Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

5月21日 

http://www.excite.co.jp/News/column_g/20170520/asahi_2017051100039.html
病院難民が首都圏で続出! 中東並みの医師数で日本の医療は崩壊
AERA dot. 2017年5月20日 11時30分 (2017年5月21日 10時52分 更新)

 首都圏の医療システムは急速に崩壊しつつある。近年、相次ぐ病院閉鎖から、その様子をうかがい知ることができる。人口あたりの医師数は中南米以下、優秀な医師は地方に流出し、大学病院や私立病院は倒産、首都圏に病院難民が続出する――。現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、迫りくる首都圏の医療崩壊を警告している。

*  *  *
 医師不足による入院診療の閉鎖は、首都圏ではありふれた話になりつつあります。

 2009年7月末には千葉県松戸市の新八柱台病院と五香病院、二つの民間病院が休止しました。二つの病院を併せて入院は124床。閉院時、両病院で合計約90人の患者が入院しており、松戸市立病院など近隣の病院に転院しました。

 11年末には、埼玉県の志木市立市民病院が「小児・小児外科入院診療の看板を下ろし、高齢者向けの訪問看護や在宅診療の充実などに比重を移そうと考えている」と発表し、小児科診療を止める方針を明らかにしました。小児科の常勤医は59~64歳の3人だけですから、継続のしようがありません。

 志木市立市民病院は、地域の中核医療機関でした。突然の話に市民は猛反対し、志木市は12年1月に有識者による志木市立市民病院改革委員会を設置しました。委員会では、短期施策として「大学病院の重点関連病院としての指定を要請する」ことが提言されました。志木市は日大医学部に医師派遣を要請しましたが、「若い医師が卒業後、研修の場とするには機能が十分ではない」(日大広報課)と断られてしまいます。結局、14年3月末で志木市立市民病院は閉院。民間の「TMG宗岡中央病院」として再出発しました。

 志木市によれば、収益源だった整形外科医の退職などにより経営が悪化し、10年度以降の4年間で総額約20億円の公費を投入し、病院の赤字を埋めてきたそうです。歳入約230億円の志木市にとり、大きな負担であったことは間違いありません。

 災害による影響で、医師不足に追い込まれた病院もあります。北茨城市立総合病院(現北茨城市民病院)では、福島第一原発事故の影響を受け、大勢の医師が退職しました。

 北茨城市立総合病院は199床の地域の拠点病院です。震災前は14診療科があり、16人の常勤医がいましたが、11年9月17日付けの東京新聞夕刊によると、3月31日付けで常勤医2人、4月30日付けで2人が退職したそうです。5月に着任予定だった医師も内定を辞退し、常勤医は11人に減りました。16年末時点で、常勤医は15人に回復しましたが、28人いた04年には遠く及びません。

 このような病院崩壊の例は氷山の一角に過ぎません。首都圏は、山手線の内部など一部を除き、どこも似たような状況です。このままでは、東京のベッドタウンに広大な「無医村地区」ができてしまいます。

 なぜ、医師が不足しているのでしょうか。それは、戦後、首都圏の人口が急増したのに対し、十分な医師が確保できていないためです。医師不足を議論する際には、人口あたりの医師数で考えるべきです。一人あたりの医師が診ることができる患者数には限界があるからです。

 首都圏は医師の絶対数は多いものの、住民も多く、住民の人口あたりに直すと、決して多くありません。人口10万人あたりの医師数は首都圏230人に対し、四国は278人、九州北部は287人。実に2割以上の差があります。

 東京都以外の首都圏の医師不足は、極めて深刻です。人口10万人あたりの医師数は東京都323人に対し、埼玉県159人、千葉県189人、神奈川県209人。これは、南米や中東並みの数字です。

 医師など医療資源が足りない地域では、十分な医療を受けられないために新生児死亡率が上がり、寿命も短くなる傾向があります。たとえば、15年度のトルコの新生児死亡率は1000人あたり7.1人、平均寿命は男性72.6歳、女性78.9歳です(日本の新生児死亡率は1000人あたり0.9人、平均寿命は男性80.5歳、女性86.8歳)。

 がんの手術のように、ある程度の時間をかけて準備できる医療は別として、外科や産科、小児科などの救急医療は近所に病院がなければ対応できません。埼玉県や千葉県の住民が、このような病気を発症すれば、なかなか引き受けてくれる病院が見つからないのです。

 ところが、埼玉県や千葉県に在住の方の多くは、地元で医師が不足しているという問題自体を認識していません。地元のメディアの影響力が弱いのも一因です。この地域の住民の多くは全国ネットのテレビをみて、朝日新聞や読売新聞など全国紙を購読しています。各県で地域のニュースも紹介されますが、その絶対量は少なく、地元で起こっていることを十分に伝えることはできていません。

 このため、住民は地元の問題を驚くほど認識していないのです。

 私が勤務した大宮赤十字病院のスタッフの中にさえ、「何かあれば、東京の病院に行くから大丈夫よ」という人がいたくらいです。

 医師不足は、政府や役所任せでは解決しません。メディアも含め、地域の総力を挙げて取り組むべき問題です。その際、メディアは重要な役割を果たすと考えています。

※『病院は東京から破綻する』から抜粋



https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/205734
深刻な首都圏の医師不足 元凶は厚労省と医師会!?
2017年5月20日日刊ゲンダイ

 日本の医療システムは今、根底から崩壊しつつある。原因は、医師の不足。しかも、その崩壊は首都圏から始まっているという。

 上昌広著「病院は東京から破綻する」(朝日新聞出版 1500円)では、医師である著者が、先進国とは思えぬ日本の医療崩壊のありさまについて明らかにしていく。

 地方からは、首都圏の医療体制は充実しているように見えるかもしれない。しかし、医師不足の問題は人口当たりの医師数で考える必要がある。1人の医師が診ることのできる患者数には限界があり、日本の人口分布は首都圏に偏り過ぎているためだ。人口10万人当たりの医師数を見てみると、四国では278人、九州北部では287人などとなっているのに対し、首都圏では230人と大きな差がある。

 さらに、東京都以外の首都圏の医師不足は極めて深刻だ。神奈川県の人口10万人当たりの医師数は209人、千葉県は189人、埼玉県に至っては159人で、これは新生児死亡率が高く寿命も短い、南米や中東並みの数字である。2013年、埼玉県久喜市で救急車を呼んだ75歳の男性が、25の病院から合計36回も受け入れを断られ、最終的には県外の病院で死亡するという痛ましい事態が起きた。これも医師不足の弊害であると本書。

 医師不足解消には、医学部の新設や医学部の定員増員を行う必要があるが、これを阻む勢力がある。まずは、医師が増えると医療費も増えると考え、これを何としても避けたい厚労省。そして、医学部の定員増員で将来的なライバルを増やしたくない、日本医師会だ。医学部新設の是非を議論する文科省の検討会では、「数が増えて儲からなくなった歯科医のようになりたくない」と公言してはばからない医師会幹部もいるというから呆れるばかりだ。

 実は、この反対勢力と戦っていたのが厚労大臣時代の舛添前都知事で、10年間で医学部定員を5割増やすことを決定。2009年に与党となった民主党も、これを踏襲していた。しかし自民党政権となった現在、この方針はすっかりうやむやになっている。医療崩壊の実態と原因を、私たちは早急に知る必要がある。



https://www.m3.com/news/iryoishin/526566
医療維新
医師からの業務移譲、夢物語にあらず - 渋谷健司・厚労省ビジョン検討会座長に聞く◆Vol.3
「高付加価値、高生産性」体制の確立が先決

インタビュー 2017年5月20日 (土)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――報告書について、幾つか各論をお聞きします。「ビジョンの方向性」を打ち出し、それぞれについて「具体的アクション」を提示しています。例えば、タスク・シフティング、タスク・シェアリングを掲げ、診療看護師(仮称)の創設も打ち出しています。この辺りの実現可能性をどうお考えでしょうか。

 タスク・シフティング、タスク・シェアリングは、ビジョン検討会でヒアリングした病院をはじめ、日本でも幾つかの病院で既に実践されています。だからあえて、診療看護師(仮称)が可能な医行為の例として、「胸腔穿刺」などを例として挙げたのです。現行法の中でできるのだったら、なぜやろうとしないのでしょうか。中心静脈カテーテル留置も同様です。

 もちろん、タスク・シフティング、タスク・シェアリングは、医師から仕事を奪うゼロサム・ゲームが目的ではありません。本来医師がやるべきことに注力して生産性を上げるため、そして、連携をスムーズに進めることが目的です。ここは強調させていただきたいと思います。


若手医師や女性医師に向け、「医療は、全人生をかけて追求すべきプロフェッショナルな仕事。プロとして道を極めていただきたい」と語る、渋谷健司氏。
――報告書の「具体的アクション」は、実際に既に誰かが実践していることであり、実現可能性があること。

 はい、多くは今すぐにも可能であると思います。歯科医、薬剤師、看護師など、他職種へのタスク・シフティング、あるいはタスク・シェアリングは、国内外で現実に実践している方から聞いた話であり、別に突飛なことを言っているつもりは全くなく、夢物語とは考えていません。医療関係者は真面目な方が多いので、そうした人に勇気を持ってもらいたいというのが一番の思いです。

 確かに、タスク・シフティングなどについて、「以前、議論したけれど、難しかった」という話は何度も聞きました。民主主義社会なので、実際に施策として推進するには、関係者の間で議論し、コンセンサスを得ることは必要だと思います。しかし、ビジョン検討会では、医師への実態調査やヒアリングを通して、できるだけ現場からの声を拾おうとしました。現場の方に聞いてみてください。多くがビジョン検討会の案を支持してくれるのではないでしょうか。

 報告書を公表した後、報道やネットなどでのリアクションをチェックしています。各医療関係団体からのオフィシャルなステートメントは予想された通りです(『「医師養成数増は不要」は一致、各論には異論』などを参照)。ただアクティブな薬剤師さんや看護師さんのツイートを読むと、「よく言ってくれた」「自分たちが考える薬剤師の在り方はこのようなものだ」といった意見があります。限られた意見かもしれませんが、こうした意見さえも組織がバックにあるとなかなか言えない。

 タスク・シフティングやタスク・シェアリングに対しては、医師の間でも根強い抵抗があるのは知っています。しかし、もっとそれぞれの役割分担を明確にして、医師なら医師にしかできない仕事に特化し、専門性を追求し、医師としての生産性と付加価値を上げるべきでしょう。それがプロとしての責務だと思うのです。

――利害関係を離れて調整することが必要。

 先ほども触れたように、「新たなビジョンは、伝統的な政策形成の論理や利害調整を机上で展開するだけでは策定できない」と記載しています。もちろん最後は利害調整が必要になってきますが、そこに行く前にきちんとしたビジョンに基づき将来の方向性を示し、ある程度議論のハードルを上げておく。この報告書は、「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」に回答した1万6000人の現場の医師の声に基づき、議論や調整をした上で公表され、多くの人が読んでいるわけです。利害調整の場でも、それからかけ離れた結論は出しにくいと思います。

――医師の需給については、あまり踏み込んでいません。

 いえ、医師の需給については、基本的な考え方はきちんと示したつもりです。報告書の中でも、「従来からの医師等の需給・偏在に関する議論は、ともすれば、行政単位等の地理的区分に基づいた外形的な従事者数や施設等をどう配置するかという点に重点が置かれていた」「『医師不足』の定義と判断基準が曖昧若しくは機械的なままでは、真の課題解決にはつながらない」(報告書の12~13ページ)と強調しました。

 そして、「今後必要となる医師数の在り方については、一概に増減の必要性を判断することが困難である」とも書きました。これは、逃げているわけではありませんし、正直なステートメントだと思います。そもそも、医師の必要数を規範的に決めるのは困難です。また、ある一面から見れば医師数の増加が必要でも、別の一面から見れば減らしても大丈夫ということもある。結局、神学論争になります。また時代とともに変わリます。だから、実態調査などのエビデンスを重視して行くべきだと思います。

 ただ言えるのは、医師需給の議論をする前に、ビジョン検討会報告書に盛り込んだ施策を実施し、今あるリソースで、生産性と付加価値を高めることをまずやるべきということです。そして、「長期的な医師需給の在り方を考える上では、本報告書に掲げる具体的方策の達成状況やそれぞれの効果を継続的に検証するとともに、定期的に働き方実態調査を実施した上で需給推計を行うことにより、その都度必要な医師数と養成数のバランスを図っていくことが必要である」(報告書の15ページ)と考えます。

――報告書の最後には「提言の実現に向けて」として、「厚労省内に、ビジョン実行推進本部(仮称)を設置し、5~10年程度の政策工程表を作成した上で、内閣としての政府方針に位置付け、進捗管理を行うよう求める」と記載しています。

 「保健医療2035」の時もそうですが、本部を置き、提案した施策の工程表を作らないと、トップが代わったら、実行が危うくなるからです。「5~10年程度」と書いたのは、希望ではありません。構成員の皆が、「報告書の具体的アクションは、5年、10年あれば、できる」と言っていました。それくらい早いスピードで進む可能性があります。医療のパラダイムが今、大きく変わりつつあるという実感を持っています。

――進まないと、優秀な人材は皆、海外に行ってしまう可能性がある。

 そうした時代が来ることも考えられます。現に、最も優秀な高校生は、東大ではなく海外の大学に直接行く時代ですからね。医療もそうしたグローバルな流れから無縁ではないと思います。だからこそ、専門医制度や日常診療において、国際標準の質を担保し、バリューに基づく医療を提供すべきであると思います。

――最後に、ビジョン検討会が対象とした、若手医師や女性医師へのメッセージをお願いします。
 ともすると、医療はコストセクターで、お金ばかりがかかる、“お荷物的”なイメージがあります。しかし、時代は変わりつつあります。医師をはじめとする医療者は、素晴らしい職業です。医療は、全人生をかけて追求すべきプロフェッショナルな仕事。プロとして道を極めていただきたいと思っています。今後の制度設計に当たっては、そうした現場で頑張る人たちが報われるような仕組みにしていく必要があるでしょう。ビジョン検討会報告書を自分たちの問題として、ぜひ読んでほしいと思います。



https://www.m3.com/news/iryoishin/529509
真価問われる専門医改革
「重大な事実誤認、看過できず」、国立大学医学部長会議
全国市長会による新専門医制度の「緊急要望」に反論

2017年5月17日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 国立大学医学部長会議は5月17日、記者会見を開き、全国市長会の4月12日の「国民不在の新専門医制度を危惧し、拙速に進めることに反対する緊急要望」に対して、「聞くべき主張もあるものの、我々国立大学医学部が担ってきた地域医療への貢献方策や実績に対する重大な事実誤認がある。看過できない」との反論を、5月17日に同会に提出したことを公表した(全国市長会の要望は、『「国民不在の新専門医制度を危惧」、全国市長会』を参照)。

 常置委員会委員長の内木宏延氏(福井大学医学部長)は、「地域医療を預かっているのは、市町村長だけでなく、我々国立大学もその役割を担っている」と指摘。その上で新専門医制度では、地域医療への配慮も重要だが、「優れた専門医制度を確立することが本来の目的」であり、その観点から議論していく必要性を訴えた。

 「反論」は42の国立大学医学部の総意であるという。内木氏は、この時期に反論に至った経緯として、4月24日に開かれた厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」の議論を挙げ、「緊急要望が非常に大きな影響を及ぼしており、正しい方向に議論が進んでいないのではないかと懸念した」と述べ、アカデミアの立場から指摘すべき点をまとめたとした(『「専門医取得、義務ではない」、新整備指針に明記か』を参照)。

  2018年度からの新専門医制度の開始について、内木氏は、「運用細則に全面的に賛成しているわけではないが、我々の立場としては賛成。新専門医制度の本来の趣旨は、医師偏在の解消ではなく、医療水準を維持・向上させることにあり、その観点から検討すべき」と答えた。

 常置委員会相談役の嘉山孝正氏(山形大学医学部参与)は、「従来の専門医制度は学会認定であり、専門医認定の基準にはバラツキがあり、中には書類を出し、試験を受ければ合格だった制度もあった。循環型の研修体制で、簡単な症例から難しい症例まで幅広く経験できる研修プログラム制を採用するなど、新専門医制度においては、日本専門医機構と学会が共に手を携えて、専門医の質を担保することが重要」と強調した。

 「反論」では、まず医学の進歩は著しく、医療水準の維持・向上には卒後医師の質保証が不可欠であると指摘。また、国立大学医学部42校のうち、29校は都道府県唯一の医育機関であり、過去数十年にわたって地域医療振興に貢献してきたと説明。その上で、全国市長会の緊急要望で、「新専門医制度が医師偏在を増長する」としている点に対し、「医師配置の地域格差を生んだ根本原因は、2004年4月に創設された新医師臨床研修制度にあると考える」と指摘、同制度の改革なくして、地域の医師不足の根本的な解決がなされることはないとしている。嘉山氏は、「医師が40年間、臨床に従事すると、専門医研修は3年間にすぎない。その後の専門医がどのように分布するかが医師偏在問題にとって重要」とコメントした。

 さらに全国市長会の緊急要望における「若手医師たちに、義務的に医局生活を強いる理不尽」との指摘の具体的内容についても、下記のように反論している。

◆「若手医師たちに、義務的に医局生活を強いる理不尽」への反論
(1)「医療倫理の教育をはじめ学会が認める論文発表など基幹施設での過剰と思われる履修項目」
 医療倫理は、言うまでもなく医師にとって学習必修の項目。また実際に論文を書くことで、自分の行っている医療を深く論理的に考える力を養い、それが患者治療のレベルを向上させるために役立つ。OECDが世界一のレベルと評価している日本の医療は、日本の医師が「知識だけの医師」ではなく、「知識もあり、考えることもできる医師」であるため。従って、論文執筆は、医師として当然の責務であり、若手医師育成の重要なプロセス。決して過剰な履修項目には当たらない。
 また論文を執筆するのは必ずしも大学医局のみではなく、大学以外の医療施設でも多くの学会発表、論文発表がなされている。いわばこのような学術活動は医師の日常活動であり、決して大学医局生活を強いるものではない。

(2)「初期研修終了後に地域医療に従事している医師達を基幹施設に引き揚げることにより、地域医療にとって重大な支障を来す」
 国立大学医学部は、専門医育成において積極的に循環型教育を行ってきた。全国47都道府県のうち、33県では医育機関(医学部)が1つのみであり、これらの大学は、それぞれの所在地の医療機関にこれまで多くの医師を供給してきた実績がある。
 「今後も、都道府県の協議会などを通じて、医師の派遣、調整などを行っていくので、基幹施設に医師を引き揚げることはない」(内木氏)。

(3)「若手医師達の生活に多くの影響を与えることになる。特に若手女性医氏にとって、結婚・出産・育児の機会を奪い取ることになりかねない」
 国立大学病院の臨床各科では、女性医師のライフイベントなどに最大限配慮し、勤務形態や勤務場所の調整を行う。その上で各自の望むキャリアパスを実現するため、学位や専門医の取得を支援している。大学病院が若手医師を縛り付けるという論理は成り立たない。

(4)「社会的な制約や経済的条件により大学病院などに馴染まず、フリーの立場で地域医療に貢献する医師たちの権利・自由も奪われる」
 医師たるもの、一生の勉強が重要なので、卒業後専門とする領域の勉強をするのは当然。専門医を取得するかどうかは別として勉強する必要がある。勉強するための方法、場所を提供しているのが専門医制度であり、この精神に沿って大学病院は卒後教育を行っている。一方、この仕組みを全ての若手医師に強制することは不可能であり、実際強制はしていない。



http://www.huffingtonpost.jp/mareyuki-endo/faculty-of-medicine_b_16698634.html
「国立大学医学部長会議」はなぜ「全国市長会」への反論をしたのか?
遠藤希之
医学教育支援室長、臨床検査センター長(兼務)、東北大学病院臨床教授
投稿日: 2017年05月20日 16時27分 JST 更新: 2017年05月20日 16時27分 JST ハフィントンポスト

国立大学医学部長会議は5月17日、全国市長会の4月12日の「国民不在の新専門医制度を危惧し、拙速に進めることに反対する緊急要望」に対して、反論文を同会に提出したことを公表した。

(m3. Com. https://www.m3.com/news/iryoishin/529509)

この報道をみて、強い違和感を覚えたのは筆者だけではあるまい。市長会に「専門医機構」が反論するならわかる。しかし、なぜ、医学部長の集まりが市長会に反論するのか?

この疑問を解くには日本専門医機構の内情からみていくと判りやすいだろう。5月17日付けのJB press 「日本の医学界をいまだに仕切るゾンビ組織」に機構内情の詳しい解説が載っている。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50005

この記事によると、機構では発足当初から、以前医師派遣の見返りに裏金を貰っていた経歴のある人物が事務局長を務めており(現在は退職)、現理事長も「地域医療振興協会」という医師派遣を行っている団体の「常勤顧問」だという。つまり医師派遣の見返りとして金銭を受け取る事に抵抗がない人間が機構中枢だった、ということだ。

結果として「基幹施設」が「連携施設」を従え、それらに医師を「循環」させるという仕組みが出来上がった。研修制度といいながら、基幹施設側にすれば使い勝手のいい「医師派遣制度」なのである。そして国公立大病院はほぼ全ての領域の「基幹施設」に手を挙げている。

国立大医学部長会議は、この「新」医師派遣「制度」がのどから手が出るほど欲しい、ゆえに「市長会」に筋違いの反論をしてしまった、と勘ぐられても仕方なかろう。

また、反論もとってつけたような内容が多く、それこそ「事実誤認」も目立つ。紙面の都合上、本論考では一点だけあげる。

「「医師配置の地域格差を生んだ根本原因は、2004年4月に創設された新医師臨床研修制度にあると考える」と指摘、同制度の改革なくして、地域の医師不足の根本的な解決がなされることはないとしている。」

地域格差に対して過去にもしばしばなされてきた主張だ。しかしこの主張を裏付ける具体的なデータを筆者は寡聞にして知らない。

逆に、昨年12月に森田知宏氏が発表したデータ(http://medg.jp/mt/?p=7248)は、臨床研修制度が始まったのち、むしろ医師数の地域格差は減少傾向にあることを示している。氏は「ジニ係数」と呼ばれる一般には所得格差を表す指標を用いて解析した。所得を市町村人口あたり医師数に置き換えてジニ係数を計算したのだ。その結果、新臨床研修制度が始まった2004年から2014年までに、ジニ係数は0.60から0.56と減少傾向にあったとのことだ。

医学部長会議も、仮にも科学者であるなら論拠となるデータを示すべきである。それがなければ、やはり「事実誤認」と反論されても仕方あるまい。

なお市長会は「新専門医制度が医師偏在を増長する」と述べているだけで、新専門医制度で「医師偏在を解消しろ」とは言っていない。医師数の地域格差に対して新医師臨床研修制度が問題なのであれば、強大な力をもつ医学部長会議としてそちらを先に改善したらどうだろう。

個人的には、今回の市長会への反論で、図らずも医学部長会議は自ら「日本専門医機構」という「医師派遣の利権追求団体」と同じ穴のムジナであることを証明してしまった、と思えてならないのだ。

最後に提案がある。筆者も真に質の高い「新専門医制度」を切望している者だ。この際、全国市長会、医学部長病院長会議、専門医機構、そして現場の医師達を含めた形での公開シンポジウムを開き、議論をつくしてはどうだろう。



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50005
日本の医学界をいまだに仕切るゾンビ組織
問題だらけの日本専門医機構に巣食う東大と自治医科大

2017.5.17(水) 上 昌広 JB Press

 4月26日号で『認定料目当てに早くも贅沢三昧、日本専門医機構』という文章を発表し、日本専門医機構(以下、機構)のガバナンスを批判した。

 この中で、機構は収入がないのに、賃料が1坪あたり12万6421円の東京フォーラムに事務所を借り、交通費3699万円、会議費463万円の「無駄遣い」をしていることを紹介した。その後、私のところには様々な情報提供が寄せられた。

 「我々は、間違ったことはしていない。お金の問題は一切ない」と連絡してきた大学教授もいた。「19領域の学会関係者が関わるので、年間に3699万円もの交通費が必要になったのでしょう」という教授もいた。

 もちろん、こんな説明は通用しない。

こっそり退職していた事務局長

 そもそも、19領域の学会関係者の議論に機構が旅費を支給する必要はないし、仮にそうだとしたら、機構は最初から予算に計上すればいい。年初に計上された交通費の予算は1万円なのだから、「使途不明」と言われても仕方ない。

 私のところに寄せられた連絡の多くは、このように中味のないものだったが、例外もあった。知人の専門医機構関係者からは「事務局体制がお粗末で、特に事務局長が、がんでした」と連絡があった。

 この人物のことを調べたらK氏だった。どのような経緯かは分からないが、昨年末に機構を退職していた。

 このK氏は医療ガバナンスの研究者の間では知らない人がいない有名人だ。1994年に自治医大を揺るがした「茎崎病院事件」で「中心的役割を果たしたとされる人物」(『選択』2013年9月号)とされている。

 この事件では自治医大が医師派遣の見返りとして金銭授受を行っていたことが分かっている。併せて同時期に資産運用の失敗や二重帳簿が内部告発によって問題化している。

 金銭の授受については、多くのメディアが報じ、K氏も「15万円を7~8回にわたって受け取ったのは事実」(朝日新聞1994年2月22日)と認めている。

 その後、K氏は、自治医大関連の「地域医学研究基金」へ出向している。

 前出の『選択』2013年9月号では、「このK(筆者変更。本文では実名)を重用したのが高久(筆者注;髙久史麿・日本医学会会長)である。Kはその後も専門医制評価・認定機構や、医療安全全国共同行動の事務局を仕切ると同時に、会長選で高久の集票マシーンとして動いた」と説明されている。

 新専門医制度は医師派遣を通じて、大きな利権を生み出す。その事務局を、かつて医師派遣で金銭的問題の「前科」のある人物が仕切っていた。これは、一般的な社会常識と乖離する。

地域医療振興協会との利益相反も

 問題は、これだけではない。理事長を務める吉村博邦氏の肩書きだ。

 吉村氏は昭和41年に東京大学医学部を卒業した胸部外科医で、北里大学の医学部長を務めた。ただ、現在の主たる肩書きは地域医療振興協会の顧問だ。

 同協会が経営する練馬光が丘病院で、呼吸器外科の外来を担当している。同病院は、2011年に日本大学から運営権を引き継ぐ際に、必要な医師数が揃えられなかったことで社会の批判を浴びた。

 地域医療振興協会は、自治医大の卒業生が中心となって立ち上げた組織だ。事務局は千代田区平河町の都道府県会館の中にある。同じフロアには、自治医科大学も入居している。

 会長を務めるのは髙久氏だ。理事には自治医大と東大卒業生が名を連ねる。

 この組織は経常収入1123億円を上げる巨大グループで、その中核事業は、医師派遣・診療支援事業だ。機構の仕事と見事に重なる。


 機構の理事長である吉村氏が、地域医療振興協会の顧問を務めることは、常識的に考えて利益相反だ。

 このように専門医制度のことを調べると、自治医大・東大関係者の陰がちらつく。髙久氏を頂点としたピラミッドがお手盛りで決めているように見える。有力者が密室ですべてを決める点は、自民党の派閥全盛時代を髣髴させる。

 情報開示が進んだ昨今、こんなやり方は通用しない。

組織は頭から腐る

 前回もご紹介したが、髙久氏は2016年6月18日に公開されたエムスリーのインタビューで「立ち止まっていたら、きりがなく、財政的にももたなくなる」と語っていた。従来のようなごり押しが効かなくなっていることを認めている。

 私は髙久氏のことを尊敬している。本当に実力のある人物だ。戦後の日本の医学界を、現在のレベルにまで押し上げたのは彼の功績だ。

 残念なのは、彼の弟子に人材が育たなかったこと。彼をかつぎ、そのやり方をそのまま踏襲したが、いつの間にか時代に合わなくなった。その時に、どうすればいいか、髙久氏のように柔軟に対応できない。

 新専門医制度は、その象徴だ。

 厚労省と医学会が一致して決めたことが、在野の医師が反発し、それが国民に伝わり、抜本的見直しを余儀なくされつつある。

 どうして、医療界の合意を形成するか。時代に見合った透明でオープンなやり方を確立しなければならない。



http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/list/201705/CK2017051702000177.html
【栃木】
佐野市民病院の民間譲渡 現指定管理者の青葉会と優先交渉へ

2017年5月17日 東京新聞

 佐野市は市民病院(同市田沼町)の民間譲渡について、現在の指定管理者「医療法人財団青葉会」(東京都)と優先的に交渉することを市議会議員全員協議会で報告した。今後、二〇一八年四月移譲などを含んだ基本協定締結に向けて交渉を進める。
 市民病院は市が直営していたが、深刻な医師不足に陥り、〇八年十月に指定管理者制度を導入、青葉会が運営している。医師確保などで改善は見られたが、経営状態は厳しく、一四年度は約二億六千万円、一五年度は約一億六千万円の赤字で、一六年度は約二億八千万円まで赤字が膨らむ見込みとなっている。
 市は一八年三月末で青葉会の指定管理が期間満了となるのに合わせ、病院の存続を目指して民間に譲渡する方針を固め、市政策審議会に諮問。市民への説明会や有識者会議を重ね、青葉会を優先的な交渉相手に決めた。
 市市民病院管理課の担当者は「まず移譲時期、医療規模の維持、耐震強度が不足している病棟の建て替えの三点を協議したい」と話し、九月の市議会定例会で一定の交渉結果を提示する考えを示した。 (吉岡潤)



http://blogos.com/article/224023/
医師の時間外労働は削減すべきなのか
武矢けいゆう
毒舌系消化器外科医 / 某市民病院で外科医
2017年05月19日 16:24 BLOGOS

働き方改革実現会議での時間外労働に対する法的規制—

こうした変革は、医療界にも大きな波紋を呼んでいる。

実際、複数地域の基幹病院に労基署の立ち入り調査が入った結果、医師の時間外労働削減と未払いの時間外賃金支給、救急車搬送の受け入れ抑制、外来枠の削減といった、著しい診療体制の縮小が行われている。

今後もこうした変化は加速し、全国的に医療体制が縮小の方向に向かう可能性が高い。

これまで厳しい労働条件に耐えてきた勤務医らにとっては朗報かもしれないが、患者にとっては、少なくとも短期的には、多大な不利益となる。

果たして、医師の時間外労働を一律に削減し、診療体制を縮小することは本当に得策なのだろうか。

私は、もっと根本的なところに問題があると考えている。

病院では「能率的な分業体制が成立し得ない」という構造的な問題である。

これは、「白い巨塔」の時代から変わらない、勤務医内での硬直した封建制が原因である。

上記のようなニュースがあると必ず、

「医師は患者の命を預かる仕事、若手医師は無給の時間外労働も、自己研鑽と思って喜んで引き受けるべき」

との反論が起こる。

若かりし頃に先輩に厳しくしごかれ、朝から晩まで薄給で働き、家に帰るのも週に1、2日という厳しい労働に耐えてきたベテラン医師たちは、「体力、気力のない奴は医師をやめてしまえ」と公言して憚らない。

勤務医の間には昔から、「自分が味わった苦労を同じだけ味わって成長しろ」という精神論が蔓延り、若手医師たちは厳しい年功序列制の中で、これまでその泥臭い労働で病院を支えてきたのである。

しかし時代は変わりつつある。医療界も変わらなければ、旧態依然との謗りを免れない。

確かに若手医師の精神を鍛えるのは大事なことである。上下関係をわきまえ、礼節を重んじることのできる医師を養成することも大切だ。

どの職場でも、若手の仕事は必然的に雑務が多くなるが、「下っ端」なのだから当然である。そういった仕事も丁寧にこなすのが若手の役目だ。

若手の仕事は野球部の球拾いと同じだ。球拾い自体で野球の技術が上達することはないが、先輩たちは、球拾いという雑務を黙々と誠実にこなす後輩に、バッターボックスに立つチャンスを与えたいと思うものだ。

私の周囲にも雑用が多すぎると不平ばかり言う若手医師がいるが、そういう姿勢では自らチャンスを捨てているようなものである。

「若手は文句ばかり言わず仕事に励め」

確かにその通りである。

だがその一方で、「自分が体験した辛い苦労を後輩にはさせたくない」と思う先輩が一定数いなければ、組織全体のパフォーマンスは上がらない。

自分が苦労して何かをやり遂げて、歩いてきた道を振り返った時、「こうすればもっと効率的にできたのに」と思うことが必ずある。

先輩とは、後輩が困難を前に立ち尽くした時、それを乗り越える「近道」を知っている唯一の存在だ。

その道のベテランならなおさらそうだ。若手に対して、百戦錬磨の経験から他の誰も提示することのできない最適な解決策を伝えられるはずである。

こうして、同じ業務をより簡単に、より能率的に行うためのノウハウの蓄積によってこそ、組織のパフォーマンスは高まっていくのである。

病院において、目指すべき最大のゴールは「患者の利益」である。そして、病院全体が組織として、患者に最大の利益を提供するにはどうすれば良いかを考えなければならない。

果たして、一律に医師の時間外労働を削ることが、我が国の医療の利益に資するかどうか。もう一度よく考えたいところである。



http://www.nikkei.com/article/DGKKZO16665010Q7A520C1M10400/
がん死亡、私の街は…
2017/5/21付日本経済新聞 朝刊

 自分が住んでいる街と隣の街で病気の死亡率に大きな格差があったとしたら……。日本経済新聞が全国1741市区町村のがんの死亡率を調べたところ、同じ県内なのに2倍を超える格差があることが分かった。医療費を使わずに死亡率が低い地域がある一方、医療費を多く使っているのに死亡率が高い地域もある。どこに問題があるのだろうか。日経電子版ビジュアルデータ「全国市区町村マップ」ではがんのほか、心臓病、脳卒中のデータも掲載した。まず自分が住んでいる市区町村、都道府県の実態を見てみよう。(1面参照)
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(地図の詳細)
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/health-expenditures-map/


 「医療費を多く使えば死亡率は低くなるのでは」。そう思う人がいるかもしれない。だが日本経済新聞が全市区町村の死亡率と1人当たりの医療費の関係を比較したところ、医療費が高くても死亡率が高い自治体もあり、必ずしもそうではないことが分かった。

 「散布図」というグラフで、横軸は死亡率が右にいくほど高くなるようにし、縦軸は1人当たり医療費を上にいくほど高くなるようにして全国平均との関係で比較すると、4つのタイプが浮かび上がる。

 右上は「医療費が高く、死亡率も高い」タイプ。「多くの医療費を使っているのに、死亡率が高い」地域だ。医療機関が多い大都市が目立つ。病気になる人が多く、医療費がかさんでいる可能性もあるが、投じた医療費が死亡率の改善に寄与していないのかもしれない。

 右下は「医療費は低く、死亡率が高い」タイプ。東北など医療過疎とされる地域が多い。医療機関が少なく、必要な医療を受けられていない可能性がある。

 左上は「医療費は高いが、死亡率が低い」タイプ。右上のタイプと同様、大都市が多いが、治療が死亡率の低減に結びついているとも推測できる。

 左下は「医療費が低く、死亡率も低い」という理想的なタイプ。健康長寿とされる長野県などの自治体が多い。同じ死亡率ならば医療費は低い方がいい。他のタイプが費用対効果を見直す参考になりそうだ。



http://www.nikkei.com/article/DGXLZO 166659 10Q7A520C 1EA3000/
医療費の伸び抑制、地域差是正がカギ 市区町村で最大2.2倍
20 17/5/2 1 1:3 1日本経済新聞 電子版

 日本経済新聞社の調査で、市区町村ごとに 1人当たりの医療費に大きな格差があることが分かった。人口 1万人以上では最大2.2倍あった。医療がより必要になる高齢者の増加に加え、医療技術の進歩や医療サービスの充実で医療費は増え続けている。伸びを抑制するため「まず 1人当たり医療費の地域差を半減すべきだ」との指摘も出ている。

 人口 1万人以上でみると、北海道や熊本県で 1人当たりの医療費が60万円を超える自治体がある一方、群馬県や千葉県などで30万円前後にとどまる自治体があった。

  1人当たりの医療費を押し上げているのは高齢化の影響がある。今回の調査では75歳以上の人口の割合が高いほど、全年代の 1人当たりの医療費が高い傾向があることが分かった。

 一方で今回の調査では75歳以上の人口の割合が 15.6%の長野県佐久市は医療費、死亡率ともに全国平均を下回っていたが、 1 1.5%の札幌市はいずれも全国平均を上回るなど、高齢化だけではない格差も判明した。

 食事や運動といった生活習慣の改善などによる「 1次予防」のほか、がん検診などによる早期発見・早期治療の「2次予防」の取り組みが影響している可能性がある。

 厚生労働省によると、地域によって入院期間の長さや受診回数、薬剤の使用量は大きな違いがあることが分かっている。

 政府の経済財政諮問会議も医療費の伸びを抑制するため、こうした地域差を問題視。民間議員は「入院、外来を含め地域差の半減を推進すべきだ」として、自治体の取り組みを検証する仕組みなどを求めている。(社会部次長 前村聡)



http://www.nikkei.com/article/DGKKZO 16670880R20C 17A5MM8000/
砂上の安心網がん死亡、同じ県内で格差
本社調査 医療費の効果、検証必要

20 17/5/2 1付日本経済新聞 朝刊

  1人当たりの医療費が高いのに、全国平均と比べてがん死亡数が多い市区町村が全体の3割に上ることが20日、日本経済新聞社の調査で分かった。がん死亡の割合を比較したところ、同じ都道府県内でも市区町村間で大きな格差があった。約40兆円の国民医療費は膨らみ続けており、社会保障の持続可能性を高めるため費用と効果を検証し、地域の特性に合わせた対策が必要になる。(砂上の安心網特集面、関連記事総合3面に)

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 日本経済新聞社は年齢調整をした死亡率(死亡数の対全国平均比率=総合2面きょうのことば)と、 1人当たり医療費のデータを入手し、全国 174 1市区町村を初めて分析した。死亡率は全国平均( 100)に対し、死亡数がどのくらい多いか少ないかを示す。 1 10なら 1割高く、80なら2割低いことになる。

 がんは日本人の死因のトップで2人に 1人がかかるとされている。抗がん剤など高額の治療も増え、国の医療費に大きな影響を与えている。

 調査結果から浮かび上がるのは、医療費を多く使っている自治体が必ずしもがんの死亡率を抑えられていない現実だ。男性のがんで医療費と死亡率の関係を調べたところ、いずれも全国平均を上回る自治体は520に上り、全体の29.9%を占めた。札幌市や高知市、大阪市といった医療機関が充実している都市部の自治体が目立った。

 医療行為の価格(診療報酬)は全国で同じだ。 1人当たり医療費が高くなる理由は、同じ疾患でも入院期間が長かったり、受診する回数や検査などが多かったりすることが挙げられる。食生活や運動など生活習慣の違いで地域の患者数が多いことも影響する。

 東京都を分析すると、奥多摩町は男性のがんの死亡率が全国平均を上回っている。特に胃、肝がんの死亡率が高い。医療費は高齢化の影響だけでなく、予防や治療などの対策に課題もあり、全国平均を上回っている。

 対照的に医療費と死亡率がともに全国平均を下回る自治体は428で、全体の24.6%だった。長野県佐久市など健康長寿で知られる自治体が目立った。

 東京都でも杉並区はがんの死亡率が全国平均より2割以上低く、医療費も全国平均を下回っている。区の担当者は「区独自にがん対策の5カ年計画を策定し、予防を中心に対策を強化している」と説明、さらに死亡率を下げる取り組みを推し進めている。

 今回の調査では、このように同じ県内でも市区町村別で医療費と死亡率に大きな格差があることが判明。人口 1万人以上の自治体で比較したところ、死亡率の県内格差は男性は北海道が 1.78倍、女性は鹿児島県が2.30倍で最も大きかった。

 医療費の総額は現在約4 1兆円で、毎年数千億~ 1兆円程度増え続けている。高齢化と医療技術の進歩で医療費の伸びには拍車がかかる見通しで、少子化で支え手が減るなか、効果の検証を通じた抑制策が不可欠になっている。

 政府は7月にも今後6年間のがん対策の基本方針を決定する予定で、都道府県は年度内にがん対策の基本計画を作る必要がある。 10年前の計画で掲げた死亡率などの目標達成は難しい状況だ。

 これまで都道府県の計画は市区町村別の対策まで踏み込んでいないケースが多い。医療費を有効に使うためにも、こうしたデータから死亡率の高い原因を分析し、きめ細かい対策を講じる必要がある。



 日本経済新聞社は日経電子版にビジュアルデータ「全市区町村マップ」を掲載した。住んでいる市区町村を選択すれば、死亡率や医療費の現状を知ることができる。

 調査の概要 市区町村別のがんの死亡率は厚生労働省が算出している「標準化死亡比」を使って都道府県ごとに格差を算出した。年齢構成の違いは調整されているが、人口が少ないと誤差が大きいため人口 1万人以上の市区町村で比較した。
 市区町村別の 1人当たり医療費は、75歳以上の後期高齢者医療制度を運営する各都道府県の広域連合から独自に入手。厚労省が公表している75歳未満が加入する市町村国保のデータと、国勢調査の人口から20 14年度分を推計した。



http://www.medwatch.jp/?p= 13769
収入の大きな病院はさらに収入が増加する傾向、病院の競争が激化―厚労省
20 17/05/ 18 MedWatch

20 15年度における医科病院の 1施設当たり医療費の平均は26億円で、(前年度に比べて7800万円・3. 1%増加)、バラつきがさらに大きくなっている―。

こうした状況が、厚生労働省が 19日に公表した20 15年度版の「施設単位でみる医療費等の分布の状況~医科病院、医科診療所、歯科診療所、保険薬局~」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

病院収入のばらつきは年々拡大、収入の大きな病院では、より収入が増加

厚生労働省では、毎月の「医療費の動向」(MEDIAS)の中で医療機関 1施設当たりの医療費データなどを明らかにしています。もっとも、医療機関の規模や状況はさまざまなので、医療機関の規模( 1施設当たりの医療費階級別)別でも医療費の状況を分析しています(前年度の状況はこちら、前々年度の状況はこちら)。

医科病院について見てみると、20 15年度の 1施設当たり医療費は平均で26億円ちょうど。20 1 1年度からの変化を見ると、平均医療費は増加傾向にあり( 1 1年度:23億4900万円→ 12年度:24億 1600万円→ 13年度:24億6400万円→ 14年度:25億2200万円→ 15年度:26億円)、かつ、バラつき(標準偏差)も大きくなっています( 1 1年度:37億3900万円→ 12年度:39億900万円→ 13年度:40億600万円→ 14年度:40億9800万円→ 15年度:42億8 100万円)。

 
後述するように、 1施設当たり医療費は「病院収入」に読み替えることができ、このバラつきが大きくなっていることから、「地域における競争が激化している」ものと伺えます(収入の大きな病院はより大きく、収入の小さな病院はより小さく)。平均在院日数の短縮が進む中で病床稼働率を維持するためには、新規患者をこれまで以上に獲得することが必要となります。このため「より広域での新規患者獲得」を目指すことになりますが、この状況は競合となる病院も同じなので、競争が激化することになるのです。自院の状況を確認することはもちろん、「競合となる他院の状況」「全国における自院の状況」「地域での立ち位置」(今後果たすべき機能)「地域の患者動向」などを総合的に把握して、病床削減や統合・再編すらも視野に入れた経営戦略を練る必要があります(関連記事はこちら)。
また 1施設当たりの医療費階級別に「 1施設当たり医療費の伸び率」を見ると、医療費の少ない病院では医療費の伸び率に大きな幅があり、逆に、医療費の多い病院では、伸び率の幅が小さいこと、また医療費の多い病院のほうが医療費の伸び率が高くなることも分かりました。


「 1施設当たりの医療費」は、いわば「病院収入」と考えることができます。したがって、「収入の少ない病院群では、増収病院と減収病院のばらつきが大きく、収入が大きくなるにつれて増収病院と減収病院の格差が収斂していく」、「収入の少ない病院では、収入源となる病院もあるが、収入の多い病院では安定して収入が増加している」ことが伺えます。入院と入院外に分けると、入院外においてこの傾向がより強いようです。これが、前述の「収入のバラつき拡大」につながっていると考えられ、早急な経営戦略の策定・見直しが必要と言えるでしょう。

 
なお、機能別に病院の「 1日当たり医療費」を見ると、▼特定機能病院で高く、かつバラつきが小さい(施設数が少ないことも関係するが)▼DPC対象病院とそれ以外とでは、DPC病院で高い—ことなども明確になっています。



http://www.medwatch.jp/?p= 13756
地域医療へ配慮し、国民に分かりやすい専門医制度を目指す—日本専門医機構がQ&A
20 17/05/ 18 MedWatch

従前、各学会が独自に運用していた専門医制度を、国民に分かりやすく標準化するために新専門医制度が創設された。地域医療確保へのさまざまな配慮を行うと同時に、柔軟な仕組みを導入している—。

日本専門医機構は 17日、新専門医制度の詳細をかみ砕いて解説する「概説とQ&A」(平成29年5月 12日版)を公開しました(機構のサイトはこちら)。

新専門医制度の概要や養成方法などを分かりやすく解説


新専門医制度の来年度(20 18年度)からの全面スタートに向けて日本専門医機構では、熱のこもった議論が続けられています。その中で「一部に、新専門医制度や機構に対する誤解がある」ことが分かり、国民や専攻医を含めた関係者に向けて、分かりやすいQ&Aを作成し、順次改訂していくこととしたものです(関連記事はこちら)。

今回公表されたのは初版(平成29年5月 12日版)では、▼専門医制度とは何か、なぜ必要か▼従来の専門医制度と新制度との違いと、その理由▼日本専門医機構とは何か▼専門医の養成方法▼専門医の更新方法▼専攻医を受け入れる施設の対応—などについて解説しています。

例えば、専門医制度とは何かについて、神の手を持つスーパードクターではなく(もちろんこういった医師も必要)、「それぞれの専門領域で、その領域の専門研修を受け、患者から信頼される標準的な医療を提供できる医師」であることを明確化。

従来は、各学会が独自に専門医を養成・認定していましたが、国民に分かりやすくするために「専門医制度の標準化」が必要とされたこと、新制度では学会と日本専門医機構が連携して、専門医の養成・認定を行うことを明確化。

養成方法については、▼基本領域ではプログラム制を原則とする▼サブスペシャルティ領域ではプログラム制・カリキュラム制のいずれでもよい—点にも言及。プログラム制とは「定められた年限と研修施設で、必要な症例数などを経験し、専門医資格を取得する仕組み」、カリキュラム制とは「年限や研修施設を定めず、必要な症例数などを経験し、専門医を取得する仕組み」です。カリキュラム制は、「地域医療に従事しながら、自身の状況にあわせて、5年、 10年と時間をかけて専門医資格を取得する」ことが可能ですが、日本専門医機構では「若いうちに集中的に標準的な知識・技術を学ぶことが重要」との考えから、基本領域についてはプログラム制を基本に据えています(関連記事はこちら)。

ただし、厚生労働省に設置された「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」において全国市長会副会長の立谷秀清構成員(相馬市長)らから、カリキュラム制の設置を求める指摘も出ており、今後の議論によっては「基本領域においても必ずカリキュラム制を設置すること」という見直しが行われる可能性もゼロではありません。そうした場合、Q&Aも改訂されることになるでしょう(関連記事はこちらとこちら)。

また研修施設については、次の3つに分類されることを説明しています。

▼基幹施設:それぞれの領域のほとんどの到達目標を経験できる施設(要件は各領域学会が「専門医制度新整備指針」に基づいて定める)

▼連携施設:少なくとも到達目標のある項目について、特に研修することが可能な施設(常勤の指導医勤務が必要)

▼関連施設:専門医研修の継続的な指導体制が整っており適切な研修が行えると判断される施設(常勤の指導医が勤務していなくてもよい)

このうち基幹施設の要件が厳しく「大学病院しか基幹施設になれないのではないか」との指摘が出たことを受け、「専攻医の採用実績が年間350名以上の領域(当面、内科、外科、小児科、整形外科、麻酔科、精神科、産婦人科、救急科)については、原則として、大学病院以外でも基幹施設になれる基準とする」ことを説明しています。もっとも、医師の少ない地域で基幹施設が複数できれば、専攻医も症例も分散してしまうため、日本専門医機構と学会、さらに都道府県協議会(専門医研修に関する協議を行う、都道府県、医師会、大学、病院団体などからなる組織)とで調整を続ける」ことも明確にされています(関連記事はこちらとこちら)。

さらに地域医療への配慮(医師偏在を助長しないように)として、▼東京▼神奈川▼愛知▼大阪▼福岡―の大都市では、「過去5年間の都市部の専門医採用実績の平均値を超えない」ことを原則とする(医師数の減少している外科と産婦人科、採用実績の少ない病理、臨床検査は除く)ことも示しました。


  1. 2017/05/21(日) 20:40:19|
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