Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

11月18日 

https://medical-tribune.co.jp/news/2016/1118505702/
岩手271人、神奈川など3県ゼロ...都道府県機関への医師派遣に地域差
yomiDr. | 2016.11.18 13:05〔読売新聞〕

 医師の地域偏在を解消するため、医師の派遣や配置調整の司令塔として都道府県に設置された地域医療支援センターの派遣実績に、最大271人から0人まで大きな格差があることが、厚生労働省の調査で分かった。
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 同センターは、地域の医師不足の状況を医療機関ごとに把握し、大学病院や地元医師会などと連携して若手医師らの派遣・配置調整を担う。2011年度以降、各都道府県に設置された。同省が、全都道府県を対象に、センター設置後から今年7月までの実績を調べたところ、派遣・配置調整の人数は計2963人だった(へき地などに医師を派遣する自治医科大卒業生を除く)。

 都道府県別では、岩手県が271人、香川県が221人と多かった一方、神奈川、鳥取、愛媛の各県は0人だった。人口10万人あたりの病院勤務医数が最も少ない埼玉県は4人にとどまった。

 今年度から、大学卒業後9年間を目安に特定地域内の医療機関で勤務する「地域枠」出身の医師が働き始めたが、これらの医師の配置調整もセンターの主要な業務となる。

 同省地域医療計画課は、「センターの設置時期は一律ではないが、偏在解消対策に対する意識に温度差があるのは事実。今後、地域枠の医師を適切に活用できるか不安が残る」と話している。



【地域医療支援センター】 都道府県内の医師の地域偏在を解消するため、医師の派遣や配置調整を行う機関で、大学病院や県庁内などに設置されている。2011年度に国の補助事業として始まり、14年10月に医療法改正で設置が努力義務とされた。現在は消費増税分を財源とした基金を活用して運営されている。

(2016年11月18日 読売新聞)



http://www.huffingtonpost.jp/hideki-komatsu/control-medical_b_13060742.html
医系技官を訴えた理由:統制医療が日本を滅ぼす
小松秀樹  医師
投稿日: 2016年11月18日 11時28分 JST 更新: 2016年11月18日 11時28分 JST ハフィントンポスト

●公務員個人に対する損害賠償請求

私は、厚労省元結核感染症課長井上肇氏(現在世界保健機関出向中)と千葉県医療整備課長高岡志帆氏を東京地裁に提訴した。第1回口頭弁論が、11月30日午前10時15分、631号法廷で予定されている。多くの方に傍聴していただきたい。

両氏とも本籍は厚労省採用の医系技官だ。公務員が民間人である私の言論を封じるために、医療法人鉄蕉会の経営者に厚労省の内部情報を漏洩して、私を懲戒解雇するよう求めた。2015年9月25日、私は懲戒解雇になり職を失った。

言論を抑圧するために、民間医療機関に対して職員の解雇を強要することは、公務員としての活動ではありえない。そこで、国家賠償請求訴訟ではなく、個人の不法行為に対する損害賠償請求訴訟とした。

●経営者は私の言論活動に協力していた

私は、医師だが、十数年来、言論人としても活動してきた。経営者は、今回の事件まで私の言論活動に協力的だった。亀田総合病院亀田信介院長は千葉県医療審議会の専門委員だった。

信介氏との議論が、病床規制や東千葉メディカルセンター問題について執筆するきっかけになった。信介氏から千葉県医療審議会に提出された資料を提供された。

2013年10月、私は、医療法人鉄蕉会理事長亀田隆明氏の要請で、規制改革推進会議で病床規制の問題点を指摘した。隆明氏は、控除対象外消費税についての私の論考をきっかけに、その是正を求める運動を始めた。

●高岡志帆課長の虚偽通告とその破綻

私は、亀田信介院長の強い要請により、2013年度から3年間の予定で、亀田総合病院地域医療学講座で地域包括ケアに関する映像シリーズ、書籍、規格を作成していた。

予算は国の地域医療再生臨時特例交付金から支給されたものだ。2014年度の交付決定通知を受け取っていたが、2015年5月1日、高岡氏らから、予算がなくなったことを理由に、2014年度の予算を削減し、2015年度については事業を中止すると通告された。

地域医療再生基金管理運用要領によれば、厚労大臣の承認なしに、都道府県の役人の恣意で事業を中止できない。それ以上に、予算の流用は許されることではない。

私は、予算が何に使われたのか、いくら残っているのか厳しく追及した。亀田隆明理事長も怒りを露わにして、自治体病院に出向させている医師を引き揚げると脅迫めいた言葉を口にした。

5月15日、隆明氏は、態度を急変させ、私を外して、1対1で県と交渉すると言い始めた。隆明氏は、それまでの経緯、活動内容を知らない。公金が投入されており、外部の映像制作会社、出版社、名だたる専門家が作業に関わっていた。

私には個別医療法人を超える責任が生じていた。私が反対すると、隆明氏は、交渉するのではなく、千葉県の不正を高岡氏に伝えるのだと発言を変えた。不正を行った本人に不正だと訴えても意味はない。

私は、予算を確保するために、鉄蕉会内部の弁護士と相談の上、「亀田総合病院地域医療学講座の苦難と千葉県の医療行政」をMRIC(メールマガジン)に投稿して千葉県の対応を批判した。2015年5月27日、狙いどおり、高岡氏は虚偽を認め、予算が残っていることを明らかにした。

2014年度予算については、決定通り交付されることになったが、2015年度予算について、態度をあいまいにした。まだ流用をあきらめていない。そこで、県を押し込むために「千葉県行政における虚偽の役割」をMRICに投稿した。出来事をできるだけ正確に再現して、千葉県の対応を批判した。

●言論抑圧と懲戒解雇

2015年6月22日、亀田信介院長に内密の話があると呼び出された。厚労省の職員から私の行政批判を止めさせろ、今後も書かせるようなことがあると、補助金を配分しないと脅されたという。

言論抑圧は大問題だ。私は、信介氏との会話の記録を作成し、信介氏に確認を求めたが、修正の要請はなかった。その上で、信介氏には、大変なことになるかもしれないので、相手と接触しないよう忠告した。

2015年7月15日、言論抑圧を仕掛けたのが、イノウエハジメカチョウだとの情報を得た。結核感染症課長の井上肇氏ならば、亀田総合病院では有名な名前だ。

保健医療担当部長として千葉県に在職していた当時より、亀田隆明理事長と懇意にしていた。当時の厚労省の幹部名簿には、イノウエハジメという課長は他に見当たらなかった。

言論抑圧を放置すれば、医系技官の乱暴な支配がさらに強まる。2015年8月17日、私は、知人の厚労省高官に、作成途中の厚労大臣あての、調査と厳正対処を求める文書の原案を送って、手渡す窓口と日時を相談した。

2015年9月2日11時18分、高岡医療整備課長から、隆明氏に、メールが送付された。

すでにお耳に入っているかもしれませんが、別添情報提供させていただきます。補足のご説明でお電話いたします

メールには、私が作成した厚労大臣あての文書原案と「千葉県行政における虚偽の役割」が一つのPDFにまとめられて添付されていた。十数分後、隆明氏は、別の人物に電話で状況を説明した後、メールをそのまま転送した。隆明氏は、私を9月中に懲戒解雇すると語ったという。

2015年9月14日、懲戒手続きが開始された。弁明の機会付与通知書には「メール、メールマガジン、記者会見等、手段の如何を問わず、厚生労働省及び千葉県に対する一切の非難行為を厳に慎むことを命じます」と書かれていた。

処分通知書は、「貴殿は、職務上及び管理上の指示命令に反し、亀田総合病院副院長の名において、厚生労働省に、2015年9月3日付け厚生労働大臣宛書面を提出し、同省職員の実名をあげ、調査と厳正対処を求める旨の申し入れを行った(懲戒処分原因事実3)」と締めくくられていた。

大臣あて文書の記載内容に異議を唱えることなく、記載内容を前提に、公務員の不正について調査と対処を要請したことが、懲戒処分の理由として記載されていた。

申し入れ書は、公益通報に相当し、秘密にされるべきものだ。これを理由にした懲戒解雇などあってはならない。

●計画経済は複雑多様化した世界に対応できないばかりか、専制、腐敗を招く

私は、計画経済的な医療統制を批判しつづけてきた。これが言論抑圧の背景にある。

上意下達のヒエラルキー的な統制は、組織の頂点しか、環境を認識してそれに対応することができないため、医療の営為を画一化し、硬直的にする。統制は、医療が複雑多様化している中で、失敗を繰り返してきた。

計画経済は、行政が強大な権限を持つため、専制を招く。腐敗と非効率は避けられない。旧共産圏では、現場の活力を奪い、製品やサービスの質と量の低下を招いた。計画経済を運営することは人間の能力を超えている。

●統制医療の大失敗:首都圏の医療・介護供給不足

明治以後、日本では医学部の配置が西日本に偏っていた。1970年以後の1県1医大政策でこの格差が広がった。

例えば、四国(1970年人口390万人)の医学部数は1から4に増えたが、千葉県(1970年人口337万人)は1のままだった。1985年の病床規制導入後、入院診療への新規参入が抑制され、許可病床が既得権になった。

許可病床数を決めるための基準病床数の計算方法が現状追認的だったため、医療提供量の西高東低の地域差が固定された。

高度成長期、団塊世代を中心に、首都圏近郊への人口集中が進み地域差がさらに拡大した。2015年、四国4県の人口は385万人に減少したが、千葉県の人口は622万人まで増加した。千葉県では、看護師が極端に不足しているため、許可病床のすべてが開床できるわけではない。

医療格差が団塊世代の高齢化で急速に拡大しつつある。2015年、団塊世代全員が65歳以上になった。2025年には75歳以上になる。65歳から74歳までの要介護認定率は4%だが、75歳以上では30%になる。2030年、首都圏で75歳以上の高齢者人口は、2010年の約2倍になる。

都市部を中心に医療・介護サービス、とくに介護サービスの深刻な供給不足が予想されている。東京では75歳以上の高齢者の28%が独居だ。首都圏では、行き場を失った要介護者があふれることになる。

●失敗挽回の大方針は「強制力」の強化

医系技官は、高齢者の急増に対応するために、中央統制をさらに強める動きにでた。2013年8月の社会保障制度改革国民会議報告書は、「強制力」のさらなる強化を提案した。国会審議を経て「強制力」が法制化された。

統制は、現場の状況に応じた多様な努力を抑圧する。強制力を強化するとどうなるか、旧ソ連で証明済みだ。限界まで強化されるとどうなるか、北朝鮮を見ればよく分かる。

●医系技官の権力拡大

地域医療構想では、構想区域の医療の需要を行政が推計し、各病院の病床機能ごとの病床数を実質的に行政が決める。計画経済そのものだ。実行に強制力が伴う。

都道府県知事は、「勧告等にも従わない場合には」最終的に「管理者の変更命令等の措置を講ずることができる」(地域医療構想策定ガイドライン)。都道府県に出向した医系技官が、病床配分を通じて、個別医療機関の生死を握ることになる。専制と腐敗が生じやすい。

さらに、消費税増収分を活用した地域医療介護総合確保基金が、都道府県に設置された。補助金を、都道府県の裁量、すなわち、都道府県に出向した医系技官の裁量で医療・介護施設に配分する。

医療には消費税が課されていないが、医療機関の購入したものやサービスには消費税が上乗せされている。消費税率引き上げ分が診療報酬に十分に反映されていないことを考え合わせると、この基金は病院の収益の一部を取り上げ、それを、支配の道具に使う制度だと理解される。病院の投資を医系技官が握ることになる。病院独自の経営努力の余地を小さくする。

行政主導の投資は無駄が多い。補助金をできるだけ少なくして、診療報酬に回すのが健全だ。どうしても必要な補助金は、裁量権を持つ医系技官が決めるのではなく、数字で示される指標で自動的に金額が決められる方法を考案する必要がある。配分する側に裁量権があり、配分される側に経済的余裕がなければ、支配-被支配関係が生じ、民主主義が破壊される。

●統制医療ミクロの失敗:東千葉メディカルセンターの巨額赤字とその責任

東千葉メディカルセンターの設立と運営に補助金を集中的に投下するために、千葉県は、二次医療圏を恣意的に変更して、山武・長生・夷隅医療圏を作った。

長径80キロの細長いゲリマンダー医療圏だ。東千葉メディカルセンターは、2014年に開院したが、医療人材不足とずさんな計画のため巨額の赤字が続き、東金市の財政を危うくしている。

夷隅郡市2市2町の住民の医療のために使われるべき補助金が、東千葉メディカルセンターに投入された。夷隅郡市の住民は遠いため通院できない。救急搬送するにも遠すぎる。

東千葉メディカルセンター問題が注目されると、千葉県職員の責任問題になる可能性がある。井上肇氏は、東千葉メディカルセンターの準備段階の一時期、千葉県庁でこの問題を主導すべき立場にあった。

高岡志帆氏は、現在、東千葉メディカルセンター問題に深く関わるべき立場にある。東千葉メディカルセンター問題は、言論抑圧の直接的原因の一つだった可能性が高い。

●医療事故調査委員会問題:行政主導の「裁判」を目指して失敗

医療事故調査委員会問題では、医系技官は、当初、中央で医療の正しさを決め、過失の認定まで行おうとして失敗した。実現していれば、医系技官が事務局に天下りし、裁定を支配しただろう。

人権を守るための手続きを知らず、自己の権力拡大を強く望み、それ故に利益相反が避けられない人たちに、「裁判」をゆだねるのは危うすぎる。最終的に、法令系事務官が、医系技官から奪い取る形で、院内事故調査委員会を中核とする安全を高めるための制度が作られた。

医療の正しさは仮説的で暫定的であるがゆえに、進歩し続ける。医療の正しさは未来に向かって変化するものであり、別の意見を排するような猛々しいものではない。医療現場は多様であり、正しさも複雑多様だ。正しさが固定されると、医療は機能を低下させ、進歩を止める。

●新専門医制度:多様性の抑圧と若い医師の人権無視で破綻

新専門医制度では、専門医の養成を、統一的に画一的に行ない、これに人事権を絡ませようとした。教育制度に人事権を持たせると、専制と搾取が生じる。教育者と被教育者の権威勾配がこれを助長する。

医系技官は制度を支配の手段と考え、大学教授たちは若い医師を隷属させる手段と考えた。このため、養成期間が長期間になりすぎた。給与を誰が保障するのか考えていなかった。画一的で無駄の多い修練期間が長くなると、専門医の技量の習得を妨げ、医療の質を低下させる。専門医としての生涯活動期間を短くし、サービス提供量を減少させる。

地域にはその実情に合わせた多様な工夫や努力がある。愛知県の救急医療は、医師不足にも拘わらず、卒後5~6年目までの若い医師によって支えられてきた。愛知県の救急医療体制は、新専門医制度の人事ローテーションによって崩壊すると危惧されていた。

新専門医制度は様々な欠陥のため、予定していた2017年度に開始できなくなった。

●新型インフルエンザ騒動:病気と医療についての知識不足で失敗

2009年の新型インフルエンザ騒動で、医系技官は、医学常識に反する無茶な指示、事務連絡を連発し、医療現場を混乱させた。早い段階で、弱毒性と分かったが、大騒ぎを続けた。大阪の経済活動を長期間妨げた。医学的に根拠のない検疫、停留措置で人権を侵害した。

2012年4月、新型インフルエンザ対策特別措置法が成立した。医学常識を欠く医系技官に、人権制限を伴う強大な権限を付与するものだった。

2012年11月、日本感染症学会は、特別措置法について緊急討論会を開催した。専門家たちは2009年の新型インフルエンザ騒動の混乱を忘れていなかった。多くの専門家が発言したが、特別措置法に賛成した者は一人もいなかった。

●医系技官と言論の自由

医系技官という存在は難しい。医師免許を持っているが、本格的な医学知識や診療能力を持っているわけではない。行政官なので、活動は法律に縛られるが、その法律の成り立ちをほとんど知らない。このため、属人的権力、すなわち裁量権のある権力、個別事例に介入する権力を欲しがる。

属人的権力は専制につながりやすい。すでに、医師や病院の団体は、医系技官に抵抗しにくい状況にある。例えば、日本医師会の事務局長は医系技官だ。国から独立した自律団体としては考えられないことだ。ナチへの反省から生まれた世界共通の医療倫理に反する。日本の医師は、医系技官を恐れ、表立った言論による批判を避けている。

亀田総合病院事件は、統制医療の必然的副作用だ。井上、高岡両氏は、統制医療が生んだ小さな怪物だ。今は特殊かもしれないが、いずれ、これが普通になる。厚労省や千葉県の統治の正当性が危うくなる。法治国家としての日本の正当性が揺らぐ。

「憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」(日本国憲法第12条)。三権分立も「国民の不断の努力」がなければ機能しない。最大の手段は、言論による批判だが、その言論が抑圧された。今回の裁判の結果は、日本の民主主義の水準を決める。

(2016年11月15日「MRIC by 医療ガバナンス学会」より転載)



http://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/302597.html
矯正医官 遠い充足 医師偏在、長期定員割れ
(2016/11/18 07:47)静岡新聞NEWS

全国の矯正医官数の推移
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 静岡県内にある法務省管轄の矯正施設で「矯正医官」と呼ばれる常勤医の不足が長く続いている。医官の兼業を認める特例法が昨年12月に施行されたが、もともと医師不足の静岡などの地方都市では、解消への道のりは険しく、関係者は依然頭を抱える。
 「他の医師から『もっと稼げるところがあるのでは』と好奇の目で見られる」。元開業医で2月に静岡刑務所の矯正医官になった秋山博さん(57)は話す。年収は3分の2になった。
 唯一の常勤医。三つの医官ポスト全てが埋まっていたのは、最近では10年ほど前までさかのぼる。
 700人以上の収容者の中には80歳以上の高齢者もいる。給料の不足分を補うため、別の民間病院でも働く秋山さんを支えているのは、「自分しかいない」という使命感に他ならない。

 「ワークライフバランスを求める方には最適な職場」―。静岡少年鑑別所前には、公務員ならではの“売り文句”が書かれたポスターが掲げられている。昨年12月以来、唯一の医官ポストの医務課長の不在が続く。
 紀恵理子所長は「心も体も発達段階にある少年にとって、医師に診てもらう安心感は重要」と話す。
 「中腰に気を付けて」。静岡市葵区の少年院「駿府学園」の吉江晴英医務課長(51)は今月中旬、昔の交通事故による腰痛を訴えた少年(16)に語り掛けた。
 吉江課長も耳鼻咽喉科の開業医だったが、2008年10月に矯正医官に転じた。
 「自分の専門性が生かせない中で、モチベーションの維持が難しい面もある。『ありがとう』の一言に救われている」と話す。
 法務省東京矯正管区矯正医事課の担当者は「そもそもの医師偏在があり、矯正医官の不足は首都圏から遠いほど顕著」と指摘する。

 ■特例法施行、兼業可能に

 全国の矯正医官の不足を受け、昨年12月に施行された特例法では、法相の承認があれば、平日の昼間でも他の民間病院などで勤務できるようになった。
 法律を審議した法務省の有識者検討会のメンバーの一人で弁護士の神洋明氏は取材に、矯正医官が同省管轄であることから、地方に国立病院を抱える厚労省から人事面で協力を得られていないと指摘。「縦割り行政の弊害の一つ」と述べた。
 一方、6年間常勤医が不在だった網走刑務所(北海道)では、今年4月、関東地方から50代の内科医が医官になった。特例法を生かし、地元の民間病院で内科医として勤務することで、医師不足に悩む地域住民からも感謝されている。ただ、こうした成功例は全国でもまれだ。
 「そもそも刑務所に仕事があることを知らなかった」と話す現役医師もいまだに少なくないといい、国のPR不足を指摘する声もある。



http://www.sankei.com/region/news/161118/rgn1611180001-n1.html
「赤ちゃん産めない」 湖西や牧之原周辺、伊豆半島南部で医師不足深刻
2016.11.18 07:00 産経ニュース

 医師不足に加えて地域や診療科による医師の偏在が進み、湖西市や牧之原市周辺、伊豆半島南部では、地元で出産できる医療機関がない状態が続いている。本県は人口当たりの医師数が全国でも最下位に近い医師不足県。その上に、産科医の人手不足が重なり、地元で赤ちゃんを産めない“出産難民”が多発している。

 ◆助成金に反応なし

 湖西市内ではこの10年近く、赤ちゃんの産声が響いていない。平成19年に湖西病院が分娩(ぶんべん)を休止して以降、市内に出産できる施設がないからだ。「毎年500件近い出生届が出されるのに、出産は全て市外です」。市健康増進課の担当者はため息をつく。出産可能な大病院がいくつもある浜松市と愛知県豊橋市に挟まれているとはいえ、妊婦は最短でも車で30分の距離を越境しなければならない。

 何とか地元で赤ちゃんを産めるようにしたいと、同市は今年度、市内に出産できる医院を開けば、総額最大1億円を補助する制度を始めた。一般会計予算が200億円規模の自治体としては、かなりの大盤振る舞いだ。

 ところが「1億円助成」と大々的に打ち出しても、「問い合わせは1件もありません」(同課)。足りない医師の中でも、産科医はとりわけ引く手あまた。「このまま市内で出産できない状態が続けば、若い世代を取り逃がして、さらに人口が流出する事態を招きかねない」と、市の苦悩は深い。

 ◆交通費3万円支給

 静岡、浜松という両政令市に挟まれた志太榛原地区も医師不足が顕著。中でも御前崎市▽牧之原市▽吉田町-の2市1町には出産できる医療機関が一つもない。唯一出産可能だった榛原総合病院(牧之原市)が、昨年6月末で分娩受け入れを休止したことによる。

 このため吉田町では今年度から、遠くまで通院せざるを得ない妊婦を対象に、通院に伴うタクシー代など交通費として一律3万円の補助を始め、若年層の転出を防ごうと懸命だ。

 伊豆半島は、さらに厳しい状況に置かれている。伊豆半島南部の下田市▽東伊豆町▽河津▽南伊豆▽松崎▽西伊豆-の1市5町で出産できるのは、下田市の開業医1つのみ。「伊豆半島の出産はほぼ全て、伊豆の国市の順天堂大学付属静岡病院が一手に担っている」(県地域医療課)という綱渡りの状態にある。

 同病院では年間約900件の分娩を扱い、産気づいた妊婦がドクターヘリで同病院に搬送されることもしばしばあるという。

 “処方箋”見当たらず

 しかし、このような“出産難民”に対する県を挙げての対策は、十分とは言い難い。本県の人口10万人当たりの医師数(26年)は、193・9人と全国40位なのに、医学部を持つ大学は浜松医大のみで、県内で育つ医師の絶対数が不足しているからだ。県はまず医師の確保を優先しており、診療科や地域による偏在は「医師数が充足すれば満たされる可能性がある」との立場をとる。

 医師確保に向けて県は、一定期間の県内勤務で返済を免除される月額20万円の奨学金を医学生向けに用意するが、まだ枠に空きがある。加えて、各地の医大に地域枠導入を働きかけたり、医学生向け研修プログラムを充実させるなどあの手この手を打ってはいるものの、医師不足を解消し“出産難民”を減らす有効な処方箋はまだ見つかっていない。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/49978.html
臨床医学の父、ウイリアム・オスラーに学べ- 来月11日のセミナー講師陣がメッセージ
2016年11月18日 20時00分 CB News

 「医学生は講義室ではなく、臨床現場で勉強すべきだ」-。来月11日に東京都医師会が主催するセミナー「いい医師になろう!~総合診療力を高め、真のかかりつけ医になるために~」に講師として参加する独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)の徳田安春・総合診療顧問は、「臨床医学の父」といわれるカナダ生まれの内科医ウイリアム・オスラー(1849-1919)の言葉を大切にしている。

 徳田さんは、東京城東病院(東京都江東区)や水戸協同病院(水戸市)などを拠点にして、若手医師や医学生の総合診療力を高めるための全国の病院などの勉強会に出向いて実践形式の臨床推論の講義をし、自身のノウハウを余すことなく伝授している。この取材をした日も、関東労災病院(川崎市)に呼ばれて講義をすることになっていた。

 徳田さんは「今の医学部教育は、講義形式による知識の詰め込みと見学型臨床実習が中心となっており、医療チームの一員になっていません」と話す。そこで、冒頭のオスラーの言葉を引用した。

 さらに、「知識を詰め込んでも、数年後には新しく切り替わるので、更新していかなくてはいけません。ある疾患に対する新薬の論文が出てきたとしても、まずは『批判的』に論文を読んでいく必要があります。その能力を備えなくてはいけません」と付け加えた。

 一方、徳田さんは米国発のChoosing Wisely(医療における賢明な選択)キャンペーンの、日本での普及に尽力している。このキャンペーンは、EBM(Evidence Based Medicine)という、科学的根拠に基づいた医療を提供しようとするもので、患者の価値観を尊重した望ましい医療について、医師と患者の対話を促進しようというのが狙いだ。

 そこで徳田さんに、今回、東京都医師会が主催するセミナーのタイトルに盛り込まれた「いい医師になろう!」とChoosing Wiselyの関係を聞くと、このように説明してくれた。

 「Choosing Wiselyと“いい医師”はイコールの関係です。Choosing Wiselyはもともと、プロフェッショナリズムを発揮するために生まれたものです。このキャンペーンが始まったのは、世界的にプロフェッショナリズムが危機にあるという背景もあります。Choosing Wiselyに基づいた医療をやるには、“いい医師”でなくてはいけません。不必要な検査、投薬などをしないので、問診と診察がしっかりできる医師にならなくてはいけないのです」

■「臨床で分からないことを解消するプロセスは魅力あるもの」

 東京女子医科大病院(東京都新宿区)の総合診療科で非常勤講師をしている佐藤寿彦さんも、来月11日のセミナー第2部の「明日から役立つ臨床推論」に、徳田さんと共に参加することが決まった。佐藤さんは、臨床現場の医療情報に関するオピニオンリーダー的な存在であるほか、人工知能の研究もしている。

 佐藤さんは、臨床推論を通じて、診断のスキルを磨く重要性を指摘した上で、こう話す。

 「患者さんと向き合う臨床では、医学が理解できていないことや自分が分からないことに、たくさん遭遇します。それを調べながら解消していくプロセスを繰り返すのは魅力のあることです。臨床推論のケースカンファレンスで、今まで何となく考えていたことの言語化を試みたいと考えています」

 また佐藤さんは、若手医師や医学生に対し、今後、勤務場所や専門科を選択する過程では、「持続可能性」の視点を持つのがいいとアドバイスする。

 そして、佐藤さんは「持続可能性」の視点の意味について、このように説明する。

 「職場はまさしく“生もの”ですので、大好きな先輩が一人いるとか、子育てを許容する雰囲気があるかなどで、大きく環境が変わります。こういうことがやりたいという動機などだけでなく、職場や専門科の特性に自分の根本的な価値観と合わないものが少ないことを確認し、また、きちんと継続できるか確認することが大事になると思うのです」



https://www.m3.com/news/iryoishin/477942
シリーズ: 安倍政権の医療制度改革
「最大の課題は社会保障分野」、財政審建議
社会保障関係費の伸びは5000億円に抑制、改革の前倒し提言

2016年11月18日 (金) 橋本佳子(m3.com編集長)

 財務省の財政制度等審議会(会長:吉川洋・立正大学経済学部教授)は11月17日、2017年度の予算編成等に関する建議をまとめ、麻生太郎財務相に提出した。社会保障関係費の伸びを「5000億円」に確実に抑制し、その他の政策経費を含めた一般歳出を5300億円に抑えるべきと提言している。「最大の課題は社会保障分野」と強調、経済財政諮問会議が2015年12月にまとめた「経済・財政再生計画 改革工程表」の検討項目を中心に、改革の基本的な考え方を4つに整理し、できる限り前倒しして改革を実現するよう求めている(資料は、財務省のホームページ)。

 4つの基本的な考え方とは、(1)年齢ではなく負担能力に応じた公平な負担(高額療養費や後期高齢者の保険料軽減特例の見直しなど)、(2)大きなリスクは共助、小さなリスクは自助(入院時の光熱水費相当額に係る負担の見直し、スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率の在り方など)、(3)医療・介護提供体制の構築(かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担の導入、地域医療構想に沿った医療提供体制の実現、医療費適正化計画の策定・実現など)、(4)公定価格の適正化・包括化等を通じた効率的な医療・介護(高額薬剤の薬価等の在り方、生活習慣病治療薬等の処方の在り方など)――だ。

 これらの大半は、厚生労働省の社会保障審議会や中央社会保険医療協議会をはじめとする関係審議会・検討会で、並行して議論してきた内容だ。高額療養費や後期高齢者の保険料軽減特例の見直しなどは実現の見通しだが、かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担の導入、スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率などは、「反対」で意見が一致(『「かかりつけ医」以外で「定額負担」、反対多数』、『スイッチOTC化の医療用医薬品、「給付率引き下げ」反対』を参照)。11月18日にも、社保審医療保険部会が開催され、今年内数回の議論を経て、2017年度以降実施の制度改正案を取りまとめる予定。また高額薬剤については、オプジーボ(一般名ニボルマブ)の薬価を2017年2月から500引き下げる方針が、11月16日の中医協で決定した(『オプジーボ、来年2月から500引き下げへ』を参照)。

 社会保障関係費の伸びを年5000億円に抑制するのは、2015年6月に閣議決定した「経済・財政運営と改革の基本方針2015」に基づく対応。今年8月の厚労省の2017年度予算概算要求では6400億円の伸びとなっており、高額療養費や後期高齢者の保険料軽減特例の見直し、オプジーボの薬価引き下げなどで抑制する見通し。

 そのほか(3)では、2017年度予算編成には関係しないものの、医師需給問題にも言及。今後の医学部定員については、医師需給の見通しを踏まえた精査・見直しを進めると同時に、医師の地域・診療科偏在是正に向け、(1)医師不足の地域・診療科従事を、特定の医療機関の病院長といった管理者になるための要件とする、(2)保険医の配置・定数の設定など、医師配置等に係る規制も含め、国や都道府県の権限強化――を提言している。

 「改定がない時こそ、改革を」

 財政審の建議は、財政制度分科会で議論してきた内容を取りまとめたもの。9月7日以来、会議を計7回開催。社会保障関係については、10月4日と10月27日の2回議論(『財政審財政審、薬価の期中改定や高齢者の負担増を求める』、『「保険医の定数設定」なども可能に、国・県の権限強化を』を参照)。

 建議では社会保障関係について、「社会保障制度の持続可能性の確保と財政健全化を同時に達成していくため、医療・介護分野の改革の実現は、喫緊の課題」とし、「2017年度予算編成においては、診療報酬・薬価改定および介護報酬改定が予定されていないが、こうした時こそ、改革を集中的に進める機会と捉えていくべき」と指摘。その上で改革の基本的な考え方を4つに整理し、具体的な改革項目を解説している。



https://www.m3.com/news/iryoishin/478013
「医学部の暫定定員増、政府方針に」医学部長会議が要望
大学病院、国私立ともに消費税補填不足が拡大

2016年11月18日 (金) 高橋直純(m3.com編集部)

 全国医学部長病院長会議は11月17日の定例記者会見で、厚生労働省に対して「医学部定員の暫定増の取り扱いについて」と題する要望書を提出したことを明らかにした。要望書は11月16日付け。厚労省「医療従事者の需給に関する検討会」の「医師需給分科会」で流会が続いている異常事態を受けての緊急対応で、新井一会長(順天堂大学長)は「定員は大学運営にとっても、受験生にとっても重大な問題」として政府全体の方針として示すよう求めた。

 医師需給分科会の中間とりまとめで、2017年度までの医学定員暫定増を「当面延長する」としており、2019年度までは現行の9262人という水準を維持する方針を示している(『医学部定員、最低でも「9262人」、2019年度まで』を参照)。要望書では(1)政府方針として示すこと、(2)「当面延長する」の解釈について「2017年度までで終了する医学部定員増について、2008、2009年度の暫定増を行った人数以内に限り、かつ2019年度までの間に限り、維持する」と理解しているが、この点について具体的に言及すること――の2点を要望している。

 新井会長は「分科会の流会が続き、議論が進んでいないので、あえてこのタイミングで要望した。2020年度以降どうするのか先行き感が不透明」と訴えた。定員増の是非については「医師が供給過多になることが予測されている。それをベースにすれば、定員を減らすことを議論しなくてはいけない。問題は地域偏在で、医師数を増やせば解決するという考えもあるが、まずは地域偏在に対する方針を示してからだ」との見解を示した。

大学病院、消費税補填不足が拡大

 会見では大学病院における消費税補填が不足している現状についても説明した。国立大学病院全体では、2015年度の消費税額は483億円に対して、補填額は288億円(診療報酬に上乗せされている額の割合である2.890から算出)に留まり、補填不足額(損税)は195億円に達した。国立大学病院の診療規模が拡大傾向にあることに伴い、補填不足額も2014年度の149億円から拡大している。千葉大学医学部附属病院長の山本修一氏は「必死の経営努力で収入は増えているが、それに伴い補填不足額も増え、厳しい状況が続いている」と訴えた。私立大学病院でも全体の補填不足額は、2013年度の399億円から2014年度は601億円に拡大した。

 運営費交付金の削減などの影響について、京都大学病院長の稲垣暢也氏は「京大病院では今後8年間で30人ぐらい教員を減らさなくてはいけないが、そうもいかず苦しい状況が続いている」、大分大学医学部長の守山正胤氏は「大学全体の交付金が減っているが、人事院勧告もあり人件費が増している」、新井氏は高額薬剤の増加に伴い「キャッシュフローが回らず、支払い期間を伸ばさないと対応できないという状況も出てきている」とそれぞれ説明した。

 経営努力の一環として、山本氏は来年度から国立大学の一部で医療用部材の共同購入を実施する考えを示した。



https://www.m3.com/news/general/478044
医療データ分散保管 被災時もスピード復旧
2016年11月18日 (金) 河北新報

 東北大電気通信研究所と日立製作所などの研究グループは、患者の医療データを電子化して分散保管し、災害で病院が被災しても短時間でデータを復旧する技術の開発に取り組んでいる。研究グループは県薬剤師会と合同で23日、復旧データに基づいて薬を処方する訓練を実施する。

 研究グループは、同時被災のリスクが少ない病院同士が相互にデータを保管し合う仕組みを提案。通信網が絶たれた場合は、データを入力したパソコンなどを直接、被災病院へ運ぶ。

 病院1カ所につき複数の接続ルートを構築することで災害時、データ復旧の時間が短縮できるという。災害発生から数日で900、通信網が仮復旧した後は1000の復旧を目標にしている。

 合同訓練は、沿岸部の薬局を津波が襲ったとの想定で実施する。復旧した薬歴情報のデータを県薬剤師会の医薬品供給車両で搬送。避難所で、処方履歴を携帯していない患者に本人確認をした上で処方する。

 研究グループの中村隆喜東北大准教授(情報科学)は「費用対効果に優れたシステムであり、自治体が保有する戸籍といった住民の基本情報の復旧にも応用できる」と話す。

 東日本大震災では、患者のカルテが津波で流失したほか、遠隔地に保管していていたデータもネットワークが故障して接続できないケースがあった。



https://www.m3.com/news/general/477964
患者負担や保険料アップへ 上げ幅や対象者で調整
2016年11月18日 (金) 共同通信社

 社会保障分野では来年度、高齢者を中心に医療・介護の自己負担や保険料が引き上げられる方向だ。政府は年末の予算編成に向け、引き上げ幅や対象者数をどこまで広げるか、詰めの調整を本格化させる。

 財政制度等審議会の建議で挙げられたメニューのうち、医療分野では75歳以上の後期高齢者医療で、専業主婦ら扶養家族だった人や低所得者の保険料を最大9割軽減している特例の廃止が有力視されている。

 最大で75歳以上の約6割に当たる916万人に影響するため、与党内には慎重論が強く、新たに75歳になる人に絞る案や、段階的な廃止が検討されている。

 介護保険では、所得に応じて1~2割になっているサービス利用時の自己負担について、高所得者に限り3割に引き上げる案が浮上。対象者は65歳以上のうち数0とみられる。

 負担増は現役世代にも及ぶ見通しで、政府は40~64歳の介護保険料について、大企業社員の支払額が増える「総報酬割」という計算方法を来年度から段階的に導入する方針だ。中小企業の負担は減るが、経済界は反発している。

 医療・介護とも、患者や利用者の毎月の自己負担額が高くなりすぎないよう、一定の限度額を超えた分を払い戻す仕組みがあるが、高齢者向けに設けられた優遇措置の廃止や、一定以上の所得がある人の限度額引き上げが検討されている。



https://www.m3.com/news/iryoishin/478133
シリーズ: 社会保障審議会
「かかりつけ医以外」で定額負担徴収、見送りへ
社保審医療保険部会、「かかりつけ医」の定義・普及が先決

2016年11月18日 (金) 橋本佳子(m3.com編集長)

 社会保障審議会医療保険部会(部会長:遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)は11月18日の会議で、「かかりつけ医」以外を受診した場合に、定率負担に加え、定額負担を求める医療制度改革案を改めて議論、今年末に取りまとめる予定の制度改革案には盛り込まない方針で了承した(資料は、厚生労働省のホームページ)。

 定額負担徴収案については、10月26日の本部会でも議論したが、支持は得られず「見送り」で落ち着く見通しとなっていた(『「かかりつけ医」以外で「定額負担」、反対多数』を参照)。今回改めて議論したのは、26日の会議で諸外国の関連制度についての資料を求める意見が出ていたほか、財政制度等審議会の建議などでも定額負担徴収を求めていることなどが理由(『「最大の課題は社会保障分野」、財政審建議』を参照)。

 厚労省は、外来の機能分化の点から「かかりつけ医」を普及させることは必要としたものの、(1)診療科ごとに複数の「かかりつけ医」を認めるか、(2)受診頻度が低いという理由で「かかりつけ医」を持たない若者をどう考えるか――などの課題があり、「かかりつけ医」の要件を検討には、一定の時間を要すると論点を整理。一方で、2016年度診療報酬改定では、特定機能病院や500床以上の地域医療支援病院を紹介状なく受診した場合には、初診5000円、再診2500円の徴収を義務化するなど、外来の機能分化を進める施策を講じているとしている。

 健康保険組合連合会副会長の白川修二氏は、「(10月26日の)前回会議で、慎重論が多かったのは事実」と認めた上で、「選定療養という形で、紹介状を持たない患者に対し、保険外で一定の負担を求めるやり方がいいのか。保険内で徴収するやり方もある」などと述べ、今後は患者負担の在り方を幅広く議論していく必要性を指摘した。「3割負担が最大だが、1割、2割負担の人がいる。さらに高額薬剤の問題が議論になっているが、薬の負担をどうするかなどの点も含めて、一度整理して、この医療保険部会で議論すべきではないか」(白川氏)。

 他の委員も、定額負担徴収案については、「かかりつけ医」という定義が明確でない以上、現時点での導入は見送るべきとの意見だったが、白川氏の発言に対しては、「かかりつけ医とは何かが整理されていない段階で、患者負担の議論が先行するのは問題」(東海大学教養学部教授人間環境学科教授の堀真奈美氏)などの指摘もあった。

 NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子氏は、2016年度診療報酬改定の影響を検証する必要性を指摘した上で、「イギリスのGP(General Practitioner)の制度を入れるのは無理。医師の養成の仕方が違う。かかりつけ医についての定義などもなく、かかりつけ医として登録されれば、診療報酬をどう付けるかなどの議論がない状況では、なかなか普及しないだろう。方向性としては間違っていないが、もう少しゴールやそれに向けた中間点を示してもらいたい」と述べ、将来像を見据えた上で、かかりつけ医の在り方を議論するよう求めた。

 全国後期高齢者医療広域連合協議会会長の横尾俊彦氏(多久市長)は、学校教育の段階から、かかりつけ医をまず受診する、換言すれば大病院志向を是正するための教育の必要性を指摘する意見も出た。「重要なのは、風邪程度で大病院に駆け付けてしまうと、大病院での診療が本当に必要な人がアクセスできなくなってしまうこと。この点を教育の中で教えていくことが必要」。

 「子どもの医療費助成で国庫負担減額」見直しへ

 そのほか、18日の社保審医療部会では、(1)子ども医療費助成に係る国保の減額調整措置、(2)高額介護合算療養費制度、(3)国保の保険料(税)の賦課(課税)限度額――についても議論。

 特に議論になったのは、(1)だ。市町村の単独事業として、少子化対策等の一環として、子どもの患者自己負担を助成する動きが広がっている。一方で、それに伴い生じる医療費の波及増分については、国保への国庫負担を減額する措置が講じられている。「子育て支援や定住支援として、市町村が何らかの工夫をすると、国庫負担が減額される措置は、半ばペナルティーとして受け止められている」(横尾氏)。

 厚労省は論点として、減額調整措置についての(1)見直しの対象範囲(年齢、自己負担・所得制限の有無、自治体の財政力など)、(2)見直しの時期、(3)見直しが国民の利益、少子化対策に寄与するものとなるようにすることに付いての検討――を挙げた。

 (1)については、「未就学児」までは、見直しの方針でほぼ意見が一致。全国町村会行政委員会委員の渡辺広吉氏は、市町村の立場から、「未就学児については、全ての市町村では何らかの対応している。減額調整措置を早急に廃止してもらいたい。市町村としても、子育て支援などの対策に努めていきたい」と見直しを要望。健保連の白川氏も、「市町村ごとに対象年齢や負担額が違い、『この市町村に住んだ方が得だ』などとなるのは、公的皆保険下ではおかしい」などと現行制度の問題を指摘し、見直しを了承、年齢は未就学児までとしたものの、「(医療費助成により)無駄な医療が生じていないかが常に気になっている」とも述べ、子ども医療費についても一定の自己負担を求めたり、所得に応じた対応が必要だとした。

 東京大学大学院法学政治学研究科教授の岩村正彦氏は、「どのような条件で調整すると、どんな財政影響があるか、資料を出してもらいたい」とデータを基にした議論を求めた。

 (2)の高額介護合算療養費制度については、高額療養費制度自体を見直す動きがあることから、合わせて「負担能力に応じた負担を求める」という視点から見直すべきとの意見が大勢を占めた。本制度は、医療と介護の自己負担額を合算し、所得に応じてその上限額を設定する制度だが、そもそも制度自体が複雑で、患者側に周知徹底されていない問題を指摘する意見も出た。

 (3)の国保の保険料(税)の賦課(課税)限度額は、保険者が必要な保険料収入を得る観点から、適宜見直しが行われてきた。2014年度から2016年度は3年連続で、4万円ずつ引き上げられてきた。2017年度の対応は18日の会議では結論が出ず、引き続き検討する。



http://www.medwatch.jp/?p=11262
リハビリ能力の低い急性期病院、入院から20日までに後方病院に患者を送るべき―日慢協・武久会長
2016年11月18日|医療・介護行政をウォッチ MedWatch

 脳卒中などの発症後、早期に短期集中リハビリを実施することが重要である。このため、リハビリ能力の低い急性期病院では、入院から20日までにリハビリ能力の高い後方病院に患者を送るべきである―。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、17日の理事会後に開催した記者会見で、こういった提言を行いました(関連記事はこちらとこちら)。

短期集中的なリハビリの実施により、日本の寝たきり患者を半減

 この提言は、17日の日慢協理事会で承認された「日本の寝たきりを半分」にするための10か条に基づくものです。

 武久会長は、我が国の医療、とくにリハビリについて、▼急性期病院で十分なリハビリ(1日9-15単位、つまり3-5時間)が行われていないケースがある▼急性期治療において十分な栄養管理・水分補給が行われていない▼診療報酬の規定により、例えば脳卒中発症から1か月目でも、6か月目でも、同じ1日9単位のリハビリとなっている▼一律に自立歩行復帰が目標とされている―などといった問題点があることを指摘。

 これらを改革しなければ、寝たきり患者が減らないとし、次の10か条の提言をまとめています。

(1)急性期リハビリの充実(入院日からのリハビリ)
(2)急性期リハビリ能力のない場合、入院後20日までにリハビリ能力と治療能力のあるPost acute(後方病院)に患者を移す
(3)高齢者の急性期治療の改善(栄養・水分出納・身体侵襲の軽減)
(4)嚥下・排泄リハビリの優先
(5)短期集中リハビリのできる環境に
(6)「寝たきり」より「座りきり」
(7)無理な歩行訓練より車いす自立を
(8)慢性期治療の徹底
(9)延命ではなく日常復帰を
(10)慢性期総合診療医の養成

 これらは大きく「急性期状態からの早期リハビリなどの充実」((1)から(5))と「リハビリのあるべき姿の共有」((6から(10))に分けて考えることができそうです。

 (1)と(2)はセットで考えることができます。武久会長は「リハビリ能力のある急性期病院では早期にリハビリを開始し、能力の低い急性期病院では早期に後方病床に患者を送るべき」と強調しました。

 また(5)では、リハビリの診療報酬を包括化することで、より患者の状態に合わせた柔軟かつ適切なリハビリ(早期の集中リハビリを可能とし、維持期の箇条リハビリを適正化する)の実施が可能になると武久会長は提案しています。

 一方(6)と(7)は、急性期病院のみならず、リハビリに携わるすべての病院への提言と言えます。武久会長は、「低栄養などでリハビリの効果が落ち、寝たきりになっていく」という実態があることを指摘し、「離床コーディネーター」を多くの病棟に配置し、1日数回、患者を離床させることを徹底すべきと訴えます。コーディネーターの職種については、理学療法士などのリハビリ専門職種が主導すべきとしたものの、看護師や介護師なども広く対象になるとの見解を示しています。

 さらに武久会長は(8)から(10)で、「超高齢者であっても、治せる傷病は治療し、天寿を全うさせることが必要である。十分に治療できない病院ほど、適切な治療を行えないことを『ターミナル』という言葉で逃げている」とも訴えました。



http://www.medwatch.jp/?p=11260
看護必要度の評価、7対1では届出病棟の入院患者すべてが対象―疑義解釈8【2016年度診療報酬改定】
2016年11月18日|医療現場をウォッチ MedWatch

 厚生労働省は17日に、2016年度診療報酬改定に関する疑義解釈(その8)を公表しました。大幅な見直しが行われた「重症度、医療・看護必要度」や電話再診などについて、確認的な解釈を示しています(厚労省のサイトはこちら)。

ここがポイント!
1 看護必要度の基準、該当している項目すべてを評価表に計上
2 電話再診では特定疾患療養管理料の併算定不可

看護必要度の基準、該当している項目すべてを評価表に計上

 2016年度改定では、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)について、A項目・B項目の見直し、C項目の新設など、大きな見直しが行われました。あわせて、具体的な評価対象や手法についての見直しも行われています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。この点について、医療現場の戸惑いも大きく、今般の疑義解釈でも次のような解釈が示されました。

(1)短期滞在手術等基本料算定患者の入院期間が伸び、7対1入院基本料など「看護必要度の評価が必要な入院料」を算定する場合、看護必要度の評価は「当該入院料を算定した日」から実施する

(2)7対1病棟で90日を超えて入院し、療養病棟入院基本料1の例で算定する患者についても看護必要度の評価は行う

(3)「A項目3点以上」「C項目1点以上」に該当し、看護必要度の基準を満たしている場合、該当する項目の得点はすべて評価表の計上する

(4)異なる疾患で別の日に2回目の手術を行った場合、「最初の手術の評価期間」と「次の手術の評価期間」が重なった日について、「異なる疾患で異なる評価項目に該当する」場合にはC項目の合計得点は2点としてよい

 7対1病棟やDPC対象病棟などでは、看護必要度の生データをHファイルとして厚労省に提出することになります。基本診療料の施設基準の解釈通知や、これまでの疑義解釈などを改めて確認し、「正確な評価」を徹底する必要があります、多くの病院では「評価の精度」に問題のあることが明らかになっています。グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンでは、症例単位(患者単位)で看護必要度評価の精度確認が可能な、次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」・『看護必要度分析』を用意しています(関連記事はこちら)。

電話再診では特定疾患療養管理料の併算定不可

 また今般の疑義解釈では、次のような点も明らかにされています。

▼「患者が任意に診療を中止し、1か月以上経過した後に、慢性疾患など『明らかに同一の疾病』について電話など(テレビ画像などの場合も含む)で治療上の意見を求められ、必要な指示をした場合」でも再診料(電話再診)を算定できる

▼再診が電話など(同)で行われた場合には、B000特定疾患療養管理料は算定できない

▼A303総合周産期特定集中治療室管理料について出産や時間外の診療などで一時的に治療室を離れた場合には、施設基準の「専任の医師が常時、母体・胎児集中治療室内に勤務していること」を満たしているとはいえない。ただし、救急搬送された母体の出産、出産後に児が新生児特定集中治療室に入院することが想定される場合など、緊急かつ重篤な場合に限り一時的に治療室を離れることは差し支えない

▼インターフェロン、酢酸リュープロレリンなどの悪性腫瘍に対する効能を有する薬剤は、、短期滞在手術等基本料3における「別に厚生労働大臣が定める除外薬剤・注射薬」の抗悪性腫瘍剤として、薬剤料を算定できる

▼フェンタニル、モルヒネなどを術中の疼痛コントロールとして使用した場合には、短期滞在手術等基本料3の「「別に厚生労働大臣が定める除外薬剤・注射薬」の「疼痛コントロールのための医療用麻薬」としてさ、別途薬剤料を算定することはできない

▼C型慢性肝疾患の患者に抗C型肝炎ウイルス治療を行う場合、B型肝炎の再活性化が考慮される。この場合、医学的に妥当かつ適切であれば、HBs抗原を測定し、算定することができる

▼医学的に妥当かつ適切であれば、C型慢性肝疾患の患者に抗C型肝炎ウイルス治療を行う際もしくは治療を行った後に、B型肝炎の再活性化を考慮し、HBV核酸定量検査を行い、算定することができる



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/50029.html
新専門医制度の養成基準を緩和へ- 地域医療に配慮、新たな整備指針を策定
2016年11月19日 00時00分

 日本専門医機構(吉村博邦理事長)は18日、新専門医制度で専門医を育成する研修基準などを定めた「整備指針」を撤回し、新たな指針を策定する方針を明らかにした。従来の整備指針では研修施設に指導医がいることが条件だった。しかし、医師不足などの理由で指導医を確保できない地域もあるため、指導医のいない施設でも一定の条件を満たせば研修ができるようにする。【新井哉】

 従来の制度では、学会がそれぞれの基準を設けて専門医を育成してきた。整備指針は、新制度で専門医を育成する研修施設の基準を示すもので、同機構が第三者機関として統一の基準を策定し、専門医の質の確保を図る狙いがあった。

 これまで示してきた整備指針では、研修施設(基幹・連携施設)に指導医を置くことを規定。しかし、地域によっては指導医を確保できず、「現在よりも養成できる専門医の数が減ってしまう」といった懸念に加え、基準が厳し過ぎると、研修施設が都市部の大病院に偏る恐れも指摘されていた。

 日本医師会も、従来の学会認定制度で専門医を養成していた医療機関が専攻医の受け入れを希望した場合、これまでと同様に研修が行えるよう要望。また、都市部への偏りを防ぐため、「原則として募集定員が過去3年間の専攻医の採用実績を超えないこと」といった事項を新たな整備指針に盛り込む必要性を挙げている。

 こうした状況を踏まえ、同機構は指導医がいない場合も連携施設に準ずる施設として研修が行えるようにする必要があると判断した。専攻医の一次審査は各学会が行い、二次審査を同機構が担う方針。基本領域の専門医資格を取得後、より細かな分野に特化する「サブスペシャルティ領域」の養成プログラムについても自主的に選択できる仕組みを整える。

 同機構は、研修プログラムに関しても、医師会や病院団体などの地域医療関係者の意見を反映させたい考えだ。2018年度からの新制度のスタートに向け、来月16日の社員総会で新指針に関する事項を正式に決める予定。



http://biz-journal.jp/2016/11/post_17222.html
ノバルティス、1兆円売上の薬で研究不正発覚…巨額寄付得た医学部、劇的効果の論文撤回
構成=編集部
2016.11.19 Business Journal

 近年、製薬会社による研究不正が伝えられることが多いが、医療界でよく知られるものに「ディオバン事件」がある。これは、ノバルティスファーマが開発した高血圧治療薬「ディオバン」をめぐって研究結果の改ざんや不明瞭な資金提供が行われていたもので、2014年6月にノバ社の元社員が逮捕されている。

 この事件について、研究論文が発表された当時から疑義を呈してきたのが、医師で臨床研究適正評価教育機構理事長の桑島巌氏だ。今年9月に『赤い罠 ディオバン臨床研究不正事件』(日本医事新報社)を上梓した桑島氏に、ディオバン事件および日本の臨床研究の現状について聞いた。

――なぜ、高血圧治療薬で研究不正が起きたのでしょうか?
桑島巌氏(以下、桑島) 事件の説明の前に、高血圧治療について簡単に説明します。高血圧の基準は時代とともに変わってきましたが、血圧が高いと血管が傷つき脳卒中や心筋梗塞などが起こりやすくなることがわかっています。現在の日本のガイドライン(治療指針)では「140mmHg未満(若年、中高年)を目指す」とありますが、15年にアメリカで行われた大規模臨床試験では「120mmHg未満を推奨する」という結果が出ています。近い将来、日本のガイドラインも高血圧の基準が変わると思います。
 高血圧治療は生活習慣の改善が第一ですが、薬による治療も重要です。血圧を下げる方法は大きく2つあり、ひとつは血流を減らすこと、もうひとつは血管を広げることです。高血圧患者は国内だけでも3000万~4000万人といわれており、薬剤の売り上げランキングでは降圧剤が上位を占めています。
 ディオバンは、ノバ社が開発した「ARB」と呼ばれる血管を広げるタイプの降圧剤で、日本では00年11月に販売が開始されました。ARBとしては国内で3番目となり、激しい販売競争が繰り広げられ、各社はこぞってプロモーションに力を入れました。その過程で起きたのが、大学医学部を舞台にした臨床研究不正です。

ノバ社、大学に2億円超の「寄付金」提供

――では、ディオバン事件の概要を教えてください。
桑島 薬剤のプロモーションは処方権のある医師が対象になるため、その薬剤を使った臨床試験の結果が重要になります。ディオバン関連では、00年代にノバ社の元社員が関わった5つの大規模臨床試験(JHS<東京慈恵会医科大学>、VART<千葉大学>、SMART<滋賀医科大学>、KHS<京都府立医科大学>、NHS<名古屋大学>)があり、「ディオバンが既存の降圧剤より脳卒中や狭心症を減少させる効果がある」などの結果が出されました。
 しかし、そのほとんどの論文が撤回されるという前代未聞の事態になっています。ノバ社だけでなく、武田薬品工業のARB降圧剤「ブロプレス」に関する臨床試験「CASE-J」でも、厚生労働省が広告について業務改善命令を出すなど、問題が多く指摘されています。
 前述した5つの臨床試験のうちのKHSをめぐってノバ社の元社員が薬事法違反で逮捕され、現在は元社員と法人としてのノバ社を被告とした裁判が進行中です。来年3月には判決が出る予定です。

――研究結果は、プロモーションにどのように使われたのでしょうか?
桑島 KHSの裁判では、02年頃からノバ社内で「100B計画」と称するディオバン売り上げ1000億円を目指す販売促進計画が立てられていたことが明らかになっています。単に血圧を下げるだけでなく「降圧を超えた臓器保護作用(脳卒中や心臓病を減少させる作用)がある」というデータを出すために、医学部の教授に「奨学寄付金」と呼ばれる資金提供をすることで、ディオバン関連の論文をたくさんつくるというものです。ノバ社は、KHSを行った京都府立医大の研究室には03年から07年にかけて約2億3000万円を提供していました。
 その影響かどうかはわかりませんが、ディオバン治療群でJHSでは脳卒中、狭心症などが390減少、KHSでは450も減少するという驚くべき結果となり、「ランセット」などの国際的な医学雑誌に掲載されました。ノバ社は、その結果を基に大規模なプロモーション活動を展開します。薬の宣伝で血をイメージする赤を使うことはあまりなかったのですが、ディオバンは赤をイメージカラーにしました。当時の医療系雑誌には、「選ばれしもの」というキャッチコピーとともに真っ赤なディオバンの記事広告が多数入っていました。
 その中では、日本高血圧学会の幹部たちが座談会を行い、「ディオバン有利」という研究結果をさかんにほめていました。ディオバンは09年には売り上げ1400億円を突破、日本ではこれまで1兆円以上を売り上げたとされています。しかし、長年高血圧治療に携わってきた私の臨床・研究の経験からは納得できない結果であり、海外で行われた同様の臨床研究の結果とも違っていました。私はシンポジウムなどで疑義を呈していましたが、当時はなかなか耳を傾けてもらえませんでした。

ノバ社元社員、虚偽の肩書きで論文に関与

――研究の不正は、どのように発覚したのでしょうか?
桑島 きっかけは、12年に京都大学医学部付属病院の医師だった由井芳樹氏が「ランセット」に投稿した指摘です。それにより、JHSとKHSでは統計的にあり得ない血圧の変化があることが発見されました。その後も論文の問題点が次々と明るみに出てきて、学会や厚労省もようやく動き出しました。マスコミの力も大きく、特に「フライデー」(講談社)や毎日新聞の報道の功績は大きかったと思っています。
 厚労省が設置した調査委員会には、私も委員として参加しました。最終的に、厚労省は「法的強制力のない調査では真相究明に限界がある」として、ノバ社に対して被疑者不明のまま東京地方検察庁に刑事告発しました。その後、元社員が逮捕され、拘留期間も1年半の長期に及びました。そして15年暮れに公判が開始され、30回以上継続するという、これも異例の長期裁判となっています。

――具体的には、どのような不正が行われていたのでしょうか?
桑島 問題になったディオバン関連の5つの臨床試験では、いずれも元社員が統計解析に関与していましたが、論文では社員であることを隠して「大阪市立大講師」という肩書きが使われていました。裁判の争点とは直接関係はないですが、利益相反の開示に重大な問題があったわけです。
 今回の裁判では、時効の関係でKHSのサブ解析論文に関しての不正操作と、それによる誇大広告の有無が争点となっています。被告は、ノバ社と元社員です。
 検察側は、元社員の自宅から押収されたUSBメモリに残っていたデータの中に、実際には存在しない架空の症例45例が発見されたことを証拠として提出しています。これに対して、弁護側は「参加医師たちが結果を改ざんした」との供述証拠を提出し、「改ざんは医師たちによるもの」と主張しています。元社員が統計解析を行ったことは間違いないのですが、「すべて医師の指示によるものであった」というわけです。
 一方、改ざんした医師は「ノバ社が資金提供している研究なので、やる以上はディオバン有利の結果を出す必要がある。教授の望むデータを提供すれば、人事で優遇されると思った」と証言しました。
医師たちも製薬会社の資料を鵜呑みに

――なぜ、そのような不正が横行してしまったのでしょうか?
桑島 ひとつには、00年代前半の日本では、大規模臨床研究を行う環境基盤が整っていなかったことがあります。教授も基礎医学で実績のある人がほとんどで誰も大規模臨床研究をやったことがなく、データ管理や統計解析についても知識がないため、元社員に全面的に頼ってしまったのです。
 根本的には、医師と製薬会社の関係性に問題があります。日本は公的な研究資金が乏しいため、製会社からの資金提供がなくては研究活動が行えません。また、教授は偉くなると「学会長として学会を開催したい」と考えますが、現在、学会を行うのはホテルやコンベンションセンターが多く、高額な費用が必要になります。そのため、製薬会社に援助を求めてしまうのです。本来なら、昔のように大学の教室を使って教室員が手弁当で開催すればいいだけです。また、一般の臨床医も自分の専門分野しかわからず、製薬会社のつくった資料を鵜呑みにしてしまいがちです。

――ディオバン事件を受けて、日本の臨床研究はどうなっていくのでしょうか?
桑島 この事件で、薬に関する臨床研究の不正は犯罪であることが明確に示されました。製薬会社は自主規制を厳しくし、国も臨床研究を規制する法案がまもなく立法化します。したがって、今後、臨床試験は適正な方向に向かうと思います。しかし、一方で規制が厳しくなるということで、ただでさえ少ない日本の臨床研究がさらに減ってしまう恐れもあります。製薬会社から大学への資金提供の減少も、研究環境の悪化につながっています。
 私の基本的なスタンスは「反医療」「反製薬会社」ではありません。製薬会社から講演料を受け取って講演をすることもありますし、反目するのではなく協力しながら、最新の適正な医療を提供することが大切だと考えています。
 本書で一番訴えたかったのは、医師や研究者のあり方です。診療の指針となるガイドラインを作成する立場にありながら製薬会社の広告に登場することは許されないと思います。命を扱う立場だからこそ、倫理観と真実を追求するマインドを持ち続けるべきです。
(構成=編集部)



http://www.shimotsuke.co.jp/category/life/welfare/medical/news/20161119/2513814
佐野市民病院、民間譲渡に理解 政策審が答申書
11月19日 朝刊 下野新聞

 【佐野】田沼町の佐野市民病院の運営形態について議論した「市政策審議会」(三橋伸夫(みつはしのぶお)会長)は18日、民間譲渡を認める審議結果をまとめた答申書を岡部正英(おかべまさひで)市長に提出した。市は民間譲渡に向け今後、市民などへの説明会や移譲先の選定方法を協議していく。

 同病院は2008年から、医療法人財団「青葉会」が指定管理者となり公設民営で運営。同会との協定が18年3月末で終わるのを踏まえ、庁内で今後の運営形態を議論してきた。その結果、民間ノウハウによる業務の効率化や経営責任が明確となることなどを理由に民設民営の方針を決定。8月に同審議会へ諮問し、計4回に渡り議論された。答申では民間譲渡の方針を「概(おおむ)ね理解する」としながらも、市民や病院スタッフへの十分な説明や医療サービス向上などを求める三つの付記事項を設けた。


  1. 2016/11/19(土) 06:24:35|
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