Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

10月9日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/466284
国立大病院長、7割が「全般的状況は悪化」
2015年度決算公表、設備投資の減少傾向に拍車

2016年10月9日 (日) 高橋直純(m3.com編集部)

 国立大学附属病院長会議は10月7日、東京都内で記者会見を開き、2015年度 国立大学附属病院決算報告を公表、厳しい経営状況が続き、十分な設備投資ができない状況が続いていると訴えた。医業収支は改善した病院が多いものの、 7割の病院長が1年前より全般的状況が「悪くなっている」と考えている。

 国立大学附属病院(42大学45病院)の2015年度決算概要では、病院収入が1兆216億円、運営費交付金が1114億円、その他収入が200億円で計1兆1529億円。これに対し、支出は人件費が4268億円、医療費が4190億円、その他(物件費等)2188億円、借入金償還費860億円で計1兆1505億円で、24億円の黒字となった。2014年度決算(格定額)は71億円の赤字だったので、95億円の収支改善となった。赤字病院も2014年度の23病院から17病院に減少した。

 一方で、診療機器等取得額は2013年度の658億円から2014年度は485億円、2015年は441億円と減少傾向にある。消費税率8%への増加による補填不足額の増加により、さらに厳しい状況になっている。2015年度も減価償却額783億円に対して、新たな取得額は441億円にとどまり、年々老朽化が進行し、同会議常置委員会委員長の山本修一氏(千葉大学医学部附属病院長)は「必要な設備投資ができない状況がこれ以上続くと、『高度医療の提供』という大学病院の役割が果たせなくなる」と訴える。千葉大学では2015年度、各診療科からは91件約9億円の設備投資のニーズがあったが、最終的に8件約1.7憶円しか実施できなかったと紹介した。

 病院長へのアンケートでは、約7割(30病院)が1年前と比べて全般的状況が「悪くなっている」と回答。そのうちの6割(18病院)が悪化の原因を「設備投資圧力(内部からの設備投資要望)」と指摘している。病院長として抱えている問題点でも、中長期では「施設・設備投資」が最も多かった。

 各病院が行っている経営努力としては、出席した病院長からは「ジェネリック医薬品の推進」が多く挙がった一方で、「高価な新薬が使われるようになって、全体の値引き率は悪くなり苦慮している」という意見もあった。千葉大では光熱水費の節約のため、敷地内の3本の井戸 を掘ったという。2015年の外来棟リニューアルで病院内アメニティモールに調剤薬局が入った影響は、「患者利便性のためという趣旨で、経営に対するプラスはほとんどない」と説明した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/462539
群馬大学病院事件を防ぐ:新規診療許可制度私案
「標準から逸脱した医療の早期発見のために」

2016年10月9日 (日) 小松秀樹(元亀田総合病院副院長)

 群馬大学病院事件の第三者調査委員会は、結論部分で、以下の課題を提示した。
「日常診療の中に標準から逸脱した医療が登場した場合、それを早期に発見し、より安全な医療へと是正する自浄的な取り組みをするにはどうすればよいか」

 筆者はこのための一つの手段として、新規診療許可制度を提案する。すべてを解決するのは不可能だが、多少なりとも現状を改善できれば幸いである。

 新規診療許可制度

 新規診療許可制度は、個別病院内で、申請・審査・許可・実施・結果報告を一連の流れとして制度化するものである。うまく機能すれば、新規診療を開始するにあたって、病院管理者は有害事象の総和が大きくなる前に問題を把握できる。より早期に対応することができる。

 文末に新規診療許可制度私案を示した。この制度は、医療として有用だと認定されたものを導入するための制度であり、医療としての有用性を検証するものではない。

 かつて、ある大学病院で下顎骨が短くなった症例に対し、骨延長術を実施したが、まっすぐな延長器を使用したために失敗した。別の病院で、日本で承認されていない弯曲した延長器を輸入して、自由診療として治療し成功した。これは臨床試験ではない。器具が日本で承認されていないだけであって、具体的患者を治療するための診療である。このような事例をできるだけ簡単に審査しようとするのが、新規診療許可制度である。

 診療が正当なものであるかどうかは、審査制度が整っていると判断される他国の保険制度の判断を援用するものとした。日本で保険診療が認められている診療行為について、実施することが適切であるかどうか、いちいち病院で審査しないのと同じである。

 新規診療許可制度では、日本で保険診療として認められているものも、病院で初めての侵襲を伴う医療は新規診療として申請することを求めた。

 この制度は新しい医療に積極的に取り組んでいる病院のためのものである。基本的姿勢は、有用な医療を実施しやすくするために、医師を支援することである。ルール全体を通して、手続きと判断を分かりやすく、簡便にした。見学や研修、指導者を招いたりするのを病院が積極的に支援する。必要な薬剤や器具の輸入を手助けする。新たな診療を導入するのに、病院が支援することで把握しやすくなり、安全性も高まる。

 取り締まりや抑圧のための制度と見なされると、隠される可能性がある。医師からの反発が強くなり、ルールそのものが葬り去られる可能性がある。このため、医師にメリットをもたらすものとした。

 結果報告を初回だけにしたのは、手続きを簡便にするためである。侵襲の小さい診療について、詳細な報告を何度も求める必要はない。実質を伴わない煩雑な報告は反発を招き形骸化する。そもそも、診療の結果に対し、問題がないかチェックするのは、ルールに書く必要のない病院管理者の権限である。大きいリスクが予想される診療行為については、管理者は制度にこだわらず、自身の権限で、成績を注意深くフォローすればよい。管理者は制度に頼らず、常に病院の活動に問題がないか把握しなければならない。

 新規診療許可制度私案

I 目的
 臨床目的として行われる新規診療について、迅速に審査する。臨床研究の適否を審査するものではない。

II 新規診療技術の分類
1. 世界で初めての診療技術
 十分な準備の下、臨床研究として許可を得て実施する。基礎的実験など膨大な準備が必要である。
2. 外国で臨床試験段階の診療技術
 追試の臨床試験として実施する。臨床研究として許可を得て実施する。
3. 外国で実用化されている診療技術
 審査体制の整っている国、西欧あるいは合衆国の公的医療保険の対象となっているものを対象とする。国内未承認医療機器・医薬品の使用、あるいは、承認されている医療機器・医薬品の保険適応外使用を含む。日本で臨床試験が行われている場合、行われようとしている場合、可能な限り臨床試験に参加させてもらうべく努力する。臨床試験に参加することが不可能な場合、あるいは、日本で臨床試験が実施されていない場合、原則として自由診療として実施する。
4. 日本で評価療養として既に認められている診療技術
 評価療養としての実施を目指す。
5. 保険診療に含まれるが、病院として初めての侵襲を伴う診療技術

III 上記内容の1、2については臨床研究審査委員会で審査する。3、4、5については、別に定める規定に従って組織化された新規診療審査チームの審査を経て院長が許可する。

IV 準備と手続き

1.準備
 1)必要がある場合、準備のために先行施設で当該技術を見学する。あるいは研修を受ける。
 2)資格が設定されている場合、可能なら資格を取る。
 3)動物を使った研修があれば研修を受ける。他にも受けられる研修があれば、可能な限り受ける。
 4)新規医薬品などでは、研修は必ずしも必要はない。

2.申請と許可
 1)以下の内容を簡潔に申請書に記載し、事務局に提出する。
 (1)新規診療の内容:診療行為の名称、機器、医薬品の名称、目的、概要、利点、リスク、先行施設での成績。
 (2)申請に至るまでの準備状況。(新規医薬品では不要)
 (3)指導者の招聘。(新規医薬品では不要)エキスパートの招聘が必要かつ可能な場合、病院が、指導者を招聘し、指導者による診療行為も病院の賠償責任保険の対象とする。
 (4)指導者を招聘しない場合、その理由を記載する。
 (5)患者への説明文書:実施前に患者には、新規診療であること、準備状況に加えて、支払い方式(自由診療、評価療養、保険診療)と予想される自己負担金額について説明する。通常のインフォームド・コンセントにおいて、院内ルールで要求されている項目についても説明し、文書で合意を得る。
 2)事務局が書類を確認する。新規診療分類3については、事務局で、外国で公的医療保険として実施されているかどうかを示す資料を添えて、新規診療審査チームに回付する。抗がん剤などについては、米国では適応疾患が必ずしも固定されていない。当該国の定評ある三次資料の判断に従う。一次資料を集めて、診療の適否を個別に判断することはしない。

3.許可
 新規診療審査チームが審査の上、院長が許可する。院長は、必要があれば専門家の助言を得る。

4.結果報告
 1)初回症例の診療行為実施後、有害事象と治療経過をまとめ事務局、新規診療審査チーム経由で病院長に報告する。
 2)報告には招聘した指導者の役割分担、当院職員の役割分担を記載する。
 3)今後の方針を記載する。
 4)インシデントが発生した場合、通常通り医療安全管理室に報告する。インシデントには生じうる合併症も含める。
 5)初回症例だけの報告を求めているが、これは、医師の負担を軽減するためであり、以後の成績をモニターしないということではない。リスクの大きい医療については、公式、非公式にモニターを継続する。
注:日本の医師は批判受容力に乏しいことがあり、モニター制度に対し、ヒステリックな反応をすることがある。また、内科医は手術の実情を知らないまま、善悪の判断をしたがる可能性がある。病院管理者による非公式モニターは、有用であり、反発も少ない。

5.継続と差し止め
 問題があれば、院長が差し止める。

V 個人輸入
 個人輸入が必要な場合には、別に定める規定に従って必要な書類を薬剤部に提出する。



https://www.m3.com/news/general/466274
柔道整復師:不正請求防止へ カルテなど提出義務化 厚労省、来年度開始
2016年10月9日 (日) 毎日新聞社

 厚生労働省は、柔道整復師(柔整師)の施術に公的医療保険を適用する療養費制度について、不正請求対策を強化する方針を固めた。不正の疑われるケースは接骨院などにカルテなど関連資料の提出を義務付ける。柔整師の急増に伴う接骨院の過当競争で療養費の不正請求が横行しており、厚労省は近く都道府県など関係機関に通知。来年度から開始する。

 柔整師は厚労省が認定する国家資格で、接骨院などで施術する。医療行為はできないが、骨折や脱臼などの施術に対して支払われる療養費は公的医療保険が適用され、利用者は原則3割の自己負担で受けられる。14年度は医療保険から約3800億円が支払われた。

 柔整師は毎年5000人前後が合格し、14年時点で約6万4000人が就業。接骨院などの施術所も約4万5000カ所に上り、1994年の約2万カ所から急増し、過当競争を招いている。その結果、肩や腰など部分を次々と変えて施術し、マッサージ代わりの利用が疑われる「部位転がし」と呼ばれる不正な請求や、白紙の申請書を悪用した架空請求が後を絶たない。

 厚労省はこうした不正請求に早期に対応できるよう、全国健康保険協会(協会けんぽ)などがつくる審査機関「柔道整復審査会」が、「部位転がし」など不正請求が疑われる施術所の診療報酬明細書(レセプト)を抽出して調査し、資料提出や説明を求めることを可能にする。

 架空請求対策としては、施術所に領収書の発行履歴や、通院歴の分かる来院簿やカルテなどの提示を求めることができるようにもする。

 療養費を巡っては、昨年11月には暴力団組員や接骨院経営者らが架空請求し、療養費を1億円近く詐取したとみられる事件が発生するなど、不正請求対策の強化が課題となっていた。【阿部亮介】



http://mainichi.jp/articles/20161009/ddl/k02/010/066000c
青森県
弘前の2病院統合案を提示 津軽圏医療の中核に /青森

毎日新聞2016年10月9日 地方版 青森県

 県は7日、弘前地方の8市町村の医療関係者を弘前市に集めて津軽地域医療構想調整会議を開き、「弘前市立病院と国立機構弘前病院を統合した中核病院を国立弘前病院の敷地に整備する」とした自治体病院の再編案などを提示した。同案に対して特に異論は出ず、関係機関が今後、協議を詰める見通し。

 同会議は県が3月に策定した地域医療構想に基づき、県内6地域ごとに具体的な議論に入るため開かれた。津軽地域は高齢化が進む2025年、急性期対応の病床の多くが不要となり、在宅医療の充実で慢性期の病床も余剰になる一方、回復期の病床が不足すると指摘。この傾向は県全体に共通するという。

 このため県は、津軽地域の5自治体病院の中で弘前市立と国立弘前を統合した中核病院の創設を打ち出した。新病院は国立機構が運営し、救命救急センターを整備し、夜間や休日の救急医療体制の充実を図る。他の黒石病院は回復期、大鰐病院は慢性期、板柳中央病院は回復・慢性期の機能を担うとしている。

 一戸和成・県健康福祉部長は席上、「医療体制構築のため最善の案を提示した」と説明し、中核病院の実現に向けて「県や弘前市、国立機構に、医師を輩出する弘前大付属病院を加えた4者で今後協議を深めたい」と語った。【松山彦蔵】



https://www.m3.com/news/iryoishin/466103?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD161009&dcf_doctor=true&mc.l=182480697
「かかりつけ医以外」定額負担に反対、横倉日医会長
第58回全日本病院学会で講演、「医療者から改革の提案を」

2016年10月8日 (土) 橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会会長の横倉義武氏は、10月8日に熊本市で開催された第58回全日本病院学会の特別講演で、「かかりつけ医以外」を受診した場合に患者から定額負担を求める仕組みの導入に反対、一方、高額療養費の月額上限の見直しは、「負担能力に応じた利用者負担の見直しは重要な視点」として支持する考えを表明した。

 2017年度予算編成の議論が年末に向けて進む中、横倉会長は、「財政制度等審議会が今、声高に言っているのが、患者の定額負担」と説明。民主党政権時代の2011年には、かかりつけ医か否かを問わず、医療機関を受診した場合の「受診時定額負担」が検討されたものの、日医などが患者署名を集めるなどして反対、とん挫した。今回の「かかりつけ医以外」の定額負担は、2008年度診療報酬改定で新設された「後期高齢者診療料」が想起され、医療現場に混乱をもたらすとして、横倉会長は、「また同じことをするのか」と疑問を呈した。同診療料は、75歳以上の高齢者を総合的・継続的に診る目的の包括点数だったが、算定は1施設のみで、「算定は早い者勝ち」となり、医療機関間の競争も一部生じていた。

 さらに「かかりつけ医以外」の定額負担は、日本の医療の特徴である外来のアクセスの良さを阻害し、受診抑制が働く懸念もあると指摘。「この手法は取るべきではない。まずは所得の多寡に応じた負担の在り方を検討すべきではないか、というのが日医の主張だ」(横倉会長)。

 高額療養費の月額上限の見直しは、社会保障審議会などで議論されている(『70歳以上の負担上限見直し、賛否分かれる、医療保険部会』を参照)。「年齢による区分だけでなく、負担能力に応じて利用者負担を見直すことも重要な視点」と考える日医の主張には合致する。ただし、月額上限は、前年の収入で決定するため、定年退職者などには重い負担になるため、「前年まで所得があっても、当該時に所得がない人に対しての配慮は必要」と求めた。

 横倉氏は、消費増税が延期され、医療保険財政が厳しさを増す中、持続可能な社会保障のために、「我々医療側から提案していくことも重要」と強調。その一例として挙げたのが「健康寿命」延伸への取り組み。「医療等ID」を活用し、乳幼児健診、学校健診、事業所・特定健診、後期高齢者健診などを一貫して管理したり、国民の健康にかかわる幅広い問題に対応し、「切れ目のない医療・介護」につなげることなどの重要性を強調、かかりつけ医が果たす役割に期待した。

社会不安の時期こそ医療の充実を

 「経済学的な話を少しさせていただく」と断り、講演を始めた横倉会長は、医療保険財政をめぐる昨今の動きを紹介、2016年度予算編成を振り返るとともに、年末の2017年度予算編成に向けた動向、持続可能な社会保障のための医療側からの提言について解説。

 バブル経済の破たん前は、日本の税収と歳出がほぼ均衡していが、破たん後は両者の差が開き、今は税収不足を国債発行で賄っている。「アベノミクスで多少税収は増えたものの、いまだ開きはある。こうした状況下で、我々は医療を提供している。経済が破たんすれば、医療も危ない。公的国民皆保険をいかに次の世代に継承するかが我々の重要な役割」と横倉会長は述べ、「持続可能な社会保障」という視点の重要性を強調した。

 社会保障財源として想定された消費増税が2018年10月に延期され、「次の(診療報酬と介護報酬の)同時改定の財源は大丈夫かと思っていたが、消費増税に代わる財源の確保を求めていく」(横倉会長)。イギリスのEU離脱など、国際経済の先行きの混乱が予想されるものの、「国民の不安が高まる時期こそ、セーフティネットとしての社会保障、特に国民皆保険を堅持することが必要。将来の安心が、社会の安定に寄与し、経済の発展につながる」という主張を展開していくとした。

社会保障自然増は「年5000億円」

 横倉会長は次に2016年度予算編成を振り返り、2017年予算編成をめぐる議論を紹介。

 政府の「骨太の方針2015」では当初、社会保障費の自然増の伸びを「3年間で、1兆5000億円程度に抑える」とされた。「それまでの3年間の伸びを約1兆5000億円に抑えることができたのは、医療費の適正化等に協力した結果であり、年々進歩する医療技術の高度化などでも医療費は増加するため、あらかじめ抑制すると、国民に必要な医療を提供できなくなる」と問題視していたが、「この懸念が当たってしまった」。2016年度の概算医療費は対前年度比3.8%増で、特に高額薬剤の伸びの影響が大きい(『「オプジーボ緊急的対応、医療保険堅持が目的」日医中川副会長』を参照)。「骨太の方針2015」については、交渉の結果、自然増の額は「目安」であり、「各年度の歳出は一律ではなく、柔軟に対応する」とやや緩和されたという。

 2015年夏の概算要求時点では、社会保障費の自然増は6700億円と推計。安倍政権が掲げていた「賃金2%増」を医療分野で対応するには、医療費ベースで約4000億円、国費ベースで約1000億円が必要。結局は「社会保障充実分」として500億円確保できたため、社会保障費の増加分7200億円と、5000億円の間には、2200億円の開きが生じた。2016年度改定における薬価や材料費の引き下げ、大型門前薬局に対する評価の適正化などで、2200億円を抑制した。

 2017年度の場合、概算要求の段階では、社会保障費の自然増は6400億円。2017年度は診療報酬や介護報酬の改定などはない。1400億円をいかに抑制するかが課題であり、「経済・財政再生計画改革工程表」(2015年12月に経済財政諮問会議が取りまとめ)に盛り込まれた一つが、高額療養費制度の月額上限の見直しだ。もっとも、70歳以上の高齢者のうち「現役並み所得者」は7%弱。これだけでは1400億円の抑制は難しく、「かかりつけ医以外」の定額負担のほか、スイッチOTCの保険償還率の在り方、入院時光熱水負担の見直し、金融資産等を考慮に入れた負担を求める仕組みの医療保険への適用拡大など、制度改正が必要な事項も今年末に向け議論されることになる。

 講演の最後に横倉会長が強調したのは、「持続可能な社会保障」の構築に向け、医療者側から提案していく必要性だ。(1)生涯保健事業の体系化による健康寿命の延伸、(2)糖尿病のハイリスク群への早期介入による等席導入患者の減少、(3)COPD患者への適切な医療介入による在宅酸素療法導入患者の減少、(4)症状や患者特性に応じてコスト意識を持った処方を診療ガイドラインに掲載するなど学会の支援――などを挙げた。



http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03194_01
【対談】
卒前の地域医療教育に
パラダイムシフトを

松本 正俊氏(広島大学医学部 地域医療システム学講座准教授)
高村 昭輝氏(金沢医科大学医学教育学講座・地域医療学講座講師)
週刊医学界新聞 第3194号 2016年10月10日

 医学生が地域医療の現場を理解するために,卒前教育では地域医療実習が必修化されている。その意義は多くの関係者に理解され,各大学でオリジナリティある取り組みが進められている。一方で,その教育方針は大学や地域の受け入れ施設によって濃淡もあるのが実情ではないだろうか。

 世界に目を向けると,北米や豪州の医学教育では,地域基盤型医学教育(Community-based Medical Education;CBME)の潮流に乗って長期臨床実習(Longitudinal Integrated Clerkship;LIC,MEMO)が行われており,日本も参考になる点がありそうだ。そこで本紙では,LICを国内に紹介し,日本でもパイロット的に実践してきた高村氏と,地域医療教育のエビデンスを研究してきた松本氏による対談を企画。これからの日本の地域医療教育の在り方について,国際的な動向とエビデンスを踏まえ提言いただいた。

高村 近年,国内の大学では寄附講座や地域医療学講座を中心に,泊まりがけで地域医療実習を行うなど,大学の外に出て学ぶ取り組みが増えてきています。

松本 そうですね。2007年の「医学教育モデル・コア・カリキュラム」改訂で,卒前の医学教育に地域医療実習が必修化されたことが,大きなターニングポイントとなりました。医学生を泊まりで実習に行かせる発想なんてまだなかったころでしたから。卒後教育についても2004年の臨床研修必修化に伴い,2年目に1か月以上の地域医療研修の実施が義務付けられました。

医師不足解消・偏在是正に地域医療教育は効果があるのか

松本 地域医療教育が重視されるようになった背景には,長年にわたる地域の医師不足や,都市部とへき地における医師偏在の問題があります。そもそも,地域医療実習を行うことでこれらの課題は改善できるのか。実はここ10年ほどで,卒前のへき地医療実習や卒後早期のへき地医療経験が将来の就業地選択にポジティブに働く可能性を示すエビデンスが国際的に出ていて2,3),地域医療教育を推し進める上で注目されています。また,WHOによるへき地への医師供給政策ガイドラインでも,学生を早期から地域に出してプライマリ・ケアを経験させることが明確に打ち出されており4),北米や豪州を中心に,地域の予防やケアを重視したCBMEが行われています。

高村 かつてエビデンスがなかったころの日本の医学教育は,地域医療教育の効果が判然としない中で実施していた時期もありましたね。特に注目するエビデンスは何ですか。

松本 地域への医師就労を促す因子として,二点あります。一つはへき地出身の医師を増やすこと5~7),もう一つは,プライマリ・ケアに関連する総合性の高い医師を養成することです5,8)。特に総合医の養成については,米国の家庭医は非家庭医に比べてへき地勤務率が50%以上高く9),日本でも内科や小児科といった総合性の高い科の医師はへき地勤務率が高いことが知られています10)。総合医を増やすことはエビデンスレベルが高いと言えるのです。

高村 米国では,医療財政がひっ迫するとの危機感や過疎地域での労働力不足から家庭医を養成し,豪州では国の輸出を支える資源がへき地で産出されることから,そこで働く人々を診られる医師としてRural GPを養成しました。こうしたポリティカルな経緯から地域医療教育が始まった面があります。一方で,医学・医療の高度化により,大学病院をはじめとする3次医療機関中心に学ぶ医療環境と,地域住民から広く求められる医療内容とのギャップが医学教育に生じていたことも各国共通の要因と言えます。その解決策としてCBMEが進められ,エビデンスも蓄積されてきたのではないでしょうか。最近では,「学生は地域において,大学病院のローテーション研修とは違った“医師の本質”を学んでいる」という注目すべきエビデンス1,11)も出ています。

地域での長期臨床実習で多診療科を横断的に学ぶ

松本 広島大では,地域枠入試の開始に引き続き,2010年から地域医療実習を始め,現在は1学年120人全員が,1週間の実習に行っています。次のステップとしては,高村先生が紹介されているLICが望ましいと感じています。

 私は以前,地域医療教育で有名な豪州のフリンダース大を視察する機会があり,とても進んだ地域医療を実践していると感じました。同大に教員として在籍していた高村先生からご覧になって,どのような点が特徴的ですか。

高村 低学年から公衆衛生の視点を持ち,地域の課題に取り組むカリキュラムがあることです。地域のシステムを把握して医療ニーズを分析し,地域診断ができるところまでを学習目標に,学生は地域に出ています。日本もearly exposureとして,地域の医療機関や介護施設へ実習に行くことはありますが,地域に「出る」ところでとどまっているのが実情です。

松本 低学年から「プライマリ・ヘルスケア」に力点を置いた教育を受けることは,大切な経験だと思います。そして,フリンダース大の目玉は何と言っても,高学年次に1年間行うLICでしょうか。

高村 学生が地域に住み込み,現地の総合診療医と一緒にプライマリ・ケアの現場で学ぶという長期臨床実習で,フリンダース大では1997年から行われています。

松本 実際,長期臨床実習を経験した学生は,実習後のクリニカルパフォーマンスが高いという結果1,12)も得られているそうですね。どのようなカリキュラムで行われているのでしょう。

高村 豪州の卒前教育は,2つの課程が並行してあります。一つはGraduate Entry Courseと言われる4年課程のメディカルスクール。そしてもう一つは高校から直接入学する6年課程です。両方のコースを持つフリンダース大では,最後の2学年が臨床実習の期間に該当し,この間に,大学病院で診療科をローテーションするか,1年間へき地の総合診療医のもとで学ぶかを選択できるようになっています。

松本 1年もの長期にわたり,地域のプライマリ・ケアの現場で過ごすメリットは何ですか。

高村 多診療科の疾患をランダムに診療することで,問題を統合して理解する能力が身につくことです。例えば大学病院のローテーションで,最初の科が循環器,1年後に回った科が外科だった場合,その学生が循環器の知識を維持しているかは不透明です。一方で,へき地の総合診療科であれば,1人目が心不全患者,2人目が糖尿病患者,3人目が妊婦さんで4人目が子ども……と,患者さんがランダム化されてやって来る(図)。

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図 地域医療教育は多診療科同時並行に

松本 すると,さまざまな疾患をその地域ならではの頻度で診られる。大学病院で診る疾患と地域で起きている疾患の頻度分布は大きく違うはずですね。

高村 ええ。いわゆる事前確率を正しく認識できるようになります。それには,commonな疾患がcommonな頻度でやってくる環境で経験を積むしかありません。もちろん,地域では診られないまれな疾患を経験できるという大学病院で学ぶ意義は否定しません。すみ分けを示した上で,学生に両方経験させることは,医療の全体像を把握することにつながります。

 長期間にわたり継続的(Longitudinal)に,そして診療科を横断する包括的(Integrated)な診療で患者を診るLICは,日本の卒前教育においても大いに参考になるはずです。

実習を支えるリソースの充実は不可欠

松本 日本にLICを導入するとなると,心配されるのが臨床実習の質の担保です。1施設の中で診療科を回る大学病院では,ある程度均等化されます。しかし,地域の病院1か所に数か月行くとなると,施設によって差が出てしまうのではないでしょうか。まして,長期になればなるほどその差は大きく開いてしまう懸念がある。豪州では,受け入れ側はどのような態勢で長期の実習を可能にしているのですか。

高村 豪州はへき地の医療人材不足を大きな課題ととらえ,国策として手厚い予算を与えてきました。へき地にミニキャンパスを作るなど,大型の設備投資に国も関与しています。

松本 フリンダース大もへき地にミニキャンパスを7~8か所持っており,大規模な地域医療教育を行っていますね。教員の処遇はどうなっているのでしょう。

高村 教員は正規に雇用されるため,教育に対する熱意やアカデミックな姿勢は担保できていると言えます。また,年に2~3回はFaculty Developmentとして指導者の講習会があり,知識・技能の向上を図っている。教えることに対するインセンティブもきちんと用意されています。

松本 どのような内容ですか。

高村 学生から評価され,それと照らし合わせて報酬がつきます。教員は予算を獲得するため,へき地にいながらも臨床研究を行い,論文を書いて発表するというアカデミックな活動を一生懸命頑張っている。彼らにとってそこが一番大変なところだという話も聞いたことがあります。

松本 重要なポイントですね。国や大学が,地域医療教育の重要性をよく認識しているからこそできる取り組みだと思います。

■国際認証受審に向けた,「臨床実習72週以上」を追い風に

松本 日本の現状に目を向けると,おそらく多くの大学は,実習の受け入れを関連病院に依頼し,学生を地域に出しているのではないでしょうか。

高村 ええ。期間としては,長いところでは8週行う大学もありますが,短いところは1日。多くは1週間程度だと思います。

松本 豪州のような6か月から1年にわたる長期の実習を日本で行うには,教育インフラの整備が追い付かず,すぐには難しいというのが実感です。

 ただ,過渡期の日本も,臨床実習を大きく変える動きがあります。それは,医学部国際認証の受審に向け,2023年度までに臨床実習の期間を,従来の50週程度から72週以上と大幅に増やさなければならないことです。長期化により,大学病院がこれまで受け入れていたキャパシティを越えてしまう可能性が高いため,地域に学生を出すきっかけになると思います。

高村 そうですね。国際認証という“黒船”によって臨床実習を「増やせ,増やせ」となっている今はまさにチャンス。地域医療教育の推進への追い風になるでしょう。

松本 いざ地域の先生方に長期の実習をお願いするとなると,受け入れ側の負担が大きくなるのではないかと心配しています。この点についてはいかがですか。

高村 そこで私は,国際認証でも推奨されている診療参加型の臨床実習を積極的に促すべきだと考えています。

 参加型の形で長期間学生を受け入れれば,地域の医療機関にとってはかえってプラスの効果が期待できる。プライマリ・ケアの現場に学生が長く在籍することで,いずれ医療スタッフとして戦力になるというエビデンスも出ているからです13)。

 実際に私は三重大在籍時に,1人の学生を4か月間実習に行かせた経験があります。学生には“ほぼ主治医”として参加型で診療に当たってもらいました。長期間受け入れてもらったその施設の方は「学生が毎週入れ替わりで来るより,3~4か月と長くいたほうが助かる」と言うのです14)。

松本 確かに,1週間のような短期では,オリエンテーションを毎週のようにしなければなりませんね。

高村 あちこち現場を見せたい施設側は,調整に苦労するそうです。他のスタッフも,顔を覚えないうちに学生が代わるため,交流も深まらない。

松本 前職の三重大では4か月実施したということですが,長期臨床実習の期間については具体的にどれくらいが適切だと考えますか。

高村 実はそれを示すエビデンスはあまり多くありません。それでも,1か月では効果は不十分15)だが,3~6か月いると広く症例が学べ,診療所の経営面としても戦力になる13,16,17)といった論文が出ています。

松本 それは興味深いですね。

高村 ええ。これは,短期間に高頻度で学生を受け入れている施設は今後,長期受け入れに転換することで負担が減る可能性があることを示しています。学生も長く滞在したほうが経験を積め,後半には戦力として活躍できる場面が出てくる。今の日本の教育環境を踏まえると,実現可能で,なおかつ教育効果も期待できるのは3か月前後と仮定してもいいかもしれません。

松本 長期の臨床実習にいきなり1学年全員を行かせるのは難しいため,まずは地域枠で入学した学生や希望者を優先するのが現実的だと思っています。仮に広島大の1学年の学生120人全員が3か月間の長期実習に行くとなると,年間4ターム×30人。1つの病院に2~3人行くとして,県内に10か所ほど受け入れ先を確保しないといけない。これはかなり大変ですが不可能なレベルではありません。ただ医学部が複数あるような都市部だと極めて困難でしょうね。いずれにしても「3か月」は多くの大学が参考にできそうな期間です。

高村 今後日本の卒前教育において地域医療教育の意義と効果を高めるには,第一段階として学生に地域のプライマリ・ケアの現場を経験させ,第二段階では実習期間の長期化を図る。そして第三段階として,実習を診療参加型にして3か月程度行うことが,各種エビデンスに基づいた一つの目安になるのではないでしょうか。

住民・行政が主体となって医師を育てる教育の実現に期待

高村 日本の地域医療教育は今後,学生が地域に出向くだけで終わるのではなく,地域住民を巻き込むような取り組みに発展していく必要があると思っています。

松本 そうですね。フリンダース大の取り組みを見て感心したのは,ミニキャンパスの置かれた町の町長や地元の有力者が,学生の地域医療教育にいかにコミットするかを熱心に考えていたことです。地方にキャンパスをつくることは雇用を生むため,企業誘致と同じ効果があります。住民や行政の協力を得ることは,大学にとっても教育の質の担保につながる。大学と地域のwin/winの関係から双方が活性化してきたのは,20年にわたり地道にLICを行ってきたことの結果です。

高村 自分たちの地域に必要な医師は,自分たちで育てなければならない。そのような動機付けを住民や行政に与えることは,これからの日本にも必要な観点ですね。地域住民は「患者」としてだけでなく,自分たちの地域の実情を教える「教育者」として積極的に医学教育にかかわっていく。そんな教育のパラダイムシフトが,近い将来日本に起こることを期待しています。


MEMO 長期臨床実習(Longitudinal Integrated Clerkship;LIC)
 地域のプライマリ・ケアの現場で行われるCBMEが世界的に重視される流れの中,1970年代に米ミネソタ大で始まった実習方法。「継続性」と「包括性」をキーワードに,医学生が①患者さんの全ての治療経過を通して包括的な医療に参加すること,②患者さんにかかわる全ての医療者との関係を継続的に学んでいくこと,③さまざまな専門分野を同時に経験することを通して,基本的診療能力を身につけていくことが臨床教育の核と位置付けられている。LICの実習を経験した学生は,commonな愁訴・疾患の経験数増,基本的な臨床能力の向上の他,患者とのコミュニケーションスキルの向上,ケアへの熱意の高まりといった傾向が見られ,学業成績自体も向上するという研究結果がある1)。北米と豪州を中心に,現在,世界の50以上の医学部がLICを採用している。

(了)

参考文献
1)Walters L, et al. Med Educ. 2012;46(11):1028-41. [PMID 23078680]
2)Worley P, et al. Med J Aust. 2008;188(3):177-8. [PMID:18241180]
3)Matsumoto M, et al. Soc Sci Med. 2010;71(4):667-71. [PMID:20542362]
4)WHO. Increasing access to health workers in remote and rural areas through improved retention:Global policy recommendations. Geneva:2010.
5)Brooks RG, et al. Acad Med. 2002;77(8):790-8. [PMID:12176692]
6)Dunbabin JS, et al. Rural Remote Health. 2003;3(1):212. [PMID 15877502]
7)Matsumoto M, et al. Health Policy. 2008;87(2):194-202. [PMID:18243398]
8)Seifer SD, et al. JAMA. 1995;274(9):685-91.[PMID:7650819]
9)Ricketts TC. Rural Health in the United States. Oxford University Press;1999. p38-100.
10)Inoue K, et al. Rural Remote Health. 2009;9(2):1070. [PMID:19463042]
11)Hirsh D, et al. Acad Med. 2012;87(5):643-50. [PMID:22450189]
12)Worley P, et al. BMJ. 2004;328(7433):207-9. [PMID 14739189]
13)Worley PS, et al. Rural Remote Health. 2001;1(1):83. [PMID:15869365]
14)Takamura A, et al. Educ Prim Care. 2015;26(2):122-6. [PMID:25898305]
15)Gruppen LD, et al. Acad Med. 1993;68(9):674-80. [PMID:8397632]
16)Walters L, et al. Med Educ. 2009;43(3):268-73. [PMID:19250354]
17)Hudson JN, et al. Rural Remote Health. 2012;12(2):1951. [PMID:22519409]

まつもと・まさとし氏
1996年広島大医学部卒後,天理よろづ相談所病院にて初期研修。98年より自治医大(地域医療学)にて後期研修。99年岐阜県揖斐郡藤橋村(現・揖斐川町)の藤橋村国民健康保険直営診療所所長。2005年英オックスフォード大人類学大学院修了。自治医大地域医療学センター助手,講師を経て,10年より現職。地域医療教育のエビデンスを研究し,発信している。「大都市もへき地もある広島県で,科学的根拠に基づく地域医療教育を実践したいです」。

たかむら・あきてる氏
1998年富山医薬大医学部卒後,同年石川勤労者医療協会城北病院総合内科。2000年より同院小児科。08年豪フリンダース大教育学修士(臨床医学教育)修了。09年より同大のRural Clinical Schoolに教員として勤務後,12年三重大医学部伊賀地域医療学講座講師。三重では「地域基盤型教育」の実現に携わる。14年より現職。「石川県内の医師不足の地域を学生が支えられるような,長期臨床実習の形成をめざします」。



http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03194_04
ジェネラリストのための極意
週刊医学界新聞 第3194号 2016年10月10日

 獨協医大病院総合診療科(以下,獨協総診)による勉強会「ジェネラリストのための極意(通称G7+)」の第1回が8月28日に東京都内で開催された。

 「G7+」とは,「General(総合)」「獨協総診が策定した病院総合医の7つのコンピテンシー」「+:プラスアルファ」の略。7つのコンピテンシーは,❶臨床知識,❷ベッドサイドの思考力(診断推論と治療推論),❸ベッドサイドの技術(病歴,身体診察,検査手技),❹インプットのスキル(ITとチームワークを駆使した網羅的情報収集力),❺アウトプットのスキル(執筆,回診,カンファレンス),❻後輩への教育力,❼医学周辺の知識やスキルから成る。

臨床医のコンピテンシーを育てるHow to

 第1回目となる今回の勉強会では,始めに ❶臨床知識のアップデートと ❹インプットのスキルを複合した「スタッフの生涯学習のためのIT活用方法」が森永康平氏(獨協総診)から解説された。多くの医師が情報収集のためにメーリングリストやEvernote,Dropboxなどのクラウドシステムを活用しているが,ただ“情報を収集・蓄積すること”が目的になってはいけないと氏は指摘した。自ら学習したものこそが血肉となることは間違いなく,必要な情報をすぐ引き出せるようにするためには,自分の頭の中で整理し,アウトプットの取っ掛かりをつくっておくことが必要だと話した。

 ❺アウトプットのスキルの1つである「医師によるケースレポートの作成指導」のセッションは廣澤孝信氏(獨協総診)が担当した。症例報告の概要から,Clinical pictureの考え方・作り方,NEJMのClinical pictureへの投稿方法まで,実践的な解説がなされた。氏はケースレポートを書くことを意識しながら症例を診たり,写真などの記録を残したりすることで,臨床における洞察力の向上も得られると,ケースレポート作成の意義を語った。

 ❻後輩への教育力は「教育力を鍛える秘訣」と題して志水太郎氏と原田拓氏(共に獨協総診)が紹介した。臨床力,教育力,研究・アウトプット力の向上はキャリアのステップアップにつながる。しかし経験年数が増えるにつれ,後輩の面倒をみたり組織の管理を行ったりする時間が増え,医師として患者を直接診察できる時間が減っていくというジレンマもある。志水氏は,自分の臨床を担保しながら教育をしていくには,教育と臨床を同時に行うベッドサイドティーチングが最適だという持論を示した。原田氏は「効果的学習のFAIR原則」を基に,ベッドサイドティーチングにおける効果的学習を実現するための方法を詳細に解説。「後輩指導医が研修医などを指導する現場を見て問題を感じたとき,指導医をどのように教育すべきか」という参加者からの質問に対しては,志水氏が自身の経験や自著『愛され指導医になろうぜ』(日本医事新報社)に基づいた3つの方法を紹介した。参加者からは,「ベッドサイドティーチングの重要性を感じた」「褒め上手になることから実践していきたい」などと実践に生かす意欲が聞かれた。次回第2回では,カンファレンスの進め方,フィジカル回診の具体的方法,ケースレポート作成,総合診療医のキャリアなどについて取り扱う予定だという(獨協総診のホームページ)。


  1. 2016/10/10(月) 05:55:30|
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