Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

8月1日 

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160801-OYTET50021/
ニュース・解説
群大第三者委報告…手術数が限界、悪循環

2016年8月1日 読売新聞

群大医師1人で大半、チーム制提言
第三者委報告…手術数が限界、悪循環

 群馬大学病院の手術死問題は、発覚から1年8か月余りで、ようやく最終的な調査結果がまとまった。

 著しく質の低下した診療が、当事者の自覚や病院の管理が及ばないまま長期にわたり続けられてきた群馬大病院。第三者からなる調査委員会は、問題を二度と繰り返さないため、診療や倫理、安全について改善策を提言し、着実な実行を求めた。

 ■ 病院が旗振り役

 「こうした状況では、今回のような事態に陥る可能性は誰にでもある。医師はその自覚をもつべきだ」

 調査委の記者会見で、副委員長の長尾能雅・名古屋大教授は、群馬大病院を通して浮き彫りになった課題は、医療界全体に通じるとの考えを示した。

 群馬大病院で見られた旧第一、第二外科が分立する体制や、手術に参加していない教授が記録上は名を連ねているといった事態は、古い医療界の体質そのものだからだ。

 調査委が報告書で示した改革のための提言は、医療界全体に向けたメッセージでもある。

 群馬大病院は、人材不足の中で、病院が旗振り役となり、手術数を増やし続けた。そのことが、丁寧な術後管理や患者への説明の不足につながった。

 旧第二外科の肝胆 膵すい 分野では、1人の医師が大方の診療を抱え込み、病状などから手術に適していない患者に無理な手術をした例が目立った。報告書では、こうした状況下では、手術するかどうかの判断が甘くなるなどの弊害が起こるとし、「手術数が限界を超えることによる悪循環」と分析。「チームによる検討など、ルール作りが必要」と提言した。

 ■ 倫理チェック強化

 安全性や有効性が確立されていない保険適用外の 腹腔ふくくう 鏡を使う肝臓手術を受け、死亡した8例では、患者を守るために院内で話し合う倫理審査を通していないことが問題になった。調査によると、執刀医がその必要性を認識していなかっただけでなく、臨床研究で行われるべき医療行為を病院が倫理審査の対象としてこなかったのが実情だった。

 執刀医の上司である教授は、腹腔鏡手術が導入された2010年から1年間の状況を記した論文で、実際は4人が亡くなっているのに、死亡患者は1人と虚偽の記載をしていた。

 執刀医の学会発表も、手術死の発覚当初から問題視されていた。

 日本肝胆膵外科学会は昨年7月、この執刀医が代表となった過去の学会や論文発表の内容を調査したところ、死亡例についての言及はなかった。「出血は少ない傾向」「成績はおおむね良好」など、具体的な数字を示さずあいまいな表現を使う特徴が見られた。

 報告書は、こうした研究発表について、「旧第二外科の腹腔鏡肝切除の成績について誤解を与えた」と指摘。倫理的なチェックの強化を求めた。

 群馬大病院では、患者を置き去りにした医療が常態化していたとも言える。そこで調査委は、一連の問題を振り返るため、「医療安全週間」の設定を提案。遺族を第三者委員に登用することも推奨した。

 委員長の上田裕一・奈良県総合医療センター総長は「ご遺族の思いは再発防止に生かしたい。患者参加の講演会を企画してはどうか」などと提案。群馬大病院が遺族の思いを受けて、トップレベルの医療安全や医療倫理を目指す改革を進めるよう促した。

  事実ねじ曲げ、失格

 名古屋大腫瘍外科の 梛野なぎの 正人教授の話「手術に関する学会発表や論文には、本来、死亡例があれば盛り込まれてしかるべきだ。群馬大病院ではあれだけ患者が亡くなっていたのに、問題の医師による学会発表にも論文にも、死亡例はほとんど出てこなかった。隠蔽と言えるのではないか。事実をねじ曲げるのは医師、研究者として失格だ」

  過信あったのでは

 自治医大さいたま医療センターの遠山信幸・医療安全・渉外対策部長の話「各診療科が手術件数を増やした場合、病院が対策を取らずにいると診療の質が低下する可能性がある。群馬大病院は『最後の砦』として住民から信頼されてきたが、それは職員の自負になる一方、過信もあったのではないか。このことを今後に生かす必要がある」

 (医療部 高梨ゆき子、前橋支局 染木彩)

死亡の全ケース、報告を義務化…特定機能病院

 群馬大病院の問題などを受け、厚生労働省は、高度な医療を担う特定機能病院の承認要件を見直した。入院患者が死亡した場合は安全管理部門に全例報告を義務づけるなど、医療の安全性向上の対策を強化する内容で、原則として今年6月から適用されている。

 新要件はこのほか、▽安全管理部門に専従の医師、薬剤師、看護師を配置 ▽委員の半数以上を院外の第三者が占める監査委員会の設置 ▽高難度手術を新たに実施する際、それが妥当かどうかを審査する部門の設置――などが盛り込まれた。

 特定機能病院は、大学病院を中心に全国84病院が承認を受けている。群馬大病院は群馬県で唯一の特定機能病院だったが、昨年6月に取り消された。

 日本肝胆膵外科学会などは昨年11月、腹腔鏡を使った肝臓手術をデータベースに登録する制度を新設。患者の病気の状態、術後の合併症の有無などの情報を入力し、全国的な実施状況や患者の死亡率を把握して安全性の向上を目指す。全国の大学病院でも、患者に有害な出来事が起こった場合の報告や倫理審査の徹底が進んでいる。(医療部 佐々木栄)

 (2016年7月31日 読売新聞朝刊掲載)



https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160801-OYTET50016/
ニュース・解説
群大病院の医師、問題意識なく執刀…収益優先で手術数競う

2016年8月1日 読売新聞

 1年近い検証作業を経て、調査結果がまとめられた群馬大学病院の手術死問題。一連の調査からは、一つの診療科で顕在化した問題の根本に、質の低い医療が繰り返されるのを許した病院組織のひずみがあることが浮き彫りになった。

■「死亡防げた」

 「適切な対応をしていれば、その後の死亡の続発は防げた可能性がある」

 調査を担った第三者委員会は、2009年度1年で患者8人の死亡が集中した旧第二外科や病院の対応を問題視した。担当したのは同じ執刀医だった。

 執刀医は、上司である教授がその職に就いた翌年の07年4月、群馬大病院に赴任した。先輩医師が別の病院に移った09年春から肝胆 膵すい (肝臓、胆道、膵臓)手術を主導するようになり、死亡が集中した。同年度の死亡数は、着任当初2年間の年間死亡数の約2倍だった。

 「重症の患者であり、術後の合併症による死亡で、やむを得ない」

 調査によると、執刀医に問題の認識はなかった。手術が一時中断されたこともあったが、有効な改善策もなく再開。死亡が集中した翌年度には、高度な技術が必要な 腹腔ふくくう 鏡手術を導入した。その後、14年までに開腹も含め少なくとも15人の死亡が相次いだ。

■最重要課題

 群馬大病院は、国立大の法人化で自立した経営が求められるようになってから、収益のため手術数増が最重要課題となった。100床当たりの手術数は10年度、全国の国立大病院中1位。11年度は3位、12~14年度は2位と上位を占めた。

 特に旧第二外科の肝胆膵分野は、医師が1~2人と不足状態だったにもかかわらず手術数を増やした。旧第一外科でも同じ分野の手術を手がけており、3~6人の医師が診療していたが両科が連携することはなく、競い合うように同規模の手術数をこなしていた。

 肝胆膵外科の専門家は「手術だけでなく術後の管理や突発的な出来事に対応することも考えると10人は必要ではないか」と驚く。こうした旧第二外科の状況について、調査は「著しく許容量の限界に近かった」と問題視した。

■カルテにうそ

 旧第二外科の診療を巡っては、虚偽とみられる記録も見つかった。

 旧第二外科の教授は記録上、多くの手術に名前が記載されていたが、実際は参加していなかったこともあった。教授は12年、日本肝胆膵外科学会が高い手術実績を持つ医師として認定する高度技能指導医の資格を専門外であるにもかかわらず、取得していたが、資格に見合う技量があったか疑問視されている。

 腹腔鏡手術を導入した10年から1年間の手術成績をまとめた学術論文では、実際より死亡数を少なく発表していた。

 不正確なカルテ記載も数多く見つかっている。

 調査では、死因究明のために解剖を求めた遺族が執刀医に「こういう場合は解剖しない」などと断られたが、カルテには遺族が拒否したかのような記載があったことも明らかになった。

 第三者委の聞き取り対象外だった遺族の男性も取材に対し「実際にはされた覚えのない病状の説明がカルテ上ではされたことになっており、不信感を持った」と話した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/433838
シリーズ: どうなる?「日本の未来の医療」
医師の7割、終末期に胃ろうや点滴望まず◆Vol.2
3割以上が「一切の延命治療」を拒否

2016年8月1日 (月) 成相通子(m3.com編集部)

 高齢者への人工的に栄養を補給する胃ろうや中心静脈栄養の是非をめぐって、意見が分かれている。日本は諸外国と比較して胃ろうの造設件数が多く、嚥下機能の評価を十分にしないまま安易に造設するケースが多いとの批判を受け、胃ろう造設術の減少を目的に、2014年度診療報酬改定で点数の引き下げが行われた。しかし、造設件数はほとんど減少していない(『胃ろうの実施件数、「あまり減っていない」』を参照)。

 社会保障費の増加抑制が迫られる中、高齢者と医療費の問題についても厳しい目が注がれている。胃ろうなどの終末期医療を「不必要な医療」だと認識している医師も少なくない(『「不必要な医療あり」が9割超◆Vol.6』を参照)。しかし、人工栄養補給で回復するケースもあり、病院の経営上の問題や、家族からの強い要望があるなど、さまざまな理由で、実際の医療現場ですぐに減らすことは難しい状況だ。

 もし、自分が高齢による疾患で、日常生活が困難になり、治る見込みもない、全身の状態が極めて悪化した終末期を迎えた場合、どの程度までの医療を望むのか。また、自分の家族だったらどの程度までの医療を望むのか。医師509人(勤務医503人、開業医506人)に尋ねた(調査の詳細は『高齢者の保険診療に制限、過半数の医師が支持◆Vol.1』を参照)。

 
Q.「ご自身」が高齢となり、脳血管障害や心疾患、認知症などによって日常生活が困難となり、さらに、治る見込みがなく、全身の状態が極めて悪化した場合、どの程度までの医療を望みますか。(下記5つから1つを選択)

1.可能な限り、全ての延命医療を望む
2.人工呼吸器等、生命の維持のために特別に用いられる治療は中止してほしい
(胃ろうや中心静脈栄養などによる栄養補給、水分補給は続けてほしい)
3.胃ろうや中心静脈栄養などによる栄養補給も中止してほしい
(点滴の水分補給などは続けてほしい)
4.点滴の水分補給など、一切の延命治療を中止してほしい
5.分からない
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Q.「ご家族」が高齢となり、脳血管障害や心疾患、認知症などによって日常生活が困難となり、さらに、治る見込みがなく、全身の状態が極めて悪化した場合、どの程度までの医療を望みますか。(下記5つの選択肢から1つを選ぶ)

1.可能な限り、全ての延命医療を望む
2.人工呼吸器等、生命の維持のために特別に用いられる治療は中止してほしい
(胃ろうや中心静脈栄養などによる栄養補給、水分補給は続けてほしい)
3.胃ろうや中心静脈栄養などによる栄養補給も中止してほしい
(点滴の水分補給などは続けてほしい)
4.点滴の水分補給など、一切の延命治療を中止してほしい
5.分からない
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 勤務医では、「自分」と「家族」のいずれの場合も、3の「胃ろうや中心静脈栄養などによる栄養補給も中止してほしい(点滴の水分補給などは続けてほしい)」が最も多く、39.5%(自分の場合)と43.5%(家族の場合)が選択した。開業医は「自分」の場合は4の「点滴の水分補給など、一切の延命治療を中止してほしい」が最も多く、37.1%が選択したが、「家族」の場合は逆転し、勤務医と同様、3の「胃ろうや中心静脈栄養などによる栄養補給も中止してほしい(点滴の水分補給などは続けてほしい)」が最多で、36.3%を占めた。

 いずれも、3と4を合わせると7割近くになり、胃ろうや中心静脈栄養などによる栄養補給、人工呼吸器等、生命の維持のために特別に用いられる治療は、ほとんどの医師の回答者が望んでいないという結果になった。



https://www.m3.com/news/general/446009
千葉県警・日本医大千葉北総病院 事件現場に医師派遣 応急治療で協定 /千葉
2016年8月1日 (月) 毎日新聞社

 県警と日本医科大千葉北総病院(印西市)は29日、ハイジャックや立てこもり事件の際、人質や警察官が負傷する事態に備え、医師を事件現場に派遣する協定を結んだ。負傷者が病院に搬送されるまでに応急治療をし、救命率の向上を図る。

 同様の協定は警視庁に続き全国で2例目。県警によると、昨年までの10年間で乗り物の乗っ取りや凶器を使った人質立てこもり事件は全国で41件あり、そのうち3件が県内で発生した。消防の救急隊員らは医療行為をできないことから、同病院に協力を要請した。

 派遣されるのは、同病院の救命救急センターの医師2人と看護師1人で作るチーム。県警から要請を受けると、簡易な手術道具や輸血道具を携え、ドクターヘリなどで県内全域に急行する。突入時に警察官が負傷する事態にも備えるという。

 県警本部であった協定締結式で森田幸典本部長は「(人質事件は)被害者や警察官の生死に直結する恐れもあり、医療機関との連携が不可欠。万全を期していく」とあいさつ。2月に佐倉市の教会で起きた人質立てこもり事件でも同病院が県警の要請を受けて医師を現場に派遣し、人質の治療に当たった経緯があり、清野精彦院長は「混迷した社会で悲惨な事件が起きている。医療は病院だけでなく、いろいろな場で役立たなければいけない」と述べた。【金森崇之】



https://www.m3.com/news/general/446336
死亡事案の全件報告規定 安全強化、負担増に懸念も
2016年8月1日 (月) 共同通信社

 群馬大病院で患者死亡が相次いだ問題は、高度医療を提供する特定機能病院の信頼も揺るがせた。国は今年6月に省令を改正し、承認要件を厳格化。死亡事案は全て院内の医療安全管理部門に報告することなどを義務付けた。安全対策の強化を目的にした措置だが、現場からは「医師の負担が増えるだけ」との声も。安全に携わる人材育成も課題となっている。

 400床以上のベッド数と、原則16以上の診療科。最先端の医療設備を備え、地域医療の拠点となっているのが特定機能病院だ。診療報酬加算などの優遇が受けられる。

 厚生労働省は、2014年に発覚した群馬大病院や東京女子医大病院での医療事故を受け、昨夏、この2病院を除く84の特定機能病院を集中検査。死亡事案の報告制度がないほか、再発防止の検討も不十分な施設があることを確認した。

 死亡事案は、事故かどうかや診療行為との関係、予期の有無を問わず院内で起きた全事例を安全管理部門に報告する―。集中検査の結果を基に示された新たな承認要件だが、現場の医師らからは懸念も出ている。

 約930床を持つ近畿大病院(大阪府)。年間の死亡事案は350~400件に上る。医療安全対策室の辰巳陽一(たつみ・よういち)室長は「死亡は避けられたのではないか、どのような対策を取るべきかという観点での検証は必要」との立場だが、「多くの病院では安全担当のスタッフは限られる。全事例の詳細な検証を前提に報告の徹底を求めているのであれば、現実的に対応は困難だ」と懸念する。

 国は10月まで経過措置の期間を設けているが、「求めている報告内容のレベルが現状ではあいまい。件数だけが問われているといった受け止めが医療現場に広がる恐れもある」と指摘する。

 一方、新要件は、事実上専従は看護師だけだった医療安全管理部門に、新たに専従の医師を配置することも義務化した。ある大学病院関係者は「専門的に安全問題に取り組む医師の存在は不可欠」と評価するが、人材確保は大きな壁となりそうだ。

 弘前大病院(青森)の大徳和之(だいとく・かずゆき)医療安全推進室長は心臓血管外科医。14年4月に室長に就任してから事故の予防策や事故後の対応などを学び始めた。今も手術を担当することはあるが、医療安全担当者としての仕事は多く、今後のキャリアへの不安を感じるという。

 「医療安全だけを専門にしている医師は少なく、多くの施設では別の診療科の医師が安全管理の担当も兼務しているのが現状」と大徳室長。

 厚労省は「専従」の定義を「原則就業時間の8割以上を従事」とするが、「臨床経験を積みながら医療安全にも携わることができる仕組みなど、医療安全を担う医師の裾野を広げていく必要がある」と訴える。



http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03185_02
【視点】
ベスイスラエル病院の閉院と医療の行く末

山口 典宏(米国ロックフェラー大学大学院がん生物系部門講師/スローンケタリング記念がんセンター)
週刊医学界新聞 第3185号 2016年08月01日

 5月のある日,唐突にそれはやってきました。ニューヨークのタブロイド紙がベスイスラエル病院の閉院を報じたのです。ほどなく病院から公式発表がありました。同院は筆者が内科レジデントとして勤務していた病院です。なぜ閉院することになってしまったのかをひと言で言えば,利益を上げられなくなってしまったからです。本稿ではこの事象が米国でどう理解され,日本の医師および国に何を問うのかを論じます。

 ニューヨーク市では,2000年以来19の病院が閉鎖され,そのほとんどが低所得者向けの施設でした。米国では保険と職の結び付きが強く,“良い職”に就く人は手厚い保険で“良い病院”に行きます。しかし,高所得で良い病院に行く人よりも医療費を使っているのは,日々の生活にも事欠く低所得の人々です。路上,シェルターで暮らす低所得者は退院後に帰るところがないことも多く,社会的入院と数日間での退院もよくありました。

 こういった背景の中,Affordable Care Act(いわゆるオバマケア)は約5000万人の無保険者を取り込みました。本格的施行による2014年度からの医療費増加に対しては,既存診療のコスト削減策が取られました。例えば,入院後48時間以内に患者が退院した場合は,不必要な入院だったとみなされ保険がおりない。退院後2週間以内の再入院も保険がおりない。これらは健康に関心が薄い低所得者層の診療を主とする病院にとって致命的でした。

 すると「利益を得るのが難しい低所得患者は違う病院に送ろう」という発想が病院側に出てきます。政府も手を打っています。入院を契機に,ソーシャルワーカーが無保険者を保険に入れると,その患者がその後他院で診療を受けた場合,他院には保険がおりなくなります。しかし救急だけは“緊急事態”として例外で,保険が手厚く,他院に入院したことのある患者からでも利益を得られます。

 経営判断が確かで財務体質の強いある大学が,マンハッタンの閉院した病院の跡地に,入院施設のない救急外来を開きました。取りこぼしの少ない救急外来で,入院が必要な患者を保険により振り分けるためです。つまり,無保険や低所得者用保険の患者を違う病院に送り,良い保険を持つ患者を自分の系列病院に入院させるのです。これにより,ベスイスラエル病院(を含めた低所得者層向けの入院施設)は,もうからない入院診療をある程度補填する利益を生んできた救急診療の部分を奪われ,入院診療のみが残されてしまいました。そして,今まさにベスイスラエル病院は125年の歴史に幕を下ろし,ほぼ病床を持たない救急外来に“生まれ変わる”ことになったのです。

 これを聞いて,「米国の医療はカネカネカネ,でけしからん。日本では……」と思った方は少し想像してください。世界一豊かな米国が医療費の高騰にあえぎ,低所得者層への医療・福祉の切り捨てを事実上追認せざるを得なくなってきたということです。米国人が冷徹である結果だとは,私は思いません。米国人は現実的に継続できないシステムを世に問い,ヘルスケアの行く末に関して議論を活性化しています。翻って日本は米国より貧しく,高齢化は進んでいるのです。「問題を問題として認識する勇気」が試されていると思われます。

 ベスイスラエル病院は日本から臨床留学を継続して受け入れるほぼ唯一の病院でしたが,臨床留学の継続も危ぶまれています。今も関係者が継続に向けて努力を続けています。25年の伝統を持つ交流が途絶えぬよう祈りながら。


山口 典宏
2005年阪市大卒,天理よろづ相談所病院ジュニアレジデント,聖路加国際病院内科チーフレジデント,血液腫瘍内科勤務を経て渡米。米ハーバード公衆衛生大学院修了,同キャンサーセンター研究員,マウントサイナイ・ベスイスラエル病院内科レジデンシー修了。16年7月より現職。



http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ01IFE_R00C16A8TJC000/
抗がん剤「オプジーボ」の売上高、初の3位
4~6月

2016/8/1 19:19 日本経済新聞

 米調査会社IMSヘルス日本法人のアイ・エム・エス・ジャパンは、2016年4~6月期における医療用医薬品の国内売上高(薬価ベース)を公表した。高薬価で注目が集まる小野薬品工業の抗がん剤「オプジーボ」が初めて3位にランクインし、使用数の伸びがデータ上でも裏付けられた。

 売上金額は265億円で、前年同期比約17倍の伸びを示した。従来皮膚がんの悪性黒色腫にしか使用できなかったが、昨年12月に肺がんの治療にも使用可能となったため、使用数が大幅に増えた。

 1位は16年1~3月期に引き続きC型肝炎薬「ハーボニー」だった。売上高は前四半期に比べて54%減少。既に販売のピークを過ぎたと推測される。ハーボニーは米製薬大手ギリアド・サイエンシズが昨年発売した。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/54435/Default.aspx
神奈川県内科医学会が提言 情報共有のあり方で製薬業界に呼びかけ「ともに議論を」
2016/08/01 03:53 ミクスオンライン

神奈川県内科医学会は7月29日までに、「医療界の情報共有のあり方について考える」と題した提言をまとめた。提言では、「製薬業界が定めた自主規制が過剰となり、明らかに行き過ぎと思われる規制が見受けられる」と明記。臨床医にとって必要な情報が届かない事態になっていると指摘した。その上で、実地臨床医の意見も取り入れながら、医療界の新たな情報共有のあり方を模索することが必要と強調した。神奈川県内科医学会の宮川政昭会長(宮川内科小児科医院院長)は本誌取材に対し、「製薬業界内だけで議論するのではなく、医療関係者と産業界がともに議論し、最適な形にすることが必要ではないか」と製薬業界に呼びかけた。研究会・講演会がプロモーションコードや公競規に縛られる中で、これまでと違った新たな情報共有のあり方を模索したい考えだ。

以下の関連ファイルに、提言を掲載。(8月1日のみ無料、その後プレミアム会員のみダウンロードできます)

提言では、「医薬品の適正使用は適切な薬剤情報なしに、その選択はあり得ない」と指摘。医薬品の製剤としての情報だけでなく、投与する患者の情報を含めた、いわば“医療情報”とも言える情報が必要だとした。市民公開講座を含めた研究会・講演会もこうした目的で実施することが必要としている。

製薬業界については、「研究者・医療関係者・患者団体等と相互の信頼関係の中で、最適な医療が推進されるよう行動することが望まれる」とした上で、「最近の動向をみる限り、社会の信頼に応えていくために、患者を含む、あらゆる立場の人たちと対話するという視点が抜け落ちている」と指摘した。

◎新たな形の講演会や研究会、臨床研究のあり方を考える時がきている

研究会・講演会をはじめとした情報共有については、「製薬企業が自らの業界のみで議論するのではなく、すでに自らが医療者であるという自覚のもとに、すべての人々と共に、新たな形の講演会や研究会そして臨床研究のあり方を考える時が来ているのではないだろうか」と指摘。「今こそ、あらゆる人々が一緒に、真の社会貢献に対する議論を高めていく時ではないだろうか。それはすべて患者を中心としたというより、人を中心とした医療の新しい道を探求する話し合いになるはずだ。共に考え、共に悩み、共に励ましあい、共に行動する、医療者の集まりが望まれる」と結んでいる。

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提言 神奈川県内科医学会
医療界の情報共有のあり方について考える


 最近、各地で講演会の開催が困窮をきたす状況となった。製薬業界が定めた自主規制が過剰となり、明らかに行き過ぎと思われる規制が見受けられる。
 最適な診療の選択のためには、最適な治療法の検討が必要であり、薬剤の適正使用を視野に入れた医療情報が望まれる。
 医薬品の適正使用は適切な薬剤情報なしに、その選択はあり得ない。そこには医薬品情報が中心となる。患者に対する最適な医薬品の選択は的確な医療情報なくして、その選択はあり得ない。そこには患者情報が中心となる。そこには、市民公開講座を含めたあらゆる会の目的がそこにあるのではないだろうか。
 「医学」と「医療」の違いは何かといえば、「医学」は科学的な根拠に基づいた体系的な学問である。一方、「医療」は病を治すためのあらゆる分野における知識や経験を集大成した私たちの叡智である。
 病を治すための人類のあらゆる分野における知識や経験を集大成した医療のための講演会を望む事は、夢物語と一蹴されてしまうものだろうか。講演会・研究会さらに市民公開講座の実施に当たり、どのような問題点がそこに潜んでいるのであろうか。
 製薬業界は、研究者・医療関係者・患者団体等と相互の信頼関係の中で、最適な医療が推進されるよう行動することが望まれる。医療関係者というのは、看護師・薬剤師・介護職など、患者の周囲を取り囲むすべての人々であろう。そこには、製薬業界の人々もすでに医療界の中に内包されるものである。最近の動向をみる限り、社会の信頼に応えていくために、患者を含む、あらゆる立場の人たちと対話するという視点が抜け落ちている。
 製薬企業が自らの業界のみで議論するのではなく、すでに自らが医療者であるという自覚のもとに、すべての人々と共に、新たな形の講演会や研究会そして臨床研究のあり方を考える時が来ているのではないだろうか。
 今こそ、あらゆる人々が一緒に、真の社会貢献に対する議論を高めていく時ではないだろうか。それはすべて患者を中心としたというより、人を中心とした医療の新しい道を探求する話し合いになるはずである。共に考え、共に悩み、共に励ましあい、共に行動する、医療者の集まりが望まれる。



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47509
大学病院の事故と不正が減らないのはなぜか
医療ミスでも責任を問われない教授陣、病根は教授選考にあり

上 昌広
2016.8.2(火)JB Press

 群馬大学で手術後の死亡例が相次いだ問題で、大学から依頼された第三者事故調査委員会は、7月30日に報告書を提出した。

 朝日新聞の報道によると、主な問題点は以下だ。

(1)2009年度に同じ男性医師による手術の後に8人が死亡していたのに、対応をとらなかった。
(2)旧第2外科では男性医師1人に手術が集中。支援の体制がなかった。
(3)男性医師の腹腔鏡手術の技量に疑問を持つ同僚医師から手術の中止を求める声が出たが、教授が聞き入れなかった。
(4)旧第1外科と旧第2外科の間に競争意識があり、連携がなかった。
(5)病院は体制を整えないまま、手術数を拡大。
(6)死亡した18人のうち院内の安全管理部門に報告されたのは1人のみ

責任を問われない教授たち

 群大は、今回の指摘を受けて、組織改革を進めるだろう。既に2015年4月には、2つの外科を「外科診療センター」にまとめている。

 ただ、私は、こんなことをしても問題は解決しないと思う。

 問題を起こした旧第2外科の竹吉泉教授は、いまだに教授職にあるし、ホームページの「教授挨拶」では、医療事故の件に全く触れていない。

 そればかりか「当教室のスタッフだけでほとんどの外科診療についてカバーでき、どのような患者さんが来院されても対応可能な体制をとっています」と主張する始末だ。当事者意識がない。

 さらに、旧第2外科のライバルと評された第1外科の桑野博行教授は、4月14日に大阪市で開催された日本外科学会の会合で、来年度の学術集会の会頭に選出された。

 オピニオン誌『選択』の6月号に掲載された「日本外科学会 医療を腐らせる「黒い利権装置」」によれば、会頭の選出では理事長の渡邊聡明・東京大学教授(腫瘍外科・血管外科)が推す東大閥の候補と、九州大学の推す桑野群大教授が対決した。

 怒号も飛びかう中、中断を繰り返して夜半までもつれ、投票により桑野氏が選ばれたらしい。

 日本外科学会は代々、九大閥が強く、対抗軸として東大閥が存在する。桑野群大教授も九大卒だ。群馬大学が置かれた現状を考えれば、桑野教授は群大の改革より、自分の出身母体の勢力拡張と、名誉職である「日本外科学会学術集会会頭」に関心があったと言われても仕方がない。

 この事例が示すように、群大の問題の本質は組織図や手続き論ではなく「教授のあり方」だ。

 群大の問題は、組織図をいじり、屋上屋を重ねるようなチェック体制を構築しても解決しない。下手な医師が手術をすれば事故は起こるし、統率力のない教授が指導すれば、医局は緩む。

問題は教授選考にあり

 トップが責任逃れすれば、部下の信頼を失う。竹吉教授や桑野教授の振る舞いを見れば、群大外科で事故が相次ぐのも仕方ない。

 群大再生で議論すべきは、どうすれば適材適所の人材を登用できるかだ。私は、今こそ、教授の選考システムを変えるべきだと思う。

 医局では教授に権限が集中する。誰に手術をさせるか、どこの病院に異動させるかは教授に決定権がある。絶対権限を持つ教授に対し、医局員は逆らえない。医局は教授次第と言っていい。

 では、教授はどうやって選ばれるのだろう。

 これは教授が構成員を務める教授会での選挙だ。その際、重視されるのは、研究と診療の実績だ。どれくらい手術が上手いか、いくつ英語で論文を書いているかをが、具体的な評価基準になる。確かにいずれも重要だ。ただ、これで教授を選ぶのは危険だ。

 なぜなら、論文の筆頭著者や主治医に求められる能力と教授に求められる能力は異なるからだ。

 医局のトップとして、教授に求められるのは管理能力だ。ところが、教授選考で、管理能力が話題になることは稀だ。なぜなら、教授会の構成員は、そんなことに関心がないからだ。

 数年前、東大医学部を舞台に臨床研究の不祥事が発覚した。

 慢性骨髄性白血病の患者の個人データをノバルティスファーマに無断で送り、講演料や奨学寄付金を得ていた黒川峰夫・東大教授(血液・腫瘍内科)は、いまだに教授の地位にあるし、千葉大学在籍中に自らが責任者として実施した臨床研究で不正を指摘された小室一成・東大教授(循環器内科)は、今年、日本循環器学会の代表理事に就任した。

 知人の全国紙記者は「東大教授は逮捕されない限り、責任を取らない」と言う。

幼稚で無責任な医学部教授

 彼らの無責任な振る舞いは、東大医学部教授会や日本循環器学会の理事会で問題とならなかったようだ。「医学部教授」という人種の考え方が分かる。幼稚で、無責任なのだ。

 では、どうすればガバナンスを効かすことができるか。

 医学部の教授会は構造的に腐敗しやすい。それは一部の教授たちが、教授選考を通じて大きな権限を持つのに、誰からもチェックされないからだ。

 竹吉・黒川・小室教授のケースのように、どんなに問題を起こしても、自ら辞めない限り、教授職は安泰だ(ちなみに部下の医師は辞職している)。

 国民が激怒し、マスコミに袋だたきにされても、組織内で責任を問われることはない。ほとぼりが冷めれば、医局員や教授会で、自らを安全地帯に置きながら人事権を行使する。

 知人の東大医学部の教授は「教授選挙は好き嫌いで決める輩が多い。怪文書が来ることもある」という。これで腐敗しない方がおかしい。

 どうすればいいのだろうか。私は、人事権を行使した人に、応分の責任を負わすべきだと考えている。つまり、教授会の任命・監督責任を追及するのである。

 具体的には、群大の場合、竹吉泉教授の教授選考で、誰が推薦し、どのような議論がなされたかを、公開すればいい。どのようにして「連帯責任」を負わすかは、群大が自ら考えればいい。

 幸い、昨年4月から、改正学校教育法および国立大学法人法が施行された。教授会と理事会のあり方をどうするか、試行錯誤が続いている。今がチャンスだ。

 学会も群大を応援すればいい。現在、医学界では、専門医の在り方について議論が進んでいる。第三者機関である日本専門医機構が、各学会が独自に認定してきた専門医資格を評価しようとしている。

群馬大学の事故は氷山の一角

 日本専門医機構は、大学病院など「中核施設」と地域の「協力施設」が連携して研修することを推奨している。おそらく、大きな反対がなければ、群大の多くの診療科は「中核施設」に認定され、労せずして、若手医師を「確保」することになるだろう。

 果たして、群大に、その資格はあるのだろうか?

 現在の群大病院が、その任に耐えないのは明らかだ。日本専門医機構の吉村博邦理事長は「専門医制度を通じて、国民に対し良質な医療を提供するための諸施策を検討する」ことを、「機構の役割」としている。私は、日本専門医機構の対応にも注目している。

 医療事故だけでなく、大学病院では不祥事が相次いでいる。今回の群大の医療事故は氷山の一角だと思う。

 大学病院の再生で、まず考えるべきは、「どういう人が大学教授に相応しいか」だ。

 小川誠司・京都大学教授(腫瘍生物学、血液内科)は「教授に必要なのは特段に優れた臨床能力でも研究能力でもない。若い人材にチャンスを与えて、その能力を育み、もって我が国の将来を展望する「特別な能力」だ」と言う。

 同感だ。今こそ、地に足の着いた議論が求められる。



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47490
国民皆保険にとどめを刺す桁外れの高額がん治療薬
医療の費用対効果を真剣に考える時代がやってきた

多田 智裕
2016.8.2(火)JB Press

 7月21日の報道によると、中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)が「高額な新薬の適性投与に指針を制定する」方針を立てているとのことです。


 投与制限の対象となる薬の第1弾は、がん免疫治療薬の「オプジーボ(ニボルマブ)」です。オプジーボは、免疫力を高めてがんを攻撃する画期的な新薬で、理論上は全てのがんに効く可能性があります。

 ただし今回の政策では、オプジーボについて「効果が見込まれない」基準を制定し、その基準に合致する場合は投与を制限することになります。効果が見込まれないと診断する基準については、今後半年間で決定するとのことです。

 これまで、日本では国民皆保険のもと、効果の上がる可能性がきちんとしたデータで示された薬剤については、認可に時間が多少かかることはあっても、続々と健康保険適応となってきていました。ですから、適応とされている薬に対して、“効果が上がる可能性が低いかもしれない“という理由で投与制限がかかることは極めて異例です。

 オプジーボは、効果は非常に高いのですが、コストが年間1人当たり3500万円もかかります。ここまで高額な薬剤については、保険適応の投与対象者を選別して、公費負担を減らそうというのが狙いです。

 とはいえ、これほどの金額になると、患者が自費で治療を受けることはほぼ不可能でしょう。よって、保険適応対象者の基準から外されることは、その方にとって事実上のがん治療終了宣告となります。私たちが医療を受ける際には必ず「保険が適応されますか?」と確認しなければならない時代がやって来るということかもしれません。

聖域なき医療費抑制策が施行される

 前回のコラム(「伝えられない医療改革、あらゆる世代が負担増に」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47249)で、これから実施される見込みの医療費抑制策の中に以下の項目があることをお話ししました。

・保険適応は後発品のみで、先発品との差額は自己負担
・市販類似薬(薬局で購入可能な薬)の保険除外

 ですが、後発品を処方するケースは、あくまで慢性期で症状が安定している場合、ないしは安定した効果が認められる状況を想定しています。「市販類似薬」というのも、軽症者が薬局で購入できる風邪薬などが対象でした。

 このくらいの施策であれば、確かに自己負担が増えるものの、すぐに生命に関わるわけではありませんし、個人レベルでもなんとか防衛対応可能な範疇と思われました。

 しかし、今回は、生命に関わる抗がん剤や高額薬剤も給付制限の対象となることが発表されたのです。まさに聖域なき医療費抑制策が施行されることが明らかになったと言ってよいでしょう。

桁外れの高額な金額が国民皆保険にとどめを刺した

 日本の国民皆保険の趣旨は、「誰でも」「いつでも」「どこでも」医療の全てを健康保険でカバーすることです。その趣旨に基づいて、これまではどんなに高額な薬剤であろうとも、一定の効果が認められれば次々と保険適応とされてきました。

 例えば2011年には、乳幼児に重篤な肺炎を引き起こすRSウイルスの重症化を防ぐ抗体注射「シナジス」が、早産児や呼吸器疾患を持つ乳幼児に外来で注射可能になりました。「シナジス」注射1回分の料金は16万です。月に1回を半年間続けると約120万円です。

 また、2013年には、潰瘍性大腸炎に対してTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」の適応が認められました。こちらの1回分の薬剤代金は7万2000円です。月2回投与で、1人あたりの年間料金は360万円となります。

 2015年5月に保険適応された、C型肝炎を完治させる夢の新薬「ソバルディ」は1回(3カ月分)の治療金額が1人当たり550万円に最終的に決定しました(参考「夢の肝炎治療薬が医療財政に与える大打撃」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43397)。

 これらの薬剤は高価ではありますが、治癒可能性がある場合に「効果が見込まれる可能性が低い」という理由で投与が保険適応外にされることはありませんでした(ただし、「きちんとした組み合わせで処方する」という縛りや、腎臓の機能が低下しているなど副作用の可能性が高い場合などの投与制限はありました)。

 しかし、今回の「オプジーボ」の薬剤代金は1回投与分で146万円、2週間に1回投与すると1人当たり年間3500万円です。これまでとは1桁違う極めて高額な金額が、国民皆保険にとどめを刺し、投与対象者の選別を行わざるをえなくなったということです。

費用対効果を直視してこそ新たな道が開ける

 もちろん、高価な薬剤の価格を引き下げる施策も同時に行われます。「ソバルディ」は2016年4月より30%価格が引き下げられました。「オプジーボ」も、最大50%の価格引き下げが検討されています。

 とはいえ、最大限引き下げられたとしても、1人当たり年間1800万円近くもかかります。

 今後も様々な高額な薬の発売が見込まれることを考えると、保険でカバーされる範囲に次々と制限がかかり、私たちが薬剤を処方してもらう際に「保険が適応されますか?」と聞くことは避けられない状況になると思われます。

 けれども、これは考えようによっては必ずしも悪い話ではありません。「医療は手頃な価格でいつでも手に入るもの」という考え方から、みんなが費用対効果をシビアに考えるようになれば、そこから新しい医療の形、そしてイノベーションが生まれてくる可能性が出てくるかもしれないからです。



https://www.m3.com/news/general/446178?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD160801&dcf_doctor=true&mc.l=169966378&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
医療費負担増、すぐそこ 国が議論本格化 進む高齢化、サービス縮小も
2016年8月1日 (月) 毎日新聞社

医療費:負担増、すぐそこ 国が議論本格化 進む高齢化、サービス縮小も

 厚生労働省は医療と介護の負担増の議論を本格化させている。社会保障審議会医療保険部会は今月14日、高齢者の医療費負担増の議論をスタート。20日には介護保険部会が掃除などの生活援助のサービス縮小に向けた具体的な議論を始めた。【細川貴代、鈴木直】

 ◇70歳以上の高額療養費

 医療の負担増では、病院の窓口で支払う自己負担に上限額を設ける「高額療養費制度」のうち70歳以上の高齢者の負担増が焦点だ。

 高額療養費制度は、家計の医療費負担が過重にならないよう患者が1カ月に病院の窓口で支払う自己負担に限度額を設ける仕組みだ。限度額は年齢や所得に応じて設定されており、70歳未満よりも70歳以上の方が負担が軽い。

 例えば、1カ月の医療費が100万円の場合、70歳未満は3万5400円~約25万4000円だが、70歳以上なら入院で最高8万7430円で、外来は4万4400円で済む。これをどの程度引き上げるのか、年内に結論を出す。

 高齢者医療では、75歳以上の後期高齢者の窓口負担の見直しも検討している。医療費の自己負担割合は年齢で異なり、75歳以上は1割(年収約370万円以上の現役並み所得者は3割)。これは2018年度までに結論を出す予定だ。

 このほか、高齢者に限らず入院時の患者の光熱水費の自己負担引き上げや、かかりつけ医以外の医療機関を受診した場合に新たに負担を導入することなども検討し、今年末までに結論を出すことにしている。

 ◇介護軽度者の生活援助

 介護保険部会は2月から18年度の介護報酬改定に向けた制度改正の検討を進めてきた。参院選終了後の20日から、負担増の議論に入った。同日は厚労省が、要介護度の低い軽度者に対する掃除や調理など生活援助と福祉用具レンタル・住宅改修の費用について論点を示した。

 生活支援や福祉用具レンタルなどについては、重症化を防いで自立した生活の維持に必要だとの考え方がある。しかし、政府は昨年12月に、保険料負担の上昇を抑えるために「軽度者へのサービスの縮小」の方針を決定した。

 介護サービスを受ける時、利用料の原則1割を利用者が負担する。厚労省は、要介護1、2の人については利用者負担を増やすことなどを想定している。

 同部会は今後、サービス利用料の自己負担割合を2割とする人の拡大や、自己負担が高額になった時に一部が払い戻される「高額介護サービス費」制度の上限引き上げなどについても議論。厚労省は年内に結論を出し、来年の通常国会での関連法案提出を目指している。

 ◇増え続ける財政負担

 高齢化によって医療・介護ともに財政負担は増えている。13年度の国の医療費総額は40兆610億円で、このうち後期高齢者医療費の割合は32・7%を占める。また、医療技術の進歩で高度な医薬品が増えたことなどから高額療養費制度の利用も伸びており、13年度の支給件数は5406万件、支給額は2兆2200億円となっている。

 一方、高齢化によって介護費用も大きくなっている。介護費用額は制度発足の00年度は3・6兆円だったが、16年度は10兆円を超える。これに伴い高齢者の保険料(全国平均)は2911円から5514円まで上昇している。25年度は介護費用は倍の20兆円、保険料は8000円を超えると推計されている。

 ◇食費など来月から増額 介護保険施設 低所得の入所者

 特別養護老人ホーム(特養)など介護保険施設に入所する低所得者の一部で、8月から食費や居住費の負担が増加する。遺族年金と障害年金が収入として算定対象に加えられる。年金収入を含む合計所得が年80万円を超えると、最大で月3万円以上負担が増えそうだ。推計で約15万人に影響があるとみられる。

 市町村民税世帯非課税の低所得の入所者の食費や居住費は収入などに応じて3段階の軽減措置がある。遺族年金、障害年金は非課税のため、軽減の判定では「収入額0」となっていた。

 障害、遺族年金収入が加わり80万円を超えた場合、老人保健施設などの従来型個室の場合、食費・居住費の月の負担額が2万7000円から6万円と最大で3万3000円増える。

 介護保険法の改正に伴い、昨年8月からは入所者の預貯金などや配偶者の所得などが資産として勘案されるようになり、推計約12万人の負担が増えている。中には補助が受けられなくなり毎月の食費・居住費の負担が倍増した世帯もあった。【有田浩子】



https://www.m3.com/news/general/446268
(にっぽんの負担)公平を求めて 住民が担う介護、悩む現場
2016年8月1日 (月) 朝日新聞

 元看護師の榎尾(えのお)光子さん(64)は手応えを感じた。最高齢のツタエさん(89)は片足立ちが5秒伸びて9秒できたし、レイコさん(76)は、2分間の足踏み運動で8回多くできた。

 鳥取県日南町湯河地区。蝉(せみ)しぐれの山の向こうは広島県だ。この日、集会所に9人が集まった。毎週火曜日の午前中に体操したり、おしゃべりしたりする。体力測定は3カ月ぶり。榎尾さんはボランティアの地区代表だ。要介護度が低い「要支援」のお年寄り2人も参加する。

 介護保険制度の見直しで、町の「住民主体の地域支援事業」が昨年4月に立ちあがった。その事業の受け皿だ。町から運営補助も受ける。

 町の病院を昨年退職した榎尾さんの肩書は「婦人部長」「支え合い部長」「認知症地域支援推進員」……。そして町の介護サービス運営を引き受ける立場にもなった。「これからは地域にお返ししないとね」。榎尾さんは言うが、「地域の仕事」は増える一方だ。

 要支援向けサービスの一部が段階的に、全国一律の介護保険サービスから市町村独自の「地域支援事業」に移行している。介護予防の取り組みも含めて来年度から全市町村が取り組む。サービスの担い手には、一般住民も加わる。「地域の支え合い」で介護費用を抑制するためだ。

 日南町では、33の自治会のうち22で事業の受け皿となる住民の会ができた。主力は70代だ。町の担当者には不安もある。「今は順調だが負担は大きくなる。いつまで継続できるか」

 ■ボランティア、「時給」は300円

 大阪府茨木市にある高齢者の交流施設「街かどデイハウス 山手台ななつ星」。高齢の利用者24人がパッチワークなどに興じるかたわら、ボランティア6人が調理や片付けに忙しい。

 この施設の運営を担うのは地区の「福祉委員会」。民生委員や自治会から選ばれた60代後半の住民が中心だ。今は介護予防に活用されているこのデイハウスは今後、市の要支援向け施設となる。市は「住民が支え合う理想的な形となるだろう」と歓迎する。

 ただ、ボランティアの対価は1時間300円。利用料(1回300円)収入や、市から年間約300万円の補助金があるが、「利用者のために使うことが第一」と、対価を抑えた。だが、地区の福祉委員長の吉田宏一さん(74)は「要支援も入れば、もっと払うべきかもしれない」。

 ■「自立運営」へ、6年かけ準備

 一方、東京都練馬区では、ボランティア色は薄くなっている。要支援者の家事を支援する住民は時給千円以上の労働対価を得る。そのために必要な区の研修では、50人の募集枠に子育て世代ら230人が応募した。担当課長は「きちんとした対価を支払えば、若い人も呼び込める」という。

 一歩先を行く町がある。長崎県佐々(さざ)町だ。地域支援事業の一部を、来年4月にも「住民の自立運営方式」に移したい考えだ。ボランティアが担い手となる「はつらつ塾」は、町の福祉センターで週3回開かれ、30~50人の高齢者が体操などを行う。要支援者だけでなく、要介護度がより重い「要介護」者も一部加わっている。今は看護師が見守るが、来年度には看護師ぬきで、ほぼ住民任せの運営とする方向だ。

 もっとも、ここまでくるのに6年かかった。国が進める事業を先取りする形で介護ボランティアを独自に養成。21%を超えた要介護認定率は、全国平均を下回り13・7%になった。

 運営責任者の一人、江田佳子保健師(44)は「住民が自分たちで取り組む試みとして町全体に広げたい」という。ただ、ボランティアの一部には不安もあるため慎重に進める考えだ。

 高齢者を地域で支え合う試行錯誤が各地で始まっている。元厚生労働省老健局長で医療介護福祉政策研究フォーラム理事長の中村秀一さんはこう言う。「これからの社会保障は『高福祉・高参加』が必要だ」

 ■地域や個人にしわ寄せ

 介護の将来にとって、既存の地域ボランティアの活用はカギとなる。

 東京都世田谷区で空き家を利用した「シェア奥沢」に毎週水曜日、お年寄りが集まる。音楽会などを開いてきたが、5月から「要支援」の5人も加わった。近所の常連さんと一緒に体操や折り紙を楽しむ。

 要支援者を住民が支える区の事業だ。運営する多摩美術大教授の堀内正弘さん(62)は「もともと近所の人が集う場だから、介護もスムーズに始められた」。「週1開催」などの条件を満たして事業の受け皿になれば区から補助金が出る。

 ただ、区内で高齢者らの交流の場を提供する団体は701あるが、このうち事業の受け皿になったのは二つだけ。多くは様子見だ。あるボランティア団体の運営者は「担い手は数人の高齢者だけ。これ以上の負担はかけられない」。

 区の担当者は「地域資源がたくさんあるからといって、区の都合に合わせてもらえない」。善意や趣味からはじまった市民活動に、行政の一端を担ってもらうには時間がかかるとみる。

 国は3月、全額を自己負担で賄う「保険外サービス」のガイドブックをつくった。家事援助や介護旅行、宅配弁当など39の民間サービスが紹介され、市町村にサービスの把握や情報発信を呼びかけた。「自助」も促されている。

 清掃用品のレンタルなどを手がけるダスキンは、介護保険制度が始まった2000年に訪問介護事業を開始。都内の利用料金は最低2時間7千円で、利用者の全額自己負担だ。介護保険サービスに比べて割高だが、「自費サービスの利用は当たり前になりつつある」(ダスキン担当者)。

 世田谷区の秋田清次さん(71)は脳梗塞(こうそく)の後遺症で右の手足にまひがあり、要介護1だ。介護保険を使ったリハビリを利用しながら週に1回、自費でリハビリ施設にも通う。費用は月6万円ほど。「お金はかかっても、少しでもよくなりたい」と話す。

 あるケアマネジャーは介護の将来をこう語る。「これから頼れるのは自分のお金。それしかない」。介護は「互助」「自助」が強調され、地域や個人の負担が増えていく。

 (田中聡子、菅沼栄一郎)

 ■<解説>「善意」が頼り、理念逸脱

 「利用者本位」とのかけ声で始まった介護保険制度に、「地域の支え合い」という微妙な言葉が盛り込まれた。みんなに手が回らないから地域で面倒をみなさい、というのが国の本音だ。制度開始時の約束とは大きく異なる。

 介護の担い手と期待される余裕のある高齢者はそう多くはいない。定年後も働く人は増え、身内の介護に忙しい人もいる。各地で自治会加入者が減り、民生委員の欠員は6千人を超える。地域によっては、世話役を一人で何役も背負う「負担の集中」が起きている。

 住民の自主的な取り組みは貴重だが、支えているのは「善意」や「やりがい」だ。行政の下請けになり、「志を利用されている気がする」と話す介護ボランティアもいた。善意を制度化するようなことは可能なのか。国や自治体には厳密な見極めが必要だ。

 国は要支援よりも介護度が重い「要介護」向けサービス縮小の議論も始めた。確かに、財源や介護人材は足りなくなる。介護は社会全体の問題だ。それでもこのままだと、国は地域や個人に過大な負担を押しつけかねない。「支え合い」に過度に期待するのは制度とは呼べないのではないか。(田中聡子)

 ◇ご意見はメール(keizai@asahi.com)にお寄せください。



https://www.m3.com/news/general/446422
【聴診記】高齢者の医療費を考える
2016年8月1日 (月) 西日本新聞

 公的医療保険制度で全国の医療機関に支払われる医療費の総額は年々増加、2013年度は40兆610億円になったことを前回紹介した。これを人口1人当たりに換算すると年間で31万4700円使っていることになる。

 さらに65歳で区切ると、65歳未満は1人当たり年間17万7700円、65歳以上は1人当たり同72万4500円。高齢者は、若い人の4倍以上を使っている。

    ◇      ◇

 同制度の保険者(運営主体)の一つで、75歳以上が加入する福岡県後期高齢者医療広域連合は昨年9月、福岡市内で健康長寿福岡大会を開き、講演「『最後まで 人生の主人公たるために』‐老いと死から逃げずに生きる」を催した。講師は著書「大往生したけりゃ医療とかかわるな」(幻冬舎新書)などで知られる中村仁一氏(76)。医師で老人ホーム「同和園」(京都市)付属診療所所長を務めている。

 その講演録をめくると、中村氏はこんなことを語っている。

 「死に時が来たら、延命なんぞされて、ぶざまな姿をさらさないで、潔く死ぬというこれに尽きると思います。では、死に時っていつか? 自分で飲み食いできなくなった時です」

 「死ぬというのは、枯れること。枯れて死ぬんです。これは、一番楽で、自然で、穏やかなんです。ところが、点滴されたり、ここ(腹)から、流動物を入れられたりするのは、枯れるのを邪魔するんです。本人を苦しめる。家族は満足かもわからない」

 「あれ、枯れ木に肥料ですよ。しかも、医療費もかかる。介護の費用もかかる。こんな事をしていたらですね、今の日本の良い制度は続きません」

    ◇      ◇

 中村氏は高齢者の健診については、次のような見解を述べている。

 「私も75歳だから長寿健診の通知がきました。行ってませんけどね。いまさら、年寄りの“徴兵検査”やってどうするの?」

 「われわれ医者にとっては、あんなおいしい仕組みはないんです。自覚症状のない元気な人間が、健診受けてひっかかった。医者のところに来てくれるんです」

 「何の症状も無かったなら行くなっていうの、健診なんかにね。政府も悪いんですよ、受診率が何パーセントだとか、上から指令が来てね。それでいて、かたっぽじゃ医療費が高いなんていってね。矛盾してますよ」

 さらに、こんな発言もあった。

 「今、ボケた年寄りが、人工透析、血を洗っていますよね。週3回ぐらい。そう、ボケていますからね。何されているか理解できない。大声だして暴れまくりますから透析なんてできませんものね。皆、縛り上げて一服盛っていますよ。そうでもしないとおとなしくしていませんから。もう、完全に枯れ木に“肥料”といっていいですよ。あれ、年間400万円、500万円(医療費が)かかっている訳ですから、1人につき。枯れ木に“肥料”っていうのは、考えないといかんですね」

 「自分で食えなくなったボケた年寄りに、総入れ歯。これもどうかと思いますけれど。まぁ、今、歯医者も食えなくなっていますからね」

    ◇      ◇

 同広域連合は今年も9月18日に福岡市・天神のアクロス福岡で健康長寿福岡大会を開き、講演を催す。

 演題は「薬は5種類まで!~年々、飲む薬が多くなっていませんか?」。講師は東京大学大学院教授(東京大学医学部付属病院老年病科長)の秋下雅弘氏だ。

 秋下氏は当日の講演で、加齢に伴い生活習慣病などの慢性疾患が積み重なり、70歳以上では平均6~7種類服用しているとされることを説明。多剤服用の問題点として副作用の増加や飲み忘れを挙げ、「飲み忘れは薬剤費の無駄になるし、多剤服用自体が薬剤費を押し上げている」などと指摘する見通しだ。

 福岡大会は今回も「高齢者と医療費のこと」を考えさせられる内容になりそうだ。

    ◇   ◇

 福岡大会は当日午後1時から。ロコモ予防講習などもある。だれでも参加でき無料。中村氏の講演録も希望者に無料で提供・送付する。いずれも問い合わせ、申し込みは同広域連合=092(651)3111。


  1. 2016/08/02(火) 05:59:56|
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