Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

5月30日 

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/48866.html
「循環」重視し、医師が発揮する価値最大に- あの時、私はこう考えた(6)
2016年05月30日 20時00分 キャリアブレイン

 医師向け情報サイト「coFFeedoctors」を運営する株式会社GMJを立ち上げた医師の田上佑輔(36)は、在宅診療を専門とする医療法人社団やまと理事長の顔を持つ。

 熊本県出身の田上は、鹿児島のラ・サール高校から東大医学部に入った。同大卒業後、千葉県の国保旭中央病院(旭市、989床)で初期研修。その後、同大医学部附属病院に戻り、希望していた腫瘍外科に勤務していた。しかし、2011年3月11日の東日本大震災が、医師としてのキャリアの大きな転換点となった。

 震災をきっかけに、以前から指摘されていた地方の医師不足や、医療格差を改めて認識し、大病院では何人もの医師で一人の患者を診ているのに、地域では、逆に一人の医師が何人もの患者を診ている現実を「不公平」だと感じ、地域医療に軸足を移そうと考えた。そして、大学病院を辞めることになる。

 震災から2年後に、宮城県登米市に「やまと在宅診療所登米」を開業。現在は、東京や神奈川の診療所を含め、計5つの拠点で地域に根差した医療を提供している。

 田上は、こう語る。

 「医師というのは本来、自由なはずです。国家資格を取得することで、日本中どこでも医療ができます。医師は、病院などのハコに囲われるから、皆で医師を奪い合ってしまい、結果的に医師が足りないという事態になっています」

 そこで田上は、医学生や若手医師に対して、首都圏などで病院勤務をしながら、週に何日かを地域の診療所などで働くことを提案する。

 「大病院の中で、医師として能力を発揮している人もいます。その一方で、病院勤務の傍ら研究をしたり、教育をしたりする人もいます。それと似たような形で、若い人たちに、地域の診療所で勤務し、地域医療に参加してみたらどうだろうと提案しています。クロスボーダーというか、境界を越えたり、またいだり、『循環』することで、医療の質が高まっていくと思うのです」

■「循環」にこだわり、「coFFeedoctors」に期待

 田上は、インタビューの最中に何度か、「循環」という言葉を繰り返した。こだわりの一つだという。「循環」の大事さを、このように説明する。

 「ヒトの体でも血液が循環し、頭では思考が循環して全体がうまく成り立っています。誰しも循環というものを持っています。そのほか、家族、会社の中で会話が循環したり、社会で人々が循環したり、すべてのものは流動的で、いい循環にすることが大事だと思うのです」

 田上は、12年5月にGMJを設立、同時に「coFFeedoctors」のサイト運営を開始した。このサイトの目標は、医師が発揮する価値を最大化することだ。

 新たな医療課題などに取り組む医師のインタビューなどを掲載することなどを通じて、それを読んだ医師がそれに賛同したり、意見を言ったりして、田上がこだわる、「循環」が円滑になると考えている。

 田上は、医師の役割は今、患者の病気を治すことからもっと広がって、患者の生活を支えたり、地域全体を見たり、もしくは医療費に関する課題を解決したりするなど、多種多様になってきていると話す。これらの課題の最前線にいる医師たちに「coFFeedoctors」が気付きを与え、同じ問題を抱える医師が“ゆるく”つながれるよう、一役買えればいいと考えている。

 医療というほぼ完成されている制度の中で、新しいイノベーションはそれほど多くはないと指摘する。それ以上に今後は、自分を含めて若手の医師たちが情報を共有し、所属や立場を超えて力を合わせることがイノベーションと考えている。田上は、日本中の多くの医師が「coFFeedoctors」に立ち寄ることで、新たな動きが出てくると期待している。

 「これまでは、医師それぞれが個別に、自分の問題意識などで解決に向けて取り組んできたと思います。これからは、『coFFeedoctors』に掲載した医師のように、挑戦する医師に、ほかの医師が関心を持ち、その取り組みに参画することなどによって、新しい化学反応が起きる必要があると思っています」

=敬称略=【君塚靖】



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/48869.html
病院勤務医の地域偏在、5年間で拡大- 都会と地方の格差より鮮明に、日病調査
2016年05月30日 17時00分 キャリアブレイン

 病院で働く医師の地域偏在が過去5年間で拡大していることが、日本病院会(日病)の「地域医療委員会」が行ったアンケート調査の結果で明らかになった。2013年に実施した前回調査に比べ、常勤医が「増加した」と回答した病院の割合は、政令指定都市や中核市などでは増えたものの、郡部・町村では「減少した」が前回の倍以上となる4割超に達し、都会と地方の格差がより鮮明となった。【敦賀陽平】


 調査は昨年10月1日-11月20日、日病の会員2431病院を対象に実施し、664病院から回答を得た。このうち、政令指定都市や中核市などの「都市部」が323病院で最も多く、「その他の市」は301病院、「郡部・町村」は40病院。病床規模別では、300床未満の病院が半数超を占め、6割近くが一般病棟7対1入院基本料を算定している。

 「5年前と比較して常勤医が増加したか」との質問では、「増加した」が550に上り、前回調査から3ポイント微増した。だが、これを所在地別で見ると、都市部は650(前回比9ポイント増)だったのに対し、その他の市は480(同1ポイント減)、郡部・町村は280(同18ポイント減)で、人口が少ない地域ほど下がる傾向が見られた。

 一方、「減少した」と回答した病院は、都市部では110(同6ポイント減)と減少したものの、その他の市が300(同5ポイント増)、郡部・町村が430(同25ポイント増)だった。

 勤務医不足を解消させるため、どのような政策を支持するか尋ねたところ(複数回答)、「総合診療医の育成」が全体の800に上り、以下は「地域枠入学の活用」(730)、「医師の計画配置」(700)などと続いた。

 地域医療委員会委員長の塩谷泰一常任理事(高松市病院事業管理者)は、「さまざまな施策が行われてきたが、勤務医の偏在は解消どころか拡大している」と指摘。地域枠に関しては、「義務年限や赴任病院など、大学によって運用ルールが異なる。基準をある程度統一してほしい」と話している。



http://www.sankei.com/affairs/news/160530/afr1605300030-n1.html
未払い手当総額1億3千万円 神奈川・藤沢市民病院
2016.5.30 19:19 産経ニュース

 神奈川県藤沢市は30日、藤沢市民病院の医師と看護師ら421人の時間外勤務手当の一部が平成25年11月~昨年11月、未払いになっていたと発表した。総額は約1億2940万円に上る。

 市によると、昨年11月に藤沢労働基準監督署が調査に入り発覚。是正勧告を受けた市の聞き取り調査などから、421人に最大約350万円の未払いが分かった。「労務管理が不十分だった」としている。



http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201605/20160530_13034.html
信号機制御「FAST」 救急搬送短縮に一役
2016年05月30日月曜日 河北新報

 仙台市消防局と宮城県警は4月、緊急走行の救急車を信号制御で優先的に交差点を通過させる現場急行支援システム(FAST)を、市中心部の東二番丁通など幹線道路に導入した。搬送時間の短縮と搬送者の身体負担軽減が目的だが、効果のほどは。救急車にも乗って確かめた。(報道部・関根梢)

 17日午前8時前。朝のラッシュ時に合わせて市立病院(太白区)近くの郡山交番前から、東二番丁通経由で東北大病院(青葉区)へ車で向かった。雨の影響もあり、交通量は多め。特に交差点付近の渋滞がひどく、約7キロの道のりに約45分かかった。
 サイレンを響かせて渋滞の列を縫うように進み、恐る恐る交差点に進入する救急車。よく見掛ける光景だ。「車線の多い交差点で進行方向が赤信号の場合、絶えず左右を確認して進まなければならず、かなり神経を使う」。市消防局の佐藤恵救急管理係長が説明する。

<青信号続く感覚>
 FAST導入で変化はあったのか。救急隊員の金須創さん(31)は「青信号がずっと続いている感覚。これまで交通量の多い東二番丁通は避けていたが、導入後はFAST区間を使うようになった」と効果を実感しているという。
 市消防局は長年、搬送時間の長さが課題だった。同局によると、119番の入電から病院収容までに要する平均時間は2014年で41.2分。全国の消防局・消防本部平均の39.4分より2分近く長い。
 高齢化の進行に伴う搬送件数の増加や医療機関の受け入れ状況など、さまざまな要因が絡み合う。市消防局は「搬送時間を劇的に短くする特効薬はないが、FASTを含め多角的に改善を図りたい」と話す。

<患者の負担減も>
 導入のもう一つの狙いは搬送者の身体的負担の軽減にあるが、救急車はそんなに負担が掛かるのか。市立病院の救急センターで模擬搬送を体験した。
 ストレッチャー上で、進行方向に頭を向けて横たわった。時速約40キロから減速すると、体が上方に引っ張られ、頭に血が上る感覚があった。5分足らずの乗車で気分が悪くなった。
 救急救命士の佐藤元さん(31)は「救急車は特殊な構造上、乗用車などに比べとても揺れやすく、搬送者の症状が悪化するケースもある」と指摘。「FASTの導入によって加減速が少なくなり、隊員も患者もストレスが減ったのではないか」と話す。

[メモ]現場急行支援システム(FAST)は道路に設置された通信機が救急車の車載器で位置を把握し、宮城県警交通管制センターに情報を送って信号の点灯時間などを制御する仕組み。東北大病院と市立病院を結ぶ幹線道路など総延長7.4キロ区間に導入した。



http://mainichi.jp/articles/20160531/ddm/041/040/110000c
手術中出火、患者重傷 レーザーメス使用 東京医科大
毎日新聞2016年5月31日 東京朝刊

 東京医科大学病院(東京都新宿区)の手術室で今年4月、手術中の患者に掛けられていた布に火がつき、患者が大やけどを負う事故が起きていたことが分かった。当時、レーザーメスを使用しており、警視庁新宿署は業務上過失傷害容疑で医師から事情を聴くなど捜査を進めている。

 同署や関係者などによると、4月15日午前10時半ごろ、同病院5階の手術室で、産科・婦人科の医師が30代の女性患者の手術を行っていたところ、女性に掛けていた手術用の布(ドレープ)に火がついた。医師は生理食塩水で消したが、女性は腕や足などにやけどを負った。女性は重傷で今も入院中だが、命に別条はないという。

 この手術で医師は、レーザーメスを使用していた。レーザーメスと出火との関係は判明していないが、同署は医師による誤使用や機器の不具合などを視野に入れて原因の解明を進めている。

 同病院は患者側に謝罪。東京都や厚生労働省関東信越厚生局に事故を報告し、第三者による調査委員会を設けて原因の調査を始めている。

 同病院経営企画・広報室は「調査結果が出た段階で、経緯を公表する方向で準備を進める」としている。

 レーザーメスは人工の光であるレーザーを利用する医療機器で、熱の作用により止血をしながら切開することができる。電気メスに比べて切開がスムーズにできるなどの利点があるとされ、皮膚科や外科など幅広い分野で使われている。

 同病院のホームページによると、病床数は1015床。高度な医療を提供することで診療報酬の優遇が受けられる「特定機能病院」に指定されている。【神保圭作、福島祥】



http://www.jacom.or.jp/noukyo/news/2016/05/160530-29919.php
地域包括ケア充実へ JA病院・行政が一体で 文化厚生連が研究会一覧へ
2016.05.30 農業協同組合新聞

 日本文化厚生連は5月25、26日、東京都内で、「地域に根ざした厚生連医療の展望と戦略」のテーマで研究会を開いた。2016年の診療報酬改定のもとで地域包括ケアシステムの確立にJAの医療機関がどのようにかかわるかについて意見交換した。

◆JAグループに期待

地域包括ケアの取り組みについて意見交換する厚生連医療経営を考える研究会 研究会では片山善博・慶応義塾大学教授が「地方の再生と医療・福祉」で記念講演した。
同教授は、鳥取県知事だった経験をもとに、地方創生は、「お金を外に出さないようにすることだ」と指摘。
 特にエネルギーと食料品をできるだけ地元、県内でまかなうべきだというわけだ。そのためには小水力発電や風力発電の利用、食べ物の地産地消を進めるべきで、JAにその役割があると指摘した。
 また、人工透析を減らす運動で成果を挙げている広島県呉市の取り組みを紹介し、重篤な病気にならないようにして病院の負担を減らすなど、「地域(人)の健康、病院(経営)の健康を守ってほしい」と、JAグループの医療活動に期待を述べた。

◆個人から地域ケアへ

 特別講演では二木立・日本福祉大学学長が地域包括ケアシステムの政策動向と、その正確付けについて話した。地域包括ケアシステムは当初、介護サービスを中核とした介護保険制度改革と位置付けられ、医療は診療所・在宅医療に限定されていたが、次第に範囲が拡大され、いまでは病院医療を含むようになった。
 従って「治す医療(キュア)と支える医療(ケア)は一体的にとらえるべきだ」と指摘する。
 そのうえで、地域包括ケアシステムの対象を拡大する必要がある。つまり、「高齢者、障がい者、児童、生活困窮者といった区別、地域に暮らす住民の誰もがその人の状況にあった支援が受けられる」システムであるべきだという。
 それには地域の実態把握・課題分析を通じて、地域における関係者が目標を共通する必要がある。それは自治体(市町村)の役割であり、「地域マネジメント」力が求められる。二木教授は「個人を対象としたケアマネジメントの地域への拡大版」と位置付ける。
 実践報告では栃木県の上都賀上都賀総合病院の十川康弘病院長、広島厚生連廣島総合病院の藤本吉範病院長、それに社会医療法人石川記念会HITO病院の石川賀代病院長が、それぞれ地域包括ケア、地域医療構想などの取り組みについて話した。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/opinion/orgnl/201605/547010.html
精神医療チーム「DPAT」が熊本地震で果たした役割
DMATとは違う、DPATを組織する意義
DPAT事務局次長の渡路子氏に聞く

2016/5/31 増谷彩=日経メディカル

 今年4月に起きた熊本地震では、DPAT(災害派遣精神医療チーム)の活躍にも注目が集まった(関連記事:DMATは157隊、DPATは13隊が活動中)。DPATは、事故や災害などの後に被災地域に入り、精神医療および精神保健活動の支援を行う専門的なチームのこと。今回は、DPAT事務局次長の渡路子氏に、DMAT(災害時派遣医療チーム)と別の組織である意義、熊本地震での活動や、今後の課題などについて聞いた。

――今回の熊本地震で、DPATがどんな活動を展開されたのか、教えてください。
 DPATの派遣は、熊本地震が4回目となります。ただし、初の出動となった2014年のいわゆる「広島土砂災害」、2014年の御嶽山噴火、2015年の関東・東北豪雨など、経験してきたのはいずれも局所的な災害でした。全県からDPATを派遣した大規模災害は、今回が初めてです。

 今回、DPATはDMATとは違い、4月14日に熊本県で1回目の地震が起きた直後から、熊本県内外のDPATに派遣要請を掛けていました。翌15日には、全国から14隊のDPAT先遣隊(発災後遅くとも72時間以内に活動できるようにしておく班)が現地入りし、熊本県庁内に設置されたDPAT調整本部に集まりました(関連記事:早期介入を目指す新体制のDPATが活動中)。

 これまで、災害時の精神科の活動は、避難所を回って「眠れていますか?」と聞いたり、「不安はありませんか?」といった心のケアが中心でした。しかし今回の震災では、精神科の医療機関の被災が大きかったということで、DPATは当初精神科の医療機関の患者搬送をメインとした活動を行っていました。熊本地震では、7つの精神科医療機関が被災しており、合計で595人の患者搬送を実施しました。

――72時間以内に派遣する先遣隊の機能はどのようなものになるのでしょうか?また、一般的なDPATとは別の訓練が必要になると思いますが、どのような訓練が実施されているのでしょうか。
 先遣隊とDPAT統括者には、DPAT事務局が災害医療センター(東京都立川市)の協力を得て、全国レベルでの研修を実施しています。先遣隊は、前述の通り発災当日から遅くとも72時間以内に活動できる班のことです。先遣隊の機能としては、現地調整本部の立ち上げと状況の把握があります。今回は入院患者の搬送支援が必要ということで、その任に当たりました。研修は2日間にわたり、内容はDMATに学ぶものもあれば、精神医療に特化したものもあります。

 DMATに倣った内容としては、現場の指揮命令系統を学ぶということがあります。日本では、阪神淡路大震災の後くらいから、心のケアの必要性が言われ始め、「心のケアチーム」が組織され始めましたが、心のケアチームがどんなものであるのかといったことを示す活動要綱などは作られずにいました。東日本大震災が起きた際に、厚生労働省が各都道府県に心のケアチームの派遣を要請しましたが、何の規定もない組織で指揮命令系統もない中での現地入りになったため、保障もあやふやで、医療なのか保健なのかも分からない、なんとも不安定な状態での活動となってしまいました。

 こうしたことをきっちり規定しようというのがDPATの始まりでもありましたので、まずは指揮命令系統を整備しようということになりました。これはDMATでも消防でも自衛隊でも同じですが、どの指揮命令系統で、どういった身分で、何の支援をしに行くのかといったことを決めなければ災害支援はできません。これをしっかり覚えてもらうのが、最低限の作法だと思っています。

 次に、精神科に特化した内容として、様々な組織との連携を学ぶことがあります。DPATの場合、活動のフェーズはDMATよりも長くなります。そのため、支援に入った時期によって、連携する先がどんどん変わります。かなり初期に入ったチームは、患者搬送をするためDMATや自衛隊と連携しました。しかしもう少し後になると、今度はJMAT(日本医師会災害医療チーム)や日本赤十字社などの医療救護班、JRAT(大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会)、JDA-DAT(日本栄養士会災害支援チーム)、地元行政の保健師などと連携し、避難所の方などの心のケアや、精神医療ニーズの拾い上げを行っていくフェーズになります。どのフェーズで誰と連携するかということがDMATとはかなり異なる点ですので、連携方法などを学んでおく必要があります。

――研修内容もDMATと同じ部分があるということですが、DMATの中に精神科医を含めるのではなく、DPATという別組織にする意義は何でしょうか? 例えば、DMATや自衛隊も患者搬送の任に当たっていたと思いますが、患者搬送を実施する上で、DMATとDPATで何か違いがあるのでしょうか。
 DMATとDPATを別組織にする意義として、まず両者は活動エリアが全く違うということがあります。DMATは災害拠点病院を活動拠点として活動します。一方で、DPATが支援すべき地域の精神科医療機関というのは、災害拠点病院とは全く別の場所にあります。

 また、DMATとDPATでは、患者の搬送時にするトリアージの観点が異なります。DMATは、「救命」のために組み立てられている組織です。そのため、重視するのは傷病者の重症度、救急度です。しかし、精神疾患患者の場合、外傷などがなく自分で歩ける状態であるため、DMATの指標では軽症になるのに、精神医療の指標で診ると重症だという人がいます。DMATの指標とは別に精神医療の指標が必要で、精神科の専門家がトリアージを行うべきだと考えています。

 そもそもDPATは、東日本大震災のときに精神科の医療機関への支援が遅れ、何人もの患者さんが脱水や低体温症、肺炎などで搬送中に亡くなるという経験を反省して組織されたものです。患者さんが亡くなってしまった最大の原因は、DMATが使っている広域災害救急医療情報システム(EMIS)に精神科の医療機関がほとんど登録されていなかったことだと思っています。つまり、精神科の医療機関が被災しているという情報をDMATが得るのは難しかったのです。行政をみても、一般救急の部門や災害対策の部門とは異なる分局に位置するため、情報伝達がままならず、精神科の情報は抜け落ちやすくなっています。そのため、東日本大震災では精神科医療機関に支援が入りにくくなっていました。その結果、宮城県で被災したとある総合病院には発災から数時間後に多くの支援が入ったのに対し、その数百m先にある精神科病院には3日間以上支援が入らなかったという事態が起こりました。こうした狭間に落ちやすいのが精神医療なのです。

 こうした反省を生かし、東日本大震災後には災害精神保健医療情報支援システム(DMHISS)も構築して、発災直後から精神科医療機関の情報を収集できるようにしました。そのため、支援が入らなかった医療機関もなく、適切に資源を投入できたと感じています。実際に、今回DMATが全県に派遣要請を掛けたのは16日に起きた2回目の大きな地震の後だったのに対し、DPATが最初から全県に派遣要請を掛けていた理由は、最初の地震の段階で、2つの精神科の医療機関が大きく倒壊したことを把握していたからです。

 こうした取り組みの結果、精神科医療機関から搬送する間、亡くなった患者はいませんでした。東日本大震災では、搬送した1200人のうち何十人も亡くなっていますから、初期救命という意味では反省が生かせたと思っています。平時から医療提供体制や診療体制を別にしておくことの是非はともかく、災害時にいきなり同じにする、ということは無理な話なのです。

――今回の熊本地震で得られた反省点として、現時点ではどのようなことがあるのでしょうか。
 本来は、適切な研修を受けた人をそのフェーズに合わせて要請するというのが理想的ですが、DPATは2013年に立ち上がってからまだ3年ほどの未熟な組織です。ですから恥ずかしい話ですが、今回実際に訓練を受けているチームを派遣できたのは初期だけで、その後は研修を受けたことがないチームも派遣しています。そこは、発足後10年が経過しているDMATとは大きく違う点です。

 一般のDPAT隊員の研修は、各都道府県で実施することになっています。この内容がバラバラで、実態は従来の心のケアチームの研修と変わらないようなことをしている地域もあるのは問題です。DPATは、組織としての箱はできたし、熊本地震でも一定の活躍をしたと思いますが、中身はまだまだ未熟。研修を受けていない人が現地に入った結果、うまく動けなかったというケースは、今回本当に多く報告されています。人材育成が喫緊の課題であり、一般の隊員研修についても何らかの指針を示していくべきであることは間違いありません。

 前述の通り、DMATとDPATの医療ニーズの計り方は異なります。精神医療特有のトリアージ基準や搬送方法を構築しておかなければなりませんでした。これは、既に分かっていた課題で、そのための準備も進めていましたが、構築できていない段階で熊本地震が起きたために混乱が生じました。

 また、DMATの場合、患者の搬送先は基本的に災害拠点病院となります。一方、精神疾患患者の場合は、県内外の精神科病院が搬送先になります。そうすると、搬送先が必要とする情報も異なります。精神医療は、精神保健福祉法という別の法律で動いているので、各患者の措置入院、緊急措置入院、医療保護入院など法律上の入院形態が何なのか、保護室が必要な人は何人いるのか、身体拘束が必要な人は何人いるのかといった情報が必要になります。

 熊本地震では、どんな情報を収集するべきかという指標がなかったため、患者搬送に大変手間取ってしまいました。搬送中に患者が亡くなったり、大きな事故が起きたりということはなかったとはいえ、時間が掛かってしまったのは反省点です。共通書式で、誰が見ても分かるものをつくっておかなければ、搬送元も搬送先も困るというのが、今回見えてきた課題です。

――先遣隊など、急性期の災害医療への取り組みにフォーカスされる中で、従来の「心のケア」といった支援についてはどのようにお考えでしょうか。
 心のケアも、当然重要なものであると思っています。ただ、外部から派遣されている人たちがいつまでやるべきなのかということは分けて考える必要があります。本来県外から支援に来ているDPATの活動期間は、地元の医療機関や行政が整うまでです。

 地震の直後は、避難所で妄想状態や興奮状態に陥り他害行為に及んだ人や、認知症の人のBPSDやせん妄、不安障害の悪化、不眠や抑うつ症状の増悪といった急性ストレス反応への対応などをする必要がありました。統合失調症の未治療例や治療中断例で、症状が増悪した人など、入院が必要になったケースも少なくありませんでした。しかし、発災から1カ月がたち、医療ニーズや避難所での相談件数はかなり減りました。

 これもDMATとの違いとして挙げられるポイントなのですが、「救命」を目的とする救急医療と違い、精神医療のニーズには終わりがありません。ニーズは掘れば掘るほど見つかります。東日本大震災の被災地には、いまだに精神医療チームが派遣されています。これが良いことなのかどうかは、議論のあるところです。

 今は、医療が必要な人は地元の医療機関につなぎ、その手前であれば症状を見立てて行政など適切な場所につなぐという活動の傍らで、徐々に地元の支援者を引っ張り出す活動をし始めています。一方で、DPATは6月に入ったら九州・沖縄地区以外の県外派遣のチームを引き揚げ、近隣地区の支援に集約します。それから、これまではDPATが組織されていなかった熊本県で、DPATを立ち上げます。決起集会には、28機関204人が集まり、関心の高さを感じました。この九州・沖縄・熊本のDPATが地元の医療機関や行政につなぐ役割を引き続き担うことで、合意しています。6月にこれらの引き継ぎがうまく進めば、最初のモデルケースになると考えています。



http://mainichi.jp/articles/20160531/ddm/005/070/005000c
記者の目
高額化進む「がん新薬」 薬価見直し、待ったなし=河内敏康(東京科学環境部)

毎日新聞2016年5月31日 東京朝刊

新薬一つだけに医療費年2兆円

 「たった一つの新薬に年2兆円も医療費がかかるかもしれない」。連載「がん大国白書 第1部 新薬の光と影」(4月1〜15日朝刊)の取材で聞き、衝撃を受けた専門家の言葉だ。半世紀以上にわたり国民の命を等しく守ってきた「国民皆保険(公的保険制度)」を堅持するためにも、薬の値段(薬価)の見直しを真剣に議論すべき時期が来ているのではないか。

 問題の新薬は、新しいタイプのがん治療薬「オプジーボ(一般名ニボルマブ)」だ。がん細胞を直接破壊する従来の抗がん剤とは異なり、がん細胞が掛けた免疫のブレーキを解除して、免疫のがんへの攻撃力を回復させる。当初の治療対象だった皮膚がんの悪性黒色腫だけでなく、昨年12月から患者の多い一部の肺がんも公的保険で使えるようになった。これまで治療が難しいとされていた進行性の肺がん患者のがんが縮小する効果が確認され、肺がんの学会が関連シンポジウムを開き、がん専門病院に多くの肺がん患者が問い合わせるなど、医療界や患者らの期待の高まりを肌で感じた。

 一方、オプジーボにかかる膨大な医療費は公的保険制度を脅かしそうだ。日赤医療センター化学療法科の国頭(くにとう)英夫部長の試算によると、標準的な体格の人にオプジーボを投与すると1人当たり年3460万円かかる。対象となり得る肺がん患者5万人全員に投与した場合、年約2兆円。現在の日本の薬剤費全体の2割に達する額だ。肺がんへの適用拡大後、オプジーボの売り上げは急激に伸びており、「このままでは国が滅びかねない」という国頭氏の言葉が頭から離れなくなった。

 高額薬の問題は2000年ごろから起きていた。狙った細胞だけを攻撃する新しいタイプの抗がん剤「分子標的薬」が登場し、薬価が以前の数倍程度高くなった。公的保険制度への影響を懸念する医療関係者の声も聞いたが、私は楽観していた。これらの薬が効く患者が少なかったり、効果が続く期間がそれほど長くなかったりしたからだ。だが、オプジーボは次元が違った。がんを抑える効果が継続するため患者は長期間使い続け、オプジーボが確実に効く患者を事前に選ぶ方法が今はなく、使用が増える一方なのだ。

 さらに、薬価の高騰が進めば、経済的な事情から薬を手控える患者が出てくる可能性がある。6年前に高額医療問題を考えるキャンペーンの取材で出会った男性患者を、私は今も忘れられない。彼は、がんの一種の慢性骨髄性白血病で、効果が高い分子標的薬を使っていた。だが薬が高く、所得に応じて自己負担を一定額に抑える国の高額療養費制度を使っても、家計に与える影響が大きく、妻に内緒で薬の使用を中断。その後再発してしまい、取材から半年後に他界した。今回の連載のため、毎日新聞が実施したがん患者30団体へのアンケート調査でも、「高額療養費制度があっても患者負担は重すぎる」と、がん治療薬の高額化を問題視する意見が約半分を占めた。
高い薬価のまま適用拡大に疑問

 では、どうすればいいのか。残念ながら、難しい問題だ。病気を抱える患者らは、一層効果の高い薬を待ち望んでいる。それには多額の研究開発費が必要だ。公的保険制度を守るため、高額療養費制度の患者負担を増やすとの意見もあるが、先の男性患者のような悲劇を繰り返しかねない。

 私が注目するのは、オプジーボが高額になった理由の一つ、薬価の決め方だ。薬価の決め方は一般に、薬の開発などにかかった費用に一定の利益を上乗せし、その総額を推定される患者数で割ったものを、厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」が了承する−−というのが大まかな流れだ。オプジーボは当初、悪性黒色腫という患者数が年470人と極めて少ない皮膚がんを対象にして薬価が付いた。患者が少ないため高額な薬価が付いた、ともいえる。

 私は、高い薬価のまま、患者の多い肺がんに適用範囲が拡大したことに疑問を感じる。現在の薬価制度に反しているわけではなく、一般に成功率が3万分の1とも言われる新薬開発に多額の費用をかけた製薬企業の努力も理解できるが、オプジーボのような高額薬が公的保険制度に与える影響の大きさを考えれば、患者数の多い病気に適用を広げる場合は、薬価を見直しても良いのではないか。

 国は今年度から、予想販売額以上に売れたヒット薬の価格引き下げを可能にする新制度を始める。公的保険制度は患者の自己負担、保険料のほか多額の税金で構築されている。ある医師は「コストを考えずに薬を使い続けて将来の世代に負担を先送りする今のシステムでは、立ち行かなくなる」と語った。その通りだ。今後も高額薬は登場する。待ったなしだ。患者の期待に応え、製薬企業の開発意欲もそがず、適正な薬価を探る議論を今こそ始めなければならない。



https://www.m3.com/news/iryoishin/422068
シリーズ: 今どきの「U35ドクター」2016
35歳以下の勤務先、トップは医局人事が6割◆Vol.7
「地域枠」派遣が登場

医師調査 2016年5月30日 (月)配信高橋直純(m3.com編集部)

Q 現在の勤務先はどのようにして選びましたか。
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 現在の勤務先の選び方として、最多は2013年と変わらず「大学医局の人事」が6割を占めた(2013年調査は、『医局の求心力、弱まっている?◆Vol.5 』を参照)。2016年の特徴は3%の「その他」の回答があったこと。自由記述の内容を見ると、「地域枠での僻地派遣」「県からの派遣」「長崎県離島医学修学生制度」「大学卒業後の義務」など、2008年度からの医学部定員増に伴って増えた地域枠入学の義務として勤務が散見された。



https://www.m3.com/news/general/429035
校医の大量辞任…埼玉県吉川市長「遺憾に思う」 子どもの健康第一に調整
2016年5月30日 (月) 埼玉新聞

 吉川市の小中学校の校医16人のうち、10人が一身上の理由で3月末までに辞任したことについて、中原恵人市長は27日の定例記者会見で、「この1年、医師会とも例年に代わるような形で変更したことはない。校医が辞めたのは遺憾に思っている。子どもたちの健康、安全を一番に考え、6月30日までにきちんと健康診断を終えられるように調整している」と語った。

 この中で、中原市長は「校医一人一人の負荷はかなり大きくなっている」と懸念を示した。市教育委員会の篠田好充教育部長は「6人の先生にお願いしているので、健診が滞っていることはない」と述べ、子どもたちへの影響はないとしている。

 また、市の介護認定審査会でも、審査会の委員だった医師8人のうち、5人が3月末までに辞任していることについて、鈴木昇健康福祉部長は「すぐに審査しているので遅れはない」と述べ、市民に影響は出ていないとの見方を示した。



https://www.m3.com/news/general/429011
病床数減、調整難航も 北海道西胆振地域医療構想
2016年5月30日 (月) 室蘭民報

 2025年(平成37年)を見据え、地域の実情に応じた医療提供体制を描いた「西胆振構想地域医療構想(西胆振地域医療構想)」。西胆振3市3町の必要病床数(推計)は、14年比934床削減の2826床に設定した。今後は同構想を指針とし、まちづくりの一環の中での地域医療・介護の維持と体制の構築、管内の医療資源を有効的な活用などの議論も深めたい考えだ。

◆――25年ピーク

 道は、25年の医療提供体制を描いた「地域医療構想」策定作業に着手。胆振総合振興局でも連動して、西胆振地域医療構想の策定作業を進めていた。この構想に、管内の実情や医療関係者らの意見を反映させるため、昨年7月から「地域医療構想調整会議」を定期的に開催。素案は5月18日の第4回会合で承認された。

 構想では、管内人口は25年には10年比15%減としたが、75歳以上の人口は25年にピークに達し、10年比37・0%増―と設定。要介護(要支援)認定者数は75歳以上の増加に伴い、25年には15年比30・7%(3665人増)を見込んだ。

 必要病床数については、各推計と医療需要の想定に、病床稼働率などの現状も加味して推計。全体数は減少し「不足が見込まれる回復期病棟の充足」や「慢性期病床から介護施設や在宅医療への移行」を中心に取り組む、としている。

◆――高評価維持

 14年比24・8%減の必要病床数。医療機関に自主的な削減や転換、移行などの協力を求める方針で、今後は、地域医療構想調整会議で達成に向けた議論も進む。

 ただ、医療関係者からは「一人暮らしのお年寄りなど退院させられない場合もあり、回復期は難しい」「医療資源の有効活用も必要」などの意見もあり、調整が難航する可能性もある。また、病院経営に直結するだけに、「思惑が絡み、一筋縄では行かない」との指摘もある。

 西胆振は、東京圏の高齢者の地方移住を促すよう求めた民間団体・日本創成会議から、医療が最高ランクの7、介護が上から2番目の6と、高い評価を得た。その一因は「地域に公立と民間の病院が共存し、各病院がそれぞれの強さを発揮しながら、足りない部分は補完し合う関係性もあるから」(西胆振管内の医療関係者)だ。

 この評価を維持するため、共存のための一定のすみ分けや、在宅医療の受け皿づくりも課題となりそう。同振興局も「構想策定が終わりでない。将来あるべき医療提供体制をどのように構築するかが大切」(廣島孝保健環境部長)とする。

 西胆振3市3町では、広域連携で、東京圏の高齢化問題への対応や地方への人の流れの推進する観点から、充実した医療介護体制を生かした「生涯活躍のまち(日本版CCRC)構想」も進めている。住民の安全で安心な暮らしを守るため、効率的かつ質の高い医療の提供体制を確保するための議論にも改めて注目が集まる。



https://www.m3.com/news/general/428909?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD160530&dcf_doctor=true&mc.l=160091347&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
ストーカー加害者治療、警察と医療機関が全国初の覚書締結
2016年5月30日 (月) 読売新聞

 茨城県警と県立こころの医療センター(笠間市旭町)など精神医療関係の3団体は26日、ストーカー事案の加害者に対し、精神科医など専門家による治療やカウンセリングで再犯防止を図るための覚書を取り交わした。加害者治療を目的に警察と医療機関が覚書を締結するのは全国初。綿密に情報交換し、被害者の安全確保につなげる方針だ。

 覚書には、県精神科病院協会と県精神神経科診療所協会も参加。医療センターと県内9市町の6病院、3診療所が県警からの連絡に応じて加害者への接し方を警察官らに助言する。加害者の同意を得た上で医師らが加害者と直接面会し、自分本位の思考を矯正して、一方的な感情をコントロールするための治療を行う。

 治療費は加害者負担。受診時には警察官や加害者の家族の同席も可能で、県警は治療終了まで加害者の状況をチェックするという。26日から運用された。

 2015年に県内で起きたストーカー事案の認知件数は475件(前年比95件増)。検挙件数は67件(同37件増)、文書による警告は186件(同119件増)だった。今年1~4月の認知件数は139件。

 締結式で県警の鈴木三男本部長は「検挙や警告を行っても被害者への執着心や支配意識が抜けずにストーカー行為を繰り返す加害者がいる。精神医学的なアプローチで支配意識や執着心を取り除ければ」と話した。


  1. 2016/05/31(火) 05:19:48|
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