Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

9月23日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/461454
シリーズ: 医師不足への処方せん
医科歯科、東大、京大の「三強」不変、2016年度中間マッチング
「1位希望人数」が20人以上増減した大学も

2016年9月23日 (金) 橋本佳子(m3.com編集長)

 2016年度医師臨床研修マッチングの「中間公表」の結果が9月23日に公表された。防衛医科大学と今年4月に医学部を新設した東北医科薬科大学を除く、全国79の大学病院本院を「1位希望」として登録した人数でランキングすると、1位東京医科歯科大学、2位東京大学、3位京都大学で、2015年度の「中間公表」と全く変わらなかった(2015年度のデータは、『不動の医科歯科、東大人気、2015年度中間マッチング』を参照)。

 中間公表の時点で、定員数に対する「1位希望人数」の割合(定員充足率)が100%を超えたのは、2015年度は4大学だったが、2016年度は3大学。昨年に続き、5位の大阪医科大学(120.0%)、6位の順天堂大学(111.3%)の2大学のほか、14位の昭和大学(107.7%)も100%を超えた。

 上位20位の中で、2015年度と比べて、大幅に順位を上げたのは、奈良県立医科大学(16位⇒8位)、東京女子医科大学(48位⇒12位)、昭和大学(39位⇒14位)、自治医科大学(34位⇒14位)、香川大学(30位⇒17位)、宮崎大学(39位⇒17位)など。

 一方、下位を見ると、山口大学、弘前大学、秋田大学、群馬大学、琉球大学など、地方の国立大学が目立つ。

 「1位希望人数」が、2015年度と比べて20人以上増えたのは、12位の東京女子医科大学(25人⇒48人)のみ。一方、20人以上減ったのは、16位の九州大学(61人⇒41人)、45位の北里大学(61人⇒26人)、47位の久留米大学(51人⇒25人)の3大学。

 なお、今年4月に医学部を新設した東北医科薬科大学は、募集定員5人に対し、「1位希望人数」は1人だった。

 医師臨床研修マッチングの最終結果の公表は、10月20日に公表予定。

表1 医師臨床研修マッチングの大学病院(本院)ランキング
医学部を持つ医科大学・医科大学(東北医科薬科大学、防衛医科大学を除く)、計79の本院分集計。「1位希望人数」が多い順にランキング。
同数の場合は、「充足率」が高い順に掲載。2016年順位のカッコ内の矢印は、2015年との比較。
092301.jpg
092302.jpg
092303.jpg



https://www.m3.com/news/general/461461
10倍のインスリン投与、80代女性死亡 長崎の病院
2016年9月23日 (金) 朝日新聞

 国立病院機構長崎川棚医療センター(長崎県川棚町)は23日、80代の女性患者に糖尿病治療薬のインスリンを必要量の10倍投与する医療ミスがあったと発表した。女性はその後死亡。解剖ができておらず因果関係は不明だが、病院側は女性が回復傾向にあったとして、過剰投与と死亡に「なんらかの影響があった」とみている。病院側はミスについて県警に届け出た。

 医療センターによると、女性は糖尿病などを患い、8月8日に入院。インスリンを含む栄養補給の点滴を受けていた。8月30日夜に、20代の看護師が医師の指示の10倍の量のインスリンを点滴で投与。女性は点滴から約8時間後の31日朝に死亡が確認された。看護師は専用の注射器を使わず、センターの手順で定められている複数人でのチェックも怠っていた。看護師は点滴を通してのインスリン投与は初めてだったが「自分一人でもできると思った」と話しているという。また、女性の血糖値を測定せずに架空の数値をカルテに記録していたことも判明。看護師は「女性の状態が安定していたので異状はないと思って測定しなかった」と話しているという。

 医療センターは、医療事故調査・支援センターに報告し、第三者による検証を行うという。



https://www.m3.com/news/general/461466
点滴袋の異常に気づき、病院が通報 横浜の殺人事件
2016年9月24日 (土) 朝日新聞

 横浜市神奈川区大口通の大口病院(高橋洋一院長)で20日、入院中の高齢の男性患者が死亡し、司法解剖の結果、死因が中毒死だったことが神奈川県警の調べでわかった。県警は23日、何者かが点滴から異物を体内に入れた殺人事件と断定し、特別捜査本部を神奈川署に設置した。

 捜査1課によると、殺害されたのは横浜市港北区新吉田東3丁目の無職八巻信雄さん(88)。4階の一室に14日から入院していた。

 19日午後10時ごろ、30代の女性看護師が八巻さんに栄養補給のための点滴を実施。20日午前4時ごろ、心拍数が低下していることにこの看護師がアラームで気づき、同日午前4時55分に死亡が確認された。その後、点滴袋の異常にこの看護師が気づき、病院が警察に通報したという。

 当時、8人部屋に計6人が入院しており、八巻さんは寝たきりの状態だった。

 翌21日に司法解剖した結果、八巻さんの体内からは異物が検出されたという。18日以降、同じ4階では八巻さんのほか、90代の女性、80代の2人の男性が亡くなっており、県警はいずれも司法解剖を実施。状況に不審な点がないかなど、慎重に調べている。

 大口病院はJR横浜線の大口駅から徒歩3分の住宅街にある。地下1階地上5階建てで、当時は52人の入院患者と6人のスタッフがいた。4階には18人の患者がおり、当直の看護師2人が担当。夜間は警備員が常駐し、関係者以外は出入りができないという。

 ウェブサイトによると、特定医療法人財団「慈啓会」が運営。診療科目は内科、小児科、整形外科、リハビリテーション科の四つ。急性期から症状が落ち着いてくる「亜急性期」や、長期療養が必要な「慢性期」の入院患者を主に受け入れているといい、病床数は85床。

 4階の一室に90代の母親が入院しているという横浜市都筑区の女性(58)は、21日昼にお見舞いに訪ねた際に、捜査員が病院内の廊下やナースステーションで指紋採取のような作業をしているのを見た。看護師に「何かあったんですか」と尋ねたが、「分かりません」と言われたという。

 面会時間は通常は午後8時まで。だが21日午後7時ごろに再び面会に行くと、「面会謝絶」の貼り紙があり、面会できなかったという。女性は「ショックです。病院側には何があったのか明らかにして欲しい」と話した。

 70代半ばの両親が約3年前から入院しているという横浜市泉区の40代女性は、「びっくりした。うちの父も数カ月前から点滴を打っている」と話した。

 八巻さんの近所の人によると、八巻さんは体調が悪く、家族がタクシーを呼んで病院に通う姿をたびたび見かけた。妻を亡くし、近くの息子の家に身を寄せていたようだという。

■病院内で発生した異物混入などによる殺人・殺人未遂事件

〈1991年〉神奈川県伊勢原市の東海大医学部付属病院で、主治医の元助手が、末期がんだった男性患者(当時58)に塩化カリウムを注射して死亡させたとして殺人の疑いで逮捕。裁判で「安楽死」が争点となったが認められず、元助手は執行猶予つきの有罪判決

〈2001年〉仙台市のクリニックで、准看護師の男が入院していた小学6年生の少女の点滴に筋弛緩(しかん)剤を混入して殺害しようとした殺人未遂の疑いで逮捕。男は殺人罪などで無期懲役の有罪判決

〈2008年〉京都市の病院に入院していた五女(当時1)の点滴に、古くなったスポーツドリンクを注入したとして、京都府警が母親を殺人未遂の疑いで逮捕。06年には入院中の四女(当時8カ月)の点滴にも水道水を注入して殺害していたとして殺人容疑で再逮捕。母親は傷害致死罪などで懲役10年の有罪判決



https://www.m3.com/news/iryoishin/461460
小松医師、厚労省・千葉県の職員2人を提訴
公務員の「言論抑圧」を問題視、個人責任を問う

2016年9月23日 (金) 橋本佳子(m3.com編集長)

 元亀田総合病院(千葉県鴨川市)副院長で、『医療崩壊』(朝日新聞社、2006年に上梓)の著者として知られる小松秀樹氏は9月23日、厚生労働省の幹部職員と千葉県の医系技官の2人に対し、不法行為に関する25万4000円の損害賠償請求を求めて東京地裁に提訴した。

 小松氏が亀田総合病院に勤務していた時代、補助金支給をめぐる厚労省や千葉県の対応などを問題視していた小松氏の言論を封じるために、同病院を経営する医療法人鉄薫会の経営者に対して、小松氏を懲戒解雇処分するよう求めたことが提訴理由。小松氏は2015年9月25日付で懲戒解雇されている(『小松氏に懲戒解雇処分、「到底納得できず」』を参照)。

 懲戒解雇処分についても無効であるとして、「未払給与相当額」など計1957万3335円を求め、医療法人鉄薫会と関連の社会福祉法人太陽会を9月13日付で千葉地裁館山支部に提訴している。

 小松氏は、「行政のチェック機能を果たし、行政の健全性を保つためには、言論の自由が保障されていなければならない」と提訴理由を説明。

 代理人を務める弁護士の井上清成氏も、小松氏の言論を封じ締めようとした厚労省と千葉県の職員の行為は、「職務上としては、絶対としてあり得ない」と指摘。公務員の職務に関連した行為の責任は、国家賠償法により国などが負うが、今回の場合、被告2人の行為は職務とは関係がなく、個人の法的責任を問えると判断したという。損害賠償請求額の内訳は、慰謝料20万円、弁護士費用5万4000円。

 小松氏は2014年4月から3年間の予定で、医療法人鉄薫会および社会福祉法人太陽会と契約していたため、懲戒解雇処分から2016年3月末までの「未払給与相当額」を鉄薫会に、「未払顧問料相当額」を太陽会に求めたのが、もう一つの提訴だ。労働契約法上、懲戒解雇処分をする場合、使用者は、1月前の予告、あるいは1カ月分の給与の支払い、あるいは労働基準監督署の「解雇予告除外認定」を受ける必要がある。小松氏の場合、これらの要件を満たさずに懲戒解雇処分された。処分後に1カ月分の給与を受け取っているため、「未払給与相当額」は5カ月分。1957万3335円の内訳は、「未払給与」と「未払顧問料」の相当額967万3335円、慰謝料800万円、弁護士費用190万円。

 2人の公務員を訴えた裁判の第1回口頭弁論の期日は未定。民事裁判の場合、原告、被告ともに尋問が行われるのが一般的。法廷での証言を含め、今後の展開が注目される。なお、小松氏は今回の補助金支給をめぐる問題で2015年11月、千葉県の職員2人を、公務員職権濫用容疑などで、千葉地検に告訴・告発している(『千葉県の職員2人を、公務員職権濫用容疑などで』を参照)。告訴・告発は、受理されたものの、現時点で結論は出ていない。

 小松氏が「言論抑圧」を受けたとするのは、2013年度から2015年度までの3年間にわたり、亀田総合病院内の「地域医療学講座」に支払われた、地域医療再生臨時特例交付金をめぐる動き(『亀田総合病院、『医療崩壊』小松氏の言論抑制』を参照)。3年間で計5400万円交付される予定だった。2013年度1137万7000円、2014年度1800万円、2015年度2462万3000円という内訳だ。

 ところが2015年5月に千葉県から、2014年度分については、2015年3月30日付で1800万円の交付決定通知が出ていたにもかかわらず1500万円に減額するほか、2015年度の補助は打ち切ると通告された。これを問題視した小松氏が、ネット上で実名を挙げて問題提起したほか、調査依頼と厳正対処を求める文書原案を作成し、知り合いの厚労官僚に相談をしていた。小松氏は、この動きを封じようとしたのが、厚労省と千葉県の職員であり、文書原案が千葉県職員から医療法人鉄薫会理事長に送付される事態となり、ひいては懲戒解雇処分につながったと見る。

 井上弁護士は、「内部通報や情報公開請求を行った人に関して、関係者に通報すること自体が問題になる」などと述べ、2人の公務員の責任を問う構えだ。



http://medg.jp/mt/?p=7016
Vol.212 新専門医制度は搾取する
小松秀樹
2016年9月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●教育は職業訓練の機会を搾取する

教育制度は、被教育者を社会に参入させやすくするものでなければならない。教育制度自体が参入障壁になったのでは、社会の害にしかならない。参入、転出を容易にできるようにしなければ公正さを担保できない。社会に貢献できるようになるまでの期間は、可能な限り短い方がよい。そのためには、教育内容の情報量を少なくする努力を怠ってはならない。ネットで調べたらすぐ出てくる情報を、覚えさせる必要はない。自立した学習能力を持たせることが教育の最大の課題である。権力的で無能な教育者は、被教育者に隷属を強い、教育内容を増やし、教育期間を長くしたがる。
インドの世界的IT企業Zohoのシュリダー・ベンブCEOは、貧しい高卒の少年を教育して、短期間で指導的技術者に育成することに、自分と会社の存在意義を見出している。
われわれがそのひとの人生をかえることのできるような、そんなひとを採用するのですよ。スタンフォード卒の人材を採ってもね、彼らはまたほかの仕事を見つけますから。Zohoにとってそういう人材はあまり価値がない。でもわれわれが採用するような人材にとって、私たちの存在は意味のある大きな変化をつくり出すことができるんです。
Zohoでは採用時に成績は見ませんし、学位も考慮しません。学歴不問です。今も高卒の人材を採用して、自社でトレーニングするんですよ
適性テストを実施し、場合によっては面接もして採用した人を「Zohoユニバーシティ プログラム」に送り込みます。社内で「Zoho ユニバーシティ」と呼んでいるんですが、そこで採用者を一年半トレーニングする。インドでは、専門や学校にもよりますが、17、18で高校を卒業しますから、その人達が入ってくれます。
(「私が博士号を取っていなければ、会社は今の10倍になっていたでしょうね」
http://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m000889.html)

教育システムは人々から、職業的には必要ない人々からさえも金を巻き上げている。
もし18歳から22や23歳の若者を大学に入れてしまったら、経済的価値を生んだかもしれない貴重な4年間はただ失われて経済は悪化しかねない。(「人は学歴を欲しがり、教育は職業訓練の機会を搾取する」
http://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m000891.html)

故宇沢弘文氏は、世界的経済学者であるが、優れた教育者としても知られていた。彼は日本の大学院制度の在学期間の長さを問題視していた。

現行の大学院制度は、前期2年の修士課程と、その上に後期3年の博士課程と、合わせて5年を必要最低限の在学期間としていますが、これはまったく非常識極まりない長期間で、世界にその例はありません。
大学院の学生として、経済的な裏付けもないまま、苦しい勉学と研究に従事し、しかも将来の職業的保障もまったくない不安定な状態で、大学を卒業してから五年間という長い年月を若者たちに強制するという、この新制大学院の制度ほど非人間的なものはないように思われます。(『日本の教育を考える』岩波新書)

日本専門医機構は新専門医制度をどう位置付けていたのか。池田康夫前理事長は、従来の専門医制度について、以下のように総括していた。

各学会が独自で制度設計をして専門医を認定してきた
学会専門医制度が乱立し、専門医の質の低下への懸念が生じている

さらに、専門医制度改革の基本理念を次のように説明していた。

「公の資格」として、国民に広く認知されて評価される制度
「プロフェッショナル集団としての医師」が誇りと責任を持ち、患者の視点に立ち自律的に運営する制度

日本専門医機構は、日本医師会、日本医学会、全国医学部長病院長会議などからなる第三者機関との位置づけだった。機構が専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を行う。学会や行政から独立した第三者とはいうものの、実質的に厚労省が仕切っているというのが関係者での共通認識だった。「公の資格」は官の支配する資格と理解されるが、質の高さを保障するものではない。自律、プロフェッショナルオートノミーを高らかに主張する団体が、実質的に厚労省によって設立され、支配された。

日本専門医機構の枠組みに対し、多くの学会が猛反発し、有力な学会が社員として制度設計や運営に参加することになった。そもそも、プログラムは学会が作成することになっていた。学会は専門領域別大学教授連合ともいえるものなので、全国医学部長病院長会議と基本的な利害が一致する。かくして、新専門医制度は厚労省と大学教授の思惑が色濃く反映されるものになった。厚労省は新専門医制度を、病院と医師を支配する道具と考え、大学教授は支配下の医師を増やそうとした。いずれも、現場の実情や人権を配慮することがなかった。実施すると結果がどうなるのか、想像する責任感がなかった。多様な専門家を効率的に育成し、より長期間社会で働いてもらおうという基本が無視された。必然的に、医師に長期間の隷属を強いる搾取の体系となった。

新専門医制度は基本領域とサブスペシャルティ領域の二段階にするとされた。基本領域の専門医資格を取得したのちに、サブスペシャルティ領域の専門医を取得する。また、専門医の養成は単独の大学や病院ではなく、グループで実施される。初期研修を終えた医師を専攻医として基幹大学、基幹病院が採用し、連携病院と共に養成する。連携病院に専攻医が派遣される。従来の医局と同様、若い医師を長期間人事的に支配できる。

新専門医制度は、2017年4月、開始予定だったが、厚労省と大学の思惑に対するブレーキがなかったため、矛盾が大きくなった。医師の偏在を助長するとして自治体関係者から反対された。医師の給与や身分保障が不十分であること、出産、育児に対する配慮がなかったことから、若い医師、とくに、女性医師に嫌われた。四面楚歌の中、2016年6月、日本専門医機構は、2017年度の全面実施断念に追い込まれた。

●画一化は医療水準を下げる

厚労省、とくに医系技官は、あらゆる局面で、現場に全国一律のやり方を強いる。強引に、現実離れした規範を押し付ける。新専門医制度は、若い世代のすべての医師の行動を、何年にもわたって画一的様式に縛り付ける。若い医師の貴重な時間を奪い、成長のチャンスを削ぐ。

医師は医師免許取得後、2年間の初期研修を義務付けられている。この2年間、診療科をローテイトしながら研修する。新専門医制度では、内科専門医を取得するためには、初期研修終了後、3年間の研修が義務付けられることになっていた。サブスペシャルティに進むのはこの後になる。医師としての基本を学び、内科専門医としての経験と知識を修得した上で、サブスペシャリティの訓練に進むべきだという幻想に基づいた制度である。

内科専門医になるためには、経験症例のサマリー提出、筆記試験などをクリアしなければならない。「70もの中分野を全て経験し、13領域全てに亘る29症例のレポートと主治医として担当した200症例の記録を提出」(遠藤希之 MRIC vol.152, 2016 年7月4日)することが求められた。いじめに近い。経験すべき疾患には、発症率10万人当たり1.15という稀な疾患まで含まれていた。

内科では、現在でも最低年限で専門医資格を取得するのは少数でしかないが、これがさらに長くなり、サブスペシャルティ専門医の取得が2~3年遅れると懸念されていた。

循環器内科で不整脈のアブレーション治療をする医師に、膨大な内科の全領域の診療能力は不要である。お客さん扱いで多くの診療科をまわっても、かけた労力・時間に見合った能力が得られるとは思えない。内科専門医の資格を取得したとしても、アブレーションを担当しながら、広汎な診療能力を維持できるはずがない。そもそも、若い時期でなければ、技術的に難しい手技を修得できない。自分で扱えない疾患について、相談すべき専門家が誰かを知っているだけで十分である。

●大学病院

診療科によっては、研修できる基幹病院が大学病院だけという県が20にもなるという。一般的に大学病院は研究重視で、医療水準が低い。筆者の専門とする泌尿器科領域では、かつて、手術が稚拙だったために患者の生命が奪われる事態が珍しくなかった。筆者は、医局に所属したが、大学病院には最初の1年しかいなかった。手術が望ましい水準に達していなかったので、大学で訓練を受けたくなかった。外部の症例が多い病院で、他科の手術を見学し、ときに参加させてもらった。上司や他科の医師と相談しながら、泌尿器科手術を少しずつ改良していった。当時、医局の辺境には、自分を訓練する方法を自分で選択できる自由があった。5年目には、大学病院で行われていたあらゆる手術を、大学病院より高い水準でこなせるようになった。9年目には山梨医科大学で手術を主導することになった。

一方、ある知人が所属していた大学外科医局では、9-10年目にならないと手術の執刀医になれなかった。医局の手術方法を踏襲することを強いられた。能力に関係なく、年限だけで執刀医資格を決めていた。これでは手術技量が向上するはずがない。医局は、手術技量の向上の阻害要因として機能した。

筆者が虎の門病院に入職した当時の秋山洋院長は、食道がんの手術を実用レベルに高めた外科医である。若いころ、日本中の大学、病院、世界の病院を見学し、議論して回った。大学医局から異端児としてつまはじきにされたことなど、往時の苦労を何度も聞かされた。

今も手術は危険である。患者安全のためには、病院が日常的に自らの医療水準をモニターし、システムとして安全対策を講じなければならない。一般的に、大学病院は、患者安全を含めて医療水準向上の取り組みが遅れている。群馬大学で多くの患者が腹腔鏡下肝切除術後に死亡したことが問題になった。群馬大学病院は、安全システムを構築していたが、形ばかりで機能していなかった。病院が、各診療科をコントロールしようとしていなかった。難手術や新しい手術は誰もができるわけではない。病院にとって初めての手術を導入するための適切なプロセスを用意しておくべきだった。

筆者は、病院にとっての新規医療技術導入のルールを作成したことがある。保険診療として認められたものでも、その病院で初めてのものは、ルールに従う必要がある。新しい技術導入を、病院が現場を支援しつつ、安全に導入する。必要があれば、外部の専門家の協力を求める。問題があれば院長が差し止める。下手な外科医に執刀を禁ずるのは、本人のためでもある。人事も対応手段である。群馬大学病院は、病院管理の不備を個人の善悪の問題にすり替え、現場担当者を処罰することで病院の利益を守ろうとした。大学病院にありがちな対応である。このような病院に長期間若い医師を縛り付けるのは適切でない。

進歩は画一性からではなく、多様性から生まれる。医療機関ごとに実施している医療内容、財務状況、得られる人材が異なる。患者安全を高める適切な方法は病院ごとに異なる。多様性が許容されなければ、創意工夫は生まれない。統制による画一性からは、責任逃れの意識は生まれても、自由な発想で医療水準を高めようという意思は生じない。旧共産圏では、医療は進歩を阻まれ、惨憺たる状況になった。

新専門医制度がそのまま施行されていたら、統制医療がますます強化され、様々な領域で医療水準を下げることになっただろう。

●悪辣な教育者を想定する

社会システムはめったに期待通りには機能しない。教育する側に問題があることを想定しておく必要がある。とくに、長期間の隷属を強いる教育システムでは、悪辣な教育者、病院経営者は若い医師を潰してしまう。

筆者は『医療の限界』(新潮新書)に以下のように書いた。

一般的な話ですが、無能な人間が権力を持ち、しかも勤勉だとひどく有害です。無能な権力者はせめて怠惰であってほしい。それと同じで、教育する側に問題がありうることを想定して、教育システムは逃げ道のある簡素なものがよいと思うのです。

筆者は、苦境に陥った医療関係者や医療過疎に悩む自治体関係者から相談を受けることがある。ある病院で、後期研修医とその上司の関係が険悪になった。研修医が病院の上層部に相談したところ、パワハラ委員会に訴えるよう勧められた。これに従ったところ、パワハラ委員会は、研修医に問題があるという前提で固められていた。病院は何が起こったかに興味を示すことなく、研修医を切るという最も安易な方法で処理しようとした。筆者は詳細な事実関係を知る立場にはないが、研修中の医師と指導医や病院の間で対立関係が生じたとき、正当な扱いを受けるのは不可能だと確信する。

紛争を裁判所で処理するには多大な労力が必要である。個人に経済的、精神的損失をもたらす。紛争に発展しないまでも、被教育者は理不尽な隷属を強いられやすいので、裁判以外の救済方法を用意しておく必要がある。そもそも、病院が裁判のように善悪を判断し、それを確定させるのは不可能である。しばしば、二次紛争に発展する。裁判所でも正しい判断を下すのは難しいが、裁判所は無理やり紛争を終結させるための権限と手続きをもっている。被教育者側の自由意志で、不利益をこうむることなく簡単な手続きで転出できるようにしておけば、被害が多少緩和される。それでも、統一的で長期間に及ぶ強制的教育システムは、人権を侵害し、多様性を奪う。

●最大の被害者は大学エリート

新専門医制度がそのまま施行されていたとすれば、大学エリートはどのようなキャリアパスをたどるのか。初期研修が2年。内科専門医を取得するのに5年(最低年限は3年だが5年程度必要と予想されていた)。サブスペシャルティの専門医資格を取るのに3年。さらに、大学院で博士号を取得するのに4年。大学での出世には留学が必須であり、これに3年。杓子定規にやれば、修業期間が17年に及んでも不思議ではない。修業期間中に、中年になり体力、知力が衰え始める。診療実務に責任者として携わらないまま40歳を超える。キャリアアップの武器になるような手技を修得する時機は失われている。大学医局にぶら下がって生きるしかない。

この間、非正規雇用の期間が長くなる。給与はわずかである。大学によっては、今なお無給で働かせるところもある。アルバイト頼みの、地に這うような生活を強いられる。非正規雇用だと、共済年金や厚生年金にも加入できない。年金は国民年金のみである。それも年金保険料を自分できちんと支払っていなければ、満額支給されない。正規職員に採用されたとしても、大学の給与は低い。勤続年数が短くなるので、退職金もわずかである。

医療費を下げる圧力が継続しており、給与は下がり続けている。大学のエリート医師が、老後、路頭に迷う時代がそこまで来ている。

●結論

統一的で強制的な専門医制度は、多様性を奪い医療水準を低下させるのみならず、若い医師を長期間隷属させ、未来を奪う。医師の活動総量を小さくし、国民に不利益をもたらす。新専門医制度の設計に関わった多くの医療関係者の誰もが、この制度の異様さに気付いていなかった。関わった大学教授に、指導者に求められるべき教養が欠如していたためである。

近年、中国、韓国の躍進と対照的に、日本の医学研究の信頼性は低下し続けている。日本を代表する医学者たちが、日常的に不正を行っているのではないかと思われ始めた。バルサルタン事件、SIGN試験問題などの不祥事を東京大学は、きちんと解決していない。最近告発された医学論文不正疑惑では、東大病院長を務めた医師(現日本内科学会理事長)が論文の共著者になっていた。今後の推移が注目される。バルサルタン事件に関与した東大教授は、その後、日本循環器病学会理事長に就任した。理事長を選任した学会役員の見識が疑われる。東京大学をはじめとする大学の知的退廃が、専門医制度をはじめ、日本の医療に暗い影を落としている。



https://www.m3.com/news/general/461411
「股のぞき」に知覚賞 立命教授らイグ・ノーベル
2016年9月23日 (金) 共同通信社

 【ニューヨーク共同】ユニークなテーマに取り組む世界の研究者に贈られる今年の「イグ・ノーベル賞」の授賞式が22日、米東部ケンブリッジのハーバード大で行われた。上半身をかがめて股の間から物を見たら、普段の見え方からどんな変化があるかを研究した立命館大文学部の東山篤規(ひがしやま・あつき)教授(心理学)らが「知覚賞」を受賞した。

 東山教授は「一般的には興味を持たれない分野なのに、賞をもらえて驚いた。褒めてやろうと言ってくれるのは素直にうれしい」と話した。日本人のイグ・ノーベル賞受賞は10年連続。

 東山教授は「視覚による空間知覚」などが専門で、2006年の論文「股のぞきの世界 大きさの恒常性の低減と見かけの距離の短縮」などの研究が評価された。

 京都府宮津市の天橋立を「股のぞき」の姿勢で眺めると、空と海が逆転して特徴的な風景が見えるといわれるように、姿勢によって物の見え方が変化することは昔から知られている。

 東山教授らは多数の学生ボランティアで実験。頭部が胸より下になる「股のぞき」の姿勢では、見える風景の距離感が正確につかみにくくなることを証明した。

 人間は子供の頃から頭部を上にした姿勢で大きさや距離の知覚を身に付けるため、条件が大きく異なる姿勢では知覚の精度が下がることが原因として考えられるという。

 東山教授は受賞講演の冒頭、「まず私がやってみせましょう」と宣言して壇上で「股のぞき」を実演。司会者に促され、ほかの部門で受賞した研究者たちや観客らも同じポーズを取り、会場は大きな笑いに包まれた。講演は、上半身裸の男性が照明役として脇に立って行われた。

 イグ・ノーベル賞は論文の共同執筆者で大阪大大学院の足立浩平(あだち・こうへい)教授(行動統計科学)との共同受賞。論文の構想は東山教授が主導した。



http://www.asahi.com/articles/ASJ9Q4QJ1J9QUTIL00G.html
医療・健康・福祉(アピタル)
「鑑定留置」裁判員導入後に急増 医師不足、育成が急務

藤原学思、市川美亜子
2016年9月23日13時18分 朝日新聞

鑑定留置の件数の推移
092304.jpg
092305.jpg

 刑事責任能力を判断するため、精神障害などの疑いがある容疑者や被告を数カ月にわたって病院などで拘束する「鑑定留置」が急増している。市民が裁判員として加わるようになり、判断しやすくする狙いが検察側にある。ただ、鑑定に携わる医師は不足しており、学会などが人材育成を急いでいる。

■責任能力、判断しやすく

 「精神鑑定のおかげで、責任能力について迷わず判断できた」。今年3月に東京地裁であった裁判員裁判。自宅マンション13階から長男(当時5)を投げ落としたとして、女(36)が殺人などの罪に問われた。裁判員を務めた男性は、被告人席の女の身ぶりや表情を注意深く見守った。

 女は精神科への通院歴があったことなどから、起訴前と起訴後に計2度の鑑定を受けていた。鑑定結果は鑑定医が法廷で説明。その結果をふまえ、弁護側は「障害の影響があり責任の非難は軽減される」と訴えていたが、検察側は「(被告の)障害は、過度に有利にくむべき事情ではない」と主張した。裁判員裁判では、難しい専門用語をわかりやすく言い換える配慮もされている。

 裁判員の男性は「身近に同じような障害のある人がいないので、自分の感覚だけで判断するのは難しかった。鑑定書類を読み、鑑定医の証言を法廷で聞いて、総合的に考えた」。判決は懲役11年。「障害の程度は軽度で犯行に影響したとは認められず、責任を軽減する事情として重視できない」との判断だった。

 最高裁によると、鑑定留置が認められた件数は2009年に裁判員制度が始まる前は年間250件前後だったが、その後は急増。14年は564件だった。起訴前に検察側が請求する鑑定と、起訴後に裁判所が職権で行う鑑定があるが、特に増えているのは起訴前の件数だ。今年7月に相模原市の障害者施設で起きた殺傷事件でも、起訴前に容疑者が鑑定留置された。

 ある検察幹部は「法廷で被告の様子がおかしいと感じると、裁判員は責任能力を疑う。検察が鑑定した上で起訴すれば、犯行当時に責任能力があったとわかってもらえる」。別の検察幹部は「取り調べの録音・録画が進み、弁護人は自白が任意にされたものかを争点にしにくくなり、責任能力を争うようになった。検察として先手を打つ意味合いもある」と打ち明ける。

 こうした検察側の狙いを、弁護側も注視する。日本弁護士連合会で責任能力をめぐる対策チームの委員を務める田岡直博弁護士はこう分析する。「検察側は起訴するケースを絞り込み、裁判員裁判での立証の負担を減らしているのだろう。鑑定で有利な結果を得て確実に有罪に結びつける一方で、危ない橋は渡らない」

 田岡弁護士は「責任能力を争うスキルで、弁護側は検察側に立ち遅れている」と認める。弁護側が独自に依頼する「私的鑑定」を増やす必要性もあるとしつつ、「どんな鑑定結果についても裁判員を説得できるよう、研修などを通して態勢を強化したい」と話す。

■医師育成追いつかず

 急増する鑑定に、医師の育成が追いついていない。日本司法精神医学会理事の五十嵐禎人(よしと)・千葉大教授は「経験の浅い医師にも依頼が増えた。質が落ちている可能性は否定できない」と語る。

 五十嵐教授によると、鑑定医には特別な資格は要らないが、精神障害を診断したり、犯行に与えた影響を分析したりするスキルが必要だ。学会では14年、鑑定医の認定制度を始め、これまでに約30人が認定された。過去に担当した鑑定書5件の提出を求めるなど経験を重視している。

 大学院で養成する動きもある。東京医科歯科大の大学院は昨秋、国内で初めてという「犯罪精神医学専門チーム」を設けた。今春から若手の精神科医2人が週1回、ベテラン鑑定医の岡田幸之(たかゆき)教授のもとで犯罪精神医学を研究したり、実例を分析したりしている。

 岡田教授は「犯罪を扱う精神医学者は非常にマイナーな存在。国内での教育の場はほとんどなかった」と話す。「1人の患者と長時間向き合って判断する仕事のやりがいを知ってもらい、ごく限られた医師に依頼が偏る現状を変えたい」(藤原学思、市川美亜子)

     ◇

 〈鑑定留置〉 精神状態などを調べるため、逮捕後の容疑者や起訴後の被告の身柄を数カ月にわたって病院などで拘束すること。刑事訴訟法に基づく手続きで、検察官が請求して裁判所が認める場合と、裁判所の職権による場合がある。鑑定では、成育歴や生活状況のほか、犯行の動機が了解できるかや計画性、違法性の認識などについて調べられ、その結果は捜査や裁判で刑事責任能力を判断する材料となる。勾留期間中に半日から1日で行われる「簡易鑑定」とは区別される。



http://mainichi.jp/articles/20160923/ddl/k25/040/279000c
フォーラム
自治体病院考える 市民ら400人 野洲 /滋賀

毎日新聞2016年9月23日 地方版 滋賀県

 JR野洲駅前での市立病院建設計画が進む野洲市で22日、地域医療のあり方などを考えるフォーラム「新しい自治体病院をめざして」が開かれた。市民ら約400人が参加した。

 市や市自治連合会などでつくる実行委の主催。京都大元総長の井村裕夫・先端医療振興財団名誉理事長(85)が基調講演し、「超高齢化社会に向け、医療機関と企業やNPO、行政が協力して個人の健康を守っていかなければならない」と指摘。患者がリハビリ中に利用できる宿泊施設や、病気を予防するための医療拠点などが重要になると語った。また、市が計画する新病院について「高齢者の健康を守るために指導的な立場で関与するような未来型の病院ができればいい」と期待を述べた。

 県内外の医療関係者らによるパネルディスカッションもあり、片岡慶正・大津市民病院長は「公立病院に求められるのは公共性、持続性、経済性の三つの柱。市民の皆さんが病院を支えてほしい」と呼びかけた。駅前での病院建設に反対があることに関して、福田正悟・守山野洲医師会長は「高齢者が1人で安全に通院でき、他市に住む家族も訪れやすい。利便性から駅前が最適だと思う」と話した。【村瀬優子】



http://www.medwatch.jp/?p=10485
基準病床数の設定にあたり、「医療資源投入量」を考慮すべきか―地域医療構想ワーキング
2016年9月23日|医療・介護行政をウォッチ

 医療計画における基準病床数の設定について、「病床過剰地域であるが、将来に向けて病床の必要量が既存病床数を大きく上回る」ような場合には、基準病床数を毎年見直すことや、特例措置で対応する―。

 こういった方針が、23日に開かれた地域医療構想に関するワーキンググループ(以下、ワーキング)で固まりました。近く、親会議である「医療計画等の見直しに関する検討会」に報告されます。

 ただし、基準病床数の中で「医療資源投入量の少ない患者」の取扱いをどうするかというテーマについては意見が固まっておらず、親会議に議論の場を移すことになります。

ここがポイント!
1 病床の必要量が今後増大する地域では、基準病床数の毎年見直しなどで対応
2 医療資源投入量が少ない患者、実像を精査した上で、親検討会で議論
3 地域医療構想の実現に向け、調整会議ではまず「各医療機関の機能の明確化」を
4 ICUなどの病床数、既存病床数にカウントすべきか、除外すべきか

病床の必要量が今後増大する地域では、基準病床数の毎年見直しなどで対応

 大阪府や東京都など、今後も高齢化が著しく進行する地域で生じる「既存病床数が基準病床数(事実上の病床整備上限)を上回っているために地域で増床ができないが、新たに定めた地域医療構想の『病床の必要量』(2025年において必要となる病床数)は既存病床数を超えている」という問題が浮上しています。これにどう対応するかが、ワーキングでの大きな検討テーマになっていました。端的に言えば「医療計画の『基準病床数』と、地域医療構想の『病床の必要量』の関係をどう考えるか」ということです(関連記事はこちら)。

 厚労省は、8月31日の前回会合で次のような考えを提示。今般の(9月23日)の会合で了承された格好です。

(a)高齢化の進展などに伴う医療需要の増加を毎年評価するなど、基準病床数を確認する

(b)医療法第30条の4第7項の「基準病床数算定時の特例措置」(▼急激な人口増 ▼特定疾病の罹患者の異常増―などがある場合には基準病床数を増やせる)で対応する

 ただし、23日の会合で厚労省は、(a)(b)によって増床する際にも、▼機能区分(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとの医療需要 ▼高齢者人口のピークアウト後を含む医療需要の推移 ▼疾病別の医療供給の状況、各医療圏の患者流出入、交通機関の整備状況などの地域事情 ▼都道府県内の各医療圏の医療機関の分布―など、地域の実情等を十分に考慮し、検討をする必要があるともしています。現在の人口動態の傾向が続けば、東京や大阪でもいずれ医療需要は減少するため、安易な増床は「将来の病床過剰」を招いてしまいます。(a)(b)においても、慎重な増床が求められる点に留意が必要です。

092306.jpg
今般の方針を踏まえると、医療計画期間における基準病床数の算定は図のようになる

 さらに、基準病床数の計算式について、「ベースとなる人口は『医療計画策定時の夜間人口』を用いる」(従来どおり)、「平均在院日数については、地域差を適切に反映させたものとする」(従来から一部変更)、「患者の流出入については、特に必要な場合に都道府県間で調整を行う仕組みとする」(従来から変更)、「病床利用率については、地域医療構想と同様に一定の値を定め、都道府県の実情を一定程度、勘案できることとする」(従来から一部変更)などの方針も固められました。2018年度からの医療計画において、計算式が見直されることになるでしょう。

092307.jpg
基準病床数の算定式

医療資源投入量が少ない患者、実像を精査した上で、親検討会で議論

 ところで、厚労省は「基準病床数の設定において、医療資源投入量の少ない患者をどう考えるか」という論点も示していました。

 地域医療構想策定ガイドラインでは、「医療資源投入量」を指標として患者の医療ニーズを高度急性期(3000点以上)、急性期(600点以上)、回復期(175点以上)に区分しており、1日当たりの医療資源投入量が175点を下回る患者については、「慢性期」「在宅医療等」での対応を念頭に置くこととしています(関連記事はこちらとこちら)。

 すると、仮に「医療資源投入量が175点未満となった患者をすべて在宅に移行する」という方針が決まった場合、「一般病床の基準病床数を減少する(平均在院日数が短くなるため)」という選択肢が浮上します。このため上記の論点が浮上したのですが、厚労省医政局地域医療計画課の佐々木健課長は「医療資源投入量の少ない患者の実像を分析している途中であり、ワーキングで具体的な議論をしていただける状況にない。親会議(医療計画の見直し等に関する検討会)で議論してもらうこととしてはどうか」と提案しました。

 例えば「退院間際で医療資源投入量が著しく少ない患者」であれば在宅や外来への移行が考えられますが、「抗がん剤治療のインターバルで資源投入量が少ない患者」では在宅などへの移行は非現実的です。こうしたデータを整理し、親会議で改めて検討してはどうかとの提案内容です。

 しかし、ワーキングでは「そもそも、基準病床数を計算するにあたり、医療資源投入量を勘案すべきではない」(中川俊男構成員:日本医師会副会長)、「資源投入量と医療の必要性とが相関するかは分からない」(邉見公雄構成員:全国自治体病院協議会会長)といった指摘が相次ぎ、この論点については「厚労省と尾形裕也座長(東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)との間で練り直し、その後、構成員に確認してもらう」ことになりました。
地域医療構想の実現に向け、調整会議ではまず「各医療機関の機能の明確化」を

 また23日のワーキングでは、地域医療構想を実現するための「協議の場」(地域医療構想調整会議)での議論の進め方例も固められました。大枠は以下のとおりですが、地域によって異なる進め方をしても一向に構いません。この「進め方例」も親会議に報告されます(関連記事はこちら)。

▼構想区域における医療機関の役割を明確化し、関係者が共有する(公的医療機関や地域医療支援病院、特定機能病院、その他の構想区域における中心的な医療機関の役割、それ以外の医療機関の役割をそれぞれ明確化し共有するほか、新規参入医療機関や規模を拡大する医療機関にも方向性を共有してもらう)

  ↓

▼病床機能分化・連携に向けた方策を検討する(医療機器などのストラクチャーの共同利用やマンパワー確保、地域住民への啓発などを具体的に検討する)

ICUなどの病床数、既存病床数にカウントすべきか、除外すべきか

 さらに23日のワーキングでは、「既存病床の補正方法」見直しについても議論しました。

 現在、医療法施行規則では、▼放射線治療病室 ▼無菌病室 ▼集中強化治療室(ICU) ▼心疾患強化治療室(CCU)―の病床については、当該病室での治療終了後の入院のための病床(例えばICU退室後の一般病床など)が同一病院内に確保されている場合には、既存病床数にカウントしないという規定があります(規則第30条の33第1項第2号)。

092308.jpg
基準病床数は地域における病床整備の上限であるが、一定の特例措置が設けられている

092309.jpg
ICUなど(2号)では、バックベッドがあれば既存病床数にカウントしない規定となっている

 しかし、都道府県によっては必ずしもこの規定どおりに運用されていない可能性があることから、厚労省は今般、「実態に沿った取り扱いの明確化」を検討してはどうかと提案しました。合わせて、新生児特定集中治療室(NICU)や脳卒中ケアユニット(SCU)など、多様な治療室類型があることを踏まえた見直しも検討することになります。

 この点について佐々木地域医療計画課長は、「既存のベッドを取り上げるようなことは考えていない。今後、新たにNICUなどを整備するにあたり、既存病床数に含めるべきなのかどうかなど、ルールを統一化してはどうかと考えている」と説明。また厚労省医政局の神田裕二局長は「都道府県によって不公平があってはいけない。実態を見て整理し、その上で議論していただきたい」とコメントしました。

 なお既存病床数の補正については、▼介護老人保健施設は既存病床数に算定しない▼療養病床を介護老人保健施設に転換した場合は、次の基準病床数を算定するまでの間、既存病床数に算定する―という新方針案が厚労省から示され、こちらは概ね了承されました。

 

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/49669.html
7対1病棟を変更、病院全体の2割超- 「病棟群」は15病院、日病協調査
2016年09月23日 20時00分 キャリアブレイン

 13団体でつくる「日本病院団体協議会」(日病協)は23日、7対1病棟(一般)を持つ病院を対象に行った春の診療報酬改定に関する動向調査の結果をまとめた。次の改定が予定されている2018年4月までの間、別の病棟などに変更する意向を示している病院の割合は、既に届け出を終えた病院を含め、全体の21.59%だった。【敦賀陽平】

 今回の改定では、患者の重症度を測る指標となる「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)の項目が大幅に見直され、7対1病棟では、看護必要度を満たす患者の割合が、「15%以上」から「25%以上」に引き上げとなった。現在、7対1病床は約37万床に上り、一般病床の半数超を占めるため、病院経営への影響が懸念されている。

 厚生労働省によると、昨年4月時点で一般病棟7対1入院基本料を届け出ている病院は全国で約1530病院。日病協では今年7月の約1カ月間に、7対1病棟(一般)を持つすべての会員病院を対象に調査を実施し、全体の約6割に当たる894病院(約28万6000床)から有効回答を得た。

 今年4月から18年4月までの間に、一般病棟7対1入院基本料を他の入院料などに「変更した(する予定)」と回答した病院は193施設=表=。変更先では、一部の病棟を地域包括ケア病棟入院料に変更する病院が112施設とトップで、その理由(複数回答)としては「看護必要度の基準を満たせなくなった」(56施設)が最も多かった。

092310.jpg

 112施設を病床規模別で見ると、「200-399床」が全体の約6割を占めた。また、月末までに同入院料への変更を終えると回答した病院は68施設で、「来年3月まで」は36施設、「来年4月-18年4月」は8施設だった。

■新基準、7割超が「改定前にクリア」

 一方、看護必要度に関する質問に回答した892施設を対象に、看護必要度への対応状況について聞いた結果、「改定前から基準をクリア、ただし対策を講じた」(334施設)と「改定前から基準をクリア、その後も対策は不要」(307施設)を合わせ、全体の7割超は改定前から新基準を満たしていたことが分かった。

 看護必要度の新基準を満たせない場合の経過措置として、同省は10対1病棟との混在を認める「病棟群単位」の届け出を新設したが、今回の調査で、7対1病棟からの変更先として挙げた病院は15施設にとどまり、月末までに届け出を終える病院はわずか3施設だった。

 病棟群単位の届け出をいったん検討したものの、最終的に見送った182病院に対して、その理由を聞いたところ(複数回答)、届け出の変更が1回に限られるという制度上のルールを挙げた病院が92施設で最も多かった。

■「病院が頑張っている姿が見て取れる」

 改定前に新基準をクリアしていた病院が多数を占めたことについて、取りまとめ役となった原澤茂副議長(全国公私病院連盟常務理事)はこの日の記者会見で、「多くの病院がさまざまな対策を講じ、基準をクリアする努力をしていることが自由回答で見られた。医療の質を担保し、地域医療のニーズに合わせるというところも含め、病院が頑張っている姿が見て取れると思う」と述べた。

 原澤副議長はまた、「調査結果は病床数の話で、稼働率に関する質問は出さなかった。内容に少し問題があった。厚労省などが出すいろんなアンケートを見ながら実態を考えたい」とも語った。

 病棟群単位の届け出数が15施設にとどまったことに関して、神野正博議長(日本社会医療法人協議会副会長)は、「日病協は単に、7対1、10対1、13対1のミックス型を要望していた。(18年度の)診療報酬の要望事項に入れるかどうかはこれからの議論だが、(要望としては)ありなのではないか」との認識を示した。



https://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20160923_8
地域包括ケア病床が増加 県内、リハビリなどに専念
(2016/09/23) 岩手日報

 手術などを終えて病状が安定した患者の在宅復帰を支援する「地域包括ケア病床」が県内で増えている。東北厚生局によると1日現在で県内6市町の10病院が開設し、県立千厩病院が10月にも導入する見込み。最長60日の入院期間で、リハビリや治療に専念できるのが特徴だ。急性期病床の充実に対し回復期病床が不足する中、高齢者が住み慣れた自宅や入所施設に安心して戻るための受け皿として期待されている。

 県立東和病院(花巻市)は5月から一般病床10床を地域包括ケア病床に転換した。「いくらか歩けるようになった。元気になったら家で農業をしたい」。ベッド上で花巻市東和町の女性(92)は笑顔を見せた。女性は自宅で転倒し、大腿(だいたい)骨を骨折。県立中部病院(北上市)で手術を受けた後、東和病院の地域包括ケア病床に移った。理学療法士らのサポートを受け歩行訓練など在宅復帰に向けたリハビリを続ける。

 国は増大する医療費を抑えようと、入院が長期間になると診療報酬が低くなる仕組みとし、早めの退院を病院に促してきた。一方、地域包括ケア病床は最長入院期間を60日とし、患者が安心して在宅復帰できるよう2014年度に制度を見直した。

 東北厚生局によると、県内では川久保病院、国立病院機構盛岡病院、盛岡市立病院、中津川病院、盛岡友愛病院(盛岡市)、南昌病院(矢巾町)、一関病院(一関市)、奥州病院(奥州市)、県立大船渡病院(大船渡市)、県立東和病院(花巻市)の10病院が計334床を設置している。
092311.jpg



https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2016/09/24/JD0054980111
12市町村で赤字 14年度の国保収支
9月24日 大分合同新聞朝刊

 2018年度から財政運営の主体が市町村から県へと移管する国民健康保険事業。県が同事業の14年度単年度収支をまとめたところ、県内18市町村のうち12市町村で赤字になっていた。赤字は13年度より2自治体増えており、「財源の一部を一般会計から繰り入れ、黒字化している自治体もある。財政運営はどこも厳しく、県民一人一人が国保事業について考えてほしい」と呼び掛ける。

 県によると、赤字額が最も大きかったのは大分市で約3億2300万円。同市の担当者は「加入者の人数は減り、高齢化も進んでいる。医療の高度化もあり、医療費は13年度に比べて11億円増えた一方、保険税収入は3億円減っていた」と説明。赤字は13年度からの繰越金で埋めた。
 約2億8600万円の赤字だった佐伯市も「加入者は約千人の減。医療費は約4千万円増えていた」。基金などから3億1千万円繰り入れ対応した。
 黒字額が大きかったのは中津市で約4300万円だった。同市によると、14年度は市独自の判断で国保会計に一般財源を投入する法定外繰り入れを2億2千万円実施。「このうち1億3千万円は赤字を補塡(ほてん)する目的だった。他の自治体と同様、財源の確保に苦慮している」と担当者。
 各市町村は国保会計の改善に向け、保険料の収納率のアップや医療費の適正化などに取り組んでいる。収納率は13市町村で13年度を上回っていた。
 1人当たりの医療費は年々上がっており、14年度は杵築市を除く全市町村で13年度を上回り、県平均では40万円(13年度比1万4168円増)に達していた。
 国保事業は運営主体が県に移管された後も、各市町村は保険税率や保険給付の決定、保険証の発行、保険税の徴収などの役割を担う。県は各市町村が県に納める国保事業納付金の額を決めるほか、統一的な運営方針を示し、市町村事務の効率化、標準化を推進する。
 県国保医療室は「国保は医療のセーフティーネットであり、将来にわたって安定的に存続させねばならない。加入者の高齢化により医療費は年々増加しており、健康づくりや疾病予防の取り組みを積極的に進めてほしい」と話している。



https://medical-tribune.co.jp/news/2016/0923504797/
内保連と外保連が内視鏡試案、全268術式〔CBnews〕
合同のデータ作成は初

CBnews | 2016.09.23 17:50

 「内科系学会社会保険連合」(内保連)と「外科系学会社会保険委員会連合」(外保連)は、軟性内視鏡を使った手術や検査などの標準的なコストを割り出した「内視鏡試案」(第1.1版)をまとめた。軟性内視鏡の技術料の適切な評価につなげることが目的で、術式の数は全体で268項目に上る。内保連と外保連が、診療報酬の要望に向けた基礎データを合同で作成したのは今回が初めて。

 内視鏡試案が作られた発端は3年前、日本消化器内視鏡学会が内保連に行った要望だった。内視鏡が目覚ましく進歩する中、医師の技術評価の在り方も課題として浮上し、学会側は、内視鏡の技術料について検討する委員会の設置を内保連側に求めた。

 内保連の運営委員会が協議した結果、外保連と一緒に話し合うべきだとの結論に達し、外保連側もこの提案を受け入れたため、内視鏡試案の作成に向けた合同のワーキンググループ(WG)が立ち上がった。

 座長には、東大医学部附属病院で光学医療診療部長を務める藤城光弘氏、副座長には日大医学部附属板橋病院の呼吸器内科長、高橋典明氏がそれぞれ就任。また、日本泌尿器科学会、日本耳鼻咽喉科学会、日本膵臓学会、日本呼吸器学会など、関連する23学会の代表者も委員として参加した。

 WGは今年夏までに8回にわたる会合を重ね、内保連や外保連の関連する委員会などにも意見を求めながら、今月14日に内視鏡試案を取りまとめた。

内視鏡の洗浄消毒費は一律2823円

 外保連では以前から、手術に必要な時間や医師数、縫合に使用する糸などのコストを集計し、標準的な技術料を算出するなど、科学的な根拠に基づく診療報酬の実現を目指してきた。こうしたデータをまとめた「外保連試案」は精緻化が進み、2010年度の診療報酬改定以降、国が手術料などを検討する際の基礎データとして使用している。

 内視鏡試案は、外保連試案の「手術試案」「処置試案」「生体検査試案」のうち、内視鏡に関連する術式の項目が細かく分かれたり、新たな術式が加わったりしている。その結果、術式の数は手術が162項目、検査が86項目、処置が20項目となる。

 例えば、現行の手術試案の「早期胃悪性腫瘍内視鏡的治療」の場合、内視鏡試案では、▽内視鏡的胃悪性ポリープ切除術▽内視鏡的胃悪性腫瘍粘膜切除術▽内視鏡的胃悪性腫瘍粘膜下層剥離術―の3つに分かれる。早期胃悪性腫瘍内視鏡的治療の技術度は「D」(A-Eの5段階)だが、内視鏡試案ではそれぞれ「C」「C」「D」となるなど、術式名の変更に伴って評価も変わる。

 各術式の技術料は、手術・処置・検査の難易度や時間、医療スタッフの数といった手技に関する費用に診断に必要な時間などのコストを上乗せした総額、検査室などの「室使用料」(部屋代)、医療機器と医療材料の費用、そして内視鏡の洗浄消毒費を足し合わせている=表=。消化器内視鏡の場合、胃の生体検査に関しては、5000円を別途加算する。

092312.jpg

 現行の外保連試案の技術料との間で食い違いが生じないよう、「手技」「診断」「検査」でコストを別々に算出している。最大のポイントは、全術式に室使用料と洗浄消毒費が入っている点だ。洗浄消毒費(現在の検査試案では1000円)については、関係学会の意見を踏まえ、一律2823円をプラスする。

 ただ、手術と処置については、診断後に行われることが多いため、診断に関する人件費は「0円」を基本とするほか、部屋の利用料が医療機器のコストに必ずしも直結しない手術室は、「室使用料」の対象から除外する。

内保連と外保連をつなぐ「かけ橋」に

 外保連の手術委員会の川瀬弘一委員長(聖マリアンナ医科大・小児外科病院教授)は、「消化器内科を中心に、内科の技術にも外科的な要素がどんどん入っている。内保連と外保連はこれまで、同じ術式に対して異なる技術料を求めていたが、今後、同じ根拠に基づいて国に要望していきたい」と話す。

 WG座長の藤城氏は、「内保連と外保連は今まで、必ずしも同じ方向に向かっていなかった。内視鏡試案が、内保連と外保連をつなぐ、一つのかけ橋のようになってくれればうれしい」と語った。

 18年度の診療報酬改定に向け、WGでは今後、山王病院(東京都港区)の清水伸幸副院長(外科部長)を座長に、内保連試案のさらなる精緻化に取り組む方針で、次の「第1.2版」は、来年秋にまとめる「外保連試案2018」に盛り込まれる見通し。第1.1版は、現行の「外保連試案2016」の別冊として、11月下旬に発行される予定だ。

(2016年9月21日 敦賀陽平・CBnews)


  1. 2016/09/24(土) 09:44:16|
  2. 未分類
  3. | コメント:0
<<9月24日  | ホーム | 9月22日 >>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する