Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

8月10日 

http://www.huffingtonpost.jp/motoi-miura/america_history_b_11422252.html
アメリカの医学の歴史
三浦基
中央大学経済学部国際経済学科 4年
2016年08月10日 20時47分 JST 更新 ハフィントンポストジャパン

 自分は、今、大学4年で将来のヴィジョンは頭の中にあるもののそこまでの道のりに迷っている。自分は将来、労働や医療に関する政策に何らかの形で関わっていきたいと思っている。

 そこで、現在、人的資源管理を学ぶか、公衆衛生学を学ぶか決めあぐねている。しかし、これには自分なりの複雑怪奇な理由がある。
 自分は、MBAに行き、人材を資本とみなしてより効率的な労働とは何であろうか研究したかったというとても漠然とした理由を持っていた。しかし、その考えは音を立てて崩れる。ある体験が自分の考えを変えたのである。自分は、高校から現在まで陸上を続けている。また、詳しいことは割愛するが、現在、日本では貧血が深刻な問題になっている。自分を含めて陸上競技をやっている人は言わずもがなである。

 六月の上旬、貧血と日本の陸上との関係を、研究を指導していただいている先生に話すと、論文を書いてみないかと提案された。現役の陸上競技者が考える貧血についての論文はとても新鮮だったらしく、先生は自分の論文をとても評価してくださった。この経験から、仮に自分が、医療関係者で、貧血は深刻ですと論文を書いても何の印象も与えられなかったのではないかと思った。つまり、自分が、陸上の現役プレイヤーの視点から書いたから、「うけた」のである。

 これは将来やりたいことについても同じなのではないかと思った。というのは、医療・労働分野の政策にかかわるのに、人的資源管理の知識を学習して、多くの人と同じようにいわば王道パターンでその道に進むのもでもよいと思う。
 しかし、少し変化球を投げて、公衆衛生学などの専門的な医療の知識を習得して、政策に携わるのもインパクトを与えられるのではないかと思ったのである。というわけで、自分は現在、MBAか公衆衛生学を学ぶか悩んでいるのである。

 ところで、アメリカでは四年間の教養教育の後に、大学院における教育として医学が学ばれる。つまり、大学で教養を十分身につけた後に、専門的な分野にアタックできるのである。このシステムは、非常に多角的な視点を持った人物を育成する上で非常に有効であると考える。
 余談であるが、自分はこのアメリカの教育システムから発展させて、日本では迫り来る高齢化のために教養として医学を習うことだけでも有効な手段であると考える。

 自分は、常にさまざまな視点から物事を論じられる人間でありたいと思う。そんな自分にとってアメリカの、まったく違う畑から医学の畑に進むシステムは衝撃的であった。これも、自分の進路を迷わせている要因であろう。
 自分の進路のことを考えると、自分は以上のような非常にフレキシブルな学び方を可能にした、アメリカの医学の発展の歴史が気になった。以下は自分が調べてきたことを医学教育の発展を中心に述べる。



 医は仁術であるという格言めいた言葉が我が国では存在するが、アメリカの医学の発展は、戦争や、利権争いなどのある意味で人間味あふれた形で発展したことがうかがえた。

 まず植民地時代のアメリカにおける医療の状況をみる。1607年にヨーロッパからの植民が始まると、南部の植民地でマラリアが大規模な被害を出した。治療機関としては、民間療法が主で、そのほかに理髪店、助産師などがあげられて、この人たちはイギリスか植民地で教育を受けた人たちであった。治療は自己責任であり、政府の規制はなく、ほとんど公衆衛生に対して配慮はなかった。

 また、感染症の脅威にさらされていながらもこの時代の健康問題への人々の見方は、病気とは神の摂理であり、人の力が及ばないところとするもので、この考え方がより病気を拡大していった可能性もある。

 18世紀になって、イギリスとスコットランドで教育を受けた医師が、その優位性を主張し始めて現代医学が広まった。最初の医療機関としては、1700年代初頭にニューオリンズ、ルイジアナに建てられた病院が始まりである。
 前者は、王立の軍用の病院として建てられたが、カトリックの女子修道会で中央集権的でなくそれぞれ個々で活動を行う、聖ウルスラ会の修道女が病院を経営するようになると、民間の病院として設備も拡張した。後者は、前者の王立病院にかかることができない貧困者がかかる病院であった。

 最初の医療従事者養成機関は、18世紀にボストンにできたものである。そして、独立戦争で軍医として参戦して、後にスコットランドのエディンバラ大学で学位を取ったジョン・モーガンが、Medical College of Philadelphia を設立した1791年を機にボストンの医療従事者養成機関は合併された。

 1767年王立大学医学科が設立され、1770年に初めてMDの学位を授与した。19世紀の初めまでに、1728年にピューリタンの指導者育成のために創設されたハーバード大学がメディカルスクールを創設したのを筆頭に、キリスト教の教団を中心に多数の医学校が設立された。
 この背景として、生徒から運営費として莫大な利潤が得られることがあった。また、運営費が生徒の学費のみに依存したため入学基準はとても甘かった。この医学部設立ブームは1910年ごろまで続くことになる。

 そして、1775年に起こったアメリカ独立戦争においては、これらの大学で学んだ医師も多数参加した。しかし、この時期メディカルスクールを修了してM.Dの称号を持つ医者は全体の10%で、ほとんどの医者は他の医者の真似をして医療行為を行っていた。
 余談であるが、この戦争終結後、1778年にアメリカ合衆国憲法が制定される。これはイギリスの不文憲法に対して成文憲法として制定されたため、アメリカのイギリスからの独立を象徴するものとなった。

 先ほど、知識や技術の水準が不明な医者が多いという状況を見た。これを鑑みて1847年にNew York Medical Societyによって、AMA(アメリカ医学学会)が設立されて、医者の質を上げることが画策された。しかし、当時はジャクソニアンデモクラシーが市民権を得ていたため、専門知識を持った特別階層をうむことは受け入れられず、AMA設立はあまり意味をなさなかった。

 この結果、医療は一般の人が行なうものという性格がより強くなったのであった。しかし、1861年からのアメリカ南北戦争で状況は少しずつ変わる。1861年に勃発したアメリカ南北戦争では、多数の兵士が病気で亡くなり、さまざまな要因で兵士を再起不能なものとした。そして両者とも医療従事者の数は不足した。

 この南北戦争はアメリカの外科技術、看護分野などにおいて様々な影響を与えた。南部連合軍の治療方法は危険で、さまざまな新たな病気を発生させた。また、悪天候、不十分な避難環境なども多数の死者をもたらした。このような状況は昔から戦争においては普遍的な状況で、北部連合軍は各州に病院を設立することでこれに対応した。

 病院の設立を可能にしたのは、率先して協力する団体の登場や豊富な資金であった。また、多数の新たな私的な組織が、兵士の医療や士気を必要とすることに焦点を置き始め、活動を広げた。この戦争においてオハイオ州は、戦場に船を送って病院として使用するなど新たな試みも始めた。

 この戦争の結果、医療に対する人々の眼差しが変わり始めて、医療は専門的な知識を持った医師に任せるべきであるという風潮が高まった。
 ここから南北戦争以降、近代の医学の発展について述べる。1898年米西戦争に勝利して、1898年のパリ条約で、キューバの独立をスペインに認めさせて、プエルトリコ、グアム、フィリピンを買収すると、イギリスからの独立から100年程で、独自に市場を開拓し経済的にも一国の植民地宗主国として独立した形となる。

 この過程で、医学も、ヨーロッパ大陸の医学を採用してイギリスとは袂を分かつ。具体的にイギリス医学とは、渡部昇一著「かくて昭和史は甦る;教科書が教えなかった真実」によると、イギリスの医学は経験主義的な影響で臨床重視の医学であるとしている。例えば、種痘を発見したジェンナーはイギリスの医学の流れをくむが、臨床重視であったので、いかに種痘を治すかに腐心した。発病するメカニズムの研究は二の次だったのだ。



 一方、大陸の、特にドイツを中心とする医学とは、イギリスとは逆で、病気のメカニズムの研究、つまり学問として医学を扱ってきた医学である。例えば、結核を発見したコッホはドイツ人であるが、彼は病原体の発見はしたものの治療法については編み出せなかった。

 このように、イギリスからの独立によって、経験主義、臨床重視の医学は、研究主体の医学に取って変えられたのである。前回述べたとおり19世紀後半には、ヨーロッパの研究の賜物である、細菌説や、科学を基礎とした医学はアメリカでも採用されるようになった。また、この頃前述の通り、学校は医学部の経営によって莫大な利潤が得られるという理由から1910年頃まで医学部は乱立した。一方で医学自体は科学を基にする非常に高度なレベルに発展したため、従来通り生徒からの学費のみで学校の経営をするのは難しくなっていた。

 この医学に対するトレンドの変化と経営難の二つの状況に上手く対応した例が、1893年のジョンズ・ホプキンス病院の付属の医学部が設立である。この学校は、医学部の入学定員に制限をかけて、また国や慈善家からの補助金を得て経営や研究に関する費用を賄った。同時に、カリキュラムも一新させドイツの教育パターンを模範として授業を行った。
 例えば、科学的な部分に力点を置いたり、指導の一環として基礎研究を行ったりして従来の医学校とは一線を画した。対して、全国の他の私立大学は入学者の減少、それによって発生する運営費および授業料の減少を防ぐために、入学基準をあまくしたりするなどの策を講じた。



 しかし1910年に当時有名な教育者として知られていたアブラハム・フレクスナーとカーネギー財団は、医学部教育レベルの独自の基準を作り全国の大学が満たしているかどうかを調査した。
 その時存在した全米のメディカルスクールのうち教育基準を満たすのは、5校だけであって、財団は全国の大学にジョンズ・ホプキンス大の教育カリキュラムを採用するように推進した。結果、全米の医学部のレベルが上がった。世に言うフレクスナーレポートによって全米の医学部のレベルが上がったという説である。

 しかし、一連の調査は利権の獲得が狙いであったという説がある。その利権を狙った超本人は、かの有名な資本家ロックフェラーである。彼は、石油産業から製薬産業へ目をつけそこで利権を獲得しようとした。
 そのために、自分たちの薬を医学に関与する人間の間で浸透させることが必要不可で、そのためには薬を使用する科学的な医学が中心的な地位を占めることが条件であった。だから、当時中心的な地位を占めていた代替的な治療を行う大学は煙たかった。

 結果、医学部の水準を図ると称して、代替的な治療、つまり薬を使わない医療を教える医学部に次々と不適当であるという根拠のない烙印を押した。これで、アメリカの医療が完全に薬で症状を抑えるアロパシー中心になった。

 また、アメリカ医師会(AMA)というアロパシーを礼賛する団体がいることをロックフェラーは発見する。彼はここに援助をすることで、自分の開発した薬が使ってもらえ、利潤が得られた。同時に、レポートによって、無理矢理アロパシー中心になったアメリカの医療業界では、アロパシーを信奉するAMAは独占的な地位と絶大な権力を得られた。

 だから、AMAは、従来まで医療サービスを行えた民間の医療提供者や、自然治癒を奨励するものに対して制限をかけられて、一種の参入障壁を築くことができたのである。つまり、フレクスナーレポートは、ロックフェラーはもちろん、1847年以来あまり絶大な権力をもつに至らなかった、AMAにとっても都合がよいものであった。

 付け足しておくが、薬を用いた医学を教えない大学は生徒が集められず窮地に陥ったため閉鎖を余儀なくされた。よって、1910年までに457あった医学校の数は激減する。
 以上様々な陰謀めいたことも考えられるが、ジョンズ・ホプキンスシステムは急速に浸透した。バプテストが設立したロチェスター大学が1921年にジョンズ・ホプキンスのカリキュラムを採用するなどここでも、キリスト教系の学校がここでも改革の先駆者となり、ジョンズ・ホプキンスの教育パターンを採用していった。

 しかし、ジョンズ・ホプキンスの教育パターンの採用だけでは、問題は全て解決したわけではなかった。というのは、医学の専門化によって学習量が膨大になり医学関連の人文科学や社会科学の分野がカリキュラムからはずされて、医学の科学化がより進んだ。この状況に対して、各専門に特化したカリキュラムに変更せざるを得なかった。

 この取り組みにいち早く対応したのは、ウエスタンリザーブ大学であった。ウエスタンリザーブ大は必修科目を減らして、専門的な選択科目を多くしたカリキュラムを提案した。この方法は1950年以降各学校で一般的となった。



 話の軸を元に戻して、20世紀初頭の話をする。まず1901年に議会は国立衛生研究所 (NIH) を建設し、また1901年にはロックフェラー財団も研究所を設立して、基礎医学研究が盛んになった。また、臨床医も生理的な実験に基づいた治療を模索することが仕事であった。この背景には、前述の経験を基にした治療から、科学的な根拠を基にした治療の転換があった。

 このように、アメリカの医学は、戦争や利権によって翻弄されながらも、紆余曲折を経て現在の形に至るのである。
 以上のようにアメリカの医学の発展の歴史を教育の分野を中心に簡単に20世紀の初頭まで見てきた。ここまで見てきた自分の印象を少し述べる。医学は「人の命を助ける学問」という印象が自分の中であり、周辺の環境とは独自に発展してきたという印象があった。

 しかし、実際、戦争や、利権争いを機に医学や医学教育が動くという事実を目の当たりにして、良いか悪いかは別として、単純に驚いた。
 冒頭の通り、自分は将来、労働や医療政策に携わりたい。また、現在の日本は高齢化が進んでいる。だから、ビジネスにしろ政策にしろ、「医療」というキーワードがとても大事になってくると考えている。その時に、「医学」を少しでも知っておくのと知らないのでは見方が違ってきて、政策やビジネスの中でのパフォーマンスの差が歴然としてくると思う。

 我々、非医学部の者が、医学を教養として知る一歩前段階として、今回のように、医学の発展の歴史を調べることは、政治・経済と、医学が密接に結びついているかを知るうえで非常に有益な行為であったと思う。次は、人類が経験した最初の世界大戦である第一次世界大戦から、アメリカの医学の歴史を振り返りたいと思う。

(2016年8月9日「MRIC by 医療ガバナンス学会」より転載)



https://medical-tribune.co.jp/news/2016/0810504408/
医療関係職の免許登録早期化を要望―日医〔CBnews〕
CBnews | 2016.08.10 18:35

 日本医師会(日医)は10日に開いた記者会見で、看護師や理学療法士などの医療関係職の国家資格の免許登録を毎年3月末までに完了するよう、塩崎恭久厚生労働相に要望したことを明らかにした。塩崎厚労相あての要望書は3日、厚労省医政局の神田裕二局長に手渡した。

 医療関係職でも医師の免許登録は、国家試験を前倒しで実施することなどで、3月末までに完了する体制が整っている。一方、看護師や理学療法士などは免許登録の時期が、早くて4月第二週から第三週までずれ込んでしまうため、その期間に適切な医療が提供できないなどの問題がある。

 日医は要望書の中で、4月1日から有資格者として業務に従事できるよう、免許登録にかかる業務体制の強化や、国家試験の実施・合格発表を早めるなどして、3月末の免許登録完了に向けた対応を求めている。

(2016年8月10日 君塚靖・CBnews)



http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/iryou/1375664.htm
「課題解決型高度医療人材養成プログラム(平成28年4月)」の選定結果
平成28年8月10日 文部科学省


本年度から開始する「課題解決型高度医療人材養成プログラム」について、別紙のとおり選定事業を5件決定しました。

1.事業の背景・目的

平成26年度より実施している本プログラムは、全国の大学・大学病院における人材養成機能を一層強化し、我が国が抱える医療現場の諸課題等に対して、科学的根拠に基づいた医療を提供でき、健康長寿社会の実現に寄与できる優れた医療人材を養成することを目的に事業を実施しておりますが、今般新たに医療現場等で人材が不足している以下の2領域についてテーマを設定し、公募の上で支援を行うこととしました。


2.事業概要

○選定件数:5件
  テーマ1 放射線災害を含む放射線健康リスクに関する領域(2件)
  テーマ2 慢性の痛みに関する領域(3件)
○補助期間:平成28年度から最大5年間
○補助金基準額:20,000千円(初年度・年間)
○補助事業上限額:40,000千円(初年度・年間)

3.選定結果(詳細は下記の選定結果一覧を参照)

【テーマ1】放射線災害を含む放射線健康リスクに関する領域 2件(申請件数7件)
【テーマ2】慢性の痛みに関する領域 3件(申請件数13件)

4.選定方法

専門家・有識者により構成された「課題解決型高度医療人材養成推進委員会」で審査を行い決定しました。
(課題解決型高度医療人材養成プログラム 選定結果一覧)


課題解決型高度医療人材養成プログラム 選定結果一覧

【取組1-(2):特に高度な知識・技能が必要とされる分野の医師養成】
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 ①放射線災害を含む放射線健康リスクに関する領域 申請件数:7件 選定件数2件
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No 区分 申請担当大学名  連携大学名       事業名

1  国  筑波大学                放射線災害の全時相に対応できる人材養成

2  国  長崎大学   広島大学、        放射線健康リスク科学人材養成プログラム
             福島県立医大学
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 ②慢性の痛みに関する領域 申請件数:13件  選定件数3件
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
No 区分 申請担当大学名  連携大学名       事業名

1  国  三重大学    鈴鹿医療科学大学     地域総活躍社会のための慢性疼痛医療者育成

2  国  山口大学    大阪大学、滋賀医科大学、 慢性の痛みに関する教育プログラムの構築
             愛知医科大学、
             東京慈恵会医科大学

3  公  名古屋市立大学              慢性疼痛患者の生きる力を支える人材育成
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http://www.sankei.com/economy/news/160810/prl1608100161-n1.html
医療機関の9割以上で高ストレス者の割合が10%を超える結果に
2016.8.10 13:39 産経ニュース

株式会社エス・エム・エス
~職員の健康管理を行う産業医は、約3割の医療機関で経営者が兼務~

医療・介護の情報サービスを提供する株式会社エス・エム・エス(代表取締役社長:後藤夏樹、東証一部上場、以下「当社」)は、当社グループが提供する「医療機関特化型ストレスチェック代行サービス」を通してストレスチェックの実施支援をした医療機関の結果を分析しましたので、お知らせします。

厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルには、「職業性ストレス簡易調査票」に基づき、高ストレス者の割合が「10%」となるように設定された数値基準の例が示されています。当社グループでストレスチェックの実施支援をした医療機関を上記基準で判定したところ、9割以上の医療機関で高ストレス者の割合が10%を超える結果となりました。
このように医療業界に高ストレス者が多く存在している一方で、本来職員の健康管理に重要な役割を果たすべき産業医については、約3割の医療機関で「理事長・院長」が兼務している状態であることがアンケート調査により明らかになりました。経営者が産業医を兼務している場合、労働者の健康管理よりも事業経営上の利益を優先するなど、産業医としての職務が適切に遂行されない恐れがあると推測されます。

なお、「医療機関・介護事業所におけるストレスチェック実施のポイント」について、2016年8月10日発売の「日経ヘルスケア8月号」にも解説記事を寄稿しております。こちらも併せてご覧下さい。

【「医療機関特化型ストレスチェック代行サービス」について】
労働安全衛生法の一部改正により、2015年12月1日より50名以上の事業所において従業員への「ストレスチェックの実施が義務化」とされました。その結果、病院などの医療機関においては、その多くが義務化の対象となるため、2016年11月までにストレスチェックの実施を行う必要があります。しかし、医療機関においては医療機関ならではの課題があり、自病院での実施が困難なケースも少なくありません。
そこで当社グループの株式会社エス・エム・エスキャリアでは、医療機関ならではの特徴や課題を踏まえたストレスチェック代行サービスを提供しております。現在導入確定事業所数は300事業所を突破し、受検見込み医療従事者数は10万人を超える予定となっております。

【医療機関におけるストレスチェック実態調査レポート】
調査1.医療機関における高ストレス者の割合

[画像1: http://prtimes.jp/i/13298/56/resize/d13298-56-876917-1.jpg ]
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結果:ストレスチェック実施済医療機関の約9割で、高ストレス者の割合が10%を超える

91.9%の医療機関で、高ストレス者の割合が10%を超える結果となった。 また、15%を超える医療機関も29.7%存在した。
※数値基準は「ストレスチェック制度実施マニュアル」に記載のある「職業性ストレス簡易調査票(57 項目)」を用いて、20万人のデータから高ストレス者の割合が「10%程度」となるように設定された数値基準の例を基に判定

■分析:
高ストレス者割合の目安となっている10%を91.9%の医療機関が超えただけでなく、15%を超える医療機関も29.7%存在するなど、業界として高いストレス傾向を示す結果となった。
医療機関は入院患者の生死を扱う職場であることや、夜勤当直などの不規則なシフト勤務が多いことに加えて、慢性的に人手不足であることなどから心身への負担度合いが高く、高ストレス者の割合が高くなったと推測される。高ストレス者の割合が10%という目安については「ストレスチェック項目等に関する検討委員会」において、現場が対応出来る上限という意見なども踏まえて設定されているため、産業医などの現場スタッフへの負担が懸念される。

調査2.医療機関における産業医選定状況
[画像2: http://prtimes.jp/i/13298/56/resize/d13298-56-567551-2.jpg ]
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結果:医療機関における産業医の約3割は、院長や理事長などの経営者が兼務している

25.6%が「産業医は院長・理事長などの経営者」と回答した。
また、院内の医師が産業医を兼務しているケースは全体の87.2%にのぼることも判明した。

■分析:
今回の調査で、25.6%が経営者と産業医を兼ねていると回答したが、理事長・院長などの法人の代表者・経営者や、事業場において事業を統括管理する者による産業医の兼務については、労働者の健康管理よりも事業経営上の利益を優先する可能性があることから、平成29年4月1日より禁止される予定となっている。(参考:厚生労働省報道発表資料http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000115152.html)
また、経営者に加え、一定の人事権を有していると想定される「役職者」が産業医を兼務しているケースも加えると約55%の医療機関が該当する。人事権を持つ職員が産業医を兼務する場合、人事上の不利益を懸念し、職員が自身の健康や精神的な悩みについて相談しづらくなるなどのリスクが想定される。そのため、「院外の医師」に産業医を依頼することが有効であると考えられるが、外部委託している割合は、10.3%に留まっている。
仮に人事権が無かったとしても、内部の医師が産業医を兼務している状況自体が、職員心理や産業医の独立性・中立性の観点から望ましくないと考えられるため、今後医療機関における産業医選定の方向性が変わっていく可能性があると予測される。

【調査概要】
調査1
  調査対象 :当社グループにて「医療機関特化型ストレスチェック代行サービス」を提供した医療機関
  調査期間 :2016年6月15日~2016年6月23日
  調査方法 :上記期間においてストレスチェック結果の集計が完了している医療機関のデータを分析
  調査対象数:36事業所

調査2
  調査対象 :病床数20以上の医療機関に勤務する事務長
  調査期間 :2016年6月10日~2016年6月23日
  調査方法 :当社運営の医療機関事務長向け情報サイト「じむコム」上でアンケート調査を実施
  有効回答数:78名

【日経ヘルスケアへの寄稿について】
本リリースの内容も踏まえた「医療機関・介護事業所におけるストレスチェック実施のポイント」について、2016年8月10日発売の「日経ヘルスケア8月号」にも解説記事を寄稿しております。こちらも併せてご覧下さい。

タイトル:『「ストレスチェック」実施は11月までに!医療機関・介護事業所が実施する際のポイントは?』
掲載媒体:「日経ヘルスケア」2016年8月号
発行者 :日経BP社
発売日 :2016年8月10日

【株式会社エス・エム・エスとは】
2003年創業、2011年東証一部上場。「高齢社会に適した情報インフラを構築することで価値を創造し社会に貢献し続ける」ことをミッションに掲げ、介護・医療・ヘルスケアなどの領域で「高齢社会?情報」を切り口にした40以上のサービスを開発・運営しています。

【本件に関するお問い合わせ先】
・広報担当  株式会社エス・エム・エス 経営企画部 平島(ひらしま)
電話  :03-6721-2404 E-mail : smsinfo@bm-sms.co.jp
URL   : http://www.bm-sms.co.jp/

・事業担当  株式会社エス・エム・エスキャリア ソリューション事業部 内藤(ないとう)
電話  :03-6870-6177 E-mail:stresscheck@bm-sms.co.jp



https://www.m3.com/news/iryoishin/449034
医学研究3指針の改正案、パブコメへ
研究責任者、来年4月まで対応迫られる

2016年8月10日 (水) 橋本佳子(m3.com編集長)

 文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省合同による「医学研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議」(座長:福井次矢・聖路加国際病院長)は8月9日、改正個人情報保護法の全面施行に対応するための医学研究に関する3つの改正指針案を了承した。今後、各省庁の関係審議会に諮り、その後、パブリックリックコメントを求める。必要な修正があれば加え、2017年春予定の改正個情法の施行に合わせ、各指針を施行する。

 改正個情法のポイントは、「個人識別符号」「要配慮個人情報」なども、新たに法規制の対象となる「個人情報」として定義されたほか、匿名化した場合の取り扱いが変更された点。例えば、これまで「個人情報」に当たるか必ずしも明確ではなかったゲノムデータなども、「個人情報」に当たり得る可能性があり、該当する場合には新規取得時のインフォームド・コンセントの取得、安全管理、第三者提供などの際は、改正個情法に則ることが求められる。

 今後、医学研究の場で、患者からのインフォームド・コンセントの取得をはじめ、変更を迫られることは多い。中でも、問題になりそうなのが、改正個情法の施行前から実施していた医学研究で、新たに「個人情報」に該当することになる試料・情報等を取り扱う場合で、研究計画書の見直しが必要になる。各研究責任者は2017年春予定の新指針施行前までに、自らの研究計画を点検し、変更がある場合には倫理審査委員会の審査や研究機関の長の承認など、所要の手続きを経る必要がある。

 9日の合同会議で議論されたのがこの点で、多数の研究計画書の審査が必要になると想定されることから、倫理審査委員会の「迅速審査」の仕組みを使うとともに、同委員会の委員のみでは審査に対応しきれない場合を想定して、研究期間の長が指名する人も審査の支援に当たるなどの対応を予定。

 ただし、そもそも研究責任者が、研究計画書を点検しないことには、計画見直しの要否も判断できないことから、何が新たに「個人情報」に当たるのかについて、医学研究3指針の改正内容を周知徹底する重要性が強調された。厚労省医政局研究開発振興課も、「これまで倫理審査委員会の審査対象外だった研究も、チェックしなければいけない。できるだけ早く周知する必要がある」との認識を示した。

 なお、本合同会議の当初から、「過去に遡ってカルテを見直す、カルテデータ調べは、オプトアウトで実施されていることが多いが、病歴等が含まれる場合は要配慮個人情報となり、オプトアウトでの実施ができなくなる」などの懸念が呈せられていた(『「臨床研究一般の萎縮が生じる」との懸念も』を参照)。9日の会議でも、「カルテなどを調べて行う観察研究については、甚大は被害が生じる可能性がある。日本医学会やその分科会に対して意見聴取する機会を設けなくていいのか」(国立がん研究センター企画戦略局長の藤原康弘氏)などの指摘が出た。この点について、厚労省医政局研究開発振興課は、「公衆衛生」が目的であれば改正個情法の原則適用外と説明、今後考え方を整理する方針。

 医学研究3指針とは、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」「遺伝子治療等臨床研究に関する指針」。今回の改正を機に、3指針で整合性が取れていなかった点も修正される。倫理審査委員会もあり方も見直され、多施設共同研究が行われる場合には、各研究機関で個別審査を進めるのではなく、一つの倫理審査委員会で一括審査を認める方針。

 なお、改正個情法の政令、施行規則の改正案については、法改正を機に新たに発足した独立機関(府省の外局として置かれる、いわゆる3条委員会)である「個人情報保護委員会事務局」が、8月2日から8月31日までパブリックコメントを募集している。


 「個人識別符号」「要配慮個人情報」を定義

 改正個情法では、「個人識別符号」「要配慮個人情報」を新たに定義、情報を得る際のインフォームド・コンセントの取得、安全管理、第三者提供などの際に、適正な取り扱いが求められる。

 「個人識別符号」には、ゲノムデータ、指紋データ、顔画像データ、保険証番号などが該当する。「要配慮個人情報」に該当するのは、(1)身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害があること、(2)本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者により行われた健康診断その他の検査の結果、(3)健康診断その他の検査の結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者により心身の状態の改善のための指導又は診療若しくは調剤が行われたこと――などの情報。

 9日の合同会議では、これまでの議論を取りまとめた「個人情報保護法等の改正に伴う指針の見直しについて」(中間とりまとめ)(案)も了承。医学研究3指針の改正内容をまとめたもので、「総論」と「各論」から成る。「総論」では指針見直しの趣旨や主な改正点を解説。「各論」では、「匿名化など用語の定義の見直し」「インフォームド・コンセント等の手続の見直し」「匿名加工情報・非識別加工情報の取扱いの追加」「新指針施行までに対応すべき事項及び経過措置」「ゲノム研究における倫理審査体制について」について説明している。

 9日の会議で議論されたのは、「経過措置」の問題。新指針の施行後は、「旧指針に基づき実施中の研究は直ちに新指針に移行し、新指針に基づく遵守事項を遵守して実施」することが求められる。(1)改正個情法に関係する遵守事項は、新指針の施行後、直ちに実施、(2)改正個情法に関係しない遵守事項は、施行後半年以内など、一定の猶予を設ける――という対応。

 新指針の施行が、2017年春頃に予定されているため、改正個情法および新指針に対応するための研究計画書の見直しなど現場の対応の大変さから、簡便な対応で済むよう求める声が出た一方、恣意的に新指針の規制対象外と判断する可能性も否定できないことから、一定程度の審査を必要とする意見も出た。実際に、研究計画書の見直しが必要となる研究がどの程度、生じるかを調査して、対応を考えるという意見も出たが、時間的余裕もないことから、研究計画書を見直す場合には、倫理審査委員会の「迅速審査」を経ることを原則とし、その際、研究機関の長が指名する者が判定に加わるなど、倫理審査委員会や現場の負担を軽減するための選択肢を用意する方針で落ち着く見通し。

 「カルテ情報」を用いた公衆衛生目的の研究は原則対象外

 現行の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」では、インフォームド・コンセントの取得対象として、血液検体など「人体から採取された試料を用いる研究」と、「人体から採取された試料を用いない研究」は区別されているが、新指針ではこの区別がなくなる。この点のほか、「個人識別符号」「要配慮個人情報」が定義されることから、カルテ情報などを用いた研究が困難になる懸念が呈せられている。

 文科省は、法律の厳格な遵守が求められることから、この区別はなくす必要があると説明。ただし、今進められている研究等を阻害する意向はないとし、改正個情法の適用除外に当たる「公衆衛生の向上」等に該当する研究であれば、インフォームド・コンセントの取得が不要になるよう整理する方針。



https://www.m3.com/news/iryoishin/449048
シリーズ: 真価問われる専門医改革
「家庭医療専門医」の新規養成、2017年度も継続
日本プライマリ・ケア連合学会、「総合診療専門研修」にも配慮

2016年8月10日 (水) 橋本佳子(m3.com編集長)

 日本プライマリ・ケア連合学会が8月9日、2017年度も同学会の「家庭医療専門研修プログラムVer2.0」を継続運用し、家庭医療専門医の養成を進めることを公表した(詳細は、同学会のホームページ)。新専門医制度をめぐる混乱に配慮し、従来は家庭医療専門研修を行っておらず、総合診療専門研修を新規に開始する予定だった研修施設に対する特例措置も設ける。

 翌10日付けで、「2017年度より総合診療領域の後期研修を希望する医師を全面的にサポートするために、全国のプログラムの関係者や指導医と連携しながら、家庭医療専門研修を安心して受けていただけるような体制整備を行っていく予定」という同学会理事長の丸山泉氏のコメントも掲載。丸山理事長は、今年6月の同学会の学術大会で、新専門医制度か否かを問わず、総合診療を担う専門医の養成に取り組む方針を示していた(『総合診療の担い手養成、揺るがず、プライマリ・ケア連合学会 』を参照)。

 2017年度から開始予定だった新専門医制度は、19の基本領域の全てで1年延期(『新専門医制度、全19領域とも「1年延期」へ』を参照)。新たに基本領域に加わる総合診療専門医の専門研修プログラムは、「家庭医療専門研修プログラムVer2.0」をベースにしている。1年延期になったことで、日本専門医機構は8月5日の理事会で、総合診療専門医を目指す専攻医予定者は、家庭医療専門医を取得する道があり、新専門医制度が2018年度から開始した場合でも、不利益を被らない何らかの措置を講じることを承認した(『「新専門研修プログラム」、2017年度は併用含め6領域』を参照)。

 日本プライマリ・ケア連合学会は8月7日の理事会で決定したのは、(1)家庭医療専門研修プログラムVer2.0は、2017年度も継続運用、(2)既に家庭医療専門研修プログラムVer2.0として認定を受けているプログラムが、総合診療専門研修プログラムでの運用を視野に入れて変更などを予定している場合、研修施設や指導医の追加・変更は、現行制度で対応、(3)既に総合診療専門研修プログラムに申請したものの、家庭医療専門研修プログラムには申請・登録がない施設についても、特例措置として新規申請を受付――などの事項だ。



https://www.m3.com/news/iryoishin/448819
シリーズ: The Voice(医療)
地域包括ケアを破綻させる論拠不在の経団連の主張に反論
75歳以上高齢者の2割負担と外来負担上限の撤廃に反対

2016年8月10日 (水) 桑島政臣(神奈川県保険医協会政策部長)

 社会保障審議会医療保険部会は7月14日、高齢者の患者負担を議論。75歳以上の後期高齢者への2割負担導入(現在は1割負担)、70歳以上の高齢者の高額療養費制度(=患者負担の上限)の外来特例撤廃の主張が、経団連からの委員により、導入根拠も示されず主張された。席上、低所得者への配慮など慎重論も出されているが、次年度の制度改定、次期通常国会への法案提出が既に想定されている。われわれは、国民医療を守るため導入に反対するとともに、治療を阻害する患者負担の解消へと方向転換することを強く求める。

◆事実無根、外来特例で頻回受診は起きていないし、兆しもない

 医療保険部会では経団連で医療・介護改革部会長を務める望月篤委員(大和証券常務執行役員)は、70歳以上の高額療養費制度(患者負担上限)が外来特例により70歳未満と異なり、外来負担が低く抑えられているため、“頻回受診を招く懸念もある”とし外来特例の廃止が妥当と主張。また75歳以上の後期高齢者の患者2割負担の導入について、「引き上げは避けられない」と、いずれも何ら根拠提示もなく、議論を先導した。

 外来特例とは、老人保健制度(現:後期高齢者医療制度)で対象年齢を75歳以上と引き上げ定率1割負担とした際に設けられたものである。それまでの対象年齢だった70歳以上に対し外来負担の上限を8,000円(住民税非課税、ほかに一般:12,000円、現役並み所得:44,400円)としたものである。経団連の望月氏はこれを頻回受診と結びつけ槍玉に挙げたのだが、全くの事実無根である。

 データが如実に物語る。後期高齢者医療制度の被保険者の年金収入を見ると、基礎年金の満額水準(約80万円)以下が4割を占めているが、住民税非課税となる水準155万円以下は1,100万人で全体の7割に及ぶ(『平成27年度後期高齢者医療制度被保険者実態調査報告』)。これらの多くの高齢者が外来特例、すなわち患者負担の上限は8,000円となる。後期高齢者医療は患者1割負担であり、医療費で8万円(レセプトで8,000点)が分岐点となるが、実際8,000点を超えるレセプトは全体の2.4%しか存在していない 1)。つまり、外来特例により8,000円を超えても負担がないことを理由にした頻回受診は誘発されていない。後期高齢者患者と一般患者を比べても、ひと月の受診日数は各々1.86日と1.49日と大差がなく 1)、複数疾病を抱える後期高齢者の身体特性を勘案すれば問題にされる水準ではない。外来受療率をみても1996年以降、患者負担増の制度改定で大幅な下落をみせたままであり、1980年代水準はおろか70年代水準にもない 2)。

 しかも、高額な医療費は、診療報酬点数の設定や構成から、その殆どは「在宅医療」に関するものであり、この外来特例により経済的に「救済」されている。これを撤廃することは、「治し・支える医療」への転換と「居宅生活での限界点を高める」(二木立・日本福祉大学学長)ための国策、「地域医療包括ケアシステム」の構築に水を差し、破綻の引き金となる。

◆まやかしの「世代間公平」に照らしても、不公平な患者2割負担引き上げ

 後期高齢者への2割負担導入も同様の帰結となるが、患者負担が2倍化し、より影響は深刻となる。一人当たりの平均収入に対する年間の自己負担額の割合は現在、後期高齢者は4.3%であり、65歳未満の1.4%より3倍も重い 3)。患者負担1割の世代が、患者負担3割の世代より、過重感が強い状況にある。これを2割負担とすると、単純計算でその割合は8.6%と極端に重くなる。

 俗論の「世代間の公平」論に、我々は与しないが、これに照らしても「公平」とは到底言えない。そもそもこの俗論は、個々の一生涯に経る年代ごとの給付のあり方という点を無視し、通過点・年代で輪切りにし、世代間分断を煽る、詐術である。

 70歳未満と後期高齢者等との高額療養費の基準を統一することも出されている。70歳以上の住民税非課税の場合、患者負担上限が24,600円から35,400円へと1万円強引き上がることになる。しかし、現在、高額療養費の1件当たり支給額(患者負担への「補填」)は、75歳以上は16,832円にすぎず、それ未満の1件当たり支給額76,894円の1/5程度である。上限額を超える医療費部分は、高齢者では本当は少ないのである。

 つまりは、先に見たように患者負担が過重な下で、高額療養費の基準統一がなされると、高齢者の患者負担を軽減、救済する仕組みは、ほとんど実効をなさなくなる 3)。

 よく問題にされる重複受診、複数科受診だが、実は、「同一疾病」で複数の医療機関を受診する「重複受診」は、高齢者患者の2%に過ぎない 2)。また、複数医療機関の後期高齢者の受診は3カ所以上は1割に過ぎず、2カ所が24%となっており2)、「異なる疾病」での複数診療科、複数医療機関を考えれば、妥当な数字である。実際、後期高齢者の64%は2種類以上の慢性疾患を保有し治療している 3)。

 根拠提示のない、社会的に流布された言説を「常識」、「通念」とした議論は厳に慎むべきである。

◆経団連の社会保険部会の委員? 不可欠なのは患者目線の議論 財界視点は不要

 医療保険部会には、保険者側の委員が複数名存在する。しかし、2001年より、なぜか経団連が、2011年からは日本商工会議所もと財界から委員が就いている。患者代表や難病団体、非正規・中小企業労働者の代表など、医療保険制度、健康保険制度に密接に関係する立場のものは委員から除外されている。

 病気治療の際、交通費や病衣、タオル代、洗濯代など、治療費の他にも諸費用が意外と嵩むのが、実社会である。財界代表の視点や牽強付会ではない、患者目線での議論が不可欠である。

 そもそも、医療保険、健康保険制度は、疾病・負傷の治療を保障するために、経済的障壁を解消する制度である。治療へのアクセスが制度的に開放され、医療そのものの現物給付を原則としている。

 そのフリーアクセスを阻害し、受診行動のハードルを高く敷く、後期高齢者2割負担導入や高額療養費の特例の撤廃などは、この制度趣旨に完全に逆行している。これでは「治し・支える」医療は破綻する。

 高齢者は、加齢により高血圧、糖尿病、心疾患、関節症、白内障など疾病を多く抱えがちであり、後期高齢者の86%は外来で慢性疾患の治療を行っている 3)。

 この現実を無視した、後期高齢者の患者2割負担導入、70歳以上の高額療養費の外来特例撤廃と制度の負担上限の引き上げに我々は強く反対する。制度本旨に立ち戻り、患者負担解消の方向に舵を切るべきだ。

【参考資料】
1)『平成27年社会医療診療行為別統計』
2)中医協H27.4.8資料
3)「医療保険部会」H28.7.14資料.

※本記事は、2016年8月9日付けの「政策部長談話」として、神奈川県保険医協会が同協会のホームページ上で発表した内容を、編集部でタイトルとレイアウトのみ変更したものです。



https://www.m3.com/news/general/448447
《再生への課題 群馬大病院報告書》地域医療 人材育成に暗い影
2016年8月8日 (月) 上毛新聞

 「研修医の時にしっかりとした教育が受けられないと十分に技術を磨けない。医療事故が多い病院は敬遠してしまう」

 東京都内の私立大医学部5年の男性は、群馬大医学部附属病院(前橋市)で臨床研修を受ける気は起こらないと話す。

■臨床研修が急減

 新人医師が医療現場で指導を受ける臨床研修制度が2004年に導入されてから、地方病院は研修医の確保に苦労している。多くの学生が首都圏の病院を希望するためだ。群馬大病院で手術を受けた患者が相次いで死亡した問題は、県内でその傾向を加速させ、本県医療を担う人材の育成に暗い影を落としている。

 厚生労働省によると、卒業を控えた医学生が臨床研修先を選ぶ「マッチング」で、2015年度に県内病院に内定した学生は83人で前年度から20人減った。群馬大病院が14人に半減した影響が大きく、減少数は都道府県別で最多だった。この結果は、県内でキャリアを重ねる可能性の高い医師が減ることを意味し、関係者に衝撃を与えた。

 館林厚生病院は常勤医を確保できないため、出産の取り扱いを10年以上休止している。小児科、整形外科、眼科の入院患者の受け入れや夜間の緊急診療も行っていない。同病院は県外の大学病院や仲介会社に医師の派遣を依頼しているが、反応は良くないという。「研修医が減り続ければ、地域医療はさらに厳しくなる」と懸念する。

■信頼回復へ協議

 一連の問題は、群馬大病院の経営にも影響を与えている。群馬大病院は15年6月、診療報酬の優遇措置のある特定機能病院の承認を取り消された。15年度は約3億3000万円の減収になったとの試算がある。厚生労働省の監査の結果次第では診療報酬の返還を求められる可能性もある。

 状況の改善に向け、県と群馬大は5月、協議会を設置した。今後は県医師会なども交えて、群馬大病院の信頼回復や医療体制の再構築について話し合う。県医務課の武藤幸夫課長は「事故調の報告書などで示された提言や指摘をクリアするために皆で知恵を絞りたい。患者のための医療を提供できる病院に再生してほしい」と話している。

  1. 2016/08/11(木) 09:00:32|
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