Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

6月20日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/434116?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD160620&dcf_doctor=true&mc.l=163454639&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
シリーズ: 医療裁判の判決詳報
帝王切開で死亡、高裁が認定した事実◆Vol.1
判決詳報、「医師のミスなければ、妊婦救命できた」

2016年6月20日 (月) 成相通子(m3.com編集部)

 東京高裁で5月26日、2008年に静岡厚生病院(静岡市)で帝王切開手術を受けた後に死亡した妊婦(当時24歳)の遺族が、病院を運営する「JA静岡厚生連」と手術をした医師3人に損害賠償を請求した訴訟の控訴審判決があり、富田善範裁判長は、死因との因果関係を認めなかった一審を取り消し、病院側に約7490万円の支払いを命じた。病院側は6月10日までに最高裁に上告した。 控訴審判決で認定された事実と判断を2回に分けて詳報する。

■事件の経緯

 2008年4月に当時24歳だった妊婦が 、同病院で帝王切開手術を受けた後、死亡した。2014年12月の静岡地裁判決では、「妊婦に対して抗ショック療法および抗産科DIC療法を開始するべき義務があったが、違反した」として、医師らの過失を認定したものの、当時の医療水準の治療では、医師らが救命することはできなかったとして、過失と妊婦の死亡の相当因果関係は認められないと判断し、遺族側の請求を棄却した。遺族側は、それを不服として控訴した。

■死亡までの経緯 (争いのない事実 と 裁判所が認定した事実

※緑色の表記は裁判所が認定した事実

 妊婦は2007年9月から定期的に同病院の産婦人科を受診し、医師A、Bの診察を受けていた。出産予定日は2008年4月24日。経過は概ね良好で、2008年4月25日に受診した際も異常はなかった。

 妊婦の身長は164.0cm、妊娠前の体重は61.0kg、手術直前は78.2kg。妊娠前に大きな病気やアレルギーは無かった。

 2008年4月27日午前0時ごろ、妊婦は病院に自ら電話して、陣痛を訴えた。対応した看護師は、陣痛が強くなったら再度電話するように伝えた。

 午前6時50分ごろ、妊婦が再度電話し、夫の運転する車で病院に向かった。

 午前7時20分ごろ、妊婦が病院に到着。脈拍独歩で来院し、ふらつきはなかったものの、口唇色がやや不良で、発汗が著明だった。体温は35.5度。対応した助産師がNST(胎児心拍モニタリング)を装着し、胎児の心音を聴取しようとしたが、聴取できなかった。ドップラー、エコーでも同様だった。そのため、異常と判断し、午前7時53分ごろに担当医のAに電話連絡した。

 午前8時過ぎに担当医Aが病院に到着。妊婦をエコーで診察し、胎児心拍消失と胎盤早期剥離を疑う所見を確認し、胎盤と子宮壁の間に血液と思われる胎盤後血腫の像があり、胎盤自体が熱くなっていたこと、胎児の心拍も認められなかったこと、腹部が非常に硬くなっていたことなどから、常位胎盤早期剥離を発症したと判断。帝王切開で胎児を出産させることを決定した。医師Aは、手術をすること、胎動がほとんどなく、胎児の生存が難しいと思われることを夫に説明。夫が手術と輸血の同意書にサインした。

 午前8時25分に採血された血液検査の結果が午前9時13分ごろ得られ、赤血球数(RBC)3.19、ヘモグロビン濃度(Hgb)8.2g/dl、ヘマトクリット値(Hct)25.4、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)29.3、プロトロンビン時間国際標準比1.11、出血時間8.0以上だった。医師らは、血液検査で産科DICスコアをカウントするためのFDPやDダイマーの検査は指示しなった。

 病院で、RBCの基準範囲は3.8~4.8、Hgbは34~45 g/dl、APTTは25~38 とされており、上記血液検査の数値はいずれも基準範囲を下回っており、特にHctは相当低い値である方、赤血球数だけでなく、血液が希釈された状態になっていることも伺われる状態だった。


 午前8時45分ごろ、手術室に入室。妊婦の顔色ややや不良で、冷汗があった。妊婦を手術室に送ると、Aが手術室から出てきて、夫に最悪の場合は子宮を切除する旨を話し、夫が了解した。内診では、子宮口は4センチ大で、出血が認められた。

 手術はAが執刀医、AとBが麻酔 を担当し、医師Cが助手を務めた。麻酔は腰椎麻酔で、午前9時5分から午前11時2分まで続いた。

 手術は午前9時15分に始まり、午前10時45分に終わった。

 病院には、RCC4単位、FFP4単位の在庫しかなかったため、医師Aが午前9時ごろ、看護師に対して、日赤血液センターからRCC10単位、FFP10単位を取り寄せるよう指示したが看護師の発注ミスでFFP10単位は発注されなかった。最寄りの日赤血液センターから病院まで車で12分ほどで、RCC10単位は午前9時20分ごろに病院に届いた。

 午前9時23分に人工破膜を実施。
午前9時24分に胎児挽出し、同26分に胎盤を挽出、子宮を外に出した。同27分に小児科医が胎児の死亡を確認し、小児科医は胎児と共に手術室を出た。

 胎児娩出直後から、胎盤や大量の凝血塊が切開創からあふれて来た。凝血塊は、手で何度も鷲掴みにできるほどの量で、医師AとCが次々に子宮から除去した。除去後の子宮は全体に柔らかく、表面色も早期胎盤剥離の時の色を呈していたが強出血は認められず、子宮の大きさが一般の子宮と比べて大きい状態にはなっておらず、浮腫状でもなかった。子宮の収縮は不良であると認められたが、初産婦であったことや、輪状マッサージで子宮の収縮がやや良好と認められたことから、子宮温存可能と判断。

 医師Aが子宮切開創を縫合し、医師Cが結紮して閉じ、腹腔内に戻す処置を開始した。じわじわとした出血はあったものの、出血が止まらないことはなかった。子宮を温存すべきか医師らが検討している間に、妊婦は医師Bに対して「赤ちゃん大丈夫なの」と尋ね、医師Bは「とりあえず小児科の先生がみてくれるから」と返答した。

 午前9時半までに、合計約1350mlの輸液(ヴィーンD100ml、ヘスパンダー100ml、ラクテック約250ml)を行った。


 午前9時半ごろ、妊婦の収縮期血圧はショックの目安となる90を下回り、ショックに陥った。

 血圧は、午前9時5分に収縮期140/拡張期83だったのが、午前9時10分に同125/69、午前9時15分に同115/58、午前9時25分に同101/43、午前9時30分に同85/35と徐々に低下し始め、人口派破膜後も低下を続け、午前9時半ごろにショックに陥った。その後の血圧は、午前9時40分に同93/48となっていったん改善したが、午前9時45分に58/35と再び悪化。

 医師Bが血圧を上げるために輸液を全開にし、昇圧作用のあるエフェドリンを8ml投薬。午前9時50分ごろからはカコージンを投与したが、RCC2単位の輸血を開始した後の午前10時35分まで収縮期血圧はショックの目安の90を上回ることはなかった。

 脈拍は一般に60~100の間が正常で、100を超えると頻脈と考えられる。妊婦の脈拍は午前8時45分の手術室入室時に90、手術開始前の午前8時50分に130、その後一貫して100を超えていた。

 医師Bは、午前9時45分から同50分の間、午前10時ごろの2回、妊婦に痙攣のような動きがあったことを確認。1回目は手を上げるような動きで、二回目は、身体をのけぞるような動きと歯を食いしばるような動きが30秒から1分程度続いたという。医師Bは、これらの動きが収まりつつあると認識したものの、アルビアチンを投与。下顎の開口が困難な状態だったため、バイトブロックをしようとした。医師AとCは、上記の痙攣のような動きには気付かなかった。

 午前10時ごろ、収縮期血圧は49にまで低下。医師Bは、血圧を上げるために末梢血管を拡張する効果がある笑気ガスを切った。その後、収縮期血圧は60程度に上昇したが、ショック状態からは回復しなかった。そのころまでには、医師Aが子宮切開創の縫合を終え、子宮を腹腔内に戻し、閉腹を開始。医師Aは、ショック状態に陥った時点から腹膜縫合の直前まで、妊婦の血圧が低下しているとの認識はなかった。

 医師らは、腹膜縫合の直前ぐらいから、妊婦の血圧低下と頻脈が頻発していることを確認。呼びかけへの反応が不良で、不穏状態が認められるとして、妊婦に循環血脈不足、または弛緩発作を疑った。医師Bは、RCC4単位が手術室に搬入されたとの連絡を受けたが、医師Aと相談し、今は血圧が低いが、手術の出血は大量とは思われず、妊婦が若年であることから、RCCを輸血せずに様子を見ることにした。

 午前10時半ごろ収縮期血圧が再び48に低下。医師Bは医師Aと相談の上、妊婦にRCC(濃厚赤血球、140ml)2単位の輸血をポンピングにより実施。輸血直後の午前10時35分、血圧は同102/75となり、一次的に上昇した。


 午前10時45分ごろに手術を終了した。手術時間は、1時間30分で、通常より若干長い程度だった。医師らは、手術終了段階で妊婦の意識レベルが低下していることを確認し、直後に医師Cは血圧低下の原因として、子宮からの出血が急に増加している可能性も考え、超音波で腹部の上から観察したが、子宮口内の血液貯留はほとんどなく、悪露流出も通常の帝王切開と同じ程度だった。このころ、RCC2単位の輸血が終了した。

 輸血終了直前の午前10時46分、妊婦の血圧は同55/28に低下。医師らは追加で2単位の輸血を開始した。FFPもこのころ手術室に届けられたが、未解凍の状態だったため、直ちに輸血はできず、解凍した。

 午前11時ごろ、血圧は一時的に回復、同97/77になった。妊婦は医師Bの呼び掛けに一度うなずいた。医師らは、弛緩発作や脳出血の可能性も考え、CT撮影を行うことにした。


 午前11時すぎ、医師Aが待合室で妊婦の家族に胎児は死産だったこと、子宮は残したこと、痙攣などがあるため、鎮痛剤の投与を行ったことを説明。脳出血の可能性があるとして、CT検査をすることも説明した。

 手術室を出るまでの総出血量は経時的に把握されていなかったが、後に確認したところ、確認された分だけで、3438ml(吸引1500ml、ガーゼなど1938ml)だった。医師らは、手術中の出血量、吸引分の1500mlは把握していたが、それ以外の1939mlについては把握していなかった。

 午前11時15分ごろ、CT室に移送され、頭部CT検査を実施。同時に腹部CTも撮影した。子宮は巨大化しており、帝王切開後の子宮の重さがだいたい700mg以下、通常500g程度であるところ、1300gになっていた。腹腔内や子宮内に病的な液体貯留所見は認められなかった(後にCT画像から推測したところでは、子宮内に貯留していた血液は83.91cm3)。腹部大動脈と下大動脈は虚脱していた。画像診断をした脳外科医は、明らかな脳出血や浮腫はないと診断した。

 CT撮影中、看護師が呼吸の異変に気づき、「呼吸がおかしいから挿管した方が良いのでは」と医師Cに申し出た。医師Cは、撮影室から呼吸の状態を確認できず、手術室では自発呼吸をしていたことから、直ちに応じることはしなかったが、看護師は「絶対に呼吸がおかしい」と強く主張。撮影終了時に医師Cが確認したところ、努力性の呼吸(下顎呼吸)を呈していた。


 医師Aは、脳出血はなかったが、血圧が測定できないほど低いため、人工呼吸器を装着すると家族に告げた。

 午前11時半ごろ、普通病棟に移送。午前11時40分ごろからRCC2単位の輸血を実施。午前11時45分ごろにはFFP(新鮮凍結血漿、120ml)2単位の輸血を行った。

 午後0時2分の体温は33.0度。心拍数は136でSPO2と血圧は測定不可だった。午後0時10分、右鼠径部から血液ガスを採取し、SPO2は2555.5、PCO2は16.7、Ph7.002で、医師Bは代謝性アシドーシス、代償性過喚気になっていると考えた。同時に血液採取と血液検査も行われ、午後0時52分に判明した結果では、血小板8.1万μl、Dダイマーは73.1だった。遅くとも午後0時10分ごろの段階で、重症の産科DICを発症していた。

 血圧検査では、Hgbが7.5g/dl、Hctは22.2で、手術開始前に比べても、さらに貧血が進んでいる状態だった。午後0時ごろ、心エコーを実施したが、右室負荷も、右室拡大所見も左室圧排所見も認められなかった。


 午後1時10分ごろ、家族が面会で病室に入ったところ、人工呼吸器を付けていた。午後1時19分には医師が心臓マッサージをし、同24分ごろに心拍停止、同40分に死亡確認した。

 医師らは手術当日、産科DICスコアをカウントせず、SI(ショックインデックス、脈拍数/収縮期血圧)による評価はしていない。

 4月30日に警察の嘱託で司法解剖を実施。極度の貧血で、各臓器も貧血所見が著明だったが、それに相当する血液貯留は認められず、出血箇所の特定もできなかった。腹腔内は巨大な妊娠子宮で占められ、その前面に横走る新しい手術痕が認められ、子宮内腔に縫合痕と胎盤の剥離痕が認められる以外に異常な出血や血液貯留は認められず、腹腔内には淡赤褐色液75mlがあった。死因鑑定では、病理組織検査の結果、肺の血管内に羊水成分と見られる細胞(サイトケラチンAE1/AE3)を確認。血漿について亜鉛コプロポルフィリン(胎児の便中に大量に存在されるとされている物質)を測定したところ、高値を示した。鑑定医師は、肺の血管内に羊水成分と見られる細胞が確認され、その影響が貧血所見よりも重要であると判断し、妊婦の死因は羊水塞栓症であると推定した。胎児の死因についても鑑定し、常位胎盤早期剥離として矛盾しないと結論づけた。


■争点は7点

1.常位胎盤早期剥離発症時における産科DIC防止に関する過失の有無
2.産科DICおよびショックに対する治療に関する過失の有無
3.弛緩出血への対応に関する過失の有無
4.輸送義務違反の有無
5.過失と死亡との間の相当因果関係の有無
6.医師らによる期待権侵害の有無
7.妊婦とその家族の損害
06201_201606210556410a0.jpg



https://www.m3.com/news/general/434739?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD160620&dcf_doctor=true&mc.l=163454643&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
「暴力受けた」半数 訪問看護、利用者・家族に 神戸の大学調査
2016年6月20日 (月) 共同通信社

 利用者の自宅でケアをする兵庫県内の訪問看護師を対象にした調査で、50%が「暴力」を受けた経験があると回答したことが18日、分かった。暴力を振るったのは、利用者が71%、利用者の家族・親族が24%、利用者と家族ら両方からも2%あった。調査した神戸市看護大のグループが明らかにした。

 調査では、身体的な暴力だけでなく、言葉での侮辱や威圧的な態度なども「暴力」としている。

 グループの林千冬(はやし・ちふゆ)教授(看護管理学)は「自分の対応が悪かったのが原因と思い、暴力と認識しない場合もあり実際にはもっと多いはず。過去のトラブルの情報を共有する仕組みや行政の相談窓口設置など対応が必要だ」と指摘している。林教授によると、訪問看護現場の暴力を調べた研究は少ない。

 調査は、昨年12月から今年1月、兵庫県内の訪問看護ステーション83施設の600人に質問状を送り、358人が自身の経験に基づき回答した。

 暴力を受けた経験があると回答した人(180人)に内容を複数回答で聞くと、威圧的な態度が49%、言葉での侮辱が45%、身体的暴力が28%などだった。

 言葉の侮辱としては「ばか女死ね」「はさみで刺す」などと言われたほか、身体的暴力では「つえでたたかれる」「生傷が絶えない」など。

 セクハラ被害もあり「抱きつかれた」「利用者が訪問中にアダルトビデオをずっと見ていた」などの回答があった。

 暴力を振るったのは、60~69歳が32%、70~79歳が23%だった。

 対応では「相手の言い分をただただ傾聴した」が23%と最多。「やめるよう伝えた」と「我慢した。あきらめた」がいずれも15%だった。9割近くは上司に報告していたが、予防策が「ある」としたのは22%にとどまった。

 林教授は「利用者の自宅で一対一になり、身体的な接触も多い。暴力を予測することは難しい」と分析している。

 ※訪問看護
 民間の訪問看護ステーションから、看護師らが病気や障害のある人の自宅を訪問し、生活の介助や医療処置など在宅での療養をサポートするサービス。利用者は増えており、約39万人が利用している。介護保険と医療保険のいずれかから費用が出る。利用したい場合は、主治医に相談して病状や要介護度などが書かれた「訪問看護指示書」を交付してもらう必要がある。全国訪問看護事業協会によると、昨年4月現在、全国に約8200のステーションがある。



https://www.m3.com/news/general/434740
「理不尽な実態知って」 体調異変のケースも
2016年6月20日 (月) 共同通信社

 神戸市看護大の研究グループが実施した調査で、訪問看護師が暴力に悩まされている実態が明らかになった。調査に答えた訪問看護ステーションの所長らは「理不尽さに傷ついている人は多い」「まずは、暴力があることを知ってほしい」と訴える。

 ステーションで所長を務める50代女性が話したのは、スタッフの体調に異変が出たケース。30代の女性スタッフが、脳血管に病気を抱える利用者の30代の息子が出したお茶を飲んだ後、体調を崩したことが2度続いた。2回目は意識障害を起こし入院。所長は「薬の混入を疑ったが、原因は分からなかった」と明かす。

 病院の担当者や地域のケアマネジャーを通じ、事前に利用者の病歴や家族構成などの情報が入ってはくるが、別の女性所長は「家に実際に誰がいてどんな人なのかを知るために、玄関を入った一瞬の情報収集にかける」と打ち明ける。

 実際に暴力を受けても「利用者が病気だから仕方がない」と思ってしまう従事者も多い。ある女性所長は「暴力と表現するのに抵抗もあった。でも看護師が傷ついた事実は受け止め、種類別に分けて、対策を考えていきたい」と話した。

 暴力を防ぐには、複数での訪問が必要だが、人件費が増えるため実現が難しいのが実情。「行政などの支援がないと厳しい」と所長らは声をそろえる。



http://answers.ten-navi.com/pharmanews/7160/
医師の偏在を助長?医療界が大揉めする「新専門医制度」
2016/06/20 Answers News

専門医の養成制度をめぐり、医療界が大きく揺れています。

専門医の質の向上を狙って2017年4月にスタート予定の「新専門医制度」に対し、日本医師会や病院団体などから「医師の偏在を助長する」と批判が噴出。制度の運営を担う「日本専門医機構」は予定通り制度の開始を目指していますが、日医などの要望を受けた厚生労働大臣が延期を示唆するなど、混迷は深まるばかりです。


バラバラだった専門医認定を統一

専門医とは、内科や外科、小児科など、特定の診療科や疾患領域に関して専門性の高い知識や技能を身につけた医師が、認定を受けて取得できる資格です。

専門医の認定は、内科なら日本内科学会、小児科なら日本小児科学会といったように、各学会が独自に行っています。そのため、認定基準や認定方法は学会によってバラバラ。特に、専門医の広告が認められた2002年以降、学会による専門医資格は乱立することになり、質の低下やばらつきが懸念されるようになりました。

そこで厚生労働省は11年、専門医制度の見直しに向けた検討を開始。13年には「学会から中立的な第三者機関」を設立し、そこで専門医の認定と研修プログラムの評価・認定を統一的に行うという、新専門医制度の大枠をまとめました。


新専門医制度のポイント

新専門医制度のポイントを見ていきます。

新制度では、専門医資格を希望する医師は、医学部卒業後2年間の臨床研修を終えた後、さらに3年以上の研修を受けることになります(専門医資格を目指して研修を受ける医師は「専攻医」と呼ばれます)。研修は、大学病院などの基幹病院を中心に、地域の病院や診療所がグループを組んで実施。大学病院と地域の病院・診療所を行き来しながら症例を積んでいく仕組みになっています。

乱立していた専門医資格も整理されます。新制度では、専門医資格を「基本領域専門医」と「サブスペシャリティ領域専門医」の2つに区分。医師はまず、「内科」や「外科」「小児科」「皮膚科」といった基本領域専門医の資格を取得し、その後、希望に応じて「循環器」「糖尿病」「がん」「心臓外科」など細分化されたサブスペシャリティ領域専門医の認定に進む2段階方式となります。

新専門医制度の基本設計
06202_201606210556420c8.jpg

新制度の運営を担うのは、「中立的な第三者機関」として14年に設立された「日本専門医機構」。機構は、研修を行う病院が作った研修プログラムの評価・認定、専門医の認定を行います。


大学病院に医師集中?「地域医療に混乱」広がる不安

専門医の質を高め、良質な医療を提供する――。高尚な目的を掲げて走り出した新専門医制度ですが、医師会や病院団体からは批判が噴出し、制度の延期を求める声も大きくなっています。なぜなのでしょうか。

まずは下の図をご覧ください。

新専門医制度の仕組みと医師偏在への懸念
06203_20160621055643f72.jpg


先にも触れたように、新専門医制度では大学病院などの「基幹病院」が、専門医機構が認定したプログラムに基づいて研修を行う計画です。専門医機構はプログラムの整備基準で、各専門領域で幅広い症例を数多く経験させるよう求めており、基幹病院は大学病院などの大規模病院が中心にならざるを得ず、特に地方では“基幹病院=大学病院”という構図になってしまうことは容易に想像がつきます。

こうした制度設計のため、若手医師が大学病院に集中し、地方の中小病院に若手医師が集まらなくなるとの不安が広がっています。加えて、専門医研修を行う施設には「指導医」を配置する必要があり、ベテラン医師までも大学病院や連携施設にとられてしまう可能性も指摘されています。


地方自治体からも批判

日本医師会と日本病院会など4つの病院団体は今月7日、「指導医を含む医師および研修医が都市部の大学病院等大規模な急性期医療機関に集中し、地域偏在がさらに拡大する懸念が強く、地域医療の現場に大きな混乱をもたらす」との声明を発表。17年度からの制度開始に“待った”をかけました。

こうした声は、地方自治体からも上がっています。5月には関西広域連合が「地域医療を支えている中小病院が基幹病院になるのは事実上困難で、連携施設も常時専攻医の派遣を受けられる担保がなく、地域医療を支える医師の確保に多大な影響が生じる」との意見書を国に提出。問題が解決するまで、制度を延期するよう求めました。


深まる混迷、厚労省が延期を示唆

混乱は続きます。

塩崎泰久厚生労働相は、日医と病院団体の要望を受けたその日のうちに「要望の趣旨を十分理解する」との談話を発表。「要望や意見を真摯に受け止め、なお一層の取り組みをされることを強く期待する」と、現計画にこだわる専門医機構をけん制しました。

それでも専門医機構は、予定通り17年4月から制度を開始する意向を崩しません。11日には主要な学会に対して「研修プログラムに基づく専門医育成の仕組みを実現させることも非常に重要」とのコメントを送付。塩崎厚労相は14日の記者会見で「談話の趣旨が全く踏まえられておらず、大変遺憾」と不快感をあらわにし、制度の導入延期も含めて議論する必要があるとの考えを示しました。

新専門医制度に対する批判は、医師偏在を助長しかねない仕組みだけでなく、意思決定プロセスの不透明性など専門医機構のガバナンスにも向かっています。感情的な対立に陥ってしまっている面もあり、混迷は深まるばかりです。


17年4月のスタートは不透明

新専門医制度をめぐっては、厚生労働省に専門委員会が設けられ制度の改善に向けた議論が進んでいます。従来はプロフェッショナルオートノミー(専門職の自立性)を尊重してきた厚労省ですが、混乱を収拾しようと介入に乗り出した格好です。

厚労省は専門委員会に、17年4月から新制度の運用を“試行的”に始めてはどうかと提案しています。しかし、議論はいまだにまとまっていません。予定通り17年4月に新制度をスタートできるかは不透明な状況です。



http://www.yomiuri.co.jp/local/yamagata/news/20160620-OYTNT50183.html
米沢市の新病院 建設予定地変更
2016年06月21日 読売新聞 山形

 ◆当初予定から北西2キロ

 医師不足で閉鎖された米沢市立病院の精神科を巡り、再編統合に応じる意向を示した社会医療法人「公徳会」(南陽市)が、新病院(108床)の建設予定地を米沢市内の別の工業団地に変更することが分かった。

 市によると、新たな予定地は米沢オフィス・アルカディア内の1.32ヘクタール。当初検討された米沢八幡原中核工業団地から北西約2キロにある。先月23日に開いた住民説明会で、当初予定地が市立万世小学校に隣接することから、来院者の車が増えて交通安全上の懸念が生じるなどの声が上がった。このため、公徳会が予定地の変更を市に伝え、協議していた。予定地は当初の7割と狭くなるが、鉄骨2階、延べ床面積約5300平方メートルの病棟を建設するとした当初の設計を採用する。

 中川勝市長は記者会見で「来年度のなるべく早い時期に開業できるよう、公徳会への支援を含めて検討したい」と話した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/434883
シリーズ: 真価問われる専門医改革
池田理事長、「新理事に推薦されても辞退」
日本専門医機構の執行部、トップ含め刷新か

2016年6月20日 (月) 橋本佳子(m3.com編集長)

 日本専門医機構の第12回理事会が6月20日に開かれ、理事長の池田康夫氏は理事会の席上、「新執行部の理事として推薦されても、辞退する」と表明した。理事会後、m3.comの取材に答えた。同機構の役員の任期はこの6月末で切れ、新役員の選考が現在進められている(『日本専門医機構の新理事候補、来週にも決定か』を参照)。池田理事長は、2014年5月に発足した日本専門医機構の初代理事長で、前身の日本専門医制評価・認定機構時代から理事長を務めていた。

 池田理事長は、「研修プログラム制とサイトビジットという、専門医養成のプラットフォームを作り、一応の役割を終えた。あとは次の執行部に委ねたい」と語った。

 なお、同理事会では、2015年度の事業報告,収支決算書についての承認などを行った。新役員は、「役員候補者選考委員会」を経て、6月27日開催の日本専門医機構の社員総会で決定する予定。


◆池田康夫・日本専門医機構理事長に聞く

「専門医養成のプラットフォームを作った」

 私たちは、グロ―バルスタンダードの良質の専門医を養成するために、(機構発足後の)この2年間議論してきた。その基本は、研修プログラム制と、(研修施設を評価するために訪問調査などを行う)サイトビジットだ。基本診療領域の学会の賛成は得られ、コンセンサスを作り上げた。また専門医の更新についても、単に学会に出席して判子をもらうのではなく、共通講習を受け、診療実績を重視するなど、専門医の質をよくするための仕組みとしてでき上がった。

 あとはこれをどのように実施するかという問題になる。その際に、地域医療の問題を無視して進めることはできないので、次期の執行部に渡して、そこで判断していただく。自分としてはプラットフォームを作り、一つの形ができ上がったので、一応の役割を終えた。あとは次の執行部に委ねたい。

 地域医療の問題は、専門医制度だけで解決する問題ではない。日本全体が、地域創生を問題にしている。医療だけでなく、経済なども全て都市に集中して、地方の過疎化が進んでいる。これは日本全国で起こっていることで、医療はその一端。このまま何もしなければ、この都市集中の動きはますます進む。日本専門医機構は、「地域で医師を育てる」という新しい考え方を打ち出し、それに対して歯止めをかけるよう努力してきた。

 新専門医制度は「大学中心」と言われるが、これまでも専門医養成は大学中心だった。例えば、慶應義塾大学の場合、医学部の卒業生約100人のうち、約80人は初期研修で外の病院に行くが、3年目になると、ほとんどが大学に戻ってくる。他の大学も大抵そうだろう。だからこそ、(大学病院などの基幹施設以外に)連携施設を作り、地域でも専攻医が研修できる仕組みを作るというのが我々の提案だ。

 専門研修プログラムは1次審査を終えたが、2次審査は今、ストップしている。2次審査を仮にやるとすれば、非常に専攻医の定員が多いところ、あるいは本来入るべき研修施設が抜けているところなどについて、注文を付ける予定だった。それらの対応によって、地域医療への影響は最小限にできると考えていた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/434893
シリーズ: 真価問われる専門医改革
内科学会、「新専門医は7月末を目途に判断」
実施なら正式な制度、「現制度の継続」の可能性も

2016年6月21日 (火) 橋本佳子(m3.com編集長)

 日本内科学会は6月20日、「新しい専門医制度への取り組みについて」という見解を公表した。新専門医制度について理解が得られれば、2017年度から「試行」ではなく、正式な制度として開始するものの、時間的な状況を踏まえ、新専門医制度開始の見通しが立たない場合、「本年7月末を目処に、2017年度は現制度を継続する判断をする」という内容だ(同学会のホームページ)。

 20日の見解ではまず、新専門医制度について、「解決すべきさまざまな課題が明らかになり、国民的議論に発展しつつある。超高齢社会を前に、「専門医養成の在り方が注目されるのはもっともなこと」と指摘。その上で、日本医師会や四病院団体協議会の要望書、厚生労働大臣談話などでも求められている集中的な精査、協議により、建設的な意見集約を行い、より良い仕組みとなることを期待しているとし、理解が得られれば、2017年度から新専門医制度を開始するとしている。

 しかし、研修施設、指導医、専攻医の置かれている状況、検討の協議で結論に時間を要すると考えられるとし、「新しい専門医制度が開始できるという見通しが得られない場合、本年7月末を目処に、来年度に関しては日本内科学会の現制度を継続する判断をしたいと考える」と説明。

 今なお方針が定めにくい状況が伺え、後段では、「新しい制度の取り組みに関する目下の懸念点は、新しい制度がいつ始まるのか、その研修実態はきちんとした制度であるのかどうか、ということにあると思う」と指摘。この6月末に選出される日本専門医機構の執行部、地域医療を担う医療関係者および各学会と十分協議した上で、本年7月末を目処に新しい専門医制度が問題なく開始できることが確認された場合には、「試行的ではなく、正式な専門医制度として開始されることを強く望む」と結んでいる。

 2017年度から開始予定だった新専門医制度は、地域医療への影響が懸念され、全領域での全面実施は見送られ、各学会の判断に現時点では委ねられている(『新専門医制で18学会に釘刺す、日医と医学会』を参照)。地域医療への影響が特に大きい、日本内科学会と日本外科学会の判断に注目が集まっている。

 「指導医の大病院集中や引き剝がしに配慮」

 20日の見解では、新内科専門医について、「複数の疾患を有する場合の多い高齢者にも質の高い医療を提供できるジェネラルな素養を持つ内科医の育成」を目指し、幅広い症例経験を求めるプログラムを設けたと説明。従来は、初期研修を含めて3年で取得可能だった認定内科医を、初期研修を含めて、5年の研修を必要とする内科専門医としたのは、こうした理由からだとした。内科専門医のあり方については、引き続き内科のサブスペシャルティ学会と協議していく方針。

 新専門医については、「質の高い医師の養成」と「地域医療の充実」という、「ともすると矛盾しがちな課題の解決」が求められるとし、「地域医療」の充実という要請に応えるため、新制度では、施設群による研修体制を構築したという。基幹施設と連携施設が施設群を組む体制になったことから、専門医養成に関係する施設は、従来の1194施設から2875施設と2.4倍に増加、増加の大半を中小病院が占め、新たに200床未満の施設が1568施設加わることから、「指導医になることができなかった中小病院所属の内科医が、指導医として新たに参加することとなり、指導医の大病院集中や引き剥がしがないように配慮している」と理解を求めている(『内科専門医、「研修施設ゼロ」の2次医療圏は1カ所』などを参照)。

 さらに研修医に対しても、(1)内科系サブスペシャルティ研修に関する弾力的な対応、(2)休職期間の取り扱い、(3)研修実績の登録と評価――について説明。


  1. 2016/06/21(火) 06:11:46|
  2. 未分類
  3. | コメント:0
<<6月21日  | ホーム | 6月19日 >>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する