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6月25日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/540428
真価問われる専門医改革
米の専門医制、「質」重視、研修医数もコントロール
米マサチューセッツ総合病院の島田氏、評価機構で講演◆Vol.1

レポート 2017年6月23日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 米国ハーバード大学マサチューセッツ総合病院の循環器内科指導医の島田悠一氏は6月21日、日本医療機能評価機構の第8回医療政策勉強会で「米国における専門医制度と医師の働き方」をテーマに講演した。

 米国の専門医制度は、初期研修(レジデンシー)と専門研修(フェローシップ)の2階建て。全国・州・病院、それぞれのレベルで、診療科ごとに受け入れ研修医数を決定、マッチングによる選抜を実施しているのが特徴。その数は、研修医1人当たりの経験症例数と指導医数から決定する。さらに、メディカルスクール卒業後に開始する初期研修では、「Teaching Round」という症例ベースの教育を毎朝1~1.5時間かけて実施したり、指導医や同僚だけでなく患者も含めた360度評価を実施するなど、島田氏は「質」を重視した専門医制度の現状を紹介した。

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循環器系を専門とする場合の米国の専門医制度(提供:島田氏)

 専門医資格の更新に当たっては、10年に一度の試験に合格することが必要。米国の医師が専門医資格の取得・更新に努めるのは、保険請求できる額が専門医の方が高いなど、インセンティブがあるためだという。

 医師の働き方については、初期研修をめぐる動きを中心に紹介。医療事故に端を発して、勤務時間や受け持ち患者数の制限が年々厳しくなり、1年目の研修医は週80時間が上限、連続勤務は16時間までなどのルールが設けられた。しかし、これらの時間制限がある場合、シフト制を組まざるを得ず、結果として診療の継続性が保てないなどの問題が指摘され、この3月に「振り子の揺り戻し」で連続勤務を24時間まで認める方針が決定した。日米ともに、医師の働き方は重要かつ解決が難しい課題となっていることが伺えた(『米国の研修医、勤務時間制限を一部緩和』を参照)。

 
 島田氏は、現在34歳。2007年、東京大学医学部医学科卒業。2008年から米国に留学後、内科と循環器内科専門医の資格を取得。2015年から、マサチューセッツ総合病院で循環器内科指導医として勤務する。ジョンズ・ホプキンス公衆衛生大学院修士課程を修了し、公衆衛生学修士(MPH)を持つ。

 講演の骨子は、以下の通り。

◆米国の専門医制度(初期研修、後期研修)の基本
・医学部(メディカルスクール4年)卒業後、初期研修(3~5年)、専門研修(1~3年)を行う。初期研修は、日本の基本領域の専門医研修に相当(2017年6月現在、28領域)。
・ACGME (Accreditation Council for Graduate Medical Education) が研修プログラムの認定などを、ABMS(American Board of Medical Specialties)が専門医試験などを、それぞれ実施。ACGMEは病院からの研修プログラムの認定料、ABMSは医師からの専門医資格認定料などで運営。
・医師は、学会に加入しなくても、専門医の取得は可能。

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ACGME、ABMS、学会、病院、医師の関係(提供:島田氏)

・各病院の診療科別の研修医受け入れ数は、研修医一人当たりの経験症例数(外科であれば手術症例など)と指導医数で決まる。したがって、全国・州・病院レベルで、診療科別の研修医の受け入れ人数に上限がある。年1回、マッチングを実施。「こうした要素を加味することで、診療科や地域による偏在が起きないようにしている」(島田氏)。医師にとっては希望する病院や診療科を選ぶのが、専門医になるための第一歩。

・研修は、基本は同一病院で実施。不足する症例がある場合には、他の病院で研修。
・「内科・小児科コンバインドプログラム」があり、合計4年程度で内科専門医と小児科専門医の両方の研修が可能なプログラムもある。

・「日本のように、症例レポートの提出などはない。研修医の質の担保を、各病院に委ねていることなるので、さまざまな工夫をしている」(島田氏)。
 その一つが、「Teaching Round」。毎朝1時間から1時間半かけて行う。1チーム、1年目の研修医2人、2、3年目の研修医1人、指導医1人という体制で、(1)夜勤帯に入院を受け入れた患者3~5人のうち1人について、控え室で研修医がプレゼンテーション、(2)ベッドサイドで振り返りを実施、(3)控え室に戻り、指導医が当該疾患の鑑別診断や治療法などについて30分くらいレクチャー、(4)15~30分くらい最近の医学トピックスについて話し合う――といった流れになる。他にも多くの教育的カンファレンスがある。
・研修医の質は、評価でも担保。毎月および年次の区切りに評価を実施、一定の基準に満たない場合には、進級できない。360度評価で、指導医、コメディカル、患者など、さまざまな立場からの評価を受ける。

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米国の初期研修1年次の1週間のスケジュール例(提供:島田氏)

・研修プログラムを修了すると、専門医の受験資格を得る。専門医試験に合格すれば、専門医を取得。例えば、内科専門医の場合、それで修了するか、専門研修に進むかという選択肢がある。専門研修でも、病院、州、全国レベルで研修枠が決まる。

・専門研修は、例えば、循環器内科の場合、1カ月ごとに、「心臓リハビリ、循環器病棟、CCU、心臓カテーテール、循環器病棟……」などとローテーション。週5~8時間程度の講義もある。3年目以降は自分が専門としたい分野を重点的に研修。 ・循環器内科の場合、指導医のバックアップの下、4日に1回程度、午後5時から翌朝8時まで当直。その間は、他のフェローの担当患者も担当するため、当直がないフェローは完全にオフになる。「米国の医師の働き方は、オンとオフがはっきりしている」(島田氏)。

◆米国の専門医の更新
・10年に一度、専門医資格更新に合格することが必要。3つくらいの専門医を持っていると、3年に1回程度という頻度で専門医試験を受けることになる。
・専門医維持のために、5年で100単位、10年で200単位などの取得が必要。学会出席、論文の査読、オンラインの講義など、さまざまな単位取得のやり方がある。「臨床医にとって負担は大きいが、最新の知見などを学ぶ機会になる」(島田氏)。

・米国の医師が、専門医取得・更新に努めるのは、インセンティブがあるため。「内科専門医では、循環器内科のフィーは請求できない。循環器専門医の資格を持たない医師が、心臓カテーテル検査を行い、訴訟になれば、必ず負ける。また専門医を持っている診療科しか標榜はできない」(島田氏)。

◆ACGMEの役割
・研修カリキュラムの整備、研修プログラムの認定、質の確保のための訪問査察、匿名アンケート調査などを行う。
・質の確保のための病院への訪問査察は、年に1回、抜き打ちで実施。アポイントなく病院を訪問して、研修医に研修の実際をインタビューする。ACGMEは大きな権限を持ち、研修の基準に違反したら警告、改善しなければ罰金、研修医の募集停止、最悪の場合には研修プログラム認定の取消、という段階的な罰則を講じる。
 「病院は、研修医を受け入れる教育病院であることがPRとなるため、研修自体は経済的には多少マイナスになっても、研修を継続する」(島田氏)。

◆ABMSの役割
・研修プログラム履修要項の作成、専門医試験の問題作成などは各学会が行い、それを基にABMSが試験を実施、専門医認定証の発行などを行う。学会はその対価を受け取る。
・教育関係に従事する医師のキャリアの一つとして、ABMSに出向することもある。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540429
真価問われる専門医改革
米国の研修医、勤務時間制限を一部緩和
米マサチューセッツ総合病院の島田氏、「振り子の揺り戻し」◆Vol.2

レポート 2017年6月23日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医療機能評価機構の第8回医療政策勉強会で6月21日に講演した、米国ハーバード大学マサチューセッツ総合病院の循環器内科指導医の島田悠一氏は、米国の専門医に限らず、「医師の働き方」についても講演し、「振り子の揺り戻しが起きている」現状を紹介した(専門医制度の概要は、『米国の研修医、勤務時間制限を一部緩和を参照)。

 米国では初期研修について、勤務時間に制限があり、1年次の研修医の場合、連続勤務は16時間が上限だったが、2017年3月に2、3年次と同様に、「24時間勤務」を可能とする方針が打ち出された(7月から実施)。16時間の上限では、自分の診断や治療の結果が正しいかなどを、記録ではなく自ら経験できる機会を逸するなど、診療の継続性が保てないことが問題になっていたからだ。勤務時間の上限緩和に先立ち、ランダム化比較試験を実施、「勤務時間制限を緩めても、診療の質には影響しない」という結果は、2016年のNEJMに掲載された(NEJM.2016 Feb;374(8):713-727)。

 「研修医の勤務時間については、米国も試行錯誤している。長すぎると過労になる一方、短すぎると十分な研修ができない。どこかにスイートスポットがあるのだろう」(島田氏)。

 なお、指導医には、勤務時間の制限はなく、病院との契約時、外来、入院患者の担当目標数を決めるのが一般的だ。また研修医の勤務時間の制限に伴い、指導医クラスにしわ寄せが行ったという経緯もあり、それは今でもあるという。島田氏は、研修医か指導医かを問わず、医師の勤務時間短縮には、「医師でなくてもできる仕事は、医師以外に移譲するのが、解決策ではないか」と見る。

 
 900床規模、内科研修医は120人

 米国で、研修医の長時間勤務が問題になったのは、1984年のニューヨークの病院で発生した「リビ-・ジオン事件」がきっかけ。救急外来を受診した患者が医療事故で死亡、患者家族が病院や担当医らを提訴。担当した研修医は36時間連続勤務だった。「1986年のニューヨーク州高位裁判所の判決は、研修医の過重労働が悪影響を与えていると判断した、画期的な内容だった」(島田氏)。

 その後、各州で順次研修医の勤務時間の短縮が進み、2003年にACGMEが「週80時間労働規制」を導入。「20年の時を経て、ようやく全米に広がった」(島田氏)。

 今年3月の見直し前のルールは、(1)週当たりの勤務時間は80時間以内、(2)初期研修の2、3年次の研修医の連続勤務は、「24時間+3時間の引き継ぎ」、(3)初期研修の1年次の連続勤務は、16時間まで、(4)勤務と勤務の間は、8時間以上空ける――という内容。外来と入院ともに受け持ち患者数に制限があった。

 下図は、研修医の働き方の例。「非当番日」は、朝6時から午後5時まで、「当番日」の場合は、朝6時から午後8時までの勤務。例えば、4人で1チームを組み、「非当番日」は、午後5時の時点で勤務が終わるが、「当番日」は、他の3人の研修医の受け持ち患者も担当する。午後8時になると、夜勤チームに引き継ぐ。

 このようなシスト体制を組むことができるのは、例えば900床の病院で、内科研修医だけで120人もいるなど、医師数に余裕があるためだ(1年次から3年次までの合計)。

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米国の初期研修1年次の勤務形態の例(提供:島田氏)

 シフト制、「主治医としての責任感に育ちにくい」

 シフト制は、勤務時間の短縮になるものの、問題も生じている。それが「診療の継続性」だ。例えば、日中に自分が処方した薬が、夜間に現れると想定されても、午後5時には勤務が終わるため、結果を追いにくい。「『この患者のことは、自分が一番よく知っている』『患者の責任は自分が持つ』という覚悟を、医師になりたての頃に育てることが重要。シフト制では、主治医としての責任感が育ちにくい」(島田氏)。

 「診療の継続性」の問題は、多くの病院で生じており、全米の外科医4330人を対象に、ACGMEの勤務上限遵守群と緩和した群に分けたランダム化比較試験が実施された。その結果は、NEJMに掲載された。プライマリエンドポイントを、患者の死亡もしくは重篤な合併症発症として見たところ、非劣性だった。それを踏まえ、1年次でも「24時間連続勤務」が可能になった。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540789
日医代議員会
医師偏在対策、カギは「地域医療構造の医師版」、中川副会長
第140回日医代議員会、「喫緊の課題は医師の偏在解消」

レポート 2017年6月25日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、6月25日の第140回日医定例代議員会で、医師不足問題について、絶対数は近く充足する見込みであり、「喫緊の課題は、医師の偏在解消」と指摘。2015年12月の全国医学部長病院長会議との合同の緊急提言を精査・進化させ、地域医療支援センターの強化、医学部の地域枠や地元出身枠の拡充のほか、「地域医療構想の医師版」の作成という3点に取り組む必要性を指摘した。

 「地域医療構想の医師版」とは、医師の必要数を地域ごと、診療科ごとに将来推計し、医師需給の「見える化」を図ること。中川副会長は、「新たに医師になる世代に、自らのキャリアを検討、判断するツールを提供できると考えている」と述べ、「行政から強制的に配置されるのではなく、医師自らが選択することを最後まで守っていきたい」と強調した。

 「喫緊の課題は、医師の偏在解消」との現状認識は、厚生労働省の関係審議会の見解ともおおむね一致しているほか、この6月に政府が閣議決定した「骨太の方針 2017」でも、「医師養成数のさらなる増加ではなく、2008年度以降臨時増員してきた医学部定員について、医師需給の見通しを踏まえて精査を行う」としていると説明(『「医学部定員増、精査を」、骨太2017素案』を参照)。

 代表質問で、医師需給や偏在について、「日医主導による意見集約」を求めたのは、埼玉県代議員の金井忠男氏。金井氏は、現状の問題点として、病院勤務医が、過酷な労働環境に耐えられず、開業の道を選ぶことなどを挙げ、勤務医不足の解消が、喫緊の課題であると指摘。しかし、病院と診療所では意見の相違がある上、四病院団体協議会では医師養成強化を続けるべきと主張していることから、「日医のリーダーシップのもと、医師不足解消のための意見を統一すべき」と日医の見解と質した。

 医師増の要望、「病院経営者の危機感も」

 中川副会長はまず、「日医は、大勢として医師の絶対数は充足していくと考えている」と説明。その理由を以下のように説明し、この現状認識について日医がリーダーシップを取り、四病協や全国医学部長病院長会議と共有していくと表明。

 日医は、病院の医師不足の実態について、2008年と2015年に病院に対してアンケートを実施。この間、病院医師数は年平均約2%増えたものの、アンケートの結果、病院の必要医師数は、いずれの時点でもその時点で在籍する医師数の約1.1倍で減少傾向は見られなかった。必要医師数が1倍を超えているのは、「医療の高度化や、病院間の競争が激しくなっており、より多くの医師を確保して、生き残りを図りたいという病院経営者としての危機感もあるためかと思われる」(中川副会長)。

 また今後の高齢化の進展に伴い、医療需要が増加するという見方もあるものの、日医調査では、現在の100床当たり医師数は、急性期機能のみの病院と比較して、回復期機能のみの病院では約半分、慢性期機能のみの病院では約3割にとどまるという。高齢化で回復期、慢性期の医療需要が増えれば、全体の必要医師数はやや抑制される可能性があるほか、医療安全を最優先に位置付けつつ、今以上に多職種の連携も進むと見通した。

 「もちろん、ライフワークバランスの実現を目指した働き方改革を踏まえると、現状の病院勤務医は過重労働で、勤務医の負担軽減は引き続き重要な課題。一方で、これからは2008年度以降の医学部定員増による医師が大挙して医療現場に加わってくる」(中川副会長)

 「かかりつけ医の負担軽減も大事」

 以上のような現状認識を踏まえ、地域および診療科の医師偏在対策として、以下の3点に取り組んでいく必要性を指摘した。

(1)全国の地域医療支援センターの実効性を向上させる。2015年12月の緊急合同提言で、一歩進んで、各大学への「医師キャリア支援センター」の設置を提言したが、まずはその土台となる地域医療支援センターの機能の強化が必要。同センターの機能や運用は全国でさまざまであるため、日医が情報収集、意見交換を行い、好事例を速やかに全国展開できるよう支援。

(2)医学部の地域枠あるいは地元出身枠の拡充。地域に生まれ、地域に愛着を持つ医師の地元定着率が高いことは、厚労省の審議会などでも報告されている。

(3)医師需給の「見える化」を進める。例えば、地域医療構想では将来の患者数から病床の必要量を構想区域ごとに計算し、将来の見通しを示している。同じように将来の医療需要、つまり患者数に対する医師の必要数を、地域ごと、診療科ごとに推計すれば、新たに医師になる世代に自らのキャリア設計を検討、判断するツールを提供できると考えている。

 さらに中川副会長は、「過去10年間に病院の医師が3万1000人増加したのに対し、診療所開設者の増加は約1200人の増加にとどまっている」と説明。都市部では、医療モールなどの展開もあって、診療所が多い地域もあるものの、地方では医師自身の高齢化もあり、地域包括ケアシステムの構築に向けて、かかりつけ医の確保が課題となっているとした。「医師の不足、偏在の問題については、病院勤務医の負担軽減を念頭に置きつつ、同時にかかりつけ医の負担軽減も大事にしていきたいと考えている」。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540329
地域医療の現場
夢見た地域完結の医療、「今は無力感と脱力感」 - 花輪峰夫・秩父病院院長に聞く◆Vol.1
「断らない救急、いつまでも強いるわけにはいかない」

レポート 2017年6月23日 (金)配信高橋直純(m3.com編集部)

 少子高齢化、人口減少が進み、日本全国で都市部も地方もそれぞれが変化が求められている。医療提供体制では団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向けて、行政主導で改革の枠組み作りが進んでいる。一方で、政策的な思惑とは別に、各地で脈々と息づく地域医療の歴史がある。

 m3.com編集部では、地域医療の現場を取材する新企画をスタートさせる。現場の知見や取り組み、医療者の思いなどを紹介していく。第1弾は埼玉県秩父市にある医療法人花仁会「秩父病院」(1887(明治20年)設立、一般病床52床(10対1入院基本料)、13診療科、常勤医8人)の花輪峰夫院長に、秩父の救急医療や医師養成の在り方について話を聞いた(2017年5月24日インタビュー、全2回)。

――2017年4月1日に書かれた花輪先生のブログ記事「救急医療に対する今後の当院の方針」について、どのような背景、思いがあったかをお聞きしたと思います。
「救急医療に対する今後の当院の方針」
 地域医療計画の中で、当院の方針は大きな進路変更はしないこととしました。ただ、夜間と休日の救急診療については、来年度(平成30年度)より段階的に縮小させて頂きたいと考えています。
―中略―
 今、私は秩父地域の救急医療の現状を冷静に判断し、自分の考えをリセットしようと思っています。仮に当院が二次救急を完全に辞退したとしても、より広域的な救急医療体制が確立している今、大きな混乱は起こらないでしょう。
 得意分野に集中し、守備範囲外はより迅速に、より広域的に紹介・搬送する。これが患者にとって最も益のあることと思うのです。救急医療で大事なことは無理な地域完結でなく、適格なトリアージであると思うことにしました。地域完結を夢見てきましたが、今は無力感と脱力感、諦めの境地の中で、これが45年間、秩父の救急医療に関わって来て到達した、現時点での私の正直な気持ちです。

花輪峰夫氏 秩父地域は日本でも先駆けて、開業医の小さな病院の先生たちが有志で、夜間輪番制を作りました。当院も1887(明治20)年の開設当初から、普通の診療として当たり前のように救急医療を行っていました。1965年に救急告示医療機関となり、1976年にできた二次救急夜間輪番システムにも最初から参加し、半世紀以上にわたり救急医療に携わってきました。

 輪番システムには当初、7病院が参加していましたが、現在は3病院になっています。やはり救急体制を維持するのは困難ということでしょう。当院は水曜日と、ローテーションで回ってくる土日曜日を担当しています。当番日は外科系の先生が1人と勉強のため研修医が1人が当直に当たります。また、22時までは小児救急として医師会の先生に手伝っていただいています。

――何人の医師で担当しているのでしょうか。

 大変なのは人員の確保です。水曜日は、常勤の外科医4人と埼玉医科大学国際医療センター(埼玉県日高市)、総合医療センター(埼玉県川越市)の救急の先生に来てもらって、回しています。水曜日以外の院内当直もあり、現場の職員の負担は大きいです。

 患者数はバラツキも大きいですが、平均して一晩に20-30人、そのうち入院に至るのは2人程度です。多くは緊急性の低い患者ですが、重症者で多いのは脳卒中と心臓病と大血管系の疾患です。しかし、当院も含め、秩父で脳卒中や心筋梗塞等は対処できないので、救急車で1時間弱の国際医療センター等にお願いすることになります。その手配も医師がやりますし、搬送時に患者について行くこともあります。当直医がついて行く場合には、代わりの医師が出てこなくてはなりません。

 採算面を考えればうちのような小規模な病院にとって、大変な負担であることも事実です。脳卒中や心筋梗塞が対処できるのであれば、救急でもペイできるかもしれませんが、重症患者の大半は転送先を探すことになります。

――秩父地域の救急医療はどのように変わってきたのでしょうか。
 私の考え方もあって、うちのスタッフたちには「医者なんだからなんでも診ろ。絶対に断るな」と言っていますが、大変です。それをいつまでも強いるわけにはいきません。私自身も、水曜日はいつでも出られるように自宅で待機しています。今年の12月で70歳になりますが、果たして次の世代に引き継いでいけるか。

 そういう大変さもスタッフが多い昼間はカバーできますが、夜間の重症患者に対応すると、地域から医師も救急隊もいなくなってしまう。6年前に現在の土地に移転しましたが、理由の半分は病院併設のヘリポートを作るためでした。昼間であれば、7分で国際医療センターに行けます。

――「無力感と脱力感、諦めの境地」というのはどのようなお考えからでしょうか。
 私が秩父の医療に初めて関わった1973年ころは救命救急センターもなく、地域の医療機関や医師同士が助け合いながら、地域で完結すべく懸命に努力していましたし、最近までそのように頑張ってきたつもりでいます。

 地域完結型医療を45年間目指してきて、今も諦めたわけではないですが、医療の進歩や個々の守備範囲の縮小などにより、医療全般にわたり、地域内での対処可能な症例は少なくなっている。つまり秩父地域の医療は中央の進歩に対し、遅れを取っていると言わざるを得ません。

 一方で、医療連携の取り組みも進み、最近では後方病院もずいぶん引き受けてくれるようになりました。秩父地域では年間380件ほど対応できずに管外搬送しています。そのうち50件程度は当院です。ある時、消防の人に聞いたら、それとは別に、年間計600件以上は、救急隊の判断で、管内の医療機関を通らず管外に連れて行っているそうです。

 無力感というといじけたみたいですが、救急救命士が気管挿管ができるようになったり、広域的なシステムができ上がったり、システム面の改善も進んでいます。何も、今までのように自分たちで完結させようとせずに、広い目で考えればより良い医療を患者さんに提供できるようになってきています。

――「段階的に縮小」というのはどのようなことでしょうか。
 具体的なことを決めているわけではなく、ぽんっと空けてしまうわけにはいかないので、今から準備してもらうためにブログで書きました。今年の秋頃には、来年度の輪番の予定が決まります。それまでに医局会を開いて相談しますが、「我々が頑張ります」と言ってきたら、現在のままかもしれません。いずれにしても救急告示病院としての最小限の使命は果たして行ければとは思っています。

――どのような救急医療が望ましいとお考えでしょうか。
 医療は社会保障であり、救急医療はその最たるものです。自治体病院がより多くの責務を負って行くべきと考えます。このことに税金が使われても、市民の誰しもが納得するでしょう。現状のような一般会計からの繰り入れも当然と思われます。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540261
地域医療構想
「新規開設・増床」、許可前に調整会議で確認
地域医療構想WG、「過剰な病床機能への転換」も制限

レポート 2017年6月23日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(座長:尾形裕也・東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)は、6月22日の第6回会議で、地域医療構想調整会議の議論の進め方について議論、病院の新規開設や増床等の計画が判明した場合は、開設等の許可を待たずに、調整会議への参加を求め、計画の詳細を確認する方針を了承した(資料は、厚労省のホームページ)。

 医療法上の基準病床数を下回る2次医療圏であれば、開設等は可能。ただし、例えば、2025年において急性期機能が不足していない地域で、急性期機能の開設等を希望する場合、調整会議で確認、それを基に都道府県の医療審議会において、開設等の許可に当たって何らかの条件を付与するか否かなどを検討する。地域で担う機能が大幅に変更する場合も同様に、調整会議での説明を求める。

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、「調整会議では、各構想区域内で、長年医療を提供してきた医療機関同士が相談して協議している。アンダーベッド(病床不足地域)の場合に開設を求めてきた場合、調整会議と医療審議会で、『ノー』という結論はあり得るか」と質問。厚労省医政局地域医療計画課長の佐々木健氏は、「議論の内容によるが、それによって再考することはあり得る」と述べ、今後、実際に該当事例が生じた場合には、厚労省としても相談に応じていくとした。

 さらに「過剰な病床機能に転換しようとする計画」があった場合の調整会議での取り扱いも明確化。例えば、下図の場合、「X年度」と「X+1年度」の病床機能報告の医療機能を変更すれば、法的には「過剰な病床機能への転換」には当たらない。しかし、地域医療構想の実現には支障が生じかねないことから、調整会議へ参加し、説明を求める。

 
 「慢性期機能」、議論は3パターン
 22日のワーキンググループでは、調整会議における「慢性期機能」を担う病床に関する議論の進め方も整理。2016年度の病床機能報告制度によると、2025年の「病床の必要量」との比較で、3パターンに分類できる。特に問題となるのが、「ウ」。介護療養病床は2017年度末が設置期限だが、6年の経過措置がある。介護療養病床を除いてもなお、「慢性期機能」が「病床の必要量」を上回る場合、厚労省は、介護療養病棟と医療療養病床に続き、「一般病床(13対1、15対1入院基本料など)等の役割についても確認」という議論の進め方を提案。これに対し、全日本病院協会副会長の織田正道氏からは、「13対1、15対1」への言及について、削減への「圧力」とも受け取れるとの指摘が出た。

 なお、特に「慢性期機能」では、6月単月の実績報告では、入退院の実態が把握できないため、2017年度の病床機能報告制度からは、4つの医療機能とも、年間の入退院の報告を求める。

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(2017年6月22日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」資料)

 「地域医療構想は、天気予報」
 調整会議の具体例として、岩手、静岡、佐賀の3県の取り組みも報告された。

 「地域医療構想は、天気予報」とユニークな表現で説明したのが、佐賀県。予報する側の行政は精度を高め、分かりやすく伝える一方、予報を基に行動を判断するのは、各医療機関であるためだ。2015年度に地域医療構想の策定を終えた同県は、地域医療構想の構想期間を3期に区分。フェーズ1が2016~2017年、フェーズ2が2018~2020年、フェーズ3が2021~2024年だ。フェーズ1では、県全体で2回、各構想区域で2回、それぞれ調整会議を開催。地域医療支援病院である伊万里有田共立病院が、「急性期機能」の一部を転換し、ケア・ミックス化を検討したが、調整会議で再考を求めるなど、他県の調整会議の多くが「情報共有」にとどまる中、一歩踏み込んだ調整を実施している。

(2017年6月22日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」資料)(略)

 岩手、静岡の両県も、さまざまなデータを分析し、関係者の共通理解を図っている現状を紹介。多くは厚労省が提示したガイドラインに準拠したものだが、静岡県は、在宅医療や地域包括ケアの担い手の現状把握のため、独自に「診療所医師」の年齢構成なども分析した。

 もっとも、岩手県や佐賀県では「急性期指標」を用いた分析も行っていたため、中川氏は苦言を呈した。「急性期指標」とは、4つの医療機能のうち、「急性期機能」の役割を定量化して示すために、検討されている指標。しかし、病床機能報告制度が病棟単位である一方、「急性期指標」は病院単位であるなど、いまだ研究途上で、同指標を現時点で使うには問題があるとされている(『「急性期指標」、「見える化」の第一歩だが、注意必要』を参照)。中川氏はこれらの問題点を挙げた上で、「急性期指標を使わないよう、(都道府県に)通知してもらいたい。せっかく全国各地で、(地域医療構想の実現に向けて)自主的に収れんしていくシステムができたのだから、これを壊すことはやめてもらいたい」と語気を強めた。

 これに対し、佐々木課長は、「急性期指標」については病棟単位にする研究も進められていると説明、その上で調整会議は、一つのデータではなく、多面的なデータを基に、議論していく場であるとして、理解を求めた。それでも中川氏は、「多面的なデータの一つとしても、使わないでほしい。(問題点を修正し)バージョンアップして初めて使えるものになる」と釘を刺した。さらに中川氏は、いまだ「回復期機能が非常に不足している」との誤解も正すことを努めるよう、厚労省に要求(『地域医療構想「大学の理解不十分」「『回復期不足』も誤解」』を参照)。

 地域医療構想は、47都道府県で2016年度内に策定を終えた。2017年度以降は、都道府県別、構想区域別の地域医療構想調整会議で、いかに関係者が話し合い、同構想を実現するかが課題になっている。本ワーキンググループでは、5月以降、6月22日までに計3回の会議で、2017年度の病床機能報告制度や調整会議の在り方について議論した。近く開催予定の親会「医療計画の見直し等に関する検討会」に報告する予定。

 さらに厚労省は近く、調整会議の進捗状況を把握するため、都道府県への調査を実施する。(1)調整会議の開催状況(構想区域毎)、(2)データ共有の状況等(構想区域毎)、(3)具体的な機能分化・連携に向けた取り組み(5疾病5事業および在宅医療等の中心的な医療機関が担う役割、新公立病院改革プラン、特定機能病院の役割など)、(4)調整会議での協議が調わない場合の対応、(5)地域住民・市区町村・医療機関等への普及啓発の状況――だ。結果は次回以降の本ワーキンググループに報告する予定。




https://www.m3.com/news/iryoishin/539307
地域医療構想「大学病院は別枠で」
医学部長病院長会議、大学病院の位置づけ明確化を要望

レポート 2017年6月20日 (火)配信高橋直純(m3.com編集部)

 全国医学部長病院長会議は6月19日、東京都内で記者会見を開き、「地域医療構想における大学病院本院の位置づけに関する提言」を5月26日に厚生労働省に提出、6月2日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で報告したことを説明した(『地域医療構想「大学の理解不十分」「『回復期不足』も誤解」』を参照)。同会議が実施した調査では、今年度から具体的な病院名を出して病床数などを検討する地域医療構想の調整に当たって、「大学病院は一般病院と別枠でお願いしたい」などとする医学部長、病院長の意見が明らかになったと報告した。

提言の内容は以下の4点。

1.大学病院本院の地域医療構想を明確にすること。

2.大学病院本院が「地域医療構想」における構想区域を超えた、より広範囲の地域の住民を対象として、専門性の高い医療を提供していることから、その実情を踏まえ、地域医療構想調整会議において、その担うべき役割について十分に議論すること。

3.大学病院本院が所在している構想地域及びその周辺の地域医療計画においては、それを配慮して地域の病床構想を検討すること。

4.大学病院本院からの病床機能報告については、地域の他施設の病床と単純に合算するような対応は行わず、その特殊性を十分勘案した上で、集計するように配慮すること。

 同会議が2017年4月にまとめた「大学病院の地域医療構想及び地域包括ケアへの取組に関する調査」(中間報告)の一部も説明した。地域における地域医療構想の策定過程に対する大学および大学病院の構成員の参画状況では、(1)都道府県レベルでの「医療審議会等」には、「なし」が19大学、(2)都道府県レベルの「作業部会等」には、「なし」が26大学、(3)地域医療構想調整会議には、「なし」が15大学だった。大都市部にある大学ほど「なし」が多かった。調査をまとめた経営実態・労働環境WG座長の海野信也氏(北里大学病院長)は、「『ない』ことは良し悪しの問題ではないが、都心部で大学が関与できていないのが見えてきた」と解説した。

 調査で、自由記述で尋ねた「地域医療構想策定過程の問題点」として各大学から挙がってきた意見のうち、「大学の不安が表れている」(山本修一・千葉大学医学部附属病院長)として、配付資料で強調していた記述は以下の通り。

・高度急性期を担う大学病院としての立ち位置が不明確。

・大学附属病院や大規模一般病院が近隣に集中しており、行政による機能分化の采配がある程度必要と思料する。

・大学病院の位置づけは総論では理解されていると思われるが、病床数など具体的な話となると、さまざまな問題が生じる可能性がある。

・大学病院のような教育、研究機関については、厚労省で示している病床機能の分け方で分類し、病床配分できるものではない。

・大学病院は県内の全ての医療圏、並びに県外からも患者を引き受けており、医療圏ごとの病床数という考え方が適応されない。

・特定機能病院および教育病院としての大学病院の立場が考慮されるかどうかは不明なまま。

・大学病院を含め、関係施設・関連団体の意見が十分反映されているか、やや疑問。

・当院の患者は全体の54%が2次医療圏外から来院しており、2次医療圏ごとの策定には疑問。
・現行の2次医療圏を原則としているため、現実の患者の流れと一致していない。

・大学病院は一般病院と別枠でお願いしたい。



https://www.m3.com/news/iryoishin/539306
42国立大学病院、消費税補填不足額、3年間で514億円
「状況はいよいよ深刻」、国立大学附属病院長会議が推計

レポート 2017年6月20日 (火)配信高橋直純(m3.com編集部)

 国立大学附属病院長会議は6月19日、東京都内で記者会見を開き、2016年度国立大学附属病院決算報告(見込み)を公表、消費税補填不足が3年間で514億円に達し、厳しい経営状況が続いているとし、「状況はいよいよ深刻化している」と訴えた。

 国立大学附属病院(42大学45病院)の2016年度決算概要(見込み)では、収入全体は1兆1691億円で、2015年度より224億円増加。内訳は病院収入が1兆511億円で、同364億円増。運営費交付金は1050億円で同71億円の減少だった。

 支出全体は1兆1552億円で、内訳は人件費が4374億円で2015年度比126億円増。看護職員の増加や人事院勧告を受けてのベースアップの影響で増加した。医療費は4495億円、その他(物件費等)1843億円、借入金償還費840億円だった。

 収支全体では2015年度比37億円増の139億円の黒字となったが、同会議常置委員会委員長の山本修一氏(千葉大学医学部附属病院長)は、「投資を抑制するなどして、どうにか黒字に持ってきているが、それでも(黒字幅は)1%程度。厳しい経営状況には変わりはない」と訴える。

 投資額は近年で最も多かった2013年度の658億円から314億円に減少。減価償却費とのギャップも約400億円に拡大しており、「年々、老朽化が進行している。必要な設備投資ができないと高度医療の提供という使命が果たせない恐れが出てくる」と危機感を募らせた。

 2014年度の消費増税に伴い、さらに深刻化している控除対象外消費税の問題では、2014年度からの3年間で514億円の補填不足が生じていると説明。「状況はいよいよ深刻化している。経営努力でどうにかなる数字ではないことを改めて強く訴えていきたい」と主張した。

 6月15、16日に開催した国立大学附属病院長会議総会では、初めての試みとして「ガバナンス体制」「地域医療構想」「医師の労務管理」の3つのテーマでグループディスカッションを行ったと報告。「例年は『会議らしい』会議だったが、今回は活発な議論を交わして、方向性が見えてきた」と報告した。



http://www.medwatch.jp/?p=14315
若者の人生変える恐怖の請求額―日米病院、ここが変だよ(1)
2017年6月19日|医療現場から MedWatch

 日本と米国の病院は、制度や組織、そこで働く医療従事者たちの考え方も大きく異なります。そのため、双方にそれぞれが学ぶべき点がある一方、理解できない点もあります。そんな日本と米国の病院における「ここが変だよ」というポイントについて、日米の医療や制度について研究するとある米国の医師が、日米双方の視点から解説します。初回は、若者だったら人生が変わってしまうほどの高額請求をされることもある、米国の医療費についてです。

ここがポイント!
1 入院1日で110万円の支払い
2 会計窓口なし、いくらかかるかも分からない

入院1日で110万円の支払い

 筆者が日米の医療や制度を比較し、最も興味を持っているのは「バラつき」です。中でも、「日米における術後アウトカムのバラつき」に関する研究(図表1)は、米国では医療費のバラつきが大きいが、日本は術後死亡率や術後合併症などの医療の質におけるバラつきが大きいことが分かり、衝撃を受けました。米国の医療費は、具体的にどういった問題を抱えているのでしょうか。

(図表1)日米における術後アウトカムのバラつき(略)
 米国は国民皆保険制度や高額療養費制度がある日本と異なり、無保険者もいれば、高額な医療に対する支払い額の上限もありません。例えば、無保険者が急な腹痛で病院に6時間ほど滞在し、画像検査と診察、薬の処方を受けて帰宅したとします。それだけで、いくらの支払いになると思いますか。処置内容や病院にもよりますが、筆者が入手した請求書には120万円と明記されています(写真1)。ある日本人が米国で盲腸となり緊急手術をした際は、2日の入院で280万円を請求されたといいます。

(写真1)ある無保険者が受け取った請求書(略)

 それでは、保険に入っている人ならどうか。入手した請求書を見ると、虫垂切除の手術を受けて在院日数1日で総額550万円。このうち、保険会社の支払いは440万円なので、患者の個人負担は110万円となります。請求額の内訳を見ると、入院した病室は1日50万円、術後2時間休憩したリカバリールームの部屋代が75万円と、かなり高額な内容になっています(写真2)。米国は請求に応じない患者も多いため、病院によっては料金を限界まで引き上げて請求してくるケースも少なくありません。

(写真2)虫垂切除術をしたある保険加入者が受け取った請求書の内訳(略)

 日本では高額療養費制度があるため、保険の範囲内であれば、どんなに高額な医療を受けても、患者の自己負担分は月額8万円程度を超えることはありません。これに対して、米国ではたった1日の入院でも100万円を超える請求があるのは決して珍しいことではありません。つまり、米国ではたまたま軽い病気で入院してしまうと、保険加入者であっても突如100万円規模の支払いを抱えることになります。支払い能力が低い20歳くらいの若者であれば、人生を変えてしまう事態にもなりかねないのです。

会計窓口なし、いくらかかるかも分からない


 上限のない支払いに加えて患者たちを不安にさせるのは、料金がその場で分からず、必ず後から請求されるということです。

(写真3)日本の病院に当然ある会計の窓口は米国の病院には存在しない(略)

 日本の病院では、どのような処置や手術でどれくらいの費用がかかるのかを事前にある程度は予測できますし、会計の窓口などで詳しい説明を受けることもできます。しかし、米国の病院では、基本的に日本の病院のような会計窓口がそもそもありません。「どれくらいの費用がかかるのか」「あの治療や薬は本当に必要なのか」などと病院で患者が思っても、その場の医療従事者の誰もがそれについて明確な答えを持っておらず、後日電話で問い合わせても、誰も答えてくれません。ただ、いくらになるか分からない請求書を待つことしかできないのです。

 医療費においては、やはり米国と日本を比較すると大きな違いが見られます。特に、上記のような米国の状況を知れば知るほど、上限額が定められ、国民皆保険制度ですべての国民が同じ価格で医療を受けられるというメリットは、かなり大きいと言えるでしょう。



http://www.medwatch.jp/?p=14318
良くも悪くもあくまで「ビジネス」―日米病院、ここが変だよ(2)
2017年6月20日|医療現場から MedWatch

 米国医師である筆者が日本と米国の病院における「ここが変だよ」を考える連載。2回目は、良くも悪くも一営利企業の「ビジネス」と割りきって展開される米国の病院について、日本の病院と比較しながら具体的な事例を見ていきます。

ここがポイント!
1 なぜ病院の食堂でジャンクフード?
2 ビジネス視点で誕生した「さまよう皮膚科医」

なぜ病院の食堂でジャンクフード?

 筆者がまず、日本の病院を「うらやましい」と思うのは、病院の食堂で出されるメニューです。写真1が米国の病院、写真2が日本の病院のメニューです。一目瞭然かと思いますが、米国の病院のメニューはカロリーやコレステロールが高そうな「ジャンクフード」のようなメニューばかりで、日本の病院は野菜の緑も多く、体に良さそうなメニューが多いです。医師が「塩分や油の多い食べ物は避けましょう」と言っても、病院の食堂が写真1のような状態では説得力がありませんし、いくら病院で特別食などを出しても、患者家族が食堂で写真1のような食べ物を購入し、患者に与えてしまえば、全く意味がありません。

(写真1)米国の病院にある食堂のメニュー一例 (略)
(写真2)日本の病院にある食堂の一般的なメニュー(略)

 食堂で出されるメニューに限らず、こうした信じがたい光景が米国の病院で見られる背景には、米国の病院は、あくまで「ビジネス」という立場にあることが大きいです。米国の病院は、利益を出すためコスト削減への意識が非常に高い傾向にあります。食事のほか医療材料、薬剤など病院で用いるあらゆるものをできるだけ低コストに抑えようとします。結果、写真1のようなメニューになっていると、筆者は考えています。

 こうしたビジネスライクな光景は、医師への報酬などでも見られます。代表的な例は、医師の技術料に対する「ドクターフィー」ですが、最近では医師それぞれに対する患者の満足度に応じてボーナスを決める仕組みがトレンドです。純粋に患者満足度を高めることに異議はないと思いますが、患者へ行った満足度のアンケート結果などを見ると、この仕組みが必ずしも歓迎すべきものではないことが分かります(図表1)。例えば、「受付嬢が笑顔」「待ち時間が短い」など医療の質と全く関係がないことに満足を感じていたり、医療の質においては「薬をたくさんくれた」「他の医師がしない検査をしてくれた」など過剰医療に満足感を得ている可能性も否定できません。つまり、ボーナスというインセンティブが、医療をあるべき方向とは違う方向へ導いてしまう危険性があるということです。

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(図表1)米国の患者満足度に関するアンケート結果の一例

ビジネス視点で誕生した「さまよう皮膚科医」

 ただ、「ビジネス」の感覚が必ずしも好ましくないわけではありません。

 米国最大級の病院グループ企業である「Kaiser Parmanente(カイザーパーマネンテ)」は、保険会社でありながら、独自の病院などの医療施設を所有して運営しています。カイザーの保険に加入している患者は基本的にカイザーの傘下病院で診る仕組みになっており、カイザーグループの保険に加入する患者が増えて医療費がかかればかかるほど、それだけグループの保険会社の支出が増え、グループ全体の利益を圧迫する仕組みになっています。

 従って、いかに入院しないように予防医療のレベルを高めるか、入院しても早期に退院させることはできないかなど、さまざまな工夫がなされています。最近、カイザーを見学して面白かった話として、「Roving Dermatology」があります。これは日本語に訳すと「さまよう皮膚科医」みたいになりますが、カイザーのコスト削減戦略の一つになります。

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(図表2)Roving Dermatology(さまよう皮膚科医)とは

 通常、皮膚の疾患の初診は、一般内科の診察を受けた上で、皮膚科の専門医につなぎます。ただ、皮膚の疾患は専門家が一目見れば、治療方針をすぐに決定できるものがほとんどです。従って、一般内科医の診察というワンクッションを置かず、外来で皮膚科医が文字通り「さまよう」ことで、皮膚科の専門知識が必要な患者がくればその場で診察し、治療方針も決めて、それを一般内科医がオーダーするというところまでします。こうすることで、皮膚科の外来診療の多くが効率化される一方、一度の通院で済むため患者負担も軽減されます。

 「ビジネス」の視点が医療を好ましくない方向へ導く可能性があることは否定できません。しかし、それが医療と経営の質向上に結びつけている事例も多数あります。そういう意味では、トライアンドエラーを繰り返しながら、良くも悪くもビジネス感覚が医療の進化に一役買っているのが、米国の病院の特徴の一つと言えそうです。



http://www.medwatch.jp/?p=14321
本当に必要?糖尿病の「教育入院」―日米病院、ここが変だよ(3)
2017年6月21日|医療現場から MedWatch

 日本と米国の病院における「ここが変だよ」を考える連載。3回目からは日本の病院の「ここが変だよ」を考えます。米国の医師免許を取得した筆者が来日し、まず日本の病院を見て疑問に思ったのは、糖尿病患者に対して行われる「教育入院」です。

ここがポイント!
1 健康管理は自己責任じゃないの?
2 病院は危険な場所との意識変容を

健康管理は自己責任じゃないの?

 教育入院とは、患者やその家族に糖尿病を正しく理解してもらうことを目的としたもので、医師、糖尿病療育指導士、管理栄養士、薬剤師、看護師などが患者の教育に当たり、2泊3日コースから2週間のコースなどに分かれて入院できるシステムです。費用は健康保険が適用され、医療機関や入院期間・検査内容によって異なりますが、一般的には3割負担として1日当り1万円程度かかります。

 まず、筆者は「教育」と「入院」という言葉の組合せと、提供内容が一致していないという印象を受けました。

(写真1)米国では糖尿病の「教育入院」は存在しない※写真はイメージです(略)

 米国でも患者に正しい知識を提供する講座を外来などで提供することはありますが、入院させてまで行うことはありません。米国では、外来の講座に来なかったら、「ただそれだけのこと」というスタンスです。なぜなら、米国では「自分の健康は自分で守る」という意識が高いためです(ただ、全く気にせずピザを食べまくる肥満の方も多いです…)。前回の米国の病院の記事でも指摘しましたが、米国では病気になってしまったら、その先には高額請求が待っているかもしれません。

 提供内容が一致していないと感じるのは、教育入院は治療の一環のシステムである前提の一方、コース別にパッケージ化してある上に、その選択権は患者側にあるためです。さらに、これが糖尿病疾患のためだけのシステムであり、他疾患などにはない特殊なものであるところにも、筆者は疑問を感じます。

 実際に教育入院のプログラムを見てみると、午前中は尿検査だけだったり、半日の間で何のプログラムもない日があったり、土日は何の予定もないのに入院していたりなど、内容が薄いと感じる項目があったり、医療の提供側の都合でプログラムが組まれていると考えざるを得ない内容が散見されます。ベッドという固定費をどう活用するのか、そこからどう収入を生むのかを考えた結果のシステムである可能性もあります。

病院は危険な場所との意識変容を

 筆者は、教育入院というシステムの根底にある問題として、医師や看護師が患者をコントロールしたいという考えと、患者側の「病院は危険な場所」との意識が低いこと挙げられるのではないかと考えています。

 米国では一般的に予定手術で術前入院をすることはありませんが、日本では当然のように術前入院を促し、検査や患者の体調コントロールを入念に行います。患者の管理を徹底することはメリットがある一方でデメリットもあるので、優劣を決することは難しいですが、患者の管理徹底の背景には「医療従事者が患者を信用しておらず、患者をコントロールしたいと考えているのではないか」と考えてしまいます。もちろん、米国の医療従事者の方が患者を信用しているという印象はありませんが、先ほどの指摘の通り「約束を守らなかったらそれまで」というのが米国の病院の考え方で、コントロールしようとも考えていません。

 医療機関の構造上の問題も影響していそうです。例えば、医療機関内における専門職員の人員リソースには限界もあり、患者を入院させることで、限りある専門職員を病院側は効率的に配置することができます。また、そうすることで収入面でもメリットを享受できる可能性があります。収入面へさらに目を向けると、専門職員からの疾患教育点数については外来と入院での差異はありませんが、外来より入院の方が全体の点数が高く設定されています。もっと言うと、専門職員からの疾患教育による報酬要件は、入院より外来の方がより高いハードルになっているという問題もあります。

(写真2)米国では「病院は危険なところ」の意識が根付いている※写真はイメージです(略)

 そして何よりも重要なことは、こうした需要を生み出している患者自身が、入院することのデメリットをしっかりと自覚すべきです。3割負担と言えども入院にかかる費用は高額で、経済的負担は免れません。入院の間一日中、医療従事者から管理されていることの精神的負担もありますし、そもそも入院することでの感染リスクが発生します。米国では、「病院は患者が集まることで感染リスクの高い危険な場所」との認識が広まっています。受診コストも高いため、国民はなるべく病院には行かないよう心がけています。ですから、「教育」を受けるために「入院」するという考え方を、米国人は全く理解することができないのです。



http://www.medwatch.jp/?p=14323
上司や医師へ注意しにくいのはなぜ?―日米病院、ここが変だよ(4)
2017年6月22日|医療現場から MedWatch

 日本と米国の病院における「ここが変だよ」を考える連載の最終回。米国医師である筆者は、日本の病院における手指消毒の不実行に対する違和感を覚えましたが、その根底には上司や医師へ注意しにくいという、日本人特有の文化的な特徴が見え隠れすると指摘します。

ここがポイント!
1 医師の手指消毒が徹底されていない?
2 「confrontation」の必要性

医師の手指消毒が徹底されていない?

 日本の病院を見学すると、米国よりも医療従事者の手指消毒の不実行に目が付きます。

 2016年に発表された論文「Hand Hygiene Adherence Among Health Care Workers at Japanese Hospitals: A Multicenter Observational Study in Japan.」(11年7月から11月に内科、外科、ICU、救急の場で4病院=大学病院1件および研修医がいる総合病院3件を調査)によると、3545人の医療従事者と患者を観察したところ、適切な手指消毒の実施は677人と全体の19%という結果でした(写真1)。サブグループの分析では、医師15%、看護師23%という結果で、医師の方が手指消毒の徹底がされていない可能性を示唆しています。

(写真1)日本の適切な手指消毒の実施率に関する論文(略)

 一方、同様の米国の調査を見てみると、年度や病院・病棟により違いもありますが、適切な手指消毒の実施率は30~60%程度となっています。英国では手指消毒の一大キャンペーン「Clean your hands campaign」が2005年から始まり、2008年にはMRSA発生率が半減、クロストリジウム・ディフィシルが40%に減少するなど効果を上げたことなどから、患者サイドから医療従事者に対する手指消毒の徹底への関心も大きいです。米国でも、患者が医療従事者に「手を洗ってください」と指摘することは珍しくない状況にあります。

 もちろん、日本と欧米の事例を単純比較することはできませんが、上記論文の指摘内容については、日本の病院における適切な手指消毒の実施率が低いとの印象を受けます。医療従事者出身者が多いGHC社内へ筆者がヒアリングすると、やはり適切な手指消毒の実施率が低いとの問題意識を持っているコンサルタントやアナリストは多いことが分かりました。

 ただ、日本の多くの病院では欧米と同様に感染対策部門があります。例えば、米国では担当者より指名された看護師が一週間、非公開で入退室時の両方における手指消毒を院内調査し、その数値結果を感染対策部門が管理しています。また、日本では医療従事者が携帯している消毒剤について全回収、消費量を計量して病棟単位で結果を管理するということもあります。手指消毒と医療の質の関係について報告する論文は多く、消毒剤の消費量が多いほど、感染症の発症率が少ないことが分かっているためです。

 筆者がGHC社内へのヒアリングの中で、「看護師の多くは消毒剤を携帯しているが、医師は看護師ほど携帯していない印象がある」との指摘に着目しました。実際、前述の論文では医師の方が適切な手指消毒の実施率が低い可能性が示されています。これについてGHC社内からは、「若手医師や看護師などの医療従事者が上司や医師に注意しにくい、患者も医師に注意しにくいという心理的障壁があるのではないか」との指摘がありました。

「confrontation」の必要性

 筆者はこの心理的障壁に違和感がある一方、実際に日本と米国の病院の現場を比較すると、うなずけるところもあるとの印象を受けます。

 米国では、医療従事者同士、医師や患者の間で意見を戦わせることは珍しいことではありません。医療従事者同士の「confrontation」(厳しさ、対立、衝突、向き合う)においては、職種間のものもあれば、先輩と後輩、上司と部下の間でも当然のようにあります。患者は医師と対面すると、「この医師は納得のいく医療やサービスを提供してくれるだろうか」と挑戦的な態度を取ることも少なくありません。

 一方、日本では米国ほど医療従事者同士の「confrontation」は少なく、患者も医師に対する信頼の姿勢を絶やさない傾向にあるのではないかと、筆者は感じています。こうした印象に筆者は日本の病院がうらやましいと思う反面、やはり「confrontation」は必要だとも考えています。

(写真2)米国の医師から見ると日本の医師と患者の関係は素晴らしい※写真はイメージです(略)

 例えば、米国に「院長回診」という言葉はありません。そもそも、米国に「院長」という存在はなく、病院のトップは「最高経営責任者(CEO)」で、各部門を「最高執行責任者(COO)」、「最高マーケティング責任者(CMO)」などのMBAホルダーが束ねていることが多いです。病院は一般的な会社と同じ組織体制になっており、経営が悪化すればトップは解任され、各部門や個人が競い合う土壌になっています。こうした競争環境の中では、「confrontation」は不可欠で、「confrontation」があるからこそ、改善や進化していくことも多いのです。

 連載を通じて、日米の文化や制度などさまざまな違いを背景に、同じ病院でも日米では大きな違いがあることを確認してきました。これらの違いに対して、今後も対策を検討する必要があると考えられます。その解決策には、根本解決に繋がるものや、根本解決はできないものの、その答えの一例は提供できるもの、解決が難しいものなどさまざまあると思われます。ただ、日米の差異を検討する中で、解決策の例が米国の例にありそうだったり、日本からも米国の現状の違和感や不便さを解決する方法を提案できそうな例もありました。日米相互にメリットを享受しながら、総合的な医療の質の向上を目指すことができればと、日米の医療を知る筆者は常に考えています。



http://news.ameba.jp/20170625-446/
封印される天下り報道 陰で文科省と大手マスコミが......
2017年06月25日 18時00分
提供:J-CAST会社ウォッチ

加計学園の獣医学部新設をめぐる騒動が続いているが、すでにあちらこちらで指摘されているとおり、民主党の鳩山政権時代に「特区設置を前向きに検討する」と決定されていた案件であり、基本的には何の違法性もない。むしろ問題があるとすれば、内閣の決定を7年間も無視し続けた文部科学省にあり、それこそ、この問題の本質と言っていい。

では、なぜ彼らは7年間もサボり続けたのか――。同じ国家戦略特区でありながら、2015年11月公募開始で17年春にスピード開校した千葉県成田市の国際医療福祉大学をみれば一目瞭然だ。

先輩方が住まう「ヴァルハラ」大学の存在 国際医療福祉大には現在6人の高級官僚が学長、理事といったポストに天下っており、過去には文科省トップの事務次官経験者も天下っていた実績もある。要するに文科省の大のお得意様であり、省益のために全力を尽くして戦った歴代の先輩方の住まうヴァルハラみたいな大学ということだ。

加計学園に天下りをよしとしない気骨があったのか、それとも文科省のほうが四国の獣医学部ポストなんていらないと思ったのかは、筆者には分からない。ただ、国際医療福祉大のポストに匹敵するだけのものが準備されなかったことが、7年間ほったらかされた理由だろう。

だが、国際医療福祉大には、もう一つの「天下り」問題が隠されている。この大学には、判明しただけで以下の大手メディアの出身者が教授ポストに再就職している。

教授  (元・朝日新聞論説委員) 特任教授(前・朝日新聞社社長) 学部長 (元・読売新聞 医療情報部長) 教授  (元・読売新聞 社会保障部長) 教授  (元・日本経済新聞論説委員) 一体、定年近くまで記事を書いていた人間が医療系の大学で何を教えるというのか。一人ならまだしも、有力紙ごとに何人も集める必要があるのか。低賃金・不安定雇用に苦しむポスドクをしり目に自社幹部を教授ポストに送り込む新聞に、紙面で偉そうに貧困問題を論ずる資格はあるのか。というか、前出の面々の中に博士号を実際に取得した人間はどれだけいるのか

。 さらに付け加えるなら、これらは対外的に公表される教授ポストなので、氷山の一角の可能性がある。たとえば事務方の事務局長やら総務部長やらに、この数倍のマスコミOBがいてもおかしくはない。

はっきり言って、筆者は人間の命を直接やり取りする医学部が、複数の天下りポストと引き換えに、80億円にのぼる自治体の補助金付きで開校されている事実のほうが、加計学園の一件よりはるかに問題だと感じている。

しかし、右も左もこれだけ大手マスコミのOBを揃えておけば、そりゃあどこも報道しないはずである。今のところ報じているのは日刊ゲンダイ(天下り官僚が暗躍か 私立医大『特区』認可にデキレース疑惑)くらいのものだ。言うまでもないが、日刊ゲンダイ出身の教授などというものは存在しない

。 わかる!? 産経と毎日が味わう悲哀 思うに、官僚やマスコミへの天下りポストというのは、ヤクザに払うみかじめ料みたいなものなのかもしれない。それを払っていない加計学園を(別の天下り問題発覚で官邸に辞任させられた)前事務次官が復讐目的で吊し上げ、同じくみかじめ料を貰っていない朝日新聞が紙面でどつきまわしているというのが、一連の加計学園報道の実態だろう。

ちなみに、朝日新聞が加計学園問題で政権批判を続けるのは、もちろん安倍政権が嫌いだからというのもあるが、「うちにみかじめ料を払わないとどうなるか」をアピールする狙いもあるのではないか。きっと、これから新設される大学や学部では朝日新聞OBが三顧の礼を持って迎えられることになるはずだ。

さて、筆者の大学時代の法学部の友人にA君という新聞記者志望の男がいた。志望する就職先を聞くと、朝日、日経、読売の3紙だという。3紙ともぜんぜん路線が違うじゃないか、というか産経や毎日は受けないの? と聞くと、ニヤニヤしながらこんなことを言っていた。

「産経と毎日なんかに東大生がいくわけないじゃん」

A君は無事に朝日新聞社に内定し、今でも元気に記者をやっている。

で、何が言いたいかというと、産経新聞とか毎日新聞って、東大卒から見ればそんな程度だということだ。そして、国際医療福祉大学に天下った官僚も、マスコミから再就職したマスコミOBの半分くらいもまた東大卒である。そういう東大OB専用ベルトコンベアみたいなもんを目の前で見せつけられて、産経と毎日は悔しくはないのか!

前出のマスコミOB教授リストには、なぜか産経と毎日の名が見えない。「その手が通じないほど気骨あるジャーナリストだから」と思われたのか、「大して影響力ないから別にいいや」と見下されたのか、筆者にはわからない。

だが、自らの紙面を使って問題を追求することで、自らの手で「気骨」を社会に示すことはできるはずだ。



http://ma-times.jp/51864.html
医療介護施設の医療法人社団誠広会、民事再生法の適用を申請 負債87億円
2017年6月21日 M&A タイムス

岐阜市北西部最大級の医療介護施設運営の医療法人社団誠広会は、6月19日、岐阜地裁に民事再生法の適用を申請し同日、保全命令を受けた。申請代理人は鈴木学弁護士(西村あさひ法律事務所)。監督委員には神谷慎一弁護士(弁護士法人神谷法律事務所)が選任された。

当法人は、1970年10月創業。医療介護分野では岐阜市北西部最大級の規模を誇り、岐阜市内の「平野総合病院」(199床)、「岐阜中央病院」(372床)の運営を主体に、「介護老人保健施設岐阜リハビリテーションホーム」「岐阜中央病院訪問看護ステーション」「岐阜市在宅介護支援センター平野」「岐阜市地域包括支援センター岐北」といった老人介護保健施設の運営のほか、訪問看護や在宅介護なども手がけていた。長年にわたって岐阜市北西部地域における有力医療機関として認知され、地域に根ざした医療および介護サービスを提供、2011年3月期には年収入高約88億5700万円を計上していた。

 しかし、医師不足に加え、地域に医療施設が相次いで進出するなどの影響で業容は低迷。2016年3月期の年収入高は約76億4200万円まで落ち込み、2期連続の最終赤字となった。また、医療機器の導入など設備投資によって借入金への依存度が高まっていたなか、債務超過に陥り今回の措置となった。

なお、地域医療を守るため持続可能な医療介護福祉サービスの提供体制構築を図る意向であり、今後は医療機関の支援を主たる事業とするコンサルティング会社の経営支援や金融機関からの融資を受けることにより財政基盤を確保する計画。事業は通常通り継続しており、誠広会グループの各法人も事業を継続している。

東京商工リサーチ及び帝国データバンクによると負債総額は約87億円。



https://mainichi.jp/articles/20170620/ddq/041/020/009000c
医療法人誠広会
民事再生法申請 岐阜

毎日新聞2017年6月20日 中部朝刊

 岐阜市で病院や介護事業を展開している医療法人社団「誠広会」は19日、岐阜地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は約87億円。病院運営は今後も通常通り継続する。

 誠広会は岐阜市で、ともに総合病院の平野総合病院(1970年設立、199床)と岐阜中央病院(83年設立、372床)や、リハビリテーションホームなどを運営している。医師不足のため受け入れ可能な患者が減り、経営が悪化した。今年3月期の決算では約3億円の最終(当期)損失を計上していた。【駒木智一】



https://www.m3.com/news/iryoishin/540806
日医代議員会
成田特区の「医学部」、日医代議員会でも話題に
横倉会長「一貫して反対を続けてきた」と説明

レポート 2017年6月25日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会会長の横倉義武氏は6月25日、第140回日医定例代議員会後の記者会見で、今年4月に千葉県成田市に新設された国際医療福祉大学の医学部について、「我々は一貫して、国家戦略特区における医学部新設への反対を続けてきた」との見解を述べた(『国際医療福祉大学、医学部一期生140人迎え、入学式』を参照)。

 それでもなお新設に至った経緯について、「一部の医師の団体、特に病院関係の先生方は、『医師が不足しているから、医師は必要』との意見を言っていた。我々が参加できなかった会議の中で、(新設に)賛成意見が述べられていたのは事実。政府には、『医師会は反対しているが、医師を代表している意見とは言えないのでは』との受け止め方をされた。我々が意見も述べる間もなく、最終的に特区での新設が決まった経緯がある」と弁明した。「新設が決まった後は、地元千葉県の医師会としての対応も踏まえながら、日医としても対応を考えていかなければいけない」(横倉会長)。横倉会長が言及した「会議」とは、国家戦略特区の「東京圏」の成田市分科会など(関連記事は、『国際医療福祉大の医学部新設、対応を確認』などを参照)。

 記者会見で、国際医療福祉大学医学部についての質問が出たのは、代議員会で、医師需給や偏在対策についての中川俊男副会長の答弁に関連して、栃木県代議員の小沼一郎氏が、「日医は一貫して、新設医学部に反対してきたが、残念なことに、最近も成田市の国家戦略特区に、医学部が新設された。なぜ阻止できなかったのか」と質問したため。

 中川副会長は、「会長が本来は回答すべきことかもしれない」と断りつつも、次のように回答した。

 「我々は、きちんとした手続きを経て、医学部の新設を協議すると思っていた。その過程において、エビデンスを基に、医師養成数などのいろいろなデータを提示すれば、我々の主張は聞き入れられると思い、活動してきた。(2016年4月に医学部を新設した)東北医科薬科大学の場合は、きちんとした手続きを踏んでおり、一定の評価はしたいと思う。成田の方は、我々は『まさか』と思い、反対してきた。しかし、エビデンスを持ったデータとか、通常の大学設置認可の審査などとは違う、プラスアルファの部分があったのではないか。私としては、非常に残念で忸怩たる思い」

 さらに中川副会長は、「日医と全国医学部長病院長会議との2015年12月の緊急提言は、医学部の新設を阻止するために、必死の思いで作った。これをさらに進化をさせて、有用なものを作り、日医の底力、医師会の底力を示していきたい」と語った。代議員会で、その具体策を答弁している(『医師偏在対策、カギは「地域医療構造の医師版」、中川副会長』を参照)。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540807
日医代議員会
「急性期指標、地域医療を混乱に陥れる」、中川副会長
第140回日医代議員会、「議論の俎上に載せるのを阻止」

レポート 2017年6月25日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、6月25日の第140回日医定例代議員会で、地域医療構想の「急性期指標」について、「この指標が独り歩きすれば、地域医療が混乱に陥るのは明白」と強く問題視した。その理由として、急性期病院が満たしそうな項目が恣意的に選ばれているほか、地域医療構想は病棟単位だが、「急性期指標」は病院単位であり、結果としてケア・ミックスの病院では指標が低く出ることなどを挙げ、「病院全体のイメージを左右。いわば情報操作に当たる」と指摘した。

 「急性期指標」は、地域医療構想の「急性期機能」の定量的に示す研究の一つとして、5月10日の厚生労働省「医療計画の見直し等に関する検討会」の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で公表された(『「急性期指標」、「見える化」の第一歩だが、注意必要』を参照)。同会議の構成員でもある中川副会長は、「ワーキンググループで唐突に公表されたのは、大いに問題。以降、議論の俎上に載せることを阻止している」と説明した。

 「急性期指標」について代表質問したのは、北海道代議員の藤原秀俊氏。そもそも地域医療構想は2025年に向けて調整会議で協議を行い、自主的に医療機能を検討していくのが目的であると指摘した上で、(1)「急性期指標」は、病院がその立ち位置を理解するのが目的であれば、都道府県ではなく、まず医師会、各医療機関に先に公表すべき、(2)不完全で問題が多いデータを今後どう扱うべきか――と日医の見解を質した。

 「病院全体のイメージを左右、いわば情報操作」

 中川副会長は、「急性期指標」には、主に以下の4点の問題があると指摘。

(1)急性期病院が満たしそうな項目が恣意的に選ばれている。
(2)急性期の項目を点数化して積み上げ、これを病床数で割り算しているが、分母となる病床数には、療養病床も含めている。
(3)(1)や(2)の結果、民間病院に多いケアミックスの病院では、実態より低い急性期スコアが計算され、あたかも急性期機能が劣っているように見える。
(4)地域医療構想では病院の機能分化を病棟単位で進めているが、この急性期指標は病院単位。病院全体のイメージを左右しかねず、いわば情報操作に当たる。

 次に、「急性期指標」が取り上げられ、公表された経緯についての日医見解を説明した。

 まず地域医療構想は、「不足している病床機能を充足する仕組み」で、2025 年度の「病床の必要量」を見据え、各医療機関の自主的な取り組みや医療機関相互の協議を通じて、病床機能を収れんさせていくことが目的であると改めて理解を促した。地域医療構想調整会議では、各医療機関の実情に関する丁寧で慎重な議論が求められるとした。

 調整会議での検討に役立つように、「地域医療構想に関するワーキンググループ」では、病床機能報告制度の見直しなども進めていると説明。特に「回復期機能」が「不足」と解釈される点について、次のように述べた。「多くの構想区域で病床機能報告制度の数と病床の必要量を比較し、回復期の病床が不足しているという計算結果が出ている。しかし、回復期の患者数は、医療資源投入量から計算された治療経過の病期における通過点の患者数にすぎない。現実には急性期から引き続き同じ病棟に入院しているケースが多く、回復期の患者が締め出されているわけではない。したがって、報告制度の数が、将来の病床の必要量に不足しているために、新たに回復期病棟を作らなければならないという発想は、慎重でなければならない」。

「唐突な公表、大いに問題」
 中川副会長は、「急性期指標が、一つの研究にすぎないとは言え、唐突に厚生労働省の検討会で公表されたことには、大いに問題」と語気を強めた。

 「急性期指標」は、厚生労働科学研究費補助金を受けた、奈良県立医科大学医学教授の今村知明氏らによる研究成果。一部の都道府県では、同指標を用いた分析が進んでいる(『「新規開設・増床」、許可前に調整会議で確認』を参照)。

 「そもそも急性期指標は、こんな不完全な状況で、公表すべきものではなかった。さらに、急性期指標に限らず、都道府県行政だけに情報を提供するのは大きな問題。都道府県において医師会と行政は、地域医療を守る車の両輪」。中川副会長はこう指摘し、今年5月の厚労省主催の都道府県行政職員向けの地域医療計画の講習会にも、日医の要請で都道府県医師会の関係者が実現したとし、「地域医療構想の達成には、行政と医師会との協力関係が極めて大事」と強調した。

 中川副会長は、「今回の急性期指標は、厚労省が財政当局の圧力に押され混乱、迷走した表れなのかもしれない」との見方を示しつつ、「日医は、地域医療計画や地域医療構想について、厚労省と二人三脚の心意気で進めてきたが、さらにしっかり掌握する。都道府県において医師会と行政がそうであるように、日医は厚労省を叱咤激励しながら地域医療を守り続ける」と答弁を結んだ。



http://www.yomiuri.co.jp/chubu/news/20170623-OYTNT50323.html
保健所医師 足りない
2017年06月24日 読売新聞 中部

 保健所などを拠点に住民の健康を守る公衆衛生医師の不足が深刻だ。なり手が少なく、高齢化も進む一方で、愛知県などは「地域医療を支える大切な仕事」とアピールし、人材確保に懸命になっている。

 「地域医療のシステムをつくるダイナミックな仕事。ただ、医学生の選択肢には入りにくいようで」

 愛知県一宮保健所の所長渋谷いづみさん(60)は、そうため息をつく。

 渋谷さんは大学病院で約1年働いた後の1982年、公衆衛生医師として県に採用された。以来、小児医療の拠点整備に携わり、各地の保健所で食中毒・感染症対策や災害医療の体制づくりを進めるなどしてきた。

 現在、力を入れるのは医師やケアマネジャーらとの連携による在宅医療の充実だ。栄養士にも参画してもらおうと研修会を開き、大学を訪問する。「市や医師会、薬剤師会などと一緒にみなさんの健康を守る仕組みを作っていくことにやりがいを感じる」と言う。

 ただ、公衆衛生医師の数は危機的な状況だ。県内では12保健所や県庁の担当部署などに計25人が必要だが、勤務しているのは21人。随時募集しているが、最後の採用は2013年で、その前は10年、さらにその前は05年に遡る。21人の内訳は今年4月現在で40代2人、50代6人、60代13人。5年後には10人が減る見通しという。

 不足は、全国の自治体共通の悩みだ。厚生労働省の昨年10月の調査では、20道県で1人が複数の保健所のトップを務める掛け持ちを余儀なくされ、茨城県では兼務が6か所、北海道や群馬県でも5か所に上った。

 東海地方でも、三重県で尾鷲保健所長の中村公郎さん(60)が熊野保健所長を兼務している。中村さんは「感染症が同時に発生すると大変なことになる」と危機感を募らせる。岐阜県でも保健所の医師8人中5人が60歳以上という。

 なり手不足の背景には、医師と言えば患者を診る臨床医というイメージが強く、公衆衛生医師の業務が広く知られていない現状がある。また、病院の勤務医らと比べ、勤務時間が短いことも多い一方、給与も相対的に低いことが影響しているとみられる。

 事態を重視した厚労省は昨年、各自治体に参考にしてもらおうと、7都府県の人材獲得策をまとめた事例集を作成。公衆衛生の関係団体や学会でつくる専門医協会も今年、研修と試験で健康増進や疾病予防などの能力を持つ専門医を認定する制度をスタートさせて医療関係者に存在をアピールしている。

 愛知県では15年度から、担当幹部が医学部のある県内の4大学を訪問して医師の紹介を依頼。16年度からは名古屋大と名古屋市立大の地域医療の講義に派遣している職員を事務方から各大学OBの公衆衛生医師に変更し、業務内容を説明するよう見直した。公衆衛生医師で県保健医療局長の松本一年さん(60)は「医学生が関心を持つきっかけを作りたい」と話している。

 【公衆衛生医師】全国の保健所や都道府県庁などで働く医師。保健所長は原則、医師とされ、災害時の医療計画をつくり、生活習慣病対策やイベントでの食中毒対策などにも携わる。愛知県の場合、福祉相談センターで児童虐待の対応にあたることも。厚労省の2014年末現在の調査によると、行政機関で働く医師の数は1661人で、医師全体の0・5%。


  1. 2017/06/26(月) 05:35:07|
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