Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月23日 

http://mainichi.jp/articles/20160724/ddm/016/040/050000c
死亡診断
規制緩和へ 医師不足の離島やへき地、都市部でも みとりの現場、切実

毎日新聞2016年7月24日 東京朝刊

 高齢化の進展に伴う「多死時代」を前に、政府は在宅医療の環境整備を急ピッチで進めている。しかし、みとりの際に主治医とつながらずに救急車で運ばれ警察の死体検案に回ったり、医師不在の離島では死亡診断書の交付が難しいために在宅での死がなかなか望めなかったりという課題もある。死亡診断書交付に関する規制が緩和されると、みとりの場は変わるのだろうか。

 南北160キロに島々が点在する鹿児島県十島(としま)村。トカラ列島の名で知られる。住民のいる七つの島に診療所があり、看護師が1人ずつ常駐している。最も人口の多い中之島に医師が常駐し、北部4島を巡回。南部3島は島外の医師が巡回する。

看護師対応限界

 今年1月、島で60代の男性ががんで亡くなった。亡くなる前に島外の病院などに移ることが多いが、男性は島での最期を希望した。幸い医師が駆け付けてみとりをしたが、船は週に2〜3便しかなく、間に合わない恐れもあった。

 この時は、村は緊急時に患者を島の診療所に運びテレビ電話で看護師が医師から指示を仰ぐ段取りを決め、容体の急変に備えたが、現時点では死亡の確認まではできない。

 間に合わない場合、医師が改めて島に赴いて確認するか、患者の遺体を島外に運び死亡を確認しなければならない。この間、診断書が交付されないと埋葬など死後の手続きが進まない。

 日本看護協会が死亡診断書の交付条件の緩和を求めたのには、こうした離島やへき地の実情があった。
地域を限定せず

 同協会の要望は政府の規制改革会議で取り上げられた。ただ、同会議の議論は別の方向に向かう。

 「人口の多い地区でみとりの問題が発生するのではないか」「(人口当たりの)医師が一番少ないのは埼玉、千葉、神奈川だ」

 同会議委員からこうした意見が相次いだ。規制緩和を、医師の常駐が難しい離島やへき地に限定したい厚生労働省側をつき上げた。

 厚労省は「主治医、副主治医制など医師間の連携を進める」と主張したが、「連携が最も取れていないのは都市部だ」との声に押され、離島・へき地という「地理的条件」は消えた。

在宅死増、医療と連携課題

 規制改革会議が都市部での規制緩和を強く求めた背景には「在宅死」の増加がある。

 2014年の年間の死亡者数は約127万人。40年には40万人程度増えるとされる。一方で、医療費を抑えたい厚労省の方針で病床数は減少傾向にあり、首都圏ではこの10年で自宅や介護施設など医療機関以外での「在宅死」が増えている。

救急病院を圧迫

 在宅の高齢者増は救急の現場にも影響を及ぼしている。地域の救急医療の拠点である東京都立墨東病院(東京都墨田区)。20年前は交通事故や生活習慣病の重篤化などで20代と50代の搬送患者が多かった。しかし、高齢者の搬送件数が倍増し、今や最も多いのは70代だ。

 寝たきりや末期がん、介護施設から運ばれてくるケースもあり、救急部門は高齢者への対応に忙殺されている。浜辺祐一救急部長は「このまま高齢者の搬送が増えれば、救急医療が破綻しかねない」と警鐘を鳴らす。

「異状死」扱いも

 在宅死の中には警察が扱う「異状死」(検案事例)も含まれる。立川在宅ケアクリニック(東京都立川市)の荘司輝昭院長が12年に、周辺6市の自宅で死亡した943例を調査したところ、半数の452例が異状死だった。その4分の1に当たる104例は老衰やがん、慢性疾患で、患者の自宅を訪れて診察する在宅医がかかわっていれば検案扱いされずに済んだケースだった。

 ただ、荘司院長は、「医師不足」による死亡診断の困難さとは別の事情があると指摘する。「病院から退院した後に適切な在宅医がいないことがある。また、『24時間対応』をうたいながら夜間はコールセンター任せで緊急の場合、救急搬送を勧める在宅医もいる」と実情を説明。その上で、「在宅の安らかなみとりを増やすには、きちんとみとりを行っている医療機関と主治医が連携し、引き継ぎができる体制を整えておけばよい」と話し、死亡診断の規制緩和には否定的だ。

まず事例把握を

 へき地医療に詳しい医師の山田隆司・地域医療振興協会副理事長は「一気に条件を緩和するのではなく、まずは離島などニーズの高いところから順次実施し、どういう問題が生じるか事例を細かくみていくべきではないか」と政府に対し慎重な対応を求めている。【有田浩子】
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http://mainichi.jp/articles/20160724/ddm/041/040/056000c
東京女子医大
過量投薬 遺族「リスク説明ない」 病院側「本人の希望」

毎日新聞2016年7月24日 東京朝刊

 薬の不適正使用が問題となっていた東京女子医大病院(東京都新宿区)で、過量投与による死亡事故が起きていたことが発覚した。亡くなった川崎市の長浜裕美さん(当時43歳)の遺族は「病院側は薬の処方を家族や本人のせいにして、再発防止のスタートラインにすら立っていない。このままではまた同じことが起きるのでは」と不信感を募らせている。【銭場裕司】

 裕美さんの脳腫瘍の再発が判明したのは2014年夏だった。趣味のサンバの大会に8月下旬に出場した後、9月に手術を受けることが8月19日に決まった。

 その翌日、病院側は裕美さんがけいれん発作を起こしたことを踏まえ、抗てんかん薬「ラミクタール」の使用を決定。短期間に薬効を高めるためとして本来の16倍に当たる量を処方した。「量がかなり多い」として薬局から問い合わせを受けても対応を変えず、同じ量の処方が続いた。

 裕美さんは顔などの表皮がはがれる中毒性表皮壊死(えし)症(TEN)を発症。9月9日に亡くなった。遺族によると、死後に主治医から「量が多いことで(TEN発症の)可能性が増すことは確かだが、体質の問題の方が大きい」と説明された。

 だが、夫の明雄さん(41)はネットで見つけた薬の添付文書を読んで言葉を失った。「投与でTENなどの重篤な皮膚障害があらわれることがある」として用法・用量を守るように「警告」していたからだ。

 「添付文書の内容はまさに裕美の身に起きたこと。一番守るべき基本を無視しておいて、どうして体質の問題なのか」。病院側はサンバの大会に参加するという本人の強い希望などを踏まえて処方をしたと説明するが、明雄さんは「薬のリスクの説明は全く受けていない。死ぬような危険性がある処方をやってくれと言うはずがない」と断言する。

 病院側が投薬を中止したのは9月1日。明雄さんの記録によると、8月30日時点で「39度程度」の高熱があったが、病院側の記録は「36度台」だった。事故を調査した日本医療安全調査機構は「病院から提出された診療録から事実確認できない」とした。「病院側の資料だけで判断されれば、どうしようもない。遺族は圧倒的に不利な立場にある」

 裕美さんの最後の言葉は「頑張ります」。「皮膚がはがれ外見がボロボロになり、痛みと絶望の中で死なせたことが本当に悔しい。同じ問題が繰り返されないために、世の中に本当のことを知ってもらいたい」。それが明雄さんの思いだ。

半年前2歳児も

 東京女子医大病院では今回の事故の約半年前の2014年2月、人工呼吸中の小児への投与が原則禁止の鎮静剤「プロポフォール」を大量投与された2歳男児が死亡し、6月に理事長名で病院全体の改善を誓うコメントが出たばかりだった。二つの事故は、添付文書を逸脱した薬剤投与だった点、現場の連携が取れていなかった点で共通する。

 男児死亡事故では、同病院の外部有識者による調査委員会が昨年2月の報告書で、複数の医師や薬剤師が小児への原則禁止を知らなかったのに加え、薬剤師が投与量を疑問に思い医師に照会したのに、医師側にその認識がなく記録も残っていなかったと指摘。「医師の裁量を過大評価し、添付文書を確認する文化も極めて希薄だ」と結論付けた。

 今回の事故でも院外薬局の照会が反映されず副作用につながったため、第三者機関から「医師にはより謙虚な姿勢が求められる」と指摘されている。男児の父親は「医薬品の安全使用に対する認識も、薬剤師と連携していない体制も、息子の時と全く同じだ。息子の事故後も、病院の安全意識は変わっていない」と憤る。

 男児死亡事故を巡っては、警視庁が業務上過失致死容疑で捜査している。【桐野耕一】



http://mainichi.jp/articles/20160723/ddn/012/040/056000c
患者情報
506人分無断で持ち出し 医師置き忘れ 大阪

毎日新聞2016年7月23日 大阪朝刊

 大阪市民病院機構は22日、大阪市立総合医療センター(大阪市都島区)整形外科の研修医だった男性医師(30)が患者506人分の情報が記載された書類を無断で持ち出し、紛失したと発表した。

 病院機構によると、紛失したのはセンターを退院したり別の科に移ったりした患者の書類で、氏名や病名、手術の経過などが記載されていた。

 男性は昨年3月31日付で研修を終えて退職する際、専門医になるための登録申請で患者の症例の提出が必要なため、担当した患者566人分のコピーを持ち出したという。

 7月22日午前1時ごろ、現在勤務する病院から自宅で作業するため506人分のコピーを持ち帰ったところ、タクシー車内に置き忘れた。運転手が気づいて、警察に届け出たことで外部流出はなかったという。【向畑泰司】



http://www.jomo-news.co.jp/ns/3714692355544491/news.html
外科学講座を統合へ 群大病院問題で同大大学院
2016年7月23日(土) AM 11:00 上毛新聞

 群馬大医学部附属病院の同じ男性医師(退職)の手術を受けた患者が相次いで死亡した問題を受け、同大が来年4月に旧第1、第2外科の医師がそれぞれ所属する大学院の二つの外科学講座を統合することが22日、分かった。

 同問題を巡っては併存する二つの外科の閉鎖的な体質が問題視され、病院の診療科は昨年4月に統合されていた。



http://news.biglobe.ne.jp/domestic/0723/mai_160723_7658033098.html
<ポケモンGO>病院ではポスター「ポケモンたちは入院中」
毎日新聞7月23日(土)19時55分

 人気ゲームアプリのポケモンGOを巡り、子供たちが重い疾患で入院する東京都世田谷区の国立成育医療研究センターが、院内で遊ばないよう呼びかけるポスターを作製した。「この病院にいるポケモンたちは入院中です。早く退院するために探さないで」と、ユーモアを交え理解を求めている。

 配信開始後、周辺の若者が敷地内に入り込むケースが相次いでいるための対応。25日から敷地内外に掲示し、協力を呼びかける。ポスターには職員や入院中の子供たちによる手描きのポケモンのイラストを添える。【五味香織】
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http://mainichi.jp/articles/20160723/ddl/k31/100/469000c
鳥取養護学校
常勤看護師配置で意見交換 特別支援学校の医療的ケア 米子で県教委が会合 /鳥取

毎日新聞2016年7月23日 地方版

 県教委はこのほど、特別支援学校での医療的ケアの在り方を話し合う会合を米子市内で開いた。県立鳥取養護学校(鳥取市)で始まった常勤看護師の配置状況について関係者が意見を交わした。

 鳥取養護学校では昨年度、非常勤だった看護師が相次いで辞職。たんの吸引などの医療的ケアが必要な児童生徒が一時登校できなくなる問題が起きた。このため県教委は今年1月から改善策の一つとして、同校に常勤看護師を配置した。

 会合では県教委が、同校での現在の運営状況を紹介。看護師が常勤していることで「保護者の安心感につながった」「ケア会議へ定期的に参加でき、学習計画も効果的に立てられるようになった」などの意見が教員らから寄せられたと報告した。県教委は来年度、他の特別支援学校にも常勤看護師を配置することを目指している。

 一方で、学校に配置する看護師は適正な人数が明確に定められていない。そのため会合では委員らが「教員と同様に定員を設定するため、看護師が常勤することの効果を数値で明確に示せないか」などと指摘。今後、鳥取養護学校の保護者や教職員に、満足度などの調査を実施して数値化することにした。

 このほか、常勤、非常勤を問わずにどう看護師を確保するかや、一人一人の技術を上げるかなどの課題が出された。【小野まなみ】



http://mainichi.jp/articles/20160723/ddl/k45/040/230000c
日向市立東郷病院
休診の内科診療、来月9日一部再開 /宮崎

毎日新聞2016年7月23日 地方版 宮崎県

 日向市は21日、4月から内科診療の休診が続いていた日向市東郷町の市立東郷病院について、門川町の済生会日向病院から非常勤医の派遣を受けて、8月9日から内科診療の一部を再開すると発表した。

 東郷病院の常勤医は3人体制だったが2人が昨年相次いで退職。同年8月から民間病院からの派遣で週1日の午後のみ外来診療を続けた。今年4月に佐藤大亮医師が着任したが、それまで1人常勤だった崎浜正人院長が3月で定年を迎えたため、佐藤医師は本職の外科を基本に総合医療で対応してきた。

 8月9日からは毎週火曜日に月3回、非常勤の内科医2人が交代で1人ずつ派遣され、午前中のみ外来を受け付ける。市は今後も、医師確保に向けた努力を続けるという。【荒木勲】



http://blogos.com/article/184469/
「医療過誤」から身を守る7つの鉄則
戍亥真美=構成
PRESIDENT Online2016年07月23日 10:30

医療ミス、費用の過大請求……事故を防ぐには、病院&ドクター選びが重要。チェックリストで自分と家族を守ろう!

「大学教授だから腕がいい」は、根拠なし


多くの医者は偏差値エリート意識が高いため、「自分たちに間違いはない」と思いがち。医療事故が起こった際には、つじつま合わせをする傾向にあります。明らかに病院(医者)側のミスであっても絶対に認めず、正当性を主張する医者も。その心ない仕打ちが被害者側を何度も傷つけていると、彼らは決して気づくことはありません。私の息子も医療過誤の被害者。データ取得のためか、常識はずれの不要な検査により引き起こされた被害です。その経験もあり、世間と医者の常識のズレを痛感しているのです。

大学病院や大学教授の肩書を持つ医者なら問題ないというわけではありません。日本人は個々の医者の実力よりも「肩書とブランド」に信用を置く傾向がありますが、とくに手術が伴う治療では、大学病院だから、一流医大の教授だからと「安心」してはいけない。「手術を」と告げられたなら、最低3人以上の専門医の意見を仰ぎ、やらなくてもいいという医者が1人でもいたら、手術はやめたほうが賢明。大学教授だから見立てがいい、腕がいいという根拠はありません。むしろ、年に数回しか執刀しない大学教授では、医療死亡事故を起こす確率も高い。たとえ新設医大出身でも、年数百例もの外科手術を成功させている医者のほうが安心して任せられる「名医」であるのは間違いない。ただし、名医にも「旬」があります。経験豊富でも年齢とともに腕が鈍ったり、判断力が低下したりすれば、第一線に立てなくなるのは当たり前です。

危ない病院や医者に遭遇しないための第一歩は、肩書や大学名などのブランド信仰を捨て、「医者に失礼だから」と、言いなりの患者であることをやめること。常に目を光らせ、医者を育てるような「賢い患者」になることにあります。

▼医療過誤から身を守る7つの鉄則

何かあってからでは遅すぎる! 手術や治療に入る前に、自己防衛の準備をしておこう

[1]手術を勧められたら必ず“セカンドオピニオン”――大きな「手術」の際には、必ず他院でも検査を受けるのが鉄則。聞き慣れない病名の手術ならなおさらだ。医者が替われば見立ても変わる可能性がある。セカンド、サードとできるだけ多くの専門家の意見を聞き、さまざまな角度から検討して、最善の病院や医者を選択しよう。

[2]病院のWEBサイトを要チェック!――担当医の名前、プロフィール、これまで扱った症例数など細かくチェック! 手術設備のある病院は必ずWEBを開設している。病院の伝統や高慢な理念、設備自慢ばかりで、肝心の医者の技量、患者がほしい情報が乏しいのでは、ホスピタリティに問題ありで要注意だ。

[3]“思考停止”のはじまりは、「この医者(病院)なら大丈夫」と決めた瞬間から――日本には、約30万人もの医者と、約9000軒の病院が。なのに「この医者(病院)なら、絶対大丈夫!」と決める理由は何か? ある時点で名医でも、ずっとそうとは限らない。病院側の説明を盲信せず、常によりよい医療を求めるよう不断の努力をすることが、医療ミス回避のカギ。

[4]治療に不信や疑念を感じたら速やかに検査データを請求――患者には自分の治療法を知る権利がある。不信に思ったら検査データをもらおう。検査データは患者に帰属する重要な個人情報で、病院側には開示義務がある。また、セカンドオピニオンの際にも検査データは必要。患者の請求にいい顔をしない医者や病院なら、即サヨナラだ!

[5]認定医や専門医などの“肩書”に惑わされない――「“学会認定医”“学会専門医”だから安心」は間違い。日本では、専門は自己申告制で認定されるため、肩書は有名無実で意味がない。心臓血管外科の専門医は日本に約1800人いるが、手術数をこなしているのは、わずか100人程度。専門医は「玉石混淆」だと知っておこう。

[6]医者には「神の手」もいれば「紙の手」もいると、肝に銘じる――「神の手」を持つ名医は年数百例の手術をこなし成功率も高い。一方、論文ばかり書く「紙の手」の大学教授医師も。こういう名前だけの外科医=「紙の手」の医者が、たまに体面を保つために手術をして失敗するケース多数。大学教授だから「上手、見立てがいい」は、根拠なし!

[7]治療方針など、医者の説明は必ずメモするクセづけを――ミスが起こると嘘をつく医者も少なくない。が、とっさの嘘には矛盾が生じやすい。ミスの隠蔽を阻止するには、手術に限らず日頃から医者の説明をメモするクセをつけることが重要。メモする患者を前に医者は緊張し、その場しのぎのごまかしや言い訳ができなくなる効果が!

医師、ジャーナリスト 富家 孝
16代続く医者の家系に生まれる。1972年、東京慈恵会医科大学卒業。開業医、病院経営、助教授等を経て、医療コンサルタントに。現在、医師紹介会社「イー・ドクター」代表取締役の傍ら、新日本プロレス・コミッションドクターなども務める。『生命がけの医者選び』(講談社)、『医者しか知らない危険な話』(文芸春秋社)など60冊以上の著書がある。



http://news.biglobe.ne.jp/economy/0723/pre_160723_9733342151.html
危険度チェック! 悪徳病院&ダメ医者の見分け方
プレジデント社7月23日(土)10時15分

医療ミス、費用の過大請求……事故を防ぐには、病院&ドクター選びが重要。チェックリストで自分と家族を守ろう!

■医療もビジネス、医者は商売人である

ご存じのとおり、いまは公立病院でさえ倒産する時代。大規模病院がこうなのだから、今後、中小規模病院の倒産や廃院が増え続けるのは確実です。倒産や廃院の原因の多くが、患者数の減少と不況による経営悪化。これこそが、医者と医療をダメにする最大原因なのです。

経営悪化は医療の質を低下させ、さらには医者のモラルも低下させる。モラルの低下した医者(経営者)は、患者を人間と見ずに被験者として扱うことも。保険料の不正請求は日常茶飯事化し、医療従事者を削減して、患者よりも経営=お金を最重要視するようになります。医療従事者の不足は、医療過誤を引き起こしやすくする。そういった危険な病院(医者)に遭遇しないためには、「健康である」ことが第一ですが、誰もが医者にかかる可能性があるため、患者側の自衛策として、「医療もビジネス」=商売である、と頭に叩き込むことが大切なのです。

一般企業がそうであるように、病院経営も儲けがなければ先はない。儲けるためには患者を増やし、通い続けてもらうことが必要。だから医者は、薬を大量に処方し、不要な検査を繰り返し、いつまで経っても「もう来なくていいですよ」と、宣言しない。なぜなら、医者は患者が健康になると儲からない仕事だから。もちろん、すべての病院や医者が悪徳なわけではありません。給料は二の次、患者のために身を粉にして働いている医者も多くいることを忘れないでください。

いま、人々が「名医」と呼ぶのは「手術がうまい」医者であることが大半。また、最新機器を駆使して治療に当たってくれる病院を「いい病院」と呼ぶことも。これは、医療がかつてより高度化、専門家したからです。内科系の医者であれば、最新画像診断の分析力、判断力が求められ、外科医であれば、難しい手術を成功させる力量が求められる。いざというとき、メディアで紹介されるような「神の手」を持つ名医にお願いしたいと思うのは誰しも同じ。しかし、すべての患者の希望が叶うわけではありません。だからこそ、少なくとも金儲け主義、腕の悪い「悪徳病院やダメ医者」を見分ける力だけでもつけなくてはいけないのです。

とくに民間の個人病院では、金儲け主義に陥るとそれなりの傾向が表れてきます。「いつもすいている病院」は、もはや論外。ただし、すいているのを隠そうと患者のサクラを雇い、いかにも繁盛しているように見せる病院もあるから要注意です。豪華な待合室や、最新機器の多さに惑わされてもダメ。設備投資は経営を圧迫します。経営者であれば、少しでも早く「元を回収」しようと考えるのは当然。ちょっとしたことでも最新ハイテク機器で検査しようとする病院なら、「カモ」にされていると思っていいでしょう。利益を挙げられる病院(医者)というのは、人件費をうまく切り詰めているか、節税対策がしっかりしている病院(医者)だけ。「利益と患者サービスは相反する」と知れば、病院にかかったとき自ずと冷静になれるはずです。

私はかねてから「医者の常識は世間の非常識」と公言しています。医者の多くが、自分は社会的ヒエラルキーの上位にいると思い込んでいること、さらに勉強ばかりしてきたことで、他人とのコミュニケーション能力が極めて低い傾向にあるから。しかし、医者とは本来はサービス業であり、患者と医者の関係は消費者とサービス提供者にすぎない。なのに、多くの医者は消費者である患者を見下している。病気というものは少なからず人間の心理も影響します。“病状をきちんと説明したうえで患者を励ますことができる”コミュニケーション能力の高さも、「名医」の条件。しかし、現在はこれができない医者が多いから問題なのです。

▼病院チェック15のポイント

ご近所のあの病院は大丈夫!? 患者は二の次! 儲け至上主義の危ない病院には、こんな傾向がある!

※ここでの「病院」とは、大学病院や公立病院ではない、個人経営の中規模病院を指します。

[1]いつもすいている——待ち時間0分&患者1人あたりの診療時間も十分確保してくれる個人病院が、「長時間待ちの大病院よりいい」は、ありえない。評判が悪く患者が来院しない可能性もある。外来患者が常に少なければ、病院の経営状態が“危険”であるのは間違いない。

[2]スタッフが少ない——医療に関わるスタッフの数をまず確かめよう。治療の成否は「スタッフの充実」如何にかかっている。とくに手術や入院の際、看護師などのスタッフが少なければ少ないほど、医療ミスの確率が上がると頭に入れておきたい。

[3]看護師が忙しそう——「利益第一主義」の病院は、待合室に患者が大勢いるのに、1人の看護師がコマネズミのように忙しく走り回っているのが特徴。「患者サービスより利益追求」のため人件費を削っている可能性がある。医療ミスの不安も高まる!

[4]若い看護師ばかり——ベテラン看護師が1人もいない病院は、要注意。医療や現場を熟知したベテラン看護師がいると、ミスも起きにくくなるという傾向が。看護師が美人で若いとうれしい男性患者もいるが、それだけでは安心して医療を任せられない。

[5]受付が無愛想——接客が下手、または欠如した病院は信頼できない。スタッフ教育が行き届いていない証拠だ。サービス業同様、スタッフが患者の不安を和らげ安心感を与えるのは基本のき。医者の技量だけでは病院は成り立たない。受付があまりに無愛想な個人病院なら、論外のダメ病院だ。

[6]どんな急患も大歓迎——儲け主義の病院は、儲かることなら何でもやる。たとえ専門医がいなくても急患を受け入れれば、どんな処置でも点数は上がる。当直医が整形外科であっても心筋梗塞の患者でさえ受け入れる。これでは助かるものも助からない!

[7]スタッフのユニホームがバラバラ——赤字病院がまず着手するのが経費削減。文具類はすべて薬品メーカーなどからのもらい物に。末期にはスタッフの白衣がない、もしくは各自の自前で統一されなくなる。こうなると使い捨て器具も減菌消毒で使い回しの可能性大!

[8]規模に比べ、診療科目が多い——患者数アップのため、できもしない診療科目を増やす病院が多数。専門外の医者に平気で対応させるケースも見られる。日本では、医者の専門科目は自己申告登録制。さらにどんな看板を掲げても問題にならない。規模の割に診療科目がやたらと多い病院には注意が必要だ。

[9]きれいで豪華な待合室が自慢——病院の本題である「医療の質」と待合室の豪華さは比例しない。本業とは別の部分で目立つ病院には、ほぼ「何かある」。金持ちの医者ならば、医療以外の収入があるだけのことで、技術・能力とは無関係。高利貸しなど、危険な資金調達先が疑われるケースもある。

[10]最新設備(機器)がありすぎる——「最新設備があるからいい病院」は、超危険思考! ちょっとした頭痛でもCT検査をするような病院は、設備投資の「元をとる」のが最優先。「念のために」と検査を勧められたら要注意。最新設備があるからいいのではなく、それを医者が十分に使いこなせるかが問題だ。

[11]土日、夜間も診療OK——土日や夜間も熱心に診療するから「いい病院、医者」とは限らない。熱心さの裏には必ず「動機」がある。とくに地方では政治家への立候補を視野に、人望・評判を高める狙いから患者サービスをすることも。動機もなく寝る間を惜しんで患者に尽くす人は、そういないと考えよう。

[12]WEBサイトがない(または、必要な情報が無記載)——病院の過当競争が激化する昨今、この情報化時代においてある程度の規模の病院でWEBサイトを開設していないのは論外。また、住所等の連絡先、診療時間などの「お仕着せ情報」しか掲載していない病院も信用できない。

[13]終末治療に力を入れてくれる——30兆円といわれる医療費の約30%が後期高齢者に使われている現在、病院経営は「老人医療費」で成り立っているも同然。死期直前の老人にあらゆる検査を繰り返し、投薬し続けるのは、売り上げ拡大行為だと知るべき。

[14]「領収書」を発行しない——現在はほぼないはずだが、診療報酬明細書付き領収書を発行しない病院は要注意。保険治療範囲では経営できないため不正請求を行っている可能性大。健康保険組合からの「医療費通知書」は必ず確認し、治療金額に不審な点があれば開示請求を。

[15]病院の壁にスローガンを掲示——病院の壁に大仰なスローガンが貼ってある病院は要注意。過去にその逆の行為をした可能性が高い。たとえば「逃げない、隠さない」なら「逃げた、隠した」証し、「謝礼お断り」なら「謝礼」は習慣化している可能性が高い。

▼医者チェック8つのポイント

同じ病院内でも個々のドクターには当たり外れがあるものだ。学歴、実績、年齢……本質を見抜くのに一番重要なのはどれ!?

[1]コミュニケーション能力が低い——腕のよさとコミュニケーション能力は比例することが多い。たとえば、診察の際に患者の顔を見ずPCばかり見ている、質問を嫌がる。また、手術決定の際の面談時に名刺を渡さない、自己紹介しない医者は、総じて信頼できない。腕に自信がない医者ほど、患者とのコミュニケーション能力が低い傾向にある。

[2]手術実績を教えない(外科医の場合)——外科医は経験豊かで手先が器用な医者が名医。つまり、肩書よりも実績がものをいう。「教授なら大丈夫」は、大間違い。手術が決まったら変に遠慮せず、これまでの手術実績、術後の経過、ミスはなかったかを聞くといい。質問に憤慨したり、答えないような医者なら手術は見合わせ、ほかの病院を訪ねるべき。

[3]薬を大量に処方し、通院させ続ける——大した病気でもないのに、いろんな薬を大量に処方したり、ほとんど完治しているのにいつまでも通院させ続ける医者は要注意。医者は経営者でもある。売り上げを上げなければ病院経営が立ちゆかなくなる。つまり、薬を大量に与え、通ってもらうことで儲けが生み出される。「もういいですよ」は、できるだけ先延ばしにしたいのがダメ医者の心情だ。

[4]検査データの提供を渋る——技術レベルの高低に関係なく、どんな医者でも「自分の信じる治療方法」がある。が、患者がセカンドオピニオンのために検査データの提出を求めても快く応じない医者なら、患者を逃がしたくないと、「儲け」の観点で考えているか、治療法に自信がないかのいずれか。いまの時代、カルテを開示しない医者には非難が集まり、患者は寄りつかなくなっている。

[5]電話をかけてくる——わざわざ電話をくれて「最近、具合はどう?」と聞いてくれる医者には注意が必要。民間病院の非常勤医師ならば、入院手当が目的の場合もある。空きベッド数を確認し、老人に電話をして具合を聞き出し「お待ちしています」と来院を促す。あれこれ理由をつけて入院となると、手当がもらえるためだ。医者の「親切」の裏には理由があることも多い。

[6]趣味は“ゴルフ”と“高級外車”——医者が興味を持つのは「政治・投資・趣味」の3つ。政治に興味がない医者もいるが、投資好きは多い。医療で儲けた金をさらに増やそうと躍起になる。最後に趣味に目が向くが、この趣味が「ゴルフ」と「高級外車」なら要注意。ゴルフの腕磨きに熱心になれるほど本業が暇な証拠であり、こういった金満な医者は“反社会勢力”にも目をつけられやすい。

[7]出勤時間が遅い——診療時間は9時からと書かれているのに、のこのこと9時半すぎに出勤してくる医者は、信用できない。たとえ近所でどんなに腕がよいと評判であっても、「時間を守る」など社会人としての常識が欠如している医者では、どんな診療をされるかわかったものではない。もちろん、こんな医者を十分に訓練もせず、野放しにしている病院にも行ってはいけない!

[8]病状・治療法を説明しない——病状・治療法をきちんと説明しない医者は、いくら腕がよくても敬遠すべき。医者は病状や治療法を患者に説明する義務がある。とくに大病の場合、治療の内容やリスクなどの説明は必須。無口な医者には、患者側からあれこれと質問を。質問を嫌がらず、わかりやすく丁寧に答えてくれ、さらに理解できたかを確認する医者は信頼に値する。

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医師、ジャーナリスト 富家 孝
16代続く医者の家系に生まれる。1972年、東京慈恵会医科大学卒業。開業医、病院経営、助教授等を経て、医療コンサルタントに。現在、医師紹介会社「イー・ドクター」代表取締役の傍ら、新日本プロレス・コミッションドクターなども務める。『生命がけの医者選び』(講談社)、『医者しか知らない危険な話』(文芸春秋社)など60冊以上の著書がある。
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(戍亥真美=構成)



https://www.m3.com/research/polls/result/127?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD160723&dcf_doctor=true&mc.l=168796693
意識調査一覧
結果給付型奨学金、拡大すべき?

カテゴリ: キャリア・働き方 回答期間: 2016年7月13日 (水)~20日 (水) 回答済み人数: 2882人

 給付型奨学金の拡大についての検討が進みそうです(『未来に投資、給付型奨学金検討へ…安倍首相コメント』を参照)。総論では賛成意見がほとんどですが、財源をどうするか、対象はどこまでかなど、議論のポイントは多々あります。

 医学部の学費は6年間で、国立大学で約350万円、私立では2000万-4000万円と高額です。合格者の多くが私立中高一貫生になるなど、経済的に裕福な家庭出身が増えているという指摘もあります。

 給付型奨学金についてご意見をお伺いします。

医学部合格、86%が家庭の経済・教育環境が「影響」

 医学部の授業料負担軽減策としての給付型奨学金の拡大について、優先的に取り組む課題だと「思う」が53%、「思わない」が25%、「どちらとも言えない」が23%でした。

 給付型奨学金を拡大した場合の対象では、最多は「成績優秀者、経済的困窮者の両方」40%となり、「成績優秀者のみ」23%、「経済的困窮者のみ」19%、「成績優秀者、経済的困窮者に限定せず広く対象とする」14%と続きました。

 医学部合格のために、家庭の経済状況、教育環境の影響をそれぞれ尋ねたところ、「大いに影響する」「ある程度、影響する」の合計は、ともに86%となりました。

 奨学金の在り方をめぐっては、たくさんのご意見をいただきました。医療維新でご紹介します。

給付型奨学金の是非「医師なら必要ない」「経済力が学力左右」

 回答総数は2882人、内訳は開業医576人、勤務医2011人、歯科医師5人、看護師21人、薬剤師216人、その他の医療従事者 53人でした。

Q1 給付型奨学金の拡大は、優先的に取り組む課題だと思いますか?
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開業医 : 576人 / 勤務医 : 2011人 / 歯科医師 : 5人 / 看護師 : 21人 / 薬剤師 : 216人 / その他の医療従事者 : 53人
※2016年7月20日 (水)時点の結果

Q2 給付型奨学金を拡大した場合の対象は?
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開業医 : 576人 / 勤務医 : 2011人 / 歯科医師 : 5人 / 看護師 : 21人 / 薬剤師 : 216人 / その他の医療従事者 : 53人
※2016年7月20日 (水)時点の結果

Q3 医学部に合格するのに、育った家庭の経済状況は?
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開業医 : 576人 / 勤務医 : 2011人 / 歯科医師 : 5人 / 看護師 : 21人 / 薬剤師 : 216人 / その他の医療従事者 : 53人
※2016年7月20日 (水)時点の結果

Q4 医学部に合格するのに、育った家庭の教育環境(熱意や文化資本)は?
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開業医 : 576人 / 勤務医 : 2011人 / 歯科医師 : 5人 / 看護師 : 21人 / 薬剤師 : 216人 / その他の医療従事者 : 53人
※2016年7月20日 (水)時点の結果

Q 5給付型奨学金の在り方や教育と経済力の関係などについてご意見があればお寄せください【任意】
   下 記



https://www.m3.com/news/iryoishin/443430
シリーズ: m3.com意識調査
給付型奨学金の是非「医師なら必要ない」「経済力が学力左右」
教育と経済力の関係についての意見

レポート 2016年7月23日 (土)配信高橋直純(m3.com編集部)

Q 給付型奨学金の在り方や教育と経済力の関係などについてご意見があればお寄せください。

意識調査「給付型奨学金、拡大すべき?」の結果はこちら⇒医学部合格、86%が家庭の経済・教育環境が「影響」

【自身の体験から】

・私の大学生時代の授業料は年間1万2000円であった。家庭教師のアルバイトが週1万円くらいはあったこと、および奨学金が月6000-8000円くらいであったことより、実際的には奨学金の有無が学業、学生生活に大きく影響することはなかった。大学の寮に入っていた友人の話では寮費は光熱費込みで月3000円程度ということで、これらの費用負担で、生活、学業が可能であるならば、必ずしも給付型の奨学金は必須ではないのではないかと思う(私自身は、かなり貧困な家庭であったが、奨学金はいただくことなく、卒業できた)。【開業医】

・自分は家が貧乏だったが、国立医大に合格したので授業料免除を受け、ほとんど金を使わずに医師免許を取った。最近の世の中の連中が給付型奨学金と声高に叫んでいるが、全て甘えである。勉強もできず遊ぶために大学に進学するような輩に金を出す必要は一切ない。医学部も同様である。国立に行く学力もなく私立に行く金もないような奴は、さっさと諦めるべし。【勤務医】

・自身が問題なかったので分かりません。同級生で留年すると奨学金が停止されるので、スト破りをしようとした同級生がいます。今考えれば、彼も立場も分かるような気がしています。【勤務医】

・自分自身、父親を亡くしてから私立医大へ無理して入学したため、多額の奨学金を借りている(3000万円超 )。20代にして 家が買えるような借金を持っていることに非常に不安を感じ、返済にも苦労している。【勤務医】

・我が家は客観的にも相当困窮家庭で、兄弟は小学から新聞配達、私(女性)は、中学校2年から親戚のお店で仲居さん状態。でも兄と共に国公立医学部に合格し、現在も広く患者さんから、きさくな女医さんと慕われている感じです。困窮家庭でも医学部に行けるのが今の日本のよいところで、医師になるとかえって患者扱いが上手な気がします。家庭教師を週8回行い奨学金なしで頑張ったけれど、給付型どころか変換型奨学金の存在を知っていたら、もう少し大学生活楽しめたかな?(知る間 も惜しんでバイトと勉学です)【開業医】

・私の家庭は貧乏でしたので、大学は育英会の奨学金と授業料免除でなんとか卒業できました。当然ある程度の成績を保たないと授業料免除は打ち切られるとのことでしたので、それなりには努力しました。大学で4年間遊ぶために入っている人に給付する必要なんてありませんが、努力している人が報われるように、授業料のためにバイトする時間を勉強に回せるよう、子育て世代の負担軽減のためにも、給付型奨学金の検討は必要かと。【開業医】

・私自身、医師になって20年経っているが、いまだに育英会の奨学金を返し続けている。一種で利子がかからないので、後回しになっているというのもあるが、確かに医師以外の仕事でこれを返し続けるのが困難であることは容易に想像できる。経済的に困窮しているものに優先するのは当然だが、国を背負う優秀な人材であれば家庭環境に関係なく奨学金にチャレンジできる機会も必要ではないかと思う。【勤務医】

・私自身、非常に貧乏な家庭に育ちました。大学時代は、生活費、学費等(授業料以外の本代)を稼ぐため、まず働かなければならず、非常に大変でした。当然、奨学金を借りながらの生活で、ほぼ毎日、お金の残高を気にしながら生活をしていました。幸い、国立大学であったため、貧乏な家庭の子供は授業料を免除されていました(月2万円程度)。しかし、学年が上がるにつれ、実習の時間が増えたため、まず、生活のためアルバイトを優先し、結局1年留年をしてしまいました。大学卒業後は、高校時代からの奨学金の返済が500万以上になり、返済にも当初は困りました。せめて、国公立の医学部に入れる学力のある貧乏な医学部生には、学業に専念するため、給付型の奨学金を是非とも給付していただきたいと、私の経験からお願いしたいです。【開業医】

・国立大学の医学部なら、貧しく生活すれば卒業できた。遊んだり、ゆとりはないが、何とかなるもんです。親の収入が少なければ、授業料の免除もある。最も安いアパートに住み、大学の図書館で勉強するのは、始めはつらいが、慣れれば、それが日常になる。何とかなるもんだ。私立医大は経済的に無理なので、受験していなかった。親の経済力も、実力の内と思って納得して、受験に挑んだ。【勤務医】

・経験から言って、卒業(大学院)するまでもらうと、返却にはかなり苦労する。【勤務医】

・貧困家庭のためハンディを持つ若者が少なくありません。私自身母子家庭で育ち、学生時代に給付型奨学金を受けたことで大変助かりました。そうしたこともあり、医学生を援助する際には、経済的な背景を優先的に考慮してほしいと思っています。【勤務医】

・病気の両親の治療費、生活費、入学費用、入学後のさまざまな費用は、全て自分で働いて都合をつけ、6年間で卒業した。生きる努力をしない生徒に、簡単に奨学金を与えるのは、不公平で、倫理的に良くないこと。【勤務医】

・私は家が経済的に貧しく、多額の奨学金を借り、かなりつらい思いをして医学部を卒業した。家が貧しいことは現状では医者になる上での大きなハンディになっていると思うし、実際、相当の能力や熱意がないと難しいことだと思う。親の経済状況による不公平をなくすためには、卒業と同時に借金を抱えさせられる現在の奨学金制度では不十分で、給付型奨学金は不可欠だと思う。また、給付型奨学金を新設・拡充する際には、従来の奨学金を受けて卒業し、現に借金を抱えている医師に、世代間の不公平を感じさせない施策も必要。【勤務医】

【貸与であるべき】
・給付型でなくてよいと思います。奨学金を借りて勉強するには、将来的に返せるようになるという覚悟を持って借りるべきと思います。私自身も借りましたが、きちんと返しました。返す方が、勉強にも身が入ります。無料はなんでもよくありません。【勤務医】

・奨学金は無利子で返還することが当然です。財源がありません。自分も借りましたが社会人になって返還しました。【薬剤師】

・無償給付で教育費を賄っても、本当の実力は備わらない。【勤務医】

・奨学金を借りて返せないようなコストパフォーマンスの悪い大学には初めから進学する必要が無い。高卒で十分。【勤務医】

・本来、奨学金は貸与型が筋であり、借りたお金を返すことで後輩が貸与できるリレー方式が理想。その返済が上手くいかないために場合によってはブラックリストに載ってしまい、トラブルになるのが昨今の問題だと思われる。まずはなぜ返済ができないのか、その対策をしっかり行う必要がある(一定条件下で金利を下げる、期間を延長するなど)。安易な給付型の拡大は予算の増大、ひいては将来の国全体の経済不安定化につながるため、給付型奨学金を受けるためには成績要件を課すのが大前提と考える。むしろ成績要件を満たした学生に対してはしっかりと奨学金を給付すべきであり、ぜひ日本や国際社会に貢献できる人材に育ってほしいものである。【開業医】

【医師なら返せるはず】

・医学部限定であれば医師として仕事をすれば返済できないことはないようにも思われる。無利息であれば返済できないことはないのでは?環境は本人にも周囲にも責任があるわけではないが、親が医師であれば子供にも期待するであろうし、それを前提とした教育をするのであれば、それなりの成果はあるはず。少なくとも親が医師でない場合とは教育のレベルが違うと思う。【薬剤師】

・医学部に関しては奨学金は必要だが、給付型でなくても良いのではと思う。他の学部に比して、卒業後に返還は比較低可能と思われる。【開業医】

・医学部に限って言えば、卒業後に所得が低くて奨学金を返済できないということはあり得ないので給付型である必要はない。【勤務医】

【給付型であるべき】

・比較的裕福な家庭の子供が幼少時から塾や予備校への多大な教育投資受け続けて、国立医学部に進学するというのが現状です。もっと幅広い階層の人たちが医者(医者に限らず高等教育を受けるよう)になる社会が活力を保つと考えます。そのためには給付型奨学金が大切です。私の同級生でも非常に優秀な人は給付型奨学金をもらっていました。金を払って医者になるのは私立大学がその役割を果たしてくれます。【勤務医】

・高等教育を受けた人材を多数輩出しない限り、現代社会は維持でき得ない。そのための社会投資として、給付型奨学金を大幅に拡充すべきことは、世界の常識だ。【開業医】

・医師養成には1人当たり1億とも言われるが、高度化する医療を担うための優秀な人材確保のためには、給付型奨学金を増加し、原則として、国費によることが望ましいと考える。【開業医】

【私立、国立の学費差の問題】
・医学部を受験する上で学費という壁は必ずぶち当たります。ほとんどの家庭において私立医学部は進学する候補にすら挙がりません。医師という職業の重要性を考慮すると、生まれた環境での経済力によって医師になる道が閉ざされてしまう可能性があってはならないと思います。したがって、私立も国公立も等しく同じ学費にすることが理想的と考えます。【勤務医】

・国公立大学か難関私立大学に合格したものの、経済的理由で進学困難な場合に給付すべき。二流、三流の私立に合格したからといって、給付すべきでない。【勤務医】

・私立大学はそもそも一部の人しか入学できない学校なので、支援は必要ないと思う。自分のお金で行けば良い。国公立大学はそうで無い人たちに開かれた大学なので、逆に支援を大量に投入すべきと思う。【開業医】

【その他】

・大学教育は基本無料であるべきこと。【勤務医】

・貧困の連鎖から抜け出す希望の見える社会になると良いです。【勤務医】

・成績と家庭の所得は比例する傾向がある。成績優秀者だけを給付型にすると、貧困家庭との学歴の差が余計に広がる傾向となってしまう。経済的貧困者の給付型は格差是正のため、必要である。【勤務医】

・現在は裕福な家庭で育った人ばかりが、医者になっているような気がします。私の周りでもそうです。どんな環境で育っても医師になれる未来になってほしいです。【その他の医療従事者】

・これだけ現場が頑張っても、医師の偏在はなくなりませんでした。地方大学は地元枠の医師を増やすべく、地域枠の学生の比率を上げて取り組むべきで、これに国が給付型奨学金を与えるべきである。経済力があると言っても、私立大学の医学部に入学させるのはとても大変であり、裕福な家庭しかできないと思われます。【勤務医】

・経済力もさることながら、生まれ育った環境による影響が大きいと思う。やはり、田舎では医学部へ行ける学力を備えられる人が沢山いても、一生懸命やる人は浮いてしまう。都会のようにはいかないと思うが、皆が可能性を感じられる雰囲気作りをしていかなければならないのではないかと思う。【薬剤師】

・経済力があると優秀な塾に行けるのは有利。しかしながら、平均所得以上の家庭なら、本人の努力で医学部合格は可能です。ただ、遠方に受験にいく旅費が用意できない家庭の子は大変だと思います(現在はその人の得意科目や得点結果により日本全国で合格しそうな大学に受験にいく時代なので)。【開業医】

・都会は私立が多いかもしれないが、地方は皆高校まで公立が普通です。それに経済的困窮者は小学校からずっと学費免除になっています。国立医学部も学費免除の制度がありますので、経済的に裕福じゃないと医学部に行けないということはないと思う。【勤務医】

・大学というのは、在学中は自由に学び、卒業後も自由に働くための最高学府だと思います。若者がそこへ身を置くための機会は親の経済状況だけに左右されないように、ある程度、公的に担保されるのが成熟した社会として健全かと思います。しかしながら、国公立の医学部というのは税金で医師を養成しているという認識が社会に強く根付いています。ここに給付型奨学金を投入すると、さらにその認識は強まるのではないでしょうか?医学部だけでなく、他学部に対してもその認識が強まると、学生の選択できる進路が狭窄化してしまいます。それでは大学というのは単なる専門職訓練校に成り下がってしまいます。国公立大学の運営についても同じことが云えますが、給付型奨学金についても、直接的な社会への還元を期待するのではなく、若者に経済的な懸念を持たせずに自由に学ぶ場を与えるという大らかな在り方であってもらいたいと思います。【勤務医】

・給付型奨学金は投資効果の上がる対象に与えるべきであるが、そもそも、国公立大学の学費を上げすぎたのが大きな失政であることを確認すべき。1970年代末の都道府県立の医学部で県内出身者は年間学費1万4400円!だったところがあると記憶している。国立は、その数倍だったかもしれない。今や50倍。当時と比べて大卒初任給は1.5倍くらいだろうか。私立医大は一番安いところで初年度の納付金が1000万円だったと思う。一方で、分数ができなくても入れる理系学部を設置する意味は無い。また職業教育を行うのは大学ではなく専門学校であり、教員養成大学と同じく4年生大学と同等の位置づけで良いが、設置目的のところで明確に分離していく方が予算編成の意味も含めて、良いだろう(教員養成大学は教育研究は行う)。医学部も臨床医養成コースと医学研究者養成コースを原則分離した上で、2-4年間のコース変更や復帰などは意欲的な人間が選べる柔軟な設計にするとよいかもしれない(もちろん臨床医コースは臨床研究に関しては行う形になると思う)。【勤務医】

・世界中で、日本ほど奨学制度が安易に実施されている国はないと思います。マスコミが北欧では大学まで無料で行けると報道していますが、個人の成績がよい人に限られていて、日本ほどに大学への進学率も高くない。逆に、技術を持った職人への尊敬の念が強く、マイスターのような制度も普及している。本気で学習する人には、奨学金(返済不要)があってもいいが、今の日本のような制度では成り立つわけがないと思う。【開業医】

・現在の入試方法では小学校以前からの過剰なトレーニングや試験慣れがある程度必要であり、これについては経済的に恵まれている者の方が有利であることは疑いようもない【勤務医】



https://www.m3.com/news/iryoishin/443620
シリーズ: 医師不足への処方せん
成田医学部、「将来に禍根を残さないよう判断を」
医学部長病院長会議ら3団体、大学設置審宛て文書

2016年7月22日 (金) 橋本佳子(m3.com編集長)

 全国医学部長病院長会議は7月21日の定例記者会見で、千葉県成田市の医学部新設について、「日本の医療・福祉の将来に禍根を残すような決定が下されることのないよう慎重な判断」を求める文書を、文部科学省の大学設置・学校法人審議会宛てに提出したことを公表した。文書は7月19日付けで、日本医師会と日本医学会との連名。

 同会議会長の新井一氏(順天堂大学学長)は、「従来から我々が主張している内容を改めて提言した」と説明し、理解を求めた。

 成田市は政府の国家戦略特区に指定され、国際医療福祉大学が2017年度の開学を目指し、医学部新設を予定している(『国際医療福祉大学、「明治以来の医学教育を変える」』などを参照)。大学設置・学校法人審議会で現在審議が行われており、今夏に結論が出る見通し。3団体は、2015年2月13日にも、「国家戦略特区による医学部新設に反対」する声明を公表、その後も全国医学部長病院長会議は、繰り返し国家戦略特区の医学部新設の条件に合致するよう審議するよう要望してきた(『成田の新設医学部、「一般臨床医の養成はNG」』などを参照)。

 全国医学部長病院長会議顧問で、新設医大対応ワーキンググループ座長の小川彰氏(岩手医科大学理事長・学長)は、特に「国際的な医療人材の育成」という医学部新設の条件に合致するかどうかを厳密に判断するよう求めた。2015年7月31日付けの内閣府、文部科学省、厚生労働省の3府省の「国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針」を挙げ、「この方針を逸脱したものを作ってもらっては困る」と主張。

 成田市の医学部新設をめぐっては、2016年の通常国会の予算委員会などで取り上げられた。安倍晋三首相は、3府省のこの方針の趣旨を踏まえ、「留学生を含めた学生全員に対して、国際的な医療人材の育成のための教育が行われる予定であると承知している」などの答弁をしている。

 そのほか小川氏は、厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会」の「医師需給分科会」の中間報告で、2024年には医師の需給が均衡に達するとされていることから、「医師養成が過剰となる時期の医学部新設、目的な不明確な医学部施設は到底認められない」と指摘(『偏在対策「強力」に、「医師の働き方ビジョン」も策定 』を参照)。さらに「特殊な医療人材の育成のための医学部であれば、定員は限定的とすべき」とし、3府省の方針を厳格に守ったとしても、国際医療福祉大学が予定している定員140人は「常識を逸脱している」と問題視した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/441649
3疾患の死亡率、「5年間で5%減少」 目指す- 小室一成・日循代表理事に聞く◆Vol.2
疾患登録で実態把握とエビデンスづくり

インタビュー 2016年7月24日 (日) 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)、高橋直純(m3.com編集部)

――日本の製薬企業は、循環器領域の薬の開発には熱心ではないとのことですが、海外の製薬企業の場合は、どうでしょうか。どの辺りの領域をターゲットにしているのか、また対症療法的な薬ではなく、何らかの根本的な治療薬開発のアプローチは進んでいるのでしょうか。

 やはり重要なターゲットは、心不全だと思います。心不全の患者さんは世界中で増えていて、我が国でも循環器疾患による死亡のトップは、心不全です。心不全は、簡単に言えば、「心臓が動かなくなる」病態ですが、なぜ動かなくなるのか、その理由は実は分かっていません。そのため、「原因が分からないので、とにかく何とかしましょう」というのが今の治療。心臓に戻る血液を減らして、心臓を休ませる、あるいは補助人工心臓を植込んで、心臓の役割を肩代わりする治療が行われていますが、根本的な治療ではありません。

 分子標的薬のように、原因を明らかにして、その原因に対する治療法を確立しないと、心不全は治せません。がんの治療は、これまではすごく遅れていたと思っていたのですが、メカニズムが徐々に分かり、分子レベルの治療薬ができ、治る疾患になりつつあります。一気に循環器疾患は追い抜かれてしまった。

 循環器疾患についても、例えば、「心臓を保護しましょう」という治療ではなく、なぜ動かないのかを明らかにして、その治療薬を開発していかないことには、大きな進歩はないと思うのです。


「5カ年計画」で、心不全、脳卒中、血管病の年齢調整死亡率を「5年間で5%、10年間で10%」の減少を目指すという。

――ある程度、その辺りは分かってきたのでしょうか。

 世界中で研究され、徐々に明らかになってきていますが、大きなブレークスルーはまだありません。心不全はあらゆる循環器疾患の「終末像」です。最後は心臓が動かなくなりますが、いろいろな原因が考えられるので、その一つ一つを明らかにしていく以外に道はないのです。

――研究が活発になってくると、研究者も関心を持ち、集まってくる。

 そうですね。学会としても研究の重要性を訴えていきたいと思います。

――日循として重要視する疾患登録事業については、「循環器疾患診療実態調査」(JROAD)が既にありますが、これをもっと発展させていく意向なのでしょうか。

 JROADは今、国立循環器病研究センターの小川久雄理事長が中心になり、主にDPCデータを使って、大規模の病院のデータを集めています。しっかりとしたデータなのですが、今後の課題は、例えば心筋梗塞になった場合にその人の予後をフォローしていくことです。断面調査ではなく、追跡できるような調査をしないといけない。心不全や心筋梗塞の予後はどうか、何らかの治療をした場合、予後は延びたのか……。これらのことが分かるデータベースにしていく必要があります。

 日本循環器学会では、JROADをはじめ、電子カルテからそのままデータを取り込むことができるSS-MIXを使った臨床効果データベースや症例登録データベースなど、3つのデータベース事業が走っています。これらをうまくミックスするか、あるいは相互に補完し合いながら、良いレジストリを作りたいと考えています。

――疾患登録事業から分かってくるのは、患者数などの実態だけでなく、診療データも入力することにより、治療法の改善や、疾患の解明につながるようなエビデンスが出てくることが期待されるのでしょうか。

 はい。日本でどのような治療がされているのか、ガイドラインに沿った治療がどの程度行われているのか、ガイドラインに沿った治療が行われた場合には、そうでない場合に比較して本当に予後が改善しているのか、などが分かるようになってくると思います。

――先生は6月に代表理事に就任され、任期は2年です。その間、「5カ年計画」はどのくらい実行できるとお考えですか。

 どの程度できるかの予想は難しいですが、「5カ年計画」では、数値目標も作ります。心不全、脳卒中、血管病の3疾患について、年齢調整死亡率を、5年間で5%、10年間で10%減少させることを大きな目標にしています。5年間で健康寿命を延伸させることも目標にしています。それ以外についてもなるべく数値目標を立て、それに向かって目標を達成することを目指します。



https://www.m3.com/news/iryoishin/443682
「“平時”は家庭医、時々、緊急人道支援」
PWJの広島県神石高原町、医療プロジェクト◆Vol.1

レポート 2016年7月24日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 “平時”は広島県神石高原町にある診療所で、高齢者だけでなく、IターンやUターンで同町に来たファミリー層や若者を診療し、その合間をぬって、瀬戸内海に点在する無医村の島々にヘリコプターや船で訪問診療や往診を行い、地域医療で培った知見を基に博士論文をまとめる。地域再生のモデルを目指す、自然体験型の公園「神石高原ティアガルテン」の運営にも参画し、医療以外でもさまざまな分野の人と活動を共にし、経験を積む。いざ大規模災害が発生した場合には、国内はもちろん、海外にも緊急人道支援として出向き、発災直後のトリアージや傷病への対応から感染症対策まで、医療担当ドクターとして活躍する……。

 そんな既存の「医師」の概念に捉われない、マルチな才能を持つ、ソーシャルビジネスを担う医師の養成を目指すプロジェクトが始動しつつある。主導するのはNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町)。神石高原町で開業する鈴木クリニック院長の鈴木強氏、東京大学大学院医学系研究科国際保健学教授の渋谷健司氏など、多様なプレーヤーも参画するユニークな活動だ。

 神石高原町は、この10年間でも高齢化が進展し、10年前は、人口約1万2000人、高齢化率は約41%だったが、今は約9600人で、約45%と非常に高い。PWJ代表理事を務める大西健丞氏は、「人口減少・高齢社会という日本社会のはるか先を行くのが、神石高原町。地域再生として、観光、有機農業、放牧、酪農などを展開しており、そこにIターンやUターンを呼び込むには、医療と教育の充実が不可欠」と語り、神石高原町だけでなく、へき地や離島などの医療過疎対策のモデル構築を目指す。一方で、PWJが得意とする緊急人道支援において、これまで手薄だった医療支援の強化を図る。これらの目的が一体化したのが、神石高原町での取り組みだ。「医療に必要な診療報酬以外のマネーフロー」(大西氏)を考えていることもユニークで、ヘリコプター運用にはPWJの事業資金を充てることを想定している。


 鈴木氏は、約30年前に「無医村で働きたい」という思いから、当時の神石町で開業(その後、町村合併で2004年に神石高原町が誕生)。今年で71歳になるが、「新しいことは何でもやりたい。志を持った若い医師が神石高原町に来てくれれば、一緒に取り組みたい」と期待を込める。

 PWJの理事でもある渋谷氏は、「グローバルな視点と、医療の未来を見ている発想がユニーク」と説明した上で、若手医師にとって価値のあるプロジェクトになると展望する。「地域医療に取り組むためには、人をどう動かし、必要な資金をどう確保するかという視点が大事であり、リーダーシップ、マネジメント、コミュニケーションなどの能力が必要。これらはまさにOJTでしか学べず、その場が神石高原町」(渋谷氏)。大学医局に属すなど、既定路線のキャリアではなく、多様なキャリアを考える際の選択肢を得る意味でも、神石高原町で経験を積むメリットは若手医師にとって大きいと、渋谷氏は見る。


 「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」を受賞

 PWJは、1996年から紛争や自然災害などの際の緊急人道支援に取り組み、今年20周年を迎える老舗のNPOだ。これまでの活動実績は28の国・地域に及び、現在も11カ国で活動中だ。年間約30万人を支援している。国内でも東日本大震災をはじめ自然災害支援に従事、今年4月の熊本地震では発災当日の4月14日から活動を開始、翌15日から支援に入った。

 政府や公的機関の支援は、「国 対 国」、「国 対 地方自治体」であり、支援を必要とする側からの要請がないと動けない場合が多い。これに対し、NGOなどの非営利組織の場合、要請は不要。PWJは、これまでに海外で培った経験を踏まえ、「Search & Rescue」(捜索・救助活動)をはじめ、機動力を生かし、さまざまな迅速な支援を展開してきた。

 PWJが今、力を入れている地域が神石高原町。広島空港から車で約1時間の場所にある、標高約700mの山間の町で、基幹産業は米作りを中心とした農業。高齢化率は約45%に達し、いわゆる「限界集落」が増えている。

 この地に、2011年に災害救助犬訓練センターを開設、災害救助犬とレスキューチームの育成を開始した。救助犬の候補を広島県内の動物愛護センターから引き取ったこときっかけに、「犬の殺処分ゼロ」を目指す、「ピースワンコ事業」も開始。今年からセンターで殺処分対象となった犬を全頭引き取ることを決定し、「開始1000日以内の殺処分ゼロ」を前倒しで達成した。 受け入れは1000頭にも上る見通しだ。犬の受け入れ後、病気の有無などをチェック、一定のトレーニングを行い、災害救助犬にしたり、ペット用の犬として一般に譲渡するという一連のプログラムを持つ。

 この「ピースワンコ事業」を展開するのは、「神石高原ティアガルテン」の一角。ドイツ語で、「Tier(ティーア)」は動物、「Garten(ガルテン)」は庭や公園を意味する。

 「神石高原ティアガルテン」では、神石高原町が持っていた公園を、「株式会社神石高原ティアガルテン」が公設民営の形で運営し、さまざまな体験学習や自然と共生できる遊び場に作り変える地域再生プロジェクトが進行中だ。PWJは、多彩なネットワークを生かし、資金調達と運営の両面で支援する。2015年7月のグランドオープンまでの第1期に1.6億円、7月以降の本格稼働から2016年3月までの第2期に1.4億円の費用がかかったが、各種補助金や寄付などを調達し、運営に必要な各分野の専門家に協力を呼びかけた。

 「神石高原ティアガルテン」には、さまざまな体験学習、キャンプができる場などがある。最近オープンしたのは、地元で取れた農産物や特産物を販売するショップと、地元食材を使った食事を提供するレストラン。牧場も持ち、乳製品の販売も始めた。近く薬草などを育てるガーデンも作る予定だ。

 「1法人、1事業」の発想で取り組むNGO、NPOが多い中、PWJが多様な事業を展開するのは、ソーシャルビジネスという発想があるため。ソーシャルビジネスは、日本ではようやく普及しつつある言葉だが、アメリカなどでは大学で、ソーシャルビジネスの担い手を養成する講座もある。簡単に言えば、企業は「利益の最大化」を基本とするのに対し、「社会の課題解決」を目的とするのが、ソーシャルビジネスだ。PWJは今年、ピースワンコ事業や神石高原ティアガルテンでの活動などが評価され、ソーシャルビジネスへの取り組みを表彰する「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」を受賞した。

 「時代が変われば、社会の課題も変わる。新しい課題が生まれれば、その解決に取り組むのは自然の流れだった」(大西氏)。神石高原町は、地域再生の解決策を見いだす「ショーケース」であり、地域によって異なる課題の解決策を神石高原町でのさまざまな取り組みから見いだしてもらうことを大西氏は期待する。

 そんなPWJが今後、力を入れようとしているのが、冒頭に紹介したような医療過疎対策への取り組みだ(Vol.2に続く、近日掲載)。


  1. 2016/07/24(日) 10:12:54|
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