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4月26日 

https://medical-tribune.co.jp/news/2017/0425507715/
新専門医制度の整備指針、見直しも 厚労省検討会で座長が見解 〔CBnews〕
CBnews | 2017.04.25 20:05

 新専門医制度で専門医を育成する研修基準などを定めた「整備指針」が見直される可能性が出てきた。24日に開かれた厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」の初会合で、遠藤久夫座長(国立社会保障・人口問題研究所長)が、見直しが必要であれば「修正もあり得る」との見解を示した。日本専門医機構(吉村博邦理事長)の理事会で修正が必要かどうかを含めて検討する見通しだ。

 整備指針は、新制度で専門医を養成する研修施設の基準などを示すもの。従来の制度では、学会がそれぞれ基準を設けて専門医を養成してきたが、新制度では機構が第三者機関として統一の基準を示すことで、専門医の質の担保を図る。

 機構は当初、2017年度から統一の基準で養成をスタートさせる予定だったが、基準が厳し過ぎ、研修施設が都市部の大病院などに偏るといった懸念が医療界から示されたため、制度の再設計に着手。昨年12月に新たな整備指針を策定していた。

 この日の会合で、機構の吉村理事長が、基準を柔軟に運用できるよう整備指針を見直したことを強調。研修の中核を担う基幹施設については、大学以外の施設でも認定が可能なことや、専門医を目指す専攻医が都市部に集中することを防ぐ方向性などを説明した。

 この説明に対し、委員からは整備指針を含めた制度の見直しを求める意見が相次いだ。基幹施設の大学病院などに若手の医師が集まり、地域医療の現場で医師不足が起きかねないとの指摘に加え、専門医制度以外の方法で医師の技量を磨ける制度の創設を求める意見も出た。

 こうした指摘や意見に対し、吉村理事長は、新専門医制度は法律に基づくものでないことに触れ、「強制ではない」と指摘。「一人前の医師になりたい」と願う専攻医と国民が主役となる制度を目指していることへの理解を求めた。検討会の事務局を務める厚労省は、委員らの意見を集約し、制度の課題や問題点などを機構に伝える方針。次回の会合でも専門医制度が議題となる見通しだ。

(2017年4月25日 新井哉・CBnews)



http://www.asahi.com/articles/ASK4T00NJK4SUBQU012.html
3年超の研修、認める方針 専門医認定で厚労省検討会
野中良祐2017年4月25日07時57分 朝日新聞

 2018年度から開始予定の新専門医制度について議論する厚生労働省の検討会が24日、開かれた。検討会では、原則3年間とされる専門医認定に必要な研修期間について、個々の医師の状況に応じ、長期間にわたる方法を認める方針が示された。

 塩崎恭久厚労相は会の冒頭で「環境変化に柔軟に対応し、国民に良質な医療を連続的に提供することが非常に大事だ」とあいさつ。その後、指導や研修のために医師が都市部の大病院に偏りかねない課題の対策について議論した。

 厚労省側は論点として ①専門医は義務づけではないこと ②地域医療従事者に配慮したカリキュラム制の設置 ③研修の中心は大学病院のみではなく地域の中核病院などであること――の3点を提示。第三者機関として専門医を認定する日本専門医機構の吉村博邦理事長は研修期間について、仕事や生活によって3年間のプログラム制がなじまない医師には、長期間にわたるカリキュラム制での専門医取得を認める方針を明かした。

 医師や学識者のほか、自治体トップらも出席し、立谷秀清・福島県相馬市長は「地方の病院は初期研修を終えた若い医師が支えている。大学病院のプログラムに取られてしまうと、地域医療はもたない」と訴えた。

 専門医制度は、2年間の初期臨床研修を終えた医師が外科や内科、小児科などの基本領域で原則3年間の研修を医療機関で受け、日本専門医機構から認定を受ける。17年度に開始予定だったが、医師が大学病院や都市部の大病院に集中し、地方の医師不足がさらに深刻になるとの心配が高まり、開始は1年間延期されることになった。



https://www.m3.com/news/iryoishin/522080
シリーズ m3.com意識調査
「へき地勤務、多忙を極め、体調を崩しかけた」
医師の地域偏在対策について―医師の働き方改革(4)

レポート 2017年4月25日 (火)配信橋本佳子(m3.com編集長)

◆意識調査の結果解説記事 ⇒ ◆「プライマリ・ケアの担い手は専門医」、年代で差

◆意識調査のページ ⇒ ◆医師の地域偏在対策について―医師の働き方改革(4)

◆へき地勤務の経験あり
・以前、数カ月だけですが、所謂「へき地」の診療所で町で、2人しかいない医師の片割れとして働かせていただいたことがあります。その時の経験は他に代えがたいものであり、多くの先生方にも一度は経験していただきたいと思っています。しかし、期限を定めず、かつ、ただ一人の医師として「へき地」で働くことは、難しいのではないかとも感じました。
 本来ならば都道府県ごとの大学病院が派遣の義務を負うべきなのかもしれませんが、下手な大学病院よりも東京にある有名センター病院や私立病院の方が人を派遣する余力があるとも思います。ですから、地方の大学病院に限定せず、一定規模以上の研修医や専修医を受け入れる教育病院には、継続的な医師派遣を条件付けた上で、研修医や専修医の受け入れを許可する、あるいは補助金を支給するなどの対策が必要ではないかと考えます。また、派遣される医師も、専門医取得後の「御礼奉公」に限定するくらいの方が「よく分からない『へき地』に派遣されるくらいなら、初めから地元の小規模な病院で研修しよう」と考える医師も増えるかもしれませんし。【勤務医】

・医師免許取得から現在に至る17年間、地域医療に従事した経験から申し上げる。地域中核病院への医師派遣強化だけでなく、地域の開業医を含めた地方医師会との連携が必須。地域を支えるのは病院のみにあらず。地域の高齢化は開業医師も例外ではない。高齢化による医療機関閉院によって減少が進むと偏在に拍車をかけるため、後継者(継承開業も含めて)の斡旋などが必要。そもそも人口の少ない地域は利便性にも欠けているため、地域のインフラ整備や人口増加のための経済強化も必要であるため、各地方自治体の経済・商業の活性化も必要と考える。医師が不足している地方都市と都内や政令指定都市とで、診療報酬額の差を付ける(都市部で減額、地方都市で増額)ことも偏在抑制の方法の一つと考える(地方に医師が流出しすぎない程度に)。これを含めて都市・地方自治体によって、新規開業可能な枠数も設定する(都市部で減枠、地方都市で増枠、継承開業については免除)。【勤務医】

・へき地に長い間勤務し、現在は大都市の郊外の病院に勤めていますが、問題は山積です。医師が来ないにはそれなりの理由があります。住民が外部人間を排除しようとする心が狭い問題。公立系、特に県立病院の事務系は全く仕事しなかった(大学病院の方がまし)、行政同士が仲が悪いなどなど……。上司がクラッシャーということも……。とにかく来てくれ!ではダメだと思います。強制されてもモチベーション下がりまくりですから……。現時点では1年限定、その方が僻地住民の嫌なところを見ずに済むし、我慢できるのではないかと思います。【勤務医】

・30年近く、へき地医療に貢献してきたが、子供が小学校でいじめられるのを見て、ここではダメだと思い、現在、都会に出てきている。やはり、ここでも、言葉が違うためいじめられたが、それ以上に文化的な刺激が多く、自分の好きな道を選んでくれているので、それを眺める幸せを得ている。偏在対策と言っても、医師だけの偏在の問題ではなくて、周りがちゃんとフォローできるが重要ではないかと思われる。医師だけに負わせるのは荷が重いと思うが。【勤務医】

・都市部に在住し、地方の病院に毎日通勤しています。仕事に不満はありませんが、通勤距離が長く相対的に拘束時間が長いこと、その分の交通費は考慮してもらえないこと(もちろんカンパニーカーの支給などなく、マイカーの劣化も激しい)を考えると、同じ給与なら都市部で、となってしまうと思います。【勤務医】

・実際にへき地診療を2年間、月1回の割合で行い、本来の病院勤務もこなしていましたが、へき地へのアクセスの悪さと、吹雪などで帰れなくなることもあり、代替診療などのサポート態勢があれば、昔の医局からの出張と同じ感覚でできると思います。へき地診療そのものはさほど問題にするほど難しくないと思います。遠隔診療などの最先端の治療を要求すること自体が、良く分かっていない医者の意見であると思います。【勤務医】

・かつて、へき地勤務を数年間しました。転送に苦労したことや、日々の診療が多忙を極め、体調を崩しかけました。今後は、本当に勘弁です。【勤務医】
・医局に所属していた時に、交代で僻地勤務がありました。1年間で給料が良く、1人で判断することを求められストレスになりましたが、今となっては勉強になった時代でした。【勤務医】
・医療連携が如何にスムーズに取れるかが問題と思う、へき地の診療所で勤務したことがありますが、患者急変時の周辺の病院の受け入れ体制が悪いために苦労しました。【勤務医】

・現在、へき地(離島)で産婦人科開業を一人でやっています。青臭く言えば使命感とやりがいでやれているようなものですが、島からほぼ出かけられないなどの辛さはあります。行政からの支援もあまり満足の行くものではありません。具体的内容は挙げられませんが、綱渡り状態であることは確かです。【開業医】
・へき地に勤務して思うこと、それは「閉塞感」、一時期なら誰しも許容はできると思う。必ず代替者を配置すべき、へき地が好きな人は残ればよいが、恐らくそんな人は少ないでしょう。【開業医】

◆その他
・医師の偏在は、勤務している専門医の偏在(=不足)です。専門医であっても診療所開業となれば、救急医療や急性期入院治療には役に立ちません。課題は専門医の開業を防ぎ、勤務地、勤務先病院をコントロールできるか否かです。対策は病院や医師を公立、公務員化する以外に術はないと思います。民間のままで、専門医は開業禁止!!勤務する専門医は監督機関が割り振ります!!なんて不可能でしょう。仮に専門医が地方勤務を義務付けると想定して、職場を選ぶ自由はある程度残るでしょう。地方基幹病院でも赤字経営なら低賃金でボーナスカットあり、最悪倒産、給与の未払いも起こり得る。一方、黒字病院なら賃金ボーナス安定。この2択で赤字病院への強制配置などあり得ないわけです。ほとんどの医師は黒字病院での勤務を希望するはず。最近の経営状況は基幹病院も7割は赤字経営と推測されます。強制配置されるなら、残り3割の黒字病院にするか、赤字病院勤務中でも給与保証してください。そうしないと医師も強制勤務中にリストラされちゃいますよ。病院大倒産時代の入り口ですから。【勤務医】



https://www.m3.com/news/iryoishin/522081
シリーズ m3.com意識調査
研修・研究機会の担保、高給、期間限定……
医師の地域偏在対策について―医師の働き方改革(4)

レポート 2017年4月25日 (火)配信橋本佳子(m3.com編集長)

◆意識調査の結果解説記事 ⇒ ◆「プライマリ・ケアの担い手は専門医」、年代で差

◆意識調査のページ ⇒ ◆医師の地域偏在対策について―医師の働き方改革(4)

◆偏在解消策として有効な施策は?
複数の施策必要
・地方の給料を上げる。研究費を取りやすく、また研究できる施設や資金を地方自治体が出す。学会参加を奨励し、交通旅費補助。困った症例をすぐに相談できる機会、人を作る。研究グループへ地方病院勤務者も入れる。大学やがんセンター、都市部などの医師ばかりが研究面、人材面、資金面で優遇されないようにする。地方勤務は臨床ばかりでなかなか疑問が解決できず、また資金面も苦しく割りを食っている。【勤務医】

・6カ月などの期間限定で、必ず後任が見つかるとの確約と、赴任中の給与を高額にするということで、ある一定以上の応募者は見つかると思います。私も子どもから手が離れれば、一定期間を確約されるのであれば、地方に行ってもいいと思います。ただし、地方へ行った同僚などの話を聞く限り、夜間だろうが休日だろうがオンコールで呼び出されて、割に合わないという話ばかり聞くので、地方へ行こうという気が萎えてしまいます。【勤務医】

・地方病院が短期のバイトを受け入れやすいような体制とか、地方勤務、国から支給される地方勤務手当のような補助金、都会の医者が休日だけでも地方の当直をしてくれるような仕組み、そういうのがあればと思います。【勤務医】

勤務体制に配慮、生活環境を整備
・基本的な待遇,疲弊しない程度の仕事量(日中、週末、夜間、当直)に加え、週末もある程度以上は研修に出られることの担保。【勤務医】
・住環境、文化的な生活、子どもの教育機会などを犠牲にするに値する見返りがない限り、現状は打破できないと思います。きれいごとでは何も解決しません。現実的な解決策を求めます。【勤務医】
・基本的に職業選択の自由が優先だと思う。都市部に住みながら、新幹線通勤週4日で定時に終わり、給与水準が高いとかなら、需要は多いと思われる。【勤務医】
・地方に行く=救急当番がつらい、専門外でも何でも診ないといけない、が解消されることが大事だと思います。きちんと休みが確保されないことが分かりきっている田舎では働きたくありません。【勤務医】
・地域患者のコンビニ受診を控えてもらう、そして病院全体でのサポート体制。【勤務医】
・人口も偏在しているのに医師の偏在を言っても……。中山間とへき地は異なる。へき地には常勤の医師は要るのか?近くの拠点病院(100~200床の中山間地の病院)から外来勤務だけでいいのでは。今まで通りの医療システムを維持しようとするのは人口が減っている地域では無理。【開業医】

医師養成と関連付け
・地域医療枠で医学部に入学して医師になった人を、各都道府県のへき地医療にもっともっと役立てるべきだと考えます。自治医科大学卒業後の地域医療も、現状より長くすることも検討すべきです。【勤務医】
・専門医数を限定しても、専門を変えて都市部に残留する医師が増えるだけのように思います。今の臨床研修制度が始まってから地域医療が崩壊したように思われ、臨床研修制度改革が必要なのではないでしょうか。【勤務医】
・地方はどうしても医師数が少ないため、総合医が必要です。救急医と総合医がとりあえず必要と思われます。あとは交通のアクセスをよくすれば医師や患者の移動がスムーズになり、専門医もすぐに地方に行けると思います。【勤務医】
・自治医大の卒後義務期間の延長。15~20年。【開業医】

医療面のバックアップ
・これまでの政策・医学教育を鑑みて、無理だと思います。が、あえて言うと、バックアップ体制の構築ではないかと考えます。医療内容が高度化され、一人の医師にできることは限られており、当然かもしれませんが患者さんの方も高度なことを要求してきます。【勤務医】
・地方の医療を担うことになると、孤立的な医療を強いられることが多いので、なかなかその業務に就くのには二の足を踏むことが多いのではないかと思っています。最近の遠隔医療のテクノロジーを駆使することにより、その問題点をある程度カバーすることが可能と思っています。【開業医】

医師派遣の仕組み
・少数の医師で回すにしても、皆が疲弊しないようローテーションは必須。基幹病院とサテライト病院を据えて、グループ診療の採用と得意・専門分野を伸ばし、一般・総合診療力を上げるための研修システムを確立すべきだと思う。【勤務医】
・医局でなくてもいいが、責任を持って医師の勤務地をつかさどる機構が必要。【勤務医】
・医局崩壊しているため、国が医局の代わりとなる機関を作り、若い医師全員でローテーションすべき。【勤務医】

給与でインセンティブ
・報酬を上げる。勤務期間の限定。1年3000万円とか。その県でしか働けないような医師の資格を作るとか。【勤務医】
・(1)医師が来たくなるような、報酬、休日を整えること、(2)医師に対しては「確保」ではなく「招聘」という言葉であること。【勤務医】
・田舎に勤務させるにはそれなりの報酬が必要であり、年収にして5000万円出せばそれなりの人材が見つかりますよ。【勤務医】

◆一定の義務化は必要
・自由開業制度と診療科自由選択制度のままでは、はなはだ困難と考えます。自分の首を絞めると言われることを覚悟で述べます。ギルド的な医師全員加盟の医師会とし、日本で必要とされる各診療科の医師割り振りを任せる。地域配分を任せる制度なら、根本的な解決になるでしょう。ただし、従事する全医師、研究者を含め医師免許保有者の生活を保障することが裏付けとして必要です。60歳まで働けば、老後の生活を保障する制度も必要です。このような制度はドイツで動いていると聞いています。【勤務医】
・憲法違反ですが、強制割り当てしかないでしょうね。医療法人で多数の医師を雇用して派遣するシステムでも構築するしかないでしょうね。【勤務医】

・地域医療の医師不足は猶予のない問題です。生半可な対応では解決できません。大多数の医師からは厳しい非難を受けますが、保険医のある程度の矯正配置(基本的人権には十分配慮しつつ)が必要でしょう。【開業医】
・「国立大学医学部卒業生は、その道府県(またはその周辺県)に10年間勤務することを義務化する」。職業選択の自由を理由に反対する人もいるとは思いますが、医師を選択した時点で職業選択の自由は満たされております。管轄は異なりますが、防衛医大・自治医大の卒業生には、ある程度勤務先の縛りはあります。こうすることで、各都道府県に1カ所以上の国公立医大を設置した当初の目的が果たされるのだと思います。【開業医】

◆政策に問題あり
・研修医制度や専門医研修施設の都市部への集中など、厚生労働省は何を考えているのでしょうか?新規医学部を設立しても、結局女医さんが増えて余計に都市部に医者が増え、心臓血管外科や脳外科や消化器外科などは増えないので意味があるんでしょうか?現在、地方で外科医をしている私としては理解できません、お役所さんの考えることは。【勤務医】

・何を今さらという感がある。医師不足地域があり、医師過剰地域のあることはかなり前から問題になっていた。さらに言うと昭和58年頃には医師過剰時代が問題化され、それ以降、医学部の定員削減が実施されてきた。最近になってそれぞれの事情から医師が地域偏在となったり、特定の科を避けるようになった。 その結果、政府・官僚たちは種種の要因を考慮せず、医学部の定員を増やした。愚かなり!【開業医】



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49835?page=2&utm_source=nifty&utm_medium=feed&utm_campaign=link&utm_content=next
認定料目当てに早くも贅沢三昧、日本専門医機構
疑問符だらけの新専門医制度で破綻は免れない?

上 昌広
2017.4.26(水) JB Press

 新専門医制度をめぐる議論が迷走している。この議論をリードしている日本専門医機構が、一部の大学教授たちの利権と化し、地域医療を崩壊させる可能性が高いことを、私は繰り返し主張してきた(参照1、2)。


 最近になって、医療界以外にも、この問題の深刻さを認識する人が増えてきた。

 例えば、4月14日、松浦正人・全国市長会会長代理(山口県防府市長)は「国民不在の新専門医制度を危惧し、拙速に進めることに反対する緊急要望」を塩崎恭久厚労大臣に提出している。

 朝日新聞は4月13日の「私の視点」で、南相馬市立総合病院の後期研修医である山本佳奈医師の「専門医の育て方 地域医療に研修の場を」という文章を掲載した。

不足している産科医の育成を医局が妨害

 山本医師は関西出身。大学卒業後、南相馬市立総合病院で初期研修を行い、今春からは同院で産科を研修することを希望した。しかしながら、福島医大の産科医局出身の男性医師やその仲間が、新専門医制度などを理由に拒み続けた。

 南相馬市長も「福島医大と対立したくない」と言って、彼女を雇用しようとしなかった。最終的に、彼女は産科医を諦め、神経内科医として南相馬市に残った。

 南相馬の産科医不足は深刻だ。ところが、新専門医制度は、医局が部外者を排除する参入障壁として機能した。医局に任せると、こういう結果になる。これでは、何のための専門医制度か分からない。

 日本専門医機構(以下、機構)は、いったん白紙に戻し、ゼロから議論すべきだ。ところが、そう簡単にことは動きそうにない。

 最近、知人から、気になるコメントを聞いた。高久史麿・日本医学会会長が、2016年6月18日に公開されたエムスリーのインタビューで「立ち止まっていたら、きりがなく、財政的にももたなくなる」と語っていたというのだ。

 私は機構の財務資料を探し、友人の税理士である上田和朗氏に分析してもらった。その結果は衝撃的だった。

 平成28年3月末日現在、機構の総資産は3722万円で、総負債は1億498万円。つまり、6776万円の債務超過だ。

 機構は運転資金を得るため、日本政策金融公庫から短期で5000万円、長期で3000万円を借り入れていた。

 なぜ、こんなことになるのだろう。まだ事業が始まる前だ。機構の事業は、そんなに初期投資を要するものではない。

オフィス賃料が大手町の6倍!

 支出を見て驚いた。交通費3699万円。賃料1555万円、会議費463万円もかかっていたのだ。

 ホームページに掲載された機構の理事会の議事録を見ると、参加者の多くは東京在住だ。普通にやっていれば、こんなに交通費がかかるはずがない。

 交通費については、事業開始初年度の平成26年度にも1829万円を使っている。この年度の交通費の当初予算は1万円だった。いったい機構のガバナンスはどうなっているのだろうか。

 賃料も桁違いだ。毎月120万円も支払っている。

 私は事務所の場所を調べた。なんと有楽町駅前の東京フォーラムにあった。超一等地で、ホームページで調べると、賃料は1坪あたり12万6421円となっていた。

 オフィスビルの平均賃料は、1坪あたり丸の内・大手町で2万1500円、浜松町・高輪で1万2864円だ。機構が東京フォーラムではなく、浜松町にオフィスを借りていたら、毎月100万円程度節約できたはずだ。

 一方で、収入に関しては、当初1億2500万円の認定料を受け取る予定だったが、実際に受け取ったのは1688万円だった。入会金も70万円の予定が5万円だった。最大の収入は4600万円の補助金だ。


 収入がないのに、贅沢三昧をやっていれば、お金がいくららあっても足りない。機構は、どう考えていたのだろう。

 平成27年の臨時理事会議事録によれば、「施設認定料10万円(一施設)、専門医認定更新料(従来の学会専門医にさらに上乗せ徴収)、1人1万円で、5年後に黒字化する」と書かれている。

 つまり、新専門医制度を始めれば、認定料で安定した収入が見込め、その収入をあてにして、最初から浪費していたようだ。

専門医研修義務化なければ破綻へ

 彼らが、専門医研修の義務化にこだわったのも、高久先生が「財政的にもたない」と発言したのも宜なるかなだ。このまま新専門医制度が始まらなければ、機構は破綻するしかない。背に腹は代えられない状況に陥っているようだ。

 高久先生は、昨年6月の段階で問題を認識していたのだろう。だから、前出の発言に繋がった。税理士の上田氏は「(2009年に事件化した)漢字能力検定協会の事件を思い出しました」と言う。

 私は高久先生の意見と反対だ。機構の幹部の尻ぬぐいをするため、その乱脈経営をうやむやにして、若手医師や地方の医療機関にツケを回すべきではない。将来の我が国の医療が犠牲になる。

 専門医制度が予定通り進んでいないのは、機構が準備している制度が悪いからだ。「とにかく新専門制度をやることに決めたのだから、やるしかない」という理屈は通じない。

 まずやるべきは、機構の責任者が、これまでの経緯を説明して、責任をとるべきだ。その過程で機構が破綻しても仕方ない。自己責任である。

 それとは別に、専門医育成はいかにあるべきか、広くオープンに議論すべきだ。



http://www.medwatch.jp/?p=13443
新専門医制度、整備指針を再度見直し「専門医取得は義務でない」ことなど明記へ―厚労省検討会
2017年4月25日 MedWatch

 専門医取得は医師の義務ではない。また地域医療に従事する医師が専門医資格を取得しやすくなるようカリキュラム制を設置する。さらに、研修の中心は大学病院のみでなく、症例の豊富な地域の中核病院なども含まれる—。

 こういった点について、新専門医制度の憲法とも言える「新整備指針」を見直し、明確にする方針が、24日に開催された「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」で固まりました。日本専門医機構の理事長である吉村博邦構成員(地域医療振興協会顧問、北里大学名誉教授)も、2018年度からの新専門医制度全面スタートに向けて、5月12日開催予定の機構理事会に新整備指針の修正案を提示したいとの考えを示しています(関連記事はこちら)。

ここがポイント!
1 新専門医制度、自治体などから「地域医療への配慮が不十分」との指摘
2 「専門医取得は義務ではないが、取得が望ましい」と日本専門医機構
3 新専門医制度の法制化などを求める意見も
4 新専門医制度の当面の課題を解決後に、中長期的テーマを議論

新専門医制度、自治体などから「地域医療への配慮が不十分」との指摘

 新専門医制度は、当初、今年(2017年)4月から全面スタートの予定でしたが、「地域・診療科における医師偏在が助長する」との指摘を受け、全面スタートを1年延期(18年4月から)。その間に、さまざまな課題を解決することになっています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

 日本専門医機構は役員構成を刷新し、昨年(2016年)12月には新専門医制度の憲法に当たる「新整備指針」を決定しました。新整備指針では、「新たな専門医の仕組みは、機構と各基領域学会が連携して構築する」ことを明確にしたほか、地域医療への配慮として、▼「大学病院以外の医療施設も、研修施設群の基幹施設となれる」基準を設ける▼機構は、基本領域学会と協働して、医師の都市部への偏在助長を回避することに努める▼専攻医の集中する都市部の都府県に基幹施設がある研修プログラムの定員等については、都市部への集中を防ぐため、運用細則で別途定める▼常勤の専門研修指導医を置くことが困難な場合、研修連携施設に準ずる施設を基幹施設の承認のもと研修プログラムに組み入れることを認める▼機構は、各領域の研修プログラムを承認するに際して、行政、医師会、大学、病院団体からなる各都道府県協議会と事前に協議し決定する—といった点を規定しました(関連記事はこちらとこちら)。

 さらに、各基本領域学会が養成プログラムを策定する際の拠り所となる「運用細則」の暫定版を固めるなど、2018年度スタートに向けた準備を進めてきました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

 しかし12日には全国市長会が、(1)中小病院が危機に陥りかねない(2)医師偏在が助長されかねない(3)医師が診療活動を開始できる時期が遅れる(4)若手医師に医局生活を強いることになる—といった問題点があると塩崎恭久厚生労働大臣に緊急要望。塩崎厚労相も、こうした懸念を払拭した上で新制度を2018年度からスタートする必要があると判断し、本決定会の設置を決定しました。

「専門医取得は義務ではないが、取得が望ましい」と日本専門医機構

 検討会では、▼地域医療に求められる専門医制度の在り方▼卒然・卒後の一貫した医師養成の在り方▼医師養成の制度における地域医療への配慮—の3点を議題としますが、24日の会合では「2018年度に全面スタートする専門医制度と、地域医療の確保とのバランス確保」という目の前のテーマに焦点を合わせた議論が行われました。

 住民に最も身近な自治体である市町村の立場で出席した立谷秀清構成員(相馬市長、全国市長会副会長)は、改めて全国市長会の緊急要望の趣旨を訴えるとともに、▼地域医療に責任を負う自治体関係者を交えずに制度を組み立てるのは好ましくない▼南相馬市では東京から赴任した若手医師が地域医療を支えているが、こういう気概を持った若手医師が専門医資格を取得しやすくなる仕組みとすべき—といった点を強調しました。

 「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の座長も務めた渋谷健司構成員(東京大学大学院国際保健政策学教授)は、「論文執筆などを専門医研修の内容に含めているが、これでは『医学博士』のように内容のない仕組みとなってしまう。国際標準に合致した専門医養成が求められる」と指摘。また「基本領域学会が新専門医制度の理念や整備指針に反した場合の対策を検討しておく必要がある」と提案しています。

 一方、尾身茂構成員(地域医療機能推進機構理事長)は、「自治体や住民、若手医師も巻き込んで制度を構築していくことは、新専門医制度のベースとなるプロフェッショナルオートノミーに反しないと思う」と述べ、より広範な視点で検討することを提案しました。

 こうした指摘を受け、吉村構成員は(a)専門医取得が医師の義務ではない(b)地域医療に従事する医師が専門医を取得しやすくなるようカリキュラム制を設置する(c)研修の中心は大学病院のみでなく、症例の豊富な地域の中核病院なども含まれる—点を明確にする考えを表明しました。この点、例えば(2)のカリキュラム制の設置は、運用細則には記載されていますが、吉村構成員は「新整備指針を改めて見直し、こうした点を明確にする」とメディ・ウォッチにコメントしています。後述する構成員の指摘も踏まえて、早急な新整備指針などの見直しが行われる見込みです。

 もっとも、専門医取得は医師の義務ではありませんが、吉村構成員は「例えば眼科医であれば、眼科の標準的な治療をすべて習得することが望ましい。十分な知識・技術を持たない医師がレーシック手術をして有害事象が生じているケースもあると聞く」と述べ、「専門医取得が望ましい」という点を強調しています。

 なお、ここでプログラム制とは「定められた年限と研修施設で、必要な症例数などを経験し、専門医資格を取得する仕組み」と意味し、カリキュラム制とは「年限や研修施設を定めず、必要な症例数などを経験し、専門医を取得する」仕組みです。カリキュラム制であれば「地域医療に従事しながら、自身の状況にあわせて、5年、10年と時間をかけて専門医資格を取得する」ことが可能ですが、日本専門医機構では「若いうちに集中的に標準的な知識・技術を学ぶことが重要」との考えの下、プログラム制を基本に据えています。今後の新整備指針見直しで、プログラム制とカリキュラム制とをどう組み合わせていくのか、注目が集まります。

プログラム制とカリキュラム制の違い
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新専門医制度の法制化などを求める意見も

 このほか、地域の医療提供体制構築の責任者である都道府県の立場から、荒井正吾構成員(奈良県知事、24日は同県医療政策部長の林修一郎参考人が代理出席)は「研修プログラム認定に当たっては都道府県と協議することになるが、認定後には大学病院などの基幹施設に医師配置が委ねられる。その場合、地域医療とは別の視点で医師を配置する可能性もある。国と地方自治体がしっかりと関与し、医師偏在の懸念を払拭する必要がある」とコメント。

 山内英子構成員(聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長)は、「当面は、機構と学会とが連携・協働して新専門医制度を構築し、運用することになるが。学会は学会員のために動く。機構は患者のために動くべきであり、将来的には切り分けを検討すべきではないか」との見解を示しています。

 また立谷構成員は、「プログラム制では、大学病院などの基幹施設での研修が一定期間義務付け、ストレートに進んでも医療現場に出る年齢が遅くなる。その間、社会人としての活動、医師としての活動を相当制限される。そうでれば、地域の代表者も含めて国家的な議論が必要である」とも述べ、新専門医制度の法制化も視野に入れるべきと提言しています。

このように、新専門医制度にはさまざまな指摘がなされていますが、桐野高明副座長(東京大学名誉教授)は、「新専門医制度には50年の歴史がある。これを踏まえて、吉村理事長の下で日本専門医機構が『質の高い専門医の養成』と『地域医療の確保』という難しい課題の両立に向け、1つ1つ改善をしている最中である」と述べ、機構の努力に対する理解も求めています。

新専門医制度の当面の課題を解決後に、中長期的テーマを議論

 今後、検討会では構成員の意見を踏まえて、日本専門医機構がどのような対応をとる方針か報告を受けることになります。

 その上で2018年度スタートに目途が立った暁には、医学部教育から初期臨床研修、後期臨床研修(新専門医制度)、さらに生涯教育の一貫性確保や、地域医療への配慮、さらに立谷構成員が提案する「新専門医制度の法制化」など、長期的な課題について改めて議論してくことになります。新井一構成員(全国医学部長病院長会議会長)や今村聡構成員(日本医師会副会長)、尾身構成員は、「専門医制度に注目しがちだが、医師養成システム全体を見て議論していかなければらなない」と述べ、長期的テーマの重要性を強調しています。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t221/201704/551052.html
シリーズ◎どうなる新専門医制度
ドタバタの延期から1年、新制度はどうなった?
研修の質と地域への影響のバランスを取りつつ弾力化

2017/4/25 加納亜子=日経メディカル

 「地域医療を崩壊させることのないよう、一度立ち止まって集中的な精査を早急に行うべき」。2016年6月7日の異例の厚生労働大臣談話で、開始時期の1年延期が決まった新専門医制度。2018年度のリスタートに向け、日本専門医機構と基本領域の各学会は着々と準備を進めているが、地域医療への影響を懸念する声は根強く残っている。新専門医制度は1年の延期でどのような変化があったのか。現時点で明らかになっている変更点をまとめる。

 当初の予定では、この4月にスタートしているはずだった新専門医制度。先行きに暗雲が立ちこめ始めたのは2016年2月のこと。厚生労働省社会保障審議会医療部会で日本専門医機構理事長(当時)の池田康夫氏らが制度の概要や今後のスケジュールなどを説明したところ、「若手医師の地域偏在がさらに進む」「雇用形態や待遇に関する検討が不十分」といった指摘が相次ぎ、複数の委員から制度開始に「待った」の声がかかったのだ。

 その後、制度への不満や批判の声は鳴り止まず、6月7日に塩崎恭久厚生労働相が冒頭の談話を発出。これが決定打となり、日本専門医機構は制度開始を目前にした7月、開始の1年延期を決定した。さらに、機構自体のガバナンスの不備の指摘に対応する形で、理事を一新した。

 一方、基本領域の3学会(小児科、耳鼻咽喉科、病理科)は、地域医療への配慮について日本専門医機構と確認し、新制度に向けて整備した新研修プログラムを今年4月から前倒しで開始。整形外科、救急科、形成外科は現行制度と新プログラムを併用する形で研修をスタート。それ以外の学会は従来通りの制度での研修を続けている(関連記事)。

多くの課題を抱えた新専門医制度
 1年の延期で、新専門医制度は何が変わるのか。

 機構は制度延期の決定に際し、「新制度の導入に伴い浮き彫りになった課題」として以下の3項目を挙げていた(関連記事)。

新制度の導入に伴い、浮き彫りになった課題

(1)2017年に専門研修を始める医師(専攻医)数は8000~9000人だが、新研修プログラムで示されている各領域の定員の合計数は1万8000~1万9000人程度。多くの診療領域で過去の採用実績と定員の差が大きく、大都市に専攻医が集中する可能性が高い。

(2)診療領域によっては学会が設定する指導医・施設要件が厳しく、指導医数や症例数の不足から、これまで専門医の養成に携わっていた施設が専門研修施設群に入れないという問題が生じている。

(3)サブスペシャリティー領域やダブルボードに関する方針が定まっておらず、それらを決定してから制度を開始すべきという意見が寄せられた。

(日本専門医機構の2016年7月20日会見より)


 その他にも様々な問題が指摘されていたが、この1年、機構はこれら課題の解消に向け、検討を続けていた。まず取り組んだのが制度の骨格となる「専門医制度整備指針」の改訂(2016年12月に公表)。2017年2月には「運用細則及び補足説明」を示した。

 新整備指針でも、制度の基盤となる専門医の定義は「それぞれの診療領域において、標準的医療を提供でき、患者から信頼される医師」と変化なし。そして、機構認定の基本診療領域は、総合診療専門医を含む19領域。サブスペシャリティー領域は計29領域で、その内訳は内科系が13領域、外科系が4領域、その他が12領域と、いずれも変更はない。

 内科や外科は別として、どの基本領域を取得すればどのサブスペシャリティーに進めるのかといった議論に今のところ、進展は見られない。これらについての議論に進展は見られない。また、サブスペシャリティーとして機構が認定するか否か未定の領域数も54領域(細分化した診療領域と思われる25領域と、技術、診断、治療、病名、症状などに関する29領域)と変わりない。

 新整備指針と運用細則などから、現時点において明らかになっている改訂ポイントは主に5つと見られる。(1)基本領域研修の柔軟な運用、(2)サブスペシャリティー領域研修の基本方針、(3)施設基準緩和と定員数調整、(4)都道府県協議会の役割の明記、(5)ダブルボードの考え方――だ。

(1)基本領域研修の柔軟な運用
 新整備指針では「柔軟な運用」を重視。まず基本領域の専門医資格の位置付けについて、「いずれかの取得が求められる」としていた記載を「いずれかの取得が望ましい」と改めた。

 基本領域の研修については、以前は年次ごとに到達目標(習得すべき知識・技能・態度など)や経験症例数、指導体制などを盛り込んだ専門医育成プログラムに沿って研修を行う「研修プログラム制」のみで行うこととしていたが、新整備指針では「領域によっては研修カリキュラム制を認める」方針が示された。

 さらに、地域枠、自治医科大学卒業生などの義務年限を有する卒業生、地域医療に資することが明らかな場合で出産・育児・留学などで合理的な理由があれば、到達目標を定めて質を担保するカリキュラム制での研修を学会の判断で認めることになった。

 また、専門研修中に専攻医が留学や妊娠・出産・育児、病気療養といった特定の理由で研修が困難になった場合には、申請によって研修を中断することができる仕組みを用意。6カ月までの中断であれば、残りの期間に必要な症例などを埋め合わせれば、研修期間の延長を要しないこととなった。また、6カ月以上の中断後に研修へ復帰した場合でも、中断前の研修実績は、引き続き有効とすることを決めた。

 新整備指針ではローテート研修の期間についても変更している。研修の質を担保するために原則として基幹施設での研修は6カ月以上とし、連携施設での研修は3カ月未満にならないよう求めている。ただし、領域によって特殊な研修を積む必要がある場合などには、研修の質が低下しない範囲で3カ月以下でも認めることが示された。

(2)サブスペシャリティー領域研修の基本方針
 サブスペシャリティー領域についても、専門医資格取得の仕組みはプログラム制に限らず、カリキュラム制も認める方針に変更。関連する基本領域学会とサブスペシャリティー領域学会で検討委員会を作り、研修内容の調整などを行い制度設計・運営をすること、研修施設群の形成を必須とはしないことなどを定めた。機構は検討委員会による業務の評価・認定を行う。

 一部のサブスペシャリティー領域と基本領域学会では、経験症例や研修内容に重複があるため、プログラムの相互乗り入れなどの検討も始まっている。

(3)施設基準緩和と定員数調整
 地域医療に悪影響を及ぼしかねないという意見が根強く残っていることから、これまで後期研修医を受け入れていた医療機関が研修施設から漏れないよう、研修プログラムの中核施設となる「基幹施設」の基準を緩和。「大学以外でも基幹施設に認定される基準」にした。そして、専門研修指導医がいれば「連携施設」でも専攻医を採用できる仕組みにするよう求めた。

 常勤の指導医が在籍しない施設での研修も、地域の状況に応じて必要な場合には、期間を限定したり他の専門研修施設から随時適切な指導を受けられるようにするなど、医療の質を落とさない研修環境を整えることができれば可能とした。


 加えて、制度導入による専攻医の大都市集中を防ぐ目的で、5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)では定員数の上限を定める方針も示した。この定員数の上限は、原則として過去5年の専攻医採用実績の平均値を超えないものとする。

 ただし、都市部の研修施設には地域への医師派遣を担っているところも多いことを踏まえ、地域への医師派遣の実績などを考慮して具体的な数値は基本領域学会と機構での協議により定める。今後、細かい調整が行われることになりそうだ。

 定員数は当面の間は毎年、機構の基本問題検討委員会で見直す。そして、地域偏在を助長するなどの不都合が生じた場合にはさらなる調整を検討するとしている。なお、この上限設定は医師数が減少している診療科(外科、産婦人科、病理、臨床検査)を除外した形で進める。

(4)都道府県協議会の役割
 新専門医制度導入に当たり、地域の実情に合わせた研修施設群の創設、ローテートを含む研修プログラム内容や、各プログラムごとの募集定員の調整、地域枠など義務年限のある専攻医の研修については、機構と学会だけではなく、各自治体や地域の医療機関、大学、医師会による「都道府県協議会」との調整が要る。

 それらを円滑に進める目的で、新整備指針では都道府県協議会の位置づけを明記。各領域の研修プログラムの承認に当たっては「都道府県協議会と事前に協議し決定する」とした。

 各都道府県協議会から提出された研修プログラムへの修正意見は、機構の基本問題検討委員会に諮り、必要に応じて協議した後に最終的に理事会で決定することとしている。都道府県協議会がどれだけ機能するかで新制度スタートに伴う不協和音が増減することになりそうだ。

(5)ダブルボードへの考え方
 2つ目の基本診療領域専門医の取得、いわゆるダブルボードについて、機構の前体制は2015年夏頃に「禁止する予定はないが、それぞれの専門研修を受けて診療実績を積む必要があるため、複数の専門医を取得・維持することは現実には困難だろう」(池田氏)と消極的な姿勢を示していた(関連記事)。これについても、反発する意見が多く寄せられたことから新整備指針では認める方針を明らかにした。

 新整備指針では「基本領域学会の専門医となったものが、その後、他の基本領域学会専門医資格を取得すること(ダブルボード)は妨げない」と記載。その認定基準を記した運用細則では、初期臨床研修を修了し、最初に取得する専門医資格は原則として研修プログラムに所属して取得することを求めるが、次に取得する専門医資格については、「研修プログラム制、研修カリキュラム制のいずれも選択できるものとする」と記した。更新基準については、「各基本領域学会で検討する」こととしている。

 症例経験は以前と同様に、各基本領域の整備基準で登録できる要件を定め、それを機構が認定することになるが、2つ目の専門医資格を取得しやすくするため、「資格取得に必要な経験症例などが重複する場合には、相互で症例数として換算できるようにする」方針も示している。



http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=55570?site=nli
地域医療構想と病床規制の行方-在宅医療の体制づくりが急がれるのは、どのような構想区域か?
保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任 篠原 拓也
2017年04月24日 ニッセイ基礎研究所 基礎研レター

■要旨

日本では、疾患を抱えた高齢期の患者の数が増加すると見込まれている。これに伴い、患者の健康寿命を延伸させつつ、医療費の抑制を目指して、病床機能の見直しが図られている。各都道府県は、2017年3月までに地域医療構想を策定した。今後、この構想をもとに、2018年度開始の第七次医療計画の立案が進められる。

本稿では、病床機能の変更を中心に、今後の地域医療の変化について概観することとしたい。


1――はじめに

 日本では、疾患を抱えた高齢期の患者の数が増加すると見込まれている。それに伴って、医療は、従来の、治療による完治を目指すものから、病気が軽減する寛解を目指すものへと変化が求められる。これに伴い、患者の健康寿命を延伸させつつ、医療費の抑制を目指して、病床機能の見直しが図られている。各都道府県は、地域の実状に照らして将来の病床構想を立てるべく、2017年3月までに地域医療構想を策定した。今後、この構想をもとに、2018年度開始の第七次医療計画の立案が進められる。

 本稿では、病床機能の変更を中心に、今後の地域医療の変化について概観することとしたい。1

  1 本稿は、「地域医療構想をどう策定するか」松田晋哉(医学書院, 2015年)を参考にしている。

2――地域医療構想とは

 そもそも地域医療構想とは、どういうものか。まずは、これについて、見ていくこととしよう。

1|将来の医療需要と病床の必要量を推計し、医療提供体制実現の施策を立てる
 地域医療構想としてまとめる事項は、大きく2つに分けられる。1つは、将来(2025年)の医療の必要量。これは、構想区域(原則として、二次医療圏)ごとに、所定の計算式で算定された病床の機能区分(次章にて詳述)別の床数と、在宅医療等の患者数である。もう1つは、目指すべき医療提供体制を実現するための施策。この施策は、例えば、医療機能の分化・連携推進のための施設整備策、人材確保・養成策、在宅医療の充実策などを指す。

 地域医療構想は、都道府県が医療計画2の一部として策定する。この策定を通じて、各医療機関の機能分化が図られる。また、構想の策定、実施を後押しする仕組みとして、地域医療構想調整会議、病床機能報告制度、地域医療介護総合確保基金の仕組みが整備されている。以下、簡単に見ていこう。

  2 医療計画は、医療法第30条の4により、都道府県が定めるものとされている。これまでに、1985年の第一次計画から、数年ごとに策定されてきた。2014年には、第六次計画が策定された。そこでは、メンタルヘルスや認知症の問題の深刻化を受けて、精神疾患が医療提供体制の整備計画の対象として追加された。また、地域包括ケアの推進に向けて、居宅などでの医療体制構築についても、他の疾患・事業と同様、県の数値目標等の記載が求められることとなった。地域医療構想は、医療介護総合確保推進法に基づいて、2015年度から策定することとされている。策定期限は、法律上は2018年3月末であるが、厚生労働省は2016年半ば頃までの策定が望ましいとしてきた。各都道府県は、2017年3月までに策定している。

2|地域医療構想調整会議は、地域医療構想の中身を議論する
 地域医療構想調整会議(以下、「調整会議」)は、地域医療構想を策定する際の、協議の場である。調整会議のメンバーは、地域医療を提供する医師会・病院団体と、医療費の支払側である保険者、地域医療を監督する都道府県。介護関係の検討を要することがあるため、合議内容によっては、介護関係者や介護保険の保険者としての市町村、医療・介護の保険制度を支えてサービスを受ける立場の住民の代表も加わる。そして、地域の患者数や医師数などのデータを、分析・解釈する研究者も加わる。

調整会議には、地域の医療市場を規定する側面がある。このため、医療関係者は大きな関心を持って臨む。ともすれば、議論が具体根拠を欠いたまま、観念的なやり取りに終始しかねない。また、住民の代表は、地域医療の実状がつかみにくく、議論に加わること自体が難しい場合もある。そこで、合理的な議論や決定のために、DPC、NDBデータ等3による、科学的なアプローチが有用とされている。

  3 DPCは、Diagnosis Procedure Combinationの略。診療報酬の包括評価を行うDPC対象病院の医療費等のデータを指す。一方、NDBは、National Databaseの略。2008年から国が収集している、レセプトデータや、特定健康診査等のデータを指す。

3|病床機能報告制度は、病床の現状を把握するための仕組み
 病床機能報告制度は、調整会議の議論の前提として、病床の現状を医療機関から報告するための仕組みである。この制度は、2014年より始まっており、毎年、7月1日時点の病床数を、機能別に報告する。併せて、各病院の、今後の病床の方向性についても、報告してもらうものとなっている。

4|地域医療介護総合確保基金は、地域医療・介護体制の整備費用に充てられる
 地域医療介護総合確保基金は、都道府県が設けるもので、地域医療構想の実現のために、医療従事者の確保・養成、在宅医療や介護サービスの充実などの経費に充てるものとされている。従来より、医療政策の実現には、診療報酬制度が用いられている。しかし、診療報酬は、診療の対価であり、医療体制の整備の評価には用いづらい。また、診療報酬は全国一律のものであり、地域に応じた医療政策は反映させにくい。こうしたことを受けて、2014年に、税負担による基金が設立されている4

  4 基金造成にあたり、費用の2/3は、国が負担することとされた。

3――地域医療構想の策定

 続いて、地域医療構想の策定プロセスを見ていこう。

1|地域医療構想は8つのプロセスを経て策定される
 地域医療構想策定ガイドラインによると、8つのプロセスを通じて、策定を進めていくこととされている。各都道府県は、このプロセスに従って地域医療構想を策定し、報告書として公表している。

図表1. 地域医療構想の策定プロセス
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2|二次医療圏と異なる構想区域を設定した都道府県が5つあった
 上記の3.のプロセスで、構想区域は、原則として二次医療圏であるが、患者の受療行動等を勘案して、別の区分で設定することもできる。今回、都道府県が公表した地域医療構想によると、福島、神奈川、愛知、三重、香川の5つの県で、二次医療圏とは異なる構想区域を設定している。この結果、全国で、344の二次医療圏に対して、構想区域の数は342と、若干異なる結果となっている。
3|各機能別の病床と在宅医療等について、患者数が見積もられ、そこから必要病床数が推計される
 上記の4.~6.のプロセスでは、医療需要の推計を立て、それをもとに必要病床数の推計が行われる。推計にあたり、まず、病床機能を4つに分ける。この機能区分は、DPCデータを用いて行われた5。そして、各機能間の医療資源投入量6の境界線が設定され、患者数の推計方法が定められた。

図表2. 病床機能別病床区分 (在宅医療等を含む)
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 この推計方法に基づいて、各構想区域で、域内の医療機関で発生した症例を、それぞれ、4つの機能区分に分解する7。そして、機能区分ごとに集計して、患者数を推計する。その患者数を、機能区分ごとの病床稼働率で割り算して、必要病床数を割り出す8。併せて、在宅医療等の患者数も推計される。

 なお、慢性期病床の必要数の見積もりにおいては、現在、療養病床9に入院している医療区分110の患者の70%が、在宅あるいは介護施設での医療で対応可能との前提が置かれた。併せて、療養病床の入院受療率の地域差を縮小させることが盛り込まれた。そのために、3つの具体手法が示されている11

図表3-1. 療養病床の入院受療率について地域差の縮小を図るための3つのパターン/図表3-2. 3つのパターンのイメージ
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  5 具体的には、DPCにおける、1日あたり出来高換算コストの分布状況が参考にされた。
  6 入院基本料相当分・リハビリテーション料の一部を除いた1日当たりの診療報酬出来高点数。1点は、10円に相当する。
  7 DPCの医療機関については、患者ごとに、入院日数を4つの機能に分解・集計して、それぞれの医療需要を算出。DPC以外の医療機関については、ナショナルデータベースとして収集されたレセプト(診療報酬明細書)をもとに計算する。
  8 病床稼働率は、ある一時点の病床利用率に、その日の退院患者数を加えたものとして、実績をもとに設定されている。具体的な水準は、高度急性期75%、急性期78%、回復期90%、慢性期92%、とされている。
  pan style="color:#CC0000">9 主として、長期にわたり療養を必要とする患者のための病床のこと。主に、急性期の入院治療を必要とする患者のための病床である一般病床とは、別の概念。医療保険対象の医療療養型病床と、介護保険対象の介護療養型病床の2種類がある。
  10 医療制度上、患者は、24時間持続点滴などを行う医療区分3、(医療区分3以外で)筋ジストロフィーや肺炎などを患う医療区分2、それ以外の医療区分1、の3つの区分に分けられる。
  11 2013年の療養病床の入院受療率(人口10万人あたり入院患者数)は、最小: 山形(81%)、最大: 高知(391%)、中央値: 滋賀(144%)。

4|必要病床数の推計は、病床機能報告制度結果と比較される
 上記の7.と8.のプロセスで、必要病床数の推計結果と、病床機能報告の結果が比較される。

 なお、2015年6月には、各都道府県による地域医療構想の策定の取り組みに先立って、「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」(以下、「調査会」)が、2025年の必要病床数の推計結果を115万~119万床程度と公表した。これは、病床の機能分化等をせずに高齢化を織り込んだ場合の152万床程度と比べて、少ない結果であった。この結果は、一部のメディアで、病床の削減目標として取り上げられ、医療関係者を中心に波紋を呼んだ。実際には、あくまで参考値に過ぎない。

4――構想された病床体制と、現状の病床の比較結果

 2017年3月までに、都道府県の地域医療構想が出揃った。これをもとに、病床数を比較してみよう。

1|国全体では、高度急性期・急性期の一部を回復期に振り替え、慢性期病床を減少させる
 各都道府県の報告書をもとに、必要病床数を集計した。高度急性期と急性期が合計で24万床減少、回復期は24万床増加となった。即ち、高度急性期・急性期を、回復期に振り替える内容となっている。慢性期については、7万床の減少となっている。在宅医療等の患者数は、病床数合計の1.5倍となる。介護施設や高齢者住宅を含めて、在宅医療等へのシフトを進めていくことが必要と言える。

図表4. 国全体の病床等の変化
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 なお、上記の集計は、調査会の公表内容とほぼ同じ結果となっている。これは、都道府県が推計の際に、国から提供された「必要病床数等推計ツール」を用いているためであり、当然の結果と言える12

  12 調査会が公表した推計では、療養病床の入院受療率の地域差を縮小させるためのパターンA~Cについて、それぞれ推計値を示している。上記の集計結果は、地域差縮小が一番緩やかに進むパターンCのものと、ほぼ同じ水準となっている。

2|大都市型と過疎地域型で必要病床数と在宅医療等のギャップが大きい
 次に、構想区域を、大都市、地方都市、過疎地域に分けて、それぞれの病床体制を見てみよう。全国342の構想区域を、人口と人口密度により、大都市型、地方都市型、過疎地域型に分類する13

図表5. 構想区域の分類
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 大都市型は、高度急性期、急性期、慢性期の減少よりも、回復期の増加が大きく、全体の病床数は増える。在宅医療等の患者数は、病床数の1.6倍となる。在宅医療等へのシフトが必要と言える。

 地方都市型は、回復期の増加よりも、高度急性期、急性期、慢性期が大きく減少。この結果、全体の病床数も減少。在宅医療等の患者数は、病床数の1.3倍となる。入院患者数の減少が必要と言える。

過疎地域型は、回復期の増加よりも、急性期、慢性期が大きく減少。全体の病床数も減少する。在宅医療等の患者数は、病床数の1.5倍。入院患者数の減少と、在宅医療等へのシフトが必要と言える。
図表6-1. 大都市型の病床等の変化/図表6-2. 地方都市型の病床等の変化/図表6-3. 過疎地域型の病床等の変化

  13 人口100万人以上または人口密度2,000人/km2以上を大都市型、大都市型以外で人口20万人以上または人口密度200人/km2以上を地方都市型、それ以外を過疎地域型とした。なお、人口と面積は、「平成22年 国勢調査」(総務省統計局)による。

5――おわりに (私見)

 病床規制は、構想全体の一面に過ぎない。しかし、従来、病床規制によって、医療の実態(サービスの量や質)が決まってきた経緯もある。特に、この構想では、大都市や過疎地域で、在宅医療等へのシフトが求められることが示唆されている。今後、介護施設や高齢者住宅を含めて、在宅医療の体制づくりを加速させる必要があろう。引き続き、構想実現に向けた取組みに、注目が必要と考えられる。


  1. 2017/04/27(木) 06:11:20|
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