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Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

4月8日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/596080
真価問われる専門医改革
減少続いた外科専門医数、「新専門医制度で回復傾向に」
日本外科学会定期学術集会、特別企画「サブスペシャル領域を見据えた新専門医制度のあり方」

2018年4月6日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 第118回日本外科学会定期学術集会の特別企画「サブスペシャルティ領域を見据えた新専門医制度のあり方」が4月5日、都内で開催され、同学会専門医制度委員会委員長で慶應義塾大学外科教授の北川雄光氏は、外科専攻医は2018年度805人であり、最近減少傾向にあったものの、「今回の新専門医制度で少し回復の傾向が見えてきた」と語った。外科研修を開始した医師数は、過去5年間は減少傾向にあり、2013年度832人、2014年度816人、2015年度787人、2016年度816人、2017年度740人だった。

 ただし、「外科専攻医の地域偏在はある」と認め、「今後取り組まなければいけない課題」であるとした。外科専攻医の募集定員は、204プログラムで計2044人。最終登録した専攻医は805人。大学病院のプログラムに集中することはなかったものの、204プログラムのうち、専攻医の応募がなかったのは44プログラムで、うち大学病院のプログラムが7プログラム。「専攻医3人以下」が8県で、うち2県は1人のみだった。

 外科専門医については、消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科、乳腺、内分泌外科の6領域が、日本専門医機構認定のサブスペシャルティとなる。北川氏は、「外科系専門医制度グランドデザイン」も提示。「外科専門医を取得した人が、6つのサブスペシャルティのいずれかを取得し、その上に主に技術的なものを中心として、高度の技能をリンクさせた3階部分の高次専門医を取得する。外科医がこの縦の方向に、努力して上っていけば、報われる構造を作らなければいけない」(北川氏)。外科系の症例データベースであるNCD(National Clinical Database)で各段階の必要専門医数を算出し、医療経済効果を勘案しながら、専門医へのインセンティブを設ける必要性も強調した。

 特別企画では、日本専門医機構理事長の吉村博邦氏が基調講演を担当。「サブスペシャルティについての検討は遅れている」と断りつつ、この4月中にはサブスペシャルティの新規認定基準を決定するなどの意向を示した。「基本領域学会の推薦がある」「日本専門医機構理事会の過半数の承認を得る」などの基準を想定しているという。

 吉村氏は、新専門医制度全般についても講演。3月15日現在での専攻医数は8394人(『「専攻医の東京一極集中」、増悪か否かで意見対立』を参照)。「こんなにも多くの若い先生方に、新専門医制度に参加してもらうことは、日本の医療レベルを向上させるという意味ではよかったと思っている」(吉村氏)。「大都市圏への医師偏在」を加速させないために、5都府県の専攻医の募集定員のシーリングを設けたとし、対象となった14基本領域全て「シーリング内に収まった」と説明した。吉村氏は、新専門医制度をプロフェッショナル・オートノミーで運営する重要性も強調。学会が主体的に運営することが基本であるとし、「国が出てくると厄介なことになる」とも述べ、学会と日本専門医機構が連携して統一的な制度を構築する必要性を強調した。

 特別企画では、6つのサブスペシャルティの代表者も講演。2016年度外科専門医試験合格者とその指導責任者を対象にした「外科専門医制度の改善に向けて日本における外科研修の現状に関する全国アンケート調査」の結果も報告された。

 外科系は初期から「3階部分」まで連続して研修

 北川氏は、「専門医制度のあるべきグランドデザイン構築と外科医の将来像」というテーマで講演。講演の冒頭で、「一時、新専門医制度から脱退するという話もあったが、新制度に建設的に参画する方向に舵を切ったのは、外科医が不利益を被らないようにするため」と説明。その背景要因として、(1)日本専門医機構認定の専門医は、公的な資格となる、(2)将来は診療報酬上の加算、インセンティブの獲得に必要となる可能性がある、(3)全基本領域一斉スタートに遅れることはできない――などを挙げた。

 「サブスペシャルティの乱立」と言われる中、外科系の6つのサブスペシャルティでは、重複していないと説明。NCDの活用で、初期臨床研修、外科の専門医研修、サブスペシャルティにわたり、症例登録が可能で、連続した研修が可能であるとした。さらに、日本外科学会では、2018年4月から、NCDと連動した「研修実績管理システム」を構築、指導医と専攻医の相互評価が可能で、学会等の実績も生涯にわたり登録できるという。

 外科の専門研修では、2年目以降、サブスペシャルティとの並行研修が可能なことが特徴。ただ、例えばサブスペシャルティの一つである消化器外科の場合、「3階部分」の専門医として内視鏡外科技術認定医、食道外科専門医、肝胆膵高度技能専門医があるが、内科系の消化器病専門医から内視鏡外科技術認定医を取得するルートはあり得ない。「このように3階部分がデザインされた時に、外科系のサブスペシャルティを通過することで、しっかりとしたキャリアパスを構築できるようにしていく」(北川氏)。それ以外にも、感染症、がん薬物療法などの横断的な専門医と、外科系の専門医は区別して考えていくことが必要だとした。

 最後に北川氏は、「外科専門医の未来のためになすべきこと」として、「地域偏在の問題も重要だが、それをなくすための道具ではない。研修、育成内容の質の向上が大事」と強調。その他、(1)外科医のキャリアパスと合致した明確な専門医制度グランドデザインを社会に向けて示す、(2)労働、安全環境の整備、(3)それぞれのステージで適正な専門医数を算定し、専門医の技能、労力を正当に評価する仕組みの構築――を課題として挙げた。

 「学会専門医の整理・標準化」「質の高い専門医養成」が目的

 吉村氏は、「改めて新専門医制度の目的を考えていただきたい」とし、日本専門医機構の設立目的として、(1)学会専門医が乱立し、各学会が個別に、専門医制度を制定している現状を、整理・標準化、(2)専門医を養成する仕組み(卒後の研修制度の確立)を構築し、質の高い専門医を育て、日本の医療レベルの向上――を挙げた。「医師偏在是正がミッションのように言われているが、医師偏在を悪化させないで、(1)と(2)を達成することが目的」(吉村氏)。

 日本専門医機構は、サブスペシャルティのうち、内科13領域、外科6領域については、既に認定済みで、内科研修と外科研修との連動研修が可能。それ以外の(1)基本領域から分化したサブスペシャルティ12領域、(2)区分未定の52領域(細分化した領域、技術・診断・治療・病名・症状等に関する領域)――がある。

 サブスペシャルティについて、吉村氏は、「基本領域のスタートを優先したので、検討は遅れている。早急に確定したいと考えている」と語った。内科と外科以外の領域で、基本領域が複数にまたがる場合などの調整に難しさがあるとした。「一つの領域について認定すると、なぜ私のところで認定しないのか、となる」と述べ、「当面は非常に限定的に認定していくことになっている」と説明。

 その上で、新規のサブスペシャルティの基準として、(1)基本領域学会の推薦がある(ただし、基本領域の推薦があるからと言って、必ずしも機構認定されるわけではない。他領域に関連する場合、関連領域の合意を得る)、(2)日本専門医機構理事会の過半数の承認を得る(あらかじめ機構の基本問題検討委員会等で審議)――などという基準を検討していると説明した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/596169
始動する“医療事故調”
医療事故調査制度、「センター調査は上級審」は誤解
日本外科学会定期学術集会、特別企画「外科医に求められる医療安全―医療事故調査制度開始2年を経て―」

2018年4月7日 (土)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 第118回日本外科学会定期学術集会が都内で開催され、4月6日の特別企画「外科医に求められる医療安全―医療事故調査制度開始2年を経て―」で、日本医療安全調査機構の総合調査委員会委員長を務める山王病院・山王メディカルセンター血管病センター・センター長の宮田哲郎氏は、医療事故調査制度の院内調査とセンター調査について、「誤解がある」と指摘した。「裁判と同じように、センター調査は、上級審に当たるのでは、という意見もあるが、決してそうではない。両者の結果が異なることもあるが、それぞれの調査が尊重され、相互の調査が相まって、今後の再発防止に役立っていく」と説明した。

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院内調査とセンター調査の考え方(提供:宮田氏)

 宮田氏の講演テーマは「センター調査の標準化の試み」。2015年10月にスタートした医療事故調査制度は、院内調査が基本だが、医療機関もしくは遺族が第三者による調査を希望した場合には、医療事故調査・支援センターである日本医療安全調査機構に、センター調査を依頼することが可能。院内調査は、自律的な取り組みであり、「自らの組織における医療の安全の問題点を見直し、さらに発展させる重要なプロセス」と説明。一方、センター調査は、「院内調査結果を引用に、その是非を問うのではなく、第三者としての専門的立場から、事故についての可能な範囲で事実確認や調査・分析・再発防止策を提言する」役割を担うとした。

 医療事故調査・支援センターの2017年年報によると、2016年と2017年の2年間の院内調査結果報告数は547件で、うちセンター調査依頼は58件(10.8%)。約8割が遺族側からの依頼で、「院内調査結果に納得できない」が主な理由。センター調査依頼時期は、「院内調査結果報告前」(33%)と「院内調査結果報告から1カ月未満」(33%)を合わせると、全体の約3分の2。「恐らく事故が発生した直後から、医療機関と患者側とのコミュニケーションが難しくなっている事例ではないかと考えている」(宮田氏)。58件中、34件が手術(分娩を含む)。

 宮田氏は、センター調査の進め方も説明。まずセンター調査の依頼があった時には、総合調整委員会(日本医師会、四病院団体協議会、全国医学部長病院長会議、各学会からの推薦、遺族代表、法律家、有識者の18人で構成)で調査の方向性を検討、その後に事例ごとに設置する個別調査部会(専門学会から推薦された委員で構成)で検討する。個別調査部会から報告書案が提出され、総合調査委員会とやり取りをしながら、最終的にセンター調査報告書をまとめる。「総合調査委員会と個別調査部会は、対等な立場で一緒に報告書を作り上げる。個別調査部会は、医学的、専門的な立場からまとめる。総合調査委員会は、センター調査報告書として一定の基準(マニュアル)に則っているかを確認したり、院内調査と結論が異なる場合はその点を丁寧に説明しているか、理解されやすい文章になっているかなどをチェックする」(宮田氏)。

 2018年2月までにセンター調査依頼は62件で、センター調査結果報告は4件。「センター調査の課題と対策」として、宮田氏は、(1)センター調査報告書の標準化、(2)センター調査と院内調査の結果の差異、(3)センター調査報告書交付までの時間、(4)患者・遺族に寄り添った対話推進――を挙げた。

 (1)に挙げた標準化を目指し、マニュアル作成と改訂、調査支援員のトレーニングに取り組んでいる。(2)について、宮田氏は、「センター調査と院内調査の結果が異なる場合、医療機関と遺族の関係を悪化させるのではないか、という指摘もある。しかし、センター調査は、院内調査の結果や、解剖結果など後から分かる情報を踏まえて実施する。両者の差異は、センター調査で検討した内容や根拠を丁寧に説明することで、解決できるのではないか」と述べた。(3)の時間短縮のため、分担執筆していた調査報告書の執筆者を絞るなどの工夫をしているという。

 さらに、宮田氏は、センター調査の目的の一つに、「診療担当者と遺族の相互理解を促進させること」があるものの、「院内調査あるいはセンター調査の結果が出たとしても、身内が突然なくなった場合、遺族は事実を『理解』できるかもしれないが、『納得』はできないと思う。あるのは一つの『区切り』だろう。区切りを付けるためには、十分なコミュニケーションが必要」と説明。「センター調査は当該医療機関と遺族に郵送するだけなので、今後の制度運営を考えるに当たって、患者・遺族に寄り添った対話推進者の必要性も考えていかなければいけないのではないか」(宮田氏)。

 特別企画に登壇したのは、宮田氏を含め、計5人。日本医療機能評価機構常務理事の木村壮介氏、日本医療機能評価機構理事の後信氏、奈良県総合医療センター総長の上田裕一氏、読売新聞医療部の高梨ゆき子氏だ。

 木村氏は、医療事故調査制度の2年強の現況を紹介(『第三者機関への調査依頼、院内調査終了の1割』を参照)。同制度の課題と今後の展望として、「自ら考えて調査するこの制度をぜひとも発展させていきたい。外部からの規制がある制度では、十分に発展していかないと思う」と述べ、制度に伴う医療者の責務として、「医療者側から調査し、結果の説明をする。情報を共有し、次の再発を防ぐ」ことなどが求められるとした。

 後氏は、日本医療機能評価機構が行う医療事故情報収集等事業と、医療事故調査制度は相互補完的に機能すると説明。医療事故情報収集等事業は、「医療事故、ヒヤリ・ハットの全て」を対象とするが、医療機関からの報告は詳細なものも可能だが、「簡単~中程度」の報告が基本。患者・家族へのフィードバックはない。一方、医療事故調査制度は、「医療に起因し、予期しなかった死亡・死産のみ」が対象だが、医療機関の調査は「簡単~中程度~詳細」であり、患者・家族へのフィードバックがあるとした。

 上田氏は、群馬大学腹腔鏡死亡事故の外部調査委員会の委員長を務めた(『“名大事件”が群大事故調査の手本 - 上田裕一・群大“事故調”委員長に聞く』を参照)。医療事故調査制度が対象とする医療事故ではなく、「広義」の医療事故には、(1)不可抗力による事故、(2)明白な過誤による事故、(3)現在の医療水準から見てはるかに低い水準の医療が行われたことに伴う事故――があると説明した。(3)では、現在の医療水準とその許容限界が問題になるが、医療水準の把握・評価には難しさが伴う。英国ではデータベースを活用して、施設別、医師別の術後90日以内の死亡率データなどが把握できる仕組みになっていると紹介。日本心臓血管外科データベース機構のデータベースでも、リスク調整した死亡率で手術の質を評価することが可能だという。過失の有無にかかわらず、診療中に生じた「望ましくない結果」は、常に一定の基準をもって、M&Mカンファレンスや委員会などで調査し、その経験が蓄積されるべきだと強調した。

 高梨氏は、「医療事故の取材から見えてきた課題」というテーマで、群馬大学腹腔鏡死亡事故や千葉県がんセンター、千葉市立海浜病院などの医療事故取材から、医療者と患者の認識の相違や情報不足が不信感につながるとコメント。海浜病院については、事故調査報告書の「おわりに」から、「リスクの高い医療は、その医療が患者に本当に有益であるか、そして患者が幸せになれるかどうかを真剣に考えて、真実を患者に話して、患者の納得のもと、提供しなければならない」という記述を引用。「再認識した重要なこと」として、(1)患者と医療者の情報共有、(2)判断の基軸は「患者のため」、(3)客観的で公正な事故調査――を挙げた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/595751
「現場から過度に医療費が伸びない提案を」横倉・日医会長
専門医機構に対し「公正性、公平性、透明性の担保を」

2018年4月5日 (木) 高橋直純(m3.com編集部)

 日本医師会の横倉義武会長は4月4日の定例記者会見で、新年度の所感として、6月にも公表される「骨太の方針2018」に社会保障関連の数値目標が作られるかについて「政府は数字を出してくると思うが、必要な医療費はしっかり確保する必要がある。持続可能な国民皆保険をどう作り上げていくか皆で知恵を出さなくてはいけない。そのためには現場から、過度に医療費が伸びない提案をしていく」と強調した。

 混乱が続く専門医養成の在り方では、「新たな専門医の仕組みは質の向上と標準化という目的に加え、医師の地域偏在を助長することがないように地域医療に配慮したものであることが求められる。この異なる2つの目的を一体的に実行することが日本専門医機構の責務であると認識されているところである。中立的な第三者機関として機構の運営に当たっては公正性、公平性、透明性が担保されなくてはならない。速やかな情報公開とともに適切なものになるよう日医としてもさらにに支援をしていく」とした上で、2019年度の専攻医登録に向けて早急に対応策を検討することを要望した。

 2018年度改定については、「地域包括ケアシステムの構築に向けて、きめ細やかな配慮がされた」と評価した。入院医療の評価体系の再編については、「基本的な診療に関わる評価と診療実績に応じた段階的な評価を組み合わせた評価体系に再編統合する方向となったことは、地域の医療ニーズと資源投入のバランスを取る上で好ましいと考える」と指摘。一方で、「改定の度に変わると医療現場は混乱し、『慣れたら次の改定になる』の繰り返しである。今回は評価体系をどのように判断するかはある程度の時間がかかると思われるが、中長期的な改定がなされたと認識している」として頻繁な改定は望ましくないとの認識を示した。

 新設されたオンライン診療料については「あくまで対面診断の補完。あくまで最終的な責任を取るのはわれわれ医師であり、オンライン診療は対面診療に取って代わるものではない。中医協の審議やガイドラインを踏まえて今後、適切な運用がされていくだろう」と述べた。

 検討が進む「医師の働き方改革」については「医師自らがその働き方を考え、変えていく時期に来ている」と強調。「この議論の要諦は地域医療の継続と医師の健康への配慮をいかに両立させるかとし、「会内の『医師の働き方検討委員会』で鋭意検討を行ってきたが、勤務の特殊性に鑑み現行の労働基準法に当てはめるのが適切かどうかも含めて検討することが必要ではないかという提言をいただいている」と説明した。

 医療機関の健康経営が重要として、「医療機関には全国300万人以上が従事している。医療従事者自らが未来投資戦略に基づく日本健康会議による健康経営を意識し、健康増進に率先して努める取り組みを進めていくことも重要だ」と指摘した。

 「かかりつけ医のための適正処方の手引き」について、高血圧、脂質異常症、糖尿病、認知症の4疾病についても発刊する予定であることを報告した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/595638
医療事故で刑事事件化、「軽率性」「未熟性」の傾向
厚労省検討会、過去事例を分析、2018年度も検討継続

2018年4月4日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省の委託事業である「医療行為と刑事責任に関する研究会」は、2017年度に計6回の会議を開き、収集した約430の医療事故事例の半数を分析した結果、医療行為が刑事事件化する事例は、「軽率性」あるいは「未熟性」に類型化できる傾向があるとの認識に至った。

 ただし、「軽率性」と「未熟性」の定義を明確にした分析ではないため、刑事事件化して有罪になったうち、何割が「軽率性」あるいは「未熟性」に該当するかなど、定量的な分析には至っていない。あくまでいずれか、もしくは両方の類型に当てはまる傾向があるという認識だ。

 研究会の座長は、樋口範雄・武蔵野大学法学部教授が務め、医師、法学者、元検察官や元裁判官など、計10人で構成(『「医療行為と刑事責任に関する研究会」、厚労省初会合』を参照)。2018年度も同じメンバーで継続して議論を重ねる。厚労省医政局医事課によると、中間的な取りまとめを行うか否か、最終的な報告書の体裁や内容などは、現時点では未定。「まず残る半分の事例の分析を行い、その結果、どんな結論が導き出せるか次第で、その次にやることが変わってくる。事例収集の結果、刑事事件化する医療行為の件数は、最近減ってきていることは分かってきた。この辺りの推移を含めて、可能な限り、議論の結果を取りまとめて共有したいと思っている」(同課)。

 1999年以降、約20年分の起訴事例を検討

 本研究会は、自民党の「医療事故調査制度の見直し等に関するワーキングチーム」(WT)が、2016年6月に「医療事故調査制度等に関する見直しについて」を取りまとめたのがきっかけ。2015年10月にスタートした医療事故調査制度は、法施行から2年に当たる2016年6月に見直すことが求められていたことから、同WTは議論を重ねた。取りまとめでは、医師法21条と「医療行為と刑事責任」の在り方について検討するよう求めていた。前者については自民党内で議論、後者についての検討の場が、本研究会となった。

 まず医療事故の事例として、(1)1999年以降、医療行為がきっかけで医師または看護師が起訴された約280事例、(2)「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」(日本医療安全調査機構が、2014年10月の医療事故調査制度開始前に実施していた事業)の対象となった約150事例――を収集した。(1)については、主に法務省を通じて資料を得た。1999年以降に刑事事件化した医療事故事例をほぼ網羅しているという。一方、(2)は、大半は刑事事件化していないといい、(1)との比較対象として用いた。2017年度には、これらの約半数を分析した。

 収集した事例について、刑事事件で有罪、あるいは無罪と判断する際に、どんな因子が考慮されているかを分析した結果、浮かび上がったのが、「未熟性」あるいは「軽率性」だった。「悪質性もあったが、これは当然有罪になるので、考慮しても仕方がないと判断した。未熟性か、軽率性かを明確に切り分けられるかは別として、そうした要素を持っている事案が多かった。中には、両者が合わさったものもある」(厚労省医政局医事課)。

 「未熟性」あるいは「軽率性」については、まずは刑事事件化する傾向を把握するのが目的であり、客観的な定義を定めず、主観的に切り分けをした。厚労省医政局医事課によると、「未熟性」には、診断が正しくできなかったりするなど、医師等としての能力が影響しているケース、「軽率性」には、患者の取り違えなどの事例が、それぞれ該当するという。個人的な技量の問題が原因の場合もあれば、医療機関の運営管理面に問題がある場合もあり、「両者の切り分けが必要」などの意見はあったという。

 モデル事業の事例の中でも、「未熟性」あるいは「軽率性」に該当するものが含まれるが、刑事事件化して有罪になったものよりは、その程度が低い傾向にあるという。ただ仮に同程度の「未熟性」の事例であっても、遺族が刑事事件化を望まず、告訴等をしないケースも想定される。「その点は、議論になった。有罪になるラインを超えた事例が全て刑事事件化し、有罪となったわけではない。それが分かれば、一つのメッセージになるだろう。法曹界に対してはどんな事例が刑事事件化するのかについての理解、医療界に対しては配慮してもらいたい点についての理解になれば、双方にとって意味のあることだと思う」(厚労省医政局医事課)。

 前述のように、「未熟性」と「軽率性」の考え方等を明らかにした報告書をまとめるかどうかは未定であり、慎重に検討するという。仮に曖昧なまま、考え方等を明らかにすれば、該当事例が刑事事件化しやすくなるなど、医療界に悪影響を及ぼす懸念もある。



https://www.m3.com/news/iryoishin/594876
自民「医師の働き方改革PT」、診療報酬の課題も議論
全日病臨時総会で羽生田座長あいさつ、「36協定締結なら加算を」

2018年4月1日 (日) 橋本佳子(m3.com編集長)

 自民党厚生労働部会「医師の働き⽅改⾰に関するプロジェクトチーム(PT)」の座長を務める参議院議員の羽生田俊氏は、3月31日に開催された全日本病院協会の第6回臨時総会の来賓あいさつで、今までの医師の働き方改革で最も効果があったのは診療報酬の「医師事務作業補助体制加算」であるとし、「診療所も含め、36協定を結んでいるところは全て算定できるように、厚生労働省に要望している」と説明。

 労働基準監督署の是正勧告の中で、時間外手当の未払いが指摘される病院がある中、「限られた診療報酬の中で運営している病院としては、時間外手当を全て支払うには原資が足りない。医師の働き⽅改⾰に関するPTでは、(厚労省の)保険局にまで物を言えるところまで、結論を導いていきたい」と語り、医師の働き方改革では、診療報酬での対応も重要課題になるとの認識を示した。

 他に来賓のあいさつした二人も、医師の働き方改革を今の医療界の重要課題として取り上げた。参議院議員の自見はなこ氏は、厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」の取りまとめに反映させるためには、「医師の働き⽅改⾰に関するPTでは、ヒアリングなどを重ね、今年の12月くらいには、おおよその方向性を出していくことになる」とのスケジュール感を語った。「地域医療そのものにかかわる問題なので、しっかり取り組んでいく」。

 日本医師会会長の横倉義武氏の代理であいさつした、日医常任理事の鈴木邦彦氏は、近く日医の働き方検討委員会の答申を公表すると説明。医療界の意見集約を目指して、「医師の働き改革検討会議」を近く設置する予定であることも紹介し、鈴木氏は「同答申などを基に、医療機関経営者や勤務医を交え、医療界が考える具体的な医師の働き方改革案としてまとめ、各方面に提言していく」と語った。

 「各職種ができる範囲でやらなければ、ワークシェアできず」

 羽生田氏は、「医師の働き方改革は、今の医療費の倍を出すつも
りでやれば、すぐに解決する話だ。医師数は今の1.5倍から、2.0倍は必要。しかし、それはできず、いかに今の人数で、勤務医の給与を減らさず、かつ経営者としては出費を増やさず、医師の勤務時間を短縮していくかが非常に大切」とコメント。

 医師の働き⽅改⾰に関するPTは、3月30日に役員会を開催した。他の職種に対するワークシェアリングが議論になったと紹介。「看護師ができるはずの予防接種や採血を実施していないケースが多いという意見があった。各職種が自分のできる範囲について、きちんとやってくれなければワークシェアリングにはならない。今後のヒアリングで、日本看護協会などには、要望という形で出していかなければならないだろう」。

 「医師事務作業補助体制加算」については、算定のハードルが高いとし、「病院でも、十数パーセントは36協定を結んでいないところがあるという。36協定を結んだところは、診療所も含め、全て算定できるようにしていきたい」と述べた。労基署の立ち入り調査については、「公立病院を中心に入っており、億単位の時間外手当を支払わなければいけないことも起きている。当然、民間病院にも入ってくるだろう。そうなる前に何とか考えていかなければいけない」とし、「限られた診療報酬の中で運営している病院としては、時間外手当を全て支払うには原資が足りない。その点を何とかしなければいけない。このPTの検討会で、保険局にまでいろいろ言えるところまで、結論を導いていきたい」と語った。

 「一番関心が高いのは、消費税問題」

 自見氏は、医師の働き方改革のほか、さまざまな政策課題に言及。中でも「一番関心が高いのは消費税の問題だろう」と語り、「今夏を目途に、厚労省が省内で税制要望まとめ、その後、財務省に提出、交渉していくことになる。その提出前が一つの山場になってくるだろう」とした。消費税問題については、この3月から厚労省での議論もスタートした(『消費税分科会、2年ぶりに開催、薬価・材料調査の実施了承』を参照)。「消費税法の改正すら入ってくるのか、否かを検討していく必要がある。民間と公的の医療機関との間に、不公平感が正直なところある。そこをいかに解決するかも課題」であるとし、日医、厚労省、財務省とも連携を取りながら、取り組んでいくとした。

 自民党内では、外国人観光客への医療に関するプロジェクトチームが発足したことも説明。医療費の未払い問題や医療提供体制などについて議論し、6月に政府がまとめる予定の成長戦略に反映させるために、ゴールデンウイーク前には提言をまとめる予定だという。

 その他、「女性医療職エンパワメント推進議員連盟」(『「女性医療職エンパワメント推進議員連盟」、加藤厚労相に決議文』を参照)の事務局長を務める立場から、2018年度診療報酬改定では、「総合入院体制加算」算定に必要な「医療従事者の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」に盛り込むべき項目候補の一つに、「院内保育所の設置(夜間帯の保育や病児保育の実施が含まれることが望ましい)」が加わったことを紹介。

 今通常国会に提出された医師法・医療法改正案は、地域医療対策協議会への都道府県の影響⼒を弱めたほか、民間医療機関の管理者を入れるなど、厚労省の当初案から変更になったと説明し、「地域医療は公的医療機関のみで支えるものではない」と民間病院への期待を込めた。



https://www.m3.com/news/general/596044
県立3病院:引当金大幅に不足 未収診療費 包括外部監査で指摘 /香川
2018年4月6日 (金) 毎日新聞

 県立3病院の未収診療費について、県の包括外部監査人を務める公認会計士が民間並みの会計基準に基づいて精査・試算したところ、回収できない恐れのある債権に応じて計上すべき貸し倒れ引当金が大きく不足していることが5日、分かった。債務者が破産したのに引当金を計上していない例もあり、試算額は県計上額の24~9倍に達した。【植松晃一】

 浜田恵造知事に提出された2017年度の包括外部監査結果報告書で指摘を受けた。

 県県立病院課によると、15年度までに実施した診察による未収診療費(予算ベース)は総額約8952万円(中央約7253万円、丸亀約267万円、白鳥約1432万円)。県は過去3年に債権放棄するなど欠損とした平均実績の4・1%にあたる約366万円(中央約297万円、丸亀11万円、白鳥約58万円)を貸し倒れ引当金に計上した。

 ところが、数年前から未収となっている分のほか、債務者が破産していたり、行方不明になって連絡がつかなかったりするケースも一律で扱っていた。このため、包括外部監査人が回収できない恐れが特に強い債権について、未収発生からの経過年数も考慮しつつ、債務者の破産や住所不明(行方不明)といった場合は全額、その他は半額のルールで試算。全体で計上すべき貸し倒れ引当金は、約4242万円(中央約3444万円、丸亀約268万円、白鳥約530万円)に達した。

 県は新年度予算でも、従来と同水準の貸し倒れ引当金しか計上していない。包括外部監査人の指摘に対し、県県立病院課は「貸し倒れ引当金をどの程度積むかという課題について検討していきたい」と話している。



https://www.m3.com/news/general/596022
地域医療維持へ広島大が医師派遣
2018年4月6日 (金) 中国新聞

 尾道市の島しょ部などの医療を支える因島総合病院(因島土生町)に今月、広島大からの非常勤医師が赴任した。同病院は岡山大の関連病院で、約100年の歴史で同大関連ではない医師が派遣されるのは珍しい。リウマチ治療などの充実を目指す。
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https://www.m3.com/news/general/595816
陸前高田・広田診療所に待望の常勤医 岩井医師が着任
2018年4月5日 (木) 岩手日報

 常勤医師が不在となっていた陸前高田市広田町の国保広田診療所所長に岩井直路(なおみち)医師(62)が就任し、4日に診療を始めた。千葉県松戸市の東松戸病院長を務めた岩井医師は「被災地のために仕事がしたかった。人情味あふれる地域で市民と一緒に歩みたい」と意欲。市民は温和な雰囲気の医師着任を喜んだ。

 「岩井です、これからよろしくお願いします」。診療前に笑顔で患者にあいさつすると、患者に気を配って自身の椅子と患者用の椅子を交換。落ち着いた口調で診察に臨んだ。

 受診した同市広田町の菅野ヨウ子さん(84)は「とても優しい印象。常勤医がいてくれると安心して生活できる」と感謝した。



https://www.m3.com/news/general/595787
秋田県内勤務医15%、過労死ライン超 24時間以上拘束は半数
2018年4月5日 (木) 秋田魁新報

 秋田県内の病院で時間外労働をした勤務医のうち15%が、月80時間の「過労死ライン」を超えていたことが、県医師会の調査で分かった。全体のほぼ半数は、勤務日の最長拘束時間が24時間以上だったと回答。医師の長時間労働が社会問題となる中、県内でも勤務医が厳しい労働環境に置かれている実態が浮かび上がった。

 調査は昨年10~11月、勤務医の労働実態を把握するため、県内の全69病院の勤務医1580人を対象に実施。56・2%に当たる888人が回答した。

 法定労働時間は1日8時間、週40時間だが、労使協定(三六協定)を結び、労働基準監督署に届け出れば時間外労働ができる。調査で昨年9月に「時間外労働をした」と回答した勤務医は91・4%で、「していない」が7・6%、「分からない」が1・0%だった。

 時間外労働をした医師に時間を尋ねたところ、80時間以上と答えたのは15%で、このうち8・1%は「100時間以上」だった。割合が最も高かったのは「20時間以上40時間未満」で26・6%。平均は40・3時間だった。

 時間外労働の理由(複数回答)は「緊急対応」が最多で、「病棟業務」「記録・報告書作成や書類の整理」と続いた。

 昨年9月のある勤務日の最長拘束時間は「24時間超~36時間以下」が41・6%、「36時間超」が10・3%と24時間以上が5割を超えていた。宿直翌日は75・7%が通常勤務をしていると回答。多くの医師が宿直を挟んで連続勤務を余儀なくされている状況がうかがえる。

 就労時間に対する負担感は「かなり過重」「少し過重」が合わせて53・1%で、「ちょうどよい」の37・1%を上回った。負担感は時間外労働時間と相関が見られた。

 医師には診療の求めを原則拒めない「応召義務」があり、長時間労働の背景には医師不足のほか、宿直やオンコール(院外待機)があるとみられる。政府の働き方改革に伴う残業規制は、医師への適用が5年間猶予される予定で、県内各病院は医師の負担軽減に向けた取り組みをどう進めるかが課題となる。

 県医師会は今回の調査結果を踏まえ、「医師の望ましい働き方について」と題した提言をまとめ、厚生労働省に送った。「医師の働き方を考慮せずに時間外労働規制が行われれば、患者サービスの低下は避けられず、医療崩壊につながる可能性がある」と訴え、裁量労働制に準じた医師独自の制度創設を求めた。

 県医師会の小玉弘之会長は「働き方改革を進めるには、県内の医療提供体制をどうすべきかについても議論していく必要がある」と話している。



https://www.m3.com/news/general/595103
東郷病院受け入れ再開へ 入院、救急体制を確保
2018年4月2日 (月) 宮崎日日新聞

 日向市は2日から、医師不足により医療体制を縮小していた市立東郷病院(佐藤大亮(だいすけ)院長)の入院、救急診療を再開させる。2年8カ月ぶりに元の医療体制が整う。

 同病院は2015年に医師の退職が相次ぎ常勤医1人となったため、入院、救急患者の受け入れを休止した。市は医師確保に奔走し、昨年5月には休止前と同じ常勤医3人体制に。入院、救急診療再開に向け、宿直医や看護師の確保、入院病床の給食業務委託などの準備を進めてきた。市議会3月定例会に病床再開を見込んだ18年度病院事業会計補正予算を提案し、可決されていた。

 病床数は休止前と同じ30床。常勤医3人に加え、非常勤医4人が交代勤務する。外来診療は外科、整形外科を専門とする常勤医3人が総合診療に当たる。医師の入れ替わりにより、小児科はなくなる。宮崎大医学部の非常勤医による毎週水曜の整形外科は継続される。

 十屋幸平市長は「東郷病院は地域医療を担う重要な医療機関。今後も医師確保に努め、地域に必要とされる病院として役割を果たしていく」とコメントした。



https://www.m3.com/news/general/594965
不安定な任期制、一因か 若手研究者に大きな重圧 防げなかったiPS研究不正
2018年4月2日 (月) 共同通信社

 論文著者の助教が懲戒解雇となり、監督者として山中伸弥(やまなか・しんや)所長も処分を受けた京都大iPS細胞研究所の捏造(ねつぞう)問題は、実験ノートの保管などの対策を取っていたにもかかわらず防げなかった。科学研究を巡る不正は京都大以外でも相次いでおり、背景には任期制という不安定な立場で採用された若手研究者が、短期間に成果を出すよう強いられている問題があると指摘されている。

 ▽ノート検査

 著者の山水康平(やまみず・こうへい)元特定拠点助教は昨年、米科学誌に血中の薬物や有害物質が脳に入るのを防ぐ「血液脳関門」の機能を持つ構造体を、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って作ったと発表。アルツハイマー病の治療にも将来役立つ可能性があるとしていた。

 だが京都大内部の指摘で、数値の書き換えがありグラフが再現できないことや、補足図5点に不正があると判明。論文は撤回された。

 不正を防止し、知的財産管理を徹底するため、研究所は2010年の開所以来、研究者に専用の実験ノートを配布。3カ月に1度、ノートを提出させ、論文掲載が決まったら実験データ自体も提出させていた。全国的にも先進的な取り組みだったが、結果的には不正を見抜けなかった。

 山中氏は不正が発覚した1月22日の会見で、この制度が「一部で形骸化していた」と認めた。ノートの内容まで確認できておらず、未提出者の管理も不十分だった。

 ▽国策研究

 研究不正は国内各地で相次いでおり、14年に起きた理化学研究所のSTAP細胞問題をはじめ、東京大でも12年と17年に明らかとなった。若手研究者が不正に手を染めるケースも目立つ。

 京都大によると、山水氏は調査に対し「論文の見栄えを良くしたかった」と話したという。だが若手研究者の現状に詳しい榎木英介(えのき・えいすけ)・近畿大講師は、短期間に大きな成果を求められる任期制の雇用体制を一因に挙げる。山水氏の任期は今年3月までだった。

 iPS細胞特有の事情もあるとみられる。山中氏のノーベル賞受賞で注目度が高く、国はiPS細胞研究を成長戦略の柱の一つとして10年間で1100億円もの予算を投入。再生医療などでの実用化が目標とされ、高い成果を求められる。山中氏の「(所内の研究者は)全員任期があるし、研究費も競争的資金で行っている。プレッシャーのもと、毎日努力している」という言葉は重い。

 ▽広い視野を

 京都大は再発防止策として、実験ノートや論文データの提出を厳格化し、倫理教育の徹底を図るとした。山中氏は「所長として事態を未然に防げなかった責任を痛感し、自主的に当面の給与相当額を寄付する」とのコメントを発表した。

 一方、榎木氏は、若手研究者が教授などの少ないポストを奪い合う現状を問題視する。「海外では大学の研究者として成功しなくても、企業に就職したり教育者になったりして活躍する場がある。日本は終身雇用制度が根強く、研究者以外の道を目指しにくい。広い視野で対策を考えなければならない」



https://www.m3.com/news/general/594886
臨床研究法:きょう施行 「薬とカネ」適正化に期待 企業に情報公開義務化
2018年4月1日 (日) 毎日新聞

 資金提供した製薬企業の医薬品を使った臨床研究などについて、不正を防止するための臨床研究法が1日、施行された。研究者側にデータの点検を義務付ける一方、製薬企業は資金提供に関する情報を公開しなければならない。製薬企業と大学との「薬とカネ」を巡る不祥事が相次いだ臨床研究の適正化が期待される。

 同法は、医薬品などの臨床研究のうち、製薬企業から提供を受けた資金や、未承認や適応外の薬などを使って行うものを「特定臨床研究」と規定。研究者に対し、データを操作するなど不正が行われないようモニタリングや監査を義務付けた。大学など研究機関に設置した専門家らによる「認定臨床研究審査委員会」に研究計画を提出し、モニタリング方法などが適正か審査を受けなければならない。データは5年間の保存を義務付けた。

 製薬企業などには、特定臨床研究を行う研究者側に提供した資金に関する情報の公開を義務化。内容は▽研究資金▽寄付金▽原稿執筆料や講師謝金――など。毎年度公表し、期間は5年と定めた。違反すると国が企業に勧告し、従わないと企業名が公表される。

 研究に参加した患者が予期せず死亡したり、障害が発生したりするなど重篤な症状が出た場合、国への報告も義務付けた。国による研究の中止命令に違反した研究者には、懲役3年以下、罰金300万円以下の罰則が科せられる。

 医薬品の臨床研究を巡っては、製薬大手ノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)を使った臨床研究でデータ改ざんなどが相次いで発覚。不正防止のため同法が2017年4月に成立した。【河内敏康】



http://www.sakigake.jp/news/article/20180330AK0011/
社説:地方の医師不足 1県では解消策に限界
2018年3月30日 秋田魁新聞

 「いま、岩手の、そして日本の地域医療は崩壊の危機にさらされています」。こんな内容の岩手県の意見広告が今月、週刊誌などに掲載された。医師不足と医師偏在の解消が急務とし、(仮称)の制定を提言している。

 医師不足は岩手にとどまらず地方共通の課題で、各県が懸命に医師確保に取り組んでいる。本県なら医学生向けの奨学金を設け、医師として県内に一定期間勤務することで返還を免除するといった対策を講じている。

 岩手県医療政策室は「医師不足に対応するのに、1県の取り組みでは限界がある。国と地方が協力し、国全体の問題として考える必要がある」と指摘する。同県が策定した基本法草案は、医師の計画的養成や偏りのない配置を実現するため、国や地方公共団体の責務を定めた。

 人口10万人当たりの医師数(2016年)を見ると、岩手県は207・5人で全国平均251・7人を大きく下回る。特に東日本大震災で被災した沿岸部で医師不足が深刻という。医師数は1位の京都府が334・9人、2位徳島県が333・3人など西高東低で、都道府県間で大きな差が生じている。

 本県は236・0人で岩手より多いが、全国平均には届かない。さらに、県内八つの2次医療圏(主に郡市単位)別に見ると、秋田周辺が311・2人と突出する一方、北秋田は106・0人、湯沢雄勝124・9人、大館鹿角156・5人と地域による偏りが大きい。医師不足には、県全体の医師の不足と、県内地域間の偏り(偏在)という二つの問題がある。

 新卒医師が幅広い診療技術を学ぶため国が04年度に導入した臨床研修制度が、地方の医師不足に拍車をかけた。研修先が都市部の病院などに集中し、県内に残る新人医師が減少。秋田大学の医局が担う医師派遣機能も大きく低下した。その後、同大医学部の入学定員増や、知事が指定する医療機関など一定期間の県内勤務を義務付ける「地域枠」が設定されるなどした。

 まだ時間はかかるが、知事が指定する施設に勤務する医師は4、5年後に100人規模になる見込みという。県医師確保対策室は「医師不足が深刻な地域で、対策の成果をある程度実感してもらえると思う」と話す。

 だが、4月にスタートする専門医養成制度が新たな懸念材料になっている。医師の希望する研修先が大都市に集中しており、地方の医師確保の努力を打ち消しかねないためだ。医療の質の向上は重要で制度の意義は理解できるが、そこに地方に配慮した仕組みを組み込むことが求められる。

 国全体の制度との兼ね合いで1県にできる対策には限りがある。県は岩手県などと連携し、地方の言い分をしっかり主張してほしい。国と地方が同じ方向を向き、より強力に医師不足の解消を目指す必要がある。



http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/312662
新専門医制度で医師不足解消なるか
福井は専攻医採用に苦戦

2018年4月2日 午前10時43分 福井新聞

 4月からスタートした新専門医制度で、従来の後期研修医に当たる専攻医の登録がまとまり、福井県内の医療機関の採用は計39人となった。特に専攻医の大部分が希望する研修先を決めた1次登録の採用は計33人にとどまり、人口10万人当たりで「全国30位台半ば」(県地域医療課)と苦戦した。研修を受けながら現場で診療に当たる専攻医は、将来的な医師確保につながるとみられ、県は新制度の影響を注視している。

 新制度は、医師国家試験に合格し免許取得後に、国が義務付けている2年間の初期臨床研修を終えた人が対象。専攻医として研修プログラムの基幹施設に採用され、連携する複数の医療機関も回りながら専門領域の知識や技術を学ぶ。これまで各学会が独自に認定していた専門医を、第三者機関の「日本専門医機構」が統一的な基準で認定する。

 福井県内では福井大医学部附属病院、県立病院、県済生会病院、福井赤十字病院、福井総合病院、市立敦賀病院、杉田玄白記念公立小浜病院、国立病院機構あわら病院の8病院が基幹施設に選ばれた。18の専門領域で計約150人の専攻医を募集した。

 県も福井大医学部の教員を中心にした手厚い指導・相談体制や、専門医の資格取得に対する助成制度、住みやすさをアピールし、県内基幹施設での研修を促してきた。1次登録では、外科で東京での研修希望者が170人に上る一方、福井県が2人など27県は10人未満。内科でも東京が520人に対し、福井県が11人など9県は15人以下となった。福井県は18領域全体でも計33人にとどまった。

 県地域医療課によると近年、医師免許を取得した50~60人が県内の医療機関で2年間の初期研修を受け、後期研修医はその6~7割の傾向だった。同課は「若手が確保できなければ医療体制の維持が難しくなる」と指摘する。

 新制度を巡り、指導医の数など研修機関の基準を満たす医療機関が多い大都市部に専攻医が集中し、地方の医師不足に拍車をかける恐れがあるとの懸念は根強い。西川一誠知事が会長を務める全国自治体病院開設者協議会も、国に医師の偏在是正を繰り返し要請してきた。

 1次登録の状況を踏まえ、日本専門医機構は東京や大阪など5都府県で一定の採用があった診療科の2次登録を行わない措置を取った。同課は「県内の初期研修医の動向や新制度の影響を分析した上で、(同機構の)措置が妥当だったかも検証し、必要ならば医師偏在を助長しないよう国に働き掛けていく」としている。



http://kyoto-np.co.jp/top/article/20180407000020
増えぬ医学部「地域枠」なぜ 公立大で最少の京都府立医大印刷用画面を開く
2018年04月07日 08時13分 京都新聞

公立医科大の「地域枠」
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 地域医療に従事する意向がある地元出身者などを優先的に入学させる大学医学部の「地域枠」で、京都府立医科大(京都市上京区)の枠が自治体設置の公立医大8校の中で最少の7人となっている。全国的には枠を拡大し、医療過疎地へ医師を送る自治体も目立つが、府は「府立医大は全国の医療充実に貢献している実績がある」と増員に慎重な姿勢を崩さない。

 医師偏在が問題になる中で地域枠は、国が2008年度、導入する医大に定員増を特別に認めたことで急速に増え、10年間で約9倍になった。札幌医科大は定員の8割を地域枠に充てるなど、特に地域医療を担う自治体設置の公立大が積極的に活用している。

 府は府内の中高出身者などを対象に、在学6年間で奨学金計1080万円を貸与し、研修後に6年間、南丹市以北の医療機関に勤務すれば返済免除にしている。ただ枠は医学部定員の約6%で、地域枠を導入する国公立・私大の計71大の17年度平均(20%)より低く、国公立45大では東京医科歯科大(4人)、名古屋大(5人)に次いで少ない。

 府立医大によると、17年度入学者のうち府内の高校出身者は43%で、例年も3~4割程度という。府内病院で研修を終えた卒業者が、府内の病院に勤務した割合は68%(16年度までの3年平均)と、全国平均(85%)より低い。地域枠を増やせば京都府北部が悩む医師不足が改善する可能性がある。

 府医療課は「奨学金は府民の税金で予算上の問題がある」とした上で、「地域医療に加え、全国の病院で活躍する医師の養成も重要。定員が増えないまま地域枠を拡大すると、一般受験者の門戸を狭めてしまう」と説明する。定数増が認められた7人分の地域枠を充て、一般枠100人を変えていない。

 京都府内の病院が研修医から人気が高いことも理由という。他府県からの希望者が多く、国から都道府県に割り当てられる研修医定員は毎年、ほぼ満員になる。研修医流出に悩む他県から削減を求める声があるといい、「地域枠を増やしても、府内で研修できない恐れもある。研修医定員の死守が先決」(医療課)という。

 府の10万人当たりの医師数は314・9人(16年12月末現在)と全都道府県で2番目に多いが、京都市周辺の京都・乙訓医療圏に集中し、他の医療圏は全国平均以下。地域間格差が顕著で、市町村からは府に医師派遣を求める声が強い。

 「大学の自治」で医大の医師には知事の人事権が及ばない難しさもあるが、8日の府知事選投開票を控え、府民は府立医大の役割をどう考えるのか。



http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20180402/CK2018040202000005.html
質の高い医療提供へ 済生会守山市民病院で開所式
2018年4月2日 中日新聞 滋賀

 守山市民病院(守山市守山四)が一日、指定管理者制度の導入で公設民営の「済生会守山市民病院」に生まれ変わり、院内で開所式があった。

 一九八二年に開設された同病院は、診療報酬の改定や医師不足で赤字経営が慢性化。市直営での存続は困難として、全国八十カ所で病院事業を展開する社会福祉法人「恩賜財団済生会」(東京)に経営が引き継がれることに決まった。

 病床数や診療科目は変わらず、常勤医も従来と同じ十六人体制。午後の診療を完全予約制で始め、患者にとって便利になる。

 式には関係者七十人が出席。同法人の炭谷茂理事長、野々村和男院長=写真(中)=があいさつし、急性期から慢性期までの質の高い医療を提供していくと誓った。来年秋にはリハビリセンター、回復期病棟、健診センターを備えた新館が完成し、病院機能が強化される。

 (平井剛)



https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2889508002042018L72000/
順天堂大付属病院 2020年度開業不透明に
浦和美園 県の用地取得に遅れ

2018/4/3付日本経済新聞 

 埼玉県が浦和美園地区(さいたま市)に誘致している順天堂大学(東京・文京)医学部付属病院の開業時期が不透明になってきた。当初は2020年度の予定だったが、県の用地取得が遅れたうえ、環境影響評価(環境アセスメント)も未着手のためだ。県内有数の大規模病院の整備遅れは、同地区の街づくりや、県内の医師不足対策にも影響を与えかねない。

 県は3月下旬に開いた医療審議会で、18年3月末までの着工時期を延期するなどの計画変更を了承した。県は同審議会で「着工に向けた行政手続きで、県の見込み違いが原因となった。整備スケジュール通りに進められず、おわびする」(保健医療部)と陳謝した。

 県内の人口10万人当たりの医師数は全国でも最低水準にとどまる。県は不足する医師を確保する狙いもあり、15年に同大医学部付属病院の誘致を決めた。埼玉高速鉄道の浦和美園駅の北側にある計約7.3ヘクタールの3区画に、病床数800床の病院や大学院、看護学校を設ける計画だった。

 ただ、建設予定地のうち、県が取得する分の手続きが遅れた。取得予定地が都市再生機構(UR)による区画整理事業地にあったことが響き、手続きを進められなかったことが要因という。

 同大が整備方針を見直したことも、開業時期を遅れさせる要因となってしまった。

 同大は建設工事を3期に分け、第1期工事は延べ床面積が計約5万3000平方メートルの病院を整備する方向で検討している。当初は同5万平方メートル未満に抑えることを検討したが、5万平方メートル超に方針を転換。さいたま市の条例では5万平方メートル未満ならば環境アセスは不要だが、5万平方メートル超になったため、環境アセスを行う必要が生じた。

 県の審議会で計画変更が了承されたことを受け、同大は整備計画を改めて立てる。同大は「新たなスケジュール案をできるだけ早めに出したい」としている。ただ、県関係者の間では「着工は1~2年程度遅れるのでは」との見方が強い。



http://news.nicovideo.jp/watch/nw3406754
都心部の総合病院、経営危機が深刻化…臓器別の外科医、食えない時代へ
2018/04/03 19:50 Business Journal

 2月7日、中央社会保険医療協議会(中医協)は、加藤勝信厚生労働大臣に対して、2018年度の診療報酬改定を答申した。

 中医協は、さまざまな医療行為の価格(診療報酬)を決める場だ。物価や人件費は大きな国内格差があるのに、我が国の診療報酬は中医協で全国一律に決められる。神ならぬ人間が価格を適正に決めることができるはずがない。さまざまな利権が生じる。2004年に発覚した日歯連事件をはじめ、中医協には不祥事・汚職がつきものだ。

 では、今年の診療報酬改訂の目玉はなんだろう。

 まずは、医師の技術料に相当する診療報酬本体が増えたことだ。今回の答申に先立ち、昨年末の予算編成で0.55%増で決着した。横倉義武・日本医師会(日医)会長は「一定の評価」とコメントした。我が国の財政状態を考えれば、日医の大勝利だ。

 今回の中医協の答申では、メディアは在宅医療やテレビ電話を用いた遠隔診療を推進するため、その診療報酬を増やすことを強調した。ただ、このような論調を真に受ける医療関係者はいない。年末に決まった診療報酬本体の増額は、あくまで予算であって、決算ではない。予算さえ増額すれば、マスコミが大きく報じ、安倍政権の有力支持者である横倉・日医会長の面子は保てるが、予算執行は別次元の問題というわけだ。

 現実には、中医協での議論を通じ、算定できない加算をつくることで診療報酬の増額が骨抜きにされる。たとえば、パソコンやスマートフォン(スマホ)を用いたオンライン診療が解禁されるが、対象は慢性疾患で継続的な治療を受けており、状態が安定している患者に限定される。初診は対象外で、3カ月に1回は対面診療が義務づけられる。診療報酬は、医療機関は「オンライン診療料」として月に700円、オンライン医学管理料として月に1000円を請求できるだけだ。

 これでは多忙で医療機関を受診できない若年世代になんの恩恵もないし、こんなに診療報酬が安ければ、オンライン診療を推進する医療機関はごく少数だろう。加算の条件付けを通じた典型的な「空集合」だ。

 厚労省が誰に気を使ったのかは明らかだ。今回の改定では、身近な「かかりつけ医」の役割を強化するため、夜間・休日対応などの「かかりつけ医」として患者を診療した場合、初診料に800円を加算できる「機能強化加算」が新設された。これで利益を得るのは開業医で、患者や保険者にとっては負担が増える結果となった。

 中医協は医療費というパイの分捕り合いを行う場だ。強い奴が勝つ。現状でもっとも強いのは日医だ。開業医の利益を代弁する。急性期、慢性期を問わず、病院が割を食うことになる。知人の病院経営者は「今回の改訂でも病院は大幅なコストダウンを求められるでしょう」という。

●総合病院の経営は悪化

 私は、我が国の財政状況を考えれば、診療報酬を抑制するのはやむを得ない。ただ、このまま規制を緩和することなく、全国一律に診療報酬を引き下げれば、やがて「倒産」する病院が出てくる。まっさきに倒産するのは、物価の高い都心部の病院だ。

 都市部の病院はコスト削減のため、さまざまな努力を積み重ねてきた。その代表が「選択と集中」だ。たとえば、首都圏の場合、がんではがん研有明病院、心臓病では榊原記念病院、甲状腺疾患では伊藤病院のような専門病院に患者が集中し、このような病院の経営は概して良好だ。

 一方、「選択と集中」が困難な総合病院の経営は悪化している。学生教育のため、患者が激減している産婦人科や小児科を閉鎖できない東京女子医大、日本医科大学などの大学病院の経営難は、すでに多くのメディアで報じられている。最近、三井記念病院が債務超過に陥ったという報道まであった。このままの状態が続けば、都心部の病院の再編は避けられそうにない。

 では、地方都市の医療機関はどうなるだろう。こちらも診療報酬抑制に合わせて、その在り方が変わりつつある。

「これからの地方病院経営の肝はコストダウン」と内科医で相馬市長(福島県)を務める立谷秀清氏は言う。立谷氏は、この地域の医療の「責任者」だ。公立相馬総合病院の管理者、自らが設立した医療法人社団茶畑会の理事長、さらに経営難に陥った地元病院の理事も務める。

 感心するのは、地域内で医師の配置をうまく誘導していることだ。その基準は患者のニーズと病院の経営状況だ。相双地域には4つの公立病院と8つの民間病院が存在する。人口減が続くこの地域で、将来的には集約化されるだろうが、現状では、いずれも地域に必要不可欠だ。赤字が補助金で穴埋めされる公立病院はともかく、民間病院は稼がなければならない。

 ところが、これが難しい。どう対応しているのだろうか。私は民間病院が内科・透析・整形外科、公立病院が外科・救急・産科、開業医が眼科・皮膚科と棲み分けが進みつつあるように感じる。もちろん、棲み分けの理由は経済性だ。整形外科や透析施設の収益性が高いことはいうまでもない。意外なのは内科だ。内視鏡などの技能がない「普通の内科医」の売上は少ないと考えられている。

●地方でも「選択と集中」

 では、なぜ相双地域の病院は収益が上がるのだろうか。それは、相双地区は医師不足のため、1人当たりの患者受持数が多いからだ。今年1月、南相馬市立総合病院の尾崎章彦医師(写真1)が、同じく南相馬市内の民間病院である大町病院に移籍した。

 彼が大町病院に赴任したのは、南相馬市立総合病院の後輩の内科医で、昨年9月に大町病院に出向した山本佳奈医師をサポートするためだ(http://japan-indepth.jp/?p=37556)。山本医師は常勤内科医が退職し、誰も内科医がいなくなった大町病院の惨状を見かねて、自ら出向することを立候補した。ところが、その仕事は彼女ひとりでカバーできるボリュームではなかった。彼女を助けたのが尾崎医師だ。

 尾崎医師は東大医学部を卒業し、「外科」専門医資格を有する人物だ。相双地区の地域医療に従事しながら、46報の英文論文を発表している。将来の日本の医学界を担う逸材だ。ところが、大町病院での尾崎医師の肩書きは「内科医」だ。

 彼が「内科医」を名乗った、あるいは名乗らざるを得なかった理由には、大町病院に外科医を派遣している大学医局との関係がある。必ずしも、尾崎医師自ら「内科医」と名乗ることを希望したわけではない。私も浜通りの医療を目の当たりにして、被災地の医療は綺麗事だけではすまないことを実感する。ご興味のある方は、『選択』(3月号)の以下の記事をお読み頂きたい。大町病院が取り上げられている。一読し、私も衝撃を受けた。ただ、経緯はどうであれ、結果的に尾崎医師の経験は、今後の地方病院の外科医の在り方を考える上で示唆に富む。

 彼は15名程度の入院患者と週8コマの外来を担当する。さまざまな疾病を有する患者を、自分の判断で治療している。もちろん、外科のスキルを有すため、外科的処置は対応できる。彼は大町病院で働くことで、外科以外の多くの臨床経験を積むことができる。将来リーダーになることを嘱望されている医師には貴重な経験だ。

 尾崎医師は、今年半ばにはいわき市内の病院に移籍し、本来の専門である乳腺外科に従事する。人口34万人のいわき市内には、乳腺外科の専門医は1人しかいない。尾崎医師にとって、いわき市は多くの臨床経験を積める理想的な環境だ。仕事を求めて、移籍するのは合理的だ。

 話を大町病院に戻そう。大町病院のような地方病院が外科を維持するのは容易ではない。外科は病棟以外に手術室を維持しなければならない。人件費・固定費が高い。ところが、患者は多くない。特にがんなどの待機手術だ。その理由は、患者がハイレベルの専門病院を選ぶからだ。冒頭にご紹介したように、都心部の病院は生き残るために、「選択と集中」を進めている。東北地方も例外ではない。

 たとえば、仙台厚生病院だ。目黒泰一郎理事長のもと、徹底した「選択と集中」を掲げてきた。循環器・消化器・呼吸器では全国屈指の病院に成長した。胃がんの内視鏡手術は236件(2016年度)で、東北地方で1位、全国10位だ。

 相双地区は歴史的に仙台との交流が深い。南相馬市立総合病院の藤岡将医師(消化器科)は「がんと診断された患者の多くが仙台厚生病院を希望します」という。この結果、同院で手術を受けるのは、仙台厚生病院がやっていない診療科や、緊急対応が必要になる患者だ。症例数も少ない。大町病院の手術数は週に1~2件という。これでは、どうしてもコスト高になる。地元の病院経営者は「外科は赤字を垂れ流す。このままでは維持できない」という。この地域で外科を維持するためには、赤字を補助金で穴埋めできる公立病院で、救急医療と一緒にやるしかない。

●変わる外科医の在り方

 今後、ますます外科手術は集約化されるだろう。相双地区のような都市近郊の地方都市でがんと診断されれば、専門病院を受診するようになるだろう。この結果、がんを扱う病院の数は減少する。

 これは外科を志す若者、特に臓器別の従来型の外科医を志望する若者にとっては、就職が難しくなることを意味する。大学や専門病院で先端技術を学んでも、専門施設には就職できないし、多くの民間病院は外科専門医を抱える余裕がない。雇用できるとすれば公立病院だろうが、彼らが期待するのは救急医療と外科の一般診療だ。肺がんの名医として有名な土屋了介・前神奈川県立病院機構理事長は「肺や大腸などを専門とする従来型の臓器別外科医の時代は終わった。地域のニーズを汲み取り、変化できる外科医だけが生き残れる」という。その典型が尾崎医師だ。彼は乳がんという専門性と、何でも屋の内科医の役割を担っている。まさに地域のニーズに応える「総合医」だ。

 高齢化、財政難が進むわが国で、医療の在り方は変わる。従来型の外科医のニーズは激減している。外科を志す若手医師は変わらねばならない。社会のニーズを捉え、適応することだ。狭い専門領域に閉じこもることなく、自分の頭で考えるしかない。尾崎医師は、その格好の事例である。
(文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長)



https://www.cbnews.jp/news/entry/20180405103201
ストレスチェック制度、「依然として疑問」
日医が「提言」を公表

2018年04月05日 14:05 CB News

 日本医師会(日医)は4日、ストレスチェック制度の在り方や産業医の活動などに関する「提言」を公表した。日医の産業保健委員会が取りまとめたもので、ストレスチェック制度に関するアンケートの結果を分析。この制度の有効性について、「多くの認定産業医から依然として疑問があるとする意見が示された」としている。【新井哉】

 ストレスチェックの開始に伴い、産業医の契約や活動にどのような影響があったかを把握しようと、日医は2017年3月から4月にかけて認定産業医(無作為抽出の5000人)を対象としたアンケートを実施し、2040人から有効回答を得た。

 このうち、産業医活動をしている認定産業医(1332人)の活動内容(複数回答)を調べたところ、「健康相談」(1174人)が最も多く、以下は「職場巡視」(954人)、「衛生委員会出席」(934人)、「高ストレス者面接指導」(893人)、「長時間労働者面接指導」(803人)などの順だった。

 嘱託産業医として活動する事業場への訪問頻度も調べた。「月に1回」と回答したのは639人で全体の半数超を占め、「月に2回以上」も2割弱の217人いた。

 ストレスチェックの開始に伴い、産業医の契約更新を拒否された認定産業医が56人いた。このうち、「ストレスチェック委託先の医師に取って代わられた」(25人)との回答が最も多く、「報酬面で折り合いがつかなかった」と答えた医師も13人いた。

 ストレスチェック制度の課題や改善を求める意見についても、「肯定的な意見」と「否定的な意見」に分類した。「否定的な意見」が過半数を占め、「負担が過大」「有効性に疑問」「報酬に問題」「事業者が理解不足」などの意見があった。



http://www.minyu-net.com/news/news/FM20180402-257558.php
「ふたば医療センター病院」開院 双葉地方の2次救急医療拠点
2018年04月02日 09時00分  福島民友新聞
  
 双葉地方の2次救急医療拠点となる「県ふたば医療センター付属病院」の開院式が1日、富岡町の現地で行われた。24時間365日対応で救急医療を担うほか在宅診療や住民の健康づくりを支え、帰還した住民や復興事業従事者、進出企業の安心を医療面で支援する。23日から診療を始める。

 双葉郡では震災前、四つの病院が2次救急医療を担っていたが、原発事故で全て休止。地元の強い要望を受け、県が新たな2次救急医療機関の整備を進めてきた。避難指示解除が進む中、新病院の開院で帰還を検討する住民の安全・安心につながる効果が期待される。

 診療科は救急科と内科で原則、救急車で搬送された患者や地域の医療機関が開院していない時間に急病で来院した患者などが対象。救急医療のほか、東京電力福島第1、第2原発に近い立地を生かした緊急被ばく医療も担う。院内に設けた除染室で初期対応を行い、ドクターヘリや新たに導入する「多目的医療用ヘリ」で適切な医療機関に搬送し、早期治療につなげる。

 高齢者の帰還が多い現状を踏まえ、訪問診療や訪問介護も行うほか、自治体や医療機関、介護福祉施設と連携した「地域包括ケア」の仕組みを構築。健康を支える取り組みでは、健康教室や出前講座で疾病予防や健康増進を図る考えだ。

 新病院は鉄骨2階建てで1階に全室個室の病室30床や救急治療手術室など、2階は医局や会議室を設置。医師は福島医大から派遣を受け19人が交代で勤務。平日の日中は4~5人、休日の日中は3~4人、夜間は2人体制を検討する。看護師や診療放射線技師、理学療法士らを合わせると医療スタッフは約70人となる。

 開院式では内堀雅雄知事が「住民の安心には地域医療確保が不可欠。今後も帰還に向けた環境整備を進める」とあいさつ。加藤勝信厚生労働相、吉野正芳復興相(衆院福島5区)が祝辞で双葉郡の医療再生への継続的な支援を約束した。式後は関係者に病院内を公開。16日午後2時~同3時には住民向け内覧会も開かれる。住所は富岡町本岡字王塚817の1。



  1. 2018/04/08(日) 10:03:52|
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