Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

1月24日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/493136
シリーズ: 2016年の医療界:1000人アンケート
2017年の目標、「昇給する」が上昇◆Vol.8
プライベートの目標は「運動」「家族との時間」

2017年1月24日 (火) 高橋直純(m3.com編集部)

Q 2017年の先生の仕事上の目標を3つまでお選びください。
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 2017年の仕事上の目標を複数回答(3つまで)で尋ねた。1人当たりの回答数は1.2だった。1位は2015年調査と変わらず、「特にない」だった(『職場変更や昇給を目指す、2016年度の目標◆Vol.7』を参照)。

 2位は「昇給する」で2015年調査の4位より上昇。3位は「職場を変える」だった。

 その他では「給与減額を避ける」「海外からの招聘講演をできるだけ引き受ける」「基礎医学の再学習」「診療できる科目を増やすこと」「勤務医への転進」「認知症診療・骨粗鬆症診療に力を注ぐ」などが寄せられた。

Q 2017年の先生の仕事以外での目標があれば、3つまでお選びください。
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 2017年の仕事以外の目標を複数回答(3つまで)で尋ねた。1人当たりの回答数は1.9だった。1位は「定期的な運動」、2位は「家族との時間を大切にする」、3位は「趣味を充実」、4位は「ダイエットをする」、5位は「休暇を取る」で、2015年調査と同じだった。毎年、回答結果に変化がないのはそれだけ実現が難しいということなのかもしれない。

 その他では「病気からの回復」「少しずつ身辺を整理する」「別業界の友人との時間を取る」などがあった。

回答者の勤務先
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【調査の概要】
・調査期間:2016年12月16日-2016年12月17日
・対象:m3.com医師会員
・回答者数:1015人(開業医338人、勤務医667人)



https://www.m3.com/news/general/496615
5~10歳若返った 虎の門病院の大内尉義院長 「高齢者って何歳から?」提言をまとめた医師
2017年1月24日 (火) 共同通信社

 日本老年学会などが現在は65歳以上とされている「高齢者」の定義を75歳以上に見直すよう提言した。とりまとめたワーキンググループの座長や、高齢者の現状に詳しい関係者に話を聞いた。

   ×   ×

 ―ワーキンググループの座長として提言をまとめた。

 「実態と合わなくなっているという意見は10年以上前からあって、2013年から3年かけて本格的に議論した。単に『定義を変えた』と宣言するのならすぐにでもできる。科学的データを基に医者だけでなく心理学や社会学の専門家も交え、国民の意識変化も踏まえて議論した。

 その結果、要介護認定率、受療率、死亡率など、さまざまなデータを見ても10~20年前と比べて5~10歳若くなっていた。

 分かりやすい例が、1946年から新聞に連載された漫画『サザエさん』のお父さん、波平の年齢設定で、54歳だ。今の平均的な50代のイメージとは懸け離れている。中身だけでなく見掛けも若くなっている」

 ―提言後の反応は。

 「歓迎の一方で批判も多く『年金受給開始年齢の引き上げを狙う政府に頼まれたんだろう』と勘繰る声もあった。学会はあくまで科学的な議論を踏まえて提案しただけ。社会保障制度や企業の定年制度などの在り方を決めるのは最終的には国民だ」

 ―「死ぬまで働かせるのか」という反発もある。

 「退職して元気なうちに趣味に打ち込みたい人もいるだろう。そういう人を無理に働かせるために提案したのではない。元気で『働きたい』『社会貢献したい』と望む人の受け皿づくりのきっかけにしてほしい、選択肢のある社会になってほしいというのが学会の基本姿勢だ。

 日本はこれから超少子高齢社会を迎え、若い人だけで地域社会や経済活動を支えるという仕組みは近いうちに限界が来る。支える側と支えられる側のバランスは大きく崩れるだろう。元気で経験豊富な人たちの力を生かさないのはもったいない。働いたり、社会貢献したりしている人の認知症発症率が少ないというデータもある。

 1年や2年で社会の仕組みは変わらない。超高齢社会でもみんなが豊かな暮らしを送れるよう、来るべき日に備えておく必要があると思う」

   ×   ×

 おおうち・やすよし 67歳。岡山県生まれ、東大医学部卒。専門は老年医学。2013年から現職。



https://www.m3.com/news/general/496519
山形)米沢市、地域医療法人創設へ
2017年1月24日 (火) 朝日新聞

 米沢市の中川勝市長は23日の記者会見で、地域医療の連携について考える検討委員会を設置したことを明らかにした。今後、市立病院(35診療科、322床)と市内にある三友堂病院(19診療科、190床)で「地域医療連携推進法人」をつくる方向で議論を進めるという。

 同法人は来年度から始まる新しい制度。県知事の認定を受け、地域内の複数の医療機関が参加する一般社団法人で、病床の融通や医師の再配置、医療機器の共同購入などができるようになるという。

 検討委の委員には、中川市長や三友堂病院の仁科盛之理事長、山形大学医学部の嘉山孝正参与らが就いた。オブザーバーは県の地域医療対策課長ら。両病院は老朽化から病棟の建て替えなどが課題になっているといい、中川市長は「救急医療などのため、どのような連携が必要か、1年ほどかけて協議したい」と話した。(石井力)



http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/398333
大町町立病院「新武雄」に譲渡 町議会可決
2017年01月24日 10時51分

■診療所で総合内科、整形外科

 杵島郡大町町の町立病院民間移譲問題で、大町町議会は23日、4月から町立病院を新武雄病院(武雄市)に経営譲渡する関連議案を賛成多数で可決した。譲渡額は3億5千万円。今後、入院病床が順次削減され、診療科目を減らして「診療所」として存続する。

 可決されたのは病院設置条例廃止議案と、病院の敷地約4600平方メートルと建物6棟(延べ床面積3400平方メートル)を、新武雄病院を運営する社団法人「巨樹の会」に3億5千万円で有償譲渡する議案。いずれも賛成7、反対2だった。

 採決前の討論では「有識者から十分に話を聞けたか」「民間移譲する根拠が薄弱で、町民との対話も欠いている」という意見や反対討論の一方、「有償譲渡で診療所が残り、病院間のバスも運行される。希望する職員の雇用も維持される」という賛成討論があった。

 水川一哉町長は議会後、「町民に賛否がある中、議会には重い決断をしてもらった。今後も地域医療充実のため医療機関や介護施設、周辺市町などとの連携に力を入れたい」と話した。

 大町町立病院の現況は、診療科目は外科、皮膚科など7科で入院病床は60床。常勤医3人を含めた正職員は52人、臨時職員は10人。移譲後は総合内科と整形外科を存続する。眼科も現医師を慰留する方向だが、存続のめどは立っていない。現在40人の入院患者は、新武雄病院などへの転院を勧めるが、期限は設けず状況に合わせて対応する。



https://www.m3.com/clinical/news/489783
新専門医制、混乱の根源は「画一化」
嘉山孝正・日本脳神経外科学会理事長に聞く◆Vol.2

2017年 年末年始学会理事長インタビューシリーズ2017年1月24日 (火)

――2016年の医療界の注目トピックスとしては、新専門医制度をめぐる動きがあります。先生は、日本専門医機構の「役員候補者選考委員会」の委員を務めたほか(『日本専門医機構の新理事候補、来週にも決定か』を参照)、全国医学部長病院長会議の立場でさまざまな働きかけをされていました。

 まずなぜ専門医制度改革が必要だったのかを考えてみたいと思います。1990年代に大学院重点化が進んだことが、根底にあるでしょう。大学院はあくまで研究組織ですが、その細分化の流れが臨床組織にまで及んでしまったという問題があります。

 東大の有名な「冲中内科」(1946年から1963年まで東大教授を務めた、冲中重雄氏による第三内科)では、内科的疾患を幅広く診ていた。しかし、今は例えば、消化器系でも、消化管、胃、肝臓、大腸など、それぞれ専門が分かれています。外科系も同様です。胃の手術だと思い、腹部を開けたら、複数臓器が癒着していたら、いったい誰が手術をするのでしょうか。

 こんなに細分化してしまったら、教育もできない。医療そのもののレベルが下がってしまう……。今回の専門医制度改革の議論で、そのことが露呈したのです。つまり、約20年かかって、ようやく軌道修正が図られようとしています。

 私が2010年3月まで医学部長を務めていた山形大学は、メジャー内科を残しています。例えば、第三内科には、神経内科、糖尿病・代謝・内分泌内科、血液内科にそれぞれ1人、計3人の教授がいます。しかし、主任教授は順番制です。各科別にも活動しつつ、全体での合同カンファレンス、会議などをやっており、専門外の領域についても、知識はブラッシュアップできる体制になっています。

――全国医学部長病院長会議と国立大学医学部長会議は11月11日、塩崎恭久厚労相と面談し、「実質医師数増員の提案」と「医師の地域への配置提案」を提出しています(『「医学部の暫定定員増、政府方針に」医学部長会議が要望』を参照)。

 慢性疾患のトリアージは、ゆっくり時間をかけても支障はありません。問題は急性疾患のトリアージとその対応。生命にすぐにかかわるのは、脳・心臓・肺の疾患、急性腹症の4つ。あとは抗癌剤やインスリンの大量投与を防ぐこと。したがって、脳や心臓の機能を維持するために血液を循環させる、呼吸を維持するために気管切開などを行う、急性腹症を見逃さないなど、生命に直結する事態に対応できる判断力やスキルを、どの診療科の医師も研修するようにすればいい。

――それは初期の臨床研修で行うのでしょうか。

 はい。例えば内科の研修でも、全領域を回る必要はなく、内科の急性疾患のトリアージとその対応について、教育すれば、さまざま事態に対応できる医師が増え、かつ2年間の臨床研修の期間も短縮できます。その結果、地域医療の崩壊も防ぐことができます。

 今病院の経営者が困っているのは、「使いものにならない医師」が来ること。内科でも腎臓しか診れないとか。大学病院など先進医療をやっている病院以外では、それでは困るのです。夜の当直のことを考えれば、想像できますが、脳・心臓・肺の疾患、急性腹症に対応できる医師をそれぞれ揃えたら、医師が足りなくなるのは当たり前。

――急性疾患への対応を中心とした研修であれば、臨床研修は1年で済むのでしょうか。

 はい。今は卒前の臨床実習が相当充実しているので、卒前教育で基本的な医行為を学び、卒後は内科や精神科など、診療科を問わず、急性疾患の全身管理を1年で研修する。気管挿管や気管切開をはじめ、侵襲的な行為を伴う医行為も学ぶ。徹底的に「人の命を助ける」ための研修を行い、その後に専門医研修に進む。我々の提案は、卒前の臨床実習から卒後の臨床研修、専門医研修までをシームレスに行うことが主眼です。

 もっとも、領域によっては、専門医の養成の在り方を変えてもいいのです。今は無理ですが、例えば今後、心臓外科を目指し、その研修過程で全身管理を学べるのだったら、卒後すぐに心臓外科に進んでもいいのです。各領域とも内容が違うのに、それを画一的にやろうとするから問題です。しかし、これは今後の検討課題です。

 今回、2017年度から開始予定だった新専門医制度がとん挫したのも同様に、「画一的」に進めようとしたことが一因だと考えています。

――それはどのような意味でしょうか。

 これまでは、「学会の専門医制度」。今回の新専門医制度で本来目指すべきは、「各基本領域の専門医制度を、各専門領域学会が運営し、担い、それに対し、日本専門医機構が助言・評価を行う」仕組みのはずでした。しかし、それがいつの間にか、日本専門医機構が全てをやる仕組みに変わってしまった。

 そもそも、日本専門医機構が、19の基本領域の専門研修プログラムを作成したり、専門医試験ができるはずはありません。専門医として必要な能力は何か、そのためにはどんな研修を受け、どんな講習会を聞かなければいけないのかなどは、各学会関係者しか分からないはずです。それこそがプロフェッショナルオートノミーであり、対象とする疾患から来る特殊性を加味せずに、画一的にやろうとしたから、混乱を招いたのです。例えば、皮膚科と脳神経外科の専門医養成の在り方が、同一であるはずはありません。 

――仕切り直し後の新専門医制度は、2018年度からのスタートが可能なのでしょうか。

 サブスペシャルティとの関係も含め、難しい検討を迫られる内科と外科の動向次第ではないでしょうか。

――脳神経外科の専門医は。

 脳神経外科は、以前から研修プログラム制を採用しており、今回の新専門医制度でもあまり変更点はなく、粛々とやっていきます。

 もっとも、脳神経外科の専門医制度には、「指導者」という資格制度は導入していません。資格化すると、受験が目的になってしまう。そうではなく、各基幹病院で研修プログラム制を導入し、そのトップがそのプログラムを運営する専門医を指名すれば、専攻医を指導する立場になります。専門医が指導者になるのは当たり前で、試験を通っていない指導できないのは、おかしい。

 残る課題は、高齢になり、メスを置き、手術をしなくなった脳神経外科専門医への対応です。手術をしなくてもカンファレンスなどに出席していれば、最新の脳神経外科学を学べます。患者さんから見れば、そうした医師を受診すれば、適切な専門医にトリアージしてもらえ、最適な医療を受けることができます。

 一方、内科系では、「メスを置く」などのキャリアチェンジはありません。だから専門医の更新基準も、基本領域ごとにそれぞれのやり方があっていい。つまり、各基本領域学会が、緻密に丁寧に専門医制度を構築すれば、混乱は生じなかったと思うのです。

 さらに言えば、専門医とは何か、と言う議論をしなかったから、混乱が起きたと思います。



http://synodos.jp/society/18984
被災地の病院が医師の不在で危機に――少子高齢化時代の地域医療を考える
坪倉正治×矢澤聰×伊藤由希子×荻上チキ
2017.01.24 Tue SYNODOS

福島第一原発事故から5年以上の間、双葉郡内唯一の入院可能施設として機能してきた高野病院。院長の高野英男氏がたったひとり、常勤医として近隣住民の診療にあたっていた。しかし昨年末高野氏が火災で亡くなったことにより、病院は常勤医不在の非常事態となっている。このニュースをきっかけに、医療過疎地域の現状に注目が集まった。少子高齢化の中であるべき地方医療の姿とは。地域医療の専門家たちにお話を伺った。2017年1月12日放送TBSラジオ荻上チキ・Session22「福島県・高野病院の事例から、少子高齢化時代の地域医療をどう支えていけばいいのか?」より抄録。(構成/増田穂)

■ 荻上チキ・Session22とは
TBSラジオほか各局で平日22時〜生放送の番組。様々な形でのリスナーの皆さんとコラボレーションしながら、ポジティブな提案につなげる「ポジ出し」の精神を大事に、テーマやニュースに合わせて「探究モード」、「バトルモード」、「わいわいモード」などなど柔軟に形式を変化させながら、番組を作って行きます。あなたもぜひこのセッションに参加してください。番組ホームページはこちら →http://www.tbsradio.jp/ss954/


ひとりの医師が地域医療を支えていた

荻上 本日のゲストをご紹介いたします。福島県相馬中央病院の医師で高野病院を支援する会のメンバーでもある坪倉正治さんです。後ほど埼玉で在宅医療を行う矢澤聰さん、東京学芸大学準教授の伊藤由希子さんにもご登場いただきます。よろしくお願いいたします。

坪倉 よろしくお願いします。

荻上 まず、高野病院はどのような役割を果たしてきた病院なのか、坪倉さんに伺います。

坪倉 福島第一原発から南22kmに位置する病院で、主に慢性期と精神科医療、寝たきりの方などの長期治療が必要な方や、精神科の患者さんが入院されていた病院です。

荻上 医療を継続して行うための重要な場所だったのですね。規模はどれくらいだったのですか。

坪倉 精神科と療養型の病床が約50ずつで、現在は100人ほどが入院されています。

荻上 第一原発から非常に近い位置にある病院ですが、事故後も避難せずに診療を行っていたのでしょうか。

坪倉 はい。病院のある広野町は原発事故の後一時的に避難区域になり、病院も避難の選択を迫られました。しかし、高野院長の決定によりそのまま診療が続き、これまで双葉郡内唯一の入院可能な医療施設として機能してきました。

荻上 こうした地域で医療が続けられることの意味とはどういったものなのでしょうか。

坪倉 医療の継続は、特に高齢者を中心とした地域の人びとには非常に重要なことです。現在の帰還政策でも、住民が帰還の意思決定をするにあたり、その地域の医療事情は重要な判断材料になっています。高野病院の場合双葉地区に唯一の入院施設ですので、地域の人びとにとっての重要性は非常に高いものです。

荻上 原発に近い地域では若い方の帰還が進まず、高齢化の傾向が見受けられます。高齢者医療を支える病院の存在はことさら欠かせなくなりますね。

坪倉 そうですね。やはりどの地区でも、放射線の影響を懸念して、若い世代は避難を継続し、相対的に高齢者が帰還する傾向があります。その結果高齢化が進み、必然的に医療の重要性は高まっています。また、高齢者世帯の増加に伴い、介護などの需要も増えているので、慢性的医療を行える施設の重要性が特に高い地域だと思います。

荻上 院長の高野英男さんはどういった方だったのでしょうか。

坪倉 何十年も地域医療に尽力されてきた方で、特に原発事故以後の6年近い期間、たった一人の常勤医として地域の医療を支えていました。もちろん非常勤の医師がサポートには入りましたが、ただひとりの常勤医として、連日の当直、100床強もの病床の見回り、緊急搬送、外来、検案と昼夜を問わず働かれていました。

荻上 ひとりの医師が全ての荷を背負っていたことで、その方ひとりが亡くなったことで地域医療が立ち行かなくなってしまった側面もあるのですね。広野町の住民の帰還状況はどうなのですか。

坪倉 報告では4,000人ほどの住民が戻られています。他にも除染や原発の作業員の方もいらっしゃいます。今後の帰還を考えている方にとってもインフラとして医療施設の存在は重要なものになると思います。


日本における地域医療問題の縮図

荻上 坪倉さんも、双葉郡同様原発に近い南相馬で医師として働かれていますが、こうした地域で医療が直面する課題とはどういったものなのでしょうか。

坪倉 どちらも医師、看護師、介護士などの医療者が非常に少ないのが問題です。双葉郡では病院がひとつしか開いていませんでしたし、南相馬では診療こそ続いていますが自転車操業状態です。医療者の負担はかなり大きいです。

荻上 福島での医療というと被ばく関連の話題が多いですが、こうした地域での医療では被ばくに関する検査も重要なのですか。

坪倉 実はそうではありません。もちろん放射能による汚染があったことは事実です。しかしこれまでの何十万回と行われてきた被ばく検査の結果から、福島県民の被ばく量は不幸中の幸いにも非常に低いレベルに抑えられていることがわかっています。

「健康」という意味では、放射線が直接与える影響は限定的です。より問題なのは、原発事故により社会構造や家族構成が変化し、それまで支えられてきた医療や介護が立ち行かなくなっている点です。新しい医療が必要とされているというより、もともと必要だった医療がさらに必要とされているイメージです。

荻上 住居や家族構成、地域との関わり方が変化することで行動が変わり、さまざまな健康問題として上がってきているわけですね。

坪倉 ええ。たとえば高齢者の方に何か症状が出た場合、2世代が同居していると子どもが病院に行くことを勧めたり、病院まで付き添ったりして早い段階で診療が可能になります。しかし、別居していると症状を我慢して診察が遅れ、診断やその後の治療に影響するのです。他にも家にサポートできる家族がいないことで、自宅療養なども難しくなります。結果入院が長引いたり、家に戻って症状がぶり返したりするのです。

現場の人間としては、原発災害における最大の課題は被ばくではなく、もともと存在した問題が社会変化により助長された点だと感じています。高野病院は慢性期医療として、それまで家族や周囲で支えられていた健康管理を一手に引き受けていました。今まさに被災地に必要な健康問題と向き合っていたのです。だからこそ、その維持が重要な問題になっています。

荻上 高野病院には精神科もあったそうですが、原発事故の影響による精神的なサポートの必要性についてはどうお考えですか。

坪倉 もちろん、うつやPTSDの患者さんへのサポートは欠かせません。しかし実態は例えば認知症高齢者が肺炎を発症し、家族が面倒見られないため入院していたり、家族や地域のサポートが難しくて入院していたりというケースが多くを占めます。こちらも社会環境の変化が複雑に絡み合ったもので、単純に原発事故によるトラウマの心理的サポートというわけでは全くありません。

荻上 高齢化による医療や健康の問題が集中して起こっているわけですね。1月3日には高野病院を支援する会で記者会見も行い、坪倉さんもお話をされていますが、具体的にメディアに伝えたかったことは何だったのでしょうか。

坪倉 何よりもまず、高野病院を守り広野町とその周辺の地域医療を維持しなければならないことを伝えたいと思いました。そして、被災地医療の現状です。献身的な医師がひとりで震災後5年以上もの間地域の医療を支えた話は確かに美談です。しかし医療がひとりに依存することで、その人がいなくなった時、全てがなくなってしまう。現在の被災地の医療はそうした非常に脆い状況の上に成り立っています。

医療はそもそも社会インフラの一つです。ヒーローの話をすると、次のヒーローが必要になります。そしてその新しいヒーローが倒れるまでやり続ける。構造的な問題を見落として、ヒーロー話を延々と続けるわけには行きません。こうした現状を直視し、今後どうやってみんなでよりよい町へ再生していくのか、もう一度考え直さなければならないという視点でお話をしました。

荻上 高野病院を支援する会で資金調達のため使用したクラウドファンディングでも、無事目標金額に到達したそうですね。

坪倉 有難いことです。今、高野病院は全国各地の医師がボランティアで業務を担当し、診療が継続されています。多くの医師からボランティア申し出ていただき、とても嬉しく思っています。クラウドファンディングも、こうした医師の交通費や宿泊費に当てようとはじめました。250万円の目標金額もすぐに達成し、多くの方から励ましの声をいただき、本当に有難いことだと思っています。

荻上 当初医師を入れるために250万円はとても少ないと思ったのですが、あくまで当座をしのぐため、ということなんですね。

坪倉 長期的に常勤医を雇うとなると、また話は別になってきます。とりあえずは1月〜3月のボランティアスタッフの交通費宿泊費を維持するための資金集めとして開始されました。ただ、4月以降の運営のためにも資金は必要です。おかげさまで目標金額には到達しましたが、将来のため今後も募金をお願いしていく予定です。

荻上 クラウドファンディングで寄付してくださった方の反応はいかがですか。

坪倉 多くの方が双葉郡の地域医療を守ろうとして助けてくださいます。心から感謝を申し上げたいです。皆様のお気持ちに大変励まされました。

公的な支援が不可欠

荻上 今回はクラウドファンディングで資金を集められましたが、持続可能性についてはどうお考えですか。

坪倉 もちろんボランティアは有難い話なのですが、善意だけでは限界があります。行政などが継続的に支援するシステムがないと長期的にはやっていけないでしょう。

荻上 高野病院は私立の病院ということですが、そもそも個人経営の病院には行政からの公的な支援は入らないのでしょうか。

坪倉 浜通りなど、原発被災地となった地域では、医療復興の目的で福島県主導の支援がいくらか行われています。具体的には、人件費に一部補助がでたり、看護師などの医療従事者の確保や就業改善のための補助金などです。しかし現状、それだけではやっていけません。

例えば、レストランなどの飲食店であれば、お客さんがいなければ店の運営は成立しない。しかし、人は飲食店が全く無いような場所には帰りません。どちらが先か、鶏と卵のようです。私立の病院にも現実問題として経営があります。負の循環に陥っています。特に避難地域では人口が少ない上、地域社会の変化で医療ニーズが流動的なので、どのような医療を提供すべきか不透明です。例えば、復興作業員のかたに対する医療と、高齢者に対する医療は異なります。救急と慢性期も異なります。こうした点をうまくカバーする行政支援と双葉地方全体の中でどうするのかという指針がないと、継続は難しいと思います。

荻上 広野町や福島県は高野病院の件に関心は持っているのでしょうか。

坪倉 広野町に関しては、火災当初から遠藤町長が動かれ、その後も継続的な支援を呼びかけてくださいました。町役場の方々にも献身的に支援していただいています。県の担当者も対応を考えてくださっていると聞いていますし、会議なども行っています。しかし手続きなどの関係もあり、こちらはまだ目に見えた成果には繋がっていません。

荻上 リスナーからのメールです。

「医療を含めたインフラの整備は、地元の人たちの生活には欠かせません。以前使用していた病院に医師が戻れば帰還も進むと思います。現時点で、どのくらい整備が進んでいるか、そうした動きを後押しする制度があるのか伺いたいです」

いかがでしょう。

坪倉 多くの方が尽力してくださっていますが、足りていないですし、この地域全体としてどのような医療を提供していくか、その大きな枠の中でそれぞれの医療機関がどんな役割を果たしていくのか。この連携がうまくいっていないのが実情です。既存の医療施設を使用することも、実は難しい問題です。以前からの施設を使えば人も集まりやすく、経済的にも負担減になるように思えますが、既存の私立病院を利用することは、利益誘導の問題になるといって行政は非常に及び腰になります。震災後これまでもずっとそうでした。現在、福島県立医大が主導で各地に小さい救急病院を設置する計画がありますが、以前とは別の場所に作る方向で計画が進んでいます。

例えば自営業のクリニックに関しても、もとの場所に戻って開業すれば援助をするといわれて戻ったとします。支援を頼りに戻ってみても、肝心の支援はいつ打ち切られるかわからない上、人口の動きや医療ニーズがどうなるかが不安定で、援助なしで経営が成り立つようになる目処も立ちません。なかなか開業に踏み切れないのが心情だと思います。残念ながら地域医療が震災前の水準に戻るまではまだ時間がかかりそうです。


医療過疎、1日がかりで通院する

荻上 なるほど。福島以外での地域医療の問題はどうなっているのでしょうか。こちらは埼玉で実際に地域医療に携わっている北本矢澤クリニック院長の矢澤聰さんに伺いたいと思います。まず矢澤さんの病院の位置と、どのような医療を行っているのか教えていただけますか。

矢澤 埼玉県の県央地域である北本市で、在宅療養支援診療所を運営しています。具体的には、進行がんの方や、脳梗塞後や神経難病で日常生活能力が低下している方、認知症の方、小児科の患者さんや精神疾患の方など、自力で通院が困難な方に対して、365日24時間対応で医師や看護師が自宅に出向いて医療を行う在宅医療サービスを提供しています。

荻上 在宅医療のメリット・デメリットとはなんなのでしょうか。

矢澤 メリットとしては、(1)自力での通院が難しい患者さんが通院の負担なく、診療を受けられること、付き添いの家族の負担が減ることがあげられます。埼玉の県央地域は高齢化が進む医療過疎地域です。短時間の治療を受けるために丸々1日かけて通院される方、それに付き添うご家族が少なからずいらっしゃいました。医師や看護師が訪問することでこうした負担が軽減されます。

(2)同時に、実際に医師が自宅へ行くことで、患者さんの生活がわかりますので、在宅介護をしやすいよう、医療器具、介護器具、福祉制度などについてアドバイスも可能です。より日常に近いかたちで負担の少ない療養生活を送ることが出来るのです。

(3)入院による治療では、一旦社会生活からは切り離されることになります。しかし在宅医療でしたら、家族や地域の中で変わらぬ絆を保ちながら療養生活を送れます。患者さんは安心した状態で療養でき、その結果周囲も安心する。そうすると患者さんも勇気づけられます。在宅医療のメリットですね。

一方デメリットとして、在宅医療は外来診療に比べると時間も手間もかかり、1人の医師が診察できる患者数も少なくなります。課題として、在宅医療を必要としている人に対して質の高い在宅医療をいかに安定的かつ確実に供給できるかという点があげられます。

荻上 埼玉の医療過疎は深刻な状況なのでしょうか。

矢澤 地域により異なりますが、当クリニックの周辺でも市街地を離れると状況は深刻です。先日も郊外のある地域で唯一運営されていたクリニックのご高齢の院長が、お亡くなりになり閉院になり、住民の方が困っているという話がありました。

荻上 高野病院と同じような状況だったわけですね。

矢澤 高野病院の話を聞いたときは、超高齢期社会における日本の医療の問題の縮図だと感じました。

荻上 一医師として、昨今の日本の医療過疎問題についてはどうお考えですか。

矢澤 坪倉さんからもコメントがありましたが、現在の日本の、医療過疎地域における医療は一人の医師の理念や情熱で何とか支えられている状況が少なくありません。このような、被災地や過疎地における医療システムの脆弱性を危惧しています。まちなか集積医療に代表されるように、効率的な医療提供システムを目指す動きもありますが、一方で住み慣れた地域で家族や仲間と共に暮らす幸福のかたちもあります。両者のバランスの取り方が重要な課題になると感じています。

荻上 矢澤さん、ありがとうございます。在宅医療は各地で議論されるべきテーマになるのですね。

坪倉 そうですね。埼玉、千葉、神奈川などの大都市は対人口比で医療者の数がより少ないことも問題にあげられます。あまりに人口が多く医療者が足りないので、病院のたらい回しなどの問題も増えてきます。病状が進行すると医者以外の介護者や家族のサポートも必要になりますが、そうしたことが共通認識としてまだまだ不十分なのも重要な問題ですね。

荻上 埼玉での医療過疎問題などは「首都圏なのに」という声もありますが、逆に首都圏だからこそということなのですね。

坪倉 そういうことです。


相互に欠かせない在宅医療と集積医療

荻上 政策的な問題についても考えて見たいと思います。こちらは「まちなか集積医療」に関する研究をされている東京学芸大学準教授、伊藤由希子さんに伺います。よろしくお願いいたします。

伊藤 よろしくお願いします。

荻上 医療の研究者の立場から、今回の高野病院のニュースはどう感じられていますか。

伊藤 高野先生の功績を非常に心強いと思うと同時に、やはり医療の社会的構造に問題があったと感じています。本来の医療は1人の医師が普通に働いて成り立つべきだと考えます。

荻上 現在の医療制度の問題点について、どうお考えでしょうか。

伊藤 現在の日本の医療体制は高度経済成長期に作られたものです。この制度に縛られ、変化する現状に対応できていないのが問題だと思います。

また、病院や病床が多すぎて、それを担当する医療者の数が足りないことも課題です。地方医療では特に医療スタッフが少なく、病床が増えることで医師はひとりで数多くの患者を担当しなければなりません。結果として医療が不十分になります。患者としても、そのひとりの医師が動けなくなることで医療サービスを受けられなくなるという不安定な状況です。

荻上 「まちなか集積医療」とはどういったものなのですか。

伊藤 多すぎる病院を減らすことで病院1件あたりの医療スタッフを充実させる試みです。同時に「まちなか」、つまり地域の中で現状最も利便性が高い場所にサービスを集め、アクセスしやすい仕組みを作ろうとしています。病院とその他の施設を併設するような仕組みも提案するようにしています。

荻上 点在する医療施設を一箇所に収斂することで地域の拠点を作る試みということでしょうか。

伊藤 その通りです。患者さんもそこに行けば包括した支援が受けられることになります。スタッフもそこで業務分担が可能になり、患者と医療提供者双方にメリットになります。集中投資もしやすく、限られた医療資源の中で持続可能な体制を築くには有効な手段だと考えています。

また、病院の数が多すぎるために、必要な病院と不必要な病院が区別されていないので、まずはこの判断が必要ですね。同時に、そこに効率性だけを追求するのではなく、患者が望む療養生活が送れるよう選択肢を多く残すことが必要です。このバランスを見極めて体制を整えていかなければなりません。

荻上 集積医療と在宅医療の連携は可能なのですか。

伊藤 まちなかに医療機関が集積することでその後の日常的なケアが受けられないようなことが起こらないようにするためにも、在宅医療の充実は不可欠です。集積医療設備を充実させ、急性期の症状に対応できるようにすると同時に、そうした患者が快復した後、ケアを受けられる在宅医療の仕組みが必要です。

荻上 国内での集積医療に関する議論はどの程度進んでいるのでしょうか。

伊藤 近年各地の病院の老朽化や公立病院の経営難から、建替え事業や病院の再編成が進んでいます。この動きの中で、地域がそれぞれうまく方針を決められるかが鍵になってくるでしょう。

荻上 医療従事者同士のネットワークの構築も必要になってきますね。

伊藤 ええ。今までは公立と私立の運営形態が異なることで鍔迫り合いが多かったのですが、こうした枠も超えて取り組む必要性がありますね。具体的に取り組みが進んでいる地域もありますので、今後の経緯を見守っていきたいです。

荻上 伊藤さんありがとうございます。まちなか集積医療と在宅医療、一見相対する発想のように見えますが、同時に行うことで患者第一の地域医療を進めていけるという話でした。坪倉さん、いかがですか。

坪倉 高野病院の一件を通して感じるのは、我々の健康は地域が守っているのだということです。周囲の人との繋がりや、暮らしに必要な社会インフラが整備され、医療者介護者同士もつながって、情報共有されていることが重要であり、病院はその一部でしかないのです。現在の医療需要と供給の不一致は最適化されなければなりませんが、病院や医師の数だけ増やせば健康が守れるわけではありません。地域が健康を守ることを人々が理解し、ネットワークや繋がりを再構築していく必要があるでしょう。

荻上 地域の人々の参画のもと、現状の設備などを活かしつつ町づくりの文脈の中で総合的に議論していく必要がありますね。坪倉さん、本日はありがとうございました。


■高野病院を支援する会のクラウドファンディングサイトはこちら
https://readyfor.jp/projects/hirono-med
***現状の動向なども報告しております。ぜひご覧ください。***



https://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201701/0009857811.shtml
丹波市の新県立病院 開院遅れ、19年度上半期に
2017/1/24 20:33神戸新聞

 兵庫県立柏原病院と柏原赤十字病院(いずれも丹波市柏原町柏原)が統合・移転する新県立病院について、開院時期が当初の「2018年度内」から「19年度上半期」へとずれ込む見通しとなったことが24日、県への取材で分かった。昨年実施された建設工事の入札が不調となり、完成が遅れることが影響した。県は資材価格などの設計を見直して20日に再入札を公告しており、3月7日に開札予定。(岩崎昂志)

 新病院は同市氷上町石生に建設予定で、鉄骨造り7階建て。同じ敷地内に、丹波市が「市地域医療総合支援センター(仮称)」と市立看護専門学校を一体的に整備する予定で、関連施設は県が一括で設計や発注を行う。

 県は昨年10月、病院棟や同センター棟、渡り廊下、外構工事などの一般競争入札を公告。しかし、11月の開札では参加業者の入札額が予定価格を上回り、不調に終わった。県は資材価格の高騰などが原因と分析している。

 工事は約2年かかる見通しで、当初は18年12月完成、移転準備を経て19年3月までの開院が想定されていた。再入札をすることにより、工期は19年3月20日までとされ、移転期間を含めると18年度内の開院は困難となった。

 また、工事スケジュールは、同センター開業や看護専門学校移転、柏原赤十字病院閉院のそれぞれの時期にも影響。県病院局は「建物の完成が最優先。再入札で年度内に契約を実現し、着工したい」とし、柏原赤十字病院は「(閉院時期などは)今後検討しなければならない。新病院がうまく動き出せる準備は着実に進めたい」としている。



https://gomuhouchi.com/serialization/3242/
連載コラム「つたえること・つたわるもの」⑨
〈ことば〉で伝えにくい「つらさ」を聴く、触れる、診る。

出版ジャーナリスト 原山建郎
2017-01-24 ゴム報知

 2013年の冬、ファイザー㈱・エーザイ㈱によるプレスセミナー「『痛み』をめぐる医療と言語研究がもたらす新たな可能性」のレジュメと「47都道府県比較:長く続く痛みに関する実態調査2013」(2013年9月発表)の配布資料を入手した。そこで、当時、東洋鍼灸専門学校で講じていた社会学の授業で、『「痛み――ことばでは説明できないつらさ」を聴く・触れる・診る』をとり上げた。たとえば、整形外科など標準的西洋医学が苦手とする「痛み(疼痛)の除去」は、鍼灸治療など東洋物療では得意分野なのだが、実際に患者の訴えを「聴く、触れる、診る」手がかりとして、ことばによる「痛み」表現のとらえ方が重要となる。

 また、プレスセミナーで注目されたトピックは、2011年3月11日に発生した東日本大震災の救援活動に入った医療チームが、東北地方の方言、とくに被災地(福島・宮城・岩手)の高齢者が訴える「つらさ」を理解するのに苦労した経験から、翌2012年3月、岩手県出身の竹田晃子さん(国立国語研究所非常勤研究員)が作成した『東北方言オノマトペ用例集』(https://www.ninjal.ac.jp/pages/onomatopoeia/)である。用例集の表紙には、おばあちゃんが訴える「のどぁ ぜらぜら」に耳を傾ける医師の姿が描かれている。「ぜらぜら」とは「のどに痰がからまって鳴る」様子をあらわす、青森・岩手地域の〈ことば〉だそうだ。

 オノマトペとは、自然界の音や声(擬音語)、物の形状や動き(擬態語)のことで、かつて文字をもたなかった上代日本の話しことば(やまとことば)は、オノマトペの音韻から生まれた〈ことば〉である。

 身近なところでは、戸を開ける音(カラカラ、ガラガラ)、花びらが散るさま(ハラハラ、バラバラ、パラパラ)、痛みの訴え(ヒリヒリ、ビリビリ、ピリピリ)などが挙げられるが、日本語を母語として育った私たちには、それぞれ清音・濁音・半濁音で伝わる「からだ感覚」の微妙な違いを理解することができる。

 webサイト「メディカル・オノマトペ」で、竹田さんは「母語としての方言」の重要性を訴えている。

 オノマトペには、体調や気分を表す表現がたくさんあります。共通語では、痛みをシクシク、キリキリ、ズキズキなどと表現することがありますが、各地の方言にも独特なオノマトペがあります。(中略)方言は、地域で暮らす人の生活を支える母語です。方言をなくすのではなく、方言を使う人と使わない人とが互いの立場を尊重しながら、必要に応じて意思の疎通を円滑に行うことができる社会を目指して 、医療現場の協力を得ながら、この問題に取り組みたいと考えています。
(『東北方言オノマトペ用例集』の取り組み)

 普段は共通語(標準語が母語)で暮らす私たちもまた、「痛み」を訴えるとき、【ズキズキ・ズキッ・ズキリ・ズキン・ズキンズキン/チクチク・チクリ・チクン・チクッ/ズンズン・ズーンズーン・ズン・ズーン/ガンガン・ガーンガーン・ガーン/ギシギシ・ギシリ・ギシッ/ゴリゴリ・ゴリッ/ジンジン・ジーン・ジン/ビリビリ・ビリリ・ビリッ/ピリピリ・ピリリ・ピリッ……】などのオノマトペを使い分けている。

 「痛みに関する実態調査2013」には、〈お国ことば〉で伝える「痛み、つらさ、苦しさ」が紹介されている。たとえば、同じ「痛み」であっても、各地特有のオノマトペを通して、からだの悲鳴が聞こえてくる。

【ワクワク:頭痛(中国・四国地方)/ハチハチ:頭痛(中国・四国地方)/ニシニシ:腹痛(香川)/ウラウラ・マクマク:めまい(東日本)/キヤキヤ:胃痛(関東・中部地方)/カヤカヤ:のどの不調(静岡)/エキエキ:暑苦しい(秋田・山形)/ゾミゾミ:悪寒(岐阜)/タクタク:足の疲労(島根)……】

 また、「つらい」「苦しい」の訴え表現にも、〈お国ことば〉ならではの多彩なバリエーションがある。
【あんばいわるい、うい、えらい、おぶない、かなしい、きつい、こわい、しょうない、しろしい・しろしか、しんどい・しんどか、ずつない・ずつなか、せちい・せつない、せんない、たいそな、てきない、なずむ、なんぎする、のさん、ひどい、むずかしい、ものい、よわる……】

 竹田さんは、「実態調査」結果から、医療現場における「痛みのオノマトペ」の積極的活用を訴える。
①痛みは把握が難しいため、症状を医師・看護師に理解してもらうには、何とかして伝える必要がある。/②しかし、診療の場では、患者はしばしば自身の痛みをうまく説明できていないという実態が明らかになり、痛みの症状伝達の難しさが浮き彫りになっている。/③その一方で、「痛みのオノマトペ」を用いて表現すると、医師・看護師の理解獲得に手応えを感じる患者が多い。/④医師・看護師が患者と同じ表現(オノマトペ・方言)を使うことによる効用がみられ、コミュニケーションの活性化を通じて、よりよい診療の実現が期待できる。

 「お国なまりは、お国の手形」ともいう。〈お国ことば〉による相互理解が、強く求められる時代の到来。

【プロフィール】
 原山 建郎(はらやま たつろう) 
 出版ジャーナリスト・武蔵野大学仏教文化研究所研究員・日本東方医学会学術委員



https://www.m3.com/news/general/496635
【栃木】国際医療福祉大、新病棟など建設 こども園も 17年度着工、那須塩原市財政支援へ
2017年1月24日 (火) 下野新聞

 【那須塩原】国際医療福祉大(大友邦(おおともくに)学長)グループは19日、井口の同大病院敷地内に新病棟のほか、研究棟、宿泊棟、認定こども園などを2018年度中に整備する構想を明らかにした。市と共に同日、市役所で記者会見して発表した。総事業費は約100億円。市は固定資産税相当額の奨励金を交付する企業立地促進条例を制定し、最大で5年間事業を支援する方針。

 同グループによると、同病院(353床)は55床を増床する予定で、増床分を新たな病棟(6階建て、延べ床面積約1万平方メートル)として既存病棟に併設する。

 さらに千葉県成田市に4月、同大医学部キャンパスを開設するのに伴い、学生の臨床実習先となる研究棟、学生や教授らの短期滞在先となる宿泊棟(116室)も病院敷地内に建設。宿泊棟はレストランや大浴場を備え、一般にも開放する。いずれも17年度中に着工し、18年度に完成する。

 認定こども園はグループの社会福祉法人が病院敷地内に建設。病院職員以外の子どもも受け入れる。このほか特別養護老人ホームの増床も計画しており、グループで新規に250人を採用する方針だという。

 一方の市は支援策となる条例を新たに制定。固定資産税相当額の奨励金を最大5年間交付できる内容で、市議会3月定例会に条例案を提出。可決されれば4月から施行され、同グループが適用第1号となる見込み。

 会見に臨んだ君島寛(きみじまひろし)市長は「国際医療福祉大グループの新たな事業は市民の安全安心、ひいては本市の魅力向上につながるもの」と述べ、桃井真里子(ももいまりこ)病院長は「那須塩原市の支援を得てよりいっそう市民の健康、より良い生活に貢献できるよう努力していきたい」とコメントした。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/clinic/scout/201701/549853.html
医師ヘッドハンティングの舞台裏
病床機能再編で医師の大移動が始まる?

武元 康明(半蔵門パートナーズ)
2017/1/25 日経メディカル

 年末はギリギリまでインタビューのお約束が入っていました。例年以上に、この時期でも、「会って話したい」と言ってくださるエグゼクティブサーチ(ヘッドハンティング)の候補者の先生が多かったからです。

 実際、昨年お目にかかった先生の数は過去最高となりました。時代が変わりつつあることを敏感に感じ取り、危機感を持たれているようです。

 「今後の医療界の動向について知りたい」「今すぐというわけではないが、今後の身の振り方を考えるうえで中長期的に備えておきたい」という先生が目立った気がします。

 では2017年、医療提供体制はどう変わっていくのでしょうか。医療分野のヘッドハンティングを手掛ける立場で医療界を見ている者として、個人的な見立てを述べさせていただきたいと思います。

 今、医療界では医療提供体制を巡るパラダイムシフトが起きています。これまでの改革は厚生労働省主導で実施されてきており、改革の焦点は、増大する医療費をいかに抑制するかなどが中心でした。しかし、これからはさらに大きな枠組みでの改革が進められるのは間違いありません。なぜなら21世紀、医療産業は経済成長の有力なエンジンと目されているからです。安倍政権が掲げる「成長戦略」の柱の1つとしても、医療が掲げられています。

 労働政策研究・研修機構の「平成27年労働力需給の推計」によれば、2014年から2030年にかけての産業別就業者数の増加数が最も大きい産業は医療・福祉で、163万~215万人増えるとされています。つまり、これだけの雇用が創出されると見込まれているということです。2番目に増加数が多い情報通信業は14万~36万人ですから、あらゆる産業の中でどれだけ際立った成長分野であるか、ご理解いただけると思います。

地域活性化やまちづくりの一翼を担う存在に
 では、医療をいかに経済成長のエンジンにしていくのか。これは高齢社会や人口減少に対抗する国家戦略でもあり、財政問題とも大きく関係しています。(臨床研究中核病院や治験中核病院などを除く)医療機関が単に利益を上げるだけではなく、医療事業収入を地域に還元し、雇用を生み出し、それに付帯する事業を立ち上げる。地域活性化やまちづくりの中で医療が一翼を担う存在となっていく。こうした社会を支える産業へと進化させようとしているように感じます。中には既にそうした環境が表れているところもあります。

 さらに医療界は、輸出産業として日本経済をけん引することも期待されています。日本の医療技術、臨床力はそれだけの素地を持っていて、まさに今がチャンスといえます。

 医療が「経済のエンジン」「まちづくりの中心」「新たな輸出財」などの役割を担う。このような壮大な目標に向かって大改革が進めば、当然、現場にも大きな地殻変動が起こります。ではこうした動きが医師の転職にどう影響を与え、具体的にどんな求人が増えるのでしょうか。

 医療界がそれだけ大きな役割を担うには、一つひとつの医療機関が担うべき機能を明確化し、実践していくことが当然必要です。そう考えれば、既に始まった、医療機関として(あるいは地域で連携して)患者を急性期から看取りまで一元的に管理する体制づくりや急性期医療の機能強化、急性期以降のステージを担う病床や在宅医療、健康増進の取り組みの拡充といった動きが加速するのは間違いありません。

 そうなると、現時点で急性期医療に携わっている先生が今後も、そのままの立ち位置でいられるかどうかは非常に不透明になります。現状維持でいられる勤務医の先生方と、別のステージに転換する方の割合はどの程度なのか。大げさかもしれませんが、私はそれが「半々」となるくらいインパクトのある動きになると考えています。

 現実に、私どものクライアントにも、病床機能再編により急性期後のステージまで担う方針を打ち出す施設が増えており、それに伴い、回復期や慢性期、さらには在宅医療において「専門領域を持ちつつ、ジェネラルに対応できる」医師のニーズが急速に高まっています。この傾向はますます顕著になっていくはずです。

 こうした改革が現場にもたらす影響の大小、とりわけ医師流動化は関東・甲信越を境に東日本と西日本、都道府県別、そして都市部か地方かで傾向は全く異なります。病院数が多い都市部であれば「ブティック型経営」、つまりカバーする分野を限定してブランド力を高めるという運営も可能なので、医師も自分の専門領域の中だけで生きていくことが可能かもしれません。

 ただそれでも、急性期病床に関しては、病床機能再編の影響から減っていくことは避けられません。もし、今の勤務先で望むような働き方やポジションが見当たらなければ、他の病院に移ることも選択肢となるでしょう。

 一方、地方の病院の中には「百貨店型経営」として多様な領域をカバーしているところが多く、医師1人でより幅広い範囲をカバーしないといけません。過疎地に行けば行くほど、医療機関としてジェネラルな方向性が不可欠になります。

 しかも今後は、まちづくり(地域包括ケアシステム)への関与を背景として、在宅医療・介護の強化、さらには地域医療連携推進法人制度による法人間連携など、病院によっては業務がさらに多様化するでしょう。実際、弊社のクライアントにも、まちづくりを意識して医療・介護に付随する公益性の高い事業に着手するところが幾つか現れています。それに合わせ、働く人材も地域との接点が必要とされ、とりわけ調整力やコミュニケーションスキルは重要になると思われます。

 一連の再編は、2018年の診療報酬と介護報酬のダブル改定を受け、より活発化するでしょう。各都道府県の「地域医療構想」策定の動きなども見ていれば、勤務先の病院が担うポジション、病院統廃合など今後の方向性がある程度見えてくるはずです。

 となれば、先生方も「このまま今の病院にいて自分の能力を発揮し続けられるか否か」の判断がつくので、これから医療界全体で医師の流動化が進むとみています。病院側も、今後の事業展開をにらみ様々な領域、ポジションの求人を行うでしょう。ただ、魅力あるポジションは一連の人材流動化を背景にこの1~2年で確保が進み、その後は徐々に減少すると予測しています。

 これだけの地殻変動は医療業界で初めてのことかもしれません。激動の時代で生き残っていけるのは、先を見据えた明確な経営ビジョンを描き、成長軌道に乗れる病院だと思います。先生方が、自分がやりたい医療を続けるためには、ぜひこの点を知っておいていただきたいと思います。こうした病院は人を大切にし自由度が高く、持てる能力を存分に発揮できるはずです。医療界のパラダイムシフトをプラス思考で捉え、自らのキャリアアップに結びつけていただきたいと願っています。


  1. 2017/01/25(水) 05:50:11|
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