Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

1月21日 

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201801/554415.html?n_cid=nbpnmo_mled_html-new-arrivals
専攻医募集で総合診療が「惨敗」、その理由は?
 
2018/1/15 加納 亜子=日経メディカル

 4月の新専門医制度のスタートに向けた専攻医の1次募集が昨年11月15日に締め切られた。12月16日には日本専門医機構が、専攻医登録をした約7800人のうち総合診療領域のプログラムを選んだ専攻医は153人にすぎなかったと発表。さらに、11県で専攻医の応募が1人もいなかったことを明らかにした(参照記事)。

 筆者はこの結果を聞いて、非常に驚いた。2013年ごろ、厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」で総合診療領域の創設が決まった当初は、「総合診療専門医は英国のGP(一般医)のようなゲートキーパーの役割を果たす医師。全医師の3~4割程度がこの機能を担わなければ、日本の医療が持たない」(同検討会座長を務めた高久史磨氏)などといわれていたからだ。

 専門医制度における総合診療領域の新設は、今後各地域で増える複数疾患を抱えた高齢者に対応する必要性から、長年の議論を経て準備が進められてきた。地域の医療や介護、保健などの分野でリーダーシップを発揮しつつ、在宅医療や緩和ケア、高齢者ケアなどを包括的に提供することが期待され、新専門医制度の目玉として注目されていた。その注目度と制度創設までの経緯を考えれば、総合診療領域が専攻医の募集で「惨敗」したのは明らかだ。

専攻医はなぜ総合診療を選ばなかったのか

 なぜ惨敗したのか。幾つか理由は考えられるが、最大の要因は、総合診療領域の医師像の構築、プログラムの策定、取得可能なサブスペシャリティーの決定、専攻医の応募を担う日本専門医機構の準備・調整不足だろう。さらに、公平性・透明性を欠く形で制度の構築、審査を機構が進めたことで、研修施設や総合診療専門医を目指す専攻医の不信を強めた結果、応募者が非常に少なくなったのではないかと筆者は考える。

 新専門医制度は、学会や病院団体などで構成する「中立的な第三者機関」の機構が、専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を統一的に行う仕組みだ。機構が関連学会の協力の下で、認定・更新基準、養成のための研修プログラム、研修施設の基準の骨子となる「整備指針」を診療科ごとに作成。この整備指針に基づき、各研修施設は研修プログラムを作る。それを適切なキャリアパスを築ける内容か、診療科間や地域で偏在が助長されないかなどの観点から関連学会と自治体、機構が確認・調整をして認定することで、専門医研修の質を担保する仕組みだ。

 だが、総合診療領域だけは関係学会の協力を得る形ではなく、認定・更新基準、養成プログラムの基準の策定から研修プログラムの認定、専攻医の募集、定員数の調整の全てを機構が行うことになっていた。総合診療専門医の医師像や研修要件、研修体制などを固める過程で、関連学会と日本医師会などの間に意見の相違が見られ、その調整には第三者機関である機構が当たるのが適切とされたためだ。

 議論の過程で日本プライマリ・ケア連合学会は「学術的に高いレベルを目指すべき」「地域のニーズに合わせた診療を行えるよう大都市部での研修も重要」と主張。一方、日本医師会は「今、活躍しているかかりつけ医が、総合診療専門医の姿。主に一般内科を中核として、基本的なレベルの医療を行う医師」と総合診療専門医を定義して「総合診療は僻地・過疎地域など多科にわたる診療をしなければならない場所での診療が想定されている診療科」と述べていた。その他、専攻医の流出などを懸念する関連学会なども様々な意見・要望を主張していた。

研修プログラムの審査で起きた波乱

 しかし、機構が全ての行程を担うことで、逆に問題が生じてしまった。昨年9月に機構が公表した総合診療専門研修プログラムの審査基準と1次審査結果を見て、研修プログラムの審査プロセスを問題視した複数の医療関係団体が、機構に対して反発する要望書や意見書を相次いで公表したのだ。

 研修プログラムの募集時には「優先する」としか記載されていなかった要件「半年以上の僻地・過疎地域、離島、被災地、医療資源の乏しい地域での研修」が、審査結果とともに示された審査基準では、実質的な必須要件になっており、それを組み込んでいなかった研修プログラムはこぞって不合格となっていた。この審査基準の変更はプログラム募集時には示されておらず、さらには不合格となった研修プログラムの責任者に判定理由の説明が行われなかったため、研修施設からの不信感は審査結果が発表された後にも一層募ることになった。

 全日本民主医療機関連合会は9月27日、機構理事長の吉村博邦氏宛てに「総合診療領域のプログラム1次審査の結果をうけての意見と緊急要望」を提出。10月3日には四病院団体協議会もプログラム認定のプロセスが公正さに欠けるとする意見書を提出し、審査に関する疑義への説明を求めた。

 しかしその後、公の場でこれらの疑義に対する日本専門医機構からの返答はされていない。研修プログラムを申請した医療機関の担当者らも、「文書やメールで説明を求めたがその返答は得られなかった」と口々に不満を訴えていた。

「審査基準は7月末の理事会で決定していた」

 この経緯について、総合診療専門研修プログラムの審査を行った機構副理事長の松原謙二氏(日本医師会常任理事)に尋ねたところ、僻地・過疎地域などでの研修を実質的な必須要件とすることは「7月末の理事会で決定しており、8月10日や8月28日に(機構のウェブサイトで)公開した研修プログラム作成者宛ての文書では、その決定事項を踏まえて僻地などでの研修をプログラムに組み込むように求めていた」という答えが返ってきた。

 8月10日には、確かに総合診療専門研修プログラム申請者宛ての文書が機構のウェブサイトに掲示されていた。その文書には「総合診療専門研修プログラムについては、地域医療に配慮し、さらに1年以上の僻地等の専門研修が含まれるものを優先すること」と記載されている(機構ウェブサイト)。半年以上の僻地などでの研修が事実上の必須要件になったと、この文章から読み取るのは困難だ。

 また、審査基準変更の情報提供について松原氏は、「理事会で『大学病院には伝えるべき』という意見が出たため、大学病院を中心とした一部の医療機関には、審査基準の変更を伝えたり、プログラムの修正を依頼する電話をかけた。そして(研修プログラムの1次審査は)審査基準に合致しているかどうかを私が確認した上で、事務局がダブルチェックをする形で行った。審査に落ちたプログラムの大半は整備基準に記載された要件を満たしていなかった」と説明している。

 どの医療機関が総合診療専門研修プログラムを策定するかが分からない状況で、想定される全ての医療機関に情報提供をするのが難しいという理由は理解できる。とはいえ、大学病院を中心とした一部の医療機関という枠は狭過ぎる。せめて情報提供の公平性を考慮して、ウェブサイトで掲示するだけではなく、プログラムを作る可能性が高いと考えられる臨床研修施設には伝えるべきだったといえる。

 さらに言えば、機構には総合診療専門医の在り方について議論する目的で設置された「総合診療専門医に関する委員会」が存在し、整備指針についてはこの委員会で検討されていた。それを考えれば、プログラムの審査基準の策定や審査は、複数団体の担当者が集うこの委員会に任せるべきだったのではないだろうか。

 だが、同委員会の委員は「整備指針の策定前には数回開催されたが、その後は開催されておらず、審査基準を変える話や具体的な審査方法についての話は議論されなかった」と話している。この委員会には日本医師会の意見と異なる意見を持つ日本プライマリ・ケア連合学会の委員が参加している。「松原氏は相対する意見を持つ委員と議論になることを嫌い、委員会での検討を避けたのではないか」とみる関係者もいる。

 結果としてプログラムの審査基準は閉じられた場の議論で決められ、公平性を担保したとは言い難い形で情報提供が行われていた。さらに、多くの医療機関、病院団体から説明を求められてもそれに返答をしていないことを踏まえると、病院団体からプログラムの審査が「公平性・透明性を欠く」といった批判を受けても仕方がない状況だったといえる。

 診療科選択は医師人生における大きな選択の1つだ。どんなに魅力的なプログラムがあったとしても、上記のように制度設計時の議論に不透明性が残るのであれば、専攻医が他の診療科を選ぶ気持ちも理解できる。

 将来の地域医療の担い手たる総合診療専門医は新専門医制度の目玉とされていた存在だ。その診療科の制度設計と研修プログラムの審査を、公平性・透明性を欠くと批判を受けるような形で進めた日本専門医機構の責任は重い。

 機構の取り組みは理事会での決定を経る形で進められたが、多くの医療団体の委員が機構の理事に名を連ねているにもかかわらず、事が起きた後に疑義を唱える意見書・要望書が出る事態こそが、理事会が適切に機能していない表れだ。今一度、機構の意思決定方法を見直す必要があるだろう。

 専攻医の応募は既に始まっている。まずは、総合診療領域の研修プログラムに応募をした専攻医を、確たる診療技術を身に付けた総合診療専門医に育て上げるために、関連学会や病院団体が協力し、専攻医を支える体制を築くことが求められる。



https://www.m3.com/news/iryoishin/581029
「大都市集中、内科激減は間違い」、日本専門医機構
2018年度新専門医制度の専攻医数、8300人超の見通し
 
レポート 2018年1月20日 (土)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本専門医機構副理事長の山下英俊氏は、1月19日の理事会後の記者会見で、2018年度開始予定の新専門医制度の専攻医の2次募集状況を報告、「5都府県については、過去5年間の採用実績を超えて採用することはない。大都市圏への専攻医集中を増長しないことが担保できた」と説明した。1月15日に締め切った2次募集で登録したのは569人で、その採否は2月15日までに決定、通知する。1次募集で採用された7791人のほか、その後に辞退をした人、2次登録で採用された人を加減すると、現時点では8300人超が2018年度からの新専門医制度の専攻医になると想定される(1次募集の結果は、『198人、専攻医1次登録で研修先決まらず』を参照)。

 さらに2月15日の後に1次、2次募集でも採用されなかった医師について、専攻医の追加募集を行う。ただし、5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)の14の基本領域(19の基本領域から、外科、産婦人科、病理、臨床検査、総合診療を除く)では募集が行われない見通し。

 新専門医制度については、地域医療への影響が懸念されたため、5都府県の14の基本領域については、過去5年間の採用実績を超えないことが条件とされた。現時点ではその採用実績は公表されていないが、各学会の了解が得られれば公表する予定だという。

 山下副理事長は、会見で「三師調査と比較して、(大都市圏に)専攻医が集中したというのは誤解であり、論理的に間違い。(過去5年間の採用実績を超えないという)5都府県のシーリングはきっちりと守られている」と強調した。日本専門医機構副理事長の松原謙二氏も、「三師調査と比べて、内科が激減したというのは大きな間違い。データの検討の仕方が間違っている」と指摘した。

 三師調査とは、「医師・歯科医師・薬剤師調査」。厚生労働省が2017年3月にまとめた2014年三師調査に基づく卒後3~5年目の医師数が、現時点で入手可能な各都道府県、各基本領域の1年次当たりの専攻医の参考数だ(『「内科15.2%減、外科10.7%減」、専攻医の領域別割合』、『京都50.8%増、東京50.0%増、専攻医の地域差は拡大』を参照)。


記者会見は、日本専門医機構副理事長の山下英俊氏(右)と松原謙二氏(左)が実施。理事長の吉村博邦氏は、病気療養中で、2017年10月以降、理事会を欠席。1月末には退院し、2月の理事会には出席予定だという。(写真略)

 山下、松原両副理事長は、2018年度からの新専門医制度の専攻医数と、2014年三師調査のデータを比較できない理由として、二つを挙げた。一つは、三師調査には全ての医師が回答しているわけではなく、実際の医師数は三師調査の数字よりも多いこと。もう一つは、新専門医制度では研修プログラム制を採用しているため、専攻医数は、基幹施設の所在地、つまり「本籍地」でカウントされる一方、三師調査では、基幹施設から関連施設等にローテーションしている場合、その「現在地」でカウントされるという相違がある点だ。

 松原副理事長は、「三師調査は、調査に全員が答えているわけではなく、きちんとした数字ではない。免許を取った医師の数の方がかなり多い」と説明。2014年三師調査では、東京都の卒後3~5年目の1年次当たりの医師数は1171人。松原副理事長は、「(新専門医制度で)1800人前後が東京都での研修を希望され、採用される」としたものの、新専門医制度における専攻医数はあくまで「本籍地」のデータであると説明、実際には連携施設で研修する専攻医もいるため、「現在地」の専攻医数を把握できるよう、その調査を各基本領域の学会に依頼したという。「本籍地だけで調べると、びっくりするデータになるかもしれないが、そこから他の都道府県に専攻医を送っている」と松原副理事長は述べ、「現在地」のデータを見なければ、「どこにどんな医師がいるかを言うことはできない」と強調した。

 また今回専攻医として登録、もしくは採用された医師の大半は、この4月から卒後3年目を迎える医師が大半だが、卒後4年目以降に当たる医師も含まれている。その数は、関東だけで100人程度はおり、今後精査する予定だという。

 さらに、松原副理事長は、内科の現時点での専攻医予定数は2658人である一方、三師調査による内科の卒後3~5年目の1年次当たりの医師数は2650人であり、「8人増えた」と説明。卒後3年目に当たる医師は、医学部定員増に伴い、2018年では2014年よりも1000人前後は増えていると推計される上、三師調査が全数把握でなければ2014年の内科医師数は2650人よりも多いと考えられるが、この点についての質問に、「内科に専攻医が来なかったのは事実だが、内科は減っていない。総合診療専門医は183人の予定であり、そこに内科から流れ、相殺された可能性がある」と松原副理事長は答えた。

 なお、内科の場合、過去5年の採用実績として参考にしたのは、認定内科医の資格認定試験の受験者数だが、そこから、複数回受験した医師や既に他領域で専門医を取得した医師を除いた数をベースにしているという。

 「確かに東京におけるマイナー科の専攻医が増えているのは事実」と松原副理事長は述べたものの、全国では、外科は807人で、三師調査の763人よりも増加、産婦人科も442人で三師調査の350人よりも増えていると説明した。

 総合診療専門医の専攻医数について、松原副理事長は、専攻医には医学部地域枠の卒業生が約400人含まれることなどを踏まえ、「もともと200人前後だと考えていたので、予想通り。地域枠の卒業生全員が総合診療専門医になるわけではない。総合診療専門医のスタートとしては教えやすい数であり、良質な研修ができるとして期待している」との見解を示した。



http://www.medwatch.jp/?p=18221
新専門医制度で医師偏在が助長されている可能性、3県では外科専攻医が1名のみ—全自病 
2018年1月15日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 新専門医制度の2018年度からの全面スタートに向け、専攻医登録が進められているが、地域間・診療科間の偏在が助長されているように見える。10数年後には大学病院でも外科手術ができくなるといった事態が起こるかもしれない―。

 全国自治体病院協議会の邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長)は、1月11日に開催した新年初の記者会見でこのように述べました。

ここがポイント!
1 群馬、山梨、高知では、外科専攻医が大学病院を含めて1名(1次登録結果)
2 公的・公立の精神科病院で構成する「日本公的病院精神科協会」を設立

群馬、山梨、高知では、外科専攻医が大学病院を含めて1名(1次登録結果)

 2018年度から全面スタートする新専門医制度は、これまで各学会が独自に行っていた専門医の養成・認定を、学会と日本専門医機構が共同して行うことで「質を担保するとともに、国民に分かりやすい」専門医養成を目指しています。ただし、「質の担保を追求するあまり専門医を養成する基幹施設などのハードルが高くなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されるのではないか」といった指摘などがあります。

 このため日本専門医機構や都道府県、厚生労働省らが重層的に「医師偏在を助長させない仕組み」を設けており、その1つとして「各基本領域学会の5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)のそれぞれにおける専攻医の登録総数は、▽外科▽産婦人科▽病理▽臨床検査—の4領域を除いて、過去5年の後期研修医の採用実績数などの平均値を超えない」という上限値が設けられました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

2018年度の専攻医募集が始まっており、12月15日には日本専門医機構から第1次登録の採用数が公表されました(日本専門医機構のサイトはこちら)。その中で、邉見会長は外科領域に着目。オールジャパンでは767名の専攻医がいますが、▼群馬県▼山梨県▼高知県—で、大学病院を含めて、専攻医1が1名にとどまっています。この点いついて邉見会長は、「今の専攻医が働き盛りになる10数年後には、大学病院でも外科手術ができないという都道府県が現れるかもしれない」と危惧し、地域偏在・診療科偏在が助長されているのではないかと訴えています。

厚生労働省は「地域医療への影響が懸念される場合には、厚労省から日本専門医機構と関係学会に対し実効性ある対応を要請する」こととしています。今後、2018年度からの専攻医登録確定を待ち、「地域医療への影響が懸念されるのか」も含めた検討が行われることになりそうです。

公的・公立の精神科病院で構成する「日本公的病院精神科協会」を設立

 なお、中島豊爾副会長氏(岡山県精神科医療センター理事長)からは、精神科病棟を持つ公立・公的病院で構成される「一般社団法人日本公的病院精神科協会」(公精協)を設立することも発表されました(1月26日に設立総会を開催)。当面、▼自治体病院▼国立病院機構▼日赤▼済生会▼厚生連—の5団体の病院(当初は128病院が参加)でスタートし、将来的に「精神科外来を持つ病院」「大学病院」にも参画を呼びかけます。

中島副会長は「我が国の精神科医療は諸外国に比べて20年ほど遅れていると指摘される。精神科医療の質の向上・改善に向けて政策や診療報酬に関する要望をしていきたい」と抱負を語っています。厚労省への政策等要望ルートとして四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)があります。しかし、中島副会長は「公的・公立病院は、日本精神科病院協会には事実上加盟できない」とし、新たな要望ルート確立のために新団体を設立したと説明しています。



https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0118/jbp_180118_8220256997.html
新専門医制度、医療崩壊を招く驚きの新事実 
上 昌広
1月18日(木)6時0分 JBpress

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図1:新専門医制度が診療科選択に与えた影響

 日本の地域医療が崩壊の瀬戸際にある。きっかけは、今春から始まる新専門医制度だ。
 昨年12月15日、日本専門医機構は4月から始まる新専門医制度の1次募集の結果を公開した。この時応募したのは7791人の医師だ。
 この制度は、主に初期研修を終える3年目の医師が対象となる。2016年の医師国家試験に合格したのは8630人だから、約9割の医師の進路が決まったことになる。

地域偏在の是正どころか拡大

 研究職や行政職に進む一部の医師を除きほぼ全員が、この制度に沿ったカリキュラムに従い研修する。
 日本専門医機構が公開した結果を仙台厚生病院の遠藤希之医師と齋藤宏章医師が分析した。
 当初、日本専門医機構は専門研修の充実に加え、診療科と地域偏在を是正することを目標に掲げていた。ところが、結果は正反対だった。
 遠藤医師らは、2012〜2014年の間に後期研修医を始めた医師数と、今回、内定した医師数を比較した。
 まずは診療科の比較だ。図1をご覧いただきたい。内科が激減し(123人減少)、麻酔科(93人増)、眼科(82人増)、精神科(64人増)などのマイナー科が増加していることがお分かりいただけるだろう。
 内科は2012〜2014年と比較し、約1割減少した。
 舛添要一氏が厚労大臣の時、医学部定員を増やしたため、今年度、専門研修を始めるのは、2012〜2014年の平均(6926人)よりも12%も多かった。内科は実質的に2割減である。
 外科も同様だ。専攻医の数は764人から767人とほぼ横ばいだったが、全専攻医に占める割合は11%から10%に低下した。

内科と外科が減りマイナー診療科が増加

 内科と外科が減り、マイナー診療科が増えた。
 さらに、医師不足対策の切り札として、厚労省が進めてきた「総合診療医」に至っては、登録者はわずか153人だった。形成外科の希望者と同数だ。誰も想像しない結果となった。
 診療科の偏在悪化も問題だが、地域偏在に与える影響は、さらに深刻だった。
 すべての診療科で東京一極集中が加速した。図2は2012〜2014年の平均と比較した場合の各都道府県の医師の増減の状況を示す。東京への一極集中が一目瞭然だ。
 東京では585人増加した。次いで増加したのは、京都(92人)、岡山(59人)、大阪(43人)だ。いずれも戦前からの名門医学部がある地域だ。
 一方、減少したのは静岡(60人)、千葉(22人)、香川(20人)だ。東京や岡山に医師が「吸収」されたのだろう。
 この傾向は診療科別でも変わらない。内科の場合、東京は77人増加した。周辺の千葉(30人減)、埼玉(10人減)、神奈川(5人減)から医師を吸い寄せたことになる(図3)。(図 略)


内科志望医が15人以下の県も

 深刻なのは全国で内科志望医が15人以下の県が11(秋田、富山、福井、鳥取、島根、山口、徳島、香川、高知、佐賀、宮﨑)もあることだ。高知に至っては5人である。
 外科も同様だ。
 東京は69人増加した一方、静岡は20人、神奈川は10人、千葉は7人減少した。14の県で志望者は5人以下だ(青森、山形、群馬、山梨、福井、奈良、島根、山口、徳島、愛媛、香川、高知、佐賀、宮﨑)。群馬、山梨、高知に至っては1人である。
 志望者が激増した眼科ですら、一極集中だ。東京は36人増加し、2位の京都(12人増)を大きく引き離す。
 一方、16の県で志望者が減少し、青森・山形・新潟・山梨・長野・奈良・徳島・大分・長崎では志望者はいなかった。他のマイナー診療科も状況は変わらない。このままでは、地域医療は間違いなく崩壊する。


日本専門医機構の幹部に大きな責任

 新専門医制度については、全国市長会をはじめ、多くの関係者から懸念が表明されていた。日本専門医機構は、このような懸念を「無視」して、強引に進めた。
 彼らの「公約」は守られなかった。吉村博邦理事長以下幹部は原因を究明し、制度を見直すこと、および責任を取る必要がある。
 最近になって、この問題が一部の関係者の間で議論されるようになった。
 知人の与党議員が厚労省を呼び出して、質問したところ、「地方の医師不足は以前からです。問題ですが、日本専門医機構が独自にやっていて、私たちは介入する権限がありません」と説明したという。
 新専門医制度は、日本専門医機構と厚労省が二人三脚で進めてきたこと、そのガバナンスに問題があったことは周知の事実だ(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49835)。改めて厚労官僚の厚顔無恥ぶりに驚いた。
 このことを知人の政府関係者に伝えたところ、「権限がないとは呆れ果てました。厚労省の得意な「行政指導」や「技術的助言」など駆使されたらいかがでしょう。補助金の交付要綱を変えるのも可能です」とコメントした。
 新専門医制度を放置すれば、我が国の医療に深刻な後遺症を残す。ところが、大手メディアはこの問題を報じず、国会も取り上げない。
 日本専門医機構、それを支援する日本医師会や厚労省は、失敗の責任を取らず、頬被りを決めている。「日本人は十二才」のままだ。我々、大人の覚悟が問われている。
筆者:上 昌広



http://www.medwatch.jp/?p=18302
【病院総合医】養成する施設、2018年度は91病院を認定―日病 
2018年1月18日|医療現場から MedWatch

 複数疾病をもつ高齢患者などに総合的な診療を行い、チーム医療、ひいては病院全体を牽引する力を持つ「病院総合医」の養成が来年度(2018年度)から開始されるが、初年度は91病院を認定する—。

 日本病院会は1月12日にこのように決定し、公表しました(関連記事はこちら)(日病のサイトはこちらとこちら)。

将来の病院幹部候補となる【病院総合医】を、病院自ら養成

新たな専門医制度の中で「総合診療専門医」の養成が始まりますが、「病院において複数疾患を抱える患者への総合診療提供や、術後管理などを行う医師」の養成が可能か、という点には疑問を持つ医療関係者も少なくありません。

このため日本病院会(日病)では、「病院において総合診療を行う医師である【病院総合医】」を、総合診療専門医(新専門医制度)とは別に養成する方針を固めました。

【病院総合医】は、(1)多様な状態を呈する患者に包括的かつ柔軟に対応できる総合的診療能力を持つ(2)全人的に対応できる(3)地域包括ケアシステムにおける医療・介護連携の中心的役割を担う(4)多職種をまとめチーム医療を推進できる(5)地域医療にも貢献できる—医師で、日病の相澤孝夫会長と末永裕之副会長は「将来、病院経営幹部の1ルートとなることが期待される」と強調しています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

まず日病会員病院の中で、「自院の中堅医師を【病院総合医】として育成したい」と考えている施設や、「【病院総合医】を目指す医師が勤務している」施設が手をあげ、必要な研修を行えるかどうかが審査されます。

審査をパスした施設(病院総合医育成プログラム認定施設)において、【病院総合医】を目指す医師(卒後6年目以上の医師を対象)に必要な指導を行います(医師からすれば研修を受講する形、もちろん他施設との連携指導も行われる)。2年間、必要な症例などを経験した上で、日病で「要件を満たすかどうか」の審査を受けます。審査では、▽インテグレーションスキル(包括的診療の展開・実践)▽コンサルテーションスキル(必要な場合に専門診療科へ速やかな相談・依頼)▽コーディネーションスキル(多職種の連携・調整)▽ファシリテーションスキル(チーム医療の促進・実践)▽マネジメントスキル(地域包括ケアシステムや日本全体を考慮した病院運営)―の5能力を評価し、「要件を満たす」と判断されれば、晴れて【病院総合医】の資格を手に入れることができます。
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病院総合医認定・更新にかかる大きなスケジュール概要
 
日病では、研修期間中に▼ショック▼急性中毒▼意識障害▼全身倦怠感▼心肺停止▼呼吸困難▼身体機能の低下▼不眠▼食欲不振▼体重減少・るいそう▼体重増加・肥満▼浮腫▼リンパ節腫脹▼発疹▼黄疸▼認知脳の障害▼頭痛▼めまい▼失神▼言語障害▼けいれん発作▼視力障害・視野狭窄▼聴力障害・耳痛▼鼻漏・鼻閉▼鼻出血▼嗄声▼胸痛▼動悸▼咽頭痛▼誤嚥▼誤飲▼嚥下困難▼吐血・下血▼肛門・会陰部痛▼熱傷▼外傷▼褥瘡▼背部痛▼腰痛▼関節痛▼歩行障害▼四肢のしびれ▼肉眼的血尿▼排尿障害(尿失禁・排尿困難)▼乏尿・尿閉▼多尿▼不安▼気分の障害(うつ)―といった幅広い症例を経験することが必要と考えています。またチーム医療を牽引していく能力を養うために、さまざまなチーム医療活動、とくに「医療安全」「感染制御」チームへの参画は必須となります。
さらに、将来の「病院経営幹部」候補であることも踏まえ、病院経営・管理に関する各種講習会やセミナーに積極的に参加することも求められます。末永副会長は【病院総合医】資格を取得した医師が、次の病院総合指導医になることを期待し、「臨床研修指導医講習会には必ず参加してほしい」と求めています。

今般、公表された「病院総合医育成プログラム認定施設」は91施設。【病院総合医】が医療関係者に浸透していけば、「【病院総合医】を目指しており、認定施設に勤務したい」という医師が増えていくことでしょう。2019年度以降、認定施設が増加していくと予想されます。

【北海道】 ▽市立札幌病院 ▽砂川市立病院 ▽北見赤十字病院 ▽札幌徳洲会病院

【青森県】 ▽十和田市立中央病院 ▽八戸市立市民病院

【岩手県】 ▽岩手県立中央病院

【福島県】 ▽かしま病院

【茨城県】 ▽水戸済生会総合病院

【栃木県】 ▽足利赤十字病院 ▽済生会宇都宮病院

【埼玉県】 ▽埼玉県済生会川口総合病院 ▽戸田中央総合病院 ▽丸山記念総合病院 ▽埼玉医科大学国際医療センター ▽自治医科大学附属さいたま医療センター

【千葉県】 ▽千葉市立海浜病院 ▽成田赤十字病院 ▽柏厚生総合病院(千葉県) ▽幸有会記念病院

【東京都】 ▽東京山手メディカルセンター ▽杏雲堂病院 ▽玉川病院 ▽多摩南部地域病院 ▽小豆沢病院 ▽藤﨑病院

【神奈川県】 ▽湘南鎌倉総合病院 ▽湘南藤沢徳洲会病院 ▽総合川崎臨港病院 ▽東名厚木病院 ▽葉山ハートセンター ▽山近記念総合病院

【新潟県】 ▽新潟県立十日町病院 ▽糸魚川総合病院 ▽上越総合病院(新潟県)

【富山県】 ▽富山市民病院 ▽石川県立中央病院

【長野県】 ▽市立大町総合病院 ▽飯山赤十字病院 ▽諏訪赤十字病院 ▽相澤病院 ▽相澤東病院

【岐阜県】 ▽総合病院中津川市民病院 ▽美濃市立美濃病院

【静岡県】 ▽藤枝市立総合病院 ▽静岡済生会総合病院 ▽NTT東日本伊豆病院

【愛知県】 ▽春日井市民病院 ▽小牧市民病院 ▽名古屋第一赤十字病院 ▽名古屋第二赤十字病院 ▽海南病院 ▽大同病院 ▽東海記念病院 ▽トヨタ記念病院

【三重県】 ▽伊勢赤十字病院 ▽田中病院 ▽津生協病院

【滋賀県】 ▽市立大津市民病院

【京都府】 ▽京都民医連中央病院 ▽武田総合病院 ▽洛和会丸太町病院 ▽三菱京都病院

【大阪府】 ▽阪南市民病院 ▽大阪府済生会泉尾病院 ▽松下記念病院 ▽淀川キリスト教病院

【兵庫県】 ▽加古川中央市民病院 ▽姫路赤十字病院 ▽兵庫医科大学ささやま医療センター ▽三菱神戸病院

【島根県】 ▽浜田医療センター(島根県)

【岡山県】 ▽倉敷中央病院

【広島県】 ▽広島共立病院

【山口県】 ▽昭和病院

【徳島県】 ▽徳島県立中央病院 ▽徳島赤十字病院

【香川県】 ▽四国こどもとおとなの医療センター ▽KKR高松病院

【愛媛県】 ▽HITO病院

【福岡県】 ▽福岡赤十字病院 ▽福岡記念病院

【熊本県】 ▽熊本赤十字病院 ▽済生会熊本病院 ▽済生会みすみ病院 ▽宇城総合病院 ▽菊池中央病院 ▽くまもと森都総合病院 ▽にしくまもと病院 ▽谷田病院

【鹿児島県】 ▽種子島医療センター



https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201801/0010915249.shtml
疲弊の勤務医 当直後に通常業務、救急呼び出し… 
2018/1/21 06:30神戸新聞NEXT

 過労死が社会問題となる中、厚生労働省は長時間労働が常態化している医師の働き方改革を目指すが、実現までの道のりは多難だ。兵庫県内でも救急対応や緊急手術で疲弊する勤務医は少なくないが、医師には正当な理由なしに診療を拒めない「応召義務」が課せられ、残業時間の削減はハードルが高い。「目の前に苦しむ患者がいれば、睡眠不足でも診療せざるを得ない」との声も根強く、医師不足や高齢化を背景に現場は使命感とのはざまで揺れている。(末永陽子、佐藤健介)

 医師の過労死は後を絶たない。2016年1月、新潟市民病院で女性研修医が過労自殺した。東京都内の病院に勤務していた産婦人科の男性研修医が15年に自殺した件も、17年7月に労災認定された。兵庫県内でも養父市の公立病院で07年、当時34歳の男性医師が長時間労働やパワハラを苦に宿舎内で自殺した。

 全国医師ユニオンなどが昨秋公表したアンケート結果によると、常勤医約1600人のうち当直後にそのまま通常業務を行う医師は78%に上り、8%が直近1カ月に休日を1日も取れなかった。

 「人ごとではない」。兵庫県内の病院で働く30代男性研修医は強調する。

 多い時で週2回の宿直に入るが、診療していない時間は労働ではなく「学習」とみなされる。宿直明けで通常業務に就き、36時間連続で働くこともある。勤務記録上の残業は過労死ラインの月80時間を下回るが、「その倍の時間は病院にいる。医師も人間。それを病院にも患者にも分かってほしい」と訴える。

 神戸市内の30代研修医は、毎日数時間の残業が当たり前という。容体の悪い入院患者を診療しようとした矢先、救急対応に呼び出されることも。疲労で心電図の異常を見落としかけたこともあった。「地域や診療科によって医師数に偏りがある」と感じ、「いつミスが出てもおかしくない」と表情を曇らせる。

 「過重労働の最大要因は救急」。県内基幹病院の幹部は断言する。地域の救急患者の大半を抱え、「軽症者を扱う1次救急は個人病院でお願いしたいが、医師の高齢化でマンパワーは不十分だ」と嘆く。自院も赤字で「増員すれば経営が持たない」と打ち明け、「病気を減らす視点も大切。医療費をもっと予防医学に割くべきだ」と語る。

 厚労省は緊急対策の柱として医師以外へのタスク・シフティング(業務移管)などを掲げるが、現場レベルで先行実施する動きもある。

 兵庫医科大病院(西宮市)の血液内科は約5年前、診療業務をできる限り夕方で終える方針を打ち出した。さらに、電子カルテの入力や研究データ収集を担う事務スタッフを雇った。同科の小川啓恭(ひろやす)教授(65)は「医者しかできないことに仕事を限れば、睡眠や研究の時間が確保でき、良質な治療にもつながる」と話す。

【医師の働き方改革】政府は昨年3月に罰則付き残業規制の実行計画を作成したが、医師法上の「応召義務」がある医師には適用を5年間猶予する方針を打ち出した。厚生労働省は有識者検討会で残業時間の上限や勤務環境改善策などを議論し、2018年度末をめどに意見をまとめる予定。検討会では「勤務時間制限を守り、かつ医療の質を担保する資金や医師数が確保できていない」との指摘があった。



https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2595271020012018CC1000/
杏林大、医師に長時間労働 労基署勧告  
2018/1/20 16:47 日本経済新聞

 東京都三鷹市の杏林大医学部付属病院が、労使協定(三六協定)の上限を超えて医師らに時間外労働(残業)をさせ、割増賃金も不十分だったとして、運営する学校法人「杏林学園」に対し三鷹労働基準監督署が是正勧告と改善指導をしていたことが分かった。杏林大が20日、明らかにした。勧告や指導は昨年10月で、杏林大の担当者は「勧告を真摯に受け止め、是正に着手している」と話している。
 杏林大によると、就業規則と協定により、医師は週39時間の所定労働時間、月最大70時間の残業時間が定められている。労基署の調査で、約700人の医師のうち約2%が「過労死ライン」とされる月80時間超の残業をし、100時間を超えた医師も数人いたことが判明した。
 さらに、一部では残業に対する割増賃金が法定の割増率を下回っていた。大学は昨年末、同年4~9月の不足分として、医師数百人に計数億円を支払ったとしている。
 長時間労働について、杏林大の担当者は「医師には、診療を求められたら拒めない応召義務がある。救命救急もやっており、分厚い態勢を取らざるを得ない面もある」と説明した。
 同病院は高度医療を提供する「特定機能病院」の一つ。2016年度は1日平均の外来患者が2205人、入院患者が809人だった。〔共同〕



https://www.asahi.com/articles/ASL1N4DJRL1NUTIL00F.html
東京)杏林大、診療縮小の懸念も 付属病院で残業不正 
河井健 2018年1月21日03時00分 朝日新聞

 三鷹市の杏林大学医学部付属病院で複数の医師が労使間の時間外労働の取り決め(36協定)を超える残業をさせられていたなどとして、開設者の杏林学園が、三鷹労働基準監督署から是正勧告と改善指導を受けた。杏林大は「真摯(しんし)に受け止める」として働き方の見直しを進めているが、医師の大幅な増員は困難とみられ、診療態勢の縮小など地域医療への影響を懸念する声も出ている。

 同病院は高度な医療を提供する施設として国が承認する全国85の「特定機能病院」の一つ。2016年度の外来患者は約64万9千人、入院患者は約29万5千人に上る。全国39カ所、都内でも4カ所だけの「高度救命救急センター」を備え、16年度は1500人超の重篤な患者を受け入れた。生命に関わる病気やけがの患者を24時間態勢で広域から受け入れ、「救急医療の最後の砦(とりで)」とされる。

 政府の「働き方改革」を踏まえ、近年、各地の大規模病院が労基署から長時間労働の是正などを求められるケースが相次いでいる。医師の残業時間が月平均95時間に達すると16年に指摘された聖路加国際病院(中央区)では、シフト調整だけでは対応できず、土曜日の診療を一部取りやめた。

 昨年10月26日付で勧告と指導を受けた杏林大は、約700人の医師のうち約2%が「過労死ライン」とされる残業月80時間を超え、100時間を超える医師もいるとされた。朝日新聞の取材に対し、杏林大は「地域医療に引き続き貢献する立場で、さまざまな角度から対応策を検討する」として、診療態勢の縮小については明言していない。

 一方、地域医療の関係者からは、過労死の恐れがある長時間労働は望ましくないとした上で、仮に診療態勢が縮小されれば「影響は大きく、救える命が救えない事態が生じる可能性もある」との懸念も出る。

 厚生労働省は有識者会議で医師の働き方についての議論を進めており、18年度末までに具体案を取りまとめる予定だ。担当者は「労働時間の規制により、医療の質の確保や提供態勢が維持できなくなるのでは本末転倒。両立できる取り組みを進める」と話している。(河井健)



https://www.jiji.com/jc/article?k=2018011700881
医師の勤務時間定めず=北里大病院に是正勧告 
(2018/01/17-16:30)時事通信

 北里大学病院(相模原市)が就業規則で医師の勤務時間を定めていないなどとして、相模原労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告と指導を受けていたことが17日、分かった。同病院を運営する学校法人北里研究所がホームページ(HP)で明らかにした。
 同研究所によると、医師の勤務時間などを就業規則で定めていなかったほか、職員と労働契約を締結する際、労働条件を書面で交付していなかった。また、時間外労働や休日労働に関する三六協定を労働者の過半数を代表する者と結んだが、代表者選出のプロセスが法令の手順を踏んでいなかった。
 各部署の労務管理者や人事担当者の教育不足も指摘され、法令知識を改めて教育することなどを指導されたという。



http://www.medwatch.jp/?p=18290
医師の労働時間規制、働き方を変える方向で議論深める―医師働き方改革検討会(2) 
2018年1月18日|医療計画・地域医療構想MedWatch


 医師の今後の労働時間規制は、現状の長時間労働を是正する方向で議論する。具体的な上限は、医師の「診療科」や「勤務先医療機関の役割」に応じてきめ細かく設定する―。

 1月15日に開催された「医師の働き方改革に関する検討会」(以下、検討会)では、厚生労働省が、このような内容の「中間的な論点整理」の骨子案も示しました(関連記事はこちら)。骨子案には、他職種への業務移管のような「医師の労働時間短縮策」に関する論点も盛り込まれています。検討会は、次回会合で「中間的な論点整理」を取りまとめた後、「医師の労働時間規制」と「医師の労働時間短縮策」の具体案を来年(2019年)3月末までに取りまとめるため、議論を本格化させます。

ここがポイント!
1 医師の労働時間規制の在り方、今後の検討に向けて論点を整理
2 診療科別の分析進め、多様性を踏まえた上限設定
3 労働時間に当たる自己研鑽の基準も論点に
4 医師の業務見直し、実効性ある働き方改革に

医師の労働時間規制の在り方、今後の検討に向けて論点を整理

 現在の労働基準法では、労働時間を「1日8時間・1週40時間」内と規定しています。しかし、使用者(病院の管理者ら)が労働者(勤務医ら)などと協定(労働基準法36条、ゆえに36協定と呼称される)を結んで労働基準監督署に届け出れば、この基準を超える長時間労働が、「年360時間まで」のような範囲内で認められるため、実際のところ、病院勤務医の40.6%が週60時間以上勤務しています(単純計算で、時間外労働時間が月80時間以上)。
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勤務時間が週60時間以上である割合が5割を超える診療科もある

 政府は「働き方改革」として長時間労働の是正などを推進しており、厚労省が今年(2018年)の通常国会への提出を目指している労働基準法改正案は、▼時間外労働時間の上限を原則、月45時間・年360時間とする▼臨時的に特別な事情がある場合でも、年720時間・単月100時間未満(休日労働含む)・複数月平均80時間(休日労働含む)を限度とする▼来年(2019年)4月から施行する―といった内容になる見込みで、上限規制に違反した使用者には罰則が科されます。

 ただし、医師には応召義務(医師法第19条)が課されるなどの特殊性があることから、▼上限規制の適用を5年間猶予する▼「医師に適用する規制の具体的な在り方」や「医師の労働時間短縮策」を、検討会で議論し、来年(2019年)3月末までに結論を得る―ことが決まっています。検討会は昨年(2017年)8月に設置され、【1】今年(2018年)の「年明け」に中間整理を行う【2】来年(2019年)3月末までに結論(規制などの具体的な在り方)を得る―スケジュールで検討を進めてきました。

 【1】の中間整理に当たる「中間的な論点整理」は、これまでに委員から出た意見(論点)をまとめたもので、【2】の最終取りまとめに向けた議論の土台となります。本稿では、「中間的な論点整理」の骨子案の中から、今後の検討の注目ポイントとなる、(a)医師に適用する規制の具体的な在り方(b)医師の労働時間短縮策―に関連する論点に焦点を当ててお伝えします。

診療科別の分析進め、多様性を踏まえた上限設定

 まず(a)の「上限規制の在り方」について骨子案では、働き方改革関連法案で上限とされる「単月100時間未満・複数月平均80時間」を超えた長時間労働を医師に認めることには「慎重であるべき」だと強調。長時間労働が常態化する現状に合わせた規制を設けるのではなく、「医師の労働時間をできるだけ短くする」ことを前提として議論していくべきと指摘します。

 その上で、現状から大きくかけ離れた「画一的な上限時間」を設定すれば医療提供体制の崩壊を招く恐れがあることから、「『医療機関の役割』や『診療科』ごとの多様性を踏まえて、時間外労働の上限時間を設定する」方向性を示しています。

 この点、昨年(2017年)4月に公表された「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」(いわゆる10万人調査、2016年12月に実施)では、「救急科」(平均勤務時間が週63時間54分)や「外科系」(同59時間28分)、「産婦人科」(同59時間22分)などの診療科で病院勤務医の労働時間が長いことが分かっています。ただし、単純に救急科や外科系で上限を緩く設定するのでは、「現状の働き方に制度を合わせる」ことになってしまいます。そこで検討会では今後、救急科や外科で労働時間が長期化してしまう原因を明らかにした上で、医療提供不足を招かない「適正な上限時間」を、診療科ごと・医療機関の役割ごとに、きめ細かく検討することになります。
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現状、病院常勤勤務医の平均勤務時間には診療科ごとにばらついている。医師の労働時間の上限も、診療科別に設定される可能性がある

 骨子案では、「診療科ごと分析にも資する追加的な調査を行い、10万人調査の結果と併せて分析することで、議論の前提となる『医師の勤務実態の詳細』を明らかにする必要がある」とも指摘しています。厚労省は現在、勤務医のタイムスタディ調査を行い、▼診療時間(外来診療や入院診療など)▼診療外時間(教育や研究、会議など)▼待機時間(通常の勤務時間外に、応急患者に備えて院内に待機する時間)―の構成などのデータを集めています。このデータを、勤務先(大学・大学以外)や診療科ごとに分析し、長時間労働の原因究明の手がかりにすることが期待されます。
1月15日の検討会に、タイムスタディ調査の結果が一部示された。データの集積が進めば、勤務医の労働時間に関する課題を診療科ごとに解明できる可能性がある(解像度低く、解読困難のため図 略)

労働時間に当たる自己研鑽の基準も論点に

 勤務医の労働時間をめぐっては、▼診療ガイドライン改訂をキャッチアップしたり、論文を執筆したりする自己研鑽時間▼宿日直―が労働時間に該当するかどうかも重要な論点です。このうち自己研鑽時間について検討会では、「具体的にどのような内容であれば労働時間に該当するか、関係者間で共通認識がない」と指摘。今後の検討で、「労働時間に当てはまる自己研鑽時間」の考え方を示す方針です。

 一方、宿日直には、現在、「応急患者の診療または入院、患者の死亡、出産などがあり、昼間と同態様の労働に従事することが常態であるようなもの」は労働時間に当たるという基準があります。ただし、この基準ができた1949年から医療現場が変化していると想定されることなどから、見直しに向けて議論することになりそうです。
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宿日直の許可基準の見直しも重要な論点となる

医師の業務見直し、実効性ある働き方改革に

 骨子案では、「医療機関における働き方改革の実効性を確保するためには、時間外労働規制だけでなく勤務環境改善策も重要である」と指摘し、上述した(b)の医師の労働時間短縮策として次の4点を挙げています。

(1)医師の業務の整理
(2)他職種への業務移管
(3)医師同士での業務の共同化
(4)ICT(情報通信技術)の活用

(1) の「医師の業務の整理」については、▼医師の参加が要件となる会議(介護保険制度のリハビリテーション会議など)▼医師が作成しなければならない書類(死亡診断書など)―を洗い出して医師の業務の全体像をまず明らかにし、効率化を図る必要性が指摘されています。

この点、死亡診断書については、ICTを活用して遠隔で交付する仕組み(この場合、患者宅を訪問した看護師が代筆)の整備が進んでいます(関連記事はこちら)。また、医師の業務見直しは、(2)の業務移管も密接に関係します。例えば静脈注射などは、看護職員に移管可能であることを、厚労省は2007年に発出した通知「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」で明示しています。なお、医師の業務負担を軽減する効果が期待できることから、検討会では、検討結果の取りまとめを待たずに業務移管を徹底するよう、医療機関に呼び掛ける方針です(関連記事はこちら)。

 一方、(3)の業務共同化の具体策としては例えば、複数主治医制やシフト制の導入が想定されます。ただし、一定程度の医師数がいなければ負担を分散できず、検討会では、「医療機関の集約化の議論をしなければならない」とも指摘しています。この点、複数の病院が統合して全体として医療の質を高める米国の「IDS」(Integrated Delivery System:統合型医療提供システム)の手法が、医師の働き方改革を進める上でも重要な手法と言えます(関連記事はこちら)。

 ほか、▼応召義務を含む患者との関係性の見直し▼勤務時間以外の勤務環境改善策(例えば健康管理の着実な実施)―なども、今後の重要な論点となります。



http://www.medwatch.jp/?p=18340
2018年度診療報酬改定で、機能分化や地域包括ケア構築を進めよ―中医協・公聴会 
2018年1月19日|2018年度診療・介護報酬改定 MedWatch

 2018年度の次期診療報酬改定に向けて、「医療機能の分化・強化、連携の推進」や「地域包括ケアシステムの構築」に力を入れる必要がある―。

 1月19日に開催された中央社会保険医療協議会の公聴会で、支払側・診療側を問わず、現場関係者からこういった要望が出されました。

ここがポイント!
1 7対1の重症患者割合、病院代表から「現行の基準値を維持せよ」との要望
2 クリニック代表からは「再診料の2点増点」の要望も
3 患者代表から「看護師やMSWも交えた、治療と仕事の両立支援」を求める声
4 オンライン診察や医学管理、支払側は積極推進を求めるが、診療側は慎重姿勢

7対1の重症患者割合、病院代表から「現行の基準値を維持せよ」との要望

公聴会は、中医協委員と厚生労働省保険局医療課の担当者が地方に赴き、診療報酬改定に関する一般市民の意見を聞き、改定内容に反映させることが狙いです。2018年度改定に向けた公聴会は、1月19日に千葉県千葉市で開催されました。

意見発表を行ったのは10名で、▼健康保険組合▼労働組合▼協会けんぽ▼国民健康保険―の関係者に患者代表を加えた支払側5名、▼クリニック▼病院▼歯科医院▼薬局▼訪問看護ステーション―の診療側5名、という構成です。

意見は多岐にわたりますが、診療側・支払側双方に共通する内容として、(1)我が国の公的医療保険制度の維持が重要であり、何らかの手を打たなければならない(2)機能分化の推進(3)地域包括ケアシステムの構築(4)治療と仕事の両立支援(5)医療安全の確保―の5点があげられます。

このうち(2)の機能分化に関しては、中医協において「急性期から長期療養に至るまでの入院基本料・入院料の再編・統合」案が議論されています(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。とくに急性期については、7対1と10対1を統合し、看護配置などに応じた【基本部分】と重症患者割合などに応じた【実績評価部分】(段階的評価部分)を組み合わせ、7段階の「急性期一般入院料」(仮称)を創設してはどうかとの考えが厚労省から提示されました。

この点について病院代表という立場で出席した川越一男氏(医療法人芙蓉会五井病院理事長)は、「医療経済実態調査結果では7対1病院の経営が極めて厳しい。統合・再編後に最も高い評価となる『急性期一般入院料1』の重症患者割合については、現在の7対1の基準値『25%以上』から引き上げるべきではない」と求めています。

川越氏は、▼地域包括ケア病棟は、当初「中小病院での設置」を想定していたはずであり、この考えに立ち返った「中小病院の地域包括ケア病棟」の評価充実を行うべき▼医療安全に係るコストを踏まえた医療安全対策加算の引き上げを行うべき—とも要望しました。

クリニック代表からは「再診料の2点増点」の要望も

また(3)の地域包括ケアシステム構築に向けては、かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の推進が重要になりますが、クリニック代表の立場で出席した佐藤孝彦氏(医療法人社団孚誠会浦安駅前クリニック院長、千葉県医師会理事)は「2010年度の診療報酬改定で再診料が2点引き下げられたままである(消費増税対応で引き上げが行われているが)。地域医療・地域包括ケアシステムの要であるクリニックの再診料について、基に戻して(2点引き上げて)ほしい」と訴えました。

さらに佐藤氏は、▼医療機関の大きな負担となっている医療廃棄物の処理費用を診療報酬でみてほしい▼残薬につながる長期処方をさらに是正してほしい—とも要望しています。

患者代表から「看護師やMSWも交えた、治療と仕事の両立支援」を求める声

(4)の治療と仕事の両立については、患者代表として出席した香川由美氏(NPO法人患者スピーカーバンク理事長)から、「2018年度改定に向けて主治医と産業医との連携が評価される見込みだが、これにとどまらず、看護師や医療ソーシャルワーカー(MSW)も参画した多職種による患者支援(医療だけでなく、生活面を含めた支援)を診療報酬で評価してはどうか」と提案しました。香川氏はI型糖尿病に罹患していますが、認定看護師が自身の悩みを聞き「●●の問題は◆◆職が担当する、○○の問題は◇◇職が担当する」との振り分けを行ってくれたことが非常に助かったと振り返り、こうした支援が広まることに期待を寄せました。

オンライン診察や医学管理、支払側は積極推進を求めるが、診療側は慎重姿勢

ところで、次期改定では、「ICTの利活用推進」を診療報酬で後押しする方針も明確になっています。その中で注目されているのが、テレビ会議システムなどを活用した「オンライン診療・医学管理」の評価です。例えば、外来医療を受けている慢性疾患患者について、状態が安定してきたことから「毎月の外来受診」を「2か月ごとの外来受診と、2か月ごとのオンライン診察」に置き換え、通院負担を軽減して、治療継続からの脱落を防ぐ、といった考えが浮上しています。

この点について、支払側代表として参画した上野洋一氏(千葉銀行健康保険組合常務理事)は、「例えば生活習慣病患者について、医師・保険者・行政が連携し、治療から脱落しないような環境を整えるべきである。ICTツール(上記オンライン診察など)も活用して、より効率的な医療提供を行う必要がある」と指摘。

一方、クリニック代表の佐藤氏は、「ICTの利便性ばかりが強調されれば、かえって患者に不利益が生じる。診療の原則は『対面』であり、ICTを活用した遠隔診療については安全性・有効性を慎重に見極める必要がある」と述べ、やや慎重な構えを見せました。

 
2018年度の次期改定に向けた国民の意見聴取は「パブリックコメント募集」という形でも行われています(1月19日締め切り)。中医協の田辺国昭会長(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、公聴会とパブリックコメントの双方の意見も踏まえて、これから「詰めの協議」を行っていく考えを述べています。



https://www.j-cast.com/2018/01/20318641.html
病院の食堂、地域に開放してみたら・・・ 地域包括ケア座談会で提案 
2018/1/20 13:00 J-CAST news

厚生労働省は医療・介護機関が連携する地域包括ケア制度を推進しているが、現状やあり方をめぐる新春座談会が2018年 1月10日、東京で開かれた。
一般社団法人医療介護福祉政策研究フォーラム (中村秀一理事長) の主催。司会の田中滋・慶応大学名誉教授 (医療経済学) はじめ厚労省、日本医師会、病院、大学病院らの代表 7人が意見を述べ、よりよい制度になるよう提言もした。

地域の医療、介護の連携は大きな課題
医師の働き方は他の仕事と同一視すべきでない


厚労省は病院を高度急性期、急性期、回復期、慢性期に分け、高度・急性期を減らし、回復期を増やそうとしている。

猪口雄二・全日本病院協会会長は
「病院は現実には様々な患者が入院しており、回復期の極端な不足論は疑問」
「都道府県 (医療) と市町村 (介護) の連携が不十分だ」
と指摘した。

後藤隆久・横浜市大市民総合医療センター病院長は
「大学職員の目的は急性期の研究業績で他との連携が乏しく、学生や医師に地域包括ケアを教えることも難しい」
と、率直に懸念を述べた。

医師で弁護士の古川俊治・参議院議員は近年の医療の動向を鋭く批判した。
「医療は病院でなく医師で成り立つ。知事が公的病院に指示しても、医師は教授や先輩でない知事に従わない」
「医局の力を弱めた臨床研修制度の廃止も検討すべきだ」
「技術を高める専門医制度で地域医療充足はできない」
などなど。

座談会では、往診義務や研鑽が伴う医師の働き方は他の仕事と同一視すべきでないことでは一致した。「労基署の介入で救急や産科が崩壊する」 (猪口さん) 、「外科は手術したがり麻酔医が過労、と診療科でも違う」 (後藤さん) 、「フランスでは一般には週35時間で医師は39時間労働」 (松田晋哉・産業医大公衆衛生教授) 。
地域ケアを担当する職員は「地域差が大きく、市町村と医師会の連携必要」 (伊原和人・厚労働省審議官、今村聡・日本医師会副会長)。
だが、「医師会・行政・大学合同の勉強会が多い福岡は模範例」 (松田さん) 。
「病院は食堂も開放、周辺にいろんな施設ができて町づくり、生活の中心になるのが望ましい」 (古川さん、田中さん) といった未来像も示された。
(医療ジャーナリスト・田辺功)

G3註: 現場を知らない人のおとぎ話と感じます



https://medical-tribune.co.jp/rensai/2018/0120512296/?_login=1#_login
医療経営の観点で考える地域連携 
ハイズ株式会社 加納 一樹、裵 英洙
2018年01月20日 06:00 Medical Tribune

地域連携室にはエース級の人材を配置しよう

 地域医療連携が必要不可欠な時代だ。医療の高度化が進み、平均寿命が延びたことにより、複数疾患を抱える高齢患者が多くなった。今後の複雑な医療ニーズに対応するためには、個々の医療機関の取り組みだけでは不十分で、地域における多様な医療機関がお互いに手を取り合い(連携)、患者を"面"で支えなければならない。これからは「病院完結型」から「地域完結型」への転換の必要性は加速していくだろう。

 まず、連携先として地域から選ばれる医療機関になるためには、自院の強み弱みをしっかりと認識し、効果的かつ効率的にそれらを地域に情報発信していくことがスタートとなる。その情報発信基地が「地域連携室」である。効果的な連携を実現するためには、地域連携室は一昔前の"よろず相談所"的な位置付けとは異なるものでなければならない。地域に対する情報発信基地として、病院ブランディングの戦略策定部門でもあるのだ。だからこそ、院内のエース級の優秀な人材を配置し、広報や営業活動に積極的に力を入れる必要がある。いまだに地域連携室を重要と考えず、人員を割くことを考えない医療機関があり、場当たり的に引退間近の看護師や事務員が兼任しているケースをしばしば目にする。

 診療報酬上でも、紹介・逆紹介率などの地域連携のKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)が評価される流れにあり、今後も地域連携の推進が加速していくのは間違いないだろう。今後の病院経営を考える上で、地域連携は経営戦略の中枢に位置する重要成功要因と考えられるからこそ、地域連携室が取るべき具体的アクションには注目したい。

 今回は、病院経営の視点、つまりマネジメント視点から見た地域連携の3つのポイントをお伝えしよう。


ポイント1:連携医療機関リストの整備

 近隣の医療機関全てと全方向性の良好な関係を築くことができれば最良だが、それには膨大な時間と労力が必要となる。まずは、自院がどの医療機関と良い関係性を築いておくと、患者と自院の経営面に良い効果を挙げることができるかを整理する必要がある。いわゆる、"お得意様"はどの医療機関か、というように自院が深くお付き合いする優先順位を明確にしていく。そのためには、連携医療機関リストの整備が不可欠である。医療機関名、自院からのアクセス、病床数、得意科目、紹介率、逆紹介率、紹介された患者の入院率、重症度、入院単価、窓口担当者の人柄などさまざまな要素をリスト化していく。

 リストができ上がったら、自院の経営にプラスになる順にSランク、Aランク、Bランク、Cランクと分類する。次に、Sランクを維持するための策、下位ランクを上位ランクに格上げするための策をそれぞれ考えていくのだ。例えば、「Sランクは関係性維持のために最低でも月に1回訪問しよう」「今月はCランクをBランクにするための強化月間にしよう」などのアクションを考えていく。もちろん、お得意様でない医療機関をないがしろにする、という話ではない。やみくもに近隣の医療機関と連携するのではなく、限られた資源である時間と労力を効率的かつ効果的に配分するためのステップである。

ポイント2:オフラインとオンラインの情報発信を行う

 自院の良さを伝えるための情報発信のポイントは、「相手がどのような情報なら耳を傾けてくれるか」である。地域連携室のみならず、医療機関からの情報発信は相手を考えない一方的な情報発信がまだまだ多い。

 自院の情報を発信する場合、相手に合わせた文脈を理解することは必須であり、かつ情報発信の手段も相手に合わせて使い分けたい。ある医療機関の担当者はFAXより電子メールがよいかもしれない。別の担当者はメールよりもパンフレットを持参して、口頭での説明を好むかもしれない。もしくは、SNSでの簡単なやり取りでよいという担当者もいるだろう。「どのような情報を好むか」「どのような媒体を好むか」などの視点を持って、連携先の医療機関の担当者に会った際に擦り合わせをすることをお勧めする。

 つまり、「私たちの病院はこの形でしか情報発信しません」と思考停止に陥るのではなく、"相手"に気に入られるにはどの媒体がよいか?どのような情報か?と常に柔軟に考えるようにしたい。

ポイント3:「3つの共有」を意識する

 地域連携はある意味、コミュニケーションでもある。もし、地域連携室がコミュニケーション下手な場合、その病院の窓口が閉鎖しているに近い。だからこそ、コミュニケーションの達人になってほしい。

 一般的に、人は「3つの共有」があるときに、コミュニケーションが深まるといわれている。「時間」「空間」「経験」の3つだ。この3つのバランスを取ることが良好なコミュニケーション関係を築くためのポイントである。

 例えば、電話をかけるという行為を考えよう。電話をすることでお互いの「時間」は共有できるが、実際に会ってはいないため、「空間」の共有はできない。よって、会って話すという行為に比べて、電話はお互いの理解の深まりに時間を要する。「経験」の共有とは、「一緒に何か同じ経験をする」というものだ。一例を挙げると、懇親会や旅行などで一緒の体験を共有することだ。共有体験の頻度が高いと人は親密になりやすくなる。"同じ釜の飯を食う"とは、この3つがそろっている状況を創ることであり、コミュニケーションは深化しやすい。地域連携でも、地域で開催される症例検討会などの一緒にディスカッションする場で、「時間」「空間」「経験」の3つを積極的に持つようにしたい。

 さて、読者の皆さんの職場の地域連携室は、この3つの共有を積極的に取得するように動いているだろうか。管理者は「連携先と密なコミュニケーションを取りなさい」とお題目だけを唱えるのではなく、Howの部分もセットでマネジメントすることが大切である。



 今回ご紹介したのは、マネジメントでいうところのマーケティング、広報、営業に当てはまる。それぞれを単体で実践しても効果はあるが、同時に行うことでより大きな効果を発揮する。地域連携はつかみどころがない概念かもしれないが医療経営にとっては核心でもある。地域連携室の特別の職員だけが"人間力"で地域連携を推し進めるパターンもあるが、その担当者がいなくなると連携力が低下するのは経営管理としてはいただけない。だからこそ、属人的でない地域連携室の構築が大切なのである。そのためにもマネジメント視点で地域連携業務を眺める視点を身に付けたい。

【まとめ】
 地域医療連携に「マーケティング、広報、営業」などのマネジメント視点を取り入れて、より効果的に実践をしよう。

G3註: 現場を知らない人のおとぎ話と感じます



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t305/201801/554409.html
特集◎「2040年問題」で日本の医療はここまで変わる《5》
2040年、医療機関と医師の動きはこう変わる
 
2018/1/17 満武里奈、加納亜子、三和 護=日経メディカル

 ■ 病院の統廃合と機能再編が進む
 ■ 診療縮小の地域は遠隔診療で対応
 ■ 在宅担う診療所は複数医師体制に

 人口や医療需要が大きく変化する地域では、需要に見合った形で各医療機関の診療機能を見直したり、病院を統廃合するなど、診療機能の再編が進むのは必至。それに伴い医師の働き方が変わるケースも増えそうだ。

 2040年に先駆けて人口減に直面した結果、既に病院の統廃合に踏み出した地域もある。長崎県の五島列島では、2009年から2014年にかけて2つの二次医療圏にあった6つの公立病院を3つに集約。残りの3施設は診療所に転換した(図8)。

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図8 五島医療圏と上五島医療圏における医療機関の再編(取材を基に編集部作成)

 五島列島の五島医療圏と上五島医療圏は、人口がそれぞれ3万7327人、2万2278人で、高齢化率は36.7%、38.5%に達する(2015年時点)。若年人口ばかりか65歳以上人口の減少も止まらず、2010年から2015年にかけての人口減少率はそれぞれ8.11%、10.61%という状況だ。

診療所への転換で勤務負担減

 人口減に伴い入院患者数が減少。空床も目立ち、診療所に転換した3病院の病床稼働率は奈留病院が43.6%(2013年)、奈良尾病院が12.6%(2010年)、有川病院は10.8%(2009年)にまで落ち込んでいた。

 再編は、6病院の経営主体だった長崎県病院企業団が断行した。「『おらが町から病院がなくなる』ということで住民からは当然、不満の声が上がった。だが、3~4人の医師で50床規模の病院を運営し続けるとなると、毎日の当直配置を含め医師の確保は難しく、さらには人口減少のため患者は減り続け赤字を免れない。10年後も変わらず必要な医療を提供し続けるためには病院再編が不可欠と考え、皆に理解を求めた」と同企業団企業長の米倉正大氏は振り返る。

 五島医療圏では、基幹病院である五島中央病院(304床)が奈留病院を吸収し、奈留病院は19床の有床診療所に改組。高機能診療所として夜間救急にも対応できるようにした。

 一方の上五島医療圏では、有川病院と奈良尾病院を無床診療所に転換。看護師が基幹病院である上五島病院(186床)に移ったことで、同病院では休止していた療養病床を再開したほか、一般病棟の看護配置を10対1に引き上げた。

 無床診療所に転換した2病院で働く医師は、当直や病棟業務の負担がなくなったことで長時間労働が是正され、残業がなくなった。「医師の負担は大きく減った」(米倉氏)。

若手医師が集まる病院に変貌

 こうした再編が、2040年には全国至るところで見られるようになるだろう。そして機能再編の動きは、都道府県の「地域医療構想」の運用により加速することになりそうだ。

 地域医療構想とは、各地域の実情に応じた医療提供体制を再構築するプラン。原則として二次医療圏を単位とする「構想区域」ごとに診療機能別の病床数を明らかにして、病床配置の見直しを図るとともに、在宅医療・介護など受け皿の整備を目指す。現在、2025年に向けた構想が出そろったところで、今後も定期的に見直していく。

 奈良県では既に、地域医療構想に基づく病院再編が進んでいる。県南部の南和医療圏で、急性期医療を担っていた町立大淀病院(常勤換算医師数13.0人)、県立五條病院(同25.7人)、国保吉野病院(同9.7人)の3つの公立病院を2016年に再編、統合。大淀病院を廃止して232床の南奈良総合医療センター(同58.2人)を開設した。同センターに各病院の急性期の診療機能を集約し、「重症患者を断らない医療機関」として機能強化を進める一方で、吉野病院と五條病院は回復期・慢性期入院医療などに特化した。

 この病床再編により、地域全体の急性期入院機能が向上。3病院の医師数は計48.4人から60.8人に、救急搬送の受け入れ件数は年間2086件から4104件に増えた。症例集積や研修機能の向上に伴い若手医師が集まり、病院の役割が明確になったことで大学医局からの医師派遣協力も得やすくなった。圏内で急性期から慢性期まで切れ目のない医療提供が可能になったという。

 このように病院の統廃合や機能再編は、勤務医師の負担軽減に加え、その確保にもプラスに働き得る。国は現在、都道府県ごとに「医師確保計画」を策定し、医療計画に盛り込む検討を進めている(後日公開記事参照)。医師不足の地域で一定期間、勤務した医師を厚労相が認定し、経済的なインセンティブを付与する方向だ。これから医療現場に出てくる医師が対象となるため、その効果が現れるまでには時間がかかりそうだが、2040年には地方の医師不足が今よりも改善している可能性は高い。

ヘリや遠隔診療システム活用も

 病院の統廃合を進めると、診療機能が縮小する地域の住民にとっては、専門的な医療を受けるために遠方の病院への受診を余儀なくされるなどの不利益が生じる。2040年までには、そうしたマイナスの影響を和らげる様々なツールの活用が進みそうだ。

 五島列島では、長崎大学や長崎医療センターなどの専門科の医師をヘリコプターで輸送する「NIMAS」(Nagasaki Island Medical Air System)を利用して、診療所に転換した施設に専門医を派遣している。

 「診療体制を縮小した分、医療の質を維持するためにNIMASを活用する体制にした」(米倉氏)。例えば、上五島病院の付属診療所2施設には、長崎大学病院から泌尿器科、精神科の医師が毎週、循環器内科医が隔週、内科、眼科、耳鼻咽喉科の医師が月2回、神経内科の医師が月1回派遣されるといった具合だ。

 遠隔診療も、診療機能の縮小を補う有力な手段となる。長崎県では2017年、以前から運用している患者情報共有システム「あじさいネット」を活用し、離島を含む過疎地の患者に専門的な医療を提供し始めた。

 まずは睡眠時無呼吸症候群の診療に導入。患者は井上病院(長崎市)の睡眠センターを受診し、1泊入院して睡眠時のポリグラフ検査を受ける。その後は自宅に戻り、かかりつけ医のいる地元病院を訪れる。そこでかかりつけ医同席の下、あじさいネットのテレビ会議画面で、井上病院副院長の吉嶺裕之氏から検査結果と今後の治療方針の説明を受ける仕組みだ(図9)。

図9 井上病院と上五島病院間における遠隔診療の様子(提供:井上病院・吉嶺氏)(図 略)

 あじさいネットの運用に関わる長崎大学医療情報学准教授の松本武浩氏によれば、今後は、他の疾患についても遠隔診療の実施を検討しているという。「睡眠時無呼吸症候群や神経内科疾患などは潜在患者数が多いにもかかわらず、過疎地にはなかなか専門の医師がいない。将来的には各離島にある基幹病院に遠隔診療外来を開設し、専門科の医師とネットワーク回線を通してやり取りをしてもらうことで、住み慣れた場所で診断と治療をできるようにしていきたい」と話す。

携帯型分娩監視装置が標準に

 患者の状態を離れた場所でチェックする遠隔モニタリングも、2040年には導入が広がっていることだろう。その効果は、現時点でも実証済みだ。鹿児島県奄美市の名瀬徳洲会病院で産婦人科常勤医として働く小田切幸平氏は、遠隔モニタリングを駆使して、奄美群島の産科医療を支える活動を続けている。

 同病院は常勤の産婦人科医1人、助産師3人の体制で、遠方の妊婦にまで対応するには限界がある。そこで小田切氏が導入したのがモバイルCTG(持ち運びできる小型分娩監視装置)システムだった。

 自宅で妊婦が自己装着し、得られた胎児心拍数と子宮収縮のデータは通信回線を通じて医療機関のパソコンや医師の携帯電話に送信される。「おかげで胎児仮死や切迫早産のケースも、何とか救命もしくは早めに対処することができるようになった」。

 名瀬徳洲会病院では、このシステムを、通院が困難な遠方の妊婦でかつ頻回のCTGチェックが必要なケースに導入している。例えば、羊水過少や胎児発育不全、出産予定日超過などの胎盤機能不全が懸念される症例、あるいは切迫早産などの子宮収縮のモニタリングが必要な症例などだ。送られてくるデータは、産科医1人と助産師2人でチェックし続けている。

 モバイルCTGを利用した妊婦からは、「わざわざ病院に行かなくても医師とつながっている安心感があった」「胎児への愛おしさが強まった」という声が寄せられている。小田切氏らの遠隔分娩監視の取り組みは、他の地域にも十分に応用が可能だろう。

 地方では、一般診療は身近な医療機関で受けつつも、集約化が不可欠な専門診療は遠隔受診する──というスタイルが2040年には標準になっているかもしれない。


在宅は複数医師対応が当然に

 一方の大都市やその周辺部で、在宅医療の需要が急増していくことは、これまで述べてきた通り。当然のことながら病院だけでは対応しきれず、診療所も訪問診療などに取り組まなければ地域医療は崩壊しかねない。

 だが、医師が1人しかいない診療所では、多様な疾患を有する高齢者への対応には限界がある。《3》で紹介したホームケアクリニック横浜港南が、医師5人体制を敷いているのはそのためだ。実際、高い診療報酬が算定できる機能強化型の在宅療養支援診療所は「常勤医師3人以上」が要件となっている。2040年に在宅診療に携わる診療所は、複数医師体制が当たり前になっているだろう。

 そして地方か都市部かを問わず、これからの医師に求められるのが、患者を「総合的に診る力」だ。今後は急性期後の回復期・慢性期医療の入院需要や、在宅医療需要が高まっていく。入院患者の在宅復帰を支援したり、高齢者の様々な合併症に対応するには、生活環境も含め幅広く診る能力が欠かせない。

 「国民の医療ニーズに応えるには、将来的には医師の半数以上が総合診療医になるような政策を採ることを考えてもいい」と元内閣官房社会保障改革担当室長の中村氏は指摘する。

 こうした将来の医療需要に対応するため、2018年4月に始まる新専門医制度では、総合診療科を19番目の診療科に追加した。また、日本医師会は「日医かかりつけ医機能研修制度」を実施。全日本病院協会も、10年以上の臨床経験を持つ医師がどのような疾患・病態の患者にも対応できるようにするため、不足しているスキルを補う研修「全日本病院協会総合医育成事業」を始める方針を示している。

 これらの研修が実臨床に合った形で実施され普及すれば、総合的な診療能力を持つ医師は着実に増えていくことが見込まれる。

 2040年に向け、各病院が担う診療機能や地域の医療提供体制は大きな変貌を遂げていくだろう。現場の医師としては、自身が勤務する地域の人口や医療需要などの予測値を把握し、今後の変化に対応する手立てを早めに講じておきたいところだ。



http://www.medwatch.jp/?p=18338
地域医療構想調整会議での議論「加速化」させよ―厚労省・武田医政局長 
2018年1月19日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 厚生労働省は1月18日に、全国厚生労働関係部局長会議を開催し、次年度(2018年度)における厚生労働行政の重要事項を、都道府県などの保健福祉担当者に説明しました(厚労省のサイトはこちら)。

 医政局の重要事項については、厚生労働省医政局の武田俊彦局長が、地域医療構想や医師偏在対策を中心に説明しました。

ここがポイント!
1 地域医療構想調整会議での議論、「2018年度までが特に重要」
2 地域医療構想調整会議を外来医療についても検討する場に

地域医療構想調整会議での議論、「2018年度までが特に重要」

 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となることから、医療(特に回復期・慢性期)・介護ニーズが飛躍的に高まり、地域における医療提供体制の再編(機能分化・連携の強化)が必要となります。このため、各都道府県が「2025年における高度急性期、急性期、回復期、慢性期の機能別の必要病床数」などを推計し、地域医療構想(いわば「2025年における医療提供体制像」)として昨年(2017年)3月までに策定・公表しています。

 地域医療構想の実現に向けては、都道府県が地域ごとに開催する地域医療構想調整会議(以下、調整会議)などで医療関係者らが話し合い、医療提供体制を再編して「2025年における医療提供体制像」に近づけるために「各医療機関がどのような役割を担えばよいのか」を具体化していきます。

 厚労省は、「都道府県が何をしなければいけないのか」「どういう点から検討していけばよいのか」などを、これまでも通知の発出や研修会開催などで都道府県に伝えてきましたが、昨年(2017年)12月、「都道府県がすべきこと」がより明確になるように、地域医療構想に関するワーキンググループ(医療計画の見直し等に関する検討会の下部組織)での議論を整理しています(関連記事はこちら)。武田局長は、この「議論の整理」の中で、調整会議での協議の進め方が次のように明確化されたことを説明しました。

▼公立病院や公的医療機関などの具体的な対応方針(2025年時点の医療機能ごとの病床数など)について、調整会議で今年度(2017年度)中に協議する
▼医療機能などを大きく変更する予定のある医療機関の対応方針も、速やかに協議する
▼遅くとも来年度(2018年度)末までに、全医療機関の対応方針を協議する
▼調整会議で関係者の合意が得られた対応方針を、都道府県が毎年度取りまとめる

 また武田医政局長は、昨年(2017年)6月に閣議決定された「骨太方針2017」(経済財政運営と改革の基本方針2017―人材への投資を通じた生産性向上―)の中で、「2年程度かけて、調整会議で集中的な検討をする」よう促されていることを挙げ、「今年度(2017年度)から来年度(18年度)が重要な年になる。議論を加速化してほしい」と都道府県担当者に呼び掛けました。
地域医療構想調整会議では、地域にある全医療機関の対応方針について、2018年度末までに協議することになる(図 略)

地域医療構想調整会議を外来医療についても検討する場に

 医師の偏在対策については、医師需給分科会が昨年(2017年)12月にまとめた「早急に着手すべき対策」に基づいて、医療法や医師法の改正案を厚労省が準備しています(2018年通常国会に提出予定)。武田医政局長は、今般の医師偏在対策の柱は、(1)医師少数地域での勤務を医師に促す環境整備(2)都道府県の体制強化(3)外来医療機能の偏在などへの対応―であることを確認(関連記事はこちら)。

 医師少数地域の診療所などで医師が働くに当たっては、現状、「自分の代わりを務める医師がおらず、休暇が取れない」「自分の専門外の患者を診療することになった場合に、相談できる医師が身近にいない」といった不安を感じるかもしれません。そこで、偏在対策の(1)では、▼医師が交代で勤務できるように、医療機関からの医師派遣を複数人セットで行うを派遣する ▼地域の中核病院が、専門外の症例に関する助言などを行う―ことで、安心して診療できる勤務環境を整えていきます。医師派遣や助言提供を行い、勤務環境整備に貢献する医療機関には、経済的なインセンティブ(補助金など)が付与されることになります。

 また、そもそも医師不足地域での勤務を希望する医師の数を増やすために、「医師少数地域で一定期間勤務した医師を厚生労働大臣が認定する制度」を新設。武田局長は、「認定を得た医師に対しては、さまざまなインセンティブを検討したい」と述べています。

今後、医療法や医師法などが改正され、医師に医師不足地域での勤務を促す仕組みが設けられる見込みだ(図 略)

 一方、(2)の「都道府県の体制強化」では、3か年の「医師確保計画」の策定が都道府県に義務付けられます。「医師確保計画」には、「地域の医療ニーズに見合う医師確保の目標値」などを盛り込み、目標達成に向けて、都道府県が大学医学部やその付属病院などと連携しながら、医師派遣や医師の地域定着策に取り組めるように、都道府県に権限(例えば、医学部に「地元出身者枠」を設けるよう大学に要請する権限)を与えます。

医師偏在対策では、地域ごとの医師偏在の度合いを示す指標も導入される
都道府県では今後、医師確保計画を策定して医師偏在解消に取り組むことになる見通しだ
都道府県には、「地元出身者枠」の設置を大学に要請する権限などが付与される見通しだ
診療科偏在の解消に向けて、厚労省は都道府県から日本専門医機構に意見を述べる仕組みが法定される見通しだ
(解像度が低く、文字情報が解読できないため、上記4点図 略)

 また、(3)の「外来医療機能」の関連では、無床診療所の開設場所が都市部に偏ってしまっている現状を踏まえて、「外来医療の需要があるにもかかわらず供給が不足している地域=開業が成功しやすい地域」の情報 を、開業を希望する医師に提供する仕組みを設けます。「外来医療の供給が不足している地域」での開業を促す狙いがあり、どのような情報を提供するかは、二次医療圏ごとに医療関係者らが話し合って決めることになります。この外来医療に関する協議の場について武田局長は、「地域医療構想調整会議も活用してはどうかと考えている」と述べています。
地域医療構想調整会議では今後、外来医療の提供体制についても話し合うことになりそうだ
(解像度が低く、文字情報が解読できないため、図 略)



https://mainichi.jp/sunday/articles/20180115/org/00m/010/003000d
社会保障
「国民健康保険」「介護保険」 これは許せん! “大改悪”が家計を破壊する!
 
2018年1月17日  Texts by サンデー毎日

 2018年は「惑星直列の年」と呼ばれる。惑星が一列に並ぶように、社会保障の制度改正が重なるためだ。医療や介護などの「負担増」「給付減」の波が、ますます家計を圧迫する。安心して医療や介護を受けるために何を知り、備えておくべきなのか。

「2018年は、2年に1度の診療報酬と3年に1度の介護報酬の“ダブル改定”が実施されるほか、4月からは地域の医療機関の病床再編が本格化する『地域医療構想』がスタートします。同じく4月からは国民健康保険(国保)の財政運営が市町村から都道府県に移管されるなど、重要な改革が目白押しです。これだけ大規模な制度改正が一斉に行われるのは珍しく、私たちの暮らしや家計に大きな影響を与えます」

 そう話すのは、三原岳・ニッセイ基礎研究所准主任研究員だ。

 これらの改革は、団塊の世代のすべてが75歳以上の後期高齢者になる25年に向け、膨らみ続ける社会保障費を抑制するために行われる改正だ。何がどう変わるのかみていこう。

国保の都道府県化で保険料がさらに高騰
「家賃5万円を払い、子どもに食べさせるお米や野菜を買えば手元に残るお金はほとんどありません。これ以上何を削ればいいのか……。とても保険料に回せるお金はありません」(東京都足立区・38歳自営業女性)

「勤めを辞めて会社の健康保険から国保に移ったら、1カ月に3万円もの保険料になり、高いことにビックリした」(横浜市・66歳男性)

 定年退職した人や自営業者らが加入する市町村の国保は、年々保険料(税※)が高騰し、「高すぎて払えない」との悲鳴が上がっている。

 たとえば、所得が年250万円の3人家族(30歳代の夫婦と子ども1人)の場合、国保料は東京23区で35万2800円、大阪市34万7100円、福岡市35万2100円など、所得の1割を大きく上回っている。1カ月の給与が吹き飛んでしまうほどの高負担は限界だろう。

 高騰を招いている要因は、加入世帯の低所得化と国の予算削減だ。国民健康保険制度に詳しい立教大コミュニティ福祉学部の芝田英昭教授はこう話す。

「かつての国保加入者は、農林水産業や自営業者が多かったのですが、現在は年金生活などの無職者や非正規雇用者が約8割となり、所得なし世帯が約3割、所得100万円未満の世帯が半分を占めています。所得に占める1人あたりの保険料負担は会社員らが加入する組合健保の約2倍で、最も所得の低い層が最も重い負担を強いられている状況です」

 被用者保険の保険料は会社と折半なので自己負担は半分で済むが、国保は全額自己負担だ。また、給与によって保険料が決められている被用者保険は扶養家族が何人いても保険料は同じだが、国保は家族が多いほど保険料が比例して高くなる、という構造的問題もある。

「加えて、1984年には約45%だった国庫補助が、2015年度には20・3%にまで削減され、その結果、高すぎる保険料を払えなくなる人が続出しているのです」(芝田教授)

 16年度の滞納世帯は312・5万世帯と全加入世帯(1968万世帯)の約16%が滞納しているのだ。

 財政難にあえぐ自治体は、未納者や滞納者を「差し押さえ」などの処分で締め上げる。国保料を払えずに差し押さえられた世帯数は、06年の9・5万件から29・8万件とこの10年で3倍にも増えている。

 こうした赤字財政の国保を立て直すため、今年4月から、国保は市町村と都道府県の共同運営に変わる。1961年の制度開始以来の大改革だ。

 都道府県化して規模を大きくすれば財政基盤が安定し、移管に伴い国から財政支援(2018年度約1700億円)も受けることができる、というのが国の説明だ。保険料の払い方は変わるのだろうか。

「新制度になっても、国保料の額を決め、住民から保険料を徴収するのは引き続き市町村の仕事です」(芝田教授)

 では都道府県はどのような仕事をするのか。

「これまでは、市町村が医療費の推計や保険料の決定、徴収を行っていましたが、今後は、都道府県が医療医の推計を行い、市町村に『納付金』を割り当てます」(同)

 次のような流れになる。

(1)都道府県が市町村に対して「納付金」の金額を提示する

(2)「納付金」の提示を受け、市町村は「納付金」がまかなえる保険料率を決める

(3)加入者から保険料を徴収する

(4)市町村は、都道府県に「納付金」を納める

「納付金は100%完納が義務づけられ、減額は認められません。そうなると市町村は住民から集める国保料の徴収を強化するしかありません。納付金とあわせて、都道府県は各市町村の『標準保険料率』も公表することになっていて、この標準保険料率を参考に市区町村が実際の保険料を決めるのです」(同)

 標準保険料率はあくまで“参考”であって市町村は従う義務はない、とされている。しかし、芝田教授はこう話す。

「建前はそうなのですが、県から提示された“あるべき保険料”の提示が、市町村への圧力となって働きます」

 さらに保険料アップに影響を及ぼすのが、保険料を抑制するために、一般会計から国保会計に投入している「法定外繰入金」だ。

「政府・厚労省は繰り入れを『計画的に解消していくべきだ』という方針で、その“指導役”の役割を都道府県に果たさせようとしているのです」(同)

 税金の補てんがなくなれば急激な保険料上昇を招いてしまう。

 今でも多くの市町村は、国保料の収納率を上げるために正規の保険証を取り上げたり、預金や財産を差し押さえするなど強権的な手法をとっている。具合が悪くても病院を受診できず、治療が手遅れになって命を落とすケースも相次いでいる。

「国保が抱える構造的問題を放置したまま、市町村に徴収強化を促すような都道府県化を導入すれば、加入者はますます貧困に追い込まれ、医療を受けられない人たちも増えるでしょう」(同)

 市町村でバラバラの保険料を統一すべきかどうかは、都道府県によって対応が分かれている。現状通り、財源不足分を一般会計から補てんし続ける予定の自治体もある。自分が住む自治体の保険料がどうなるのか、注視していきたい。

病床削減で医療難民が出る!?
 国保の都道府県化に限らず、今後はあらゆる医療行政において「都道府県の役割」が強まっていく、と先の三原さんは言う。

「一律の財源対策が難しくなってきた国は、病床を削減したり、保険料上昇を抑えるために都道府県の役割と責任を強化しようとしています。都道府県によって異なる診療報酬(医療の公定価格)が導入される可能性もあります。後で振り返ると18年は医療行政の都道府県化が進んだ元年と言われるかもしれません」(三原さん)

 昨年末までに、47都道府県は、医療提供体制の将来像(ビジョン)を示す「地域医療構想」を策定した。それによると、現状約127万4500床の全国の病院のベッド(病床)数は25年に約119万床に減る見通しだ。

 特に、重い病気で入院している患者向けの「急性期病床」が削減される。

「急性期病床は病院にとって採算性の高い部門なので、政府はこれが医療費増大の原因とみて、減らそうとしているのです。急性期病棟には現在、患者7人に対して看護師1人が配置されていて、最も報酬が高いのですが、政府はこの算定方法を見直して報酬を引き下げ、再編を促そうとしているのです」(全国保険医団体連合会の寺尾正之さん)

 介護施設や在宅介護ができる態勢が整っていなければ、病院から追い出されて行き場をなくす“医療難民”や“介護難民”が出かねない。

「在宅に戻されても、生活援助の利用が制限されるなど介護保険サービスも十分に使えなくなっている現状です。途切れない医療介護体制を国の責任でつくるべきです」(寺尾さん)

 一方、前出のニッセイ基礎研究所の三原さんは、こう話す。

「地域医療構想は病床削減目標だけでなく、地域の医療提供体制と、その理念を描くことを求められています。都道府県が発表した地域医療構想を子細にみていくと、地域特性を生かした独自の医療体制を構築しようとしている自治体も見受けられます」

 つまり、都道府県の“やる気”“意欲”によって、医療体制の格差が広がる可能性が出てくるということだ。

「高齢者が増えていくなか、『治す医療』だけでなく『生活を支える医療』の重要性が増していきます。住民もいきなり大病院に行くのではなく、身近に相談できる医師を探したり、そうした医師の情報を提供している医療機関や自治体の情報を収集したりして、自ら能動的に考え動いていくことが大事になります」(同)

介護保険からの「自立」「卒業」という非道
「年金から高い保険料を天引きされながら、いざ介護サービスが必要になると、『要支援の人の調理や掃除はヘルパーじゃなくボランティアにやってもらえ』なんておかしいですよ」

 要支援2で週1回の訪問介護サービスを利用している75歳の男性は憤る。

 膨張する介護給付費に歯止めをかけるために、サービスを使いにくくしたり、利用者負担を重くする施策がここ数年、次から次へと繰り出されてきた。

 (1)要支援1、2のホームヘルプ(訪問介護)、デイサービス(通所介護)は保険からはずされ市町村の事業に(2)特別養護老人ホームへの入居は原則要介護3以上の人に(3)所得にかかわらず1割だった自己負担は一定所得以上の人は2割に(4)非課税世帯でも預貯金が一定額あれば、介護保険施設の食費や部屋代の補助(補足給付)は打ち切り――。

 そして今、盛んに言われているのが介護保険利用者の「自立支援」だ。介護保険サービスの利用が必要なくなった状態を「自立」と呼び、介護保険から「卒業」させる動きが全国の自治体で広がっている。

 身体機能を高めて要介護度を改善した市町村には、財政的に優遇する「インセンティブ」(動機づけ)の制度が改正介護保険法に盛り込まれた。

「ヨボヨボになっているのにリハビリを一生懸命やって自立しよう、なんてハッパをかけられるのは拷問に近い」と76歳男性(要介護1)は憤る。

 リハビリなどを行った高齢者が「元気」になることは喜ばしいことに違いないし、多くの人の要介護度が下がれば介護給付費も抑えられて一石二鳥ともいえるが、「大きな危険性をはらんでいる」と前出・三原さんは指摘する。

「すべての高齢者が、リハビリなどによって要介護度を下げられたり、介護保険を卒業できるわけではありません。そもそも介護保険制度は、高齢者のニーズに応じて自らサービスを選択し、その人らしく暮らすことを支援する、という理念だったはずです。次々行われる見直しをみていると、利用者の選択権を奪い、行政が使うサービスを決めていた介護保険導入前の『措置』制度に戻りつつある気がします」

 ヘルパーが料理や掃除などを手助けする「生活援助」についても、使いすぎないように利用を制限する仕組みが今年10月から始まる。生活援助を行うヘルパーの資格を短い研修でも可とする基準緩和が4月の介護報酬改定で盛り込まれた。いずれも“軽度者”を介護保険から切り捨てる意図が透けてみえる。

「介護保険は保険である以上、保険料を払った人には反対給付を伴う必要があります。要支援や要介護状態の人に介護サービスの利用を制限したり取り上げたりするのは、約束違反であるし、詐欺のようなものです。国保も同じですが、財源が厳しいとか、保険料を払える、払えないとは関係なく受給権を保障するのが社会保障です」(芝田教授)

 健康で文化的な最低限度の生活を営む権利「生存権」が脅かされつつあることに私たちはもっと声を上げていかなければいけない。

(本誌・藤後野里子)

※「国民健康保険税」として徴収している自治体もある。本誌では、以下「保険料」と表記

(サンデー毎日1月28日号から)



http://www.medwatch.jp/?p=18240
2025年に向けて、地域の医療・介護提供体制の再構築を最大限支援する―加藤厚労相 
2018年1月16日|2018年度診療・介護報酬改定 MedWatch

 2025年に向けて、地域医療構想の実現、医師偏在の解消、働き方改革の実現、地域包括ケアシステムの構築などに国を挙げて取り組んでいく—。

四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)が1月12日に開いた2018年の賀詞交歓会で、加藤勝信厚生労働大臣はこのような考えを述べました。

ここがポイント!
1 医療・介護ニーズの多様化に対応するため、医療・介護提供体制の再構築が不可避
2 保険医療サービスに係る消費税問題、抜本解決を求める
3 自院の等身大の姿を見極め、地域の事情も踏まえながら、地域での役割を考える

医療・介護ニーズの多様化に対応するため、医療・介護提供体制の再構築が不可避

 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となるため、今後、医療・介護ニーズが飛躍的に高まるとともに、そのニーズが多様化していきます。加藤厚労相は、この多様なニーズに対応するために「地域の医療・介護提供体制を再構築していかなければならない」点を強調。

さらに、今年(2018年)は、▼新たな医療計画、介護保険事業(支援)計画がスタートする▼6年に一度の診療報酬・介護報酬同時改定が行われる—という重要な節目の年となるため、次のような施策を通じて、2025年に向けた医療・介護提供体制の再構築を、国を挙げて支援していくことを強く訴えました。

▼地域医療構想の実現に向けて、データ分析を推進し、医療提供における役割分担(機能分化)の好事例を共有するとともに、地域医療介護総合確保基金をはじめとして、進捗状況に応じたきめ細かな支援を行う

▼医師偏在という大きな課題に対応するために、都道府県が主体的に医師確保を行える体制を確保し、医師の地方勤務を後押しできるように、今通常国会に医療法等の改正案を提出する

▼医師の働き方改革を実現するために、地域医療への影響を考慮した上で、関係者の議論を深化させていく

▼2018年度の診療報酬・介護報酬改定において、地域包括ケアシステムの構築、医療・介護連携の推進、ICT活用も含めた医療現場の負担軽減などによって、質の高い効率的な医療提供体制を再構築する」ことになります。

保険医療サービスに係る消費税問題、抜本解決を求める

また日本医師会の横倉義武会長の代理として来賓挨拶を行った今村聡副会長は、四病院団体協議会と日本医師会とがこれまで以上に連携し、「医政を正し、国民の信頼の応えていかなければならない」と訴えました。
 
とくに保険医療サービスへの消費税問題について、来年(2019年)10月には消費税率が10%に引き上げられ、このままでは医療機関の負担がさらに増してしまうことから、「抜本解決を主張していく」考えを強調しています。医療機関が購入する物品やサービスについては消費税が「課税」されますが、医療機関が患者に提供する保険医療サービスでは消費税が「非課税」となっているため、医療機関が負担した消費税は、最終消費者となる患者・保険者に転嫁することはできません。このため、消費税導入時・消費税率引き上げ時には、特別の診療報酬プラス改定で対応されてきましたが、医療現場からは「医療機関の消費税負担を十分に賄えていない」との強い批判があります。消費税率が引き上げられれば、医療機関の消費税負担はさらに重くなるため、経営がさらに厳しくなってくるのです。日医らは「保険医療サービスについて、消費税をゼロ%で課税し、医療機関が収めた消費税が償還される仕組みを設けるべき」ことなどを提案しており、今後の税制改革論議がさらに熱を帯びてきそうです。

自院の等身大の姿を見極め、地域の事情も踏まえながら、地域での役割を考える

さらに、主催者として挨拶した日本病院会の相澤孝夫会長は、今年(2018年)を「将来に向けた改革の重要な第一歩である」と位置づけ、▼自院の等身大の姿をきちんと見極める▼周辺がどのような状況になっているかをきちんと把握する▼時代の潮流を見て、自院が地域で何をしなければならないかをしっかりと考える—という3つの取り組みに、覚悟をもって踏み出さなければならないと、出席者に檄を飛ばしました(関連記事はこちらとこちら)。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t305/201801/554399.html
特集◎「2040年問題」で日本の医療はここまで変わる《3》
「入院難民」「在宅難民」が深刻な社会問題に
 
2018/1/15 三和護=編集委員、満武里奈、加納亜子

救急患者が4年で40%も減少

 産科や小児科の患者は減る一方だが、現状では高齢患者が増えているため、全体的に見れば医療ニーズの明らかな減少は見られない。しかし、2040年の日本を先取りする形で人口減が進む地域では、既に医療ニーズの縮小が顕在化している。市場としての医療が縮みつつあるのだ。

 「私が当地に赴任したのは5年ほど前だが、それから毎年のように患者数が減っていった」。青森県南津軽郡大鰐町で町立大鰐病院の院長を務める佐藤新一氏はこう話す。

 大鰐町が2017年3月にまとめた「町立大鰐病院新改革プラン」を見ると、同病院の患者の減少ぶりが明らかだ。町で唯一、夜間の救急診療に対応してきた同病院だが、救急患者数は年々減少。2013年度には延べ747人だったが、翌年度以降は569人、453人と推移し、2016年度は423人にとどまると見込まれている(図6)。つまり、4年間で4割以上の患者がいなくなってしまったことになる。

図6 町立大鰐病院の救急・入院患者数の推移 (図 略)

 入院患者数も、2010年度をピークに減少に転じた。2013年度に延べ1万3727人だった入院患者数は、2016年度には1万人を割り9500人になると予想されている。

 患者減少の原因は、言うまでもなく少子高齢化の進展と人口減だ。大鰐町の人口は2015年度に1万701人だったが、2016年度は1万人を下回る見通しだ。2016年末現在の高齢化率は39.4%に達しており、若年層人口はもとより高齢者人口も既に減少に転じている。

 こうした事情から大鰐病院には、地域の病院再編プランの中で、病床規模の縮小とともに、救急から手を引き回復期・慢性期医療に特化する方針転換が求められている。しかし、転換後に救急患者が発生した場合、弘前市内まで30分から1時間をかけて搬送する必要が出てくる。冬場であれば、さらに時間が必要だ。救急に対応する病床を完全になくしてしまうことには、佐藤氏も抵抗感を抱いている。

 減少したとはいえ、いまだに外来患者数が毎年3万3000人(1日平均114人)規模で推移していることから、再編プランも病院廃止までは想定していない。「有床診療所への転換も検討項目に挙がっている」。こう話す佐藤氏は、夜間救急対応や中核病院から退院してくる患者への回復期リハビリテーションの提供、さらには訪問診療の継続を担う医療機関として、病院を残すべきとの立場だ。「幸いにも大鰐町は温泉が豊富であり、リハビリにはもってこいではないかと思う」。

 今後の方針が定まっていない町立大鰐病院だが、2040年には同様の選択を迫られる病院が、どの地域にも少なからず存在しているはずだ。

患者減への危機感から県外へ

 大鰐病院ほどではなくとも、外来患者の減少に見舞われ始めた病院は少なくない。兵庫県赤穂市の赤穂はくほう会病院も、その1つだ。外来患者数は2006年には17万8127人だったが、5年後の2011年には17万4538人へと2.0%減少。さらに2016年には2011年比で7.8%減の16万952人となり、患者数の減少スピードは加速している。

 赤穂市を含む西播磨医療圏の高齢化率は2015年時点で30.4%に達しており、2010年から2015年にかけて人口は4.46%減少。この人口減少が、赤穂はくほう会病院の外来患者減少に結びついている。同病院を経営する医療法人伯鳳会理事長の古城資久氏によれば、入院患者が減少する傾向はまだ見られないということだが、医療需要の減少に対する同氏の危機感は強い。

 「赤穂市は今後も人口が減っていき、患者も減っていくことが予想される。高齢化によって疾病構造も変化するため、特に小児科の患者が減少していくだろう。他にも最近の患者動向から、心筋梗塞や脳梗塞が減っていくのではないかとみている。そのため人口増加が見込めて、かつ高齢化率が高くない地域に事業を展開していかないと、じり貧になる」。

 こうした考えから伯鳳会では、2005年から2007年にかけて、同じ兵庫県内の明石市と姫路市の2病院をM&Aによってグループ傘下に収めた。さらに2010年には、事業承継の形で大阪市内の2病院を、2013年には東京都墨田区にある病院をグループ化した。

 各地で医療ニーズの縮小が顕在化する2040年に向けて、人口減少地域の医療機関が、高齢化率が相対的に低い都市部に打って出るケースが増えていくことになりそうだ。

回復期病床の需要が増加

 これとは対照的に、大都市やその周辺部では、増大する高齢者の入院医療需要に応えきれなくなるケースが増えてくるとみられる。

 図7はPART1にも出てきた、青森、岡山、神奈川の特徴的な二次医療圏における必要病床数の推計値を予測したものだ(メディチュアの渡辺氏による)。このうち神奈川の川崎南部医療圏(川崎市幸区など)は、2040年には高齢化率が28.2%に達し、2050年ごろまで医療需要が増え続けると見込まれている。

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図7 青森、岡山、神奈川の必要病床数推計予測(メディチュア・渡辺氏による)

 入院医療でとりわけ需要が増えるとみられるのが、高齢者の在宅復帰支援や在宅患者の急性増悪時の受け入れに対応できる病床だ。実際にこの予測でも、必要病床数が最も増えるのは「回復期」とされている。

 国は今、機能別の病床数を定める「地域医療構想」(詳しくは後日公開記事参照)によって、二次医療圏ごとに必要とされる病床の適正配置を進めようとしている。だが、どの病院がどのような機能を担うかは関係者の話し合いによって決まるため、必ずしもスムーズに事が運ぶとは限らない。

 地域医療構想に基づく病床配置が首尾よく進まなければ、2040年には「入院難民」が発生しかねない。「都市部で入院先が見つからなくなり、それが社会問題化することで、空床がある地域に高齢者が移住する動きが出てくる可能性もある」と国際医療福祉大学医療経営管理分野教授の高橋泰氏は指摘している。

団地は都市部の高齢化の縮図

 2040年に向けて高齢者が増え続ける大都市と周辺部では、病床数に限りがあることから、在宅医療のニーズも急増すると予測されている。既に、その兆候が見られる地域も現れてきた。

 高度成長期に建てられた大規模団地は、その代表的な存在だ。住民が完成時に一斉に入居するため、団地の世帯主には同世代が多い。そのため年月を経て子どもたちが独立すると、高齢化率が一気に跳ね上がる。

 横浜市港南区は、昭和40年代以降に建てられた大規模団地が多く、市内でも高齢化が一足早く進行中の地域だ。大規模団地における高齢化率は35%を超えるが、これは神奈川県の将来推計による2040年時点の県全体の高齢化率35.0%とぴったり一致する。つまり団地は、都市部の高齢化の縮図なのだ。

 そんな団地を診療圏に抱える同区の機能強化型在宅療養支援診療所、ホームケアクリニック横浜港南は現在、常勤医師5人体制で約720人の在宅患者に訪問診療を行っている。隣接する横浜市栄区で2004年に開業した際は、定期訪問する患者は30人程度にすぎなかったが、「癌やALS(筋萎縮性側索硬化症)などの在宅患者がどんどん紹介されて受け入れられなくなり、移転して体制を拡充した」(院長の足立大樹氏)という。それでも人員体制などの面から受け入れができず、依頼を断ることもあった。

 その後、港南区内の在宅療養支援診療所が増え、在宅医療の需給バランスは幾分緩和した。ただ、依然として予断を許さない状況が続いている。

 足立氏が挙げる問題の1つが、後方支援病床の不足だ。港南区内や近隣地域には急性期の大病院が多い一方、地域包括ケア病棟や療養病床を有する中小病院が少なく、急性増悪した在宅患者の受け入れ先を探すのに苦労することもある。「現状では基幹病院に受け入れをお願いしているが、これが断られるようになったら厳しい状況だ」と足立氏。

看取りを担う?在宅医療

 もう1つの問題は、いわゆる「困難事例」や、在宅医療の支援が届いていない高齢者の存在だ。

 高度成長期に建てられた高蔵寺ニュータウン(愛知県春日井市)の中で開業し、春日井警察署の依頼を受けて2005年~2015年に577例の検死を行ってきた田島クリニック院長の田島正孝氏は「高齢化が進み、独居の高齢者が増えているからか、死後24時間以上経過してから発見される高齢者が目立つようになってきている」と言う。独居の高齢者では、地域の民生委員などの積極的な介入を拒む人も少なくなく、「外出の機会が減りやすく、医療を自ら受ける機会も減るため生活指導や医療的な介入もしづらい。また、認知症などの疾患の拾い上げや治療、生活習慣病のコントロール、不摂生な生活の是正が困難なケースは少なくない」(田島氏)。

 高齢者のみの世帯が増えたことで、本人、家族とも認知症を有するなど対応が難しい事例も増えている。しかし、在宅医療を手掛ける診療所が全てのケースを拾い上げ、対処できるわけではない。

 前述のホームケアクリニック横浜港南では、ソーシャルワーカーなどを配して困難事例も積極的に受け入れている。だが、同様の体制の診療所が他にも出てこなければ、これから増大するであろう在宅医療の需要をカバーしきれなくなる。その先に待っているのは、「在宅難民」の発生だ。

 PART1でも触れた通り、2040年には都市部を中心に、49万人分の看取りの場所が不足するとみられている。しかし、病床数や介護施設の定員数が大幅に増えることは考えづらく、現実的には高齢者住宅などへの訪問も含めた在宅医療に頼らざるを得ないだろう。2040年に向けて、在宅医療のニーズは増えこそすれ決して減ることはないはずだ。

 これまで述べてきた医療ニーズの変化によって、医療機関や医師の動きがどう変わっていくのか。それを、次ページからのPART3で考察する。



https://mainichi.jp/articles/20180116/rky/00m/040/004000c
県立北部病院
眼科休診へ 来月から、医師不足で /沖縄
 
2018年1月16日 毎日新聞

 【名護】名護市大中の沖縄県立北部病院が、医師不足のため2月1日から眼科を休診することが分かった。知念清治院長は「医師不足が危機的状況だ。一生懸命探しているが見つからない状態だ」と述べた。北部病院では産婦人科の救急休止や外来外科診療の制限も続いており、やんばる全体で医師不足が深刻化している。
 県立北部病院によると、これまで対応していた眼科医1人が退職するため、1月31日が最終診療となる。眼科の休止で、未熟児網膜症の診断ができなくなるため、7月末までは必要に応じて名護市内の眼科医を派遣して対応することが決まっている。8月以降は白紙で、医師確保のめどが立っていない。
 未熟児網膜症は重症になると網膜剥離が起き、視力障害につながる可能性がある。過去には、眼科休診により未熟児網膜症の診断ができなくなり、30週未満の妊婦の受け入れを制限していた病院もある。
 北部病院では妊婦の受け入れの制限は現段階では行わない。知念院長は「県が全国の大学病院や施設から医師の派遣を模索しているが、後任医師の確保が非常に難しい状態だ」と話した。
(琉球新報)



http://www.mutusinpou.co.jp/news/2018/01/49739.html
浪岡病院建て替え 病床数35床に

2018/1/21 日曜日 陸奥新報

 青森市は20日までに、浪岡病院を現在地に建て替える方針を決めた。病床数は35床規模で2021年度の開院を目指しており、精神病床は廃止する。市民病院は病床数を削減するほか、がん診療支援室の設置などを検討している。両病院の経営改善に向けて、今後取り組みを加速していく。
 市は17年5月に「市公立病院改革プラン2016―2020」を策定。地域医療に関する有識者会議での協議を本格化させ、市民病院と浪岡病院の経営改善に向けた取り組みを模索している。これまでの協議を踏まえ、早急に取り組むべき課題として浪岡病院に関しては4項目、市民病院については6項目をまとめた。
 浪岡病院については、近年の利用状況から、病床数92床(うち稼働病床50床)を18年度から35床とし、35床規模で現在地に建て替え、21年度の開院を目指す。同病院は1970年に建設され、老朽化が進み設備も古くなっているという。

G3註:浪岡病院 総病床数 199床(一般病床数 92床 精神病床 107床)、青森市中心部と弘前市中心部のほぼ中間点



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52096
「医療崩壊」を防ぐには混合診療規制を撤廃せよ
破綻の危険性が高いのは東京の総合病院
 
(文:上 昌広)
2018.1.19(金) 新潮社フォーサイト

 2018年が明けた。今年、医療はどうなるだろう。私は医療崩壊が加速すると考えている。その理由は、我が国の医療制度が高齢化・情報化・グローバル化した世界に適合しなくなっているからだ。

 我が国の医療は、官僚がグランドデザインを描き、価格統制と供給量の規制を通じて現場を統制する。手足となるのは、医師会や大学医局だ。高度成長期、潤沢な補助金と高価な診療報酬に支えられ、医療機関の経営は安泰だった。典型的な護送船団方式だった。

 ところが、状況は変わった。財政難に喘ぐ我が国に、護送船団を支え続ける余力はない。医療システムを維持するには、1990年代末に金融界が経験したような大改革を避けては通れない。当面は、試行錯誤を繰り返しながら、新しい仕組みを作り上げるしかない。

 では、今年どこに注目すべきだろう。私は、今春に予定されている診療報酬改定と、今春から始まる新専門医制度だと思う。本稿では、前者を解説しよう。

有名・名門病院も大赤字

 昨年末の予算編成で、診療報酬本体が0.55%引き上げられたことが話題になった。医療界にとっては福音だ。ただ、医師・看護師不足などの理由で人件費が上がっている昨今、この程度では焼け石に水だ。このままでは、立ちゆかなくなる医療機関がでてくる。意外かもしれないが、最初に破綻するのは東京の病院だ。

 なぜ東京かと言えば、我が国の診療報酬が厚生労働省によって全国一律に決められているからだ。診療報酬が抑制されれば、物価が高い東京の医療機関がもっとも影響を受ける。

 では、どのような医療機関が特に危険なのだろうか。それは総合病院だ。不採算の診療科を切り捨てる経営上の「選択と集中」ができないし、すべての診療科を揃えるために、逆にすべてが中途半端な結果になってしまう。

 例えば、2014年度の胃がん治療数ランキングの首位はがん研有明病院の1417件。そして静岡県立静岡がんセンター(1348件)、国立がん研究センター中央病院(1310件)、国立がん研究センター東病院(867件)と続く。上位陣にはがん専門病院が名を連ね、東京の大学病院でもっとも症例数が多い東京大学は611件で16位だ。

 症例数がこんなに違えば、収益性は変わってくる。かつて総合百貨店が専門店に淘汰されたのと同じ状況が既に起こっている。実際、東京女子医科大学、日本医科大学、聖路加国際病院のような有名病院でさえ、大赤字を出している。最近になって、名門三井記念病院も債務超過であることが判明した。

 収益性の低下は、設備投資・人的投資の抑制を招く。東京女子医大で医療事故が続くのは、このような背景を考えれば納得がいく。

 この状況は危険だ。なぜなら、東京の急性期医療を担ってきたのは、私大附属病院を中心とした民間病院だからだ。

 東京には13の医学部があるが、11は私立だ。ちなみに、埼玉県の埼玉医大も私立だし、神奈川県に4つ存在する医学部のうち3つは私立だ。この状況は西日本とは対照的だ。近畿地方以西に位置する33の医学部のうち、25は国公立である。

 民間病院は、赤字が続けば「倒産」するしかない。補助金で穴埋めされる国公立病院とは違う。どうすれば、東京の医療を守ることができるか、本気で考える時期がきている。

どの施策も実現せずに5年以内に崩壊へ

 医療関係者の間では診療報酬の増額を要求する声が大きいが、現実的でない。我が国の財政にそんな余裕はない。

 まずやるべきは、コストの削減だ。だが悲しいかな、医療業界は合理化に抵抗する。

 医療のコストの大部分は、医師や看護師の人件費だ。人件費を下げるには、低賃金国から医師や看護師を受け入れるのが、世界の医療の常道だ。この方法は毀誉褒貶があるものの、私の知る限り、外国からの医師や看護師をほぼ完全に閉め出している先進国は日本しかない。

 例えばフィリピンの看護師の月給はおおよそ6万円、外科医でも20万~30万円程度。日本人と同じだけ給料を出せば、優秀な人材を招聘できる。みな英語が堪能で優秀、かつハングリーだ。外科や放射線科など、日本語を使わないで済む診療科から受け入れればいい。これまで世界最大の医師・看護師受け入れ国であった米国が、移民受け入れ制限政策を進めつつあるトランプ政権となったいまこそチャンスだ。このまま無策を決め込めば、中国に囲い込まれるだけである。

 ただ、現在の政治状況を鑑みれば、このような規制緩和が実現することはないだろう。医師にとってもっともありがたいのは、医師不足の状況が続くことだからだ。

 現状で医療費を抑制しながら、東京の医療を救うには、診療報酬を東京は1点12円、僻地は1点9円のように傾斜配分するのも1つの解決策だ。しかしながら、これもまた政治的に困難だ。

 医療機関は、基本的に地方ほど儲かる。医師不足の地方都市は、医師さえ確保できれば規模を拡大できる。東京の病院が経営難に喘ぐ中、東北地方や九州の病院が都心に進出しているなどが、その証左だ。

 地方の医療機関の経営者の多くは、地元の名士だ。カネも名誉も併せ持つ。国会議員の有力な支援者であることも多い。この状況は自民党に限ったことではない。2009年の民主党への政権交代で、中央社会保険医療協議会の日本医師会推薦メンバーが一新されたが、代わって入ったのは、民主党を支持する医師会メンバーだった。地方都市の診療報酬を下げるような、後援者の不利益となる政策を国会議員に期待する方が無理だ。

 このままでは近い将来、医療財政は破綻する。いまのままでは、ある日突然、病院が閉鎖されるようなハードランディングしかない。ある厚労官僚は、そのタイミングを「5年以内」と言う。

保健から外す範囲を決めるのは国民

 コストも下げられなければ、医療費の傾斜配分もできない。どうすればいいのだろう。厚労省は、健康保険がカバーする範囲を制限(免責)しはじめた。ただ、厚労省が主導すれば、政治が関与する。真っ先に免責されるのは、政治力が弱い中小の民間病院が担っている慢性期医療になる。

 製薬企業が開発した抗がん剤には、一部の高齢者を数カ月延命するくらいしか効果がないのに、薬代として年間に数千万円の健康保険適用を認めている。一方、慢性期病院に入院する患者には「在宅医療推進」というかけ声のもと、退院を強いる。このやり方のおかしさに、多くの国民が気づき始めている。

 私たちがやるべきは、国民視点に立った免責の議論だ。どこまでの医療を公的保険でカバーし、どれを外すかという個別具体的な話だ。風邪薬、先進医療、高齢者の慢性期ケアのどれを保険から外すかは、官僚、医師会、製薬企業でなく、国民が決めるべきだ。

 おそらく、高額な抗がん剤はまっさきに免責されるだろう。抗がん剤の新薬の承認や保険償還では、費用対効果を考慮することが世界的な流れになっている。

 ただ、新薬などの先進医療を免責すれば、「有効性が証明された医療行為は、すべて健康保険でカバーされている」という前提が崩れる。一部の患者から「有効だが優先順位が低い医療」を受ける権利を奪う。

 これは命に関わる問題だ。このような患者に治療の機会を提供するためには、保険診療と保険外診療を自由に併用できるよう「混合診療」の規制を緩和しなければならない。

「混合診療の解禁は富裕層優遇」は誤り

 私は、混合診療規制の緩和が、東京の医療を再生するきっかけになる可能性があると考えている。

 それは、東京には多くの医療ニーズがあり、付加価値に対して対価を払おうとする大勢の患者がいるからだ。

 ところが現在の保険制度は、このようなニーズに応えることができていない。混合診療が原則として禁止されているため、少しでも保険外の医療を併用すれば、本来は保険がカバーする分まですべて自費で支払わなければならないからだ。

「混合診療を解禁すれば、金持ちしか医療を受けられなくなる」と反対する人もいるが、現実は反対だ。混合診療が禁止されているからこそ、保険外の医療サービスを受けることができるのは富裕層だけという皮肉な結果になっている。現に、都内では富裕層を対象とした「完全自費医療サービス」が急成長している。

 例えば、私が社外取締役を務めるワイズ社(東京都中央区)は、健康・介護保険でリハビリがカバーされない回復期の患者を対象に、自費でのリハビリサービスを提供している。まさに、医療費抑制のために免責された領域だ。

 ワイズ社は首都圏を中心に9施設を展開しており、利用者は3年間で2000人を超えた。「パソコンができるようになりたい」、「料理ができるようになりたい」といった個々の目標に応じたパーソナルなリハビリを提供している。費用は月額約30万円で、多くの利用者の状態が改善している。自費なので、状態が改善しなければ、すぐに来院しなくなる。ワイズに勤務する理学療法士は、「病院時代より遙かに真剣です。やりがいもあります」と言う。

 また、私が理事長を務める「医療ガバナンス研究所」の研究員である坂本諒さん(看護師)は、在宅看護を研究している。自費の訪問看護を受ける場合、メニューは本人が決めるため、利用時間は1日数時間から24時間まで様々だ。24時間であれば、1日で10万円以上の費用が請求されるが、坂本さんは「『いいケアが受けられるならいくらかかってもいい』と話す人は珍しくない」と言う。

 都内では、このように高付加価値サービスの「市場」が急成長している。興味深いのは、このようなニッチ領域に飛び込んだのが、これまでのところ大学病院や有名病院でないことだ。これら既存の大学・有名病院は、保険医療と自費医療を併用することで混合診療の規制にひっかかることを怖れている。患者の医療ニーズは変わりつつあるのに、厚労省の規制のために、変化にまったく対応できていないのである。

医療制度崩壊を防ぐことが次世代への責任

 前述したように、保険財政はすでに破綻目前となっており、厚労省による「護送船団システム」はもはや継続できないことは明らかだ。このままでは、体力の弱い病院から破綻する。そうした状況下では、医療機関は自らの努力で生き残るしかない。そのためには、患者から評価される高付加価値サービスを開発し、提供するしかない。

 繰り返すが、病院は「混合診療禁止」という規制で手足を縛られている。この規制は患者のためにも、病院のためにもなっていない。

 混合診療規制を緩和すれば、「悪徳医師が患者を騙す」と主張する人もいる。確かに、そのような医師が皆無とは言わない。ただ、私はそのリスクは低いと考えている。その理由は、メディアの医療報道が増え、患者の医療知識が増えていること、医師が多い東京では、医師間の競争が熾烈で悪徳医師は淘汰されること、混合診療を対象とした民間の保険商品が開発されるはずで、保険加入者が悪徳医師をチェックするようになるからだ。

 私は、混合診療規制が緩和されれば、むしろ医療費は下がる可能性が高いと考えている。現在、都心部の医療機関は激しく競争している。各種媒体に広告を出し、マーケティングに詳しいコンサルタントに依頼するなど、様々な手を使って患者を集めようとしている。

 ところが、患者集めも厚労省が規制している。最大の規制は、「値下げを認めない」ことだ。クリニックを受診した際、患者は2~3割の自己負担を支払う。不思議なことに、医療機関はその自己負担分を「値引き」できない。患者に負担をかけたくない院長がいて、この自己負担を受け取らなければ、厚労省から処分される。

 現在、風邪の診察は数分で4000円程度の収入となる。もし、混合診療規制が緩和されれば、2000円でやろうとするクリニックが出てくるだろう。赤字に悩む健康保険組合は、組合員をこのようなクリニックに誘導するだろうから、結果として医療費は抑制される。

 このような規制緩和には、日本医師会が猛反対し、厚労省も同調せざるをえない。記者クラブ制度が続く限り、マスコミからもこのような問題意識は出てこないだろう。

 もう、こんなことはそろそろ止めてはどうだろう。何もしなければ、日本の医療制度は確実に崩壊する。私たちは現代社会に適合した医療システムを確立し、次世代に渡さねばならない。その責任は重い。



  1. 2018/01/21(日) 12:05:09|
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