Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

3月21日 

https://www.m3.com/news/general/513349?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD170321&dcf_doctor=true&mc.l=212488608&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
国循に117万円賠償命令 副作用のリスク説明不十分
2017年3月21日 (火) 共同通信社

 めまいの症状が出た名古屋市の男性(59)が、この症状の治療法として確立していない抗てんかん剤の投与療法を受け睡眠障害などを負ったとして、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)に約1億6千万円の損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁は17日、約117万円の支払いを命じた。

 朝日貴浩(あさひ・たかひろ)裁判長は、この薬の投与自体は「医師の裁量で行うことが許容される」とする一方、確立した治療法ではない点や精神に及ぼす副作用のリスクなど説明が十分でなく「説明義務違反があった」と判断した。

 判決文によると、男性は2004年4月に同病院を受診。7月から、抗てんかん剤クロナゼパム(商品名ランドセン)の処方を受けた。

 体のだるさや体重減少が出たため、薬の減量をすると、05年8月ごろには睡眠障害や気分の落ち込みが起こった。06月6月、別の病院を受診して「抑うつ神経症」と診断された。

 男性側は「判決の一部は評価するが、医師の裁量を広く認め過ぎており承服し難い」として控訴する方針。病院側は「判決内容を十分に検討し、今後の方針を決めたい」とのコメントを出した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/513285
「美談」ではなく、医学的な検証を -「高野病院を支える会」の活動◆Vol.3
南相馬市立総合病院の尾崎章彦氏、嶋田裕記氏に聞く

2017年3月21日 (火) 高橋直純(m3.com編集部)

 高野英男前院長の死亡に伴う高野病院(福島県広野町)の危機が全国ニュースになった背景には、若手医師らで作られた「高野病院を支援する会」の活動があった。事務局を務める南相馬市立総合病院の尾崎章彦氏(卒後7年目)、嶋田裕記氏(卒後5年目)の二人の医師にこれまでの活動を改めて語っていただいた。

 活動当初は医療界やマスメディアへの広報に尽力し、現在は、東日本大震災直後の「避難しない」という高野病院の判断について検証を進めている。両氏は、「単なる『美談』でなく、医学的な面からも高野院長の業績を伝えていく必要がある」と口をそろえる。(2016年2月26日にインタビュー)。

――支援する会ができた経緯を教えてください。
尾崎氏 2016年12月30日に高野英男前院長がお亡くなりになって、実務的な面での最初の問題はご遺体の検案をどうするか、そして年明け1月3日以降の診療体制でした。検案に関しては、31日の午前中に私が南相馬市立総合病院で行いました。また、午後には広野町の遠藤智町長が関係機関に連絡を取られ、病院、福島県の地域医療課、広野町、南相馬市立総合病院の4団体が集まって相談の場が設けられました。

 このように広野町は早くから高野病院支援に手を挙げてくれましたが、一方で、町として医療機関の運営に携わっていないこともあり、医療機関の支援は未知の領域だったようです。そこで、遠藤智町長から医師でもある相馬市の立谷秀清市長、さらには南相馬市長に支援要請があり、最も動きやすいのは公立病院である南相馬市立総合病院として、当院に白羽の矢が立ったと伺っています。

 高野病院の1月中のシフトを見ると、支援に入らなくてはならない日・時間帯が多くありました。とても私たち(南相馬市立総合病院)だけでは穴を埋めることができない状況だったので、全国から医師の応援をお願いするためにFacebookで告知を始めました。夕方には支援の申し出が寄せられるようになり、受け皿として「高野病院を支援する会」を設立することになりました。

 初期のメンバーは、南相馬市立総合病院の若手医師3人(尾崎、嶋田、山本佳奈氏)と、相馬中央病院の坪倉正治医師の4人です。年末年始に福島にいたこともあり、当初私が代表として会を立ち上げました。1月3日からは、広野町がより本格的に高野病院の支援に乗り出してくださることになりました。その動きの中で、広野町と支援する会で足並みを揃えて活動していけるように遠藤町長が会長に就任し、私は事務局長として会の運営を継続していくことになりました。

――医師のシフトはすぐに埋まったのでしょうか。
嶋田氏 様々な関係者のご協力があり、活動を始めて4日目に当たる1月3日までに1月のシフトはほぼ埋まりました。初期の活動の中で特に大きな助けになったのが、福島県に住むITエンジニア、浜中圭助氏のご尽力です。高野病院に関するFacebookの投稿を見て、1月1日に「何かできることはありませんか?」と連絡をくださり、1月2日の朝までには無償で会の公式ウェブサイトを作ってくださいました。

 このような動きも後押しになり、1月には約30人の医師が実際にボランティアで駆けつけてくれました。メーンは福島県の沿岸部の浜通りの医師でしたが、長野、千葉、神奈川、静岡、福岡などの各県の先生も来てくれました。みなさん、宿泊費も交通費も要らないという条件でした。

 さらに、1月6日にはFacebookの投稿を見た中山祐次郎医師(当時、都立駒込病院病院に勤務)から会のホームページを通じて連絡があり、1月8日に高野理事長との面談を経て、2、3月の臨時院長に就任してくれることが決まりました。中山先生とは直接的な面識はありませんでしたが、我々の友達の友達という間柄でした。

尾崎氏 今回の高野病院の窮状に関して、高野院長不在の穴埋めは資格上、医師職にしかできませんでした。一方で、医師以外の方からも協力をしたいという声が多数寄せられたことから、遠藤町長のもと1月5日にふるさと納税の枠組みを使ったクラウドファンディングを立ち上げることが決まりました。広野町をはじめとした関係者の不眠不休の取り組みの結果、立ち上げからわずか4日後の1月9日から受付が開始されるという驚くべきスピードでした。寄付先は広野町で、目標金額を250万円としましたが、開始から1日以内に目標額を達成しました。結果として2月末の期限までに576人から894万円の寄付をいただきました。

 県や国などの大きな行政組織はどうしても初動が遅くなってしまいます。その部分で私たちがゲリラ的に活動することで、急場の困難な状況の中で、一定のお手伝いをできたのではないかと思っています。

――マスメディアでも多く取り上げられました。
尾崎氏 私は一臨床医ですので、慣れないことばかりで戸惑いも多かったです。しかし、高野病院の窮状を多くの方々に知っていただき、支援の輪を広げて行く必要があると強く感じていました。そのためには、メディアの方々と良い関係を築き、自分たちの考えを繰り返し発信していただくことは非常に重要であると考えていました。

 実際のやりとりにおいては、メールだけでは伝わらないこともありますので、記者さんと名前が分かる関係になってしっかりと伝えることを意識しました。また、一方的にこちらが望むことだけでなく、基本的には知っていることは全部、伝えるということも意識しました。

――高野英男前院長にお会いしたことはありますか。
嶋田氏 実際にお会いしたことはないです。MRICなどで高野病院が大変という状況は聞いて、何か協力しなくてはと思っていましたが、そうしているうちに今回の事態になってしまいました。お疲れになっていたから、今回の事態(火災で死亡)が起きたのかもしれない。勝手な思いかもしれませんが、『申し訳ない』という気持ちもあって、活動に携わっている面もあります。

――応援の診療には行かれたのでしょうか。
嶋田氏 1月6日に入りました。高野病院は大きな家で、患者さんにとって高野先生は家のお父さんであり、先生の人柄に触れて診察を受けるということが、高野病院に入院中の患者さんにとって、とても大事だったのだと感じました。

――お二人は2014年から南相馬市立総合病院で勤務されています。福島県の医療状況はいかがでしょうか。
尾崎氏 浜通りの北部に位置する相双地域(相馬郡と双葉郡)は、福島第一原子力発電所事故で大きな影響を受けたことは知られていますが、それでも私たちがいる相馬郡では南相馬市小高地区、飯舘村以外は残りました。

 一方で、双葉郡は全ての地区が避難対象となりました。約7万人いた人口もほぼ全員が避難し、関係者の懸命の努力で1万人程度まで回復してきたという状況です。6つあった病院は現在も高野病院だけ、診療所も4分の1という状況です。被災地は若い人が出て行ってしまって、残っているのは高齢者ばかりです。もともとは三世代同居だったのが、息子・娘夫婦が避難してしまい、一度入院した高齢者を在宅に帰そうとしても家族でサポートできない。

 そういった状況のしわ寄せもあってか、浜通りの被災地においては、一人当たりの介護費用や介護認定を受ける住民の増加が起こっています。そのような中で、長期療養のための病床を持つ高野病院は、自宅で十分なケアを受けることができない患者も長期的に受け入れ、地域の復興の中で重要な役割を果たしてきたと考えています。

――今後の高野病院、また、支える会の活動についてお考えをお聞かせください。
尾崎氏 日本全体の文脈を考えると、精神科病棟を減らし、療養病床をなくしていこうという流れがあり、診療報酬も減っています。結果として、高野病院のような形態の病院は経営が難しくなり、退場を余儀なくされるケースも増えています。このような大きな潮流の中で、私たちを含め関係者が、理想と現実の間で揺れ動いていることは理解しています。しかし、原発災害の影響を色濃く受けた双葉地域の特殊性は考慮されるべきです。

 また、帰還政策が国策として進んでいる以上、インフラである医療については行政が一定の責任を果たすべきであると考えています。これまでの双葉地域の医療は、高野先生の超人的な活躍に、国や行政がフリーライドしていた状況です。この地域にどのような医療提供体制が必要で、公的機関がどのように関わっていくかを根本的に議論していくことが不可欠です。

嶋田氏 現在、会のメンバーが中心となって、震災直後に患者を避難させなかった高野院長の判断を振り返る論文を作っています。東日本大震災直後に避難を行った高齢寝たきり患者さんたちは、その死亡率が高かったということが知られています。高野病院による「避難しない」という決断が患者さんの転機にどのように影響したかを改めて検証することで、単なる「美談」でなく、医学的な面からも高野院長の業績を伝えていく必要があると考えています。

 また、精神科病棟は震災後の1年間閉鎖していました。精神科患者の身体機能は保たれており、安全に避難できると判断されたからです。しかし、避難した精神科患者の転機についてはこれまで十分に調査されてきませんでした。現在、この点についても検証作業を行っています。

 3月には院長が亡くなった後の高野病院の状況と私たちの主張について英語でまとめた「"Death of the sole doctor at Takano Hospital six years after the Fukushima nuclear crisis - who is responsible for health care delivery in the Fukushima disaster zone?"(東日本大震災から6年後に起こった高野院長の死 - 福島の被災地の医療に責任を持つのは誰なのか?)」という論説が、QJMという英国の医学雑誌に掲載されました。

 高野先生のやってきたことを美談としてだけ受容しても生産的な議論にはならないし、前向きではありません。先生の意志をいかに継承しつつ、継続可能なモデルが作れるかが今後大事になると考えます。



https://www.m3.com/news/general/513382
【福岡】病院統合 公立八女+筑後市立病院で浮上 久留米大が提案、実現不透明
2017年3月21日 (火) 毎日新聞社

 八女、筑後両市の中核的医療機関である公立八女総合病院(300床)と筑後市立病院(233床)の統合案が浮上している。両病院に医師を派遣している久留米大が昨秋、医師不足を理由に両市と広川町に文書で提案した。ただ、両病院の経営環境は大きく異なり、統合が進むかどうかは不透明だ。【中村清雅】

 ◇背景に医師不足

 文書は昨年10月、3市町の首長と議長宛てに出された。久留米大の医局への入局者数が減少していることから「これまで通り各病院へ医師派遣を続けることが困難」とし、両病院を統合して400床以上の基幹病院を新設することを提案している。

 久留米大の内村直尚医学部長によると、3市町は医師会(八女筑後医師会)が同じで、両病院の距離も比較的近いことから、統合案は医療関係者の間では20年以上前からあったという。ただ「これまでは無理をすれば医師を派遣できた」ため表面化することはなかった。しかし2004年に国が導入した新医師臨床研修制度で、研修医が自由に研修先を選べるようになるなどし、医局への入局者は100人以上から40人程度に激減。現場の医療に支障をきたす段階にきたため、文書で行政に提案するに至った。

 現在、公立八女には47人、筑後市立には35人の常勤医がいるが、どちらも久留米大からの派遣が大半。公立八女で12年から4年間、呼吸器科の常勤医が不在になるなど既に支障は出てきており、統合の検討は避けて通れないという。

 ◇両市長は慎重姿勢

 一方、両病院の経営状態は大きく異なる。八女市と広川町でつくる一部事務組合の企業団が経営する公立八女は11年度から赤字経営(15年度は8億1000万円の赤字)が続いている上、老朽化による施設の改修時期を迎えている。これに対し、筑後市立は11年度に地方独立行政法人になって以降黒字経営が続き、14年には約12億円かけてヘリポートなど大規模な施設整備をしたばかりだ。

 統合案は両市議会の3月定例会一般質問でも取り上げられた。筑後市の中村征一市長は「(統合は)公立八女総合病院の都合という気もする」と述べ「企業団が統合の方向を出してきたら筑後市としての対応を決めていくが、かなり先の話だ」と述べた。八女市の三田村統之市長は「統合案は真摯(しんし)に受け止める」としたが「現時点で私の見解を述べることは差し控えたい」と明確な姿勢を示さなかった。

 久留米大側も両病院の事情は把握している。内村部長は「最低限、統合について協議する場を設けてほしい」と呼び掛けつつ「地元住民の理解が前提。10年程度のスパンが必要になる」と話し、長期的に取り組んでいく方針だ。

〔筑後版〕



https://www.m3.com/news/general/513268
精神科の隔離1万人突破 14年度、拘束も最多更新 厚労省、実態調査へ
2017年3月21日 (火) 共同通信社

 精神科病院で手足をベッドにくくりつけるなどの身体拘束や、施錠された保護室への隔離を受けた入院患者が2014年度にいずれも過去最多を更新したことが、厚生労働省の集計で分かった。隔離は調査が始まった1998年度以来、初めて1万人を突破した。

 精神保健福祉法では、患者が自らを傷つける恐れがある場合などに指定医が必要と判断すると、拘束や隔離が認められているが、人権侵害を懸念する声も上がっている。激しい症状を示す場合がある入院3カ月未満の患者の増加が背景にあるとの指摘もあり、厚労省は定例調査の質問項目を増やして、より詳細な実態把握に努める。

 14年度の保護室への隔離は1万94人で、前年度に比べ211人増えた。都道府県別では東京が683人と最も多く、大阪が652人と続いた。

 拘束は453人増の1万682人。最多は北海道の1067人、次いで東京の1035人だった。調査項目に拘束の状況が加わった03年度以降、増加の一途をたどっている。

 厚労省は毎年度、精神科病院の6月末時点の状況を聞き、14年度は1599カ所について入院患者数や病床数などを調べた。入院患者全体は減少傾向で、14年度は前年度比7030人減の29万406人だった。

 厚労省は今後の調査で、患者の年齢や疾患の内容なども聞いて、隔離や拘束が増えている要因を分析したい考えだ。

 ※身体拘束と隔離

 精神科病院の入院患者に対する行動制限で、医師がやむを得ないと判断した場合に行う。厚生労働省は、患者の人権に配慮しながら、症状に応じて最も制限の少ない方法で実施する必要があると病院に求めている。身体拘束や隔離をされた人数はいずれも増加傾向で、拘束は2014年度までの10年間で約2倍になった。拘束や隔離をしている理由が分かる実態調査は、近年実施されていない。



http://www.yomiuri.co.jp/national/20170320-OYT1T50003.html
山梨唯一「無医村」に診療所…東京から医師移住
2017年03月21日 18時25分 読売新聞

 山梨県内唯一の「無医村」の鳴沢村に今年10月、診療所が開設されることになった。

 東京都江戸川区の医師、稲垣智也さん(41)が村の求めに応じて移住を決めて開業するもので、19日は診療所の建設工事の無事を祈る地鎮祭が行われ、稲垣さんや村関係者らが参加した。稲垣さんは「地域のかかりつけ医として、病気やけがだけでなく、気軽に健康相談に来てもらえるような診療所にしたい」と話している。

 鳴沢村には、一般住民の誰でも利用できる病院や診療所が長年なく、村民は富士河口湖町の病院などに通っていた。

 村が2015年11月に村民を対象に行ったアンケート調査では、「近くに病院や診療所がないことが不安」という回答が最も多かった。これを受け、村が昨年7~8月、村内に診療所を開業する医師を募集し、稲垣さんが応じた。

 稲垣さんは東京都出身。山梨医科大卒で、妻は鳴沢村出身という縁が応募の決め手となった。村に移住し、診療所に併設する住宅で暮らす。

 診療所は、村立鳴沢小学校に近い国道139号沿いに建設される。内科を中心に外来患者の診療を行うほか、診療所に通えない高齢者のための在宅医療にも力を入れるという。村は土地や建物、医療機器の取得費として、総額6000万円を上限に補助金を交付する。

 小林優村長は「村内に診療所が出来るのは長年の悲願だった。村民が安心して暮らせる街づくりに貢献してほしい」と診療所の開設に期待している。



http://www.medwatch.jp/?p=12857
必要な標準治療を集中的に学ぶため、初の基本領域での研修は「プログラム制」が原則―日本専門医機構
2017年3月21日 | 医療・介護行政全般 MEDWATCH

 新たな専門医について、内科や外科などの基本領域では「プログラム制」による養成を原則とするが、地域枠であるなど特別の事情がある場合には、教育レベル保持を条件として「カリキュラム制」による養成も可能とする。現時点で年間350名以上の専攻医を受け入れている ▼内科 ▼小児科 ▼精神科 ▼外科 ▼整形外科 ▼産婦人科 ▼麻酔科 ▼救急科― では都道府県に複数の基幹施設を置くこととする―。

 日本専門医機構の理事会は17日、こういった内容の「専門医制度新整備指針運用細則」を承認しました(関連記事はこちら)。23日開催予定の社員総会に諮られます。

 また運用細則では、専攻医の都市部集中を避けるために、▼東京 ▼神奈川 ▼愛知 ▼大阪 ▼福岡― の5都府県では、「過去5年の専攻医採用実績の平均値」を採用上限とする点も明記しています。

 なお、機構の吉村博邦理事長(地域医療振興協会顧問、北里大学名誉教授)は、「新専門医制度に対して誤解した批判も出ている」とし、専門医制度の成り立ちから現在に至るまでを詳細に解説。その上で、新専門医制度は ▼医師の質を担保する ▼患者に信頼され、受診の良い指針になる ▼医師偏在を悪化させない―などといった基本理念をきちんと理解してほしいと要望しています。


ここがポイント!
1 プログラム制による研修、専攻医にも地域医療確保にも好ましい
2 内科、外科など専攻医の多い基本領域では、都道府県に複数の基幹施設を設置
3 東京や大阪など大都市では、専攻医採用数の上限を設定
4 指導医のいない施設、基幹施設などとテレビ会議で随時指導を受けられる体制が必要

プログラム制による研修、専攻医にも地域医療確保にも好ましい

 機構では、新専門医制度の、いわば憲法に当たる「新整備指針」を昨年(2016年)12月に制定(関連記事はこちらとこちら)。今般、この指針をかみ砕いた「運用細則」を了承しています。今後、正式決定(23日の社員総会予定)を待ち、各基本領域学会で研修プログラム作成の拠り所となる「整備基準」を制定することになります。

 上記規定から並べると、「新整備指針」→「運用細則」「補足説明」→「整備基準」(各基本領域学会で作成)→「研修プログラム」(各研修施設群が作成)というイメージです。

 ここで改めて、新専門医制度の大枠を振り返っておくと、基本領域(内科や外科など19領域)の研修を3年程度受けた後に、機構・学会から「専門医の資質を満たしている」との認定を受けられれば、「基本領域 内科専門医」「基本領域 外科専門医」などと広告することが可能になります。さらに、細分化したサブスペシャルティ領域(消化器科や循環器かなど29領域)の研修を受ければ、「消化器病専門医」「循環器病専門医」などを併せて広告することも可能です。内科など、領域によっては基本領域とサブスペシャルティ領域が並走するケースもあります。

 今般の運用細則では、「1つ目の基本領域について、原則として研修プログラム制による研修とする」ことが明確にされました。プログラム制とは、年次ごとに定められた研修プログラムに則って研修を行う仕組みで、基幹施設と連携施設で研修施設群を作り循環型の研修を行います。機構の山下英俊副理事長(山形大学医学部長)は、「医師は生涯勉強を続けなければならず、とくに最初に標準的治療をすべて学ぶことが重要となる。このために基幹病院を中心に、連携施設にローテ―としてもらうことが、研修医にとって好ましく、地域医療の確保においても望ましい」とプログラム制の利点を強調します。

 ただし、自治医科大学出身者や地域枠出身の医師は、勤務場所や気管に一定の制限があります。こうした医師にプログラム制を適用することは酷なため、運用細則では▼卒後に義務年限を有する医大卒業生で必要と考えられる▼地域医療の資することが明らかである(地域枠など)▼出産、育児、留学など相当の合理的理由がある―場合には、「教育レベルの保持」を条件に、カリキュラム制(カリキュラム基準を充足した時点で、専門医資格取得を可能とする仕組み。何年かかってもよい)の採用も可能とされました。

 また、サブスペシャルティ領域ではプログラム制・カリキュラム制のいずれの研修体制とすることもできます。さらに運用細則では、サブスペシャルティ領域の制度設計については、基本領域学会とサブスペシャルティ領域の学会が合同で構築していく方向も明示しています。

内科、外科など専攻医の多い基本領域では、都道府県に複数の基幹施設を設置

 新専門医制度については、「地域・診療科における医師偏在を助長してしまう」との強い批判があり、これを防止するための仕組みとするために「1年間の延期」となっていました(関連記事はこちらとこちら)。

 新整備指針では、この点に配慮するために次の2点を明確にしており、今般の運用細則でさらなる詳細が明らかにされました。

(1)基幹施設に大学病院以外の医療機関も認定される水準とする

(2)都市部に基幹施設がある研修プログラムの定員を設ける

 (1)については、従前から「基幹施設の基準が厳しく、実質的に大学病院だけとなっている。そのため地域の病院から大学病院に医師が移ってしまい、地域医療崩壊を助長する」との批判がありました。

 今般の運用細則では、この批判も踏まえて ▼基幹施設の基準は、基本料領域学会が機構と協議し、教育レベル維持の観点から策定する ▼専攻医採用実績が過去5年平均で350名以上の領域(現在は ▽内科 ▽小児科 ▽精神科 ▽外科 ▽整形外科 ▽産婦人科 ▽麻酔科 ▽救急科)では、都道府県ごとに複数の基幹施設を置くことを原則とする―ことを明確にしています。もっとも山下副理事長は、「人口の少ない都道府県では、必ず複数の基幹施設が必要とすると研修ができなくなってしまう。柔軟に対応する」とコメントしています。

東京や大阪など大都市では、専攻医採用数の上限を設定

 (2)の定員については、▼東京 ▼神奈川 ▼愛知 ▼大阪 ▼福岡― の5都府県において「過去5年の専攻医採用実績の平均値」を採用上限とする原則が示されました。これらの地域では、初期臨床研修を終え、専ら専攻医となる「医籍登録後3-5年の医師の全国数に対する割合が5%以上」「大学医学部が4施設以上ある」との特徴があります。これらの地域で採用上限を設けることで、地方にも専攻医が目を向けることが期待されます。

 もっとも、▽外科▽産婦人科▽病理▽臨床検査―の基本領域では、医師数が減少していることから、上記の採用上限は適用されません。また運用細則では、「当面の間、毎年、定数を機構の基本問題検討委員会で見直す」ことを明確にしています。

指導医のいない施設、基幹施設などとテレビ会議で随時指導を受けられる体制が必要

 ところで最初に述べたように、基本領域では、基幹施設と連携施設(全体で連携施設群)をローテ―トするプログラム制による研修が原則となります。

 教育レベルを維持するために、いずれの施設にも「指導医」が在籍していなければいけません(原則として指導医1人につき専攻医3名まで)。しかし新整備指針では「地域医療に必要な施設だが、上記の指導医を置くことができない場合には、指導医が不在であっても関連施設となることを例外的に認める」旨の規定が設けられました。この点について運用細則では、「専攻医がテレビカンファランスシステムの利用などにより、『随時、基幹施設・連携施設の指導医から適切な指導を受けられる』体制が構築されている」旨の基準を明確にしています。

 また連携施設群を形成する地理的範囲について、新整備指針は「都道府県をまたがる」ことも可能としていました。この点、運用細則では、「隣接した都道府県である」ことが原則とした上で、「地域医療を支えるためなど十分な根拠を示す」ことを条件に遠方病院との連携も可能とする基準を明らかにしています。
 
 なお、これまで新専門医制度については「1つの基本領域で研修を受け、その上にサブスペシャルティ領域の研修を重ねる」とのイメージがありましたが、新整備指針は「2つの基本領域の専門医を取得する『ダブルボード』も可能」である旨を明確化。ただし、運用細則では、 ▼初期臨床研修後ただちに開始する研修は、原則として研修プログラム制とする ▼ダブルボードは研修プログラム制、研修カリキュラム制いずれでも選択できるが、専門医のレベルが均等となるようにする―との注意をしています。

  

https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/55290/Default.aspx
臨床研究法案 衆院厚労委全会一致で可決 臨床研究不正受け透明性確保へ
2017/03/21 03:52 ミクスONLINE

衆院厚生労働委員会は3月17日、臨床研究法案について審議し、与野党全会一致で可決した。採決に際し、与野党で付帯決議も可決された。今週中にも衆院本会議で採決後、参院へ送付され、今国会中に成立する見通し。同法案は、昨年5月に閣議決定され、国会に提出されていたが、審議が遅れていた。法案では、製薬企業が資金提供する臨床研究や未承認・適応外薬を対象とした臨床研究を特定研究と位置付け、カルテとデータを照合するモニタリングや利益相反管理の遵守を義務付ける。法整備は、ARB・ディオバンの臨床研究不正をはじめ、製薬企業による不透明な多額の資金提供が明るみになったことを踏まえて進められてきた。法制化により、透明性を確保することで臨床研究の不正に歯止めをかけ、製薬企業と研究者、臨床研究との適正性を確保することが期待される。

法案では、医薬品医療機器等法(薬機法)で定められた未承認・適応外の医薬品、製薬企業等から資金提供を受けて実施される当該製薬企業等の医薬品についての臨床研究を「特定臨床研究」と規定。モニタリング・監査の実施や、利益相反の管理など実施基準の遵守、記録の保存に加え、厚生労働大臣の認定を受けた「認定臨床研究審査委員会」による審査を求めた。

実施基準に違反した場合には、厚生労働大臣が改善命令を行い、従わない場合には臨床研究の中止命令、懲役3年以下、罰金300万円以下の罰則も設ける。

一方、製薬企業に対しては、自社製品の臨床研究への資金提供の契約締結義務化に加え、医師などへの資金提供について、毎年度の公表を義務付ける。違反した場合は、厚生労働大臣が勧告を行い、勧告に従わない場合には企業名の公表を行う。



https://ehime-np.co.jp/article/news201703211897
医療の現場に密着
高校生一日病院体験

2017年3月21日(火)(愛媛新聞)

 医療の仕事に関心のある高校生が病院職員らと触れ合い知識を深める一日病院体験が21日、松山市来住町の愛媛生協病院であり、県内の生徒43人が職種別の職場体験などを通じて現場の仕事を体感した。
 将来の進路選択に役立ててもらおうと同病院が毎年開催。生徒は医師や看護師、薬剤師など8職種の中から希望する職場で学んだほか、自動体外式除細動器(AED)を使った救命や車いすなども体験した。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t280/201703/550628.html
シリーズ◎2018診療・介護報酬同時改定
在宅医療の普及に向けた重点分野を了承
厚労省の在宅医療会議、関係団体を集約した全国組織を求める声も

2017/3/21 土田絢子=日経ヘルスケア

 厚生労働省の全国在宅医療会議は3月15日、在宅医療の普及に向けた重点分野として、(1)在宅医療に関する医療連携、普及啓発モデルの蓄積、(2)在宅医療に関するエビデンスの蓄積――の2項目を了承した。これらに関連して、在宅医療に関わる各団体が現時点での具体的な取り組み内容を報告した。

 今回了承された重点分野のうち「(1)在宅医療に関する医療連携、普及啓発モデルの蓄積」では、在宅医療の提供体制を着実に整備するため、自治体や関係団体による体制構築に資するような、医療機関間の連携モデルやプロセス等の整理・収集を今後促進する考え。また、地域の普及啓発に関する取り組み事例も収集する。

 「(2)在宅医療に関するエビデンスの蓄積」では、国民が主体的に在宅医療を選択できるよう、客観的なデータに基づくエビデンスの蓄積を積極的に進めていく方針。例えば、以下のような研究が対象となる。
(i)疾病の進行や治療など、患者がたどるプロセス等に関する研究
(ii)在宅医療に適した患者の状態、環境条件などに関する研究
(iii)在宅医療サービスの有効性、手法の標準化に関する研究

 一方、同日の会合では在宅医療に関する27の団体や学会などが重点分野に関連する取り組みを報告した。これに対して構成員の武久洋三氏(日本慢性期医療協会会長)は、「よく似た団体が数多くあり、取り組む内容も似ている。これでは国民がどこに相談したらよいか迷うのではないか。全国的な組織である医師会に所属すれば国民も分かりやすくなる」と提案した。

 これを受けて鈴木邦彦氏(日本医師会常任理事)も、「多数の組織がバラバラに動いたら現場がどうなるのかと懸念する。医師会は全国津々浦々で組織している。ぜひ日医のもとで活動してほしい」と述べた。

 同会議座長の大島伸一氏(国立長寿医療研究センター名誉総長)も、「2025年まで時間が足りない。それまでにきちんとしたシステムやエビデンスを構築しなければならない。ある程度集約的に動かないといけないのではないか」と同調した。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t280/201703/550627.html
シリーズ◎2018診療・介護報酬同時改定
一般病棟入院基本料、看護配置以外の評価が争点
中医協総会、患者の状態などを考慮した評価のあり方を議論

2017/3/21 土田絢子=日経ヘルスケア

 厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は3月15日の総会で、2018年度診療報酬改定に向けて一般病棟における入院基本料の評価のあり方について議論した。現行では看護配置中心の評価になっているとし、患者の状態や医療提供体制も考慮した評価のあり方について厚労省が課題を提示し、委員からは賛否両論の意見があった。一般病棟入院基本料の構造の見直しは大きな影響があり、次期改定でどの程度盛り込まれるかは不明だが、今後の議論が注目される。

 同日の総会で同省は、一般病棟全体のデータに加えて、看護配置7対1と10対1の違いに特に着目したデータを提示。それによると、区分別の病床数は7対1が最多(図1)。入院患者の疾患割合は、7対1では「新生物」(癌)の割合が高く、10対1~15対1では「損傷、中毒およびその他の外因の影響」といった救急医療に関連した項目が多くを占めた(図2)。入院患者の年齢構成は、7対1では75歳以上の患者割合が41.5%と最も少なく、10対1では51.1%、13対では61.1%、15対1では66.4%だった。

図1●一般病棟の区分別病床数 第347回中医協総会資料より (図 略)


図2●一般病棟区分別の患者の疾患割合 第347回中医協総会資料より (図 略)

 一方、いずれの区分の病棟でも必要とされる看護職員数より多く看護職員を配置しており、7対1と10対1では約95%の病棟で看護職員以外の職員を配置していた。7対1といった看護配置の区分にどの程度意味があるのか疑問が投げかけられた形だ。1日当たりの平均レセプト請求点数については、7対1を筆頭に10対1、13対1、15対1の順に低くなっていた(図3)。

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図3●一般病棟区分別、1日当たり平均レセプト請求点数 第347回中医協総会資料

 また7対1と10対1の違いに着目したデータによると、重症度、医療・看護必要度(旧基準)と平均在院日数の分布、看護職員配置当たり病床数の分布は、ともにかなりバラついていた(図4、5)。10対1届け出医療機関の中にも7対1届け出医療機関相当のデータを示す医療機関が存在すると考えられた。

 これらのデータを踏まえて厚労省は、「一般病棟入院基本料は主に看護配置の要件で段階的に評価されており、患者の状態や診療の効率性等の要素も考慮する必要があるのではないか」と課題を提起した。ただし、この点についてはさらに詳細な分析を要するとした。

 これに対して支払い側委員の幸野庄司氏(健康保険組合連合会理事)は、「これから相当高齢化が進む中、7対1病床数はやはり多過ぎる。7対1と10対1(の医療機能)には重複部分があり、看護必要度の25%という基準やABC項目といった要件が妥当だったのか検証が必要。医療提供内容を見る指標も必要ではないか」と意見を述べた。また、7対1では若年層の診療割合が高いが、この層は今後人口が減少していくため「7対1を維持し続けることで病院収益が悪化することも考えられる」と懸念を示した。

 診療側委員の中川俊男氏(日本医師会副会長)は、「『7対1』を維持するかは個々の病院が決め、地域医療構想で自主的に動くはず。看護必要度を変えるのは大反対だ。病院は過去2回の看護必要度の改定で混乱し、ようやく落ち着いてきたばかり。さらに次期改定でも看護必要度を見直せば地域医療が混乱する」と指摘した。

 そのほか万代恭嗣氏(日本病院会常任理事)は「7対1と10対1の違いを検討するのであれば、それぞれの患者の状態を詳細に見なければ分からない。効率性を評価する際は、一定の幅を持ったものにしないと患者に優しい医療を提供できない」と述べた。

図4●7対1・10対1病棟でみた重症度、医療・看護必要度と平均在院日数の分布 第347回中医協資料より。病院ごとに平均して算出 (図 略)


図5●7対1、10対1病棟でみた重症度、医療・看護必要度と看護職員配置当たり病床数の分布 第347回中医協総会資料より。病院ごとに平均して算出 (図 略)



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49484
死のスパイラルに陥る「トランプケア」
最大の敗者はトランプ大統領に投票した高齢の白人有権者

2017.3.21(火) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年3月16日付)

 大統領は選挙を詩で戦い、政治を散文で執り行う、という言葉がある。ドナルド・トランプ氏の場合、選挙期間中の売り口上はとても詩的とは言えなかった。しかし、分かりやすかった。トランプ氏は強い意志の力で米国を再び偉大にするという。そして、そこにはオバマケア(医療保険制度改革法)をご破算にし、もっと安くて質が高いうえ、すべての米国人をカバーする制度に置き換えるという提案も盛り込まれていた。

 ところが、実際に打ち出された「トランプケア」には、ほぼ正反対の効果があることが明らかになっている。実にお粗末なこの法案で判断する限り、トランプ氏は散文どころか、回りくどくて分かりにくい駄文で政治を執り行っている。

 この法案は、連邦議会で否決されて、トランプ氏にとって政治的な災難になるか、あるいは、可決されて大惨事になるだろう。

 皮肉なことに、トランプ氏はすでにそれを承知しているようだ。生涯、いろいろなものに自分にちなんだ名前を付けてきた同氏だが、この医療保険制度改革法案にだけは自分の名前を付けたくない意向をはっきり示してきた。トランプケアだけは勘弁してほしい、ということだ。だが、この法案にはこの名前がぴったりだ。トランプブランドの政治をまさに体現しているからだ。

 法案の最も重要なポイントは、バラク・オバマ前大統領にちなんだ通称がある法律を無効にすることにある。オバマケアの実際の中身に対する反対意見は、これを新しい法律と置き換えたいという願望の形成にはほとんど関係していない。

 実際、オバマ氏が成立させた医療費負担適正化法(ACA)は、右派のヘリテージ財団が「ヒラリーケア(ビル・クリントン大統領の時に夫人のヒラリー氏が作成したが、成立には至らなかった医療保険法案)」の対案として1990年代に策定した市場本位の法案にかなり多くを負っている。オバマケアはまた、共和党の大統領候補だったミット・ロムニー氏がマサチューセッツ州知事時代に成立させた法案よりも、若干右寄りだった。

 このように、オバマケアは保守派の考えをすでに利用していることから、共和党が現実味のある対案の策定に苦労してきたのは不思議なことではない。だが、オバマケアは雇用を破壊し米国経済を乗っ取る社会主義だと過去7年間形容してきた以上、何もしないわけにもいかなかった。ハッタリはもう通用しない。


 新たに打ち出された医療保険制度改革法案にある2つ目のトランプ的な要素は、富める者に富を再配分する効果があることだ。この法案は、米国の所得最上位2%の税負担を今後10年間で8850億ドル軽くする一方、最も貧しい階層のための支出をほぼ同額削減する内容になっている。その結果、超党派の議会予算局(CBO)によれば、医療保険に加入している米国民の数は2026年までに2400万人減るという。

 医療保険を失うこれらの人々には、トランプ氏に投票した高齢で白人の米国人が不釣り合いに高い割合で含まれることになる。これもまた、トランプ氏の典型的なおとり広告だ。公約したことと、実際にやることが大幅に異なっている。エリートは減税を享受し、貧者は保護を受けられなくなるのだ。

 トランプ氏の法案にはもう1つ、思慮の欠如という特徴がある。イスラム圏6カ国の国民に対するビザ(査証)の新規発行停止という「イスラム禁止」と同様に、あるいは中国問題や北大西洋条約機構(NATO)問題などで見せた180度の方針転換と同じように、トランプ氏は明らかに、法案の中身を把握できていなかった。

 政策は、トランプ氏自身だった。細かいことは後からやる、という具合だ。しかし、その詳細が明らかになった今、この思慮のなさは目に余る。トランプケアは医療保険制度とはほとんど関係がなく、もっぱら財政の再配分と関係している。あまりにもひどい内容であるために、この法案には米国の医療関係のロビイスト(医師、保険会社、年金生活者、病院などのためにロビー活動をする人々)がほぼ全員反対している。

 共和党の大統領にとって、企業が一致団結して自分の計画に反対するよう仕向けるというのは、簡単にできることではない。経営者たちは、何千万人もの人々を保険の傘から追い出せば、そのツケが納税者と雇用主に回ってくると分かっているのだ。

 確かに、オバマケアには深刻な問題点がいくつかある。オバマ氏はオバマケアの法案に、不法行為法改革を盛り込んでおくべきだった。そうすれば、医師が負う賠償責任に上限を設けることができただろう。


 また、保険加入を拒む人へのペナルティーをもっと厳しく設定するべきだった。そうすれば比較的健康な人が加入することでリスクプールが拡大し、保険料も低くできるからだ。さらに、州の境を超えて保険を購入できるように全米をカバーする取引所を創設しておくべきだった。

 しかし、現在の制度を改善することは、トランプ氏の法案が目指すところではない。自分たちは道ばたに取り残されつつあるのだとトランプ氏の支持者たちが理解すれば、世論調査の数字は悪化することになるだろう。すでに、大統領の支持率は40%を下回っている。

 オバマ氏は、大統領就任後の18カ月間のほとんどを医療保険制度改革に費やした。これについては、政治資本を無駄遣いしているとの見方が少なくなかった。だが、この法律のおかげで2000万人が医療保険に加入することができ、米国は国民皆保険に一歩近づくことになった。米国の医療費インフレの進行ペースも鈍った。

 その反動で、最初の中間選挙では民主党が連邦議会の主導権を失うことになった。皮肉なのは、トランプ氏がオバマケアを廃止すると、来年の中間選挙で共和党が議会の主導権を失う可能性が出てくるということだ。

 トランプ氏は今、2つある災難の片方に直面している。比較的悪くないのは、共和党が法案を否決するという災難の方だ。共和党にとっては、こちらの方が自分たちの利益にかなうだろう。トランプケアでは、米国を再び偉大にするどころか、米国の最悪の特徴がさらに悪化することになる。

By Edward Luce
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http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/massie/201703/550636.html
コラム: 池田正行の「氾濫する思考停止のワナ」
臨床研究法が臨床研究を撲滅する

池田 正行
2017/3/22 日経メディカル「

 今国会で成立予定の臨床研究法案の第一条は、臨床研究の推進を謳っていますが、実際には逆の効果が予想されます。なぜならこの法案は、最高で3年以下の懲役、300万円以下の罰金、またはその両方が課せられるとした刑事罰規定が設けているからです。

生物統計家の立ち去り型サボタージュ
 臨床研究法が生物統計家の立ち去り型サボタージュを招き臨床研究を撲滅する。それがドラッカーの言うところの「既に起こった未来」であることは、この法案が生まれるきっかけとなったディオバン事件裁判の被告人が誰だったかを考えれば自明です。臨床研究を手伝っただけで刑務所に送られるならば、誰が協力するものですか。

 白橋伸雄氏の無実は認められましたが、それはあくまで裁判所が、公訴事実とされた当該論文は薬機法(旧薬事法)の言うところの誇大広告には該当しないと判断したからであって、臨床研究法では明らかに有罪となります。なぜなら同法で罰則規定の対象となっているデータ改竄はこの裁判でも認定されたからです。

 ディオバン事件裁判は、来たるべき新法の効果を検証する絶好のパイロットケースでした。今後とも厚労省と東京地検特捜部による緊密な連携の下、GCPなど一切関係なく、関係医師から任意で事情聴取を行い、生物統計家によるデータ改竄を認定するだけで、有罪率99.9%は間違いなし。さらにその研究を主導した医師に検察側証人としてご登場願えれば、その確率は100%を超える(?)かも。

 刑事罰により臨床研究を推進するという倒錯したコンセプトに基づく法案に対し、ディオバン事件裁判の判決に一見失望しているように見える報道各社が大きな声援を送っているのもこのためです(関連記事1、関連記事2)。医師法第21条と業務上過失致死傷罪(業過罪)のコンビネーションで医療者を吊し上げ、立ち去り型サボタージュによる医療崩壊を招いた「悪夢よもう一度」というわけです。しかし臨床研究法下で本当に生物統計家の立ち去り型サボタージュが起きるのでしょうか?そこで白橋氏が医師や報道から受けた仕打ちを振り返ってみることにします。

臨床研究法下での生物統計家の運命
 業過罪により末端の医療者を吊し上げる裁判の場合、たとえ公訴事実には争いがない場合でも、被告人を弁護する医師はいました。一方、ディオバン事件は、誇大広告という公訴事実が存在しない冤罪でした。その裁判に登場したのは、ノバルティスから資金を提供され、白橋氏の支援を受けてKyoto Heart Study (KHS)を主導した医師達でした。彼らは白橋氏を弁護するどころか、検察側証人として白橋氏を刑務所に送ろうしました。

 病院幹部により「患者殺し」の汚名を着せられた佐藤一樹氏は、心臓血管外科医としてのキャリアを台無しにされました。それでも佐藤氏は10年かけて東京女子医大から「衷心からの謝罪」を引き出しましたが、それも佐藤氏を応援した医師がいたからこそでしょう。

 一方、KHSを主導しながらも検察側証人台に立って白橋氏を刑務所に送って口封じしようとした医師達は、決して白橋氏に謝罪しないでしょう。せっかく検察側証人という免罪符を研究者としての良心と引き替えたのですから。それにいまさら色褪せた免罪符を放棄して、良心を取り戻したと宣言しても誰も信用してくれません。

 2013年初頭から始まった報道合戦の標的とされた白橋氏は、1年半にわたり追い回され、仕事も私生活も滅茶苦茶にされた挙げ句、2014年6月に逮捕され1年半にわたって勾留されました。その後無実が認められ、「白橋被告」から「白橋さん」との呼び名を取り戻すまで、さらに1年余を要しました。報道による私刑が計4年以上にわたったのです。

 報道記者は、逮捕・勾留されだけで推定無罪ならぬ確定有罪扱いします。ましてや起訴され、公判で被告席に立てば真犯人も同然の扱いを受けます。白橋氏の場合も例外ではありません。その証拠に、白橋氏の無実を喜ぶ報道はただの一つも認められません。ましてや白橋氏に謝罪する記者などいるわけがありません。もし今後も報道による私刑が続き、「研究不正に手を染めながら、裁判官を騙して仮初めの無実をむしり取った狡猾な知能犯」とのラベルが白橋氏について回るのならば、彼に生物統計家として身を立てていく道はありません。

誇大広告も研究不正もなくならない
 「薬害」裁判に対する私の当事者意識は、4年間にわたる厚労省医薬品医療機器審査センター(PMDEC、後のPMDA)での新薬審査で醸成されました。イレッサ訴訟が始まったのは2004年でしたが、私が入省した2003年7月にはすでにPMDECの一角に、将来の国家賠償訴訟に備えて山積みの資料が置かれていました。

 少なくとも私の在籍当時、血友病HIV病裁判で業過罪に問われた松村明仁氏(事件当時厚生省生物製剤課長 2008年3月有罪確定)の運命を知らないPMDEC/PMDA職員はいませんでした。そこには常に「自分達が審査に携わった新薬の副作用でいつ何時訴えられるかもしれない」という緊張感がありました。国が行う新薬審査でさえもそうしたリスクを覚悟せねばならないのです。ましてや裁判に対して一切無防備な臨床研究をや。

 どんな臨床研究でもデータ管理は決して完全ではありません。言い掛かりをつけようと思えばいくらでもつけられる。それは生物統計家が一番良く知っています。刑務所送りを覚悟しながら臨床研究を支援するほど、彼らはお人好しでも間抜けでもありません。こぞって臨床研究から立ち去り、治験に専念するでしょう。では、そうして日本の臨床研究が撲滅されれば、誇大広告も研究不正もなくなるでしょうか?

 とんでもない。ディオバン事件であれほどのお祭り騒ぎを繰り返しても海外の黒幕には指一本触れられなかったことを忘れてはなりません。日本の臨床研究が撲滅された後は、FDAとNEJMが共謀してでっち上げたセレブ誇大広告が、セイタカアワダチソウやアメリカザリガニ顔負けに跳梁跋扈する世の中になるだけです。


  1. 2017/03/22(水) 04:50:21|
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