Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

2月12日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/501681
シリーズ: 総合診療専門医はなぜ必要か?2学会幹部スペシャル座談会
「大学以外で働く9割の医師」養成の義務◆Vol.5
“2023年問題”も総合診療の追い風に

2017年2月13日 (月) 司会・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

【前野】 大学の話が出たので、私がいつも話していることをご紹介します。以前調べたことがあるのですが、40歳以上の医師の約9割は、大学病院以外で仕事をしています。でも、医師は100%、学生時代は大学にいたのです、当たり前が(笑)。ですから、医学部の教員は、大学病院以外で働く9割の医師を育てる義務があります。一方で、教員は、特定機能病院である大学病院の臨床医でもあります。

 要するに、高度医療を提供しつつ、地域医療を支える医師を育てるのが、大学のミッションです。

司会 総合診療的なマインドは、卒後ではなくて、医学教育の時代から涵養していかなければならない。

【前野】 それは当然です。

【林】 大学病院で診療をしている常勤医師の大部分は、医学部や大学院の教員です。大学院は主として研究を重視するところですので、教員である医師にとっては研究が大切であり、研究成果を出すことは重要なことです。その大学院所属の医師が、医学部の「付属病院」で診療する場合、「研究のために患者さんを診させてください」という立場にあります。大学院において、「総合診療」の研究とは何か、どのような実験をするのかということが、真剣に検討されることもあります。

 大学院の名称も問題となります。私の研究はもともと感染症で、感染症は臓器を選ばないということと、疫学的研究で、疫学はあらゆる疾患に遭遇するので、「感染・環境医学」という大学院の講座名でした。そうは言っても、多くの人は「総合診療科」との関連については理解されません。このような状況の中で、どのように地域医療、総合診療的な医療を教育するかは難しい問題です。ですので、大学の中で「総合診療医学講座」を作っていただき、新たな考えの下に、「総合診療医学」とは何かを学生に教育できるようにしてほしいと思います。

【田妻】 大学には、三つのミッションがあります。それは教育、臨床、研究。

 教育ですが、学部教育から卒後研修にわたります。卒後研修を受けるのは、大学院生、研修医、専攻医などさまざまな立場の医師であり、大学は、シームレスに、長く付き合いながら人を育てる機会をいただいているわけです。これは大変やりがいのある仕事である一方、責任も重い。同時に、総合診療の領域には、極めて親和性の高いミッションなのです。これまでは「君はどこの診療科に行く?」など、診療科を選ぶための学部教育が中心でしたが、私たちは今、「領域を選ばない場」に、学生たちをいざなっているわけです。そこには新しいバトルがありますが、魅力的。

 次に、臨床はどうか。先ほども出ましたが、臓器別の診療科は「患者を選ぶ科」。一方、我々は、「患者を選ばない診療科」。常にそうした意味では、対極的なミッションを抱えています。では、仲が悪いかというと、そんなことはありません。少なくとも広島大学では、私たちは、どの診療科とも、どの講座とも、一緒に仕事をしており、うまく行っていると思います。

 最後に研究ですが、わが国のトップ大学であり続けるためには、スーパーグローバル大学(編集部注:文部科学省が2014年から開始した事業)に指定されるなど戦略的でなければならない。指定されれば、10年間は予算が重点的に付くため、それを目指すことが求められる。それに関連してサイテーションインデックスの高い論文を一定数以上、書くなど、具体的な数値目標も付きまといます。

 領域をある程度絞り込まないと、その種の論文を書くのは難しい。総合診療の多様性の長所を残しつつ、なおかつ新しい研究分野をデザインしていく考えが必要になってきます。

 領域をある程度絞り込んでいかないと、サイテーションインデックスが高い論文を書くのは難しい。総合診療においては、その点は残しつつ、なおかつ新しい研究分野をデザインする考えが必要になってくると思います。

 つまり総合診療は、何もかもが新しく誕生し、成長過程にある分野だと思うのです。シーズをまいて育てていく。総合診療という領域を大学の中で確立することは、私たちの最も重要な仕事です。大学病院に入ったら、「総合診療科」がどこにあるか、学生にも目に見える形で運営していく。

【丸山】 教育の場で、「学生の目に触れる」ことが重要。我々は、今の世代ではなく、次の世代の医師の在り方を考え、その養成に取り組んでいるからです。今の世代の医師には不利益を与えないという前提は、これまでの協議の大前提です。

【田妻】 具体的には、毎日のように外来なり、病棟なり、診療の現場に、トップから足を運んで、必ず学生と顔を合わせる。レクチャーの時間を一緒に持つ。こうしたことを大学病院の中で行うことにより、初めて学生に強く印象付けることができます。筑波大学や九州大学、あるいはその他の大学で、ロールモデルとなっている方々がいます。いわゆる“色”は違っているかもしれませんが、大学病院の中で、昨日も今日も、そして明日も行けばそこに総合診療科のスタッフがいる。それによりシーズが育ち、広がっていくと私は確信し、取り組みを続けているのです。

【前野】 私も基本的に田妻先生のお考えには賛成なのですが、“診療の場”に関しては、私は少し違うやり方で教育しています。

 田妻先生は、「他の専門科は患者を選ぶ科、総合診療科は患者を選ばない科」と言われました。しかし、今は病床の機能分化が非常に進んできて、紹介なく大学病院を受診するのは、非常にハードルが高くなってきています。「患者を選ばない診療を見せる場」として、大学病院は難しい状況に置かれています。

 もちろん、大学の中に総合診療を行う場があれば、そのキャリアパスを見せて、いつでも学生の相談に乗るというやり方もあると思います。けれども、筑波大学の場合は、それが自然にできる場、地域の病院や診療所に学生を行かせています。指導医の方がそこに出向き、背中を見せて教育するというポリシーで取り組んでいます。

 これはどちらが良いというものではなく、それぞれの大学の状況に合わせてアレンジしていけばいいと思っています。

【丸山】 私は大学の立場ではありませんが、総合診療の領域が確立すると、大学は相当なスピードで変わらざるを得ないと考えています。これまでは皆が、それぞれの場、それぞれの大学の特性や環境の中で工夫しながら、この領域を開拓してきました。それがある方向に加速度をもって向かい始めることは、間違いないでしょう。突き詰めれば、卒前教育、臨床研修の問題なのですから。

【田妻】 例えば10年後には、前野先生が言われたように、大学の外に主な軸足を置くことが望ましい環境も、当然起こり起こり得るでしょう。

 もっとも、今でも2年間の臨床実習が行われており、大学で1週間の総合診療の実習を終えると、次は中規模病院に行き、総合診療の実習を4週間、さらに次に診療所に行って2週間以上の診療所実習をやっています。

 つまり「場の提供」は既に行われています。多様性がこの領域の本質なら、既にその端緒に就いています。ほとんどの臨床教育のポテンシャルを外に移すことはあり得るかもしれませんが、シーズを蒔くのは、さまざまな科が同時に並んでいる大学であり、その中で総合診療の特性を見極めるというファンダメンタルを築いた後に、外で研修してもらうのが我々のやり方です。

【前野】 一つだけ、情報提供をさせてください。今、全国の医学部が国際認証に取り組んでいます(編集部注:米国のECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)が、2023年以降の受験資格を「国際基準で認証された医学部出身者に限る」としている)。

 その国際認証の基準では、重要な診療科での実習が必須となっており、総合診療科・家庭医療科が含まれています。つまり総合診療科、家庭医療科の教育をきちんとやっていかないと、国際認証は取得できません。2023年までの取得が必要であり、これが我々の追い風になると期待しています。総合診療の教育を、重要な領域として位置づけるのは、世界標準ということです。

【田妻】 国際認証の取得に向けた取り組みは、各大学ともかなり進めていますが、心強い情報をありがとうございます。大学の管轄である文部科学省と厚生労働省との情報共有を期待します。



https://www.m3.com/news/general/502047
女性医療事故:和解金1966万円 名古屋市支払い /愛知
2017年2月12日 (日) 毎日新聞社

 名古屋市は9日、市立東部医療センター東市民病院(現・市立東部医療センター)で腎結石の治療をした女性に両足まひの障害が残る医療事故があり、家族に和解金1966万円を支払うと発表した。

 市によると、女性は2009年10月、結石を除去する治療後に両足まひの後遺症が残った。脊椎(せきつい)などを保護するため女性が装着していたコルセットを、治療時に長時間外したため、神経を損傷した可能性が高いという。女性は翌年6月に死亡した。

 女性の家族が12年、損害賠償など約1億円を求めて東京地裁に提訴。同地裁は「治療と死亡に因果関係は認められないが、後遺症に対する注意義務違反がある」と和解案を提示していた。【三上剛輝】



http://mainichi.jp/articles/20170212/ddl/k03/040/010000c
震災6年・17年とうほく
災害弔慰金 県への審査委託終了へ 11市町村、遺族の申請減少で /岩手

毎日新聞2017年2月12日 地方版 岩手

 東日本大震災の震災関連死に当たるかどうかを審査する「災害弔慰金等支給審査会」について、県に審査を委託していた県内11市町村が今年度末で委託を終えることが分かった。震災からの年月の経過に伴い、遺族からの申請がなくなってきたことなどが理由。県は、16日に開会する県議会2月定例会に関連議案を提出する。【佐藤慶】

 審査は通常、遺族からの申請を受けた各市町村が審査会を開く。しかし、震災で大きな被害を受けた県内の17市町村では運営に必要な体制が整わなかった。そのため、県はそうした市町村から事務を受託し、2011年に運営を始めた。

 だが、年月がたつにつれ、申請件数は減少。県が昨年8~9月、市町村に来年度以降の委託の必要性を聞いたところ、花巻、北上、奥州市など内陸部を中心とした11市町村が委託をやめる意向を示した。

 11市町村はここ数年、ほとんど申請がなかったという。いずれの市町村も委託終了の議案を昨年の12月議会で可決している。11市町村は来年度以降、遺族らから申請があり、審査会が必要となった場合、新たに設置するなどして対応する方針。継続中の案件については、引き続き県が審査する。

 県の審査会のメンバーは、医師や弁護士など5人。市町村が震災関連死の判定が難しい事例を審査する。

 申請は1月末までに808件あり、うち754件について、市町村が判断できず審査会が扱い、418件を関連死と認定。332件は認めず、4件を継続審査している。この結果、全体では関連死に認定されたのは461件、認定されなかったのは343件、継続審査中は4件となっている。

 災害関連死と認定されれば、世帯主の場合は500万円、世帯主以外には250万円の災害弔慰金が遺族に支給される。

県内の災害弔慰金等支給審査会の設置状況
 県への委託を終了させる自治体=11市町村
花巻市、北上市、久慈市、遠野市、一関市、奥州市、滝沢市、雫石町、矢巾町、一戸町、田野畑村

 県への委託を継続する自治体=6市町村
宮古市、釜石市、大船渡市、陸前高田市、大槌町、野田村

 独自で設置している自治体=3市町
盛岡市、岩泉町、山田町



http://www.sankei.com/west/news/170212/wst1702120051-n1.html
民営化頓挫の高齢者医療・介護施設 建て替えに向けた設計調査に着手、大阪市
2017.2.12 22:01 産経ニュース

 大阪市は、平成29年度、吹田市にある高齢者専門の医療・介護施設「大阪市立弘済院」の付属病院(90床)の建て替えに向けた設計調査に着手する。同病院をめぐっては過去に民営化構想が頓挫し、大阪市内への移転を断念した経緯があり、建設費確保や赤字体質が課題となってきた。市は3月中に特別養護老人ホームを含めた施設全体の整備構想をまとめる方針だ。

 弘済院は吹田市の万博記念公園に隣接する広大な敷地で付属病院(一般90床)と特別養護老人ホーム2施設を運営している。明治42年に大阪市内で発生した大火の際、皇室からの下賜金や市民からの義援金を基金として大正元年に設立された財団法人が前身で、昭和19年に大阪市が事業を引き継ぎ病院を運営してきた。

 その後、41年に第1特養を、平成2年には認知症専門の第2特養をそれぞれ開設。17年には第1特養を建て替え、ほかの施設では入所困難な認知症患者を受け入れている。

 課題となっているのは付属病院の建て替えだ。現在の病棟は昭和43年の建築で老朽化が激しく、耐震基準も満たしていない。規模が小さいうえ、1病床あたり収入も低く、平成27年度は7億円の赤字を出した。

 市は25年、認http://admin.blog.fc2.com/control.php?mode=editor&process=new#知症専門という機能を残すことを条件に土地建物を売却して民間に運営を委ねる方針を決めたが、市場調査で医療法人などから否定的な意見が相次ぎ頓挫。27年には大阪市淀川区への移転も持ち上がったが断念した。

 この間、廃止した養護老人ホーム用地や旧グラウンドを計約80億円で売却。これらを財源に32年度中に病棟を新築し、33年度から地方独立行政法人・大阪市民病院機構に移行して独立採算で運営することになった。

 市は3月中に弘済院全体の整備構想をまとめる。第1特養は将来の民営化を視野に入れ指定管理者制度を継続。第2特養は付属病院などと連携できるよう運営形態を検討する。吉村洋文市長は「大阪市は単身の高齢者が多く、高齢化率より高いペースで認知症になる人が増えている。認知症対策はもっと力を入れないといけない分野。弘済院は重要な役割を占める」と話している。



http://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/170212/lif17021210150005-n1.html
「月60時間」は看護師の過労死ライン?! 残業規制は何時間が適切か
2017.2.12 10:15 iza net/産経デジタル

 【ニュースの深層】

 電通の新入社員の過労自殺を発端に、残業時間の規制の動きが急速に強まっている。政府は、過労死ラインとされる「月80時間」を念頭に、月平均で60時間を残業の上限とする意向。しかし、この政府案に待ったをかけたのが、看護師たちだ。24時間体制の過酷な業務は、警察官や消防隊員も変わらない。医療や治安などを守るためにも彼らの言い分に耳を傾ける必要があるが、果たして過労死を防ぐ適切なラインはどこにあるのか。(社会部 天野健作)

 ■違法な残業が蔓延

 電通に入社した高橋まつりさん=当時(24)=は半年間の試用期間を経て本採用になった途端、急に増えた残業に苦しめられた。残業時間が130時間を超える月もあった。

 「もう(午前)4時だ。体が震えるよ」

 「土日も出勤しなければならないことがまた決定し、本気で死んでしまいたい」

 高橋さんのツイッターなどにはこのような嘆きが並んでいた。

 もともと労働基準法では、1日8時間、週40時間を労働時間の上限としている。ただ労使協定を結べば、上限を超える残業も可能で、決め方次第で残業は“青天井”なのが実情だ。政府はここに法律の網をかぶせようとしている。

 では、残業上限はどこが適切なのか。厚生労働省によると、健康障害のリスクが高まるとする残業は「月80時間超」だという。これは、働く日数を月20日間だと仮定すると、1日の労働時間が12時間になる。

 厚労省は昨年4月から、労働基準監督署の立ち入り調査の対象となる残業時間を「月100時間」から「月80時間」に引き下げた。同年9月までの半年間の調査では、前年比の倍となる約1万の事業所を調査。その結果、4割で労使協定を超える違法な残業が確認された。過重労働は蔓延(まんえん)しているのだ。

 若き命を失ったことも教訓に、政府の働き方実現会議は、残業の上限時間を月平均60時間、年間720時間にする。繁忙期には一時的に月100時間まで認めるという案をとりまとめようとしている。

■「過労死を容認するものだ」と反論

 しかし、この「月平均60時間」にも異論がある。

 日本医療労働組合連合会(医労連)は2月、「夜勤交代制労働など業務は過重である。政府案はまさに過労死を容認するもので、断じて容認できない」として、「月60時間」が過労死ラインと主張する談話を公表した。

 医療や介護の分野は特殊である。警察や消防も同様だが、24時間365日の稼働が必要だ。夜勤交代制は体に有毒で、睡眠障害や循環器疾患、長期的には発がん性も指摘されている。医労連の平成25年のアンケートでは、看護師の「慢性疲労」が7割を超え、「仕事を辞めたい」も75・2%に達している。

 ■後を絶たない過労死

 看護師側が「月60時間」を過労死ラインと断ずる理由は、20年10月の大阪高裁判決にある。くも膜下出血を起こして看護師の女性=同(25)=が死亡したことに対し、遺族側が国を訴えたケースだ。

 女性の残業は、国の過労死ラインを下回る月50~60時間程度だった。しかし、判決では、不規則な夜間交代制勤務など「質的な重要性」を併せて過労死と認定したのだ。判決は被告側が上告せず、確定している。

 21年には日本看護協会が残業に関する緊急の調査結果を発表。全国の病院で働く看護師のうち、「約2万人が過労死の危険がある月60時間以上の長時間残業をしていると推計される」とした。

 しかしこの後も看護師の過労死は後を絶たない。

 東京都済生会中央病院に勤務していた看護師の女性=同(24)=が死亡し、労基署が労災を認定した。

 24年12月にも、就職して1年目の看護師=同(23)=が月65時間を超える残業で過労自殺。昨年末、国に労災認定を求め、遺族が札幌地裁に提訴している。



https://www.m3.com/news/iryoishin/500994
シリーズ: 医療裁判の判決詳報
「院内事故調報告書」と「外部専門家の意見書」-愛知がんセンター和解訴訟の詳報◆Vol.2
報告書「婦人科医師の勤務状況、非常に過密」と指摘

2017年2月12日 (日) 高橋直純(m3.com編集部)

 卵巣がん摘出手術後に死亡した女性患者(死亡時40歳)の遺族が、容態急変後にCT検査をしていれば救命できたとして愛知県がんセンター中央病院(名古屋市)と主治医を相手に、約7500万円の損害賠償を求めた訴訟(双方の主張と和解内容は『院内事故調報告書が裁判資料に、愛知がんセンター和解訴訟の詳報◆Vol.1』)。病院側が遺族に1300万円の和解金を支払うことで和解は成立したが、その過程では病院が設置した院内事故調査委員会の報告書と双方が依頼した専門家の意見書が重要な資料となったと見られる。

 事故調査報告書と意見書の要旨を紹介する。

■医療事故調査報告書(全48ページ)
委員・外部有識者5人(医師3人、看護師1人、弁護士1人)、内部2人(医師・副院長兼医療安全管理委員長、副院長兼看護部長)
作成期間:2012年7月30日から10月29日までの全5回。各回とも遺族側弁護士が傍聴。2012年12月に完成した。

※以下では、本件裁判の争点に関する部分のみを抜粋する。
Ⅶ 「臨床状況に影響を及ぼす要因」の「より積極的な治療の必要性」の概要
・後球部の潰瘍は一般的な十二指腸球部潰瘍とは異なり、かなり難治性である。本件では穿孔と出血の2つの病態が併発しているが、適切な治療法の判断のためには、病状の変化した5月31日午後にCTなどの画像検査を行うことが重要だった。

・しかし、本病態は外科的治療に難渋するものと考える。腹腔内ではなく後腹膜主体に炎症が及ぶ場合、十二指腸壁を直接閉鎖をすることはおそらく困難であると予想される。
・穿孔が主症状としても本症例で早期にCT撮影をしても、再開腹の決断に至る消化管穿孔の十分な診断所見が得られるかは不明である。腹膜刺激症状など理学的所見が乏しい上に、特に十二指腸球後部潰瘍穿孔は極めてまれであり、これらを考慮すると手術に踏み切る診断はかなり難しいとの意見が出された。より一般的な十二指腸球部の穿孔の疑いとして保存的治療が行われる可能性もあり、この場合、次に起こったであろう出血に対応できたかは推測しがたい。一方で、正確な診断が困難であるとしても、やはりCT検査の必要性は排除されない。

・穿孔による容態の悪化を伴い多量出血に至った状態では、2つの病態を同時に修復する手術が必要となる。大量出血例に対しては幽門側胃切除では止血効果はなく、再出血に対して緊急で膵頭十二指腸切除術(PD)を行って救命できた1例報告はあるが、穿孔による症状のある例に対して、PDを行えば全身状態は著しく悪化し、縫合不全の確率は高くなると予想される。穿孔による症状が先行し、その後多量出血を引き起こした症例の治療報告も確認しえず、よって本例を緊急手術で救命する治療手段の提言、および救命の可能性があるかないかについて言及することは極めて困難である。

・診断および治療の困難さも然ることながら、やはり厳重なモニタリングと積極的な循環動態の維持が必要であったことを繰り返す。

Ⅷ 「医療安全の臨床状況とその要因のまとめ、さらに改善策の提言」
1.3 状態悪化後の対応

1.診断
・消化管出血や穿孔を想起することは難しいと思われる。
・ただし、この病態の変化に対し、腹部エコーやCTなどによる画像検査を用いた原因探求がされて良かった。また、婦人科のみの判断ではなく、消化器外科や消化器内科へのコンサルテーションをするなど院内での連携がしやすい環境作りも必要である。

2.看護および集中治療室について
・準夜帯、深夜帯での記録の欠落が目立つ。看護師間の情報伝達の不十分さ、ディスカッション不足も要因としてあげられる。
・一般病床で状態が悪化した患者を管理することは人的な面で困難である。集中治療部の充実、および集中管理部長の専従化を行い、術後管理のみならず、急変時に一般病棟から受け入れられる体制のさらなる改善を求めたい。

3.職場の環境
・医師間でのディスカッションがなされても良かった。自由に意見を交換できる風通しの良い職場環境の構築が求められる。
・がんセンター産婦人科医師の勤務状況については、他施設と比較して非常に過密な勤務状況であった。産婦人科医師、特に腫瘍を専門とする婦人科医師が不足している現状から、婦人科腫瘍専門医の置かれている環境は厳しい。やはりある程度、時間的・精神的余裕がなければ、医療従事者間のディスカッションは行われにくいことは指摘しておきたい。
・上記の問題をまとめると、各場面でシステムが良好に運用されていなかった、いわゆるシステムエラーが重なって最悪の結果を招いたと推測される。

4.急変後の対応
・血圧急低下後は機能していると思われる。

5.家族への説明
・状態変化後に家族に伝えた形跡がない。原因が不明であっても、術後に明らかに変化があった時には家族へ連絡することが、医療従事者として必要な対応である。

Ⅸ まとめ
・本症例の救命に影響を及ぼす最も重要な要因は、第3病日午後から第4病日にかけての不十分なモニタリングと診断的画像検査、さらにより積極的な循環動態維持が必要であったことにあり、それが実行できなかったのは組織としての危機管理体制が不十分であったか、または十分に機能していなかったこと、すなわちシステムエラーに起因する。
・これに対し、1)集中治療体制、2)医療の質の向上への対策・医師及び看護師の意識改革、3)医師の増員および適正配置などのシステム改善策を実行する必要があることを指摘しておく。

■「原告側医師の意見書」の概要 (消化器外科指導医)
Q 5月31日午後にはどのような検査が必要だったか?

 状態から出血や感染などが考えられ、速やかに病態の解明が必要である。16時には血圧66mmHg、橈骨動脈で触れずという状態で、ショック状態である。血液検査の他、腹部単純レントゲン撮影のみならず、腹部CT検査、内視鏡検査などを実施することが必要である。腹部の診察も必要である。原因を解明しないまま、必要な検査を翌日に回してはいけない。

Q 5月31日午後にCTを実施していたら、どのような結果が得られていたと考えられるか?
 CTを実施していた場合には、消化管出血を疑わせる像が確認できたものと考える。そしてCTで消化管出血を疑わせる像がある場合には、内視鏡検査を実施して出血やその部位を確認することになる。31日午後に穿孔が発生した可能性が高く、CTを実施していればフリーエアーが確認できたと考える。

 なお、本例は婦人科手術を受けた患者であるが、消化管出血、穿孔については消化器の専門領域であり、早期に消化器内科、あるいは消化器外科の医師にコンサルトされることが必要であった。

Q CTで出血、あるいは穿孔が疑われた場合はどのような診察がされるべきか?
 緊急的な外科手術が選択される必要がある。医療機関の規模によるが、外科医、麻酔科医がそろっている医療機関においては、CT検査を実施してから2時間以内にはこのような手術は可能である。消化管穿孔、出血があり、ショック状態にある患者には、緊急外科手術以外に救命する手段はない。全身状態が悪いからこそ、手術をしなくてはならない。

 画像検査だけでは出血部を特定できないことがあるが、できないからという理由で外科手術をしないという選択肢はない。開腹によって目視で検索すれば発見することができる。

 穿孔部を直接縫合閉鎖するか、小腸パッチをすることになる。腹膜炎を確認すればドレナージをし、再穿孔や出血に備えてPPI投与などすることになる。

 本例は十二指腸球後部の穿孔であったが、そのことを理由に手術が困難である事情もない。

Q 5月31日に手術を実施していたら救命はできたか?
 31日の段階で外科手術をすれば救命できたと考える。本件は術後ストレスあるいはNSAIDs投与に伴い時折発生する消化管穿孔、出血にすぎない。術後の経過としてそれほど珍しくもない。患者は40歳と若く、既往症もない。診療経過から6月1日6時30分頃、大量出血を招いたものと考えられるため、遅くともそれまでに穿孔部を縫合し、止血して手術を終えていれば救命は可能である。

Q 十二指腸球後部の潰瘍、穿孔であったことが、本例の救命を困難にしたのか?
 開腹手術前に十二指腸球後部の潰瘍であることまで確実に診断することは難しい可能性があるが、CT検査などで上部消化管出血、穿孔を診断することはでき、それ以上に部位が特定できなくても手術の実施は必要であるから、潰瘍の部位が十二指腸球後部であることが、救命を困難にすることにはつながらない。

■追加の意見書
Q 5月31日にCT検査をしてもフリーエアーは確認できないという見解にはどのように考えるか?

 十二指腸が穿孔しているのであるから、球後部であろうとCTを撮影すれば所見は得られる。後腹膜側の穿孔であっても、空気の貯留(厳密には腹腔内遊離ガス像を指すフリーエアーではなく、腹膜外の異常ガス像)を確認することができる。

Q 5月31日にCT検査をしたら、炎症性変化の所見が確認できた可能性はあるか?
 6月1日の解剖で、穿孔に伴う軽度から中等の限局性の腹膜炎の所見が、胃、十二指腸、横行結腸などに確認されており、前日のCTでも炎症性変化の所見を確認できた可能性がある。もちろん検査を行うことと、検査所見の解釈は別問題であるが、経験ある外科医と放射線科医のチームワークがあれば正確な情報が取得できるはずである。

Q フリーエアーが描出されても、高侵襲である開腹手術に伴うガス像であるから、穿孔の診断価値がないという指摘についてはどうか?
 ショック状態の患者に対して、フリーエアーが描出された場合には、手術によるガスであるとは即断せず、ショックの原因と関連している可能性を考える必要があり、診断価値がないとは決して言えない。

Q 穿孔や出血に伴う特異な所見に乏しいという点はどう考えるか。患者から強い腹痛の訴えがない点への考えは?
 本例では、28日の術後から硬膜外麻酔としてアナペイン注2mg/mLが持続的に投与されていることなどによるものと考えられる。こうした術後患者では、腹痛の訴えがなくても、慎重な診察を行う必要性は繰り返し警鐘が鳴らされている。

Q 患者がsmall antrum、術後ストレスによる高酸状態であり、縫合や小腸パッチは不適切な術式選択であるとの指摘に対しては?
 高酸状態だから、それらを選択しないということはない。高酸状態であれば制酸剤や抗コリン作動薬などの薬剤を投与して治療すれば良いだけである。本例では、球後部でもVater乳頭の反対側であるから、手術難易度も決して高くなく、直接縫合や小腸パッチの採用は理にかなっている。

Q  広範囲胃切除、膵頭十二指腸切除術を実施した場合、後腹膜に腹膜炎が及んでいたことや、婦人科手術3日後であることから、縫合不全や敗血症の可能性が高く、救命できないという指摘に対しては?
 上記の通り、直接縫合、小腸パッチなどの低侵襲の手技を応用することは可能で、侵襲の高い手術をする必要はない。万一、膵頭十二指腸切除術を選択した場合には、それらの可能性がないとは言えず乗り越える必要はあるが、それゆえに救命できないということはない。

■「病院側医師の意見書1」(被告病院に勤務経験のある消化器外科専門の元大学教授)
Q 5月31日午後にはどのような検査が必要だったか?

 原告医師意見書には、内視鏡検査が必要とある。しかし、31日18時でもヘモグロビン値が10.4g/dlであり、二日前の29日の11.8 g/dlと比べてもわずかの低下が認められるのみである。緊急内視鏡検査を行う必要性は認められない。

Q 5月31日午後にCT検査を実施していたら、どのような結果が得られていたか?
 本症例は、極めてまれな十二指腸球後部潰瘍の後腹膜側への穿孔である。十二指腸の後腹膜側は、後腹膜の結合組織に覆われており、通常は遊離腔ではない。ゆえに、腸管内に存在する空気が後腹膜腔に漏れるか否かは腸管内の内圧と後腹膜腔の結合組織の強さとバランスによって決まり、画像上フリーエアーが描出される程度の空気が漏れるとは限らない。

 一方で、開腹手術に際しては、大量の空気が遺残し、消失まで数時間以上を要すると考えられているのも消化器外科領域の常識的な事実である。そのため、CTでフリーエアーの存在の有無を検査するという診断学的有用性は認められない。

 また、後腹膜腔にはドレナージチューブが挿入されており、ここからの排液は6月1日に至るまで漿液性のままであった。消化器外科の領域においては、このようなドレナージチューブからの排液も重要な判断材料であり、これらを総合すると5月31日の段階で仮にフリーエアーが検出されたとしても、穿孔と診断することは非常に困難である。

 原告医師意見書では6月1日のCT所見についての評価がされていない。6月1日のCT所見では、明らかな炎症所見は指摘されていない。5月31日時点では同じかより軽い所見しか得られないと思われ、解剖所見のみを持って5月31日のCT所見を推定することは不適切と思われる。

 以上により、「開腹手術後第3病日にフリーエアーの存在を検査する目的でCT検査を行うこと」は消化器外科学領域の日常診療上の常識の範囲内にあるとはとうてい考えられない。

原告側医師意見書について
・18時時点で吐血、下血、有意なヘモグロビン低下も認められず、消化性潰瘍の発生が疑われる臨床所見はなかったので、その時点で消化器内科医や外科医へのコンサルトする必要は認めがたい。
・ショック指数のみの考察からCT検査で相当量の出血を確認できるとしているが、それに先立つ発熱の所見を見落としている。通常、消化管出血のみではすぐに発熱を来すことはないが、本症例では発熱と頻脈が先行し、その後ボルタレン座薬の投与とともに、血圧低下が起こっている。
・ヘモグロビン値が下がっていないことの評価が不十分である。

Q 5月31日午後のCTで出血、あるいは穿孔が疑われた場合はどのような診療がされるべきか?
 原告側医師は「出血部位が特定できなくても手術を実施する」という意見を述べるが、常識的な判断ではない。緊急開腹手術が行われた場合を仮定すると、一般論としては、穿孔部を直接縫合閉鎖したり、小腸パッチをするよりも大網充填術が第一選択として選ばれる。しかし、本症例では婦人科手術の際に大網が切除されており、充填術を行うのに十分な量の大網が遺残していたかは不明である。

 穿孔性腹膜炎の環境下で、十二指腸乳頭部の大弯側後腹膜側優位に穿孔した出血性球後部潰瘍の手術は、通常の十二指腸球部潰瘍の治療方針をそのままあてはめることはできない。

 事故調査報告書にも述べられている大量出血を伴う球後部潰瘍に対する緊急膵頭十二指腸切除術が成功した報告事例は、出血部位を切除するという根治手術であったが、腹膜炎を併発していない被覆穿孔例であっために術後合併症の併発もなく成功したものである。腹膜炎の存在下で、膵頭十二指腸切除術を行う消化器外科医は存在しないと思われる。さらに、本症例では4000mlに及ぶ大量出血を伴った婦人科手術後3日しか経過していないことも考慮に入れるとさらに救命率は低下するものと思われる。原告側医師の意見は消化器外科領域の常識の判断の下では理解できない。

Q 5月31日に手術を実施していたら、救命できたか?
 原告側医師には重大な事実誤認がある。原告側医師は通常の手術後の十二指腸球部潰瘍出血、穿孔について述べている。本症例の出血、穿孔の主原因は解剖所見や調査報告書にも述べられているように、small antrum(胃前庭部が異常に小さい疾患)であることは明らかである。

 small antrumの存在が手術後の過酸状態の主因であり、潰瘍の発生の主原因であることも明らかであるにも関わらず、原告側医師は失念しているか、軽視している。

 small antrumがある以上、穿孔部の縫合閉鎖、止血が可能であったとしても、まもなく再出血、再穿孔が発生することは自明である。原因除去を行わない手術療法は誤りである。

Q 十二指腸球後部の潰瘍、穿孔であったことが、本例の救命を困難にしたのか?
 本症例の球後部潰瘍の出血、穿孔の診断が極めて困難であったという事実は事故調査委員会で明らかにされた通りである。事故調の討論の中でもあるように、本例に対する根治手術法は幽門側胃切除を伴う膵頭十二指腸切除術で病巣切除を行う方法しかない。しかし、腹膜炎の存在下ではリスクが高く、救命困難であるのは自明である。

 以上のような理由により、本例のような十二指腸球後部潰瘍出血、穿孔例を救命することは極めて困難であり、同様の症例の手術成功の報告例は1例もなく、学術雑誌から発見することはできていない。

 やはり、本例がsmall antrumによる過酸状態を主因とする十二指腸球後部の潰瘍、穿孔であり、後腹膜優位に穿孔し、腹膜炎を併発していたという病態であることは、本件の救命を困難にした主要因であったと言わざるを得ない。

■「病院側医師の意見書2」の要旨(肝胆膵外科専門の大学教授及び同外科の講師)
Q プロスペクティブに見て、5月31日午後、どのような時点で、どのような疾患を疑い、どのような検査を実施することが具体的に想定されるか?

 最初の蘇生輸液でショックが改善しなかった時点で、理想的には、出血性ショック、心原性ショック、敗血症ショック、アレルギー性ショックなど、あらゆる可能性を検討する必要があった。まず行うべきことは腹部所見を含めた身体、創部の詳細な診察、ベッドサイドですぐできる腹部超音波または造影CTであろう。CTで上腹腔内に体液貯留が認められた場合は、穿刺可能なら採取して性状をチェックする必要がある。感染徴候がある場合は、敗血症性ショックの可能性が高いので、原因として消化管穿孔と絞扼性イレウスの可能性をまずチェックしなくてはならない。

 腹腔内出血が疑われる場合は、造影CTで造影剤の血管外漏出や仮性動脈瘤などの有無などをチェックする。吐下血がある場合にのみ内視鏡を考慮することになるのではないか。また、蘇生輸液でショックが改善しなかった時点で全身管理のため集中管理室管理要請やCT等の精査と他科専門科へのコンサルテーションをすることが望ましかった。

Q 5月31日にCT検査を実施していたら、どのような所見が得られたと考えられるか。消化管穿孔、出血と判断することは高度の蓋然性を持って可能であったか?
 6月1日8時20分のCTでは腹部は膨満し肝表腹水も多量に認め、十二指腸下行脚は全周性に高度に腫大している。また、十二指腸水平部周囲は浮腫状となり小空気泡が散在しているため、十二指腸穿孔が後腹膜に穿通して後腹膜が蜂窩繊炎状になっていると推定される。

 5月31日午後にCTを施行した場合、少量の腹水と十二指腸下行脚の全周性腫大と近傍に細かな空気泡が少量見えた可能性はある。しかし、6月1日の所見ほど明確ではない可能性が高く、消化管穿孔、出血と診断できる可能性については、高度の蓋然性はないと推察する。

Q 5月31日にCTを実施し、仮に消化管穿孔、出血が疑われた場合、どのような治療法が選択されたか?
 既にショックとなっており、不安定なバイタルサイン下での治療法は限られる。開腹洗浄ドレナージのみとなる可能性は高い。剖検所見によると十二指腸穿孔が15×11mmと大きく、炎症による浮腫状変化の中でこれを縫合閉鎖することは困難であることが推察される。

 その場合、可及的に閉鎖して大網などで被覆し、ドレーンを挿入して必要なら持続吸引を行うといった術式が考えられる。しかし、本件では大網が卵巣がん手術で切除されており、被覆するものもなく、困難であった可能性が高い。

 緊急膵頭十二指腸切除術は一般状態、栄養状態が悪すぎて施行不能である。

Q 前項で選択された治療法を行った場合、どのような経過が推測されるか?
 開腹洗浄ドレナージが成功したとしても、一度、ショックとなった患者に対し緊急手術を行うにあたっては多臓器不全を発症するリスクが上昇し、死亡危険度が高いことが推察される。

 また前項で述べたように、十二指腸穿孔部の完全閉鎖は難しく、縫合不全から膵液を含む十二指腸液の漏出により腹膜炎が遷延してさらに重篤な状況になった可能性もある。緊急手術を実施するならば、手術の困難性、リスク、死亡危険度が高いことを家族へ十分説明し、同意を得ることが必要と考える。

Q 5月31日に前項で選択された治療法を行った場合、高度の蓋然性をもって救命が可能であったといえるか?
 31日夕には患者は既にショックとなり、翌朝には死亡している。本疾患の経過は極めて早いと考えられる。31日夕に開腹してドレナージ手術を行ったとしても、大きな十二指腸穿孔部閉鎖の困難さと一般状態不良、ショック状態であることを考慮すると、高度の蓋然性を持って救命可能であったとは言えない。

Q 本症例において、十二指腸球後部潰瘍・穿孔であったこと、後腹膜優位の炎症であったこと、4140mlの出血を伴った婦人科手術の術後であったことは、予後に影響したか?
 十二指腸球後部潰瘍・穿孔であったことは予後に大きく影響を及ぼしたと考える。通常術後3日間は、除痛のため患者の求めに応じて鎮静剤が多用されることもある。穿孔は術後3日以内に発症したと推測され、鎮痛剤多量投与しており、十二指腸球後部潰瘍出血・後腹膜穿通の診断は困難を極めたと推察される。



https://www.m3.com/news/iryoishin/501990
シリーズ: m3.com意識調査
医師の55%「在宅医療受けたい」と回答
課題はマンパワー不足や家族の負担増

2017年2月12日 (日) m3.com編集部

 m3.com意識調査、「在宅医療、経験は?推進すべき?」で、在宅医療に関する経験や意見を聞いたところ、回答者の41.8%が「在宅医療に携わった経験がある」と回答した。「経験はないが、今後携わりたい」と回答した医師は開業医が10.2%、勤務医が21.1%、薬剤師が26.2%、看護師が38.5%、その他の医療従事者が45.1%となった。

Q1: 在宅医療に携わった経験をお持ちですか?
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 自身が緩和医療メーンの患者の立場になった場合、「在宅医療を受けたい」と答えたのは全体の55.1%、受けたくないとの回答は13.0%だった。

Q2: ご自身が、がんの末期で、積極的な治療ではなく、緩和医療がメーンの患者の立場になった場合、在宅医療を受けたいと思いますか?
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 今後積極的に在宅医療を推進していくべきか、という問いに対しては「積極的に進めるべき」が42.4%、「慎重に進めるべき」が40.7%と意見が分かれる結果となった。
「積極的に推進すべき」の回答者では、主に患者側の需要の拡大や医療費抑制の観点で、今後避けて通ることはできないという声が多かったのに対し、「慎重に推進すべき」の回答者では、マンパワー不足や効率性の問題、質の安定化が十分に担保されないといった意見や、家族への負担増を懸念する声が多かった。

以下に自由意見を紹介する。

Q4: 在宅医療についてご意見あればご記入ください

【積極的に推進すべき】
・今後の医療費抑制のためには在宅医療促進は必要だし、既定路線だと思います。ただし、今後、在宅医療を促進していくのであれば、家族に負担とならないような制度作りや、インフラの整備をしていかなければならないと思います。でも、それを地方自治体、しかも市や町のレベルに丸投げしているのが現状です。税収のある地方自治体はいいですが、なにか政府の援助を考えていかないと、地方では崩壊すると思います。また、在宅医療では、必要な物品の購入補助やリースもありますが、今度、促進していくにはかなり多くの新しい医療機械の補助やリースのリストが必要になると思います。【勤務医】

・少子超高齢化社会と核家族化を迎え、誰か(可能であれば、家族)に看取られ、最後の時を畳の上で、安らかに迎えたいとの気持ちをできるだけ叶える態勢を、医療関係者のみならず、社会全体で早急に実現する必要がある。人口は減少傾向であるが、世帯数には変化が無い医療費の有効活用と、急性期の医療を要する人への、医療資源の適正配分にも寄与する。しかし、営利目的のみの(心の通わない)在宅医療は、断固として排除されねばならない。【開業医】

・在宅末期癌ホスピスケアに関わるようになって、既に30年が過ぎつつあります。何人の患者さんに接しても、その都度、身の程の限界を感じており、勉強させられます。先達ともいうべき先に逝く人をご家族と共にいかに見送るか、それぞれが生きてきたようにしか織込めぬ人生模様です。永遠の課題かもしれません。【開業医】

・病院で勤務する医師が、アウトリーチという形で在宅医療にかかわることは、それぞれの専門性を在宅に提供できるということのみならず、生活の視点を持って患者さんに関わることを実地経験として学ぶことにつながる。病院で勤務する医師こそ、在宅医療の経験が必要である。【勤務医】

・医師、薬剤師、看護師ともに在宅を経験すべきです。病院での医療だけが医療だと勘違いしており、個人あるいはステージに応じた治療の仕方や療養の仕方を、患者さんに勧めることができない。治療をやめることができないのは医師であると思う。【看護師】

・在宅医療について薬剤師も積極的に参加していただきたいが、終末期での在宅などのケースでは専門知識以外の対応を求められるため、それなりの準備や研修などに参加してスキルの向上が必要。【薬剤師】

【慎重に推進すべき】

・在宅医療を実践する上で、最大の課題は在宅患者をお世話する人材の枯渇である。申し訳程度の介護サービスでは患者の24時間を支援することはできない。国は地域包括ケア制度を提案し多職種からの支援体制を構築する旨をうたっているが、現実は家族の負担が極めて大きい。また、急増している独居高齢者の在宅医療はその人の持つ資産に依存しているといって過言ではない。何か大きな制度の組み直しをしないと次第に尻すぼみになってしまうのではないか?【勤務医】

・有能で経験を積んだ在宅医師が当院に勤務しているが、人間性、人徳、仕事への取り組みと哲学はすばらしいものがあり、院内講演会や勉強会でも医師、看護、リハビリ、介護、薬剤師、栄養士、等に働きかけており、彼のような在宅医を増やし、他の医師やコメディカルへの教育、啓蒙は非常に重要と思う。【勤務医】

・あるべき医療の姿だと思いますが、その場合の医療費は入院での医療費と比べて安くできるのでしょうか?医療費が高くなるのであれば、現在の国民皆保険制度での負担は難しいと思われます。自己負担も考慮すべきです。年金も含めた社会保障費全体のバランスシートの再検が必須と考えます。【勤務医】

・現実的には日々家族の介助も必要で、ほとんど家族が自宅にいられない社会。限られた時間しか対応できない医療の現状からして政策として進めていくには、その他の受け入れが必要。きれいごとばかりで政策化するのは疑問がある。【開業医】

・病院へ入院すればどうしても延命処置はされてしまうし、不要な投薬・検査なども実施されてしまう。がん末期治療のみならず一定年齢以上には積極的な治療ではなく緩和医療や在宅医療にシフトしていくべきだと思う。しかし、寝たきり状態などで介護実施者に負担がかかる(高齢社会で介護者が仕事を辞めなくてはならないような状態での)在宅医療には反対なので、慎重にしなければならないと思います。【その他の医療従事者】

・在宅医療はマンパワーの分散。人材確保が困難な時代に、医療費抑制の名のもとに、在宅への流れが強いけど、マンパワーが分散され、病院勤務者はますます過酷な労務環境になる。高齢者や進行した疾患にダメ元、これでもかと治療をやたらするのを抑制(欧米では年齢や進行度で治療の選択に制限があると聞く)していく方が、医療費抑制と効率がwin winになるのでは?とも思う。【看護師】

・在宅医療のかかわりは薬局薬剤師が中心となって行っているが、個人の資質に頼っている所ところが大きく、さまざまな報告会に参加しても、もう少しよい方法がないだろうかと疑問を抱くことが多い。残薬管理(ポリファーマシー問題)など解消するために、ガイドラインなど参考となる指針を早めに確立した方がよいと思う。【薬剤師】

【進めるべきではない】
・都会ではこれから在宅医療がもてはやされるのかもしれないが、地方では在宅医療はそろそろ終わりである。そもそも、在宅医療は、患者のほか、その患者を自宅で面倒見てくれる家族の同居が不可欠である。
  老老介護の進むこの時代、患者と一緒に住んでくれる家族がいない世帯が大半であり、田舎では、在宅医療は既に成り立っていない。【勤務医】

・人口減が進む中で在宅医療は持続可能な形式なのか非常に疑問に思います。限界集落の発生、コンパクトシティへの移行が不可避な時代が必ず来ます。残念ながら在宅医療は都市部にのみ許される贅沢となるでしょう。在宅を重視する風潮は、既得権益を墓場まで持って逃げ切りたい団塊世代最後のあがきのように思えてなりません。【開業医】

【調査の概要】
・調査期間:2017年2月3日-2017年2月7日
・対象:m3.com会員(開業医325人、勤務医947人、歯科医師29人、看護師39人、薬剤師183人、その他医療従事者51人)
・回答者数:1574人
◆全ての調査結果はこちら
⇒「在宅医療、経験は?推進すべき?」



https://www.m3.com/research/polls/result/222
意識調査 結果 
在宅医療、経験は?推進すべき?

カテゴリ: 医療 回答期間: 2017年2月3日 (金)~7日 (火) 回答済み人数: 1574人

日本病院団体協議会代表者会議の議長を務める神野正博氏(日本社会医療法人協会副会長)は1月26日、「在宅医療について何らかのガイドラインが必要」との認識を示しました(『「病院の在宅医療にガイドラインを」、日病協』参照) 2025年に向けて地域包括ケアシステムの構築が進む中、在宅医療の今後の在り方が重要になっています。在宅医療のご経験やお考えについて伺います。
(開業医、勤務医、看護師、薬剤師、歯科医、その他医療従事者)

Q1 在宅医療に携わった経験をお持ちですか?
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開業医 : 325人 / 勤務医 : 947人 / 歯科医師 : 29人 / 看護師 : 39人 / 薬剤師 : 183人 / その他の医療従事者 : 51人
※2017年2月7日 (火)時点の結果


Q2 ご自身が、がんの末期で、積極的な治療ではなく、緩和医療がメーンの患者の立場になった場合、在宅医療を受けたいと思いますか?
02124_20170213095736365.jpg
開業医 : 325人 / 勤務医 : 947人 / 歯科医師 : 29人 / 看護師 : 39人 / 薬剤師 : 183人 / その他の医療従事者 : 51人
※2017年2月7日 (火)時点の結果


Q3. 今後、在宅医療を政策として積極的に進めていくべきだと思いますか?
02125.png
開業医 : 325人 / 勤務医 : 947人 / 歯科医師 : 29人 / 看護師 : 39人 / 薬剤師 : 183人 / その他の医療従事者 : 51人
※2017年2月7日 (火)時点の結果


  1. 2017/02/13(月) 10:01:44|
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