Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

4月4日 

https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0404/jbp_170404_1163417522.html
日本の医療崩壊を救った若き女性医師
JBpress4月4日(火)6時8分

 新専門医制度の議論が急展開しそうだ。3月9日の参院厚生労働委員会で、塩崎恭久厚労大臣は「必要に応じて、地域医療に従事する医師、地方自治体の首長を含めた場で、日本専門医機構に対して、抜本的な対応を求めていきたい」とコメントした。
 厚労省関係者は「(日本専門医機構が拠り所とする)2013年度の専門医の在り方に関する検討会の報告書を上書きするための審議会を設置する方向で調整が進んでいる」と言う。
 彼らが問題視するのは、プロフェ  ッショナル・オートノミーを錦の御旗に、大学教授たちが独善的に医療制度を変更しようとしていることだ。
 彼らの主張は、「すべての医師は専門医になるべきで、そのためには後期研修が必要。研修の場は大学病院が中心になるべきで、専門医の質を統制するため、統一した基準を儲けねばならない」というものだ。

日本の医療界における伏魔殿
 いずれも大学教授たちの「妄想」で、彼らの主張を支持するエビデンスは希薄だ。
 このような統制は、まさにカルテルと言える。自由主義国家である我が国では独禁法など、様々な法律に抵触する可能性が高い。「プロフェッショナル・オートノミー」とは対極の行為だ。
 こんなメチャクチャが通用したのは、大学教授が密室で議論を進めたからだ。日本専門医機構のホームページをご覧になるとお分かりいただけるが、理事の大部分が大学教授か経験者である。議事内容の詳細は一切公開されていない。
 また、財務諸表が公開されていないので、このような組織に誰がカネを出しているかも分からない。こんな組織に、我が国の医療の将来を左右する巨大な権限を与えてはならない。
 新専門医制度の議論を正常化させるために必要なのは、日本専門医機構の幹部に制度の見直しをお願いする「陳情」ではない。情報開示と公での議論だ。最近、そのような動きが出つつある。
 きっかけは、2月に立谷秀清・相馬市長を中心とした医系市長会が、塩崎厚労大臣や菅義偉官房長官に「中・小規模病院が危機に陥る懸念」および「地方創生に逆行する危険と医師偏在を助長」などの意見を伝えたことだ。
 この動きをいくつかのメディアが報じ、全国の市町村長たちも問題を認識し、専門医制度が政治課題となった。
 医療は社会的な営みだ。その中心は住民である。住民を代表するのが首長であり、議会だ。彼らの意向を無視して、医師、特に大学教授だけで決めていい問題ではない。
 ただ、市町村長であれ、大臣であれ、政治家が介入するには世論が必要だ。この世論作りが難しい。
 では、誰が世論を作ったのだろう。私は、南相馬市立総合病院の3年目の研修医である山本佳奈氏の果たした役割が大きいと思う。
 山本医師は滋賀医大を卒業し、今春、南相馬市立総合病院で初期研修を終えた。大学在学中から私どもの研究室で学び、新聞やウェブ媒体に文章を発表した(JBpressの記事はこちら。1、2、3、4、5)。一昨年には『貧血大国・日本』を光文社から出版した。

産科医不足に悩む病院が産科医を拒否
 将来の夢は「女性のための総合医」。そのために貧血も勉強し、3年目以降は南相馬に残り産科研修を希望していた。ところが、彼女の希望は通らなかった。
 南相馬は産科医不足だ。市をあげて産科医の招聘に取り組んでいる。なぜ、山本医師が産科医として採用されなかったのだろうか。彼女の前に立ちはだかったのが新専門医制度と大学医局、さらに彼らの意向を忖度する南相馬市だ。
 新専門医制度では、福島県の産婦人科の基幹施設は福島県立医大だけだ。南相馬市立総合病院は連携施設という位置づけになる。福島県で産婦人科専門医を取得したければ、福島県立医大のプログラムに沿って研修するしかない。
 彼女は、福島県立医大の教授に、「南相馬で産婦人科医として働きながら専門医を取得したい」と相談した。ところが、その回答は「南相馬の市立病院は指導医が1人しかいないから、福島県立医大に所属したとしても派遣されることはない」とつれなかった。
 彼女は悩んだ末、専門医の資格を諦めた。そして、病院幹部に「南相馬で働きたい」と希望を伝えた。
 ところが、しばらく経って、福島医大の医局に属する40代の指導医が「忙しくて指導できない。山本さんは自由時間を求めて、ずっと病院にいないから、ここで研修するのは無理」と言っていることを伝え聞いた。
 私も幹部から直接話を聞いた。そして、呆れ果てた。確かに、この医師は1人医長としてよく働いている。ただ、20代の女性を雇用しない理由として、「ずっと病院にいない」ことを挙げるのは尋常ではない。明白な労基法違反だ。本当の理由は別にあるのだろう。
 実は、南相馬市立総合病院で勤務を希望する産科医は、これまでにもいた。直近では福島医大の幹部が仲介して、県外から医師が来る予定だった。ところが、これも南相馬市立総合病院から断ってしまった。山本医師に対する対応と同じだ。
 ところが、最近になって、福島医大の後期研修医が急遽派遣されることになった。指導医は、今回は「多忙で指導できない」と断らなかったらしい。この指導医は、自分が務める病院よりも医局の方が大切なようだ。
 このような対応は、住民のためにならない。住民の立場に立ち、このような医師の対応に苦言を呈するのは、南相馬市立総合病院の院長、および市長の仕事だろう。ところが、彼らは、その役割を果たさなかった。
 驚いたのは、桜井勝延・南相馬市長の対応だ。

桜井勝延・南相馬市長の不可思議な行動
 院長が指導医と山本医師の間を懸命に取り持とうとしているのを傍目に、3月中旬になって桜井氏は「福島医大を批判する医師は雇用できない(南相馬市関係者)」と院長に伝えたのだ。さらに「雇用するなら誓約書を書かせる(いずれも南相馬市関係者)」と迫った。
 院長は、産婦人科で研修できるか否かはともかく、山本医師に新年度の雇用を約束していた。新年度まで2週間あまりの段階で、雇用関係を破棄するのは「労基法に抵触する可能性が高い(知人の弁護士)」という。
 桜井市長が問題視したのは、山本氏が医師専用のサイト「エムスリー」で「福島医大の産科体制を批判したこと(別の南相馬市関係者)」らしい。
 医師専用サイトを桜井市長が見るはずがなく、誰が彼に情報提供したかは明らかだ。公で議論する研修医に対して、卑怯な手段を弄したことになる。また、医師同士のサイトでの言論を、市長が人事権をひけらかして抑制するなど前代未聞だ。
 実は、桜井市長の対応に「最も怒ったのが、福島医大の竹之下誠一理事長(福島医大関係者)」だ。
 竹之下氏は、桜井市長に電話し、「山本医師を雇用するように迫った(福島医大関係者)」。そして、山本医師や及川友好・南相馬市立総合病院院長に対し、「希望する研修ができるように全面的に支援する」と伝えている。
 この結果、4月から山本医師は、南相馬市立総合病院の嘱託となり、神経内科に勤務する。「将来的には産科をはじめ、女性を診療する科で学びたいと考えています」と話す。
 紆余曲折があったものの、山本医師は何とか後期研修をスタートできた。福島医大の医局員と市長による圧力と戦って、彼女が何とかポジションを確保できたのは、様々な媒体でこの問題を報告してきたからだ。
 「そんなことをすると君のためにならない」と忠告してくれた医師もいたが、多くの人が問題点を理解することになった。南相馬市の地域医療にとって、彼女を追い出すか、迎え入れるか、いずれが良いかは議論の余地がない。先入観なく、話を聞けば、みな、真っ当な判断をする。
 実は、その中の1人が塩崎厚労大臣だ。塩崎氏にとっても、被災地の医療、地域医療は重大関心事だ。南相馬市の産科医療には大きな関心を寄せている。

若き女性医師の意志が厚労大臣動かす
 彼は山本さんの話を聞いて、直接連絡した。そして、面談した。面談の実現には、地元選出の森まさこ議員も尽力した。そして、冒頭の塩崎厚労大臣への発言へと繋がった。
 また、竹之下氏は今春、理事長に昇格した。私もおつき合いがあるが、極めて真っ当な人物だ。彼が理事長となり、これまで批判されることが多かった福島医大は変わるだろう。事実、今回の問題は、彼なしでは解決しなかった。
 塩崎氏であれ、竹之下氏であれ、彼らが問題を知ったのは、山本医師の発信がきっかけだ。山本医師は実に大きな役割を果たした。
 福島の医師不足の緩和には、東京や西日本のような医師の多い地域からの流入が必須だ。ところが、このケースが示すように、時に、医局は部外者を徹底的に排除する。それを地元の市長までが後押しする。
 地方の医療を充実させるために必要なのは、医局の独走を防ぐ仕組みを作ることだ。そのためには、徹底的な情報公開と適切な人事だ。
 今回の件での桜井・南相馬市長の振る舞いは、やがて多くの市民が知ることになるだろう。桜井氏は年内に改選を迎える。彼を評価する際の1つの基準になるだろう。かくのごとく、政治家に対しては住民が評価できる仕組みがある。
 ところが、多くの地方で医局は医師派遣の実権を独占しており、学会は医局を仕切る教授の集まりだ。学会の幹部たちは専門医制度から多くの利益を受ける。彼らが立ち上げたのが日本専門医機構だ。形式的に単なる任意団体だ。
 強大な権限を持つのに、住民はもちろん、政府のチェックも受けない。この組織が独走すれば、我が国の医療は決定的なダメージを受ける。抜本的な見直しが必要である。
筆者:上 昌広



The Mainichi Medical Journal
February 2017, Vol 13. No.1. p38
弁護士が語る医療の法律処方箋
第71回 言論抑圧の背景事情
東千葉メディカルセンターをめぐる医療講演会

井上清成  弁護士:医療法務弁護士グループ代表

1. 東千葉メディカルセンター問題
 この1月15日、東千葉メディカルセンターを心配する会(代表・前嶋靖英氏)の主催で、千葉県東金市にある東金文化会館において、「東千葉メディカルセンターを巡る医療講演会」が開催された。講演者は、小松秀樹医師(元亀田総合病院副院長、元虎の問病院泌尿器科部長)と吉田実貴人公認会計士(いわき市議会議員)の2人。小松医師は東千葉メディカルセンター問題の背景を、吉田公認会計士は東千葉メディカルセンターの病院経営分析を、それぞれ講演した。
 なお、東千葉メディカルセンター問題は、国家公務員・地方公務員がその私的行為によって小松医師に対して言論抑圧を行った背景事情の1つであったとも目されている。言論抑圧の対象となったほどの重大問題だとも評することができようか。

2. 毎年20億円ずつの大赤字
 東千葉メディカルセンターは、人口合計約7万7000人にすぎない東金市と九十九里町とで設立した「地方独立行政法人東金九十九里地域医療センター」として平成26年4月に開院した、3次救急をも行う病床数314床の救急医療・急性期医療などの病院である。千葉大学の医局によって支えられ、奮闘して地域医療に貢献していると評してよい。
 しかし、東千葉メディカルセンターの開設計画には、もともと無理があり、千葉県の大失政の1つに数えられてもよいであろう。問題は、毎年約20億円ずつの大赤字を、平成26年4月の開院以来、出し続けていて、今後も改善する見込みがない。さらに毎年約20億円ずつの赤字が、今後も積み重なっていくであろう。
 現在の累積した実質年間負担額は、3年間で合計約70億9000万円である。平成26年度実質負担は約23億円、平成27年度実質負担はまた約23億3000万円、平成28年度実質負担はさらに増えて約24億6000万円(予想)であり、たつた3年で赤字が70億円を超えてしまった。

3. 公認会計士もびっくり
 東千葉メディカルセンターの決算状況は、毎年、千葉県・東金市・九十九里町からの補助金を入れても、最終損益が10億円以上ずつの赤字となっている。補助金で補った後の決算状況は、平成26年度決算が約15億4000万円マイナス、平成27年度決算が約16億5000万円マイナス、平成28年度決算(予想)が約13億円マイナスで、すでに3年間の累積損失額が約44億9000万円に達してしまった。
 講演者の吉田公認会計士も、財務諸表を見て医業損失の大きさにびっくりした、過去の9市町村による計画が2市町に縮小したにもかかわらず新病院が建設されたことに驚いた、平成29年度以降のバラ色の計画(注・行政がこの度、計画し直して変更したバラ色の第2期中期目標のこと)の根拠が見えない、と驚いていたくらいである。
 確かに、医業損益ベースで赤字が垂れ流しの状態であり、民間病院なら破産しかない。これをこのまま放置しておくと、東金市民や九十九里町民が甚大な回復しえない被害を受けてしまう。東金市や九十九里町の財政破綻だけは、何としても避けなければならない。


東千葉メディカルセンターの経営状況(抜粋)
 1. 決算状況
  平成26年度決算 ▲ 15,4億円 実績 累計額
  平成27年度決算 ▲ 16.5億円 実績 約▲44。9億円
  平成28年度決算 ▲ 13.0億円 予想

 2. 実質年間負担額(東金市+九十九里町)
  平成26年度実質負担 ▲2380億円 実績 累計額
  平成27年度実質負担 ▲23.3億円 実績 約▲70.9億円
  平成28年度実質負担 ▲24.6億円 予想
     (東干葉メディカルセンターを心配する会作成)


4. ゲリマンダーばりの医療圏の区割り変更
 こういった状況に立ち至ると、往々にして過去の責任を追及したくなるものであろう。もちろん、これだけの大赤字になってしまったのだから、過去の計画策定の過程に道義的責任、社会的責任、行政責任が問われがちなのは、やむをえない。ただし、ただちに法的責任につながるわけではなく、今さら責任追及しても詮ないことも多いと思われる。
 しかし、そもそも3次救急に需要がないことは、最初から明らかだったでぁろう。東金市や九十九里町は人口が過疎になっていくトレンドとも言えようし、そもそも千葉市内まで高速道路で20分の場所に3次救急の病院需要はない。しかも、東千葉メディカルセンターのすぐ西側には千葉大があるし、すぐ北東側には旭中央病院があるし、すぐ南側には亀田総合病院もある。ところが、そのような地域に、2次保健医療圏の区割りをゲリマンダーのように作り変えてまで、3次救急医療機関を開設しようとしたのであった。
 余談であるが、選挙区割りを特定の政党や候補者に有利になるように恣意的に作ることをゲリマンダーと言う。昔、米国のゲリー知事がサラマンダー(イモリやサンショウウオのような両生類)のような異様な形の地理的レイアウトの選挙区割りをしたことから、ゲリマンダーとかゲリマンダリングと呼ばれるようになる。
 もともと千葉市を中心とする千葉医療圏の北から東にかけては「印旛山武」医療圏が接していて、そのうちの「印旛」地域には成田赤十字病院などの立派な3次救急医療機関があった。他方、千葉医療圏の南側に位置する「長生夷隅」医療圏には3次救急医療機関が無かったものの、時に「夷隅」の人々は、すぐ南側に接する安房鴨川にある亀田総合病院に特に不便もなく通っていたのである。そうしたところ、3次救急医療機関たる東千葉メディカルセンターを無理してでも作らんがため、「印旛山武」医療圏から「山武」を行院に切り離し、「長生夷隅」医療圏と合併させて、「山武長生夷隅」医療圏という千葉医療圏の北東から南にかけて長々と接する、異様に南北に長い形をしたゲリマンダーのような2次保健医療圏を作り上げた。そして、その上で、「山武長生夷隅医療圏」に3次救急医療機関がない」との政治的キャッチフレーズで、3次救急医療機関たる東千葉メディカルセンターを開設したのである。
 つまり、もともとの成り立ちからして、ゲリマンダーのように、不自然に無理な開設だったと言えよう。

5. 将来の財政破綻は回避を
 すでに述べたように、大切なことは、東金市や九十九里町の財政破綻を避けることである。このまま経営や財務の状況をあいまいにしていたり、臭い物に蓋をしていたりして、東金市民や九十九里町民に被害を与えるようなことがあってはならない。財政破綻が生じて被害が生じないよう、諸々の責任者たちは今後は前向きに対策に取り組むべきであろう。
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旧医療圏と新医療圏 複数のソースよりG3作成


  1. 2017/04/05(水) 06:18:28|
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