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地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

5月8日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/416813
シリーズ: 臨床医学リスクマネジメント学会シンポ「大野病院事件を振り返る」
「間違った鑑定書が冤罪を招く」◆Vol.3
大野病院事件、安福弁護人が警鐘【動画】

スペシャル企画 2016年5月8日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 「検察が暴走したのではなく、間違った鑑定書が暴走させた」

 「間違った医学・科学鑑定書が冤罪を招いている」

 日本臨床医学リスクマネジメント学会の4月3日のシンポジウム「県立大野病院事件を振り返る」で、「大野病院における医療事故を刑事事件にしたもの」というテーマで講演した、同事件の弁護人を務めた安福謙二弁護士はこう訴え、医療事故が刑事事件に至る要因には、警察・検察側の問題だけでなく、医療側の問題も大きいと指摘した。医療事故など専門性が高い刑事裁判は、専門家が書いた報告書や鑑定書によって大きく左右される。安福氏は、「依頼する側も問題だが、もっと大事なのはそれを引き受ける側」と述べ、医師らが専門家としての自覚を持つ重要さを説いた。

◆安福謙二氏(弁護士・県立大野病院事件弁護人)
日本臨床医学リスクマネジメント学会シンポジウム(2016年4月3日)

 大野病院事件、「病理医」の鑑定が左右
 安福氏は、大野病院事件の2006年2月18日の産婦人科医の逮捕当時のエピソードから講演をスタート。同20日に電話で弁護の依頼を受けたが、「全前置癒着胎盤」との言葉を口頭で聞いても、「何が『全』、『前』かが分からなかった」(安福氏)。それでも次第に「何とも言えない雰囲気を感じた。あちこちから『全国の医師が、大野病院のことで怒り狂っている』という声が聞こえてきた」と振り返る。

 大野病院事件では、2004年12月の事故後、翌2005年3月に福島県による「医療事故調査委員会報告書」が作成されていた。それが警察の捜査の端緒となったものの、裁判の証拠とはならなかった(『警察、事故報告書を機に捜査に着手』を参照)。代わりに鑑定書を引き受け、法廷で証言したのは、検察側の「産婦人科医」と「病理医」、弁護側の「産科医」と「病理医」だ。弁護側の依頼者の方が、より専門性が高く、的確な鑑定を行ったことが、業務上過失致死罪に問われた産婦人科医を無罪に導いた(『逮捕に導いた決定打は病理鑑定』を参照)。

 本事件で死亡した患者は、経産婦で、全前置癒着胎盤だった。安福氏は、特に検察側の「病理医」の病理鑑定の経験やその手法を問題視した。それが検察側の「産婦人科医」などの誤った鑑定、ひいては起訴につながったと見るからだ。これに対して、弁護側の「病理医」は、胎盤病理の第一人者だった。胎盤組織の切片を顕微鏡下で見たのは共通しているが、双方の「病理医」の違いは、組織切片作製前の胎盤そのものの撮影写真を見たかどうかだ。「癒着胎盤を剥離する際に、クーバーで胎盤を切った」のが検察の起訴事実の一つだが、胎盤の全体写真を見ればそうでないことが分かる。組織切片の病理鑑定結果も両者で食い違っていた。その上、安福氏が、言葉を「産婦人科医」と「産科医」と使い分けたように、検察側の「産婦人科医」は、全前置癒着胎盤の妊産婦の経験の乏しい医師だった。

 もちろん、検察側の問題もある。例えば、関係者への取り調べの段階で、クーバーについて、「はさみ」のように使ったのではなく、刃を閉じて削ぐように使ったことを伝えておらず、誤った証言を導いていた(『検察、最後までクーパーにこだわる』などを参照)。

 「被告人の説明を真摯に聞く耳を」
 安福氏は、事故調査報告書が刑事捜査の端緒となった例として、2001年3月に起きた東京女子医大事件(『院内事故調が生んだ“冤罪”、東京女子医大事件』などを参照)、2008年4月の神奈川県立がんセンター事件などを挙げた(『神奈川県立がんセンター麻酔事故、医師に無罪判決、横浜地裁』を参照)。同センター事件については、横浜地裁が2013年9月の判決で、検察官の捜査不十分さを指摘する異例の「説諭」を行った。

 日本航空706便事件の名古屋高裁判決も引用(『JL706便事故の機長語る“事故調”の要諦 - 高本孝一氏に聞く』を参照)。1997年5月に起きた本事件では、香港から名古屋へのフライト中、乱気流に巻き込まれ、機体が乱高下する事故発生で重軽症者等を出し、機長が業務上過失致死罪に問われた。これらの事件の教訓として、「専門家領域の事件における被告人は、その道の専門家である。誰よりも、その事件の実情を知る専門家である。その専門家の説明に対し、真摯に聞く耳を持つことが必要である。傾聴する姿勢、リスペクトを持った聴取こそが必要である」と述べた。

 安福氏は、警察・検察には、事件の関係者の人権に配慮した刑事手続きを求めるとともに、医療者にも「医療事故調査制度は、結局は刑事手続きにつながっていることを忘れないでほしい。いくら患者側に報告書を渡さなくても、いざとなったら、事故調査報告書は家宅捜査の時に持っていかれ、検察の筋立てに使われる。そのことに留意して、調査し、報告書を作成してもらいたい」と警鐘を鳴らした。



http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20160508/CK2016050802000012.html
医師と連携、対応力向上 病院拠点に救急出動、運用2年
2016年5月8日 中日新聞 三重

◆四日市市消防本部・救急救命室長 太田清美さんに聞く

 救急隊員を病院に置き、医療技術の研修と現場への出動の拠点にする「救急ワークステーション(WS)」。全国の消防本部で運用されており、県内では四日市市消防本部が最も早く試行した。本格運用が始まった2014年4月から2年。太田清美・消防救急課救急救命室長(53)に成果を聞いた。 (聞き手・下泉亮一)

 -どのような狙いがあるのか。

 救急WSは他県の消防本部で20年ほど前に始まった取り組み。四日市としては薬剤の使用や器具を使った気道確保など、救急救命士の医療行為の範囲が近年、特に広がってきたため、これを支えることを主眼に実施した。出動拠点が増えることで搬送時間が短縮し、研修を通じて医師と救急救命士の連携も増す利点もある。

 -救急救命士は派遣先の市立四日市病院で、どのような研修を受けるのか。

 3人1組で2週間、午前2時半から午後5時14分まで救命処置の訓練や医師の講習を受ける。本格運用前の13年度は隊員1人平均で年間28時間だったのが、14、15年度は年間約40時間と、より多くの時間を取れるようになった。

 -119番があれば、隊員は原則的に現場に急行する。

 病院に搬送した患者について、診察や検査にも臨場している。通常であれば、応急処置した患者の病院での診断や経過が分かるのは1~2カ月後。所見の適切さや、他に取り得た処置の可能性など、記憶が新しいうちに病院の救命救急センター長から直接、講評を受ける。現場での対応力向上につながるだろう。

 -具体的に、どんな技術が向上しているのか。

 点滴の針を患者に刺す「静脈路確保」の実地研修が増えたのが大きい。心拍が弱まるにつれて血圧が下がり、針を刺す体の末端部の静脈は細くなる。平常時より血管を見つけるのが難しくなり、刺すのにもコツが必要になる。訓練回数は13年度は1人平均1.9回だったのが、14、15年度はそれぞれ6.5回、4回と倍以上に増えた。実際の救命救急現場で静脈路確保を行う件数も、本格運用が始まった14年度から、15年度にかけて増加。研修が隊員の技術向上や自信に結び付いたと考えている。

 -研修をより充実させるために何が必要か。

 消防本部では研修中でも、119番に対して原則的に出動することにしている。そのため、明確な研修の時間割を組むのが難しい。受け入れ先の市立四日市病院には多くの科があり、現状は「その日の研修先がなくて困る」ということはないが、日程を調整する役割の隊員を派遣してカリキュラムを練り直すことも検討している。

 -亀山市に続いて、この四月に伊勢市でも本格運用が始まった。津市も6月から試行する。

 いずれも医療行為の開始を早めようという発想から出発しているが、病院の規模や立地、消防本部側の隊員数や地域の人口などで運用の仕方や力点の置き方も変わってくるだろう。救急WSの在り方に唯一の正解はない。各地の状況に見合った制度と運用を模索していくべきだ。

 <太田清美さん> 1962(昭和37)年7月、四日市市生まれ。高校を卒業して市消防本部の職員に。96年に救急救命士資格を取得。2010年に消防救急課の配属となり、救急ワークステーション設立に携わり、静岡県沼津市や神奈川県横須賀市などの運用状況を視察。12年に救急救命室長に就任した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/421884
シリーズ: m3.com意識調査
「無力感に苛まれる」「脇役に徹するべき」
災害派遣医療で印象的だった出来事<問題・課題を提起>

レポート 2016年5月7日 (土) 成相通子(m3.com編集部)

 m3.com意識調査で、災害派遣医療についてお伺いしました(『災害派遣、医師の参加が低調』を参照)。災害派遣医療に参加された方から寄せられた、問題提起やご意見をご紹介します。

【経験を基に言いたいこと】

・大規模災害時には発災直後の救命だけでなく、計画的な被災者への長期followが重要。【勤務医】

・大規模災害時に集中医療室にいた経験がある。「ありがとう!」といいながら入室してきた救出者が、数分後に心停止で亡くなっていく様を何人も見て、無力感にさいなまれたことがある。亡くなった方の家族や関係者は言うまでもなく、医療関係者の方にも精神的なサポートをしてあげてほしい。【勤務医】

・参加した最初の頃は高揚感や達成感があったが、経験を重ねるにつれ、いろいろと負の面が見えてくる。重症患者の治療や、避難所の巡回診療も大事だが、地域の医療機関を主役になるよう、災害派遣チームはわき役に徹するべき。社会全体の効率を考えると、あまり目立たない、地味な活動こそが大事だと、最近思っている。【勤務医】

・地域のニーズと齟齬が生じることがあったが、こちらにも反省すべき点があった。【勤務医】

・被災地での各団体の医療支援が統制されておらず、同じ場所に多くの支援が集まる一方で、全く支援がない場所もたくさんできるなど、これでは被災地に迷惑をかけるだけだと痛感した。【勤務医】

・DMAT活動を大学本部のお偉さん方がイマイチ理解できてなく、ゴタゴタしてしまいました。大学みたいなところより、中規模病院の方がフットワークがいいような気がします。【勤務医】

・JMATはほとんど役に立っていない。【勤務医】

・阪神大震災の時で組織化の必要性を感じましたが、現在のDMAT、JMATのシステムでは取り残された小さな避難所が出てくるように思っています。また前回の東日本大震災からから介護支援の必要性も大きくなっていると思います。【勤務医】

・現地の医師の当直の代わりが特に必要と感じた。【勤務医】

・災害発生後の時期による内科系と外科系医師の役割がかなり明確であった。【勤務医】

・急性期はいろいろなチームが行っており、充実している。しかしながら、亜急性期から慢性期をケアするチームが少なく問題だと思う。【勤務医】

・阪神大震災にて。日赤のチームの手伝いをさせていただいた。日赤の熟練度に感心した。【開業医】

・阪神大震災ではDMATの重要性が理解できたが、東日本、九州大地震ではDMATより、その後の長期的な避難所の医学管理が重要と感じた。【勤務医】

・心のケアチームで、どうしても、感謝の言葉がもらえるかどうかを評価指標にしたがるチーム員達もいて、辟易しました。【開業医】

・ハードがそろっていないと、災害医療はできないと思う【勤務医】

・災害はそれぞれ個別の事情があり、取りあえず現地に誰かが行って情報を取ってくることが大切。特に大規模災害の場合、被害の一番ひどい地域からは、情報を伝える人とインフラが破壊されていて情報が出てこないことが多い。【勤務医】

・今後心のケアが必要になると思います。アルコール性肝障害が増えてきます。【勤務医】

・参加する度に体制が改善していることを感じています。【勤務医】

・自分の専門性とは合わなかったので、有効とは言えなかった。後方でできることはたくさんあるので、はやる気持ちを抑え、何ができるか、日常的な患者サービスというものも評価して援助の仕方を考えるべきである。【勤務医】

【支援の在り方について】

・被災地支援を受けた病院に勤めていた医師として。DMATなどの支援をもらったが、あまり役に立った印象はない。現地の地元住民の方言は聞き取れない。紙カルテ使ったことなく、対応にこちらのNsを取られる。被災地に支援に来てやっているんだオーラを出しまくり。支援という名の押し売り。帰ってからは、被災地に行ってきたと声高に自慢でもするのだろうか。はっきり言って邪魔ってことがあったので、僕は行かない。【勤務医】

・地元の開業医から患者を取った。と言われて非常に不愉快な思いをした。【開業医】

・本来のその地域の医療活動に戻すことがゴールである。このことを意識しない外部からの新規事業は有害となることもあることを自覚すべきと感じた。【勤務医】

・常勤1名の部署だったので、週末などの自分の休みを使って参加するしかなかった。薬品が届かず混乱していたが、薬剤師さんたちのチームの被災者支援が情報を得るのに非常に役立った。周囲に迷惑をかけまいとしてトイレやごはんも我慢している高齢者が多く、自分より弱いものを助けようとする人間の本質的な姿を見た。【勤務医】

・今となっては反則ながら、診療中の避難所で総入れ歯安定剤が不足した際にtwitterで発信したところ、半日後に匿名で届けてくれた人が複数いた。【勤務医】

【食料と避難所】

・阪神震災の援助に参加させていただきましたが、思った以上に食べ物があり、腐ると困るので、食べてくださいと言われたこと。【開業医】

・一緒に行った医師が、いろいろ自分用の食料を持ち込んで、私にも勧めてくれたが、おにぎり1、2個で我慢している被災者を前に、なんて無神経な医師だろうと思った。その人は某大学の教授になった。【開業医】

・現場のニーズは刻々と変わる、おにぎりばかりが大量に着いて、ブルドーザで廃棄されているのを見た。3食おにぎりで3日続いたら、たとえ緊急時でも別のものが欲しくなる、カレーやうどんの屋台が長蛇の列だった。当たり前のことなのにリアルタイムの情報が伝わらないとそういうチグハグが起きるということを知った。【勤務医】

・高齢者に提供する食事が菓子パンやコーラなどの時があり、合わないのではと感じたことがある。【勤務医】

・昔々の話です。伊勢湾台風の時のことです。周りが海水でボートでなければ救助に行けない学校の体育館。怪我人の処置をしているうちに何時の間にか夕方。帰りのボートはどこに行ったのやら。避難している人たちは夕食。こちらは帰るに帰れず。かわいそうにと思われたのか、おにぎりを一ついただきました。おいしかったことを今も思い出します。【勤務医】

・炊き出しを受け取り、久々に温かい食べ物を食べたときの喜びが忘れられない。【勤務医】

・とある避難所でお昼時に食事の配布が終わった後に、「おにぎりの余りがありますよ〜欲しい人は取りに来てください」のアナウンスが流れた後に、各部屋から若い方がドッと溢れ出た。見かけ上は食料は充当していても、若い人には不足であることを知りました。今回も若い人が飢えなければいいですが。【勤務医】

・配給される食事の味付けが塩辛く、そのせいか高血圧が悪化して治療を要するお年寄りが多かった。【開業医】

【その他、感想】

・アルコールの患者が避難所で問題を多数起こした。【勤務医】

・そもそも災害のその場に医者がいる必要性を感じてしまった。【勤務医】

・いいホテルに泊めていただきかえって申し分なかった。【勤務医】

・かなり大変な思いをしました。【勤務医】

・医療と言うよりは患者搬送が主な仕事。【勤務医】

・医療の原点を感じた。【勤務医】

・医療の必要性を実感できる場。【勤務医】

・医療は何もできないことを実感した。【勤務医】

・何もできないことに愕然とした。【勤務医】

・現地に到着時、まだ焼けた建物が熱かった。【勤務医】

・言葉失う、慰め言葉が空々しくなる。【勤務医】

・行ってみないと分からない。行って後悔することはない。【勤務医】

・実際見て分かることが多い。医師でなくてもできることは沢山あった。【勤務医】

・災害医療報告会では、思わず泣きそうになってしまった。【勤務医】

・若手の頃の、純粋に医療に取り組んでいた気持ちに戻ることができる。【勤務医】

・当院でも必ず積極的に派遣している方で、公の報告やSNSでの体験談を読む機会も多いのですが、自己満足のためと思われそうでなかなか言い出せません。【勤務医】

・登山医学会会員です。どこへも行きます。【勤務医】

・入浴できない環境でした。2泊3日が限界。【勤務医】

・避難所への医療派遣でも内科の意義はある。【勤務医】

・病院で待っている医療と避難所で求められる医療には違いがある。【勤務医】

・報告が煩わしい【勤務医】

・役に立てたのか不明【勤務医】

・労力の割に感謝されない【勤務医】



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/54079/Default.aspx
【Focus】高額薬剤議論で浮上する3つの視点 焦点はマーケット 適正使用がカギに
公開日時 2016/05/09 03:53 ミクスオンライン

抗がん剤・オプジーボ点滴静注に端を発した高額薬剤の論議が注目されている。財政制度等審議会では、オプジーボの薬剤費だけで年間1兆7500億円との試算も示され、1剤だけで医療保険財政が破たんするとの問題意識が示されている。高額薬剤の相次ぐ登場が想定される中で、こうした課題は、費用対効果評価による薬価の再評価だけでは解決が難しい。領域別に新たな選択肢を模索する動きが水面下で見られている。がん領域などで医療施設や医師などを限定する適正使用指針の策定、生活習慣病領域における地域での標準薬のリスト化、これに費用対効果評価による薬価の再算定の3つの視点が今後浮上することが想定される。“適正使用”をカギとした施策が検討される中で、製薬企業にとっては、プロモーションの根幹を見直すことも迫られることになりそうだ。

◎ C型肝炎治療薬 費用対効果評価での薬価再算定 マーケットでの議論に

1つ目の視点が、費用対効果評価による薬価の再算定だ。4月から費用対効果評価が試行的に導入されるが、C型肝炎治療薬・ハーボニー配合錠、ソバルディ錠(ギリアド・サイエンシズ)、ヴィキラックス配合錠(アッヴィ合同会社)、ダクルインザ錠、スンベプラカプセル(いずれも、ブリストル・マイヤーズ)、抗がん剤・オプジーボ点滴静注(小野薬品)、カドサイラ点滴静注用(中外製薬)の7品目が対象となる。

注目したいのが、5品目が対象となったC型肝炎治療薬だ。類似薬効比較方式で、▽補正加算の加算率が最も高い、▽10%以上の補正加算が認められたものの中で、ピーク時予測売上高が最も高い――薬剤に該当したソバルディ錠、そしてその類似品として4品目が選定された。類似品は、薬理作用の類似薬とされているが、純粋な作用機序だけで考えれば、類似品はハーボニー配合錠のみだ。実際、2016年度薬価改定で導入された特例拡大再算定ではソバルディ錠が対象となったが、類似品とされたのはハーボニー配合錠だ。

ハーボニー配合錠はNS5A阻害薬・レジパスビルとNS5B阻害薬・ソホスブビル(ソバルディ錠)の配合剤だ。しかし、ヴィキラックス配合錠は、NS5A阻害薬・オムビタスビル/NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬・パリタプレビル/リトナビルの3剤の配合剤。NS5A阻害薬・ダクルインザ錠とNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬・スンベプラカプセルは、併用下で用いられる。ソバルディ錠のようなNS5B阻害作用をもつ薬剤は含まれておらず、異なる作用機序をもつ薬剤と言える。

しかし、これらの薬剤には共通項がある。いずれの薬剤もこれまでC型肝炎治療薬の柱とされてきたインターフェロン(IFN)を併用しないでも投与できる、“IFNフリー”と呼ばれる新たなマーケットの薬剤であるという点だ。逆に言えば、IFNフリーの薬剤はすべて費用対効果評価の対象品目となったことになる。例えば、ハーボニー配合錠は、著効率100%という治癒率の高さが注目されたが、薬価も特例拡大再算定で31.7%引き下げられたものの、5万4796円90銭と高額だ。C型肝炎治療薬のような治癒を見込める薬剤は、費用対効果評価が優れるとの結論になることが想定される。しかし、同一のマーケットにあるすべての薬剤の費用対効果評価が出揃うことは、マーケット内での比較を可能にすることをも意味している。

◎ 抗がん剤など 学会、PMDAで適正使用指針策定へ

2つ目の視点が、関係学会とPMDAの協力により、高額薬剤の適正使用を推し進める適正使用指針を策定することだ。抗がん剤・オプジーボ点滴静注は、治療前に有効な集団の特定ができないことや、無効例・有効例ともに投与を中止すべきかが不明確であることなどが課題として指摘されている。こうした中で、その薬剤を主に用いる学会が中心となり、施設要件や医師要件などを明確にすることで、医療界自ら、適正使用をすすめてもらうことを目指す。保険適用の段階で留意事項通知などにより周知を徹底することも視野に入れる。すでにステントなどの医療機器では、施設要件や医師要件などを留意事項通知で示すことで、適正使用が進められている。

◎ 生活習慣病治療薬 フォーミュラリ策定で地域ごとでの議論を

3つ目の視点が、 生活習慣病領域などで、ガイドラインや経済性を踏まえて、薬剤の採用基準や推奨度を明確化した薬剤のリスト“フォーミュラリ”を導入し、各地域で薬剤適正化を進めることだ。

財政制度等審議会は昨年、ARBを例にとり「費用対効果の導入と並行して専門家の知見を集約し、速やかに処方ルールにかかわるガイドラインの明確化を図る」と提示。これを受け、厚労省は、昨年11月の社会保障審議会医療保険部会に資料を示している。4月13日には、脂質異常症治療薬初の抗体医薬であるレパーサが承認された。効能・効果は、「家族性コレステロール血症、高コレステロール血症。ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分な場合に限る」。マス市場の薬剤であるものの、但し書きで患者像を限定されている。こうした薬剤について、薬剤師が適正使用の一翼を担うことで、医師の処方適正化を図る。2016年度診療報酬改定では、患者の薬剤を一元管理する“かかりつけ薬剤師”が新たに導入されたが、各地域で薬剤師がこうした適正使用の推進に積極的にかかわることになる。さらに言えば、現在進められている医療ICTを通じたデータ分析がこうした薬剤師の職能発揮をサポートする時代の到来も近い。

これまで医療保険上の医薬品の価値は薬価で判断されてきた。しかし、高額薬剤の登場で、薬価だけで議論することが難しい時代に入った。2016年度診療報酬改定では重複投与や残薬を是正するための点数も明確化され、湿布薬の処方枚数の上限も設けられるなど、適正使用を打ち出したものとなった。製薬企業は、生活習慣病領域などで、絨毯爆撃的なプロモーションを行うことで一時代を築き上げてきた。しかし、すべての医療機関や医師に処方をうながすのでは、もはや通用しなくなるだろう。高齢化が進む中で、患者像も考慮した上で、いかに適正使用を推進すべきか。薬剤費抑制の観点からだけではない。製薬企業が、“医療への貢献”をどう果たすべきか。いま、その意味を問われている。(望月英梨)



http://www.sankei.com/life/news/160509/lif1605090002-n1.html
【主張】
高額薬品と負担 国民的議論に情報開示を

2016.5.9 05:01 産経ニュース

 命を救う医療の進歩を期待するのは当然だが、画期的な技術や薬の使用には高い費用がかかる。これをどう賄うか。

 財政とのバランスを考えなければ、国民皆保険の維持も危うくなる。

 がん細胞にある特定物質のみを攻撃する「分子標的薬」などの高額医薬品が相次いで開発され、このままでは公的医療保険が破綻するという懸念がある。

 患者1人あたり、年間約3500万円を要する薬も登場した。保険財政を維持しようとすれば、何らかの歯止め策が必要になる。

 高額医薬品の取り扱いは、米国でも大きく問題化するなど国際的な課題となっている。日本でも広く国民の間で議論するときだ。

 厚生労働省は対応策として「費用対効果」を分析して価格に反映させるという、新たなルールを試験導入した。「割高」と判断されれば、2年後の次期診療報酬改定で価格が引き下げられる。

 桁外れに高額な薬の場合、診療報酬の改定時期を待たずに見直すことも検討すべきだろう。

 これまで新薬は、安全性や有効性が確認されると公的医療保険の適用となってきた。これを改め、英国などを参考に薬の延命効果や使用後の患者の状態などを評価して決める案もある。

 だが高額ということだけが理由で保険の適用対象外となれば、裕福な患者しか先進的な治療を受けられなくなる。

 新薬の開発に望みをつなぐ患者にとっては命に関わり、それは国民皆保険の否定にもつながる。

 医療の高額化に伴い、もっぱら「高齢者の延命」を目的とした使用には制限を設けるべきだとの意見もあるが、年齢で一律に線引きすることは、個々の死生観の相違などを考えれば極めて難しい。

 一方で製薬会社は、利益を確保できなければ次の薬の開発に投資できない。極端な価格抑制や保険適用除外は開発への意欲をそぎ、日本市場の魅力を失わせる。画期的な特効薬が誕生しても日本の患者だけが使えない-という事態にもなりかねない。

 医療財政を取り巻く環境は厳しくなる一方で、悩ましい問題である。まず国民的議論の前提として、薬価の決まり方を知る必要がある。製薬会社の開発費や市場規模見通し、新薬承認に関する審議会の検討経過も含め、厚労省はデータを徹底開示してほしい。


  1. 2016/05/09(月) 06:07:09|
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