Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

5月17日 

http://www.jiji.com/jc/article?k=2016051700979&g=soc
腰痛手術ミス、女性死亡=新技法で大腸に損傷-千葉
(2016/05/17-22:57)時事通信

 千葉県船橋市の船橋整形外科病院で今年1月、昨年導入した新しい技法で県内に住む50代女性の腰部の手術をした際、男性医師が誤って大腸を傷つけ、女性が敗血症で死亡していたことが分かった。同病院が17日記者会見し発表した。
 同病院によると、女性は老化現象の一つで、腰の神経が背骨に圧迫され腰痛などの症状が起こる「腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症」の治療のため来院。今年1月14日、50代の男性副院長と40代の男性医師が、「XLIF」といわれる新しい技法で手術したが、その際に誤って大腸の一部を傷つけたという。手術後に女性は意識が低下、別の病院に搬送されたが、17日に死亡した。
 XLIFは脇腹周辺の皮膚を切開して穴を開け、体内を映しながら器具で神経への圧迫を取り除く技法。米国で開発され、切開面が少なくて済む利点がある。船橋整形外科は昨年10月に導入した。
 副院長らは女性を手術した同じ日に、XLIFの手術を70代男性にも行っていた。その際も同様に大腸を傷つけたといい、男性は吐き気などの症状を訴え、別の病院に入院したという。
 記者会見で大内純太郎院長(62)は「大変申し訳ない、もう二度と起こしてはいけない」と話した。 



https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160517-OYTET50007/
腰の最新手術でミス、女性死亡…大腸傷つけられる
2016年5月17日 読売新聞

 千葉県船橋市の船橋整形外科病院で今年1月、腰部の手術を受けた県内の50歳代の女性が誤って大腸を傷つけられ、3日後に敗血症で死亡していたことが、16日わかった。

 脇腹に小さな穴を開けて医療器具を入れる新しい手術方法で、同病院では昨年10月に導入されたばかりだった。同病院は取材に対し、「死亡したのは手術中のミスが原因だった」と認めている。

 同病院によると、女性は腰の神経が背骨に圧迫され、足がしびれるなどする「腰部脊柱管 狭窄きょうさく 症」を患っており、同病院で1月14日に手術を受けた。この際、担当した男性医師が誤って医療器具で大腸の一部に穴を開けたとみられる。女性は同月16日、意識が低下したため別の病院に搬送されたが、翌17日に死亡した。



http://mainichi.jp/articles/20160518/ddm/041/040/093000c
最新手術ミス
女性死亡 別の1件も失敗 千葉の整形外科

毎日新聞2016年5月18日 東京朝刊

 千葉県船橋市の船橋整形外科病院(大内純太郎院長)で1月、腰の手術を受けた県内の50代女性が誤って大腸を傷つけられ、死亡していたことが同病院への取材で分かった。手術は脇腹に直径約2センチの穴を開けて医療器具を入れる「XLIF(エックスリフ)」と呼ばれる新しい方法。同病院はミスを認め、事故調査委員会を院内に設置し原因を調べている。

 大内院長は17日記者会見し、「女性や遺族には本当に申し訳ない。今後、安全性が絶対に担保されない限り、XLIFをやるつもりはない」と謝罪した。

 院長らによると、女性は腰の神経が背骨に圧迫されて腰痛や足のしびれが出る「腰部 脊柱(せきちゅう)管狭窄(きょうさく)症」のため1月14日に手術を受けた。その際、担当した50代の男性副院長が誤って大腸の一部に医療器具で穴を開けた。女性は別の病院に運ばれ、17日に敗血症で死亡した。同じ日に副院長の手術を受けた県内の70代男性も大腸の一部に穴が開き、別の病院に搬送されたが、命は取り留めたという。

 XLIFは患者の脇腹に穴を開け、レントゲンで体内を映しながら医療器具を入れ神経への圧迫を取り除く方法。従来の切開手術に比べ患者の負担が少ないとされる。同病院は昨年10月に導入し、現在までに副院長がこの2件を含め14件の手術をした。【青木英一】



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/48766.html
抗凝固剤の再開忘れ、手術後に患者が脳梗塞- 医療機能評価機構が注意喚起
2016年05月17日 15時00分 キャリアブレイン

 日本医療機能評価機構は、手術に備えて抗凝固剤や抗血小板剤の使用を中止した後、医師らが再開を忘れた事例が、2012年1月から16年3月までに4件あったことを明らかにした。手術後に再開されなかったため、患者が脳梗塞となったケースもあった。こうした事態が起きた医療機関は、病棟薬剤師が医師に術後の内服状況を伝えるといった再発防止策に取り組んでいるという。【新井哉】

 脳梗塞の予防などで、血液が固まる過程を抑制して血栓を防止する抗凝固剤や抗血小板剤を使っている患者の場合、手術時や術後に出血を伴うリスクがあることから、医師の判断で投薬を一時中止するケースも少なくない。同機構の医療事故を分析した報告書でも、出血などのリスクを軽減するため、休薬が必要な薬剤と休薬期間を決め、周知する必要性を挙げていた。

 再開を忘れた事例の1つでは、医師は手術のため、患者の抗凝固剤(ワーファリン錠)を中止。術後出血のリスクを考え、抗凝固剤の再開時期を遅らせる予定だったが、そのまま再開しなかった。術後17日目に医師が患者に声を掛けた際に反応がなく、頭部CT検査で脳梗塞を認めた。

 別の事例では、手術の1週間前から抗血小板剤(バイアスピリン錠)を中止し、医師が入院時指示に「手術翌日よりバイアスピリン錠再開」と記載したが、看護師が指示を見落とし、再開していなかった。術後9日目、患者が傾眠傾向であったため、頭部MRI検査を行ったところ多発性の脳梗塞が確認された。

 同機構は、こうした事例に対する発生予防・再発防止に関する情報をホームページに掲載。事例が発生した医療機関の取り組みとして、▽術後指示に抗凝固剤や抗血小板剤の再開日の記入欄を追加する ▽術後の抗凝固剤や抗血小板剤の内服状況について、病棟薬剤師が医師に情報提供する―といったことを挙げ、注意を促している。



http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/181440
ついに厚労省も削減へ 「抗生物質」に潜む危険と勘違い
2016年5月17日 日刊ゲンダイ

 風邪をひいたら、とりあえず医者に抗生物質を処方してもらって飲む――。こんなパターンをずっと続けている人は多いのではないか。しかし、これは大きな勘違い。ヘタすると逆効果にもなりかねない。

 先月、政府は2020年までに抗生物質の使用量を33%減らす目標を掲げた対策を決定。厚労省は「医師は安易に抗生物質を処方しないこと」を呼びかけ、患者にも適正な使用を促す方針だ。

 抗生物質=抗菌薬は、細菌を殺したり弱らせたりする薬で、不適切に使い過ぎると、抗生物質が効かない「耐性菌」が発生したり増加する恐れがある。世界では、耐性菌が原因となった死者が70万人いると推計されていて、WHO(世界保健機関)も各国に対策を求めている。仮に対策を講じなければ、2050年には耐性菌による病気の死者が1000万人になると想定されている。

 抗生物質は、“とりあえず”安易に飲んでもいい薬ではないのだ。「いま飲んでいる薬が危ない!」などの著者で、薬剤師の深井良祐氏(ファレッジ代表)は言う。

「抗生物質は細菌に対して効果を発揮する薬で、ウイルスには効きません。そして、一般的な風邪のほとんどはウイルスによって発症します。つまり、多くの風邪には抗生物質は必要ないのです。もちろん、肺炎や中耳炎などの細菌感染症には効果的なので、2次感染を予防するために処方されているケースもあります。その一方で、細菌性なのかウイルス性なのかよく分からないから、念のため抗生物質を出しておこうという医師がいるのも事実です」

■必要な常在菌も殺してしまう

 日本は、世界的にみると抗生物質の販売量は多くはないが、経口のセファロスポリン系薬、フルオロキノロン系薬、マクロライド系薬の使用割合が極めて高い。いずれも幅広い細菌に有効な抗生物質だから、やはり、特定の細菌感染症に対してピンポイントで処方しているケースは多くなさそうだ。

「この3系統の抗生物質はさまざまな細菌に対して満遍なく効くため、細菌を根こそぎ殺してしまいます。人間の体には、腸内細菌などの常在菌がたくさん存在していて、病原菌の侵入を防いだり、免疫バランスを保つ働きをしています。抗生物質はそうした必要な細菌まで一網打尽にしてしまうため、下痢などの副作用を引き起こす危険性があります。また、吐き気、発疹などが表れるケースもあります」

 日本では、軽い風邪でもクリニックで抗生物質を処方してもらいたがる患者が少なくない。抗生物質を処方しないと、不満を漏らす患者もいるという。ウイルス性の風邪には効果がないことを知らない人が多く、耐性菌や副作用の問題も広く知られていないのが現状なのだ。

「風邪を治すには自身の免疫力に任せるのが基本で、安易に抗生物質を処方してもらったり、中途半端に服用するのはやめたほうがいい。とはいえ、肺炎などの細菌感染症の治療には抗生物質が有効です。いつもの風邪の症状とは違って高熱が出たり、長引いている場合は医者にかかり、抗生物質が必要な病気なのかどうかを診断してもらう。軽い風邪で抗生物質を処方されそうになったときは、〈なぜ、抗生物質を飲まなければならないのか〉をきちんと確認して、医師に説明してもらいましょう」

 抗生物質を飲めば早く風邪が治るという間違った思い込みは改め、軽い風邪でもとりあえず飲むなんて行為はやめるべし。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201605/546885.html
在宅メーンの診療所が外来に注力し出す理由
2016/5/17 二羽 はるな=日経ヘルスケア

 2016年度診療報酬改定は、病院完結型から地域完結型の医療への移行を前面に打ち出す内容となった。その象徴といえるのが、退院支援に関する評価の見直しだ。点数が大きく引き上げられた一方で、入院早期から退院調整に取り組むことが要件化された。さらに、退院患者の受け皿となる外来医療や在宅医療の報酬も整理された。

 こうした改定の中で、外来医療と在宅医療の提供体制に影響を与えそうな見直しがあった。そこで、今回の『記者の眼』では、この見直しの内容を私見とともに紹介したい。

 在宅医療における改定のポイントの一つに、在宅医療を専門に手掛ける診療所、いわゆる「在宅専門診療所」の開設が認められたことがある。在宅医療をメーンの業務とする診療所は少なくないが、従来は医療機関には外来応需体制を有していることが求められ、往診や訪問診療など在宅医療のみを手掛けることは認められていなかった。在宅専門診療所の開設に当たっては、(1)無床診療所、(2)在宅医療を提供する地域をあらかじめ規定し、その範囲を周知する、(3)地域内に協力医療機関を2カ所以上確保するか、地域医師会から協力の同意を得る――などの要件を満たさなければならない(表1)。

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表1◎在宅専門診療所の開設要件
上記の要件を全てを満たす必要がある 

 在宅専門診療所が認められた背景には、在宅医療のニーズ、特に重症患者に対する緊急往診や看取りのニーズなどの高まりがある。そこで、在宅専門診療所においては、重症患者などへの在宅医療の提供がなければ、高い診療報酬を算定できないような報酬設定がなされた。具体的には、在宅医療における収入の柱となる在宅時医学総合管理料(在医総管)、施設入居時等医学総合管理料(施医総管)について、在宅療養支援診療所(在支診)を届け出ない在宅専門診療所の場合は、一般診療所の80%に相当する点数に設定された。在支診を届け出られなければ、在医総管・施医総管の点数はぐっと低くなる。

 在宅専門診療所が在支診や機能強化型在支診を届け出る場合、従来の要件に加えて(1)過去1年間の看取り実績20件以上または15歳未満の超・準超重症児に対する医学管理の実績10件以上、(2)直近1カ月に総合的な医学管理を実施した患者のうち、施設患者の割合が7割以下、(3)直近1カ月に総合的な医学管理を実施した患者のうち、5割以上が要介護3以上または厚生労働大臣が定める重症患者に該当――などを全て満たすことが求められた(表2)。

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表2◎在宅専門診療所の在支診の施設基準
現行の在支診の要件に加え、上記の要件を全て満たした場合に在支診の点数を算定できる。機能強化型、連携型の機能強化型も同様。上記の要件を満たせず、在支診を届け出ない場合は、一般診療所の在医総管・施医総管の80%に相当する点数を算定する(2016年3月末時点で在支診を届け出ている場合は、2017年3月末までは上記の要件を満たしているものとみなす) 

既存の在支診や機能強化型在支診も点数引き下げの可能性
 在宅専門診療所の開設が認められた影響は、既に在支診や機能強化型在支診を届け出ている診療所にも及ぶ。厚生労働省は在宅専門診療所を「直近1カ月の外来および在宅患者の合計数に占める在宅患者割合が95%以上の診療所」と定義。既存の在支診や機能強化型在支診についても、2017年4月以降は直近1カ月の在宅患者割合が95%を超えれば在宅専門診療所とみなされ、表2の要件を満たさなければ、在医総管・施医総管の点数が引き下げられる。

 これまで在宅医療をメーンに提供してきた診療所の多くは、2017年3月までに(1)外来患者を増やして在宅患者割合を95%未満に下げる、(2)在宅専門診療所の在支診の施設基準(表2)を満たす――といった診療体制の見直しを迫られることになるわけだ。

 2016年度改定の内容を受け、在宅医療を中心に提供している診療所に対応方針を聞いたところ、当面は外来患者割合を高めて在宅患者割合を95%未満に下げる診療所の方が多そうだ。というのも、看取り実績20件以上や施設患者割合7割以下、要介護3以上または重症患者の割合が5割以上といった要件は、決して低いハードルではないからだ。

 特にネックとなるのが、重症患者割合や施設患者割合だ。在宅医療は入院患者の退院後の在宅療養など、他院の紹介で診療を始めるケースが多く、重症患者の割合を自院でコントロールするのは難しい。また、厚生労働大臣が定める重症患者に該当する末期の悪性腫瘍患者には終末期の患者も少なくなく、亡くなることで全体に占める割合は小さくなる。施設患者についても、地域の医療ニーズによっては7割を上回るケースがあるという。

 そこで、外来患者を増やす動きが進みそうというわけだ。

 在宅患者割合を95%未満に下げるには、例えば月300人を診ている診療所の場合、月16人の外来診療を行えばよい。ただ、診療所の中には、2018年度改定で在宅患者割合の基準が95%から引き下げられる可能性を考え、在宅患者割合を90%未満にしようとしているところもある。こうした動きが進めば、外来患者の争奪戦が起こりかねない。

 個人的な見解では、当初は外来患者の争奪戦になったとしても、ゆくゆくは外来患者の状態像に応じて一般診療所と在宅中心の診療所の間で“棲み分け”されるのではないかとみている。そこでカギとなるのが、2014年度改定で新設された主治医報酬である地域包括診療料・加算だ。2016年度改定では、認知症地域包括診療料・加算も新設された。

 これらの診療料・加算では、患者に対する在宅医療の提供や24時間対応などが算定要件で求められ、一般診療所にとって高いハードルとなっている。また、認知症地域包括診療料(1515点、月1回)や地域包括診療料(1503点、月1回)は点数が高いことも算定が進まない理由の一つだ。

 だが、在宅中心の診療所であれば、在宅医療や24時間対応などの機能は既に提供している。また、在宅医療への移行が視野に入る比較的重症の外来患者であれば、24時間対応できることや在宅医療にスムーズに切り替えられることはメリットとなり、高い報酬の算定も理解を得やすい。すぐには難しいかもしれないが、一般診療所の外来から在宅中心の診療所の外来への紹介というケースも出てくるかもしれない。

 これから先、数回の診療報酬改定を経て、一般外来は通常の診療所、在宅医療への移行が視野に入る重症患者は在宅中心の診療所の外来部門――という機能分化が進むことになるのではないか。



https://www.m3.com/news/general/425292
【栃木】うつのみや病院 中山会への譲渡反対 職員ら声明
2016年5月17日 (火) 毎日新聞社

うつのみや病院:中山会への譲渡反対 職員ら声明 /栃木

 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)うつのみや病院(宇都宮市南高砂町)の職員らが16日、県庁で記者会見し、社会医療法人「中山会」がうつのみや病院の譲渡を希望していることを明らかにし、譲渡に反対する声明を発表した。

 うつのみや病院は、JCHOが所有する全国57病院のうちの一つで、市立病院のない宇都宮市では「公的な病院」とされるという。うつのみや病院側は「中山会に買収されれば、地域住民から安定的な医療と介護の全国支援を奪うことになる」などと譲渡に反対した理由を説明した。

 一方、宇都宮記念病院を運営する中山会は昨年12月、厚生労働大臣に対し、救急医療体制の充実を求めて病院譲渡の申請書を提出。今年1月には厚労省から譲渡について支障がないか確認するように宇都宮市長らへ通達があり、今月9日に住民説明会が開かれた。

 説明会で、中山会は、うつのみや病院は平日の診療時間が午後3時半までと短い点を指摘。診療時間の拡大や、産婦人科の開設など将来像を提示した。また、中山会は2015年度の経常利益が5億2000万円で経営が安定していることも強調したという。

 これに対し、うつのみや病院側は、病院の建て替えを検討中であり、地域医療機能推進機構法に基づき、患者の負担を軽減した医療や健診を提供できるなどと主張。自治医科大(下野市)から優先的に医師の派遣を受けられるなどネットワークを生かした利点も訴えている。【野口麗子】



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46807
明日の医療
現場を知らない医療改革、新専門医制度の陥穽
中央集権的な進め方ではなく、多様な資格制度を

森田 麻里子
2016.5.18(水) JB Press

 2017年4月から新専門医制度の導入が検討されている。しかし、早くも延期が視野に入れられるなど問題が多い。

 確かに、専門医という資格は医師の能力を客観的に示す指標として便利だ。医学博士号や論文数など、研究面では指標があるものの、臨床においては他に有用な指標がないからだ。

 臨床能力のレベルにはいくつかの段階がある。国家試験では基本的な医学知識が問われる。初期研修医の間には、頻度の高い疾患や緊急性の高い疾患について初期対応を自分でできるのが目標と言えるだろう。

 その次は標準的な治療を自分でできる段階、標準を超えた高い技術・最先端の治療やその患者に合わせた治療を実践できる段階などが考えられる。さらにそれぞれに対して、どの領域に関してそれが可能かという広がりがある。

 では、標準的な治療ができるのが専門医と言えるだろうか。その場合、何を「自分で」実践できなければならないのか?

合併症の治療ができず命の危機に

 日頃お世話になっている知り合いに、がん治療中の方がいる。治療の合併症で心不全を罹患したが、治療を行っていたがん専門病院では十分な診断も治療もされず、適切な医療機関に紹介もされなかった。結局、他の知り合いの医師のつてで他院に入院して治療を受け、今は回復されている。

 このような事例が、特に内科においてジェネラルなマインドを全員にという風潮につながっているのは、理解はできるが、解決方法としては間違っている。

 というのも、どれくらいの範囲を自分でカバーできるかは、医師の能力だけでなく環境に依存するからだ。

 例えばその施設で普段から心不全の合併症をたくさん治療していれば可能だっただろうし、そうでなければ難しい。一方で、合併症ではなくがん治療に専念しているからこそ、最先端の治療がそこで受けられるという面があるかもしれない。

 社会はかなりの速度で変化している。毎年新しい薬や治療法が開発され、それまでの医学常識が覆される。私が初期研修医だった3年前の知識でさえアップデートする必要に迫られ始めている。

 また、医療技術は職人技であり、毎日やっていれば難なくできることも、頻度が落ちればすぐにレベルが低下する。


 さらに、患者は一人ひとり全く違う性質を持っており、同じように治療してもうまくいく患者と、そうでない患者がいる。うまくいかなかった場合にどう次の手を打つかというところに、経験が生かされる。

 つまり、知識があって、指導を受けながらやったことがあるというだけでは標準的な治療すらできない。診断や治療は普段から当たり前のようにやっていて、初めて可能になるからこそ、専門医が必要なのだ。限られた領域であれば知識のアップデートや技術の維持・向上も可能になる。

 専門医としてどの領域をどのくらいの深さでカバーするかは、患者のニーズ、それぞれの医師の興味の範囲や能力、働く環境によって決まってくる。多様性に富むものだ。

 例えば一口に内科と言っても、地域の病院で内科を診ている医師ならば、血液内科の稀な疾患の知識よりも整形外科の知識の方が必要かもしれない。診療科の垣根でさえ簡単に区切れるものではないのである。

自分の限界を知る

 一方で専門医として本当に重要なのは、どこまで自分でできるかを正確に把握し、自分で対応できない場合には他の医師の助けを借りることができるかということだ。その患者さんが標準的な治療を受けられるような対応が大切であって、自分でできるかどうかは大きな問題ではない。

 新制度ではペーパーテストに加えて、勤務する施設、経験年数の条件を課して専門医を認定することになる。しかし、これはきちんとした指標にならない一方で、日本の医療に悪影響を及ぼす危険性がある。

 まず打撃が大きいのは地域医療だ。

 大病院でないと専門医養成プログラムの認定を受けられず、地方ではほぼ大学病院に限られる。若手医師は地方病院に直接就職することはできず、大病院からの派遣になる。大学病院からのお客様としてローテーションしてくる医師に、地元に就職した医師と同じことは期待できないだろう。

 さらに大変なのは内科だ。

 全員にジェネラルな研修を求めることで、自分が進みたい領域の知識技術を身につけたり、経験を積んだりするのが遅くなる。幅広い疾患を診るということはそれ自体が専門性であり、普段からやっていなければ失われていく能力だ。

 将来限られた分野のみで活躍する医師にとっては、そのような研修はあまり効果がないばかりでなく、若いうちに集中的なトレーニングを受ける機会を逸することで、専門医療のレベルが低下する。


 また、専門医資格の有無で勤務条件が変わる場合が多いため、専門医取得が遅れるのは問題だ。特に出産育児を考える20~30代の女性には、1年のキャリアの遅れでさえ大きな影響を受ける。

 さらに複数の病院を短期間で異動しながらの研修は、家庭を持つ女性にとって厳しいものだ。今や医師国家試験合格者の3割以上が女性である。彼女たちが専門分野を選ぶ際に、この制度のために内科を断念することもあるだろう。

 標準的な治療を実践できる専門医というお題目は立派だが、少し具体的に考えれば、幻想に過ぎないことが分かる。曖昧で実現不可能な目標を全員に強制しても、何も良くならないばかりか、かえって日本の医療崩壊を加速する可能性がある。

 そもそも問題の根本は中央集権的な制度の形式にある。確かにお金を払えば取れるような専門医資格が乱立するのは問題だが、かといって中央ですべて管理しようとすると、どうしても地方や女性といった立場の視点が欠けてしまう。

切磋琢磨を生む資格制度を

 横並び主義の資格では各自の能力を磨くような競争とか切磋琢磨といった概念がなくなり、努力が必要なくなる一方で手続きばかりが煩雑になる。

 そこで私が提案したい専門医資格は、2段階だ。

 まず最低限のラインとしての専門医資格は、ペーパーテストで合否判定する。ただし、現制度には大きな問題がある。何年目以上の医師しか受けられないという受験資格の制限があるため、多くの場合「まだ受験できないから専門医のための勉強をしても仕方ない」という状況が生まれるのだ。

 一方で、周術期経食道心エコーの試験などいつでも受験できる資格も存在する。合格率は6割程度とやや厳しい資格だが、研修医から専門医以降の医師まで、毎年多くの受験者がいる。初学者にとっては最低限の知識を持っていることを示し、経験をさらに積ませてもらうための指標として活用されている。

 その上で、高い技術や特殊な治療方法など一握りの医師の能力を評価する指標としては、消化器外科学会の高度技能医のような資格が参考になる。

 学会などの団体が実力勝負の目標を設け、それを必要だと思う医師が、最も自分に合ったやり方で各々の能力を磨いていくというのはどうだろうか。有用な資格であれば皆が受験するだろうし、不必要な資格ならば取得する医師がおらず淘汰される。

 各々の団体が相互に競争しバランスを取りながら多様な医師を養成していくのが、本当のプロフェッショナルオートノミー(専門職としての自立)だ。

 医師の中でも議論が紛糾しているのに、以前から決まっていたということを理由に2017年4月の開始を強行することで、社会からの信頼を得る専門医制度を構築できるとはとても思えない。

 何のために新しい専門医制度を作るのかというところから、もう一度議論すべきではないだろうか。



http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016051802000071.html
超高額がん薬の投与急増 保険制度破綻の恐れ
2016年5月18日 朝刊 中日新聞

 画期的な効果を持つ一方で、一人当たりの年間薬価が数千万円に上る新しいがん治療薬が、医療の現場に大きな動揺をもたらしている。二〇一五年十二月、一部の肺がんへの保険適用が認められると、投与を求める患者が急増。今後、国の薬剤費を肥大させる恐れがあり、医療現場は「日本の医療保険制度を破綻させるのではないか」と懸念を募らせる。

 新薬は小野薬品工業(大阪市)が製造販売する「オプジーボ」で、体重六〇キロの肺がん患者が点滴として使用すれば、年間約三千五百万円かかる。従来の抗がん剤は一年以内で効かなくなる例が多いが、オプジーボは免疫力を引き出してがんと闘う仕組みで、長く効くと期待される。外科手術で切除できない患者への効果も期待できるため、関心は急速に高まっている。

 一方、臨床試験では、約二割の患者にしか有効ではないとされ、今のところ誰に効くかは使用前に分からない。莫大(ばくだい)な研究開発費を反映して値段は高く最も高価な薬でも年間一千万円未満という従来の抗がん剤などと比べても数倍の価格だ。

 一定額を超える医療費は国が負担する高額療養費制度により、患者負担は年間最大二百万円余りにとどまるが、その分だけ公的な負担が膨らむことになる。

 国の医療費は一三年度に四十兆円を突破し、年々増え続ける。このうち薬剤費は約十兆円。国内の肺がん患者は推定十三万人で、うち新薬が保険適用されるタイプの肺がん患者は約十万人。この半数がオプジーボを使うと年一兆七千五百億円になるとの試算もある。

 今後、別の超高額の新薬が登場する可能性も高く、国民の税金や保険料でまかなわれる現在の医療保険制度が維持できるのか、医療関係者の不安は高まる。

 医療機関も対応に苦慮する。保険適用以降、三月末までに七十人余りにオプジーボを使用した愛知県がんセンター(名古屋市千種区)では、購入のために約三億円の補正予算を計上。費用は診療報酬として約二カ月後に払い戻されるが、今後、さらに投与を希望する患者が増える見通しのため、さらに巨額の予算措置が必要になるという。

 同センターの木下平総長は「患者数が多い種類のがんにも保険適用が広がると予算措置だけでも大変だ。使用を年齢で制限するか、効果がない時は早めに中止を決断しないと医療費全体が膨らんで国の制度を維持できなくなる」と指摘する。

 厚生労働省は本年度、薬の費用対効果を検証して国の決める薬価に反映させる新制度を創設し、手始めとなる対象の薬品七品目の一つにオプジーボを選んだ。薬価を審議する中央社会保険医療協議会(中医協)でも、超高額治療薬への対策を促す意見が続出。厚労省担当者は「オプジーボも含め薬価全体の問題として検討したい」と話している。

◆効果あるのは2割

 「効果があるのは二割の患者でも、治療できる可能性がある限り使わないわけにはいかない」。新しいがん治療薬オプジーボの使用について、愛知県がんセンターの木下平総長は悩ましげに話す。

 オプジーボは患者の八割には効かないとされ、事前に効果を確かめることもできない。だが、有効な治療法がない患者には最後の頼みの綱となるため、国の医療制度圧迫を理由に使用を断りにくい状況だ。センターでは、昨年十二月の保険適用の前から問い合わせが相次いだという。

 藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)も四月中旬までに患者約十五人にオプジーボを投与した。今泉和良教授(呼吸器内科)は「他に治療方法がないので使う例もある。まだ事例が少なく、どのタイミングで使用をやめるかなどを見極める判断が難しい」と話す。

 公定価格である薬価は、材料や開発経費などの原価に人件費や利益を上乗せして国が決めるが、決定過程は不透明。木下総長は「薬価を決める会議は非公開で高騰する本当の理由は分かりにくい。情報公開を進め、高騰を防ぐ具体的な仕組みが必要だ」と語る。

 (室木泰彦)

 <オプジーボ> 免疫チェックポイント阻害剤という新しいタイプのがん治療薬。がん細胞を直接狙う分子標的薬と異なり、免疫力を高めてがん細胞を攻撃する。がん細胞は免疫力にブレーキをかける働きがあるが、オプジーボの抗体物質がブレーキの仕組みを阻害する。皮膚がんの一種、悪性黒色腫の治療薬として承認され、昨年12月に非小細胞肺がんへの適用が承認された。京都大大学院の本庶佑(ほんじょ・たすく)客員教授らのグループがメカニズムを発見した。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/54113/Default.aspx
15年度の国内医療用薬市場 経口C肝薬ハーボニー 発売7か月で売上2693億円 IMSまとめ
2016/05/18 03:52 ミクスオンライン

IMSジャパンが5月17日に発表した日本の2015年度(15年4月~16年3月)の医療用医薬品市場データ(薬価ベース)によると、製品売上トップはギリアド・サイエンシズの経口C型肝炎治療薬ハーボニー配合錠で、売上は2693億円だった。同剤は15年9月1日に発売を始めており、発売7か月での売上としては過去最高とみられる。第2位は経口C型肝炎治療薬ソバルディで売上は1508億円。同じくギリアドの製品で、こちらは約10か月の実績となる。このため企業売上ランキングでもギリアドが20位圏外から一気に6位に入った。

文末の「関連ファイル」に医薬品市場全体、上位10薬効、売上上位10製品などの資料を掲載しました。5月18日のみ無料公開、その後はプレミア会員限定コンテンツになります。

15年度の国内医療用医薬品市場は10兆8377億円(1000万円以下切り捨て、前年同期比8.8%増)。市場別では、100床以上の病院市場が4兆5548億円(15.4%増)、100床未満の開業医市場が2兆2417億円(4.8%増)、主に調剤薬局で構成される「薬局その他」市場は4兆412億円(4.3%増)――。市場全体の成長率は15年4~6月が7.9%、7~9月が7.4%、10~12月が10.0%、16年1~3月が9.8%と推移し、成長率は下半期のほうが高い。ハーボニーの発売時期を重ねると、同剤の売上急伸が市場全体の成長の主な理由であることがわかる。

なお、薬価改定年度ではない前回13年度の市場全体の成長率は4.8%だった。

■がん免疫療法薬オプジーボも急成長 16年1~3月期に抗がん剤市場で売上2位に

15年度の売上上位10製品を見てみる。1位はハーボニー、2位はソバルディ、3位は抗がん剤アバスチン(売上1179億円、13.0%増)、4位は抗血小板薬プラビックス(999億円、19.9%減)、5位は抗潰瘍薬ネキシウム(992億円、20.1%増)、6位は疼痛用薬リリカ(877億円、13.9%増)、7位は降圧剤オルメテック第一三共分(864億円、3.9%減)、8位は抗リウマチ薬レミケード(855億円、2.2%減)、9位は経皮吸収型消炎鎮痛薬モーラス久光分(790億円、1.9%減)、10位は糖尿病治療薬ジャヌビア(771億円、1.2%増)――。売上1000億円以上製品は3製品だった。

上位10製品のうちハーボニー、ソバルディ以外では、6位のリリカのみ前年度から順位をひとつ上げた。ネキシウムは5位のまま。これら以外の6製品は順位を落とした。

売上上位10薬効を見てみると、1位はこれまでと変わらず抗腫瘍薬で売上8511億円(12.2%増)だった。12年度から4年連続で最大市場を形成している。薬効内ではアバスチンなど分子標的薬が市場成長をけん引している。

また、14年9月に新発売し、15年12月に非小細胞肺がんの適応を追加したがん免疫療法薬オプジーボは、売上は非開示だが、前年度から7倍以上伸長した。そして、IMSがこの日に公表した16年1~3月期データによると、「オプジーボは売上を大きく伸ばし、薬効内2位」とレポートしており、非小細胞肺がん適応での急成長の兆しが早くも見受けられる。

薬効別ランキングの2位は全身性抗ウイルス薬で、売上は6743億円(185.9%増)。ハーボニー、ソバルディの急成長が主因。ちなみに16年1~3月期データでは2608億円(212.1%増)で、抗腫瘍薬を抜いて薬効別ランキングトップに立ったことも確認された。ただ、ハーボニー及びソバルディは4月の薬価改定で薬価が31.7%引き下げられており、16年通年で全身性抗ウイルス薬市場が薬効内トップとなるかどうかはわからない。

■眼科用剤 アイリーアが薬効内売上トップ、ルセンティスにかわって

上位薬効のうち、唯一市場縮小したのが、薬効ランク3位のレニン-アンジオテンシン(RA)系作用薬。市場規模5575億円、前期比6.1%減で、2年連続のマイナス成長となった。特許切れしたARBブロプレスは売上が半減、同ディオバンも4割以上の減収となったことが影響した。

4位以下の薬効は、4位が糖尿病治療薬(5181億円、6.9%増)、5位が抗血栓症薬(4675億円、6.3%増)、6位が脂質調整剤及び動脈硬化用剤(4004億円、1.1%増)、7位が制酸剤、鼓腸及び潰瘍治療薬(3910億円、0.1%増)、8位が免疫抑制薬(3700億円、8.2%増)、9位が喘息及びCOPD治療薬(3339億円、5.7%増)、10位が眼科用剤(3287億円、7.7%増)――。

このうち、眼科用剤市場では製品売上の順位に変動があった。これまでトップだったルセンティス(売上非開示、19.1%減)にかわって、前年度2位のアイリーア(売上非開示、62.7%増)がトップとなった。

■企業売上 ギリアドが6位にランクイン 上位5社の顔ぶれ・順位変わらず

企業別の売上ランキングを見てみる。医薬品卸に製品を販売し、その代金を回収する機能を持つ「販売会社」ベースでは、売上トップから武田薬品(6795億円、0.6%減)、アステラス(6339億円、0.7%減)、第一三共(6288億円、6.2%増)、中外製薬(4758億円、7.4%増)、ファイザー(4711億円、10.3%増)――と上位5社の顔ぶれ・順位は前年度と変わらないが、6位にギリアドがランクインした。ギリアドの売上は4201億円で、ハーボニーとソバルディの売上合計と同額となる。

ギリアドを除いて2ケタ成長した企業はファイザーのほか、13位の日本イーライリリー(2724億円、19.5%増)、20位の小野薬品(1721億円、11.6%増)の3社。ファイザーはリリカが、小野薬品はオプジーボが特に好調。リリーは骨粗鬆症薬フォルテオや、販売をリリーに一本化した抗うつ薬サインバルタの成長が寄与したとみられる。

販促会社が2社以上の場合、製造承認を持っているなどオリジネーターにより近い企業に売上を計上する「販促会社」ベースで企業ランキングを見てみると、トップからファイザー(6144億円、2.3%増)、武田薬品(4938億円、3.9%減)、第一三共(4837億円、3.1%増)、中外(4771億円、7.3%増)――と上位4社の順位は変わらないが、5位にギリアドがランクインした。

【2015年度】日本の医療用医薬品市場 PPT
http://www.mixonline.jp/download/detail/tabid/259/downid/9005/Default.aspx
【2015年度】日本の医療用医薬品市場 PDF
http://www.mixonline.jp/download/detail/tabid/259/downid/9006/Default.aspx

15年4月~16年3月の売上上位3製品   (百万円)   (%)
  製品名       主な薬効     売上高    16年度薬価改定率
1 ハーボニー配合錠  C型肝炎治療薬  269,304    -31.7
2 ソバルディ     C型肝炎治療薬  150,879    -31.7
3 アバスチン     抗がん剤     117,936    -10.9



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/54114/Default.aspx
骨太方針案 オプジーボなど革新的医薬品の“最適化”推進明記へ きょうの諮問会議で公表
2016/05/18 03:52 ミクスオンライン

政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)がきょう18日に示す「経済財政運営と改革の基本方針2016」(骨太方針)案に、医療費適正化の施策として、費用対効果評価の導入、革新的医薬品等の使用の最適化推進、生活習慣病治療薬の処方のあり方-の3項目の検討を盛り込むことが明らかになった。抗がん剤・オプジーボ点滴静注の年間薬剤費が1兆7500億円にのぼるとの推計に端を発した高額薬剤問題だが、高額薬剤に限らず、革新的医薬品において、投与患者を”最適化”する適正使用の推進をうながす内容となった。処方の最適化をうながすことで、薬剤費の適正化、さらには医療費全体の適正化を視野に入れる。きょう午前に開催される中医協総会では製薬業界側から陳述があり、毎年薬価改定に続き、高額薬剤が議論の俎上に上ることが想定されており、業界を巻き込んだ高額薬剤の議論の行方が注目される。

きょう提示される骨太方針案には、「医療費適正化計画・地域医療構想の策定等による取組推進」として、まず重複投薬の是正、患者への普及啓発の取組の実施を盛り込んだ。医薬品適正使用の観点から、飲み合わせに問題がある医薬品の併用防止だけでは不十分と判断した。

さらに、費用対効果評価の導入とあわせ、革新的医薬品等の使用の最適化推進を図るとともに、生活習慣病治療薬の処方の在り方等について、2016年度から検討を開始し、17年度中に結論を得ることを明記する。

◎医療者自らが適正使用を意識できる施策を構築へ

これまでの医療費の適正化は、市場拡大再算定や特例拡大再算定に代表されるような薬価の引き下げなどで対応してきた。骨太方針案では費用対効果評価が明記されたが、適正使用推進をもうひとつの施策として明確に打ち出したものとなった。今回の骨太方針を実現させることで、国主導の施策だけでなく、医学的・薬学的見地からその薬剤が有効性を発揮できる“最適化”を医療者自らが進め、薬剤費の適正化をうながす。

具体的には、主に当該薬剤を使用する学会がPMDAとの協力のもと、保険適用前の段階で医師要件、施設要件を明確にし、適正使用ガイドラインを策定する。その内容を留意事項通知で周知徹底。条件に該当しない場合は、医療保険での算定を認めないことで適正使用を図る。製薬業界側もすでに適正使用に向けた取り組みを推進する姿勢を示している。抗がん剤などでは、適正使用ガイドなどを作成し、投与対象となる患者像を明確化するとともに、施設要件、医師要件に該当しなければ薬剤を提供できないような仕組みを構築する企業も出始めた。

◎薬剤の採用基準や推奨度を明確化した“フォーミュラリ”導入も視野

生活習慣病治療薬の処方のあり方としては、ガイドラインや経済性を踏まえて、薬剤の採用基準や推奨度を明確化した薬剤のリスト“フォーミュラリ”を導入し、各地域で薬剤適正化を進める動きがある。財政制度等審議会は昨年、ARBを例にとり「費用対効果の導入と並行して専門家の知見を集約し、速やかに処方ルールにかかわるガイドラインの明確化を図る」と提示した。これを受け、厚労省は、昨年11月の社会保障審議会医療保険部会に資料を示している。

聖マリアンナ医科大学など日本で実施されている先行事例では、フォーミュラリは病院薬剤部が作成しており、薬学的知見から医薬品の適正使用を進めることで、医薬品使用の適正化を図っている。

こうした議論に欠かせないのが、各地域で構築が進められている医療ICTだ。2020年にも到来する超高齢者社会に向けて、国は医療マイナンバーを軸とした医療情報共有化の基盤整備を急ぐ。安倍首相は、医療や介護のレセプトデータを全国的に連結して社会保障給付費を効率化していくための具体案を諮問会議に報告することを塩崎厚労相に求めたが、各地域で医療費を“見える化”することは必須の事項と言える。

12日の経済財政諮問会議では、民間議員から医療費の地域格差半減に向けて、今夏頃までに医薬品の適正使用を含めた医療費適正化基本方針の策定が求められた。各都道府県が地域医療構想策定に動く中で、ベッド数削減に代表されるような入院医療費だけでなく、薬剤費適正化の視点は欠かせない。各地域の薬剤費がベンチマークできることは必然的に薬剤費の圧縮が進むことをも意味する。そのひとつの施策として後発医薬品数量シェア80%が導入されたが、それだけでは適正化は難しく、革新的医薬品であっても適正化の推進が求められる時代に入る。製薬業界にとっては、さらに厳しい判断を迫られることになる。


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