Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

2月5日 

https://community.m3.com/v2/app/messages/2653956?pageNo=1&portalId=mailmag&mmp=RI170203&mc.l=204809363&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
トランプ政権がビザプログラムの大幅な変更を検討しているのはご存知の通りかと思いますが
No:002317/02/03 投稿者:欧州滞留中 

トランプ政権がビザプログラムの大幅な変更を検討しているのはご存知の通りかと思いますが、 FBの方で、アトランタ日本人研究者の会の大須賀先生の書き込みが回ってきたのでご参考までに。
(もしこの転記がまずいようでしたら、削除しますのでご一報ください)


 米国ビザの取得・更新を考えている研究者・医師に緊急の告知です。トランプ政権のビザ政策が大きな問題になっているのはご存知の通りかと思います。まだ、日本人には大きな影響は出ていませんが、今後の政策変更によっては大きな問題になる可能性も出てきており、今後も予断を許さない状態です。

 特に、トランプ大統領は選挙中に、日本人研究者が留学する際に最も使われているJ1ビザ制度の廃止を主張しており、また研究者が取得することも多いH1Bビザ(労働ビザ)の制度変更も政策として言っております。本当に実施されると日本人留学生に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、大統領令という形である日に突然政策が変更されるのが特徴となっているので、今後も要注意だと思われます。ビザのトラブルは留学に甚大な影響を及ぼしますので、近々ビザの更新がある方や、ビザの取得を考えている研究者の方は、かなりの注意を払う必要があるかと思います。

 本日、すでにニュースとして、H1Bビザの最低賃金を$130,000 (G3註:$1=¥110として¥1430万 !!!) に引き上げる法案を検討していることが報じられており、もし実行されるとH1Bビザの新規取得・J1からの変更が事実上不可能になる事態が予想されます。実際にいつ実行されるのか、大学などは制度外になるのかなど不明点は多々ありますが、今後の情報に注意する必要があります。その他、この1週間で日本人に関わるものとしては、ビザ更新時に条件を満たせば大使館での面接が免除される制度があったのですが、この面接免除制度が停止されているということです。更新で日本に戻られる時には郵送だけでは更新ができない状態だと思われますので、ご注意ください。3週間以上の余裕を持っての一時帰国が必要かと思われます。

 何か情報のある方はコメントに追加をしていってもらえると助かります。この投稿は[公開]設定にしてオープンにしましたので、新たな情報をお持ちの方は、知り合いかどうかを問わずコメントをしていただけると助かります。シェアも大歓迎です。皆で情報を共有して、大きなトラブルを避けるにはどうするかを一緒に考えたいと思います。よろしくお願いいたします。

 「アトランタ日本人研究者の会」では、トランプの政策がある程度出たところで、緊急のセミナーを行う予定でいます。移民制度に詳しい専門家に、日本人研究者への影響や、行わないといけない対処などについて解説していただく予定です。ウェブナーで無料公開する予定ですので、アトランタ以外の方の参加も大歓迎です。日時などが決まりましたら、そちらも告知いたします。よろしくお願いいたします。



https://www.m3.com/news/iryoishin/500164
シリーズ: 総合診療専門医はなぜ必要か?2学会幹部スペシャル座談会
総合診療、「教育」が必要な理由は?◆Vol.2
先進医療と地域医療、一人でカバーできず

2017年2月5日 (日) 司会・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

【林】 確かに、大学病院の医療は臓器別で、より細分化が進んでいます。一方で、患者は複数の疾患を持っていることが多い。しかも、まだ診断が付かない患者をどの診療科が診るのか、という問題もあります。

 さらに私は、大学病院から今の原土井病院に移り、最近気づいたのですが、大学は「医学」は教えてはいても、「医療」を教えていない。これは「学問」と「学習」の違いでもあります。目の前に来る患者は複数の病気を持っており、日々自らが「学習」していかないと対応できません。

【田妻】 我々は今、加速度的に変化する局面にいます。大きなうねりの最中で人を育てていくというミッションは、重く難しい一方、やりがいも当然あります。

 例えば、今から10年ほど前に、消化管のESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)が高度医療として導入されましたが、今では既に特殊な技能ではなくなってきます。高度医療の進化、普及のスピードは早い。その流れを知らないまま、ジェネラリストとして育っていくのは矛盾があります。物事の進化をリアルタイムに把握し、かつ自分の立ち位置を見失わない。そうしたマインド、姿勢を養うことも、総合診療の教育には必要です。

【丸山】 それは先生方が、地域をしっかりと見つめているからだと思います。地域の有り様が変わることを考えながら、医療職を全うするにはどうすればいいかを考え、現実に動いている証です。

【前野】 私も先生方の意見に賛成なのですが、いつも問題提起されるのは、「なぜ総合診療能力を教育しなければいけないのか」です。先生方が言われたことに対し、多くのドクターは賛成するのですが、「長年臨床に従事していれば、自然と身に付く」と言われる。改めて教育したり、一つのキャリアとして追求することにはなかなか理解が得られにくいのです。

 その際、説明するのが、医療は非常に進歩しており、一人の医師が先進医療と地域医療の両方をカバーできなくなってきたことです。江戸時代は、内科医と外科医の区別すらなかった。しかし、今は消化器の中でも、胃と大腸に専門が分かれていかないと、最先端の医療にキャッチアップするのは難しいでしょう。自分の専門領域を極めるならば、必然的に領域は狭くせざるを得ません。

 では専門特化した先生方が、なぜ困っていないのか。それは働く場所を選んでいるからです。「狭い」担当領域でも困らない施設で働いているのです。また「地域」というものを、ご存じない先生も少なくありません。目の前にいるのは、自らが病院まで足を運び、診察室の椅子に座ってくれる、あるいは救急車で搬送されてくる、自分の専門領域の病気を抱えた患者。年齢・性別も、抱える健康問題もバラバラで、患者だけではなく、その家族や地域住民も含めてカバーするプライマリ・ケア医の活動に触れる機会はあまりありません。

 余談ですが、最近印象的だったのは、うちの医学生が地域医療実習に行って、「90歳のおばあさんが元気に歩いていて驚いた」と言ったことです。普段の大学病院の臨床実習で診るのは、入院適応のある患者さんばかりですから、自然とそういうイメージになってしまうのでしょうね。

 自分の守備範囲で困らない、むしろ自分の強みを発揮できる施設で働いている医師は、外にそうした世界があることをあまり認識せずに診療しています。結果的に、総合診療専門医の存在やその教育の必要性を感じていないのです。

 しかし、これからの医療は、これまで以上に地域で重症かつ複雑な患者を診なくてはならず、かつこれまで以上に複雑な問題を、少ない医療資源で対応していかなければいけない。その意味で地域医療に求められるレベルは上がっているので、やはりそれにフォーカスした人材を体系的に、計画的に育てていかなければいけません。

【丸山】 それに付け加えると、医療のリソースに対する基本的な考え方に相違があるのではないでしょうか。我々は「医療は公共財」と考えています。「自分のもの」ではなく、「皆のもの」。医療リソースは大切に効率的に使わなければいけません。この発想を持っているか否かの相違は大きい。

 さらに最近、あまり言われなくなってきましたが、東日本大震災の際、「ジェネラリストをもっときちんと育成しておけば、より的確に対応できたのではないか」といった思いがあり、私自身はいまだ反省しています。そこでは急性期もですが、実は慢性期医療の継続がより大きい問題になると考えています。今後、南海トラフ地震なども想定されているので、総合診療専門医の育成については、災害対策という視点からも真剣に考えていく必要があるでしょう。

司会 先生方のお話をお聞きしていると、総合診療専門医の必要性については意見が一致しています。

【丸山】 一致しているからこそ、二つの学会は一緒にやってくることができたのです。病院、あるいは診療所で働く時は、それぞれプラスアルファの、積み上げた部分が必要です。ただ、今、議論しているのは、基盤部分の「基本領域」としての総合診療専門医なので、共通しているのは当然です。

【林】 基盤部分は共通。そして私も実家は開業医だったので、分かるのですが、診療所では検査でもある程度しかできず、「いったい何科に紹介したらいいのか」と迷う時があると思うのです。その際に、病院にも総合診療専門医がいれば、助かるでしょう。

【丸山】 どんどん患者像が複雑になっています。急性心筋梗塞などと診断が分かる場合には問題ないのですが、多くの問題を同時に抱えている人が現実には多い。その時に、総合診療を学んだ家庭医から、総合診療を学んだ病院勤務医へのバトンタッチか、あるいはその逆が一番効率よく、うまく行くでしょう。



https://www.m3.com/news/general/500323
高野病院常勤医、4月以降2人に
2017年2月5日 (日)配信朝日新聞

 東京電力福島第一原発事故後にも避難せず、診療を続けていた唯一の常勤医が火災で死亡した福島県広野町の高野病院で、病院を運営する医療法人「養高会」は3日、不在となっていた4月以降の常勤医を2人確保し、1人が院長を務めると発表した。

 病院のホームページに掲載された発表文によると、院長を務めるのは、高野英男院長(当時81)が亡くなる前から勤務を打診してきた医師。もう1人は内科の医師といい、4月以降は2人体制という。医師の名前など詳細は発表していない。



http://univ-journal.jp/11725/
東日本大震災、6万人超の健康調査結果を公表 東北大学と岩手医科大学
大学ジャーナルオンライン編集部 2017年2月5日

 日本医療研究開発機構らは、2013年~2015年度に東北メディカル・メガバンク計画の地域住民コホート調査に参加した63,002人分について分析し、その調査結果を公表した。

 東北メディカル・メガバンク計画は、東日本大震災からの復興事業として計画され、宮城県では東北大学東北メディカル・メガバンク機構、岩手県では岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構が事業主体となり、15万人の参加を目標とした長期健康調査。2015年度末までに参加募集を完了し、84,073人が調査に参加。今回は、そのうちの2013年~2015年度に宮城県内(28市町)および岩手県内(18市町村)の特定健康診査会場等で参加した63,002人分の調査結果を分析した。

 調査では、メタボリック症候群に該当する割合は男性24.8%、女性8.2%。男性は自宅被害なしの者に比べ、自宅が全壊した者は1.29、大規模半壊した者は1.26とリスクが高くなった。また、非喫煙者に比べ、喫煙者(1日20本以上)で男性1.13、女性1.98、非飲酒者に比べ、1日3合以上の者は男性1.12、女性1.67とリスクが高くなった。逆に身体活動量が高い者は1標準偏差上昇あたり男性は0.85、女性は0.88と有意にメタボリック症候群のリスクが低くなった。

 これらの結果から、震災による自宅の被害の程度は、喫煙・飲酒・身体活動量・心理的苦痛・抑うつ症状を考慮してもなお、統計学的に有意なリスク上昇との関連が認められた。このほか、内陸部に対して沿岸部では、心理的苦痛、抑うつ症状、不眠、およびPTSRのオッズ比が高いこと、高血圧等の治療中断率が高いことなどもわかった。

 今後は調査の分析をより進めるほか、調査でわかった抑うつ状態のハイリスク者、PTSR(外傷後ストレス反応)のため日常に支障を呈すると回答した参加者を対象に、機構専属の心理士が電話で経過を尋ね、必要に応じて、カウンセリングや相談に応じるなど支援活動を行っていく。2016年12月末までに、地域住民コホート参加者のうち、1,922名のハイリスク者に対して、3,880回の電話かけを行い、1,380名の対象者に支援を行ったという。

参考:【国立研究開発法人日本医療研究開発機構】震災被災地の健康状態―地域住民コホート調査より―
http://www.amed.go.jp/news/release_20170201-02.html



http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2017/02/post_14710.html
復興の取り組み発信 福医大、広島大、長崎大関係者ら 福島で「県民公開大学」
2017/02/05 11:36 福島民報

 公開講座「県民公開大学」は4日、福島市のホテル福島グリーンパレスで開かれ、放射線医療研究などで協力する福島医大、広島大、長崎大の関係者が原子力災害からの復興の取り組みを発信した。
 太平洋戦争で原爆が投下された広島、長崎両市や東京電力福島第一原発事故の被害を受けた県内の復興事業などについて県民に理解を深めてもらうため開催した。約150人が参加した。
 福島医大の竹之下誠一理事長特別補佐は国から高度被ばく医療支援センターの指定を受けるなどした震災、原発事故後の同大の取り組みを紹介した。「フェルメールとレンブラント 17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち」展が県内で開催されたことに触れ、世界からの支援に感謝した。
 竹之下氏、広島大の山内雅弥副理事、長崎大の関根一郎名誉教授による意見交換では、戦後の広島、長崎両市の再興で市民が大きな原動力になった経緯などを報告した。参加者は被災地の医療などを支えるため他大学と連携する大切さ、復興をけん引するリーダーの重要性を確認した。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/opinion/orgnl/201702/550031.html
「Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示のあり方についての勧告」を提示
DNAR指示は「治療不要」という意味ではない
日本集中治療医学会倫理委員会委員長の丸藤哲氏に聞く

2017/2/6  まとめ:増谷 彩=日経メディカル

 日本集中治療医学会は2016年12月16日、「Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示のあり方についての勧告」をウェブサイト上に掲出した。勧告では、この数十年で終末期医療のあり方に関する理解は深まったとする一方で、いまだに「DNAR指示の誤解」を続ける医療者がいるとして、再度注意を呼び掛ける目的で出されたものだ。今回の勧告が出された経緯とDNAR指示の正しい捉え方について、日本集中治療医学会で倫理委員会委員長を務める丸藤哲氏に聞いた。


丸藤 哲(がんどう さとし)氏●1978年北海道大卒。北海道大学病院、大阪府立病院、市立札幌病院などを経て、1999年より北海道大学病院先進急性期医療センター部長。

 2014年、日本集中治療医学会は日本救急医学会、日本循環器学会と共同で「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン~3学会からの提言~」を発表した。厚生労働省が2007年に公表した「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」も、同年度の2015年3月に改訂され「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」となった。これらのガイドラインが整ったことから、終末期医療のあり方に関する議論は一段落し、患者の尊厳を無視した延命治療の継続は大きく減少していると考えている。

 一方で、DNAR指示についてはいまだに本来の定義とは違う意味で用いられるケースがあると考え、日本集中治療医学会倫理委員会は2015年4月からDNAR指示のあり方に関する検討を開始した。2016年10月13日から27日までの15日間、日本集中治療医学会の評議員(メール送信数261通、回答率33.0%)、医師会員(メール送信数6588通、回答率9.0%)、看護師会員(メール送信数2352通、回答率16.3%)に意識調査を行った結果、根深い「誤解」が明らかになった。

DNARは「心停止時」の心肺蘇生不開始の指示
 調査では、評議員が所属する施設のうち1群、2群、3群の要件を満たす47施設でDNAR指示が出たときにどのような行為を差し控えるかを聞いた。その結果、差し控えるべき「心肺蘇生(CPR)」の割合が高いのは当然だが、DNAR指示とは無関係であるはずの非蘇生行為の終了・減量・差し控えがかなり高い割合で考慮されていることが分かった(図1)。中には、DNAR指示が出ている患者に対しては鎮痛・鎮静薬すら差し控える施設もあった。

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図1 DNAR指示で終了・減量・差し控えが考慮される医療行為(出典:日本集中治療医学会評議員施設および会員医師の蘇生不要指示に関する現状・意識調査1))
(*クリックすると拡大表示します)

 DNAR指示は本来、悪性腫瘍の末期など、CPRの適応がない患者が尊厳を保ちながら死にゆく権利を守るために「心停止時にCPRを行わないように」とするための指示である。DNAR指示によってCPR以外の治療を差し控えることにはならない。

 米国医師会(AMA)が1991年に公開したDNR(Do Not Resuscitate)指示に関するガイドラインでも、「指示は心停止時のみ有効であり、その他の治療内容に影響を与えてはいけない」ことを推奨している。数年ごとに改訂されてきた「Guidelines CPR and ECC」も、AMAのガイドラインを踏襲してきた。中でも、「ICU入室を含めて栄養、輸液、酸素、鎮痛・鎮痛薬、抗不整脈薬、昇圧薬など具体的治療名を挙げて、DNR指示により自動的にこれらの不開始、差し控え、中止をすべきではない」と繰り返し記載されてきたことは特に重要である。

 こうした結果を受け、今回の勧告では「1.DNAR指示は心停止時のみに有効である。心肺蘇生不開始以外は集中治療室入室を含めて通常の医療・看護については別に議論すべきである」「DNAR指示の下にCPR以外の酸素投与や気管挿管、人工呼吸器、補助循環装置、血液浄化法、昇圧薬、抗不整脈薬、抗菌薬、輸液、栄養、鎮痛・鎮静、ICU入室など、通常の医療・看護行為の不開始や差し控え、中止を自動的に行ってはならない」と示した。

DNARと終末期医療の混同は危険
 DNAR指示でCPR以外の治療が差し控えられてしまう理由は、終末期医療における治療の不開始、差し控え、中止にDNAR指示が含まれることがあるために、DNARと終末期医療が混同されていることにある。一部ではDNAR指示は治療をやめていいという指示だと誤解されている。DNAR指示が出ている患者でも、CPR以外の治療をやめるためには終末期医療に関する手続きを踏む必要があるが、それが全く守られていない。

 勧告では「2.DNAR指示と終末期医療は同義ではない。DNAR指示にかかわる合意形成と終末期医療実践の合意形成はそれぞれ別個に行うべきである」とした。さらに、「7.DNAR指示の実践を行う施設は、臨床倫理を扱う独立した病院倫理委員会を設置するよう推奨する」とし、倫理委員会はDNAR指示と終末期医療に関するマニュアルをそれぞれ作成することを強く推奨している。

合意形成はガイドラインに準じて行うべきだが…
 また、勧告では「3.DNAR指示にかかわる合意形成は終末期医療ガイドラインに準じて行うべきである」としており、DNAR指示や終末期医療の方針を決定するための合意形成は、厚労省の「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」や3学会合同の「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン~3学会からの提言~」の内容にのっとって行うべきだとした。

 厚労省のガイドラインでは、人生の最終段階における医療行為の開始・不開始、医療内容の変更、医療行為の中止などについて、多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきとしている。人工呼吸器や透析などを中止するかどうかは、こうした合意形成プロセスを経る必要があるということだ。正式なプロセスを経てDNAR指示が出された場合は、儀式のようなCPRを行うことなく、やすらかに死を迎えるべきだ。こうしたプロセスを踏むことなく、1人の医師が自分の価値観に基づいてDNARと決め、治療を止めるといったことが今回の調査で明らかになった。さらに、ガイドラインの存在を知りながら、DNAR指示を「無駄な延命治療をやめて尊厳を保って死を迎えさせること」と解釈する医師もいることも問題だと考えている。

 医師会員に対する調査で、DNAR指示を検討する際の判断や決定プロセスについて尋ねたところ、DNAR指示を検討する場合に本人や家族と話し合いを始める際に一番多いのは、「自分を含めた複数の医師と医療従事者で協議する」(42.7%)だった(表1)。

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表1 DNAR指示を検討する際の判断や決定プロセス(出典:日本集中治療医学会評議員施設および会員医師の蘇生不要指示に関する現状・意識調査)

 ただし、「自分と他の複数の医師で協議する」(25.4%)、「自分だけで判断する」(23.0%)という医師も少なくない。DNARを決めて実際に指示を出す際にも、16.4%が「自分だけで判断する」と回答した。評議員が所属する施設でも、DNARや終末期医療について患者や患者家族と話し合う際、医療・ケアチームで話し合いを行うことが義務づけられているという施設はわずか8.0%(ICUの方針としている施設を合わせても41.3%)にとどまった(表2)。

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表2 DNAR指示あるいは終末期医療の決定プロセス(出典:日本集中治療医学会評議員施設および会員医師の蘇生不要指示に関する現状・意識調査)

「POLSTは患者切り捨ての免罪符になりかねない」と危惧
 また、DNAR指示は患者が終末期に至る前の段階で出されている可能性がある。一度はDNAR指示が決まっても、その妥当性は繰り返して評価し、指示に関する合意形成をその都度行うべきである。しかし、患者や患者家族と方針を見直すことが義務づけられている施設は8.0%(ICUの方針としている施設を合わせても41.0%)のみとなっている。このことからも、「4.DNAR指示の妥当性を患者と医療・ケアチームが繰り返して話し合い、評価すべきである」と勧告している。

 終末期医療の議論は高齢者救急医療など近年存在感を増す課題もはらみ、他学会も動きを見せている。日本臨床倫理学会は、DNAR指示の諸問題の解決策として日本版「POLST(DNAR指示を含む)」を作成し、公開している。日本臨床救急医学会は救急隊が蘇生処置を中止する基準を策定しようとしており、現在「傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生のあり方に関する検討委員会報告書」案のパブリックコメントを募集している。こうした動きに対し、私はDNAR指示の誤解が完全に解消するまでは、「POLST(DNAR指示を含む)」などの議論は進めるべきでないと考えている。

 日本版POLSTは、米国のPOLST(生命維持治療に関する医師による携帯用医療指示書)を改変して導入したもので、米国でも導入以来有用とする声と根強い反対意見がある。POLSTは医療費削減の道具である、必要な医療を制限しているといった批判もある。誤ったDNARの認識が一人歩きしている状況の日本にPOLSTをそのまま導入すれば、患者がPOLSTを携帯していれば救急隊が搬送しない、あるいは高齢者を切り捨てる免罪符に使われるなど、転がるように悪い方に進むのではないかと懸念している。こうしたことから、今回勧告で「6.DNAR指示は日本版POLST―Physician Orders for Life Sustaining Treatment―(DNAR指示を含む)『生命を脅かす疾患』に直面している患者の医療処置(蘇生処置を含む)に関する医師による指示書に準拠して行うべきではない」と言及している。

 また、勧告には「5.Partial DNAR指示は行うべきではない」とも記している。Partial DNAR指示とは、CPRの内容をリストとして提示し、「胸骨圧迫は行うが気管挿管はしない」といったように、CPRの一部のみを実施するというものである。救命できない終末期でDNAR指示であるならば、CPRの全内容を行うべきではない。反対に、救命の可能性があるのであればきちんとCPRを行うべきだ。

 終末期医療の問題解決は、法律による運用ではなく、ガイドラインによって運用することが国レベルで認められてきた。しかし、医療従事者が専門家としての矜持と責任を持ってガイドラインを遵守する姿勢を見せなければ、医療従事者のプロフェッショナル・オートノミーは世間から信頼されなくなってしまう。医師自身がガイドラインを守らず、間違ったDNAR指示の運用をする現状が改善されなければ、これまで医療従事者が築いてきた終末期医療の実践に対する社会的信頼はたちまち崩壊してしまうだろう。


【参考文献】
1) DNAR(Do Not Resuscitation Attempt)の考え方
2)生命維持治療に関する医師による指示書(Physician Orders for Life-sustaining Treatment, POLST)とDo Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示
3)日本集中治療医学会評議員施設および会員医師の蘇生不要指示に関する現状・意識調査
4)日本集中治療医学会会員看護師の蘇生不要指示に関する現状・意識調査(看護師用アンケート)


  1. 2017/02/06(月) 05:51:43|
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