Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

9月12日 

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/teiron/article/273995
【全人的な医療とは】 丸山 泉さん
2016年09月12日 10時35分 西日本新聞

◆専門を超えた連携が鍵 
 どの国の医療制度にも学ぶべき点と欠点があり、満足な手本は無い。皆保険制度をもつ日本の医療の国際的評価はきわめて高いが、これからの持続可能性が課題となっている。

 健やかに長寿を全うする必須条件としての医療は、日進月歩の現代では10年もすれば陳腐化してしまい、診断、治療、予防、創薬のすべてが加速度的に発展を続け、止まることはない。その結果、高度医療の発展とともに、一方で全人的な医療への回帰が世界的な潮流となっている。専門分化によってもたらされる医療システムの分断化は、人を単に臓器の集まりと見なしかねない身体の分断化でもあるのだ。

 家族や地域、そして疾病と生活との結びつきが強いプライマリ・ケアでの分断化の弊害は特に大きい。分断化は、反語である統合化によってしか解決できない。どうすればいいのだろうか。

   ---◆---

 分断化は医療に関わるすべての場で起きているが、医師の専門性を例に取ると分かりやすい。

 胃痛を自覚し胃がんではと不安な人は、消化器専門医を訪れる。胸痛で心臓疾患を疑えば、循環器専門医を訪れる。どこを受診すればいいのかさえ分からない場合も多い。不安に幅広く応じることができ、丁寧な対話を通して、その人に必要な専門性を選別し、日常的疾患の大部分に対応可能な医師がいるならば、どうであろうか。

 首都圏のある病院では、当初、65歳以上の方の疾病が一つか二つだったのが、10年たった今、平均で5疾病にも及ぶと報告されている。1人のもつ疾病数の高齢化による当然増である。

 そのような方は病院内の各科を1日かけて回ることになる。広範囲の領域の学びを自ら続けてきた医師が近くにいれば、そこで済むだろうが、複数の医療施設を訪れるのが普通である。人口とともに医療施設の偏在も顕在化しており、すでに婦人科の専門医のいない地域が全国に多くなっている。75歳の女性で、幾つかの疾病に加えて婦人科疾患の疑いがある場合、遠く地域外までの通院を強いられる。

 幾つかの人口千人における受療動向調査によると、おおよそ似たようなもので、その一つでは、千人のうち、症状ありが8割、医療機関を受診する者は2割、入院となる者は1桁台にすぎない。大半の患者は外来医療で事が済むことを意味している。

 つまり、外来力の質的強化こそが医療システム構築の要であるのだ。1カ所の外来が広範囲の疾病に対応可能となることを患者像の変化が求めているが、反して医師の専門分化はさらに進む。

   ---◆---

 解決しなければならない医療的課題がもう一つある。何らかの理由で外来通院が困難な人々である。距離的なもの、虚弱あるいは不自由で通院が困難な場合、認知症、そして経済的なものである。対象とする人々が激変しているのだから、待つだけでは医療機関は地域への責任を果たせない。必要とされる所に出向く医療が強く求められている。

 多彩な症状を訴える方々に指針を与えることができ、よくある疾病については的確な診断・治療を行い、高度な在宅医療の知識を有する医師を育成しなければならない。地域の課題を熟知し、制限のある医療資源を財源も含めて大切に使う意識も条件である。職種間の水平連携のため、医師としての態度や地域への視点を養う教育が欠かせない。

 難航しながらも、現在、このような医師が新たに育成されようとしている。国民からの信頼を得ることが前提であるが、分断から統合へは人によってのみ動く。

 【略歴】1949年、福岡県久留米市生まれ。久留米大医学部卒の内科医。福岡県小郡市で医師会活動の後、NPO法人で地域の健康増進活動に取り組む。2012年6月から日本プライマリ・ケア連合学会理事長。父は医師で詩人の丸山豊。


=2016/09/11付 西日本新聞朝刊=



https://news.nifty.com/article/item/neta/12125-291214/
予算は?持ち方は?医師に聞く「聴診器」のこだわり
2016年09月11日 23時20分 @DIME アットダイム

職業によっては必ず使う特徴ある仕事道具があるものだが、多くの医師の場合、それは聴診器ではないだろうか。そんな聴診器については、一般の人にも認知度は高いとはいえ、ユーザーではないので、実は詳しいことはほとんどわからないのでは。

そこで白衣の企画・製造・販売を行なうクラシコは、20代から60代の医師402名を対象に、「聴診器」に関するアンケートを実施した。

■最も「利用度満足度」が高いのは“5万円~7万円”の聴診器

所有聴診器における購入価格帯についての質問では、「1万円以上~3万円未満」と答えた医師が163名(40.5%)で最多。また、「3万円以上~5万円未満」が140名(34.8%)と続き、第4位の「5万円以上~7万円未満」に26.3ポイントの差がついた。また、所有聴診器における購入の決め手についての質問では、「音響性が優れていたから(よく聞こえる、音が減衰しにくい、など)」が26.8%と、ハード面の機能を重視する声が最も高かった。それに続き、「お気に入りのメーカーだったから」(25.5%)、「価格がお手頃だったから(安かったから)」(21.6%)といったソフト面が続く順位となった。「とくに決め手はない、なんとなく」と回答した医師も18.0%と、4番目に多かった。

さらに、聴診器の購入価格帯を、利用満足度の順に並べてみたところ、「5万円以上~7万円未満」の価格帯の聴診器を購入した医師の満足度が最も高く、その94.1%が、「満足している」ないしは「大変満足している」と回答した。続いて、「3万円以上~5万円未満」(82.9%)、「1万円以上~3万円未満」(76.7%)となった。

下記4つのグラフからは、利用満足度が1位の「5万円以上~7万円未満」、2位の「3万円以上~5万円未満」の聴診器を購入する際、ともに“音響性”が購入の決め手となったことがわかった。また、「5万円以上~7万円未満」では、「装着感がよかったから(耳へのフィット)」といったハード面も決め手の重要ポイントとしていた。一方で、「3万円以上~5万円未満」では、デザインといったソフト面も購入の決め手として考えていることがわかった。利用満足度が3位の「1万円以上~3万円未満」、4位の「7万円以上~10万円未満」では、「指導教官の推薦だったから」といった、周囲の声を参考にする決め方も決め手の上位となっていた。

■所有聴診器に満足している医師の5人に2人は、機能性に“オシャレさ”もあれば「利用してみたい」

次に、現在使用している「聴診器」についての満足度を聞いたところ、「大変満足している」と「満足している」を合わせると71.4%となり、過半数以上の医師が現在使用している「聴診器」に満足していることがわかった。続いて、所有聴診器の満足度で「大変満足している」「満足している」と回答した医師287名に、機能面や素材だけでなく、デザイン面(オシャレさ)にも気を配った「聴診器」があれば利用してみたいと思いますか、といった質問をしたところ、おおよそ5人に2人(全体の40.7%、117名)の医師が、「ぜひ利用してみたい」ないしは「利用してみたい」と回答した。

また、所有聴診器の利用期間を聞いたところ、5年以上利用していると回答した医師が約80%を占めた。ハード面の機能などには満足しつつも、デザイン要素にも興味をもつ医師がいるようだ。これは、使う期間にも関係しているのかもしれない。

以下は、機能面や素材だけでなく、デザイン面(オシャレさ)にも気を配った「聴診器」があれば利用してみたいと思いますか、といった質問に対し、「ぜひ利用してみたい」「利用してみたい」と回答した理由を抜粋したものである。

「ぜひ利用してみたい」「利用してみたい」と回答した理由(一部抜粋)
・長く使うものなので、愛着が湧くデザインであることも重要な要素であると考えます(40代男性医師)
・毎日持つものだからデザインも大事だと思う(50代男性医師)
・いつも使うものだから(60代男性医師)
・デザインに遊びがないので、機能性を兼ね備えたものがあるといい(50代女性医師)
・どれも特徴がないから、際だった特徴があれば使ってみたい(40代男性医師)
・なかなか選択肢がないから(40代男性医師)
・同じデザインだから(60代男性医師)
・デザイン性の高いものがないから(50代男性医師)
・仕事をする上でデザイン的にも満足できるものを使いたいから(50代男性医師)
・子供の診察によい(50代男性医師)
・小児医療で使ってみたい(50代男性医師)
・気分がいい(50代男性医師)
・使っていて、気分がよさそう(40代男性医師)
・患者受けが良い(30代男性医師)
・患者さんにウケそう(60代男性医師)
・パッと見にはわからないがよく見るとおしゃれというのを心の中で自慢したい(50代男性医師)
・看護婦にもてるから(40代男性医師)

■医師もうなずく聴診器の持ち方ランキング1位のポイントは、「雑音抑制と可動領域の確保」

医師は自然に行なっている聴診器診察だが、医療法人社団フレシェア若宮診療所の松尾院長に聞いたところ、“聴診器の持ち方”には、自己流・亜流など様々な持ち方があることがわかった。そこで本アンケートでは、実際の診察の現場で、どのような持ち方で聴診を行なっているかを調査。その結果、最もオーソドックスな持ち方がわかった。

普段の聴診器の持ち方で、最も多くの回答が集まったのは、上図「A」の、チェストピースの根元部分を持つ持ち方で、全体の45.3%の医師が選んだ。この持ち方が多い理由を前出の松尾院長に聞くと、「指をダイヤフラム部分へ接触させないことで、雑音を抑えるためかもしれません。また、持ち手の可動領域が確保できるからといったこともあるでしょう」と言う。なかには、患者としてはあまり見慣れない人がいるかもしれない、「H」のような持ち方を選ぶ医師も4.0%いた。持ち方の名称はそれぞれ、正式に名称がついているものがないという。

■全体の約40%の医師が、診察時に思わず●●している?

自分も経験したことがある、または周囲で見かけたことがある「聴診器あるある」についての質問で最も多くの回答を集めたのが、41.3%で「診察時に目をつぶる」。5人に2人は診察中に思わず目をつぶってしまうことがわかった。次いで、「首にかけている聴診器を落としそうになったことがある」(19.9%)、「急いでポケットへ入れて動き出そうとすると、聴診器が広がりポケットから出てしまったことがある」(14.7%)など、忙しい医師ならではの聴診器あるあるとなっている。また、「聴診器の装着を忘れたまま(耳に装着していると勘違いしたまま)聴診してしまった」(12.2%)といった、意外な一面が垣間見られる回答もあった。その他のフリー回答では、以下のような“携帯性”や“使い心地”などのソフト面や製品自体のハード面に関するハプニング性のある回答もあった。

・聴診器を白衣のポケットに入れていて何かに引っかかりポケットが破けた(30代男性医師)
・イヤーキャップが外れ金属部分が耳に入った(50代男性医師)

医師は聴診器に対して、様々なこだわりを持っているようである。これは、仕事道具である以上、当然のこと。こだわりをもって選んだ聴診器を、日々の診療活動でフルに生かしてもらいたいものである。

【調査概要】
調査方法:インターネットリサーチ
実施期間:2016年7月22日(金)~7月26日(火)
調査対象居住地:全国
性別:男女
年齢:29歳~65歳
職業:医師
人数:402サンプル

文/編集部



https://www.m3.com/news/iryoishin/456153?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD160912&dcf_doctor=true&mc.l=177339914&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
シリーズ: 群馬大学腹腔鏡死亡事故
外部調査報告書、群大は一切関与せず- 上田裕一・群大“事故調”委員長に聞く◆Vol.3
事故関係者は消耗もヒアリングには協力的

2016年9月12日 (月) 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)、高橋直純(m3.com編集部)

――計35回の会議のうち、後半の大半の時間は、報告書の推敲に充てています。

 5月に完成予定だったのですが、「Skype」での参加を含め、外部委員全員が集まり、報告書の最初から最後まで、何回も読み合わせをし、推敲を重ねたために時間がかかりました。これは初めての経験でした。誰か一人が声を出して報告書を読み上げ、確認し、公表しても恥ずかしくない報告書の作成に、相当の時間をかけたのです。

 6月22日の段階では、報告書の構成も変えています。委員から「話の展開が、分かりにくい」との指摘が出たからです。私は「ここまで来たのだから、このままでも」とも思いましたが、結局変更しています。今回の外部委員の皆さんは、きちんと意見を言われる方でした。「終わりに」は、1ページ強ですが、ここにも委員の皆の思いが込められています。


執刀医らのヒアリングの際には、群大関係者は一切出席せず、また調査委員会の委員も録音はしないなど、ヒアリング対象者にさまざまな形で配慮したという。
――調査終了まで時間がかかったのは、丁寧に報告書を作成したのに加え、調査対象が6年間に及んだので、その時々で、背景要因が変わったという事情もありますか。

 そうです。つい最近までは、ここ(奈良県総合医療センターの総長室)には、群馬大から送られてきた書類が入った段ボール箱がたくさんありました。調査委員会を開き、皆が集まる以外にも、これらの書類を読む時間もかかったわけです。

――事故調査には、ものすごい費用と人手がかかる。

 群馬大から受け取ったのは、奈良からの交通費、調査委員会の開催時間分の謝礼のみで、書類を読んだりした時間については、謝礼は支払われていません(笑)。私は委員長を引き受ける際に「大学の非常勤講師の時給でいいです」と申し上げたのです。あまり多額の謝礼を受け取ると、利益相反が生じかねないと考えたからです。

 事故調査の体制や進め方は、病院の規模や考え方などによって異なります。今回の場合は、外部委員会開催の調整や、書類の準備などの事務作業は群馬大に依頼しましたが、報告書作成における事務のサポートはほとんどゼロです。

――それは報告書作成に当たって、群馬大は一切関与しなかったということですか。

 はい。これまで外部委員を務めた経験では、病院側が報告書のたたき台を作成してくれるケースが多かったのですが、今回は群馬大に関与していただかないようにしました。今年の3月頃に、報告書の目次というか、検証項目と提言(一部)の案を委員会で作成し、次の委員会で配布しました。この配布資料は、群馬大の事務が準備しています。しかし、5月からは委員会の配布資料の準備は事務方にはお願いしていません。つまり、報告書の素案や原稿は、群馬大には一切提供せず、委員が委員会のたびに個々にプリントして持参し、確認する作業を繰り返しました。

 7月上旬には、群馬大から、関係部署への経過報告の必要もあり、「概要版作成」の依頼もありましたが、公表間近の7月下旬まで、概要版も提供していません。

――毎回の外部委員会では、群馬大の関係者は参加されていたのでしょうか。

 今年3月くらいまでは、当事者へのヒアリング以外は参加してもらい、また「調査方法の勉強のために」という理由から、病院幹部に陪席してもらうこともありました。しかし、この5月以降の委員会には、群馬大関係者は参加していません。

 ヒアリングに当たっては、群馬大関係者は一切出席せず、中には、ご本人が録音しているケースもありましたが、私たち委員は録音もしていません。皆が自身の記録としてメモを取り、終了後にメモの交換などをしていました。

――医療事故が起きた際、患者家族の側から、医療事故調査でのヒアリングなどの資料、委員会の議事録などが開示請求されることがあります。しかし、今回の場合はそうした資料が存在していない。

 存在していません。私が関わった事故調査では、今まで録音したことはありません。それはご指摘の通り、開示請求が来るからです。「録音しましたが、そのデータは捨てました」というのも、一つの方法かもしれませんが。

――群馬大に残っている今回の外部調査の記録は、報告書のみですか。

 ごく初期の頃、どんな調査を進めるのかといった議論の資料は残っているかもしれませんが、基本的には、大学のホームページに掲載されているような議事録が残っているだけです。最後の頃の議事録は、「報告書の内容について議論しました」くらいでしょう。

 また最初の数回は、委員会終了後に記者会見を開いていたのですが、調査が本格化した頃には、会見できる内容もなくなってきたので、会見は開いていません。記者会見を開いたのは、社会的に注目されていた事故だからです。私の方から「お話をしたい」と言いました。30分くらいと時間を区切ってやっていましたが、メディアから細部を聞かれると、「それはお答えできません」と答えることもありました。

――そうした調査手法は、群馬大はどう受け止めておられたのでしょうか。特に最後の約3カ月は、報告書の内容も一切分からず、気になったのではと思います。「参加させてほしい」といった意向はなかったのでしょうか。

 2015年12月末に、日本外科学会が、こちらが要請した以上の広い範囲の調査を行うことを決めたことについて、私の時間がなかったために、京都で記者会見を開いたことがあります(『外科学会が50人態勢で調査、群大腹腔鏡死亡問題』を参照)。あの頃から、群馬大は、「どこかから、情報がリークする心配がある」と懸念していました。委員は、引き受ける際、守秘義務の遵守について署名し、責任を持って取り組み、書類等も返却することにサインはしているので、委員から漏れることはなかったのですが。

 そんな事情もあり、「委員の中でがんばってやりましょう」という方針になっていました。

――調査の過程では、群馬大関係者12人にヒアリングしています。先ほどヒアリングに当たっては、精神状態に配慮する必要性も指摘されていましたが、皆さんはどのような状況だったのでしょうか。

 間違いなく、ヒアリングした皆さんは消耗していました。その辺りのことを外部委員の皆さんは心得ていて、「追及型」のような質問はしておらず、オープンクエスチョン形式で話を引き出すように心がけていました。

――皆さんは協力的だったのでしょうか。

 「あなたの責任を追及するわけではありません。私たちは再発防止のために調査をしているのです」などとヒアリングの冒頭で説明していたこともあり、皆が協力的で、「答えられません」と言った人はいませんでした。

 外部委員会には、院内の人は誰もおらず、やり取りを通じて、次第に心を開いて、話したり、自身の主張を話してくれるようになったのです。

――ヒアリング対象者たちが、「自分の主張を聞いてくれる場だ」と思い始めた。

 そういうことです。「責任を追及されていない」と分かったのでしょう。

――ヒアリングは一人当たり、短いケース、あるいは長いケースで何時間されていたのでしょうか。

 短い人でも1時間、長い人では4~5時間を2回やった人もいます。

 ただ、ヒアリングは調査の最初の頃に行うケースが一般的ですが、今回はちょっとタイミングをずらしました。背景要因を調べていき、その上で当事者に話を聞く形にしたかったからです。ヒアリング対象者は報告書には記載していませんが、かなり幅広い立場の方に話を聞き、ヒアリングは2回にわたることもありました。

――日本外科学会の協力を仰いだのは、先生ですか。それとも大学から依頼したのでしょうか。50の症例の検討を学会が引き受けるのも容易ではなく、今回のように、背景要因は先生方のように第三者委員会で検討し、医学的検証は学会に依頼するような体制は可能なのでしょうか。

 契約自体は群馬大が実施しています。今回のように医学的な専門的な評価は学会等が実施する一方、それ以外の背景要因を探る部分は、専門領域の人である必要はなく、事故調査に慣れた人が実施すればいいと思います。ただし、一つの症例を一人の医師のみで専門的評価を行うのは難しく、少なくとも2人、意見が分かれた時を考え、1例につき、3人で評価することが理想であり、それだけ人手がかかるのは事実です。



https://www.m3.com/news/general/458128
【山梨】「診療拒否あった」富士吉田市長が陳謝
2016年9月12日 (月) 山梨日日新聞

 富士吉田市立病院の歯科口腔外科が、特定の歯科開業医からの紹介で来院した患者の診察を正当な理由なく拒否していた可能性があるとして、市が調査している問題で、同市の堀内茂市長は9日の会見で「診療拒否があったと認識している」と述べて陳謝した。市は10月末までに詳しい経緯を調べ、関係者の処分を含め検討するとしている。

 堀内市長は会見で、2013年3月の歯科口腔外科開設などを巡り、市立病院側と市内の開業医の間にトラブルがあったと指摘。その上で、トラブルになった開業医の紹介で来院した患者の診察を、市立病院が拒否することがあったとの認識を示し「市民の税金を使い、地域のための病院であるにもかかわらず、一部で診療拒否があった。申し訳ない」と陳謝した。

 市によると、7月下旬に富士吉田歯科医師会から「特定の歯科医師から紹介を受けた患者が、市立病院での診察を拒否されている」として改善を求める要望書が提出され、市が調査に乗り出した。

 一方、市立病院の武藤賢三事務長は9日の取材に「歯科口腔外科の担当医師から、診察を断ったのには正当な理由があると聞いている」と話した。

〈清水一士〉



http://www.yomiuri.co.jp/local/akita/news/20160912-OYTNT50247.html
中学生が外科医体験…能代でセミナー
2016年09月13日 読売新聞

 外科医師の仕事の模擬体験を通じて医療への興味を引き起こし、将来の地域医療を担ってもらおうという「ブラック・ジャックセミナー」が10日、能代市落合のJA秋田厚生連・能代厚生医療センターで行われ、同市や三種町、八峰町の中学1~3年生の男女29人が参加した。


 医薬品大手「ジョンソン・エンド・ジョンソン」(東京)が2005年から開始し、11年から手塚治虫さんの人気漫画「ブラック・ジャック」の主人公名を冠して全国で展開している。同センターでの開催は、山本組合総合病院時代から今年で4回目。

 参加者は手術着に着替えて手術室に入り、超音波メスと電気メスで鶏肉などを切ったり、糸による縫合作業を体験したりした。また、3人1組でモニターを見ながら、腹腔鏡ふくくうきょうの模擬手術を体験。最後には、実際の手術室でも行われるという「ファイヤー」の一斉かけ声で完了した。約2時間の医療模擬体験を終えた生徒には、修了証書が手渡された。

 三種町立八竜中学校3年の伊藤菜奈さん(15)は「将来は医療関係の仕事につきたいので参加した。体験した手術は難しかったが、外科医もいいなと感じて、選択肢が広がって楽しかった」と話していた。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t275/201609/548189.html
特集◎始まらない新専門医制度《1》
新専門医制度、延期決定で聞こえる安堵と嘆息

2016/9/8 増谷彩=日経メディカル

当初予定の2017年度スタートを巡って議論が紛糾していた新専門医制度は1年の延期が決まった。2018年度の一斉スタートに向けて、数々の難題にどのような道筋を付けるか。「立ち止まって」いられる期間は長くない。

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新専門医制度、延期決定までの経緯(*クリックすると拡大表示します)
イラスト:辻 和子

 「もう、紆余曲折にはうんざりしました。来年は留学するつもりで動いています」。来年3月に初期臨床研修を修了する予定の男性医師はこう嘆く。彼をあきれさせたのは、2017年4月にスタート予定だった新専門医制度が延期に至った顛末だ。

 質の高い専門医の養成を目的に掲げ、専門医の認定・評価を担う第三者機関として日本専門医機構(以下、機構)が発足。各学会が新制度に即した専門研修プログラム(以下、研修プログラム)の策定を進め、施設群が形成されると聞いていた。

 しかし、研修1期生となるはずの自分たちに、いつまでたっても研修プログラムの情報が公開されない。来年度からどの診療科に進み、どの病院に所属し、どんな研修をするのかを決められないまま、焦りは日々募る。「現行制度と新制度、どちらでもいいからとにかく決めてくれ」。

 初期研修医の多くはこの医師と同じように思っていただろう。様々な団体からの発言が相次いだ揚げ句、機構は2017年度の新専門医制度の開始を見送ることを発表した。2年次の初期研修医は、例年より大幅に遅れて本格的に進路を検討する見通しが立った。

 自分が受ける研修が新制度の初年度となり、混乱することを警戒していた初期研修医の多くは、現行制度の継続に安堵したようだ。

とても始められる状況にない

 日経メディカルOnlineが8月中旬に行ったアンケートでは、新専門医制度の開始時期が延期されたことについて、「スタート時期にこだわらず、議論を尽くしてからスタートさせてほしい」と、肯定的に捉える回答が4割を占めた(関連記事)。「専攻医や指導医の医業を圧迫するだけの内容だった」(50歳代勤務医、呼吸器内科)など、延期を歓迎する声も目立った。

 「新しい仕組みの準備が進むにつれ、地域から新制度に対する不安の声が寄せられるようになった。そのうち、市立病院など地域医療の中核を担うところが一気に新制度による地域医療への悪影響を不安視し始めた」。日本医師会は、今年2月から2017年度の制度開始に対する懸念を表明し続けてきた。その背景を会長の横倉義武氏はこう振り返る。

 新専門医制度における研修プログラムで基幹施設となる大学病院が、指導医要件を満たすために派遣している医師を自施設に引き揚げる──。初期研修で起こったとされる出来事が繰り返されるといった不安の訴えは、数件というレベルではなく、「日医として動かざるを得ない状況になった」と横倉氏は説明する。

 新専門医制度を巡る議論では、機構のガバナンス体制も度々議題に上り、社員の構成、意思決定の過程の不透明性などに対して批判が繰り返されてきた。「機構の設立時から、ヒト、モノ、カネという組織の基本が考えられていなかった。設立から2年余りの運営を振り返っても、とても始められる状況になかった。延期は当然の判断」と、ある病院団体関係者は指摘する。

準備担当者は「なぜ延期?」

 一方、新制度の研修プログラムの策定や調整に力を注いできた関係者からは、延期に納得できないという声も聞こえてくる。

 「新制度を2017年度に開始するのはあまりにも拙速だ」と幾つかの病院団体は発言していた。これに対し、日本整形外科学会副理事長の大川淳氏(東京医科歯科大学大学院整形外科学教授)は、「『拙速』とは言い過ぎではないか。これまで機構は学会と3年も4年も掛けて議論してきた。学会は研修施設に対して繰り返し説明してきたし、何年も掛けて準備を進めていた制度だ」と憤る。

 基本領域の研修プログラムの準備作業を担当する学会関係者は、「延期の理由がいまだに分からない」と首をひねる。「研修プログラムのどこが悪いのか、具体的に指摘してくれれば修正に向けて動けるが…」(同関係者)。この関係者の学会も、質の高い専門医を養成するとともに、地域医療に悪影響が及ぶことのないよう、様々な対策を講じてきた(対策例は9月13日公開記事参照)。

 「度重なる変更の通知に右往左往しながら研修プログラムを作った。延期が決まって、さらに右往左往させられるのかと怒りを覚えた」と40歳代勤務医は本誌のアンケートに声を寄せている。領域によっては予算を割き、専攻医の研修の進捗状況を登録するデータベースを構築。施設間の連携をサポートする専門部署や人員を配置した施設もある。様々な調整や折衝を繰り返して2017年度スタートに間に合わせようとしてきた関係者たちが、1年延期と知らされて抱くのは安心感か、徒労感か。「延期の本当の理由が開示されていない気がする。それを教えてもらえなければ、今後も話は進まないだろう」。先の学会関係者は延期決定の背景をこういぶかしむ。

 新専門医制度の延期により、2017年度の専門研修は各領域の学会が独自に判断して行うことになった。これまで準備を進めてきたプログラム制を採用あるいは部分的に採用する学会もある。こうした領域では、新しい仕組みを運営する上での具体的な課題が今後浮かび上がってくるだろう。

 新専門医制度の設計の当初から掲げられている「プロフェッショナルオートノミー(専門家による自律性)」。今回の延期は、オートノミーが働いた結果なのか。まずはそこに至るまでの経緯を振り返る。

新専門医制度の延期をどう思う?

安堵

●準備期間ができて良かった。(50代勤務医、呼吸器内科)

●慌てて作ったプログラムなどを見直すにはいいでしょう。(60代診療所勤務医、小児科)

●専攻医の待遇の問題など、決まっていないことがたくさんある。それらをさらに検討する時間ができた。(50代勤務医、呼吸器内科)

●大学の医局から派遣されている医師が引き揚げられる予定だったが、その時期が延びた。(50代勤務医、消化器内科)

●当院は日本内科学会の教育関連病院だが、新制度では研修基幹施設になり損ねた。1年延期になったことで、内科志望の後期研修医に声を掛けやすくなった。(50代勤務医、一般内科)

●延期決定後に研修希望者が増加した。(60代勤務医、呼吸器外科)

嘆息

●従来の学会の専門研修プログラムであれば、当院単独で後期研修医の募集が掛けられた。しかし、日本専門医機構の基準にのっとった研修プログラムだと、指導に適した専門医の数が少ないということで、募集は断念せざるを得なかった。今さら延期されても、もはや募集は掛けられないし……。(50代勤務医、麻酔科)

●延期によって、専攻医が当院に来てくれる可能性は少なくなった気がする。要件は満たすが、専攻医に「良い経験ができた」と感じてもらうためには、スタッフの意識も大事だと思う。開始が延期されるにつれ、そういった士気も薄れるため、漫然とした延期はしてほしくない。(40代勤務医、精神科)

●進路に総合診療専門医を考えてくれていた初期研修医の気持ちが、他の領域に移ってしまうのではないかと思う。(50代勤務医、総合診療科)

●度重なる変更の通達に右往左往しながら研修プログラムを作った。延期が決まって、「どこまで右往左往させられるのか」と怒りを覚えた。(40代勤務医、放射線科)



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t275/201609/548200.html
特集◎始まらない新専門医制度《2》
実録◆新専門医制度の延期が決まるまで

2016/9/9 加納亜子=日経メディカル

2017年度スタートを目指し、各診療領域の研修施設群が続々出来上がる。しかし、準備作業が進むにつれ、医師の地域偏在が悪化するという懸念が顕在化。異例の大臣談話も飛び出し、新専門医制度は延期となった。

 「制度導入に伴う漠然とした不安感を払拭できなかったことが延期につながったのだろう」。日本専門医機構・前理事長の池田康夫氏は延期に至った経緯を振り返ってこう語る。

 専門医制度は専門医の質の向上と標準化を目指し、1981年に22学会の代表からなる学会認定医制協議会が設置されてから、長い時間を掛けて議論が続けられてきたもの。厚労省の「専門医の在り方に関する検討会」(座長:高久史磨氏[当時の自治医科大学学長])が2013年に報告書をまとめたことで、2017年度の新制度創設に向けて具体的な議論が始まった。この報告書にプロフェッショナルオートノミーを基盤に制度設計することが記載されたのを受け、研修プログラムの審査・認定や専門医の認定・更新を担う中立的な第三者機関として機構が設立された。設立時には、日本医学会と日医、全国医学部長病院長会議が、構成員である「社員」になった。その後、四病院団体協議会(四病協)や医療研修推進財団、医学教育振興財団も社員に加わっている。

複数の施設で研修を実施

 主要な医療系団体の大半が手を組んで作った新専門医制度の基本設計は以下の通り。初期研修修了後、専門医資格の取得を望む医師は、後期研修医(専攻医)として内科や外科など基本19領域のいずれかの研修を受け、専門医資格を取得する。その後、サブスペシャリティー領域の研修を受け、その専門医資格も取得する(図1)。

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図1 新専門医制度の構想(取材を基に編集部作成)
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 研修は、一定の施設基準を満たした施設(専門研修基幹施設)が策定する研修プログラムに沿って行われ、修了すると専門医の受験資格が得られる。研修プログラムは、基幹施設を中心に複数の施設が集まった「専門研修施設群(施設群)」で行われる。専攻医は研修期間中に複数の施設を回ることが定められている(図2)。

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図2 新専門医制度における専門研修施設群の構成(取材を基に編集部作成)
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 各領域を担当する学会は、専攻医に何を学ばせ、どのような人物が指導医になるべきかなどを示した「専門研修プログラム整備基準」を作成。各施設群は、その内容を基に地域の状況を勘案しながら研修プログラムを作成する。整備基準に沿った研修内容かどうかは、学会と機構が評価する。

 機構は学会の協力も仰ぎ、2017年4月の新制度開始に向けて急ピッチで仕組み作りを進めていた。

 雲行きが怪しくなったのは、2014年12月に内科や外科など18の基本領域を担当する学会が機構の社員に加わった頃から。研修プログラム策定や認定の実務を各学会に頼らざるを得ない以上、避けられない判断ではあったが、中立的な第三者機関として各学会の取り組みを評価・認定する立場の機構に、被評価者である学会が社員として加わることに批判が集まった。

 加えて、「新専門医制度を導入することで、都市部の基幹病院に若手医師が集中するのではないかと不安視する声や、大学病院など地域の中核病院から派遣されていた中堅医師が基幹施設の指導医になるために引き揚げられるのではないかといった懸念の声が寄せられていた」と全日本病院協会会長の西澤寛俊氏は言う。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t275/201609/548200_2.html
特集◎始まらない新専門医制度《2》
実録◆新専門医制度の延期が決まるまで

2016/9/9 加納亜子=日経メディカル

延期要望の口火を切った日医

 制度に対してくすぶっていた不安が顕在化したのは2016年2月。研修プログラムの準備が各地で進む中、制度導入が医師の地域偏在を助長するといった声が地域の医療機関を中心に挙がり始めた。

 こうした声を受け、日本医師会会長の横倉義武氏は2月17日、「新専門医制度の導入時期を2017年度以降にすることも視野に入れるべき」と機構に要望した。翌日、厚労省で開催された社会保障審議会医療部会では日医副会長の中川俊男氏が「新専門医制度の開始は延期すべき」と主張。これに複数の委員が賛同し、制度の開始時期を改めて検討する「専門医養成の在り方に関する専門委員会」(以下、専門委員会)の設置が決まった。機構の設立時からの構成員である日医が手のひらを返すような主張をしたことで、2017年度開始のスケジュールに暗雲が広がり始めた。

 「日医の委員は、制度の理念と研修の仕組みに理解を示し、共に各地で説明会を実施していた。にもかかわらず、組織として延期を求める姿勢には納得できない」と池田氏は吐露する。

 反発を受けつつも、当時の池田氏は「開始延期はさらなる混乱を招く」と主張し続けていた。「反対の姿勢を示した横倉氏も、その後の機構の社員総会で『延期ありきではない。部会の意見を重く受け止めて、しっかりと議論をすべき』と話していた。日本医学会長の高久氏も『絶対に延ばしてはならない』という考えを持っていた」(池田氏)からこそだ。

 その後、専門委員会で、機構や基本領域の各学会が地域医療への配慮を含め、新制度への取り組み状況を報告した。しかしその一方で、地域における施設群の構成や定員設定の調整を担う地域連携協議会が適切に機能していないことも報告され、地域連携協議会の動向を中心に議論が展開。日医や病院団体が「地域での調整が進んでいない状況で制度を始めてしまえば、地域医療に悪影響を来しかねない」と主張し、議論は膠着した。

 その間、各地の施設群が作成した基本19領域の研修プログラムは、整備基準に則して専門医の質を担保する研修内容となっているのかを学会が評価・認定する一次審査をほぼ終えており、機構による二次審査が行われないまま棚上げされることになった。専攻医の定員数の調整方針が定まらないため、機構が研修プログラムの精査・認定に進めず、来年の専攻医に向けて施設群を示すこともできない状況に陥っていた。

定員調整の折衷案は認められず

 2017年4月に制度を開始するには、16年7月には研修プログラムを開示し、専攻医の募集を始める必要がある。その期限が迫る中、打開策として挙がったのが、準備が整った基本領域の学会が先行して研修プログラムでの研修を始める案だ。併せて地域偏在助長を防ぐため、専攻医に定員を設けることも提案された。この案を示したのは専門委員会の委員長の永井良三氏(社会保障審議会医療部会部会長、自治医科大学学長)だ。

 委員長案では、機構に集約されていた権限を、専門委員会と都道府県、学会、機構に振り分けて制度を進めるとした。機構が評価・認定する研修プログラムを、実質的に学会が評価・認定する形に変更する。それとともに、専攻医数の激変や医師の地域・診療科偏在を防ぐ目的で、診療科、都道府県、研修プログラム別に専攻医の定員数を定める仕組みだ。定員数の調整は、過去3年間の採用実績に基づき、「都市部」では過去の採用実績の1.0倍、「都市部以外」は1.2倍とした。

 専攻医の定員数調整に言及した委員長案を、厚労省の関与によるものとみた病院団体は、「プロフェッショナルオートノミーを重視すべき」と猛反発し、行政の介入をけん制。学会側も「逆に医師偏在を助長する」と懸念を示した。機構の動きが止まったまま議論も進まなくなったことで、各学会は2017年度の研修を、新制度に向けて準備してきた研修プログラムで実施するか、それとも既存の制度を継続するかの判断を迫られることになった。

延期を決めた異例の大臣談話

 各学会が周りもうかがいながら内部で議論を進める中、6月7日に日医と四病協が制度導入に伴う地域医療への影響を懸念する声明を発表。機構の意思決定プロセスや財務の不透明さなども指摘し、改めて制度導入時期を延期して既存の学会専門医の仕組みを維持するよう学会に求めた。

 同日には日医と四病協の声明とほぼ同じ内容を記した異例の厚生労働大臣談話を塩崎恭久厚労相が出した。対して機構理事長の池田氏は、「大臣談話に基づき、地域医療体制に関する精査を一層進め、研修医を含む医師の不安を払拭しながら、新たな専門医制度の実施に向けて努力する」と各学会に向けてコメントを述べた。

 談話の意図を汲んで出したつもりの池田氏のコメントに、塩崎厚労相は談話の趣旨が全く踏まえられていないとして「大変遺憾」と発言。続けて念を押すかのように、日本医学会が日医と連名で新専門医制度の導入を「一度立ち止まり、集中的な精査を行った上で対応方針を決める」よう、各学会に文書で求めた。

 この文書について、日本医学会の高久氏は「日医と日本医学会が出したことになっているが、あの声明は出すはずではなかった。『一度立ち止まる』よう求めることに同意はしておらず、準備が整った学会は新制度での研修を進めるべきと考えていた」と打ち明ける。また、池田氏は「結果として大臣談話が制度導入を延期する決め手になった。大臣の談話が出された政治的な背景を十分に理解していなかったことが問題だったのだろう」と振り返る。

 各団体が数日置きに見解を示す中、機構は役員の任期満了に伴い、日医や病院団体を含む役員ら10人による「役員候補者選考委員会」(委員長は日医の中川氏)で機構役員の改選を実施。理事を一新した。新体制となった機構が出した結論が「新専門医制度は2018年度を目途に19の基本領域で一斉スタートを目指す」。1年延期の方針だった。

 新しい方針では、2017年度の専門医養成のやり方は各学会に判断を任せている。だが、その研修で取得できる専門医資格はあくまで学会認定の資格。新制度に向けて準備した研修プログラムに基づく制度を導入する場合は学会の責任で行うこととし、地域医療への配慮について機構と話し合いながら進めるように要請した。

 結果として、機構に課された「医師の地域偏在を悪化させないことを示す」という難題は据え置かれた。機構は2018年度の制度開始に向け、早急に解決策を提示する必要がある。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t275/201609/548204.html
特集◎始まらない新専門医制度《3》
基本領域19学会、来年度の専門研修はこうなる

2016/9/12 増谷彩=日経メディカル

2017年度の専門研修については、機構による研修プログラムの認定を行わず、各学会が独自に実施する。しかし、だからといって地域医療への配慮の明示を先延ばしにすれば、1年もたたずに再延期論が巻き起こりかねない。

基本領域19学会の動向

現行制度と併用する学会も

 各学会は、2017年度の専門研修をどのような方針で実施するのか。機構の発表では、新たなプログラム制による専門研修を行うのは小児科と耳鼻咽喉科、病理科。現行制度と併用するのは整形外科、救急科、形成外科で、合わせて6学会が新制度に向けて作成した研修プログラムを使用する。

 それ以外の学会は、ウェブサイトなどを通じて現行制度を継続すると表明している。表1に、各学会の来年度の方針をまとめた。

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表1 各学会の2017年度専門研修の方針(取材を基に編集部作成)
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 ただし、「現行制度を継続」としている学会も、新制度に向けて構築された研修施設の連携体制を生かすことができたり、研修の内容が新たなプログラム制に近くなっていたりと、その中身にはかなり幅がある。

 例えば日本内科学会は、従来行ってきた1年間の認定内科医の研修、つまり現行制度を継続する。一方で、内科専門医の新設に向けて準備していた施設群の連携体制を利用することも可能だ。その中に、現在の認定医制度に参加していない施設が含まれていても、学会が認めれば研修を実施してよいとしている。

 2017年度から新制度に移行する前提で施設間の契約を結んでいたり、専門の部署や人員を配置するための予算を確保している施設は、新制度の仕組みを動かさざるを得ない事情もある。「特に、これまで付き合いのなかった施設同士が連携しようとしていた場合、気軽に1年延期できるものではない」。内科学会認定医制度審議会の横山彰仁氏(高知大学病院長)は、上記の措置を講じた理由をこう説明する。

 日本小児科学会は、研修プログラムによる専門研修の実施を表明した。同学会副会長の竹村司氏(近畿大学小児科主任教授)は、「1年延期するよりは、新プログラム制をまず走らせ、そこで見えてくる地域医療や定員の問題を検討して修正し、2年目に反映させる方が合理的だと考えた」と語る。

他科からの転向ルートを確保

 日本救急医学会は、新プログラム制と現行制度の併用を表明している。

 初期研修修了直後の医師は、研修プログラムに所属する。並行して、1年以上の専従歴を含む救急勤務歴と経験症例リストによる診療実績審査を基本とし、筆記試験に合格すれば専門医資格が得られる現行制度も継続して実施する。

 毎年400人ほど誕生している救急科専門医の約半数は、他科で診療経験を積んだ医師だという。こうしたベテラン医師が若手と同じ研修を求められるとなれば、救急科専門医が激減する可能性がある。これを避けるため、他科の医師が救急科専門医にキャリアチェンジしやすいルートを確保する必要があるわけだ。

 しかし、2018年度の新制度一斉スタート時に、研修プログラム以外のルートを用意できるかは未定だ。

 これは救急科だけではなく、リハビリテーション科や臨床検査科など、他科から転向する医師が多い科に共通する課題だ。将来的には複数の専門医資格の取得、いわゆる「ダブルボード」をどう考えるかという問題となり、機構も早急に検討すべきテーマとしている。

総合診療は在り方から再検討

 新専門医制度の目玉の1つだった総合診療専門医の新設。機構は、2017年度に総合診療を志望する医師については、「日本プライマリ・ケア連合学会が実施する家庭医療専門医の取得を推奨する」とした。

 総合診療専門医は全くの新設となるため、1年の延期によって、曖昧になっている部分が明確にされることが期待できる。そもそも、一般の患者には内科と総合診療科の違いが分かりにくい。医療界でも、総合診療専門医のイメージはバラバラで、いまだに一致していない。国民にとって分かりやすい制度にするためには、定義をもう少し整理する必要がある。

 総合診療専門医の創設を提唱した「専門医の在り方に関する検討会」で座長を務めた高久史磨氏は、総合診療専門医像を「英国のGP(一般医)のようなゲートキーパーの役割を果たす医師。全医師の3~4割程度がこの機能を担わなければ、日本の医療が持たない」と話す。

 総合診療専門医をこう位置付けるのであれば、機構内で現在想定されている研修内容の水準は高過ぎるという指摘も聞かれる。「総合診療専門医の研修に、とても厳しい医療レベルを求めるべきではない」と高久氏は強調する。

 総合診療専門医の在り方は、新体制の機構でも重要な課題。定義の再確認から始める必要があるだろう。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t275/201609/548207.html
特集◎始まらない新専門医制度《4》
専門医の募集定員数は「都市部で絞る」

2016/9/13 増谷彩=日経メディカル

地域医療への配慮

募集定員数は都市部で絞る

 新制度スタートに避けては通れない「地域医療への配慮」。今年5月の委員長案では、専門医の需要に応じて、診療科ごと、都道府県ごとに専攻医の定員を設定する必要を指摘。その中で、現時点では都道府県ごとの定数を、過去3年間の採用実績の1.1~1.2倍とする案が出された。これを受け、機構は2017年度に新たな研修プログラムの運用を始める学会は、都市部に研修医・指導医が集中することがないよう、定員数を昨年の採用実績の1.2倍に設定するなどの対応を求めた。

 小児科学会は新制度への準備を進める中で、地域医療対策も入念に行い、各研修プログラムの募集定員は過去3年間の専門医養成実績の平均からプラス5人以内と設定していた。加えて、小児人口と小児科専門医の比率を都道府県ごとに算出し、大都市圏の基幹施設の定員を減らしている。

 日本整形外科学会は、都市部(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県)は専攻医の定員をあまり増やさないよう、実績値の1.2倍を上限にしたという。都市部以外は実績よりも増やせるよう、余裕を持たせた基準として、専攻医数の上限を2倍とした。

 日本整形外科学会副理事長の大川淳氏(東京医科歯科大学大学院整形外科学教授)は、「募集定員を平均すると実績の2倍、3倍になっているという声をよく聞くが、地域ごとに定員のルールを変えるなどの学会側の配慮や取り組みを何も理解していない的外れな指摘だ」と強調する。

 内科学会認定医制度審議会の横山彰仁氏(高知大学病院長)は、「定員は非常に重要だが、規定するなら診療科の足並みをそろえてもらわなければ困る。また、外科や産婦人科など、医師が足りていない診療科の定員を実績値の1.0倍に設定すれば、明らかに疲弊が進む。何らかの基準を基に、診療科ごとに適切な定員数を算出してほしい」と要望している。

大学中心だが「集中」ではない

 基幹施設が大学病院に偏っている領域があることも、地域医療に悪影響を及ぼす要因だと批判されている。

 基幹施設のほとんどが大学病院という指摘でよく例に挙げられるのが、整形外科だ。整形外科学会は、各施設にいる指導医数や専門医数を調査し、大学病院と同程度の教育環境を備えた医療機関を調べて基準を設定。その結果、基幹施設のほとんどを大学病院が担うことになった。

 さらに、「専門医を名乗るに足るしっかりとした知識と技術を身に付けてもらいたい」(大川氏)という思いから、研修プログラムでは、大学病院で6カ月以上の研修を受けることが望ましいとしている。その結果、専攻医を大学病院に集中させる研修だと批判を集めることになった。

 しかし、大川氏は「大学病院が中心となる研修プログラムを作成してはいるが、専攻医が大学病院にいるのはたったの6カ月。専攻医を大学に集中させる意図はない」と言う。

 また、「都市部の大学病院は現在、地方に数多くの後期研修医を派遣している。単純に都市部の研修プログラムの定員を制限すると、地方に派遣できる医師数が減少することになる」とも危惧する。

 もっとも、「大学病院に押さえられ、市中病院が基幹施設になれなかったケースが実際に幾つかあった。それを聞いて、地域の医療機関が危機感を募らせたという事情がある」とも、高久氏は話す。大学病院が研修プログラム作成を強引に進めたことによって問題が生じているケースがないとは言えないだけに、市中病院の不安を払拭するための個別対応も必要となるだろう。

基準を緩和し研修施設数増へ

 いったん定めた研修施設基準を緩める措置を取った領域も多い。「従来は学会の専門研修認定施設だったが、新制度に向けて学会が作成した研修プログラム整備基準の施設要件が厳しいために、施設群に入れなかった医療機関がある」という指摘に対応するためだ。

 内科学会は、常勤の指導医がいなかったり、症例数が少なくても施設群に入れる「特別連携施設」を設定した。そのため、新制度で内科の専門研修を行える施設は、従来の学会認定研修施設から2000施設ほど増加し、全ての二次医療圏に1施設は配置されていた。

 小児科学会も、指導医が在籍していない施設でも専攻医が電話などで指導を受けられるような状況であれば、施設の規模を問わず研修施設として認める「研修関連施設」を設けた。結果、現行制度における学会認定施設の全てがいずれかの研修プログラムに含まれることになり、二次医療圏の全てを網羅した専門研修体制を実現した。

 整形外科領域では、少し基準を緩めた『II型』の基幹施設からなる研修プログラムを新たに設ける措置を取り、大学病院以外も基幹施設になれるようにした。

 従来の整形外科学会認定研修施設のうち、新制度の研修プログラムに入っていない施設は300弱ある。しかし学会の調査では、こうした研修施設の多くは、専攻医に当たる年次の医師が元から勤めていなかった施設だ。研修実績があるにもかかわらず、新制度で研修施設になれなかったのは19施設のみ。「そうした施設は研修プログラムに入れるよう、地域の大学病院に斡旋している」(大川氏)。

 内科学会も、現行制度では後期研修医の受け入れ実績があるのに新制度では基幹施設にも連携施設にもなっていない8施設に対し、聞き取り調査を実施し打開を図っている。

 それでも各施設の事情や歴史的経緯の影響から、調整がうまくいかないところはある。「こうした背景や事情があることを鑑みず、研修プログラム整備基準が悪いと一方的に決めつけて批判されるのは非常に残念」と大川氏は言う。

地域での研修、その期間は?

 各学会が前述のように施設基準の緩和を行うなど、研修プログラムに参加する施設の増加に努めたため、新しい専門研修を行える施設が従来より増えた領域も多い。

 一方で、施設が増えたために専攻医が行き渡らなくなるというジレンマもある。

 雇用関係が複雑になるなどの理由から、内科学会は当初、基幹施設、連携施設ともに最短1年の研修を行うつもりだったという。しかし、「それでは自施設にローテートしてこないという連携施設の声を聞き、連携施設に最短3カ月から行けるようにした」と横山氏は説明する。

 詳細は研修プログラムによって異なるが、整形外科学会も最短3カ月のローテーションができる基準になっている。この期間の設定について大川氏は、「地域医療の現場では、1年は腰を据えなければ戦力にならないという考えはあるかもしれない。しかし、4年間の研修のうちの1年間を、十分とはいえない指導環境の施設で専攻医に過ごさせる研修プログラムでは、専門医の質が担保できない」と語る。

 各学会は延期した1年の間に、地域医療と研修内容、専攻医の待遇などのバランスを見て、診療科の特性に合わせた対策を講じていくことになる。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t221/201609/548240.html?ref=RL2
シリーズ◎どうなる新専門医制度
内科と外科でサブスペ研修の連動を検討へ
研修プログラム認定料(5年)は14万円から1万円に

2016/9/9 増谷彩=日経メディカル

 日本専門医機構(以下、機構)は2016年9月7日、理事会を開催。基本領域の内科と外科の専門研修プログラムの中で、その後に取得するサブスペシャリティー領域の研修も積める仕組みの検討を進めること、専門研修プログラムの認定プロセスや認定料、各専攻医の専門医資格認定料などについて、方針を固めた。理事会で決めた内容は今後社員総会に諮られる。

基本領域研修でサブスペの経験積める仕組みを内科と外科でまず検討

 新しい専門医制度では、循環器内科や心臓血管外科などサブスペシャリティー領域の専門医資格は、内科や外科など特定の基本領域の専門医資格を取得した後に専門研修を受けて取得する仕組みとなっている。しかし、内科系のサブスペシャリティー領域などでは、専門医資格を取る時期が従来より遅れ、地域への専門医の供給や個々の医師のキャリア形成に支障を来すといった指摘がされてきた。

9月7日、理事会後の記者会見で基本領域とサブスペシャリティー領域研修の連動などの方針を示した。

 現在、機構が認定しているサブスペシャリティー領域は29領域。このうち、特に内科領域の2階部分に当たる13のサブスペシャリティー領域、外科領域の4のサブスペシャリティー領域については、基本領域の専門研修プログラムと連動した専門研修にしたいという強い要望があった。そのため、まずは内科や外科の専門研修プログラムをよりフレキシブルなものにすることを認め、基本領域の研修期間内にサブスペ領域の研修も積める仕組みについて、学会間で検討を進めることを促す。他の領域についても、妥当性を順次検討していく方針だ。

 基本領域の専門医資格を1つ以上取得する、いわゆる「ダブルボード」についても、「基準が適切であれば取得できるようにすべき」という方針を了承。その基準については、今後検討するとした。

専門研修プログラムの1次審査は学会が実施

 専門研修プログラムの認定プロセスは、従来のプロセスを変更することとなった。これまでは、各領域の学会から選出された委員が主体となった専門委員会を機構内に設置し、ここで専門研修プログラムの内容や施設を評価する1次審査を行っていた。この1次審査に当たる審査を、今後は機構が定めた基準に則って各学会で実施することとする。2017年度スタートに向けて今年行われた1次審査の主体は各学会となっていたので、現状を追認したといえる。

 その後、各基本領域から1人ずつと機構内の委員から成るメンバーで、専門研修プログラムを審査し、機構として認定する。専門研修プログラムの認定については再検討となるが、「リセットではなく、(2017年度の開始に向けて)積み上げてきたものは十分生かす」と機構理事長の吉村博邦氏は強調した。

 この変更とともに、専門研修プログラムの認定料も変更。1プログラムごとの認定料は「初年度10万円、5年後の更新までに年1万円ずつ」と定めていたが、「5年分の認定料として初回に1万円」に変更する。

 専攻医が支払う専門医資格の認定料についても、方針を決定。認定料は各領域の学会が徴収し、その額は学会の判断に任せる。学会は機構に、そのうち1万円(1人当たり)を納付することとする。

 専門医資格の更新についても、「地域で活躍されている専門医の過度な負担とならないようにしていきたい。具体的には、学術集会や特定の講習会に参加しなければ専門医資格を更新できないといったことがないようにしたい」(吉村氏)と説明した。


  1. 2016/09/13(火) 05:51:54|
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