人についても特別、どうしても地域枠を離脱しなければいけない理由ではなかったと考えている」(厚労省担当者)という。

 これに対し、委員からは、「貸与金を返したことで、地域枠から離脱することは道義的に許されるのか」「お金を返せばいい、となると制度が壊れる」という意見が続出。地域枠で通常とは異なる入試の合格基準を設けていたり、推薦入試で入学したりしていることから、入学させた大学の責任を問う声もあった。他地域の地域枠卒業生を受け入れた病院に対しても、「地域医療を守る、と各病院のウェブサイトでうたっているが、自分の地域しか考えていない」(和歌山県立医科大学名誉教授の岡村吉隆氏)など、厳しい意見が出された。

 厚労省は、17年7月に医事課長通知を発出。地域枠の学生にはマッチングの際にその旨を申し出ることを求めるとともに、病院側にも従事要件と研修プログラムに齟齬(そご)がある場合は希望順位登録を行わないことを求めていた。

 にもかかわらず、地域枠を自己都合で離脱する医学生が出たことを受けて、厚労省では改めて病院側に地域枠の要件から外れた学生をマッチングしないよう周知したり、マッチング時に地域枠で入学しているかどうかをシステム上分かるようにしたりする方針を示した。また、19年度のマッチングをめどに、地域枠の学生が他地域で研修できないような仕組みを導入するとともに、理由なく域外の地域枠の学生とマッチングした病院に対して、補助金の減額や研修医の採用人数の減員などのペナルティーを導入する予定だ。

(日経メディカル 山崎大作)
[日経メディカル Online 2018年7月30日掲載]



https://toyokeizai.net/articles/-/231525
医療費膨張を煽る「誤報」はこうして生まれる
医療費を決めるのは高齢化でなく政治的判断

権丈 善一 : 慶應義塾大学商学部教授
2018/08/02 9:00 東洋経済オンライン

十年一昔より少し前の2006年、医療保険制度の大改革のころ、この国は、奇妙な話で、大いに盛り上がっていた。

1994 年に出された2025年の医療費の見通しは141 兆円で、その6年後の2000 年に試算された2025 年の医療費は81兆円、そしてさらに6年後の2006 年になされた2025 年医療費試算では65 兆円であったことを受けて、「なぜこんなにも予測の失敗を繰り返すのか。過大な予測をわざと出して、医療費抑制機運を高めようとする厚労省の陰謀ではないか!」と、みんなで盛り上がっていたのである。もちろん、この話は国会でもとりあげられていた。

過大推計は本当か

そこで、2006年12月に「医療費の将来見通しに関する検討会」が開かれ、この問題が議論されることになった(2007年7月まで)。私もこの会議に呼ばれたのであるが、それは、一国の医療費は、通常の再分配政策と同様に政治的に決められるものであって、それは所得という支払能力が決める形で現れ、高齢化のような医療ニーズが決めているわけではないという、医療経済学の常識を日頃から論じていたからであろう。

しかし、医療費は所得が決めるという話は、会議の中でみんなに理解してもらえなかった。すると、第3回目の会議の場に、事務局が作成した次の図が提出された。

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図をみればわかるように、名目経済成長率が高かった1994年に2025年の医療費は141兆円と試算され、成長率が落ちた2000年の2025年医療費見通しは81兆円、さらに成長率が鈍化した2006年時の2025年国民医療費見通しは65兆円と試算されている。

当時の試算は、過去数年間の年齢階級別医療費と将来の年齢階級別人口構成に基づいて行われていたのであるが、どうして、名目経済成長率が高かった時に試算された将来医療費は大きくなり、成長率が落ちてくると将来の医療費は小さくなっていたのか? このあたり、医療経済学者ゲッツェンの説明を借りよう。

「医療費は、(中略)グループでプールされた売買、より包括的には社会全体(普通は国家を意味する)でプールされた売買である。医療費は、あたかも家計における医療費が家族のメンバーの間でシェアされるように、市や県の間でもシェアされる。その結果、国内で利用される医療費総額の予算制約は、州や市や家計の所得ではなく、国の総国民所得となる」

総医療費の国際比較研究では、医療費は所得が90%程度を説明し、高齢化のような医療ニーズを表す指標は影響ないことは、かなり前から確認されてきたことであった(逆に、皆保険を持つ国々での国内の地域間比較では、所得は影響がなくなり、医療ニーズが効くことになる)。

この研究分野の古典とも言えるニューハウスの1977年論文には次の一文がある。「制度要因は内生的である:医療の制度要因――患者による医療費自己負担の在り方、医師や病院への医療費の支払方式、病院経営の分権・集権的性格等々――は、内生的に取り扱われるべきであり、各国は自国の所得水準に相応しい医療制度を、みずから発見するであろう」。

総医療費を決めるものは何か

「制度要因は内生的」というのは、総医療費を決めているのは医療の制度要因ではなく、総医療費がある一定の水準に収まるように医療の制度要因が決められているという話である。こうした何十年も前からわかっていた医療経済学上の常識が公の場で再確認されたのが、先の「医療費の将来見通しに関する検討会」であり、その報告書に、次が記されることになる。

「診療報酬改定率は政策的に決定されるものであるが、長期的には、タイムラグはあるものの、経済動向との間に結果として一定の関係が見られることから、医療費の伸び率を設定するにあたり(中略)将来見通しの前提となる診療報酬改定率は経済との関係を勘案して設定することも考えられる」

ここに、「タイムラグはあるものの」とあるのは、第3回「医療費の将来見通しに関する検討会」に出された次の資料に基づいている。日本の経験では、診療報酬改定時における過去の経済動向を踏まえつつ、改定率が決定されるため、経済の影響は4~5年遅れて診療報酬の改定に表れるのである(医療費と経済のタイムラグは他国でも観察されている)。

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こうした「医療費の将来見通しに関する検討会」の報告書を反映させた初めての医療費の将来見通しは、2008年の社会保障国民会議における「医療・介護費用のシミュレーション」であり、そこでは、次の方式が用いられた。

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医療費のみならず、介護費についても、将来見通しに「量×価格」の構造を取り入れたことにより、あるべき医療・介護提供体制の絵姿を先に描いて、それがどの程度の経済規模になるのか、そしてどの程度のマンパワーを必要とするのかを試算する道が拓かれるようになった。

このように、価格を分離して、医療や介護の提供体制という「量」サイドのあるべき姿を描き出す方法を準備し、提供体制のあるべき姿という、この国の大きな政策課題を集中的に議論できるようにしたのが、2006~2007年の「医療費の将来見通しに関する検討会」の報告書だったわけである。

2008年の社会保障国民会議でなされた2025年までの医療介護費用のシミュレーションは、2011年と2012年の2回にわたって改定された。そして今年の5月21日に、 初めて2040年の試算「2040 年を見据えた社会保障の将来見通し (議論の素材)」が示された。この「議論の素材」では、単価に乗じる伸び率は、前回の仮定が使用されており、その仮定とは次である。

+———————————————————
 ケース①:
 医療の高度化等による伸び率(A)
  + 経済成長に応じた改定の要素(B)
   - 薬・機器等に係る効率化要素(C)

 (A)近年の動向等から年率1.9%程度と仮定
 (B)当該年度の名目経済成長率の3分の1程度と仮定
 (C)年率0.1%程度と仮定
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+———————————————————
 ケース②:
 賃金上昇率と物価上昇率の平均 + 0.7%程度
+———————————————————

この方法においては、経済成長率や賃金、物価上昇率が仮定値から外れると、名目医療費の試算結果も変動するのは当たり前である。そうした経済前提の振れの影響を取り除くために、将来見通しは、対GDP(国内総生産)比で示された実質値でなければ意味をなさないのである。このことは、公的年金にも言えることは前回の「社会保障への不勉強が生み出す『誤報』の正体」で説明した。

政府資料では名目値はカッコ扱いだったが……

このような背景があるため、将来の社会保障給付費を議論する際に名目値で論じても「議論の素材」にはなりようがない。それゆえに、今回の試算においても、政府報告は、次のように、まず対GDP比を示し、( )内に名目値を載せているだけであった(私は名目値を表示しないほうがよいと思っている)。

「社会保障給付費の対GDP比は、2018年度の21.5%(名目額121.3兆円)から、2025年度に21.7~21.8%(同140.2~140.6兆円)となる。その後15年 間で2.1~2.2%ポイント上昇し、2040年度には23.8~24.0%(同188.2~190.0兆円)となる」

これだけの基礎知識を得た上で、一例として政府発表翌日の日本経済新聞朝刊1面トップ記事のヘッドラインを紹介すれば、「社会保障費、40年度6割増の190兆円、政府推計」。社説は、前回に紹介したように、「医療・年金の持続性に陰りみえる長期推計――社会保障給付費の長期推計は、このままだと医療・介護や年金を持続させられないおそれを映し出した」と論じていた。

毎日新聞も例に漏れず、18年から40年に公費負担の名目値が約30兆円増加することについて、「現在の消費税収は1%で3兆円程度。30兆円の税の負担額は単純計算すれば10%の規模に相当する」と、目を疑う記事。彼ら記者たちは、先述の基礎知識を持っていないことがわかる。

正確な情報を伝えている社説は、全国紙の中では読売だけであり、そこには、「対GDP比でみると1.1倍だ。際限なく膨張して制度が崩壊する、といった一般的なイメージとは異なるのではないか」とあった。

名目値では見えてこない本当の将来像

今回の試算が2040年を対象としたのは、40年ごろに65歳以上人口がピークを迎えるからである(正確には42年)。そして今回の試算でも確認されたことに、今後、65歳以上人口比率は、2018年28%から、2025年30%を経て2040年35%へと高まるにもかかわらず、公的年金給付の対GDP比は低下さえすることがある。

こうした試算結果のメッセージは、将来見通しを名目値で論じていたのでは見えてこない。そうであるのに、年金給付費が2018年56.7兆円から、2025年59.9兆円を経て2040年73.2兆円と報道し続ける記者たちのリテラシーはどうしたものか。

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将来の話は名目値で論じてはいけないということは、2006~2007年の「医療費の将来見通し検討会」の場でも、委員であった私は繰り返し言ってきた。しかし報道は、一部の例外を除いて、いまだにわかっておらず、誤ったメッセージを発する情報を流し続けてきており、その誤報を訂正することもない。

現実には、繰り返された誤報のおかげか、社会保障費抑制の方向に世論は強く傾き、日本でも所得と社会保障給付費との間に強い関係があるとはいえ、国際的には所得の割には給付費が低いまま、つまりこの国では社会保障の抑制にしっかりと成功してきているのである(以下の2つの図は、「『社会保障費が2040年に1.6倍』は本当か」より引用)。

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この国が抱える問題はまさに、国民のニーズに見合った社会保障が本当に提供されているのかということにある一方で、必要な財源確保を何十年間も先送りしてきたゆえ、今後の財政健全化のために社会保障の量的充実も相当に難しいというジレンマに直面していることにある。

そして今、このジレンマの中で、よりニーズに見合った給付を行うという意味での制度の効率化・給付の重点化を、各制度の関係者たちの協力の下に懸命に進めながら、国民の生活を守るために、可能な限りの財源の確保が模索されているのである。

ところが、メディアが不勉強のままで将来の社会保障費を名目値で論じる誤報を続ければ、考えなければならない方向とは異なるメッセージをメディアは発し続け、誤報に誘導された誤った政治的判断につながっていく。そうした危惧を書いた一文をもって本稿を閉じようと思う。

「この国では、世界一の高齢国家を突き進んでいるのに、GDP に占める社会保障給付費がなお低く、年金などは将来の方が給付のGDP 比が下がってしまい、このままでは多くの人にとって自立した尊厳のある人生を全うしてもらうのが、相当に難しくなるというのが、取り組まなければならない課題となっているわけです。将来の社会保障給付費の名目値で議論をしていると、道を誤ることになりかねません 」(権丈善一『ちょっと気になる社会保障 増補版』132~133ページ)




https://www.sankei.com/west/news/180803/wst1808030095-n1.html
【西日本豪雨】
医療機関の連携不足を克服 熊本地震の経験生かせ 倉敷・真備

2018.8.3 23:28 産経新聞

 西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市で、地元の医療・福祉関係者が情報を収集・整理し、被災者の治療や公衆衛生の向上に着実につなげる組織「倉敷地域災害保健復興連絡会議」(KuraDRO)(クラドロ)を設置。現場が混乱し、情報伝達ミスや各機関の連携不足が生じがちな被災地で効果を上げた。平成28年の熊本地震での例を参考にした取り組みで、現在は岡山県南西部災害保健医療活動調整本部がその役割を継承。地元医療関係者は「医療機関同士の連携がスムーズに取れている」と手応えを感じている。(地主明世)

 「避難者は便秘や腰痛を訴える方が多くなっているので注意してほしい」

 7月末の朝。岡山県備中保健所(倉敷市羽島)横のプレハブで開かれた定例の調整本部会議で、集まった医師や保健師らが被災者の体調や避難所の課題などを報告し合った。参加したNPO法人「災害人道医療支援会」のメンバー、甲斐聡一朗医師は「行政に避難所などのニーズを素早く伝えられる点でも役立つ」と話す。

 調整本部は、連絡調整を行う「総括班」や医薬品の確保などを担う「衛生班」といったチームを設置。避難所で被災者を診察した医師からの情報でスムーズに医薬品を処方したり、避難所の要望に応じてクーラーを設置するなどした。医療機関と避難所をつなぐ臨時バスの運行管理も行っている。

 調整本部の前身、クラドロは「倉敷市」の「クラ」と「災害復興会議」の英字表記の頭文字から取った。立ち上げは7月9日。倉敷市に派遣された国立病院機構災害医療センター(東京)の「災害派遣医療チーム」(DMAT)の隊員が、熊本地震での経験をもとに設置を提案した。

 熊本県などによると、一昨年の熊本地震で、被害の大きかった同県阿蘇市内では保健所も被災、職員は住民らの対応に追われた。「どこでどんなことが行われているのかわからないまま、目の前の対応で精いっぱいだった」(熊本県阿蘇保健所の担当者)という。

 そこで、現地で阿蘇地区災害保健医療復興連絡会議(ADRO)(アドロ)を設置。保健所と協力し、医療機関が集まる情報共有の場を設けたことで、避難所でノロウイルスの患者が出たときも、早期対応で感染拡大を防ぐことができたという。

 倉敷市のクラドロでは当初、DMATと地元保健所が中心に情報を集約。日本医師会の災害医療チーム(JMAT)やリハビリ関連団体でつくる支援組織「JRAT」、国際医療ボランティア団体「AMDA」などが続々と到着する中、被災地の実情に沿った支援活動を後押しした。

 調整本部はそれを引き継ぎ、現在は、今回の災害で初めて派遣された「災害時健康危機管理支援チーム」(DHEAT=ディーヒート)の協力も得ながら、医療機関の復旧支援や情報収集・共有を行っている。

 災害時の医療連携に詳しい日本医師会総合政策研究機構の王子野麻代(おおじのまよ)・主任研究員は「応援に入った医療関係者と地元が一体となったクラドロなどの取り組みは、災害時の連携の新しい形として定着しつつある。外からの応援がなくなったときに急に支援が途切れないよう、被災地の行政や医療関係者が中心となることが重要だ」としている。



https://mainichi.jp/articles/20180802/k00/00e/040/298000c
西日本豪雨
地域医療、再開見えず 浸水で診療機能失う

毎日新聞2018年8月2日 12時55分(最終更新 8月2日 18時39分)


 西日本豪雨では、地域医療を担う病院の被害も各地で相次いだ。広島県三原市本郷地区では総合病院「本郷中央病院」(谷本康信院長、137床)が近くを流れる沼田(ぬた)川の氾濫で4階建て建物の1階天井近くまで浸水し、診療機能を失った。入院患者らに被害はなかったが、3週間以上が経過しても診察再開のめどはたたず、深刻な影響が続いている。

 雨が降り続いていた7月6日夕、辻誠二事務長(57)は同県竹原市内の自宅に帰宅途中、沼田川の水量を見て「多いな」と感じた。数時間後の午後10時ごろに氾濫したとみられる。

 入院患者らは2階以上にいた。病院前の県道に水があふれ、徐々に病院に迫った。職員が1階事務所にあるパソコンなどを机や棚の上に移動させ始めたところ、建物に入って来た水の水位が上がり、2階に逃げたという。県道を車で走っていた十数人も逃げ込んだ。

 病院は最大約2.3メートル浸水し、1階の診療設備が水没。停電ですぐに非常用電源に切り替わったが、空調は動かなかった。入院患者約100人と看護師や職員ら約20人はわずかな明かりの中、迫り来る水の恐怖と隣り合わせの一晩を過ごした。

 辻事務長は翌日、レジャーボートを持っていた職員と合流して水上から病院に駆け付けた。一帯の平屋建て住宅は水没し、風景は一変していた。「(病院のほか)隣のホームセンターやスーパーしか見えず、がくぜんとした」。水害は最も想定外の災害だった。

 辻事務長が乗ってきたボートは8日に水が引くまで、職員らを乗せたり、市内の系列病院からの食料や燃料を運んだりするのに水の上を走り続け、入院患者らの命綱となった。

 主要な機器は全て1階にあり、レントゲンや大腸などを撮影する医療用カメラ、カルテやコンピューターサーバーも水没した。自ら被災者でもある職員らは医療機器を運び出し、建物内の清掃に追われた。外来診療はできなくなり、入院患者のケアに専念する一方、18日からは避難所となっていた本郷生涯学習センターに設けられた救護所に医師や看護師らを派遣。被災者の健康相談に乗った。

 周辺は今も土砂に覆われ、車が走るたびに砂ぼこりが舞う。病院南隣の本郷総合運動公園には、災害ごみが人の背丈を超える高さまで積まれ、感染症も心配される。それでも空いている病室で最低限の診療が再開できないか、行政などと調整を進めている。

 今後は浸水した現在地で復旧できるかどうかも課題になる。ただ、市は病院も含めた民間施設の被害情報を集約している最中で、具体的な支援などはこれからだ。市保健福祉課は「市医師会など関係機関と連携し、最善策に向けて取り組んでいきたい」と説明するにとどまる。【松井勇人】

95医療機関が被害

 厚生労働省のまとめでは、西日本豪雨では広島に加え岡山、愛媛、長崎、京都、福岡の6府県で95の医療機関が浸水や停電、断水などの被害を受けた。

 診療機能は失われなかった病院でも、断水で職員がタンクを手に給水所を走り回ったり、人工透析患者に他の病院で透析を受けてもらうよう頼んだりしたという。外来患者は投薬に限るなど一時的に限定的な対応しかできない病院もあった。

 岡山県倉敷市真備(まび)町地区では、一般病院「まび記念病院」の1、2階部分が浸水し、入院患者や周辺住民ら約300人が一時取り残された。病院は機能停止し、入院患者76人中59人が県内の他の病院に転院。17人は退院した。

 7月18日には地元医師会などの協力で、敷地内に止めた検診車で診療を再開した。30日から病院の脇に建てたプレハブで診察しているが、検査機器が不足し、原則は掛かり付けの患者が対象だ。初診の患者らには、別の医療機関の紹介状を渡している。

 地区内の薬局も水没し、当初は薬の確保が困難だった。村松友義院長(60)は「病院の2階にあった薬を渡したり、薬の処方を翌日回しにしたりして対応した」と明かした。【飯田憲、矢追健介】



https://www.yomiuri.co.jp/local/ehime/news/20180805-OYTNT50011.html

吉田病院 命の水確保奮闘

2018年08月05日 読売新聞

 ◇豪雨断水1か月 休まず診療 全国から支援

 西日本豪雨のため断水が続いていた宇和島市の三間、吉田両地区で、代替の浄水装置による試験通水が3、4日にそれぞれ始まり、県内の断水地区は解消に向けて大きく前進した。この1か月近くの間、吉田地区の医療拠点である市立吉田病院は、様々な支援を受けて水不足を乗り越え、休診することなく患者の受け入れを続けてきた。(大北恭稔)

 吉田病院では7月7日未明、激しい雨で停電が発生した。夜勤の職員らが発電機2台を稼働させ、入院患者73人の安全を確認。周辺の道路は土砂崩れや冠水が相次ぎ、自宅にいた職員らは腰まで泥まみれになりながら駆けつけた。病院の施設に被害はなく、診療は休まなかった。

 一方、地区の吉田浄水場が土石流で壊滅的な被害を受けたため、給水が断たれた。病院で利用する水は1日に35トン前後で、貯水タンクに約4日分(142トン)の水は確保していた。ただ、近くの住民がトイレを利用したり、掃除用に水を持ち帰ったりするようになり、すぐに底をついた。

 村上幸男事務局長は「被災した人たちのことを考えると、利用を止めることはできなかった。どうすれば患者を守り、診療を続けられるのかを必死に考えた」と振り返る。

 県の紹介で陸上自衛隊に協力を要請し、9日に給水車の派遣が始まった。30トンの供給を確保してもらったが、医療に必要な水を除き、携帯トイレやアルコール消毒液の使用を推奨するなどして節水を徹底した。

 それでも給食調理用の水などは十分ではなかった。病院のホームページで「水がなくて困っている」と訴え、取引先の医療関係者らにも呼びかけたところ、支援の輪が広がり、全国から2リットル入りペットボトルの飲料水が2500ケース以上寄せられた。

 村上事務局長は「職員が強い使命感で行動し、多くの人に助けられ、患者を守ることができてよかった」と振り返っていた。



https://www.ehime-np.co.jp/article/news201808020012

へき地医療確保を目的
西予・巡回診療車 運用開始

2018年8月2日(木)(愛媛新聞)

 へき地医療確保を目的に愛媛県西予市が導入した巡回診療車が1日、運用をスタートした。初日は8人の予約があった野村地域の惣川公民館で活動。診察は週3回で月曜と水曜は惣川公民館、火曜は城川地域の遊子川公民館を拠点に、市立野村病院(同市野村町野村)のスタッフが診察する。

 市によると、惣川、遊子川両地区の診療所を7月末で閉鎖し診療車を導入。建物や医療機器の維持費用を抑え、収支改善や医療職確保を含めた診療の質向上を図る。マイクロバスに超音波診断装置や心電計、血液や尿の検査装置などを搭載しており、整備費3966万円。

 1日は同病院で出発式があり、管家一夫市長が「医療過疎地域に、将来ずっと笑顔を届けられるシステムを考えた。大災害でも機動的に力を発揮すると思う」と述べた。守田人司院長は「地域医療に貢献し信頼される病院を目指すのが病院の理念。頑張りたい」とあいさつ。医療職や技師、事務員で構成するクルー5人を代表して、内科の笠井誉久医師は「住民が安心して生活できる未来に向けて出発したい」と話していた。



  1. 2018/08/05(日) 10:52:16|
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