Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月21日 

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/49237.html
自治体病院、4年連続で赤字が過半数- 全自病調査
2016年07月21日 23時00分 キャリアブレイン

 全国自治体病院協議会(全自病)は21日、都道府県や市町村などが運営する病院の2015年度決算見込額の調査結果を公表した。地方公営企業法が適用される405病院のうち、経常損益が赤字だったのは235病院で、前年度に比べて10病院増となり、4年連続で赤字病院が半数を超えた。【松村秀士】

 調査は今年5月、全自病の会員病院のうち、地方公営企業法が適用される801病院(法適用病院)と、地方独立行政法人が設置する78病院を対象に実施。回答のあった448病院(独法病院は43病院)の3月31日現在の決算見込額などを集計した。

 法適用病院で赤字だった235病院の割合は全体の58.0%で、14年度決算と比較して2.4ポイント高かった。235病院のうち、一般病院は226病院で、14年度決算よりも11病院の増加。精神病院では9病院が赤字となり、14年度決算と比べて1病院減った。

 病床規模別で赤字病院の占める割合を見ると、20-99床は56.5%(前年度決算比1.1ポイント増)、100-199床は62.2%(増減なし)、200-299床は70.5%(2.2ポイント減)、300-399床は70.2%(3.5ポイント増)、400-499床は55.0%(7.5ポイント増)、500床以上は43.1%(10.3ポイント増)となり、特に400床以上で赤字病院の割合の伸びが大きかった。

 さらに1病院当たりの1日の平均患者数は、入院202.1人(0.4%減)、外来487.6人(1.3%減)で、一般病院、精神病院とも減少したが、患者1人当たりの1日の診療収入は、入院4万8018円(2.3%増)、外来1万3709円(7.6%増)だった。

 一方、43の独法病院のうち、赤字だったのは19病院で、14年度決算よりも6病院増えた。

 21日に開かれた全自病の常務理事会後の記者会見で、邉見公雄会長は「職員の給与が上昇していることと、高額な薬などによる薬品費が大幅に上がっていることが、赤字病院が増えた要因」と指摘した。

■新専門医制度、「一斉にスタートするのがよい」-邉見会長

 邉見会長はまた、日本専門医機構(機構)が18年度をめどに新専門医制度を開始することを決めたことについて、「(これで地域医療に)大きな混乱が起きないのではないか」と述べ、新制度の開始を当初予定していた来年度からではなく、1年先延ばしにした機構の判断を評価した。

 さらに、邉見会長は「各学会が一斉にスタートするのがよい」とし、内科や外科など19の診療領域の学会が足並みをそろえて、新制度での専門医の養成を始めるのが望ましいとの考えも示した。

 機構は20日の理事会で、各診療領域の専門医の養成方法を、18年度をめどに新制度へと移行させる方針を決定。来年度からの養成については原則、各学会が責任を持って行うことになる。ただ、既存の養成プログラムを用いるか、新制度に向けて準備してきた養成プログラムを使うかは、各学会に委ねられる見通しだ。



https://medical-tribune.co.jp/news/2016/0721504149/
月数百万円のがん治療薬、財政圧迫を懸念...高額新薬の適正使用へ指針〔読売新聞〕
yomiDr. | 2016.07.21 18:05 Medical Tribune

 高額な新薬が相次いで登場しているのを受け、厚生労働省は、従来にない効き目を発揮する新薬について、適した患者を選んで使う仕組みを新設する方針を固めた。

 薬ごとに、患者や医師の条件を定めた適正使用の指針を策定する。新薬の無駄な使用を減らし、副作用のリスクを下げながら、総薬剤費の抑制につなげる。今月下旬の有識者会議で原案を示し、今年度からの導入を目指す。

 指針の内容は、厚労省の関連機関や専門の学会、製薬会社が、臨床試験(治験)のデータをもとに検討。効果が見込める遺伝子配列を持つなど対象患者の条件や、治療実績が豊富で適切な治療ができる医師や医療機関の条件を定める。

 薬の承認後に公表し、保険適用の範囲にも反映させる。製造販売後の研究で、薬の使用にふさわしい患者の条件が新たに判明した場合には指針を改定する。

 これまでも副作用回避の目的で製薬会社が医師や患者の要件を定めた例があったが、要件から外れて使われる例も少なくなかった。

 新薬を巡っては、昨年肺がん治療薬として保険適用された「オプジーボ」の薬代が1人あたり月数百万円に上り、高額な薬剤費が医療保険財政を圧迫すると懸念されている。指針の作成は、原則として今後承認される新薬が対象だが、オプジーボと、高額で多くの使用が見込まれる高コレステロール血症治療の新薬「レパーサ」(今年4月保険適用)についても指針を作成する。

(2016年7月21日 読売新聞)



http://jp.wsj.com/articles/SB10352986937800543568904582201862539097388
価格支配力強める米製薬会社、政府は「お小言」
ギリアドは配当利回りが高い米バイオテクノロジー会社の一つだ

By CHARLEY GRANT
2016 年 7 月 21 日 09:41 JST ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

 製薬会社は投資家の期待に応えるために価格決定力に頼り続けている。このことは一部の投資家が警戒するほど目先の大問題ではないのかもしれない。

 4-6月期の決算発表シーズンを前に、薬価に注目が集まっている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先週、1-3月期に製薬業界の上位20社のうち3分の2以上が主力製品を値上げし、売上高を押し上げたことを報じた。米労働省労働統計局の生産者物価指数(PPI)によれば、2015年6月〜16年6月に薬価は6%近く上昇した。これは全体のインフレ率をはるかに上回る数字だ。処方薬は一般的に粗利益率が高く、値上げ効果は最終利益にまで達する傾向がある。

 また長年、相次ぐ医療革新が業界に大きな見返りをもたらしてきたが、近ごろは財務に寄与するような新発明が比較的乏しい。こうした背景が値上げによって成長しようという誘惑を大きくする。

 値上げは賛否の分かれる戦術で、やっかいな事態を招きかねない。政治家は昨夏以来、製薬会社を鋭く批判している。米大統領選が迫るなか、薬価は政府の関心事であり続けるだろう。政府が政策を大転換し、例えば高齢者向け医療保険制度(メディケア)に製薬会社との価格交渉を認めれば、主要な製薬・バイオテクノロジー銘柄にとって問題になるのは確実だ。

 だが厳しい言葉と意味ある行動とは別物だ。政府が野放しになっている価格の規制に乗り出すことをうかがわせる具体的な兆候はどこにもない。結局のところ製薬大手の事業慣行に対する不満は目新しいものではなく、今回だけ特に対策をとる理由は不確かだ。

 一方、株式市場では成長が横ばい、または緩やかな銘柄への投資意欲が見られる。企業の利益と売上高が落ちるなかでも、比較的配当利回りが高い堅実な銘柄が主導し、S&P500種株価指数は過去最高値を更新した。製薬大手は投資家の求める利回りの条件にぴったりだ。アムジェンやギリアド・サイエンシズといったバイオテクノロジーの大手は指標の米国債を上回る利回りを提供している。

 景気を踏まえると、利益拡大への予想はかなり強い。調査会社S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスは、今年の医薬業界の1株利益の伸び率が6.5%と、1業種を除いて最も高くなると予想している。

 政治情勢が不意に変わらなければ、製薬会社は今後も「お小言」で済む程度に価格決定力を駆使し、投資家を満足させるだろう。



http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG21H7T_R20C16A7CC1000/
無許可で医師ら当直 千葉県立6病院、労基署が一部立ち入り
2016/7/21 23:34 日本経済新聞

 千葉県立の全6病院で、労働基準監督署の許可がないまま医師らが夜間、休日の当直勤務をしていることが21日、県への取材で分かった。人手不足で頻繁に急患に対応することが多く、待機や病室巡回など軽い労働に限られる当直勤務の原則を守れる人員態勢を病院側が取れないためだ。医療関係者は全国的にも同様の例があるとみている。

 県によると、6病院のうち県がんセンターは5月、千葉労基署の立ち入り調査を受けた。県病院局は「許可を得ないまま当直をさせている現状は違法状態と認識している」とする一方、医師の確保が困難で、国が求める当直勤務をさせるための適正な態勢をつくれないとして「早急な解決は難しい」としている。

 厚労省は2002年、全国の病院に勤務の適正化を求める通達を出しており「無許可の場合は違法労働となる可能性がある」としている。

 県によると、県がんセンターはこれまで数回、医師らの当直について許可申請したが「勤務内容が通常業務と変わらない」などとして認められなかったという。6病院とも過去に許可を得た記録はなく、長期間、無許可状態が続いているとみられる。

 労働組合「全国医師ユニオン」の植山直人代表は「医師らの過重労働につながる恐れがある。全国的に他の病院でもあり得る」と指摘している。

 県がんセンターでは、14年に腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた11人がその後死亡した問題が発覚するなど医療を巡る問題が相次いでいる。病院が設置した複数の第三者委員会の調査結果で、医師の過重労働や人員不足など、病院の労働環境を改善する必要性が再三指摘されていた。〔共同〕



http://this.kiji.is/128809775386494452?c=39546741839462401
労基署の許可なく医師ら当直勤務
千葉県立6病院、背景に人員不足

2016/7/21 19:43 共同通信

 千葉県がんセンター(千葉市)など千葉県立の全6病院で、労働基準法に定められた労働基準監督署の許可がないまま、医師や看護師に夜間、休日の当直勤務をさせていることが21日、県への取材で分かった。

 厚生労働省は当直の勤務内容について、原則として「待機や病室巡回など軽い労働」に限定している。だが実際は人員不足で、頻繁に急患の対応などを求められるケースが多く、病院が適切な当直態勢を取れないことなどが背景にある。

 無許可では国のチェックが及びにくく、労働組合「全国医師ユニオン」の植山代表は「医師らの過重労働につながる恐れがある。他の病院でもあり得る」と指摘している。



http://www.asahi.com/articles/ASJ7P5F2QJ7PULBJ00X.html
「慶応大病院の過失で脳障害」心臓手術受けた女児ら提訴
黒田壮吉
2016年7月21日21時27分 朝日新聞

 慶応大学病院(東京都新宿区)で心臓手術を受けた女児とその両親が21日、医師らの過失で脳に重い障害を負ったとして、病院側を相手に約2億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。また、高度な医療を提供する「特定機能病院」の承認を取り消すよう厚生労働省に求めた。

 訴えたのは群馬県太田市の高橋心音(ここね)ちゃん(5)と父の歩(あゆみ)さん(43)、母の亜希子さん(39)。

 訴状によると、心音ちゃんは生まれつき心臓の壁に穴が開いている病気で、生後3カ月だった2010年12月、慶応大病院で穴をふさぐ手術を受け、低酸素脳症になった。手術の際、人工心肺装置と血管をつなぐ管状の器具の入れ方が適切でなく、脳への血流が阻害されたのが原因と主張。さらに、医師らは脳内の酸素量を測るモニターを使っておらず、異変に気づかなかったなどとしている。

 両親は手術後、病院側から「脳障害の原因は不明」と言われたという。

 心音ちゃんは現在もほとんど寝たきりの状態で、話をすることや口から食べることもできないという。

 両親らは提訴後、都内で会見をした。歩さんは「病院側の説明は二転三転し、おかしいことばかりだ」。亜希子さんは「娘は手術後、別人になった。病院は真実を明らかにしてほしい」と語った。

 慶応大病院は「現時点でお答えできることはない」としている。(黒田壮吉)



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/49177.html
プライマリ・ケア連合学会丸山理事長に聞く- 持続可能な医療のために(7)
2016年07月21日 10時00分 キャリアブレイン

日本プライマリ・ケア連合学会
丸山泉理事長(英国家庭医学会名誉フェロー)

 「例えば、Choosing Wiselyが米国では大きなムーブメントになっていますが、短絡的に医療費の削減と直結されると、患者や家族と医療側での対話によって共有された価値がなおざりになる恐れがあるので、分けて考えなくてはいけません」―。

 丸山理事長は、米国発のChoosing Wiselyは、患者中心の医療の医療側からの新たなムーブメントとして評価をしつつも、医療費削減と同時に語られてしまうと、価値に基づく医療が軽視されると警戒する。

 丸山理事長にインタビューした。

 米国のChoosing Wiselyをそのまま、日本に導入するときには注意が必要です。Choosing Wiselyには、過剰医療は患者のためにならない、医師と患者の関係の中で、提供している医療が適切なのかという日本とは比較にならない、米国の医療制度の抱えている大きな問題の反作用的な要素があるのです。

 患者に対して無用な負荷、つまり無駄な検査をしたり、無駄な薬を処方したりするようなことをなくそうということです。もちろん、Choosing Wiselyの結果、医療費が抑えられる効果はありますが、それはむしろ後付けであると考える方がいいでしょう。

 このムーブメントが、医療費財政の厳しい日本に、短絡的に適用されるとなると、Choosing Wiselyが医療費を適正化する道具になり、Choosing Wiselyの本来の目的とする、あえて言えば価値に基づく医療Value based medicine(VBM)から、懸け離れてしまう恐れがあります。

 来年4月に予定されていた消費増税が延期され、一方で、プライマリーバランスの健全化の公約はまだ生きています。その中で、社会保障財源の削減圧力が強まり、医療費を適正化しようとしてChoosing Wisely が別の目的で持ち出されれば、それは困ります。

 Choosing Wiselyも、患者を中心とする医療を実現しようという大きな流れの一部です。この流れは、Choosing Wiselyのムーブメントが出てくる以前から培われてきました。

 アルマ・アタ宣言というものがあります。1978年9月、世界保健機関(WHO)と国連児童基金(ユニセフ)が共催した国際会議で採択されました。この宣言では、新しい健康に対する概念として、プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)が提唱され、人間の基本的な権利である健康に関して、格差や不平等は容認されるべきではないという基本精神に基づき、健康教育や母子保健・家族計画などでPHCの基本活動に取り組むことがうたわれました。つまり、「すべての人々に健康を(Health For All)」というものです。

 Choosing Wiselyが、米国発のキャンペーンとして広がっていますが、その根底にあるものは、アルマ・アタ宣言のHealth For All、そして、それを個人に落とした患者を中心とする医療を実現しようという考えであることを認識しなくてはいけません。そうでないと、われわれアカデミアはChoosing Wiselyに対応できません。

 米国発のChoosing Wiselyを輸入するのではなく、日本で患者中心の医療を目指すような動きが独自に出てきてほしかったというのが本音です。この国は、どうもそのような、ビジョナリーな仕掛けは苦手なようです。自発的な動きを待っていても、いつになるか分かりません。そう考えれば、日本版の、少なくともユニバーサル・ヘルス・カバレッジにおいて、先行している事実を前提として、発展した形にするのがいいのではないでしょうか。

 方略を考える場合、一般国民への浸透はヘルスリテラシーの実情を考えると、ある種の危うさもありますので、まずは医師全体に浸透することが必要です。最近、心ある医師が価値に基づく医療の重要性を唱え始めていますが、このことも連動した形になるのではないでしょうか。

 Choosing Wiselyが政治の道具にされたり、Choosing Wiselyがすべてだというようなワン・ワードポリティックスのように使われたりして、医療制度の複雑さによって国民が理解しづらいことや、医療情報がそもそも非対称性であり、ディスクロージャーが十分でない中で、「この治療や検査は受けてはいけない」というように扇動的に喧伝されるようなことがあってはなりません。医療者が未来性のある仕掛けや考え方を主張する場合には、常に市民の混乱を避けることを意識しなければなりません。特に、病を持つ人、その家族の不安を結果的にあおることは、絶対に避けるべき医療人のマナーです。

■EBM、Choosing Wiselyなど根底の思想は同じ

 EBMに続いて、NBM、パーソン・センタード・ケア(Person Centered Care)、そしてChoosing Wisely、VBMの流れを見ていると、根底の思想は同じです。むしろ、同じであるということを医療人が共有することが大事なのかもしれません。

 少しEBMについて話しますと、EBMは、大きく4つのステップ(=表=)で成立するといわれています。しかし、ステップ4の「得られたエビデンスの患者への適用性の判断」の部分が、これまで先送りされてきたという指摘は甘んじて受けなくてはいけません。これは多くの医療人が、現場感覚として気付いているのではないでしょうか。

 ステップ1 疑問点の抽出
 ステップ2 信頼性の高い結果(エビデンス)を示す文献の効率的検索
 ステップ3 臨床疫学と生物統計学の原則に則った文献の批判的吟味
 ステップ4 得られたエビデンスの患者への適用性の判断

 EBMとは本来、患者のための考え方であるにもかかわらず、誤解がまだあります。EBMは決して、「データに基づいて絶対にこうしなくてはいけない」というようなものではありません。EBMは患者のための考え方ですから、EBMとVBMは連動したものであるべきなのです。現代社会の労働のマニュアル化、思考のパターン化がEBMの取り扱いに対する誤認を生んでいるのかもしれません。

 EBMには、功も罪もあります。よく理解しておかないと、罪の按分が圧倒的に増えます。診療ガイドラインはEBMに基づいて作成されていますが、ガイドラインを現場の医師が治療や検査などの単なるマニュアルととらえてしまって、自らの患者との対話の中で価値を創造することを軽視するという根深い問題があります。

 一方で、ガイドラインが医療費を押し上げている可能性があり、さらにポリファーマシー(多剤処方)の原因になっている側面は直視すべきです。すべては、ガイドライン作成の在り方と背景の思想の問題です。例えば診療ガイドラインで、ある1つの疾患に対して、ある薬剤が推奨されていると、かなりの確率で医師はその薬剤を処方します。Aという患者さんがいて、ほかの新しい疾患が加わったら、新しいEBMが重なってきます。EBMにEBMがプラスされて、さらにEBMがプラスされたりすると、結果的にポリファーマシーに陥るわけですから、では最終的に誰が、どのような方法で、どのような価値観で判断するのかが難しくなってきます。そこに、あくまで誰が主体であろうと、誰と誰がという構図が必要なのです。

■患者のValueの判断はデータと対話から

 最近、肺がん治療で、マブ系(遺伝子組み換え)の高額薬剤が保険収載されました。この薬剤の処方の在り方を、どうするかが焦点になっています。また、従来のカルシウム拮抗剤で十分対応できるのに、新たに出てくる降圧薬をどのように選択するかなどの問題もあります。では、コスト高の治療には価値がないのか、それは全く別の問題になります。むしろ、そのためにバランスの良い仕組みをどう構築できるかでしょう。

 医療ではまず、Valueが優先されるべきです。医師はValueを優先すべきです。医療費という大枠のコストに関しては、イノベーションによって引き下げることも可能だと考えています。そのような引き下げのインセンティブを合理性があるものにしなくてはなりません。例えば、透析医療は高額と指摘されることがありますが、それに対して、価格を安くするイノベーションで解決しようとするベクトルが大事です。

 ともかく、医療コスト、総体としての医療費、総体としてのその財源は、医療の現場の最大の規定因子ですし、これからもっと制限的にならざるを得ないことは事実です。ならば、われわれ医療人は、これらのことに触れないわけにはいきません。現場では、財源リソースを強く意識せざるを得ません。よく考えれば、そのことは当然のことなのです。

 今まで述べたように、患者、さらに家族を含めた医療人との共通の価値観を、事実と対話の積み重ねによって、つくり上げることが大事なのですが、実は私はここを一番危惧しています。そのための医師の教育は十分なのであろうか、そのように医師は育成されているのであろうか、と考えます。また、医療の現場の中で、そのような創造のための時間枠は想定されているのであろうか、と考えます。医師がレギュレーターである以上、判断するための時間、判断するための情報収集、判断するための対話を確保することが解決の要点だと考えています。



http://mainichi.jp/premier/health/articles/20160720/med/00m/010/003000c
健康に暮らすどう知る?どう使う?健康・医療情報
「偉い医師なら正しい」は間違い

北澤京子 / 医療ジャーナリスト/京都薬科大学客員教授
2016年7月21日 毎日新聞

患者と医師の会話

  患者「先生、私のかかっているがんで死ぬようなことはありますか?」
  医師「大丈夫です」
  患者「自信たっぷりにおっしゃいますが、根拠は何ですか?」
  医師「実は、あなたはがんじゃなかったんです。だから『がん』では死なないんですよ」

EBMの「E」はエビデンスの「E」

 根拠という言葉には「ある言動のよりどころ」(広辞苑)という意味があります。健康や医療に関して根拠(エビデンス)という言葉が使われるときは、単なる「よりどころ」という意味を超えて、「人間を対象に科学的な方法で検証が行われている」という意味が含まれています。経験や勘、ひらめきだけでは、根拠とはいいません。

 このような意味での根拠に基づいて医療を行っていこうという考え方を、根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine=エビデンス・ベースト・メディシン)といい、頭文字をとってEBM(イービーエム)と呼ばれています。

 ただし、一般の人にはまだそれほどなじみがないかもしれません。少し古いデータですが、国立国語研究所が2008年に非医療者を対象に行った調査によると、「エビデンス」という言葉を見聞きしたことがあると答えたのは23.6%にとどまり、意味まで理解していたのは8.5%でした。
診療のしかたをガラリと変えたEBM

 EBMは、1991年にカナダ人の医師で生物統計学者であるゴードン・ガイアット氏が書いた短い文章に初めて登場しました。ガイアット氏は、鉄欠乏性貧血が疑われる70歳の男性に対する医師の対応のしかたについて、昔(EBM以前)と未来(EBM以後)とを比較しました。

 昔:医師は先輩に教えてもらった通りの2種類の検査をオーダーし、結果に矛盾がなければ鉄欠乏性貧血と診断する。結果に矛盾があれば自分の直観に頼るか、さらに上の医師に相談する。

 未来:医師はまず、電話回線で医学文献データベースにアクセスし、2種類の検査について文献を探す。図書館に頼んで文献をいくつか取り寄せ、関連性の高い1本を選んで、検査の能力をチェックする。患者の訴えなどから鉄欠乏性貧血である確率を事前に想定し、検査の結果が出た後にその確率を修正して、方針を決める。

(出典:Guyatt GH. ACP J Club. 1991; 114: A16. より一部抜粋、抄訳は筆者)
http://acpjc.acponline.org/Content/114/2/issue/ACPJC-1991-114-2-A16.htm


 電話回線でデータベースにアクセスするくだりには懐かしさを感じますが、その後、彼の予測は世界中で現実になりました。

 ガイアット氏ら「EBMワーキンググループ」の面々は2002年に、米国医師会雑誌(JAMA)にEBMの連載を始めます。それにより、米国内ばかりでなく世界中の医師にEBMが知られるようになりました。
人間を対象とする研究を重視

 EBMの考え方で興味深いのは、いわゆる権威者の見解は、それだけでは根拠としてのレベルが低いとみなす点です。これは、偉い先生の見立てを軽視するという意味ではなく、誰の見立てであってもうのみにせず、しっかりとした根拠(エビデンス)に照らして自分の頭で考えよう、ということなのだと思います。

 また、遺伝子や組織を調べる基礎研究の重要性は理解しつつ、それだけでは不十分で、人間、さらに言えば大勢の人間(=集団)を対象にした研究(臨床研究)で実際に試してみることの重要性を強調しました。なぜなら、人間は動物とは違いますし、同じ人間でも一人一人違うからです。たった1人、せいぜい数人で得られた結果より、1000人、1万人で得られた結果を重視する方が信頼できるというのは、直感的にも分かりやすいのではないでしょうか。

 ただし、EBMは、臨床研究で得られたデータ「だけ」を重視しているわけではありません。では、他に重視すべきこととは何でしょうか。(次回に続く)

きょうの 話のデザート

 EBMは、医学部や薬学部の教育カリキュラムにも組み込まれています。昨年、6年制薬学部(全74校)の教員の先生方を対象に、EBMに関して何を、どのように教えているかに関する実態調査を行いました(広島国際大学の佐々木順一先生との共同研究)。結果の一部を、6月に開かれた日本医薬品情報学会で発表しました。

北澤京子 きたざわ・きょうこ 医療ジャーナリスト、京都薬科大学客員教授。著書に「患者のための医療情報収集ガイド」(ちくま新書)、訳書に「病気の『数字』のウソを見抜く:医者に聞くべき10の質問」(日経BP社)



http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201607/0009307784.shtml
神戸・中央市民、隣接病院と統合へ 臨床研究強化
2016/7/21 21:06 神戸新聞

 神戸医療産業都市構想を進める神戸市は21日、ポートアイランド2期にある先端医療センター病院(60床)を、隣接する同市立医療センター中央市民病院(708床)に統合させる方針を決めた、と発表した。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った臨床研究などの体制を強化するとともに、同市の財政負担を軽減させる。

 いずれも同市の外郭団体で、それぞれの病院を運営する先端医療振興財団と神戸市民病院機構に6月下旬、同市が要請した。各理事会で7月中に決定し、早ければ2017年秋に実現するという。

 国は、医療法に基づき15年度、予算を優先的に配分する「臨床研究中核病院」を創設するなど、より高度な臨床研究について、安全性が確保された大規模な総合病院を中心に進める方針を示している。

 一方の先端医療センター病院は、03年度に全面開業。新しい治療法の開発や保険適用されていない高度な医療の提供を担ってきたが、市立でないため医療機器更新などで国の財政支援を受けられなかった。病院単体で15年度は約1億円の赤字だったが、財政支援や効率化で年間約2億円の統合効果が見込めるという。

 先端医療センター病院などが世界で初めて実施し、来年にも再開予定のiPS細胞を使った目の病気の臨床研究も、今後は中央市民が行う。

 臨床研究中核病院は、研究支援スタッフの人数などで厳しい要件があり、同市は「統合ですぐに要件を満たすわけではないが、近づきたい」と話す。

 先端医療振興財団は基礎研究や進出企業支援の機関として残り、既存の病院施設は統合後もそのまま使用する。

 同市は「安全で安定した体制を確立し、市民に新しい医療技術を提供できる。中央市民は60床増えるので、効率的に運用して地域医療に役立てたい」としている。(森 信弘)



http://mainichi.jp/articles/20160721/ddm/002/040/035000c
がん大国白書
第2部 検証・基本法10年/2 道半ばの痛み治療

毎日新聞2016年7月21日 東京朝刊

 名古屋市緑区の大学職員、加藤那津さん(37)は6月、昨年に続いて米シカゴを訪れた。日本癌(がん)治療学会が実施する患者派遣のメンバーとして、米臨床腫瘍学会に参加するためだ。「以前はいつ痛みがひどくなるのかわからず、遠出をする気持ちになれなかった。今は医療用麻薬を使っているので、急な痛みも心配ありません」と笑う。

 加藤さんは2009年に乳がん手術を受けたが、4年後に再発し、再び手術を受けた。悩みは手術後のホルモン療法で生じる関節の痛み。あまりのひどさに吐き気が絶えないほどだった。がん診療連携拠点病院に入院していたが、主治医は「時間がたてば治ります」と言うだけ。痛みに対応する緩和医療科への紹介を要望しても「それはもっと後になってかかるところ」と諭された。「痛みにも増して、理解してもらえないことがつらかった」という。

 見かねた母親が緩和医療科に直接相談し、痛みの治療を受けられるようになった。医療用麻薬を使うと日常の痛みが治まり、趣味の山登りも再開した。「痛みが消え、病気の前より積極的になった気がする」と加藤さん。

 日本では、1990年に末期の患者へのホスピス・緩和ケアが医療保険の対象となった経緯から、「緩和ケアは末期患者が対象」という印象が生まれた。鎮痛に使う医療用麻薬にも「薬物中毒になる」との誤解から海外よりも消費量が少なく、がん患者は「抑えられるはずの痛み」を我慢する状態が続いていた。

 06年に成立したがん対策基本法は、緩和ケアを「患者の生活の質を改善する医療」と位置付けた。がん治療と並行して実施することを原則とし、「がんと診断されたときからの緩和ケア」が合言葉になった。だが、昨年6月にまとめられた、現在のがん対策推進基本計画の中間評価報告書によると、患者の3〜4割が体や気持ちの「つらさ」「痛み」が「ある」と回答。今も加藤さんのように、痛みを抱えながら闘病する患者が少なくない。

 14年1月、拠点病院の要件に、がん患者が日常感じる痛みや精神的な苦痛を質問票などを使って早期に把握する「苦痛のスクリーニング」が追加された。要件が追加された背景には、「自分から(医療者に痛いと)言い出しにくい」という患者側の要請があった。

 国の要件化に先駆け、08年に質問票を本格導入した聖隷三方原(せいれいみかたはら)病院(浜松市)の森田達也・緩和支持治療科部長らが昨年、422の拠点病院に調査を実施した。回答した379病院の88%がスクリーニングを導入していたが、入院、外来ともに60%以上が導入1年未満だった。さらに導入した施設の60%は、痛みを訴えた患者をケアする態勢が未整備で、23%の施設は緩和ケア科など専門の部署に紹介する態勢もなかった。

 森田部長は「法制定後、国は病院にさまざまな条件を課してきたが、多くの病院はそれに従うのに精いっぱい。要件化されたために質問票の配布ばかりにこだわる施設も多く、患者の立場から必要な体制を検討する必要がある」と指摘する。=つづく



http://www.yomiuri.co.jp/local/fukushima/news/20160721-OYTNT50138.html
県立医大医師が盗撮の疑い
2016年07月22日 読売新聞 福島

◆県関係組織の職員また不祥事

 県が関係する組織の職員を巡る不祥事がまた明らかになった。県立医大は21日、医学部助手の男性医師(28)が14日、福島市のコンビニ店内で女性のスカート内を盗撮したとして県警の取り調べを受けたと発表した。福島署によると、県迷惑防止条例違反容疑で捜査しているという。県職員などを巡っては5月以降、犯罪捜査の対象になる事例が続発している。

 同大や県警によると、男性医師は同市在住で、7月14日午後6時頃、帰宅途中に同市伏拝のコンビニ店に入り、女性のスカート内を靴に仕掛けた小型カメラなどを使って盗撮した疑い。撮影した画像をスマートフォンで確認しているのを男性店員が発見して通報した。同署の調べに対し、男性医師は容疑を認めているという。

 同市の県庁で21日夕、記者会見した同大の錫谷達夫医学部長は「皆さまにご迷惑をおかけした。申し訳ありませんでした」と陳謝した。男性医師を当面、自宅待機とし、今後、処分を検討するという。

 同大の聞き取りに対し、男性医師は、盗撮目的でコンビニ店に入って女子高校生のスカート内を盗撮したと説明し、「自分でもよくわからないけれど、やってしまった。大学や家族、患者を裏切る行為をした。深く反省している」と話した。過去にも盗撮したとも認めているという。

 不祥事の続発を受け、県は幹部による全職員の個別面談などで再発防止を図ることを決めている。県人事課によると、同大は2006年度に公立大学法人となっているが、事務職員の半数程度は派遣された県職員だといい、同課は20日に同大に対して県の再発防止策の内容を文書で連絡している。同大の教職員は約3400人で、錫谷医学部長は「県に準じて各所属で実施したい」と述べた。

2016年07月22日



http://mainichi.jp/articles/20160722/ddm/002/040/073000c
がん大国白書
第2部 検証・基本法10年/3 患者の行動、国動かす

毎日新聞2016年7月22日 東京朝刊

 日本で初めてとなるがん対策の法律「がん対策基本法」が2006年に成立したのは、「日本のがん医療を変えたい」と行動した患者がいたからだ。

 「もう治療法はありません」。島根県出雲市内の病院で02年ごろ、地元テレビ局の報道カメラマンだった佐藤均さんは耳を疑った。01年に52歳で大腸がんと診断され、手術を受けたが、転移を繰り返した。吐き気など抗がん剤の副作用がひどく、そのつらさを訴えていた。だが、「名医」と言われていた主治医から、思わぬ言葉を浴びせられたのだ。

 佐藤さんは知人の情報を頼りに東京都内の病院で診療していたがん治療の外科医、平岩正樹医師(62)を訪ねた。平岩医師は患者と徹底的に話し合い、抗がん剤もきめ細かく投与していた。佐藤さんも副作用が激減し、がんの進行も止まった。

 平岩医師の元には、「治療法がない」と告げられた患者たちが集まっていた。佐藤さんは「がん治療の地域格差は全国的な問題だ。島根からがん医療を変える。自分の命に代えてでも」と決意。抗がん剤専門医の育成などを求める署名を集め始めた。3週間で2万6000人分が集まり、島根県議会へ提出。県議会は03年10月、専門医育成の請願を採択した。

 平岩医師は「一度にかかわれる患者は多くて40人。当時は他に受け皿がなく、治療希望者の数%しか受け入れられなかった。だが、患者たちから生き方を学んだ」と振り返る。患者たちには「がん医療のどこが問題かを知っているのは、あなたたちだ。患者が訴えれば世の中は変わる」と説いた。そんな患者たちが、理想の医療実現のために行動し始めた。

 海外で使われている抗がん剤が日本で承認されていない「ドラッグラグ」も問題だった。1999年に60歳で肝臓がんを発症した大阪市の医師、三浦捷一(しょういち)さんも希望の薬を使えず、「患者の生存権を奪っている」と訴えた。度重なる手術を受け、ふらつく体で国会や厚生労働省へ足を運んだ。厚労省から三浦さんに例外的に薬の使用を認める打診もあったが納得しなかった。三浦さんを知る濱本満紀・がんと共に生きる会副理事長は「自分のことよりも、医師として全ての患者を救うという使命感が強かった」と話す。

 患者の訴えはうねりとなる。05年5月、大阪市に全国のがん患者ら約2000人が集まる「がん患者大集会」が開かれた。実行委員会代表は三浦さん。東京都内で入院していた佐藤さんは、「大阪へ行く体力は残っていない」と平岩医師に反対されたが、「私のこと、分かっているでしょう。このために生きてきた」と新幹線に乗った。佐藤さんは会場からあふれる患者の姿を見て、体を震わせて涙を流し、壇上から「がん医療改善のため連携して頑張ろう」と呼びかけた。佐藤さんの妻愛子さん(69)は「夫は命がけだった。それが国を動かしたのでしょう」。

 大集会の成功を見届け、佐藤さんは集会の1カ月後、三浦さんは7カ月後に亡くなった。三浦さんが世を去った日、一人の国会議員が病院で検査を受けた。その2日後、思わぬ結果を聞くことになる。=つづく



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/49235.html?src=catelink
医療事故、トラブルの可能性で判断しないで- 医学部長病院長会議が「考え方」公表
2016年07月21日 22時00分 キャリアブレイン

 全国医学部長病院長会議(会長=新井一・順天堂大学長)は21日、昨年10月にスタートした医療事故調査制度に関する「基本的考え方」を公表した。患者の死亡が医療事故に当てはまるかどうかを、遺族とトラブルになる可能性などで判断しないよう求めるといった内容で、同会議は今後、全国の大学病院に配布するなどして、同制度の正しい運用を徹底するよう呼び掛ける方針だ。【佐藤貴彦】

 医療事故調査制度は、医療事故が発生した際に病院などが院内調査を行い、その調査報告を第三者機関が収集・分析することで、事故の再発防止につなげるもの。同制度の対象となる医療事故に当てはまるかどうかの判断は病院などの管理者が下すことになっているが、患者の死亡が医療に起因し、管理者が予期しなかった場合などが対象になると定められている。

 全国医学部長病院長会議は今年の春、全国の大学病院80カ所を対象に、同制度に関する実態調査を実施。この中で、医療事故に当てはまるかどうか判断する基準について、70カ所(87.5%)が理解していると回答した。

 一方で、遺族とのトラブルを避けるために医療事故と判断する事例が少なくないといった指摘もあることから、同会議の「大学病院の医療事故対策委員会」は、医療事故と判断する基準や同制度の趣旨を、一部の大学病院が誤解している可能性があると判断。同会議の「基本的考え方」の中に、「(同制度は)紛争解決の手段ではない」「紛争への発展の可能性により(医療事故に当たるかどうかの)判断が左右されてはならない」といった文言を盛り込んだ。

 「基本的考え方」ではそのほか、大学病院が都道府県医師会と密に連携するなどして、同制度の正しい運用や、医療の安全性の確保が進むよう積極的に取り組む必要性も指摘している。



https://www.m3.com/news/iryoishin/443306
シリーズ: 始動する“医療事故調”
“事故調”、報告や院内調査のバラツキ問題視
医療安全調査機構、半年間の詳細データも公表

2016年7月21日 (木) 橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医療安全調査機構は7月20日に2016年度の第1回医療事故調査・支援事業運営委員会を開催、この6月の医療事故調査制度の見直しに対応するため、遺族から相談があった場合には、遺族の求めに応じて相談内容を文書で医療機関に伝える方針などを確認した。同委員会では、これまでの実績を踏まえ、報告すべき医療事故に該当するか否かの判断にバラツキがあったり、院内事故調査報告書の内容が医療機関によって差が大きいことから、標準化するためにマニュアル作成などを求める声も相次いだ。

 2015年10月から半年間の詳細な動向も報告され、500床以上の病院のうち、報告の経験があるのは16.7%に上る一方、500床未満の病院では1.2%にとどまるなど、臨床研修病院や大学病院など、手術や侵襲的な処置などを多数実施する施設からの報告が多い現状が明らかになった。制度上は「遅滞なく」とされている患者死亡から医療事故報告までの期間は平均21.9日、中央値16日、事故報告から院内事故調査報告までは平均65.1日、中央値59日だった。

 日本医療安全調査機構は、2015年10月からスタートした医療事故調査制度において、第三者機関である医療事故調査・支援センターの役割を担う。再発防止策の検討がセンターの業務の一つで、同機構の再発防止委員会で、報告事例が一番多かった「中心静脈穿刺(CV)」を取り上げ、現在検討中だ。次に「肺塞栓」とする予定。

 医療事故調査制度はこの6月24日に、見直しが行われた(『医療事故調査制度、一部改正で省令・通知』を参照)。日本医療安全調査機構に求められるのは、 (1)支援団体等連絡協議会(中央協議会)に参画、 (2)医療事故調査制度の円滑な運用に資するため、支援団体や病院等に対する情報提供や支援、事故調査等の優良事例の共有、 (3)支援団体等連絡協議会と連携して研修を実施、 (4)遺族等から相談があった場合、医療安全支援センターを紹介、遺族等の求めに応じて、相談内容等を病院等の管理者に伝達、 (5)再発防止策の検討を充実させるため、病院等の管理者の同意を得て、事故調査報告書の内容に関する確認・照会等を実施――の5点。

 (4)については既に、平日9時から17時までに専用ダイヤルを設けて対応する体制を整備済み。7月19日までに、2件の相談があったという。

 それ以外については、今後、日本医療安全調査機構は、運営委員会のメンバーの協力を得ながら具体化を進める。

 (1)については、同機構が主導するのではなく、あくまで「参画」の立場で、例えば、日本医師会など各支援団体から代表者が集まり、世話人会などを結成し、組織することも想定される。運営委員会委員長を務める、東京大学大学院法学政治学研究科教授の樋口範雄氏は、医療安全につなげるため、支援団体等連絡協議会において、医療事故に該当するか否かの判断などの標準化が進むよう期待を込めた。

 同機構常務理事の木村壮介氏は、(5)について、「再発防止に資するような事例については、医療機関から詳しい情報をもらい、再発防止につなげたい」と述べ、その運用は今後、再発防止委員会で検討していくと説明。従来は、各医療機関の院内事故調査報告書に不備があっても、その内容について同機構が問い合わせる権限はなかった。

 (3)については、2015年度に続き、2016年度も複数のセミナーを予定している。うち一つが「支援団体統括セミナー」。各都道府県における医療事故調査を統括する指導者の養成が狙いで、都道府県医師会の医療安全担当役員、大学あるいは基幹病院の医療安全担当の医師と看護師という、各都道府県3人ずつ対象にする予定。

 日本医療安全調査機構理事長の高久史麿氏は、今回の見直しで、一歩進み、より積極的な医療安全向上に向けた取り組みにつながると期待したものの、一方で、「まだ本当は不満」と指摘。(1)の中央協議会については、参画ではなく、同機構が「企画すべき」としたほか、(5)では確認ではなく、場合によっては訂正を求めることができるようにすべきとし、「一気には難しくても、将来的にはそこまで行かないと、医療事故調査・支援センターが機能しない」との考えを述べた。

センター調査依頼、7月は既に5件

 20日の運営委員会では、2015年10月から半年間の医療事故調査制度の詳細が報告された。同制度については、これまで月次で報告されていたが、病床規模別の医療事故報告、院内事故調査の現状などが明らかになっている。以下は、その一部だ。

 さらに7月分についても、19日までの実績も説明された。特徴は、センター調査の依頼が増えたこと。6月までは9カ月間の累計では計4件だったが、7月には既に5件の依頼が来た。内訳は医療機関からが2件、患者遺族からが3件。制度開始からの累計では、医療機関3件、患者遺族6件で合計9件。「医療機関からは、第三者による専門的な検証を行ってほしいという真摯な依頼。患者遺族からの依頼は個々の事例によって違うが、まだ院内調査が終わっていないものもある。院内調査ではなく、病院自体に対する不信感でセンター調査を依頼した例が、中に含まれているのではないか」(木村氏)。

◆医療事故の相談状況(2015年10月から2016年3月)

・相談者別:医療機関62.3%、遺族23.6%、支援団体7.2%など。
・相談内容別:医療機関の場合は、897件中、238件が「医療事故報告対象の判断」。うち詳しい情報の提供を行い、センターでの合議を希望したのが51件、合議なしが187件。合議の結果、「報告を推奨すると助言」19件(うち実際に報告15件)、「複数の考え方を伝えた」21件(同4件)、「報告対象とは考えにくいと助言」11件(0件)。
 遺族等からの場合は、251件中、205件が「医療事故報告対象の判断」。うち「制度開始以前等の事例」として制度の対象外が172件。

◆医療事故の報告状況(2015年10月から2016年3月)

・病院種別:187件中、基幹型臨床研修病院が100件(53.5%)、大学病院が21件(11.2%)。
・病床規模別:500床以上の病院のうち16.7%の施設が報告、一方、500床未満の病院では1.2%、診療所では0.01%。
・地域別:1万床当たりの報告件数は、最大が関東信越で1.67件、最小が東北で0.39件。
・患者死亡から医療事故報告までの期間:平均21.9日、中央値16日、最短2日、最長146日

◆院内事故調査の状況(2015年10月から2016年3月)

・医療事故報告から院内調査結果報告までの期間:平均65.1日、中央値59日、最短5日、最長148日
・解剖やAiの実施状況:49件中、解剖のみ実施7件(14.3%)、解剖とAi実施4件(8.2%)、Aiのみ実施13件(26.5%)、残る25件は実施なし、もしくは記載なし。
・調査委員会の設置の記載:49件中、記載あり39件。うち外部委員参加が26件(66.7%)、参加なしが7件(17.9%)、残る6件(15.4%)は記載なし、もしくは不明。
・再発防止策の記載:49件中、記載あり43件(87.8%)、「防止策なし」と記載あり3件(6.1%)、記載なし3件(6.1%)。
・当該医療従事者の意見記載:49件中、意見の記載あり3件(6.1%)、「意見なし」と記載あり9件(18.4%)、記載なし37件(75.5%)。
・遺族の意見記載:49件中、意見の記載あり15件(30.6%)、「意見なし」と記載あり10件(20.4%)、記載なし22件(44.9%)、その他(遺族がいない、遺族が説明を希望しなかった場合)2件(4.1%)。

 これらの状況に対し、医療事故報告の判断や、院内事故調査の在り方・報告書作成について標準化したり、ガイドライン作成を求める声が相次いだ。

 NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、同センターへの相談事例では、医療機関が「過失の有無がはっきりしないので、報告しないと決めた」と説明したり、事故の当事者が院長に相談したところ、「遺族が不信感を持っていないのに、報告して寝た子を起こすのか」などと言われたケースがあるとし、「報告すべきものが報告されていない事例が複数ある。正しい理解が広まっているとは言えないのではないか」と問題提起した。

 全日本病院協会常任理事の飯田修平氏も、「全日病でも、医療事故調査制度に関する研修を実施しているが、(医医療事故調査制度に関する)指針があちこちから出ており、どれを信用していいか分からない状況」と述べ、中には法律や省令通知と異なる解釈をしているケースもあるとし、この現状を解決することが必要だとした。

 日本病理学会関東支部長の内藤善哉氏は、院内事故調査報告書では、委員会設置の有無自体記載されていないなど、「内容に不備が多い」と指摘、今後、日本医療安全調査機構のワーキンググループで、報告書の作成マニュアルを策定することになっているものの、現状で不備があった場合の対応を質した。

 これらの意見に対し、日本医療安全調査機構専務理事の田中慶司氏は、医療事故に該当するか否かの判断については、「(報告として)上がってきたものはいいが、上がってこないものは把握しにくい」とし、「支援団体等連絡協議会などの場で、意見交換を行い、取り扱いに差が出ないようにしていきたい」と答えたほか、支援団体などへの研修の場で標準的な取り扱いができるようにしていくとの方針を示した。

 さらに田中氏は、院内事故調査報告書については、これまでは何も対応できなかったものの、6月24日の制度改正で、医療機関の了解が得られれば、確認・照会等ができるようになると説明。医療機関に対し、どのように確認等を行っていくかについて、今後、同機構の再発防止委員会で検討していく。

「事故報告の25%がセンター調査」と仮定

 20日の運営委員会では、2016年度の収支予算書の説明もあった。質問が出たのは、収入で「医療機関・患者遺族からの収益」として、988万円が計上されている点について。

 医療事故調査制度では、医療事故調査・支援センターに事故調査を依頼する場合、医療機関からは10万円、患者遺族からは2万円の費用負担を求める。山口氏は「センター調査依頼の数がかなり多いように思う。何件、想定しているのか」と質問。

 機構事務局は、「医療機関からの依頼が91件、患者遺族からの依頼が39件、合計130件あると想定している」と説明。2015年10月から2016年1月までの4カ月間の事故の報告件数を平均化し、それを1年分に換算、さらに制度スタートから間もないことから報告件数が少ないと考えて1.5倍し、2016年度の推定事故報告件数を513件と推計。そのうち25%がセンター調査になると仮定した数字が130件だ。25%の明確な根拠はなく、2015年度の事業計画も同様に計算している。ただし、2015年10月から7月19日までのセンター調査依頼は、前述のように9件にとどまる。



https://www.m3.com/news/iryoishin/443447
シリーズ: 真価問われる専門医改革
「1年延期」の判断を尊重、全国医学部長病院長会議
新井会長、新専門医制度で「6つの要望」

2016年7月21日 (木) 橋本佳子(m3.com編集長)

 全国医学部長病院長会議会長の会長の新井一氏は、7月21日の定例記者会見で、日本専門医機構が新専門医制度の1年延期を決定したことについて、「機構の判断を尊重したい」と述べ、「今の機構は、より良い専門医制度を作っていく意味では、正しい方向に向かっていると思うので、全面的に支援をしていきたい」との方針を示した。同機構の理事会は7月20日、1年延期し、2018年度を目途に19の基本診療領域一斉に新制度を開始すると決定した(『新専門医制度、全19領域とも「1年延期」へ』を参照)。

 新井会長は、「専門医制度は、日本の医療レベル向上に必須のシステム」と述べた上で、今後の専門医の在り方について、以下の6つが求められるとした。

 第一として、医師は19の基本診療領域のいずれか一つの取得が望ましいことを挙げた。また新専門医制度で採用された研修プログラム制については、「非常に理にかなったものであり、ぜひ堅持してもらいたい」と述べた。

 第二は、日本専門医機構と各学会とのあるべき関係について。専門研修プログラムの構築、専門医の認定や更新などを責任を持って行うのは各学会であり、機構は専門研修プログラムの運用調整などの役割を担うとし、「機構と学会が協同してより良いシステムを作ってもらいたい」(新井会長)。

 第三は、地域医療への影響。各学会とも、地域医療に対していろいろな役割を果たしてきたものの、それに加えて、地域で関係者が集まる協議の場で調整しつつ、医師の偏在につながらないようにすることが求められるとした。

 第四が、研究マインドを涵養する重要性であり、大学院と専門医取得のキャリアが両立できる専門医制度にすること。第五として、医師の多様なキャリアを可能にする制度にすべきと指摘し、女性医師の出産や育児、キャリアの途中での進路変更、留学などにも柔軟に対応できる制度を求めた。第六は、総合診療専門医について。「家庭医、病院総合診療医など、いろいろな概念が包含されている。総合診療専門医の位置付けを明確して、内科専門医やサブスペシャルティとの関係を十分に整理してもらいたい」(新井会長)。

 会見には、全国医学部長病院長会議の顧問であり、日本専門医機構理事長の吉村博邦氏も出席、以下のようにコメントした。「大学の立場を考えると、医学研究の推進という役割があり、専門医が医学研究に携われるような専門研修プログラムを考えていきたい。また新専門医制度は、大学病院などが基幹病院となり、地域の病院と連携しながら研修施設群を形成するのが特徴だが、『大学の復権につながるのではないか』などと問題視されている。大学病院だけが基幹施設になるわけではないが、大学病院はそれなりの役割を果たしていき、その中で、透明性を持って、地域の協議の場で調整しながら、大学復権にならないよう、かつ質の高い専門医を養成していきたい」。


  1. 2016/07/22(金) 05:41:56|
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