Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月22日 

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170718-OYTET50028/
ニュース・解説 医学部「地域枠」地元限定に…医師偏在解消狙う、厚労省方針
2017年7月17日 読売新聞

 地域で働く医師を育成する大学医学部の地域枠について、厚生労働省は、原則として大学がある地元出身者に対象を限定するよう、都道府県に求める方針を決めた。卒業後も、そのまま地域に定着する傾向が強い地元出身者をより多く確保してもらい、医師が都市部に偏り、地方で不足する地域偏在の解消につなげる狙い。

 今月末にも、奨学金を出す都道府県に通知し、大学と連携して2018年度から実施するよう求める。

 地域枠は、以前から一部の大学で独自に設けられていたが、国は08年度から医学部の定員増によって拡充に乗り出した。16年度の募集人員は計1617人に上り、医学部定員の約6分の1を占める。現在は、地域枠の半数が地元出身者枠となっている。

 厚労省が、初期臨床研修を修了予定の全国の研修医に行った調査では、出身地にある大学に進学した場合、そのまま同じ都道府県で勤務すると答えた人が78%を占めた。このため、地元出身者に絞った方が地域への定着率が高まると厚労省は判断した。

  <地域枠>  地域の医師確保を目的に設けられた大学医学部の選抜枠。卒業後の9年前後の期間、大学がある都道府県内の医療機関で働くことなどを条件に奨学金の返済を免除するケースが多い。文部科学省によると、2016年度は9割にあたる71大学で導入している。



http://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=359451&comment_sub_id=0&category_id=256
医学部地域枠、地元出身に限定 厚労省が要請方針
2017/7/23 中国新聞

 医師の地域偏在解消に向け、厚生労働省が、大学医学部に設けている現行の「地域枠」について、対象を地元出身者に限定するよう、 財源負担などで制度を運用する各都道府県に要請する方針を固めたことが22日、分かった。原則として出身県の医学部に通い、卒業後も一定期間、周辺地域の 医療機関で働く人であれば、奨学金の返済免除などの支援を行う。地元出身者は地域への定着率が高いとの調査結果もあり、医師不足に悩む地域への対応として 注目される。
 厚労省は今月末に都道府県に通知し、2018年度には地元出身者に限定した運用をスタートさせたい意向。担当者は「地域枠制度の効果をより一層高めることになる」と期待する。
 地域枠は、医学部卒業後に周辺地域で勤務することを条件に奨学金を出すなどの制度。現行制度では地元出身者以外も対象に含まれており、卒業生の中には条件を守らず大都市圏での勤務を選ぶ人もいるなど問題点が指摘されている。



https://www.m3.com/news/iryoishin/546730
社会保障審議会
医学部地域枠は「地元出身者に限定」、例外も
医療部会、第7次医療計画の関連通知内容を了承

レポート 2017年7月20日 (木)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 社会保障審議会医療部会(部会長:永井良三・自治医科大学学長)は7月20日、医学部地域枠を「原則として、地元出身者に限定」とする医師確保対策について、地元に残る方策が講じられる場合には例外もあり得る解釈することで了承した。その他、各都道府県の地域医療支援センターの機能強化を含め、2018年度からの第7次医療計画に盛り込むべき内容を了承した。厚生労働省は、同計画策定に関する通知を、2017年3月に各都道府県に出しており、了承された内容を追加した通知を、7月中に発出する予定(資料は、(資料は、厚労省のホームページ/a>)。

 医師確保対策は、この4月以降、「医療計画の見直し等に関する検討会」や、「医療従事者の需給に関する検討会」の医師需給分科会で議論してきた内容(『医師偏在対策「キャリア形成プログラム」、医療計画に位置付け』、『「地域枠、地元に限定」「医師データベースで異動を追跡」』などを参照)。

 医学部地域枠を「原則として、地元出身者に限定」することについて再考を促したのは、日本医師会副会長の中川俊男氏。「大学所在の都道府県出身者は、臨床研修終了後、その都道府県に定着する割合が高いというエビデンスはある。しかし、他の都道府県の大学に、地域枠の医学生の受け入れを要請しているケースがあり、全てを地元出身者に限定すると、混乱を招く可能性がある」と指摘した。

 厚労省医政局地域医療計画課長の佐々木健氏は、地域医療介護総合確保基金を活用して、医学部地域枠の医学生に奨学金を出しているケースは、国費を使っていることを踏まえ、既に「地元出身者」に限定していると説明。「今回は、さらに自治体が独自に奨学金の財源を確保した地域枠についても、地元出身者に限定するという考え方」と付け加えた。ただし、中川氏が指摘するケースもあることから、卒業後も地元に残る方策がある場合には「地元出身者」に限らないことも認めるとし、「書き方を工夫して周知する」と引き取った。

 7月中に予定している第7次医療計画の通知には、(1)医療従事者の確保、(2)医療・介護の体制整備に係る協議の場の役割の整理、(3)5疾病5事業の見直し、(4)在宅医療の体制構築――についての事項を追加する。

 20日の社保審医療部会では、地域医療構想の現状や病床機能報告制度についても議論。10月実施の2017年度の病床機能報告について、医師数(施設単位)などの報告項目の追加、「入院前・退院先の場所別患者数」の報告対象期間を1カ月から1年にすることなどの見直しを了承した(『地域医療構想「大学の理解不十分」「『回復期不足』も誤解」』を参照)。

第7次医療計画についての厚労省内での議論は、一区切りが付いた。

 地域医療支援センターの実効性に疑問符
 (1)のうち、医師確保対策については、法改正を必要とせず、「早急に実行可能な医師偏在対策」をまず実施する。都道府県が運営する地域医療支援センターの機能を強化し、医師の地域偏在解消に取り組む「コントロールタワー」の確立などを掲げている(『医師偏在対策「キャリア形成プログラム」、医療計画に位置付け』などを参照)。地域医療支援センターは2016年4月の時点で、47都道府県に設置済み。

 しかし、これらの対策の実効性に疑問を呈したのは、全国知事会(奈良県知事)の荒井正吾氏。「コントロールタワーの確立などと、“お気楽”に書いているが、医育機関と都道府県との関係は、生やさしいものではない。奈良県の場合、県立医科大学のため、一定のコントロールは効くものの、地域医療のことを考えていない医育機関が多い」と指摘。

 全国市長会(埼玉県秩父市長)の久喜邦康氏も、大学と地域医療支援センターは協力関係にない現状があると指摘し、同センターが果たして医師偏在対策として機能するか、不安感を覚えるとした。佐々木課長は、これらの懸念に対し、両者が連携するよう通知で明示していくと説明。

 さらに医師確保対策では、「詳細な医師の配置状況が把握できる新たなデータベース」を作成する予定。日医常任理事の釜萢敏氏は、「データベースは3師調査(医師・歯科医師・薬剤師調査)を基に作成することになるのだろう」と述べた上で、日本専門医機構が策定予定の専門医に関するデータベースなどとの連携予定について質した。

 厚労省医政局医事課長の武井貞治氏は、3師調査を基にしたデータベースについては、「分かりやすいように整理して、都道府県に使ってもらえるよう準備していく」と説明。日本専門医機構のデータベースは、準備中であることから、完成した時点で有機的につながるよう検討していく方針とした。

 「病院に歯科医師」、必要性に疑義も
 (1)の医療従事者の確保では、歯科医師の確保対策も議論になった。厚労省は、入院患者に対して、口腔機能の管理を行うと在院日数の有意な短縮が認められるというエビデンスを基に、病院への歯科医師の配置を進め、医科歯科連携を進める方針。2014年の時点では、医育機関以外に歯科医師がいる病院は3.1%で、医育機関でも9.0%と1割に満たない。

 NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、この方針を支持。診療報酬での評価も含め、歯科医師の配置を進めるべきとした。

 これに疑義を呈したのが、中川氏。口腔ケアの重要性は認めたものの、歯科医師以外にも、看護師などが担っていることから、「歯科医師がいなければいけない、というのは無理筋」と指摘した。

 厚労省医政局歯科保健課長の田口円裕氏は、「口腔機能の管理は、日常的な口腔ケアではない。歯科医師が口腔内を診断し、治療や歯石除去などを行う専門的な内容。病院に配置されている歯科医師と医師の連携が重要」と説明した。

 永井氏は、厚労省が示したデータは、歯科医師による口腔機能の「管理群」と、「非管理群」の比較であることから、歯科衛生士などによる「管理群」との比較も必要ではないかと指摘。厚労省の「歯科医師の資質向上等に関する検討会」での議論も進行中であることから、それを踏まえ、今後の対応が決まる見通し。

 都道府県の役割が増してきているが……
 2018年度からの第7次医療計画は、第7期介護保険事業(支援)計画のスタート時期と重なるため、在宅医療の整備などの点で、両計画の整合性も求められる。そのため、都道府県は「医療・介護の体制整備に係る協議の場」の設置が求められている。そのほか、医療計画の一部を成す地域医療構想も、都道府県が主体となり、その達成に向けて協議しなければならない。

 政策研究大学院大学教授の島崎謙治氏は、「47都道府県の地域医療構想を見たが、その内容に違いがありすぎる。また取り組みの姿勢もまちまち」と指摘。さらに第7次医療計画の策定に向けてさまざまな業務が発生し、その実行に当たっても、各種会議の運営が求められることから、「会議を回すだけで精一杯のところもあるのが実情。フィージビリティー(実現可能性)を考えないと、絵に描いた餅になる」と懸念を呈した。

 荒井氏も、奈良県知事の立場から「都道府県の役割が増してきている」と述べ、第7次医療計画の策定等に当たって役立つデータの提供、ベストプラクティスの提示など、厚労省に対し、必要な支援を求めた。



http://www.medwatch.jp/?p=14892
初期臨床研修をゼロベースで見直し、地方大学病院の医師確保を—医学部長病院長会議
2017年7月21日|医療現場から MedWatch

 2004年の新医師臨床研修制度から、大学病院、とくに小都市の大学病院では初期臨床研修医、後期研修医が確保できず、地域の病院への医師派遣が困難となり、地域の医師偏在を招いている。初期臨床研修をゼロベースで見直すことが、地域医療の確保にとって不可欠である—。

 全国医学部長病院長会議の新井一会長(順天堂大学学長)は20日の定例会見で、このような見解を示しました(関連記事はこちら)。

地方大学の医師不足が、地域医療機関への医師派遣低下、ひいては医師偏在を招く

 全国医学部長病院長会議では、毎年、全大学附属病院を対象に「研修医に関する実態調査」を実施しており、20日の定例会見では地域医療検討委員会の守山正胤委員長(大分大学医学部長)から2016年度の調査結果が報告されました。そこからは、例えば次のような状況が明らかになっています。

【初期臨床研修医の充足率】(初期臨床研修医の定員に対する実数の割合、いずれも1年目の研修医)
▼平均71.3%だが、地域ごとのバラつき(近畿地方の86.2%に対し、東北地方では36.3%)、地域内でのバラつきが依然として大きい

▼中大都市では78.6%だが、小都市では59.5%にとどまる

▼旧帝国大学では83.2%にのぼるが、他の国立大学では61.9%にとどまる

【初期臨床研修修了医の受け入れ率】(自大学出身の医師国家試験合格者に対する、初期臨床研修を終了し、後期研修を自大学で行う医師の割合)

▼中大都市では新研修医制度実施前(2002年)は69.4%であったが、その後、低下。しかし2016年度には94.5%となった

▼小都市では新研修医制度実施前は71.2%であったが、その後、低下し、2016年度でも50.6%にとどまっている

▼旧帝国大学では133.2%に達したが、他の国立大学では64.1%にとどまる

【後期研修医出向率】(自大学で後期研修を受けている医師のうち、地域の病院に出向している者の割合)

▼中大都市では2014年度に16.4%、15年度に26.0%、16年度に28.5%と上昇傾向にあるが、小都市では14年度に17.4%、15年度に20.9%、16年度に15.6%で増加していない

 
 守山委員長は、この中でも【初期臨床研修修了医の受け入れ率】と【後期研修医出向率】に注目し、「地方大学において研修する医師が、新臨床研修医制度施行前の状態に回復しておらず、地域の関連病院への出向・派遣が十分にできていない。これが地域の医師偏在の大きな要因になっている」と分析しました。

 さらに守山委員長は、大分県における大学からへき地医療拠点病院への医師派遣実施を紹介。それによると、地方大学である大分大学からは2016年度に35名の医師が派遣されているものの、自治医大や他の大規模大学からは1桁の医師しか派遣されていません。さらに派遣医師(51名)のほうが、へき地医療拠点病院に就職している医師(29名)よりも多いことも分かりました。守山委員長は「地方大学からの医師派遣が、地域医療を支えていることが分かる」と指摘し、医師偏在の主因が「地方大学の医師(とくに後期研修医)不足にある」ことの証左であると強調しました。

 
こうした状況を踏まえ新井会長は、「明らかに、新臨床研修医制度(初期研修制度)の2004年スタートがトリガー(引き金)となって地域の医師偏在が進んでいる。初期研修制度をゼロベースで見直すことが必要であろう。初期研修の一部を医学部教育に移管し、学部から初期研修、後期研修(専門医研修)をシームレスに実施し、学部時代から『地域で医師を育てる』仕組みとする必要がある」と強く訴えました。

また専門委員長会医学教育委員会の山下英俊委員長(山形大学医学部長)も、「厚生労働省の調査では、研修医の半数程度は『地域医療に貢献する』意思を持っていることが分かっている。ただし、(1)期間を限定する(2)専門医の勉強ができる—という2つの条件がある。裏返せば、2つの条件を満たす仕組みを設ければ、多くの医師が地域医療に従事し、医師偏在が是正されることになる。そこで、『1人の医師が大学と地域の医療機関を循環する』仕組み(例えば大学病院での専門医研修を受け、その後、地域の医療機関に従事し、さらに大学に戻ったり、海外に行き、さらに高度な医療を学ぶ。そこで得た知識・技術を再度、地域医療で提供する、など)を作ることが必要だ。こうした采配はかねてから大学の医局が行ってきたもので、『大学の医局が医師を囲い込んでいる』というのは全くの誤解であり、無益な議論である」と述べています。
 
 なお、20日定例会見では「大学病院の医療事故対策委員会」の中島勧委員(東京大学医学部附属病院医療安全対策センター長)から7月1日に開催された「医療事故の調査などに関するシンポジウム」に関する報告も行われました。
 
 2015年からスタートした医療事故調査制度ですが、中島委員は「医療事故の再発防止」という本来の趣旨を忘れるような動きがあることを懸念。例えば日本医療安全調査機構(日本で唯一の医療事故調査・支援センター)が「医療事故報告の対象となるか否かを判断する」ことは利益相反に陥る可能性があり、判断は「都道府県医師会などの地域の支援団体に任せるべき」と訴えています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。



http://www.huffingtonpost.jp/mareyuki-endo/iwate-medical-field_b_17531930.html
[ 新専門医制度問題 ] 「新」制度が岩手県の地域医療を早くも崩壊させている
遠藤希之  医学教育支援室長、臨床検査センター長(兼務)、東北大学病院臨床教授
投稿日: 2017年07月20日 09時52分 JST 更新: 2017年07月20日 09時52分 JST ハフィントンポスト

岩手県は北海道に次いで第二位の面積を誇る自治体である。しかし可住面積あたりの医師数は都道府県中下から二番目だ。さらに必要医師数の不足度は全国で最も高い。もともとの医師不足に加え、広い面積をカバーするため、『県下にあまねく良質な医療の均霑を』という基本理念のもと20の県立病院群と5箇所の附属医療センターが地域の隅々に設置されているとのことだ。そして全県の7割もの救急搬送を県立病院群が受け入れているという(佐藤耕一郎氏、http://medg.jp/mt/?p=7622)。

筆者は隣県の宮城に住んでおり、また初期研修の3年間を花巻市で過ごした。そのため岩手には友人や大学の同期が多数いる。彼らが岩手県の地域医療の実情、特に後期研修医の動向を送ってくれた。

データをみて驚いた。平成25年度に岩手県立病院全体に在籍していた後期研修医は68人であったが、平成27年度には54人に激減したという。

臨床研修を終えた3年目の医師の動向を入職年ごとに追ったデータがその理由を示している。2010~2013年に入職した臨床研修医150人中、75人は研修を行った地域病院に残っていた(基幹施設になり得る岩手県立中央病院を除く)。一方、2014年度入職、つまり2016年4月に三年目になり、そこから「新制度開始」とアナウンスされていた代(結局延期になった)、そして次の2015年度入職を合わせると、77人中31人しか研修病院に残らなかったのだ。

残りはどこに行ったのか。大部分が「基幹病院」になれそうな大規模病院に移ったのだ。日本専門医機構が「新」専門医制度が始まる、と無責任にアナウンスしたため、臨床研修を終えた医師たちが浮き足立ち、育った地域病院から早くも移りだしたということだ。

実は岩手県内でほぼ全ての基本領域の基幹施設に手上げをした施設は岩手医大病院が唯一である。上述の2014-2015年入職77人中、実に38人が岩手医大病院に吸い上げられたと推測されている(残りは県外施設に移動)。

意外に思われるかもしれないが、「新制度が始まるかもしれない」といういわば狼少年的な問題は瑣末だ。根本的な問題は、機構がこしらえた「循環型研修」、つまり後期専攻医は「基幹施設」のプログラムに必ず属しなければならない、というろくでもない仕組みにある。従来どおり、地方の中小病院に勤務していても専門医を取得できる制度であればこのような事態にはならなかったのだ。

ところで、岩手県立病院群の常勤医師数はかろうじて現状を維持している。

何故か。

定年を迎えた高齢の医師達が、定年を延長し踏ん張っているからだ。その数は27名に上る。内訳は66~68歳の3年間延長医師が14人、69~73歳(!)の任期付常勤医は13人もいる。当然、健康問題を抱えている高齢医師も少なくない。そのため複数の病院では当直医が足りず、院長が当直しなければならない施設すらあらわれた。それも複数だ。

これを「医療崩壊」と言わずなんというのか。「新」制度が始まればこの負のサイクルは間違いなく加速する。

さらに診療科によっては「基幹病院」の「指導医数」の要件を満たすため、指導医まで(!)医大病院に引き上げられているという(友人達はもっとひどい仕打ちを受ける可能性が高いので診療科名は伏せてくれ、と言ってきた)。

大学病院なのに「指導医数」が足りない、とはどういうことなのか、と訝しく思う読者もいるだろう。

しかし例えば、岩手医大病院は「内科教育病院」の要件を二年連続で満たせず、平成28年には教育関連病院に降格させられるはずだったのだ(平成28年、日本内科学会、第48回認定医制度教育病院連絡会議資料、4ページ)。ところが「大学病院として(中略)地域の基幹病院としての特殊性を鑑み(中略)特例として認定する(第118回認定医制度審議会)」として首が繋がった。

内科学会教育病院の要件を満たせない病院のどこが「地域の基幹病院」なのか理解に苦しむところだ。筆者はその他の診療科の実情は知らないが、推して知るべし、であろうとも思う。指導医まで引き剥がされるのもうなずける。

当初機構は、全国一律に「基本、大学病院が基幹施設になるべき」と言い放ち猛反対を受けた。当然である。各地方、自治体の実情は極めて多様であり、大学病院間の実力差も著しい。東京有楽町の一等地、年に千五百万円もかかるオフィス内で考えられた「全国一律の統一基準」などまさに「机上の空論」なのである。

機構の整備基準第二版にはいまなお「基本領域は原則としてプログラム制で研修を行うものとする」とある。「プログラム制」とはすなわち、機構が固執する基幹施設>連携施設の枠組みで行われる、「医師派遣業型研修」とも揶揄され始めた「循環型研修」のことだ。この制度を始める、始まると連呼されたため、岩手県の地域医療はすでに瀕死の状況に追い込まれた。

岩手の現場の医師達は叫んでいる「岩手の医療を殺す気か!」

改めて提案したい。一刻も早く機構の提唱する制度は無期限延期すべきだ。そして地域の医療者、現場の指導医、若手医師も含め、制度設計について議論を尽くさねばならない。

(2017年7月18日「MRIC by 医療カバナンス学会」より転載)



https://mainichi.jp/articles/20170721/ddl/k01/100/329000c
旭川医大
国際医療枠を新設 海外で活動する人材育成 来年度入試 /北海道

毎日新聞2017年7月21日 地方版 北海道

 旭川医大は来年度入試で、面接や小論文などで合否を決めるAO入試に国際医療人養成枠(定員5人)を新設すると発表した。全国から国際医療に関心のある学生を集め、海外で活動する医師の養成を目指す。国公立大では初めての試みという。

 同大によると、海外の医療現場で臨床医として高水準の医療を実践できる語学力と能力▽最先端の研究を国際学会などで報告したり、論文を発表したりできる能力▽世界各地の地域医療の問題に対応できる能力--などの養成を図る。

 海外での医療活動経験が豊富な教員を個別に指導者として配置。入学後に外部の英語試験を義務付け、留学も経験させ米国医師国家試験合格も目指してもらう。外部試験の受験や留学の経費は1人6年間で最大50万円を助成する。

 対象は2016年4月以降に高校などを卒業したか来春卒業見込みの高校生で、調査書の評定平均4・0以上、大学入試センター試験正答率85%以上などが条件。道内の学生を対象にしたAO入試(北海道特別選抜)の定員40人から5人減らし、国際医療人養成枠を確保する。一方、北海道特別選抜についても、文部科学省に認可されれば37人とする見込み。

 全国初の遠隔医療センターを設立するなど遠隔医療の国際的な権威として知られる吉田晃敏学長は「全国から志の高い学生を集め、具体的な目標を持たせることで徹底的に英才教育を図る。地域医療だけでなく国際医療へ貢献していく人材を養成し、旭川を国際医療都市にしたい」と意欲を見せている。【横田信行】



http://www.medwatch.jp/?p=14856
公的病院や地域医療支援病院、改革プラン作成し、今後の機能など明確に—地域医療構想ワーキング(1)
2017年7月19日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 日赤や済生会などの公的病院、国立病院、地域医療支援病院、特定機能病院などは、▼自院が地域で担う役割など▼今後提供する医療機能(4機能ごとの病床の在り方や診療科などの見直し方向)▼今後提供する医療機能に関する具体的な数値目標(診療実績や地域連携、経営関連項目)―などを記載する「公的医療機関等改革プラン」(仮称)を近く策定し、地域医療構想調整会議に報告し、地域医療構想と齟齬があれば改革プランを修正することとする—。

 19日に開催された地域医療構想に関するワーキンググループ(医療計画等の見直しに関する検討会の下部組織以下、ワーキング)では、このような方針を了承しました。厚生労働省は近く、改革プラン作成のためのガイドラインをまとめ、公的医療機関などに通知する考えです。

ここがポイント!
1 公的病院や地域医療支援病院、特定機能病院などが改革プランを作成
2 改革プランには今後の機能や、診療実績に関する数値目標なども記載
3 調整会議の協議と齟齬があれば、改革プランは修正が求められる

公的病院や地域医療支援病院、特定機能病院などが改革プランを作成

2025年における地域の医療提供体制を描いた地域医療構想(高度急性期・急性期・回復期・慢性期などの病床数などを明示)を実現するために、地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で機能分化・連携の促進に向けた議論が進められていますが、厚労省は、まず▼救急・災害医療などの中心的な医療機関▼公的医療機関や国立病院▼地域医療支援病院・特定機能病院—などが担う医療機能を固めることから初めてはどうかとの考え方を示しています。まず地域の中核となる医療機能をどの病院が担うのかを固め、次いで他の医療機関がそれらとどう連携し、機能分担していくことが近道と考えられるためです。

 このうち公立病院については、総務省が2015年度または16年度中に「新公立病院改革ガイドライン」に沿った改革プラン(新公立病院改革プラン)を策定することが求めており、地域医療構想と、各公立病院の役割とを両睨みしながら、機能分化に向けた議論を進めていくことになります(関連記事はこちら)。

この点についてワーキングや、親組織である「医療計画等の見直しに関する検討会」などでは、「公的病院も、地域において重要な役割を果たすことが期待されている。公立病院と同様に、今後の機能などを明確にした改革プランを作成すべきではないか」との指摘が出されていました。例えば、赤十字病院や済生会病院などです。

厚労省はこうした指摘を踏まえ、公的病院や地域医療支援病院、特定機能病院など(まず機能分化に関する議論を始めることが妥当な医療機関)においても「改革プラン」を作成してもらう方針を固め、ワーキングに提案しました。

改革プランの作成が求められるのは、▼公的医療機関(日本赤十字社、済生会、厚生農業協同組合連合会などが開設する医療機関)▼共済組合、健康保険組合、地域医療機能推進機構(JCHO)が開設する医療機関▼国立病院機構、労働者健康安全機構が開設する医療機関▼地域医療支援病院▼特定機能病院—です。地域医療支援病院や特定機能病院も地域で重要な役割を果たすことが期待されるとともに、機能分化に向けて都道府県知事などが強力な権限行使を行えることから、作成対象に含まれたものです。個別医療機関が地域の状況を十分に踏まえた改革プランを作成することが重要であり、例えば「●●団体で1つの改革プラン」とすることは好ましくありませんし、また後述するように「修正が求められる」可能性があります。
 
なお、これら以外の、例えば社会医療法人の開設する医療機関などには改革プラン作成義務こそありませんが、厚労省は「自主的に今後の方針を検討し、地域の関係者との議論を進めることが望ましい」との考えを示しています。

改革プランには今後の機能や、診療実績に関する数値目標なども記載

改革プランには、▼基本情報(医療機関名や開設主体など)▼現状と課題(構想区域および自院、それぞれの現状と課題)▼今後の方針(自院が今後、地域で担うべき役割など)▼具体的な計画(自院が今後提供する医療機能と、その具体的な数値目標)―を記載することになります。

具体的な計画のうち「自院の今後提供する医療機能」については▼4機能ごとの病床の在り方▼診療科の見直し―など、「具体的な数値目標」については▼病床稼働率、手術室稼働率などの診療実績▼紹介率、逆紹介率など地域連携の状況▼人件費比率などの経営関連項目—などの記載が求められます。
(図 略)
公的病院の改革プランには、地域で今後担うべき機能や、具体的な数値目標などを記載することが求められる
 
このうち経営関連項目について今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)からは「公立病院では経営の厳しさを背景に改革プラン作成が求められ、経営関連の目標値などを記載することになっている。しかし今般の公的病院の改革プランは地域医療構想実現を目指すもので、経営関連の目標値設定は自由記載などとすべきではないか」との指摘がありました。公立病院の改革プランは、そもそもが経営改善のためのプランであり、そこに「地域医療構想の実現」という要素が後から追加された(新改革プラン)という経緯があるためです。
しかし、中川俊男構成員(日本医師会副会長)や伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長代行)らは「公的病院も地域医療構想実現に向けたプレイヤーである。経営状況が厳しいのであれば出処進退を明らかにする必要がある」と述べ、経営関連の目標値設定は「全公的病院に義務付けるべき」との考えを示しました。

また厚労省医政局地域医療計画課の佐々木健課長は、「調整会議では地域医療介護総合確保基金の配分に関する議論も行う。公的病院が基金活用を考える場合には、その経営状況も重要な検討要素となる」と、目標値設定の重要性を説いています。どのように目標値を設定し、それを改革プランに記載するかなどは、今後の厚労省通知(ガイドライン)を待つ必要があります。

調整会議の協議と齟齬があれば、改革プランは修正が求められる

改革プランの策定に当たっては地域の関係者(連携医療機関や住民など)の意見も踏まえて、「構想区域ごとの医療提供体制と整合的」な内容とすることが重要です。改革プランは調整会議に提示することが求められ、仮に調整会議の協議の方向と齟齬が生じた場合には「策定した改革プランを見直す」ことを厚労省医政局地域医療計画課・在宅医療推進室の伯野春彦室長は明らかにしています。
(図 略)
改革プランは、地域医療構想実現を目指すものゆえ、地域関係者の意見を踏まえ、調整会議の協議と齟齬のないものとする必要がある
 
ここで公的病院は、いつまでに改革プランを作成し、調整会議に提示しなければならないのかが気になります。厚労省は、秋の調整会議(10-12月)から「次年度の地域医療介護総合確保基金の活用・配分に関する議論を始める」よう求めており(関連記事はこちらとこちら)、仮に「来年度(2018年度)分の基金活用の前提として、改革プランの策定が求められる」こととなれば、今秋(2017年9月頃)には改革プランを策定しなければなりません。この点について伯野在宅医療推進室長は「各公的病院には、急ぎ改革プランを作成してもらう」と述べるにとどめており、具体的な期限は今後、調整されることになります。
(図 略)
地域医療構想調整会議の進め方(案)、これを2017年度以降、毎年度繰り返し、構想実現を目指すことになる
 
厚労省は、近く改革プラン作成に向けた「ガイドライン」を通知する構えです。



http://www.medwatch.jp/?p=14846
2016年度、自治体病院の6割超が赤字で、経営状況はさらに悪化—全自病
2017年7月18日|医療現場から MedWatch

 自治体病院(地方公営企業法適用病院)における2016年度の決算見込み額を調査したところ、赤字割合は前年度から4.9ポイント増加して62.8%となり、黒字病院は37.2%にとどまる。黒字病院の割合は、2009年の40.1%から2010年度に52.3%に増加したが、その後、2011年度:51.9%→12年度:48.4%→13年度:44.5%→14年度:43.3%→15年度:41.0%→16年度:37.3%と減少を続け、非常に厳しい状況である—。

全国自治体病院協議会(全自病)の邉見公雄会長は、12日の定例記者会見でこのような状況を明らかにしました(全自病のサイトはこちら:「平成28年度 決算見込額調査報告書(平成29年3月31日)」をクリックしてダウンロード可能)。https://www.jmha.or.jp/jmha/statistics/

なお働き方改革について邉見会長は、「一般と同じ時間外労働規制をされれば、産科や救急など、日本の地域医療は崩壊してしまう。地方(田舎)の医療を支えている全自病の考え方を9月に公表する」考えを明らかにしました(関連記事はこちら)。

ここがポイント!
1 黒字割合は年々減少、500床以上の大病院での赤字増目立つ
2 給与費、薬品費、委託費の増加が自治体病院経営を苦しめる
3 地方独法病院、サンプル数少ないが法適用病院より良好な経営状況が伺える

黒字割合は年々減少、500床以上の大病院での赤字増目立つ

今般の2016年度決算見込みは、全国428の自治体病院(地方公営企業法適用病院382、地方独立行政法人病院46)から得られた回答を分析したものです。ここでは、地方公営企業法適用病院(法適用病院)の状況を見てみましょう。

まず法適用病院382のうち、2016年度に黒字となるのは142病院で37.2%、赤字となるのは240病院で62.8%です。赤字病院の割合は前年度に比べて4.9ポイント増加(逆に言えば黒字病院が4.9ポイント減少)。
(図 略)
法適用病院の赤字・黒字割合
 
黒字病院割合の経年変化を見ると、▼2008年:29.1%→▼2009年:40.1%→▼2010年:52.3%→▼2011年:51.9%→▼2012年:48.4%→▼2013年:44.5%→▼2014年:43.3%→▼2015年:41.0%→▼2016年:37.2%—となっており、2010年をピークに減少傾向が続いています。邉見会長は、地域医療の崩壊が指摘されたかつての水準に近づいていることに強い危機感を訴えています。
 
病床規模別に赤字・黒字割合の変化(一般病院)を見ると、300床台・400床台の病院では前年から変化していません(300床台では赤字割合が65.5%、400床台では68.9%)が、その他の規模では赤字割合が前年から増加しています(100床未満では54.7%、100床台では72.2%、200床台では73.0%、500床以上では52.9%)。とくに500床以上の大病院では、赤字割合が前年に比べて13.7ポイントも増加しています。
(図 略)
病床規模別に見た法適用病院の赤字・黒字割合

給与費、薬品費、委託費の増加が自治体病院経営を苦しめる

次に決算の内訳を見てみると、100床当たりの総収益は前年に比べて1.4%増加しているものの、100床当たりの総費用が、これを上回る1.9%増となっているために、経営が悪化してしまったことが分かりました(全体では赤字となっている)。

100床当たり費用の中で、前年度から伸びが大きい項目を拾ってみると、▼職員給与費(前年度から3.5%増)▼薬品費(同2.2%増)▼委託費(同2.7%増)―などが目立ちます。給与費増の背景には「公務員俸給表の見直し(引上げ)」、薬品費増の背景には「超高額薬剤の保険収載」、委託費増の背景には「アウトソーシングの拡大」などがあります。邉見会長は「チーム医療を充実するために、さまざまな医療職を確保する必要がある」と述べ、医療の質向上のために費用がかかる点を訴えました。

 
また収入に目を移し、患者単価(患者1人1日当たり診療収入)を見ると、全体では入院4万8768円(前年度に比べて724円・1.5%増)、外来1万3847円(同423円・3.2%増)となり、前年度から増加しています。患者数の減少(1日平均患者数は入院では前年度から0.4%、外来では2.2%減少)を、単価のアップで補っている格好です。

一般病院の入院単価は5万147円(前年度に比べて1.5%増)となっており、病床規模別に見ると、▼100床未満:2万3838円(同0.7%増)▼100床台:3万2204円(同0.7%増)▼200床台:4万1961円(同1.0%増)▼300床台:4万8333円(同0.7%増)▼400床台:5万1548円(同1.8%増)▼500床以上:6万2985円(同2.1%増)―となっており、大規模病院では患者単価の上げ幅が大きいことが分かります。
(図 略)
法適用病院の患者単価

地方独法病院、サンプル数少ないが法適用病院より良好な経営状況が伺える

なお、サンプル数が少ない地方独立行政法人病院(今回は46病院が回答)ですが、次のように、法適用病院に比べて経営状況が若干良好なことが伺えます。もちろん単純な比較はできませんが、参考にすべき点は少なくないでしょう(関連記事はこちら)。

▼赤字病院の割合は47.8%(法適用病院では62.8%)、黒字病院の割合は52.2%(同37.2%)

▼100床当たりの営業収益は前年度から2.8%増加し、営業費用はこれを上回る伸び(3.0%増)だが、経常損益では黒字となっている(同赤字)

▼1日平均患者数は、入院では前年に比べて1.2%増(同0.4%減)、外来は同じく0.2%減(同2.2%減)

▼病床利用率は全体で81.5%(同75.4%)

▼患者単価(一般病院)は入院6万4044円で、前年度比1.9%増(同5万147円・1.5%増)、外来1万7803円で、前年度比3.5%増(同1万3917円・3.2%増)



https://www.m3.com/news/iryoishin/545864
m3.com全国医学部長・学長アンケート
強制力ある医師偏在対策、医学部長間でも意見分かれる◆Vol.1
「医療人育成には税金」「インセンティブが重要」

スペシャル企画 2017年7月15日 (土)配信高橋直純、水谷悠(m3.com編集部)

 医師偏在対策、新専門医制度、働き方改革――。医療を取り巻く仕組みに大きな変革が求められる中で、常に一定の役割を期待されるのが大学医学部だ。

 m3.com編集部は、2015年、2016年に引き続き今年の4月から5月にかけて、全国82の医学部、医科大学の医学部長、学長を対象に、医学教育の現状を尋ねるアンケートを実施。今回は、医師偏在対策、働き方改革、新専門医制度、医師国家試験、女性医師――などを巡る動向について、率直なご意見を伺った。

 18大学の医学部長もしくは学長から回答をいただいた。その結果を11回に分けて紹介する。

(ご協力いただいた学長、医学部長、大学職員の皆様には、この場を借りて、心より厚くお礼申し上げます)

◆2015、2016年の結果はこちらm3.com全国医学部長・学長アンケート

Q 医師の偏在対策の議論では、保険医の配置・定数の設定、地域医療を義務付けるといった方策も提唱されていますが、何らかの強制力を伴う対策が必要とお考えでしょうか。
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 医師偏在対策に関連して、「強制力を伴う対策」については「必要」が6人、「必要でない」が6人、「どちらとも言えない」が5人と回答が拮抗した。

Q 医師偏在対策についてご意見があればご記入ください

【何らかの強制力を伴う対策が必要】

【岩手医科大・佐藤洋一医学部長】国立公立大学は医療人育成に税金が投入されているのだから、卒業生は成績と資質に応じて地域偏在と診療科偏在を是正するように強制配置されるのは妥当であろう。

【福島県立医科大・錫谷達夫医学部長】絶対に必要。

【金沢医科大・神田享勉学長】地域の診療医師偏在が問題である。例えば眼科や皮膚科の医師ばかりでは地域医療は成り立たない。

【大阪医科大・大槻勝紀学長】本学は現在、兵庫県西部や高知県に地域医療を支援すべく医師派遣を精力的に行っている。その理由は、地域医療への貢献が本学の建学の精神「至誠仁術」に合致しているためである。また、将来、高槻市における2025年問題である高齢化対策に、現在行っている地域医療への医師派遣事業が役立つと考えられているからである。

【広島大・秀道広医学部長】医師の使命感、公共心の涵養が大切だが、国民の医療に対する要請(要求)のレベルが格段に大きくなっていること、家庭を持つ女性医師の数が増えていることのために、独身ないし男性医師への負荷が大きくなっていることはもっと取り上げられるべき。医師が少ない地域や診療科は、医師個人の好みの問題ではなく、そこに赴任を強制されてもそれらの職場では役割を果たし得ない情況にある医師の数が増えている現実がある。

【徳島大・丹黒章医学部長】インセンティブで誘導するしかない。

【何らかの強制力を伴う対策は必要ない】

【山形大・山下英俊医学部長】医師偏在については、地域の医療を担う大学、行政、医師会、病院会が協力し合う体制(山形県の医療を支える山形大学医学部蔵王協議会の例がある)を作ること、その活動のためにはエビデンスとなる情報収集(山形県については山形大学医学部医療政策学講座が継続的に行っている)を行うこと、さらに説得力のある地域の医療計画の策定とその実行(山形県の上記蔵王協議会と県、医療関係者が行っている連携)が不可欠であると考える。

【京都府立医科大・竹中洋学長】本学においては、従来から地域医療を担う大学病院として、人材育成や府北部地域等の医師不足地域への医師派遣を行っているところであり、引き続き地域医療を担う公的な大学病院が基幹施設となり、専攻医の採用や連携施設への医師派遣を行うことが重要である。

【兵庫医科大・野口光一学長】強制的な制度に永続性は無い。若手医師の立場に立った議論も必要である。

【島根大・山口修平医学部長】義務付けることは必要ない。医学教育の中では地域医療教育をシステマティックに行う必要がある。卒後の若い世代に対しては、地域でも十分な教育・研修が受けられ、さらに都市部との人事交流が可能な体制作りをする。大学病院と地域病院とのクロスアポイントメント制度をスタートし、地域で指導医が活躍できる体制を目指している。

【福岡大・朔啓二郎医学部長】医師の偏在化を招かないように配慮することは重要であるが、福岡県の大学は、佐賀や長崎北部・離島へも医師派遣をしており、福岡市・北九州市周辺のみを見て定員上限を設けるべきではない。福岡県内でも医療過疎地帯が多く存在する。福岡県の大学は「地域・救急管理学講座」など、県からの寄付講座を賜り、医師派遣を行っているのも現状である。

【産業医科大・東敏昭学長】強制を考えなくても自然に分布は更正される。また地域社会のあり方自体に変化すべき点がある。ただし、ごく特殊な例については対策が必要。

【どちらとも言えない】

【東北医科薬科大・福田寛医学部長】強制力を伴う対策でないと実効性がないと思うが、法的には難しいだろう。

【富山大・北島勲医学部長】新専門医制度により大学と地域病院の連携が強くなれば、地域医療に貢献できるようになると思います。

【福井大・内木宏延医学部長】全国市長会をはじめ各種団体より、地域医療崩壊あるいはその助長の懸念の根本が、新専門医制度導入にあるとの考えが表明されているが、今日の医師配置の地域格差を生んだ根本原因は、2004年4月に創設された新医師臨床研修制度にあると考える。その原因は多岐にわたると考えられ、科学的検証も公表されていないため具体的言及は控えるが、新医師臨床研修制度の改革なくして、地域の医師不足が根本的に解決されることはないと考える。(国立大学医学部長会議より、2017年5月17日付で公表された、「国民不在の新専門医制度を危惧し、拙速に進めることに反対する緊急要望」への反論を参照願いたい)

【選択肢は選ばず】

【大阪市立大・大畑建治医学部長】インセンティブが解決します。

■回答大学・回答者名(北から)
岩手医科大 佐藤洋一医学部長
東北医科薬科大 福田寛医学部長
山形大 山下英俊医学部長
福島県立医科大 錫谷達夫医学部長
東京医科歯科大 北川昌伸医学部長
横浜市大 井上登美夫医学部長
富山大 北島勲医学部長
金沢医科大 神田享勉学長
福井大 内木宏延医学部長
京都府立医科大 竹中洋学長
大阪医科大 大槻勝紀学長
大阪市立大 大畑建治医学部長
兵庫医科大 野口光一学長
島根大 山口修平医学部長
広島大 秀道広医学部長
徳島大 丹黒章医学部長
産業医科大 東敏昭学長
福岡大 朔啓二郎医学部長



https://www.m3.com/news/iryoishin/546177
m3.com全国医学部長・学長アンケート
義務年限果たさない地域枠学生、対策は?◆Vol.2
「大学医局との連携、地元への定着を」「逃散あってもおかしくない」

スペシャル企画 2017年7月21日 (金)配信高橋直純、水谷悠(m3.com編集部)


 医師の地域偏在解消の切り札として拡大が続く医学部の地域枠。2016年度の募集人員は計1617人に上り、医学部定員の約6分の1を占める。都道府県などが指定する地域で、卒業後の一定期間勤務することを義務付けるものだが、奨学金を早期に返済することで義務年限を果たさずに都心部に流出してしまうことがあるとされ、厚生労働省の審議会でも対策が検討されている(『「地域枠」義務違反の病院に罰則を検討、臨床研修部会』を参照)。

Q 2008年度の医学部定員増以降、地域枠で入学する医学生が増えています。卒業後、義務年限を果たさずに、他の都道府県に就職した地域枠養成の医師はいますか。
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 回答のあった18大学の医学部長・学長のうち、6大学で「いる」という回答があった。

Q 義務定年後の定着を見据えて、地元定着のための取り組みがあれば、教えてください。
【岩手医科大・佐藤洋一医学部長】義務年限中に学位取得できるようなインセンティブを用意することで、大学医局との連携を保ち、地元への定着を図っている(社会人大学院)。

【島根大・山口修平医学部長】他の都道府県に就職した医師はいる。義務年限の終了はまだ先であり、現時点では定着の取り組みとしては行っていない。

【富山大・北島勲医学部長】学生時代から地域医療に触れる機会や実習時間、地域イベントやボランティアに参加させる取り組みを増やしている。

【兵庫医科大・野口光一学長】休暇期間での地域でのフィールドワーク等の対策を行っている。

【横浜市大・井上登美夫医学部長】義務年限を果たしていないまま他の都道府県に就職を希望する場合は、残り年分を後ろ倒して定年を果たすように案内しています。定年後の定着については、特に取り組みは行っていません。

【金沢医科大・神田享勉学長】今後は本学で研修する意志のある学生を募集する方針である。※(新)特別推薦入学試験(AO入試) 概要=受験資格は25歳以下の方で、本学を卒業後、金沢医科大学病院または金沢医科大学氷見市民病院(富山県)にて臨床研修(5年間)を行う意志の強固な方が対象となる。

【徳島大・丹黒章医学部長】義務年限は9年と長く、返済金は少ないため、いつ逃散があってもおかしくない。面談を行い、良心に訴えている。

【広島大・秀道広医学部長】地元での働きがいの充実と、子どもの養育や地方での生活の利便性の向上に尽きると思います。

【東北医科薬科大・福田寛医学部長】・まだ卒業生がいない。・卒後の東北地方定着のための取り組み 1.卒後の東北地方定着を担保する仕組みの一つとして、東北地方での勤務義務付き資金枠を100人の定員のうち55人用意している。2.東北6県に19の「地域医療ネットワーク病院」を設定して、2年次から5年次まで継続して同一地域の訪問・実習を行うことにより、地域の文化や医療事情を理解させ愛着を持たせる。



https://www.m3.com/news/iryoishin/547029
真価問われる専門医改革
新専門医制度の2018年度開始に反対、1560人分の署名
『専門医制度の「質」を守る会』、厚労相宛に提出

レポート 2017年7月21日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 有志の医師らで構成する『専門医制度の「質」を守る会』は7月21日、塩崎恭久厚労相宛に、「新専門医制度2018年度からの開始反対の署名」を提出した。署名活動は今年3月9日から開始、医師を中心に1560人分集めた。署名は、厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」の遠藤久夫座長にも提出した。

 提出後に厚労省内で記者会見した、同会代表を務める安城更生病院(愛知県安城市)副院長の安藤哲朗氏は、「新専門医制度は医療全体に大きな影響が及ぶ上、医師研修の質が担保されていない。研修プログラム制は、医師の柔軟なキャリア形成を阻害する。さらに基幹型と連携施設の循環型研修は、地域医療を弱体化させ、結局は大学医局の支配強化のみが残る」などと問題視。特に研修の質を重視し、2016年7月に、2017年度からの開始が1年延期された今でもなお、質の担保が保障されていない以上、2018年度からの開始にも反対すると主張した。

 共同代表を務める坂根Mクリニック(茨城県つくば市)院長の坂根みち子氏も、女性医師の立場から「医師の働き方改革をしないまま、新専門医制度を導入すると、出産・育児を諦めるか、キャリアを諦めるか、二者択一になってしまう」と指摘し、出産・育児をしながら、キャリアを重ねることができる制度にする必要性を強調した。

 『専門医制度の「質」を守る会』の呼びかけ人は、安藤氏、坂根氏を含め、計13人。1560人という署名数について、安藤氏は、次のように説明した。「地域医療の現場の医師や研修医のほとんどは、新専門医制度に反対しているものの、大学医局からの有形無形の圧力のために、表立って反対の声が上げられず、あきらめている医師が多数。1560人の多くは医師であり、そのような圧力の中で勇気を振り絞った人達」。

 塩崎厚労相宛の署名は、厚労省医政局医事課長の武井貞治氏に手渡した。安藤氏によると、意見交換はできたが、「新専門医制度はあくまでプロフェッショナルオートノミーに基づくものであり、日本専門医機構と各学会が担当している。厚労省は地域医療に責任を持つ立場なので、(地域医療への影響が懸念される場合には)機構に要請はできるが、あくまで主体は機構」という回答だったという。

 日本専門医機構は7月7日の理事会で、2018年度開始に向け、準備が整ったと判断し、10月から専攻医の募集を開始する予定であることを明らかにしていた(『「専攻医の登録、10月スタート」目指す』を参照)。

 「学会からの長期借入は利益相反」
 記者会見には、呼びかけ人の仙台厚生病院(仙台市青葉区)医学教育支援室長の遠藤希之氏と、卒後3年目の若手、南相馬市立総合病院(福島県南相馬市)の山本佳奈氏も出席。

 遠藤氏が言及したのは、日本専門医機構の財務状況。各基本領域学会から長期借入金があることから、「審査をされる立場から、借り入れているのは、利益相反ではないか」と指摘した上で、2017年3月21日現在の「財産目録」では、約1億4000万円の赤字であることも問題視した。さらに、「任意団体にすぎない日本専門医機構が、日本の医療を決めてはならない」と語気を強めた。

 山本氏は、初期臨床研修から勤務していた南相馬市立総合病院で、産婦人科専門医を目指したものの、福島県立医科大学を基幹病院とした研修プログラムに入らないと難しいことなどから断念した経緯を紹介。「専門医資格の取得を目指しつつ、南相馬で地域医療をやりたいと思う芽を摘む制度はいかがか」とコメントした。



https://www.m3.com/news/iryoishin/546822
研修医の受け入れ「大学間格差が拡大」、医学部長病院長会議
旧帝大、「人口50万人以上」で改善幅が大

レポート 2017年7月21日 (金)配信高橋直純(m3.com編集部)

 全国医学部長病院長会議は7月20日、2016年度「全国大学病院研修医に関する実態調査」について報告、「大学間格差はさらに大きくなっている」と訴えた。後期研修医としての受け入れ率(入局率=入局者数/医師国家試験合格者数)は旧帝大で133.2%である一方、その他の国立大学では64.1%に留まっている。都市部にある大学に医師が集まる傾向が進んでいるとし、会見をした大分大学医学部長の守山正胤氏は「地方大学のへき地への医師派遣能力の回復が急務だ」と主張している。

 2016年度の大学病院の初期研修医の充足率(1年目の初期研修医数/初期研修医定員)は全体で71.3%だったが、中大都市圏域(人口50万人以上の都市がある都道府県)では78.6%、小都市圏域(同50万人以下)は59.5%で、大学の所在地による差が見られた。旧帝大では83.2%、その他国立大では61.9%と開きが見られた。

後期研修医、2016年度は大学に回帰傾向
 後期研修医の受け入れ率は中大都市で2016年度は94.5%で、初期臨床研修制度開始以前の2002年度の69.4%から上昇している。反対に、小都市では2002年度の74.2%から50.6%に減少した。ただ、2015年度の中大都市76.6%、小都市41.2%と比べると、それぞれ10-20ポイント改善している。守山氏は「詳しい要因は分析できていないが、新専門制度の影響も考えられる」としている。

 大学の規模別で見ると、旧帝大では133.2%と卒業生以上の医師が後期研修医として入局している一方で、その他国立大では64.1%に留まり、その差は拡大している。自大学出身者の割合は旧帝大で34.0%に対し、その他国立大では63.2%だった。

医師派遣能力、小都市大学で減少
 守山氏をはじめ全国医学部長病院長会議幹部が強調するのは、入局者減少が地域医療に大きな影響を与えているという点。後期研修者出向率(他医療機関への出向医師数/後期研修医数)は中大都市で28.5%(2010年度22.6%)で、わずかに上昇傾向を示しているが、小都市では15.6%(2010年度17.1%)と逆に減少している。

 守山氏は自県の状況として、大分県における「へき地医療拠点病院」への医師派遣実績を紹介。大分市と別府市を除く拠点病院では、内科医は各病院が採用している医師が計29人に対し、大分大からの派遣は計35人であるとし、「大学が人を集めて囲い込むという議論は全くの間違いで、地方の大学は病院と一緒に人材を育成しながら地域の医療を支えているのが実態」と強調している。

 同会議会長の新井一氏(順天堂大学学長)は問題の根本には初期臨床研修制度があるとし、「初期研修のゼロベースの見直しを提言している。その一つとして初期研修の一部を卒前に持ってきて、学部教育の段階で地域において医師の育成をする。へき地に行っても、学位や専門医資格を取得でき、海外に行けることを示していく」と説明。守山氏は「皆が医師を取り合うのではなく、大事に育てるシステムを作らないといけない。大学の医局を使わない手はない。医局が人をつぶす、囲い込むという無益な議論をやめてほしい」と述べた。

全国医学部長病院長会議の「まとめ」

1. 初期研修の充足率は全国的に微増しているものの、地域間や大学間における格差の改善は進んでいない。

2. 大都市部の大学や旧帝国大学での初期研修は、自大学卒業生のみならず、多くの他大学出身者が占めており、研修施設として人気が高い。私立大学は一定数を維持している。

3. その傾向は、後期研修の受け入れ状況において増強され、大学間格差はさらに大きくなっている。この傾向は3-4年前から著明である。

4. 都市部の大学では後期研修医の出向率が上昇しているが、地方大学では回復していない。

5. 後期研修時の診療科の選択(女性医師の診療科選択も含む)において、一定の傾向が見られ、今後、地域間格差や大学間格差のみならず、診療科格差が懸念される。

6. 地方における医師偏在は、地方大学で研修する医師が新臨床研修制度施行前の状態に回復していないことが大きい要因であり、地方大学のへき地への医師派遣能力の回復が急務である。



https://www.m3.com/news/iryoishin/547043
医師の働き方改革とキャリア
病院の責任と「働き方改革」のジレンマ - 片柳憲雄・新潟市民病院院長に聞く◆Vol.1
是正勧告受け「業務」と「研修」の区別徹底

インタビュー 2017年7月23日 (日)配信聞き手・まとめ:水谷悠(m3.com編集部)

 2016年1月に後期研修中の女性医師が過労自殺し、2017年6月に新潟労働基準監督署から長時間労働是正などの勧告を受けた新潟市民病院。新潟市は勧告を受けて6月、「緊急対応宣言」を出し、紹介状なしでの外来受付を取りやめるなどの対応策を打ち出した。3次救急や周産期医療を担う自治体病院としての責任がある一方で、社会問題となっている「働き方改革」を進めなければならない。院長の片柳憲雄氏は「ジレンマがある」と言い、頭を悩ませている(2017年7月20日にインタビュー。計2回の連載。「緊急対応宣言」は新潟市のホームページ)

――医師の時間外労働や当直、日直はどのような方法で管理されていたのでしょうか。
 紙ベースで、自己申告により報告を受けて集計し、診療科の部長で確認、把握していました。それは以前から変りません。今年6月に労基署から是正勧告があり、同月に「労務改善対策室」を正職員2人、臨時職員4人の体制で設置し、過去2年間分に渡って、確認作業を始めたところです。 これまで、それぞれの自己申告を信じておりましたので、まず申告と労働実態に乖離があったのかどうか、医師189人、それ以外も含めて全職員1500人分を調べます。医師では電子カルテのログイン、ログオフの記録などからということになります。膨大な量ですが、医師は10月まで、他の職員も今年度中には、調査を終えたいと思っています。また、タイムカードや勤務管理システムなどの導入の検討も行っています。

 電子カルテは1人ずつログインナンバーがあり、パソコンから離れるときにはログオフをするようにと、以前から口を酸っぱくして言っていました。それでもときどきログオフのし忘れはありましたが、最近は減ってきています。

――これまでの集計では、医師の時間外労働や当直・日直はどのくらいだったのでしょうか。
 全医師の月平均で、時間外労働が2015年度52時間、2016年度50時間、2017年度は4~6月で47時間。当直は2016年度のデータですが、1人当たりで月平均1回、日直は0.3回。研修医に限ると当直2.2回、日直0.7回でした。当直明けの勤務については、ほとんどは休まずに診療し、手術もしている状態です。医師自身が健康でないと、人を診ることはできませんし、間違いがあってはいけませんので、休めるときは休みなさいと言ってはいますが、実際は休めません。

――時間外労働の算定に当たって、どこまでを「労働」とするかという基準はありましたか。
 「業務」と「自己研鑽としての研修」は今までも分けていたのですが、今回のことがあって、徹底しました。「業務」は、当直も含めた診療、診療に関わる検討会、患者の診察後に手術が必要と判断した場合に準備も含めて手術開始までの待ち時間や、患者さんが亡くなったときなどの待機時間、病院から指定された医療安全や感染管理などの研修会、それ以外で上司からの指示があった場合。これを時間外労働として算定します。

 「自己研鑽としての研修」は専門医を取るための学会や研究会の準備、手技のトレーニング、ビデオや参考書、学会誌などでの勉強、文献検索、そういったものを自己の研修として指示しています。そこを分けないと、管理も始まりませんので。これはずっと医局の医師には言ってきましたが、今年4月の医局総会で改めて確認をしました。

 また、これまでは、業務をして勉強をして、また業務をして、と混在していたので、是正勧告を受けてからは、「勉強は業務が終わった後にやる。場所も、時間外労働は患者のいるところ、つまり病棟や手術室でやる。勉強は医局に戻ってやってください」とはっきりと区別できるようにしました。やりづらくはなります。勉強も、どこでもいつでもできたのが、それをされると勤務時間が分からなくなるので、管理するためには、分けてもらわないといけない。

 (時間外労働の)上限規制の議論で罰則付きの規定ということになれば、(法施行までの)2年間プラス5年間の猶予期間はありますが、うちのように急性期の救急医療をやっている病院にとっては、ジレンマがあります。(時間外労働が)月80時間になったから帰るとか、患者に呼ばれたけど行かないとか、そういうことはできません。医師は患者を助けるために医師になったわけですし、そのためには時間外労働などはいとわないものなのですが、今回のことで変えてかなければいけないとは思っています。



https://www.m3.com/news/iryoishin/547140
地域医療構想、医師会独自データで対応 - 菊岡正和・神奈川県医師会長に聞く◆Vol.1
県医師会活動、「連携機能」と「現場機能」の両面で

インタビュー 2017年7月23日 (日)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

 今年5、6月、13の都道府県で医師会長選挙が行われ、神奈川、京都、奈良、島根の4府県で会長が交代した。地域医療構想をはじめ、都道府県単位で医療提供体制の再編が進む中、さまざまな対応を迫られるのが、都道府県医師会だ。4府県の新会長に、就任の抱負や地域医療が抱える課題についてお聞きする。

 初回にご登場いただくのは、神奈川県医師会長の菊岡正和氏(2017年7月12日にインタビュー。計2回の連載)。

――まず県医師会活動についての基本的考え方をお聞かせください。

 私は県医師会の役割は、「連携機能」と「現場機能」に大別できると考えています。前者は、中央の情報を郡市医師会へ、一方で郡市医師会の声を中央に届けるという意味です。この連携機能を果たすため、日本医師会をはじめ、さまざまな機関と連携していく方針です。後者は、県医師会として直接取り組む業務であり、私が長年携わってきた医事紛争特別委員会のほか、医療事故調査制度の支援団体としての取り組み、あるいは災害医療への対応体制構築など、多岐にわたります。中でも今直面しているのは、地域医療構想への対応です。

――地域医療構想のほか、地域包括ケアシステムの構築など、高齢社会に向けて都道府県単位での取り組みの重要性が増しています。その中で都道府県医師会の果たす役割は大きいと思います。

 地域包括ケアシステムについては、郡市の医師会が行政とよく話し合って対応していく課題だと考えています。地域にどんな病院、介護老人保健施設や介護特別養護老人ホーム、あるいは在宅医療の担い手があり、それぞれがどのように関わっていくかは、神奈川県医師会の立場で詳細を把握するのは容易ではないからです。

 一方、地域医療構想は、神奈川県医師会と神奈川県がしっかりと話し合って取り組むべき課題です。

 神奈川県の一番の特徴は、今後高齢者人口が増えること。地域医療構想は、入院医療費の抑制が厚生労働省の狙いだと私は考えています。したがって、同構想が念頭に置いているのは、病床が多い地域。しかし、神奈川県や東京都などは今後、高齢者人口が増加し、地域医療構想と医療計画の双方に対応していくことが難しい状況にあります。神奈川県の場合、地域医療構想の「病床の必要量」が一番多く、次が既存病床数で、医療計画の基準病床数が最も少ないという順番です。国の方針通りに「病床の必要量」を満たすためには、基準病床数を特例で増やさざるを得なくなります。

 もっとも、神奈川県は人手不足で、医師や看護師、さらに他の医療従事者も少ない。この状況で病床を増やしても、うまく運営することは難しいでしょう。ではどうするかですが、病床を増やさずに、急性期医療を充実させ、平均在院日数を減らし、かつ病床の稼働率を上げるほか、疾病単位で分析し、どの分野に進出するのか、あるいは撤退するのかなどを各医療機関に検討してもらうなど、現状の病床の有効活用で対応できるよう提案していく方針です。

 こうした方針を進めるためには、データをそろえ、神奈川県と話し合っていくことが重要です。この7月に、神奈川県医師会内に、データの分析などを行う目的で「地域医療構想検討部会」を設置しました。産業医科大学の松田晋哉教授による研修にも、委員を参加させます。

――地域医療構想は、調整会議での話し合いを通じて、医療機関の自主的な取り組みを促すのが趣旨。行政からの情報を待つだけでなく、データを分析し、現場から提案していくということですね。

 そうです。何もデータがない状態で話し合いをしても、関係者が納得しません。例えば、「この地域では循環器の病床が少ない」などのデータを提示すれば、各医療機関が自院の方針を決めやすくなります。その手助けを県医師会が行っていくということです。今後2年くらいで地域医療構想の方向性が決まると思っており、この8月頃に新しいデータが厚労省から出てくると聞いていますので、それを基にすぐにデータ分析を開始します。

 地域医療構想では、一方で在宅医療の話もあります。外来で診ていた患者さんが、在宅医療に移った際に対応したり、かかりつけ医の先生が、年間数人でも看取るような体制を作っていく必要があり、そのための支援の一環として、神奈川県医師会では「在宅医療トレーニングセンター」を運営しています。ここは医師だけでなく、他の職種も含め、在宅における医療的ケアのスキル向上が目的であり、講義室と各種実習室を設けています。評判はよく、多くの方に利用いただいています。

――在宅医療では、1人の医師が24時間365日対応することが難しいため、地域でネットワークを組むことが重要になります。その辺りの支援にも取り組んでおられるのでしょうか。

 その一環と言えるかもしれませんが、今考えている一つは、最近増加している在宅専門診療所と地域で開業されている先生方が、「顔見知りになる場」を作ることです。両者が今後連携していくことが必要であり、「顔が見える関係」にしておけば、何か起きた時でも、対応が可能になります。

――そのほか今後、力を入れていく業務は何でしょうか。

 一つは、災害医療の体制作りです。私は、神奈川県医師会の副会長時代に、災害時の医療対策マニュアルを作成しました。災害が起きた場合には、情報や指揮命令系統を一本化することが必要です。このため、神奈川県医師会がある建物内にさらに一室を借り、県外、県内を問わず、何らかの災害が起きた場合に、すぐに災害対策本部を設置できるように準備を進めています。また神奈川県には今、災害医療コーディネーターが11人いますが、うち2人は医師会から出しています。災害発生時には1人は県に、もう一人は県医師会の災害対策本部に置き、連携が取れる体制にし、群市医師会からの要望を吸い上げ、DMATやJMATなどの派遣を迅速にできるように準備を進めています。

 また私は副会長時代、医事紛争特別委員会を担当していました。本委員会は、日本医師会医師賠償責任保険の免責となる100万円以下が対象で、年間70件くらいの案件が挙がっています。会員の先生方にとっては、最初に事情聴取を受けるだけで、後は本委員会の委員が対応するため、メリットが多い制度です。委員の新陳代謝を図り、委員会の質をさらに高めるための努力をしていきます。

――その他、医療事故調査制度や新専門医制度でも、都道府県単位の取り組みが求められています。

 神奈川県医師会は、医療事故調査制度の支援団体としての届出を行っています。医事紛争特別委員会の委員を中心に構成し、運営しています。また神奈川県内には4つの医学部・医科大学があり、2016年秋からは大学の案件については相互に外部委員を派遣する体制にし、かなり難しい案件にも対応できるようになっています。

 新専門医制度への対応はこれから検討する段階です。大学病院や基幹病院に専攻医が集中すると、過疎地域や中小の病院に行く医師が少なくなる懸念があります。その辺りを検討していくことになるでしょう。

 都道府県単位の取り組みが増えているのは事実ですが、医学部が1大学しかない県と、4つの医学部・医科大学がある神奈川県では、おのずから事情が違います。人口や医療提供体制も異なる中で、神奈川県独自の対応を検討することが必要です。



https://www.m3.com/news/iryoishin/544174
全日病 病院総合医」を養成するわけ - 猪口雄二・全日病会長に聞く◆Vol.2
地域医療に取り組む中小病院に必要

インタビュー 2017年7月16日 (日)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――よく「中小病院の経営は厳しい」と言われますが、各地域の実情を踏まえれば、十分に取り組むべきこと、生き残る道があるということですね。

 はい。地域包括ケアシステムの中で、自院がどんな役割を果たすべきかを考えることが必要。全日病としても、中小病院をいかに位置付けていくかが最大の課題です。ただ忘れてはいけないのは、地域包括ケアシステムは、医療機関中心ではなく、利用者中心であるということ。利用者のもとに、医療・看護、介護、保健・予防、住まいが集まるシステムであり、全てがイコールパートナーとして、同じ目線で取り組まなければいけません。


「全日病 病院総合医」を養成するコースは、今年度内に立ち上げる予定だという。
――時代とともに、中小病院が果たす役割が変わっているとも言えます。

 私が運営する寿康会病院(東京都江東区)も以前は、150床の一般病院で、手術も数多く実施していました。しかし、1996年に病院を建て替える際、49床にダウンサイジング、空いた敷地に社会福祉法人を作り、特別養護老人ホームを建てました。ショートステイやデイサービスも併設した複合施設は都内でも初でした。

 それでも最初は、49床でも年間約300件の手術をしていました。私が臨床メーンで仕事をしていた時は、大腿骨頚部骨折の手術を1日3例ほど手がけたこともありました。

 しかし、若い医師にとっては、大学病院での手術に慣れると、うちのような小規模の病院では手術はやりにくくなる。しかも、20年前は、ほぼ全てが開腹手術でしたが、胆石の手術辺りから腹腔鏡による手術に代わっていくなど、医学的にも大きく進歩しました。医師数が多く、患者も多数来院し、手術室の回転率も高く、結果的に新しい技術や機器を導入できるような病院でないと、急性期病院として成り立ちにくくなっていく……。こうした流れを感じて、寿康会病院をダウンサイジングしたのです。

 そして約7年前に、メジャーな手術はやめ、内科的入院、リハビリ目的の入院など、地域包括ケア病床の機能を柱にしました。今は局所麻酔でできる手術のみ続けています。

――高齢化に伴う疾病構造の変化とともに、医療技術の進歩が病院経営に大きく影響している。

 そうです。がんの手術も以前はやっていましたが、助手に入る外科医や麻酔科医を確保して、手術日を決めて実施するなど、体制を組んでいたら、コストばかりがかさんでしまいます。

――がんについては、生物学的製剤など新薬の登場が相次ぎ、レジメンも日進月歩です。

 「がんなどの手術は大病院の役割であり、中小病院の役割は何か」を考えると、地域包括ケアへの取り組み、地域住民を対象とした医療になると考え、いち早く当院は転換を図ったのです。

 地域に密着した医療を展開する際に必要となるのは、一般的な診療には幅広く対応でき、専門的な医療が必要かどうかを見極め、紹介することができる医師です。しかもそれだけでなく、介護保険制度など各種制度も知っていることが必要。総合診療専門医がこれに当たりますが、養成はこれから始まるところなので、総合診療専門医が全国的に行き渡るのは、かなり先の話でしょう。

 一方、これまで各専門分野で活躍してきた医師が、総合的な医療をやろうと考えても学ぶ場がない。いろいろな疾患に対応できるけれども、もう少しきちんと勉強したいと考える医師はたくさんいると思います。そうしたニーズに応えるため、「全日病 病院総合医」を養成するための1年くらいのコースを今、作っているところです。

 現場を離れるわけにはいかないので、働きながら学べるよう、e-learningや土日曜日の集合研修を中心にし、1週間くらいの救急での実地研修などを組み合わせたコースとする予定です。公的な資格制度ではないので、一定程度の研修を終えたら、修了証を授与することを考えています。今秋くらいには取りまとめ、今年度内にはスタートさせたい。

――「全日病 病院総合医」は、新専門医制度で19番目の基本領域に位置付けられる総合診療専門医とバッティングするものではないのですね。

 はい、バッティングはしません。先進各国は、早くから総合的に診る医師の養成に取り組んできていますが、日本はこの辺りが遅れてしまっているのが現実です。総合的に診ることができる医師が増えないと、日本の医師不足は解消しないと考えています。



https://www.m3.com/news/iryoishin/544175
地域医療構想、悲観的になる必要なし - 猪口雄二・全日病会長に聞く◆Vol.3
「厚労省、今度こそ改革に本気」

インタビュー 2017年7月23日 (日)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――そのほか全日病として対応すべき課題は何であるとお考えですか。

 地域医療構想です。全日病の各支部から担当者に集まってもらい、データも持ち寄って会議を開催したいと思っています。

――地域医療構想は、各都道府県で策定を終え、各構想区域で調整会議を開いている段階です。

 私は調整会議で、民間病院が悲観的になってはいけないと考えています。確かに高度急性期医療を行う病院も必要ですが、地域包括ケア病棟などを持ち、地域を支える医療を行う病院も必要です。ただ、それを担うのは、地域に密着した中小病院であり、「公立病院が合併して、病床が余ったから、その一部を地域包括ケア病棟にする」といったことはやめてほしいと、各地域で主張してもらいたいと思っています。公立病院と言っても規模や役割はさまざまですが、少なくとも基幹病院が地域包括ケア病棟を持つのはおかしい。


猪口雄二氏は、昨今の制度改革の原点は、2013年8月の「社会保障制度改革国民会議」報告書にあると見る。
――基幹病院の診療圏が広い一方、地域包括ケア病棟を持つ病院は、診療圏は狭いという違いがあるからですか。

 そうです。また地域医療構想と地域包括ケアシステムは、連動して考えられがちですが、私から見れば違うもの。この辺りについても、関係者の理解を深めていくことが必要と考えています。

――両者の一部は重なると思うのですが。

 将来的には重なるかもれませんが、今の時点では、ほとんど重なっていないと思います。地域医療構想は、複数の区市町村が含まれる構想区域単位の話である一方、地域包括ケアは市区町村単位で進むという違いがまずあります。

 また地域医療が抱える問題は地域によって異なりますが、例えば、東京都の場合、構想区域(2次医療圏)単位で医療は完結していない上に、都心部に大学病院が集中していて、多摩地区には回復期や慢性期の病院が多いなど、23区とそれ以外では事情が違うといった問題がありますが、病院の移し替えはできない。この中でどのように許容しながら医療提供体制を考えていくのが、地域医療構想。

 一方、地域包括ケアシステムの目的は、医療機関だけではなく、医療介護の多職種がかかわり、利用者である高齢者をいかに支えるかにあります。

――地域医療構想は、今後どのように展開していくと見ておられますか。

 そもそも地域医療構想は、これから進む話。「骨太の方針2017」で、「2年間で」と打ち出されましたが、2年で終わるはずはありません(編集部注:2017年6月に閣議決定された「骨太の方針2017」は、「病床の役割分担を進めるためにデータを国から提供し、個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応方針の速やかな策定に向けて、2年間程度で集中的な検討を促進する」と明記)。

 病床機能報告制度における4つの医療機能についても、皆がまだしっくりと来ていません。高度急性期や急性期の病床にも、回復期の患者は一定程度、入院しています。一方、うち(寿康会病院、49床)は、一般病床と地域包括ケア病床が半々であり、新規入院患者の半分は急性期の患者が占めますが、回復期として届け出ています。

――地域医療構想に対し、中小病院はどう対応していけばいいのでしょうか。

 それは地域によって異なります。国としては、急性期のベッドを減らして回復期に移行し、急性期の機能を集約したいと考えているはず。これまでも厚労省はさまざまな施策を打ち出してきましたが、今回こそ医療提供体制を本気で変えたいと考えているのだと思います。

 昨今の一連の施策は、「社会保障制度改革国民会議」(2013年8月)の報告書が発端です。確かに機能分化をしていかなければいけないのは事実です。医師の働き方改革も含めて、さらに今後厳しくなる急性期医療にあえて挑戦があってもいい。あるいは逆にうち(寿康会病院)みたいに、地域包括ケア病床を持ち、地域密着型で取り組んでもいい。



https://www.m3.com/news/kisokoza/545560
基礎講座
「なりたい医師像がある」医学生の約半数
医学生4129人が考えるキャリア◆Vol.1

2017年7月16日 (日)配信エムスリーキャリア

 新専門医制度の本格開始、医師のキャリア・働き方の多様化など、医師を取り巻く環境が大きく変わろうとしている今、医学生はどのように自身のキャリアや今後の動向を見ているのだろうか。70大学4129人の医学生を対象に全日本医学生自治会連合(医学連)が実施した「目指す医師・医学者像についての意識調査」の結果を、4回に分けて紹介する(グラフは医学連提供データを基に、エムスリーキャリア編集部にて再編集)。

約半数の医学生に「なりたい医師像がある」
 医学連では2016年12月1日から2017年3月31日にかけて、医学生がどれだけキャリア形成を考える機会を得られているかを解明し、これからの大学教育や新専門医制度の議論にフィードバックしていくことを目的にアンケートを実施。回答数は4129人(70大学)で、男女比は男性58.1%、女性41.9%。学年の割合は以下のようになっています。
(図 略)

 この結果、「目指す医師・医学者像について考える頻度があるかどうか」を聞いた項目では、約8割の医学生が「普段から考える」「たまに考える」と回答。

 考える機会として多かったのは、「大学における実習中」(56.1%)、「学生同士の会話」(43.5%)、「大学における講義」(26.9%)など(複数回答)。大学内での活動がきっかけで将来について考える医学生が多い結果となったほか、「尊敬する医師との出会い」(37.2%)も多くの回答を集めました。

 一方で、「学外の活動」(21.2%)、「大学病院以外での実習」(18.2%)、「地域とのふれあい」(10.4%)など、学外での活動を通じて医師像を考えている医学生の割合は少ない結果となりました。
(図 略)



https://www.m3.com/news/kisokoza/545561
基礎講座
医学生の8割、「大学でキャリアの相談したい」 実態は?
医学生4129人が考えるキャリア◆Vol.2

2017年7月17日 (月)配信エムスリーキャリア

 医師のキャリアや働き方が変容しようとしている今、医学生は将来の医師像をどのように考えているのだろうか。前回に続き、全日本医学生自治会連合(医学連)が70大学4129人に対して行った「目指す医師・医学者像についての意識調査」を基に紹介する(グラフは医学連提供データを基に、エムスリーキャリア編集部にて再編集)。

「目指す医師像考える時間、不十分」4割以上
 「目指す医師像について考える機会は十分か」を聞いた質問の回答は以下の通り。 「十分である」「やや十分である」の合計は56.5%に上った一方、「不十分である」「やや不十分である」との回答も合計4割以上に上り、回答が分かれる結果となりました。

 医師像について考える時間が「十分でない」要因として回答者から上がったのは、「授業が過密で考える余裕がないから」(31.5%)、「ロールモデルがないから」(24.6%)、「学生同士で話題に上らないから」(24.0%)などの回答。こうした結果について医学連では、「機会そのもの、相談相手、参考材料、考える時間的余裕、医師像を考えようとする必要性や主体性など様々な要素が獲得できない場合に起こる声だと考えられる」として、複合的な要素が影響していることを指摘しています。
(図 略)

相談相手は「大学」が最多
 アンケートではこのほか、目指す医師像や将来の働き方について悩みを相談する相手がいるかどうかを質問。およそ8割が「不十分だがいる」「十分にいる」と回答し、相談相手の人数の平均値は3.13人、およそ2割の学生は相談相手がいない(0人)と答えました。
(図 略)

 具体的な相談相手として多く上がったのは「大学」(79.6%)、「家族」(53.5%)、「学外の友人」(31.0%)など。割合の多かった「大学」の内訳(複数回答)は、「同級生」(77.6%)、「先輩」(61.1%)などとなっています。
(図 略)

相談“したい”相手も「大学」がトップ
 また、「目指す医師像や将来の働き方について、誰に相談したいと思いますか」という項目においても、「大学」が75.6%と最多の数値に。前述の「目指す医師像や将来の働き方についての悩みを相談する相手はいますか」という質問への回答と比べると、「教員」(46.0%)の割合が高くなっていることから、医学連では、「将来のことを教員に相談したくても相談できない医学生の存在がうかがえる」としています。



https://www.m3.com/news/kisokoza/546274
「新専門医制度は、自由な人生設計を保障するような内容に」
医学生4129人が考えるキャリア◆Vol.4

2017年7月22日 (土)配信エムスリーキャリア

 2018年度の本格開始を間近に控えた新専門医制度。当事者となる医学生は、どのように動向をとらえているのだろうか。全日本医学生自治会連合(医学連)が70大学4129人に対して行った「目指す医師・医学者像についての意識調査」を基に、医学生のキャリア意識を探る本シリーズ。最終回は、新専門医制度に対する医学生の考えを紹介する(グラフは医学連提供データを基に、エムスリーキャリア編集部にて再編集)。

「新専門医制度に学生の声を」44.8%
 2018年度から本格開始する見通しの新専門医制度。その議論に学生の声を反映させることが「必要だと思う」と答えた医学生の割合は44.8%という結果になっています。

 「どちらでもない」と答えた医学生の回答も4割程度に上った今回のアンケート。ただ、自由記述欄では「意見の反映よりもそれに関する知識がほしい」、「新制度がそもそも二転三転しているような印象でよく分からないから意見の出しようがない」、「学生という立場からでは見えている範囲が狭すぎて有用な意見を発することは難しいと思います」などの意見も。前提として、医学生に対する新専門医制度の説明が十分でなく、意見を発することも難しくなってしまっている現状があると医学連では指摘しています。

「専門医制度は、自由な人生設計を保証するような制度に」
 このほか、新専門医制度において「どのような点に関して、学生のどのような意見を反映してほしいか」を聞いた項目での回答内容をまとめると以下の結果に。幅広いニーズを反映するような意見が寄せられていることから、医学連では「新専門医制度が医学生にとって多様性と選択肢を狭めるものではなく、自由な研修、自由な人生設計を保障するものであって欲しいという想いが読み取れる」としています。

■ワーク・ライフ・バランスを考えつつ専門医を取りたい
・専門医取得にかかる時間が長い。(2年生、女性)
・大学病院に残らないと専門医がとれないと、ライフワークバランスや専門医の偏在等に影響する(3年生、男性)
・結婚・妊娠・出産・育児などのプライベートと医師としてのキャリアパスの両立に関しての意見は反映してほしい(3年生、女性)

■複数の専門を標榜できるようにしてほしい
・低学年に説明の機会を与えるべきである。(複数の学生が回答)
・ダブルボード取得の可否や女性医師のキャリア形成、地域枠学生の働く場所の選択の自由など学生がすごく不安に思っている点はあると思うのでそこを安心できるような制度にしてほしい。(3年生、女性)

■女性医師の働き方について
・専門医を取るためにどのくらいの時間、現場が求められているのか、特に女性医師の場合、専門医取得後、キャリアアップまでの年数、経験症例がどのように変わり、親の介護、子育て、家事などがある中でどう両立していけるのかについて、専門医制度をつくる例が考える具体的な人生設計プランを提示してみてほしい。(5年生、女性)
・結婚・出産などのライフイベントがある人など中途半端な立ち位置になってしまうのではないかという不安があります(6年生、女性)
・専門医を取ることができるのが遅れることに関して女性として働きにくくなることを考慮してほしい(6年生、女性)
・やはり女性である身として、子育ても両立出来るようなしっかりとした制度にしてほしいと思う(3年生、女性)

■研修先によって取得できる科に制限が生まれないこと
・都市部以外の地域で研修を受けても有利不利が生まれないこと。(複数の学生が回答)
・自分にとっては都心の方が圧倒的に有利であり、働き方の自由を謳う現状と逆行する制度に見える。(3年生 女性)
・専門医を取得できる場所の多様化を求めます。(6年生 男性)
・大学での入局以外の選択肢を用意できないか検討するべき。今ある奨学金の制度とかみ合わなさすぎるものが多い(5年生、男性)

■臨床医以外のキャリア形成も認めてほしい
・社会医学などの分野も考慮すべきと思う。臨床偏重である(1年生、男性)
・学位取得はどうなるのか専門医取得との兼ね合いはできるのか?(4年生、女性)
・留学など色んな選択枠が人生で生まれるような制度だとうれしい(4年生、女性)

■「医学教育にキャリア形成考える機会を」
 医学生のキャリア観を明らかにし、大学教育や新専門医制度の議論へのフィードバックを行うことを目的とした今回の意識調査。医学連では考察を以下のようにまとめています(原文引用)。

 「医学教育モデル・コア・カリキュラム 平成28年度改訂版」によると、「多様なニーズに対応できる医師の養成」が教育目標として掲げられています。これは、これから起こる多様な求めや変化に医師が応えてゆくという受動的な側面だけでなく、医師として多様なキャリアパスが形成でき、多様なチャンスがあるということも意味しています。したがって、医学部における医学生のキャリア形成は、社会からのニーズの一つであると解釈することができます。

 しかし、医師像を考える機会については十分に保障されているとは言い難い現状があることが、本アンケート結果から明らかになりました。そしてその要因としては、そもそも大学が機会を設けていないことや、相談相手や参考材料が少ないこと、試験が多忙で時間的・精神的余裕がないこと、医師像を考える必要性を感じられないこと、さらには医師像を考える主体性を身につけられていないことなどが挙げられ、非常に複雑かつ多様であることが分かりました。

 そのような状況に加えて、新専門医制度についても、多くの医学生がまだ十分に理解できていないことがわかりました。その原因としては、まず制度そのものが学生へ十分周知されていないことが挙げられます。またその一方で、将来制度を利用する主体者になるはずの医学生が、新専門医制度についてそもそも知識や関心が薄いことも挙げられます。このことは、最後までプログラムを履行する医師が少なくなる可能性を示唆しています。専門医の取得が「義務」から「推奨」へ変わったなか、このような事態では専門医の細分化が進まなくなる恐れがあり、国民や患者が十分に満足のいく医療を受けられなくなる可能性すらあると言えるでしょう。

 医学生は今の医学教育に一定の満足度は示してはいるものの、十分にキャリア形成を考える機会を得られている学生は多くありません。そのため、各大学で大学側と学生側が協働して学生の声を吸い上げて、医師像を考える機会の提供や、相談できる体制の整備、多様な働き方の提示などにより、学生のキャリア形成への動機付けを推進してゆく必要があります。そして、そのことが医学生のみならず国民・患者さんの利益にもつながってゆくのではないでしょうか。


  1. 2017/07/23(日) 09:35:30|
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