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地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

8月2日 

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160802-OYTET50020/
ニュース・解説
「新専門医制度」1年延期なぜ?

2016年8月3日 読売新聞

「医師不足招く」地方が反発

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 日本専門医機構は今月25日、来年度から予定していた新専門医制度の実施を1年延期することを決めた。

 地方の中小病院から、「このまま始まれば地域の医師不足が加速する」という批判が噴出したからだ。質の高い専門医の養成を目指す新制度だが、開始前から壁にぶつかった形だ。

 糖尿病、肝臓、レーザー、温泉療法……。今、医療界には様々な名称の「専門医」がいる。それぞれの医学会が独自に創設、認定してきたからだ。国内に何種類の専門医が存在するか、国も正確に把握していない。

 審査の厳しさも、一定の治療実績が問われるものから、学会に出席するだけで更新できるようなものまで、差があった。

 専門医の乱立や質のばらつきが問題視され、2013年、厚生労働省の有識者検討会で、第三者機関で統一して認定する仕組みに改めることが決まった。翌年、日本専門医機構が発足。各学会に専門医の研修基準の作成を依頼した。この基準に基づき各病院が具体的なプログラムを作る。

 ふたを開けると、厳しい基準を作る学会が外科系を中心に相次いだ。研修の中心となる基幹病院には、〈1〉指導医が一定数いる〈2〉年間の手術件数が数百件以上――などの条件が設けられた。優秀な指導医をそろえ、その指導の下で多くの診療経験を積めるようにしたほうが、優れた若手医師を育てやすいからだ。基幹病院は、地域の病院を連携病院に指定し、若手医師を派遣し、地域医療などを学ぶ。

 だが、地方の中小病院が猛反発。医師数の確保が難しく、基幹病院になれる可能性が少ない上、大病院が医師を派遣してくれる保証もない。「早くも医師を引き揚げると通告を受けた病院も。地域医療の崩壊につながりかねない」と全日本病院協会の西沢寛俊会長。

 地方の病院には、04年の臨床研修の義務化で苦い経験がある。中堅医師らが大学病院に引き揚げられ、診療科の閉鎖などが起きた。同機構や各学会は今回、「医師が行くように配慮する」と訴えたが、懸念は払拭されなかった。

 今年に入り日本医師会が、6月には塩崎厚労相が制度の再検討などを同機構や学会に求め、四面 楚歌そか になった同機構は今月、執行部の体制を一新。「拙速では混乱が起きる」と、新理事長に就任した吉村博邦・北里大名誉教授は開始の1年延期を表明した。

 新体制では、広く国民の意見や地方の実情を反映するため、理事に患者代表や県知事も加えた。吉村新理事長は就任会見で語った。「またもめるようだと国民から見放される。医療界の見識が問われている」

臨床研修終えた医師、診療経験を3年以上

 新制度では、医学部卒業後、2年の臨床研修を終えた若手医師が3年以上、専門医になるための診療経験を積み、日本専門医機構から認定を受ける。専門分野は、内科や外科、眼科など19の基本領域と、その後部位別などに細分化された領域を学ぶ「2段階構造」になる。

 基本領域のうち、内科では、消化器や呼吸器、血液、神経など様々な病気を診る。幅広い視点で診療ができる医師を養成するためだ。

 医師は連携する複数の病院で診療経験を積む。例えば、大学病院で診療科の必須の技能を習得した後、一般の病院で地域医療を学ぶなどの研修が想定される。新制度が始まれば、より多様な経験ができることになる。

 ただ、細分化領域をどう整理するかが、当初から機構に課せられた宿題だったが、この議論は現在、全く進んでいない。

 (米山粛彦、高橋圭史)



https://www.m3.com/news/iryoishin/446782
シリーズ: 群馬大学腹腔鏡死亡事故
群大、執刀医と教授を解雇処分
事故調、病院改革委の提言を受け、改革状況を報告

2016年8月2日 (火) 高橋直純(m3.com編集部)

 群馬大学医学部附属病院で同じ執刀医の腹腔鏡手術や開腹手術を受けた患者が相次いで術後に亡くなっていた問題で、群馬大学は8月2日に改革状況について会見を開き、7月29日付けで、旧第二外科の元助教の執刀医(2015年3月末に退職)を懲戒解雇相当、旧第二外科教授の竹吉泉氏を諭旨解雇の懲戒処分にしたことを公表した。前病院長らを2人を減給相当、前副病院長、旧第一外科の教授など病院の管理職ら5人を厳重注意などの処分とした。

 群大学長の平塚浩士氏は解雇処分の理由について、執刀医は(1)医師法に触れる可能性があるほど診療録の記載が不十分だった、(2)術後の患者への説明が不十分だった、(3)腹腔鏡手術の導入、導入後の対応が不十分だった、(4)腹腔鏡下肝切除術の学術論文に不適切な記載があった、(5)大学の名誉、信用を失墜させた、(6)死亡事例が続いた際に、医師として適切な対応をとれなかった――と説明。

 教授については、(1)執刀医への指導が不十分だった、(2)カンファレンスを適切に開催していなかった、(3)腹腔鏡下肝切除術に関する論文の不適切な記載があった、(4)大学の名誉、信用を失墜させた、(5)死亡事例が続いた際に、管理職として適切な対応をとれなかった――と説明した。

 教授の処分が、執刀医よりも処分が軽い理由について、平塚学長は、「解雇なので処分としては、重いと思っている」とし、カルテ記載をするよう執刀医にアドバイスした、腹腔鏡下手術導入時に十分な準備をするよう指示していることなどを挙げた。群大医学部付属病院長の田村遵一氏は、カルテを記載するよう指導されても記載が不十分で、手術の適応などは執刀医本人が決めていたとし、執刀医と旧教授のいずれにも責任があるとしたものの、「管理ができなかった人間に比べて、実際に執刀した人間の方が責任は重い」と指摘した。

処分の状況

旧第二外科の元助教(執刀医) 2015年3月末退職
  懲戒解雇相当
旧第二外科教授・元診療科長 【教授】
  諭旨解雇

前副病院長(2011年4月―2015年3月) 【教授】
  厳重注意(文書)
元医療安全管理部長(2010年4月―2011年3月)【教授】
  厳重注意(文書)
元医療安全管理部長(2011年4月―2014年3月)【教授】
  厳重注意(文書)
旧第一外科教授・元診療科長 【教授】
  厳重注意(文書)
旧第二外科元助教 2016年3月末退職
  注意(口頭)相当

元理事(病院担当2007年4月―2011年3月)、元医学部付属病院長 【教授】
  減給相当
  自主返納:役員本級月額の10分の1相当額の3カ月に相当する額
前理事(病院担当2011年4月―205年3月)、前医学部付属病院長 【教授】
  減給相当
  自主返納:役員本級月額の10分の1相当額の3カ月に相当する額
前学長(2009年4月―2015年3月)
  自主返納:役員本級月額の10分の1相当額の5カ月に相当する額

※会見の内容を後ほど追記します。(2016年8月2日午後4時)



https://www.m3.com/news/iryoishin/446822
シリーズ: 群馬大学腹腔鏡死亡事故
「適格性疑われる医師のチェック機構、働かず」
群大病院の改革委員会、「最終提言」を公表

2016年8月2日 (火) 橋本佳子(m3.com編集長)

 「ガバナンスの不備があったところに、適格性が疑われる医師が存在した。ガバナンス不備のために、普通は働くはずのチェック機構が働かず、極めて俗人的な運営が行われていた」

 群馬大学は8月2日、都内で記者会見を開き、同大医学部附属病院改革委員会の最終提言を公表、その席上、同委員会委員長を務めた木村孟氏(大学評価・学位授与機構顧問、元東京工業大学学長)はこう述べ、腹腔鏡下および開腹の肝切除術で死亡事故が相次いだ事故の背景には、群大病院のガバナンスの不備があったことを問題視した(資料は、群大のホームページ)。

 「患者中心の医療がなされていなかったことが、医療事故が相次いだ根底にある。その一番の理由は、病院としての組織体制がほとんどできていなかったこと」と木村氏は述べ、第一外科と第二外科というナンバー外科の二つの組織が独立に運営されていた点に最もよく現れているとした。「同じ(消化器系の)医療をやっていたにもかかわらず、相互のコミュニケーションがなかった」(木村氏)。木村氏は、病院長や診療科長、さらに学長も含めて、「幹部のリーダーシップが欠けていた」とも指摘。

 木村氏は、群大全体の中での医学部の位置付けにも触れ、他の学部に比べて、医学部は歴史が長く、職員数も多いことから、「突出していた」と評し、「医学部の場合は、ヒエラルキーが徹底して存在していた。はっきり言えば、教授が大変偉い」(木村氏)といった構図が、病院および大学としてのガバナンスが働きにくい背景にあったと説明。

 最終提言では、こうした事故の「背景と課題」に続き、「改善に向けて」として、第一、第二外科の診療体制を統合し、医学系研究科もそれに併せて再編するほか、病院のガバナンス強化などを挙げている。

 「病院組織としてのシステムを改革しなければいけない。システムの弱さが、情報のやり取りなどの場面で、問題が生じていた」と木村氏は述べ、組織にヒエラルキーがあり、看護師が教授に情報を上げる際などにも困難さがあったと指摘。一連の医療事故では、術後に死亡例が相次いだという事実が、病院の安全管理部門などに伝わらなかったことが問題視されている。「重要なのは、人事システムの改善。他の分野では極めてオープンなシステムになっている。どうしても、大学には利権構造がある。公明正大な選考システムがないといけない」(木村氏)。

 結論として、木村氏は、「旧風土からの脱却が最も必要」と述べ、病院の組織改革の必要性を強調した。最終提言では、「現存する体制の見直しと、これまでの改善策の成果を評価し、病院システム全体の徹底的な効率化を図るべき」などと指摘し、改善に向けた取り組みの進捗状況を病院コンプライアンス委員会によって定期的に精査し、速やかに社会に公表することを求めている。

 木村氏は、自身がエンジニアとして、その分野の事故調査に関わってきた経験を踏まえ、次のように医療安全に取り組む病院の組織文化の重要性を強調した。「言えることは、事故は、一つの原因では絶対に起きない。必ず3、4の背景、ミスがあって起きる。適格性を欠く医師がいただけでは、この事故が起きない。この医師がたまたまいた環境がそうした環境だった」。

 ナンバー外科の統合、「形式的な改革に終わらないように」

 群大医学部附属病院改革委員会は2015年5月に第1回委員会を開催、10月26日に中間まとめを行った(『「医療者の適格性疑う医師が原因」群大病院改革委』を参照)。並行して、外部委員から成る「医療事故調査委員会」が事故原因や再発防止策を検討していたことから、齟齬がないようにするため、「医療事故調査委員会」がほぼ固まった段階で、修正すべき点の有無を精査し、最終提言「群馬大学医学部附属病院における医療の質保証体制の今後の改善に向けて」をまとめた。「医療事故調査委員会」は7月30日に報告書を公表(『死亡事故の背景、「手術数の限界を超え、悪循環」』を参照)。2日は続いて群大も会見し、関係者の処分を発表した(『群大、執刀医と教授を解雇処分』を参照)。

 最終提言の内容は、中間まとめと基本的な内容はほぼ同じ。群大病院では、2015年4月から、第一、第二外科を統合した「外科診療センター」を設置、2017年4月から医学系研究科も、外科学講座として一本化し、講座内に診療科の専門分野に対応する教育研究分野が置かれる予定であることから、「この体制の変更が形式的な改革に終わることがないよう特段の注意が必要」と追記。

 そのほか、「病院のガバナンス強化」として、「喫緊の課題であり、厳格な選考に基づく病院長の任命や病院長が実質的な人事権を持ち行使することが可能な制度の改正が必要」なども最終提言で加えている。

 「適格性を欠く医師」の認識は変わらず

 最終提言では、「今回の重大事案は、肝胆膵部署における体制的欠如と、医療に従事する者としての適格性を疑わざるを得ない医師が、この体制の主要な構成員であったことによって起こったものを思われる」と記述。

 「この認識は変わらないのか」との問いに、木村氏は、「医療事故調査委員会」の報告書では、「人を責めてもシステムは良くならない」としている点を踏まえ、「システムは改革しなければならないが、その原因となったのはやはり“人”であり、その点はやはり記載している」と答えた。同委員会の調査については、「ドラフトの段階で見せてもらったが、短期間にあれだけの調査をやった委員会は、あまり例がないのではないか。私は高く評価する」が木村氏の認識。

 群大病院が改革を続けるための課題として、木村氏が挙げたのは、「人」と「金」。2004年度の国立大学法人化以降、運営費交付金は毎年減額されている現状を踏まえ、次のように答えた。「財政的に非常に大変で、人を増やしたくても増やせないなど、医学部の場合は、工学部などとは異なり、まともに影響する。非常に難しい問題だが、学長が重要性の程度を判断して、運営費交付金を(重点的に)手渡すくらいしかできない。大学病院は地域の基幹病院であり、それを抱える大学としては、相当覚悟してやってもらわなければいけないのではないか」。



https://www.m3.com/news/general/446677
[教訓 群大手術死](上)「二つの外科」深い溝…「専門同じでも口きかず」
2016年8月2日 (火) 読売新聞

 度重なる手術死はなぜ防げなかったのか。群馬大学病院の手術死問題から教訓を読み取り、医療現場のあるべき姿を考える。

「関知せず」

 全国から集まった300人を超える外科医で、ホテルの大会場は熱気に包まれた。今年4月、大阪市で開かれた日本外科学会の総会。来年の学術集会を取り仕切る会頭に、群馬大学の旧第一外科教授を就任させるかどうかが焦点になった。

 「第二外科の患者さんが亡くなられていたことは、関知していませんでした」

 出席者によると、教授は発言の機会を与えられ、このように釈明したという。

 手術後に患者の死亡が相次いだ群馬大病院。2014年11月、第二外科の同じ執刀医による 腹腔鏡手術の問題が明るみに出た。後に開腹手術でも死亡が多いことが発覚した。

 会頭は学術集会の3年前に内定し、就任するのが通例。しかし、社会問題になった群馬大の教授であることに加え、総会の半月前には第一外科の手術でも死亡率が高かったことが判明。総会は賛否を巡って激論となり、異例の信任投票の結果、172対159の小差で就任が認められた。

 「同じ病棟で診療しながら知らないとは。群馬大には患者のために協力する発想はないのか」。出席者の一人は嘆いた。

重なる診療

 群馬大では、第一外科と、後からできた第二外科とが対立してきた。手術死問題を受け、昨年4月に統合されるまで二つの外科は、消化器、呼吸器、乳腺といった分野で、同種の診療を二重に行っていた。

 以前はトップの教授の専門が、第一外科は消化器、第二外科は循環器と一定のすみ分けはあった。それが崩れたのは06年、手術死で問題になった執刀医を後に指導する第二外科教授が就任したことだ。同教授は、第一外科の教授と同じ消化器外科医だった。

 「一外と二外は100年戦争になる」。関係者はささやき合った。循環器や乳腺の対立候補を抑えた教授選は激戦で、溝は一層深まることになった。

 同じ年の12月、第一外科による生体肝移植の事故を受けた検証結果を発表する記者会見で、当時の病院長は記者団に明言した。

 「来春をめどに第一外科、第二外科に分かれていた移植チームを一本化する」

 外部の専門家から、同種の診療を行う異常さを指摘されてのことだったが、公式発表もどこ吹く風、統合は立ち消えになった。

 第一外科の消化器外科医は「第二外科の人とは、専門が同じでも口をきくことはなかった。どんな人かも知らない」と話した。

患者にしわ寄せ

 第三者委員会の調査によると、死亡が相次いだ肝胆 膵すい (肝臓、胆道、膵臓)の分野では、第一外科3~6人、第二外科1~2人と分かれていた。合わせても多いとは言えない体制で、劣化した診療のしわ寄せは患者に及んだ。

 現在、外科は一つになったが、詳しい運営の実態は明らかにされていない。過去の苦い経緯もあり、今後真価が問われる。

 ある患者家族の女性は、第二外科の問題が最初に報道された14年11月から間もなくの出来事を覚えている。夫が手術を受けて退院し、執刀医の外来診療を受けた時のこと。「報道されたのは先生のことですか」。質問に対する執刀医の返事は、答えにならないものに聞こえた。

 「うちのグループのことですが、仲の悪い第一外科が、よくない情報を流しているんだと思います」

 女性には今も疑問のままだ。「先生は一体、何を言っているんだろうと思いました。患者には、そんなこと関係ないですよね」



https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160802-OYTET50007/
[教訓 群大手術死](中)診療の「質」どう上げる
全死亡例チェック、三重大の挑戦

2016年8月2日 読売新聞

 「群馬大学の問題は、いわゆる医療事故とは異質。医療の質が問われている」

 昨年8月、第三者からなる調査委員会の初会合後、東京都内で開かれた記者会見。委員長の上田裕一・奈良県総合医療センター総長は、そんな見方を示した。

 確かに、診療全般の質が標準レベルに達していなかったことが、深刻な事態を招いた。死亡例個々の経過を見れば、ミスもある。ただ、過去に注目された患者の取り違えや薬の誤投与といった明確な医療ミス事例とは、性質が異なる。

 群馬大病院では、肝臓の 腹腔鏡ふくくうきょう 手術を受けた患者8人が相次ぎ死亡した。術前検査や手術、術後管理のいずれにも何らかの問題があり、説明や記録の乏しさも目立った。開腹手術も同様だ。ただし、当事者たちにその自覚はなかった。

 「しょうがない合併症だと思うんだよね」

 発覚当初、問題になった旧第二外科の教授は、同僚にそう話したという。執刀医も、問題という認識は薄かった。

 「診療に問題があって患者が死亡しても、『やむを得ない合併症』で済んでしまうことはある」と、別の大学病院の医師は、医療現場の実情を語る。

 一連の問題を受け、厚生労働省は今年6月から、大学病院など高度な医療を担う特定機能病院の承認要件を厳格化し、安全対策を強化した。その一つが、入院患者が死亡すれば全て、病院の安全管理部門に報告するよう義務づけたことだ。

 現場で「やむを得ない」とされた死亡例も拾い上げ、必要に応じ検証することができる。群馬大のような事態は避けられるはずだ。

 10年前から、死亡例の全例チェックをしてきた国立大学病院もある。

 三重大学病院(津市)は、全死亡例のカルテをチェックする形で、事故や診療上の問題の見逃しを防ぎ、その教訓を生かす努力を続けてきた。

 2006年に院長の肝いりで始まったこの手法で、導入から8年間に把握した入院患者の死亡例1856件を精査した結果、131件に何らかの疑問点が見つかった。うち21件は事故調査委員会を設置し、残りは関係者に面談するなどして医学的に検証し、改善すべき点を探った。

 当初は「人の家に土足で入って来るのか」と反発があった。しかし、診療科間の垣根を越えた議論がしやすくなり、メリットが実感されるようになった。

 地方の国立大学病院で、医師や看護師が大都市に流れ、人材不足に悩んできた。それでも地域で「最後の 砦とりで 」の役割を期待され、重症患者の診療を担わねばならない――。群馬大病院と、置かれた状況は同じだ。三重大病院の取り組みは、厳しい中でもできることはある、と示している。

 「入院患者の平均在院日数やベッドの稼働率は気にしても、先月、患者さんが何人亡くなったかに関心を持つ病院は少ない。しかし、本来、死亡例ほど病院にとって重要な情報はない」

 担当の 兼児かねこ 敏浩・副院長は、講演などで医療関係者に意義を語ってきた。しかし、死亡全例チェックは広がらなかった。人手不足や現場の抵抗感が主な原因とみられる。

 「群馬大の問題をきっかけに、流れが変わった。日本の医療安全は、ミス防止にとどまらず、いかに診療の質を向上させるかが問われる、新しい時代に入った」



https://www.m3.com/news/general/446751
トヨタの品質、医療にも ミス抑制から「撲滅」へ 名大病院で異色の講座 「医療新世紀」
2016年8月2日 (火) 共同通信社

 「世界のトヨタ」が誇る品質管理の手法を医療にも―。名古屋大病院が昨年から医療の質向上に向けたユニークな講座を開いている。これまで各地の医師約40人が参加。講師役のトヨタ自動車関係者から「ミスは減らすのではなく撲滅を」と教え込まれ、それぞれ勤務する病院で医療安全の実現を目指す。現場に「異文化」は浸透するのか。

 ▽ノウハウ活用

 名古屋市立西部医療センターの調剤室。広い部屋に大きな薬棚が10個ほど並ぶ。交代で勤務する薬剤師らは約30人。処方箋を確認し、錠剤やカプセルを患者に渡す袋に手際よく入れていく。

 扱う薬剤は大量。過去には種類を間違えるなどのミスが月に10件を超えることもあった。多くは薬が置かれた棚の場所をスタッフが思い違いしたのが原因だったという。

 改善を主導したのは、医療安全部門を担当する桑原義之(くわばら・よしゆき)副院長だ。昨年末、文字ばかりだった手順書に処方箋や薬の袋の画像を添付し、作業の流れを図示するように。薬棚のラベルも見やすくなるよう工夫を施した。

 桑原さんは今春まで、名大病院が開講した「明日の医療の質向上をリードする医師養成プログラム(AASUISHI)」に参加。トヨタグループの部品メーカーOBから「手順書は誰もが一目で分かる内容に」と指導を受け、早速改めた。

 薬棚の見直しは、同OBの視察を受けた後に、薬剤師ら現場スタッフから出された意見を取り入れたものだ。最近、ミスは月に2~4件に減少。ゼロまでもう一息だが、院内の安全意識が変わり始めたと感じるという。

 ▽異なる発想

 医療安全の実現に意欲的な名大病院。文部科学省の補助金事業として、全国から医師を集めたASUISHIを実施する際に、担当する医療の質・安全管理部の安田(やすだ)あゆ子(こ)副部長らが着目したのが、地元・愛知の世界的企業トヨタの「哲学」だった。

 ミスがあれば、システムや環境を検証し、真の原因を追究する。有効な対策は標準化して共有する―。世界でも評価が高いトヨタ流の品質管理の手法は、医療にも応用できると考えたという。

 昨年10月から半年間の第1期は各地の医師16人が受講し、このうち「患者安全の原則」「有害事象マネジメント」の講義など140時間の課程によるメインコースには12人が参加。トヨタの講師と一緒に各病院が実際に抱える問題の解決に挑み、実践力を身に付ける「授業」もあった。

 薬の「ミスゼロ」に挑戦した桑原さんは「従前の医療界だと、ミスを個人の責任にし『次は気を付けて』で終わりかねなかった。発生する環境や要因を徹底分析するトヨタ方式は新鮮だった」。東大阪市立総合病院から参加した山田晃正(やまだ・てるまさ)医師も「ミスを『撲滅する』はわれわれの発想とは全く違った」。

 ▽ネットワーク化

 ASUISHIは2018年度までの予定で、今年7月には23人が参加して第2期が開講した。安田さんは「トヨタと医療界では安全実現の考え方に雲泥の差がある。必要なのは組織のカルチャーを変えることだ」と強調する。

 活躍が期待される「修了生」だが「安全に関する院内の意識を自分だけで向上させるのは難しい」との声も。名大病院は、修了生が所属する医療機関をネットワーク化し、ミス対応に関する情報交換を支援する「人財ハブセンター事業」も本格化させる構えだ。

 ASUISHI外部評価会のメンバーで「医療の良心を守る市民の会」の永井裕之(ながい・ひろゆき)代表は「患者の立場からすれば当然の安全面の対策は、これまで後回しにされてきた。取り組みの広がりに期待したい」と話す。



https://www.m3.com/news/iryoishin/446715
シリーズ: 真価問われる専門医改革
日本外科学会、2017年度は現行の専門医制度
「サブスペシャルティ確定せず」「定員調整は困難」

2016年8月2日 (火) 橋本佳子(m3.com編集長)

 日本外科学会は8月1日、2017年度に専門研修を開始した専攻医については、現行制度で外科専門医として認定する方針を公表した(資料は、同学会のホームページ)。既に新専門医制度用に準備し、1次審査を終えた、専門研修プログラムを研修に用いることができるが、それ以外の枠組みで研修を行っても、外科専門医として認定する。2017年度から予定していた、現行専門医の更新時における日本専門医機構認定の専門医への移行手続きは当面行わない。2017年度に研修を開始する外科専攻医が不利益を被らないよう制度制度設計を進める構え。

 同学会は、既に188の専門研修プログラムについて1次審査を終えていた。ただし、(1)外科サブスペシャルティ領域の認定・更新基準、連動方法などのグランドデザインが確定していない、(2)外科領域としての募集定員総数を、日本専門医機構や厚生労働省の求める現行専攻医数の1.1-1.2倍までとすることが困難である――などの理由から、2017年度は現行制度を継続する。188の専門研修プログラムの1次審査・承認の段階で、募集定員は現状の約2.0-2.5倍となっている。

 2017年度は、現行制度を継続するものの、研修体制については、従来の単独施設による研修も可能だが、新制度に向けてネットワークを構成した研修施設群の活用した試行も可能。同学会では、「現行制度による認定を継続しながら、地域医療の動向や病院群による連携ネットワーク機能の検証を行い、より良い制度構築に生かしていく」としている。188の専門研修プログラムの参画施設のうち、現行制度で指定施設・関連施設に認定されていない86施設でも、プログラム制を試行する場合は、専攻医の受け入れが可能になるよう対応する。

 更新については、サブスペシャルティ領域の更新要件が確定して、更新に必要な講習受講などの準備が整った状況を見極めて、一定の猶予・周知期間を設けた上で、現行専門医の更新・新制度専門医への移行を開始する予定。

 さらに、専門医制度に関する長期的な方針として、(1)研修を受ける専攻医にとって手術症例数、指導医数、修練期間・過程などが明確に可視化され、質が担保されたプログラムによる責任を持った専門医育成・認定システム、すなわち「プログラム制」発足に向けた準備を今後も主体的に行う、(2)外科サブスペシャルティ領域を含む外科関連専門医制度を担う各学会と緊密に連携し、外科系医師が安心して研修できる外科専門医制度のグランドデザインを日本外科学会が主体となって構築する――を掲げ、2018年度以降に、日本専門医機構による新専門医制度に参画するか否かを慎重に判断するとしている。

 日本専門医機構は、7月25日の社員総会で、2017年度からの新専門医制度は、1年延期し、19の基本診療領域について、2018年度からの一斉スタートする方針を最終決定した(『2017年度の専門医養成の方針、8月上旬までに集約 』を参照)。これを踏まえ、日本外科学会は方針を決定した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/434049
シリーズ: どうなる?「日本の未来の医療」
医師の4割、最期は「自宅」を希望、病院支持者も◆Vol.3
延命治療、勤務医の半数以上は家族と話し合い済み

2016年8月2日 (火) 成相通子(m3.com編集部)

 「長年住んだ自宅で最期を迎えたい」。そのような患者の希望を支えるため、診療報酬改定などで在宅医療が推進されているものの、自宅での看取りはまだまだ困難が多い。日常的に「死」と接することが比較的多い医師にとって、「理想の終の棲家」はどこなのか。前回の調査で、回答者の多くが「延命治療を希望しない」という結果になったが(『医師の7割、終末期に胃ろうや点滴望まず◆Vol.2』を参照)、今回は最期を過ごしたい場所について、医師509人(勤務医503人、開業医506人)に尋ねた(調査の詳細は『高齢者の保険診療に制限、過半数の医師が支持◆Vol.1』を参照)。

Q. ご自身が高齢となり、脳血管障害や心疾患、認知症等によって日常生活が困難となり、さらに、治る見込みのない状態になった場合、どこで最期まで療養したいですか。
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 開業医、勤務医、いずれも「自宅」が4割弱を占め、最多だった。勤務医で次いで多かったのは「介護療養型医療施設、または長期療養を目的とした病院」で17.4%が選択。一般病院も9.8%が選択し、合わせて27.2%が病院など医療施設を最期の場所に選んだ。開業医は「分からない」が14.8%と多かった。

 その他では、「ホスピス」「在宅と小規模多機能在宅施設、ヘルパーなどの利用」「状況次第」「きちんと看てくれるなら場所は問わない」「ターミナルケアができる施設」「家族の便利なところ」「家族が望む場所」「どこでもよい」「看取ることができる、自宅も含めた可能な場所」「山寺」「その時の状態次第で、家族に判断を任せる」「酒の飲める施設」「エンドポイントが分かる人が評価すべきである」などの意見が寄せられた。

Q.  延命治療について家族と話し合いをしたり、書面に書いたりしたことはありますか。
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 続いて、延命治療について、家族と話し合いを持ったり、書面に書いたりして、意志表示をしたことがあるか、尋ねた。勤務医は47.3%が「話しあったことはあるが、書面には書いていない」と回答。「家族と話し合い、書面に書いた」が3.1%、「書面に書いたが、話し合いはしていない」が2.0%で、半数以上が何らかの方法で意志表示をしていると答えた。一方で、開業医では51.8%が「話し合いも書面に書くこともしていない」と回答。開業医は、勤務医よりも回答者の平均年齢は高いが、自身の最期については、具体的に想像したり、話し合ったりする機会は少ないのかもしれない。



https://www.m3.com/news/general/446767
【新潟】県立4病院 労基法違反か 医師の宿日直 許可確認できず
2016年8月2日 (火) 新潟日報

 県病院局は1日、松代、津川、加茂、吉田の4県立病院が、医師の宿日直について労働基準法で定められた労働基準監督署の許可を取っていない可能性があると発表した。医師不足の中、長時間労働が常態化し、許可基準を満たせない現状がある。県病院局は違法状態の解消に向け、労基署と協議する方針だ。

 千葉県の県立6病院で無許可の当直勤務を行っていたことが7月21日に発覚したことを受け、本県の病院局は県立13病院の状況を調べた。

 県病院局によると、全ての病院で労基署の許可証は確認できなかった。「申請が何十年も前なので見つからない」という。だが、このうち9病院は2002年の厚労省の調査を受けており、この調査は労基署の許可がある病院を対象に行ったことから、県病院局は「許可を確認できた」としている。

 残る4病院のうち吉田を除く3病院は、いずれも常勤医が10人以下の状況だ(4月1日時点)。労基署の許可基準では宿直は週1回、休日の日直は月1回が限度だが、月に2回日直をしている医師がいるなど基準を満たせていない。

 また宿日直中は病室の定時巡回など「常態としてほとんど労働する必要がない勤務」のみが認められているが、実際には夜間も救急対応などに追われている実態がある。

 県病院局は新潟労働局や県内の労基署に許可の有無を照会中。許可を得ていなければ申請するが、現状では許可されない可能性もある。県病院局総務課の石田由美課長は「宿日直をやめることはできない。医師が足りない中で対応は難しいが、状況を是正するため、早急に対処したい」としている。



https://www.m3.com/news/general/446760
<東北医科薬科大>医学部合格者 定員の3倍
2016年8月2日 (火) 河北新報

 今春新設された東北医科薬科大医学部(仙台市青葉区)の合格者は、追加合格を含めて募集定員(100人)の3倍に相当する297人だったことが分かった。実質競争倍率は7.7倍だった。各予備校は来春の入試に向け、受験動向の分析を進めている。

 河合塾東北本部は「国公立大医学部を併願する受験生が多く、新医学部の偏差値は70となった」と説明。私大医学部の場合、定員に達するまで追加合格を繰り返すので、合格者数が定員の3倍に達するのは珍しいことではないという。

 河合塾によると、新医学部受験生が併願した国公立大医学部の割合は、弘前大18%、山形大と福島県立医大10%、東北大9%など。東北の国公立大が全体の半分以上を占めた。

 岩手医大(盛岡市)は新医学部の余波を受けるとみられていたが、志願者は3540人で前年度比5.9%増だった。岩手医大は「全国的な医学部人気で志願者数は近年増加傾向にある。医学部新設の影響があったとは思えない」と話す。

 各予備校が分析した来春入試の予想偏差値は、新医学部が70~68で首都圏の私大上位校並み。岩手医大は65。両校で志願者層のすみ分けが進むと想定する。

 医学部受験の今後について東北医学受験ゼミナール(青葉区)は「医学部新設で力のある受験生はチャンスが増えた。浪人生が減り、受験生が東北にとどまる」と分析。東北医科薬科大の手厚い修学資金制度により「いずれは、東北大を除く東北各県の国公立大が新医学部のライバルになるだろう」と予測する。



http://www.medwatch.jp/?p=9916
済生会福岡総合の岡留院長、急性期一本で行くためには医療・介護連携体制の構築が不可欠―GHCプレミアムセミナー
2016年8月3日|2016診療報酬改定ウォッチ


 今般の2016年度の診療報酬改定では「急性期病院がどういった方向に向かうべき」かが明確に示された。2018年度の同時改定ではこの点がもっと鮮明になるであろう。急性期一本で行こうと考える病院は、「24時間・365日救急搬送を断らない体制」や「医療・介護連携体制」を構築する必要があり、そのためには病院長の強いリーダーシップが欠かせない―。

 グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が7月30日に開催したプレミアムセミナーで、福岡県済生会福岡総合病院の岡留健一郎院長は、このように強調しました(関連記事はこちら)。


ここがポイント!
1 地域の後方病院から医師が参加し「共同回診」を実施
2 手術室は急性期病院の心臓部、効率的な運用が不可欠
3 「地域から何を求められているか」を最重視した病院戦略が必要

地域の後方病院から医師が参加し「共同回診」を実施

 2016年度の診療報酬改定では、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の項目が見直されるとともに、7対1入院基本料の施設基準である重症患者割合が25%に引き上げられるなど、急性期病院を取り巻く環境は厳しさを増しています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

 また福岡総合病院が位置する福岡市は、九州大学病院と福岡大学病院という2つの大学病院があるほか、九州医療センターや福岡赤十字病院など数多くの基幹病院が存在する、まさに「激戦区」です。

 こうした状況の中では、7対1を維持するために「病棟の一部を機能転換する」ことなどが考えられますが(関連記事はこちらとこちら)、岡留院長は「急性期一本」という厳しい道を選択しました。その理由について岡留院長は、次のように説明します。

▽第3次救急施設、地域医療支援病院、災害拠点病院の役割を担っており、これを継続する必要がある

▽地域(福岡・糸島医療圏)で救急車搬入入院患者数が最も多く、地域にニーズにこれからも応える必要がある

▽これまで急性期病院を追求し、成長させるための取り組みを行ってきた

▽地域で「最高の急性期病院」を目指していることに魅力を感じて入職した職員が多い

 このように「住民のニーズ」「職員の思い」に応えるために急性期一本の道を選択されたわけですが、「急性期一本」を貫くためには乗り越えなければならないハードルが幾つもあります。その1つとして、前述した厳しさを増す「7対1の施設基準」があげられます。

 重症患者割合25%をクリアするために、福岡総合病院では「紹介率の向上」「急性期を脱した患者の後方病院への転院」などを徹底していると言います。岡留院長はこの2点について「紹介率の向上とは前方連携であり、急性期後の患者の転院は後方連携である。急性期一本は『連携』によって成り立つ」と強調しました。

 このうち後方連携を強化するために福岡総合病院では(1)5施設からの回診参加(2)51施設からの近隣病院空床情報FAX(3)連携病院による地域連携フォーラム(4)医療と介護の連携のつどい―といった取り組みを行っています。このうち(1)は、神経内科、脳神経外科、救命救急センターの3つの回診に、地域の5施設が自主的に参加するもので、「転院」について福岡総合病院と地域の病院のスタッフが情報共有、検討することで、極めて円滑な転院が実現できていると言います。

 また前方連携について福岡総合病院では「逆紹介」を重視しています。Aクリニックから紹介を受け、福岡総合病院で治療を終えた後、Aクリニックに逆紹介することはもちろん、治療の過程で別の疾患が見つかれば、それを専門とする地域のBクリニックにも逆紹介を行い、地域のクリニックや中小病院から大きな信頼を勝ち取っています。

 さらに福岡総合病院では、「24時間・365日断らない救急」体制も敷いています。患者や救急隊の要望に応えられることはもちろん、重症患者の受け入れや自院の特色・カラーの明確化にもつながります。しかし岡留院長は「以前は救急患者受け入れに積極的でない医師もいた。客観的なデータを示し1人1人医師を説得していった」と振り返られます。

 こうした事例も踏まえて岡留院長は、「病院長のリーダーシップが極めて重要である。人事考課をしっかりと行い、特に科長などミドルクラスを中心に『あなたにはこういった点に課題がある。ここを直せばより良くなる』と話し合ってモチベーションを高めていくことが必要ではないか」と強調しました。

手術室は急性期病院の心臓部、効率的な運用が不可欠

 グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では福岡総合病院の経営支援を9年前から行っています。経営支援プロジェクトのリーダーであるGHCマネジャーの塚越篤子は「福岡総合病院では、重要な経営指標である平均在院日数や医療資源投入量などが、全国の多くの病院の比べてもトップクラスとなっている。しかし、経営支援を始めた当初は『やんちゃ』な部分もあった。抗生剤の使用銘柄や入院経路などについてデータを示し、医師に行動変容を促していった」と述懐します。

 また福岡総合病院で特筆できるのは、「手術室」管理が極めて効率的かつ合理的に行われている点です。塚越は「手術室は急性期病院の心臓部である。▽申告時間と実際の占有時間との乖離▽入室から麻酔開始までの時間▽麻酔開始から執刀開始までの時間▽執刀開始から終刃までの時間▽終刃から麻酔終了までの時間▽麻酔終了から退室までの時間▽手術件数―などのデータを分析し、非効率な部分の効率化を図っていくことが重要」と訴えます。

 さらに、2016年度改定で大幅に見直された看護必要度については「救急や手術症例の多い病院にとっては『追い風』である」と指摘した上で、「7対1病院などではHファイルとして看護必要度の生データ提出が義務付けられた。GHCの調査・分析では、生データの精度が必ずしも高くない(医事データにはあるが看護必要度のチェックがなされていないケース、逆に医事データにないにもかかわらず看護必要度のチェックがなされていないケース)」ことを指摘します。データに不備があれば、中央社会保険医療協議会などで支払側から強い批判が出ることも考えられるため、データの精度向上に向けた早急な取り組みが必要です(関連記事はこちらとこちら)。

 塚越は、GHCの▽現状の可視化と看護必要度セミナーの実施▽モデル病棟の決定▽運用フローの検討▽多職種を巻き込んだ仕組みづくり―といった支援によって、短期間でデータ精度が向上する(つまり調査・分析などに耐えられる)ことも紹介しています(関連記事はこちら)。

「地域から何を求められているか」を最重視した病院戦略が必要

 プレミアムセミナーでは、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン代表取締役社長の渡辺幸子から、2018年度を見据えて、どのように病院の戦略を立てていくべきかが紹介されました(関連記事はこちらとこちら)。

グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)代表取締役社長の渡辺幸子。病院の戦略を立てる上では「地域から何を求められるのか」を最重視しなければいけないと強調する。
グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)代表取締役社長の渡辺幸子。病院の戦略を立てる上では「地域から何を求められるのか」を最重視しなければいけないと強調する。
 渡辺は、今後の病院戦略を考えるにあたり「自院がやりたい医療」ではなく、▽自院の立ち位置▽将来の医療ニーズ▽他施設の動向―を見て、「地域から何を求められていうるか」を最重視しなければならないと訴えます。

 また、その結果、「急性期の維持」を選択した際には、「急性期病院の中には、まだまだ介護との連携を軽視しているところもある。介護側は、医療に敷居の高さを感じている。しかし、介護との連携を進めなければ急性期の維持はできない」と断言しています。自院の「総合評価加算算定率」や「ケアマネジャー(介護支援専門員)との連携状況」などを今一度確認する必要がありそうです。

 さらに、どのような戦略をとったとしても「生産性の向上」と「病院の連携・統合」が避けられない時代に来ているとも渡辺は強調します。

 前者では、「業務プロセスの改善」や「タスクシフト」「需要にマッチした人材配置」などを検討すべきとし、例えば看護記録の作成などにおいて「自己満足になっていないか、本当に患者のためになっているのか、を検討して業務を見直す必要がある」としました。また、人材配置については、「繁忙期に合わせれば必ず余剰人員が出てしまう。業務を正確に分析して、人材を流動的に配置することを検討すべき」と提案しています。

 後者は、連携を進める先にあるもので、各病院が独立したまま総務や医事業務などを共同で行う「緩やかな統合」から「完全な統合」までさまざまな形態があることを示し、実際に統合が行われた事例とその効果などを紹介しました。


 グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンでは、9月17日にもプレミアムセミナー第2弾を開催します。相澤病院理事長で院長兼最高経営責任者でもある相澤孝夫氏にご登壇いただき、「機能分化」についてお話していただきます。是非、院長・事務長のお二人でご参加ください。

解説を担当したコンサルタント
塚越 篤子(つかごし・あつこ)
tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201608/547743.html
地方の病院を壊滅から救う“特効薬”
2016/8/3 千田 敏之=編集委員

 目まぐるしく変化し、複雑化する医療・介護制度。全国の医療機関の経営者は今、地域医療構想や地域包括ケアシステムへの対応に頭を悩ませていることだろう。しかし、制度よりももっと深刻な現実が、既に各地を襲い始めている。人口減少だ。人口減少はそのまま、医療マーケットの縮小(患者減少)を意味する。地方では、「患者減少→収益減→医師・看護師確保難」という負のスパイラルに陥り、病院が病院として成立し得ない状況も生じ始めている。

 地域医療構想は、まさにそうした状況に備えるための制度と言うことができる。策定に向けては、構想区域内において、個々の病院の病床の医療機能の分担をしなければならないが、その調整はどこも難航しているようだ。構想区域ごとに設けられる、いわゆる協議の場(地域医療構想調整会議)で話し合いによって行うのが基本だ。しかし、実際問題として、話し合いで決めるのはなかなか難しい。1つには急性期機能を手放したくないと考える病院がまだまだ多いことが挙げられる。一方、その在り方が根本的に見直される予定の療養病床は、見直し次第では「病院でなくなる」可能性があることも経営者たちの決断を迷わせる。

共倒れしないで生き残るためには

 そんな中、「地域医療構想を達成するための1つの選択肢」という触れ込みで、新しい制度が来年4月にスタートする。「地域医療連携推進法人」だ。聞き慣れない制度だが、「人口減や患者減にあえぐ地方で、医療機関が共倒れせず生き残るための最終手段」と語る病院経営者もいる。
 
 地域医療連携推進法人は、経営母体が違う医療機関や介護施設が、機能分化や連携を一体的に推進するための新しい仕組みだ。参加法人の間で診療科・病床の再編、医師の配置換え、医療機器共同利用、医薬品等共同購入などを一体的に進めると同時に、病床の融通もできるようにする。

 当初、「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」として検討が始まったが、医療法の中に落とし込む段階で、「地域医療構想を達成するための1つの選択肢」として、自発的に連携を推し進める制度に最終的に落ち着いた。昨年9月の医療法改正によって創設が決まり、正式スタートは2017年4月となっている。

 既に、準備を進める医療法人や地方独立行政法人などが各地で出てきている。いち早く検討を開始した医療機関に共通するのは、将来への危機感だ。日本海総合病院(山形県酒田市)、カレスサッポロ(札幌市)、相良病院(鹿児島市)、河北総合病院(東京都杉並区)など、地域でリーダーシップを取る医療機関が検討を始めている点も注目される。

 日本海総合病院を経営する山形県・酒田市病院機構理事長の栗谷義樹氏は「人口減、患者減が止まらないこの地域で、今までのような形だけの“連携”を続けていても個々の医療機関はもう持たない」と話す。酒田市では、同機構が運営する日本海総合病院、民間病院、社会福祉法人等によって、地域医療連携推進法人の設立に向けて準備が進められている。

 また、岡山県真庭市で金田病院を運営する社会医療法人緑壮会理事長の金田道弘氏も、「真庭市で最も大きい2病院が協力していくことが、地域医療を守る意味でも、職員を守る意味でも絶対に必要だという信念で検討に入った」と語る。真庭市では金田病院、医療法人井口会・落合病院の2病院が、地域医療連携推進法人設立の検討に入っている。
 
主な業務は「統一的な医療連携推進方針の決定」

 制度の概要を簡単に説明しておこう(図1参照)。地域医療連携推進法人は、「医療機関相互の機能の分担および業務の連携を推進し、地域医療構想を達成するための1つの選択肢」として創設。「これにより競争よりも協調を進め、地域において質が高く効率的な医療提供体制を確保」するとしている(厚労省資料より)。

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図1 地域医療連携推進法人制度の概要(厚生労働省資料より)(クリックで拡大)

 法人格は一般社団法人で、医療法人ではない。地域で病院等の医療機関を開設する医療法人等の非営利法人や、介護事業等を行う非営利法人を参加法人(社員)とする一般社団法人を、都道府県知事が認定することで地域医療連携推進法人になることができる。

 「病院等の医療機関を開設する医療法人等」の非営利法人の対象は広い。医療法人のほか、地方独立行政法人、自治体立、国立など、医療系の法人ならばほぼ全て社員になれる。介護系は営利法人以外ならば参加可能だ。社員に医療系法人が2つあることが最低条件で、医療法人1つ、社会福祉法人1つの組み合わせでは認定されない。
 
 地域医療構想区域内の法人が参加することが基本で、構想区域や都道府県を基本的にはまたがないとしている。主な業務内容は、「統一的な医療連携推進方針の決定」「医療連携推進業務等の実施」「参加法人の統括」だ。「統一的な医療連携推進方針」とは、複数の医療機関で、診療内容や病床機能、在宅復帰への流れなどについて統一した方針を定めるということだ。

 「医療連携推進業務」は、診療科・病床の再編、医師等の共同研修、医師の配置換え、医療機器共同利用、医薬品等共同購入、社員間での資金貸与、関連事業者への出資等が想定されている。

 病床については、「都道府県知事は、病院等の機能の分担・業務に必要と認めるときは、地域医療構想の推進に必要である病院間の病床の融通を許可することができる」として、病床過剰の圏域であっても、病院間での移転が可能となる。

 「参加法人の統括」とは、参加法人が重要な経営的決定をする場合、地域医療連携推進法人に意見を求めなければならないことを指す。具体的には予算の決定・変更、銀行からの借り入れ、資産の処分、事業計画の決定・変更、定款・寄付行為の変更、合併・分割などが挙げられる。

“連携”よりも強く、“合併”よりも緩い制度

 従来の“連携”よりも強く、“合併”よりも緩い制度、それが地域医療連携推進法人ということができるだろう。人口減少、患者減少、医師・看護師不足にあえぐ地方では、個々の病院が単独で存続できる余地は急速に狭まっている。診療科の再編や、病床の機能分担を、経営母体の異なる病院・診療所が、自発的かつ一体的に取り組んで行くには、有効なツールになるはずだ。
 
 制度が創設されるまでの経緯や仕組み、実際に検討を始めた医療機関の経営者たちの考えや思惑などについては、日経ヘルスケア7月号特集「動き始めた地域医療連携推進法人」で詳しく紹介しているので、興味がある人はぜひ、そちらを読んでいただきたい。
 

  1. 2016/08/03(水) 05:55:23|
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