Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

11月6日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/473902?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD161106&dcf_doctor=true&mc.l=188223438
シリーズ: 『「50歳以上ドクター」の悩みと未来』
50歳以上の勤務医、6%が月8回以上の当直◆ Vol.2
1日10時間以上勤務は2割、いまだ長時間労働

医師調査 2016年11月6日 (日)配信高橋直純(m3.com編集部)

Q 平日1日当たりの平均労働時間を教えてください。
110600.jpg
110601.jpg

 50歳以上の医師全体では、21%が1日10時間以上働いていた。開業医と勤務医の別でみると、勤務医は26%、開業医は15%で、勤務医がより忙しい実態が明らかになった。もっとも、35歳以下では、10時間以上の勤務する医師は55%だったので、若手よりは忙しさは緩和されていた。
110602.jpg
110603.jpg

 1カ月当たりの当直回数では、ゼロが65%で最多。一方で、8回以上も全体で4%おり、特に勤務医では6%だった。

■回答者の属性
1106a.png



https://www.m3.com/news/iryoishin/473599
シリーズ: m3.com意識調査
「へき地勤務、給与2倍に」「市場原理で競争」
医師の偏在解消、有効な施策は?◆自由意見2

2016年11月6日 (日) 橋本佳子(m3.com編集長)

Q:医師偏在対策として、「インセンティブ」となる有効な方法、あるいは規制的な手法についてご意見があれば自由にお書きください。

◆不足地域・診療科勤務の待遇手厚く
・医師不足地域で勤務する立場からの意見です。義務的に配置された医師は、勤務意欲が損なわれます。それよりも医師不足病院に赴任したいと希望するような給与を設定することが肝要です。そのためには医師過剰地域と医師不足地域で医療費に差を設けるのがいい。無理やり赴任させても、モチベーションは低下する。【勤務医】

・人口によって保険点数の100%未満や、100%以上の支払いを作る。都市部では一人当たりの患者収入が減り、必然的に農村部に資金が流れ、そこに人が流れる。あるいは地域医療の研修義務化とそれに対する補助金交付。【勤務医】

・科目間、地域間で均一な給与体制の見直し。例えば、小児科・外科・産婦人科は、内科の2倍の給与など。需要と供給の自由バランスが働いていないのが原因。【勤務医】

・勤務医と開業医の収入を逆転して、勤務医を優遇する。殊に医師不足地域の勤務医(救急医療&急性期入院を扱う医師)には、高給を!【勤務医】

・不足している地区の診療科の保険点数を10倍にするなどして、給与を上げれば良い。【勤務医】

・地域医療、特に過疎地医療を一定水準で維持するには、給与額でしかない。したがって、2次医療圏の統廃合による病床の見直しと、厚労省、都道府県知事の権限強化による再編成および住民合意が必要だ。【勤務医】

・偏在は仕方ありません。しかしながら、米国のようなインセンティブは必須であり、誰でもどこまでも医療が受けられるこの情勢を是正すべきです。その上で、足りない医師を集めるためのインセンティブを地方自治体が支払えばよい。医師により医療技術に差があることは自明であり、皆保険のように全て同一ということはあり得ない。差をつけて当然。患者を集められる医師を地方が呼べばよい。科の偏在については、充足している科についてはインセンティブを下げればいい。他の仕事と同じにすればよいだけのことです。【勤務医】

・地方勤務では救急外来で対応する場合、専門以外の対応も求められる。後期研修である程度専門科を修練した医師が短くても2年程度、入れ替わり地方病院勤務をして、総合診療のような対応をするのは腕試しもできて有意義なのかとも思う。ただし、強制は困難なのでやはり希望性ということにはなると思う。地方派遣期間は給料を良くするなど、対応すれば現実味がありそう。【勤務医】

・僻地病院の給料を現行の3倍以上とするか、卒業大学がある県に5年以上在籍することを義務とすることが必要と思います。【勤務医】

・不足地域へ赴任する医師に十分なインセンティブを、専門医団体毎に用意することが必要であると思う。【勤務医】

・僻地医療では、コストがかかるため、都会医療の保険請求の1.2倍を医療費として認めることが僻地医療の存続に必要である。【開業医】

・診療報酬の3割増と、それに伴う給料の3割増。系列病院で地方の方が給料が高いとなれば、地方に進んで行くでしょう。人間は誰しも現金ですから。【開業医】

・政府は、人数が少なくて困っている科の待遇を給与面等でよくすることしか、介入できないのではないか。各科が後輩を自分の科に招き入れることは、その人達のやる気しだいだと思う。人数が増えすぎることは、競合相手を増やすことだから、科の偏在はその科の勧誘度合いも左右すると思うが。【開業医】

・いやがる人に「規制」をする制度はうまくいかないので、自発的にその方向に向くような「インセンティブ」を考えるしかない。具体的には地域や診療科により高い報酬など希望するものが得られるようにすればよい。【開業医】

◆税制面で工夫を
・偏在対策につながるとは思えませんが、偏在しているとされている診療科および地域で働く勤務医の給料を上げることはできないので、地方税、所得税を軽減するという手法があれば、勤務医達の溜飲が下がるかもしれません。【勤務医】

・地域偏在については、地域手当、税金免除など、金銭的な協力なインセンティブがあれば恐らく解消すると思う。あと医療側だけではなく、患者のアクセスの自由にある程度規制をかけるべき。【勤務医】

・田舎で開業する場合の税控除政策。【勤務医】

◆診療科偏在、「訴訟対策」が必要
・診療科偏在対策:侵襲的治療(外科手術、お産など)に対する報酬(行った侵襲的治療件数とその保険点数に応じて)、医療訴訟対策(無過失補償制度、医療訴訟に一定の制限を設けるなど)【勤務医】

・科の偏在対策として医療行為に伴い生じ得る事故に対しての法的道義的責任を求めさせないよう完全な免責とする。【勤務医】

・産科などの訴訟対策、過失なしでも十分な補償、裁判の見直し、無知な警察の介入抑制。勤務時間、休日当直等、年俸の引き上げなど。【勤務医】

・正当な報酬を支払い、労基法を遵守する。または税制面での優遇、理不尽な訴訟等からの保護を保障。このうちのいずれかでかなり改善されると思う。強制的な手法でモチベーションの落ちた医師が勤務させられても、医師本人、地域住民ともに不幸なだけ。【開業医】

・高度医療を受ける際、訴訟を起こさないという誓約書を国が準備して書かせる。誓約書が無ければ受診すら不可とする。【開業医】

◆対策は街づくり、環境整備から
・なぜ、若手医師の割合がトップの都道府県が、ダントツで東京都かを考えれば明らか。田舎在住であればあるほど、21世紀になって、田舎で医師をやる意味を、若い医師諸君にとても説明できる勇気も根拠もありません。高齢医師割合で全国トップの福島県から見たら、東京どころか、大都会を有する地域に比べて、若手医師を引きつける魅力は、あれもこれも無いとこだらけです。何をどうやっても「蟷螂の斧」です。
 若手医師の皆さんにお願いすることは、「人生の価値観」を少し変えてくださることだけです。私は、医師が嫌ってしまう田舎側の問題を、あまりにも医業優先の要求ばかり(医師が足りない、いなくて困るなど)で、医師としてよりも前にあるべき、一人の人間としての「生活」支援を無視している住民達が多いことに尽きる(高給払ってんだから、後は知らない)だろうと考えています(東京は、金と気は遣うでしょうが、生活はとても便利なのですから)。
 つまり、短期であっても、田舎での医師生活を少しでも快適にしてあげる考え方こそが、地元自治体が具体的にできる医師招聘策と考えます。規制で何とかなる問題では無いはずです。【勤務医】

・都市部への人口集中こそ制限すべき。医師を制限しても仕方がない。地方に人がいれば、おのずとそこに医師が集まるのだから。【勤務医】

・町づくりです。住みたくない町に医者は住みません。「おらが町の病院だべー、言うこと聞けー」という田舎者を排除する。【勤務医】

・働き盛りの医師が地方もしくは僻地に異動する最大の障壁は子供の教育なので、質の高い公立の充実がひつようなのでは?【勤務医】

・過疎地、僻地の勤務は住居を提供し、高給を保証し、勤務年限を1,2年として、次々と医師を派遣するようにする。昔は医局がそのような方法を行っていた。短期間という保証があれば希望者はある。僻地の診療所をバックアップする病院も必要である。【開業医】

◆規制には反対、市場原理が基本
・市場原理に任せていれば偏在もそのうち解消する。下手な策を講じない方がよい。【勤務医】

・国レベルでの規制を始めると柔軟な対応ができなくなるため、市場原理を導入した自然淘汰に任せるのが最善。病床数の管理をやめれば、自然と人口比に応じた病院や医師の分布になると思う。ただ、診療科の偏在だけは、訴訟のリスクがある以上、インセンティブがかなり強くないと補正するのは難しいのでは?【勤務医】



https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20161031-OYTET50020/
QOD 生と死を問う 第3部
[QOD 生と死を問う]意思決定(3)終末期、葛藤する家族

2016年11月7日 読売新聞

「自宅でゆっくり」 「入院して長生きを」

「これで良かったよね」。塚本さんは仏壇の前で思わず妻・公江さんに語りかける時があるという

 人生の最後の時期をどこで過ごし、どんな医療や介護を受けるかを決める際、本人よりも重視されがちなのが家族の意向だ。本人と異なる希望を持っていたり、家族間で意見が分かれたりすることも多い。葛藤を抱えつつ、決断した家族の思いを取材した。

 「妻は、口にはしなかったけど、病室ではつらそうで……。その姿に、私も切なくなりました」。千葉県松戸市の塚本悠策さん(81)は、2年前に亡くなった妻の公江さん(当時77歳)が、子どもたちの勧めで入院した時のことを振り返った。

 公江さんは、2013年秋に末期の脳腫瘍と分かり、余命6か月と宣告された。夫婦で「つらい延命治療は受けたくない」と話し合っていたため、残された時間を一緒に自宅で過ごしたいと考えた。だが、3人の子どもたちは「治療するのが当然。あきらめるなんてひどい」と、同年12月、公江さんを放射線治療で有名な病院に入院させた。

 病院では、治療の他にマッサージや歩行訓練もあり、周囲の人には「頑張って」と励まされる。「長生きが勝者だと言わんばかりで、それを押しつけられる妻の気持ちはどんなものか」。悠策さんは、ゆっくり休むこともできない妻の様子を見かねて、1か月もたたないうちに家に連れ帰った。

 自宅では、訪問診療の医師らの支えで、天気のよい日は車椅子で散歩し、春には満開の桜を一緒に眺めた。退院から半年、公江さんは、遊びに来ていた息子一家と悠策さんに見守られて、息を引き取った。

 「つらくても治療を続けるべきだったのかと思うこともありますが、家に戻ってからの妻は笑顔が増えました。子どもたちも母親のことを一生懸命考えてくれたんですが、私たち年寄りとは感覚が違っていたようです」と、悠策さんは話す。


110604.jpg

 離れて暮らす家族や親戚が、本人の希望に反して、積極的な治療を求めることは少なくない。

 昨年末、千葉県内の自宅で肝臓がんの父親(当時87歳)をみとった女性(58)は、亡くなる数日前に東京から見舞いに来た叔母が「なぜ入院させないの」「救急車を呼びなさい」と声を荒らげるのに困惑した。「父自身が『最期まで家で』と望んでいると説明しても納得せず、私たちが見殺しにしているかのように責められました」。この経験をインターネットに書き込むと、「私も同じ目に遭った」との声が寄せられたという。

 できる限りを尽くしてでも生きていてほしいと願う家族にも、迷いは残る。

 東京都八王子市の男性(71)は、認知症の母の症状が進み、ものが食べられなくなった際、胃に穴を開けて栄養剤を流し込む「胃ろう」の手術を受けることを決めた。「医師は『自然にしたらどうですか』と手術に賛成ではなかったが、重ねて頼んだ」と話す。

 母親は、男性が若い頃に事業に失敗した際、自宅を売って助けてくれた。「ダメな息子に文句一つ言わずいつも支えてくれた。せめて少しでも長生きしてもらうのが親孝行だと思った」

 介護施設に入ってからも毎日、面会して「100歳まで頑張ろうね」と語りかけた。今年7月、心肺停止で救急搬送された際も「何とか助けてください」と頼んだが、母は93歳で帰らぬ人となった。男性は、「大切な母親に一日でも長く生きていてほしいという一心だった。ただ、今になって、母が本当はどうしたかったのかと考えてしまうこともある」と打ち明ける。

「本人が決定」1割強

 厚生労働省の研究班が2013年、終末期のケアを主に誰が決めたのかを調査したところ、「家族」が最も多く、療養場所にかかわらず半数以上を占めた。療養場所が自宅の場合でも、本人が決めたのは1割強だった。

 終末期の医療などについて本人の意思表示の重要性を訴えている長寿社会開発センターの石黒秀喜理事は「家族だから、どんな選択をしても悩み、後悔の念を抱く」と指摘する。実際、親や配偶者が亡くなってから「自分の選択が命を縮めてしまったのではないか」などと思い悩んだ末、うつ病を発症してしまう人もいる。

 石黒さんは「家族に重荷を背負わせないことが、最後の子ども孝行、配偶者孝行だ。本人の意思表示があってこそ、『本人の希望がかなえられたのだから』と納得できる」と話している。

 ◎QOD=Quality of Death(Dying) 「死の質」の意味。

 (飯田祐子、大広悠子)



http://www.excite.co.jp/News/column_g/20161106/asahi_2016110400095.html
米国は医療費の大幅削減に成功 “強い”薬も薬局で買える
dot. 2016年11月6日 07時00分 (2016年11月7日 04時52分 更新)

 風邪薬、下痢止め、咳止め、酔い止め、鎮痛剤……。ドラッグストアでさまざまな薬を手軽に入手できる点はアメリカも日本も同じだが、決定的に異なるのは、日本では医師の処方が必要な「強い」薬が、アメリカではドラッグストアでも売られているところだろう。

「赴任したとき、日本では医師が処方しなければならない胃潰瘍薬、『プロトンポンプ阻害薬』がドラッグストアに並んでいたことに驚きました」

 と、アメリカのマサチューセッツ州ボストン在住の医師、大西睦子さんは言う。

 米国では、病気などの初期症状が出たとき、ファーストステップとして、病院に行くより、市販薬に頼るケースが一般的だ。

 2015年度の米国消費者ヘルスケア製品協会の報告によれば、米国の市販薬市場は400億ドル、平均的な家庭は年間に約338ドルを市販薬に使っていることになるという。

「8割以上の成人は、軽い病状が現れた場合、まず市販薬に頼りますし、深夜に子どもに症状が出た場合も、7割近い親が市販薬を与えているというデータがあります。医療費が高額になりがちな米国では、市販薬は、手ごろな価格でアクセス可能な、貴重な医療手段なのです。市販薬がないと、軽い症状でも、高額な医療に依存しなければなりません」

 市販薬は医療費の削減という意味でも効果的だ。医療機関を受診すれば6~7ドルかかるが、市販薬では1ドルで済むとされる。医療費を770億ドル、薬のコストを250億ドル削減しているという。セルフメディケーションが成功しているように見える米国だが、消費者リテラシーはやはり高いのか。

「副作用や他剤との飲みあわせなどの諸注意は、『ドラッグファクト』としてパッケージに大書きされ、メディアで定期的に周知されているので、理解は進んでいると思います。市販薬のポーションは大きく、数百錠単位で売られているものもあります。子どもが大量に誤飲してしまえば大事ですから、保存場所にも気を配るのが常識です」

 それでも、特に健康リスクの上がる高齢者は、多剤服用での相互作用や、腎機能や肝機能低下などが問題になるケースは後を絶たない。手に入れやすいために、乱用して中毒に陥るケースも報告されている。

「たとえば、解熱鎮痛剤のアセトアミノフェンは、過剰服用で毎年3万人が入院し、重篤な肝障害を引き起こすこともあるため、FDA(米国食品医薬品局)も注意を促しています」

 医師にかかりづらいといわれる米国だが、市販薬を服用する際は、かかりつけ医(プライマリードクター)に電話で相談できる仕組みもあるという。

「セルフメディケーションは、消費者の理解が進むことはもちろんですが、薬剤師や医師など医療従事者の理解と協力、それを支える仕組みが機能してはじめて、成立するものだと知ってほしいです」

(編集部・熊澤志保)

※AERA 2016年11月7日号



http://www.yakuji.co.jp/entry54389.html
後発医薬品を安定的かつ持続的に未来に届けるための提言~後発医薬品数量シェア80%時代に何をするべきか?~
医薬品流通未来研究会代表 藤長 義二
(連絡先:yosh6@icloud.com)
2016年11月7日 (月) 薬事日報

はじめに

 後発医薬品については骨太の方針2015において、「2017年(平成29年)央に70%以上とするとともに、2018年度(平成30年度)から2020年度(平成32年度)末までの間のなるべく早い時期に80%以上とする」と新たな数量シェアの目標値が示された。


 医療用医薬品の中でスペシャリティドラッグと後発医薬品が大部分を席巻する時代が近づいており、後発医薬品80%超の目標と同時に医療用医薬品市場は大転換期を迎えることになる。医薬品産業もこうした時代の変化への対応は必須となっている。

 医薬品流通未来研究会は、急速に進展するカテゴリーチェンジや地域包括ケア時代の到来を見据え、2015年8月に「日本の優れた医薬品流通機能を未来に届けるための提言~持続可能性と負担の公平性の確保~」を全ての医療医薬品産業関係者に向けて一つの問題提起として提案した。

 その中で、後発医薬品については先発医薬品の利益で後発医薬品の赤字を補填している現状が明らかとなり、後発医薬品のみでも医薬品卸経営を成り立たせるために後発医薬品のコストを踏まえたリベート体系の導入を提言した。

 官民を挙げての後発医薬品使用促進の結果として後発医薬品数量シェアが80%を超えたとしても、医療機関と医薬品卸から見て苦難の道以外の何物でもないのであれば、後発医薬品流通は破綻する。後発医薬品数量シェア80%の時代においても日本の優れた医薬品流通機能を持続させるために、本研究会では後発医薬品にフォーカスを当て、2015年8月の提言以降、課題が改善されたのかを検証するとともに、医薬品卸が抱えている課題と対応の方向性について新たに提言していきたい。

1.後発医薬品流通における現状と課題

 もともと日本の医薬品市場では、後発医薬品出現以前から国民皆保険制度の下で全ての国民に必要な医薬品の円滑・確実な供給が実現できていた。従って、安価な後発医薬品の売上が拡大しても、医薬品市場がそれにより拡大する訳ではなく、後発医薬品は先発医薬品・長期収載品からの置き換え効果を持つに過ぎない。これは、流通小売業の立場から見れば、減収減益の負のスパイラル以外の何物でもなく、後発医薬品の成長に伴う医薬品産業中の成長セクターは後発医薬品メーカーのみに限定される、という特徴を有している。

 急速な後発医薬品拡大は医薬品流通にどのような影響を及ぼしているのであろうか。以下の三つの視点で現状と生じている課題を考察したい。

[1]国民・消費者・患者の視点

 国民・消費者・患者に対し、「先発医薬品の安価な代替品」という後発医薬品の有する基本的価値は、十分に広報され周知されてきている。その反面、未だに医師・薬剤師には後発医薬品の「品質」に対する疑問を感じている意見が多いことも事実である。
110605.jpg
表1 平成26年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査より抜粋
※画像クリックで拡大表示

 外来診療において医師に後発医薬品を積極的に処方しない理由を尋ねた調査によると、診療所・病院医師ともに「品質に疑問があるから」という回答が約80%と非常に高くなっている。次に「情報提供が不足しているから」が約45%である(表1参照)

 先発医薬品は、国際水準の品質スペックによって品質保証がなされている。一方で後発医薬品の品質についてはまだまだ医療者の理解を得られているとは言えない。

 後発医薬品は先発医薬品と品質に関して、何が同じで何が違うのかを国民に周知し、国民が自ら安心して後発医薬品の恩恵を受ける体制が必要である。

[2]調剤薬局経営の視点
110606.jpg
表2 調剤薬局における後発医薬品割合の変化(在庫)
※画像クリックで拡大表示

 調剤薬局における在庫品目数や在庫スペースにおける後発医薬品比率はもはや看過できない経営問題となっている。ある調剤薬局チェーンにおける後発医薬品在庫の割合は2011年から2016年にかけて17.81%から25.31%に増加しており、2016年では1店舗あたり全1,695品目のうち実に429品目が後発医薬品となっている(表2参照)

 また、仕入数量に占める後発医薬品の割合が20.20%から36.98%に、返品数量に占める後発医薬品の割合が12.88%から22.48%と年々増加傾向にある(表3参照)
110607.jpg
表3 調剤薬局における後発医薬品割合の変化(仕入・返品)
※画像クリックで拡大表示

 このことから、仕入・処方・返品・廃棄・棚卸といった調剤薬局の在庫管理業務全般にかかる作業負荷が増加していることが推察できる。それに加え、在庫のない後発医薬品を調達する際には調達コスト・患者の待ち時間・医薬品卸の至急配送が増加し、特に医薬品卸の急配頻度の増加によるCO2排出量増加は環境問題でさえあると言える。

 調剤薬局は各種調剤報酬加算によって補填してきたが、後発医薬品によって減少する薬剤費に比して調剤報酬が増加するために、期待した医療費の合理化にはつながっていかないという矛盾を抱えている。

[3]医薬品卸経営の視点

 ある医薬品卸の事例では、先発医薬品1成分に対し後発医薬品を平均10~20品目在庫しており、物流センターでは売上高比で10%にも満たない後発医薬品の専有面積は50.7%にまで拡大を続けている。平均在庫日数は先発医薬品の11日に対して後発医薬品は14日と回転が遅く、ピース当たりの平均単価は先発医薬品9,529円に対して、後発医薬品3,195円と非常に安い。配送コストは先発医薬品と後発医薬品で同一であることから、後発医薬品の流通は医薬品卸の経営効率化・生産性の向上を大きく阻害しているのである。
110608.jpg
表4 内資・外資上位5メーカー統計値(2013年度実績)
※画像クリックで拡大表示

 このような実態を踏まえ、本研究会で主要医薬品卸5社における2013年度の後発医薬品の最終利益率を調査したところ、内資メーカーからの最終利益率が▲1.0%、外資メーカーからの最終利益率が▲0.8%となっており、後発医薬品の使用促進において医薬品卸が果たしている役割は非常に大きいにも関わらず、現時点では後発医薬品には適正な流通マージンが反映されていないという実態を報告した(表4参照)

 この調査結果を踏まえ、本研究会では以下のような提言を行っている。

提言:「後発医薬品流通におけるコストを踏まえたリベート体系の導入」

 本研究会の調査により医薬品卸の経営は先発医薬品の利益で後発医薬品の赤字を補填している現状が明らかとなった。先発医薬品の場合は従来のリベート・アローアンスにより流通コストを吸収することが可能であるが、先発医薬品薬価の60%ないし50%で発売される後発医薬品については、コストを実額ベースで吸収できず赤字負担をせざるを得なくなっている。

 後発医薬品数量シェア80%時代を見据え、後発医薬品のみでも卸経営は成り立つべきである。後発医薬品の安定的な流通を行うためにも、メーカーは先発医薬品のような率ベースのリベート体系ではなく、コストに応じた金額ベースでのリベート体系に変更するべきである。後発医薬品の価格が低下しても流通コストは変わらないため、このような体系への変更が実現できれば、医薬品卸が最低限かかっているコストを後発医薬品メーカーと共に負担していくことにより、後発医薬品のさらなる拡大に貢献していくことが可能となるであろう。

 本研究会の提言のほかにも、日本医薬品卸売連合会をはじめ、「後発医薬品の持続的成長をはかる」ため、後発医薬品メーカーと医薬品卸が、後発医薬品の流通経費をそれぞれ適正に負担する旨の提案が発表された。その中には流通マージンを「率から額」へ転換すべきという意見もあった。
110609.jpg
表5 主要医薬品卸5社における後発医薬品取引上位5メーカーの最終原価率
※画像クリックで拡大表示

 本研究会では昨年度の提言を踏まえ、2016年度薬価改定後に主要卸5社における後発医薬品取引上位5メーカーの最終原価率を調査し、後発医薬品メーカーの流通マージンがどのように変わったのかを検証した。投稿時点では2016年4~9月の最終利益率データ集計ができなかったため、2016年4~6月度のデータと薬価改定前である2015年4~6月度の最終原価率データを比較することとした(表5参照)

 調査の結果、驚くべきことに、主要医薬品卸における後発医薬品メーカーの最終原価率が軒並み値上げ傾向である実態が判明した。一部メーカーは二桁の値上げとなっている。

 言うまでもなくこの「利益マージン」は、医薬品卸が医療機関に後発医薬品を安定的に供給するための必要な原資となるものである。残念ながらこの「後発医薬品の持続的成長をはかるための流通経費」を、後発医薬品メーカーは増額どころか減額してきているのが実態であった。当調査の結果として、医薬品卸サイドが長期収載品等の少ない利益を転嫁して、後発医薬品の流通経費を生み出している現実が改めて確認された。

 ではなぜ後発医薬品メーカーは、後発医薬品の普及に必要な「流通経費」を捻出できないのであろうか。1成分につき30社以上の後発医薬品が発売されるため、シェアを確保するために多くのMRを抱え熾烈な価格競争を行うという後発医薬品メーカー同士の「過当競争」が、それぞれの企業体力を弱め、結果として医薬品卸への最低限の流通経費をも捻出することが厳しくなってきている。後発医薬品メーカー同士の高コスト体質と低価格の過当競争が、皮肉にも後発医薬品数量シェア80%時代に向けての大きな阻害要因となりつつあるのではないか。

2.将来への提言

 前述の通り、後発医薬品のシェア拡大は、単価が低下する一方で取扱メーカー数が増加することにつながり、医薬品卸の経営面において減収・減益・コスト上昇という三重苦を意味することになる。医薬品卸は先発医薬品の利益を補填することで現状を維持してきたが、それが限界を迎えていることは医薬品卸企業の共通認識であり、後発医薬品流通を維持していく上での課題が山積している。

 後発医薬品数量シェア80%時代でも安定的な医薬品流通を確保していくために、本研究会では以下のような提言をしたい。

[1]医薬品卸への提言

(1)安心できる後発医薬品の確保

 (a)品質面での安心の確保

 前述の通り、後発医薬品の品質に対する不安が依然として多いことが確認された。

 患者・医師・薬剤師の誰もが安心できる品質の後発医薬品を確保するためには、「安かろう、悪かろう」と思われる後発医薬品を排除していくことが求められており、流通上の中立性という特徴を生かし、医薬品卸がその役割を担うことができないのであろうか。仕入れた商品の品質を担保することは卸売業者としての基本機能でもある。

 医薬品卸自らが溶出試験等を委託実施できる体制を主体的に整備したり、または自らが後発医薬品メーカー工場の品質管理体制を監査するなど、医薬品卸として後発医薬品の品質保証を行うことができれば、医薬品卸は望ましい後発医薬品、品質の高い後発医薬品メーカーのみを集約し、医療機関に対し推奨することで安心感が高まる。

 現状、主要医薬品卸では独自に推奨後発医薬品を設定しているが、医療機関の要望に応じ推奨品以外にも仕入・在庫をしていることが過剰な品目数と在庫スペースを占めている主因である。望ましい後発医薬品を推奨することで粗悪な後発医薬品を市場から駆逐でき、その結果、先発医薬品1成分に対し、後発医薬品が30品目以上も存在するという事態は解消されるだろう。

 品質面で医療機関の不安がない長期収載品並びにAG(Authorized Genericのこと。先発医薬品と成分が同一だけでなく、剤型・添加物・コーティング剤・製造プロセスが完全に同一な医薬品)については、医薬品卸は積極的に先発医薬品メーカーと交渉を行い、後発医薬品のプライベートブランド(PB)を持つ方向も検討するべきである。

 海外に目を向けると、1980年代初頭の米国では後発医薬品が急速に拡大し始めた。全ての後発医薬品を在庫し、顧客のニーズに応えることを目指したのが当時米国第4位卸であったFoxMeyer社である。

 FoxMeyer社は巨大物流センターを建設し、後発医薬品のフルライン化を志向したが、物流の非効率、生産性の低下を招き1983年に倒産した。これを契機に米国卸のBIG3はAGのPB化を進め、現在の高効率物流体制を構築していった。

 (b)物流面での安心の確保-GDP(Good Distribution Practice)機能の整備-

 現在、日本における医薬品の物流品質は、医薬品卸としては日本医薬品卸売業連合会の自主規範である「JGSP」がベースとなっているが、2014年7月のPIC/S-GDP加盟を契機としたグローバル水準の品質管理基準が浸透すると考えられ、医薬品卸はさらなる物流機能の整備が求められる。

 特に、後発医薬品数量シェア80%時代を見据えた後発医薬品流通においては、後発医薬品の専門販社がその機能を十分に果たすためには多くの超えるべきハードルがあると考えられる。そこで、医薬品卸が主体としてリーダーシップをとり、医薬品物流に関するガイドライン(GDP:Good Distribution Practice)を整備することを提言したい。

 GDPの整備を進めることで、医療者や患者が持つ安定供給や、商品回収時の対応などに対する不安を払拭できるよう努めるべきである。

 GDPにおいては、医薬品が「生命関連商品」という特性があることを踏まえ、温度管理などの流通工程における品質管理や衛生管理、災害時を含めたリスクマネジメント、商品回収や返品時の対応、偽薬の混入防止を含めたトレーサビリティなど、多岐にわたる項目への対応が必要である。

 特に、東日本大震災や熊本地震などの大規模災害時にも医薬品の安定供給を果たせるインフラと各地域の状況を熟知した人的資源を保有する医薬品卸は、その自らの機能を磨くとともに、その社会的インフラとしての役割をさらに訴求していくべきである。

 (c)プロモーション面での安心の確保-GPP(Good Promotion Practice)機能の整備-

 後発医薬品の基本的価値は薬価の安さであるが、先発医薬品と同一成分である後発医薬品についてMRによるプロモーションは必要なのであろうか。
110610.jpg
表6 後発医薬品メーカーの各年度の4月1日時点のMR数推移(新入社員除く)
※画像クリックで拡大表示

 エルゼビア・ジャパン社「MONTHLY ミクス2014・増刊号、2015・増刊号、2016・増刊号」より、比較可能な後発医薬品メーカーのMR数を算出したところ、一部の後発医薬品メーカーでは、MRを増員している実態が明らかとなった(表6参照)

 安価な後発医薬品に従来の長期収載品と同様に多数のMRを抱え販促活動を行うことは、後発医薬品の製造原価上昇につながり、社会保障費の適正化という観点からも矛盾した動きだといえる。

 なお、後発医薬品が普及しているアメリカの医療費は、2012年で2.8兆ドルであり日本の7倍強の規模であるにも関わらず、MR数は日本の約半数である。

 一方、医薬品メーカーMRは医師・薬剤師に対し、適正使用情報の提供や副作用情報の収集、商品回収時の対応などを行っていたが、後発医薬品数量シェア80%時代においては、先発医薬品メーカーではなく、後発医薬品メーカーがその役割を果たさなければならないという課題がある。しかし、先発医薬品メーカーと医療関係者との面会であっても、十分な時間が得られない現状からみても多忙な医師・薬剤師が個別の後発医薬品メーカーのために貴重な時間を割くことは医療機関にとっても大きな負担となる。

 そこで、医薬品卸が後発医薬品の情報提供や副作用情報収集等のプロモーション機能を強化すべきである。現状として、医薬品流通におけるプロモーションにおいてもガイドラインは存在しない。医薬品卸が主体となって、医薬品プロモーションに関するガイドライン、いわばGPP(Good Promotion Practice)機能を整備することで、後発医薬品メーカーは安心してプロモーション業務を医薬品卸に委託するようになるだろう。

 特に今後の後発医薬品においては、生活習慣病や感染症などのいわゆるプライマリー領域の製品だけでなく、オンコロジーなどのより正確でタイムリーな情報提供および情報収集が必要な領域の製品の増加が予測され、医薬品卸は各エリアに密着し、長期的に製品使用のフォローができるMS機能の可能性に着目すべきである。例えば、後発医薬品メーカーのMR機能をMSが代行するモデルは、医療経済的にも大きく貢献できると考えられる。

[2]メーカーへの提言

(1)医薬品卸MSの情報提供機能、副作用情報収集業務の活用

 上記のように、医薬品卸が後発医薬品のプロモーション業務を担うことができれば、後発医薬品メーカーは自社でMRを保有するのではなく、医薬品卸に委託すべきである。社会保障財源の観点からも、医薬品卸に適正なフィーを払ってMR機能を代替させる方が効率的であり、後発医薬品の情報提供・副作用情報収集・販促活動については医薬品卸のMSを活用するべきである。

 なお、フィーについてはMR業務の代行をすることで後発医薬品メーカーのMR人件費削減に寄与するため、従来型のプロモーション施策に支払っていた単価ではなく、MR人件費額分を多少上乗せした単価設定にすることが望ましい。

(2)合理的な包装パッケージの開発

 メーカーは調剤薬局における調剤業務効率化のために、合理的な包装パッケージを検討するべきである。
110611.jpg
表7 調剤薬局チェーンにおける内服薬の投与日数別処方箋枚数
※画像クリックで拡大表示

 たとえば、ある調剤薬局チェーンでの1カ月分の処方箋を分析したところ、内服薬の約60%は処方日数が7の倍数となっていた。これは患者に対して1週間単位で処方されていることを意味する(表7参照)

 しかしながら、処方日数が7の倍数となっている内服薬の包装数を分析してみると、その65%は100錠包装や500錠包装などであり、28錠包装など7の倍数である包装は35%に過ぎないのが現状である(表8参照)

 つまり、多くの調剤薬局においては10錠1シートというPTPを、7の倍数で処方するためにハサミで切るという作業をしており、これが患者の待ち時間の増加だけではなく、錠数誤りといった調剤過誤の原因になっているのである。

 そのため、14錠包装や28錠包装といった、薬剤師が箱を開けなくてもそのまま患者に渡す、いわゆる箱出し調剤に対応可能な包装パッケージの開発を求めたい。既にC型肝炎薬のソバルディ、ハーボニーにおいては、調剤時に中の乾燥剤を取り除く手間はあるが、実質的には箱出しと同じである。箱出し調剤が定着すれば、調剤薬局における調剤業務は各段に効率化されるだろう。
110612.jpg
表8 内服薬の処方日数と処方薬剤の包装単位の関係
※画像クリックで拡大表示

 患者の待ち時間を増加させる要因として、一包化調剤も挙げられる。ある調剤薬局チェーンで1カ月間の処方箋を調査したところ、処方箋枚数ベースでは3.67%、行数ベースでは9.29%で一包化がされていた。ここで、一包化がない場合の待ち時間が平均10.7分であったのに対し、一包化がある場合は14.2分と、30%以上待ち時間が増加していた。そういった意味で一包化調剤は高齢者の飲み間違いや飲み忘れを防止する意味で大変有効な作業であり、それに対する技術料を算定することができる反面、調剤薬局の調剤業務を増加させる要因となっているといえるだろう。

 これを包装パッケージの観点から分析すると、現時点の内服薬9,834品目のうち、バラ包装が用意されているのは約33%の3,282品目(YJコードベース)にとどまっている。そのため一包化をする場合は調剤室内でPTPシートから薬剤を1錠ずつ取り出す作業が必要となり、これが調剤時間増加の一要因として考えられる。

 安価な後発医薬品に先発医薬品と同じコストを投入するということは、医薬品流通における問題と同様に調剤薬局経営にも売上・利益・コストの関係のバランスを大きく阻害することとなる。

 アメリカにおける後発医薬品数量シェアは、2016年5月のデータで92%に達したと言われている。このような後発医薬品拡大は、調剤薬局における自動化、特に調剤ロボット(計数調剤を主に行い、リアルタイムの品目別在庫管理、さらには発注点を決めておけば発注指示を出したり、能力的にはオンライン発注までを可能にしている)の急速な技術革新と導入拡大が起きている。

 これらの調剤ロボットは、平均的に調剤薬局調剤業務(計数調剤)の60~70%をカバーする能力を持っているが、この調剤ロボットに欠かせないのが「バラ包装」である。バラ包装ボトルからロボットのカセットへの医薬品投入はバーコード照合で担保されている。

 医薬品卸、調剤薬局の後発医薬品選択基準の一つに包装形態が加わることもあり得るのではないだろうか。

[3]行政への提言

(1)薬価の単純化(後発医薬品薬価制度の見直し)

 長期収載品・AG・後発医薬品の薬価を単純化するべきである。特に医薬品卸物流センターの例にも挙げたように、先発医薬品1成分に対して、後発医薬品が10~20品目あるというような状態は異常な状態である。

 医薬品卸が推奨品を持つためにもこれらの品目の薬価を単純化することは急務である。製品の安定供給状況や品質検査の結果により、良質な後発医薬品と不安の残る後発医薬品を明確に分ける、例えば後発医薬品プラス群、後発医薬品マイナス群というようなグループで薬価を設定するなど、医療者が安心して使用できる良質な後発医薬品が、不安の残る後発医薬品の販売戦略等に引きずられることなく、安定的に供給できるような措置が必要だと考える。

 上記は一例であるが、先発医薬品と後発医薬品の価格体系が異なる以上、後発医薬品は先発医薬品と同じ薬価制度でいいのであろうか。後発医薬品の薬価制度は見直しを検討する時期に来ていると考える。

(2)メーカーによるAG選択制の導入

 AGについては、先発医薬品メーカーのグループ会社で展開する方法と、全く別の他社にライセンスアウトする方法の2通りが存在する。後発医薬品数量シェア80%時代になれば、ほぼ後発医薬品に変わることに違いはないが、現在、後発医薬品加速のために設定されているインセンティブが廃止になれば、再び長期収載品を使用するのではないかという懸念も残る。

 そこで先発医薬品の特許が満了した時点で、当該メーカーの申告によりAG扱いとする制度の導入を検討するべきではないかと考える。そうなるとメーカーにとっては、追加のコスト負担なく長期収載品をAGにすることが可能となり、よりAGの普及が進むことが予測される。また自社で展開しない場合は権利をライセンスアウトすることになるが、後発医薬品メーカーにも相応の資金力が求められることになり、規模の拡大を目指して業界再編が加速すると思われる。

 後発医薬品数量シェア80%時代には、患者は長期収載品か後発医薬品かを選ぶのではなく、後発医薬品の中でAG、またはそれ以外の後発医薬品を選ぶという選択をすることとなる。メーカーはAG以外の後発医薬品について、患者と薬剤師に選ばれるよう製剤的な工夫やパッケージ面の提案等を行うことが求められる。

(3)調剤薬局の経営合理化

 調剤薬局の調剤業務は極めて非効率である。同時に規模の利益、生産性による経営改善が極めて困難である。

 例を挙げると、ここに1日処方箋が約50枚集まる調剤薬局があると仮定する。薬剤師1人当たりの処方箋処理枚数の平均は27枚前後であるが、休日や急な休みのためのゆとりを考慮すると、理想的には約2.5人の薬剤師が必要となる。

 もしここに500枚の処方箋が集まる薬局があると仮定すると、薬剤師は何人必要となるか。筆者が調査した人たちによる平均的回答は17、18人というところに集まった。単純倍数の25人に比べて相当な合理化が期待できる。

 米国最大のHealth Care Providerの一つであるKaiser Parmanenteのカリフォルニア州にあるメールオーダー薬局を今年7月に訪問した。処方箋のほぼ100%が電子処方箋となっている。その時に得たデータによると、1日の処方箋処理数が120,000行(米国の処方箋は基本的に1疾病・1枚・1行)とのことで、これを1日延べ50人の薬剤師で処理している。薬剤師は3交代で24時間稼働している。薬剤師1人当たりの処理行数は2,400行であり、少し乱暴に日本の処方箋枚数に換算すると約600枚程度と考える。薬剤師のプロフェッショナルフィーが概算かつ日本円換算で200円程度と仮定すると、1人当たりの薬剤師が1日で得るプロフェッショナルフィーは約480,000円である。

 日本の薬局勤務薬剤師の1日当たりの処理枚数の上限は40枚である。調剤技術料を概算2,000円と仮定すると、上限の40枚の場合でも80,000円である。実際には薬剤師1人当たりの処方箋処理枚数の平均は27枚前後であるため、54,000円程度である。Kaiser Permanenteと比較すると1/6以下の生産性に過ぎない。

 この低生産性を改善する方途は、薬局の勤務薬剤師1人当たりの処方箋40枚制限を緩和、または解除することである。調剤薬局業務を行う体制の省令は昭和39年から変わっておらず、時代に合わせた見直しが求められる。

 調剤薬局の経営合理化は医療費の合理化に深い関係を持っている。処方箋40枚制限の段階的緩和ないしは解除は、薬剤師間の競争を促進する。サービス品質の向上につながり、利用者からは歓迎されるだろう。

 調剤薬局における調剤業務の自動化を進めて、機械でできることは機械に任せていく。それをさらに支援するための箱出し調剤やバラ製剤の必要性は既に述べた通りである。財政的な支援も望まれる。

 折しも「かかりつけ薬剤師」が求められる時代である。単純調剤業務から解放された多くの薬剤師が、在宅調剤が求められる高齢化社会の中で活躍することで、高齢化社会の薬物療法に必要な条件の一つが解決していくであろう。

3.最後に
110613.jpg
表9 米国における医療用医薬品売上上位10品目(2014年実績と2020年予測)
※画像クリックで拡大表示

 ここに興味深いデータがある。2020年の米国市場における医療用医薬品の売上上位10品目予測のうち、9品目がスペシャリティドラッグであるという予測である(表9参照)

 日本においても後発医薬品数量シェア80%時代の到来の前提として、後発医薬品のない新薬創出・適応外解消等促進加算品の比率が高まることを意味している。

 本研究会で主要医薬品卸5社における先発医薬品の取引上位5メーカー(ギリアド社を除く)の最終原価率も同様に比較したところ、下記の通りとなった(表10参照)
110614.jpg
表10 主要卸5社における先発医薬品取引上位5メーカーの最終原価率
※画像クリックで拡大表示

 先発医薬品メーカーでも最終原価率の上昇が確認された。ただし、値上げ率は後発医薬品メーカーと比較すると小さいものであった。先発医薬品メーカーではカテゴリーチェンジの進展により、新薬創出・適応外薬解消等促進加算品比率の拡大と長期収載品比率の減少が生じている。原価の高い病院販路のオンコロジー商品等のシェアが高くなってきたために、結果として最終原価率が上がってきたと分析できる。

 この点についても、医薬品卸にとっては深刻な影響が予測される。当報告書の趣旨とは少し論点がずれるので、今回はデータを提示するにとどめるが、今後も検証をしていなかければならない。

薬事日報 2016年11月7日号 9~12面 PDFファイル
http://www.yakuji.co.jp/wpyj-002/wp-content/uploads/2016/11/y11795_20161107_p09-12_s.pdf



https://newswitch.jp/p/6693
高額薬は「世界の恥」? 薬価制度、抜本見直しへ
国民皆保険揺るがす問題。引き下げ幅合意形成難しく

2016年11月06日 ニュースイッチ

 高額な医療用医薬品をめぐり、激しい議論が続いている。小野薬品工業の抗がん剤「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)は緊急に薬価を引き下げる方向となったものの、引き下げ幅などの調整が続く。識者からは初回の薬価算定時点で薬の価値を適切に判断できるよう、制度を抜本的に見直すべきだとの声もあがっている。国民皆保険の維持と革新的な医薬品の評価を両立させるため、すべての関係者が知恵を絞る必要がある。

オプジーボの薬価は英国の約5倍

 「こんな常識外れの薬価が許されるのか。世界の恥だ」。全国保険医団体連合会(保団連)の住江憲勇会長は憤りを隠さない。日本ではオプジーボの薬価が英国の約5倍、米国の約2・5倍に設定されているという。

 同剤は2014年7月に皮膚がんの治療薬として承認を受けた。年間予測患者数は470人で、小野薬品の採算も考慮されて薬価は100ミリグラムで約73万円となった。

 だが15年12月、万人単位の患者がいる肺がんに適応が拡大した。効能や効果の追加に伴って市場が広がった薬剤は2年に1回の薬価改定時に再算定が行われるが、オプジーボは16年度薬価改定で再算定が間に合わなかった。

 16年4月には財務相の諮問機関である財政制度等審議会で、同剤の薬剤費が年間1兆7500億円に上るとの試算が出された。中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)でも国民皆保険を揺るがしかねない問題とみなされ、同剤の薬価を緊急的に下げる検討が進んでいる。引き下げ時期は17年度初頭が有力だ。


25%か50%か

 10月5日の中医協薬価専門部会ではこの方法論として、以前からある市場拡大再算定の考え方を適用する案が示された。予想よりも大幅に売れた薬の価格を見直すもので、年間販売額が1000億―1500億円の場合は最大25%引き下げる。

  通常、この仕組みは市場での実勢価格や販売数量を調べる薬価調査の結果をもとに運用される。だがオプジーボはこれを実施していないため、小野薬品による予想販売額を活用する提案がなされた。同日時点の予想額は1260億円だった。

  これについて中医協委員からは、「数字の根拠をきちんと企業側から説明してもらうべきだ」(幸野庄司健康保険組合連合会理事)との意見が出た。市場拡大再算定では年間販売額が1500億円超の場合、薬価引き下げ幅が最大50%となる。幸野委員は「実績と乖離(かいり)があった場合の対処も検討が必要だ」とも指摘し、引き下げ幅の合意形成は容易でないことをうかがわせた。

影響は他の薬剤にも波及

  影響は他の薬剤にも波及する。MSD(東京都千代田区)は9月28日、オプジーボと作用が似た抗がん剤「キイトルーダ」(一般名ペムブロリズマブ)の製造販売承認を取得した。順調なら11月中に薬価収載の見通しだが、厚生労働省がオプジーボの現行価格と同等の薬価をキイトルーダにつけることには異論が予想される。この観点からも厚労省はオプジーボの薬価見直しを急がざるを得ない。

 「18年はこんな緊急対応をしなくていいよう、薬価制度自体も抜本的に見直すべきだ」(吉森俊和全国健康保険協会理事)。効能・効果の追加に伴って市場が拡大した薬剤については2年に1度の薬価改定を待たずに価格を引き下げる「期中改定」が制度化される公算が大きく、製薬企業には打撃となる。

製薬業界、臨床試験の効率化を模索

  製薬業界は経営予見性が損なわれ新薬開発が滞るとして、期中改定に猛反発している。だが「わが国の医薬品産業は他の製造業に比べて異常に高い収益率を享受している」(保団連)などと“もうけすぎ”を指摘する声が根強く、薬剤費削減の流れに歯止めがかかる気配は乏しい。

 過去に類似薬がない新薬に関しては研究開発費を含む原価や流通経費などを考慮して薬価が決まるため、製薬企業が研究開発を効率化できれば結果として薬価低減につながる可能性がある。利害関係者の理解を得る意味でも、そうする意義は高まっていると言える。

 日本製薬工業協会(製薬協)は臨床試験の効率化に向けた検討を進めてきた。その一つが「リスクベースドモニタリング(RBM)」の推進だ。

 試験の進捗(しんちょく)を管理する際、全ての医療機関へ専門家が出向いて治療データを逐一確認するのは労力がかかる。RBMは試験で起こりうるリスクをできるだけ洗い出しておき、リスクが低いと考えられる医療機関に関してはITの活用などで確認作業を円滑化する思想だ。

 医療機関へ支払う費用の見直しも模索する。「日本では1症例当たりいくらで費用が算出される。医療機関では3日で(患者が亡くなるなどして)中止しても試験を満了しても、同じ金額になることがほとんど」(高杉和弘製薬協臨床評価部会副部会長)。海外では出来高払いになっている事例があるという。

 こうした取り組みを加速するには当局や医療機関との連携が欠かせない。多様な関係者が互いに歩み寄り、幅広い観点で医療費増大への対策を検討する姿勢が求められている。

「価値に応じた値付けを」

 適応拡大で薬の売り上げが伸びるのはオプジーボ以前にもあった話だが、さほど注目されてこなかった。(期中改定をはじめとする)いろいろなルールを後付けでつくられると困る、という製薬会社の意見は一理ある。

 当局は(オプジーボの薬剤費のような)問題が生じてから慌てて価格を切り下げていくのではなく、初めから薬の価値に応じた値段をつける仕組みを考えないといけない。

 従来の薬価算定方式は、(安全性の高さや薬が効く仕組みの新規性などが)ある程度優れていたら何%加算する、という考え方だ。だが、つけた価格が効き目に見合っているかという費用対効果の評価も必要だろう。
(文=斎藤弘和)
日刊工業新聞2016年11月3日「深層断面


  1. 2016/11/07(月) 06:22:15|
  2. 未分類
  3. | コメント:0
<<11月7日  | ホーム | 11月5日 >>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する