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Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月22日 

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180718/mca1807181703012-n1.htm
改正医療法、医師法が成立 地方勤務経験で優遇 
2018.7.18 17:03 Sankei Biz

 都市部などへの医師の集中を解消するため、地方での勤務経験を評価、病院の管理者になる際に優遇することを盛り込んだ改正医療法と医師法が18日、衆院本会議で与党などの賛成多数で可決され、成立した。

 医師不足地域で勤務した医師を厚生労働相が認定し、一部病院で管理者になる際の評価項目に加えることとした。国が新たに導入する「医師偏在指標」を踏まえ、都道府県が医師の確保計画を策定することも定めた。

 医師養成課程での都道府県の権限も拡大。大学医学部に地元出身者枠の設定や増員を要請できるようにするほか、新人医師の臨床研修を実施する病院の指定や募集定員の設定もできる仕組みづくりも進める。



https://www.jiji.com/jc/article?k=2018071800754&g=pol
都道府県が医師確保計画=改正医療法・医師法が成立
(2018/07/18-15:50)時事通信

 医師の地域偏在の解消を目的とする改正医療法・医師法(参院先議)が18日の衆院本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。新たに導入する「医師偏在指標」を踏まえ、都道府県に医師確保計画の策定を義務付けることなどが柱。一部を除き、2019年4月に施行される。
 医師確保計画には、確保する医師数の目標や達成に向けた施策を示す。都道府県は医師偏在指標に基づき「医師少数区域」と「医師多数区域」を指定でき、少数区域の医師確保のため重点的に対策を進める。
 医師少数区域などで一定期間勤務した医師を厚生労働省が認定する制度も創設。認定を、地域医療支援病院などの院長となる要件の一つとする。



https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33104500Y8A710C1EE8000/
改正医療法・医師法が成立 医師偏在対策盛り込む  
2018/7/19付日本経済新聞 朝刊

 医師が不足する地域での勤務経験を一定の病院の院長に就く際の要件とするなど、医師偏在対策を盛り込んだ改正医療法・医師法が18日、衆院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。2019年4月から都道府県に医師確保計画の策定を義務付けるほか、偏在の状況を示す新しい指標もつくる。



https://mainichi.jp/articles/20180719/ddl/k08/100/078000c
県 医師不足解消へ、公立5校に医学コース 来年度から /茨城 
毎日新聞2018年7月19日 地方版 茨城県

 大井川和彦知事は17日、来年度から県立高校3校と県立中等教育学校2校の計5校に、大学医学部進学志望者を集めた専門コースを新設すると発表した。各校1学級(約40人)程度設置する予定で、現役と浪人を合わせて年間計約100人の医学部進学者輩出を目指し、県内の医師不足解消につなげる意向だ。

 同日の定例会見で、大井川知事は「県出身者は(大学医学部卒業後に)県内に戻ってもらえる確率が高い。地元出身の医師を増やす努力は必要」と話した。

 同コースを設置するのは、水戸一▽土浦一▽日立一--の3高校と、並木と古河の両中等教育学校。来年度以降に入学(中等教育学校は後期課程進級)した生徒が対象で、希望者は2年生から同コースに進む。

 病院や医学部のある大学と連携し、病院での実習や医師の講演などを聴く医学研究会(仮称)を実施するほか、予備校などと連携し、医学部入試に必要な面接や小論文の課外授業を行うなど、受験に必要な学習指導も行う。8月から各校で説明会が始まる。必要な予算は今後、精査するという。

 県高校教育課によると、18年度入試で、県内から医学部に進学した生徒数は125人(うち公立校は55人)で、5校からの進学者は43人。

 茨城県は10万人当たりの医師数(16年)が180・4人(全国平均240・1人)と、全国ワースト2位で、大井川知事は今年2月、「県医師不足緊急対策行動宣言」を発表した。【吉田卓矢】



https://www.m3.com/news/iryoishin/616125
医療維新 シリーズ 大学医学部「地域枠」の
国立大最大の義務年限付「地域枠」、その現状は? - 筑波大学◆Vol.1
充足率8割、充実した地域医療で離脱は最小限 
 
スペシャル企画 2018年7月20日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 茨城県の人口10万人当たりの医師数は、全国46位。同県では地域枠拡充に力を入れており、県内唯一の医学部を持つ筑波大学が、その大半を受け入れている。同大の医学群医学類(医学部に相当)の定員140人中、茨城県の「義務年限付の奨学金」の地域枠の学生は36人で、約25%。その割合は、国立大学の中では最多だ。定員充足率は100%ではないが、同大学は、茨城県内に地域医療を実践する病医院を持ち、1年次から地域医療教育に力を入れ、地域枠入学者の離脱は2009年度の地域枠のスタート以降で1人にとどまる。
 同大地域医療教育学教授の前野哲博氏、講師の片岡義裕氏は、このほど文部科学省の調査研究委託事業として「我が国における地域枠制度の実態・効果および地域枠学生のキャリア形成に関する調査・研究」をまとめた。筑波大の地域枠の現状に加えて、同報告書から浮かび上がった全国の大学・医科大学の「地域枠」の現状をお聞きした(2018年6月11日に取材。全3回の連載)。

 茨城県は、卒業後に茨城県内の医療機関に勤務する条件付の地域枠を、筑波大学の36人のほか、都内の6大学(東京医科歯科大学、東京医科大学、杏林大学、日本医科大学、北里大学、帝京大学)に設けている。全体で、地域枠の総数は計53人。「これだけ多くの奨学金付の地域枠を持っている県、国立大学は他にはない」(同大地域医療教育学教授の前野哲博氏)。

 筑波大学の地域枠は、さらに2つに分かれる。茨城県内の高校出身者を対象とした地域枠(茨城県枠、推薦入試17人、前期日程9人)、出身地を問わない地域枠(全国枠、前期日程10人)だ。いずれも義務年限は原則9年間で、茨城県が指定した医師不足地域で5年以上、うち中小病院で4年以上の勤務が条件(医師不足地域で7年以上勤務した場合には、中小病院での勤務は3年以上に緩和などのルールあり)。

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2018年度筑波大学地域枠修学生の入学状況(詳細は、筑波大学のホームページ)

 2018年度の入学者の場合、筑波大学の地域枠36人中、入学者は23人。充足率は63.9%。2016年度からの3年間では、募集定員108人に対し、入学者は78人、充足率72.2%だ。

 2018年度の場合、推薦入試以外は募集人数に対し、いずれも入学者数が下回った。中でも充足率を押し下げているのは、「全国枠」で、募集人数10人に対し、入学者数は1人のみ。義務年限に加えて、「救急、小児科、産婦人科、県北限定の総合診療」という診療科の縛りも加わることが、志願者が二の足を踏む要因になっているようだ。他大学も含めた地域枠全体(53人)充足率は、年度によって異なるが、60~80%程度にとどまる。

 一般枠と地域枠、分け隔てなく教育
 地域枠の充足率は100%ではないものの、筑波大学に地域枠として入学した後の定着率は高い。「まだ地域枠の卒業生が出始めたばかりで、一期生は卒後4年目。地域枠の評価を行うのはまだ早いが、離脱した卒業生は29人中、1人にとどまる」(前野氏)。この1人は、一般枠で合格した後に、地域枠に入り、奨学金を得た医師だという。

 入学後は、奨学金を出す茨城県は、毎年春と夏の年2回のセミナーや個別面談など、地域枠の学生、卒業生を対象にしたキャリア支援を実施。

 また筑波大学は、1年次から充実した地域医療教育を早くから実践していることで知られる。「他大学が地域枠の学生に対して行っている特別な教育と同等以上の教育を、一般枠の学生も含めて必修で全員に提供している。したがって、医学教育においては、一般枠と地域枠の区別はしていない。地域枠の学生を特別扱いすると、一般枠の学生は『地域医療は、自分には関係ない』と分断が起きてしまう恐れもある」(前野氏)。

 1年次には早期体験実習を実施。2~5年次の必修科目「医療概論」では、繰り返し地域医療について学ぶ体系的なカリキュラムを実践している。クリニカル・クラークシップの後半(5年次10月~6年次5月)に実施する4週間の実習では、外来診療に加えて、在宅医療で訪問診療・看護・リハビリテーションなども経験するほか、介護関連施設での研修、保健センターや社会福祉協議会での事業での実習なども行っている。

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筑波大学の地域医療教育(2017年度の厚労科研「総合診療が地域医療における専門医や他職種連携等に与える効果についての研究」報告書から引用。詳細は、厚生労働科学研究成果データベース)

 充実した地域医療実習が可能なのは、2006年度から「地域医療教育センター・ステーション制度」の構築に取り組んできたからだ。前野氏は、「教育フィールドと教育機能をマッチさせることを目指した」と語る( 『教員を地域に派遣、教育と医師確保に貢献◆筑波大学Vol.1』などを参照)。

 大学病院自体は、特定機能病院であり、高度急性期医療を担う場。そこで、自治体等から寄附金を受け、大学が総合診療医を雇用して、茨城県内各地の病医院を地域医療教育実践のフィールドとするため、これらの医師を派遣している。大学、自治体、地域住民や地域の医療機関が一体となり、「地域で活躍する医師は、地域で育てるという発想での取り組みだ。

 「地域医療教育センター・ステーション制度」は、在宅医療に取り組む県内4カ所の診療所からスタート。徐々に対象機関等が広がり、現在は地域医療教育センター(中規模以上の病院、派遣教員5人以上)が8カ所、ステーション(診療所および中小病院、派遣教員5人未満)が7カ所だ。

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筑波大学が茨城県内に持つ地域医療教育の拠点(2017年度の厚労科研「総合診療が地域医療における専門医や他職種連携等に与える効果についての研究」報告書から引用。詳細は、厚生労働科学研究成果データベース)

 前野氏は、自らが所属する総合診療科における本制度のメリットとして以下を挙げる。

総合診療科の視点から見た「地域医療教育センター・ステーション制度」のメリット
・医療機関:ステーションに指定された医療機関では、人件費を負担することなく、指導医レベルの総合診療医に勤務してもらえるため、業務に余裕が生まれ、それを教育業務に振り向けることが可能になる。さらに指導医が在籍している特徴を前面に出すことで、安定的に専攻医の雇用を確保でき、診療を充実させることができる。

・教育プログラム:派遣された指導医は、自らも第一線で活躍する総合診療医として外来や訪問診療などの業務をこなす一方、教育に専念する時間を確保して、学習者の学びを深めたり、専攻医のキャリアサポートに充てたりすることができるため、指導体制・支援体制が格段に充実する。また、派遣された指導医を通して大学と地域医療機関の意思疎通を図ることができ、プログラム全体で一貫性を持って教育を実践できる。

・指導医:一般に、総合診療医は、その専門性を発揮しづらいが大学病院での勤務を敬遠する傾向がある。本事業では、継続的に地域のフィールドに触れ続けることができるため、自らの専門性を生かした診療を実践する機会が担保される。一方、週の半分は大学でも勤務するため、FD(Faculty Development)や大学での教育活動への参加を通して、自らの教育能力の維持向上を図ることができるとともに、研究機関でもある大学という環境を生かした研究活動もできる。
(2017年度の厚労科研「総合診療が地域医療における専門医や他職種連携等に与える効果についての研究」報告書から引用。詳細は、厚生労働科学研究成果データベース)

 新専門医制度でも専門医取得に配慮
 今年4月から新専門医制度がスタートした。地域枠の卒業生にとって、義務年限を果たしつつ、専門医を取得できるかは大きな関心事だ。

 茨城県の場合、19の基本領域のうち、ほとんどの診療科では義務年限を果たしつつ、専門医取得が可能になるよう、各専門研修プログラムの基幹病院と調整を行った。さらに内科や外科では、全ての領域ではないものの、サブスペシャルティ取得も視野に入れたプログラムを組んでいる。

 さらに茨城県の特徴と言えるのが、地域医療支援センターの活用だ。地域枠の卒業生は、100人強だが、今後増えてくれば、2025年には約400人になる見通しだ。これらの医師のキャリアを、義務年限の履行を踏まえながら、コーディネートしていくのがセンターの役割となる。

 2019年度から法人組織を作り、茨城県がそこに委託する形で地域医療支援センターを運営する予定だ。「本室」は県庁のある水戸市に、「分室」を筑波大学内にそれぞれ置く。「分室」には常勤医師2人相当と事務職員を置き、「本室」や大学と連携しながら、面談を通じたキャリア形成、医師不足地域の病院等への医師派遣調整・あっせんなどに取り組む計画になっている。



https://www.m3.com/news/iryoishin/616509
医療維新 シリーズ m3.com全国医学部長・学長アンケート
医学部定員、減らす方向性に同意も“柔軟な”対応が必要
医学部長・医科大学長アンケート-Vol.3- ◆ 地域枠【その1】

レポート 2018年7月18日 (水)配信大西裕康(m3.com編集部)

 m3.com編集部が4年連続で実施した「医学部長・医科大学長アンケート」(全国25大学が回答)。Vol.1~2で今年4月に始まった新しい専門医制度に関する回答を紹介したのに続き、Vol.3~4では、医学部定員枠のうち「地域枠」に関する結果を紹介する。主に都市部以外の医師不足を解消する狙いで2008年度から増えた地域枠。人口動態推計から2035年頃を境に急激な人口減少へ向かい、国内の医師需要も減っていく中で医学部の入学定員の在り方に対する考えを聞いた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

Q10. 2008年度以降、地域枠を中心に医学部の入学定員が増えてきましたが、厚労省検討会では、2022年度以降は入学定員を減らすよう政策提言する方向で検討が進んでいます。医学部の入学定員について、どのようにお考えでしょうか。
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 「厚労省検討会の考えを支持する」が回答25大学中、14大学と最多だったが、「現状維持すべき」は8大学で、東京、大阪、愛知のような大都市圏が近隣にない地域の大学が回答した。

 
Q11. 2022年度以降、医学部定員を減らさなければならなくなった場合、どの部分を対象にすべきでしょうか。
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 回答の最多は「大学ごとに裁量権を認めるべき」(16大学)で、「一般枠」(4大学)、「全体のバランスを見ながら」(3大学)と続いた。

 また回答傾向を見ると、今回の記事で紹介した最初の問いである「医学部定員を減らす方向性」に対して「厚労省検討会の考えを支持する」を選んだ大学の多くは、同2番目の問いである「医学部定員を減らす場合の対応」に関する回答で「大学ごとに裁量権を認めるべき」を選んでいる。医学部定員減の方向性自体には理解を示しつつも、機械的な減員は難しいとの考えが垣間見えたと言えそうだ。

次回はVol.4 地域枠と医師養成数【その2】として自由記述の内容をお届けする。

[医学部長・医科大学長アンケート2018記事一覧]
・Vol.1新専門医制度の影響【その1】
・Vol.2新専門医制度の影響【その2】

■回答大学・回答者名(北から)

旭川医科大学 吉田晃敏 学長
札幌医科大学 三浦哲嗣 医学部長
弘前大学 若林孝一 医学部長
岩手医科大学 佐藤洋一 医学部長
東北医科薬科大学 福田寛 医学部長
東北大学 五十嵐和彦 医学部長
山形大学 山下英俊 医学部長
群馬大学 石崎泰樹 医学部長
国際医療福祉大 北村聖 医学部長
東京医科歯科大学 北川昌伸 医学部長
東京慈恵会医科大学 松藤千弥 学長
横浜市立大学 益田宗孝 医学部長
富山大学 北島勲 医学部長
福井大学 内木宏延 医学部長
大阪医科大学 大槻勝紀 学長
兵庫医科大学 野口光一 学長
川崎医科大学 福永仁夫 学長
島根大学 並河徹 医学部長
広島大学 秀道広 医学部長
香川大学 上田夏生 医学部長
徳島大学 丹黒章 医学部長
産業医科大学 東敏昭 学長
大分大学 守山正胤 医学部長
鹿児島大学 河野嘉文 医学部長
琉球大学 石田肇 医学部長



https://www.m3.com/news/iryoishin/615696
シリーズ m3.com全国医学部長・学長アンケート
医師の都市部への集中を決定、研修レベルの是正に期待
医学部長・医科大学長アンケート-Vol.2- ◆ 新専門医制度【その2】
 
レポート 2018年7月15日 (日)配信大西裕康(m3.com編集部)

Q. 新専門医制度について、評価している点や改善すべき点などをご自由にお書きください。
 回答のうち特に多かったのは、地域医療との関係に課題があるとの指摘、後期研修のレベル是正を期待する声だった。また、都市部・首都圏に医師が集中するとの懸念や、制度に関する情報提供が不十分と訴える意見も複数上がった。

[都市部、首都圏に医師が集中]
【香川大学・上田夏生 医学部長】評価している点は無い。医師の都市部への集中を決定づけたと考える。

【匿名希望・国公立大】結果的には首都圏に医師が集中している。

【匿名希望・国公立大】都市部への流出が懸念される。

[情報提供が不十分]
【旭川医科大学・吉田晃敏 学長】専門医制度の各施設への情報提供は不十分と思われるので、周知徹底を図っていただきたい。

【匿名希望・国公立大】初期研修医が中心となるべき制度であり、募集開始日時の早期明示あるいは適切な説明が必須です。機構のガバナンスも含め改革の余地は大きいです。

【匿名希望・国公立大】定員数管理に問題があると思います。「永井私案」を検討すべきだったのではないでしょうか?

[研修レベルの是正に期待]
【東京慈恵会医科大学・松藤千弥 学長】これまでバラバラだった専門医制度の基準を統一し、専門医の質をコントロールすることが当然必要であり、評価しています。

【岩手医科大学・佐藤洋一 医学部長】評価すべきは、個々の臨床学会が認定していた専門医のレベルあわせができた点。

【大分大学・守山正胤 医学部長】評価する点: 医療の技量を質保証するためにしっかりとした評価システムを構築することが重要であると考える。

【広島大学・秀道広 医学部長】高い質が担保されやすくなった。制度の管理のため作業が膨大になった。

【匿名希望・国公立大】研修プログラム自体としては、専門医資格取得までに経験しなければならない症例の種類と研修内容がより明確にされたことで、研修レベルがより均一されることが期待される。

【匿名希望・国公立大】新制度で質の向上は期待できるかもしれないが、「質保証」は不可能である。
【匿名希望・国公立大】 研修内容がプログラム化され「見える化」されたのは評価点。

【匿名希望・国公立大】改善点:プログラムの管理運営にかかる人的・物的コストが増大した。

[地域医療、医師偏在との関係に課題]
【富山大学・北島勲 医学部長】地域医療を担う人材を新専門医制度でどのようして育成してゆくのか、大きな課題が残ったままのスタートとなってしまった。内科系、外科系のプログラム参加者が少なく、このままでは10年後の医師の地域別、職種別偏在化が深刻な問題になると思われる。

【東京慈恵会医科大学・松藤千弥 学長】制度設計の過程で、さまざまな意見が出て、地域医療への配慮が強い制度設計になってしまいました。本来、専門医制度は、より良い人材育成を主眼に制度設計すべきだと考えています。多くの方が議論してもなかなか解決が見付からない難しい課題だとは思いますが、例えば専門研修は人材育成を主眼にして、それを終えた時点で、もう一度、流動性を持たせ、その時点で地域医療に配慮した仕組みにするなど、何らの工夫が考えられないかと思っています。

【産業医科大学・東敏昭 学長】各学会の提案と機構の承認で設けている基準について、地域、大学の実情に応じて適用範囲を妥当な範囲で変更する案も審査の上で認めるようにすべきである。

【岩手医科大学・佐藤洋一 医学部長】医療過疎地で地域医療を支えている医師、様々な要因で離職を余儀無くされる医師、研究にトライしようとする医師などの多様なキャリアパスに対する配慮が乏しいと思われます。

【徳島大学 丹黒章 医学部長】ハードルが高い専門医、低い専門医が玉石混淆、ハードルの低い方へ流れる懸念あり。

【匿名希望・国公立大】地域の事情によって、十分な研修症例数や症例の種類を経験することが困難となる場合が十分に想定され、そうした地域で専攻医を確保することや、そうした地域の病院へ専攻医を派遣することが困難になることが懸念される。この点を含めて、実態を解析する必要があると思う。

【匿名希望・国公立大】内科・外科などサブスペシャルティ専門医取得までに時間がかかる診療領域が敬遠され、マイナー志向が強まっている。

[その他]
【大分大学・守山正胤 医学部長】改善すべき点: 初期研修制度との重複が問題で、内科専門医を目指す場合は初期研修で経験した全ての症例を認めるべきで、なるべく早くサブスペに進めるように効率化すべきである。今の制度は時間がかかりすぎる。

【岩手医科大学・佐藤洋一 医学部長】小生が基礎医学者であることから、とりわけ研究医の減少が危惧されます。

【旭川医科大学・吉田晃敏 学長】申請様式、連携施設の追加などの事務手続きが簡便になり各施設の負担が軽減した点は、評価できると思われる。一方、専攻医募集のスケジュールがタイトであり、余裕のあるスケジュールにしていただきたいと思う。

【匿名希望・国公立大】評価すべき点は、研修医が自らの専門領域を従来より早く考えるようになる。
改善すべき点は、プログラム制導入により出産・育児などのライフイベントがある女性医師にとって専門医資格のハードルがあがっている。専門医機構の認証料・更新料が追加で求められるため、専門医取得・更新のための金銭的な個人負担がかなり増えることが危惧される。

【匿名希望・私立大】学位制度との両立ができるようにしてもらいたい。

【匿名希望・私立大】専門医取得が優先され、大学院進学者が減少している点は改善すべき。

【匿名希望・国公立大】基幹病院と連携施設をローテートする仕組みに関しては、連携施設での的確な指導が担保されているかどうか不安が残ります。さらに専攻医の立場からすると、研修病院が変わるごとに引っ越しをしなくてはならない場合が多く、新たな環境で人間関係を構築し直す必要があるのではないかとの危惧をいだく医師が多いと思います。

【匿名希望・国公立大】大学に医師が戻ってきたことは評価できる。



https://www.m3.com/news/iryoishin/616641
新設医学部でも将来の定員減を見据え検討を
東北医科薬科大3年目、運営協議会で委員らが意見
 
レポート 2018年7月19日 (木)配信大西裕康(m3.com編集部)

 新設の医学部であろうと、将来の医師過剰時代を見据えて定員減を検討し始めるべきだ――。東北医科薬科大学が7月17日に開いた教育運営協議会の第10回会合で、複数の委員から出た意見だ。東日本大震災の被災地支援という目的も相まって2016年度に医学部を新設して今年度が3年目である同大学も、定員削減を見据えて検討を始めるべきだとの指摘だ。

 同大学・運営協議会は、医学部設置に伴い東北6県の地域医療に対する影響を検証する目的で設置。東北6県の大学や行政の関係者で構成している。開校後は、毎年度会合を開き、入試の実施状況などを公表している。

 医学部定員については厚生労働省が、2028~2033年頃に医師の需給が均衡して以降は医師の需要が減少していくとの推計などを医師需給分科会(座長:片峰茂・長崎大学前学長)に提示し、医学部の定員を削減する方向性で対応策の検討を求めている(医師需給分科会での検討状況は、『2022年度以降の医学部定員、「削減」の方向で検討』などを参照)。

 医学部定員の削減を検討すべきとの意見は、山下英俊委員(山形大学大学院医学研究科長・医学部長)の代理で出席した同大学医学部参与の嘉山孝正氏が口火を切った。嘉山氏は「2035年前後で人口が急激に減っていき、将来は医師数が過剰になる。医学部の定員をどうするかは、各大学が検討すべき課題」との認識を示し、「山形大は今年度、定員を5人減らした。旭川医科大学も岡山大学も減らしている。将来を見据えて(例外なく全ての大学が)検討しなければならない課題だ」と述べた。「定員削減を見据えてきっちりやった方がいい」とも述べ、必要性を強調した。

 岩手医科大学理事長の小川彰氏も同調し、「厚労省の医師需給分科会では、定員削減に向けた議論になる。今後も(全ての大学が)定員は同じというわけにはいかない」との考えを示した。

「当初は反対していたが、今は満点に近い」山形大・嘉山氏

 一方で嘉山氏は、医学部新設に反対を表明し続けた全国医学部長病院長会議相談役などを自身が務めた経験などに触れた上で、「医学部長病院長会議としても新設に当初は反対したが、(東日本大震災の)被災地で地域医療の崩壊を防ぐということで、(医学部長の)福田先生をはじめ色々とご尽力されてきたのを見てきた。満点ではないが、それに近いのではないか。地域医療の崩壊は進んでいないと思う」と評価。来年度から医学生の臨床実習が始まることにも言及し、「地域の病院へ大学の先生が実際に足を運んで(実習を助けるなどの取り組みが)ほしい。地域との連携に関してさらなる“鍬入れ”を求めたい」と要請した。

 来年度から始まる臨床実習は、4年次後期~5年次後期に、同大学本院のほか仙台医療センターや東北労災病院を回る「診療科臨床実習」を、6年次前期には東北6県19施設のネットワーク病院を活用する「地域総合診療実習」と病診連携を学ぶ「地域包括医療実習」をそれぞれ計画している。

「新設の趣旨が浸透してきた」医学部長・福田氏

 同日の会合では、医学部の入学試験の実施状況などを公表。同大学医学部長の福田寛氏は、東日本大震災の被災地に医学部を新設した際の理念が浸透してきたとの見方を示した。根拠としては、医学部入学者100人に対する志願者数、受験者数、合格者数の減少を挙げた。特に合格者数と入学者数の関係を取りあげ、「入学者100人を超える部分は辞退者数」と説明。「設置趣旨を理解した上で受験している人が増えてきたと見ることができる」と述べた。同大学初めての医学部入試を実施した2016年度は入学者数100人に対し合格者は297人、2年目の2017年度は同256人、3年目の2018年度は同227人と、徐々に合格者数は減っている。

 2018年度の入試実施状況は、志願者数が前年度比367人減の1873人、受験者数は同369人減の1673人、合格者数は29人減の227人だった。3年目を迎え、入学者100人のうち東北地方出身者や女性の割合が増えている。2018年度の東北出身者数は前年度比4人増の37人(前々年度比は6人増)で、女性は前年度比10人増の30人(同11人増)になった。

大学本院は2019年4月から88床増の554床体制へ

 現在建設中の新大学病院棟(仙台市宮城野区)が完成・稼働開始後の体制についても説明した。大学附属の若林病院(仙台市若林区、現199床)から88床分を移動し、2018年4月から大学本院は現在から88床増え554床体制とする。2017年度の診療実績も公開。本院の病床利用率は81.3%、手術件数は6642件、救急車搬入数は3413件だった。



https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201807/20180719_61036.html
福島県「医業承継バンク」設立へ 診療所勤務医の確保狙う 
2018年07月19日木曜日 河北新報

 福島県は18日、後継者不足が深刻化する地域の診療所と勤務希望の医師をつなぐ「医業承継バンク」を設立することを明らかにした。県外から医師を呼び込み、地域医療を支える人材になってもらう方針。福島市であった会議で報告した。
 バンクの運営は県医師会に委託する。原則として県内勤務を希望する県外の医師に登録してもらい、受け入れ希望の診療所とつなぐ。
 マッチングに当たっては事前の現地視察などを実施する。県の定住事業と連動させ、医師の住まい確保などを支援。医師が訪問診療など在宅医療の担い手となることも期待する。
 県によると、県内の診療所の医師は60歳以上が29.6%で、全国平均(21.8%)より高い。2017年の診療所数は1427施設で09年から89施設減った。
 県医師会が今年4月に実施した調査では、回答した診療所508施設のうち、約75%が医業承継に関心を示した。
 県地域医療課は「医師の高齢化に伴う診療所廃業の増加が懸念される。県内の医師数にも限りがあり、県外から人材を呼び込む手だてとして、バンク事業に力を入れたい」と説明した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/617326
医療維新 シリーズ 地域医療構想
「地域医療構想アドバイザ-」、必要なのは現場感覚
静岡県の事例紹介、「数合わせをしても仕方がない」
 
レポート 2018年7月20日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(座長:尾形裕也・東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)が7月20日に開かれ、地域医療構想調整会議の活性化に向け、「地域医療構想アドバイザー」を先進的に活用している静岡県へのヒアリングを実施。一方、新公立病院改革プラン等の議論がいまだ進んでいない沖縄県の現状についても議論した(資料は、厚労省のホームページ)。

 浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター長の小林利彦氏は、地域医療構想アドバイザーについて、「(地域医療構想と病床機能報告制度による病床数等の)数合わせをしても仕方がない。現場感覚が求められる」と指摘。また地域医療構想だけでなく、医師の働き方改革、医師確保対策を合わせて取り組んでいくことが必要だとした。「箱(病床数)の話をしても、現場の方は納得しない。医師確保、勤務環境などの話も出てくる」とも述べ、関連する諸施策に取り組むため、大学、医師会、行政をつなぐことが、地域医療構想アドバイザーの役割になるとした。

 その他、小林氏は、調整会議の議論では、厚労省からの病床機能報告データのほか、DPCデータなどさまざまなデータを利用できるものの、「翻訳して、可視化して見せる」ことも地域医療構想アドバイザーの役割であると説明した。「(都道府県は)Raw Dataを使い切れていない。使いやすいよう、加工することが必要」。

 日本医師会副会長の中川俊男氏も、「一番大事なのは、地域医療構想を正しく理解し、足場が地域にあること。現場感覚を持ってアドバイスをするのが、地域医療構想アドバイザー」と指摘し、地域医療構想の分野で全国的に活躍するような立場とは一線を画すべきとした。「都道府県医師会の事務局の担当課長、県の保健医療担当部局でもいい。地域医療構想アドバイザーは、医系(医師)に限らないと思う。柔軟に選んでいくべき」(中川氏)。

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(2018年7月20日の地域医療構想ワーキンググループの小林氏による資料)

 地域医療構想アドバイザーは、都道府県が地域医療構想を進める際に助言等をしたりする役割を果たす(『「地域医療構想アドバイザー」、都道府県単位で設置へ』を参照)。国が、都道府県の推薦を踏まえて選定。都道府県に1人ではなく、複数人でも可能。任期は1年で、更新が可能。厚労省は、6月26日の事務連絡で、都道府県に対し、推薦書の提出を依頼。7月27日が提出締め切りで、8月中旬頃、就任依頼書を出し、8~9月頃と来年2月頃の2回、厚労省で「地域医療構想アドバイザー会議」を開催する予定。

 調整会議「本音を言いづらく」
 沖縄県は、5つの構想区域から成る。いずれも医療計画上は、病床過剰地域だが、2つの区域は2025年では、「病床の必要量」が基準病床数を上回る。

 調整会議では、公立・公的病院については、新公立病院改革プランと公的医療機関等2025プランを基にその役割を協議する。沖縄県では、病床数の37%が16の公立・公的医療機関が占める。地域医療構想を策定したのは、2017年3月と他県と比べてやや遅い。県担当者は、(1)参加者多数のため発言機会が少なく、活発な議論の場となっていない、(2)他の医療機関の経営方針等について、意見等を述べにくい(本音を言いづらい)、(3)人口の増加が続き(2020年まで増加)、医療機関の病床稼働率も高い水準が続いている中で、医療機能の分化・連携の必要性を医療機関に十分に伝え切れていない――ことが、調整会議での協議が活発化しない要因と説明。

 中川氏は、病床機能報告制度による現状の4つの医療機能別の病床数と、2025年の「病床の必要量」について、過不足を比較している点について、「現場感覚で、『回復期病床が不足している』などと実感しているならいいが、(医療機能別の)単純な比較をしてはいけない。」と指摘。沖縄県の担当者は、「病床の必要量」が基準病床を上回る区域があることも含め、「本当に将来、病床が不足するのか、といった意見があった。医療機関にヒアリングなどをして、実態を確認しながら進めていきたい」と回答した。

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(2018年7月20日の地域医療構想ワーキンググループ資料の沖縄県の資料)

 「民間病院にもプランを」との声も
 沖縄県の説明後、「調整会議という“平場”で、本音は言わないだろう。その点の対応策を考えないと、ただおざなりの調整会議になってしまう」と指摘したのは、全国自治体病院協議会会長の小熊豊氏。

 これに対し、沖縄県の担当者は、議論の活発化に向け、16の公立・公的医療機関に個別にヒアリングを実施し、その上で調整会議に臨むなどの取り組みを計画しているなどと説明した。

 日本医療法人協会会長代行の伊藤伸一氏は、「民間病院で担えない機能を対応するのが公立・公的病院であるなら、それを把握するために、民間病院もプランを出してもらい議論していくべきではないか」と指摘した、沖縄県の担当者は、「それ以外の病院についても、新公立病院改革プランと同様のものを求めるのは、少し無理があるが、負担がなく、かつ調整会議での協議ができるようなプランの作成を検討したい」と答えた。

 ただし、この点について、中川氏は、民間病院がプランを出すのは大きく運営体制を変更する場合に制度上は限られることから、極めて慎重に対応すべきとした。「ある構想区域で、民間と公立・公的の病院が競合しているエビデンスを出せるかということ。民間病院が自主的に出すべきであり、全ての病院にプラン等の提出を求めるのは少し違う」。



http://www.medwatch.jp/?p=21579
公立・公的病院と民間病院が競合する地域、公立等でなければ担えない機能を明確に―地域医療構想ワーキング(1) 
2018年7月20日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 公立・公的病院と民間病院が競合する地域では、公立・公的病院は「公立等でなければ担えない機能」に特化することが求められる。その際、民間病院側は「●●の機能は民間病院が十分担っている」といったエビデンスを出す必要がある―。

 7月20日に開催された地域医療構想ワーキンググループ(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)では、こういった考え方の整理が行われました。
 
ここがポイント!
1 公立・公的病院の改革プランについて、調整会議で速やかに協議し合意を
2 公立・公的病院と民間病院とが競合する地域、公立等でなければ担えない機能を明確に

公立・公的病院の改革プランについて、調整会議で速やかに協議し合意を

 医療提供体制の再構築に向けて、地域医療構想の実現が急務とされています。骨太の方針2017(経済財政運営と改革の基本方針2017―人材への投資を通じた生産性向上―)では、「個別の病院名・病床数を掲げ、機能転換に向けた具体的対応方針を速やかに策定するため、2017・18年度の2年間程度で集中的な検討を促進する」旨が、また骨太の方針2018では「公立・公的医療機関については、地域の医療需要等を踏まえつつ、地域の民間医療機関で担うことができない▼高度急性期・急性期医療▼不採算部門▼過疎地等の医療提供—などに重点化するよう医療機能を見直し、これを達成するための再編・統合の議論を進める」旨の指示がなされていることなどを受け(関連記事はこちら)、全国の地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で公立・公的医療機関における将来の機能・規模などに関する議論が活発化しています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

実際に、今年(2018年)6月末時点における各調整会議の状況を見ると、次のように議論が進んでいることが分かりました。

▽新公立病院改革プランを策定済の公立医療機関は820(2018年3月時点では816)、調整会議で議論を開始している公立医療機関は707(同650)、ベッド数ベースでは88%の公立医療機関で議論開始済

▽公的医療機関等2025プランを策定済の公的医療機関等は820(2018年3月時点では813)、調整会議で議論を開始している公的医療機関等は711(同617)、ベッド数ベースでは86%の公的医療機関等で議論開始済
 
▽新公立病院改革プランについて「合意」済の公立医療機関は92(2018年3月時点では38)、ベッド数ベースでは14%の公立医療機関で「合意」済

▽公的医療機関等2025プランについて「合意」済の公的医療機関等は176(2018年3月時点では70)、ベッド数ベースでは20%の公的医療機関等で「合意」済
 
 公立・公的病院は、地域で基幹病院的な役割を担っていることが多く、調整会議では▼まず公立・公的医療機関の将来の機能などについて協議する(2017年度中に開始)▼その他の医療機関(民間病院)のうち、将来の役割に大きな変更のある病院については、事業計画を策定し、速やかに協議する▼その他の医療機関について、遅くとも2018年度末までに協議を始める―という大きなスケジュールが厚生労働省によって描かれているためです。

公立・公的病院と民間病院とが競合する地域、公立等でなければ担えない機能を明確に

 この点について、7月20日に開催されたワーキングでは、次のような認識の共有が改めて行われました。

▽規模の大きな民間病院がなく、公立・公的病院が地域の急性期から慢性期まで総合的な医療提供体制を担っている地域では、当然、公立・公的病院が高度急性期から慢性期までのあらゆる機能を担う

▽公立・公的病院と民間病院とが競合しているような地域(比較的都市部に多い)では、公立・公的病院は、公立・公的でなければ担えない機能(上述の「骨太方針2018」で例示されているような機能)に特化し、民間病院で担える機能は民間に譲る

▽こうした点について各調整会議で協議する必要があり、そこでは、例えば民間病院側から「●●の機能は民間病院で十分担えている」といったエビデンスを提示する必要がある

この考え方は、小熊豊構成員(全国自治体病院協議会会長)からの「一部では、『公立・公的病院が民間よりも先に改革プランを提示し、例えば高度急性期・急性期病床を埋め(奪ってしまう)、残りを民間病院で分けることになる』といった意見が、逆に『公立・公的病院は民間と競合している分野は、すべて民間に明け渡さなければならない』といった意見が出ているようだ。きちんと整理すべきではないか」といった指摘を受け、中川俊男構成員(日本医師会副会長)が整理したものです。地域の医療関係者にとって、実に理解しやすい整理の仕方と言えるでしょう。

 
この点、民間医療機関の代表といった立場でワーキングに参加している伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長代行)もこの整理に理解を示した上で、「民間医療機関では、大きな機能転換を予定している場合以外は、将来の事業計画を出すことになっていない。公立・公的医療機関と民間医療機関とが競合している地域では、公立・公的医療機関の改革プランを先に議論し、そこでは民間の事業計画は勘案されないことになりはしないか」との問題提起を行いました。

確かに、民間医療機関が事業計画等を出していなければ、当然「民間医療機関が担っている機能」に関するエビデンスが調整会議に示されず、「当該地域では公立・公的医療機関の機能・規模を先に決める」ことになってしまいそうです。

伊藤委員は、こうした事態を懸念し、「公立・公的医療機関と民間医療機関とが競合している地域では、民間医療機関も速やかに事業計画を示すべき」といった通達を行うべきではないかと要望しました。これに対し、厚労省医政局地域医療計画課の担当者は「大きな機能転換を予定していない民間医療機関であっても、事業計画を作成し調整会議に示すことは禁じていない」と説明した上で、「まず、公立・公的医療機関と民間医療機関とが競合している地域(例えば大阪市や福岡市などが思い浮かびます)で、どのような協議が行われているのかなどを調べ、それを分析し、事例の共有などを行ってはどうか」との考えを示しました。

伊藤構成員の懸念が現実化していれば、民間医療機関に「速やかな事業計画の策定」を促すことも考えられるでしょうし、またそうした懸念が杞憂に終わると見込まれる場合には、国が主導するのではなく、各調整会議の議論に委ねることが好ましいと言えそうです。



https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t301/201807/557005.html
学会トピック◎日本病院学会2018
聖路加病院長・福井氏「『医療の質』の議論が二の次で危惧」
 
2018/7/16 満武 里奈=日経メディカル

聖路加国際病院院長の福井次矢氏は、「『労働』と『自己研鑽』の線引きを行うのであれば国が責任を持ってやってほしい」と要望した。

 6月28日から石川県金沢市で開催された第68回日本病院学会では「医師の『働き方改革』はどうあるべきか」をテーマにしたシンポジウムが開催された。最初に登壇した聖路加国際病院院長の福井次矢氏は、米国では睡眠不足のレジデントが起こした医療事故を契機に「医師の労働時間規制」が議論されたのに対し、日本では医師の自殺を契機に議論が進められているという特徴があることを指摘。「患者さんに提供する『医療の質』の議論が二の次にされている印象があり、労働時間の議論が先行してしまっている。時間の論議だけが進むと、目の前の患者が苦しんでいるにもかかわらず、現場を立ち去る医師が出てくるのではないかと危惧している」と話した。福井氏のほか、厚生労働省医務技監の鈴木康裕氏、日本医師会勤務医委員会委員長の泉良平氏、東京大学大学院国際保健政策学教室教授の渋谷健司氏、岡山大学医療人キャリアセンターMUSCATセンター長の片岡仁美氏が登壇し、意見を交換した。

 聖路加国際病院の医師は、本院の医師361人のうち、48%は卒後7~8年目の若い医師で、3年で40%の医師が入れ替わるのが特徴だ。同病院は2016年6月に労働基準監督署の立ち入り調査が行われ、その後、働き方改革を行った(関連記事はこちら)。

 労基署からの是正勧告を受けた後、10カ月をかけて、(1)全医師への説明会の開催、(2)労使協定の再締結、(3)休日・夜間の救急外来・病棟の診療体制の変更、(4)勤怠管理表の改定と1週間毎の提出を徹底、(5)1カ月単位の変形労働時間制の導入、(6)土曜診療の縮小、(7)診療時間内での患者さんへの説明の実施――などの対応を行ったと福井氏は紹介した。

 全医師への説明会では、一晩、宿日直すると10万円ほど掛かることなどを説明し、「少なくとも自分のための勉強は病院ではしないよう協力を求めた」(福井氏)。労使協定の再締結では実態を考慮し、それまで月間80時間、年間750時間に設定していた労働時間の特別条項を月間180時間、年間1470時間に変更した。

 夜間・休日の救急外来・病棟の診療体制を変更し、年齢の上限を引き上げて、ベテラン医師を活用することで若手医師への負担を減らした。例えば、救急外来はそれまで救急医師2人と5年目までの医師2人で17時から翌日8時まで当直していたが、これを17時から翌日8時までを救急医師2人で見るほか、準夜帯として17時~23時までを「救急科以外の10年目の医師2人」がシフトに入るようになった。外科病棟の当直は、それまで35歳程度までの医師2人で診てきたが、年齢を引き上げ、「50歳までの医師」が1人で診る体制に変えた。

 時間外業務の定義は、「労働基準監督署と厚生労働省まで訪問したが、明確な回答が得られなかったため、国の方針が示されるまでを期限に、私の判断で決めた。患者さんのケアに関わること以外は時間外業務と認められないことを全医師に納得してもらった上で開始した」(福井氏)。時間外業務に該当するものは、(1)病棟回診、予定手術の延長や緊急手術、サマリー作成、オーダーチェック、診療上必要不可欠な情報収集など診療に関するもの、(2)会議・打ち合わせ、(3)上長の命令に基づく研究・講演など。時間外業務に該当しないものとしては、(1)食事、睡眠、外出、インターネットの閲覧など休憩・休息、(2)自己学習、症例見学、参加任意の勉強会やカンファレンスなどの自己研鑽、(3)上長の命令に基づかない研修や講演など――。

 福井氏は、医師の勤務状況のモニタリングが重要だと強調。一人ひとりの時間外勤務の実態をモニタリングし、毎月、本人と診療科にフィードバックして時間外勤務を短縮できないかの検討を続けているほか、特に夜勤の多い医師がうつ状態になっていないか、精神状態にも配慮するようにしているという。

 これらの取組みから、1カ月当たりの平均時間外労働時間は徐々に減少し、2016年6月は94.1時間だったのに対し、2018年3月には36.2時間となった。ただし、「救急科、産婦人科、小児科、集中治療科の4診療科は、シフト制にしたくても医師が少なく難しい。雇用したくても医師がいない」と福井氏は話した。

 労基署とのやり取りを振り返り福井氏は、「医療現場の環境が整っていないにも関わらず、突然に(時間外労働を減らすように)改善を求めるのはおかしい。行政に携わるものとしてセンスがないのではないか」と指摘。さらに福井氏は、「労働」と「自己研鑽」を線引きすることは困難であるほか、「患者を診ること」イコール「勉強」と思っていると話した上で、「『労働』と『自己研鑽』『研究』の線引きを行うのであれば国が責任を持ってやってほしい」と要望した。

厚労省・鈴木氏
「上限規制『緩和』時は労働基準法か医師法で規制の可能性」


厚生労働省医務技監の鈴木康裕氏は、医師の働き方改革について「1つのやり方で完全に解決するのは難しいので『合わせ技』が必要。救急機能の『集約化』なども求められるだろう」と話した。

 現在、検討が進められている「医師の働き方改革」について厚生労働省医務技監の鈴木康裕氏は、患者の不利益につながるようなことがあってはならないとで話した上で、「もし医師の時間外労働の上限規制を『緩和』することになったとしても、産業医による健康管理がしっかりと組み込まれていることが前提であり、譲れない」と強調。医師の時間外労働の上限規制を変更する場合は、「過労死ラインを考慮すると、省令で定めるのは難しく、労働基準法か医師法で規制することになるだろう。どちらの法律がより国民の理解が得られるかを考えていく必要がある」と見通しを語った。

 まず鈴木氏は「医師の働き方」は、「医師の需給」「地域・診療科の偏在」と三位一体で同時に解決しなければいけないと強調した。「私が医学部を卒業した頃は『病院に泊まって覚えろ』が当たり前だったが、そのメンタリティーは変えていかなければいけない。さらに、1つのやり方で完全に解決するのは難しいので『合わせ技』が必要。救急機能の『集約化』なども求められるだろう」と説明した。

 2018年6月に働き方改革関連法が成立したことで、36協定を結べば事実上、青天井だった時間外労働に、1カ月45時間、1年360時間という上限規制が設けられた。ただし、「特別条項付き36協定」を結ぶと、例外的に45時間を超える形で上限時間を設定可能で、年間6カ月間まで適用できる。 鈴木氏は特別条項付き36協定の「年間6カ月まで適用」という部分に関して、「一般企業には繁忙期が存在するのに対し、医師の忙しさに季節変動はなく、この制限には違和感がある。医療現場の規制にどう反映させるのかを考えなければいけない」と話した。

 鈴木氏は、医師の時間外労働の上限規制の方法については、(1)一人ひとりの医師に、病院にいる間、何をしていたかを申告してもらい、それが業務に当たるか否かを個別に判断する手法、(2)医師という職種全体の時間外労働の上限時間を引き上げる手法ー―を挙げた上で、「前者のやりかたは医療現場にかなりの負担が掛かるのではないか」と指摘。同じ医師でも、科や年代によって働き方は異なるに触れ、「自身の働き方が『例外』に当てはまるか、『手上げ方式』で管理する方法も考えていく必要がある」と話した。

 また、医師の労働時間の上限規制を考える際、何%の医師が該当するのかという議論だけでなく、それを実行することで救急患者のたらい回しがどれくらい増えてしまうのか、患者さんにどのような迷惑をが掛かるのかなど、定量的に考える必要があると指摘。患者のアクセス制限についても今後、考えていかないとならないとした。

 さらに鈴木氏は、(1)日本は他国と比べて病床が多いため、病床当たりの医師・看護師数が欧米の3分の1から4分の1程度であること、(2)日本の人口10万人当たりの脳神経外科医数は他国に比べ、非常に多く、脳外科の1医師当たりの手術件数は米国が620.3件、日本が27.8件と非常に少ないこと――も紹介。中長期的に病床数を集約化し、タスクシフティングの推進を行い、手術など医師が医師にしかできない仕事に専念できる環境を整える必要があると指摘した。

日医、「医師の特別条項」とその「特例」設定を提案

 日本医師会「医師の働き方検討委員会」副委員長の泉良平氏は、13人の委員から構成された同委員会が2018年4月にまとめた答申結果の概要を紹介した。

 答申では、医療界が意見を集約して上限について話し合い、「医師の特別条項」を設定することや、各地域の事情や各医師の個別性を勘案して追加的な健康確保を条件に「医師の特別条項の『特例』」を設定すること、研修医については別途規定を設けることを検討すること――などを提案している。

 泉氏は、医師の特別条項の「特例」を決める際の基本的な考え方として、(1)時間外労働の上限規制は必要であること、(2)現実の医療ニーズに対応し、医療の質や安全性を低下させないこと、(3)施設事情や地域事情、医師の教育課程・生涯キャリア形成などを考慮すること――などを挙げ、実際に「特例」を締結する上では、医師の健康確保措置の実施が必要となるほか、医師代表者との労使間合意のほかに個別の合意が必要となること、同時に医師の労働環境改善の取り組みが必要なこと、定期的に第三者機関が特例を見直す仕組みが必要となること――などを説明した。

 講演では、日本医師会が都道府県医師会を対象に、2017年10月~12月にかけて実施したアンケート結果が紹介された。医師の時間外労働規制について、都道府県医師会を対象にアンケートを行なったところ、「目標・目安として、一律の上限規制は設定は必要である。ただし、診療科、地域などにより変更の余地を残す」と回答した都道府県医師会が71.7%を占めた。「目標・目安として一律の時間外上限規制の設定が必要」と回答したのが10.9%、「医師に対しては上限規制自体を設定すべきでない」と回答したのは17.4%だった。応召義務については、「時代に即していないため改定すべきであると回答がほとんどだった」(泉氏)。

東大・渋谷氏「『医師・医療は特殊』のマインドセットからの開放を」


 東京大学大学院国際保健政策学教室教授の渋谷健司氏は、医師の働き方改革について、(1)他の業界では当たり前に行われている「高生産性・高付加価値」が医療界でなぜ実現できないのか、(2)医師・医療は本当に特殊なのか、(3)患者の受ける医療の価値の向上につながっているのか――と疑問を提起。「『医師・医療は特殊』と考えることで思考停止してしまう。このマインドセットから開放させることが大事。医師の仕事のどの部分が特殊なのかを明確にし、特殊でない部分は効率化を検討することが大切ではないか」と指摘した。また、「医師の働き方改革」は、自己犠牲を強いる現状から、多様性を認め、患者ファーストで当たり前のことを当たり前にやる環境に変わるためのプロセスである」と強調した。

 渋谷氏は、英国で国営サービスとGoogle傘下のDeepMindが連携してAIを用いた取り組みを行うをするなど、海外ではIT企業と医療が積極的に連携して試行していることを紹介。「日本でも現場レベルで、新しい医療サービスを考え、もっと試行してもよいのではないか」と指摘した。例えば、診療の直接契約、予約、支払いなどをフィンテックを活用して行う「ダイレクト医療サービス」など、患者・医師が望む医療を実現するための仕組み作りを積極的に研究することを提案した。

岡山大・片岡氏「5人のチームで『6人目』として現場復帰できるポジションを」
 岡山大学医療人キャリアセンターMUSCATセンター長の片岡仁美氏は、11年目となる同病院での女性医師のキャリア支援事業を振り返り、「女性だけでなく男性も働きやすい環境にすることが大事と考え、取り組んできた結果、組織のチーム力が向上し、多様なバックグラウンドを受け入れられる温かい医療現場になった。女性医師のキャリア支援は働き方改革に直結すると考えている」と語った。

 2009年に岡山医療圏の女性医師415人を対象に行った調査結果から、(1)半数ほどが離職を経験していた、(2)離職医師の92%が卒後10年以内の離職だった、(3)離職した医師の51%が1年未満で復職していた、(4)子どもを持つ女性医師のうち2割が育休を取得した―ーといった特徴が分かった。

 岡山大学病院が女性医師支援に取り組むきっかけは、2007年に文部科学省の「地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い質の高い医療人養成推進プログラム」に採択されたことだったという。岡山医療圏の女性医師が最も求める支援内容は、「復職しやすい職場」で67.4%。次いで「病院保育」(43.1%)、「保育園の充実」(41.2%)、「復職トレーニング」(34.2 %)――だった。

 そこで片岡氏らは、「復職しやすい職場とは何か」を議論。その結果、「5人のチームの『5人目』ではなく、『6人目』として現場復帰できるポジションがあること」と定義。従来の定員とは別に、増員扱いで復帰できる「女性支援枠」を病院に提案したところ、2008年に当直が調整できる「女性支援枠」が新設された。現場の声を反映し、2年間は人数制限なく採用し、労働時間を自分で決められる形で運用した。2010年度には「復帰支援制度」として規約を制定。利用人数は常勤換算で20人にし、出産・育児だけでなく、介護も対象にし、男性も利用できるようにした。2012年度には、利用期間を小学校6年生までの子ども1人につき3年間取得でき(介護も3年間)、当直・オンコールの免除が可能で、コーディネーターを付け、相談しながら支援を行う「キャリア支援制度」に名称を変更した。利用者の診療科には偏りはなく、「手を挙げれば誰でも使える制度で、復職する人が増えるほどその診療科の医師が増える仕組みになっている」(片岡氏)。これまでに120人以上が支援制度を利用したという。

 制度導入3年後に病院内の上司や同僚を対象に「この制度は職場によって有用であるか」と尋ねたところ、8割が「とても当てはまる」「やや当てはまる」と回答。「同僚よりも上司から有用な制度だと評価されている傾向がある」と片岡氏。

 同病院における女性医師比率は、制度創設前は18%ほどだったが、現在では26~27%まで増加。「キャリア支援枠の医師が増え、女性医師の助教や研修医・レジデントも増加したことが分かった」と補足した。

 女性医師のキャリア支援は同病院の女性医師比率を増やすだけではなく、地域の医療機関で勤務する医師も輩出したことが分かった。支援枠を利用した医師の勤務先を2013年に調べたところ、56%(27人)が地域の医療機関だった。



https://www.asahi.com/articles/ASL7H4QYZL7HUBQU008.html
豪雨で医療機関が機能不全に 94病院が被災 
2018年7月16日06時00分 朝日新聞

 西日本を襲った豪雨災害では医療機関が数多く被災した。生命に直結する施設だけに水害から重要な機能を守ることが求められるが、浸水や断水などで地域の医療に影響が広がった。専門家は対策の充実を求めている。

 川の氾濫(はんらん)で広範囲に浸水した岡山県倉敷市真備(まび)町。入院患者や避難した住民ら約330人が孤立したまび記念病院(80床)は、地区の中心的な医療機関だった。当時何が起きたのか。

 前夜から激しい雨が降り続いていた。7日午前5時過ぎ、理事長を務める村上和春医師は、入院患者が心配で病院に駆けつけた。すでに近くを流れる小田川があふれ始めていた。

 約2時間後、院内に浸水し始めた。20人ほどいた職員や看護師が超音波検査機などを2階に運び、避難した。3、4階には入院患者ら約100人がいた。

 病院があるエリアは市のハザードマップで5メートル以上の浸水の可能性が指摘されていた。ただ過去の水害で地区の浸水は1メートル未満だったため、外部電源の受電設備や飲料水は地面から高さ約1メートルの所に置いていた。

 玄関の扉が壊れ、濁流が流れ込んできた。「瞬く間に水かさが増えた」と村上さん。午後6時ごろ、水面は1階の床から高さ3・3メートル、2階のすぐ下に達した。「どこまで水が来るか不安だった」と入沢晃己(てるみ)・事務部長。自衛隊などのボートで避難してくる近隣住民が相次いだ。自家発電設備も水没した。

 真っ暗な院内。医師と看護師は懐中電灯を手に、こまめに患者の様子を見回った。骨折やリウマチ、糖尿病などの患者がいた。たんの吸引が必要な患者がいたが、機器を使えず、薬で対応した。「心配せんでいいよ」。医師や看護師は患者に声をかけ続けた。避難住民にも落ち着いてもらおうと、院内で作ったおにぎりなどを配り、廊下にシーツなど敷いて休んでもらった。

 当時、人工透析が必要な入院患者も9人いた。転院の緊急性が高いと判断。村上さんや院長、看護師らで、スマートフォンの電池が残る間にほかの病院に電話をかけ、受け入れ先を探し続けた。

 夜が明け、救助が始まった。緊急性が高い患者は東京消防庁などのヘリコプターで倉敷中央病院や岡山大病院などに運ばれた。住民らは自衛隊のボートに乗り移り、入院患者はマットレスに乗せたままボートで運んだ。全員無事だった。

 1週間たつ今も、診療は中止している。患者は全員近隣の病院や系列の診療所に受け入れてもらった。病院は水害時は3階以上への避難を徹底していたが、病院の機能を保つ「事業継続計画」(BCP)はまだ策定中だった。村上さんは語る。「もっと早く避難するなど危機管理が甘かった部分もあった。本当に水の怖さがわかった」

断水で人工透析に支障、手術も延期

 厚生労働省によると、断水や浸水、停電の被害を受けた医療機関(精神科病院を除く)は京都から長崎にかけての6府県で94施設。うち71施設は14日正午時点で、給水などの支援を必要としている。

 人工透析を行う医療機関では、断水は切迫した問題となった。腎臓の機能低下が進んだ患者は週数回、血液を濾過(ろか)する人工透析が欠かせない。透析器大手のニプロによると、一般的に1回の治療と配管洗浄などで計450リットルのきれいな水が必要となる。

 三原城町病院(広島県三原市)では、普段1日30~40人が透析を受けるが、一部の患者を断水していない別の病院に受け入れてもらった。残りの患者は医師の判断を踏まえ、普段4時間かかる透析を3時間に短縮して、水を節約している。

 三原市や同県尾道市は取水場を急きょ動かすなどして、緊急を要する病院に優先して給水を始めるなど対策を急いだ。

 7日から断水した済生会呉病院(同県呉市)は、海上自衛隊などから給水を受けたが、当初は病院で必要な1日約90トンの半分程度しか確保できなかった。

 呉市の高齢化率は全国平均より7ポイント高い33%(2015年国勢調査)で、約100人いる入院患者の多くが高齢者。猛暑で冷房に使う水を止めるわけにはいかず、不急の手術や検査機器の洗浄を控えた。12日に水道が復旧したが、万田祐一・事務部長は一時は「もはや限界に近い」と危機感を募らせた。中国労災病院(同市)も必要な水量を確保するまで、手術は全て延期し、手術などが必要な救急患者の受け入れも中断した。

 県立安芸津病院(同県東広島市安芸津町)は1階が浸水。地下の電源室などが泥につかり、自家発電も動かず、一時停電した。12日まで診療は行わず、かかりつけの患者への薬の処方などに限った。

不十分な水害対策

 医療機関にとって水害は身近なリスクだ。文部科学省が2016年にまとめた報告書では、国立大学付属病院が防災マニュアルなどで想定する「災害」は水害が地震に次いで多かった。

 15年の関東・東北豪雨でも被害が続出。最も被害の大きかった茨城県では2病院11診療所が被災した。内閣府の報告書によると、患者が病院に取り残されて孤立したり、医療機器や患者データの入ったパソコンが浸水したりした。入院を再開するのに約2カ月かかった例もあった。報告書は、施設の浸水対策や災害時の事業継続計画作りを積極的に進めることなどを提言した。

 だが、「多くの医療機関がきちんとした水害対策ができていないのが現状だ」と、医療機関の水害対策に詳しい日本大学理工学部の後藤浩教授(河川・海岸工学)は指摘する。

 後藤教授によると、診察室や手術室のドアから水が入らないように工事する▽重要機器や非常電源は上階に移す▽屋上などに置かれた水槽はポンプ施設が水に浸ると動かなくなるので、配水管からの圧力で水を出す「直結直圧方式」の水道を併用する、などの対策が有効という。

 災害時の医療体制に詳しい、国立保健医療科学院の小林健一・上席主任研究官はBCPを作るうえで、東京都が公表している策定指針や、自治体のハザードマップが参考になるという。その上で「備えはここまでやっておけば安全というものはない」と釘を刺す。

 想定外の事態では病院の機能継続が困難になる可能性があるといい、「病院同士で事前に相互援助の協定を結んでいる事例もある。災害拠点病院や近くの医療機関と協力するなど、普段から連携を進め、地域全体で対応することが大切だ」と話す。



http://www.sanyonews.jp/article/753420
まび記念病院で緊迫の患者救出 稲葉医師「時間との闘い」語る 
(2018年07月18日 14時48分 更新)山陽新聞

 西日本豪雨で甚大な浸水被害を受けた倉敷市真備町地区。濁流は7日朝、地区の中核病院「まび記念病院」(同町川辺)にも押し寄せた。冠水し、機能を奪われた“地域医療の砦(とりで)”に取り残された高齢の入院患者約70人の避難が完了したのは8日午後。緊迫した「時間との闘い」を、緊急支援チームの一員として現場入りした医師の話を基にたどった。

 緊急支援チームを派遣したのは、人道支援NPO「ピースウィンズ・ジャパン」(本部・広島県神石高原町)。岡山大病院の医師が間を取り持った。NPOメンバーで調整役の稲葉基高医師(39)=津山高出身=ら6人が、NPOの水陸両用車でまび記念病院に駆け付けたのは8日午前11時半。病院に避難していた周辺住民の救助が自衛隊により進められていた。

 入院患者については、緊急度が高い透析患者の一部約10人を消防がヘリコプターで救出したほかは、めどが立っていなかった。

 病院内には「信じられない光景」が広がっていた。診療室のある1階は胸近くまで水に漬かり、医療用品がぷかぷか浮かんでいた。停電で検査機器は使えず、患者の容体を記録した電子カルテは閲覧できなくなった。空調も効かず、患者の体調に影響しかねないほどの蒸し暑さ。「今日中に入院患者全員を避難させたい」。沈痛な表情で院長は言った。

 入院患者は70~90代で、認知症や関節症など症状はさまざま。一部残っていた透析患者やたんの吸引が必要な誤嚥(ごえん)性肺炎の患者は、一刻も早く脱出させる必要があった。稲葉医師らは伝えた。「チームはヘリコプターとボートを用意します。避難の優先順位を決めてください」

 患者約70人のうち、自力で歩けるのはごく少数。寝たきりの25人前後は介助を、30人近くは車いすを必要とした。個々の状態から避難順序を判断し、受け入れ先を確保するのは複雑な方程式を解くような作業だ。夜になれば避難は一層困難になる。「時間との闘い」が始まった。

 岡山県災害対策本部など関係機関は懸命の調整を続け、やがてまび記念病院に連絡が入った。「緊急度の高い患者はヘリコプターで岡山市の総合病院に」「倉敷市中心部と総社市にある民間3病院が計11人を受け入れる」。真備町地区で浸水を免れた場所には、避難に備え救急車を配置する手はずも整えられた。

 8日午後3時半ごろ、NPOのヘリコプター2機による避難が始まった。酸素吸入が必要な心不全患者ら8人を岡山市の岡山大病院と岡山赤十字病院にピストン輸送。別の11人はボートで脱出させた。ほかの患者もボートに乗せる計画だったが、水位が下がったことで自衛隊の車両で運んだ。職員を含め全員が病院を離れたのは、午後9時近くだった。

 救急医として今春まで岡山市の総合病院に勤務した稲葉医師は、熊本地震(2016年)で災害医療支援に当たった経験がある。まび記念病院での活動をこう振り返る。

 「高齢者ばかりの患者を過酷な環境にとどめておくのは限界にきていた。岡山県内で災害医療に携わる関係者の協力で、支援開始当日のうちに避難を済ませることができた」

 稲葉医師は現在、真備町地区の薗小学校で医療支援に当たっている。



https://www.nishinippon.co.jp/feature/weather/article/434429/
豪雨での病院被害は6府県95件 断水や停電、機能不全も 
2018年07月20日18時07分 (更新 07月20日 18時44分)

 西日本を中心とした豪雨により広島や愛媛、岡山など6府県の計95の医療機関が浸水や断水、停電などの被害を受けたことが20日、厚生労働省のまとめで分かった。診療停止や手術延期、患者のヘリコプター移送につながったケースもあり、多数の患者に影響が出た。病院が機能不全に陥る事態は大災害のたびに起きている。豪雨で甚大な被害が出てから2週間。専門家は「今後も全国で起こり得る。防災や相互支援計画の充実が急務」と指摘する。

 厚労省の地域医療計画課が病院や診療所の被害状況を調査し、20日朝までの集計で広島県64、愛媛県20、長崎県5、京都府2、岡山県3、福岡県1に上った。




https://www.m3.com/news/iryoishin/617375
医療維新 シリーズ 西日本豪雨
情報取れず「何かが起きている」、AMAT派遣
機動力生かし、避難所や会員病院を調査
 
レポート 2018年7月21日 (土)配信水谷悠(m3.com編集部)

 西日本豪雨で全日本病院協会は7月9日からAMAT(全日本病院医療支援班)を被災地へ派遣した。被災地の全日病支部から派遣要請がない段階でも、東京の本部で必要性を判断して派遣する「プッシュ型支援」を実施。現地では、避難所での医療や施設間搬送、会員病院の状況調査に当たった。全日病常任理事の猪口正孝氏に全体の調整について聞き、岡山県倉敷市にAMATとして入った南多摩病院(東京都八王子市)の動きを追った。

岡山に派遣する判断をしたときの記録
 猪口氏によると、7月8日の段階で、広域災害救急医療システム上で情報が取れない全日病の会員病院があった。また、全日病岡山支部からの報告では、支部でも情報収集に苦慮しており、テレビでの情報に頼っている状況だった。このため、正式な派遣要請を待たず、7月8日午後1時25分に「派遣が必要」との判断をし、夕方までには岡山県に向け南多摩病院と筑波記念病院(茨城県つくば市)、愛媛県に向け加納総合病院(大阪市)の計3隊が先遣AMATとして出発した。

壁一面に、連絡や判断の経過を記録

 一方、広島県では情報収集がスムーズに進み、この時点ではAMAT派遣の必要なしとの報告が支部から上がってきたため、派遣しないことを決定した。岡山、愛媛両県には状況がはっきりしない段階で派遣を決定したが、岡山県では現地での情報収集の結果、医療ニーズが高いと判断して派遣継続となったため、「分からない段階での派遣だが、必要がないならないでいい。EMISや電話などで情報が取れないときは、『何かが起きている』と思わなければいけない。今回は判断が正しかった」(猪口氏)と見ている。

 AMATは医師、看護師、業務調整員(ロジスティシャン)での構成が基本。避難所の衛生環境を調査したり、医療活動にあたったりする。医師なしのチームを派遣する場合もあるが、その場合は医師のいる他チームのもとで活動することになる。

 筑波記念病院チームは9日から岡山県の災害対策本部にリエゾンとして入って情報収集に努め、南多摩病院チームは避難所を調査して回った。この結果、避難所での医療ニーズがあると判断し、先遣隊に続いて後続の隊も送ることを決定。愛媛県大洲市ではAMATの必要性が低いと判断されたことから加納総合病院チームも岡山へ移動し、さらに京都きづ川病院(京都府城陽市)、大阪暁明館病院(大阪市)を派遣、光生病院と合わせ、6チームの体制で活動することになった。

 災害の際、最初に動くDMATは公共交通機関などで現地入りするが、AMATはそれぞれの病院の救急車で向かう。このため、現地での機動力に長けており、猪口氏は「避難所や会員病院を回るのに有効。DMATのできないことをやっており、AMATにはAMATの良さがある」と話す。9日の時点では、16日までは活動することを決定した。



  1. 2018/07/22(日) 09:39:08|
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