Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

10月31日 

http://www.huffingtonpost.jp/mariko-morita/healthcare-baby-break_b_12595094.html
産休育休で専門医取得が遅れるのは当然か?
森田麻里子 仙台厚生病院麻酔科
投稿日: 2016年10月22日 11時31分 JST 更新: 2016年10月22日 11時31分 JST ハフィントンポスト

私は今、麻酔科医として働いている。麻酔科は女性医師の割合が比較的高い。

仕事のオンオフがはっきりしており、短時間でも勤務しやすいという特徴があり、麻酔科学会もそれをアピールしている。「麻酔科医のクオリティ・オブ・ライフ、育児と両立」というわけだ。

私も、少しそれを信じている面があったが、実際には買いかぶりすぎであった。最短での専門医取得に向け、できるだけたくさんの経験を積み、学会発表や専門誌への学術論文執筆も行ってきたが、産休・育休が研修期間として全く認められず、自動的に専門医取得が遅れるという壁が立ちはだかったのだ。

医師は初期臨床研修を修了する時点で早くても26歳になっており、その後の専門研修の期間はまさに出産適齢期だ。現在では、医学的にも30代を過ぎる頃から徐々に妊孕性が低下することがわかっている。子供を望む医師が専門研修中に出産育児をするのは、ごく自然なことだ。

一方で、今後の医師の労働力を考えると、女性医師が責任を持って働き続けるための環境整備は必須である。医療施設に従事する医師の中で、女性の割合は1992年の11.7%から2012年には19.6%まで増加している。30歳未満の医師では35.4%が女性だ。今後数十年にわたって女性医師の割合が増加することは決まっており、現在の男性中心の制度設計では、同じ医師数でも労働力が不足する。

出産育児を考える医師が働き続けるためには、オンオフがはっきりしているということも大事だが、実は早く一人前になれるというのが重要なポイントである。例えば外科であれば、上級医に指導されること無く術者として手術を執刀できるまでには10年はかかるだろう。

しかし麻酔科は、特に合併症のない患者で単純な麻酔をかけるなら1,2年で可能だ。時折上級医の指導を仰ぐことはもちろんあるだろうが、〇〇科の麻酔はとりあえずだいたい一人でできます、と言えれば、お荷物ではなく戦力として仕事をすることができる。

このレベルに達していれば、例え数ヶ月休む期間があっても自信を持って復帰することができるし、家庭の事情で転勤などがあっても、責任を持って仕事をしながら知識技術を洗練させることができる。

国民が十分な医療を受けるためには、女性医師が自立して社会に貢献できる環境が必要であり、そのためには短時間勤務しかできない等様々な制約があっても、正当な努力・能力が認められ、早く一人前として働けるということが重要だ。

私は出産育児との両立を目指し、「なるべく早く一人前になること」を目標として2014年に専門研修を開始した。麻酔の中にも心臓血管外科、脳外科、小児、産科など様々な分野がありそれぞれ特徴が異なっている。最初から様々な病院をローテーションして幅広く経験を積む人もいるが、分野を絞ってでも一人で麻酔ができるレベルに達するまで経験を積んだほうが良いと判断した。

最初に専門研修をした仙台厚生病院では、心臓外科・呼吸器外科・消化器外科の麻酔しかないが、逆にこれらの3分野に関してはかなりの症例数を任せてもらえた。専門医取得に必要な症例数は心臓外科は25例、呼吸器外科は25例だが、私は2年間で心臓外科は166例、呼吸器外科は163例経験した。これは同学年の麻酔科医と比較しても多いはずだ。

そして今年から南相馬市立総合病院に移り、これまで経験して来なかった脳外科、産婦人科、整形外科や小児の麻酔研修を行っている。

しかし、麻酔科学会は、決まった症例数と研究業績をクリアするだけでなく、きっかり4年間の研修プログラムを修了しなければ専門医受験資格を与えないという規制を設けている。4年間は麻酔科関連業務に週3日以上専従していなければならず、産休育休は研修期間とは認められない。

どんなに頑張っても、どんなに頑張らなくても4年間だ。

短い期間でも努力して多くの経験を積み身につけた能力を、なぜ学会は認めてくれないのだろう。麻酔科関連の研究に従事し、統計ソフトとにらめっこしている時間は研修期間として認められるのに、産休育休を数ヶ月取得したら、専門医としての能力が足りないと、どうして言えるのだろうか。

研修期間は、このくらいの年数仕事をしていれば、それなりの能力を身に付けているだろうという代替指標に過ぎない。期間に制限を設けるのではなく、きちんと能力を評価できる試験を作成すべきだ。そもそも、ある医師が今何年目でどういった病院で勤務してきたかという情報は、病院によってはホームページで公開している情報であり、学会が認定する必要はない。

他の診療科だが、大学医局に入局するための面接で、「入局するなら研修中に子供を作るな」と言われるといった話はよく聞く。前時代的なセクシュアル・ハラスメントにも聞こえるが、残念ながら医療界ではさほど驚く話ではない。

内科の新専門医制度では、6ヶ月までの産休育休は研修期間として認められることが決まっていた。そういった意味では、麻酔科は内科よりも女性医師にとって働きづらい科だと言える。

将来に渡って国民が十分な医療を受けるためには、働く期間や場所ではなくて医師の能力を正当に評価し、女性医師であっても責任を持って社会貢献できる制度に変えていかなくてはならない。




https://www.m3.com/research/polls/result/158?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD161031&dcf_doctor=true&mc.l=186787127&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
意識調査
結果  2016年再び議論!医師不足?それとも医師は過剰?

カテゴリ: 医療 回答期間: 2016年10月21日 (金)~27日 (木) 回答済み人数: 2838人

 ここに来て、また医師不足をめぐる議論が活発化しています。「医師不足」といっても、医師の絶対数の不足なのか、診療科や地域による偏在なのか。これらの問題解決には、どんな施策が必要か……。
 (1)医師数についての現状認識、(2)今後取るべき対策――の2回に分けて、お聞きします。医師がテーマの質問ですが、チーム医療の時代にあって、医師以外の皆様のご意見もお伺いします。
 
  ◆「医学部定員、2020年度以降も増員」をけん制
【調査結果】勤務医65%「医師が足りない」、開業医59%「足りている」(2016年10月31日掲載)
 「医師不足」と感じているのは勤務医で、開業医は感じていないとの回答が多かったものの、勤務医でも「医師の絶対数」よりも「地域・診療科偏在」の問題と捉えているほか、業務の他職種への移譲で負担軽減を図れると考える医師が多く、今後の医学部定員は「現状維持」あるいは「減らすべき」との意見が多数……。

 今回の調査結果は、このように総括できます。

 Q1で、今の仕事において、「医師が足りない」と感じるかどうかを聞いたところ、開業医では「感じない」との回答が「感じる」を上回った一方、勤務医では「感じる」が「感じない」よりも多く、両者の意見が正反対の結果になりました。開業医では、「あまり感じない」「全く感じない」が計59%(勤務医33%)、勤務医では「大いに感じる」「ある程度、感じる」が計65%(開業医39%)です。

 ただ、「医師が、医師以外でもできる仕事をやっている」との問いには、開業医72%、勤務医81%といずれも高率で「大いに感じる」「感じる」と答え、医師の仕事の内容を見直す余地は大きいことがうかがえます(Q2)。

 では、ご自身の身近な環境ではなく、日本全体で見た場合に、「医師不足」の問題をどのように捉えているのでしょうか。最も多かったのが、「地域・診療科偏在のみ」との回答で、開業医55%、勤務医46%で、次の「絶対数不足+地域・診療科偏在」(開業医14%、勤務医23%)とは大きな開きがあります(Q3)。

 医学部定員については、「現状維持」(開業医50%、勤務医54%)、「減らすべき」(同34%、26%)が多く、「増やすべき」(同10%、14%)と少数派でした。

 もっとも、人口当たりの医師数は、地域によって大きな違いがあるのが事実。地域別の分析結果および数多く寄せられた自由意見は、m3.com医療維新で改めてご紹介します。

Q1 ご自身の今の仕事において「医師が足りない」と感じる?
10311.png
開業医 : 600人 / 勤務医 : 1760人 / 歯科医師 : 6人 / 看護師 : 44人 / 薬剤師 : 366人 / その他の医療従事者 : 62人
※2016年10月27日 (木)時点の結果

Q2 ご自身の今の仕事において「医師が、医師以外でもできる仕事をやっている」と感じる?
10312.png
開業医 : 600人 / 勤務医 : 1760人 / 歯科医師 : 6人 / 看護師 : 44人 / 薬剤師 : 366人 / その他の医療従事者 : 62人
※2016年10月27日 (木)時点の結果

Q3 日本全体で見た場合、医師の絶対数は不足?それとも偏在?
10313_20161101054531175.jpg
開業医 : 600人 / 勤務医 : 1760人 / 歯科医師 : 6人 / 看護師 : 44人 / 薬剤師 : 366人 / その他の医療従事者 : 62人
※2016年10月27日 (木)時点の結果

Q4 医学部定員、増やす?現状維持?減らすべき?
10314_201611010545320cb.jpg
開業医 : 600人 / 勤務医 : 1760人 / 歯科医師 : 6人 / 看護師 : 44人 / 薬剤師 : 366人 / その他の医療従事者 : 62人
※2016年10月27日 (木)時点の結果

Q5 医師数をめぐる現状認識について、ご意見があればお書きください。
  (集計中)



https://www.m3.com/news/general/472490
大阪のクリニックが破産、負債12億円
2016年10月31日 (月) 東京商工リサーチ

 医療法人恵陽会(大阪市北区東天満1、設立1998年9月4日、理事長:中川泰一氏)は9月27日、大阪地裁に破産を申請し10月14日、同開始決定を受けた。破産管財人には小松陽一郎弁護士(小松法律特許事務所)が選任されている。負債総額は約12億5000万円。今後の債権調査によって変動する可能性がある。

 石川県で設立された医療法人で2008年に当地に移転。2013年2月に中川泰一氏が理事長に就任し、ビルを法人名義で購入。「東天満クリニック」として最先端のPET(陽電子放射断層撮影)検査を実施する施設として実績を積んできた。しかし、設備面を充実させた一方、業績面では既往の売上高6―7億円を脱せず、2013年3月期には多額の赤字を喫し、債務超過に転落。その後も2015年1月、自治体から不動産に差押をうけるなど厳しい資金繰りが続くなか、同年3月には資金ショートが発生。事業継続は困難となり、同年8末を以てクリニックは診療停止する旨のアナウンスがなされていた。

 なお、当法人は先に破産開始決定を受けた医療法人常磐会(大阪市大正区小林西1、理事長:中川博氏、2016年10月6日破産開始決定)のグループに属し、今回の法的措置は常磐会に連鎖したもの。



https://www.m3.com/news/iryoishin/471487
シリーズ: m3.com意識調査
「診察せず処方?」「上下関係でなく立場の相違」
「医師の処方権 vs薬剤師の調剤権」◆自由意見3

2016年10月31日 (月) 橋本佳子(m3.com編集長)

Q:その他、「医師の処方権」や「薬剤師の調剤権」、医薬分業についてご意見があれば、ご自由にお書きください。
【医師と薬剤師の役割の相違】

◆勤務医

・本当に何かあった時の責任を看護師や薬剤師が取るのでしょうか?しかも、医師のカルテにはいつまでどの薬を処方しているのかが分からないまま、そんな怖いことはできません。
・薬剤師の調剤権を医師の処方権と同等に扱うなら、医師は患者を診察せずして処方することと同等。
・薬剤師の調剤権というのも、よく分からない話で、薬剤師は医師の指示に従って調剤する義務があるが、権利というのが何を指すのか。権利というのなら、それに伴う責任も負う必要があるはずではあるが。
・「薬剤師の範疇で管理できる患者」と軽々しく発言するなど、おこがましいにもほどがあります。年余に渡り同じ処方が続いている患者が多いのを見て、これなら自分でもできそうだと誤解し、いつのまにか、自分は患者管理ができるという間違った信念を抱くことになったのだろうとは、想像がつきます。しかし、大量の安定した患者の中から、時々出てくる病状に変化が生じつつある患者を素早く確実にピックアップできる能力こそが患者を管理する能力です。
・最近の薬剤師は処方に介入したがる傾向が強い。診断学もしっかり勉強し、処方そのものがそんなに簡単ではないことを教育してほしい。
・最近の薬剤師の調剤権を間違った解釈で病院を混乱させ、患者さんのためと言うよりは、自分たちの地位向上と言うか勘違いで非常に医者は迷惑している。

・処方と調剤が同じレベルで語られるということ自体が意味不明という気がします……。上下関係の問題ではなく、立場の違いでしょう?私自身は薬剤師の先生からの疑義照会にしょっちゅう助けられています。今のままでは何が駄目なのでしょうか??
・薬剤師の調剤権よりも、患者の使っている薬品の相互作用を調べて処方医に確認することが重要です。患者と家族に正しい使用法を伝えるのも薬剤師の仕事です。
・電カルとなり、画面上のボタンをクリックし損ねるだけで、処方ミスが起こるようになっています。さらに、画面を立ち上げると勝手に前回のdo処方が入力された状態になったり、病院を変わるごとに、システムが変わり、医師は処方ミスを起こしやすくなるというのが現状で、医師の能力と全く関係ないところで、医師の自助努力だけで処方ミスを防ぐのが限界に来ていると思います。薬剤師は、その専門性を生かし、標準的処方と照らして不自然な点がないかチェックし、ダブルチェックという形で、適正な医療が行われるよう、共に努力するという関係であり、格差という尺度で比較できる関係にはないと理解しています。
・医師と薬剤師と患者とが薬剤情報を正しく共有し、治療へのアドヒアランスを正しく共有することが肝要。薬剤や添加物の情報についてはAIによる補完を開発促進すべき。多剤併用の際には、調剤にて一剤化するなど、残薬解消への薬剤師の役割は大きい。情報セキュリティを確保した上で、カルテ連携オーダリングシステムの双方向性進化が必要。

・多くの薬を服用している患者さんも多く、また同一薬効の薬剤、ジェネリック薬も多く使われるようになり、ますます薬剤師の役割が重要になってきている。薬剤の名称も調べないと分からないことも多く、間違いのもとにもなり、何とかならないものかと思っています。

・処方権や調剤権にかかわらず、医師が権利を持ちすぎである。その結果として、単純なミスが起こっていると考えられ、医薬分業をやるなら、徹底して分業してほしい。その結果、それが問題なら、元に戻せば良い。

◆開業医
・対面での診療が、投薬の基本としてきた法を改悪するのかどうか?対面診察無しでの投薬を是とするのか?診察室に入る、足取り、言葉の張り、等々。さまざまな情報を感じ取れるのが、対面での診察ですが。これに相当するものが、調剤薬局にあるのでしょうか?
・調剤薬局で勤務する薬剤師の中には、薬剤師免許こそ持っているものの、製薬メーカーのMRの経験しかない人間も多い。あるいは、薬学部を卒業して、即、調剤薬局へ就職する人間も多い。これを、医師に置き換えると、国家試験を終え、即、開業するようなもの。医師は、必ず、臨床研修を経て、知識・技術を身に付けている。患者とのコミュニケーション能力も含まれる。一度も、医療機関で仕事をしたことのない薬剤師に、調剤権と称する、臨床に関わる権限を与えてよいものか疑問に思うし、恐ろしくも感じる。
・診察して、いろいろ考えて、診断して処方するので、薬剤師が勝手に薬を変えて、効果が落ちたり、逆に薬の副作用が出たときは薬剤師が全面的に責任を取るのですか、今でも、薬剤師がゾロに変更して問題が起きても責任を取らないで良いので、おかしい状態が続いているのに。

・医師法で決められている処方権は、本来薬原料の種類だけでなく、製品も含む内容に対して処方する権限を含む権利である。権利は義務を伴うことは規則として明白な事柄である。したがって、処方の誤りの責任は医師にある。
一方、薬剤師の調剤権なるものは、医師の処方があって初めて生まれる仕事であり、法的に処方権の下位に当たる権利であることは明らかである。その上、今、法的には何の義務・負担も負っていない。調剤の間違いで生じている患者への迷惑は全て医師の負担(責任・支払い義務)となっていることから見ても、「調剤権」は処方権の下位の法的位置にあることは明らかである。調剤権を処方権と同等に扱えという発言は、患者の生命そのものを医学的に見なければならない医師法が求める患者治療の根本的発想から出発している医師法・医療法をないがしろにする考えで、ただ物事の一局面を経済的に関点だけから見た発想で、問題を云々している考えであり、患者の命を預かる医療に関係した職業人として猛反省すべき発言である。
 また、「調剤権」を振り回す前に、今の調剤費用が如何に高いものであり、もっと患者のためには低くする目線で責任をもって調剤費用内容自体の検討と減額の工夫が必要であることは明らかである。

・定期的に薬剤師とさまざまな問題点を話し合うことが一番大切、お互いの信頼、患者情報の共有を基本と考えるが。
・責任の所在さえ明らかにすれば、分担した方が合理的だ。
・医師・薬剤師がダブルチェックすると思えば良いでしょう。互いに争うことは不毛です。

◆薬剤師
・今年度の日薬学術大会の分科会で、処方権や調剤権ではなく、処方義務や調剤義務ではないかという話がありました。患者さん主体の医療やこれからのチーム医療の中では、その方が馴染むのではないかと思います。

・認定薬剤師にして、認定をもっている人は医師の処方権以上の調剤権をもってもいいと思う。
・本来医師の処方権と薬剤師の調剤権は同等。医師会が開業医を中心に自らの利益追求に走り、患者中心・患者優先は後回しの議論になっている現状を憂う。一方で大手薬局チェーンの利益追求や無能で職業意識の希薄な薬剤師の量産も嘆かわしい。この点も医師会側に本来の正しい調剤権を認めないための口実を与えている。薬学教育の抜本的改革や、(時代に逆行するようだが)営利企業の薬局経営を禁じるくらいの荒療治をしないと今後も何も変わらない。結局損をしているのは患者・国民であると思うし、勇気のあるマスコミが本当に正しいことを伝え、より良い医療の実現に向けて世論を醸成して行くことが必要と考える。
・薬剤師に、残薬調整やリフィル処方せんを認めるのであれば、もっと責任感や知識を持つようにしなければならないと思う。そのための資格、認定があっても良いのではないでしょうか。

・日本医師会副会長の中川氏に賛同。医師の処方権と薬剤師の調剤権は全く違う、何が格差なのか理解できない。製剤の良し悪しは現実にあるから、薬剤師も多くの銘柄から適切に選択する。それを医師も実施しているだけ。患者さんにとってより適切な選択があるというなら、医師へ照会すればよい。残薬管理は信頼する薬剤師に任せたいと考える医師は多い。ただし、患者さんのメリットを考えると医師と薬剤師で服薬状況の共有は絶対必要。リフィル処方は、対象の患者を選ぶのも、制限回数を決めるのも医師の仕事。病状が安定した自己管理が可能な患者さんへ最大日数を決めて発行すればいい。薬剤師が責任を取るのは当然。薬剤師だって患者状況に不安なことがあれば受診を勧めると思う。他の方の指摘通り臨床推論なんてまるで自信の無い薬剤師が多い現状なので、こんなことで受診させるなって医師から指導されるくらいに送ると思う。患者さんのために「リフィル処方」を活用したい医師にしてみれば迷惑な話だと思う。

・「医師の処方権」と「薬剤師の調剤権」は全く別物。「薬剤師の調剤権」がどれだけ拡大しようと「医師の処方権」が侵害されることはないので、患者目線で患者の利益になることは薬剤師の能力に応じてどんどん拡大していけばいい。
・両者は、それぞれの身分法で「任務」条項のある独立した職能です。少なくとも、医師の指示の下に調剤するものではありません。
・処方権に対してきちんとNoと言える権利が調剤権だと思う。同等にする必要はないし,基本的に全く別の権利なので、今回の議論にはやや疑問な点もある。医師の調剤権(薬剤師法の例外規定)を取り外すことが不可欠.完全分業が医療費削減にも必ず効果があるものと思う。

・薬剤師の調剤権拡大によって、薬剤師の責務はさらに大きくなると感じられる。責務を全うすべく全力で臨む薬剤師はよいが、自己の知識不足やコスト・利益第一の考え方にシフトしていってしまうと、本当に患者のために医療を提供できるのかが分からないため心配。
・調剤権というものが処方権に近づくと当然薬剤師の責任は大きくなるのだが、現場の薬剤師はそれを望んでいるのだろうか?給料もらっても責任は負いたくないというレベルの低い薬剤師は少なくないと思うのだが。

・診療所の薬剤師なしの院内調剤行為を不可にしてほしい。
・早く100%医薬分業を達成すべき。医師の監督下とはいえ、院内調剤で無資格者が調剤するのは大きな問題だと思う。



https://www.m3.com/news/general/472547
試される日本の国民皆保険 手足を縛る協定のルール 
視標「TPP審議」

ニュースクール大教授 サキコ・フクダ・パー 
2016年10月31日 (月) 共同通信社

 環太平洋連携協定(TPP)の承認に関する国会の審議がヤマ場を迎えた。コメなど農業分野に関する議論が中心になっているが、協定や付属文書のほとんどは、広範囲に及ぶ経済規制に基準を設ける内容だ。これらのルールによって、政府は手足を縛られる恐れがあり、慎重な議論が必要だ。

 21世紀の貿易協定の争点は、市場開放よりも投資が主だ。協定に盛り込まれるルールは、医療の価格や水準、公立病院など国の保健医療制度の根幹に関わる政策の選択の幅を制限する。TPPだけでなく、米国と欧州連合(EU)の環大西洋貿易投資協定(TTIP)交渉についても、健康を担当する官僚や専門家たちの間で反対論が強まっている。

 健康は貿易協定とどのような関係にあるのだろうか。最大の争点は、特許権を強化する知的財産権の条項だ。これが独占価格を維持し、薬価の高騰を招く。例えば特許切れが迫った薬に簡易な手直しを加えて新薬とすることで特許期間を延長したり、医薬品の認可に必要な臨床試験データや生物製剤のデータを独占したりして、後発医薬品との競争激化を遅らせる。

 さらに、投資家が国家を訴えることができる紛争解決(ISDS)条項によって、外国企業が将来の利益の妨げとなる医療保険制度をめぐって政府を訴えることが可能だ。食品安全、国営企業、政府調達など協定の幅広い基準や条項によって、最も緊急性が高い公衆衛生上の優先課題に対する政府の対応能力が損なわれる恐れがある。すでに、がんやC型肝炎など、生命を脅かす病気を治療するのに必要な薬の価格が高騰し、政府、保険会社、家計を苦しめ、医薬品を手に入れられない多くの患者を生み出している。

 TPPなどの新貿易協定は、知的財産権の独占と価格の高騰を定着させる。その結果、公衆衛生上の最優先課題、例えば薬剤耐性(AMR)の増加、ジカ熱などの世界的な新たな脅威、エボラ出血熱などの喫緊の課題に対する新たな抗生物質を開発するための技術革新に必要なインセンティブを減らしてしまう。

 このような理由から、医薬品へのアクセスに関する国連のハイレベルパネルが設立され、医療保険を享受する権利と貿易協定との間にある「矛盾」を是正しようとしてきた。筆者もメンバーに加わったパネルの報告は、9月に発表され、貿易協定は、真の技術革新を伴わない特許権や独占権を強化する方策を含めるべきではないと主張した。

 また私たちは、貿易協定の交渉や締結の際、各国が健康への影響を厳格に評価するよう提言した。この報告は、世界において最も先進的な公衆衛生システムを有する日本にとって重要な課題だ。

 日本では公的医療保険制度(国民皆保険)によって、誰もが低価格で高品質な医療サービスを受けることができ、それが日本国民や日本経済の力の源となってきた。世界最長の平均寿命の源泉となっただけでなく、経済面のダイナミズムや繁栄を共有する源でもあった。

 TPPの承認について国会で採決する前に、TPPがもたらす経済的利益と損失、そして健康に与える影響を厳密に調べ、その結果を国民全体に知らせて議論を促す必要がある。

   ×   ×

 さきこ・ふくだ・ぱー 1950年東京生まれ。世界銀行のエコノミストを経て、95年から2004年の間、国連開発計画(UNDP)の「人間開発報告書」の主執筆者。06年から現職。国連開発政策委員会委員。ニューヨーク在住。



https://www.m3.com/news/general/472568
36協定、よくよく考えると非人道的…前厚労相
2016年10月31日 (月) 読売新聞

 田村憲久・前厚生労働相は30日のNHK番組で、厚労省が大手広告会社の電通を「子育てサポート企業」に認定していたことについて「正しかったかどうか、私も反省する」と述べ、認定に問題があったとの認識を示した。

 同社は2007、13、15年に認定を受けたが、14年6月と15年8月、違法な時間外労働があったとして支社や本社が是正勧告を受けた。13年当時、田村氏は厚労相だった。

 また、事実上無制限の時間外労働を課すことができる労働基準法36条の「36(サブロク)協定」について、田村氏は「よくよく考えると非人道的だ」と語り、見直しの必要性を強調した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/472651
シリーズ: 地域医療構想
医療・介護計画、県と市の「協議の場」で整合性
医療介護総合確保会議、総合確保方針改定の論点(案)

2016年10月31日 (月) 橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省は、10月31日の第8回医療介護総合確保会議(座長:田中滋・慶應義塾大学名誉教授)に、「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針(総合確保方針)」の改定に向けた論点(案)を提示し、都道府県と市町村の連携を進めるため、関係者による「協議の場」を提案した。構成員から異論は出ず、おおむね了承を得た(資料は、厚労省のホームページ)。

 「連携」にとどまらず、さらに踏み込んでタスクフォース的な組織を作る必要性や、2018年度に診療報酬と介護報酬が同時改定されるため、その審議を早めに行い、医療計画などの作成に反映させるべきとの意見も挙がった。一方で、2014年9月に総合確保方針を策定した際にも、都道府県と市町村の連携の必要性が指摘されていたものの、いまだ同じ論点が出ていることを問題視する声も出た。

 厚労省は、2018年度の医療計画と介護保険事業(支援)計画の同時策定に向けて、それぞれの基本方針(指針)を策定する。総合確保方針の改定は、これらの基本方針(指針)の基本となるべき事項等の策定が目的で、今年内の取りまとめを目指す(『医療と介護の連携のハブ、ケアマネジャー担う』を参照)。次回は11月14日に開催予定。

 「2年前と同じ論点」との指摘も
 厚労省は、総合確保方針改定の論点として、(1)都道府県が策定する医療計画と介護保険事業支援計画、市町村が策定する介護保険事業計画の一体的・整合的な策定、(2)在宅医療の推進および在宅医療と介護の連携の推進に関する視点、(3)医療・介護の連携の核となる人材に関する視点――の3つを提示。

 中でも重要なのが、(1)で、「計画作成に当たって、都道府県と市町村の連携を進めるための関係者の協議の場の設置」「2次医療圏と老人福祉圏域が一致していない計画区域への対応」「計画におけるサービスの必要量等の推計の整合性」が論点になる。

 高松市長の大西秀人氏は、「都道府県と市町村の連携強化と国による指導が必要であり、協議の場は必須」と支持。地域包括ケアシステムの構築は、市町村が中心となって進め、都道府県が「市町村ができないことの補完」と「市町村同士の調整的な補完」という役割を担う必要性を指摘した。

 日本医師会副会長の今村聡氏は、東京都など高齢者人口が増加する地域と、高齢者人口が減少する地域では対応が異なることから、「地域の実情に合った計画をどのように作り、調整していくのかを議論すべき」と述べた上で、「協議の場」を機能させるためには、構成員などまで具体的に総合確保方針に規定することが必要だとした。

 「都道府県と市町村の連携ではなく、タスクフォース的な組織が必要」と指摘したのは、日本社会事業大学専門職大学院教授の井上由起子氏。国がその在り方を示すことが必要で、どこまで自由度を持たせるかは検討課題だとした。

 健康保険組合連合会副会長の白川修二氏も、これらの意見に「ほぼ同感」とした上で、介護保険については、都道府県は保険者である市町村を「支援」するだけでなく、都道府県の介護保険における任務を書き込むべきと指摘。さらに「2018年度は、診療報酬と介護報酬の同時改定であり、改定の議論と(医療計画等の)計画策定が同時並行的に進む。診療報酬と介護報酬の審議を早めてもらい、方向性を決めて、それを計画作りに反映させる配慮が必要」とも述べた。

 「計画におけるサービスの必要量等の推計の整合性」については、全国老人福祉施設協会会長の石川憲氏が、推計の基礎となるデータを統合する必要性を指摘。全国健康保険協会理事長の小林剛氏は、推計の結果、サービス必要量が異なる場合に、どのように調整するかについても盛り込むよう求めた。

 もっとも、全日本病院協会会長の西澤寛俊氏からは、各計画の整合性を図り、実行に当たって、都道府県と市町村が連携する必要性は、2014年9月に総合確保方針が策定された時から指摘されていたことであるため、「2年前と全く同じ論点が出ている」と問題提起し、この2年間の行政の取り組みを質す意見も出た。

 地域の職能団体の連携が必要
 (2)の「在宅医療の推進および在宅医療と介護の連携の推進に関する視点」の関連では、日本看護協会副会長の菊池令子氏は、保健所の役割を積極的に位置付けるよう提案。その理由として、2次医療圏単位での医療資源の状況を把握していることなどを挙げた。

 一方で、大西氏は、都道府県のほか、政令指定都市と中核市なども保健所の設置主体であることから、保健所の位置付けも含め、地域の実情を踏まえて連携等の体制構築が求められるとした。

 (3)の「医療・介護の連携の核となる人材に関する視点」については、日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、「多職種の連携を進めるためには、施設間の連携や地域の職能団体同士の連携が必要」と指摘。そのほか、多職種連携や人材確保について、先進的な取り組みを横展開する必要性などが挙がった。



http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03197_01
【対談】
ビッグデータ・空間疫学から見た 健康格差

中谷 友樹氏
(立命館大学文学部地理学教室教授/歴史都市防災研究所副所長)
近藤 尚己氏
(東京大学大学院医学系研究科健康教育・社会学分野/保健社会行動学分野准教授)
週刊医学界新聞   第3197号 2016年10月31日

 2013年に開始された「健康日本21(第二次)」の基本方針の一つに「健康格差の縮小」が掲げられた。告示から4年,各自治体ではさまざまな取り組みが行われているものの他の先進国と比べると日本では問題への認識も対策も遅れている現状がある。WHOは,健康格差是正には社会全体での共同アプローチが必要であり,病院をはじめとする医療関係機関・専門職が問題を認識することが不可欠だと指摘している。本紙では,健康格差についてビッグデータを用いた研究を行う近藤尚己氏と,地理情報科学的なアプローチを行う中谷友樹氏に,日本での健康格差の実態をお話しいただいた。

近藤 私が健康格差に興味を持ったのは,臨床で出会う患者の背後に社会的な問題が存在すると気付いたことがきっかけです。医学生のとき,途上国の病院やフィールドを見学する「海外医学交流研究会」というサークルに入っていました。日本では見られないような病んだ人々が街中に当たり前にいる状況を見て,病院で医療を行うだけでは救えない方々がいることを感じました。さらに研修医のときに,ある患者に出会いました。その方は身寄りもなく,県営住宅で独り暮らしをしていました。心臓弁膜症手術からの退院後,3か月ほどで通院しなくなり,その後しばらくしてから新聞のお悔やみ欄で死亡を知り,何とも言えないむなしさを感じました。公衆衛生の観点で健康づくりにかかわりたい,そのための技術と知識を得たいと思い,大学に戻って研究をする決意をしました。

中谷 私は地理学が専門で,健康と広い意味での環境との関係に関心がありました。環境と人間の関係を研究する地理学では,健康(空間疫学)は古くからあるテーマの一つです。ヒポクラテスは『空気・水・場所について』の中で「医術を正しく学ぼうと欲する者は(中略)街の状況,居住者の生活様式を知るべきである」と述べています。また,ジョン・スノウのコレラ疾病地図は,地図を科学的な分析ツールとして活用した先駆的な業績です。現在は最新のデジタル技術GIS(Geographic Information System)や空間統計学的ツール,国勢調査の指標から作る小地域単位での貧困度指標(Areal Deprivation Index;ADI)を組み合わせて,健康の社会経済的格差を地理的に可視化する研究を行っています。

近藤 病院の医師ならば,経済的困窮者に不健康な方が多いことは薄々感じていることと思います。しかし,現場にいれば肌で感じられる問題も数字で「見える」形にするのは難しいことです。地図を描くことで可視化され,実在する問題として具体的な対策を議論できるようになります。

何が個人の健康を決めるのか

中谷 1980年代初頭から社会階層(Social Class)と健康状態の関係を調査してきた英国では,健康に影響を与える社会的因子には「個人レベル」と「地域レベル」があることが報告されてきました。個人レベルで経済的困窮や孤立といった要因があると不健康になりやすいだけでなく,貧困な状態におかれている人たちが集住している地域には特定の地域要因があり,それによっても不健康になりやすいというのです。

近藤 日本でも中谷先生が行った「Mosaic Japan」などのプロジェクトにより,たとえ本人は豊かでも貧困地域に住んでいると自分は不健康だと感じる傾向があることが示されましたね。

中谷 国勢調査などを利用して小地域レベルの居住者特性が類似しているグループ(社会地区類型クラスタ)を作成し,地区グループごとの主観的健康感を調査した研究ですね。こうした傾向が生まれる理由は諸外国でも議論になっていますが,社会経済的地位が低いとされる地域では,医療資源が少なかったり,公園や適当な買物場所などの生活インフラ整備が不十分なため生活習慣が悪化したり,犯罪が多く支援者が少ないためストレスがかかるなど,さまざまな要因が考えられます。

近藤 公衆衛生は,2つのレベルで考える必要がありますね。2000年に策定された「健康日本21(第一次)」の枠組みでは,個人レベルへのアプローチに終始しがちでした。しかし,糖尿病のリスクが高い方に運動をしましょうと働き掛けたり,喫煙習慣のある方に禁煙を呼び掛けたりといった個人へのアプローチには限界があり,なかなかうまくいきませんでした。そこで2013年からの「健康日本21(第二次)」では,地域レベル,つまり「健康になれる社会環境づくり」による健康格差の縮小が目標として掲げられました。

対策を検討するためには適切な見える化が第一歩

近藤 社会環境の改善による健康格差縮小という目標は素晴らしいものですが,課題もあります。「健康日本21(第二次)」では,都道府県別に健康寿命をランキングし,それを基準に「健康格差を縮小すること」が目標“値”とされています。しかし,これでは目標が達成されたのかについて妥当な評価をするのが難しい。例えば,2.7年あった健康寿命の最長と最短の差が2.69年になれば格差が縮小した(=目標達成)としていいのでしょうか。それだけでは少し足りないような気がしますよね。

中谷 そもそも「都道府県間」というスケールでの格差縮小が最初の目標として適切なのかという問題があるように思います。実は,都道府県「内」のほうが健康格差は大きいのです。しかし普通の地図で見た場合,東京や大阪のような人口の多い都市の中での健康指標の格差は見えにくく,詳細な地図を描いても問題が過小評価されがちです。図1を見てください。上は土地面積を反映した普通の地図で,下は人口に比例して面積を変化させた地図(カルトグラム)です。カルトグラムでは,人口に応じた存在感が可視化されます。都道府県内あるいは大都市圏内でも居住地域による社会経済的な違いがあり,これが健康格差と関連している点は注目すべきです(図2,3)。関係する人口規模を考慮すると,都道府県間と同じか,時にはそれ以上に都道府県内の健康格差の縮小にも力を入れる必要があると言えるのではないでしょうか。

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図1 通常の地図(上)とカルトグラム(下)で示した平均寿命格差の地図

市区町村別生命表に基づき中谷氏作成。東北地方の一部が不健康だとよく言われるが,カルトグラムを見ると東京の東部・北部や大阪の都心にも平均寿命の短い集団がおり,その人口規模は全国的に見て非常に大きいことがわかる。一方,健康だとよく言われる長野とは別に,東京大都市圏の郊外にも長寿地域が広がっており,その人口規模は長野より大きいことが見てとれる。

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図2 死因別の3次元カルトグラム

2003~07年人口動態統計より中谷氏作成。この図では,標準化死亡比(SMR:日本の平均値を100とし,年齢を調整した死亡率の一種)を色で示すとともに高さでも表現している。高い「山」ほど死亡比が高いことを意味する。胃がんは都道府県レベルで見ると日本海側の死亡比が高いことが知られているが,カルトグラムで見ると東京の下町や大阪のインナーシティ的地域(都心周辺に位置する低所得者層の居住エリア。住宅・商店・工場などが混在する地域)でも高いことがわかる。脳血管疾患の死亡比は,地方圏の特に北に位置する地域で高いが,大都市圏内でもインナーシティ的地域で高い。結核は大都市でのホームレスの罹患が問題になっているが,事実大阪のインナーシティ的地域や東京の東側・沿岸部で死亡比が著しく高く,結核が終息していない疾患であることがわかる。自殺については,都市と地方の格差が大きく地方で死亡比は高い。それでも大都市部内には格差があり,インナーシティ的地域で死亡比の高まりが認められる。

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図3 大阪府の全がんでの診断時早期がんの割合と貧困度の地図

2000年国勢調査,大阪府がん登録資料(2000~04年)より中谷氏作成。全部位のがんで,診断時に早期がんであった割合(空間的階層ベイズ法による推定値)と,貧困度(地理的剝奪指標)の地図を並べたもの。貧困度が高いほど貧困な状態にある世帯の割合が高いと推定される。がん診断時にステージが早期だった割合を見ると,貧困度が高い地域ほど診断時に早期がんである割合が低い傾向がある。さらに,がんが同じステージで見つかっても,貧困な地域ほど余命が短い傾向があるようだと中谷氏は補足する。
近藤 私は市町村レベルでの,大規模な疫学データや人口動態統計データを使った健康格差縮小の取り組みにかかわってきました。例えば神戸市では,全国10万人以上の多角的な健康データを収集している日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study;JAGES/代表=近藤克則千葉大教授)のデータを活用して,部署間がデータをもとに課題を共有して連携しながらまちづくりを進める事業を行ってきました。その結果,健康なまちづくりをすべき地域の優先順位付けができ,担当課や行政区の保健センター,そして地域包括支援センターなどを「つなげる」支援をすることができたのです(図4)。また,熊本県御船町では,JAGESの調査結果から,他の自治体と比較して高齢者が元気で社会活動も活発な一方で,なぜか閉じこもりも多いことが明らかになりました(図5)。ここでも地図などを用いてデータを「見える化」したことがスムーズな連携や対策検討,多部署が共同した新たな事業に結び付きました。

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図4 神戸市の介護予防事業の優先対象地区選定シート

JAGES調査データより近藤氏ら作成。地域包括圏域レベルで,新規要介護者,閉じこもり,抑うつの割合などを相対的に5分位に分けて色を塗り,要介護のリスクを示したもの。現場の人が手作りできるように,あえてExcelのシンプルな機能で作成。他にも,所得と学歴と最長職,高齢者のデータから算出した「困窮度指数」,「地域づくりに役立つ資源の単位人口当たり密度」を示し,ニーズと資源量のギャップを見える化した。神戸市ではこれをもとに行政機関同士の連携を深め,介護予防対策の優先地域を算出するなど,事業の戦略性を増した。

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図5 御船町の閉じこもり小地域間格差マップ

JAGES調査結果をもとにした地域診断ツール「JAGES-HEART(Health Equity Assessment and Response Tool)」の御船町データの一部。年齢調整した閉じこもり割合の地域差が示されている。地図からは中山間地と平坦地の間の差が顕著であることがわかった。こうしたデータをもとにすることで,介護予防の担当部署だけでなく,農業や産業の振興を担当する課や総務係などとも有機的な連携が生まれた。
中谷 部門間連携は重要ですね。私が研究している「ウォーカビリティ(歩いて生活できる度合い)」という話題では,歩いて買い物や散歩に行ける町にデザインすれば自然と運動ができ,健康になるのではないかという仮説をもとに,健康なまちづくりや都市計画が提案されるようになってきました。車がなければ買い物もできないような町では,本人が意識しないと運動できません。私が住んでいる京都市でも「歩くまち京都」という交通政策に健康を組み合わせた取り組みをしています。こうした施策は従来の保健医療部門のみでは達成できない課題ですね。

二次利用を前提としたデータ収集が必要

近藤 一方で,これらは研究者が自治体の中に入ったからこそできた事例です。厚労省では地域包括ケアにおいてデータ活用を推進すべく,詳細な健康指標を見える化した“地域包括ケア「見える化」システム1)” の運用を開始していますし,統計局の「政府統計の総合窓口(e-Stat)」でもデータ活用を促していますが,研究者などデータ利用の専門家以外が使いこなすのはまだ難しいようです。

中谷 そうですね。健康格差の地図を描く場合も,わかりやすい結果を得るためには統計学的なデータの前処理が必要です。例えば図3の場合,患者数が少ない地域はオリジナルデータのままでは傾向がわかりにくいため,単に地図を描くだけではなく,ベイズ統計学を利用した平滑化の処理を行います。

近藤 近年ビッグデータが注目され,さまざまなデータが公表されています。しかしその中で,データをどのように加工し使いこなすかも課題だと感じています。政策に落とし込めるような目標値を各自治体で定めていくためにも,データを見える化して事業計画に役立てられるようになるための訓練や,データの活用やそれをもとにした部署間連携をスーパーバイズできるような人材の育成,組織の枠組み作りが求められます。

中谷 がん登録のような事業が日本全国で今後進んでいくにあたって懸念しているのは,データ処理を的確に行い対策を考えることが小地域では難しいのではないかという点です。日本の統計データは,市町村レベル以下の小さい地域では単位が統一されていません。たびたび変わる学区や,住所でいう何丁目何番地ときれいに対応しない町丁字“等”では,長年にわたる変化や他のデータとの比較に使えません。

近藤 国単位の話になってしまいますが,厚労省や総務省などの省庁間で単位を統一して,あらかじめ標準化されたデータが提供されるようになれば不必要な労力が減り,研究もよりスムーズになるのではないかと思いますね。二次医療圏に含まれる地区のリストなども公開してほしいところです。また,個人情報保護の厳しさも課題です。新統計法により,データ二次利用を促進する方向に進んでいますが,使えないデータや使いにくいデータもまだまだあります。自治体では,必要なデータを他の課が持っているのに課の壁をまたいで外に出すのには特別な措置を必要とするなど,苦労が多いです。デンマークやスウェーデンなど,北欧では生まれてから死ぬまでの生涯の健康や遺伝子情報がIDでひもづけられている国もあります。日本でも同様に活用できるようになれば研究に役立つのではないかと思います。エビデンスに基づく政策立案にも生かせるでしょう。

中谷 個人情報と関連した例としては,尼崎市のアスベスト健康被害の話題があります。過去に工場から排出されたアスベストが多くの中皮腫患者を生んだ事態を明るみに出せたのは,患者の住所を地図にプロットした疫学研究の成果が大きかったと思います。もし個人情報保護を理由に住所が利用されなかったなら,この深刻な健康被害の存在は明らかにできなかったでしょう。難しい判断が必要ですが,医学的情報は他の分野のデータとは違った扱いが必要なこともあるかもしれませんね。

健康格差の縮小に向けて医療者に期待すること

近藤 2015年10月,WHOのHPH(International Network of Health Promoting Hospital & Health services)Network日本支部が立ち上がりました。HPHは,病院主体で健康づくりを進めていこうとする病院のネットワークで,2016年9月現在53事業が参加しています。

 病院には,病院でしか得られない貴重なデータが集まっています。HPHの加盟機関が主体となって電子カルテ情報の一部だけでも標準化して収集できれば,診療情報に基づいたビッグデータになり,健康格差を明らかにすることが可能になるのではないかと期待しています。また,国勢調査などの質問紙調査は,低所得者や社会的弱者は未回答になりデータが抜け落ちるという課題がありますが,そうした方々のデータも医療機関にはたくさん集まっています。孤立していてお金もなく,できれば病院には行きたくないという方でも,どうしようもなくなった最後には病院に来ることになります。ただ,生活状況や社会背景に関する情報をルーチンで取っている医療機関は多くありません。そのような場合でも,地域レベルのデータであるADIを用いれば,患者さんの住所からその方の地域リスクをある程度は推定することはできます。そういう意味でも,公衆衛生大学院などで疫学や生物統計,情報科学を学びMPH(Master of Public Health)を取得したスタッフが医療現場に増えてほしいと考えています。

中谷 私自身は診療をしたことがないので,先ほどお示ししたような地図で自分の診療地域を見たとき,医療者の方がどう考えるかにも興味があります。研究者側から医療現場にデータ提供をお願いするときにはどうしても「こういう情報をください」というかたちになってしまうのですが,現場では「もっとこういう点に着目するといいんじゃないか」といった質的な情報もたくさんお持ちではないでしょうか。臨床での気付き,研究者とは違う角度からの意見も,ぜひ聞かせていただきたいと思っています。

(了)

◆参考URL
1)厚労省.地域包括ケア「見える化」システム.

こんどう・なおき氏
東京都町田市生まれ。2000年山梨医大医学部医学科卒。05年同大大学院博士課程修了。博士(医学)。06年ハーバード大学公衆衛生大学院研究フェロー,10年山梨大大学院社会医学講座講師,12年より現職。専門は社会疫学。近著に『健康格差対策の進め方――効果をもたらす5つの視点』(医学書院)。
なかや・ともき氏
神奈川県横浜市生まれ。東京都立大理学研究科博士課程修了。博士(理学)。1997年立命館大専任講師,2000年同大助教授(准教授)を経て,12年より現職。地理的な数理・統計モデリングを用いた空間分析・GIS研究一般を専門としながら,特に医学・健康地理学に関係する空間疫学分析・GIS研究の発展に造詣が深い。



http://mainichi.jp/articles/20161101/ddm/008/100/091000c
受動喫煙
医療側「全面禁煙は非現実的」 厚労省ヒアリング

毎日新聞2016年11月1日 東京朝刊

 厚生労働省は31日、他人のたばこの煙にさらされる受動喫煙の防止対策強化について、病院、飲食業などの関係団体からヒアリングをした。同省は医療機関や学校の敷地内は全面禁煙とする案を示しているが、医療者側から「建物の外まで全面禁煙とするのは現実的でない」などと反発が出た。

 厚労省が12日に公表した新たな法整備の案では、医療機関と小中高校を「敷地内禁煙」、官公庁や運動施設、大学などを「建物内禁煙」、飲食店や船、駅、空港内などを「喫煙室による分煙可」としている。

 この日のヒアリングには10団体が出席。このうち民間病院などで作る四病院団体協議会は、敷地内禁煙が一般的な米国と比べ、日本は患者の平均入院日数が数倍長いことを挙げ「病院は生活の場により近い環境だ」と指摘。例外や経過措置などの弾力的な規制を求めた。日本ホスピス緩和ケア協会は「末期のがん患者が多く入院しており、喫煙の習慣に配慮して敷地内では認めている場合がある」と現状を説明した。

 また、飲食業の団体は「法律で一律に規制強化するのではなく、業界の自主的な取り組みを支援してほしい」、海運業の団体は「小さい船は、すぐに喫煙室を設置できない」と訴えた。

 日本医師会は2012年に「受動喫煙ゼロ宣言」を発表し、全医療機関で敷地内禁煙を推進する。厚労省は、あと1~2回ヒアリングを実施する。【山田泰蔵】



http://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=294507&comment_sub_id=0&category_id=256
金品伴う患者紹介防止 厚労省、療養費支給厳格に
2016/11/1 中国新聞

 健康保険を使ったマッサージ、はり・きゅう治療で療養費の不正請求が相次いでいる問題を受け、厚生労働省がまとめた対策の工程案が31日、分かった。介護施設の運営事業者らに金品を渡して患者紹介を受けたケースを療養費の支給対象外にするため、来年3月までに具体策を決める。

 11月2日に開かれる社会保障審議会の検討委員会に示す。

 共同通信の調査では、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度で、出張料(往療料)や施術回数を水増しするなどの不正・不適切な請求をして、返還を求められたケースが過去5年半で約9億円に上った。背景には、自宅や老人ホームへの訪問施術にビジネス目的で参入する事業者の増加があるとみられる。

 金品を伴う患者紹介が不正請求を助長しているとの指摘もあり、厚労省は「不適切」と判断。療養費を支給しない方針だ。さらに、安易に頻繁な施術がされないよう、最初の施術から1年以上たっている患者に週4回以上施術する場合は、来年度から支給申請書にその必要性を記入させる。

 また、施術者が療養費を請求することで患者は自己負担のみで済む「受領委任制度」を導入するかについても、来年3月までに結論を出す。

  1. 2016/11/01(火) 06:13:53|
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