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10月28日 

http://medg.jp/mt/?p=7082
Vol.234 医療ガバナンス学会 (2016年10月28日 06:00)
群馬大学病院事件を防ぐ;新規診療許可制度私案 ~標準から逸脱した医療の早期発見のために~

元亀田総合病院副院長
小松秀樹
2016年10月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 群馬大学病院事件の第三者調査委員会は、結論部分で、以下の課題を提示した。
 「日常診療の中に標準から逸脱した医療が登場した場合、それを早期に発見し、より安全な医療へと是正する自浄的な取り組みをするにはどうすればよいか」
 筆者はこのための一つの手段として、新規診療許可制度を提案する。すべてを解決するのは不可能だが、多少なりとも現状を改善できれば幸いである。

●新規診療許可制度
 新規診療許可制度は、個別病院内で、申請・審査・許可・実施・結果報告を一連の流れとして制度化するものである。うまく機能すれば、新規診療を開始するにあたって、病院管理者は有害事象の総和が大きくなる前に問題を把握できる。より早期に対応することができる。
 文末に新規診療許可制度私案を示した。この制度は、医療として有用だと認定されたものを導入するための制度であり、医療としての有用性を検証するものではない。
 かつて、ある大学病院で下顎骨が短くなった症例に対し、骨延長術を実施したが、まっすぐな延長器を使用したために失敗した。別の病院で、日本で承認されていない弯曲した延長器を輸入して、自由診療として治療し成功した。これは臨床試験ではない。器具が日本で承認されていないだけであって、具体的患者を治療するための診療である。このような事例をできるだけ簡単に審査しようとするのが、新規診療許可制度である。
 診療が正当なものであるかどうかは、審査制度が整っていると判断される他国の保険制度の判断を援用するものとした。日本で保険診療が認められている診療行為について、実施することが適切であるかどうか、いちいち病院で審査しないのと同じである。
 新規診療許可制度では、日本で保険診療として認められているものも、病院で初めての侵襲を伴う医療は新規診療として申請することを求めた。
 この制度は新しい医療に積極的に取り組んでいる病院のためのものである。基本的姿勢は、有用な医療を実施しやすくするために、医師を支援することである。ルール全体を通して、手続きと判断を分かりやすく、簡便にした。見学や研修、指導者を招いたりするのを病院が積極的に支援する。必要な薬剤や器具の輸入を手助けする。新たな診療を導入するのに、病院が支援することで把握しやすくなり、安全性も高まる。
 取り締まりや抑圧のための制度と見なされると、隠される可能性がある。医師からの反発が強くなり、ルールそのものが葬り去られる可能性がある。このため、医師にメリットをもたらすものとした。
 結果報告を初回だけにしたのは、手続きを簡便にするためである。侵襲の小さい診療について、詳細な報告を何度も求める必要はない。実質を伴わない煩雑な報告は反発を招き形骸化する。そもそも、診療の結果に対し、問題がないかチェックするのは、ルールに書く必要のない病院管理者の権限である。大きいリスクが予想される診療行為については、管理者は制度にこだわらず、自身の権限で、成績を注意深くフォローすればよい。管理者は制度に頼らず、常に病院の活動に問題がないか把握しなければならない。

●新規診療許可制度私案

I.目的
 臨床目的として行われる新規診療について、迅速に審査する。臨床研究の適否を審査するものではない。

II.新規診療技術の分類
1. 世界で初めての診療技術
 十分な準備の下、臨床研究として許可を得て実施する。基礎的実験など膨大な準備が必要である。
2. 外国で臨床試験段階の診療技術
 追試の臨床試験として実施する。臨床研究として許可を得て実施する。
3. 外国で実用化されている診療技術
 審査体制の整っている国、西欧あるいは合衆国の公的医療保険の対象となっているものを対象とする。
 国内未承認医療機器・医薬品の使用、あるいは、承認されている医療機器・医薬品の保険適応外使用を含む。
 日本で臨床試験が行われている場合、行われようとしている場合、可能な限り臨床試験に参加させてもらうべく努力する。
 臨床試験に参加することが不可能な場合、あるいは、日本で臨床試験が実施されていない場合、原則として自由診療として実施する。
4. 日本で評価療養として既に認められている診療技術
 評価療養としての実施を目指す。
5. 保険診療に含まれるが、病院として初めての侵襲を伴う診療技術

III.上記内容の1、2については臨床研究審査委員会で審査する。3、4、5については、別に定める規定に従って組織化された新規診療審査チームの審査を経て院長が許可する。

IV.準備と手続き
1.準備
1)必要がある場合、準備のために先行施設で当該技術を見学する。あるいは研修を受ける。
2)資格が設定されている場合、可能なら資格を取る。
3)動物を使った研修があれば研修を受ける。他にも受けられる研修があれば、可能な限り受ける。
4)新規医薬品などでは、研修は必ずしも必要はない。

2.申請と許可
1)以下の内容を簡潔に申請書に記載し、事務局に提出する。
(1)新規診療の内容:診療行為の名称、機器、医薬品の名称、目的、概要、利点、リスク、先行施設での成績。
(2)申請に至るまでの準備状況。(新規医薬品では不要)
(3)指導者の招聘。(新規医薬品では不要)
 エキスパートの招聘が必要かつ可能な場合、病院が、指導者を招聘し、指導者による診療行為も病院の賠償責任保険の対象とする。
(4)指導者を招聘しない場合、その理由を記載する。
(5)患者への説明文書:
 実施前に患者には、新規診療であること、準備状況に加えて、支払い方式(自由診療、評価療養、保険診療)と予想される自己負担金額について説明する。通常のインフォームド・コンセントにおいて、院内ルールで要求されている項目についても説明し、文書で合意を得る。
2)事務局が書類を確認する。新規診療分類3については、事務局で、外国で公的医療保険として実施されているかどうかを示す資料を添えて、新規診療審査チームに回付する。抗がん剤などについては、米国では適応疾患が必ずしも固定されていない。当該国の定評ある三次資料の判断に従う。一次資料を集めて、診療の適否を個別に判断することはしない。

3.許可
 新規診療審査チームが審査の上、院長が許可する。院長は、必要があれば専門家の助言を得る。

4.結果報告
1)初回症例の診療行為実施後、有害事象と治療経過をまとめ事務局、新規診療審査チーム経由で病院長に報告する。
2)報告には招聘した指導者の役割分担、当院職員の役割分担を記載する。
3)今後の方針を記載する。
4)インシデントが発生した場合、通常通り医療安全管理室に報告する。インシデントには生じうる合併症も含める。
5)初回症例だけの報告を求めているが、これは、医師の負担を軽減するためであり、以後の成績をモニターしないということではない。リスクの大きい医療については、公式、非公式にモニターを継続する。

注:日本の医師は批判受容力に乏しいことがあり、モニター制度に対し、ヒステリックな反応をすることがある。また、内科医は手術の実情を知らないまま、善悪の判断をしたがる可能性がある。病院管理者による非公式モニターは、有用であり、反発も少ない。

5.継続と差し止め
 問題があれば、院長が差し止める。

V 個人輸入
 個人輸入が必要な場合には、別に定める規定に従って必要な書類を薬剤部に提出する。



https://www.m3.com/news/iryoishin/471830?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD161028&dcf_doctor=true&mc.l=186363497&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
シリーズ: 安倍政権の医療制度改革
「保険医の定数設定」なども可能に、国・県の権限強化を
財制審・財政制度分科会、医師偏在対策で提言

2016年10月28日 (金) 橋本佳子(m3.com編集長)

 財務省の財政制度等審議会財政制度分科会は10月27日、「経済・財政再生計画 改革工程表」に盛り込まれた社会保障分野の制度改革案を議論、医師の地域・診療科偏在については、特定地域・診療科での診療従事を医療機関の管理者の要件にしたり、保険医の配置・定数の設定などの規制的・実効的な是正策が講じられるよう、国と都道府県の権限を強化すべきと提言した(資料は、財務省のホームページ)。

 医療機関の管理者要件と絡めた医師の偏在対策は、NPO法人「全世代」がこの10月にまとめた提言にも盛り込まれた内容だ(『「医師不足地域での勤務」、保険医療機関の責任者の条件』を参照)。

 社会保障審議会医療部会をはじめ、厚生労働省の審議会・検討会でも、医師不足問題の中心的議題は、偏在対策(『「医学部定員、2020年度以降も増員」をけん制』などを参照)。本分科会は、2008年度以降、増員してきた医学部定員については、「医師需給の見直しを踏まえた精査・見直しを進めていくべき」と指摘しており、医師不足については、絶対数の問題から、地域・診療科偏在の問題に重点がシフトしている。

 そのほか、本分科会では、病床の機能分化については、(1)地域医療構想の病床機能ごとの定量的な基準を、次期病床機能報告時まで明確化、KPIに沿って進捗管理を行う、(2)地域医療介護総合確保基金の対象は、病床機能の転換等に直接資するものに重点化、(3)民間病院に対して他施設への転換命令を付与できるよう、医療保険上の都道府県の権限を強化――などを提言。介護療養病床については、予定通り2017年度末で廃止することなども求めている。

 医療費の地域差半減に向け、予防などの取り組みの横展開に加え、(1)NDB等で明らかになる医療費の地域差(疾病別、診療行為別)の「見える化」を進め、医療関係者相互や都道府県における検証・検討、(2)都道府県等がその是正を図る際に採り得る手段の整備、(3)地域差是正に取り組んだ都道府県へのインセンティブ措置の導入――なども提言。

 本分科会は、10月4日にも社会保障分野について議論した(『財政審、薬価の期中改定や高齢者の負担増を求める』を参照)。社会保障分野の各論の議論は27日で終え、今後は11月に取りまとめる予定の「建議」に向けた全体の議論を進める。

 生活保護、「頻回受診」是正で医療機関にも指導
 27日の議論では、生活保護受給者についても踏み込み、頻回受診の適正化、後発医薬品の使用促進、高額薬剤を転売目的で入手するなど不正受給への対応を提案。

 頻回受診者については、本人に指導し、それでもなお改善しない場合には、例えば一定の自己負担を求める措置を講じるよう提言。頻回受診者が著しく多い医療機関に対しても、内容を審査し、個別指導を徹底し、医療扶助の適正化を進めるよう求めている。

 後発医薬品については、政府目標と同様に、使用割合を2017年央までに75%とするとともに、80%以上とする時期を2018年度とするよう提言。使用促進のため、医師等が後発医薬品の使用が可能と判断しても、なお先発医薬品を患者が希望する場合は、後発医薬品との差額について一定の自己負担を求める改革案も盛り込んだ。

 分科会の資料では、生活保護受給者の対策を打ち出した背景を分析している。

 頻回受診者とは、「同一傷病について、同一月内に、同一診療科目を15日以上受診している月が、3カ月以上続いている」者。2014年度の場合、頻回受診者は1万5462人、うち指導対象者は3809人、その結果、改善したのは1749人で、改善者数割合は46%と半数に満たなかった。「生活保護受給者は、自己負担がなく医療が受けられることから、患者(生活保護受給者)と医療機関の双方に、モラルハザードが生じやすい」と指摘。

 後発医薬品については、「一般名処方が行われた医薬品で、後発医薬品を調剤しなかった理由」として、「患者の意向」が67.2%を占め、最も多い点を問題視。さらに、後発医薬品の使用割合(数量ベース)が、最も高い沖縄県では77%だが、最も低い和歌山県では54%と開きが大きいという分析も提示している。



https://www.m3.com/news/iryoishin/468077
診療報酬の「経済誘導」は限界 - 迫井正深・厚労省保険局医療課長に聞く◆Vol.3
専門医、かかりつけ医も「枠組み」が先

2016年10月28日 (金) 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――そのほか今、フレームワークとして見直すべき部分はどこでしょうか。

 診療報酬というより、医療の在り方の話になりますが、在宅医療がそうです。この点も私が(厚労省医政局)地域医療計画課にいた時につくづく感じたことですが、なぜ在宅医療を進めるのか、もう少しひも解いて検討する必要があると思います。

 多くの患者さんにとって、在宅医療が選択肢にない、あるいは在宅で、どんな医療を提供してもらえるのか、どんな点がいいのか、あるいは悪いのかが理解されていない。少しずつ変わってきてはいると思いますが、在宅医療の良さ、あるいは限界を関係者が理解し、進めましょうということ。これは医政(厚労省医政局)がまず担うべき仕事になります。

 その上で、先ほどの地域医療構想の話と似ていますが、在宅医療を患者さんが選び、医療者がそれを提供する際に、きちんと診療報酬が付いてくる形にすることが必要です。

 在宅医療の中でも特に今、対応が必要になっているのは、人生の最終段階を迎える局面についての評価。病院だけでなく、特別養護老人ホーム、あるいは居宅などで、最終段階をどう迎えるのか、それを医療の側がどう支えるのか。これらの場所で、過不足ない医療的なケアが伴わないと、スムーズに最終段階を迎えられません。

 繰り返しになりますが、これらを考える局面に来ている以上、診療報酬で誘導するのではなく、下支えする準備をしておく。在宅医療をどう使うかは、現場の医療機関の判断と国民の選択です。


専門医についても、目指すべき制度の確立が先決であり、診療報酬の議論が先決することはないという。
――ではなぜこれまで診療報酬による「経済誘導」が強調され、それが実施されてきたのでしょうか。医療の在り方を考える切迫性に欠けていたのでしょうか。

 これはよく言われる話で、診療報酬による誘導はよく「効く」、すぐ効果が出るのは確かです。見かけ上、ダイナミックに物事が変わっていく。しかし、近年学んだことがあります。それは、診療報酬で誘導する時には、「お金で動く人」がいることは否定できず、「実態先行」になるとは限らないということ。

――結果的にでき上がった医療提供体制は、在るべき姿ではない可能性もある。

 クオリティーが高く、再現性を持って医療を継続してもらうためには、単に診療報酬を付ければ済む問題ではなく、それらを実現するための人材、スキル、テクノロジー、さらに一番大事なのは志、これらが揃うことが必要。診療報酬で動かし、すぐに効果が出ても、それは長続きしません。特に最近、医療保険財政が厳しいので、診療報酬による誘導の限界が露呈するというか、分かりやすくなってきたのだと思います。

――外来医療についてはいかがでしょうか。制度改正の議論では、「かかりつけ医以外」を受診した場合の定額負担の導入が検討されています。これは患者負担増の問題だけにとどまらず、かかりつけ医の制度化にもつながる議論だと思います。

 かかりつけ医の話は、患者側の視点だけでなく、日本のドクターの生涯モデル、キャリアパスをリアリティーを持って検討する議論にもつながると思います。かかりつけ医の中心的担い手である開業医は、皆、同じではありません。システムを組んで動かす以上は、どんな教育を受けたドクターが、いかなる医療を担っていくかという視点から考える必要があります。

 言うまでもなく、ほとんどの開業医は皆、勤務医経験者です。一定期間の病院勤務の経験があり、病院の近くか、ご自身の地縁のある場所など、場所はさまざまですが、開業される。病院勤務医の経験を前提とした開業医の経験やノウハウを生かす、かかりつけ医の在り方を考えていく必要があると思います。

 これは私の立場の仕事というより、医療界全体で、国民も交えて考えていただきたいこと。その結果、かかりつけ医の役割、医師の養成の仕方などについて、コンセンサスを得ることがまず必要。そのコンセンサスを広く、広報していくことも大切です。

――かかりつけ医といっても、人によってイメージするものが違う。ジェネラルに幅広く診る医師もいれば、専門特化している医師もおられます。その中で、「かかりつけ医」を位置付け、点数化、あるいは負担を変えるのは、制度設計的にも難しいと思います。

 その通りです。ですから、今お話した通り、診療報酬以前の問題として、医療界でまずは議論してコンセンサスを得て、広報するという取り組みをしていただいた上で、診療報酬でそれを裏打ちすることになるのだと思います。

――ただ、診療報酬上では既に、地域包括診療料があります。この点数の考え方は。

 かかりつけ医が持つ機能の全てを評価している点数ではなく、地域で期待されている医師としての基本的な役割に着目して整理した点数です。もちろん、改定の度に進化させていくことが必要で、現場にとってさらに望ましい方向を目指していきます。

――「医師のキャリア」にも言及されましたが、例えば、専門医資格を診療報酬で評価することはあり得るのでしょうか。

 これも診療報酬以前の問題として、今は医師の専門性をどう評価するのか、医師の専門性を高めるためにはどんなトレーニングを積むべきかなどの基盤を整理するという、“生みの苦しみ”の段階にあると思います。専門医制度が一定程度、実用段階にならないと、診療報酬の話にはなりません。診療報酬の議論が下手に先行して、現場を振り回すことはよくありません。

――「専門医とは何か」について、国民のコンセンサスが得られたら、診療報酬でどう評価するかという話になる。

 そうだと思います。



https://www.m3.com/news/general/471822
愛知医科大が釈明、精神保健指定医:「意図的不正ではない」 取り消し
2016年10月28日 (金) 毎日新聞社

精神保健指定医:「意図的不正ではない」 取り消し、愛知医科大が釈明 /愛知

 精神保健指定医の資格不正取得問題で、厚生労働省から指定医ら7人の資格を取り消された愛知医科大(長久手市)は27日、記者会見を行い、「意図的な不正ではなかった」と釈明した。

 問題を巡っては、資格取得に必要な症例リポートを同僚間で使い回していたなどとして、全国の医師89人が資格を取り消された。この中に同大の7人(指定医3人とその指導医4人)が含まれていた。

 同大によると、症例リポートは、一度取り上げられた患者については、他の医師が再び取り上げることは許されていない。しかし同大では2007~11年に同大病院に入院した精神疾患の患者計5人について、3人の医師がそれぞれの症例リポートで重複して取り上げ、指導医4人も承認していたという。

 会見した同大病院の羽生田正行病院長は「3人のリポート間に文章のコピーなどはなく、論文として内容は適切だった。ただ結果的に信頼を失墜させ、おわび申し上げる」と述べた。【月足寛樹】



https://www.m3.com/news/general/471807
「極めて遺憾な事態」 厚労相、指定医大量処分で
2016年10月28日 (金) 共同通信社

 塩崎恭久厚生労働相は28日の記者会見で、精神保健指定医89人が資格を不正取得したなどとして資格取り消し処分を受けた問題について「精神科医療に対する国民の信頼を揺るがす極めて遺憾な事態だ」と述べた。

 塩崎厚労相は、精神障害のある患者の措置入院の要否などを判断する指定医は「個人の尊厳に配慮した精神科医療を提供する上で重要な役割を担う」と強調。

 資格認定の仕組みに関し「診断や治療の経験を確実に審査できる手法の導入など再発防止をしっかりやっていく」との考えを示した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/471023
シリーズ: 医師不足への処方せん
医師の働き方ビジョン検討会、「患者の価値中心」が第一
検討のたたき台整理、今年内に中間報告

2016年10月26日 (水) 橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(座長:渋谷健司・東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授)は10月25日、第2回会議を開催、今後の検討のたたき台として、(1)患者の価値中心、(2)キャリアデザインに中立的、(3)生産性と質の向上、(4)経済活力(イノベーション・国際化)への貢献、(5)地域住民の生活を深く支える――という5つのビジョンを提示した。(1)と(5)はオーバーラップするため、実質的に4つのビジョンとして整理される見通し。

 今後、各ビジョンについて議論を深め、2016年内に中間報告、2016年度内に最終報告をそれぞれ取りまとめる方針(資料は、厚労省のホームページ)。

 これらのビジョンには現時点では言及していないが、医師の偏在対策や専門医についても、「検討のスコープから外さない」(厚労省医政局医事課長の武井貞治氏)。

 ビジョン検討会については、社会保障審議会医療部会と、「医療従事者の需給に関する検討会」の「医師需給分科会」が、医師の偏在対策や医師需給に関して議論していることから、その位置付けが曖昧との指摘が出ている(『「医学部定員、2020年度以降も増員」をけん制』を参照)。

 会議後にブリーフィングした武井課長は、ビジョン検討会は、「医師需給分科会」の中間取りまとめを踏まえて発足したものであり、社保審医療部会と「医師需給分科会」は、まず医師の偏在対策について2016年内をめどに議論すると、改めて説明。医師需給については今後、厚生労働科学研究費補助金による研究班で現状等の調査を実施する。2016年度内にまとまる同調査の結果と、ビジョン検討会の最終報告を踏まえて、「医師需給分科会」で将来推計を行う。

 もっとも、医師の偏在対策については、本ビジョン検討会の中間報告、社保審医療部会と「医師需給分科会」の議論は、同時並行的に進むため、「省として、整合性は図っていく」(武井課長)ものの、いまだこれらの関係性については不透明な部分が残る。

 ITによる医師の働き方の変化も視野
 第2回会議で示された5つのビジョンは、10月3日の第1回会議の議論を踏まえたもの。それぞれについて「目指すべき姿」と「課題・イッシュー」を整理している。

 厚労省医政局によると、特徴の一つが、医療提供側ではなく、「患者の価値中心」というビジョンを第一に掲げている点だという。このビジョンの「目指すべき」姿として、(1)患者の複合的なニーズ・多様な価値観に応え、患者の価値を常に維持向上させる能力と、それを育成するキャリアが構築できる、(2)多様な職種、住民とのチームで患者と向き合う、(3)治療に関して、患者・家族の意思決定や意向を尊重し、巻き込むためのコンピテンシーが確保される、(4)疾病予防や重症化予防等のため、患者の意識を高めながら参加を促す――が並ぶ。また「地域住民の生活を深く支える」では、「まちづくり」の視点も盛り込んでいる。

 そのほか、医師の働き方を考える上での医療機関のマネジメントの重要性、医療技術やITの進歩による医師の生産性の向上や働き方の変化などについても、今後の論点になる。



https://www.m3.com/news/iryoishin/471132
シリーズ: 社会保障審議会
「かかりつけ医」以外で「定額負担」、反対多数
医療保険部会、「かかりつけ医」定まらず、制度化無理

2016年10月26日 (水) 橋本佳子(m3.com編集長)

 社会保障審議会医療保険部会(部会長:遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)は10月26日の会議で、「かかりつけ医」以外を受診した場合に、定率負担に加え、定額負担を求める医療制度改革案を議論、遠藤座長が「微妙な違いはあったが、積極的な賛同を示した人はいなかった」と総括したように、本部会の結論は「見送り」で落ち着く見通しだ(資料は、厚生労働省のホームページ)。

 本部会は、2015年6月の「骨太の方針2015」、同12月の「経済・財政再生計画 改革工程表」の指摘事項についての議論を一巡、次回以降、再度議論を重ね、2016年末までに結論を得て、法改正を要する改革案は、2017年通常国会に法案提出予定。

 各委員の意見の反対理由として一致したのは、「かかりつけ医」の普及は必要であるものの、そもそも「かかりつけ医」の定義が、現時点では定まっていないため、制度設計自体に無理があるという点だ。「かかりつけ医や家庭医など、さまざまな名称が使われ、定義がはっきりしない中での検討は時期尚早」(連合副事務局長の新谷信幸氏)が代表的な意見だ。

 全国後期高齢者医療広域連合協議会会長(多久市長)の横尾俊彦氏からは、「2次、3次医療を担う医療機関に患者が集中していることが、まず問題だったのではないか。『医療の機能分担を図るために、定額負担を求める』と記載すれば、議論が変わったのではないか」との指摘も上がった。

 健康保険組合連合会副会長の白川修二氏は、「改革工程表」で、「後期高齢者の窓口負担の見直し」が検討項目に挙がっていることに触れ、「今年中ではないが、いずれ議論しなければいけないテーマ。今回の案には反対だが、もっと広く捉えて、定額負担、あるいは保険給付7割の在り方について、議論を進めていくことが必要」と提案した。

 今回の議論は、「骨太の方針2015」で、「かかりつけ医の普及の観点からの診療報酬上の対応や外来時の定額負担について検討」と打ち出されたのがきっかけ。

 2016年度診療報酬改定では、(1)特定機能病院、一般病床500床以上の地域医療支援病院については、定額負担徴収の義務化(初診5000円以上、再診2500円以上)、(2)地域包括診療料・加算の要件の緩和――などを実施。残る課題として、「改革工程表」では、「かかりつけ医」以外受診での定額負担について、「2016年末までに結論」を出すように求めていた。

 「保険給付7割」の原則にも反する
 「かかりつけ医」以外受診での定額負担に、「賛成」との言葉を使ったのは、日本商工会議所社会保障専門委員会委員の藤井隆太氏。しかし、「総合診療専門医との関係なども含めて、かかりつけ医をどう定義するのか」との留保付きだ。定額負担徴収には、かかりつけ医を含めた医療提供体制の整備が必要とした。

 経団連社会保障委員会医療・介護改革部会長の望月篤氏も、「保険財政の健全化の観点から、外来時に定額負担を広く求める」が基本的な考えながら、「かかりつけ医の定義や実務上の可能性を検討した上で、実現可能なら、それも一つの方策」と述べるにとどまった。

 それ以外の委員は、全面的に反対だった。

 連合の新谷氏は、二つの理由から反対。一つは、「保険給付割合は将来にわたり、7割を維持」と定めている2002年の同法等改正法の附則2条に反するという理由だ。もう一つは、前述のように、かかりつけ医、家庭医などさまざまな名称が使われ、定義がはっきりしない中での検討は時期尚早という理由。「地域包括ケアシステムの構築に向けて、かかりつけ医の役割の普及させて行くことは必要だが、誰がそれを担うのか、その合意形成が重要」(新谷氏)。

 日本医師会副会長の松原謙二氏は、保険給付割合を7割としたのは、「それ以上の負担は求めない」という議論の結果であると説明。特定機能病院等の定額負担徴収は、まずかかりつけ医を受診するという、外来の機能分化のほか、大病院の勤務医の外来負担軽減という意味があるとし、今回の定額負担の議論は趣旨が異なり、「筋が非常に悪く、ぜひ考え直してもらいたい」と求めた。

 日本歯科医師会常務理事の遠藤秀樹氏も、保険給付割合の原則に反するという理由のほか、特定機能病院等の定額負担徴収の効果を見た上で、かかりつけ医をどう位置付けるかを検討すべきと述べた。

 一方、保険者の立場の委員も、かかりつけ医の定義が先決との考え。健保連の白川氏は、「疾病ごとにかかりつけ医を複数持っているのが現状であり、皆のかかりつけ医の概念は違う。この制度を導入して、国民の納得が得られるとは思えない」などと述べ反対。

 「かかりつけ医」、イギリスのGP?
 定額負担の議論に関連して、「かかりつけ医とは何か」の検討を求める意見も出た。白川氏は、新専門医制度において、総合診療専門医が基本領域の専門医として誕生する予定であることから、「総合診療専門医が、患者情報を一元管理するような体制にしないといけない。いろいろな疾患に対応できる幅広い知識を持った医師の育成を目指しているので、それを待った方がいいという期待がある」とコメント。

 全国健康保険協会(協会けんぽ)理事長の小林剛氏は、イギリスのGP (General Practitioner)の紹介を、厚労省に求めた。

 東海大学教養学部人間環境学科教授の堀真奈美氏は、複数の委員がイギリスのGPを念頭に置いた発言をしたことから、「かかりつけ医のイメージについて、ある程度、共通理解があるのではないか」と述べ、かかりつけ医を通じてアクセスした場合と、それ以外の方法でアクセスした場合の負担の在り方を議論するよう提案。

 これに対し、松原氏は、十分な専門性を持った医師が開業して、かかりつけ医機能を担っているのが、日本の医療制度であり、イギリスのGP のような、患者と医師が「一対一」という制度を持ってくることは問題であるとした。



https://www.m3.com/news/general/471696
生活保護でも医療費負担 過剰受診抑制へ財務省提言
2016年10月28日 (金) 共同通信社

 財務省は27日の財政制度等審議会分科会で、公費で全額賄う生活保護受給者の医療費に関し、医療機関への過剰受診が続く場合などに一定の自己負担を導入するよう提言した。自治体全体の収支見通しを示す地方財政計画では歳出が恒常的に過大計上されていると分析し、経費の絞り込みを求めた。ともに2017年度以降の予算編成で歳出膨張を防ぐのが狙いだ。

 生活保護受給者に自己負担のないことが過剰な受診を生みやすいと指摘。行き過ぎた受診だと医師が認めた人が改善指導にも従わない場合は、自己負担や受診回数制限の導入を検討するよう厚生労働省に促した。

 政府は安価なジェネリック医薬品(後発薬)の処方を推進しており、後発薬で対応できるのに先発薬を使い続ける生活保護受給者に差額の自己負担を求める案も示した。異論も予想され、実施時期ははっきりしない。

 地方財政計画は総務、財務両省が折衝して毎年度策定し、自治体に配る地方交付税の算定根拠になっている。財務省は計画の歳出額が近年は実質的に決算額を上回っているとして経費の見直しや、リーマン・ショック後に景気対策で設けた「歳出特別枠」の廃止を総務省に要請。地方税収の上振れ分を翌年度に精算する仕組みを設け、交付税や地方の借金の圧縮に充てることも提案した。



https://www.m3.com/news/general/471785
地域に必要な医療を 高知市で医師が取り組みを発表
2016年10月28日 (金) 高知新聞

 地域医療の在り方を探る「へき地医療を考える会」がこのほど、高知市の高知県民文化ホールで開かれた。医療と介護が連携した地域包括ケアシステムなどをテーマに、地域で働く医師が日頃の取り組みを発表した。

 基調講演では、厚生労働省の地域医療構想策定支援専門官で医師の伴正海さんが講演した。団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けて策定が進む地域医療構想について、国の動向を紹介。「これからは『医師がやりたい医療』ではなく、『地域に必要な医療』が求められる。まちづくりと共に医療、介護を考えてほしい」と呼び掛けた。

 梼原病院の池田幹彦院長は、地域包括ケアシステムに先進的に取り組む高岡郡梼原町について、「行政と医療が『住民の命を守る』という共通目標を持ち、密接に連携してきた」と紹介。病院スタッフと住民との座談会にも触れ、「病院の現状を住民に理解してもらい、住民の意向も聞きながら、共に地域医療をつくりあげたい」と語った。

 高知県地域医療研究会(会長=夕部富三・いずみの病院院長)の主催。県内の医師ら約20人が参加した。



https://www.m3.com/news/general/471826
佐野市民病院:民営化、根拠などを審議 市政策審
2016年10月28日 (金) 毎日新聞社

佐野市民病院:民営化、根拠などを審議 市政策審 /栃木

 佐野市民病院の経営形態について諮問を受けた佐野市政策審議会(委員長・三橋伸夫宇都宮大教授、委員17人)は27日、第3回会議を開き、市側の民営化方針の根拠などについて審議した。

 市側は、官公庁施工の病院建設の場合、建築単価が民間施行の場合の1・5倍になることなど民営化のメリットを説明し、理解を求めた。次回(11月8日)は、答申の取りまとめに入る。【太田穣】



http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/list/201610/CK2016102802000170.html
【栃木】「民設民営」踏襲の付帯条件付け答申 佐野市民病院民間譲渡で市の政策審議会
2016年10月28日 東京新聞

 佐野市が民間譲渡する意向を明らかにした市民病院(同市田沼町)に関し、市政策審議会(会長・三橋伸夫宇都宮大教授)は二十七日、病院の経営形態を市の方針と同じ民設民営とするよう、付帯条件を付けて市に答申することを決めた。
 この日の会合で、病院で働く現在の医療法人の職員や患者、市民の不安が大きいとの意見が委員から相次ぎ、対応を付帯条件に盛り込むことにした。
 市民への説明会開催について質問も出たが、審議会事務局は「どこの医療法人に譲渡するか決まり次第、情報提供していきたい」と答えた。 (稲垣太郎)



http://www.medwatch.jp/?p=10993
民間医療機関へ「病床機能の転換」命令できる権限を都道府県に付与せよ―財政審
2016年10月28日|医療・介護行政をウォッチ MEDWATCH

 病院・病床の機能分化・連携を進めるため、「民間医療機関に病床機能の転換を命令できる権限」を都道府県に付与するべきである―。

 27日に開かれた財政制度等審議会・財政制度分科会で、財務省はこのように提案しました(関連記事はこちらとこちら)。

憲法で定められた「営業の自由」などに抵触する可能性あり、慎重な議論が必要

 いわゆる団塊の世代(1947-51年の第1次ベビーブームに生まれた方)がすべて75歳以上になる2025年に向けて、医療(とくに慢性期医療)・介護のニーズが急速に高まるため、病院・病床機能の分化・連携の推進や地域包括ケアシステムの構築が急務とされています。病院・病床の機能分化に向けては、現在、各都道府県で地域医療構想の策定が進められています。
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 地域医療構想では、地域ごとに高度急性期・急性期・回復期・慢性期病床の必要量や、機能分化を進めていくための方策を記載します。後者の機能分化を進める方策の一つとして「都道府県知事の権限」行使があります。具体的には、▼病院の開設、病床数の増加等の許可の際に、不足している医療機能を担うという条件の付与▼過剰な医療機能への転換に対する中止命令(公的医療機関等以外の医療機関に対しては要請)▼不足している医療機能に係る医療提供の指示(公的医療機関等以外の医療機関に対しては要請)―などです。

地域医療構想の実現に向けて、都道府県知事には一定の権限が付与されている
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地域医療構想の実現において、都道府県知事の権限行使は謙抑的かつ慎重に行使される
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 このように、公的医療機関等に対しては都道府県知事が強力な権限を行使することができますが、民間医療機関には「要請」できるのみです(関連記事はこちら)。

 しかし、民間医療機関が地域の医療提供体制の大半を担う地域もあり、そこでは「調整会議」での協議などで自主的な機能分化を待つ必要がありますが、「果たして機能分化が自主的に進むのだろうか」との疑問の声も小さくありません。そこで今般、財務省は「保険医療機関の指定などにあたり、民間医療機関に対する他施設への転換命令などを付与するなど、医療保険上の指定に係る都道府県の権限を一層強化すべき」と提言しているのです。

 なお、都道府県知事が民間医療機関に機能転換命令を行うことは、憲法で保証された「営業の自由」(第22条第1項から導かれる)や「財産権」(第29条)に抵触する可能性が極めて高く、慎重な議論が必要です。


 このほか財務省は、▼地域医療構想の実現に向け、病棟ごとの診療行為を分析し、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の機能毎の定量的な基準を次期報告(2017年10月)までに明確化し、KPIに沿って進捗管理を行う ▼医療介護総合確保基金の使途を「機能転換などに直接資するもの」に重点化する ▼都道府県毎の診療報酬(高齢者の医療の確保に関する法律第14条)に向け、国で運用ガイドラインを策定する ▼特定地域・診療科での診療従事を医療機関管理者の要件とすることや、保険医の配置・定数の設定など、医師配置などにかかる規制も含めた実効的な偏在是正策が講じられるよう、国・都道府県の権限を強化する ▼医療費の地域差半減に向けた、見える化・インセンティブ付与を行う ▼後発医薬品の使用促進や、糖尿病性腎症重症化予防など医療費の適正化に取り組む保険者へのインセンティブ措置を強化する ▼医療扶助(生活保護者)における頻回受診の適正化や後発品の使用促進を行う―ことなども要望しています。



http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/event/15/101600083/102800047/
デジタルヘルスDAYS 2016
日本医療を救うのは「患者と医師の最適マッチング」

近藤 寿成=スプール
2016/10/28 15:42 日経BP

 全ての患者に最適な医療を提供する――。「デジタルヘルスDAYS 2016」(2016年10月19~21日、主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)のオープンシアターに、クリンタル 医師 代表取締役の杉田玲夢氏が登壇。患者と名医をマッチングする自社サービスの概要と、その効果による日本医療へのメリットを紹介した。

 近年、相次ぐ医療事故や医療ミスによって、「患者の医療に対する不信感は強まっている」(杉田氏)。しかし、「良い病院の判断基準が分からない」「そもそも判断するための情報もない」「仮に情報を得られたとしても専門過ぎてわからない」といった理由から、適切な病院選びは一般人にとってハードルが高いのが現状だ。そこでクリンタルは、「悩める患者の水先案内人として、最適なタイミングで最適な名医を受診できる世の中の実現を目指している」(杉田氏)。

 現在、クリンタルは、(1)名医検索サイト、(2)名医紹介サービス、(3)健康相談チャット」という3つのサービスを提供する。

 (1)の名医検索サイトは、全国20万人の医師から、厳選した有数の専門医や街の名医の情報を検索できるサービス。有数の専門医については、特定の疾患や治療法における日本トップレベルの専門家(スペシャリスト)を選定しており、現在は約4000名を掲載する。選定基準は、定量的な手術数や論文数といったデータと、業界内での評判という2つの方向性を重視。「その両方を担保しているドクターだけを選んでいる」(杉田氏)。

 一方、街の名医はスペシャリストというよりもジェネラリストというイメージで、一定の質を超えているクリニック医師を約3万5000人掲載する。また各医師の情報には、「予約の取りやすさ」といったアクセシビリティなど、独自に収集・保有する情報も含まれている。

 (2)の名医紹介サービスは、患者がパソコンやスマートフォンを通じて病状や受診希望などを伝えると、その病状や希望に合わせて、受診できる最適な名医を提案してくれるコンシェルジュサービスだ。名医検索サイトとの違いは、「医療の質とアクセスのバランスまでを踏まえた提案をする点にある」(杉田氏)。

 例えば、胃がんになった患者はトップ10レベルの医師に手術してもらいたいと考えるが、そのような名医は手術までに何カ月も待たされるケースが多い。そこでクリンタルは、状況に応じてトップ20で比較的すぐに手術できるような医師を提案。「検索だけではカバーできない価値をこのサービスで提供している」(杉田氏)。

 (3)の健康相談チャットは、2016年11月にアプリのリリースを予定するサービス。スマートフォンのアプリ上で、看護師や医師に最適なタイミングで受診するための健康相談ができる。クリンタルは病院や医師の紹介を主な事業としているため、「いわゆるトリアージを想定したサービス。相談内容に応じて受診の必要性をメインに回答している」(杉田氏)。

 これに加えて健康相談チャットでは、高血圧や糖尿病など慢性疾患を抱えてる患者に対して、クリンタル側からプッシュ通知で必要な情報を提供するサービスも想定する。これにより、通院からのドロップアウトや服薬の飲み忘れなどを防ぐのが目的だ。


すべての病院が同じ機能を持つのは無理がある

 では、これらのサービスを通じてどのような課題を解決していくのか。クリンタルは3つのコンセプトを掲げる。第1が、「全ての患者に最適な医療を提供する」ことだ。

 厚生労働省のデータによれば、入院患者の約半数は「医師による紹介」で現在の病院を選んだという。これ以外では「以前に来たことがある」「医師や看護婦が親切だった」などの理由も多いそうだが、杉田氏は「これは最適ではない」と考える。

 例えば、「医師による紹介」は近くのクリニックで紹介状をもらい受診するケースが多いが、杉田氏によれば「クリニックの医師は、自分の出身大学や所属する地方の医師会で顔見知りの医師を紹介するケースがほとんどだ」という。地域や大学という狭い範囲に限定されてしまうため、「それが最適かどうかには疑問符が付く」と指摘する。

 そういった意味では、患者が質の高い医療を提供する病院に受診するのは、かなり難しいといえる。そこでクリンタルは、先ほど紹介したサービスで、質も踏まえた病院や医師の提案をしようというわけだ。

 次に掲げるのは「病院全体における、医療の質向上」だ。現在の地域医療を見てみると、「地方都市では総合病院が乱立傾向にある」(杉田氏)。そして、各病院としては「この医療圏の患者は我々がすべて守る」という高い志で奮闘しているわけだが、結果としては限られた患者と医師を奪い合うことになっているため、どの病院も経営赤字に陥ってしまう。このような状況を「病院の志は高いが、状態としては不健全」と杉田氏は嘆く。

 一方で、カナダにはヘルニアの手術だけに特化したショールダイス病院がある。この病院は年間7000例以上の手術を行っており、手術費用は一般病院で3550米ドルかかるところを2300米ドルで済ませている。しかも、再発率が全米トップクラスの0.5%以下と、圧倒的な質の確保とコストダウンを達成しているのが特徴だ。このデータから「すべての診療科を持つよりも、一部に特化した方が効率も質も上がることが見て取れる」(杉田氏)。

 これを踏まえて杉田氏は、「すべての病院が同じ機能を持つのは、少し無理があるのではないか」と疑問を投げかける。そして、地方都市の総合病院も特定の診療科を強化し、それぞれが例えば周産期センターや循環器センター、呼吸器センターとなって、同じ医療圏にある各病院が連携しあうという「補完する地域医療」の実現を提案する。

 「補完する地域医療」の実現に際して、クリンタルのサービスはまず特定の疾患に優れた名医のいる病院に患者を集めることができる。患者が集まれば医師も集まるため、そこで医師はさらに研鑽されるというサイクルが出来上がる。これを確立できれば、「日本の医療の質と効率を上げられるのではないか」と杉田氏は考える。

 最後にクリンタルが掲げるのは「日本の医療費の削減」だ。これは、先ほどのショールダイス病院の例を見てを明らかで、質を上げれば効率が上がり、医療費も下がる。また、厚生労働省のデータによれば、手術数が多い病院ほど、平均入院日数も短くなる傾向にあることがわかっている。クリンタルのサービスを利用した場合のシミュレーションデータによれば、「入院日数は10~30%程度短縮でき、1入院あたりの医療費も5万~15万円程度削減できる」(杉田氏)そうだ。

 もちろんこれは机上の空論ではなく、米国で実施されている同様のサービスによって、10万人の従業員に対して1000万米ドル(約10億円)の医療コスト削減を達成したという。厚生労働省の罹患率データなどを基に計算した場合、1万人あたりで約3000万円の医療費削減になるとの試算もある。仮にこれが日本全国に広まれば、「数千億円レベルのインパクトを生み出すことができる」と杉田氏は見る。


  1. 2016/10/29(土) 05:54:31|
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