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地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

8月30日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/451361
シリーズ: 真価問われる専門医改革
総合診療専門医、質とコストの両面で有用 - 尾身茂・JCHO理事長に聞く◆Vol.3
必要数の決定には「日本の国民の決断」も

2016年8月30日 (火) 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――では、新たに基本領域の専門医として加わる総合診療専門医について、どうお考えですか。

 一つの専門領域として極めて重要だと思います。総合診療専門医の医学としての専門性は、他の基本領域とは別に存在する固有のものです。それは若い医師が内科、外科などの各診療科を数カ月単位で研修したくらいで獲得できるものではありません。マクロな視点、そして患者さんの視点、両方から考えても、総合診療専門医は必要です。

 まずマクロな視点です。欧米では、幅広くさまざまな疾患を臨床の一線で診ることができる医師と、その後方に専門医がいて、両者がうまく役割分担をしている地域と、そうではない地域では、前者の方が、医療の質、医療のアウトカムが高いというエビデンスが出ています。さらに、その2次的な効果として医療費も削減できることが分かっています。

 日本の医療機関の7、8割は中小病院です。ベッド数100~200床の病院が、日本の地域医療を支えています。しかし、ここ10年くらいの期間で見ても、例えば医師が16人くらいいた病院が、6人まで減少するなど、医師不足に直面している医療機関は多い。それはなぜか。単に「医師が足りない」「医師が都会に集中してしまう」という議論になりがちですが、実は総合診療専門医の話と非常に関係があります。

 都市部の大病院とは異なり、中小病院では、夜間は医師が1、2人のみで当直しているケースが少なくありません。しかし、例えば、「今日は小児科の先生が当直だから、小児の患者しか受診しない」という事態はあり得ないのです。発熱や腹痛を訴える高齢者、あるいは妊婦など、さまざまな患者さんが来るわけです。小児科の先生が、「私は診ることができません」と断ると、「たらい回し」と問題視される。良心的な先生ほど、「悪いことをした」と思い、ストレスを感じるようになってしまうのです。それで辞めていく。これに対し、総合診療的なトレーニングを受けた医師が当直していれば、幅広い患者に対応できます。


総合診療専門医の必要性を説く尾身茂氏。その必要数の決める際には、データ等のみではなく、「あるべき医療」についての国民の決断が求められるという。

 一方、患者さんの視点で考えてみると、特に高齢になると、複数の疾患に罹患することが多い。専門医は、自分の専門領域については、非常に深い知識と経験を持っています。しかし、患者さんは「私は肺の病気です」と訴えて受診するのではなく、「胸が痛い」「咳が出る」と訴えてきます。ところが胸が痛いからといって、心臓の病気とは限らず、それを見極められる医師がまず診ることが、疾患の見落としなどを防ぐために極めて重要です。またよく言われることですが、複数の疾患を有している患者さんが各科で処方されていたのでは、薬の種類や量は増えるばかり。ポリファーマーシーの問題に対応するためにも、総合診療専門医のように、一人の患者さんを全人的に診る医師が必要です。

 各基本診療領域の専門医の将来の必要数は、総合診療専門医をどの程度養成するかによっても変わってきます。この点の議論もしておかないと、各領域とも「もっと医師がほしい」といった意見になりがち。総合診療専門医の数を急速に増やすことはできませんが、10年、20年経った時点での医療提供体制を踏まえて、今からどんな医師を養成すべきかを議論することが必要です。

――総合診療専門医が担う医療の範囲や必要数を議論しないと、各基本診療領域の専門医の必要数は決まらない。

 そうです。総合診療専門医は、何も診療所医師に限りません。いずれは中小病院では「ホスピタリスト」として活躍する人がでてきます。全国の中小病院のニーズを聞くと、「総合診療的な能力を持っている人がほしい」との答えが帰ってきます。こうした実情は、大学病院にいるとなかなか分かりません。大学病院での医療、地域の一般病院や診療所での医療、その両方の担い手が必要なのです。この観点がないと、いくら医師の養成数を増やしても、「医師不足」は解消しません。

――尾身先生は「根拠に基づく意思決定」の重要性を指摘されています。どんなデータがあれば、今お聞きした辺りの建設な議論が可能なのでしょうか。

 大きく分ければ二つ。まず現状がどうか。現在の様々なデータを統合、分析すれば、地域別、各領域別の疾患数は相当程度分かります。それに将来の人口動態、疾病構造の変化、道路事情などをおおよそ把握することができれば、必要な専門医の数もある程度推計できます。

 ただし、総合診療専門医の必要数を決めるに当たっては、そのような推計と同時に、医療界のみならず「あるべき医療」についての日本の国民の決断が必要になります。「総合的に診る医師が必要」と同意できれば、総合診療専門医の養成に力を入れていく。医療制度の在り方を検討する際には、データも必要ですが、それだけでは決まらず、国民の価値観が入ってきます。その際、欧米諸国の現状を参考にしたり、我々の想像力を働かせることが必要です。欧米諸国では、国による違いがありますが、医師全体の2、3割は総合診療専門医が占めます。この議論を進めると、イギリスの「人頭払い制」を想起する人もいますが、そうではなくフリーアクセスは確保しつつ、限られたリソースをどう活用するかを考える時代に入ってきたということです。

――日本医師会は、医療提供体制で考えるべきは「かかりつけ医」であり、「総合診療専門医はあくまで学問的な面から評価したもの」と説明されています。先生は、地域医療の担い手としての総合診療専門医の位置付けをお考えになっている。

 過渡期の話と、将来の話を分けた方がいいでしょう。私は、総合診療専門医は19番目の基本診療領域の専門医として認められたのであり、地域医療の担い手として、総合診療専門医は重要だと考えています。ただし、その養成には時間がかかります。過渡期の対応として総合診療専門医としての正式な研修を受けていなくても、現実に総合診療的な医療をやっている医師はたくさんいるので、そういう人の役割を評価していくとともに、今後はシステムとして総合診療専門医を養成していくことが必要になっています。

――何年後かは分かりませんが、将来的には「かかりつけ医、イコール総合診療専門医」となってくる。

 じっくりと徐々にそうした体制を作り、最終的には国民が選んでいくことだと思います。



https://www.corporate-legal.jp/%E6%B3%95%E5%8B%99%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/%E6%B3%95%E5%8B%99%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0/7576
労基署が千葉県立病院に立ち入り調査、当直勤務に必要な許可について
法務コラム mhayashi
2016/08/30 18:09  企業法務ナビ(ブログ)


はじめに

日経新聞電子版は21日、千葉県立の6病院で労働基準監督署の許可を取ることなく医師を夜間、休日の当直勤務をさせている旨報じました。千葉労基署はこれらの病院の一部について立入検査を実施しました。従業員に深夜・休日の当直勤務に就かせる場合には労働基準法上、労働基準監督署長の許可を要します。今回は許可要件等を概観していきます。

事案の概要

千葉県によりますと、千葉県がんセンター(千葉市中央区)はこれまでに数回、医師を当直勤務させるための許可申請をおこなっていました。しかし勤務内容が通常業務と変わらないとして許可要件を満たさず不許可となっておりました。その後も許可を得ることなく医師に当直勤務をさせている疑いがあるとして千葉労基署が今年5月県がんセンターに立ち入り検査を実施していました。県がんセンターは無許可で当直勤務させていることにつき違法であるとの認識はあったが、医師不足により許可基準を満たす勤務体制を構築することは困難で、早急な解決は難しいとしています。同県がんセンターでは過去に腹腔鏡手術を受けた患者11名が死亡する問題が発覚しており、第三者委員会の調査では医師の過重労働や人員不足が原因である可能性がある旨指摘されておりました。千葉県立の6病院は同様に許可を得ること無く当直勤務に当たらせていることが判明しております。

労基法上の規制について

労基法32条によりますと、使用者は休憩時間を除き労働者に1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならないとしています。この法定労働時間を超えて労働させるためには、会社の代表と労働者側の代表が書面により時間外労働を行う旨協定を結び、労働基準監督署に届出る必要があります(36条)。これをいわゆる36協定と言います。36協定を締結すれば時間外労働が無制限に行えるというわけではなく、一部例外はありますが原則月45時間、年360時間が上限となります。次に労働時間によって一定の休憩を与えることが求められます(34条)。労働時間が1日6時間を超える場合で45分、8時間を超える場合には1時間となっております。また週に最低1日の休日を与え(35条)、時間外労働や休日労働の場合には割増賃金の支払が義務付けられます(37条)。

適用除外について

これら労基法上の規制は一定の場合には適用除外となります。41条によりますと、①農林漁業に従事する場合(1号、別表1第6号、7号)、②管理監督者の地位にある者、③監視・断続的労働従事者に該当する場合は労基法4章、6章、6章の2の規定が適用除外となります。なお深夜労働に関する割増賃金(37条4項)については明文上の規定は存在しませんが実務・判例上適用除外とならず支払を要するとされております(最判平成21年12月18日)。②の管理監督者とは自己や他の労働者の勤務時間等をある程度決定する裁量権を与えられている地位にある者を言います。このような立場の者はある程度労働条件も優遇されており、労基法上の保護の必要性は低いとされております。ここに言う管理監督者に当たるかは職位や名称によって決まるのではなく、職務内容や責任、権限、勤務態様によって決まります。名称や職位だけ管理職のものを付され、権限や態様は他の従業員と変わらない場合を、以前問題となった「名ばかり管理職」と呼びます。そして③の監視・継続的労働とは監視業務や非常時対応等、通常の業務は行わず身体的負担の少ない業務を言います。本件医師の当直勤務もこれに含まれます。

監視・監督業務の許可基準

(1)一般的許可基準
厚生労働省の許可基準によりますと、監視・監督業務に当たるかの一般的な基準は以下のとおりとなっております。
①勤務態様
常態としてほとんど労働する必要がない勤務、原則として通常の労働の継続は許可しないこと。
②宿日直手当
1日または1回につき、宿直勤務を行う者に支払われる賃金の一日平均額の3分の1以上を宿日直て立てとして支払うこと。
③宿日直の回数
宿直については週1回、日直については月1回を限度とすること。
④その他
宿直については相当の睡眠設備を設置すること。

(2)医師・看護師の場合の許可基準
医師、看護師の場合は上記一般的許可基準の細目として以下の基準が挙げられております。
①通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のものであること。
②夜間に従事する業務は、一般の宿直業務以外に、病院の定時巡回、異常事態の報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温等、特殊な措置を必要としない軽度の、または短時間の業務に限ること。
③夜間に十分睡眠がとりうること。
④許可を得て宿直を行う場合に、通常業務と同様の労働を要する場合にはその時間については時間外手続を行い、割増賃金を支払うこと。

コメント

以上のように医師に当直勤務を行わせるためには労基法上の許可を得る必要があります。しかし労基法や厚労省の想定する監視・監督業務というものは本来通常業務に比して身体的負担が軽微で業務に従事していない時間が大半を占めるものであり、それ故に労基法上の例外とされていると言えます。上記医師の場合の許可基準にも、通常業務と同様の労働を常態として行わせる場合は許可要件に該当しないとされております。しかし通常医師の当直、宿直というものは軽度で短時間の検診のみならず、救急搬送患者の対応等、通常業務と変わらない勤務を強いられることが多く、許可基準を満たさないことが大半だと言えます。今年7月にも同様の事例が埼玉県の県立循環器・呼吸器病センターでも生じておりました。このような事態は全国的に発生しているものと思われます。無許可であるか、または許可を取得していても勤務実態が許可要件に反しているというような違法常態のまま営業がなされている状況と言えるでしょう。過重労働を防止しつつ、現場の必要性も考慮し実態に即した立法・行政上の調整が今後求められます。従業員に当直勤務を行わせている場合には、許可基準等、厚労省の今後の動きに注意が必要と言えるでしょう。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/49499.html
総合診療専門医の特任指導医講習会を延期- 専門医機構、今後の進め方検討へ
2016年08月30日 18時00分 キャリアブレイン

 日本専門医機構(機構)は、「総合診療専門医」の研修プログラムで指導に当たる医師(特任指導医)の講習会について、来月以降の開催を延期すると発表した。研修プログラムの延期などを踏まえた措置。機構は「総合診療専門医に関する委員会を設置し、今後の進め方等について早急に検討する予定」としている。【新井哉】

 機構は学会に代わって専門医の認定などを行う第三者機関として設立され、総合的な診療能力を持つ総合診療専門医の養成を来年4月から始める方向で準備を進め、養成にかかわる特任指導医の講習会を7月から開いていた。

 しかし、機構は、キャリアパスなどについて、さらに検討が必要だとして先月、総合診療専門医の養成開始の時期を先送りすることを決定。今月上旬には、総合診療専門医を目指す医師に向け、日本プライマリ・ケア連合学会が認定する家庭医療専門医になるための研修の受講を勧める声明を発表していた。

 特任指導医になるためには、講習会を受講し、レポートを提出する必要があった。今月下旬までに東京都と北海道で計5回の講習会が開かれ、来月以降も大阪府や福岡県などで計10回の開催が予定されていた。

 来月以降の講習会について、機構は「総合診療専門研修プログラムの延期、講習会内容の再検討等により、開催を延期させていただく」と説明。開催日が決まり次第、ホームページやメールなどで周知するという。

 当初予定されていた来年度の総合診療専門医の養成に関しては、日本プライマリ・ケア連合学会の家庭医療専門医が“代替手段”となる見通しで、同学会は、機構の特任指導医講習会を受講済みでレポートの審査が終わった医師に「暫定指導医資格」を付与し、来年4月から指導医として活動することを認める方針。



http://www.yomiuri.co.jp/chubu/news/20160831-OYTNT50014.html
治療中合併症で死亡 遺族に2000万円を賠償
2016年08月31日 読売新聞

 岐阜市民病院は30日、ステロイドを短期間で大量に投与する「ステロイドパルス療法」を受けていた70歳代後半の女性患者が合併症で死亡する医療事故があり、遺族側に約2033万円の賠償金を支払うことで示談が成立したと発表した。

 同病院によると、女性は昨年11月30日に意識障害で入院し、脳内で発症する自己免疫疾患の一つ「橋本脳症」と診断され、同療法が行われた。1日1グラムのステロイドを3日間連続投与する治療で、女性は1回目の治療で意識障害が改善する傾向がみられたが、2回目の治療後に容体が急変し、12月11日に死亡した。

 この療法は血糖値が急上昇する副作用があり、血糖値の上昇による利尿で脱水症状などを起こす「高浸透圧高血糖症候群」を合併した。女性は過去に糖尿病の治療歴があったのに、治療チームは治療中に血糖値を検査しておらず、適切な血糖コントロールができなかったという。

 冨田栄一院長は、「治療法の確立されていない橋本脳症という疾患に気を取られ、医師、薬剤師、看護師がチームで目を光らせることができなかった」と謝罪した。同療法を実施する際は、血液や尿検査の結果を電子カルテに記入するなどの再発防止策を講じたという。



http://www.zaikei.co.jp/article/20160830/324527.html
「外科医が麻酔後の患者にわいせつ行為」疑惑、術後の幻覚ではないとの指摘
2016年8月30日 17:31財経新聞
記事提供元:スラド

あるAnonymous Coward 曰く、 8月25日、全身麻酔による手術を受けた女性に対して「手術後の診察」と称してわいせつな行為をした疑いで男性外科医が逮捕される事件が発生したのだが(東京新聞)、これに対し「手術後のせん妄」(幻覚や錯覚)ではないか、との指摘が出ている。

 事件の現場となった柳原病院側も見解を出しているが、女性の供述は「全身麻酔による手術後35分以内のことであり、その内容は、手術前の恐怖や不安と全身麻酔で行った手術後せん妄状態での幻覚や錯覚が織り交ざったものと確信する」としている。

 日テレNEWS24によると、逮捕された医師が『女性患者の胸のしこりの摘出手術後に「傷口を確認する」などと診察を装って女性の胸をなめたり、胸を見ながら自慰行為をするなどわいせつな行為』をしたと報じられている。いっぽう病院側の主張では、女性は「満床在室の4人部屋におり、術後の経過観察に看護師が頻回に訪床する病床にいた。多くの目がある環境の中でA氏の供述の様な事が誰にも知られず行われたとは考えられない」という。これを踏まえ、病院側は「自白強要を目的とするものと言わざるを得ない」と主張している。

 これを受けて、医療関係者からも多くの擁護の声が出ているようだ。また、麻酔後の性的幻覚に対する調査結果論文の日本語抄訳も融資によって公開されている[鎮静と麻酔における、処置中ならびに処置後に生じる性的幻覚 (仮)]。



http://www.sankei.com/west/news/160830/wst1608300055-n1.html
17歳女子高生にみだらな行為 29歳の赤十字病院医師を買春容疑で逮捕
2016.8.30 13:22 産経ニュース

 熊本北署は30日、17歳の女子高校生に現金数万円を渡してみだらな行為をしたとして、児童買春・ポルノ禁止法違反(買春)の疑いで、熊本赤十字病院医師の男(29)=熊本市北区=を逮捕した。

 逮捕容疑は4月上旬、熊本市東区のホテルで女子高生とわいせつな行為をしたとしている。スマートフォンの交流アプリを通じて知り合ったとみられる。

 熊本赤十字病院の担当者は「捜査を見守り、処分を検討していく」と話した。



http://www.medwatch.jp/?p=10191
2015年に報告された医療事故は3654件、うち1割弱の352件で患者が死亡―日本医療機能評価機構
2016年8月30日|医療・介護行政をウォッチ

 2015年の1年間に報告された医療事故は3654件あり、うち9.6%に当たる352件が死亡事故、9.9%に当たる362件が障害残存の可能性が高い重篤なものであった。また、同じく2015年の1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例は78万4190件あり、うち2%は、仮に実施していた場合には死亡などの重篤な事故になっていた―。

 このような状況が、日本医療機能評価機構が29日に発表した2015年の「医療事故情報収集等事業」の年俸から明らかになりました。

ここがポイント!
1 療養上の世話、治療・処置、ドレーン・チューブで事故が生じる確率が高い
2 ヒヤリ・ハット事例は78万件超、死亡に繋がる可能性のあった事例も
3 ダブルチェックをしても、それが機能していないケースもある点には要注意
療養上の世話、治療・処置、ドレーン・チューブで事故が生じる確率が高い

 日本医療機能評価機構では、医療安全対策の一環として医療機関で発生した事故やヒヤリ・ハット事例を収集、分析する「医療事故情報収集等事業」を実施しており、定期的にその内容を公表しています。

 まず2015年に報告された医療事故の状況を見てみましょう。報告された医療事故は合計で3654件(国立病院など報告義務のある医療機関に限ると3374件)あり、事故の程度別に見ると、「死亡」が352件(事故事例の9.6%)、「障害残存の可能性が高い」ものが362件(同9.9%)、「障害残存の可能性が低い」ものが1030件(同28.2%)、「障害残存の可能性なし」が985件(同27.0%)などとなっています。半数近くで患者に何らかの障害が残っており、事故防止対策の強化が急がれます。

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2015年の1年間に報告された医療事故の概要

 医療事故の概要を見てみると、最も多いのは「療養上の世話」で1301件(同35.6%)、次いで「治療・処置」1109件(同30.4%)、「ドレーン・チューブ」と「薬剤」がいずれも260件(同7.1%)などと続いています。

 事故の内容と程度をクロス分析すると、「与薬」「治療・処置の管理」「治療・処置の実施」「ドレーン・チューブ類の使用」「転倒」などのミスで患者が死亡している状況が明らかになっています。重篤な事故の発生防止に向けた対策が必要です。

 また事故の発生要因(複数回答)を見てみると、「確認の怠り」が最も多く、事故全体の12.0%を占めています。次いで「患者側の要因」11.1%、「観察の怠り」10.4%、「判断の誤り」10.0%などと続きます。確認や観察の怠り、判断誤りなど当事者側の行動に起因する事例は、事故全体の45.6%とほぼ半数を占めており、すべての医療機関で、改めて「業務手順の見直しと遵守の徹底」などを行う必要があります。

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2015年の1年間に報告された医療事故の発生要因(複数回答)

 事故に関連した診療科(複数回答が可能)としては、整形外科(566件)、外科(352件)、消化器科(301件)などで多く、特に整形外科に注目すると、「療養上の世話」361件、「治療・処置」90件などに起因する事故が目立ちます。複数回答なので、上記とは母数が異なりますが、整形外科における「療養上の世話」に起因する事故は全体の8.0%、同じく「治療・処置」に起因する事故は全体の2.0%を占めています。

ヒヤリ・ハット事例は78万件超、死亡に繋がる可能性のあった事例も

 ヒヤリ・ハット事例に目を移してみましょう。

 2016年の1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例は合計で78万4190件で、その内訳は「薬剤」が最も多く25万7893件、次いで「療養上の世話」17万4691件、「ドレーン・チューブ」12万419件などで多くなっています。

 「ヒヤリとした、ハットした」にとどまり、実際に患者に誤った行為などをしていないケースが全体の約3割に当たる24万5730件ですが、仮に誤った行為を実施していた場合には2869件では「死亡」もしくは「重篤な状況」に至り、また1万5806件では「濃厚な処置・治療が必要になった」と考えられます。改めて「十分な注意」「ミスが生じない体制づくり」が必要と言えるでしょう。

 事例の発生要因(複数回答)を見てみると、「医療従事者・当事者の確認の怠り」(24.0%)が飛び抜けて多く、以下「観察の怠り」8.9%、「繁忙だった」8.7%、「判断の誤り」8.1%などと続きます。医療事故に比べて「確認の怠り」の割合が高くなっていますが、「大丈夫だろう」はあらゆる場面で大事故に直結する可能性があるため、現場の業務フロー(複数チェックも含めて)を改めて確認し、必要があれば見直すべきでしょう。

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2015年の1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例の概要

ダブルチェックをしても、それが機能していないケースもある点には要注意


 今回の年報では、具体的な事故事例(9事例)について詳細な分析を行い、再発防止策などを検討しています。このうち「エポプロステノール静注用」の希釈方法を誤った事例に注目してみましょう。

 ある医療機関では、胸部大動脈瘤の外科的手術に備えて、肺動脈性高血圧症の病態をコントロールするためにエポプロステノールを投与していましたが、看護師AおよびBの2名でダブルチェックを行ったにも関わらず、「希釈方法の誤り」というミスが生じてしまいました。

 院内には「学習会で練習し、取り扱いを理解した看護師のみがエポプロステノールを取り扱う」という内規がありましたが、経験不足や思い込み、別のルール違反などもあり、ダブルチェックが事実上機能していない状況にあったことが分かっています。

 このため事故が発生した医療機関では、▽エポプロステノールを部署における最重要薬剤に位置づけ、スタッフの再教育と混注手順・手技を再確認する▽特殊薬剤などの準備・投与は受け持ち看護師が最後まで継続して行う(そこにダブルチェックを組み込む)▽エポプロステノールの溶解(希釈)方法を注射準備台に表示する―などの改善策をとっています。

 こうした個別事例の研究を進めるとともに、それを一般化し、各医療機関で運用しやすい形にカスタマイズすることが事故防止には不可欠と言えるでしょう。



https://www.m3.com/news/iryoishin/434063
シリーズ: どうなる?「日本の未来の医療」
医師500人が予想、20年後の医療レベル◆Vol.14
「保険給付範囲」のレベル低下が最も危惧

2016年8月30日 (火) m3.com編集部

 前回、『社会保障、「アクセス」犠牲で維持◆Vol.13』では、厳しい国家財政の中で、「保険給付範囲」「アクセス」「医療の質」の3つのうち、レベルを下げるならば、どれを選ぶかを尋ねた。今回は、2035年の日本の医療における3つのレベルを、医師509人(勤務医253人、開業医256人)に予想してもらった(調査の詳細は『高齢者の保険診療に制限、過半数の医師が支持◆Vol.1』を参照)。

Q. 2035年(約20年後)の日本の医療で、「保険給付範囲」「アクセス」「医療の質」のレベルは今と比べて、どのようになっていると思いますか。
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 「保険給付範囲」は、勤務医と開業医、いずれも「悪くなっている」が最多で、勤務医の57.7%、開業医の60.2%が選択した。「アクセス」では、勤務医の予想で最も多かったのは、「悪くなっている」(43.5%)だったのに対し、開業医では「変わらない」(43.8%)が最も多かった。「医療の質」に関しては、勤務医は「良くなっている」(45.8%)が最も多い回答だったが、開業医は「変わらない」(42.2%)を予想する人が最多だった。

 以上をまとめると、勤務医と開業医で意見がほとんど変わらなかったのは、「保険給付範囲」について、いずれもレベルの低下を予想する声が強かった。勤務医は、「アクセス」のレベルは悪くなっているものの、「医療の質」は良くなっているという予想が多かったのに対し、開業医は「アクセス」も「医療の質」も変わらないとの予想が最も支持を集めた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/454301
シリーズ: 医師不足への処方せん
医師のキャリア、医籍番号で生涯にわたり追跡
厚労省がデータベース構築、2017年度予算概算要求

2016年8月30日 (火) 橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省は2017年度予算概算要求で、「医師の地域的な適正配置のためのデータベース構築」を新規事業として要求した。要望額は900万円だが、新規要求の中では注目施策の一つだ。医籍登録番号を活用して、医師免許取得から初期臨床研修、専門研修を経た後も、生涯にわたり、医師の勤務先や診療科などの情報を追跡できるデータベースを構築する。都道府県が医師確保対策を行うために必要となる医師情報を一元的に管理するのが狙い(資料は、厚労省のホームページ)。

 ただし、データベースにどんな情報を蓄積できるか、医師個人を特定できる情報として活用できるか、あるいは統計情報としての活用に留まるかなど、今後の検討課題は多い。

 医師のデータベース構築は、厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会」による5月19日の「中間取りまとめ」で、今年末までに検討する医師偏在対策として盛り込まれていた(『偏在対策「強力」に、「医師の働き方ビジョン」も策定』を参照)。

 厚労省が現在保有しているのは、医師の医籍登録番号(医籍登録年月日、氏名、生年月日、性別)と、2年に一度実施する「医師・歯科医師・薬剤師調査」(以下、医師調査)の診療科や調査時点の勤務先などのデータ。医籍登録番号で活用して名寄せし、医師調査のデータを経年的に蓄積すれば、各医師の勤務先などの追跡が可能だ。

 これに対し、初期研修医や専攻医に関するデータベースは現時点では存在しない。臨床研修病院を対象に調査し、初期研修医の出身大学などのデータ提出を新たに求めることなどを検討する。専攻医については、日本専門医機構が構築するデータベース費用補助を別途要求しており、そのデータの活用を予定。

 構築したデータベースを統計情報として活用する場合には、例えば、ある県が「県内の大学の卒業生がどんな都道府県に勤務しているか」などを把握し、地元定着策を検討することなどが想定される。個人を特定できる利用が可能なら、「内科医が不足している。A県に勤務しているB内科医に連絡を取る」などもできるようになる見通し。

 初期研修医や専攻医に関するデータも収集できるか、個人特定の利用が可能かなどは、医師法改正もしくは医療法改正が必要か否か、個人情報保護法に抵触しないかという視点からの検討が不可欠になる。今年末までに、「医療従事者の需給に関する検討会」や社会保障審議会医療部会で検討を進める。法改正が必要な場合は、2017年の通常国会への提出を予定し、初期研修医のデータ収集は、早ければ2017年度から開始できる見通し。一方、専攻医のデータ収集は、2017年度から開始予定だった新専門医制度が延期になったことから、見通しを立てにくい状況だ(『「新専門研修プログラム」、2017年度は併用含め6領域』を参照)。

 そのほか厚労省は医師確保対策として、下記を要求している。

◆都道府県の医師確保対策を強⼒に推進するため、地域医療⽀援センターのキャリア形成プログラムと連携した地域枠医学⽣に対する修学資⾦の貸与事業を支援する。:30億円(新規)

◆新たな専門医の仕組みの導入に伴う医師偏在の拡大を防止するため、専門医の養成数を調整する都道府県協議会の経費を増額するとともに、各都道府県による調整の下で、医師不足地域への指導医派遣等を行う経費を補助する。また、日本専門医機構が各都道府県協議会の意見を取り入れて専門医の研修体制を構築するための連絡調整経費や、専攻医の地域的な適正配置を促すためのシステムを開発するための経費を補助する。:3.3億円(2016年度1.9億円)


  1. 2016/08/31(水) 06:29:18|
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