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6月4日 

http://www.recordchina.co.jp/a140438.html
<エコノミー症候群>熊本地震避難の車中泊で死亡も、血栓が脳・心筋梗塞を引き起す―長距離バスも要注意、専門医師が伝授する対策とは?
Record China 2016年6月4日(土) 15時30分

新潟県中越地震以来エコノミークラス症候群対策に取り組んでいる榛沢和彦医師(新潟大講師)が、熊本地震の被災者の状況を報告。「長時間にわたり同じ姿勢を強いられる航空機内や長距離バスなどでも発症する怖い病気」と警告した。

2016年6月2日、新潟県中越地震以来エコノミークラス症候群対策に取り組んでいる榛沢和彦医師(新潟大講師)が、日本記者クラブで熊本地震の被災者の状況を報告した。エコノミー症候群は、「長時間にわたり同じ姿勢を強いられる航空機内や長距離バスなどでも発症する怖い病気」と警告。「小さな血栓がやがて脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞を引き起し、死亡事故につながってしまう」と注意を喚起した。

4月14日の前震と16日の本震に見舞われた熊本地震。大規模な余震が続いたため、避難者の多くが車中泊を選んだ。被害のひどかった益城町で総合体育館のアリーナは当初、天井が崩落して使用できないなど、避難する場所が不足した。

避難生活を続ける被災者を脅かすのが、血栓が肺に詰まるエコノミークラス症候群だ。熊本県によると、エコノミークラス症候群の入院患者は、50人に上り、うち2人が死亡した。

車の座席や狭い避難所などに長時間同じ姿勢でいると、足の静脈に血栓ができる。血栓が肺の血管までめぐって詰まれば、死に至ることがある。「エコノミークラス症候群」の症例で、車中泊は4倍危険という。夜間にトイレに行くのが面倒で水も飲まないと罹患の確率が高くなる。

2004年の新潟県中越地震の際、発生2週間以内に6人が死亡した。榛沢医師は「避難者にエコノミークラス症候群について警告できれば、犠牲者は出なかったかもしれない」と悔悟の念を率直に語った。以来、大災害のたびに被災地を訪れては診断や追跡調査を始めた。12年に発生したイタリア北部地震の現場にもたびたび出向き、講演などで啓発活動も続けてきた。中越地震に比べ熊本地震での死者が少ないのは、「エコノミー症候群」の脅威が流布され、予防意識が浸透したことも要因ではないかと分析する。

予防にはふくらはぎを締め付ける「弾性ストッキング」の装着が有効であり、狭い避難所では血栓の有無を調べるための携帯用エコー検査も欠かせない。足にできた血栓を早期に発見できれば、エコノミークラス症候群の危険を把握し、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞に至る危険も察知できる。

榛沢医師は「避難者は軽い運動や水分補給、マッサージ、弾性ストッキング着用を心がけてほしい。自衛隊にテントを設置してもらうなど、行政も早く手を打つべきだ。段ボール製簡易ベッドは、避難生活の改善に有用であり、エコノミー症候群の予防にもつながる」と訴えた。エコノミー症候群は、長時間にわたり同じ姿勢を強いられる航空機内や長距離バスなどでも発症する怖い病気。小さな血栓がやがて体中に回り、死亡事故につながってしまうという。(八牧浩行)


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https://www.m3.com/news/iryoishin/423219
シリーズ: 今どきの「U35ドクター」2016
若手医師、「医局に所属」は72%◆Vol.8
わずかに減少、「メリット感じる」も減少

2016年6月4日 (土) 高橋直純(m3.com編集部)

Q 医局の所属状況と意識について教えてください。
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 医局への所属状況では、「所属」しているが、2016年は72%で、2013年の75%から微減。所属することに関する意識では「メリットを感じている」が、38%(2013年)から33%(2016年)に減少した一方、「デメリットを感じている」が12%から14%に微増した(『医局の求心力、弱まっている?◆Vol.5』を参照)。

 「医局を辞めた」は3%から5%に微増。「医局に所属せず」は22%で同じだった。



https://www.m3.com/news/iryoishin/430336
シリーズ: 始動する“医療事故調”
“事故調”開始から7カ月、「光と影」
臨床リスクマネジメント学会でシンポ

2016年6月4日 (土) 橋本佳子(m3.com編集長)

 東京都で開催された第14回日本臨床リスクマネジメント学会・学術集会の5月29日のシンポジウム「医療事故調査制度 - 改正医療法施行後の課題」で、2015年10月からスタートした同制度について医療機関での対応、患者・家族側への影響などについて、6人のシンポジストが講演した。

 医療事故調査制度には「光と影」がある――。こうコメントしたのが、順天堂大学総合診療科・病院管理学教授で、東京都医師会理事の小林弘幸氏だ。「光」として挙げたのが、予期しない事故を検証するための全国統一の制度が誕生し、医療安全の向上につなげる仕組みができ、医療者の医療事故に対する意識や再発防止への意欲が高まってきたことだ。一方で「影」として、制度の対象となる事故が、医療事故調査支援センターに適切に報告されていない点を挙げた。遺族の被害者意識が強いという理由など、報告対象の要件を満たさないものも報告されているという。他のシンポジストからも、センターへの事故報告や院内調査の在り方などについて、制度運用の難しさがうかがわれる発言が相次いだ。

 「今の報告件数、ルール通りの判断か」
 本学会・学術集会の会長である東京医科大学医療の質・安全管理学分野教授の三木保氏は、シンポジウムの冒頭で、本制度は医療安全の向上が目的であると確認、その上で「さまざまな課題が残っていることを共有し、より良い運営するために情報共有をしていきたい」とあいさつした。

 司会を務めた東京大学医学部附属病院救命救急センター長の中島勧氏は、6人のシンポジストの講演後のディスカッションで、3つの質問を投げかけたが、その一つが、「死亡事例発生時にルール通りに検討されて、その結果が現在までの報告件数なのか、それとも罰則がないために報告が少ないのか」だ。医療事故調査・支援センターへの報告件数は、2015年10月の制度開始から、この4月までの7カ月間で222件(『医療事故、4月のセンター報告は34件』を参照)。制度開始前は、「年間1300~2000件」との推計もあった。

 厚生労働省医政局総務課医療安全推進室長の平子哲夫氏は、「制度の運用が、管理者の判断に委ねられる部分があり、どのようなことが適正な運用と言えるのか、もう少し事例を集めることが重要ではないか」と述べ、報告数の多寡については言及しなかった。平子氏は、自身の講演の中で、「年1300~2000件」はあくまで推計であり、「少し多めに出ている」と説明。その理由として、(1)制度設計が固まる前の推計であり、医療事故調査制度の報告対象よりも幅広い事例を対象としている、(2)特定機能病院や国立病院機構をはじめリスクが高い医療を担う病院などを対象とした調査の推計である――などを挙げ、本推計と医療事故調査制度の報告件数の直接的な比較は難しいとした。

 今の報告件数は過少と見るのが、医療事故調査・支援センターの機能を担う日本医療安全調査機構の常務理事を務める木村壮介氏と、弁護士の宮沢潤氏。

 木村氏は、「年1300~2000件」という推計は別にしても、「今の報告数よりは、実態はもう少し多いのではないか」とコメント。「罰則がないから、報告しない」と言っている例はないとしたものの、医療機関側に「医療事故」という言葉に心理的抵抗があったり、「医療過誤はない」「(報告対象に該当しても)遺族からクレームがない」という理由で報告しないなど、「制度の趣旨から考えて、そう考えるべきではない、という事例もある」と、制度自体への理解の不十分さを指摘した。さらに同機構が相談を受けた際、個々の医師や担当部署は本当に真摯に悩んでおり、「報告する」と答えた場合でも、実際には報告がない場合もあるとした。「院長が判断する段階で、一つの抵抗、階段があるのではないか、という印象を受ける」(木村氏)。

 宮沢氏は、「医療過誤がないから報告しない」という言葉を聞くと説明。「報告数は、多ければいい、少ないのであれば悪いわけではない。迷ったもの、何人かに相談して医療安全に資すると判断されるのであれば報告すべき。中立な目を通すことは大事」とコメント。自身の講演の中で、医療事故調査制度がスタートしても、患者側が民事訴訟に訴える手段は残されていると述べ、「調査されない不満」があると、患者側は訴訟に走る危険性もあるとした。

 一方で、独立行政法人労働者健康安全機構理事長の有賀徹氏は、「医療安全を目的とする法の趣旨に則って、どれだけ正確に報告するかだ」と前置きし、「なんちゃって報告」あるいは「免罪符」のように報告している例もあると指摘。

 小林氏も、東京都医師会が検証した15件のうち、今回の制度に合致するのは5件で、残る10件は報告対象に当たらなかったとした。医療に起因した事故かどうかは、実際にかかわった医療現場でないと最終的には分からないとし、支援団体が紙面で判断するのは危険だと断ったものの、「遺族が不満に思っている」場合なども報告につながっているとの見方を示した。

 “事故調”で紛争は増加?減少?
 中島氏は、「医療事故調査制度に基づき、報告・調査することにより、紛争化する事例は増えているのか、減っているか」についても質問。

 平子氏は、「非常に答えにくい」と断り、例として産婦人科の訴訟件数を挙げ、「産科医療補償制度により、減少していることは事実」と説明。

 木村氏は、院内調査の結果は7カ月間で計66件報告されているものの、うち現時点では医療事故調査・支援センターによる第三者調査の依頼が来たのは2件にとどまると説明。「(遺族側が)納得しているかどうかは、現時点では分からず、今後の推移を見ていかなければならない」と断りつつ、「こうした制度が動き出したことについては、一定の評価はされているのだろう」と述べた。「制度が医療者に理解されていない、と言われるが、3年前の相談が来るなど、制度を理解していない遺族もいる。両方とも理解を深める必要がある」(木村氏)。

 有賀氏は、この3月末まで昭和大学病院長を務めた経験を踏まえ、「患者に“負の結果”が生じることは、今までもあり、それらを調査することで、患者側との関係が悪化することはこれまでなかった」と述べ、訴訟と損害賠償の支払いは必ずしも関係せず、医療的には問題ない事例でも、患者側の気持ちを考え支払いをしている例もあるとし、医療事故調査制度への報告・調査は、「たくさんある病院の仕事の一部にすぎず、本制度によって患者との関係が変化する問題ではない」とした。

 小林氏も、「報告対象になる事例は、日本で起きている事故の一部であり、それが全体の訴訟件数に影響するものではないと考えている」とコメント。

 宮沢氏は、「エビデンスがあり、裏付けがある報告書が完成すれば、患者側との信頼関係の向上につながる」と述べ、院内調査の在り方が紛争化を左右するとした。

 医療事故調査制度は「上乗せ」
 ディスカッションの先立つ講演で、厚労省の平子氏は、医療事故調査制度の基本的な考え方として、(1)目的は医療事故の再発防止と医療安全の確保にあり、個人の責任追及とは切り離している、(2)他の制度とは別で、「上乗せ」の制度として設計されており、医師法21条など他の制度で必要な届出等を行う必要がある――と説明。院内調査の実施に当たっての注意点も幾つか挙げた。(1)遺族と関係者の認識が違う場合もあるので、誤薬などの場合でも丁寧なヒアリングが必要、(2)原則として外部の専門家を入れる、(3)調査の結果、異なる意見がある場合には、その内容も記載しておく――などだ。

 ただ6月末までに予定され、その動向が注目される医療事故調査制度の見直しについては、自民党の「医療事故調査制度の見直しワーキングチーム」の取りまとめを受けて、検討していくと述べるにとどまった。

 「標準的な報告書作成マニュアルが必要」
 木村氏は、センターを運営する立場から、2015年10月の制度開始から7カ月間の実績を説明。院内調査の報告書がセンターに報告されたのは計66件。委員会の委員構成の記載がない、事故原因の背景の記載がない、死因の検討がなされていないなど、幾つかの問題があるとし、「標準的な報告書作成マニュアルが必要ではないか」と木村氏は提言。

 さらに木村氏は、医療事故調査を通じて、システムエラーなどが原因ではなく、非常にまれな病態などが明らかになった例があるとし、医学の進歩に資する場合もあると指摘。これらについても、対応策は未解明であっても、周知していく意義があるとした。

 東京都、「支援団体連絡協議会」を設置
 有賀氏は、東京都の現状を紹介。都では、大学病院や地域の基幹病院をはじめ、さまざま支援団体があることから、「支援団体連絡協議会」を設置、この5月18日に第1回会議を開催した。(1)Ai、解剖、専門委員の手配など、各団体間のマンパワー、保有情報、役割分担などを協議し、情報共有を図る、(2)相談の受付対応、分担の在り方について協議――などが協議会の目的だ。

 東京都医師会が把握する2015年10月から2016年4月までの相談件数は計45件で、うち医療事故調査・支援センターに実際に報告されたのは11件。5月16日までに都医師会が支援した医療機関は15件で、内訳は「500床以上」が6施設、「200床以上」が4施設、「200床未満」が5施設。支援内容は、「院内調査委員派遣」9件、「Ai実施」4件、「解剖実施」2件、「報告書チェック」2件、「その他」1件(重複あり)。

 小林氏も、都医師会の取り組みを紹介。支援団体として、事故直後の対応、院内調査委員会を立ち上げるかどうかについての相談が応じることが大切だとし、24時間の相談体制を構築したと説明。調査を行う場合に、解剖やAiの実施場所、遺体の保管や搬送などが問題になるため、この辺りの初期対応の体制を整えた。

 また小林氏は、院内調査に当たっての注意点についても触れ、「環境、教育、バックアップ体制、それ以外の4つに分けて進めると、個人攻撃にならず、医療安全に特化した議論ができる」などと説明。再発防止策については「もし同じ事例が発生した場合、救命が可能かどうか、外部委員がいる場合にはその医療機関で同じ事故が発生したと思うか」という視点からの検証も重要だとし、「裁判の鑑定ではなく、医療スタッフの顔色が良くなる調査委員会の運営を心掛けることが必要。個人の責任に帰せず、実現可能な再発防止策を検討することが求められる」と述べた。

 東京大学人体病理・病理診断学教授の深山正久氏は、臨床診断で死因が不明な場合でも、病理解剖によって初めて明らかになるケースも少なくないことから、その重要性を強調。ただし、医療事故調査・支援センターに院内調査報告書が提出された66件のうち、病理解剖が行われたのは4割に達していないとし、病理解剖を通じて医療者が相互に検証し合う文化と体制作りが求められるとした。

 宮澤氏は、院内調査に当たっては、「自院で可能であるから、不要」という問題ではなく、外部委員を入れることが必要だとした。さらに「本当は何があったのかを知りたいというのが患者の希望。その希望がかなえられないと、なぜだ、となる」と述べ、「中立、公正な調査を行い、報告書を作成して、患者側に渡して説明することが、遺族側の希望に最もかなう方法」と付け加え、報告書を患者側に渡すことが紛争解決につながるとした。



http://ryukyushimpo.jp/news/entry-292063.html
救急病床不足解消を 医師会、中部市町村会長に要請
2016年6月4日 16:56 琉球新報

 【中部】中部医療圏の救急医療に対応する4病院の病床不足の改善を図り、中部地区医師会の中田安彦会長らは3日、うるま市役所に中部市町村会長の島袋俊夫うるま市長を訪れ、増床へ向けた協力を要請した。中田会長は「ほぼ毎日満床だ。このままでは地域住民の生命に関わる危機的な状況だ」と中部圏域の救急病床の逼迫(ひっぱく)した現状を説明し、増床へ向けた協力を要請した。
 中部医療圏の救急病院(4病院)での人口10万人当たりの病床数は310床で、県内でも最低だ。中田会長によると「ここ5、6年で入院患者の制限が出てきた。特にことしは異常で、5月でさえ厳しい。このままの状態ではいずれ死者が出るところまで差し迫っている」と訴えた。
 島袋市長は「医師会と連携し、増床に向け県や国へ要請したい」と協力を約束した。



http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201606/20160604_33059.html
手術ミスで奥州市賠償へ
2016年06月04日土曜日 河北新報

 奥州市は3日、市総合水沢病院で2014年11月にあった手術ミスを巡り、市内の50代男性に2052万8000円の賠償金を支払う方針を明らかにした。
 市によると、整形外科の医師が、しびれや痛みを伴って歩行障害を起こす腰の病気の手術で、誤って腰の神経を傷つけた。男性は歩けるようになったが、排尿機能に障害が生じた。病院はミスを認め、男性と協議してきた。
 市は同日開会の市議会6月定例会に、賠償金を盛り込んだ16年度市病院事業会計補正予算案を提出。小沢昌記市長は本会議で「本人、家族に心から深くおわびする。信頼を損なわぬよう対策を徹底する」と陳謝した。



http://mainichi.jp/articles/20160604/ddl/k40/040/474000c
医療ミス
北九州市と40代男性が示談 /福岡

毎日新聞2016年6月4日 地方版

 北九州市は3日、市立医療センター(小倉北区)で受けた頸椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニアの手術ミスで後遺症が残った市内の40代男性に約3430万円を支払うことで示談が成立したと発表した。6月定例議会に関連議案を提案する。

 市によると、男性は左肩の痛みなどを訴え、2014年3月にセンターで手術を受けた。担当医が電気メスで止血する際、通常は1回で終えるところを出血が止まらず10回程度繰り返したため、メスの熱が脊髄(せきずい)に伝わって損傷した。男性は現在も左肩が動かしづらいほか、長時間歩けないなどの後遺症があるという。【奥田伸一】



https://www.m3.com/news/iryoishin/226285
シリーズ: 医師不足への処方せん
「宿直中の診療」手当支給、大学の6割にすぎず
全国医学部長病院長会議、2012年度改定で経営改善

2014年6月20日 (金) 橋本佳子(m3.com編集長)

 全国医学部長病院長会議は6月19日、2013年4月実施の「大学病院経営実態調査」の結果を公表した。2012年度診療報酬改定を受け、大学病院の経営は改善し、医師への各種手当を支給する病院は増えているものの、「宿直中の診療に対する時間外勤務手当」を支払っているのは、60.2%にとどまることが明らかになった。

 前回調査(2010年10月)の45.8%よりは増加しているが、支給内容を見ると、緊急対応や手術などの診療行為が発生した場合に限り、「超過勤務手当」もしくは「1回当たりの定額の手当」を支払う病院が大半だ。


 奈良県県立奈良病院の2人の産婦人科医が、時間外手当の支払いを求めた訴訟の2013年の最高裁判決では、2人の医師の「宿直」の実態は時間外労働であり、診療行為を実施した時間だけでなく、待機時間を含めて、法定の割増賃金(超過勤務手当)を支払うよう判断している(『「宿直扱いは違法」は当然の判決 - 藤本卓司・弁護士に聞く』を参照)。今回の調査は、大学病院の「宿直」も、実態は大半は時間外労働と想定され、最高裁判決に合致した割増賃金(超過勤務手当)の支給例はごく限られることがうかがえる結果だ。

 同会議の大学病院の医療に関する委員会「経営実態・労働環境ワーキンググループ」座長の海野信也氏(北里大学病院病院長)は、今回の調査の結果について、「各大学病院の努力により、少しずつ医師の処遇改善が進んでいる。時間外の手術など、診療行為として把握できるものに対しては支払う病院が増えている。さらに、診療アシスタントやメディカルクラークなどを増員し、医師の業務負担を図った病院も多い」と説明。

 しかし、過去2回の改定とは異なり、2014年度改定では大学病院にとって厳しい改定になったため、海野氏は、「経営状況は容易ではないが、医師の処遇改善を進める基本的な流れについては変わらないだろう。今まで続けてきた取り組みを、いかに進めていくかを各病院とも考えている」と苦しい現状を明かす。

 千葉大学医学部付属病院病長の山本修一氏によると、同病院の医業収入は年約300億円。今年4月の消費増税に伴い、2014年度の消費税負担は約5億3790万円増えると試算される。一方、診療報酬本体や薬価・材料価格の改定による増税対応額は、計3億5343万円。差し引き1億8447万円で、消費増税に伴う負担増の約65%しか、改定で補てんされない見通しだ。

 山本氏は、「非常に厳しい改定だった。昨年、一昨年は設備機器の更新を順調にやってきたが、今年度はかなり絞り込まないとやっていけない。この状態が続くと、耐用年数が超える機器も更新できない」と厳しい現状を説明する。

 2014年度改定では、「病院勤務医等の負担軽減」が柱の一つになったが、その恩恵を受けた病院は少ない。その一例が、手術と処置の「休日・時間外・深夜加算」で、「予定手術前の当直(オンコールを含む)の免除」などを条件に2倍に引き上げられた(『「夜間や休日の手術」、医師の負担軽減』を参照)。全国医学部長病院長会議副会長の甲能直幸氏(杏林大学医学部付属病院長)は、「医師の勤務環境改善策として改定されたが、施設基準をクリアできるところはなく、現実には算定できない」と不満を隠さない。

 2015年10月には、消費税率10%への引き上げが予定されている。山本氏は、「大学病院は、高度な医療をやっているので、設備機器、消耗品や医療材料などがかかる。かつ職員の処遇を維持しつつ、経営をするのは容易ではない」と述べ、「医療は非課税」という現行制度のまま、10%にアップすれば、「経営は破たんしかねない」と危機感を募らせる。

  7割強が「経営改善」と回答

 「大学病院経営実態調査」は2013年4月に、全国の大学病院本院と分院、計109病院を対象に調査。ほぼ同様の調査を2010年10月に実施しており、今回が2回目。

 経営状況を見ると、2010年8月を100とした場合、2012年12月の入院収入は104.7、外来収入は112.0。2012年度改定によって、大学病院の経営が好転したことが分かる。こうした状況を反映して、「1年前と比べた全般的状況」は、「よくなっている」「少しよくなっている」と回答したのは計80病院(73.4%)。その理由として、「診療報酬改定による収入増」「内部努力」が挙がった。改定の中でも、特に収入増につながったのは、「手術手技料」、「DPC機能評価係数による評価」、「感染防止対策加算」などだ。

  オンコール1回、2万円の大学も

 大学病院の医師の勤務環境については、前述のように「宿日直中の診療に対する時間外勤務手当」以外にも、幾つかの項目を調査。

 「オンコール医への手当」の支給は52.5%で、前回調査(53.4%)とほぼ不変。高額な例では、「1回当たり2万円」「待機手当1万円、出勤手当1万円」などの回答もあった。

 「時間外勤務手当以外の手当」の支給は71.4%で、前回調査(60.8%)より大幅に増加。「特勤手当(夜間診察業務手当、放射線作業手当)」、「術後管理手当」、「救急勤務医手当」、「麻酔管理手当」、「分娩手当」などが項目として挙がった。

 「時間外手術に対する手当」の支給は83.2%で、前回調査(71.6%)よりも大幅増。金額としては、「1件5000円」、「実務実績に応じた定額支給(5000円~2万1500円)、「1時間以内5000円、2時間まで7500円、2時間超1万円」などの回答があった。超過勤務手当として支払っている病院もあった。

 「時間外分娩に対する手当」の支給は、前回調査と同じ60.5%。金額的には「時間外手術に対する手当」とほぼ同じで、「1件5000円」、「実務実績に応じた定額支給(5000円~2万1500円)、「宿直中1万円、オンコール2万円」などだった。

 調査では、大学病院への労働基準監督署の指導の現状も聞いている。2012年度は全国40大学病院(本院と分院を含む)が、医師の労働時間を適切に把握していなかったり、「36協定」を超す時間外労働、時間外・深夜労働に対する割増賃金の不払いなどを理由に指導を受けた。

  手術件数、1大学本院当たり9000件超

 調査では、「大学病院の地域・社会貢献」についても聞いており、大学病院が地域の中核的役割を果たしていることがうかがえる結果だった。

 大学病院の本院について1病院当たりの実績を見ると、「1日当たりの宿日直医数」27人、「1日当たりの時間外オンコール医数」13人、「年間総手術件数」9122件、「年間総救急患者受入数」1万1583人など。ドクターヘリ保有は15病院、ドクターカー保有は32病院。

 大学病院本院は、地域の病院に数多くの医師を派遣している実態も浮き彫りになっている。関連病院は、平均118病院で、関連病院勤務中の自病院出身医師(常勤)は平均411人、関連病院への派遣医師(常勤)は平均187人だった。



http://mainichi.jp/articles/20160605/ddm/016/040/044000c
かかりつけ医
拡大へ 総合的診療、人材育成急ぐ 日本

毎日新聞2016年6月5日 東京朝刊

 日本ではこれまで、臓器別の専門性が重視されてきた。しかし、複数の疾患を抱える高齢者への対応が増加することなどに伴い、総合的に診察できる医療者の育成、拡大に向けた取り組みが各方面で始まっている。

 2017年度開始予定の新しい専門医制度の目玉の一つは「総合診療専門医」だ。総合診療専門医の特徴は、特定の臓器や疾患に限定せずに、幅広い視野で患者を診る点だ。他の領域の専門医や他職種とも連携し、多様な医療サービスを柔軟に提供することが期待されている。

 厚生労働省は、身近でかかりつけ的な機能を持つ病院や診療所を増やすことに重点を置いている。14年度の診療報酬改定で、中小病院・診療所の主治医機能を評価する仕組みを新設。16年度の診療報酬改定でも、認知症や小児を継続的に診察する主治医の報酬を新設し、推進している。

 日本医師会では、かかりつけ機能の認定制度を4月から全国でスタートさせた。かかりつけ医を「何でも相談でき、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介できる、総合的な能力を有する医師」などと位置づけた。研修を修了した医師には都道府県医師会から認定証を交付する。



http://mainichi.jp/articles/20160605/ddm/016/040/042000c
かかりつけ医
拡大へ 幅広い健康問題、解決まで患者支え 英国の家庭医に聞く

毎日新聞2016年6月5日 東京朝刊

 高齢化が進む中、複数の疾患を抱える高齢者のケアや在宅医療を充実させるため、身近な地域で幅広い分野に対応する「かかりつけ医」の普及が始まった。欧州の一部やカナダなどの国々では、こうした役割を果たす「家庭医」がすでに定着している。先進国の一つ、英国で、日本人家庭医として活躍する澤憲明さん(36)に話を聞いた。【聞き手・細川貴代】

 −−家庭医はどんな疾患を診ているのですか。

 ◆患者の訴えは本当にさまざまです。「せきが止まらない」から「妊娠したい」「足の関節が痛む」「眠れない」などまで、年代や分野は問いません。家庭医はまず、このまま診療所で診るか、専門医のいる2次医療機関(病院など)に送るかを判断します。疾患への対応や、どの段階で専門医に送るかという判断は、科学的根拠に基づく国のガイドラインを基に患者と話し合って決めます。結果的には、家庭医の段階で、患者の9割の健康問題に対応できています。

 −−所属する診療所は、どういう体制ですか。

 ◆私の働く診療所は、人口約3万人の町にあります。診療所の登録住民は約8500人。私を含めて5人の家庭医と、看護師、保健師、理学療法士、助産師、事務など約30人が勤務します。外来診察は予約制ですが、急性症状の場合は当日でも対応します。当番医をおいて電話相談を受けたり、往診にも対応したりし、患者さんは多様なアクセスが可能です。登録患者の診察記録や既往歴、予防接種歴などの情報は継続的、一元的に管理され、診療所では電子カルテでみることができます。訪問看護師など地域の専門職などとも電子カルテで患者の情報を共有できる仕組みになっています。

 −−具体的にはどのように対応しているのでしょうか。

 ◆例えば、ある高齢の1人暮らしの女性患者から、毎週のように「腰が痛い」と訪問診療の依頼がありました。自宅で話を聞くうち、彼女が「家族が遠くにいてさみしい」「趣味の活動をしたい」ということを打ち明けてくれた。そこで、地域の散歩クラブを紹介しました。英国ではこれを「社会的処方」といい、地域の専門家がその人のニーズにあった社会的な資源を提供してくれるものです。クラブ活動で友達もでき、痛みの訴えも止まりました。彼女に必要なのは薬でなく、社会的つながりでした。このように患者の訴えの内容が、医学的な問題かどうかは重要ではなく、何を問題としているのかに答えるのが家庭医の専門性といえます。

 −−疾患や臓器別だけでなく、そこまで幅広い健康問題に医師が対応していくのは難しいのでは?

 ◆「親の介護で困っている」「息子がジャンクフードばかり食べる」など、医療での対応だけでは本質的な問題解決につながらないことも多くあります。私はこれら全てを受け止め、問題が解決するまで責任を持ちます。ただし、1人で問題を解決するわけではありません。診療所の専門職や地域のソーシャルワーカーなどと連携したチームで対応し、解決にあたります。

 −−家庭医はどう育成されるのですか。

 ◆幅広い疾患を診る能力の養成はもちろんですが、専門課程ではコミュニケーションの訓練を徹底的に受けます。研修医時代は指導医から頻繁に「患者さんの立場に立って物事を考えろ」「不安や伝えたいことを引き出すスキルを身につけなさい」と言われました。診察では、患者さんの言いたいことを引き出すため、雰囲気作りにも気を配ります。患者さんが診察室に来たら、相手が話しやすいように、あえて最初の数秒間は何も言わずに笑顔でいます。日本でも「患者中心の医療」との言葉を聞きますが、これは医療者のコミュニケーション能力が優れていなければできません。その能力が備わっていてこそ「患者中心」の医療が可能になると思います。

 −−身近で何でも相談にのってくれる総合的な医療サービス「プライマリーケア」を担う医療者の役割が日本でも注目されています。

 ◆家庭医は過剰な医療から患者を守る「ゲートキーパー」(門番)の役割もありますが、「家庭医はゲートオープナーである」と実感します。適切なケアに患者・家族をつなげる伴走者で、患者さんに医療をわかりやすく翻訳して伝え、自立を支える支援者です。プライマリーケアの強化は保健医療システムの機能の向上につながると言われます。近年、多くの国々が高齢化、疾病構造の変化、格差拡大などの問題に直面しています。医療サービスがより効率的かつ効果的に機能するためにも、プライマリーケアとそれを担う人材を重視する傾向は、今後世界的に一層強まっていくのではないでしょうか。

 ■ことば
英国の医療制度と家庭医
 英国の医療を提供するNHS(国民保健サービス)は公費で賄われ、原則として患者の窓口負担もない。国民は自分のかかりつけの診療所を決めて、あらかじめ登録する。2次医療機関の受診は、診療所に所属する家庭医(GP、General Practitionerの略)の紹介を必要とする。家庭医は、あらゆる相談にのり、総合的な医療を行う。「外科」「小児科」などと同様の、専門科の一つに位置付けられている。

 ■人物略歴
澤憲明さん(さわ・のりあき)富山県生まれ。英国の高校課程を経て、2007年レスター大医学部卒。英国での研修を経て、12年、英国家庭医に。同年からリーズ市近郊の診療所に家庭医として勤務している。


  1. 2016/06/05(日) 05:45:20|
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