Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

5月2日 熊本震災関連 

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160502/k10010507181000.html
7つの医療機関 入院受け入れ再開のめど立たず 熊本
5月2日 18時54分 NHK

 熊本地震では医療機関が被災して入院ができなくなるケースが相次ぎましたが、今も入院の受け入れを再開するめどが立っていない医療機関が7つあることが分かりました。影響の長期化で医療機関どうしの連携や在宅で療養している患者の健康状態の把握が課題になっています。
 熊本県では一連の地震で安全の確保や患者の健康管理が十分にできなくなったとして、入院患者を転院させたり、在宅での療養に切り替えたりする病院や診療所が相次ぎました。
 「入院を制限した」と地元の保健所や医師会に報告した39の医療機関にNHKが1日から2日にかけて、入院の受け入れ状況を取材したところ、「全面再開した」と答えた医療機関が23、「一部再開した」が6つ、「再開していない」が10でした。
 「再開していない」と答えた10のうち「5月中に再開する」と答えた医療機関は3つで、7つの医療機関は「再開のめどは立っていない」としています。
 理由としては、建物の補修や安全の確認に時間がかかることや、下水道が損傷して調理室やトイレが使えないこと、それに職員が被災して働けないことや道路や鉄道の被害で医師が通勤できないことなどが挙げられています。
 病院を出て在宅での療養を余儀なくされた患者は380人余りに上り、なかには患者のその後の健康状態が確認できていないと答えた医療機関もありました。影響の長期化は避けられない状況で、医療機関どうしの連携や患者の健康状態の把握が課題になっています。

赤ちゃんの医療にも影響

 地震で建物の一部が壊れ、入院患者を退避させた熊本市民病院は、リスクの高い赤ちゃんの治療を専門とする施設も被害を受け、入院していた赤ちゃんを九州各地の専門病院に転院させました。
熊本市民病院は一連の地震で天井や外壁の一部が崩れ、入院患者全員を別の医療機関に転院させるなど退避させました。
 赤ちゃんや妊産婦を対象にした高度医療の拠点、「総合周産期母子医療センター」も被害を受け、NICU=新生児集中治療室などにいた38人のほとんどが九州各地の病院に転院しました。
 こうした専門の施設がある病院は、熊本県内にほかに2つありますが、市民病院での受け入れができなくなったことで、今後1年間で100人以上の赤ちゃんや妊産婦が、県外の医療機関での入院を余儀なくされるおそれがあるということです。
 特に28週未満で生まれた超早産児と心臓病の赤ちゃんについては、多くが県外の医療機関で受け入れる見通しです。
 熊本市民病院新生児内科の川瀬昭彦部長は「周産期医療の拠点となる施設が大きな被害を受けたことは過去の災害でも前例がない。県外での入院になれば家族と切り離されることになり、悪影響が出るおそれがあるが、病院の建て直しなど解決には時間がかかる」と話しています。
 県や市、それに医療関係者は連休明けに会議を開き、医療機関どうしの今後の連携などについて協議することにしています。

看護師が患者訪問の病院も


 地震で被害を受けた熊本県益城町の病院では、入院できなくなった患者の自宅を看護師が訪れて健康状態の観察などを行っています。
 益城町の「益城病院」は、一連の地震で建物の一部が壊れたうえに上下水道が使えなくなったため、入院していた199人のうち149人は別の医療機関に転院させ、50人は在宅で療養してもらうことにしました。
 上下水道の復旧状況に応じて段階的に入院患者の受け入れを再開する方針ですが、多くの患者を受け入れられるようになるには数か月かかるとみられています。
 このため、先週から患者の自宅を看護師が訪問し、健康状態の観察や必要な処置を行っています。2日は精神的な不調を訴えて入院を希望していた嘉島町の85歳の男性の自宅を訪れました。男性は地震の際、逃げようとして足をくじいて以来、ほとんど外出していないということで、看護師は血行をよくするために男性の足にオイルを塗ってもんだり、処方されたとおりに薬を飲んでいるかを確認したりしていました。
 訪問した看護師の小崎裕子さんは「病気があるのに自宅で過ごし続けるのは本人も家族も不安だと思います。早く復旧させて環境が整ったところで過ごしてもらいたい」と話していました。



https://www.m3.com/news/iryoishin/421716
シリーズ: 熊本地震
移動するという選択肢について(熊本地震避難所)

岩田健太郎(神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授)
2016年5月2日 (月) m3.com

 沖縄県立中部病院(元厚労省)の高山義浩先生が熊本県庁で地震対策に尽力されています。いつもながらその正義感に満ちた社会活動には頭が下がります。高山先生は避難所における高齢者を被災地から引き離してはいけないとし、現場を知らずにそのような行為を強要すれば結局高齢者とその家族の利益にならないと論じておいでです(熊本地震の現場から「高齢者を被災地から引き離すべきか」 apitalコラム)。

 在宅医療などに造詣の高山先生のご意見には一理あります。しかし、私はそれでも避難所から別の場所に住民が移動していくよう、あらゆる手段を集約して促していくべきであり、高齢者もそうでない方も、大量に避難所にとどまりつづける現状を許容してはならないと思います。

 私たちは現地避難所の環境アセスメントを行いました。例えば感染対策という点では多くの避難所が衛生面に気を配り、感染症のアウトブレイクが起きないよう尽力されていました。しかし、ほぼ全ての避難所で達成されていない項目がひとつありました。それは「人と人との充分なスペースが確保」でした。

 多くの避難所では沢山の人が肩が触れ合うくらいのわずかな距離の、非常に込み合った状態で生活し、就寝しています。廊下にもたくさんの人が生活しています。このような混みあった状態では、いかに衛生状態に最大限に気を配ったとしてもインフルエンザやノロウイルス感染症の発生は防止できません。実際に私達の活動中にも高齢者での、そのような小アウトブレイクが観察され、それは明らかに狭すぎる人と人との間隔が原因でした(報道された南阿蘇でのノロウイルスのアウトブレイクもこのような環境下で発生したのだと考えます。過剰ともいえるメディアの報道に現地のボランティアたちは非常に傷つき、過剰なまでの環境衛生対策を強いられて疲弊したと聞いています。なので、私も本稿では場所に関する情報をあえて公にしません)。

 また、我々は直接アセスはしませんでしたが、現地には大量の方が車の中での寝泊まりを強いられていました。これは静脈血栓の潜在的リスクであると考えられています。

 高齢者のみならず、現地の住民の意向を尊重するのは外からやってきたものの最低限の礼節だとわたしは思います。一方、彼らのほとんどは密集した環境がいかに諸感染症発生リスクを高めているかはご存知ありません。長期の社内生活が静脈血栓・肺塞栓のリスクとなっているかもご存知ありません。あるいは知識としてはご存知でも、高齢者の重症インフルエンザや肺塞栓がどのようなものかは見たことがなく、それがどのようにつらい病気であるか、その実感はありません。

 インフルエンザやノロウイルス感染症、血栓症などは環境が整い、対策を講じた病院内ですら起きるのです。環境やリソースに乏しい避難所で起きるなと要求するほうが無理筋なのです。

 しかしながら、目の前に現存するリスクを看過するのも我々プロの行なうべきことではないでしょう。

 シエラレオネでエボラ対策をしていたとき、我々が尽力したのがソーシャル・モービライゼーションという活動でした。遺体を手で洗うという現地の習慣は明らかな感染リスクでした。彼らのことばや思いを傾聴しつつ、そのような行動を変容しないかぎりこの悲惨は終わらないことと、現地の名士や宗教家たちも交えて繰り返し繰り返し対話を重ね、行動変容を促し、ついにそのような風習の断念をもたらしたのです。その行動変容は、普段の生活を取り戻すために必要だったからです。

 避難所から離れられないという思いや言葉は現地で何度も聞きました。そのような思いや言葉は傾聴すべきです。しかし、それでも彼らが求める「平時の生活」に戻すためにも、全ての人が一日も早く避難所を離れることを目指さなければなりません。避難所では少しずつ人が減ってきてはいますが、まだまだそれでもたくさんすぎる人がいます。夜間の車中に泊る人たちや公でない避難所を考えると、把握できていないくらい沢山の人達が潜在的なリスク下にいます。

 移動するのは高齢者や要介護者たちに限定する必要はありません。東日本大震災でも無理な患者搬送はかえって健康リスクを高めてしまった事例がありました。家族が無理やり引き裂かれるような事態も好ましいとは思いません。逆に発想を変えて、むしろ比較的若くて健康な方から移動を促してもよいと思います。「移動してもよいかも」、という方はどなたでも移動を促せばよいと思います。新型インフルのワクチン接種には厚労省からものすごい分量の文章がきて、「この人はワクチンを打つ、この人は打たない」という指南がなされました。結局そのため接種率全体が下がり、皆が損をしたのです。そのような奇妙な平等を目指さないのが大事です。

 そのためのインセンティブも欠かせません。家の掃除や仕事のために地域を離れられない、という方は使用可能な高速道路を優先的に使用してもらったり、新幹線のチケットを支給してもよいでしょう。

 「移動する」という選択肢が顕在化すれば、もっと移動したい、してもよいという動機も顕在化します。今の避難所は静的な状態にあり、移動を積極的に選択したくなるイメージがもちにくいと思います。

 仮設住宅の建設はしたがって可及的速やかに行なうべきでしょうし、プライベートセクターを使った「その他のオプション」ももっと増やすべきでしょう。テントの設営も選択肢の一つでしょう。そうやって避難所から移動する選択肢を増やし、避難所から移動する人を増やせば、避難所そのものももっと生活しやすい、そしてより安全な場所になるはずです。

※本記事は、2016年4月29日のブログ『楽園はこちら側』で発表した内容を、編集部でタイトルとレイアウトのみ変更したものです。


  1. 2016/05/03(火) 08:34:59|
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