Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

5月21日 

https://www.m3.com/news/general/426550
「医師に過失ないが説明不十分」…腫瘍手術で左足にまひ、330万円賠償命令
2016年5月21日 (土)配信読売新聞

 香川県立中央病院(高松市)で手術を受けた高松市内の女性(67)が、左足にまひが残ったのは担当医師の診察や手術内容に誤りがあり、事前説明も不十分だったなどとして、県を相手取り4462万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が18日、地裁であった。

 横路朋生裁判長は、医師の説明義務違反を認め、県に慰謝料など330万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性は2008年、同病院で神経などに腫瘍の疑いがあると診断された。同年12月に腫瘍の摘出手術を受けたが、左足の神経が傷つき、まひが残った。

 横路裁判長は、「診断や手術などで医師の判断に過失はなかった」と判断する一方で、事前に行った手術の説明については「運動障害が生じる危険性があり、手術と経過観察の選択に当たって、熟慮して判断できるよう女性に説明したとは認められない」と指摘した。

 判決を受け、県病院局は「判決の内容を精査して、今後の対応を検討していきたい」としている。



https://ww w.m3.com/news/iryoishin/426340
医学系研究3指針、個情法改正に伴う見直し優先
臨床研究法案を今国会に提出、成立後にも要検討

2016年5月20日 (金) 橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省、文部科学省、経済産業省合同の「医学研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議」(座長:福井次矢・聖路加国際病院院長)は、5月20日の第2回会議で、今後の検討の進め方について議論、個人情報保護法等の改正に伴う医学系研究の3指針の見直しを優先的に検討し、その後に、関係指針間の整合性を図るための検討に入り、今夏頃までに一定の結論に達した事項について見直しを行うことを確認した。

 改正個人情報保護法等の施行は、2015年9月から「2年以内」だが、時期は未定。「個人情報保護委員会」で、並行して法施行に向けた具体化の議論を進めており、この議論をにらみながら、本合同会議でも検討を進める。

 20日の会議は今後の進め方のほか、指針見直しの基本的考え方の確認、海外の事例紹介にとどまり、指針見直しに向けた具体的議論は、次回以降になる。

 なお、今国会に、臨床研究法案が提出された。ノバルティスファーマ社の降圧剤ディオバンに関する医師主導臨床試験の不正問題を受け、臨床研究に関する利益相反の管理などを徹底するのが狙い。医薬品医療機器等法における未承認・適応外薬等の臨床研究が対象になる。同法が成立すれば、同法との関係でも、医学系研究3指針について見直すべき部分があるか否かを検討することになる。

「医学研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議」は、次回以降、具体的検討に入る。

 改正個人情報保護法に伴う見直しの論点とは?
 医学系研究3指針とは、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」「遺伝子治療等臨床研究に関する指針」だ。これまでも、5年を目途に見直しが行われてきた。

 今回は、個人情報保護法等の改正に伴い、従来の「個人情報」に加え、「個人識別符号」「要配慮個人情報」が新たに定義され、取得の際の患者同意の要否や利活用の在り方が変わってくるため、指針の改正が必要になっている(『「臨床研究一般の萎縮が生じる」との懸念も』を参照)。

 現行の医学系指針は、患者への侵襲や介入がある場合、人体取得試料を取り扱う場合は、インフォームド・コンセントが必要だが、情報のみを取り扱う場合は、オプトアウトが可能。しかし、改正個人情報保護法では、「要配慮個人情報」には「病歴」などが該当し、原則同意が必要になることから、インフォームド・コンセント等の手続きの見直しが必要になる。

 具体的には、下記の4点が主な論点になる。

(1)個人情報等の定義の見直し
 「個人識別符号」や「要配慮個人情報」などの定義の追加。

(2)インフォームド・コンセントの手続きの見直し
 「要配慮個人情報」の取得・提供等については、患者の同意が原則必要になるため、同意によらない場合の手続きと考え方について、個人情報保護法等との関係を整理した上で、指針で求める措置を検討。

(3)匿名加工情報の取り扱い
 「匿名加工情報」は、既に連結不可能匿名化されている情報と同様の取り扱いとするかを検討する(匿名加工の基準は、「個人情報保護委員会」規則で定められることになっているため、定められた後に議論)。

(4)経過措置
 現行指針等に基づき実施中の研究は、法改正に伴い、法で定める要件を満たさない恐れがあるため、改正後の指針を適用するとともに、必要な経過措置を検討。

 関係指針の整合性も検討課題
 医学系研究が関係する指針としては、3指針のほか、ゲノム研究関連では、健康・医療戦略本部の「ゲノム医療実現推進協議会」や厚労省の「ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォース」で指針(以下、ゲノム指針)を検討している。

 これらの指針間の関係の整理も課題だ。(1)改正個人情報保護法とは独立して検討ができる論点、(2)改正同法に伴う見直し後、検討を行うべき論点――に分け、(1)を先に検討する。

 第1回の合同会議では、現行制度および見直しの方針について、幾つかの疑問や意見が呈せられ、第2回合同会議では、それに対する説明もなされた。

 その一つが、研究主体によって、適用される個人情報保護関係の法律が異なる点。民間事業者は個人情報保護法だが、国の行政機関や国立研究所などは行政機関個人情報保護法になる。法律により、個人情報保護の在り方も多少異なるが、医学系研究3指針は、個人情報保護法等に上乗せした措置が講じられているため、研究主体を問わず、共通の指針として適用される。今後も、試料・情報のやり取りに支障が生じないよう、引き続き統一的なルールにする。

 海外でも遺伝データ等の取り扱い、厳しく
 第2回合同会議では、海外の動向も紹介された。直近で見直し、改正されるのが、EU個人データ保護規則と、米国コモン・ルール(45CFR part46)。国際的な共同研究を想定して、海外動向も踏まえて指針の見直しを行う必要がある。

 EU個人データ保護規則は2016年5月20日4月に欧州議会で採択され、2018年5月に施行予定。改正個人情報保護法の「要配慮個人情報」に相当する「特別カテゴリ」が設けられ、遺伝データ、バイオメトリックデータ、健康に関するデータの取り扱いは、科学的研究等に限定され、本人の同意が必要とされた。

 米国コモン・ルールの改正については、2016年1月まで意見募集が行われていた。全ての生体試料を用いる研究で、原則同意を必要とするが、将来的な研究利用について「Broad consent」を許容する方針。



https://www.m3.com/news/general/426225
医学部定員、削減も 20年度から検討 人口減で医師余りに
2016年5月21日 (土) 共同通信社

 厚生労働省の有識者会議は19日、増え続けている大学医学部の定員について、2020年度以降は医師の偏在解消策の効果などを考慮しながら、削減も含めて検討する方針を盛り込んだ中間報告を取りまとめた。19年度までは、臨時増員分を含め過去最多となった16年度の水準(9262人)を維持する。人口減少が進み、将来的に医師が余るとの同省の試算などを踏まえ、年内に最終報告を作成する。

 厚労省は、16年度並みの定員が続けば、40年度には全国の医師数は33万3千人となり、必要数に対し1万8千~4万1千人過剰になると試算している。政府は08年に、医師不足や偏在による「医療崩壊」の問題を受け、それまでの医師数抑制の方針を転換した経緯があり、有識者会議の議論や需給試算を踏まえ、あらためて抑制にかじを切るのか注目されている。

 医学部定員は00年代前半、7600人程度で推移したが、08年の政策転換後は増え続けている。医師数も00年の約25万6千人から14年は約31万1千人に増加。地域偏在の問題が深刻化する中、政府は08年以降、臨時の増員措置を取ってきた。

 有識者会議の中間報告は、臨時措置のうち、地元勤務を条件に奨学金を出す「地域枠」として都道府県ごとに原則10人までの増員を認める措置については、19年度まで続けるものの、都道府県からの要望を慎重に検討すべきだとしている。医師不足が深刻な10県を対象に、それぞれ最大10人の増員を認めた措置などは当面継続する。

 その上で、20年度以降の医学部定員は、臨時増員や医師偏在対策の効果を検証して結論を出すとしている。

 一方、医師偏在の解消策として(1)地方での研修が増えるよう募集定員の配分などで都道府県の権限を強化(2)都道府県がつくる医療計画で、医師が不足する診療科や地域で確保すべき数の目標値を設定し、専門医などの定員を調整(3)医学部入学以降の医師の動向を把握するなど「地域医療支援センター」の機能を強化―などの案も示した。



https://www.m3.com/news/general/426552
女子学生2人にセクハラとパワハラ、教授を解雇
2016年5月21日 (土) 読売新聞

 金沢大学は20日、指導していた成人の女子学生2人にセクハラ行為を繰り返したとして、60歳代の男性教授を懲戒解雇処分にした。

 同大によると、男性教授は2014年8月~15年5月、自分の研究室に所属する2人に対し、学内外で身体に触れるなどのセクハラ行為を行った。同月、2人が大学に相談して発覚し、調査委員会は調査を経て、セクハラと暴言などのパワハラがあったと認定した。

 大学は2人から相談があった後、指導教授を代えるなどの措置を取った。2人は休学などはせず、現在も大学に在籍しており、警察への被害届は出していない。

 教授は、行為は認めているもののセクハラに当たるとの認識はなく、反省も学生への謝罪もしていないという。

 同大の福森義宏副学長は記者会見で、教授の氏名や所属学部、行為の内容などについて明らかにせず、「被害者のプライバシーや今後のことを考えると公表できない」と理由を述べた。

 同大が法人化した04年度以降、ハラスメント行為で懲戒解雇処分を出したのは初めて。山崎光悦学長は「事態を重く受け止め、研修受講の徹底など再発防止に向けた活動を推進し、本学の社会的信頼の回復に努める」とのコメントを出した。



http://www.asahi.com/articles/ASJ5P4Q0TJ5PUBQU00P.html
(地域医療・岡山)地域の病院、ライバルから補完へ
中村通子
2016年5月21日15時56分 朝日新聞

 2025年、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる。本格的な高齢化社会の到来だ。求められる医療の形も大きく変わる。それに向け、岡山県は今春、第7次保健医療計画を発表した。岡山の地域医療はどう変わるのか。課題と、解決に向けた現場の動きを紹介する。

■川中島の戦い

 真庭市にある六つの一般病院のうち、最大の二つ、落合病院(1937年開業、173床)と金田病院(51年開業、172床)は、旭川を挟み、向かい合う。直線距離でわずか約400メートルしか離れていない。

 規模も設備もほぼ同等。地域の医療を支えるライバルとして、長年激しく競ってきた。住民は戦国時代になぞらえ「川中島の戦い」と呼んだ。

 真庭市の人口は、2005年に合併した時の約5万2千人から減り続け、現在は約4万7400人、25年には約4万人と推計されている。一方、65歳以上の高齢者の割合は上がり続けており、25年には4割を超える見通しだ。

 人口構成の移り変わりに基づき、県は今春、真庭市で25年に必要な病床数を約460床と試算し、発表した。現在、市内6病院の計約600床を大幅に下回る。

 過剰感は、すでにある。落合病院の安東正典事務局長は「稼働率がじわりと落ちていると感じる」と話す。

 09年、隣接する津山市の中核病院の一つが倒産した。市内にあるもう一つの病院との競争の結果だった。

 高齢化が進む地域では、病院は安心を保障する社会インフラだ。中核病院が突然消え、住民の安心感が失われると、人口流出が加速する。真庭市で病床の需要が減る中、落合、金田両病院が競い続けて共倒れになると、地域そのものの存亡にかかわりかねない。

 どうするか。

 出した結論は「競争から協調へ」だった。

 落合病院は、人工透析をする50床の腎センターやドクターヘリの発着場など、市内唯一の設備を持つ。産婦人科の常勤医がおり、お産が出来る病院もここだけだ。

 一方の金田病院は、整形外科や脳外科の専門医が複数常勤し、専門的な手術を多数手がけている。

 近さを利点に、それぞれの特性を生かし、補完し合うことで共存を目指す。

 津山の病院が倒産した09年に、金田病院は透析をやめ、患者を落合病院に譲った。落合病院は外科と整形外科の手術をやめ、金田病院に一本化した。

 そして昨年11月、両病院は「連携協力の推進に関する協定」に調印した。地域完結型の医療の推進や、医療機器の相互支援などをうたう。

 今、患者に渡す両病院の外来診療表は、片面に落合病院、もう片面に金田病院の表を印刷している。両病院が受け持つ診療を、地域の人に分かりやすく伝えるためだ。地域医療構想に詳しい産業医大(北九州市)の松田晋哉教授は、この診療表を「病院共生という新しい医療の象徴」と見る。

 課題はまだ多い。だが後戻りする道はない。金田病院の金田道弘理事長はこう話す。「戦いの先に、地域の明日はありませんから」

■模索始まる玉野

 三つの中核病院がある玉野市でも、模索が始まった。

 市民病院、玉野三井病院、岡山赤十字病院玉野分院は、いずれも医師不足に苦しみ、経営も厳しい。

 玉野三井病院の磯嶋浩二院長は「他の中小病院も医師が高齢化している。地域医療の中心となる救急の維持は限界に近い。市全体で再編成が必要だ」と話す。

 解決策を探るため、3病院と市、医師会、岡山大などが「玉野市地域医療連携推進協議会」を結成。4月27日に初会合を開いた。来年始まる地域医療連携推進法人制度などを使い、連携を円滑に進めたい考えだ。

 しかし、市・企業・日本赤十字社と、経営母体が大きく異なる3病院が、譲り合い、役割分担を整えるのは容易ではない。3病院は玉野の医療を支えきれるか。正念場を迎えている。



http://www.asahi.com/articles/ASJ5P4HRRJ5PUBQU00J.html
群馬大病院、再生なるか
仲田一平
2016年5月21日15時57分 朝日新聞

 群馬県は20日、群馬大学医学部付属病院(前橋市)で肝臓手術の患者が相次いで死亡した問題で、群大病院の再生を進める協議会の初会合を県庁で開いた。特定機能病院の再承認を目指すのが大きな柱。地域医療への悪影響を最小限に抑えようと県が支援に乗り出すが、道のりは険しそうだ。

■特定機能病院、再承認が焦点

 反町敦副知事は会合の冒頭で「群大病院の医療提供、医師確保の拠点機能の維持・回復が県政の喫緊の課題だ。特定機能病院の再承認をなるべく早く受けて正常な形で病院が運営されることが望ましいと考えている」とあいさつした。群大の和泉孝志副学長は「まだ完全な信頼回復、機能の回復には至っていない。県民に安心安全な医療を提供し、信頼を回復できるよう努力していく」と述べた。

 協議会には群大病院の田村遵一病院長、県健康福祉部の塚越日出夫部長らが出席した。冒頭を除いて会合は非公開で行われた。

 県医務課によると、会合では、群大側から診療科の再編統合や全死亡症例の検証、カルテ記載の充実など、事故後の取り組み状況を報告。県側は地域医療への悪影響に対する懸念を伝え、両者で「目に見えた改革」をめざす方向性を確認した。特定機能病院の再承認を最終目標の一つと位置づけたという。

 再承認をめざす時期について田村病院長は会合後、「できるだけ早く。許されるのであれば、来年度と思っています」と述べた。

 第三者による医療事故調査委員会が近く最終報告書をまとめる予定で、協議会の次回会合は7月中旬以降に開く。県内医療関係者らの参加も求める方針だ。

■「空白県」解消へ高い壁

 厚生労働省によると、大学病院を中心に全国に84ある特定機能病院は現在、群馬が唯一の「空白県」だ。

 安全管理体制が不十分だとして、群大が承認を取り消されたのは昨年6月。診療報酬の優遇措置が受けられなくなり、年間数億円の減収となる見通しだ。受診中の患者に直接影響は無いが、「ブランドイメージの低下は否めない」と群大病院幹部。研修医の「群大離れ」も現実化している。



http://www.asahi.com/articles/ASJ5P2H71J5PUBQU005.html
診療報酬詐欺の捜査終結 総額3億円超詐取か
2016年5月21日08時31分 朝日新聞

 接骨院や歯科医院での健康保険不正請求事件で、警視庁は20日、療養費235万円をだまし取ったとして、会社役員の早川和男容疑者(39)=詐欺罪で起訴=を詐欺容疑で書類送検し、捜査を終結したと発表した。

 組織犯罪対策4課によると、早川容疑者を中心とするグループは、総額で3億3千万円の療養費や医療費をだまし取っていたとみられるという。一連の事件では、指定暴力団住吉会系組長の男(50)やタレント活動もしていた医師の女(37)、歯科医師の男(59)らも逮捕されている。



http://mainichi.jp/articles/20160522/ddm/016/040/013000c
厚労省
将来推計 「医師過剰」現場に違和感

毎日新聞2016年5月22日 東京朝刊

 厚生労働省の医師の需給に関する検討会は、将来の医師数や医療需要について、需要が最も多い想定でも2033年ごろに医師の需要と供給が均衡し、40年には供給が需要を約1.8万人も上回るとする推計をまとめた。現状の医師不足の状態が一変し、「医師過剰」になるという推計に、現場には戸惑いが広がる。検討会は19日、将来の医学部定員の追加増員について「慎重にすべきだ」とする中間取りまとめを了承した。

激務の診療科 「消滅」地域も
 東京都心から電車で1時間半の千葉県香取市。中核病院の役割を担う県立佐原病院は07年、「休みの日も県外に出たことがなかった」という激務を続けた男性産婦人科医が定年退職し、お産の受け入れを停止した。現在、市内でお産を受け入れる医療機関はない。

 この医師は1981年に赴任以来、ポケベルを持ち歩き、病院に隣接する宿舎に寝泊まりして年約150件のお産に対応した。現在、香取市の妊婦は主に車で約30分の同県成田市にある成田赤十字病院で出産する。佐原病院の小林進院長は「当直体制を組んでチームでお産に対応するには、常勤医が8人は必要」と話すが、めどは立たない。「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)が重視される時代に、激務を引き受ける医師もいない。

 04年に始まった新しい臨床研修で、医師免許を取った若手医師は希望する医療機関で複数の診療科を経験する仕組みになった。幅広い診察ができる医師の養成が狙いだったが、若手医師の勤務先を管理してきた医局制度が崩れ、都市部や「楽」と言われる診療科に医師が集まるようになった。この頃から産婦人科や外科、救命救急科など24時間体制勤務の診療科で医師不足が顕著になった。

 産婦人科医の若い世代は女性が半数を超え、出産に携わらない医師も増えた。産婦人科医になる新規医師数は10年度をピークに毎年減少し、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は14年12月、抜本的な対策を取るよう緊急提言を発表した。

 厚労省の将来の需給推計は、子育てに携わることを念頭に女性医師の仕事量を男性医師の0・8として計算するが、小林院長は「激務を前提とする現在の産科医療の現場では、出産を希望する女性医師が働き続けるのは無理だろう」と話す。佐原病院は、医師の派遣を受けてきた千葉大だけでなく医師派遣会社にも頼る。だが「遠いから」と赴任を断る医師もいる。小林院長は「これからも(医師の)偏在は進むだろう。医局のような医師派遣システムがなければ、地方病院は生き残れない」と危機感を募らせる。

 14年時点の調査で10万人当たりの医師数が全国で最も少なかった埼玉県の担当者は「国全体では需要を満たせるのかもしれないが、地域間格差は広がるのではないか」と指摘する。同県の計画によると、25年までに県内で計1万4500人の医師を確保し、医師不足を解消できる予定だ。

 だが、計画の前提となる病床数など政策が変更されれば計画も白紙に戻る。今後、在宅医療が進むと、地域ごとに在宅の患者を担う医師の確保も求められる。同県担当者は「今回の需給推計と現場はリンクしていないような気がする」と、将来への不安をのぞかせた。【熊谷豪、有田浩子】

「偏在対策が先」 異論次々

 国は、医師不足解消のため08年度から医学部定員の枠を暫定的に広げるなどして医師数を増やしてきた。一方、人口当たりの医師数の地域格差はいまだに大きく、産婦人科などの人員不足も解消されていない。このため、厚労省検討会の中間取りまとめは、医師「偏在」を改善するため、医師の配置に関する直接的な対策が必要と盛り込んだ。

 これまでの議論では、「いつになっても田舎は医師であふれない。偏在対策をやってから医師の総数を議論すべきだ」(辺見公雄・全国自治体病院協議会会長)など、将来の医師数が過剰になるとの推計に注文が相次いだ。来年度から専門医養成のプログラムが始まれば、養成プログラムを持つ都市部の医療機関に若手医師が集中し、偏在が強まるとの懸念もある。

 専門家からも異論が出ている。推計は12年に公表された病院勤務医調査を基に、直近の勤務医の週当たりの労働時間を53.2時間とした。一方、国立保健医療科学院の06年の報告では、30代までの男性勤務医の1週間当たりの平均勤務時間は80時間以上。40代半ばまで70時間を超えた。12年の調査でも4割の医師が週60時間以上働いていた。

 東京大医科学研究所のチームは、入院やみとりなど亡くなる前に多くの人手を必要とする75歳以上の後期高齢者に着目し、後期高齢者の死亡者数を「需要」、医師の勤務時間を「供給」として、同院の報告に基づきながら10年から25年後の需給をシミュレーションした。医師の労働時間は週60時間とした。その結果、全都道府県で需要が供給より増加。5割以上増えた都道府県が約半数を占めた。NPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長は「医師は余るどころか今後も不足すると予想され、医学部新設を含め医師を増やす施策が必要だ」と指摘する。【河内敏康、熊谷豪】

 ◆厚労省検討会推計の手法

医師の需給推計
 厚労省検討会による将来の医師の需給推計の手法は次の通り。

供給
 今後の医学部定員が今年度(計9262人)と変わらないことを前提に2040年までの医師数を推計した。30〜50歳代の男性医師の仕事量を「1」とした場合、女性医師と高齢医師はそれぞれ「0.8」、研修医は経験に応じて「0.3」「0.5」として計算した。

需要
 入院、外来、介護福祉など分野ごとに需要を積み上げた。現在の医療体制で必要な医療サービスをおおむね提供できていることが前提。医師の労働時間や外来受診率などについては医師の需要が大きくなる条件と、小さくなる条件を設定し、それぞれ推計した。

結果
 医師の需要が最も大きくなると仮定した条件では、33年ごろに需給が均衡し、その後は供給が需要を上回るとの結果になった。平均的な条件で推計すると、24年ごろには需給が均衡し、その後逆転するという。
05211.jpg
05212.jpg


  1. 2016/05/22(日) 04:47:37|
  2. 未分類
  3. | コメント:0
<<5月22日  | ホーム | 5月20日 >>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する