Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月13日 

https://www.m3.com/news/general/441414?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD160713&dcf_doctor=true&mc.l=167219955&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
給与不払い容疑で病院捜索 100人分2千万円、大阪
2016年7月13日 (水) 共同通信社

 大阪西労働基準監督署は13日、職員約100人分の給与計約2千万円を支払っていなかったとして、大阪市大正区の医療法人常磐会が運営する「ときわ病院」を労働基準法違反などの疑いで家宅捜索した。

 関係者によると、病院は看護師や事務員らに昨年11月分の給与計約2千万円を支払わなかった疑いがある。労基署が支払うよう指導したが従わず、職員の解雇も相次いでいる。書類送検を視野に調べる。

 病院は経営状態の悪化が原因で昨年12月に病棟を閉鎖し、現在は外来患者のみを診察。入院患者の担当をしていた職員の大半が辞めたが、離職時の給与も未払いになっているという。

 大阪市保健所によると、病院は昨年12月、保健所に「入院患者の受け入れ中止を検討している」と相談。入院患者は当時約30人残っていたが、病院からその後「適切に転院させた」と報告を受けたという。

 病院の総務担当者は「今日はコメントできない」と話している。



https://www.m3.com/news/general/441413
慶応大医師に求刑 危険ドラッグ密輸の罪
2016年7月13日 (水) 共同通信社

 危険ドラッグ「ラッシュ」を英国から密輸したとして、医薬品医療機器法違反と関税法違反の罪に問われた元慶応大病院の麻酔科医藍公明(あい・きみあき)被告(49)の初公判が13日、横浜地裁(横井靖世(よこい・やすよ)裁判官)で開かれ、藍被告は起訴内容を認めた。検察側は懲役1年6月を求刑し即日結審した。判決は20日。

 検察側は論告で「規制をかいくぐって海外から輸入しており、依存性や常習性は根深い」と指摘。弁護側は「既に十分な社会的制裁を受けている」などとして執行猶予付きの判決を求めた。

 起訴状によると、昨年9月、英国から指定薬物「亜硝酸イソプロピル」を含む液体約207グラムを郵送で日本国内に持ち込んだが、税関職員に発見され、輸入できなかったとしている。

 慶応大病院によると、藍被告は5月31日付で懲戒解雇処分となった。



https://www.m3.com/news/iryoishin/441333
腹腔鏡下肝・膵頭十二指腸切除、学会による監査へ
保険適用で全症例登録開始、NCDを活用

2016年7月13日 (水) 橋本佳子(m3.com編集長)

 外科系学会社会保険委員会連合(外保連)は7月13日の記者懇談会で、会長補佐で、実務委員長の瀬戸泰之氏は、2016年度診療報酬改定で保険適用された腹腔鏡下肝切除術、腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術について、全症例登録に当たってNCDが活用され、治療方法選択の妥当性や予後などを日本消化器外科学会が中心となり監査していくことになると説明した。

 両腹腔鏡下切除術に関するNCDの運用告知は6月から開始、7月11日時点で、登録施設数は肝切除術101施設、膵頭十二指腸切除術50施設で、今後さらに増えることが予想される。NCDは術後3カ月までの経過をフォローできる。現在、日本消化器外科学会を中心に、監査の方法や内容を検討しているが、術前に腹腔鏡下切除術を選択しても、途中で開腹術に切り替えた症例数、さらには術後死亡率などの検証が可能になる見通し。

 瀬戸氏は、両腹腔鏡下切除術が保険適用になったのは、外科系の改定の目玉であるとし、「NCDを活用した術前症例の全登録は画期的。昨今、いろいろなところで腹腔鏡下手術が問題になっている。今改めてその質が問われており、学会として高度技能技術をいかに検証するかが課題」と説明。今回の保険適用は、群馬大学医学部附属病院などの医療事故が契機となった。

 NCDは、外科系学会が運用する症例登録データベース。両腹腔鏡下切除術の保険適用は、「関係団体と連携の上、NCD等に症例登録し、手術適応等の治療方針の決定および術後の管理等を行っている」などが条件。NCD の運用団体のほか、日本消化器外科学会など関係団体が協議し、対応方法を検討した。従来のNCDは、術後に最終術式について症例登録するが、術前に登録できるようにシステム改修した。

 もっとも、NCDは、日本全体の手術の平均水準を把握し、各医療機関は自施設が平均水準からどの程度乖離しているかなどを知り、質の向上に取り組むといった利用などを想定しており、例えば術後死亡率が高い施設に対し、学会が指導するような利用は想定していない。外保連会長で、NCD運用組織の代表理事でもある岩中督氏は、両腹腔鏡下切除術に関するNCDの利用に当たってはいろいろ内部で検討したと説明、施設基準も厳しいことから、「これら二つの技術を幅広く社会に普及するために保険収載されたのではなく、社会問題化したことで、ブラックボックス化しているものを、透明化して、監査しようという意図ではないか」と語り、今回の施設基準は例外的と見る。

「重症度、医療・看護必要度」のC項目に矛盾

 7月13日の記者懇談会ではそのほか、2016年度診療報酬改定において、「重症度、医療・看護必要度」で新設されたC項目についても解説。従来のA、B項目では評価されにくかった手術後の看護必要度が評価されたことは外保連として評価しているものの、必ずしも適切に看護必要度が反映されていないと指摘した。

 一例として挙げたのが、腹腔鏡下虫垂切除術。DPCの平均入院期間は、「虫垂周囲膿瘍を伴わない」場合は5日、一方、「虫垂周囲膿瘍を伴う」場合は9日だが、「重症度、医療・看護必要度」の該当患者としてカウントできるのは、いずれも3日までと同じだ。

 外保連会長補佐で手術委員長の川瀬弘一氏は、「急性虫垂炎の場合、重症患者を多く受け入れる病院の方が、重症度、医療・看護必要度の患者割合が低くなるという矛盾が生じる」と問題視、「たまたま急性虫垂炎だけなのか、他にも同様の事例が多ければ、外保連として要望していく」との方針を示した。

 岩中氏は、今後の方針について、「まず2016年度改定がどんな結果をもたらしたのか、その検証をしていく」と説明。2016年度の手術料改定に用いられた、外保連試案2016(手術試案8.3版)をさらに精緻化するため、2018年度改定に向けて、今秋に実態調査を行う予定だという。さらに将来的には外保連試案が用いているコーディングと、診療報酬点数表の「Kコード」とのすり合わせを行っていく意向もある。「外保連試案が用いているコードは科学的で、インターナショナルにも通用するもの」と岩中氏は述べ、インターナショナルな議論をしていくためにも、「すり合わせのためのロードマップを考えていきたい。今は入口に立ったところだ」。



https://www.m3.com/news/general/441397
【栃木】JCHOうつのみや病院、存続要求派も要望書提出へ
2016年7月13日 (水) 下野新聞

 宇都宮記念病院(宇都宮市大通り1丁目)を運営する社会医療法人「中山会」が、国に独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)うつのみや病院(宇都宮市南高砂町)の譲渡を要望したことについて、地域住民らと地元医師らがそれぞれ、市と市議会にJCHOうつのみや病院の存続を求める要望書を提出することが12日、分かった。提出は15日。市への要望書には両者が集めた計約7万5千人分の署名が添えられる見通し。一方、5月には中山会への譲渡を希望する地元住民らからも要望書が提出されており、国からの意見照会への市や県の対応が注目される。

 要望書を今回提出するのは「JCHOうつのみや病院の存続を希望する住民一同」と、地元の医師らでつくる雀宮医師会。佐藤栄一(さとうえいいち)市長と渡辺道仁(わたなべみちひと)議長、さらに自民党議員会、自民クラブ、市民連合、公明党議員会の市議会4会派宛てとする予定だ。

 要望書は「一般の病院が経営することで、今まで診療を受け持っていた医師がいなくなる」「地震・災害時の救援が得られなくなる」などと指摘。「公的な病院の役割を続けていけるのはJCHOうつのみや病院」として、譲渡反対の立場を示している。

 署名活動は、住民と医師側がそれぞれ別に6月上旬に開始。地元住民のほか、病院や薬局利用者ら市外も含め計約7万5千人の賛同を得たという。



https://www.m3.com/news/iryoishin/441452
シリーズ: 始動する“医療事故調”
日医、「院内事故調査の支援の質を高める」
「医療事故調査制度における医師会の役割」最終答申

2016年7月13日 (水) 橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会は7月13日の定例記者会見で、医療安全対策委員会がまとめた「医療事故調査制度における医師会の役割」の最終答申を公表した(資料は、日医のホームページ)。日医常任理事の今村定臣氏は、「医療事故調査制度の研修における、実践的な資料として活用されることを念頭に置いている」と説明した上で、「日医は、支援団体として、また医療事故調査・支援センターから委託を受けた立場として、院内事故調査の支援の質を高める努力をしていく。事故調査は医療者に与えられた権利であり、医療界全体の調査能力を高め、国民の信頼を高めることが日医の使命だと考えている」と語った。

 答申の基本理念として、「忌憚のない審議で病態を究明し、患者と関係者の疑問に答え、事故防止に努める」を掲げている。医療安全対策委員会は、2015年4月に中間答申、8月に第2次答申をそれぞれまとめた(『“院内事故調”、委員長は外部委員、日医委員会答申』を参照)。この基本理念を含め、基本的な考え方は変わっていないが、第2次答申からの主たる追加、修正点は、(1)院内事故調査を十分に行うため、審議に用いる資料は、あらかじめ院外委員を含め、全委員に送付し、事案についての理解を深める、(2)報告書作成に当たっては、「論点整理」を行い、各委員や関係者の指摘を踏まえるようにする――の2点。

 医療事故調査制度は2015年10月からスタート。日医は、医療事故調査制度の支援団体として、また中央組織である医療事故調査・支援センターからの委託を受け、支援団体や医療機関への研修を行っている。最終答申は、「研修会で得た経験、成果、反省を踏まえた内容になっている」(今村常任理事)。

 最終答申は、(1)はじめに、(2)医療事故調査制度、(3)医療事故発生に際しての即時対応、(4)初期対応(院内事故調査委員会の開催準備作業)、(5)院内事故調査委員会と報告書の作成、(6)遺族への説明、(7)院内事故調査制度を支える取り組み、(8)おわりに~今後の課題~――の8章建て。

 医療事故調査制度は、6月24日に省令等が改正された(『医療事故調査制度、一部改正で省令・通知』を参照)。「支援団体等連絡協議会」の設置が盛り込まれたのが特徴で、各都道府県の区域を基本として1カ所の「地方協議会」と、中央組織として全国に1カ所の「中央協議会」がそれぞれ設置することができる。この改正について、今村常任理事は、「医師会の役割はより強固になると考えている。支援団体の中心である日医と、医療事故調査・支援センターは常に話し合いの場を持っており、役割分担などについて意見交換を行っている」と説明。

 なお、今回の最終答申では、異状死体の届出を定めた医師法21条についての記載はない。同条については、「医事法関係検討委員会で臨時答申をまとめた」(今村常任理事、『医師法21条の届出、「犯罪と関係ある異状」に変更を』を参照)。



https://www.m3.com/news/iryoishin/440872?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MT160713&mc.l=167095088&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
シリーズ: 医師不足への処方せん
東北医科薬科大学、東北出身者は31%
横倉日医会長がエール、「より良い医学教育」期待

2016年7月11日 (月) 橋本佳子(m3.com編集長)

 東北医科薬科大学の第8回教育運営協議会が7月11日に開かれ、この4月に医学部の第一期生を受け入れた同大には、募集定員通りの100人が入学、うち東北6県出身者は31人で、残る69人は東北地方以外からの入学者であることが公表された。卒業後に東北6県での勤務が義務の修学資金枠である計55人は全て埋まった。卒業生が義務年限を果たせば、東北地方の医師不足に寄与することが期待される。

 教育運営協議会の開催は、4月に東北医科薬科大学が新設医学部の第一期生を受け入れて以来、初めて(『東北医科薬科大学、一期生100人が入学』を参照)。同協議会は、東北地方の医学部・医科大学、県医師会、県の医療担当部局のほか、日本医師会からのメンバーで構成。

 今回から日医代表として、横倉義武会長が出席、協議会の最後に次のようにコメントし、東北医科薬科大学の医学部に期待を込めた。「“オール東北”で、新しい医学部がスタートした。いかにいい大学を作るかということで皆が協力しており、(教育運営協議会の議論を)聞いていて非常にうれしく思った。より良い医学教育を行い、ひいては東北地方の医療の向上に実りあるものにしてもらいたい」。

日医はこれまでは常任理事が出席していたが、第8回会議には横倉義武会長が出席。

 教育運営協議会では、この8月以降、新たに臨床系を中心に、15人程度の教員の追加公募を行う方針も説明された。医学教育、さらには大学病院としての診療体制を充実させることが狙い。

 東北医科薬科大学は、医学部新設に当たって、「今後の対応が必要な事項」が条件として付された(『「東北医科薬科大学」、来春誕生』などを参照)。教員採用に伴い、東北の地域医療への影響を来さないことがその一つ。2016年4月1日付の採用教員115人のうち、同大学以外から採用した79人の教員の元所属施設、計47機関に5月に調査した結果、「状況の変化がなかった」(39機関)と「無回答」(6機関)を合わせると計45機関で、「状況の変化があった」は2機関。「数の上では補充できたが、前任者と対等の能力を発揮するには時間がかかる」などがその理由だった。

 岩手医科大学理事長の小川彰氏からは、これまでの教育運営協議会と同様、教員のうち、東北大学からの採用が約3分の1を占めるなど、教員採用に伴う地域医療への影響を懸念する声も挙がった。東北大学医学部長の下瀬川徹氏は、「今のところ、大きな問題が生じているという認識はない」と回答。東北大学が、東北医科薬科大学と連携、協力することにより、下瀬川氏は「東北地方の医療支援体制はむしろ充実していくのではないか」との見通しを示した。

 合格者数は計297人、実質競争倍率は7.7倍

 教育運営協議会の冒頭、高柳元明学長は、今年4月の入学生について、「非常に落ち着いて東北地方の医療に貢献するという意欲にあふれた学生が集まってきている。この志を育て、大学として支援していきたいと考えている」とあいさつ。東北医科薬科大学病院(仙台市宮城野区、466床)と東北医科薬科大学若林病院(旧NTT東日本東北病院、仙台市若林区、199床)の2病院を臨床実習の場とするものの、「当面は、この体制で進めるが、今後は地域の医療を維持しながら、できるだけ損なわないような形で、全体の病院統合を果たしていきたい」との方針を説明した。

 東北医科薬科大学の募集定員は100人で、志願者数は2458人、受験者数は2278人、辞退者が出て補欠の合格者を出したことから、合格者総数は計297人に上った。志願倍率は24.6倍(志願者数÷募集定員)だが、実質競争倍率は7.7倍(受験者数÷合格者数)だった。

 募集定員100人のうち、修学資金枠は55人、一般枠が45人。修学資金枠には二つあり、A方式(6年間の修学資金は3000万円、宮城県30人、他の東北5県1人ずつ)は35人、B方式(同1500万円+各県の修学資金、計20人)は20人で、ともに定員を充足。ただし、B方式のうち、山形県分(6人)と福島県分(4人)は最終決定ではないため、多少の変動はあり得る。55人のうち、東北地方からの入学者は20人。

教育運営協議会は32人で構成。11日の会議には、代理6人を含め、30人が出席。

 毎年15人程度の教員を追加公募


 東北医科薬科大学は医学部新設に当たり、2016年4月に計115人採用。2016年度中に計133人、2018年度までに計183人体制にする予定。内訳は、基礎系37人、臨床系146人。地域別では、東北地方からの採用が137人、東北地方以外が46人。東北地方の中でも、宮城県、特に東北大学からの採用が61人と多く、次いで東北医科薬科大学教員の53人。

 医学教育、さらには大学病院としての診療体制を充実させるためには、臨床系の診療科を中心に、基礎系も含めて、まだ不足していることから、今年8月以降、15人程度の教員を追加募集する。完成年度(6期生まで入学した時点)までに、毎年15人ずつ追加募集する予定。

 東北大、キャパシティ大きく教員輩出可能

 同大の教員採用について異議を唱えたのが、小川氏。「特定の地域から採用しないように求められているが、183人のうち、東北大学からの採用は61人で、3分の1を超える」と指摘し、採用割合の妥当性を質した。

 東北医科薬科大学医学部長の福田寛氏は、地域医療への影響は結果として見るべきであり、「東北大学のキャパシティは大きい」と説明。採用予定の183人も2018年度までに段階的に採用するなど、地域医療への配慮を念頭に置いているとした。

 続いて発言した東北大学の下瀬川氏も、「特にこれまで地域医療に穴があいた、大学の教育に支障があるといった声は聞いていない。今のところ大きな問題が生じているという認識はない」と説明。採用教員の3分の2を占めるようになれば問題だが、3分の1程度であれば、「東北大学は、キャパシティが大きいので、十分に対応できる数」とした。

 さらに下瀬川氏は、東北大学は今後、より研究者の育成に力を入れていくとし、地域医療については、東北医科薬科大学と連携、協力していくとした。「二つの大学の協力により、東北地方の医療支援体制は、むしろ充実していくのではないか」(下瀬川氏)。旧七帝大の中で、東北大学だけが、同一都道府県内に他に医学部・医科大学がなく、大学での研究・教育・臨床に加えて、地域医療も担ってきたという事情がある。

 東北大学は、「新設医学部連携室」、一方、東北医科薬科大学は地域医療総合支援センターをそれぞれ設置。東北大学はこれまで宮城県を中心に、東北6県の地域医療を支援してきたこともあり、医療機関からの医師派遣等の依頼は、両大学に来ることが想定される。両大学が同時に支援するなどの混乱が生じないよう、地域への医師派遣などについて、これらの窓口を通じて連携していく。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/clinic/report/201607/547364.html
インタビュー◎2016医学部入試の全容
東北医科薬科大の偏差値は日本医大と同水準に
河合塾麹町校 梅田 靖彦氏に聞く

2016/7/13 日経メディカル

今年3月まで行われた2016年医学部入試の大学別偏差値、倍率などのデータが出揃い、全貌が明らかになった。今年難化した大学はどこか、新設の東北医科薬科大学の受験者層や難易度は――。医学部受験の動向に詳しい学校法人河合塾・麹町校の梅田靖彦氏に話を聞いた。(荻島 央江=ライター)

――近年、理工系学部の人気が続き、医学部の受験者も大きく増えてきましたが、今年は昨年に続き、医学部志願者がやや減少したようですね。
梅田 河合塾が実施した模擬試験(全統マーク模試)の志望動向で見ると、国公立の医学部前期の志望者は、前年を100とした場合に99%と減少しています。一方で、文系の学部、学科は100を超えているところが多い。景気が回復基調にあり、文系学部の大学生の就職率が軒並み上昇していることから、2015年度入試あたりから「文高理低」になってきています。これは私立大も同じ傾向です。

 昨年のセンター試験では、新学習指導要領に対応した新課程入試が始まり、理科の出題範囲が広がりました。この影響から志願者が減ったため、今年はその反動で志願者が増えるのではと推測されていたのですが、特に目立った変動はなかった。こうした状況から「医学部人気にかげり」と表現されることがありますが、志願者と定員のバランスを踏まえると、高止まり感という方が正確だと思います。
 医学部の定員でいうと、東北医科薬科大学医学部が新設され、新たに100人分の枠が増えました。医学部の定員は増え、志願者はやや減少したわけですが、だからといって、受験生に「(入試が)楽になった」という感覚は恐らくないでしょう。

 この春のセンター試験の自己採点結果(河合塾調べ)の分布を見ると、国公立大医学部(前期)の合格ラインの目安は得点率88%くらいと高い水準になっています。全体として志願者数が減っていても、成績上位グループの人数は変動していない。「駄目元で受けてみよう」「医学部に行けたらいいな」と漠然と思っているような受験者層が減っていると考えられます。相変わらず高いレベルでの争いなので、難関であることに変わりはありません。

 我々がご協力した日経メディカル Onlineの昨年の記事(関連記事)で「偏差値65以上が9割」という実情を示しました。ここでいう偏差値とは、河合塾が前年の全統模試の結果を基に算出したボーダー偏差値(合格可能性50%)のことですが、今年実施された医学部入試の倍率や偏差値を一覧にした表1、表2(2ページ目)を見ていただければ分かるように、今年も同様の状況です。

――今年のセンター試験の難易度は?
梅田 文系で平均点が(前年の)+5点、理系は-5点ですから、文系は易しくなって、理系の受験生にとっては少し厳しい試験だったというのが見てとれます。国公立大医学部を志願する学生は、センター試験の点数によって出願先を検討しますが、どうしても見た目の得点率に影響されます。例えば88%の得点率を死守したかったのに、センター試験の「難化」により85%しか取れなかったとなると安全志向が働き、出願先を、地方の国公立大の中でもより合格可能性が高そうな大学に変えるといったケースもあります。

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(クリックで別画面で拡大。さらにクリックで拡大表示)
表1 国公立大の2016医学部入試結果
注)
1 国公立大は前期日程の数値のみ表示(一般枠)。前期日程のない山梨大は後期日程の結果を示した。
2 一般枠と地域枠等を合算して入試結果を公表している大学は(一般枠+地域枠)などの表記とした。
3 実質倍率は受験者数/合格者数。
4 追加合格者数は、合格者数に含まれる。
5 偏差値の「ボーダー」はボーダーライン(合格可能性50%)を示す。
6 信州大、熊本大は2016年度から前期のみの募集。
7 追加合格者数が不明な大学については空欄としている。


――個々の国公立大医学部の志願者数に何か変化はありましたか。
梅田 国公立大では、今年も「隔年現象」が顕著でした。隔年現象とは、前年の出願者数が少なかった大学に受験生が殺到し、逆に多かった大学が翌年に敬遠されるという現象です。少しでも入りやすそうな大学を、地域を選ばず受験生は必死に探しているわけです。

 徳島大学のケースは隔年現象の典型です。2014年に出願者が半分以下に減った反動から、2015年は出願者が2倍以上に増えました。今年は逆に、前年の3割程度の学生しか出願しませんでした。つまり7割減ということです。

 このほか、熊本大学と長崎大学でも同様の傾向が見られました。熊本大学の昨年(2015年)の出願者数は前年比124.5%と大きく伸びましたが、今年は昨年比67.2%。長崎大学も出願者数の前年比が124.1%→64.2%と今年は大きく減りました。恐らく、昨年の出願者数の多さを見て敬遠する受験生が多く、揺り戻しが生じたのでしょう。ちなみに長崎大学の偏差値は、昨年の67.5から65に下がっています。

 隔年現象は毎年起きていますから、ある程度の予測はつく。それでもあえて前年に競争倍率が高かった大学を志願するのは勇気がいります。危ない橋は渡れないということなのだと思います。

――国公立大で、選抜方式に関して動きがあった大学を教えてください。
梅田 近年、国公立大医学部では後期試験を実施するところが減ってきています。現在、後期試験を実施しているのは約半数。信州大学と熊本大学は今年、前期試験のみとし、後期を廃止しました。その影響が、周辺地域に立地する大学に出るのではないかと予想されましたが、特に大きな影響はありませんでした。ここに関しては予想と違った動きを受験生がしたことになります。

 影響が軽微だったのは、そもそも後期を視野に入れている受験生の数が多くないからでしょう。後期に関しては、前期にも増してセンター試験で高い得点率が求められます。このため後期には出願しない受験生が増えているように見えます。

――私立大の動向はいかがでしょうか。
梅田 今年の目玉は、何と言っても仙台市に誕生した東北医科薬科大学医学部の初めての入試です。定員100人に対し、志願者数は2458人と我々の予測を上回る数字になりました。偏差値は一般枠が67.5、「修学資金枠」のA方式では70、B方式は67.5でした。67.5というのは、首都圏の私立大では日本医科大学や東京医科大学などと同レベルで、同じ東北地方の私立大である岩手医科大学の偏差値(65.0)を上回りました。

 東北地方には私立大医学部が少ないということで、一般枠、修学資金枠ともに東北の国立大受験者の併願が数多く見られました。特に修学資金枠ではこの傾向が強く表れており、国公立大を目指す上位層の併願が多かったことが、偏差値を押し上げた大きな要因と考えられます。

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表2 私立大の2016医学部入試結果
注)
1 私立大学は募集定員が最も多いメイン入試の数値。
2 一般枠と地域枠等を合算して入試結果を公表している大学は(一般枠+地域枠)などの表記とした。
3 実質倍率は受験者数/合格者数。
4 追加合格者数は、合格者数に含まれる。
5 偏差値の「ボーダー」はボーダーライン(合格可能性50%)を示す。
6 聖マリアンナ医科大学については受験者数のデータがないため志願者数を掲載し、倍率も志願者数/合格者数で算出した。
7 追加合格者数が不明な大学については空欄としている。
8  防衛医科大学校は省庁大学校だが、便宜上、表2に含めている。


 東北医科薬科大学の受験者の併願状況は表3の通りです。これは大学の公表資料でなく、河合塾の入試結果調査に基づくデータで、同大学の医学部を受験した学生がどの大学を併願したかを示したものです。国公立大の併願先を見ると、弘前大学、山形大学、福島県立医科大学、東北大学など東北の大学が上位に来ていることが分かります。一方、私立大学の併願先では、やはり東北の岩手医科大学が最も多く、埼玉医科大学、昭和大学、自治医科大学と関東の大学が続きます。

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表3 東北医科薬科大学医学部の受験生の併願先(河合塾の調査による)

 修学資金枠で入学した場合、卒業後に東北地方の病院で一定期間勤務すれば、返済が免除されます。東北医科薬科大学では卒業生の東北地方への定着促進策として最大55人の修学資金枠を設けています。一般枠で入学すると6年間で3400万円の学費がかかりますが、修学資金枠A方式であれば3000万円が貸与され、実質負担は6年間で400万円。国公立大医学部並みの学費負担でよいというのは大きな魅力です。

 東北医科薬科大学の受験者の併願先として自治医大が上位に来ていますが、東北医科薬科大学との共通点は「地域医療」と「修学資金貸与」。これが併願理由の1つと考えられます。

 ちなみに東北医科薬科大学では、定員100人に対し正規合格者数(繰り上げ分を含まない当初の合格者数)も100人でした。通常は、入学辞退する分を見込んで多めに合格を出すことが多いので、これは異例といえます。結局、合格しても他大学に流れた受験生が多かったようで197人の繰り上げ合格を出しました。定員100人で、約3倍に当たる計297人に合格を出したわけですが、正規・繰り上げを合わせた合格者数が募集人員の3倍程度というのは、医学部入試でもそれほど珍しいことではありません。

――他の私立大では、何か特徴的な動きはありましたか?
梅田 優秀な学生を獲得すべく、一部の私立大学はここ数年、学費の引き下げを実施し、志願者増につなげています。学費が安くなると志願者が増え、難易度は高くなる傾向にあります。

 今年で言えば、藤田保健衛生大学が学費を6年間トータルで180万円引き下げました。また一般入試(前期、前期・愛知県地域枠)の成績上位80人のうち実際に入学した学生を特待生とし、入学年度の授業料など280万円を免除するほか、2年次から6年次の教育充実費を年間40万円減額する「医学部特待生制度」を新たに導入しています。この影響もあって、同大学は前年比155%と、一般方式の志願者数を大きく伸ばしました。

 2017年4月には、国際医療福祉大学の医学部開学も計画されています。同大学の計画によると、募集定員は140人。学費は6年間で1850万円と、私立大医学部の中で最も低い水準です。さらに成績優秀者には減免措置、希望者には奨学金制度を設ける方針も発表しており、かなりの数の志願者を集めるのではないでしょうか。

 地方の国立大学に受かっても、自宅から通える私立に受かればそちらに行くという人も出てきているので、首都圏という立地を考えると相応の出願があるものとみています。

――学費の安い国立ではなく?
梅田 私立の学費が下がったとはいっても、依然として負担が大きいのは事実です。ただ、遠隔地に行けば学費以外にも家賃や食事などのお金がかかりますから、トータルで差し引きして、「それくらいの差額なら私立に」と考える家庭が増えている印象です。「国公立じゃないと学費の面で絶対に無理」という割合は少しずつ減っていて、「私立でも何とか」という家庭が増えているとの話はよく耳にします。

 日本大学は昨年から、各学部間共通の試験問題による統一入試「N方式」を採用しています。これが今年から医学部にも適用されることになりました。他学部と同じ問題で医学部に合格できる可能性があるということで、募集人員3人に対して志願者156 人が集まりましたが、ボーダー偏差値は65.0で、通常のA方式と変わりませんでした。

 近畿大学のセンター利用方式では、新たに個別試験として小論文と面接が課されました。その負担感のためか、志願者数は前年比2割減という結果になっています。ただ、最近は選考過程に面接がない医学部の方が少なくなっています。東京大学でも2018年から理科三類の入試に面接を復活させる予定です。これは能力だけでなく、将来医師となるための適性や意欲の高さを見極めたいという大学側の意識の表れだと思います。

――最終的に受験校はどのように決定しているのでしょうか。
梅田 もちろん受験生本人の希望を最優先しますが、センター試験と二次試験の配点の比率や二次試験の科目・問題傾向、出題傾向との「相性」、センター試験でのいわゆる足切りの度合いなどたくさんあります。このほかにも二浪以上の合格者が出ているか、地方の大学の場合なら東京在住の生徒が受かっているか、「圧迫面接」の度合いはどうか、年令を重ねている人に厳しいか――といった点も考慮します。募集要項には書かれていない、「こういう生徒が好まれる」という傾向もあります。

 今回ご紹介した偏差値は合格可能性が50%のボーダーラインを示したもので、このデータだけでは出願先を判断できません。実際には上記のような様々な要素を勘案して出願先を決めることになります。必ずしもボーダー偏差値に達していなければ合格が困難ということではないので、ご留意いただければと思います。

 なお、少し前までは、たとえ浪人してでも難易度の高い大学に挑戦する生徒が一定数いましたが、今はそうした層が減ってきています。できることなら現役がよい、さらには「医学部であればどこでもよい」と考える受験生が多くなっています。とはいえ、嫌でも出身大学は付いて回るものだ、ということも伝えています 。

――その他、医学部受験を考えているお子さんを持つ親御さんに何かアドバイスはありますか。
梅田 学習面でいえば、医学部といえども基礎学力が重要です。難問奇問ではなく、まずは焦らずに基礎学力を着実に付けていくことでしょう。そこが抜けている受験生は本番でなかなか点数が取れません。医学部入試では、コツコツ真面目に積み上げていく努力型の生徒が結果を出しやすいといえます。まずはここのサポートですね。
 
 医学部志望の生徒の親御さんは圧倒的に熱心で、当校が実施している三者面談への出席率は非常に高い。ご両親そろってということも少なくないですね。ちょっと前のめりになっているお父さんお母さんも多いかもしれません。ついつい過干渉になりがちですが、受験生本人がなぜ医師を目指すのかという理由をきちんと持つことが学習のモチベーション、取り組み方に大きく影響します。医学部入試に限った話ではありませんが、まずはその動機付けが大切ということを意識しておいていただければと思います。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/49191.html
病床規模、今後も「現状維持」が約7割- 能率協会総研が調査
2016年07月13日 21時00分  キャリアブレイン

 今後の病床規模について、約7割の病院が「現状を維持する」との調査結果を、日本能率協会総合研究所が発表した。また、一般病床や療養病床のある病院で、今後は「地域包括ケア病棟入院料」を算定する割合が今よりも増えるとの見通しも示された。【松村秀士】

 調査は、昨年11月から今年1月にかけて、全国の病院を対象に実施。432病院から回答を得た。

■「『調整会議』の結果分からず、方向を決めかねている」

 3-6年後の病床規模についての回答では、「現状維持」が全体の70.8%を占めた。「縮小」は18.3%、「増床」は6.5%、「未定」は3.7%だった。同研究所の調査担当者は、「地域医療ビジョンの実現に向けて関係者が協議する地域医療構想調整会議の結果がどうなるのか分からないので、自院の方向性を決めかねており、今後も『現状維持』とする病院が多いのではないか」と分析している。

 現在の中心的な医療機能についても聞いたところ、「急性期」が全体の31.7%を占めて最も多かった。以下は、「慢性期」(17.6%)、「ケアミックス」(17.1%)、「精神」(9.3%)、「高度急性期」(8.1%)、「回復期」(7.9%)などと続いた。

 一方、3-6年後の中心的な医療機能についての回答は、「急性期」が最も多かったが、その割合は26.4%に減少した。以下は、「ケアミックス」(18.1%)、「慢性期」(14.8%)、「回復期」(10.2%)、「精神」(8.8%)、「高度急性期」(8.1%)などと続いた。調査担当者は、「今後は高齢者のさらなる増加によって、急性期よりも回復期のニーズがあると判断し、回復期の機能を増やそうと考えている」と指摘している。

■地域包括ケア病棟入院料の算定、今後は1割超増える見通し

 調査では、回答を得た432病院のうち、一般病床や療養病床を持つ387病院に対して算定する入院料について聞いた(複数回答)。

 現在、一般病棟入院基本料(7対1、10対1)を算定している病院が65.6%で最も多く、療養病棟入院基本料は41.3%、地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)は20.4%、回復期リハビリテーション病棟入院料は18.6%だった。

 3-6年後の算定を検討している入院料については(複数回答)、一般病棟入院基本料が61.5%、療養病棟入院基本料が37.2%、地域包括ケア病棟入院料が31.3%、回復期リハビリテーション病棟入院料が20.9%などとなり、今後は地域包括ケア病棟入院料の算定を予定する病院が、今よりも1割超増えるとの見通しが示された。

 2016年度診療報酬改定では、一般病棟7対1入院基本料に対する「重症度、医療・看護必要度」の基準が厳格化されたことなどから、同研究所では今後、7対1病棟を維持するのが難しくなると予測。「7対1病棟から地域包括ケア病棟に転換する動きが出るのではないか」(調査担当者)としている。



http://mainichi.jp/articles/20160714/ddm/013/040/012000c
てんかんと生きる
医療の現場で/上 主治医に連絡せず薬剤投与

毎日新聞2016年7月14日 東京朝刊

救急搬送から3日目の2010年4月9日、女性の母親から父親に宛てたメールには、薬の影響を心配する書き込みがある(訴状に添付された資料より。一部画像を処理しています)

 2010年4月、埼玉県の女性(当時25歳)に重いてんかん発作がおき、近くの総合病院に救急搬送された。女性は東京都内の専門病院に通院しており主治医もいたが、搬送先の医師は主治医に連絡せず、両親への事前説明もしないまま鎮静剤「プロポフォール」の使用を開始。他の薬剤も含めた大量投与の結果、女性は劇症肝炎などを発症し、翌月死亡した。なぜ主治医と連携せずに治療を進めたのか。今月7日、両親が総合病院に損害賠償を求めた訴訟が始まった。

 ●一度は意識戻る

 両親の話や訴状によると、女性は10歳で急性脳症になり、てんかんを発症。主治医とは11歳の時に知り合った。発作は意識を失うもので、1日に1回程度の発作が3日ほど続いた後、2〜3日平穏な状態を繰り返す。養護学校を卒業し、県内の福祉作業所に通っていた10年4月7日、帰宅後の午後5時9分ごろに、あごを震わせ体に力が入る発作が始まった。いつもと違い10分以上も続いたため、母親は救急車を呼んだ。

 総合病院に搬入され、対応した救急外来の脳外科医に、母親は日ごろの発作の状況と服用している薬について説明した。抗てんかん薬の投与で女性のけいれんは治まり、意識も回復。女性が数年前に運ばれた時と同様に重いてんかん発作は治まったので、母親らは「明日には退院できる」と安心して帰宅した。翌8日午前4時の救急ICU(集中治療室)看護記録には、女性が氏名と年齢を話したことが記されている。

 ●規定量の倍以上

 ところが同10時ごろ母親らが病院へ戻り、家族控室で待機していると、神経内科の女性医から「また発作が出たので鎮静剤を投与して眠らせている。呼吸がうまくできないようなので挿管して人工呼吸器で管理する」と聞かされた。既にプロポフォールの投与は始まっており、母親らがICUに戻ると、女性は人工呼吸器を付けて眠らされていた。過去2回の救急搬送時に人工呼吸器を付けたことはなく、不安を抱かずにはいられなかった。

 プロポフォールを巡っては、米国人歌手のマイケル・ジャクソンさんが過剰投与による副作用で09年に死亡。14年には東京女子医大病院で、禁じられている集中治療中の小児への投与で2歳男児が亡くなった。過剰投与の影響は心臓や肺、肝臓など多岐にわたるとされる。

 看護記録によると、女性へのプロポフォールの投与は、添付文書規定量の2倍が4月10日に投与され、11日にも倍量が継続投与されていた。

 女性の容体は救急搬送から1週間目の13日になっても好転せず、母親は主治医に電話で相談した。この時まで主治医には総合病院側から何の連絡もなかったという。

 ●質問には答えず

 既に主治医が手を出せる状態ではなく、事態は悪化する一方に。14日の看護記録には、もう一人の神経内科の男性医と両親とのやりとりが次のように記載されている。

 父親「1週間もこんな感じ。不安増幅しています」

 男性医「やっかいですね」

 母親「今でも信じられない。ここまでこうなってしまうのか。先生も分からないでしょうけど」

 男性医「こちらも何とも」

 母親「受け入れがたくてしかたないです」

 この日、女性には麻酔剤のチオペンタールが「てんかん治療ガイドライン」の規定量の4倍も投与されていた。

 搬送10日後の17日には「劇症肝炎」と診断され、看護記録にはこんなやりとりが残されている。

 女性医「肝細胞がどんどん死んでいます」

 母親「薬のせいですか」

 女性医「肝臓は眠らない。問題は肝臓です。生命にかかわります」

 母親「急激にいっぱい投与したからですか?」

 父親「予測できなかったってことですよね?」

 女性医「何も(治療は)できないかも……」

 そこには、両親の問い掛けに対する回答はなかった。

 ●説明求め提訴

 5月12日午後7時13分、両親らが見守る中、女性の死亡が確認された。直接の死因は「脳ヘルニア」、その原因は「脳症」、脳症の原因は「不詳」。影響を及ぼした傷病名は「てんかん重積発作、腎不全、劇症肝炎」とされた。

 てんかん発作がなぜ、劇症肝炎や脳ヘルニア、その先の死に至ったのか。両親は病院側に説明を求めたが納得できるものはなく、女性の死亡からちょうど6年がたった今年5月12日、病院側に3700万円余の損害賠償を求めて、さいたま地裁に提訴した。代理人には、東京女子医大病院で死亡した2歳男児側の代理人でもある貞友義典弁護士が就いた。

 両親は「本人や家族は重い発作に対する不安の中で過ごしている。今回のことで、神経内科医でもてんかん治療の知識が十分ではないことが分かった。再発防止のためにも警鐘を鳴らしたい」と話す。総合病院は毎日新聞の取材に「事実関係や治療内容は訴訟の中で主張させていただく」と文書で回答した。病院側が反論する第2回口頭弁論は8月25日に開かれる。

      ◇

 医療従事者でもてんかんの治療に関する知識が豊富とは言えない。てんかんを取り巻く医療の現場から報告する。【「てんかん」取材班】

 ●全国に専門医530人余り

 てんかんはおよそ100人に1人、国内で約100万人もの患者がいるとされるが、てんかん学会の専門医に登録されているのは全国に530人余。このうち約300人は小児科医で、成人を診るてんかん専門医は230人余に過ぎない。

 救急搬送された場合だけでなく、普段の診療でも、専門医以外に神経内科と脳外科、精神科の医師ら計2万人余に頼らざるを得ない。

 複数のてんかん専門医は「救急搬送では他の病気でも救急医が診るので、そのこと自体に問題はないが、主治医との情報交換は患者に適切な医療を行う上での基本」と話す。

 2012年からは厚生労働省などにより「てんかん診療ネットワーク」がウェブサイトに公開された。てんかんに対応できる各地の医療機関やその対応能力などが閲覧(一部登録制)でき、医療の役割分担や連携にも役立てられている。しかし、小児科を含めると診療科が四つもあり別々なことなどから、相互の医療機関の連携はまだまだ不十分と指摘されている。


  1. 2016/07/14(木) 05:59:56|
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