Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

3月21日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/406384
シリーズ: 東日本大震災から5年
【岩手】「『絆』という言葉やめて」「ゆっくりとした復興で雇用維持を」◆Vol.14

医師調査 2016年3月21日 (月)配信高橋直純(m3.com編集部)

Q  東日本大震災からの復興に関して、行政や医療界に望むこと、広く知ってもらいたいことなどがあれば、ぜひともご記入ください。

【岩手県】
・沿岸部ほど医師が少なく悲惨である。

・もっと根本的な地域医療対策を考慮に入れた行政の施策等を進めなければ、救急患者に対応できない開業医を増やすだけの結果になることは目に見えている。

・復興は被災地によって進捗に差がある。実際に震災前の街の様子を知らない人が、震災後に被災地に来て、気安く復興などという言葉を使ってほしくない。復興、絆などという言葉に酔いしれるのはやめてほしい。被災地は一時の慰めや飾り言葉よりも、お金、仕事、住居を求めている。復興、絆という言葉を口にするのであれば、実際に被災地で生活してみてほしい。ほんの数日視察した程度で分かったようなことは言わないでほしい。現実は甘くない。必要なのは、仕事、住居、そしてお金である。

・大学新設は間違い。新専門医制度も制度を緩和しないと地域医療は崩壊する。

・たくさんの身近な方が亡くなる最悪な経験をして、医療偏重でない生活の大切さを意識し始めているのに行政は英断しない。特に2025年問題を考えても在宅移行を促すための優しく手厚い変革が必要。

・使用項目に制限のない補助金としてはいかがでしょうか。

・東北を含む地方の医療のあり方、現状を全く分かっていない。東京にいながら、感覚だけで采配をふれるわけが無いことくらい分かってほしい。

・地域の状態を、声大きく言う人たちだけから取材した情報で判断してほしくない。民間病院はつぶれてもいいと思っているのかもしれないが、傾きつつある病院は人件費を削ります。しかも、看護師不足により入院収益が減ることを恐れて、看護師の給与条件は良くしても、現在の医師には釣った魚状態で、招聘する医師にのみ良い顔をする理不尽さがある。健康保険制度の中でしか収益が得られないのに、病院上層部や患者から求められるのは都会並である。その勉強に行くことすら制限されてしまうようでは医師が流出するのも仕方ないのかもしれないと思う。公立であれ私立であれ医療に携わっていることには変わりないにのに、差別化されることに不満あり。公立はある程度の赤字は認められるのに、私立は赤字許されず、自腹的持ち出しで頑張らざるを得ない。頑張れるのは若いうちだけだなーと実感している。

・医療機関を政治に利用しないでほしい。

・被災地の住居が5年経ってもできていないのでは、遅すぎる。

・医療ではないが、住宅問題を十分考える必要がある。仮設住宅は狭くて、造りも雑だが無料という面が魅力。一方、当時は財源があったため復興住宅はオーバースペックで、家賃も高めという問題がある。医療に関しては、震災前から多忙だった沿岸地区はますます多忙になってきているように思える。

・国の政策に見込み違いがある。よく現地の実情を聴取して、速やかに対応するべきである。医療に限らず地域での社会生活の確保ができるようにしないと、すべて良くならない。

・こう言っては味もふたもないのだが、人口が減っていて、将来もっと過疎化する土地にどのように復興費を割り振るかのグランドデザインがいい加減で、プロパガンダ風に無駄遣いしていると思う。

・もともと過疎や高齢化に向かっていた町村の実態がより顕著になった。人が減っているのに元の状態の箱モノばかり作りたがって実態にそぐわない。復興予算が目減りし、未来のビジョンも頓挫しかかっている。何よりソフト面での復興がおざなり。診療報酬改定も必要だが、都会と田舎、被災地と非被災地を区別しないと結局都会の一人勝ちになる。

・実際の被災地の現状は、スタッフの疲労困憊の事実があります。これまで県央地区から支援活動を行ってきておりますが、被災後年数と共に支援団体の減少が著しいのが現状です。特に沿岸部の被災地は地域差の拡大がさらに進んでいるように思われます。国の支援政策は現場の状況判断に大きなずれが存在しているのではないかと危機意識があります。

・医師の偏在を是正する施策が、限定的でも必要と思う。沿岸被災地の医療(受診機会の)格差が大きくなってきているのではないかと思われる。(見なし)仮設住宅被災者の継続的な支援策を行わないと、阪神淡路と同様に孤立死の問題に直面するのではないかと危惧している。比較的余裕のある被災者は内陸や県外に移住が進んでいることも十分把握してほしい。

・防潮堤の進行に比べて、住民の住居と避難道の確保が遅れているように見える。物と人材の投入の優先順位は強力な行政の指導が必要だった。

・雇用の問題。岩手沿岸は、産業が大きくありません。今は復興支援で建設業関連企業がたくさんやってきて、お金を落としていきます。しかし、それは復興予算の一部であり、ほとんどは中央のゼネコンに吸い上げられていきます。建設業を中心に人が集まり、それに付随して宿泊施設は満員で、MRさんもホテルの確保に苦労しているようです。飲食店なども経営は良好のようです。しかし、数年先、復興支援が終わると、それは無くなってしまいます。何千億ものお金をかけて道路を作るくらいなら、もっと別のことにお金を使った方が良い気がします。急いで復興するよりも、ゆっくり時間をかけて復興した方が、長く雇用を維持できる気がします。

・せめて全てのワクチン接種を補助するか無料にして貰いたい。

・震災遺構は一切不要。

・震災当初は問題視された福祉避難所の整備が、結局宙ぶらりんのままである。



http://univ-journal.jp/5809/
東北大学大学院医学系研究科が七星賞を新設 大学ジャーナルオンライン編集部
2016年3月21日 大学ジャーナル

 東北大学大学院医学系研究科は開設100周年記念事業とし、女子大学院生奨励賞(七星賞)の創設を決め、第1回受賞者を選考しました。医学、医療の分野で活躍する女性リーダーの養成が目的で、授賞式は5月21日に予定されている艮陵同窓会総会で行われます。

 東北大学によると、第1回受賞者は最優秀の櫻井美奈子さん(病理診断学)と、神林由美さん(皮膚科学)、石木愛子さん(老年医学)の3人。
 東北大学医学部は開設100周年を迎え、東北地方の医療、科学界で男女共同参画を主導する重要な役割を担っています。このため、東北大学が掲げる「門戸開放」の理念のもと、昭和の初期から女子を入学生として迎え、多数の女性医師、研究者を輩出してきました。しかし、医学系研究科の大学院生全体に占める女子学生の割合は約30%。依然として男女格差が大きく、女性教員になると職位が上がるにつれて、女性比率が極端に低くなっています。

 こうした現状を打開し、女子学生があきらめることなく研究者キャリアの道を進むことを奨励するため、この賞を新設しました。賞の愛称七星賞は北の空に輝く北斗七星のように人々を導く女性リーダーに育ってほしいという願いが込められています。
艮陵同窓会総会では、授賞式と同時に受賞記念講演会も開催される予定です。



http://www.minyu.ne.jp/digitalnews/160319_1.htm
広域紋別病院、常勤医師3人増の16人へ
(3月19日付け) 北海道民友新聞

 広域紋別病院(及川郁雄院長)は、4月から7月にかけて常勤医師3人を順次増員し、千賀孝治企業長を含めた常勤医師は16人体制となることが、18日に同病院で開かれた同病院企業団議会で明らかにされた。増員されるのは内科(4月から)、麻酔科(6月から)、整形外科(7月から)。整形外科医は遠軽厚生病院でも不在となっており、骨折患者は北見や旭川へ救急搬送せざるを得ない状況が続いていた。同企業団の久保田政弘事務局長は「骨折患者の手術もできるようになるだろう」と話している。
 広域紋別病院は平成23年4月、西紋5市町村で構成する同病院企業団が、北海道から北海道立紋別病院(緑町4)の移管を受けて開院。昨年4月に現在地(落石町1)へ移転改築した。
 移管直前の常勤医師は12人で、移管時には北海道からの派遣を含めて14人へ増員。その後は増減が続き、同年中に12人まで減少したのち、平成25年度にかけて15人まで増員。26年度には再び12人になるなど、安定しない状態が続いていた。16人は同病院として最多になる。
 この日の議会では紋別市選出の宮川正己議員が一般質問に立ち、平成27年度の決算見込み、新年度の診療体制、基金残高と経営シミュレーションの見直しの3点について質問。千賀企業長が答弁した。
 それによると7月以降の診療体制は、外科3人、消化器内科2人、小児科3人、循環器内科1人、総合診療科3人、精神科1人、産婦人科1人、麻酔科1人、整形外科1人。現在いる常勤医師の交代は1人の見通し。
 このほか呼吸器内科、耳鼻咽喉科、眼科、泌尿器科、皮膚科、神経内科は現行通り非常勤医師体制で診療にあたり、乳腺外来や小児心臓等の各専門外来も引き続き実施するという。
 同企業団はこれまで、北海道や紋別市と連携し、道内外の医師に対して招へい活動を行ってきた。千賀企業長は「良質な医療を提供するためには、医師をはじめとした医療従事者の確保は最も重要なこと。引き続き、その確保に全力を尽くす」と述べた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/409600
シリーズ: 降圧剤論文問題と研究不正
「詰問すると白橋さんは目を見開いて睨んできた」府立医大元教授
ノバ社・府立医大論文改ざん事件、第18回公判

2016年3月21日 (月)配信 高橋直純(m3.com編集部)

 ノバルティスファーマ社の降圧剤を巡る京都府立医科大学での医師主導臨床試験の論文データ改ざん事件で、薬事法(現医薬品医療機器法)違反(虚偽広告)に問われた元社員白橋伸雄被告とノバ社に対する第18回公判が、3月18日に東京地裁(辻川靖夫裁判長)で開かれ、前日に続き、KHS(Kyoto HEART Study)の主任研究者を務めた元京都府立医科大学教授の松原弘明氏の検察側証人尋問が行われた。 論文に疑義が呈されるようになった2012年11月の話し合いの状況を証言。松原氏は「白橋さんに『この件で大学を辞めなくてはならない。どうして完全な形でデータを出してくれないのか』と詰問すると、白橋さんは目を見開いて睨んできた。その場では一言も発していないと思う」と話し、第三者による検証で疑義を晴らそうとする松原氏と、データ開示に積極的でない白橋被告との間で対立があったと説明した。

「どうして完全な形でデータを出してくれないのか」

 2012年頃からKHS論文に疑義が呈されるようになり、サブ解析論文の一つであるDM(糖尿病)論文では、日本循環器学会の学会誌「Circulation Journal」からカリウム値の異常が指摘された。松原氏によると、事務局の男性医師(以下、男性医師Aと表記)らが第三者による再検証をしてもらうため、白橋被告に生データの提供を求めたが、一向にくれず困っていたという。検察側が証拠として出した、2012年5月に松原氏が白橋被告に宛てたメールでは「我々のデータはいつでも開示して反論できますよね」という文言があった。

 2012年10月頃にようやく提供を受けたデータで、男性医師Aが全症例のカリウム値を再計算したところ、誤りが発覚。同年11月に京都市内のホテルで白橋被告、松原氏、男性医師Aらで会った時の状況について、松原氏は「データクリーニングは当然やっていると思い、なぜやっていないのかと問い詰めた。『この件で大学を辞めなくてはならない。どうして完全な形でデータを出してくれないのか』と詰問すると、白橋さんは目を見開いて睨んできた。その場では一言も発していないと思う」と説明した。

「場末の病院に飛ばしてほしい」、男性医師A

 過去の公判では、ノバ社の社員である白橋被告が統計処理を主導したことが利益相反の点から問題になると危惧し、男性医師Aが担当したかのように口裏合わせをしていたことが明らかになっている(『KHS参加医師、「人事のため、医師として最低の行為した」』を参照)。対応について、松原氏は白橋被告から送られてきた「関与を隠してほしい」というメールに返事は送っていないと説明。男性医師Aが、自身が解析を行ったとする虚偽説明の対応案を作成してきたことに対しては、「自分が全てを背負うつもりで書いてきたと思った。男性医師Aの意見に従って隠した方が良いと判断した」と説明した。男性医師Aからは「私を場末の病院に飛ばしてください」というメールも送られてきていたという。

 統計解析ソフトと、ソフトが動くwindowsパソコンを持っていなかった男性医師Aに対しては、白橋被告がパソコンを用意した。男性医師Aはしばらくの間、医局の机の上に開封せずに置いたままにしており、「怖くて開けられません」と話していたという。

「多くの医師が我々を信頼。その責任で退職を決意」

 2012年12月に「データ解析における重大な誤り」を理由に「Circulation Journal」の2論文が撤回。松原氏は2013年2月末に京都府立医大を退職した。松原氏の研究を巡っては、2011年6月頃に匿名のブログ上で、KHSとは別の論文で重複投稿や画像改ざんなどの不正が告発されていた。同大の調査委員会では不正があったと判断されたが、松原氏は「不正には関与しておらず、弁護士と一緒に大学と争うつもりだった」。しかし、KHSでも不正が指摘されるようになったため、退職を決意したと説明した。

 退職時はKHSでデータ改ざんがあったとは認識していないと強調。退職の理由は「ディオバンは当時、日本で最も売られていた薬。多くの医師、薬剤師が、我々のデータを信頼し処方していた。KHSでは多数の講演会をし、会社が広報に使った資料は、相当数が日本の医療の場で使われた。多くの教室員が参加し、多くの方に迷惑をかけ、主任研究者としては大学にいるべきではないと退職を自分で決めた」と説明した。

ノバ社社長が論文化を催促

 本裁判の対象となるKHSの結果をサブ解析したCCB(カルシウム拮抗薬)論文については、ノバ社側から論文化を急ぐように催促されていたと証言。2010年にエックスフォージ(ディオバンと、CCBのアムロジピンの配合剤)に関する数千人規模の講演会が東京で開かれた際に、松原氏は白橋被告が作ったスライドでバルサルタンとCCB併用の有効性を説明していた。その後の懇親会ではノバ社社長が「早く論文化して広報活動に使わせてください」とお願いしてきたと言う。2010年12月に松原氏は、白橋氏に「年明けには論文を進めます。来年の奨学寄付金について社長に頼んでください」とメールしていた。

 利益相反に関する認識について尋ねられると、試験が始まった2003年ごろは、製薬会社の社員が統計解析をしたりカルテを書き写したりすることは通常に行われており、利益相反の概念がなかったと釈明。その後、「全てのデータを製薬会社の人間が解析すると、改ざんなどをしてしまう可能性があり、利益相反の可能性がある」と認識するようになったと説明した。

「アンジオテンシン2型受容体の研究では日本一」

 弁護側による反対尋問では、松原氏が試験結果を知った状況について確認した。3月17日の第17回公判で「試験終了後、男性医師Aが「『えらいことです。JHS(Jikei Heart Study)と同じ結果になりました』と説明してきた」と話していた点について、「えらいこと」とはどのような意味だったかを尋ねた。松原氏は「『えらいこと』は悪い意味で取った。男性医師AがJHSを信じていないことを知っていたから」と説明した。

 また、ディオバンを使った試験を行いたいと考えた理由について「アンジオテンシン2型受容体の研究では(自分は)日本一だと思っていたので、それでバルサルタンを使いたいと思った」と話した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/403838
シリーズ: m3.com意識調査
残薬、82%が「重要な課題」と認識◆Vol.5
【2016年度診療報酬改定】意識調査

2016年3月21日 (月)配信 成相通子(m3.com編集部)

 中央社会保険医療協議会総会が2月10日に答申した2016年度診療報酬改定。同日から2月26日にかけてm3.com意識調査(計7回)を実施した。そのうち第5回、第6回調査の結果を紹介する。

 2016年度診療報酬改定では、残薬や長期投薬が「適正化」のターゲットになった。残薬や長期投薬は一定程度の必要性を認める声もあるが、意識調査の回答では、82%が「残薬の是正は重要な課題」と認識し、59%が「長期投薬は是正すべき」と回答。今改定の方向性が支持される形となった。

※各質問に関するコメントは意識調査の結果ページ下部のコメント欄で、全てが閲覧可能です。現在も書き込めますので、ぜひ感想をお寄せください。

 第5回調査(『残薬は問題か、否か?』)では、残薬を「医療現場が取り組むべき重要な課題」とすることについて、賛否を尋ねた。82%「大いに賛成」もしくは「一定程度賛成」を選んだ。

(回答者総数は2363人で、開業医525人、勤務医1273人、歯科医師15人、看護師25人、薬剤師482人、その他の医療従事者43人)

 さらに、処方せんに新設される残薬対応の欄について、想定される使用方法を医師に質問した(任意)。改定後は、処方せんに「保険薬局が調剤時に残薬を確認した場合の対応」の欄が新設され、(1)後で情報提供してもらい。次回の診察時に参考にする「医療機関への情報提供」と(2)医療機関へ疑義紹介した上で調剤する「疑義紹介して変更」の2種類の指示を選ぶことになる。

 開業医の48%、勤務医の43%が「医療機関へ情報提供」を選択すると回答、「疑義紹介して変更」を選んだ開業医30%、勤務医38%を上回った。回答者数は、開業医517人、勤務医1245人。

 第6回調査(『長期処方、見直す? 』)では、長期投薬を「是正すべき」と考えるかを質問した。「大いに賛成」「一定程度賛成」が59%を占め、「あまり賛成できない」「全く賛成できない」の33%より多かった。

(回答者総数は2475人、開業医654人、勤務医1449人、歯科医師11人、看護師28人、薬剤師304人、その他の医療従事者29人)

 分割処方などの新たな対応が求められる30日超の処方の現状と今後の見通しも聞いた。慢性疾患の患者の中で、30日超の処方は、勤務医の17%が「ほぼ全て」を占めると回答。「半分以上」が51%で、「ほぼ半分」が16%、「半分以下」は33%だった。一方、開業医は「半分以下」が66%と多数で、そのうち「ほとんどない」も32%を占めた。半分以上は25%だった。開業医646人と勤務医1437人が任意で回答した。

 勤務医に30日超の処方が多い傾向だったが、今改定後に「処方を見直す」としたのは開業医の方が多かった。今改定を受け、開業医の60%は「全面的、もしくは場合によっては見直しをする」と回答。「見直しをしない」としたのは31%だった。勤務医は「見直しを検討している」としたのは55%。36%は「ほとんど見直しをしない」もしくは「全くしない」を選んだ。開業医650人、勤務医1439人が任意で回答した。

 残薬と長期投薬についてのコメントを紹介する。

<長期投薬に関して>
患者さんは病院に来るのが人生の目標ではない。薬は元気な生活を支援するもので、症状さえ安定しているのであれば半年に1回でいいのではと思います。【医師】
コントロール良好なてんかん患者で学生の場合などでは、90日処方を行っています。学校を休んでまで外来に来てもらう必要はないと考えます。【医師】
病院薬剤師です。病院はDPCですので、必死に以前から削減に取り組んでいます。複数の降圧剤は配合剤に変更していますが、調剤薬局からは、そのような処方の問い合わせは来たことがないです。院外処方も包括にした方が良いのでは?【薬剤師】

<残薬に関して>
摂食嚥下リハビリテーションを主に行っている歯科医師です。なぜ残薬するのか、残薬する患者さんの状態はどうなのか、を考えるには良い機会かと思います。多剤服用されている患者さんで、幾つかのお薬を調整(減薬、薬剤変更など)してもらうと、途端に覚醒が良くなったり、嚥下反射惹起しやすくなったりして、より安全に食事摂取できるようになった症例を経験した事がありますので。【歯科医師】
患者さんから持ち込まれる袋いっぱいの残薬。なぜ、患者さんは薬局に持ち込むのか?なぜ、医師に直接言わないのか?無駄にゴミ箱に捨てられる薬。その薬は本当に必要ですか?患者さんは医師に直接言えない(言わない)ことはたくさんあります。減薬に点数なんていらない。その仕事は当たり前のことでしょ。今までやっていても点数なんてくれなかったのにね。【薬剤師】
そもそも、何かあれば薬を増やすというの止めてほしい。薬の種類が増えるほど、飲まなくなる。(使わなくなる)患者さんが管理できない、または服薬できないということを情報提供したいが、医師によっては怒られてしまうので薬を渡すときに罪悪感を覚える。【薬剤師】
「この薬飲んでいないし、傾眠傾向なので減らしてください」と薬剤師から言われ、減らした直後に暴れだし、御家族から起こられました。以後、何かあれば薬剤師が責任を取ってくれる旨を、聞けない場合は減らさないことにしています。【医師】
薬剤は医師が責任を持って処方するものであり。薬剤師は医師の処方の真意が分らないことが多い。医師として自分で常に患者の残薬を確認して処方しているが、確認に時間がかかることもある。今回、残薬を確認している医師に診療報酬を出していただくのが最も公正なあり方だと考える。特に内科医師に取って、薬は外科医のメスと同じであり、薬剤師が検査結果や様々な臨床データも見ないまま残薬調整したとしたら患者の利益に反する行為になる可能性がある。薬を2剤減せば点数が付くというのも薬の意義が分らない人が決めたのだと思う。医師は常に患者の回復と健康を目的に処方をしており他意はない。点数が欲しいために薬の数を減らす医師がいたとしたら、そのような医師は免許の持つ意味が分からない医師である。【医師】
薬剤師の疑義照会を医師への越権行為だと勘違いしている医師がまだまだ居るため、疑義照会形式にすると現実問題として現場が混乱すると思う。導入当初は情報提供のみに留めても一定の効果は期待できる。残薬を気にしてくれない医師のもとには患者が寄り付かなくなるような風潮が生まれれば、医師の側も考えを改めざるを得なくなるのではないか。【医師】
血液、膠原病屋です。自分の立場から言うと残薬はある程度は必要だと思います。災害時急性期医療は約2週で復帰すると言われているので、2週間は災害用に絶対に持っていてくれと指導しています。要らない薬を貯めている高齢者は全く別と考えています。【医師】
調査結果の詳細、コメント一覧はこちら⇒



https://www.m3.com/news/iryoishin/406428
シリーズ: m3.com意識調査
医師1600人の「後輩に薦めたい診療科」
内科、総合診療科が多数占める

スペシャル企画 2016年3月21日 (月)配信成相通子(m3.com編集部)

 2月から3月にかけて連載した若手・中堅座談会「2035年の医療を語る」。座談会実施に先駆け、2015年11月にm3.com医師会員を対象に、「将来重要度が増す診療科」と「後輩にお薦めしたい診療科」について意識調査を実施した。結果を紹介する。

 日本専門医機構の基本領域となっている19の診療科からQ1「将来重要度が増す診療科」Q2「後輩にお薦めしたい診療科」、それぞれを選んだ理由を尋ねた。回答者は1668人。

 Q1とQ2の1位はいずれも「内科」で、20%以上を占めた。2位は総合診療科で、Q1「将来重要度が増す診療科」としては19.6%の票を集めたが、Q2「後輩に薦めたい診療科」としては14.6%で、5ポイント低かった。
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 Q1の「将来重要度が増す診療科」の3位は「リハビリテーション科」(10.0%)、4位は「精神科」(9.1%)、5位は「整形外科」(7.9%)。Q2「後輩にお薦めしたい診療科」の3位は「整形外科」(6.8%)、4位は「外科」(6.7%)、5位は「リハビリテーション科」(5.9%)だった。

 Q1とQ2の割合を比較すると、内科や外科、麻酔科、皮膚科、病理診断は「後輩に薦めたい診療科」の方がポイントが高く、総合診療科やリハビリテーション科、精神科、整形外科は「後輩に薦めたい診療科」の方がポイントが低かった。将来重要度が増すと思っていても、後輩に薦めたいかどうかは「また別の話」と言えるようだ。

 Q2「後輩に薦めたい診療科」では、「ない」などの「その他の回答」がQ1と比較しても多かった。2017年度開始予定の新専門医制度も批判が強く、臨床研修制度や医学部教育の改革も進む中で、将来の見通しを立てるのは困難な状況が続いている。

 それぞれの診療科を選んだ理由は以下の通り。Q1、Q2で同じ回答が多かったため、診療科別にQ1、Q2で分けずに紹介する。

【内科】
開業向け、需要が増える、つぶしがきく。
全ての疾患理解の基本、診断学の中心、医療体制が内科中心。
団塊の世代が高齢となり癌が増える。新しい薬剤がどんどん出てくるので外科系診療科より内科系診療から良い。
高齢者が増えることにより慢性疾患が増え、内科医の需要はますます高まると思う。さらに内科的な先進的な治療法も開発されるだろう。
予防医学の発展により、病態を未然に防ぐ治療が発展しそう。その最前線はやはり内科と考える。

【小児科】
少子高齢化のトレンドの中、数が少ない子供の医療は重要であるから。
公費助成の拡大から受診者数が増える、または減らない。
少子化が進む一方で、親の要望は多様化しており、アレルギーなど患者数が増加している疾患もある。原因不明の疾患が多くあり、研究のし甲斐もある。

【皮膚科】
老人特有の乾燥肌に起因する、様々な難治性の強い掻痒を伴う皮疹が多く、適確な治療があまりなされていないように感じております。
比較的楽な勤務で、しっかりと収入も担保できる。開業コストが安い。美容のニーズが増える。

【精神科】
認知症患者の増加による症例数の格段の増加が予想される。
体力や臓器の衰えは精神的負担になっていく。特に普段病気と無縁の生活ができている 方が、高齢になるにつれて初めて衰えに対し不安を感じ、不眠等の症状につながっていくのではないかと診療をしていて思います。高齢者に適用しやすい、安定剤や眠剤が必要になってくると思います。
うつが増えている。ストレス社会。メンタルダウンは今後も増える。インターネット社会になり、人間関係も希薄な、精神的に問題がある人が増えている。
いずれ精神疾患の原因や病態が解明されると考えるため。
身体科は予算的に厳しくなってくる。

【外科】
再生医療が進むことにより、細胞治療から組織治療へと発展し臓器そのものを置き換える手術が可能になることから、悪いところは大きく切除し、再生した臓器で補完する技術が確立することが予想されるため。
死因として心血管の病気が減って、今後増える患者はがん患者ということと、外科医の減少から。数が減少しているにもかかわらず、需要は高い。

【整形外科】
高齢者が増えることで、転倒、骨粗鬆症による骨折の増加、介護の必要性の増大が懸念される。整形外科医が必要とされる。高齢社会でロコモティブシンドロームが増えるため。

【産婦人科】
少子化対策。不足している。絶滅危惧種。
人手不足は慢性的。妊娠・出産は絶対になくならない。病院にとっては純利益の高い診療科で需要はますます伸びるでしょう。
晩婚化と高齢出産が進み、出産における相談事項やリスクが高まると考えるから。

【眼科】
自由診療領域で伸びる分野がある。
超高齢化社会を迎え、加齢黄斑変性症、白内障、緑内障などの患者さんの増加が予測されること、さらに、食生活の欧米化に伴い、糖尿病患者さんの増加も予測され、それに伴い網膜症の発症例も増加し眼底検査などチェック必要性が高まる。
比較的体力的に楽で手術も有り、知的な科目だから。
スマホなどの視覚機器の利用頻度による障害が次第に増加する。
再生医療の発達により、より効果的な治療が開発されやすい分野であるため。

【耳鼻咽頭科】
粘膜診断が今後進んでくるだろうから。アレルギーが増えるから。高齢化で深刻となる誤嚥に対して、嚥下機能の正確な評価や治療などが必要となるため。

【泌尿器科】
ダビンチやケモが展開してきているから。
高齢化による事象。整形外科と内科は既に飽和していると思われるが、排尿問題に関する科は充足しているとは言えないと考える。
女性が進出する余地が多いと思うから。

【脳神経外科】
高齢化に伴い、脳機能が衰えてくる。しかし、脳神経の再生医療の研究も進んでくるだろう。おそらく神経内科の点滴治療よりも、脳の特定部位に特定物質や細胞を直接入れる治療が発展するだろう。
脳血管障害は日本人の死因の4位になったが、死なないから治す時代になった。

【放射線科】
診断、治療とも増えることはあっても、減らない。
ITの進歩とともに仕事は増加していく。女性の仕事の継続も可能。夜間も恐らく呼び出されることはなくなる。
専門領域が細分化、疾患分類が増えるにつれ、幅広く全身診断ができる画像診断の必要性が増加する。
放射線治療の進歩で疾患によっては外科手術より重要になるから。
訴訟が増え、読影の頻度が増加すると思うから。

【麻酔科】
救急も含めてあらゆる場で活躍が可能で汎用性がある診療科と考えるから。
麻酔が出来なければ、基本的な救急外来ができないと思いますし、手技が多いために、成長が早く実感もある科だと思います。
より簡便で効果的な痛みの緩和治療が重要になる。
今後急性期病院では病院経営のために手術件数を増やす方向に進むと思われる。また、医療事故を起こさないためにも麻酔科医による麻酔・全身管理の重要性はさらに高まると考える。
高齢化に伴い、大腿骨警部骨折などの手術が増加するが、麻酔リスクも高いため自家麻酔ではできなくなってくる。また悪性腫瘍の手術も適応年齢の拡大に伴い、同じことが言える。
報酬がいい、麻酔点数はさがらない。外来やりたければペイン、内科管理したければICU救急医という選択もある。スタッフも少なく、男で麻酔医というだけで出世の道がひらける。
まだまだ不足している。

【病理診断科】
高齢化が進み、癌患者が増えるので検査も増える
以前より重要度は高いと思う。しかし、まだ評価が十分されていないため今までは利益につながらなかった。総合的に今後の伸びしろが大きい。
病理医は圧倒的に不足しており、疾患分野別の専門性も高まっている。

【臨床検査】
新しい画像診断機器が開発されていくため。
検体検査加算料が算定されている。
検査の進歩で、診察の意義が薄れていく。

【救急科】
本格的な高齢化社会到来により、脳心臓血管障害病変の患者は急増する。一方、医療費抑制という観点からは、救急治療の割り切り加減が求められてくる。救急科こそが、医療問題の中心になるのは間違いない。
医療費削減や医師の集約化が進むことで、いわゆる各科の専門医数は削減になる可能性が高い。混合診療の導入の影響を受けにくい。在宅医療の推進の結果、急変して受診された際の対応が必要になる。基本的に現在の状況は救急科にとって追い風ばかりであり、今後重要度が増すことは間違いない。

【形成外科】
病気の医療のみならず、外見にも気を使う患者が増える傾向あり。
3Dプリンターの普及でより自由度の高い形成術が可能になる。
iPS細胞の進歩で。
保険診療は下降なので自由診療ができるのが重要になってくる。
外科手術全体の件数が減るため、医師一人の技術習得の場が減る。一方で患者側も手術創部を目立たない様に望み、乳がんなどは分業で皮膚縫合は形成外科が担当するようになるのでは。
高齢社会になって、褥瘡や足潰瘍が増える。美容をしたい人も増えるので。

【リハビリテーション科】
寝たきり防止のために、需要が増える、国も力を入れる。
超高齢化社会に突入したら、人の機能回復にあたってのサポートやロコモ対策等重要度は増すと思います。
麻痺のある患者数増加の為。健康寿命の維持に重要性が増す。
さまざまな疾患の予後が改善するにつれ後遺症のリハビリを要する人口が増え、専門的な医師によるリハビリの重要性が増すと思われます。
患者数に比べて専門医が圧倒的に少ない。

【総合診療科】
かかりつけ医の重要性が増す。
細分化されすぎて、全体が見える医師が病院にいない。
都会では交通機関の利用がスムースですが、地方に於いては高齢化に伴い通院の手段が限られます。一医療機関において、種々の訴えに対応できる所が、今後、頼りにされていくと考えます。
高齢者の割合が多くなり、寄り添う医療が必要になってくると思われるから。
厚労省が勧めている。国策によるため。
今後、感染症の専門家の必要性が増えてくると思います。今、感染症を扱っているのは総合診療科なので...。
高齢者医療では濃厚治療より、適度な診断、検査、治療が必要。

【その他】
終末期医療、リウマチ科、老年科、内視鏡化、血液内科、神経内科



https://www.m3.com/news/iryoishin/409461
シリーズ: 始動する“医療事故調”
「“事故調”、一粒で二度おいしい」と指摘
筑波大で意見交換会、医師・弁護士の田邉氏

2016年3月20日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 筑波大学附属病院などが主催した「医療法に基づく医療事故調査制度に関する意見交換会―施行開始から半年を経過して―」が3月19日、同病院で開催された。医師・弁護士の田邉昇氏は、医療安全への現場の医師らの意識が高まるとともに、報告事例については第三者機関である医療事故調査・支援センターが分析・再発防止策の検討を行うため、「医療事故調査制度は、一粒で二度おいしい制度」とユニークな形容で説明した。

 田邉氏は、「医療事故を報告したら、医療事故調査・支援センターが分析・再発防止策の検討を行ってくれる。報告しなくとも、医師が、侵襲的行為は厳選して行い、例えば出血のリスクがあれば十分な輸血の準備をするなど、さまざまな事態を予期するため、対応が後手に回らないようになる。さらに、死亡という最悪シナリオも含めた説明を行うため、患者に覚悟が生まれる」と述べ、「医療事故報告数が少ない」との指摘がある中、報告数が問題なのではなく、現状でも制度の意義はあるとし、将来的の在るべき姿として「なくそう医療事故、なくそう医療事故調査・支援センター」を掲げた。

 医療事故調査制度は、2015年10月からスタート。今年2月までの医療事故調査・支援センターへの報告件数は、計140件(『「医療過誤か否かで、報告の要否判断」との誤解も』を参照)。制度開始前、年間の報告件数は「1300~2000件」と推計されていた。

 田邉氏は「推計は本当に正しかったのか」と問いかけ、それに応える形で講演したのが、長崎県諫早医師会副会長の満岡渉氏。満岡氏は、推計の根拠となった日本病院会アンケートを検討、「そもそも推計は間違っている」と指摘した。同アンケートは、全国の医療機関に対し、事故発生件数を調査したものだが、「医療事故」についての明確な定義がなく実施しており、「医療に起因した、予期しない死亡」と規定されている医療事故調査制度の「医療事故」よりも、幅広いさまざまな事例が推計の根拠になっている可能性を示唆した。

 さらに満岡氏は、厚生労働省の補助事業として実施されていた「モデル事業」(診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業)の100件を独自に分析。「モデル事業」の分析対象は、「診療行為に関連した死亡について、死因究明と再発防止策を中立的な第三者機関で検討するのが適当と考えられる事例」。日病アンケートよりも、「モデル事業」の対象事例は限定されているものの、その中で今回の医療事故調査制度の「医療事故」の定義に該当するのは、100件中、「6~18件」にとどまった。満岡氏は、「1300~2000件」という推計の1~2割程度と考えると、今の報告件数はある程度、妥当だとした。

 田邉氏と満岡氏はともに、「医療安全」と「紛争解決(責任追及、説明責任)」は別問題であり、切り離して考える必要性を強調。従来の医療事故に対する考え方からのパラダイムシフトが起きていることを理解すべきとした。田邉氏は、「Harvard Medical Practice Study」を引用し、「医療過誤訴訟の帰結を10年間、追跡調査した研究では、賠償金の支払いと客観的過誤の有無とは全く相関しなかった」と紹介。満岡氏は、造影剤ウログラフインの誤投与事故を例に挙げ、医師が刑事裁判で有罪になっても事故は繰り返されているとし、紛争解決と責任追及は医療安全につながらないと訴えた(『造影剤の誤投与「初歩的、重い過失」、禁錮1年』を参照)。その上で、「制度の目的は、起きてしまった事故・紛争の解決ではなく、これから起きる事故を防止すること。つまり、事故の被害者・遺族よりも、これから医療を受ける国民のための制度」と説明した。

 意見交換会では、医療事故調査・支援センターの役割を担う、日本医療安全調査機構専務理事の木村壮介氏、茨城県医師会副会長の石渡勇氏も登壇。

 木村氏は、センター運営の5カ月間の相談実績を説明。医療事故として報告するか否かの相談では、事故が起きた時点のみに着目している医療機関があると言い、事故の発生部分のみではなく、臨床経過も含めて全体像を俯瞰して報告するよう求めた。また最近増えているのが、ハイリスク症例に関する相談だという。「高齢者に対して、高難度や高侵襲の治療を行った場合、その治療が事故の原因なのか、もともとの患者の状態が影響しているのかが交錯した相談も多い」(木村氏)。

 報告事例の少ない理由として、木村氏が挙げたのが、制度への理解の不十分さのほか、「医療事故として報告することへの抵抗感」などだ。「報告事例は、過誤の有無は問わないが、報告に抵抗感があることが相談から伝わってくる。また事故の報告・説明を遺族に行っていない事例では、後から『実は……』と言いにくい上、『クレームがなければ調査しなくてもいい』と考えているケースもあり、Claim OrientedからEvent Orientedに脱却していない」(木村氏)。「医療事故に対する考え方の切り替えが必要」と指摘した点では、田邉氏と満岡氏と意見が一致。さらにセンターに提出された報告書は、調査委員会の構成や事故原因の背景に関する記載がないなど、記載内容が不十分なものが少なくなく、センターでの集計・分析に役立つ報告書を期待した。

 日本産婦人科医会の常務理事でもある石渡氏は、茨城県での医療事故調査制度への取り組みと産科医療補償制度について解説。茨城県では、県医師会や関係団体、大学、基幹病院などが参加する「支援団体連絡協議会」を設立し、「支援マニュアル茨城版」も作成、医療機関からの相談窓口は県医師会に一元化、調整役も果たしている。石渡氏は、死産や妊産婦死亡が報告対象になるか否かについても説明、「福島県立大野病院事件」の妊産婦死亡は、「極めてリスクが高い症例(前置胎盤など)で帝王切開が必要な症例」に該当し、事前にそのリスクの説明などをしていれば、報告対象にはならないとの考えを提示。2009年からスタートした産科医療補償制度については、補償事例について作成している「原因分析報告書」で患者側の納得が得られているとし、「訴訟を減らし、再発防止にもつながっている」とその意義を強調した。

 「疑われる事例」、どう解釈すべきか
 医療事故調査制度の開始から間もないこともあり、4人の登壇後のディスカッションで議論になったのが、本制度の「入口」となる医療事故の報告対象だ。法律上、「医療に起因する、または起因すると疑われる死亡・死産で、管理者が予期しなかったもの」が報告対象。

 「疑われる事例は報告するのか」との問いかけに、木村氏は、「疑いも含める、と法律に書いてある」と回答。石渡氏も、「疑われる事例も報告。事例が集まりやすい状況を作るべき」と答え、刑法211条(業務上過失致死罪)の問題がクリアされていない限り、遺族側が不満、不信を持ったら司法に訴えることができるとし、「逆にこの制度を利用する方法もある。遺族の心情を察して対応すべき」と付け加えた。

 木村氏と石渡氏の両氏が「疑われる」の意味を掘り下げなかったのに対し、田邉氏は医学的な意味で解釈すべきと指摘。全身性エリテマトーデス(SLE)などを例に挙げ、臨床上、確定診断が付かなくても「疑い」として治療を進める場合があり、それと同様のレベルで「疑われる事例」を判断すべきとした。「イベントを収集して、分析するのであれば、疑われる事例の考え方も明確にし、科学としての医療安全につなげるべき」(田邉氏)。石渡氏が遺族対応も念頭に報告すべきとした点については、「一つの方法かもしれないが、法律の義務ではなく、クレームベースの“事故調”になる」と指摘した。

 医療の「起因性」と「関連性」、相違は?
 「支援マニュアル茨城版」では、支援団体への「相談票」の記入項目に、「医療と死因との関連が疑われる点」とある。フロアから発言した、いつき会ハートクリニック(東京都葛飾区)院長の佐藤一樹氏は、「医療に起因」と「医療に関連」の意味は異なるとし、「法律の逸脱ではないか。医療起因性を明確にしないと、事故報告の判断において誤解が生じるのではないか」と問題視した。

 木村氏は、「医療においては、複雑なものが重なり合っており、(医療に起因しているか否かは)調べてみないと分からない。関連か起因かは、現場の医療者として考えた場合、そんなに大きな違いはないのではないか」と述べ、石渡氏も、「起因と関連に、それほど大きな違いがあるとは思えない」と回答した。

 これに対し、田邉氏は「法律には、明確に『起因する』と書かれている」と反論。死亡診断書を例に挙げ、「直接死因」と「直接には死因に関係しないが、直接死因に影響を及ぼした傷病名」は明確に記入欄が分かれており、起因と関連は意味が違うとした。死亡診断書は公文書であり、医師であれば、その相違が理解できるはずだとした。

 フロアから発言した、日本医療法人協会常務理事の小田原良治氏も、厚生労働省の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」委員として制度設計に加わった経験を踏まえ、「医療安全と紛争解決を切り離して作った制度」と釘を刺した上で、「起因と関連は異なる。少なくとも50%以上は医療に起因した事例が報告対象であり、完全に起因したとは言えない場合があるため、『疑われる』との言葉が入っている」と説明。

 再発防止策の検討に「医学的評価」は必要か
 満岡氏は、講演の中で、日本医療安全調査機構が、医療事故調査制度開始前まで実施していた「モデル事業」の本質は、「評価」であると問題提起。医療事故について、100点満点で採点し、「合格」「ほぼ合格」「過失(改善・研修)」「重過失(刑事・賠償責任)」「採点対象外」の5段階で評価していたと指摘した。産科医療補償制度でも、重度脳性麻痺の原因分析を行う際に、「医療水準の高低に関する表現例」として、「すぐれている」「適確である」から、「医学的妥当性がない」「劣っている」「誤っている」までの計15段階評価を用いているとした。

 「個人の手技的な問題を、いくら評価しても、他の医師・施設への医療安全・再発防止への寄与は限定的。個人の行為の評価は、事実上の過失認定であり、責任追及に用いられる」と満岡氏は指摘、医療事故調査制度では制度上、「評価」の実施は規定されていないと釘を刺した。

 これを受け、ディスカッションで、司会を務めた筑波大教授・附属病院臨床医療管理部長の本間覚氏は、「再発防止策の検討には、医療行為の評価は必要か」と問いかけた。

 木村氏は、「モデル事業では、確かに評価という言葉を使っていた。しかし、それは医療事故をシステムの問題として検討し、再発防止につなげるという意味での評価」と説明、満岡氏の指摘した「モデル事業」での採点の実施は否定した。

 石渡氏は、「報告書の書きぶりは注意すべき」としたものの、「医療の評価をせずに、再発防止策を提言するのは難しい。産科医療補償制度でも、医学的な評価を実施している」とコメント。産科医療補償制度の「医療水準の高低に関する表現例」については、「大勢の専門医が評価を実施するためには、ある程度の基準が必要であり、統一する意味で実施している」と説明。「後から振り返って妥当性を評価しているのではなく、あくまでその行為が行われた時点で、管理の在り方も含めて評価をしている」と述べ、判断基準は「産婦人科診療ガイドライン」を基に行っているとした。

 この発言を即座に問題視したのは、田邉氏。「行為が行われた時点で判断するのは、まさに法律上の過失判断。医療安全向上のための検討であれば、現在の眼から見て妥当性を検討すべき」と指摘した。満岡氏も、「個人の再発防止が目的なら、その個人に対して指摘をすべき。特定個人の行為を全国に知らせることが、医療安全につながると言うなら、そのエビデンスを示してもらいたい」と求めた。

 石渡氏は、個々の医療行為だけでなく、システムエラーや産科医療の地域の医療特性などについても評価していると説明し、産科医療補償制度によって「産科医療の質が向上してきたのは事実」と反論した。

 「医療事故調査・支援センターには、医療行為の医学的評価を行う、法令上の権限に存在しないのではないか」と、フロアから問いかけたのは、弁護士の井上清成氏。「医学的評価をやろうとした場合、必ず超えなければいけない壁がある。(事故に関係した)医療従事者の同意が必要だが、その根拠があるのか」と質問。

 木村氏は「センターは調査、分析を行うことになっている。その中には評価も含まれる。そうしなければ事故の原因究明、再発防止はできない。そのために当該医療従事者に対しては、ヒアリングを行い、報告書の内容について意見が違う場合には、その意見も記載する」と回答。石渡氏も「個々の事例についても、原因を分析して、評価をしてこそ、医療の安全と医療の質の向上につながる」と答えた。

 井上氏がさらに、「センターが再発防止策を検討するためには評価が必要というのが、センターの見解か。この点は重要な問題」と確認を求めると、木村氏は法律的な解釈として返答にやや窮すると、司会の本間氏は「今日の時点では、いろいろな意見があるということで、お互いに持ち帰って宿題にしていただきたい」と引き取った。本間氏は、「法律には、評価をするという言葉がないのはその通り。評価がなく再発防止ができるのかと考えていたが、書けないこともない。(行為の)良し悪しではなく、『日本の医療をこうすればいい』と素直に書けばいい」と語り、意見交換会を終えた。



  1. 2016/03/22(火) 05:48:02|
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