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6月9日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/431975
新専門医制度、2017年度の全面実施見送りへ
学会認定で実施、日本専門医機構の関与は「学会次第」

2016年6月9日 (木)  橋本佳子(m3.com編集長)、成相通子(m3.com編集部)

 日本専門医機構は6月9日、2017年度からの新専門医制度は、同機構認定ではなく、学会認定で行う方針を固めた。新専門医制度は当初、日本専門医機構がイニシアティブを取り、第三者の立場で認定する仕組みを予定していたが、見送られる見通し。これは同日開催された同機構の専門研修プログラム研修施設評価・認定部門委員会/基本領域研修委員会の合同委員会で議論した結果だ。近く開催される同機構の理事会で、正式に決定する予定。

 新専門医制度をめぐっては、日本医師会と四病院団体協議会が懸念を表明、それを受け、塩崎恭久厚労相が談話を出すなど、2017年度からの実施か否かで揺れていた(『「学会専門医の維持を」、日医・四病協緊急会見』、『塩崎厚労相、新専門医制度への「懸念」理解』を参照)。合同委員会と同じく9日に開催された厚生労働省の社会保障審議会医療部会でも、新専門医制度を議論したが、「延期」などの決定はせず、同機構と学会の検討に委ねるとされた。

 2017年度からの専門医養成をいかなる形で行うか、その検討のボールは基本診療領域の各学会に投げられたことになる。ただし、新たに基本診療領域に加わる予定の総合診療専門医については、「日本専門医機構が養成を行う」(同機構理事長の池田康夫氏)。

 各学会は、新しい専門研修プログラムを用いるか、従来通りの方針で専門医養成を行うか、日本専門医機構が準備している専攻医登録システムを利用するか否かなどの判断を迫られる。学会によって、態度が異なり、従来通りの方法でやる学会もあれば、同機構と協同しながら新専門医制度の「試行」と言えるような実施を予定している学会もある。

 日本内科学会の代表は、合同委員会の席上、新専門研修プログラムで実施するとし、「試行という形でぜひやりたいと思う。機構を無視してやることは考えていない」と発言。日本リハビリテーション医学会も、6月8日の理事会で「原則として、2017年度から予定通り新専門医制度の研修プログラムを開始する方針を確認した」と説明。

 一方、日本皮膚科学会理事長の島田眞路氏は、m3.comの取材に対し、「従来通りの方法でやることを、機関決定している」と答えた。日本脳神経外科学会理事長の嘉山孝正氏も、取材に対し、現行の方法で実施する方針と回答。新専門研修プログラムは、基幹病院と連携病院が協力して専門医養成に取り組む「プログラム制」が特徴。両学会とも、現行制度でも「プログラム制」で実施しており、質を担保した専門医養成が可能な上、地域医療への影響も問題ないと判断している。

 そのほかの学会の多くは、新専門研修プログラムの準備を進めているため、新旧両制度での実施が可能としつつ、理事会での決定をしていないとし、合同委員会では態度を保留した。

 もっとも、いまだ流動的な部分は多い。最大の問題は、日本専門医機構の役員体制だ。理事長・理事の任期はこの6月末で切れるため、役員候補者選考委員会が近く開催され、役員候補を選び、理事会と社員総会を経て最終決定する。新専門医制度は「全面実施」ではないものの、試行的に進める学会もあるため、同機構のガバナンスの問題が指摘される中、その立て直しが不可欠だ。

 地域医療への影響が排除できるかという問題も残る。新専門医制度については、都市部、あるいは大学病院をはじめとする大病院に専攻医が集中する懸念が呈せられ、専攻医の募集定員に上限を設けることも検討された。しかし、専門研修プログラム研修施設評価・認定部門委員会の委員長を務める四宮謙一氏によると、「学会に委ねる形になるので、定員調整する権限は我々にはない」という。副理事長の小西郁生氏も、「ある程度のところまで調整してきたので、後は学会に任せることでいいのではないか」とコメント。

 日本専門医機構は、この6月から専門医取得を目指す専攻医全員の登録を開始、7月15日から専門研修プログラムの閲覧を可能にし、8月15日から1次募集に応募というスケジュールを予定していた。この専攻医登録や、専門研修プログラムの公開などを、各学会単独で行うか、機構と並行して行うかなどは未定。四宮氏は、専攻医の混乱を避けるためにも、全領域の専門研修プログラム一覧を同機構のホームページで掲載したいとし、7月1日頃からの開始を目指すが、足並みや準備が整うかは未定。

 専門研修プログラムを運営する基幹病院に対しては、領域ごとに認定料10万円を日本専門医機構が徴収する予定だった。同機構は、領域別専門研修プログラム整備基準の作成などを学会と一緒に取り組んできたものの、少なくとも現時点では、機構認定という形を取らないため、認定料の扱いも今後の検討課題だ。専門研修プログラムについては、基幹病院に赴き、実施状況などを確認する「サイトビジット」も行う予定だった。この点については、「サイトビジットは、研修プログラムとは表裏一体。第三者でないと評価できないので、これは機構に任せてもらいたい。比較的強いお願い」と四宮氏は述べ、2、3年後からは実施したい意向だ。

 さらに仮に2018年度以降に、日本専門医機構認定による専門医がスタートすると決まった場合の扱いも問題になる。四宮氏は、既に2017年度から新専門研修プログラムで研修を受けている専攻医については、研修修了の時点で、学会認定ではなく、同機構認定の専門医になるとの見通しを示したが、この辺りも検討課題だ。


 専門医の単位取得で総会混乱
 9日の合同委員会の冒頭、小西副理事長は、昨今の新専門医制度をめぐる動きを説明、その上で、同機構が発足した約2年前を振り返り、「18の違う文化の学会が集まり、無理かと思ったが、一つの理念と目的に向かって、よくここまで来たと感慨深い。この2年間、議論を積み上げてきたプロダクトは大きい。それが無になることはないと確信している」とあいさつ。既に「機構と協力しながら、学会が自由度を持ってやる」という方針を固めていると説明。その後、各学会(基本診療領域)代表の方針を聞く形で、合同委員会は進んだ。

 日本小児科学会は、「2年半かけて準備してきた。会内でも議論して制度を作り上げてきた」と述べ、新専門研修プログラムを開始するのは可能とした。「延期となっても、新しいプログラムでやりたいと思う」(日本整形外科学会)、「状況が刻々と変化しているが、時間をかけて、整備基準とプログラムを練ってきたので、再度理事会の承認を取る必要があるが、来年度からの実施は可能」(日本産科婦人科学会)など、新専門研修プログラムの実施を表明する学会が幾つかあったが、医師不足の折から、より多くの専攻医募集を期待する声も上がった。

 日本泌尿器科学会からは、「早期から機構の制度に乗ると言っている」との説明があった上で、専門医単位の取得の仕方がかなり変わるため、4月に開催された総会では単位が取得できるプログラムに会員が殺到して、混乱した状況が紹介された。

 日本外科学会は、「専門研修プログラムの作成に当たっては地域医療にこれまでも配慮してきた」と断りつつ、来週に同学会の理事会等が予定されていることから、そこで決定すると説明。

 日本麻酔科学会は、「プログラム制で2年前からやっている。それを多少モディファイしてやるのは可能。今後、理事会で決定する」と説明しつつ、4つの懸念があるとした。定員設定の問題、専攻医への宣伝やリクルートの開始時期、専攻医の登録料、募集の仕組みだ。新専門医制度では、1次募集を行い、不合格者に対し2次、3次募集を行う流れが想定されている。4つの点について、明確にし、柔軟的運用が可能になることが必要だとした。


 「専攻医登録システムの利用を」
 2017年度からの専門医養成の在り方は、各学会に委ねられたわけだが、池田理事長は、「各学会が真摯に専門研修プログラムを作ってきた。これからの若い医師をどのように育てるのか、学会が果たす役割は大きい。学会独自で見識に則って運営してもらいたい」と述べ、機構が専攻医登録システムを構築中で、6月中には完成予定であることから、「機構はプラットフォームを用意しているので、できれば利用してほしい」と求めた。

  合同委員会では、各基幹病院は、専門医取得を目指す医師向けの見学会や説明会を開催したくても、できない状況にあるとし、「学会に委ねるのであれば、こうしたことは全て解禁してもらいたい」と求める声も上がった。小西副理事長は、例えば7月1日など、各学会に任せるのではなく、専門研修プログラムの公表の解禁時期くらいは合わせてもいいのではないかと答えた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/431633
シリーズ: 真価問われる専門医改革
医系市長会、菅官房長官らに新専門医制度で要望
「拙速に進めることは反対」、機構も問題視

2016年6月8日 (水) 橋本佳子(m3.com編集長)

 全国医系市長会(会長:立谷秀清・相馬市長)は、6月8日に開催した2016年度の定例会議で、「新専門医制度を拙速に進めることに反対する要望書」を決議、同席していた日本医師会会長の横倉義武氏に手渡した。同会議後に内閣官房長官の菅義偉氏とも面談、提出先は、安倍晋三首相、塩崎恭久厚労相、公明党の山口那津男代表、参議院の羽生田俊議員を合わせ、計6人。

 全国医系市長会は、医師あるいは歯科医師の資格を持つ全国12の市長で構成する。要望内容は、(1)新専門医制度は、国民医療の観点から幅広く時間をかけて協議すべき、(2)日本専門医機構の在り方および議論の仕方を抜本的に見直し、拙速な決定を避ける――の2点。

 要望書では、「日本専門医機構により進められている新専門医制度は、大学病院をはじめとする大規模病院においてのみ専門医取得が可能となる、地域医療の観点から極めて不適切な制度」と問題視。「若い医師が専門医を目指すことにより、医療の質が向上する可能性を否定するものではない」と断りつつ、新専門医制度が採用するプログラム制の専門研修は、自由度がなく、女性医師の結婚出産、若い医師が多様な学習機会を得て成長する可能性を制限することになりかねないと指摘している(『若手医師ら12人、塩崎厚労相に新専門医制度で直訴』を参照)。

 立谷市長は、新専門医制度について、専門家だけで議論されてきたものの、「政治課題としてしっかりと議論すべき」と指摘。m3.comの取材に答えた立谷市長は、「事前に要望を伝えていたこともあり、菅官房長官からは、『要望の趣旨に沿って、適切に対応するよう、塩崎厚労相に伝えた』との返答があった」と語った。

 8日の定例会議に出席した横倉会長は、前日7日に、日医と四病院団体協議会と合同で記者会見を開き、2017年度からの新制度開始を延期し、現行の学会専門医の仕組みの維持などを求めたことを説明(『「学会専門医の維持を」、日医・四病協緊急会見』を参照)。厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」が2014年4月に報告書をまとめた以降から、直近までの動きを紹介しつつ、新専門医制度の専門研修プログラムについて「従来よりも高いハードルを設定した学会があり、地域の病院から不安、不満が出てきた」と述べ、既に専門医を取得している医師からも、「更新しにくい」という強い不安の声が寄せられている現状があるとした。さらに日本専門医機構の執行部体制についても、「不安の声を聞かずに進める状況にあり、見直すよう求めている」(横倉会長)。

 定例会議に出席した羽生田議員も、「専門医とは何か、と聞いた時に、誰がちゃんと答えられるのか。学会も含め、皆の言うことが違う。定義が全くない状態で、今の制度が議論されているのが問題」と根本的な問題を提起。さらに日本専門医機構について、「厚生労働省が思うがままにしたいという意向で作った仕組み。いったん止めて、できれば今の機構は壊して、ゼロからやり直してもらいたい」と求めた。

 「大学に医師が引き抜かれる」
 8日の定例会議には、12人に医系市長のうち、立谷市長も含め、7人が出席。

 立谷氏が市長を務める相馬市は、隣接する南相馬市とともに、東日本大震災に伴う福島第一原発事故のあおりで、医師不足が深刻化したものの、研修制度などの充実を図り、初期と後期の研修医、さらには指導医クラスの医師を集めることに成功。ただし、今の新専門医制度では、相馬市や南相馬市の病院は、規模的な条件などから基幹病院になることが難しい。立谷市長は、「せっかく被災地に医師を集めたにもかかわらず、初期研修を終えた人がこの地に残れず、大学に引き抜かれてしまうのは大変なこと。地域に残って研修できる仕組みであればいいが、現時点ではその辺りが明確ではない。だから拙速ではなく、よく考えてから進めてもらいたい」と、要望書をまとめた経緯を説明。

 要望書に対し、若干の疑念を呈したのは、秩父市長の久喜邦康氏。秩父市立病院を中心に、地域の医療機関、自治医科大学などとも連携し、総合診療専門医の専門研修プログラムの運営を検討している状況を説明した。2004年度の臨床研修の必修化以降、医師不足に陥ったため検討した結果が、地域で総合診療専門医を養成する枠組みだという。

 立谷氏は、「秩父の動きを決して否定するものではなく、それが実現できればいい」と取り組みを評価した上で、現実には総合診療専門医についてはいまだ検討中であるとした上で、「地域の要望が入るように持っていけばいい」と述べ、地域の実情に合わせて新専門医制度を運営できるようにするためにも、要望が必要だとした。

 「日医認定の資格を」との提案も
 立谷市長からは、横倉会長に対し、「医師会認定の専門医制度を作ったらどうか」との提案もあった。現行制度についても、専門医取得に当たっては、学会に入会することが前提であり、「独占」している点に問題があると見るからだ。日医は今年度から「日医かかりつけ医機能研修制度」をスタートさせており、同制度を専門医制度につなげる発想とも言え、立谷市長は、「かかりつけ医」ではなく、「総合診療医」との名称にすべきとも提言。

 横倉会長は、19番目の基本領域の専門医に位置付けられる総合診療専門医は、家庭医療専門医制度を運営してきた日本プライマリ・ケア連合学会ではなく、日本専門医機構直轄での運営が検討されていると説明。専門医との関係には触れず、あくまで「かかりつけ医」を養成していくとした。



https://www.m3.com/news/general/431841
架空診療で報酬詐取疑い 大阪、眼科医を逮捕
2016年6月9日 (木) 共同通信社

 診察していない患者の処方箋を交付し、診療報酬約2万1千円をだまし取ったとして、大阪府警生活環境課は8日、医師法違反と詐欺の疑いで、大阪市住吉区の診療所「いぬい眼科」経営者で医師の乾俊介(いぬい・しゅんすけ)容疑者(56)=同区=を逮捕した。

 逮捕容疑は2013年11月~14年3月、実際は診察していないのに、処方箋9通を交付。14年1月~5月、奈良県葛城市から診療報酬として計約2万1千円を詐取した疑い。

 生活環境課によると「悪意があって請求したわけではない」と詐欺容疑を否認した上で「近所にある薬局の経営者から、社員の保険番号を教えてもらった」と供述。薬局経営者の男(65)は調剤報酬約1400万円をだまし取った疑いで5月末に逮捕されており、同課が関連を調べる。



https://www.m3.com/news/general/431836
肺炎で入院、1歳児の加湿器に水と間違え消毒液
2016年6月9日 (木) 読売新聞

 名鉄病院(名古屋市西区)で先月、肺炎で入院した男児(1)の酸素テントの加湿器に、精製水と間違えて消毒液を入れるミスがあったことがわかった。

 男児は今月2日に退院。現在までに健康被害などは出ていないが、同病院では医療ミスと認め、患者側に謝罪した。

 同病院によると、男児が先月24日夜に入院した際、治療のために入った酸素テントの加湿器に、看護師が誤って、主に洗浄に使う消毒液40ミリ・リットルを入れた。精製水と消毒液のボトルはともに乳白色の500ミリ・リットル入りで、同じ棚に保管されており、確認不足のまま使われたという。その後、加湿器への注水も怠り、治療が終わった27日に加湿器を確認してミスに気付いた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/431831
シリーズ: 降圧剤論文問題と研究不正
検察側指摘以外にも改ざん症例、ノバ社の分析
社員の循環器内科医に尋問、CCB論文、引用回数は4回

2016年6月9日 (木) 高橋直純(m3.com編集部)

 ノバルティスファーマ社の降圧剤を巡る京都府立医科大学での医師主導臨床試験の論文データ改ざん事件で、薬事法(現医薬品医療機器法)違反(虚偽広告)に問われた元社員とノバ社に対する第27回公判が、6月8日に東京地裁(辻川靖夫裁判長)で開かれ、ノバ社に所属する循環器内科の医師が独自の分析結果を証言。KHS(Kyoto HEART Study)において、検察側が改ざんがあったとする45症例以外にも、京都府立医大の登録症例9例でカルテとweb入力データに違いがあったと説明した。ノバ社側は、本件の問題を「周囲の医師がさまざまな事情で問題行為に及んだことの総和」と主張しており、検察側が指摘する以外にも問題がある研究だったと主張する意図があるとみられる。

 KHSのCCB(カルシウム拮抗薬)論文の引用回数は、2015年5月時点で4回にとどまることも証言された。

ノバ社グローバルチームの医師が分析
 証人として出廷したのは、ノバ社に所属する循環器内科の医師(以下、ノバ社医師)。1996年に北海道大学医学部を卒業後、国内の病院での臨床経験が約10年にあるほか、米ハーバード大学関連病院で研究業務に従事した経歴を持つ。ノバ社には2013年に入社し、治験を担当する研究開発部や医薬品の適正使用を推進するメディカルアフェアーズ部に所属。現在はスイス・バーゼルにあるノバ社本社のグローバルチームで、心不全に関する薬の適正使用の推進を進める業務に従事している。白橋伸雄被告と面識はなく、同被告の起訴後にノバ社弁護士を通じて分析業務を依頼された。検察側が同意せず、証拠として採用されていないものも含めて8本の報告書を作成した。

 検察側はこれまでKHSに登録された約3000症例のうち45症例で、参加医師が登録したデータがカルテや解析に使われたデータが違っているとする分析結果を示し、白橋被告が改ざんしたと主張している(『45症例で報告データと解析データに違い、検察側解析結果』を参照)。ノバ社医師は京都府立医大の登録症例を独自に分析。同大の310症例はバルサルタン(ディオバン)群が151症例、非ARB群が159症例となっており、全てのカルテの開示請求をしたが、両群でそれぞれ24症例が「カルテが存在しない」として開示されなかったと説明した。

 京都府立医大の非ARB群では41症例がイベント報告されているが、検察側が主張する45例の中の同大登録分と、カルテが存在しない症例を除いた22症例を分析。そのうち9症例で、カルテの記載からはイベントとして報告するのにふさわしくないにもかかわらず、イベント報告されていたと報告した。ある症例ではカルテでは「人工弁の手術」と記載されていたが、web入力データでは「心不全で手術」となっていた。

 弁護側は冒頭陳述で「本件ではKHSの中心医師や症例登録医師が症例登録データを偽るなどの行為を自認しており、周囲の医師がさまざまな事情で問題行為に及んだことの総和」と指摘しており、検察側が指摘する45症例以外にも改ざんがあったことを示すことで、白橋被告以外の関与を今後、主張していくとみられる。

改ざんの記述、「医学的に理解できない」
 ノバ社医師は検察側が改ざんがあったと指摘する45症例についても分析。カルテではイベントではないとされていたものが、イベントとして報告されていたが、その際の追記の内容が専門的な記述とそうでないものが混在していると主張した。滋賀県内の病院で勤務していた男性医師Cの登録症例では、カルテで「左大腿骨点子部骨折により整形外科に入院」と記載されていたが、web入力データでは「左大脳動脈梗塞外科入院」となっていた(『虚偽報告の医師、「医師が足りなくなる不安」が動機』を参照)。ノバ社医師は「左大脳動脈」という表現は解剖学的に存在せず、「医学的に理解できない」と述べた。一方で、専門家の見地から見ても問題ない加筆もあるとした。弁護側冒頭陳述では「仮に白橋被告が改ざんを行ったとしても研究補助として参加したにすぎず、白橋被告が水増ししたとされる45症例について、複数の人物の関与が排除できない」と主張している。

 また、事務局を務めた男性医師Aがイベント判定を行うエンドポイント委員会提出資料を作成する際に加筆したという問題(『男性医師、イベント発生となるように加筆?ノバ社側尋問』を参照)について、加筆内容は「委員会の疑義に対して、的確に過不足なく追記している。イベント認定されやすくなっている」と分析した。

CCB論文、引用回数は4回
 ノバ社医師はKHSの論文の引用状況を説明。2015年5月時点で、CCB論文は4回、CAD論文が10回、KHS主論文が154回だったが、そのうちKHSの論文相互の引用や論文撤回の報告、研究不正を扱った論文の中で例示として引用されたものがあったと説明。掲載紙のインパクトファクター(IF)値については、2010年時点で、CCB論文が掲載されたclinical and experimental hypertensionが1.2、CAD論文のAmerican Journal of Cardiologyが3.2、KHS主論文のEuropean Heart Journalは2009年時点で9.8だった。IF値は合算された数字が医局内の昇進や教授選での指標になるとし、一般論として循環器内科の教授選では200が目安になると説明した。

 また、論文においては責任著者(corresponding author)が最も責任があるとし、バルサルタンに関する同様の臨床研究であるJHS、VART、NHS、SMARTでは、いずれも教授だったのに対し、KHSでは主論文とCCB論文ではともに事務局の男性医師A、CAD論文では医局員だったと指摘した。

 CCB論文の評価については、「私が思っていた結果と逆で驚いた」と説明。その理由を、「CCBが投与されている患者は重症者が多くイベント発生が多いと思っていたが、逆だったから」と説明した。また、CCB投与群の群分けについては、「どのような状態の患者がいるかの評価が難しい」と指摘した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/431871
医師資格証の発行数が急増、診療報酬改定で
日医が「IT化宣言2016」

2016年6月9日 (木) 成相通子(m3.com編集部)

 日本医師会は6月8日の会見で、「全ての医師への医師資格証の普及」などを掲げる「日医IT化宣言2016」を公表した。また、日医の医師資格証の発行が5月末までの申請で5092枚になったと報告した。3月末までの発行数は約2700枚だったが、2016年度診療報酬改定で、医師資格証などを使った診療情報の電子的なやり取りが点数化されたことを受け、急速に枚数が伸びているという(資料は、日医のホームページ)。

 6月8日の会見では、日医医療IT委員会が2014年に横倉義武会長の諮問を受けた「新たなIT化宣言」「医療・介護における多職種連携のあり方」について、2年間の議論をまとめた答申を報告。横倉会長は会見で、「医師資格証の普及に力を入れている」と説明し、「毎月1000人以上の申し込みを受けている」と医師資格証の普及が進んでいることを強調した。

 急伸について、日医常任理事の石川広己氏は、2016年度診療報酬改定で、医療連携の推進を目的に、医師資格証などの電子署名を使って、診療情報提供書等を電子的にやり取りした場合の点数が新設されたことが原因と分析した。この4月には日医会員の医師資格証の年会費を無料にしている(『医師資格証、日医会員は年会費無料化』を参照)。

 日医IT化宣言は2001年に当時の坪井栄孝会長が公表。「ORCAプロジェクトの推進」などを掲げ、その後、日医標準レセプトソフトのORCAを開発しオープンソースとして無償公開した。答申では、ORCAはレセコンの価格破壊やデータ収集などに功績があったとし、今後は日医の外部事業体「日本医師会ORCA管理機構(株)」がORCA事業の運営を引き継ぐことを明らかにした。これまで毎年3.6億円の予算を同事業に投入していたが、外部事業体への引き継ぎで、今後はより低額な経費負担になるという。

 答申の「医療・介護における多職種連携のあり方」の項目では、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の安全な利用方法についての言及があり、石川氏が「画期的で踏み込んだ発言だ」と評価した。多職種が関わる医療・介護の領域では、一堂に会して連絡を取り合うことが困難なため、コミュニケーションツールとしてSNSが活用されている現状がある。

 しかし、FacebookやLINEなどの公開型のパブリックSNSはセキュリティ面が脆弱で、 答申では、非公開かつ医療・介護連携専用のプライベートSNSが必須だと指摘。アクセスの際には、プライベートでも使っているスマートホンなどの端末を利用するのではなく事業者の管理する端末で利用することや、安全管理に関するガイドラインの整備も必要だとした。また、医療・介護情報連携をする専用のセキュリティが確保された、全国規模のユニバーサル基盤の構築を訴えている。

 同委員会は、来期以降もIT化推進のための具体策を検討する。「日医IT化宣言2016」は以下の通り。

(1)日本医師会は、安全なネットワークを構築するとともに、個人のプライバシーを守ります。
 ・マイナンバー制度のインフラを活用した医療等ID制度を確立させる。
 ・医療等IDを活用して、国民・患者が安心できる地域医療連携を実現する。
 ・医療機関が安心・安全・安価に地域医療連携に活用できる医療専用ネットワークの構築を目指す。

(2)日本医師会は、医療の質の向上と安全の確保をITで支えます。
 ・患者の同意に基づいて収集した医療情報を研究・分析して、医療の質の向上及び患者の安全確保に努める。

(3)日本医師会は、国民皆保険をITで支えます。
 ・日本医師会が開発するレセプト処理システムを電子カルテメーカーに提供、普及させることで、保健医療機関経営の原資となる診療報酬を請求するためのインフラ整備を行い、国民皆保険を堅持する。

(4)日本医師会は、地域医療連携・他職種連携をITで支えます。
 ・電子カルテのない医療機関でも、電子化された医療情報で地域医療連携を行うことができるようなツールを開発、提供する。

(5)日本医師会は、電子化された医療情報を電子認証技術で守ります。
 ・全ての医師に医師資格証を普及させる。
 ・保健医療福祉分野の電子認証局(HPKI)の事業発展と安定した運用を行う。
 ・医師資格証のユースケース拡大を図るとともに、身分証明書としての認知度も向上させる。



http://www.yomiuri.co.jp/hokkaido/news/20160609-OYTNT50014.html
地元で出産 体制整備…道と医療団体協定
2016年06月09日 読売新聞

◆5中核病院支援

 深刻な産科医不足が続く中、道と北海道大医学部産婦人科などが運営する一般社団法人「WIND」が8日、地域の中核病院の出産医療体制を支援する協定を結んだ。医師の研修や勤務環境の改善で連携し、地元でお産ができる体制を整える。

 協定の対象は、浦河赤十字病院(浦河町)、倶知安厚生病院(倶知安町)、富良野協会病院(富良野市)、八雲総合病院(八雲町)、網走厚生病院(網走市)の5施設。いずれも常勤の産科医が0~2人で、道は地域で出産できる体制を維持するためには緊急的な支援が必要だと判断した。

 道と同法人は今後、地元市町村も交えた情報共有を行い、指導医を派遣して若手医師を対象に研修を充実させる。医師の事務業務を補う人材を確保するなど勤務環境の改善も図る。支援を継続することで、長期的には産科医の志望者も増やしたい考えだ。

 協定の対象の一つ、八雲総合病院は、2人の常勤医が365日出産に備えている。日本海側のせたな町や寿都町などにも巡回検診を行っており、出産数以上の負担がかかっているという。同病院は、協定について「(医師は)緊張感を持ち続けた状態で勤務しており、サポートしてもらえるのは心強い。地元で安心して出産し、子育てをできるよう取り組んでいきたい」としている。

 道内は産科医不足が深刻だ。179市町村のうち出産できる医療施設があるのは、2割以下の30市町。高度な医療施設を備えた30か所の「地域周産期母子医療センター」のうち、4か所は出産の取り扱いを休止している。医療機関で働く全医師に占める産科医の割合も、2004年の全国平均が4・1%なのに対し、道内平均は3・4%。14年も全国の3・7%に対し、道内は3・1%だった。

 「WIND」は北大産婦人科を母体として2008年に設立された。関連病院と連携し、地域の産科医確保と若手医師の育成に取り組んでいる。8日に道庁で行われた協定締結式で、道の村木一行・保健福祉部長は「妊産婦が身近な地域で産み育てられる体制を作ることは道の課題。ぜひ力を貸していただきたい」とあいさつ。同法人の桜木範明代表理事は「地域住民、現場の医師、みなが幸せになれるよう、関係機関が連携するのは重要だ」と応じた。




http://www.cabrain.net/news/article/newsId/48806.html
若手医師のChoosing Wisely- 持続可能な医療のために(3)
2016年06月09日 18時00分 キャリアブレイン

 日本の「Choosing Wisely」(賢く選択しよう)キャンペーンには、若手医師が積極的な動きを見せている。水戸協同病院総合診療科の梶有貴医師(28)もその一人だ。

 梶医師にインタビューした。

 数年前までの卒前教育は、いわゆる知識の「詰め込み型」教育が中心でしたが、現在は臨床実習が中心の教育が進んできており、現場に即した確かな実践力を持った学生さんが増えてきている印象を受けます。これは非常に喜ばしいことです。

 しかし、卒前教育では医療を増やす「プラス」の医療は学びますが、医療を減らすという「マイナス」の医療を学ぶ機会は実は、非常に限られています。国家試験に合格して、医師になって臨床の現場に出た後も学習する機会はやはり少なく、若手は「とりあえず検査をしておきましょう」「念のためやルーティンなのでやっておきましょう」などと言って、思考を停止して検査していることも多い印象です。

 「果たしてこの検査や治療は必要だったのかな」と疑問を持つこともありますが、十分な経験がない若手には実際に必要か不必要かという判断は難しいことも多いのです。

 今、若手医師の多くが、その不足した経験を補うため、1990 年代から始まったパラダイムシフトである科学的根拠(エビデンス)に基づいて、医学上の診断法や治療法などを選択するEvidence based medicine(EBM)を勉強し、それを頼りにしながら、日々、臨床に臨んでいます。

 このEBMは、大きく4つのステップで成立するといわれますが、近年、そのうちのステップ4である「得られたエビデンスの患者への適用性の判断」がより重要ではないか、との指摘があります。

 ステップ1 疑問点の抽出
 ステップ2 信頼性の高い結果(エビデンス)を示す文献の効率的検索
 ステップ3 臨床疫学と生物統計学の原則に則った文献の批判的吟味
 ステップ4 得られたエビデンスの患者への適用性の判断

 つまり、医師がどんなにEBMを十分に知っていたとしても、目の前の患者さんに適用するには、統計学的な数値とは違う判断材料が必要なのです。その判断をするには、患者さんの医療に対する価値観が存在することを認識する必要があります。

 この医療に対する価値観とは、患者さんによってさまざまであって、健康であったり、家庭や仕事であったり、医療に対する期待感、いわゆる満足度であったり、医療にかかる費用であったりします。そこで出てきた考えが、EBMに患者さんの医療に対する価値観を含めたValue based medicine(VBM)です。

 VBMについては、EBMと相対する考え方と思われるかもしれませんが、あくまでEBMの延長線上にあるものであって、徳田安春医師(地域医療機能推進機構本部総合診療顧問)と一緒に、日本でのChoosing Wiselyキャンペーンを主導しておられる小泉俊三医師(一般財団法人東光会七条診療所所長)が、「VBMは進化するEBMの現在形」と表現していらっしゃいました。私もその言葉通りだと思います。

 このVBMを実践する手段の一つとして、Choosing Wiselyという運動があると理解しています。Choosing WiselyはEBMに裏打ちされたキャンペーンであり、医師と患者さんの対話を促すことで価値を共有することを目的とした運動で、各分野で過剰医療を行わないための推奨事項5項目を中心としています。

 もちろん医療をWisely(賢明)に決定することは、経験によって身に付くものなので、十分な経験のない若手医師にとっては、経験にたける専門科の各学会が作成したこのChoosing Wiselyを積極的に活用していくことが望まれると思います。患者さんとの距離が近いことを強みにして、若手医師と患者さんが本当に必要な医療は何なのかを考えていくきっかけとなればいいと思います。

 ただし、VBMを十分に理解する上で、注意しなくてはいけないのは、費用が価値を表す一つの指標であるために、結果的にコスト意識を促すことはありますが、その主な目的は「コスト削減」を主眼としていないということです。その点で、行政用語でよく見掛ける「医療の適正化」という言葉とは、似て非なるものです。また、現代の医療を断定的に全否定する「医療無用論」とは、その基本的な姿勢は異なるものと考えています。

 今の目の前の患者さんの価値を考慮した医療をしながら、将来の患者さんに必要な医療、持続可能な医療のことも考える姿勢が本質ではないかと考えます。

 また、Choosing Wiselyを通じて、患者さんの価値観を考慮したVBMを実践するわけですが、難しいこともあります。患者さんの医療に対する期待感が強いと、積極的な検査や治療を求めてくることがあるからです。実際の現場では「せっかく病院に来たのに、検査も何もしてもらえなかった」という言葉や、「風邪と言われたのに、抗生物質ももらえなかった」という声が聞かれたりします。

 この患者さんの医療に対する期待感については、非常に悩ましく、キャンペーンを進める上でのジレンマになるかと思います。米国発のChoosing Wiselyが、医師と患者さんの両面で進められているのは、キャンペーンを推進するには医師だけではなく、患者さんの理解が必要だという判断があったのだと推察しています。

 医療費が高騰し、3人に1人が高齢者という2025年問題を目の前にして、若手医師が直面する問題点は多いと考えています。このさまざまな問題について意識を高く持った多くの学生さんや若手医師が、熱意を持って今のChoosing Wiselyの運動を支えてくれています。この輪がどんどん広まっていくことを期待しています。



http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG09HA0_Z00C16A6000000/
点滴の電源切り寝たきりに 順天堂大病院で入院女性
2016/6/9 21:06 日本経済新聞

 順天堂大病院(東京)の心臓血管外科に入院していた女性(74)=岩手県在住=の家族が9日、厚生労働省で記者会見し、昨年6月に点滴装置の電源が切られて強心剤の投与が数十分間停止し、女性は現在もほぼ寝たきり状態になっていると明らかにした。

 投与されていたのは「ドブタミン」と呼ばれる強心剤で、持続的投与が欠かせず中断されることは通常はないと説明。「病院は点滴の電源を切ったことは認めており、過失は明らかだ」として損害賠償請求訴訟を起こす方針を示した。業務上過失傷害容疑での刑事告発も検討するという。

 家族側によると、女性は宮城県の病院でうっ血性心不全や弁膜症と診断され、昨年4月に順天堂大病院に入院。6月17日に強心剤を投与されていた際、「苦しい、息ができない」と訴えているのに長男が気付き、医師が点滴装置の電源が切れているのを確認。病院側は「強心剤の残量が少なくなっているのに気付いていた看護師が、交換の間にアラームが鳴らないようにするため電源を切った」と説明したという。

 女性はショック状態に陥り、心機能がさらに低下。その後、別の病院に転院した。順天堂大病院の医師1人がこれまでに2回、経緯などを口頭で家族に説明したという。

 同病院は高度な医療を提供する特定機能病院。この問題について記者会見などは開いておらず、9日も取材に応じなかった。〔共同〕



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/48949.html
事故調、支援団体とセンターの協議会設置へ
2016年06月09日 22時00分 キャリアブレイン

 厚生労働省は医療事故調査制度(事故調)について、医療事故調査・支援センター(センター)に報告すべき事故の判断や院内調査の基準を統一するため、センターと支援団体である日本医師会や日本病院会などが意見や情報を交換するための協議会を設ける方針を固めた。月内にも関連省令を改正し、実施する方針だ。9日の社会保障審議会医療部会で報告した。【ただ正芳】

 事故調は、2014年6月の改正医療法の成立を受け、昨年秋にスタートした。同法の付則では、制度の見直しについて検討した上で、公布後2年以内に法制上、必要な措置を講じるとしており、今月24日にその期限を迎える。
 
 厚労省は、24日の期限までに必要な法改正を行うことはできないと判断。一方で、遺族側からの届け出が認められていないことや、届け出対象である「予期せぬ死亡事故」の範囲があいまいであるなどの課題もあることから、関連省令を改正することで、改善措置を講じる方針を固めた。

 具体的には、センターに報告すべき事故の判断や院内調査の地域格差を解消するため、日医や日病などとセンターが情報や意見を交換する「支援団体等連絡協議会」(仮称)を制度的に位置付けるとしている。

 また、遺族らからセンターに、「事故ではないか」との相談などがあった場合の対応として、保健所などの相談窓口を紹介する従来の対応に加え、患者が死亡した医療機関に、遺族らの相談内容や意向を直接伝える仕組みも構築する。

 そのほか、▽支援団体や医療機関に対する研修の充実と優良事例の共有 ▽センターが医療機関の院内調査報告書の内容を確認・照会できる仕組みの導入―も改善措置に盛り込まれた。



http://www.medwatch.jp/?p=9185
医療事故調査制度、早ければ6月にも省令改正など行い、運用を改善―社保審・医療部会
2016年6月9日|医療・介護行政をウォッチ

 昨年(2015年)10月からスタートした医療事故調査制度について、与党などからの指摘を踏まえて、「事案が医療事故に該当するかの判断などを標準化するために、支援団体等連絡協議会を設置する」「医療事故調査・支援センターが医療機関に遺族などからの相談内容を伝達できることを明確化する」といった制度運用上の改善を、早ければ今月(2016年6月)中にも行う―。

 厚生労働省は、9日の社会保障審議会・医療部会にこのように報告しました。

ここがポイント! [非表示]
1  医療事故の再発防止を目的として、医療事故調査制度が2015年10月からスタート
2  パブコメを経て、早ければ6月中に関係省令・通知を改正
3  「医療事故に該当するか否か」の判断を標準化するため、支援団体間で意見効果
4  医療事故調査・支援センターが医療機関に遺族からの相談内容を伝達、指導等はせず

医療事故の再発防止を目的として、医療事故調査制度が2015年10月からスタート

 医療事故調査制度は、「医療事故の再発防止」を目的に、すべての医療機関が院内で発生した「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のうち、「管理者が予期しなかったもの」を第三者機関(医療事故調査・支援センター)に報告するとともに、院内で調査を行う仕組みです。制度の大枠は次のように整理できます(関連記事はこちらとこちら)。

(1)事故が発生した医療機関が、医療事故調査・支援センターに事故発生を報告し、遺族にも報告する(上記の基準などに照らし、医療事故と管理者が判断した事例については、まず「事故が発生した」旨を報告する)

(2)医療機関は院内調査を行い、調査結果を医療事故調査・支援センターに報告するとともに、その内容を遺族に説明する((1)の報告の後、院内で事故の状況や原因などを調査し、その結果を報告する)

(3)遺族や医療機関が院内調査結果に納得できない場合には、医療事故調査・支援センターに調査を依頼できる

(4)医療事故調査・支援センターは調査結果を遺族と医療機関に報告するとともに、事故事例を集積・分析して再発防止に向けた普及啓発に努める

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける
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 昨年(2015年)10月からスタートし、今年(2016年)4月末までに医療事故調査・支援センターに報告された医療事故は222件(相談件数は1141件)に上り、うち66件で院内調査が済んでおり、医療事故調査・支援センターへの調査依頼は2件となっています(関連記事はこちら)。

パブコメを経て、早ければ6月中に関係省令・通知を改正

 医療事故調査制度を規定する医療介護総合確保推進法では、「法の公布(2014年6月25日)から2年以内に、法制上の措置その他の必要な措置を講ずる」旨の検討規定が設けられています。

 与党では、この規定に基づいて、制度の施行状況や、医療団体や患者団体からの意見を踏まえて検討を進め、次のような見解をまとめました。

(A)医師法第21条「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」の見直しや、医療行為と刑事責任との関係などを議論していく必要があるが、さまざまな意見があり、期限(2016年6月24日)までに法改正を行うことはできない

(B)医療事故調査制度に対する信頼性の向上を図る必要があり、制度の運用上の改善を行う必要がある


 厚生労働省はこの見解を受け止めて、次のような改善を行う方針を決定。9日の医療部会に報告しました。

(a)医療事故調査等支援団体(日本医師会や病院団体、ナショナルセンター、学会など)や医療事故調査・支援センターが情報や意見交換する場として、中央と地方(都道府県に1か所程度)に「支援団体等連絡協議会」(仮称)を制度的に位置づける(医療法施行規則の改正)

(b)医療機関の管理者が「院内での死亡事例をもれなく把握できる体制」を確保しなければならないことを明確化する(医療法施行規則の改正)

(c)医療事故調査・支援センターが、遺族からの相談内容を、遺族からの求めに応じて医療機関に伝達できることを明確化する(関係通知の改正)

(d)支援団体や医療機関に対する研修の充実、優良事例の共有を行う(関係通知の改正)

(e)医療事故調査・支援センターが、院内調査報告書の内容に関する確認・照会などを行えることを明確化する(関係通知の改正)

医療機関が自ら行う院内調査を支援する団体、制度構築時点では医師会や病院会、大学病院、各学会などを想定
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 厚労省医政局総務課医療安全推進室の平子哲夫室長は、「パブリックコメント募集を早急に行い、省令(医療法施行規則)や関係通知の改正を早ければ6月中にも行いたい」との考えです。

「医療事故に該当するか否か」の判断を標準化するため、支援団体間で意見効果

 改善内容の(a)は、事案(死亡・死産事例)が「報告対象になる医療事故に該当するかどうか」の判断や、院内調査の方法などを標準化していくことが狙いです。

 報告すべき医療事故は、前述のとおり「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のうち、「管理者が予期しなかったもの」です。▽事前に医療従事者などが、患者などに対して死亡・死産が予期されていることを説明していた▽事前に医療従事者などにより、死亡・死産が予期されていることを診療録その他の文書等に記録していた▽事情の聴取などを行った上で、事前に医療従事者などにより、死亡・死産が予期されていると認めた―場合には、管理者が予期していたと判断され、報告対象から除外されます。

「医療に起因する死亡・死産」の考え方、▽火災や天災▽原病の進行▽偶発的な併発症―などによる死亡は報告の対象外
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 このような基準が規定されていますが、実際の死亡・死産事例の状況は千差万別で、報告すべきか否かの判断は困難を極めます。そこで、医師会や病院団体などの支援団体が判断をサポートすることになりますが、山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「支援団体や地域によって、見解が180度異なる場合もある」など、サポート内容のバラつきを指摘します。

 こうした点を是正し、事故か否かの判断などを標準化するために、「支援団体が集い、情報・意見交換をする」場として支援団体等連絡協議会を設置することとなったものです。

医療事故調査・支援センターが医療機関に遺族からの相談内容を伝達、指導等はせず

 改善内容の(b)は、医療機関に伝えづらい遺族の気持ちを慮った内容と言えそうです。現在、医療事故調査・支援センターは、遺族からの相談があった場合に地域の医療安全支援センターの紹介を行っています。これを一歩すすめ、医療事故調査・支援センター自らが「遺族からの相談内容」を、遺族の同意を前提として医療機関に伝達できることを制度上明確にすることとしています。

 ただし、医療事故調査・支援センターが自ら「この事案は報告対象となる医療事故に該当する」といった判断や、医療機関への指導などをすることはありません。医療事故調査制度は、「医療機関の管理者の判断」を重視しており、管理者の判断に医療事故調査・支援センターが過度に介入することを認めるか否かは、法律改正論議などが必要になってくるためです。


 これらの改善内容そのものに委員から異論は出されませんでしたが、相澤孝夫委員(日本病院会副会長)は、「医療事故調査制度は、まだ『よちよち歩き』の制度で、今後、日本の優れた医療文化の1つになるように、皆で育てていかなければならない。将来の制度改善に向けて話し合い、制度を育てていく場を設けてほしい」との要望が出されています。



http://www.asahi.com/articles/ASJ697HTXJ69UBQU018.html
医療事故、届け出しやすく基準統一へ 今月末に省令改正
寺崎省子
2016年6月9日22時47分 朝日新聞

 昨年10月に始まった医療事故調査制度で、厚生労働省は9日、医療事故の届け出の統一基準に向けた協議会の設置や、第三者機関が遺族らから受けた相談を医療機関へ伝えられる仕組みなど、運用改善策をまとめ、医療部会に報告した。自民党の作業チームの提言を受けた。今月下旬にも省令を改正する。

 届け出は遺族からはできず、医療団体ごとに基準にばらつきがあり、事故の届け出が想定より大幅に少ないという指摘がある。

 医療事故かどうかの判断基準や院内調査の方法は、医師会や病院団体、学術団体などの支援団体と、第三者機関の「医療事故調査・支援センター」で、「支援団体連絡協議会」(仮称)を各都道府県と全国レベルに設置し、意見交換をしながら統一していく。医療機関の管理者が全死亡例を把握できるようにも定める。

 遺族らがセンターに相談した際、届け出対象か分からなくても、遺族の求めに応じて相談内容を医療機関にセンターが伝えられるようにする。ただし、調査指示はしない。

 また、医療機関の同意を得てセンターが院内調査報告書の内容の確認・照会もできるように明確化する。支援団体や医療機関の研修を充実し、優良事例を共有する。

 異状死の警察への24時間以内の届け出を義務づけた医師法21条については、医療行為と刑事責任などで関係者の間に様々な意見があるとして「(公布2年となる今月24日の見直し)期限までに法改正はできない」とした。



http://www.nikkei.com/article/DGXLZO03444700Z00C16A6CR8000/
医療事故の報告体制充実 厚労省、基準強化へ新組織
2016/6/10 0:38日本経済新聞 電子版

 患者の予期せぬ死亡を対象とする「医療事故調査制度」について、厚生労働省は9日、調査対象に該当するかどうかの判断基準の共通化など5項目の運用面での見直し事項を発表した。第三者機関が医療機関に遺族の調査要望を伝える仕組みも設ける。昨年10月に同制度が始まってから初の見直しで、月内に省令の改正などを行う。

 制度では予期せぬ死亡について「医療に起因すると疑われる死亡で、管理者が予期しなかったもの」としている。ただ医療機関に判断が委ねられているため、医療機関ごとの対応の違いが指摘されており、届け出件数も想定を下回っている。

 厚労省は今回の見直しで、判断基準や院内調査の方法などの全国共通化に向けて意見交換する「支援団体等連絡協議会(仮称)」を設ける。日本医師会や大学病院、国立病院機構など同省が指定する「医療事故調査等支援団体」と、医療事故の届け出を受け付ける第三者機関「日本医療安全調査機構」が参加。制度上の組織と位置づける。

 また、担当医が院長などに死亡事例を報告せず、調査されないケースもあるため、遺族が調査を求めた場合に日本医療安全調査機構が窓口となり遺族の要望を医療機関に伝えることを新たに規定。医療機関の管理者は現場で起きた医療事故を漏れなく把握できる体制を確保しなければならないことを省令を改正して明確化する。

 このほか日本医療安全調査機構が再発防止策を検討するため、院内調査結果の報告書の内容について、医療機関の同意を得て確認ができるように定める。院内調査の方法を改善するため、見本となる調査事例を共有化する仕組みも設ける。

 同制度は昨年10月から始まり、今年4月までの7カ月間の届け出は222件だった。制度設計の段階では年1300~2000件の届け出があると予測していたのと比べると低調に推移している。同制度への理解が進んでいないとの指摘もあり、厚労省の担当者は「制度の浸透に注力していきたい」としている。



https://www.m3.com/news/iryoishin/431834
シリーズ: The Voice(医療)
オーストラリアの薬局解体新書~日本の保険薬局の今後を考える~ 第6回 在宅医療への参画

オピニオン 2016年6月9日 (木)配信藤田健二

 創薬研究員、薬局薬剤師、学習支援・薬局研究部門のマネジャーを経て、シドニー大学大学院で薬学博士号の取得を目指す藤田健二先生に、オーストラリアの医療制度および薬局実務を読み解きながら、今後の日本の保険薬局のあり方について考察していただく本連載。第6回は「在宅医療への参画(Home Medicines Reviewなど)」についてお話しいただきます。

患者宅への医薬品の供給
 オーストラリア国民の平均寿命は2013年時点で83歳。日本(84歳)に次いで世界第2位の長寿国です。また、オーストラリアの高齢化率(全人口に対する65歳以上の比率)は14.4%であり、既に高齢社会へと突入しています。その状況下、薬局薬剤師はどのように在宅医療に関わっているのでしょうか。

 オーストラリアでは、終末期医療のために特別な医療チームを編成している場合を除き、輸液製剤が必要となる患者は病院や介護施設へ入院となるため、日本のように薬局での輸液の混合調剤や、患者宅での輸液バッグの交換といった業務はありません。薬局は定期的に医薬品を患者宅に届けますが、無料サービスであるうえ、患者の体調変化などを確認することはありません。ですから、薬剤師以外のスタッフでも宅配が可能です。薬剤師以外のスタッフが配達をした際、患者から専門的な質問を受けた場合は、薬局にいる薬剤師に電話で確認を取り、対応します。

Home Medicines Review
 医療保険の枠組みの中で、薬剤師が患者宅で提供するサービスはHome Medicines Review (HMR)と呼ばれています。HMRは、第三地域薬局協定(2000年7月~2005年11月)期間中の2001年に導入されました。介護施設入居者に対する薬剤レビュー(Residential Medication Management Reviews /RMMRs)が、第二地域薬局協定(1995年7月~2000年6月)期間中に導入された後、そのサービスを一部修正し、サービス提供場所を介護施設から患者宅に広げたサービスです。

 HMRの目的は、患者の薬物治療に関する包括的なレビューを行い、治療の妨げになると思われる医薬品に関連する問題 (Drug Related Problems/DRPs) を特定・解決することによって、医薬品の適正使用(Quality Use of Medicine/QUM)を実現することです。

 対象患者の例として下記が挙げられます。

  5種類以上の薬剤を常用する患者
  1日12錠以上の薬剤を服用する患者
  併用疾患が3種類以上の患者
  直近4週間以内に退院した患者
  直近3ヶ月以内に、薬物療法が大幅に変更になった患者
  治療域の狭い薬を服用、または治療モニタリングが必要な薬を服用している患者
  コンプライアンス不良、または医薬品関連器具の使用法に問題があると思われる患者

 つまり、日本の在宅医療とは異なり、HMRの対象者は薬局への来局が困難な患者だけではなく、適切な薬物治療ができず、薬剤師のサポートを受けることによって医薬品の適正使用が可能になると想定される全患者です。

 薬剤師がHMRを実施するためには、Australian Association of Consultant Pharmacists(AACP)、または the Society of Hospital Pharmacist Australia(SHPA)から認定を受ける必要があります。認定を受けるためには、コミュニケーション、高齢者に対する適切な薬物療法、検査値の読み方といった試験の他に、4例のケースシナリオについての薬剤レビューも必須です。こうして、一定レベルの知識とスキルを有した薬剤師のみが、認定薬剤師としてHMRを実施できるのです。

 認定薬剤師がHMRを提供できる人数は1ヶ月間に最大20 人まで。同様の制限はHMRを受ける患者にも設けられており、患者は原則2年に1回しか本サービスを受けることができません。HMRが導入された当初は1年に1回でしたが、HMRを受ける患者数の伸びに対して予算が追い付かなくなったため、このような制限の変更がありました。

 さらに、HMRを提供するのは認定薬剤師ですが、この認定薬剤師は必ずしも薬局に在籍していなくてもいいという点が大きな特徴です。

 つまり、HMRを実施する認定薬剤師は下記の3タイプに分けられます。

  タイプ1 薬局に勤務している認定薬剤師
  タイプ2 特定の薬局に在籍せず、患者が普段利用している薬局の要請に応じてHMRを実施する認定薬剤師
  タイプ3 薬局ではなくHMRの提供を専門にしている企業に雇用されている認定薬剤師

 上述の通り、薬剤師であれば誰でもHMRを実施できるというわけではないため、薬局内に認定薬剤師がいない場合や、在籍していても外来調剤が忙しくHMRを実施する時間がない薬局は、上記のタイプ2、3の認定薬剤師にHMRの実施を依頼します。薬剤師会のホームページには、認定薬剤師を検索するサイトがあり、活動エリアから認定薬剤師の検索が可能です。なお、1回のHMRによって得られる報酬は$240ですが、タイプ2の認定薬剤師の場合であっても、患者の薬歴情報を保管している薬局オーナーと交渉してHMR実施料として報酬の一部($30~50)を受け取り、残りは情報提供料として薬局側の収益となります。

HMRの流れ
 HMRは①患者の同意取得、②患者インタビュー、③報告書作成から構成されており、この一連の業務は原則同一の認定薬剤師が実施する必要があります。

① 患者の同意取得
 HMRはGP(General Practitioner/一般医)が薬剤師による薬剤レビューの必要性を感じて、患者にHMR実施の同意を得ることから始まります。通常はGPがHMRの必要性を判断しますが、認定薬剤師、介護者またはその他の医療従事者が患者の状態を踏まえて判断し、GPへHMRの実施を提案する場合もあります。GPから患者が普段利用している薬局へHMR実施の依頼が渡ったら、認定薬剤師は患者にHMR実施の同意を得て、インタビューの実施日を決めます。

② 患者インタビュー
 患者インタビューは患者宅で実施しますが、文化的要因または薬剤師の安全面において問題がある場合に限り、事前に申請することによって自宅以外の場所でインタビューをすることが認められています。その場合はインタビュー実施日の10営業日前までに申請する必要があります。

 HMR実施日は、事前に収集した薬歴情報および検査値を踏まえたうえで、インタビューを実施します(約1時間)。インタビューでは、アドヒアランスや体調の他、薬の服用理由を患者が認識しているかなどを聞いた後、現在の薬物治療を評価しながら、DRPsまたはDRPsにつながると想定される要因(cause of DRPs)がないか確認します。緊急対応が必要なDRPsが発見された場合は、その場でGPに連絡をして解決します。

③ 報告書作成
 認定薬剤師は患者インタビュー後、収集した情報を総合的に評価して報告書を作成する必要があります。報告書はインタビューによって明らかになった知見およびDRPsの解決に向けたGPへの提案が記載されていなければなりません。報告書を受け取ったGPは、報告書の内容をもとに、薬物治療計画を再考します。GPによっては、薬剤師の提案内容の採用可否を連絡してくれる場合もありますが、連絡がない場合は、次回の処方内容から判断することになります。しかし、HMRを実施した認定薬剤師は必ずしも患者が普段利用している薬局に勤務しているわけではありません。したがって、次回の処方せん内容を確認できず、報告書内の提案内容が実際に採用されたかどうか分からないままになってしまう場合もあります。

薬局の機能分化への示唆
 OTC薬を利用したセルフメディケーションのサポートやリピート調剤時における患者の体調変化を確認するうえで、重要な役割を担っているオーストラリアの薬局薬剤師。HMRが導入された2001年当初、それを必要とする患者は多いと見込まれていたものの、HMR実施者が上述したタイプ1の認定薬剤師に限定されていたこともあり、実施件数が伸び悩んでいました。インタビュー実施後の報告書作成は通常2時間程度かかるため、患者宅までの移動時間やインタビュー時間を含めると、1人の患者に要する時間が4時間位かかってしまうことも少なくありません。HMR1回の報酬額($208.22)と人件費のバランス、患者宅訪問中の薬局薬剤師数の確保などが、HMRの実施件数が伸びない要因となっていたようです。

 こうしたHMRの需要と供給のアンバランスを解消するために導き出した施策が、新たな業務形態の誕生につながっています。2011年10月に上述したタイプ2、3の認定薬剤師によるHMRの実施が認められてからは実施件数が着実に伸び、2012年6月の時点で薬局に在籍していない認定薬剤師による実施件数が、薬局に在籍している認定薬剤師の実施件数を上回りました(図1)。HMRの実施は患者と認定薬剤師間で実施日時を調整できるため、認定薬剤師資格を有しながらも、薬局で勤務する時間がなかった主婦も働けるようになったことが実施件数の増加の要因と考えられます。

 日本の在宅医療とは異なり、HMRは医薬品の供給という役割がないため、フリーで活躍する認定薬剤師のような働き方を可能にしています。しかし、地域医療における薬局のあるべき姿から考えると、薬局の機能分化についての議論の余地が出てくるのではないでしょうか。次回は予防接種への参画(The Queensland Pharmacist Immunisation Pilotなど)について考察していきます。お楽しみに!

【主な参考文献】
Duckett, S., and Wilcox, S. (2015). The Australian Health Care System (5th ed.). South Melbourne, Vic: Oxford University Press.
Hattingh, L., Low, J. S., & Forrester, K. (2013). Australian pharmacy law and practice (2nd ed.). London: Elsevier Health Sciences APAC.
Chen, T. F. (2016). Pharmacist-led home medicines review and residential medication management review: The Australian Model. Drugs and Aging, 1-6.

※本記事は、エムスリーグループが運営する薬剤師向け情報サイト『薬キャリPlus』で、2016年4月26日に掲載したものです。


専門家プロフィール/藤田 健二(ふじた けんじ)
昭和薬科大学大学院卒業後、杏林製薬会社に入社、新薬の探索研究に3年間勤務。その後、薬樹株式会社の薬局薬剤師として3年、同社における社内外の学習支援・薬局研究のマネジメント業務に4年従事した後、渡豪。2015年6月、シドニー大学大学院臨床疫学プログラム修了。2016年3月より同大学院博士課程へ進学予定。


  1. 2016/06/10(金) 05:39:45|
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