FC2ブログ

Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月1日 

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180626-OYTET50045/
医師不足の刑務所…93人の刑執行停止中、透析受けられないことを理由に
2018年6月27日読売新聞

07011_20180701095423221.jpg

 刑事事件で実刑判決が確定したのに、腎臓病の人工透析が刑務所で受けられないことを理由に、刑の執行が停止されている確定者が5月末現在で93人に上ることが、法務省への取材でわかった。医師不足に加え、機器を備える施設と受刑者の「ミスマッチ」も起きており、刑の執行に不公平感を生じさせかねない異例の刑事手続きが常態化している。

 2008年10月に開設された官民で運営する「島根あさひ社会復帰促進センター」(島根県浜田市)。15台の人工透析設備が設置され、治療が必要な受刑者30人を収容する予定だった。ところが、治療を受けた受刑者は11年の13人をピークに年々低下。16年11月に4人まで落ち込み、同センターは同年末、治療設備を廃止した。

 「誤算」が生じたのは、同センターが受け入れる収容者を「初犯で集団生活に適応できる模範囚」に限定したためだ。定員約2000人の受刑者を収容する同センターの収容棟の大半は個室になっており、テレビやベッドがあるが、窓に鉄格子はない。

 法務省の担当者は「入所条件に合致しつつ、人工透析治療が必要な受刑者が予想より少なく、設備の利用が伸びなかった」と話す。

 同省によると、全国69の刑務所や少年刑務所のうち、人工透析治療の機器があるのは9刑務所、63台。今年1月に全国最多の30台が設置された「東日本成人矯正医療センター」(東京都昭島市)が開所し、治療可能な受刑者数は大幅に増加した。それでも治療を受けている受刑者は5月末時点で全国で81人にとどまる。

 63台の機器は現在、緊急用の予備機を除きすべて稼働しているが、機器を扱える専門医は非常勤が多く、人手不足が続いている。東日本のセンターでは、1台で複数の受刑者が治療できるよう週3回の治療日を月、水、金と、火、木、土曜日の二つに分け、48人が治療を受けるが、小規模な施設では医師不足からこうした取り組みはできていない。

 刑事訴訟法では、実刑判決が確定した者が心神喪失の状態にある時は、執行を停止する。さらに刑の執行によって著しく健康を害する時や生命を保つことのできない恐れがある時も執行を停止できる。同省関係者によると、透析治療以外で執行停止が認められるのは、再審が開始されたり、脳疾患などで重体となって入院が長期化したりした場合など「極めてまれなケース」に限られるという。

 透析治療を理由に執行が停止された場合、自宅などから病院に通い、治療可能な刑務所に空きが出れば順次収容される。その間は刑期に算入されず、警察などの監視下には置かれない。

 同省によると、執行停止中の93人の中に殺人などの凶悪犯はいないが、再犯者は少なくないとみられる。中には執行停止中に再び罪を犯しながら、透析治療を理由に刑の執行が再び停止されている者もいるという。

 同省幹部の一人は「再犯防止や刑の執行の公平性を考えれば重大な問題だが、医師や予算を確保するにも、『なぜ罪を犯した者に予算を割くのか』という意見は根強く、解消のメドは立っていない」と明かした。

           ◇

【人工透析】  機能が低下した腎臓の代わりに機器を使うことで、血液中の老廃物や余分な水分を取り除く治療方法。治療は週に3回、1回あたり数時間を要する。人工透析を受ける患者は年々増え続け、2016年の患者数は全国で約33万人。



http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20180629/CK2018062902000033.html
長良医療の産科医5人移籍 県総合センターへ、連携で充実図る
中日新聞 岐阜 2018年6月29日

 医師不足に悩む県総合医療センター(岐阜市野一色)が、国立病院機構が運営する長良医療センター(同市長良)の産科医八人のうち五人の移籍を受け入れる見通しになったことが、関係者への取材で分かった。同じ地域内で中核的な役割を担う両病院が連携、周産期医療体制の充実を図る。

 産前産後の母子を診療する周産期医療の医師不足は全国的に深刻さを増す。両病院は県と医師の人事権を持つ岐阜大医学部を交え、病院間の役割分担や連携のあり方を議論してきた。

 複数の関係者によると、長良医療センターは二十八日、院内会議で幹部らに方針を伝えた。県総合医療センターも近く、院内で受け入れを公表する。移籍時期は来年一月と三月の二段階を想定しているという。

 長良医療センターは、胎内の子どもを診断、治療する胎児診療で広く知られ、県内外から患者を集めている。産科医八人の大半が移ることになるが、同院幹部は「新たに医師を確保し、産科は維持する」と説明している。

 県総合医療センターは独立行政法人の運営で、リスクの高い妊婦や新生児を診療する総合周産期母子医療センターに県内で唯一指定されている。分娩(ぶんべん)を担う常勤の産婦人科医は六人。同院の関係者は「今の人手ではいっぱいいっぱい。医師が増えることで、若い医師の教育もしやすくなる」と歓迎する。

 同大教授の一人は「医師に余裕ができるようになれば、医師不足が深刻な県内の他地域にも派遣できるようになる」と話している。

◆慢性的な医師不足
 県によると、県内の分娩(ぶんべん)取り扱い施設は二〇一七年が四十六カ所で、一〇年(六十四カ所)に比べ三割減った。一方、産婦人科・産科医師は一六年が百七十三人で、この二十年は微増減を繰り返し、慢性的な医師不足の状況が続いている。

 加えて、県内のある産科医師は「出産年齢の上昇などでリスクの高いお産が増えた」と厳しい環境を明かす。県内の四十歳以上の出生数は一五年に六百七十五件で十年間で二・三倍に。リスクのある妊娠二十八週未満の分娩数は一四~一六年で二・二倍に増えた。

 名古屋市立大病院の産婦人科医師、尾崎康彦教授は、産科医師不足の背景には過酷な労働状況があると指摘。「二十四時間体制でお産に備える必要がある上、医療訴訟が比較的多い。そのイメージから産科医師を志望する若手が減り、悪循環を生んでいる」と話す。同院では当直の翌日は昼で帰るなど、働き方改革に取り組んでいるという。

 県周産期医療協議会の冨田栄一会長は「医師不足に一つの特効薬はなく、地域に応じた連携を今後も県全体で考えていく必要がある。労働環境の改善も、同時に進めていかなければならない」と話している。



https://mainichi.jp/articles/20180627/ddl/k08/040/055000c
県立中央病院
昨年度の時間外労働 3診療科で増加 「医師不足 運用では限界」 /茨城

毎日新聞2018年6月27日 地方版 茨城県

 県立中央病院(笠間市鯉淵)で昨年度、勤務医の時間外労働が過労死ライン(月80時間)を超えた問題で、特に長時間労働が常態化している整形外科など3診療科の年間時間外労働が一昨年度より増加していたことが分かった。同病院では過労死ラインを超えた場合、業務量を減らすなど改善するよう診療科に求めているが、救急対応などは削減が難しく、関係者は「絶対的に医師数が足りない。現場の運用改善だけでは限界がある」と漏らす。【加藤栄】

 毎日新聞が情報公開請求で入手した2016、17年度の時間外労働に関する記録文書を比較して判明した。

 病院全体の勤務医数は1人減って130人に、年間の時間外労働(平均)は3時間増えて453時間だった。

 同病院の約30診療科のうち、17年度に過労死ラインを超える月があった勤務医23人の大半(13人)を占めた整形外科▽産婦人科▽循環器内科▽麻酔科--の4診療科で見ると、合計の勤務医数は37人で増減はなかった。

 一方、年間の時間外労働(平均)を見ると、整形外科700時間(前年度比75時間増)▽産婦人科502時間(同34時間減)▽循環器内科629時間(同44時間増)▽麻酔科502時間(同16時間増)--だった。

 同病院では、勤務医の時間外労働が過労死ラインを超えた場合、院長名の警告文書を各診療科の部長に出し、患者への説明など業務量を削減するよう改善を求めているという。しかし同病院は2次救急指定病院で、交通事故や出産などの、緊急手術が必要な急患も多い。こうした事態を専門とする整形外科や産婦人科などは、交代要員がいない場合、時間外勤務として対応することも多いという。また循環器内科は手術後の急変への警戒に時間を取られるという。

 関係者は「絶対的に医師が不足する中、忙しい診療科の時間外労働を削減するのはさらに難しい」と漏らす。

 大井川和彦知事は昨年8月、医師不足対策などを公約に初当選。今年2月には「県医師不足緊急対策行動宣言」を発表。今年度当初予算では22億7600万円を計上した。

 この問題について、大井川知事は今月19日の定例記者会見で、「医師数が不足している」と認めたうえで、「(患者への説明などの業務を他の職種に任せる)タスク・シフティングや振り替え休日の促進などを組み合わせ、労働時間の削減に向けた取り組みを進めていきたい」と話している。



https://www.m3.com/news/iryoishin/610089
シリーズ  大学医学部「地域枠」の今
「地域枠の入学生、学力低い」は誤解 - 小林誠一郎・AJMC委員会委員長に聞く◆Vol.1
調査結果公表、国試現役合格率「一般枠」より高く

インタビュー 2018年7月1日 (日)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

 全国医学部長病院長会議の「地域における医師養成の在り方に関する調査実施委員会」が、文部科学省の委託研究として実施した「地域枠入学制度と地域医療支援センターの実情に関する調査報告書」がこのほど公表された。
 医師不足対策として2008年度から増加した「地域枠」については、「学力が低いのではないか」「奨学金を返還して、卒後の義務履行を果たさないケースがかなりの数に上るのではないか」などの指摘もある。しかし、地域枠を有する大学医学部・医科大学を対象に実施した調査では、これらの懸念を払拭する結果が示された。同委員会委員長を務める、岩手医科大学副学長の小林誠一郎氏に、調査概要をお聞きした(2018年6月11日にインタビュー。全2回の連載。報告書は全国医学部長病院長会議のホームページ)。

――まずこの研究を実施した経緯をお教えください。

 本研究は、全国医学部長病院長会議が文部科学省から委託を受け、2015年度から3年間の事業としてスタートしました。2008年度から始まった地域枠の入学制度について、実効性はどの程度あるのか、どんな問題点があり、どのように改善につなげればいいかなどを明らかにするのが目的です。3カ年継続して全国の大学医学部を対象に調査を実施してきました。2017年度の対象は77大学(産業医科大学、防衛医科大学校、自治医科大学、新設医学部を除く)で、うち地域枠を有する68大学から得られたデータを集計しました。

 調査内容は大きく2つに分かれます。一つは地域枠学生の卒前・卒後の状況をいくつかの指標で客観的数値として評価するもの(地域枠学生の転帰調査)で、実効性に関する客観的な数値指標としては、学習成果、つまり入学後6年間で卒業した学生の割合である「ストレート卒業率」、「医師国家試験の現役合格率」のほか、奨学金返還などを行い、義務履行から離れる「辞退率」などを調べています。もう一つは、地域枠制度の問題点・改善点や支援体制などに関する調査です。両者の集計結果は、奨学金や義務履行の有無、選抜時期などでグループ分けした制度区分別(下図)、大学の設立別、中大都市群と小都市群別などで比較しています。

調査対象とした地域枠の制度区分
A:奨学金を支給する制度
 A1:別枠で入学選抜を実施し、卒後一定の年数の義務履行を課すもの
 A2:入学後選抜し、卒後一定の年数の義務履行を課すもの
B:奨学金を支給しない制度
 B1:別枠で入学選抜し、卒後、一定の年数の義務履行を課すもの
 B2:別枠で入学選抜をするが、卒後義務履行年数が明示されていないもの

――学習成果の結果はいかがでしょうか。「地域枠の学生は学力が低い」との指摘もありますが。

 2008年度の地域枠の入学者は、ストレートに行けば2013年度卒業。本研究では、2016年度卒業までの4年度分を調べています。年度による変動はありますが、地域枠の入学者の「ストレート卒業率」は、B1の2016年度以外は、全ての制度区分で一般枠を上回っていました。また、国試の現役合格率は、全ての制度区分で、地域枠卒業生の方が、一般枠卒業生よりも高いという結果でした。

07012_201807010954242b2.jpg
(出典:地域枠入学制度と地域医療支援センターの実情に関する調査報告)
07013_201807010954250c1.jpg
(出典:地域枠入学制度と地域医療支援センターの実情に関する調査報告)

 地域枠に対しては、「入試の合格基準が低いので、学力が低い学生が入学してくるのではないか」との指摘もありますが、現時点ではその懸念は払拭されていると思います。入学後の学習成果で見ると、何ら問題はなく、一般枠の学生よりも優れている結果になっています。

――地域枠の合格基準は、一般枠よりも低く設定しているのでしょうか。

 その点については本研究では調べていませんが、各大学の多くの教員は、「入試の成績と在学中の成績は、必ずしもパラレルではない」ことを実感しています。このため本研究では、入学後の学習成果として「ストレート卒業率」などを指標としました。

――「辞退率」はいかがでしょうか。

 奨学金支給枠に関する大学への調査では、2008年度以降の地域枠の卒業生が辞退するのは、医学部6年生が最も多く、次いで卒後1年目であることが明らかになっています。これは、キャリア形成に対する考え方がある程度、はっきりしてくる時期に当たり、「義務履行とキャリア形成が合致しない、自分が希望する専攻と齟齬が生じた」などが理由として考えられます。本研究では、この時期を過ぎた卒後2~4年目の医師の「辞退率」を調べました。

 この辞退率を見ると、地域枠全体では4.6%(入学生1554人中、辞退者72人)、制度区分別では、義務年限の縛りが厳しい奨学金支給枠のA区分で6.1%〔A1が最も高く6.5%(入学生925人中、辞退者60人)、A2は4.2%(入学生168人中、辞退者7人)〕、奨学金を支給しないB1が1.1%(入学生461人中、辞退者5人)でした(B2は義務履行が明確ではないので除外)。B1が低いのは、初期研修あるいは専門研修1、2年目までなどと義務年限が短く、自由度が高いことが一因として考えられます。

 一方、地域枠制度発足以前の都道府県医師養成奨学金を受けた卒業生(2004年度から2013年度の卒業生。2008年度以降に入学した地域枠の卒業生を原則除外)に関する都道府県への調査では、初期臨床研修が終わった卒後3年目くらいに辞退のピークが来ています。これらの卒業生については、最大卒後10年目までの「辞退率」を調査しました。その結果、卒業生全体では18.7%で、卒後4年目時点までに限ると14.6%でした。経過年数が異なるため単純な比較はできませんが、先にお話した現行制度の6.1%に比べかなり高い辞退率となっています。

 奨学金支給枠に関して、両者をマッチさせて奨学金支給枠を比較するために、卒後2~4年目の各時点での「辞退率」も比較しています。大学調査では、2年目まで5.5%、3年目まで7.8%、4年目まで5.0%。これに対し、地域枠制度発足以前の都道府県医師養成奨学金を受けた卒業生では、2年目まで6.5%、3年目まで12.4%、4年目まで15.2%で、大学調査の方が現時点では低いという結果でした。ただし、大学調査での4年目までの辞退率が低いのは、まだ母数が少ないことによる可能性があると思われます。



https://www.m3.com/news/iryoishin/612492
「医師と個別に契約書」「専門医も総合的なマインドを」
第68回日病学会、特別シンポジウムで医療団体トップが議論

レポート 2018年6月30日 (土)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 金沢市で開催された第68回日本病院学会で6月28日、「今後の医療・介護の行方~地域・包括医療・ケアを中心に~」をテーマに、特別シンポジウムが開かれ、医療関係団体のトップら4人が登壇。地域医療・介護の提供体制そのものよりも議論になったのは、その担い手である医師の働き方や求められる医師像だ。

 働き方改革関連法案が今通常国会で成立、医師の働き方改革は急務。地域包括ケアシステムの構築に当たっては、その担い手、また専門分化した医療を補うため総合診療的なマインドを持つ医師が求められている。昨今の医療情勢を反映した議論になった。

 特別シンポジウムに登壇したのは、日本医師会会長の横倉義武氏、日本病院会会長の相澤孝夫氏、全日本病院協会会長の猪口雄二氏、地域包括ケア病棟協会会長の仲井培雄氏。司会は、全国自治体病院協議会の前会長で、赤穗市民病院名誉院長の邉見公雄氏が務めた。

 相澤氏は、自身が理事長を務める社会医療法人財団慈泉会の相澤病院(長野県松本市)では、医師一人一人と業務内容と給与を記載した契約書を交わしていることを紹介した。「『先生には、これだけの仕事をやってもらいます。だから給与はこの額です』と提示している。こうしたことをやらないと、多分もたない」と相澤氏は説明。医師によって得意分野、可能な業務内容や業務量は異なる。ワーク・ライフ・バランスについての考え方も違う。個々の医師に対して、あらかじめ業務内容や業務量を規定し、それに応じた給与を規定することにより、皆が納得感を持って仕事ができる体制を構築するという発想だ。「排除するのではなく、皆を巻き込んで、うまく人材を活用することが必要」(相澤氏)。

 横倉氏は、「労働基準法通りにやると、地域医療は崩壊してしまう。『医療、医師は特別』とは言わないが、医療の現状を理解してもらい、どこまで医師の働き方改革ができるかを検討していく必要がある」とコメント。日医主催で、四病院団体協議会、全国医学部長病院長会議などが参加する「医師の働き方検討会議」の報告書がまとまったことを紹介。「若い人の意見も取り入れた。労働法制の方にも理解いただける内容」(横倉氏)。医師の働き方改革の基本的考えとして、一つは医師と医療の特殊性を洗い出すこと、もう一つは医師の健康を確保するためには何が必要かを考え、各医療機関での実施を徹底することを挙げ、横倉氏は「医師の自己研鑽が労働に当たるかどうか、宿日直の在り方、オンコールの労働性などの議論が今後、必要になってくる」と述べた。

 さらに横倉氏は、「国民の理解を得る必要がある」とも指摘した。「国民皆保険下では、いつでも、どこでも、誰でも受診できる。このアクセスの良さを現状のまま維持することができるか、国民に考えてもらうことが必要」と述べた。

 「総合医」の養成、位置付けが今後の課題

 新専門医制度において、総合診療専門医は19番目の基本領域の専門医として位置付けられた。一方、一定のキャリアを積んだ医師を対象に、日医はかかりつけ医機能研修制度、日本病院会では病院総合医の研修事業、全日本病院協会では「総合医育成事業」をそれぞれ行っている(『病院総合医「便利屋でなくリスペクトされる存在目指す」』などを参照)。邉見氏は、総合診療的なマインドを持つ医師が、地域包括ケアの中心的な担い手となるとした。

 横倉氏は、「総合診療医が、今後、どうなっていくかのかが大きな課題」と提起した。「内科、外科などの基本診療科に所属することが、医師のキャリアアップの中で大きなウエイトを占めている。われわれはかかりつけ医の重要性を主張している。知識や技術の習得に偏ることなく、専門医として活躍する医師に、かかりつけ医のマインド、全人的な医療を行うマインドを持ってもらうことが必要」。横倉氏は「米国のホスピタリストの現状をもう一度、把握しておく必要がある」とも指摘。

 猪口氏は、全日病でもこの7月から、「総合医育成事業」をスタートさせることを紹介。「諸外国を見ると、米国なら家庭医、イギリスならGP(General Practitioner)が診ているが、しかし、日本では相変わらず、縦割りの専門医が診る体制であり、これではいつまで経っても医師不足。横串を刺す医師をいかに増やすかが重要」と述べ、各団体がいろいろいな方法でトライしなら、総合診療的なマインドを持つ医師が増えることで、「日本の医療が変わってくるのではないか」と見通した。猪口氏は、医師需給や偏在対策の検討に当たって、専門医と総合医の比率を考えることも必要だとした。

 「国民皆保険を世界文化遺産にしたかった」

 司会の邉見氏は、「国民皆保険を世界文化遺産にしたかった」と述べ、今後の皆保険の行方についても演者に問いかけた。

 仲井氏は、「ハイクオリティー、ローコスト、フリーアクセス」の全てを維持するのは無理との考えを示した。自身の経験を踏まえ、原則60日以内の入院となっている地域包括ケア病棟について、早期退院の努力をして30日など短期間で退院させた方が、60日の入院よりも収益性が低いなどの問題点を指摘、診療報酬体系に改善の余地があることを示唆した。

 猪口氏は、厚生労働省が今年5月にまとめた「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」で、経済成長の「成長実現ケース」の試算では、「名目経済成長率3%以上」という数値が用いられていることを踏まえ、「GDPが増加し、国が豊かになれば、皆保険を維持できる。医療や介護を一つの産業として、日本を豊かにしていくことが必要」と提起した。

 相澤氏は、「日本の医療には、まだまだムダがたくさんあると思う」と述べ、次のようにコメント。「いい医療とは何か、質の高い医療とは何か、それを担保するために診療報酬があるはずだが、その視点が日本では抜けているのではないか。GDPの3%成長は極めて難しいと思う。1%台になった時でも、体を張ってでも、医療の質を守らなければいけない」。

 横倉氏は、「国民皆保険を維持するためには、医療の質と財源確保の両面から考えていかなければいけない。地域別の診療報酬、医療版マクロ経済スライド制などの議論に当たって、国民の健康を守るために、われわれが努力していることを、国民に、また国民の代表者である議員に理解してもらうことが必要」と述べ、皆保険の「改革」という言葉には副反応が強く出るとし、微調整を繰り返しながら制度を変えていくことが求められるとした。



https://diamond.jp/articles/-/172986
医療の問題は「誰が」悪いのか
医療経済の嘘(3/3)

森田 洋之:医師、南日本ヘルスリサーチラボ代表。
2018.6.28 ダイヤモンドオンライン

病床の削減、医師不足、医療費の高騰など、医療や医療費に関する報道が後を絶たない。
そうしたなかで、かつて財政破綻後の夕張に医師として赴任していた森田医師が、夕張および全国のデータ、さらに医療経済学的知見から見えてきたのは、医療経済の拡大が必ずしも健康と比例しない現実であった。最近、『医療経済の嘘』(ポプラ社)も上梓した森田医師が提唱する医療と経済のあるべき関係とは。最終回では医療経済の問題を解決する方法を提唱します(医師、森田洋之)

医療費はなぜ高いのか

 現在の高齢者は、1週間の抗生剤投与や外科手術でピシャッと治るとは言い難い「慢性疾患」を一つひとつ獲得しながら歳を重ね、長い療養の後にやがて死を迎えます。
その結果、日本の医療費は膨張を続けています。
 いくらなんでもこれでは国の財政がもたない、ということで、今から40年ほど前の1980年代に「医療費亡国論」が唱えられ、そのあたりから、「医療費上昇の要因」として「医師数」や「診療報酬」が問題視されるようになります。
 結果として医師数も診療報酬も、国家政策によって制限されるようになりました。
 国の立場からすると
  「医療費が高騰するので診療報酬を抑える」
 は正論ですが、銀行から多額の借金をして病院を建て、借金を返しながらギリギリの経営をしている民間病院の立場から考えるとそれは容認しかねる話です。
 とはいえ、それでも報酬は抑えられる。では病院はどうしたらよいでしょう?
 診療報酬(≒診療一回に対する収入)が目減りするなら、患者を多く集めて診療回数を稼ぐしかありません。商売の世界でいう、いわゆる「薄利多売」の方法論です。医療業界は、業界全体でその方向に舵を切らざるを得なくなったわけです。
 こんなことが日本中で繰り返されるようになって数十年、知らない間に日本は、
  ・病床数世界一
  ・外来受診数世界2位
  ・CT・MRIも保有台数も世界一
 こうして現在の「国際的に見て異次元レベルの薄利多売の世界」が形成されていった、というのが本当のところなのではないでしょうか。
 海外から見て異次元レベルの医療の量、しかも医師は少ない、そりゃ医師不足にもなるでしょう。では、医師を増やそう→そしたらまた医療の量が増えちゃった。どうしてそうなってしまうのか、その原理を考えると「医療市場の失敗」に行き着くのです。

医療の問題は「誰が」悪いのか

 こう説明すると、
  「命を守る医療なのに、こんないい加減なことでいいのか!」
 とお怒りになられる気持ちもよくわかります。
 「どうしてこんなことになってるんだ! 誰が悪いんだ! どの業界があくどく儲けてるんだ!」
 と犯人探しをしたくなりますよね。
 でも、こうした「社会のモヤモヤした問題」を誰かのせいにした時点で「思考停止」に陥るような気がします。
 悪者を見つけて叩くと気持ちいいですけどね、でもその気持ちは問題の本質から目をそむける結果にもなりかねません。
 たしかに、医療側も広告や宣伝などで必要以上に需要を喚起したり、情報の非対称性をうまく使って医療供給を増やしたり、反省すべき点も多々あります。
 しかし、病院の経営者も雇用している医師や看護師・薬剤師にリハビリのPT(理学療法士)・ОT(作業療法士)、彼らとその家族の生活を背負っていて必死なのです。
 それぞれに事情があるなかで犯人探しをして、誰かを悪者にして溜飲を下げる、などということにもましてもっと大事な、本質的なことがあるように思います。

 そもそも論で言えば、国民が、
 「医療も市場に任せていれば大丈夫」
 と思っていることこそが、つまりあなたが、
 「病院がいっぱいあっても競争に負けたところが淘汰されていく」
 という幻想を抱いていること、また、
 「病院のことや病気のことはよくわからないから先生にお任せしよう」
 という当事者意識の欠如こそが、問題の本質なのかもしれません。
 つまり、「病院が悪い」「◯◯が悪い」と誰かのせいにして終わり、という話ではなく、
 「薬を飲む前に、いまの生活習慣で治すべきところはないか」
 とか、
 「CTやMRIをただただ、ありがたがって、大きな病院に通ったりしてはいないか」
 とか、
 「自分に家族に、本当に必要な医療ってなに」
 とか、国民全員が、当事者意識を持って、ゼロベースで考えてみることが大事なんじゃないかな、と思うのです。
 「自分や家族に本当に必要な医療の量」がわかって、初めて「地域に必要な医療の量」を知ることができる。
 そこから始まらないことには、
 我々はかけがえのない医療資源を使い果たしながら、どこまでも病院ばかりを求めてしまうでしょう。
 もちろん、例えば若い方の大病や怪我など、緊急の処置や専門的な手術が必要な場合などは躊躇なく救急車や総合病院を使うべきです。

 私も20代の頃、盲腸を緊急手術してもらった命をとりとめました。そうした急性期医療の部分は確実に確保されていなければならない(とはいえ、現状のように全国津々浦々にそうした病院が必要なのか、もっと集約化して全ての疾患・全ての救急を受けられる病院が必要なのではないか、という部分は議論の余地があると思います)。
 それは間違いないのですが、実は今の医療現場における患者の多くは高齢の方々で、しかも対象疾患の多くは慢性疾患なのです。
 「うちのお爺ちゃん・お婆ちゃんに必要な医療・介護って何なのだろう?」
 ということを、家族で、みんなで、本気で考えて、それでもやはり専門家の意見が聞きたい、そのときにはぜひお近くのお医者さん(できれば専門医ではなく家庭医)に相談してください。
 本当の家庭医なら、あなたやご家族に、収益重視でなく、文字通りの「過剰でも不足でもない医療」をアドバイスしてくれると思います。

 これからの地域の医師(家庭医・かかりつけ医)の存在意義はそこにこそあるのではないでしょうか(ただ、本当の意味で患者中心の医療を実践してくれる家庭医・かかりつけ医が地域に十分そろっているかと言われれば、現時点ではまだまだそうではないと思いますので、ここは期待を込めての発言でもあります)。
 私は現場の患者さんや地域の方々の声をたくさんお届けしていますが、それは医師として、
 「地域の方々の良き相談相手」
 「わかりにくい医療の世界の翻訳家」
 でありたいと強く願っているからです。

森田 洋之(もりた・ひろゆき) / 医師、南日本ヘルスリサーチラボ代表
1971年横浜生まれ、一橋大学経済学部卒業後、宮崎医科大学医学部入学。宮崎県内で研修を修了し、2009年より北海道夕張市立診療所に勤務。同診療所所長を経て、現在は鹿児島県で研究・執筆・診療を中心に活動している。



https://www.m3.com/news/iryoishin/612179
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
「真の医師の働き方改革とは何か」、武田厚労省医政局長
第68回日病学会、「医師の特殊性、健康管理、地域医療への影響」を勘案

レポート 2018年6月28日 (木)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省医政局長の武田俊彦氏は6月28日、金沢市で開催された第68回日本病院学会で「将来を見据えた医療提供体制の構築に向けて」をテーマに、特別講演した。「医師の働き方をどのように規律すれば、真の『働き方改革』になるのか」と問いかけ、「単に労働時間を短くする」のではなく、医師という職業の特殊性、医師の健康管理、地域医療への影響などを総合的に勘案して、検討していく必要性を強調した。

 「結局、今の働き方をある程度、維持できる、認める形での規制をしなければいけない一方、どのような統計データを取っても、今の医師の働き方は圧倒的に長時間労働であるのも事実。地域医療を守りながら、これから医師を目指す若手のことも念頭に置き、健康確保の方策について、われわれ医政局として医療行政の一環として考えていかなければいけない。また、たくさん働いている医師には、それに応じた賃金が支払われることも必要」(武田氏)

 さらに医師不足問題について、武田氏は「マクロにおいては解消されつつある」と述べ、医師偏在対策を強力に進めていくことが求められるとした。一方で、医学部定員の問題をはじめ、医師需給については、医師の働き方改革が関係してくることから、この7月9日から厚労省の「医師の働き⽅改⾰に関する検討会」を再開、当初の予定通り2019年3月末までには結論を得る方針を説明した。同検討会は、今年2月27日に「中間的な論点整理」を行った後に休会していた。厚労省としても今後、議論のたたき台を出す予定だという。

 武田氏は、「医師の特殊性」としてよく指摘されるものとして、
(1)医師の特性・社会的要請に関するもの(人の生命を扱う公共サービスであるなど)、
(2)医師の供給面に関するもの(医師養成には長時間を要する、業務独占など)、
(3)医師の職業倫理に関するもの(患者を最優先に考えるなど)、
(4)使用者との関係に関するもの(診療方針は、医学的判断によって担当医師・チームが立てるなど)――を挙げた。

 医師以外の専門職として、大学教授、民間組織の研究員、弁護士、新聞記者、本社の企画職(ホワイトカラー)、管理職、ディーラー・アナリストを挙げ、「いずれも何らかの労働時間規制がある。なぜここに医師が入ってこなかったのか。それは医師自身が自分を労働者として認定していなかったという面があるだろう。医師の働き方改革は、取り残された問題であり、今回はしっかりとした議論をすることが必要」(武田氏)。

 その上で、武田氏は、「医師の働き⽅改⾰に関する検討会」のこれまでの議論を踏まえ、「私見」と断り、(1)労働法の観点から、医師の働き方をどのように規律すれば、真の『働き方改革』になるのか、(2)医師が健康に働き続けられる勤務環境とはどのようなものか、(3)その他、必要と考えられる視点――の3点を提示。

 (1)については、外来や手術、自己研鑽、宿日直など、「密度が異なるさまざまな仕事」を手がける医師の勤務の特殊性などを踏まえる必要性を指摘。一方で、自己研鑽は「良質かつ適切な医療を行う」ための大前提であり、「自己研鑽を抑制するような規律の仕方であってはならないのではないか」との見解を示した。

 (2)については、「単に時間を短くすればいい、わけではないのではないか」と問いかけた。「一人一人の医師がやりがいを持ちながら、無理をせず経験、研鑽を積むことができることが重要なのではないか」とする一方、「勤務時間インターバル」(終業から始業までの間隔)の設定、連続労働時間や当直回数の制限、完全休日の設定などにより働きづめにならないこと、メンタルヘルスなどの健康管理の必要性も挙げた。

 (3)については、医療機関の経営の観点、行政の関与の在り方、地域医療の確保などを挙げた。

 武田氏は、医師確保対策、地域医療構想、医師の働き方改革は相互に密接に関係する問題であるとも指摘。地域医療構想について、「もともと必ずやらなければいけないことについて、国として枠組み、財源、ツールを用意した」と説明。「一番良くないのは、何も変わらない、何もしないということ。その結果、経営が悪化し、医師が来なくなり、患者の満足度が低下してしまう」とし、改革を進めれば、経営的、医療機能や医師の確保でもいい影響が出てくるとした。

 「医療費、過去の急速な伸びとは異なる」
 武田氏は講演でまず、政府が5月21日に公表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」について、「年金についてはそれほど伸びず、医療介護がどうなるかが課題」と説明。「新聞では、社会保障給付費が190兆円になると報道された。経済規模(GDP)が1.4倍になる中での1.6倍(2018年度との比較)。過去の急速な伸びとは、質的に異なる」。

 一方で、武田氏が大きな問題として提示したのは、医療・介護のマンパワーの確保。同じく5月21日に厚労省が公表した2040年のシミュレーションでは、医療・介護のマンパワーの需要が増加することなどを踏まえ、「医療保険における自己負担の在り方などではなく、医療提供体制の方が今後の主要なテーマ」と語った(『「2040年問題」、主眼は給付費増より医療福祉従業者数』を参照)。

 「医師不足はマクロ的には解消されつつある」
 マンパワーのうち、医師については現在、医師の需給、医師の働き方改革、地域・診療科の医師偏在という3つの柱で議論を進めていると説明。

 武田氏は、今通常国会に提出している医療法・医師法改正法案について、「一刻も早くこの法案が成立することを望む」と述べた。同法案は参議院で可決済みで、衆議院での審議待ちの状況。改正内容について(1)医師少数区域等で勤務した医師を評価する制度の創設、(2)都道府県における医師確保対策の実施体制の整備――の2つについて説明(『「医師少数区域」勤務の認定医師、専門医取得の支援も検討』などを参照)。

 (1)について、武田氏は次のようにコメント。「積極的に、医師の方々に地域に出てもらいたい。ただし、地域に出た医師、またはその医師を派遣した医療機関に対する評価制度がないのが実態。強制的ではなく、まず実際に地方勤務をする医師と、その医師をバックアップする医療機関を評価する仕組みを作る必要がある」。

 (2)については、地域医療対策協議会と地域医療支援センターの役割などを明確化したことが特徴であるとした。地域医療対策協議会の役割は、「地域枠」の卒業生についての医師派遣方針の決定、キャリア形成プログラムの策定などであり、大学医局からの医師派遣との間で整合性を確保するための調整なども必要になってくるとした。

 さらに「日本の医師数は少ないのか多いのか」と武田氏は問いかけ、日本の人口は減り始めている一方、2008年度以降の医学部定員増で医師数は増えていることから、「人口10万人当たりの医師数は、今までの伸びのトレンドから、上方にシフトする。医師不足は、マクロにおいては解消されつつある」との見解を示した。一方で、いまだ医師の偏在は解消されていないことから、「偏在対策は強力に実施していかなければいけない」とし、医療法・医師法改正法案に盛り込まれた一つである、「医師需要の見える化」を、人口構成や患者の流出入の補正をしながら取り組む重要性を強調した。

 「医師不足はマクロ的には解消されつつある」
 武田氏は、医療提供体制のもう一つの課題として、地域医療構想を挙げた。同構想については、4つの医療機能区分について、既存病床と「病床の必要量」を数合わせのように進めるのは「誤解」と説明した(『「全国一律の施策は限界、地域医療構想で対応を」』を参照)。「地域全体でどんな患者がどのくらいいて、各病院でどう分担していくか、という議論が大事」。

 地域医療構想への取り組みには、都道府県によって開きがあることも問題視した。調整会議での議論には、病床機能報告に基づくデータが前提となるが、「報告していない病院があり、その督促ができていない県がある」。新公立病院改革プランについての協議などにも、遅れが見られるとした。さらに地域医療構想の実現に当たっては、調整会議での議論だけでなく、地域医療連携推進法人なども活用しながら進めることを求めたほか、医師確保計画も併せて策定、実施することになると説明。

 そのほか武田氏は講演で、健康寿命の延伸について、高齢者の低栄養対策やポリファーマシー対策などに取り組む重要性も強調した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/611071
シリーズ 日医代議員会
「医師少数区域勤務で所得税優遇を検討」中川日医副会長
第143回日医臨時代議員会、地域・診療科別の医師必要数を提示

レポート 2018年6月24日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、6月24日の第143回日医臨時代議員会で、医師偏在対策について、「深刻な医師不足の現状を踏まえると、医師配置の強制的な仕組みの導入が必要な時期とも思う」としつつも、できる限り、あるべき医師配置への自主的な収れんを目指したいとの意向を表明した。その実現に向け、「地域ごと、診療科ごとの医療需要とそれに基づく医師の必要数を分かりやすく提示して、地域医療を守っていこうという思いをしっかりと共有していく」との方針を掲げた。

 日医は、医師少数区域で勤務する医師に対する所得税の優遇措置の検討に着手、医師のみならず受験期の子息などのeラーニングなどの利用、育児サポートなどの支援も検討していると説明した。

 鹿児島県代議員の牧角寛郎氏は、医療法・医師法改正法案に、医師偏在対策として盛り込まれている「医師少数区域等で勤務した医師を評価する制度(認定制度)」について、「運用を慎重にすべき」と指摘した。認定制度は、地域医療支援病院等の病院管理者になるためには、医師少数区域等での勤務を必要とする仕組みだが、牧角氏は「将来、病院管理者など責任ある立場になる意思はないので、医師少数区域へ行く義務はない」と捉えられ、逆に医師偏在を助長するなどの懸念があるとした。一方で、「病院管理者に適任であっても、医師少数区域での勤務経験がないことをもって任に就けないことも問題」と述べた。

 その上で、今求められるのは(1)臨床経験を多く積める地域医療の意義・魅力の発信、(2)現場での労働環境の整備、(3)昨今の若手気質を勘案した医学生・若手医師への倫理教育――であるとした。

 医師偏在対策については、静岡県代議員の徳永宏司氏も質問している(『「医師強制配置ではなく、自主的な判断の仕組みを」中川日医副会長』を参照)。

 「国民に受療行動を変えてもらうことも必要」
 中川副会長は、牧角氏の3つの指摘について、以下のように回答。

 第一の「地域医療の意義、魅力の発信」については、鹿児島県では地域医療介護総合確保基金を活用し、緊急医師確保対策事業として、離島やへき地での研修など、医学生への積極的なアプローチを実施されていると説明。「全国各地でも同様な取り組みが見られるが、成功事例、問題点が共有されておらず、手詰まり感も見られる。全国の事例を分析し、都道府県医師会の取り組みを支援していく」とした。

 第二の「医療現場での労働環境の整備」については、「地域医療の継続性と医師の健康への配慮の両立が不可欠であり、労働時間だけの問題ではない」とし、日医に「医師の働き方検討会議」を設置し、慎重に議論をしていると説明。「例えば、かかりつけ医機能の推進や外来機能の分化を進め、国民に分かりやすい形で示し、受療行動の在り方を考えてもらうことも必要だろう。また、病院と診療所の連携、病院内の医療関係職種との連携など、地域医療連携、多職種連携が重要」などと述べ、都道府県医師会が、地域住民の方への啓発活動をはじめ、地域全体の課題として検討するよう働きかけた。

 第三の「医学生、若手医師の倫理教育」については、日医の綱領で「人間の尊厳が大切にされる社会の実現を目指す」としており、この綱領の理念を医学生、若手医師のみならず、全ての医師と理念を共有し、行動変革につなげられるように努めていくとした。「若い医師たちとはこれまで以上に交流を図り、日医自体も自ら意識改革を図りつつ、時代に即応していく」。

 認定を受けなくても管理者になることは可能
 中川副会長は続いて医師偏在対策として、2015年12月に全国医学部長病院長会議とともにまとめた「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言」で、「医師自らが新たな規制をかけられることも受け入れなければならない」との考えから、「医師のキャリア形成支援を行っていくことを前提に、医師不足地域で勤務した経験を管理者要件にする」と提言したと説明。

 今国会に提出された医療法・医師法改正法案で、医師少数区域等での勤務経験を認定する制度が創設された。「認定医師を一部の地域医療支援病院の管理者とすることは、医師少数区域医師不足地域で勤務しようとする医師を支援する一つ」と受け止め、できるだけ早い段階で医師のキャリア形成支援を実現する必要があるとした。

 牧角氏の「地域医療支援病院の病院管理者に適任であっても医師少数区域での勤務経験がないことをもって任に就けなくなる」との懸念に対しては、「地域における医療の提供に影響を与える場合には、認定を受けていなくても管理者になれるという、ただし書きが付いている」と説明。

 さらに日医は、医師少数区域で勤務する医師に対する所得税の優遇措置の検討に着手、その他の支援策を検討しているとした。

 牧角氏は、中川副会長の答弁に対し、「医療法・医師法改正法案には、日医の意見がかなり反映されているとのこと。これをきっかけに偏在が解消していけばと思うが、国や県の権限が強くなる書きぶりがあるので、今後の開業規制につながらないようにしてもらいたい。『地域』という言葉がよく出てくるが、必ず地域の実情を勘案してもらいたい」と求めた。中川副会長「必ず地域の実情を反映するとしている」と答え、理解を求めた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/611070
シリーズ 日医代議員会
「医師強制配置ではなく、自主的な判断の仕組みを」中川日医副会長
第143回日医臨時代議員会、「新専門医制度で偏在助長」は回避

レポート 2018年6月24日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、6月24日の第143回日医臨時代議員会で、医師偏在問題について「決定打があるわけではない」と前置きし、「強制的な仕組みではなく、医師本人の意思を尊重し、地域医療に貢献したいという気概を持った医師を支え、かつ強力に支援する仕組みを目指す。医師の自主的な判断を促す仕組みを模索することが遠いようで、実は偏在解消の近道」と答弁した。

 さらに、新専門医制度のみで医師偏在を解消することは困難だとしつつ、「少なくとも医師偏在を助長することは絶対に回避しなければならない」と答弁した。

 日医として、かかりつけ医機能を高め、全ての医師が、どの地域でも地域医療や地域包括ケアを担っていけるようにすることが、究極の医師偏在対策となると考えているとし、「医療現場の先生方、これから医師になる若い人たちの思いを大切にしながら、日医は医師偏在解消のために取り組んでいく」との方針を示した。

 医師偏在対策について、代表質問したのは静岡県代議員の徳永宏司氏。静岡県内でも「西高東低」の医師偏在があり、その対策として義務履行のある「静岡県医学修学研修資金」を2007年度から開始したが、必ずしも有効ではないと指摘。今国会に提出されている医療法・医師法改正法案では、「医師需要の見える化」などが盛り込まれており、静岡県でも浜松医科大学に寄附講座を新設し、医療圏・診療科ごとの医師需要数等について調査・分析、医師偏在解消への取り組みを着手したものの、実効性のある対策につながるか疑問であるとし、「自主性を尊重した対策だけでなく、一定の規制を含めた対策」も避けられないのではないか、と提起した。

 医師偏在対策に関しては、鹿児島県代議員の牧角寛郎氏も質問している(『「医師少数区域勤務で所得税優遇を検討」中川日医副会長』を参照)。

 「地域医療構想アドバイザー」、静岡で先駆け

 中川氏は、まず地域枠については厚生労働省が2017年度に実施した臨床研修医修了者に対するアンケートで、地元定着率が高いという結果が示されている一方、地域医療介護総合確保基金を活用した奨学金制度については、現段階ではまだ有効性が確認されていないケースもあるため、地域枠の成果を分析し、次の対策につなげていくとした。

 「医療需要の分析に基づく医師需要の見える化」については、厚生労働省が、地域医療構想や医療計画などの制度を理解し、医療政策に関する知見を有して、データ分析を基にアセスメントを行う「地域医療構想アドバイザー」の設置を計画していると説明(『「地域医療構想アドバイザー」、都道府県単位で設置へ』を参照)。候補は大学関係者などであり、静岡県医師会が浜松医科大学と連携している取り組みを、全国展開してもらいたいと求めた。日医としても、都道府県の分析に役立つよう、厚労省とともに、将来の地域別の医療需要を分析し、それに基づく医師の必要数を推計して、都道府県に示していく方針だという。

 「医師キャリア支援センター」に近付く

 もっとも、「真に有効な医師偏在対策とは何か」との質問には、具体的な手立てがないのが現実であり、「大変苦慮している」と述べた。

 日医は、2015年12月に全国医学部長病院長会議とともにまとめた「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言」で、地元の大学に「医師キャリア支援センター」を設置し、医学生および医師のキャリア形成を支援し、医師不足地域で勤務した経験を管理者要件とすることを提言した。

 今通常国会に提出された医療法・医師法改正法案により、「地域医療対策協議会」の役割と機能が強化されることになるが、「医師キャリア支援センター」構想に少し近付いたとした。

 今後は、地域医療対策協議会の協議を経て、都道府県主体で、地域枠の医師の派遣方針を決定するほか、若手医師の希望やライフイベントに配慮したキャリア形成プログラムを策定し、医師が安心して勤務できる体制を整えていくことになる。地域医療対策協議会では、都道府県医師会がその中心であり、都道府県医師会が主導的役割を果たせるよう、日医は支援していく方針。

 新専門医制度でも地対協の役割重要

 新専門医制度については、「偏在対策に資するのか」という疑問もあるが、「専門研修のみで医師偏在を解消することは困難だと認識しているが、少なくとも医師偏在を助長することは絶対に回避しなければならない」と回答した。

 今回の医師法改正案では、(1)日本専門医機構が専門研修に係る計画を立てる際に、あらかじめ厚生労働大臣の意見を聞かなければならない、(2)厚生労働大臣が意見を述べる際には、関係都道府県知事の意見を聞かなければならず、その際に知事は地域医療対策協議会の意見を聞く――となっていることから、地域医療対策協議会における都道府県医師会の役割は極めて重要だと説明した。

 徳永氏と牧角氏への中川副会長の答弁後に、関連質問を受け付け、山口県代議員の加藤智栄氏は、(1)医師偏在解消策としてのインセンティブ付与、(2)専攻医のシーリング(募集定員の設定)だけでなく、外科専攻医が1人しかいない県があることも踏まえ、「下限」の設定――について質問。中川副会長は、医師不足地域・診療科や過剰地域・診療科を示すことがまずは大事であると繰り返し、「下限」の設定は検討課題であるとした。

 兵庫県代議員の橋本寛氏は、医学部定員の「地域枠」について質問。中川副会長は、「近い将来、医師過剰時代が来るのは間違いないので、早急に医学部定員の在り方と地域枠の議論をしていきたい」と答えた。



https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32173810U8A620C1CR8000/
始業前の時間外労働、7割が請求せず 医労連調査
2018/6/24 18:53 日本経済新聞

 始業前の時間外労働について、医師や看護師などの約7割が残業代を請求していないことが24日までに日本医療労働組合連合会の調査で分かった。職場に請求しにくい雰囲気があり、終業後の残業代も請求できない人が2割に上る。医労連は労働時間の管理などの徹底を求めている。

07014_2018070109543166a.jpg

 調査は2017年9月~18年1月、医労連の職員が加盟する組合員の医師や看護師など1万1189人を対象に聞き取りし、結果を集計した。全体の57%が始業前に時間外労働をしていると答え、3%は1時間以上、業務に従事していた。

 このうち始業前の残業代を全額請求していた人は11%で、73%は請求していなかった。終業後の残業についても20%が「請求していない」と回答した。

 残業代が請求できない理由を尋ねた質問に対し、26%が「請求できない雰囲気が(職場に)ある」と答え、「請求できると思わなかった」(11%)、「上司に請求するなと言われている」(2%)などが続いた。

 医師には正当な理由なく患者の診療を拒めない「応召義務」があり、急患などに対応する必要があるほか、診療に役立てようと自己研さんを積んでいる。看護師も夜間勤務などを伴い、それらを含めると法定労働時間や労使協定上の時間外労働の合計を超えてしまう。

 このため病院側が医師や看護師の勤務時間を不正に調整し、労働基準監督署から是正勧告を受けるケースも各地で起きている。

 勤務医の労働組合「全国医師ユニオン」が17年に大学病院の医師を対象に実施した調査によると、労働時間がタイムカードなどで客観的に管理されていると答えたのはわずか6%だった。

 医労連の担当者は「現場の人手不足などを背景に、病院側が責任を持って医師や看護師の労働時間を管理していない」と指摘。「労組も巻き込み、労働者も働いた分は請求するという姿勢を徹底していくべきだ」と強調する。



https://digital.asahi.com/articles/ASL6W3T6RL6WUBQU005.html?rm=680
外科医は嫌? 新専門医制度の専攻、群馬では1人だけ…
篠原あゆみ2018年6月27日15時00分 朝日新聞

 4月から導入された新専門医制度で群馬県内の外科の専攻医は1人にとどまった。外科医のなり手不足は全国的な傾向で、長時間労働や訴訟リスクなどから敬遠されているという。危機感を抱く県や群馬大学は奨学金制度を設けたり、講習会でやりがいを伝えたりするなど、対策に乗り出している。

新専門医制度の登録約8千人、「都市部の集中なし」

 5月中旬、群大であった手術基本手技講習会に、県内の医学生や研修医約90人、講師の医師ら約60人が集まった。参加者は縫合や切開、シミュレーターを使った腹腔(ふくくう)鏡手術など約20のブースに分かれ、ベテラン医師から技術を教わった。

 これまで年に2回開いてきたが、今回初めて、県内各地の病院にも参加を呼びかけたという。群大医学部付属病院で外科診療センター長を務める調憲教授は「若いうちからトレーニングの機会を増やすことで、外科医に興味を持ってもらい、手技のおもしろさを知ってもらいたい」と話す。

 こうした取り組みの背景に、外科志望者が減っていることへの危機感がある。県医務課などによると、新専門医制度で新たに県内で専攻医になった79人のうち、外科専攻医は1人だけ。3月15日時点のまとめでは、基本診療科のうち最も多かったのは内科で25人、精神科や放射線科、麻酔科、救急科がそれぞれ6、7人だった。

 調教授によると、外科は長時間勤務で、訴訟のリスクも大きく、医学部入学時に外科医を志望していても実習などを通して体力的に不安を感じる学生が多いという。講習会に参加した、群大医学部5年の女子学生(22)も「外科は多忙というイメージ。ワーク・ライフ・バランスを考えると、不安もある」と話す。

 外科医のなり手は全国的にも減っている。厚生労働省の調査によると、2008年に全国の医療施設で働く外科医は1万6865人いたが、16年には1万4423人に。県内では278人から235人と15%ほど減った。

 県は06年から実施している「医師確保修学研修資金貸与制度」に、昨年度から外科も加えた。研修医に対し月額15万円を貸与し、一定期間、県内の指定病院の医師不足の診療科で働けば返済が免除される制度で、ほかには産婦人科や小児科、救急科などが対象だ。

 医師不足の診療科の魅力を伝えるセミナーも開催している。初回の昨年は、現役の外科医が研修医にやりがいなどを伝えた。県医務課の担当者は「県内で手術ができる医療体制を今後も継承していけるかが大きな問題。医師確保に力をいれていく」と話している。(篠原あゆみ)

 <新専門医制度> 2018年度から導入された制度。国家試験に合格後、2年間の初期臨床研修を終えた医師が、内科や外科など19の基本診療科から専門領域を選び、3年程度で複数の病院を回りながら知識や技術を現場で学ぶ。その後、第三者機関の日本専門医機構から専門医の認定を受ける。



http://news.livedoor.com/article/detail/14937246/
「病院が多い県」に住むと「医療費」が2倍になるという驚きの真実 「医療経済」から考える日本の課題
2018年6月29日 12時0分 現代ビジネス【森田 洋之】

2009年から財政破綻後の夕張に赴任していた森田医師は、当時、市民が笑顔で生活していたことに驚いたという。その後、夕張および全国のデータさらに医療経済学的知見から見えてきたのは、医療経済の拡大が必ずしも健康と比例しない現実であったーー。
最新刊『医療経済の嘘』で、医学的・経済学的な見地から医療や地域の問題を鮮やかに描出した森田氏が、病床数と医療費の関係に着目し、日本の「医療経済の歪み」を明らかにする。

高知県の入院医療費は、神奈川県の2倍!

病院の多い県(正確には人口あたりの病床数が多い県)の県民は、健康度や平均寿命は大差ないのにもかかわらず、入院医療費を2倍使うーー。そんなショッキングなデータをご存じでしょうか。

これは、今月発売された拙著『医療経済の嘘』にて掲載したデータの一つなのですが、いま「これは事実なのか?」との問い合わせをいくつも頂いています。

今回は、このデータの信憑性について考えるとともに、その裏に潜む「医療市場の失敗」とその処方箋について考えてみたいと思います。

拙著で紹介したデータはこちらです。

図1 全病床数(人口10万人当たり)と一人当たり入院医療費の関係(図 略)

*図の出典 神奈川県HP:病床数の状況(平成24年度)

人口10万あたりの病床数(横軸)と県民一人あたりの一年の入院医療費(縦軸)を都道府県別にプロットしその相関関係を見たものです。よく勘違いされるのですが、ここで言う一人あたり医療費は、「入院した人、一人あたり」ではなく「県全体の入院医療費を、赤ちゃんから高齢者まで県民全員の人口で割った額」です。つまり本当の意味での「県民一人あたり」です。

グラフのとおり、一人あたり入院医療費が全国一高いのは、病床数が最も多い(人口10万あたり約2400床)高知県で、県民一人あたり約19万円。病床が最も少ない神奈川県民の一人あたり医療費(約9万円)の2倍以上を使っていることがわかります。

いま、このデータについての問い合わせとして、主に以下の2つのパターンを頂いています。

・このデータは県民一人あたりの「入院医療費」だが、より重要なのは「総医療費」である。そちらはどうなのか?

・高齢者の多い県で医療費が多くなるのは必然である。各都道府県で高齢化率は大きく違うのだから、高齢化率の影響を排除する必要があるのではないか?

これらについての私からの回答は「若干相関関係は落ちるが、やはりどちらについても上記の相関関係は成立すると考えられる」と言うところです。

「高齢化率」を考慮しても結果は同じ

まず「総医療費」について。こちらは神奈川県のHPに掲載されているグラフにその答えがあります。

図2 全病床数(人口10万人当たり)と一人当たり医療費の関係(図 略)

*図の出典 神奈川県HP:病床数の状況(平成24年度)

縦軸が「一人あたり入院医療費」から「一人あたり医療費(総医療費)」と変わっていますので、まさにご質問への回答そのものだと思います。相関係数は0.964から0.914へと若干減少していますが、相関関係は依然として強く存在していると言っていいでしょう。

次に「高齢化率の影響」についてですが、こちらは厚生労働省が「年齢調整後の一人あたり医療費」について「市町村国民健康保険(主に高齢者以外が対象)」と「後期高齢者医療制度」でデータを出しています。

ここでは病床数との関連(相関係数)まではデータ化されていないのですが、やはり「年齢調整後の後期高齢者一人あたり医療費」が最も高い高知県(人口あたり病床数も日本一)は一人あたり68.3万円を使っていて、これは最も低い岩手県34.1万円の約2倍です。

市町村国保(主に高齢者以外が対象)でも同様で、最も高い鹿児島県(病床数は日本で2位)は一人あたり18.6万円。これは最も低い愛知県10.6万円に比較して、実に1.76倍となっています。繰り返しますがこれは都市部と地方の高齢化率の影響を排除した「年齢調整後」の数字です。

つまり、「高齢化率」という交絡因子の存在を除外してもなお「病院の多い県の県民は入院医療費を2倍使う」という言説が成立する可能性はかなり高いと言えるでしょう。

もちろん、相関関係は因果関係ではないので、更に多くの交絡因子(個人的には高齢化率以外に有力な交絡因子は思い浮かびませんが)を除外していかなければ真の「因果関係」にはたどり着きません。こちらは専門家による精緻な因果推論の結果を待ちたいところです。

なぜ、県によってこんなに病床数に差があるのか?

因果関係の有無はともかくとして、これらのグラフから読み取れることの一つが、「日本では都道府県によって人口あたり病床数に最大で3倍の差がある」という厳然たる事実です。そもそも、なぜ県によってこんなに病床数に差があるのでしょう?

ラーメン屋さんやパン屋さんの場合、地域で店舗が過剰になれば(供給過剰になれば)、徐々にお店が淘汰されてゆき適正な供給量に落ち着きます。これがいわゆる自由市場における「市場原理」です。

ではなぜ病院・病床の多い県では、病院が淘汰されないのでしょうか。

その背景には、1990年代の「駆け込み増床」など近代医療史的な部分もあるのですがそれは表面的な話。もっと根本的な議論をするならそこは「医療市場の失敗」という概念を避けて通ることはできません。

「医療市場の失敗」については拙著で詳しく解説していますが、簡単に言えばこういうことです。

「医療業界では、*需要・供給の間に情報の非対称性(患者側と医療者側との間の医療知識の格差)が強く存在し、患者側が本当に自分に必要な医療を選択できる状況にない、また、*医療保険によるモラルハザード(実際に受ける医療サービスの対価の大半は医療保険で支払われるのでサービス利用者のコスト意識は希薄になりがち)が存在する。こうした業界では、多くの場合市場原理による適正化にはいたらない」というものです。

確かに、貴重な医療資源である「病院・病床」に最大3倍もの地域差が発生しまっている現状を考えれば、これは市場原理が適正に機能しているとは言いにくい状態かもしれません。では、モラルハザードの経済的要因である国民皆保険制度をやめる?

いえいえ、日本の国民皆保険制度は世界に誇る日本の宝です。国民が平等に、しかも安価に質の高い医療を受ける事ができる国民皆保険制度を放棄するという選択肢は多くの国民から支持されないでしょう。ではどうすればよいのでしょうか?

個人的な見解として、以下の3つの課題が重要なのではないかと思います。

(1)医療政策的課題(国の課題)

まず国(もちろん国民も)は、医療の提供を自由市場に任せても市場の失敗が発生するということをより強く認識すべきでしょう。医療提供は青天井です。

実は冒頭のグラフの横軸・都道府県別病床数で最多が高知県(人口10万あたり約2400床)、最少が神奈川県(人口10万あたり約800床)でしたが、他国を見るとアメリカが人口10万あたり約280床、イギリスが約270床と、日本で最少の神奈川県よりはるかに少ない病床数。事実、日本の病床数は世界一、日本は他国から見れば、たとえ日本一病床が少ない神奈川県の病床数であっても驚異的な病床数だと見られているのかもしれません。

これは、「医療の提供が青天井である」ことに対する間接的な証左と言えるでしょう。もちろんこのことの基礎には、前記「医療市場が失敗する要因」の一つとしての「情報の非対称性」があります。

また、確かに戦後~高度成長時代の人口爆発時代、日本中で医療が不足していた時代においては、民間病院のスピード感を期待して医療の提供を自由市場に開放したことは理にかなったことだったかもしれません。事実、この時代に病院・病床などの医療提供体制は驚くべきスピードで達成されたました。

しかし、これからは人口減少時代です。しかもすでに病床は世界一の規模に達しています。当然、医療は適正な規模に縮小して行くことが求められるわけで、もちろん国もこのことはわかっています。

国も「地域医療計画」によって病床削減などを計画していますが、これがかなり難航しているのはご存知の通り。莫大な借金を抱えて病院を整備した民間病院に「病院をやめなさい」とは言いにくいのが現状です。

(2)医療提供側の課題

医療提供側は、上記のような「医療における情報の非対称性」を解消すべく、患者側に適切な情報提供を行うようこれまで以上に務めるべきでしょう。

ただ、医学知識は高度に専門的で複雑、しかも不確実なもので、一般市民にとっては容易には理解出来ないものかもしれません。

であれば、「最善を尽くしても情報の非対称性は一定程度残る」ことを想定したうえで、それでもそれに便乗して医療提供を増やすようなことのないよう、professional autonomy(専門職としての倫理を前提として自ら姿勢を正し、自らを律していくこと)の精神をもとにしたpeer review(医師・病院相互間での批判的な評価・検証)をしっかり行うことが重要だと思います。

日本の現場では、医師による医師への評価はほとんど行われていません。専門医制度などの高度専門知識レベルでの標準化は実践されていますが、現場の病院や診察室での診療内容(高齢者に対する多剤処方、過度な安全志向での絶飲食指示による廃用症候群、医療法人グループ内の病院・施設での高齢者や障害者を囲い込み診療など)は標準化とはほど遠い状況にあり、むしろそれらについて他医または他院を評価/批判することはタブー視されていると言っていいでしょう。

私も研修医時代、先輩医師から「他医の診療を批判してはいけない(それはいつか自分に還ってくるから)」と教わりましたし、事実、私個人もいままでどんなに「これはひどい」と思われる医師に出会ってもそれを指摘することはできませんでした。また、私自身の診療の質を他医から批判された経験もありません。

もちろん患者側は高度に専門的で複雑な医療の世界に対して正当な評価は出来ないでしょう。そのうえ、唯一の高度専門知識を持つ医師も他医を評価できない……、となると医師はどこからの評価・批判にもさらされない孤高の存在になってしまいかねません。

イギリスでは、医師の年間の処方傾向がネットで他医に公開されているということです。これだけではまだまだですが、業界全体が自らを律するこのような方向に進んでいくことこそが、適切な医療提供体制を構築する上で欠かせない要素だと思います。それこそがprofessional autonomyと言えるのではないでしょうか。

(3)患者側(医療を受ける側)の課題

患者側も意識を変えていくべきです。

特に高齢になったら、昔のような「病院や医師にお任せ」はやめるべき。昔のように、肺炎・結核・胃腸炎のような感染症が死因の上位を占めていた時代であれば、1週間抗生剤の点滴をすればピシャッと治るので「先生におまかせ」でよかったかもしれません。しかし、今の死因の上位は、ガン・心疾患・脳卒中など1週間の点滴でピシャッと治るかといわれればそうでない病気ばかり。

現代の高齢者は「治らない病気を一つ一つ獲得しながら」歳を重ねて行くのです。その治らない病気を一つ一つ全力で治そうと思ってしまうと、「どんどん薬が増えていく」ことになり、最終的には「管だらけで寝たきり」となってしまいます。

人間の死亡率は100%、特に歳をとってから発生する問題の多くは、実は医療で根本的な解決に至る問題ではありません。そういう意味では、実は社会の高齢化が進むに従って「医療費が下がる」ということだって実は有り得る話です。事実私がいた高齢化率日本一の北海道夕張市は今でも高齢化率は上昇していますが、それにもかかわらず高齢者医療費は減少しました。

「自分の健康を自分ごと」として自ら意思決定していく。今後の高齢会社会を元気に生き抜くためには、こうしたことが大事なのではないかと思います。そして、その意思決定の良き道先案内人(コンシェルジュ)として「かかりつけ医」を上手に活用してほしいと思います。

上記3つの課題は、なかなか達成できる課題ではありません。国家行政・医療提供側・患者側の3者みんなが意識を変えて取り組むべき課題でしょう。現在の延長ではなく、ゼロベースで「本当に大事なもの」をみんなで模索していく。そうでなければ、我々は世界一の病床を持ちながら、さらにどこまでも病院・病床を求めてしまうでしょう。

日本が、この容易には抜け出せないであろう「医療市場の失敗」から抜け出すには、まずは我々の「意識」から変えていかなければいけないのではないでしょうか。子どもたちに明るい未来を残すために今最も求められているもの、それは、私達の世代の「意識改革」なのかもしれません。

現役医師が、医学的・経済学的な見地から医療や地域の問題を鮮やかに描き出し、日本の明るい未来への処方箋を提示する希望の書。



https://www.m3.com/news/iryoishin/607515
シリーズ 大学医学部「地域枠」の今
地域医療の担い手養成は「社会の総力戦」 - 長崎大学◆Vol.3
教育予算と安定した組織づくりが不可欠

スペシャル企画 2018年6月28日 (木)配信橋本佳子(m3.com編集長)

――地域医療教育の充実に当たって、どんな点に苦労されたのでしょうか(地域医療教育の詳細は、『離島医療・保健実習、医学生全員が必修』を参照。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科地域医療学分野教授の前田隆浩氏と、長崎大学医学部地域包括ケア教育センター・センター長の永田康浩氏へのインタビュー。文中、敬称略)。

前田 教育に対する予算の確保と安定した組織作りです。地域医療教育を実施するには、当然ながら、地域に出なくてはいけません。医学生たちの交通費、宿泊費のほか、医学生を受け入れる側への謝金なども必要になります。大学の運営費交付金が減額される中で、これらアカデミックではない分野の予算を確保するのは結構大変です。

 また安定した組織作りですが、「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に地域医療教育を入れて、推進するのであれば、大学にも正規の講座を置くべきです。私が所属する長崎大学大学院医歯薬総合研究科地域医療学分野のように正規講座を持っている大学はまだ少ないのが現状。期限付きの寄附講座では不安定であり、そこに優秀な指導者を集めるのは難しいでしょう。

 一方で、地域における大学の拠点も必要です。大学ではなく、地域医療実践の場である拠点にドクターが常駐し、地域医療教育や地域医療のサポート、行政との連携に取り組まなければ、大学と地域との本格的な連携に至りません。長崎大学も、五島市に寄附講座を作らなかったら、成功していなかったと思うのです。私は今、大学の教授ですが、五島中央病院内に設けた、本学の「離島・へき地医療学講座」の教授も兼任し、毎週1回は五島での教育に従事しています。

――地域医療介護総合確保基金は、人材育成も対象にはなるはずですが。

永田 卒後の医師養成のための研修等の予算は、その見返りとして医師派遣に結び付くので受け入れられやすいが、卒前教育については適切性が理解されにくいのが現状です。教育の成果を何とか見えやすくするような、われわれの工夫も必要ですが、卒前から卒後にシームレスに育成する必要があるので「教育は、大学の役割」と切り捨てず、地域づくりの一環として支援いただきたい。

――では今後、医学部の「地域枠」はどのように運営していくべきかだとお考えですか。

前田 長崎大学の長崎県出身者を対象とした「地域枠」には、長崎県による修学資金貸与がある「地域枠B」(貸与期間の1.5倍の期間、県が指定する医療機関等に勤務すれば、返還免除)と、貸与がない「地域枠A」(義務年限は卒後3年)があります(その他、佐賀県枠と宮崎県枠あり)。

 「地域枠B」の2018年入試の枠は、15人ですが、3人しか合格しませんでした。合格基準は、「一般枠」と「地域枠」は同じなので、合格基準に達する学生が少なかったということです。「地域枠B」の入学枠の一部を、「地域枠A」に当てはめました。

 全国の医学部の「地域枠」の充足率は88%程度。長崎大学の場合は、90%を超え、全国平均よりも高く、「一般枠」と「地域枠」の学生の入学後の成績や医師国家試験の合格率には差がないものの、入試制度をどうするかが今後の一つの課題でしょう。

――「地域枠」か否かにかかわらず、地域医療に関心を持つ学生が増えれば、長崎県の医療に従事する医師の増加につながるという見方もできます。

永田 はい。最終的なゴールはそこではないでしょうか。質も確保でき、介護や福祉の視点もしっかりと持った教育を積み重ねていくことが必要です。そうすればたとえ特定の専門分野に特化した医師でも、地域における「生活モデル」の視点を持っているか否かで、その医師が担う医療の幅は異なってくるはずです。

前田 前提として考えなければいけないのは、義務年限で従事する「地域」とはどこか、ということ。長崎県に限らないことですが、自治体としては、自治体立病院を運営する立場から、義務年限のある医師は自治体立病院を中心に循環させます。一方で、大学は自らの関連病院への医師派遣が中心です。その結果、どうしても漏れてしまう地域、あるいは医療機関が出てきてしまいかねません。

 自治体や大学の思い、考えも分かります。一方で、仮に「地域枠」がなくなっても、地域医療を守るのがわれわれの使命なので、地域医療教育に力を入れていく必要があります。これらをうまく両立させることが必要です。地域医療の充実に伴う受益者は地域住民。地域医療教育に当たっては、大学、地域の関係者などが“総力戦”で取り組んでいく必要があると考えています。

地域医療実習を経験した医学生の声
●医学部1年生:病院見学実習
・地域病院と大学病院のような大病院が連携して、一人の患者のためにそれぞれの病院の特性を生かして協力していることが分かった。
・退院後、患者が希望する生活に近付けることが地域医療の使命であり、病院と患者だけでなく、ケアマネや家族など周囲の人々を巻き込んで医療は展開されていくと理解できた。

●医学部2年生:高齢者福祉施設見学実習
・今回、私たちは高齢者の方や統合失調症を持っている方と話をさせていただいたが、きちんと話を聞き、その姿勢を出すことで、相手により多く話してもらうことができた。これは、高齢者だけでなく、医師になった時、患者さんなどと関わる時においても大事なことであると思えた。

●医学部3年生:診療所見学実習
・医師の役割の一つは患者の生活を支えることなので、普段の会話の中から生活状況や今後のことについて考えるということを知り、医師の役割は病気を治すという点に集中してしまいがちなので、「生活を支える」という発想は新鮮だった。

●医学部4、5年生:臨床実習(地域包括支援センター、訪問看護ステーション、消防署)
・地域包括ケアは、医療者・専門職でやるものと思っていたが、「民生委員」や「スーパーの店員」までも巻き込んだケアをしていくことを知ることができた。今回の経験を臨床実習に生かしたい。
・今まで「医と社会」で学んできたことを実際の事例を通して考えることで、ケアマネジャー、訪問看護師などがどのような仕事をしてき、どのような時に必要とされるかを学べた。

●医学部5、6年生:高次臨床実習
・在宅医療とは、究極のオーダーメイド医療だと知りました。五感を総動員して患者さんの背景を知り、患者さんの希望に合わせて治療を行っていく。高齢社会において今後求められていく医療の形だと思いました。
・地域医療というと、慢性期疾患のイメージが付きつつありましたが、場合によっては緊急疾患の第一接触医療者として診なければいけないということを改めて知りました。



https://www.m3.com/news/iryoishin/612151
「地域密着型病院の整備がカギ」、相澤日病会長
第68回日病学会、「病棟」より「病院」単位での機能分化・連携を提唱

レポート 2018年6月28日 (木)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 第68回日本病院学会が6月28日に金沢市で開催され、日本病院会会長の相澤孝夫氏は、「社会環境の激変と医療制度改革の荒波を受ける病院の未来」をテーマに講演した。

 相澤氏は、人口の高齢化など急激な社会環境の変化とケアニーズの変化が進む中で、地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携が重要であるとし、これらを病棟単位ではなく、病院単位で進める必要性を強調した。希少なニーズには拠点ごとに充実した「基幹型病院」(広域型病院)を整備して対応、その周囲に日常的に頻度が高い疾患を診る複数の地域密着型病院(近隣型病院)がある構想を提示。「病院単位」を提唱するのは、入院医療と同様に、在宅医療でも複数の職種がチームで関わることから、「各職種が病棟業務の片手間でできるものではない」という理由からだ。「地域密着型病院をいかに整備していくかが、地域医療構想において極めて大事ではないか」(相澤氏)。

 「人口減は医療の担い手の減少」

 相澤氏はまず講演で、医療を取り巻く急速な変化として、人口構成、それに伴う医療ニーズの変化を挙げた。今後、75歳以上人口が増えていくものの、肺炎や骨折などの疾患も多く、「それほど重症ではなく、中等症や軽症の患者が多い。今後、若い人なみに入院日数が減少してきたら、入院受療率は減少する」と相澤氏は指摘し、医療ニーズの変化に対応した医療提供体制構築の必要性を強調した。「75歳以上の患者は、医療以外の要因で自宅等に帰れないことが多い。社会環境を整えれば、退院でき、さらに入院日数は減少する」(相澤氏)。

 一方で、今後の社会的な変化として、人口減少に伴う働き手の減少があると指摘。2040年には5人に1人が医療・介護に従事するとの政府推計もあることから、「医療提供体制はこれまで通りではだめ。同じ体制では綴られない」と相澤氏は警鐘を鳴らした。

 医療提供体制については現在、地域医療構想を策定し、その実現に向けて各地域で協議が進められている。相澤氏は、「今議論されているのは、病棟機能と病床数の話が中心。『構想』というのは本来、これからしようとする物事について、内容、希望、実現方法を考えて、骨組みをまとめるものであり、数値だけの議論ではうまくいかない」。

 「軽症急性期の扱いをどうするのか」

 さらに相澤氏は、2018年度診療報酬改定にも言及。同改定では「急性期一般入院基本料」と「地域一般入院基本料」など、入院料の体系が再編されたが、「(高齢者に多い)軽症急性期の扱いをどうするのか、どう評価するのか」と手薄な部分があると指摘した。

 地域医療構想や病床機能報告制度の考え方は病棟単位。地域包括ケア病棟も同様だ。これに対し、相澤氏は病院単位で機能分化を進め、「基幹型病院」(広域型病院)と地域密着型病院(近隣型病院)を地域の実情に合わせて整備していく必要性を指摘した。

 入院では医師、薬剤師、看護師、介護福祉士、リハビリスタッフ、管理栄養士、MSWなどさまざまな職種がかかわる。この「入院医療チーム」は、退院後は「在宅医療チーム」に引き継がれる。「病棟業務の片手間にできるものではない」ために、相澤氏は、病棟単位ではなく、病院単位で取り組む必要性を説いた。「地域密着型病院は介護の重症化予防や、地域・町づくり、予防・健診・健康増進などにも取り組む。この地域密着型病院をいかに整備していくかが、地域医療構想において極めて大事ではないか」。

 外来も同様で、広域型病院・専門病院と近隣型病院・診療所という機能分化を進める必要性を指摘。「大病院、中小病院という規模による区分はそろそろ卒業し、病院機能区分で考えていくことが必要」。

 相澤氏はさらに、病院マネジメントの重要性も指摘。病院組織では、「マネジメント力を専門力より軽視する傾向がある」「明らかなヒエラルキーが存在する組織」などと、病院組織と人材の特殊性を挙げ、「革新の時代を生きるために、「自立型(適応性の高い)組織」(組織マネジメント)と、「本物のプロ(個性・人間重視)」(人財マネジメント)が重要だとした。



https://www.m3.com/news/iryoishin/611354
シリーズ 日医代議員会
「医師確保に実効性持たせる第三者機関が必要」松本日医常任理事
第143回日医臨時代議員会、各県の「医療勤務環境支援センター」改組を

レポート 2018年6月25日 (月)配信大西裕康(m3.com編集部)

 日本医師会は、医師の勤務環境改善に向けて地域の医師確保策などの実効性を担保するため、全都道府県が直営か外部への委託で運営している「医療勤務環境改善支援センター」を中心に、医師の主体的運営に任せる第三者機関へ改組するよう厚生労働省に求めていく方針だ。6月24日の第143回日医臨時代議員会で、日医常任理事の松本吉郎氏が明らかにした。今年4月に日医主催で設置した「医師の働き方検討会議」で、具体化を進めている。

 愛知県代議員の大輪芳裕氏が、医師の勤務環境改善のためには社会保険労務士が中心の同センターの充実強化を図るのではなく、医師が自ら運営して医師確保の機能も有し、病院管理者や勤務医へ実効性のある相談支援を担う別組織に改組すべきと訴え、日医の見解を質問したのに答えた。

 松本常任理事は、同センターの取り組みが現時点では医師以外の医療従事者に対する内容がほとんどであるとの認識を改めて示した上で、「同センターには医師確保に関する権限はない」とも述べ、医療機関が医師を確保する仕組みにはなっていないと指摘。

 一方、期待できる効果が現状は看護師確保などによる間接的な効果のみではあっても、同センターの医師に関する取り組みは不可欠との認識も示し、「現行法令がある以上、内容を知って、法令趣旨を踏まえた改善に向けた努力が必要で、労務管理の専門家(として同センターに配置されている社労士など)に相談するのが第一歩」と求めた。「労基署の監督を受けた場合、センターを活用していること自体、努力として評価されるとも考えている」との認識も示し、同センターの活用を進めながら発展的な改組の具体化を考える姿勢を示した。

地域医療支援センターとの連携、予算確保で本領発揮へ

 今国会で成立する見通しの改正医療法で、同センターと地域医療支援センターの連携が義務付けられるほか、今年度の運営予算が昨年度比で2倍以上となっているなど、同センターの本領発揮は今年度以降との見方もにじませた。松本常任理事は、「同センターが勤務環境改善に十分取り組めていないのは、社労士が(地域の)院長と直接話せていないのが原因の一つとして挙がっている」と指摘した上で、当初は確保できた予算が少なく訪問支援ができなかったと説明し、今年度は「約5億円と前年度比2倍以上」と強調。来年度予算の概算要求に向けては、10億円を求めているとも明らかにした。

 社労士に関しては、全国社会保険労務士連合会が、医療に関する一定の知識を求める「医療労務コンサルタント制度」を2014年2月から始め、養成人数が累計5000人を突破している状況に言及。「その中から、センターに配置されている。国の働き方改革が始まる前から、医師の働き方改革について必要性を感じて取り組んでいただいてきた。貢献いただけると期待している」と述べた。



https://resemom.jp/article/2018/06/29/45372.html
医学部出身者の勤務地、地域格差あり…石川は7割が流出
リセマム  教育・受験 大学生   2018.6.29 Fri 12:45

都道府県別の医師流出入の推計(青系:流出、赤系:流入) 医療ガバナンス研究所
07015.jpg
http://mgri.sakura.ne.jp/files/20180602%20Medicine%20-OKADA.pdf

 各地域の医学部出身者のうち、石川県では68%が他県へ流出する一方、千葉県では245%が他県から流入しており、医師の勤務地選択に都道府県格差があることが、医療ガバナンス研究所が2018年6月4日に発表した研究結果より明らかになった。

 都道府県別の医師流出入の推計は、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」などの公開資料をもとに、都道府県別の医師養成数と実働医師数の差を死亡・退職者の推計値で補正したうえで、1995年から2014年の20年にわたる見かけ上の医師の移動割合を推計した。日本では医師はほぼ自由に勤務地を選択することができるが、今まで医学部卒業後、医師がどの地域で勤務しているのか、定量的に具体的な数字を出したデータはなかったという。

 医学部卒業後、医師が他県へ移動する「医師の流出」は、石川県が68%ともっとも多く、島根県、高知県、鳥取県、秋田県が続き、いずれも半数以上が流出していた。

 一方、「医師の流入」は千葉県が245%ともっとも多く、埼玉、静岡、兵庫、広島などが続き、大都市近郊でより人口密度の高い都道府県で流入が多かった。

 大都市では、東京都は13%が流出していたが、愛知県や大阪府、福岡県では、7.7%から22.8%の幅で流入していた。

 調査の結果、医師の流入している都道府県には人口あたりで医学部の入学枠が少なく、流出している都道府県には医学部の入学枠が多い傾向にあることがわかった。また、医師を流出させている都道府県では高齢化が進んでいる傾向にある。

 医療ガバナンス研究所は、「日本全国でみると、医師の都道府県間の移動が医師偏在に与える影響は大きく、今後の医療政策を考えるうえで重要な視点の一つとなる」と考察。「このような客観的なデータに基づき、医師偏在の対策を講じる必要がある」とコメントしている。
《工藤めぐみ》



  1. 2018/07/01(日) 10:04:17|
  2. 未分類
  3. | コメント:0
<<7月8日  | ホーム | Google Newsでみる医師不足 2018年6月30日>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する