Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

10月10日

https://www.m3.com/news/iryoishin/466304?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD161010&dcf_doctor=true&mc.l=182531454
シリーズ: 医師不足への処方せん
「選択肢の多様化こそ医師偏在策」、医学部長病院長会議
自民党研究会、医師国試改革の必要性も強調

2016年10月9日 (日) 橋本佳子(m3.com編集長)

 自民党の国会議員で組織する「医師偏在是正に関する研究会」(代表:河村建夫衆院議員)の10月7日の第2回会議で、全国医学部長病院長会議会長の新井一氏(順天堂大学学長)は、「医師養成のための卒前・卒後教育改革案」を提案した。医学教育に1年組み込むことで、臨床研修を1年短縮し、医師国試は臨床実習の成果を問う内容に変えるなどして、卒前と卒後の教育・研修をシームレスにし、かつ「個々の医師の選択肢を多様化、拡大」する改革案だ。

 新井氏は、臨床研修、専門医研修、大学院での学位取得などの選択肢がある中、「医師の偏在解消策として重要なのは、地域の多様な医療ニーズと、個々の医師の特性に応じた多様なキャリアパスをマッチングできる、画一的ではない柔軟な対応を可能とする法・制度の設計」とコメント。2020年度までには、臨床実習終了時(医師国試前)に技能・態度を評価する「PostC.C.OSCE」を全大学で実施予定であるなど、大学レベルの「自主的な取り組み」が進んでおり、それらを制度化する国の支援などを求めた。

 全国医学部長病院長会議の教育委員会委員長の山下英俊氏(山形大学医学部長)も、「短期間で医師を養成し、地域医療に派遣するという発想は重要」とし、今の医師国試は「受験勉強」が求められるため、臨床から一定期間離れることが問題であるとし、実技能力を問う方法に変更するなど国試改革の必要性を指摘。臨床研修の短縮化、専門医研修までのシームレスな教育・研修が可能になれば、短期間での専門医養成にもつながり、女性医師にとってのメリットも大きいと説明。さらに卒前教育の充実には、地域の医療機関を臨床実習の場とすることが重要であり、そのためにも「医学生ができる医行為」を法的に整理する必要性を強調した(『スチューデント・ドクターの先駆者◆山形大学』を参照)。「地域の医師は診療のプロだが、教育のプロではない。医学生に医行為をさせることで『法的責任が及ぶのではないか』との懸念がある」(山下氏)。

 「卒前・卒後の教育研修のシームレス化」「医師の選択肢の多様化」「教育研修期間の短縮」という提案に対しては、出席議員から支持する声が多かった。

 その一人が、医師でもある自見はなこ参院議員。(1)子育て世代の30、40代の女性医師は、『職場に迷惑をかける』との理由で離職するケースが多く、この問題は医師に限らず、女性医療職全体について解決すべき課題、(2)医学教育と卒後の臨床研修、専門医研修まで横串を刺して体制を整えることが重要、(3)仮に保険医登録の要件に、地域医療への従事を義務化する場合、女性医師にとっては妊娠可能時期が遅れてしまう懸念があり、早く義務を果たすためにも、医学教育の地域実習をカウントする――の3点を要望した。保険医登録と絡めた医師偏在対策は、10月6日の厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会の「医師需給分科会」で提案されている(『診療科別の「専攻医研修枠」、JCHO尾身氏が提案』を参照)。

 その他の出席議員からもさまざまな意見が出て、約1時間にわたった議論は終了。河村代表は、「本格的に議論を進めたい。議員連盟という形できちんと立ち上げたい」と締めくくった。「医師偏在是正に関する研究会」は9月に研究会としてスタートしたが、10月末か11月初めまでに議連として発展させる予定(『「医局復活で、医師偏在解消を」との意見も、自民党研究会』を参照)

 「地方勤務と保険医登録をリンク」に関心
 7日の会議に出席したのは、新井氏、山下氏のほか、千葉大学医学部附属病院長の山本修一氏。3氏のプレゼンテーションの後、出席議員との質疑応答が展開された。

 中村裕之衆院議員は、「国の制度として医師偏在対策に有効な手立てはないのか。職業選択と居住の自由があり、強制的なことはできないとしても、例えば保険医登録が簡単になるなど、医療過疎地域に勤務することで、インセンティブを付けることはできないのか」と質問。井野俊郎衆院議員も、「保険医登録に、地方勤務の経験を加味してはどうか、という提言があると聞く」と尋ねた。

 新井氏は、保険医登録に絡めた対策について「一つの方策としてはあり得る」と答えた一方、「直接的に縛る」のではなく、医師の地域定着策で一定程度の成果を挙げたところにインセンティブを付けるなどの仕組みが必要だとした。

 後藤田正純衆院議員は、地元徳島県の医師が、科研費を使い、研究場所である秋田県に派遣されている例があるとし、似たような枠組みの可能性を質問。新井氏は、地方自治体が、大学に共同研究講座を作って医師を採用、その医師が地域の医療機関に勤務している例があると紹介した。

 そのほか、自治体立病院の集約化などの意見も出た。津島淳衆院議員は、「地方自治体がそれぞれ病院を持ち、全国で医師を取り合っていることが問題。自治体が連携して、『中核病院とサテライト診療所』などの形態に再編する必要がある」と指摘した。さらに周産期医療など、訴訟リスクが高く、法的責任が追及される診療科の医師不足対策の検討も必要だとした。

 山形、千葉、着実に医師数増加
 議論に先立つプレゼンテーションで、山下氏は、「初期の臨床研修後、後期研修を始める時点でも、医師は相当勤務地域を変える」という研究調査の結果のほか、同一県内でも、都市部の医師は多く、地方は少ないなど地域差が大きい現状を説明。

 こうした現状を踏まえた対策として、(1)卒前と卒後の一貫した教育研修コースを設定し、医師が進んで専門医取得の組織を選択できるようにする、(2)各都道府県で、医師育成、医療を総合的に調整する組織を機能させる、(3)地域医療に従事するインセンティブを考える――という発想から、山形県では、山形大学のほか、県、医師会、40の県内病院が参加、協力する組織として「山形大学蔵王協議会」を2002年からスタートさせたと説明。臨床実習の段階から、山形大学と地域の病院を活用した「循環型研修」などを展開している。

 山形県内の常勤医師数は、2008年11月の時点では1243人だったが、2015年10月は1333人になり、全体では7%(90人)の増加だが、出身大学別に見ると、山形大学出身者は16%増加(725人から841人)。「県外から、山形大学に入学した人が、卒業後も山形大学に定着するようになってきた」という。山下氏は、チーム医療の重要性が指摘される中、各医師の得意分野や力量などを把握している大学が、地域の医療機関に医師を派遣する枠組みを充実させる必要性を強調した。

 山本氏は、千葉県の現状を紹介。同県の人口当たりの医師数は全国45位。現状では2025年には1000人前後が不足するとの推計もある。その対策として、千葉大学や県などが協力して、(1)医師キャリアアップ・就職支援センター事業、(2)医師修学資金制度の拡充、(3)後期研修プログラムの充実、(4)研修病院のネットワーク化――など、初期や後期の研修医を千葉県に呼び込む活動を展開。初期研修医は増加傾向にあり、2013年4月は295人だったが、2014年4月329人、2015年360人、2016年4月398人と急伸した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/466308?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD161010&dcf_doctor=true&mc.l=182531455
医療機関の「競争」より「協調」、神田厚労省医政局長
第58回全日本病院学会で講演、「地域連携推進法人の利用も」

2016年10月9日 (日) 橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省医政局長の神田裕二氏は、10月8日に熊本市で開催された第58回全日本病院学会の特別講演で、地域医療構想をテーマに講演、構想実現には「腹を割って、本音で話すことが一番大事」と述べ、各地域の関係者が話し合う調整会議のほか、地域医療連携推進法人が一つのツールになるとした。「現実的に検討を始めているところが、既に出てきている」と述べ、事例を紹介、医療機関同士が競争するのではなく、協調していく大切さを説いた。

 地域医療連携推進法人は2017年度からスタートする制度で、「岡山大学メディカルセンター」構想が有名だが(『岡山大、6病院束ね連携法人目指す - 森田潔・岡山大学学長に聞く』を参照)、それ以外にも山形県酒田市、鹿児島市などで検討している事例を神田局長は紹介した。

 学会開催地である熊本市は2016年4月、大震災に見舞われ、医療機関にも甚大な被害が生じた。診療不能に陥った一つが、熊本市民病院。再建計画は、同病院だけでなく、大学や医師会なども加わり、策定したため、「再編ネットワークの先行例」であるとした。熊本県の地域医療構想を踏まえ、病床は556床から392床に大幅に減少、回復期機能の充実も図る。

「青森、岐阜、東京、広島」の地域医療構想を例示

 神田局長はまず、地域医療構想の策定状況を説明。2016年8月31日現在、47都道府県中、策定を終えたのは、19都府県(128構想区域)。地域医療構想では、2025年の医療需要と病床の必要量などを推計し、併せて地域医療構想を実現するための施策を検討する。

 地域医療構想の中で、慢性期機能の必要量推計に用いる療養病床の入院受療率の計算方法は、2パターンの方法がある。128構想区域中、97構想区域(78%)が、より減少幅が緩やかな計算方法を用いていた。

 「19都府県の記載内容の具体性には、ばらつきがある」と指摘する神田局長が、具体的記載がある例として挙げたのが、青森、岐阜、東京、広島の4都府県。

 青森の特徴は、公的な医療機関が中心的な役割を担っている点。青森県立中央病院は、高度・専門医療、救命救急センターや総合周産期母子医療センターなど政策医療に特化、一方、青森市民病院は、救急医療等も担うと同時に回復期機能の充実などにも舵を切る。

 岐阜は、全体では約1300床が過剰になる一方、回復期機能が約1600床不足。岐阜大学医学部附属病院が県全体の中心的役割を担い、岐阜県総合医療センター、岐阜市民病院、松波総合病院が連携し、岐阜圏域の急性期医療の中心的な役割を担う。「政策医療、あるいは地理的要因から急性期医療を担う病院以外は、回復期中心にシフト」「一般病床および療養病床の病床利用率が、おおむね過去3年間連続して70%未満の病院については、休床を含めた病床の在り方等を検討」などと明記。

 東京の医療提供体制の特徴は、構想区域を超えた流出入が非常に多い点。それらを踏まえて医療機能別の病床数を推計している。多くの構想区域で病床が不足するが、単に増やすのではなく、アクセスの利便性や流出入などを踏まえて検討するとしている。そのほか、「調整会議で行われた議論が、紹介されているのが特徴的」(神田局長)。

 広島も、全体では約4400床(全体の約10%)が過剰になる一方、回復期機能が約6500床(現在の約200%)不足すると推計され、急性期機能を減らして、回復期機能を増やすことが必要になっている。地域医療構想実現の施策として、「医療へのアクセスの改善策」「在宅医療の推進」などの視点から、構想実現に向けた施策を地域に応じてきめ細かに記述している。

「腹を割って、本音で話すことが一番大事」

 神田局長は、各地域の地域医療構想を踏まえ、「公立病院が中心の地域は、課題の共有も比較的容易で、具体的な記述をしやすい一方で、急性期病院が競合している都市部などは、具体的記述は難しいだろう」と指摘。もっとも、高齢者人口の増加で病床数も増やしていく中で、回復期機能などの増加を図る都市部と比べて、難しいのは、「高齢者人口や患者数は減少し、かつ急性期病院が競合している地域」と神田局長は見る。

 「腹を割って、本音で話すことが一番大事」(神田局長)。地域医療構想の実現に当たっては、関係者による話し合いの場である、「調整会議」を設ける。その議論の進め方については、現在、厚労省の検討会で議論されている(『病床過剰地域でも「病床の必要量」の整備可能に』などを参照)。「例えば、急性期機能が不足している場合、『早いもの勝ち』ではなく、どこがその機能を担うべきかを、地域で議論していくのがいいと考えている」(神田局長)。

 そのほか、地域医療構想を実現するための一つのツールとして挙げたのが、地域医療連携推進法人だ。これは、医療機関等を開設する医療法人等が社員となり非営利法人を設立し、ヒト(医師など)、モノ(医薬品や医療機器など)、カネ(資金)について一体的運営を行う仕組み。

 活用の例として挙げたのが、「岡山大学メディカルセンター」構想のほか、医療法人緑壮会等(岡山県真庭市)、地方独立行政法人酒田市病院機構等(山形県酒田市)、社会医療法人博愛会と医療法人真栄会(鹿児島県鹿児島市)などだ。

 医療法人緑壮会等は、「現実的に連携していかないと共倒れになりかねない例」(神田局長)。「直線距離で400m程度しか離れていない約170床規模の二つの病院が、脳神経外科や整形外科、外科など、もう一方は産婦人科や小児科、透析などと診療科を分担し、継続的な医療の提供を目指している」という。

 地方独立行政法人酒田市病院機構等の例は、県立日本海病院と市立酒田病院を統合させて誕生した中日本海総合病院が中心となり、さらに周辺地域の医療機関と、まずは医療機器の共同購入から始めて、患者紹介を行い、役割分担を進める計画。

 社会医療法人博愛会と医療法人真栄会は、いずれもがん治療を専門とする病院で、抗癌剤の共同購入や高額医療機器を共同利用するなどのメリットを想定している。

 さらに、神田局長は、地域医療構想の推進のためには、在宅医療等の受け皿を作っていくことも大事な役割であると説明。在宅医療等には、自宅だけでなく、介護施設等も含まれるとし、在宅での看取りについては、在宅死亡数などのアウトカム指標だけでなく、看取りに至る過程を評価する指標の評価なども課題であるとした(『第7次医療計画、「在宅医療」の方向性固まる』を参照)。



https://www.m3.com/news/general/466289?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD161010&dcf_doctor=true&mc.l=182531456
青森県、弘前の2病院統合案を提示 津軽圏医療の中核に
2016年10月10日 (月) 毎日新聞社

 県は7日、弘前地方の8市町村の医療関係者を弘前市に集めて津軽地域医療構想調整会議を開き、「弘前市立病院と国立機構弘前病院を統合した中核病院を国立弘前病院の敷地に整備する」とした自治体病院の再編案などを提示した。同案に対して特に異論は出ず、関係機関が今後、協議を詰める見通し。

 同会議は県が3月に策定した地域医療構想に基づき、県内6地域ごとに具体的な議論に入るため開かれた。津軽地域は高齢化が進む2025年、急性期対応の病床の多くが不要となり、在宅医療の充実で慢性期の病床も余剰になる一方、回復期の病床が不足すると指摘。この傾向は県全体に共通するという。

 このため県は、津軽地域の5自治体病院の中で弘前市立と国立弘前を統合した中核病院の創設を打ち出した。新病院は国立機構が運営し、救命救急センターを整備し、夜間や休日の救急医療体制の充実を図る。他の黒石病院は回復期、大鰐病院は慢性期、板柳中央病院は回復・慢性期の機能を担うとしている。

 一戸和成・県健康福祉部長は席上、「医療体制構築のため最善の案を提示した」と説明し、中核病院の実現に向けて「県や弘前市、国立機構に、医師を輩出する弘前大付属病院を加えた4者で今後協議を深めたい」と語った。【松山彦蔵】



https://www.m3.com/news/general/466111?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD161010&dcf_doctor=true&mc.l=182531458
全面禁煙の徹底を 弘前大病院が全域で /青森
2016年10月10日 (月) 毎日新聞社

 島根県江津市の民間病院で禁煙外来を設けながら職員が病院敷地で喫煙し、診療報酬を国に返還することになった問題を受け、弘前大医学部付属病院(弘前市本町)は4日付で、福田真作病院長名で全職員1200人に「病院敷地内での全面禁煙の徹底」のメールを送り、注意喚起を改めて呼びかけた。

 同病院は禁煙外来を設置していない。だが「喫煙と受動喫煙の健康への悪影響」を考慮し、2007年10月から職員や患者、その家族、来院者らに病院建物や駐車場、通路など敷地全体で全面禁煙を訴えてきた。

 職員に再度注意を促したことについて同病院は「生活習慣病や小児科・呼吸器などの患者の診療報酬の請求に際し、施設基準で『敷地内全面禁煙』が前提条件になっている。これをきちんと守るため」と説明している。【松山彦蔵】



http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03194_02
【視点】
卒後臨床研修センター業務に生かす「産業・組織心理学」

江村 正(佐賀大学医学部附属病院卒後臨床研修センター専任副センター長・准教授)
週刊医学界新聞 第3194号 2016年10月10日

 2004年の医師臨床研修制度必修化に伴い,臨床研修病院には研修の統括部門が必要となり,以来,卒後臨床研修センターが多くの病院に設置されることになった。筆者は,そこでさまざまな仕事を行ってきたが,内容があらゆる方面におよび,従来の臨床医の仕事とは全く異なるものばかりであった。

 着任して10年が過ぎ,後進の育成も考え今までの活動を振り返ってみたが,なかなか活動内容を体系づけて整理することができずにいた。

 卒後臨床研修センターの業務について模索する中,「産業・組織心理学」との出合いがあった。産業・組織心理学とは,心理学を産業領域に応用したもので,「組織とかかわりを持っている人々の行動を記述し,理解し,予測することによって,人間と組織との望ましい,そして,あるべき関係の仕方を見出すことを目的とした科学」1)と言われている。組織行動,人事心理学,作業心理学,消費者行動の4つの研究領域に分類することができる。産業・組織心理学の体系をもとに卒後臨床研修センターの業務をあらためて振り返ってみると,種々の活動がうまく分類されることに気付き,それぞれに関連付けてまとめることができた(図)。研修医教育に携わる者がこのような体系を把握しておくことで,内容によっては業務がより円滑に進められるのではないかと考える。

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図 産業・組織心理学の体系から分類した卒後臨床研修センターの業務

 産業・組織心理学の体系に,卒後臨床研修センターの活動が当てはまったのは,医学教育の世界に産業が,言い換えると,市場原理が導入されたためかもしれない。今まで以上に競争が求められる大学や病院において,産業・組織心理学という枠組みを知っておくことは,教育に携わる者の活動指針として有用と思われる。今まさに,卒後臨床研修センターの業務の在り方に苦心している方は,ぜひ一度参考にされるとよいだろう。

◆参考文献
1)高橋浩,他.社会人のための産業・組織心理学入門.産業能率大学出版部.2013.

江村 正
1987年佐賀医大卒。一般内科の研修後,98年より総合診療部助手。2004年に卒後臨床研修センターに着任し,08年より現職。日本医学教育学会認定医学教育専門家。



http://www.asahi.com/articles/ASJB97KSRJB9UBQU00L.html?iref=com_apitop
産める環境確保へ公的支援 産科医確保の取り組み広がる
神元敦司
2016年10月10日06時10分 朝日新聞

 産婦人科医が足りない状況を解消する取り組みが各地で広がる。公費を投じて医院を「誘致」したり、都市部の病院に通う費用を負担したり……。産婦人科医の数が7年ぶりに減少に転じたとする調査結果が近く発表される中で、「安心して産める環境を整えたい」との思いがある。

■大学病院から地域へ

 「これまで、どこで産んだらいいのか悩んでいました。ありがたい」。南アルプスの山々を背に田畑が広がる山梨県甲斐市。開院初日の3日、「このはな産婦人科」に来た女性(34)はうれしそうに語った。

 妊娠2カ月の女性は初めての出産。一方で、人口約7万5千人の甲斐市には妊婦を健診する医師はいるものの、出産できる施設はない。このはな産婦人科も出産はできないが、この女性ら妊婦のカルテは5キロほど離れた山梨大病院(同県中央市)との間で全て共有されている。

 出産が間近になったり、夜間・休日に急変したりすると、山梨大病院がスムーズに受け入れてくれる。自分のことを何も知らない病院に行き、一から説明する必要もない。「おなかが大きくなってから、車を運転して別の病院に通い出すのも大変。産める場所が決まっているということは安心です」。女性は話す。

 このはな産婦人科を切り盛りするのは院長の中村朋子さん(48)。先月末まで山梨大病院に勤めていた。少子化と都市部の大病院に医師が集中した影響で地域に出産施設が少なくなり、数年前には年間400台だった出産数が昨年は571に増加。同大病院は順番待ちの妊婦たちであふれ、婦人科系の病気の女性に手術を待ってもらうこともあったという。

 「なんとかしないと」。中村さんは少なくとも地域の医師が出産直前まで妊婦と向き合うようになれば、妊婦の負担は減り、大学病院も本来の役割を果たせるようになるのではないかと考えた。しかし、開院には巨額の費用がかかる。容易ではなかった。

 そんなとき、山梨大病院を通じて中村さんの意向を知った甲斐市が市内での開院を提案。市が昨年12月に超音波診断装置や検診台などを5千万円で買い入れ、中村さんの医院に無償で貸すことになった。市側で担当した秘書政策課の丸山英資(ひでもと)さん(49)は取材に「将来的な『人口減』を食い止めたいと考えました。市民サービス向上の視点もあります」と語る。

 一方、このはな産婦人科がある土地は中村さんが自ら借り、建物も自費で建てた。初めての医院の経営は厳しいものになると思っているが、「地域の女性たちにとって身近になる場所にしたいですね」と目を輝かせる。

■補助上限1億円の自治体

 甲斐市のような動きは他にもある。市内に出産でき

る施設がない富山県南砺市は4月、不動産の取得や機器・備品購入にかかる費用を対象に「上限1億円」の補助制度をスタート。同市医療課の担当者は「都市部に多い医師の中で開業する人がいれば」と話す。

 静岡県湖西市は上限1億円、埼玉県八潮市は同3千万円の補助制度を今春から始めた。10年間を限度に市有地を無償で貸す八潮市の健康増進課は「駅ができて子育て世代が増えた。安心して地元で産める環境にしたい」とする。

 産科系の医院や病院に通う妊婦を支援する自治体も少なくない。厚生労働省によると、交通費や宿泊費などを補助しているのは36都道府県の181市町村(昨年春時点)。これまでは市町村が独自に取り組むケースが中心だったが、4月には北海道が始めた。昨年10月の時点で、道内179市町村のうち8割を超える149市町村に出産できる施設がないといい、子ども子育て支援課の担当者は「金銭だけではなく、妊婦さんの気持ちと体への負担が少しでも和らげば」と語る。

■7年ぶりに産婦人科医減る

 こうした取り組みが広がる背景には、慢性的な産婦人科医の不足がある。国は2009年、訴訟リスクの多さが産婦人科から医師を遠ざけているとして、家族らを対象に産科医療補償制度を創設。女性の産婦人科医が育児しながら働き続けられる対策を講じた結果、09年前後から医師の数は緩やかに増えた。

 だが、その数は再び減る傾向がうかがえる。日本産婦人科医会は12日、今年1月時点で産婦人科医が前年同期を22人下回る1万1461人、このうち出産にたずさわる医師は20人減って8244人だったとする調査結果を発表する。日本医科大産婦人科の中井章人教授が手がけた調査で、減少はいずれも7年ぶりだ。

 妊婦に寄り添おうとする動きが各地で出ていることについて、産婦人科医で北里大病院の海野信也院長は「行政も巻き込んで地域の診療所や医院を維持していくことは必要。これからも各地で合理的なあり方を模索してほしい」と期待している。(神元敦司)



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48062
医療  世界から強い批判を受けた日本の大新聞
子宮頸がんワクチンに関するメディアの偏向報道(上)

津田 健司
2016.10.11(火) JB Press

 人間はどうやら本質的に「リスク」の認知が苦手であるようです。競馬やパチンコで痛い目に遭っても、ほとぼりが冷めたらまた嵌ってしまったり、タバコは体に悪いと知っていてもなお、多くの方がやめられずにいたりします。

 心理学の分野では、「人は不確実な物事を正確な確率で認識できない」と考えられているそうです。

 2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマンとトベルスキーが提唱しているプロスペクト理論の中では、「高い確率は低く見積もり、低い確率を高く見積もってしまう」と記されています。

 また、社会学の分野ではロジャー・カスパーソンが1988年に「リスクの社会的増幅」を提唱しました。事故や不祥事の報道が多いと、利用可能な情報が増えてリスク認知が高まることを言います。

小さなリスクほど過大に取られがち

 これらの考え方を知ると、比較的発生確率の高い自動車事故やがんなどのリスクが過小評価されていることや、BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)や鳥インフルエンザの確率はとても低いのに、事件の報道のインパクトによって過大評価され、パニックが引き起こされたことを理解することができます(参考)。

 普段意識されていませんが、どんな薬にもリスクがあり、稀なものも含めると副作用のリスクがゼロということはありません。

 風邪で受診した際に不用意に出された抗生剤で、重症の皮膚障害を起こして集中治療室に運ばれてしまう人も中にはいます。

 ですから、医師は、病気を予防したり良くしたりする有益性(ベネフィット)と副作用のリスクを天秤にかけて、ベネフィットがリスクを上回ると見込んだ時にのみ、薬を処方しています。

 しかし、本稿で取り上げる子宮頸がんワクチン騒動においては、新聞などのマスメディアを通じて、専門家の考える実態よりもはるかに高くリスクが伝えられているようです。

 その結果、ワクチン接種への社会不安が増大し、接種率が低下することで、防げたはずの子宮頸がん患者の増加につながる危険性が高く、大変憂慮すべき事態が続いています。

 子宮頸がんワクチンは、子宮頸がんや咽頭がん、尖圭コンジロームなどの病気を引き起こすヒトパピローマウイルスの感染を予防できるワクチンで、上皮内癌や前癌状態である高度異形成を減らすことが臨床試験で示されています。


 また、多くの人が同ワクチンを接種することで集団免疫効果が得られ、ワクチン非接種者における感染率も低下することが報告されています(Clin Infect Dis. 2016, in press, doi: 10.1093/cid/ciw533)。

 日本では2009年から導入され、2013年4月からは定期接種ワクチンに組み入れられました。ところが、2013年3月に朝日新聞が「子宮頸がんワクチンを接種した少女に歩行障害や計算障害が生じている」と報じました。

 以後、同様の症例が次々と新聞やテレビ、インターネットなどで報じられ、副反応を巡る騒動はメディアで大々的に取り上げられるようになりました。そのため、政府は2013年6月から積極的な接種勧奨を中止する方針を打ち出しています。

世界が興味を持った"日本の騒動"

 「積極的な接種勧奨の中止」という用語は分かりにくいですが、「政府として積極的にお勧めすることはやめますが、打ちたい人が打つことは構いませんよ」ということです。

 この決定は国内外に大きな衝撃を与え、世界中で同ワクチンの有害事象について再検討がなされました。

 しかし、大規模データでも同ワクチンが特別に高いリスクを持つわけではないことが確認されており、他国で日本と同様の方針を取っている政府はありません。それにもかかわらず日本の接種勧奨中止は3年たった今でも継続しており、国内外の医療専門家から強い批判を受けています。

 筆者ら帝京大学、南相馬市立総合病院、ナビタスクリニック、医療ガバナンス研究所の合同研究チームは、日本の特異な状況にはメディアのリスクの伝え方、すなわちリスクコミュニケーションにも大きな問題があったのではないか、と考えました。

 それを検証するために、2013年前後の新聞報道の変遷を調査・解析し、米国感染症学会によるClinical Infectious Diseases誌で招待論文として発表することになりました(Clin Infect Dis. 2016, in press, doi: 10.1093/cid/ciw647)。

 世界を代表する感染症医学の専門誌に掲載が決まったのは、日本の騒動が世界でも大きな注目を集めているからでもあると思います。

 同論文では、2013年3月以降、ワクチン接種後の副反応のリスクを強調する、ネガティブな新聞報道が急増したことを示しました。一方、学会や世界保健機関など専門家機構による、リスクと有益性(ベネフィット)を踏まえたうえでの見解を伝える報道は非常に限られていました。


 多くの一般市民が新聞を通じて、健康や医療に関する知識を得ているにもかかわらず、子宮頸がんワクチンに関しては、リスクとベネフィットの伝え方のバランスに偏りがあったことが示されました。

 このことは、ワクチンの有益性とリスクを冷静に伝えるリスクコミュニケーションツールとして新聞が十分機能していなかったことを示唆します。

 以下、同論文の内容を医療に馴染みのない方、特に接種対象となる中高生にとっても理解しやすいよう、心がけて解説したいと思います。

 一般の方々も、この問題に関する理解を深め、子宮頸がんワクチンが是か非かという二項対立の罠から抜け出して、事実と科学に基づいた冷静な議論を積み重ねていくことが重要だと考えるからです。

日本の五大新聞を詳しく分析

 私たちは新聞・雑誌記事の包括的データベースである、日経テレコンを用いて、2011年1月から2015年12月までの期間に、五大新聞紙(朝日、毎日、読売、産経、日本経済)に掲載された「子宮頸がんワクチン」に関する記事を抽出しました。

 子宮頸がんワクチンに関する記事は1138あり、同期間の全記事の0.02%を占めていました。続いて、記事の内容を分析するために、私たちは2つのアプローチを取りました。キーワードを含む記事数を数える方法と、実際に記事を読んで論調を記していく方法です。

 記事の中にある「キーワード」を含むということはすなわち、その内容について言及しているということにほかなりません。キーワードは「有効性」「有害事象」「専門家機構」を設定し、それぞれを含む記事数を月別に調べました。(各キーワードの定義は本稿末に記載)。

 図1はキーワード別の記事数の時系列推移を示しています。2011年1月から2013年2月までに発行された487の記事中、有効性(赤色)に言及した記事は384(78.9%)あったのに対し、有害事象 (青色)に言及した記事は77(15.8%)でした。

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図1 子宮頸がんワクチン報道における、有効性、有害事象、専門家機構に言及した新聞記事数の推移 (Clin Infect Dis. 2016, in press, doi: 10.1093/cid/ciw647より改変)

 しかし騒動が持ち上がった後の2013年3月から2015年12月までに発行された651の記事では、有効性に言及した記事は340(52.2%)と減少し、有害事象に言及した記事は565(86.8%)と増加しました。

 また、2013年2月までは有効性に言及した記事数が、有害事象に言及した記事数を上回っていましたが、3月以降逆転しています。

 専門家機構 (緑色)について言及した記事は研究期間を通じて少なく、2013年3月以前は10(2.1%)、3月以降で45(6.9%)でした。2013年3月以降と3月以前を比較すると、一面記事の数は2.49倍、有害事象に言及した記事数は5.49倍、専門家機構に言及した記事は3.37倍と増加する一方で、有効性に言及した記事数は0.66倍に減少していました。

 続いて2人の医師がそれぞれ別々に、子宮頸がんワクチンに関する記事を読み、その内容をポジティブ、中立、ネガティブの3つに評価・分類しました。

2013年3月を契機に大変化

 子宮頸がんの予防効果などのベネフィットに着目しているときは、ポジティブに、有害事象などのリスクに着目している場合はネガティブに、リスクとベネフィット双方を含めている場合は中立に分類しました。

 図2はこの評価・分類の時系列推移を表しています。2013年3月以後、赤・ピンク色(ポジティブ)が減り青・薄青色(ネガティブ)が大きく増えています。

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図2 子宮頸がんワクチン報道における新聞の論調推移 (Clin Infect Dis. 2016, in press, doi: 10.1093/cid/ciw647より改変)

 2013年3月以前はネガティブな記事は全体の3.3%にとどまり、ポジティブな記事が59.5%を占めましたが、3月以降は逆転し、ネガティブな記事が53.6%に増加、ポジティブな記事は8.1%に減少しました。ネガティブな記事は12~21倍、ポジティブな記事は1/10~1/5という劇的な変化です。

 以上により、2013年3月のセンセーショナルな報道を契機に子宮頸がんワクチンをめぐる新聞報道の論調が大きくネガティブに変化していったことが分かります。新聞が一般社会におけるリスクの認識を過度に煽り、現在の世論を形成する上で大きな役割を果たしたといっても過言ではないでしょう。

 今回の論文では検証していませんが、おそらくテレビや雑誌といった他のマスメディアでも状況は大きく変わらないものと思います。後編では、この問題を取り巻く背景について、さらに考察を深め論じていきます。

(補)
有効性キーワード:「効果」「有効」「ベネフィット」「予防」

有害事象キーワード:「副反応」「リスク」「副作用」「痙攣(けいれん)」「運動障害」「意識障害」「痛み」「麻痺(まひ)」「疲労」「線維筋痛症」「ギランバレー症候群」「HANS(子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群)」「複合性局所疼痛症候群」

専門家機構キーワード:「WHO(世界保健機構)」「GACVS(ワクチンの安全性に関する諮問委員会)」「EMA(欧州医薬品局)」「CDC(アメリカ疾病予防管理センター)」「小児科学会」「産婦人科学会」



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48075?utm_source%3Dldr%26utm_medium%3Dfeed%26utm_campaign%3Dlink%26utm_content%3Dlink
医療  厚労省、立派な大義名分の裏でせっせと利権作り
新専門医制度でさらに焼け太る福島県立医大

上 昌広
2016.10.11(火) JP Press

 福島県南相馬市の産科医療が崩壊の瀬戸際にある。きっかけは新専門医制度の施行だ。

 新専門医制度とは、初期研修を終えた若手医師を対象とした教育制度のこと。従来、若手医師が自分で病院を選び、修業を積むことができたが、新制度では、内科や産婦人科などの各学会が定めるカリキュラムに従い、所定の病院で研修することが義務づけられる。

 この制度に従わなければ、「専門医」の資格を得ることができない。将来の就職で圧倒的に不利になる。

 各学会のカリキュラムは、日本専門医機構という上部団体がチェックする。この制度を厚生労働省も支援してきた。いや、主導してきた。

半分以上の都道府県で基幹病院が1つだけ

 この制度では、若手医師は基幹病院に就職し、そこから地域の病院に派遣、あるいは斡旋されることになる。

 産婦人科の場合、24の都道府県で基幹病院は大学病院1つだけという現実がある(図1)。福島県の場合、福島県立医大だけだ。このような地域では、地元の大学に「入局」しないと専門医になれないことになる。

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図1 都道府県内に産婦人科が研修できる基幹施設が1つしかない地域(赤で示す)

 南相馬市立総合病院の初期研修医に山本佳奈さんという女性がいる。大学生時代から指導している。

 彼女は大阪府の四天王寺高校から滋賀医科大学に進み、卒業後、被災地の医療に従事したいと希望し、南相馬市立総合病院に就職した。初期研修を終えたら、そのまま南相馬に残り、産科医になりたいと考えている。

 彼女は、このことを南相馬市立総合病院の上司や福島医大の教授に相談した。南相馬市立総合病院の院長、副院長からは「ありがたい。全面的に応援する」との回答を得た。

 一方、福島医大の教授からの回答は驚くべき内容だった。そのままご紹介しよう。

 「南相馬の産婦人科は単独で専攻医はとれない施設です(現在および将来も)。福島県立医大の研修プログラムで派遣されるのであれば可能という解釈でいいと思います。しかし実際は病院に専攻医を派遣することはありません。もしあっても1~3か月以内の短期でしょうね」

 南相馬市立総合病院の指導体制が充実していないから、たとえ入局しても南相馬には行かせないと明言している。

 南相馬市立総合病院の産科医は、福島医大の医局からの派遣だ。指導体制の充実は、福島医大の医局の匙加減ひとつだ。ところが、彼らには、そのつもりはなさそうだ。

南相馬市を最優先すべきなのに・・・

 私は、この教授に呆れ果てた。現在、福島県内の産科体制で南相馬市以上に優先する地域があるのだろうか。

 人口が回復し、出産数も年間200件を超える。高齢化が進み、婦人科診療のニーズも高い。これを1人の産婦人科の医師が担当し、疲弊し切っている。

 この教授は、産婦人科医や小児科医のキャリアアップを支援するための研究をしているらしい。ホームページには、各地でセミナーや相談会をしていることが紹介されている。

 だが、実際にやっていることは、専門医資格を盾に、他府県から福島のためにやって来た女医を脅しているだけだ。そこに若手を育成しようとする理念は見当たらない。

 この教授に限らず、福島医大は震災バブルだ。「地域医療支援」という名前の様々な寄附講座が立ち上がり、医師派遣の見返りに自治体からお金をもらっている。

 また、「腫瘍生体エレクトロニクス」「多能性幹細胞研究」「スポーツ医学」など、およそ震災復興とは無関係の講座も存在する。

 東日本大震災以降、政府は、福島県の復興を願い、多額の税金を投入してきた。国民も、政府を応援してきた。福島医大幹部は、恥ずかしくないのだろうか。

 日本専門医機構や日本産科婦人科学会の幹部は、何を見ているのだろうか。

 山本さんの窮状を見かね、首都圏の公立病院の理事長が救いの手を差し伸べてくれた。傘下の産科・小児科専門病院で研修を受け入れるという。

 南相馬市立総合病院も出向させる。及川友好副院長は「きっちりトレーニングして、一人前になって南相馬に戻ってきてほしい」と言う。

 私は専門医の在り方は見直すべきだと思う。現在、議論が進む専門医制度は「大学教授による、大学教授のため」の制度だ。一種のカルテルと言ってもいい。

 厚労省も問題だ。

新制度で医師不足が深刻化する福島県

 医師の偏在を問題視し、強制的な手段を弄しても、医師を派遣する仕組みを作ろうとしている。ここまではいい。しかし、やっていることは正反対だ。現在、議論されている専門医制度が機能すれば、福島県はますます医師不足になる。

 現在、南相馬市立総合病院に勤務する医師の多くが、他府県出身者だ。震災後、12人の初期研修医が南相馬市立総合病院に就職したが、全員が他府県出身である。

 山本さんのように、医師数が比較的多い西日本や九州、さらに東京から「被災地の役に立ちたい」と願い、南相馬にやって来た人が多い。何人かは、そのまま南相馬に根づいた。結婚して、子供を持った医師もいる。

 山本さんは「専門医資格にはこだわりません。真の実力をつけて、この地域に役立ちたい」という。ただ、ここまで腹が据わっている人物は多くはない。現実的には、初期研修を終えた医師は南相馬を離れることになる。

 新専門医制度が始まれば、県内唯一の基幹施設である福島医大は労せずして、若手医師をリクルートできる。

 地域の病院は医師を派遣してもらうため、頭が上がらなくなる。他府県から医師が流入してこないのだから、いつまで経っても遍在は解消しない。

 本当に、こんなことでいいのだろうか。専門医の質の保証は、実力と実績でやればいい。大学病院も地域の病院も平等に競争すればいい。

 福島県内の連携などと、せこいことを言わず、世界中の病院とネットワークを組めばいい。この制度は、地域住民、および若手医師の視点で全面的に見直すべきだ。


  1. 2016/10/11(火) 05:30:04|
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