Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月19日 

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160719-OYTET50006/
「助かるはずの命」知り会社員から転身、43歳で医師に…志願して離島に赴任
2016年7月19日 読売新聞


 都会から離れた遠隔地での医師不足が進む中、離島医療のあり方が課題だ。鹿児島県薩摩川内市沖の東シナ海に浮かぶ 甑島こしきしま 。その最南端にある下甑島は診療所の再編問題で揺れている。島の診療所を訪ね、現状を探った。(鹿児島支局薩摩川内通信部 白石一弘)
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■住民に寄り添う

 鹿児島県本土と下甑島を結ぶ長浜港のそばに長浜診療所があった。目の前は見渡す限りの青い大海原。1765平方メートルの広い敷地に、鉄筋コンクリート平屋の建物がぽつんと立っている。

 室内では所長の早川忠男さん(67)と3人の女性看護師が診察にあたっていた。診療は午前9時から。受付の紙に自分で名前を書き、順番を待つ。院内放送で受付番号を呼ばれる大きな病院と違い、どこか懐かしさを感じる光景だ。

 近所の女性が訪れた。血圧などが気になって受診に訪れたのだという。

 「それじゃあ、血圧を測りましょうか」。窓から太陽の光が降り注ぐ中、早川さんが優しく語りかけた。女性の左腕に「カフ」と呼ばれる専用の袋を巻き、空気を送り込んだ。血圧を測るだけでなく、聴診器を当て、血液の流れにも耳を澄ませている。「どこも異常はないですよ」。女性は、ほっとした表情を浮かべた。

 島では昨秋、三つの診療所を一つに再編する計画が持ち上がった。薩摩川内市によると、手術や入院もできる診療所に集約し、診療所がなくなる地区は出張診療で対応する内容。これに対し、全島民約2400人の3分の1を超える署名が提出され、市は計画をいったん撤回。しかし、離島での医師の確保は容易ではなく、今後、計画が再浮上する懸念はずっと残ったままだ。

■次々と命を落とす人々…人生観を変える

 早川さんは異色の経歴の持ち主だった。

 東京都出身。大学を出て石油関連会社に就職。32歳の頃、青年海外協力隊として渡ったザンビアの病室で、 脆弱ぜいじゃく な医療態勢で命の危機に直面する現地の人を目の当たりにしたという。「やせ細り、なすすべもなく、次々と命を落とす姿を見て人生観が変わった」

 「医療を施せば助かるはずの命」を知り、鹿児島大医学部に入学。43歳で医者になった。海外で勤務するなどして経験を積み、帰国。「医療に困っているへき地で働きたい」。無医地区を調べて担当者と連絡を取り、2010年4月、60歳で長浜に赴任。「ザンビアとは比較にならないとしても、日本にも医療が必要な人がいるはず」。早川さんの思いに胸が熱くなった。

■乏しい医療機材

 診察室には、ベッド1台と机には電子カルテを入力するパソコンがあった。急患を入院させたり、手術したりする機材はない。

 島では今春、長浜港で50歳代の男性が突然倒れ、ドクターヘリで鹿児島市内の病院に救急搬送されたものの、間に合わなかったという。死因は心筋梗塞。診療所のすぐそばだった。「医療態勢がしっかりしていれば……」。早川さんは悔しがったが、島民の信頼は厚い。

 午前の診察が終わると、午後には地区の往診に出かけることもある早川さん。「体が続く限り頑張りたい」。島民の命と健康を預かる覚悟を感じ取り、診療所を後にした。

          ◇

甑島 =鹿児島県の薩摩半島から西方へ約30キロ。薩摩川内市沖の東シナ海に浮かぶ上甑、中甑、下甑の3島で構成する。全長約35キロ。太陽が海から昇り再び海に沈み、様々な色に光り輝くことから、かつては「五色島」と呼ばれたこともある。下甑島・手打地区の診療所では離島医療を描いた漫画「Dr.コトー診療所」のモデルとなった瀬戸上健二郎さん(75)が医師を務めている。

国内の有人離島、医師不在41・1%/
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 公益財団法人・日本離島センターがまとめた「2014離島統計年報」によると、離島振興法など関係4法が指定する離島のうち、2013年4月1日現在で1人以上が暮らしている国内の有人離島は299か所。

 このうち、医療施設がある離島は189か所(63・2%)、施設がないのは110か所(36・8%)。また、医療施設がある離島の中で、非常勤を含めて医師がいるのは176か所(58・9%)。残る123か所(41・1%)では、事実上の“医師不在”という状況だ。

 ただ、近年はドクターヘリの整備が進み、離島から本土に搬送されるケースが増えているという。厚生労働省救急医療係によると、10年が400件、12年が630件、14年が836件となっている。



http://www.medwatch.jp/?p=9713
2016年度の臨床研修医は8622人で過去最多を更新、6割弱が地方採用―厚労省
2016年7月19日|医療・介護行政をウォッチ

 今年度(2016年度)の初期臨床研修医は、医学部入学定員増の影響もあり、過去最多の8622人となり、また東京など6都府県を除く道県での採用割合も過去最高の57.4%となった―。

 このような状況が、厚生労働省が14日に公表した2016年度の「医師の臨床研修医の採用実績」から明らかになりました(前年度の状況はこちら)(厚労省のサイトはこちら)。

ここがポイント!
1 医学部入学定員増を受け、2016年度の研修医採用実績は過去最多の8622人
2 都道府県別の研修医定員設定により、地方での研修医採用が57.4%に増加
3 臨床研修病院(大学病院以外)での研修割合、59.5%に上昇


医学部入学定員増を受け、2016年度の研修医採用実績は過去最多の8622人

 2004年度から新たな臨床研修医制度がスタートし、臨床現場に立つ医師には、すべて2年間以上の初期臨床研修を受けることが必修化されました。「例えば◯◯科の医院を継ぐのであれば、◯◯科以外は知らなくて良い」という事態を避け、医師が将来専門とする分野にかかわらず、基本的な診療能力を身につけることができることを目指したものです。

 新臨床研修制度は、▽研修医が研修先病院の希望を出し、公的なマッチング機構で研修先病院を決める ▽基本的な診療能力を身につけるために、複数の診療科での研修を必須とする―ことなどが特徴です。もっとも、現場の実態とマッチさせるために、新制度の見直し(都道府県別の募集定員に上限を設ける、小児科、産婦人科、精神科に重点を置いたプログラムを認めるなど)も行われています。

 臨床研修医がどれだけ採用されたのかを見ると、2016年度には8622人で過去最多となりました。前年度にくらべて378人増加しています。この背景には、文部科学省と厚労省がまとめた「地域の医師確保対策2012」に基づく、医学部の定員増の影響があります。確保対策2012では、2019年度まで医学部の定員増を継続することとしているので、研修医の採用数もしばらく増加が続くことになるでしょう。

都道府県別の研修医定員設定により、地方での研修医採用が57.4%に増加

 臨床研修医の採用状況を都道府県別に見ると、大都市を抱える東京・神奈川・愛知・京都・大阪・福岡の6都府県の割合は2016年度には42.6%となりました。逆に、これら6都府県を除く道県の割合は過去最高の57.4%となっています。新制度スタート前の2003年度には、6都府県の割合が51.3%だったので、12年間で8.7ポイント下がった計算になります。

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6都府県(東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡)とそれ以外の道県の採用実績を見ると、割合、採用人数ともに「それ以外の道県」で増加しており過去最高となっている

 この背景には前述の「都道府県別の募集定員上限」設定があります。これまで「大都市集中」という批判を受けたために、定員を設定したとこと、「地方へ分散」という流れが生まれています。将来的にも、都市部においては上限を厳し目に設定する方向で議論が進んでおり(関連記事はこちら)、地域偏在の是正に向けて効果を上げていくものと考えられます。

 臨床研修医の採用実績が増えた上位5県、および今年度の採用人数を見ると、(1)秋田県84人(前年度に比べて35.5%増)(2)広島県174人(同29.9%増)(3)佐賀県65人(同27.5%増)(4)和歌山県102人(同24.4%増)(5)奈良県102人(同20.0%増)―となっています。

 厚労省の分析によれば、「臨床研修を受けた都道府県で、研修修了後も勤務する医師が多い」ことが分かっており(関連記事はこちらとこちらとこちら)、地方部で臨床研修を受ける医師の増加は、長い目で見て医師の地域偏在是正に相当の効果があると期待できます。

臨床研修病院(大学病院以外)での研修割合、59.5%に上昇

 新制度の実施前(旧臨床研修制度)は、卒業した医学部の附属病院で研修を受ける医師が圧倒的で、大学病院での研修が7割超を占めていました。

 しかし、新制度では「研修医が研修先病院の希望を出せる」ため、大学病院以外の臨床研修病院で研修を受ける医師が増加しました。「大学病院で研修を受ける医師」と「臨床研修病院で研修を受ける医師」の比率は、新制度がスタートした2004年度には55.8対44.2になり、翌05年度には49.2対50.8と、臨床研修病院で研修を受ける医師のほうが多くなりました。研修医の受け入れを希望する病院が、特色ある研修プログラムを準備したり、研修医に厚い待遇を用意したりした努力の現れと言えます。

 その後、11年度からは臨床研修病院で研修を受ける医師の割合がさらに増加傾向を強まり、2016年度には今年度は40.5対59.5となっています。もっとも、医学入学定員増を受けて、大学病院でも採用数そのものは前年度に比べて増加しています。

大学病院と臨床研修病院(大学病院以外)の採用実績を見ると、臨床研修病院の採用が増加していることが分かる
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http://www.jiji.com/jc/article?k=2016071900598&g=soc
手術後後遺症で逆転敗訴=一部賠償命令の二審破棄-最高裁
(2016/07/19-16:45)時事通信

 東京都台東区の病院で脳の外科手術後に後遺症が残った新潟市の男性(48)が、病院側に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は19日、一部賠償を認めた二審判決を破棄し、請求を棄却した。男性側逆転敗訴が確定した。
 判決によると、男性は2009年に手術を受けた直後に脳内出血し、手足の筋力が低下するなどして日常生活で介護が必要な状態となった。男性側は、医師らは出血の兆候が出た時点でコンピューター断層撮影(CT)検査をすべきだったのに怠ったとして提訴した。
 一審新潟地裁は請求を棄却。しかし、二審東京高裁は医師が注意を怠ったと認定した上で、男性は適切な治療を受けられず精神的苦痛を受けたとして、5000万円の請求に対して1100万円の賠償を命じた。
 これに対し第3小法廷は「患者が適切な医療を受けられなかった場合に医師が責任を負うかどうかは、その行為が著しく不適切な事案に限って検討する」と指摘。男性の場合は医師が経過観察を続けるなどしており、不適切なケースに当たらないと判断した。 



https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160719-OYTET50052/
「治療ミスで後遺症」…1億2000万円賠償、病院側に支払い命令
2016年7月19日 読売新聞

 藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)で食道がんの手術を受けた際、医師が適切にビタミンB1を投与せず、運動障害などの後遺症が残ったとして、同県知多市の男性(60)が病院を運営する藤田学園らに約1億6600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、名古屋地裁であり、朝日貴浩裁判長は約1億2000万円の支払いを命じる判決を言い渡した。


 判決によると、男性は2009年7月に食道がんの手術を受けた後、めまいや意識障害などの症状を訴え、8月にビタミンB1の欠乏で生じる「ウェルニッケ脳症」と診断された。医師が縫合不全を疑い、男性は手術後絶食を指示され、輸液で栄養を摂取していたが、同病院は1か月余りビタミンB1を投与しなかった。男性は退院後も症状が進行。歩行が困難となり、日常生活のほとんどに介助が必要となった。

 同学園は、脳症の診断後にビタミンB1を大量投与し、退院までに症状は改善したと主張したが、判決では、「男性がめまいなどの症状を訴えた後すみやかに投与せず、後遺症が残った」とし、原告の請求を認めた。

 同学園は「判決内容を検討した上で、今後の対応を考えたい」とした。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/49217.html
効率的な地域連携はICT活用で実現する- 栃木県「どこでも連絡帳」の事例報告
2016年07月19日 16時00分 キャリアブレイン

 地域包括ケアシステムを構築する上で重要なのが、地域の多施設・多職種連携をいかに強化するかということ。効率的な連携を助けるICT(情報通信技術)活用は、そのカギの一つとなっている。こうした中、日本在宅医学会大会・日本在宅ケア学会学術集会合同大会(16-17日、東京都)のランチョンセミナーでは、専用SNSを用いた医療・介護連携の先進事例として知られる栃木県の状況が報告された。【烏美紀子】

 栃木県では2014年から、在宅にかかわる多職種間で情報共有するための県内統一ツール「どこでも連絡帳」を運用。完全非公開型の専用SNSで、日本エンブレース社の「メディカルケアステーション」を採用している。セミナーでは、県医師会の長島公之常任理事が、これからの地域連携に求められるネットワークシステムや、「どこでも連絡帳」の活用状況について講演した。

 日本医師会の医療IT化委員なども務める長島氏は、「(多職種・多施設にまたがる)情報をつなぐのを最も得意とするのがICTだが、ICTなら何でもいいというわけではない」と指摘。(1)安全(2)簡単かつ低コストで使える(3)広域でつながる-が必要とした上で、「多職種連携にとって役に立つ機能は、コミュニケーション機能。コミュニケーションに特化したシステムであるSNSが医介連携には最適だ」と述べ、これらの条件をクリアする「どこでも連絡帳」の特性を説明した。

 また、患者ごと、地域の多職種グループごとなど、任意に設けたタイムライン上で参加者がきめの細かいやりとりをする「どこでも連絡帳」の使い方を紹介し、「患者訪問時の状態を報告し、提案や助言を出し合う『全員参加の毎日カンファレンス』ができる」「多職種が集まる勉強会は月1回しか開催できないが、(どこでも連絡帳の)グループで毎日のように情報交換、交流をしている」と、地域連携の強化・効率化に役立っていることを報告。さらに、患者・家族も参加するタイムラインで自ら情報を出してもらったり、災害時の連絡網としても活用したりしていると述べた。

 長島氏は、「ICTは単なる道具の一つ。急ぎの連絡は電話を使ったり、デリケートな問題は対面で話したりといった使い分けが必要だ。基本となる『顔の見える関係』ができていないところにICTを導入しても絶対にうまくいかない」と指摘。しかし、地域包括ケアシステムを構築すべき期限は迫っているとして、「顔の見える関係づくりとICT導入を同時に進めていくのが良いだろう」との見方を示した。

 ランチョンセミナーは日本エンブレース社が主催。メディカルケアステーションは現在、全国170カ所の医師会などで使用されており、ほかに豊島区医師会の土屋淳郎理事からも活用事例の報告があった。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/54376/Default.aspx
厚労省3局長 高額薬剤問題で製薬業界と意見交換 「最適使用推進ガイドライン」策定へ
2016/07/20 03:52 ミクスオンライン

厚生労働省は7月19日、保険、医政、医薬・生活衛生の3局長出席のもと、「革新的医薬品の最適化使用方策についての製薬業界との意見交換会」を東京都内で開催し、高額薬剤問題について製薬業界側から意見を聞いた。抗がん剤・オプジーボに端を発した高額薬剤問題では、薬価引き下げだけでなく、使用できる医師や施設、患者を絞ることで最適使用をうながす「最適使用推進ガイドライン」の策定に向けた議論が進められている。この日の会合では、製薬業界側から適正使用を推進する方向性については肯定的な意見が出された。厚労省は7月27日開催予定の中医協に、ガイドラインの概要を提示する方向で調整を進めている。

この日の会合には、厚労省からは鈴木康裕保険局長、神田裕二医政局長、武田俊彦医薬・生活衛生局長の3局長らが出席。製薬業界からは、日本製薬工業協会、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)の薬事担当者などが参加した。

◎患者要件、医師要件、施設要件明確化で最適使用を推進

今年6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2016(骨太方針)に、医療費適正化の施策の一環として「革新的医薬品等の使用の最適化推進」が盛り込まれた。これを受け厚労省は、施策の具体化に向け、来週27日に開く中医協に初めてガイドラインの考え方を示す方針。2017年度予算の概算要求に向けて議論を本格化させる。

革新的医薬品の中には有効性の発現の仕方や安全性プロファイルが既存の医薬品と大きく異なることがある。最適使用推進ガイドラインの詳細はまだ明らかではないが、必要性の高い患者の選択基準や医師要件、施設要件について個別医薬品の承認時にPMDAと関係学会が協力しながら内容を定める考え。患者要件については、薬剤の使用年齢の上限を定める一部意見も臨床現場から示されるが、現実的には難しいとされている。

中医協での議論を踏まえ、まずは抗がん剤・オプジーボ、高コレステロール血症治療薬・レパーサについてガイドラインを策定する方針。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/ishiyama/201607/547595.html
連載: 石山貴章の「イチロー型医師になろう!」
全分野を満遍なく! 総合医の武器は考えること

石山 貴章(魚沼基幹病院)
2016/7/20  日経メディカル

 米国においては、我々ホスピタリストは既に一定の地位を獲得している。というより、もはやホスピタリストなしで回る病棟は、米国にはないのではなかろうか。重要度に関する比重の違いはあるにしても、いまや大学病院においてもホスピタリストグループは存在し、実地臨床および教育に腕を振るっている。

 一方日本では、医局制度に伴う従来の専門医主導型のシステムがどうしても大きな壁になる、というのが帰国以来の私の印象だ。現状では、少なくとも大学病院あるいはその類似病院においてはよほど大きな変革がない限り、米国型ホスピタリストシステムが伸びるのは難しいであろう。

 ただ、Clinical Reasoning(日本では「臨床推論」とも訳される)を最も楽しむためには、全ての内科疾患を受け入れて管理する米国型ホスピタリストシステムが最適だという私の信念は、揺るがない。むしろ、システムの弊害のため、こんなに楽しいことが見過ごされている現状は、大変に残念である。


 前回最後で、Illness Scriptという言葉を少し述べた。「疾患のシナリオ」と訳せるであろうこの言葉は、Clinical Reasoningの概念の中でも重要なキーワードの1つだ。まずは、このIllness Scriptに関して、もう少し述べてみたい。

 個々の医師は皆、意識的あるいは無意識にそれぞれの疾患に対しての「シナリオ」を、その頭の中に形作っている。それはその医師の経験、あるいは学んできたことから形作られ、その臨床症状や臨床所見、画像、危険因子、病態生理といったものから、各々の疾患(Illness)は頭の中で分類されている。

 ケースプレゼン、あるいは実地の臨床でこの分類に沿う情報を獲得した際、我々の頭の中では無意識に、この「シナリオ」が引っ張り出されることとなる。これは「全自動的」であり、診断にはその瞬間、なんの努力も必要ない。これが「Non-analystic reasoning」(Heuritic approachともいう)である。

 例えば、帯状疱疹の皮膚所見。これは一度頭に入ってさえしまえば、次に目にした際にはなんの努力もいらずに診断が可能となる。つまり、このScriptが多く頭に入っていればいるほど、この「努力を必要としない」診断が可能となるわけだ。できるだけ多くのIllness Scriptを、頭に詰め込みたい。

 さてその際、具体的には以下の4つを意識する。

(1)Common diseaseのTypical presentation
(2)Common diseaseのAtypical presentation
(3)Uncommon diseaseのTypical presentation
(4)Uncommon diseaseのAtypical presentation

 医学生や研修医には何よりもまず、最初の2つを押さえてほしい。(3)も、重大な疾患を見逃さない上で、大事である。その上で、最後に(4)を意識する(地方会で発表するようなケースが、これに相当する)。

 地方会での発表も大事だとは思う。だが、それよりも頻度の高いコモンな疾患を、発症様式が典型的であれ非典型的であれ見逃さないことの方が、臨床医としてはよほど大事だと私は思う。日々の勉強も、ぜひこれを心掛けたい。そしてその際に大切なこと、それは「全ての分野を満遍なく」ということだ。
 
専門医だらけの病院は4番バッターだらけの野球チームと同じ
 専門を持つ医師たちは、その思考がどうしても自分の専門分野を軸足に回るようだ。各サブスペシャリティーの専門医が参加する中で、救急外来からの入院患者に関するカンファに参加していると、この傾向ははっきりと見て取れる。そして、これはある程度仕方がないとも思う(逆に言えば、専門医はそうでなければ困る)。

 しかし、真っさらな状態で患者を受ける救急医の立場では、これは困る。ましてや救急外来を経て患者を受けるホスピタリストは、ファーストタッチをした医師の診断、カルテ記載、そして直接のコメントから、どうしてもバイアスを受ける。我々ホスピタリストは、意識してこれらのバイアスを避けなければならないのだ(その意味で、救急医やホスピタリストは「その道(ファーストタッチ医)の専門医」であると私は思う)。なお、こういったバイアスもDiagnostic errorの重要なファクターとなる。これは、また別の機会に述べよう。

 救急医やホスピタリストの例を出した。どちらも患者を最初の段階で診る医師であり、バッターの打順で言えば1番バッター、2番バッターとなる。本連載のタイトル「イチロー型医師」、その意味するところの1つが、これだ。我々総合医は、常にヒットで出塁する(患者の診断に迫る)イチローを見習い、優秀なリードオフマン(Diagnostitcian:診断医)を目指す必要がある。なお、診断にせよ治療にせよ、ここでケリがつかない場合に出張ってもらうのが各専門医であり、これはクリーンナップの役割となる。

 例えば、内視鏡やカテーテルといった手技(Procedure)が各専門医の武器であるように、我々Diagnostiticianの武器は「考えること」だ。これは、“Thinking is the procedure.”という私の好きな一文で、ズバリと表現されている。Procedureである以上当然スキルがあり、それを学んでいく必要がある。

 このリードオフマンを目指すか、それとも3番4番といったクリーンナップを目指すか。これは本人の適性と好みであろう。ただ、かつてどこかの金満球団が行ったように、4番バッターだけが集まった打線は、機能しない。各専門医だけが育っていく日本の現システムを見ていると、このかつての金満球団を思わずにはいられない。限りある医療資源と時間とを、効率よく用いて患者を診ていくためには、各バッターの役割分担とその適切なバランスが、どうしても必要になるのである。この点で、米国のシステムは非常によく参考になる。

 本連載は、あくまでリードオフマンである自分の立場を中心に描かれている。ただ、患者を初めて受け入れた時に行う基本に関しては、その打順による違いはないはずだ。違いは、カバーする範囲とその深さ、であろう。

 次回は、その基本の1つ(そして最も重要であると私が信じる)、「病歴聴取」に関して述べてみたい。
 
石山貴章(魚沼基幹病院総合診療科部長)●いしやま たかあき氏。 1997年新潟大学卒業後、同大外科学教室入局。2002年米ワシントン大学セントルイス校リサーチフェローとして渡米。St.Mary's health center内科レジデント、ホスピタリストを経て、2015年から現職。



https://www.m3.com/news/iryoishin/436158
シリーズ: m3.com全国医学部長・学長アンケート
「学生全員にノートPC貸与」「アウトカムベースカリキュラム」◆Vol.9-1
今年度、力を入れる取り組み

2016年7月19日 (火) 高橋直純(m3.com編集部)

全国医学部長・学長アンケート

Q 今年度の貴医学部・医科大学が力を入れる取り組みなどがございましたら、ご紹介ください。

・当面は国家試験の合格率向上と分野別認証評価受審に向けての学内整備に明けくれるでしょう。(岩手医科大学医学部長 佐藤洋一氏)

・シラバスに則って一年生の教育を進めている。授業の効率化や講義資料の有効活用、情報教育の促進を目的として、学生全員にノートパソコンを貸与した。5月初めから早期体験学習を開始して、学生の動機付けを行っている。授業を受ける中で学生が感じた充実感、問題点等にについて、授業アンケートを実施する。また教育実施の過程で生じた運営上の問題点を把握する。さらに、教員による授業自己評価を実施する。これらを本年度終盤に分析し、来年の1、2年生のシラバスに反映させ微調整を行う。(東北医科薬科大学医学部長 福田寛氏)

・大学の個性を伸ばし、差別化する⇒ 東京の大学や病院に行きたがる医師を引きつける⇒ その結果として、医師数の増加はもちろん、本学で研修する医師の実力を高める(これは地方の大学の皆が考えていることだと思いますが…)。(福島県立医科大学医学部長 鈴谷達夫氏)

・(1)新カリキュラム(分野別評価対応)による1年生の教育を開始、(2)研究医コ-ス選択者のプログラム開始、(3)地域枠学生のメンタ-制度の運用開始、(4)新専門医制度への対応、(5)国際化推進に向けた具体的検討の開始。(埼玉医科大学学長・医学部長 別所正美氏)

・医学系・歯学系全ての多職種間の融合教育をPBL(Problem-based learning問題基盤型学習)、臨床実習に取り入れる等、医療系総合大学の特性を活かした連携融合教育を推進する。また、総合的な臨床推論能力・診断能力修得のための教育を強化し、探究心を持って診療に取り組むととともに、地域でのプライマリ・ケアを含めた地域包括医療にも貢献できる人材を育成する。さらに、学士課程と大学院課程のカリキュラムの連携性を高める。 (東京医科歯科大学医学部長 江石義信氏)

・コンピテンシ―とカリキュラムの連結を精査し、その結果を評価する仕組みの整備を目指しています。(昭和大学医学部長 久光正氏)

・(1)本格的なアウトカムベースカリキュラムの策定準備、(2)一貫性のある外国語教育によるグローバル人材の育成、(3)研究支援体制の強化(東京慈恵会医科大学学長 松藤千弥氏)

・今年度の新入生より、グローバルスタンダードに基づく新カリキュラムを導入した。新カリキュラムは「正しく判断できる」、「正しく行動できる」、「生涯にわたって省察し実践する基礎ができる」を基軸とし組立てられている。(聖マリアンナ医科大学医学部長 加藤智啓氏)



https://www.m3.com/news/iryoishin/436159
シリーズ: m3.com全国医学部長・学長アンケート
「キャリアパス創造センター」「150通りの臨床実習」◆Vol.9-2
今年度、力を入れる取り組み

2016年7月19日 (火) 高橋直純(m3.com編集部)

全国医学部長・学長アンケート

Q 今年度の貴医学部・医科大学が力を入れる取り組みなどがございましたら、ご紹介ください。

・卒前から卒後、特に初期臨床研修から新専門医取得までを、学生時代から継続したキャリアパスを構築するために、「キャリアパス創造センター」の設立を計画している。(富山大学医学部長 北島勲氏)

・「臨床実習マネージメントシステム(BS-LMS)の開発について」 医学教育の質の向上には、教育資料の充実が不可欠であり、その中心は自ら体験した実症例であることは言うまでもない。福井大学医学部では、平成20年から画像教育を中心にした教育システムを開発・運用しており、基礎から臨床、メディカルスタッフまで包括して教育を支援するIT環境が稼働している。現在、基礎医学実習・臨床実習・貴重症例100選・胸部レントゲン読影教育など教育資料が蓄積され活用されている。
 また、医学部国際認証へ対応するため、病院電子カルテと連携して動作する臨床実習マネージメントシステム(BS-LMS)を開発中で、グループ管理・実習スケジュール・担当患者管理・カルテ記載・オーダ発行(シミュレーション)・レポート提出・評価の機能を実装する予定である。
 この二つのシステムは連携して動作し、学生が臨床実習で参考にすべき類似の過去症例や資料(電子書籍)を教育システムが提供し、さらに学生が臨床実習で経験した症例を「学生症例データベース」(学生の為の症例DB)に蓄積し、先輩から後輩へと重要な医学知識を引き継げる環境も考えられる。現在は、放射線医学と病理・解剖学を中心に教育システムを活用しているが、今後、産婦人科・消化器外科・脳外科・乳腺領域へも活用の範囲を広げる予定である。(福井大先進イメージング教育研究センター長 木村浩彦氏)

・150通りが選択できる臨床実習の実施(信州大学医学部長 池田修一氏)

・(1)MEDCを中心とした医学教育、(2)ADAMSによる大学院生の英語教育、(3)Translational Researchの推進。(岐阜大学医学部長 湊口信也氏)

・(1)多職種連携教育を基盤とした地域包括ケアの学習・実習、(2)サージカルトレーニングセンターの開設(本年12月を予定)、(3)MD-PhDコース(未来プランを策定し、発表済)、(4)ADAMSによる大学院生の英語教育。(名古屋市立大学医学部長 浅井清文氏)

・愛知医科大学の『情緒と品格を備える医療人を育成する』という理念を具現化するために、教職員および学生一人ひとりが当事者意識を持って教育・研究・診療に取り組む。(愛知医科大学医学部長 岡田尚志郎氏)

・5つの教学方針(「学長室のHP OPEN MIND」に詳述しております)
 1.Innovation
   研究組織改革、教育研究戦略会議の設置など
 2.Globarization
   国際交流先を増やし、国際認証を見据えた単位互換など
 3.Social Contribution
   医師・看護師国家試験の高い合格率の維持
   建学の精神に基づく高知県・兵庫県への医師派遣事業と、多職種教育としての「地域医療」を進めることなど
 4.Translational Research
   5つの研究拠点の構築、科研費等の公的外部研究資金の獲得など
 5.Open Mind
   「学長室のHP OPEN MIND」などでの学長の活動状況の公表など(大阪医科大学学長 大槻勝紀氏)

・近畿大学医学部は2023年4月に南海電車泉北線泉ヶ丘駅前に新築移転する。新キャンパス開設は7年後ではあるが、あまり時間はなく、現在、基本計画を策定中で、今年中に基本設計に入る予定である。本学は大阪狭山市の附属病院と堺市にある堺病院を有しており、両者を統合して移転する事を計画している。移転後は高度急性期医療を提供する南大阪地域の中核病院となる。また、医学部が移転するだけでなく、看護学科をはじめ、いくつかの医療系学科を含む学部の併設も考えている。これらに堺市の泉ヶ丘地区再開発計画を連動させ、医療を中心とした街造りを目指す。近畿大学医学部創設以来の大事業に取り組む。
 来年度には医学教育分野別認証評価を受審する予定であるので、それに向けた準備をする。既にカリキュラム改訂は行ったので、まずはそれを理念通りに定着させる努力をするが、同時に、問題点や不十分な点を洗い出し、さらに改訂していくプロセスを推進する。(近畿大学医学部長 伊木雅之氏)

・既に活発に行っている国際交流をさらに充実させ、垣根のない医学教育を本学に根付かせ、自ら前進的な医学教育が行える土壌を作る。初年度学生には、実務型教育(経済学、経営学、人間関係学)などを学ばせ教養ある社会人へ養成し、同時に臨床や研究の現場にも連れ出して、勉学の意欲を高める取り組みを始める予定です。(大阪市立大学医学部長 大畑建治氏)

・開学以来44年にわたって継続してきた全人的教育を今後とも発展させ、人格に優れた良医を育成していきたい。特に地域医療に貢献できる、弱者に優しい医師を育てていくカリキュラムを今後とも続けていきたい。研究医コースは始まったばかりであり、そのコースの発展を図っていく。(兵庫医科大学学長 野口光一氏)

・引き続き積極的な外部資金の増加。研究力と英語力を強化するためのヒアリング、教材等の英語化の実施、教員組織の改編と新規教員配置に関する管理体制の強化、など。(広島大学医学部長 秀道広氏)

・第3期中期目標、計画のスタートに当たる年であり、再定義された大学のミッションを基盤とする取り組みを行う。地域医療教育の充実、大学と地域を結ぶ現場密着型の学際的研究教育ネットワークの確立、医学部・大学病院におけるシーズとニーズを重視した産学連携・研究の強化、基礎・臨床・大学院までの英語教育の充実、国際交流の拡大、地域枠等の地域医療を支える学生の支援強化などです。(島根大学医学部長 山口修平氏)

・人間性豊かな医師(産業医)(産業医科大学学長 東敏昭氏)

・医学教育認証評価の受審準備。(鹿児島大学医学部長 佐野輝氏)


  1. 2016/07/20(水) 08:35:50|
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