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3月9日 3.11震災関連

https://www.m3.com/news/iryoishin/406434
シリーズ: 中央社会保険医療協議会
被災地特例措置を延長、18施設が利用
福島県も、新規ではなく「継続利用」が原則

レポート 2016年3月9日 (水)配信成相通子(m3.com編集部)

 中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)が3月9日に開かれ、今月末までの「被災地特例措置」を9月末まで延長することが決まった(資料は厚生労働省のホームページ)。福島県を含めて、現に利用している18の医療機関が原則として対象。

 「被災地特例措置」は、東日本大震災の影響で、建物が被災したり看護師の確保が困難になったりした医療機関などに対する措置で、2016年1月の時点で岩手県4施設、宮城県5施設、福島県9施設の計18施設が利用している。うち17施設が4月以降の継続利用を希望していた。

 これまでは福島県については新規の届出を制限していなかったが、今後は福島県を含めて、現在利用している医療機関について、厚生局に届出の上、利用継続が可能。ただし、「今後、被災者や被災医療機関等の状況に変化があり、必要がある場合には別途対応を検討する」としている。日本医師会常任理事の松本純一氏は、「福島県で避難が解除されて、医療機関が再開したり新規開設したりする場合」も別途対応が必要だと指摘。厚労省は「その都度状況を把握し、中医協で諮るなど、柔軟に対応したい」とした。

 そのほか、9日の中医協総会では、2016年度から試行的導入をする費用対効果評価に関して、中医協議事規則を改正した。費用対効果評価の調査審議が必要な場合、中医協は、医学、歯学、薬学、医療経済学等の有識者で構成する「費用対効果評価専門組織」に意見を聞くことができる。同組織に関して必要な事項は、中医協で諮って定める。

 また、尋常性疥癬の治療等で使われる、「セクキヌマブ(遺伝子組換え)製剤(商品名:コセンティクス皮下注150mgシリンジ、コセンティクス皮下注150mg)」を保険医が投薬できる注射薬に加え、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加することが決まった。



http://www.medwatch.jp/?p=7924
診療報酬の被災地特例、現在利用している特例のみ9月まで継続可能、ただし柔軟な対応も―中医協総会
2016年3月9日|医療・介護行政をウォッチ MediWatch

 東日本大震災に伴う診療報酬上の特例措置(被災地特例)について、今年(2016年)4月以降は「現に利用している特例措置」について、厚生局に届け出た上で、今年(2016年)9月30日まで利用の継続を認める―。こういった方針が、9日に開かれた中央社会保険医療協議会総会で了承されました。

 ただし、今後、避難指示などが解除された地域で診療を再開したり医療機関を新設する場合などについては、個別ケースの状況を勘案して「柔軟に対応していく」考えも厚生労働省保険局医療課の宮嵜雅則課長から説明されました。

看護配置などの特例では、県やナースセンターへの相談も必要

 2011年3月11日に発生した東日本大震災と、それに伴う原発事故により、特に東北3県(福島県、岩手県、宮城県)では多くの被害が出ました。医療機関も例外ではなく、設備や人員に大きなダメージが生じたことから、厚労省は「診療報酬上の特例措置」(被災地特例)を一時的に認めています。

 例えば、看護師確保が極めて困難かつ被災者を多く受け入れなければならないことから、「看護職員などの数や入院患者と看護職員の比率、看護師比率について、1割以上の一時的な変動が生じても、当面、届け出を要しない」としています。また、在院日数が延長しても「震災前の入院基本料算定を認める」という特例もあります。

 これら被災地特例については、震災からの復旧・復興に伴い利用が減少していますが、今年(2016年)1月時点でも18の医療機関(岩手4件、宮城5件、福島9件、他都道府県ではゼロ件)が利用しており、うち17の医療機関は特例の継続を希望しています。特に福島県の医療機関からは、「原発事故後、看護師確保が極めて困難である」との訴えがあります。

被災地特例の状況(1)、現在、18医療機関が特例を利用し、うち17医療機関が継続を希望。「定数超過」や「月平均夜勤時間数」などの特例が利用されている
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被災地特例の状況(2)、利用されている特例としては、「看護配置」や「仮設建物での歯科診療」などがある
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 こうした状況を踏まえて、宮嵜医療課長は次のような対応をとることを9日の中医協総会に提案しました。

(1)現に利用している特例措置について、厚生局に届け出た上で、2016年9月30日まで利用の継続を認める

(2)「月平均夜勤時間数」「看護配置」の特例については、届け出を認めるに当たり、県・県ナースセンター・医療勤務環境改善支援センターなどに相談することを求める

(3)厚生局は、特例措置を利用する医療機関を訪問するなど、状況の把握などに丁寧に対応する

(4)今後、被災地や被災医療機関の状況に変化があり、必要がある場合には別途対応を検討する

 (1)の継続利用について、これまでは「福島県では、必要があれば新規の特例措置利用も認める」こととされていましたが、今後は原則として新規利用は認められなくなります。ただし、今後、除染が進んで避難指示が解除され、被災地で診療を再開したり、新規に医療機関を開設する場合に、看護師確保などが難しいケースもあります。この場合には(4)にあるように、別途対応を検討することになります。宮嵜医療課長は「個別ケースの状況を把握して柔軟に対応する」考えを明確にしています。

 また(2)の「県ナースセンターなどへの相談」は、医療機関の体制を通常に戻すことが主眼で、「事前に相談した上でなければ届け出も認めない」といった厳格な手続きを求めるものではありません。厚労省保険局医療課の担当者は「特例措置を利用している医療機関は限られており、厚生局も状況を把握している。厳格な手続きを定めるものではない」と説明しており、地域が連携して、震災前のような通常の診療体制を取り戻してほしいという厚労省の期待の表れと言えるでしょう。

 なお、特例措置に関する「被災の影響で施設基準などを満たせなくなった場合の利用が原則」「被災の影響によるものでない場合や、特例措置を利用せずとも施設基準を満たせる場合には届け出は認められない」といった原則は、これまで通りです。

 9月以降の取り扱いについては、今夏に中医協で改めて検討されます。





https://www.m3.com/news/iryoishin/406041
シリーズ: 東日本大震災から5年
岩手、福島の3割超が「患者が減った」◆Vol.6
「医療費無料で頻回受診」「外傷リスク高い除染作業者」

医師調査 2016年3月9日 (水)配信高橋直純(m3.com編集部)

Q 震災前と比べて2016年時点の患者数に変化はありますか。

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 震災前と2016年時点を比較した患者数では「変わらない」が42%、「減った」が26%、「増えた」が24%となった。県別に見ると、岩手県では「増えた」が10%にとどまったが、宮城県は31%となった。「減った」も岩手県の31%、福島県の33%に対し、宮城県は18%となり、被災3県の中でも患者数の増減に格差が出ていることが見て取れた。

 減少の理由については、被災、復興による人口移動のほかに、そもそも人口流出、高齢化による自然減の影響という意見が多かった。

■変化の内容について
【岩手県】

・被災地の患者が増えた。

・沿岸の避難した患者が増えた。

【宮城県】
・人口の減少が著明で、改善も見込みもないよう。

・人口流出と高齢化による自然減、震災はそれを加速した。

・震災直後に大幅に増えた(仮設住宅が近所に多く作られたことにより)。2年くらい前から、復興住宅や内陸部、他県への人口流失が多くなり、少しずつ外来人数は減少傾向が続いている。

・震災後は被災者の医療費免除のために患者数が増えた印象があるが、現在は落ち着いた。

・住民の減少が著しい。

・震災とは関係ない構造上の変化と人口の自然減であろう。

・全体的に患者数は減少していると思われます。最近の地域の人口減少との連動も予想されると思われます。

【福島県】
・多分、自然減もあるが、若い世代が県外に出ると患者の親世代も病気、殊に手術などは県外になるものと思う。

・避難民、作業員が増えた。

・医療費が避難されている方が無料なので不必要な受診、救急受診が目に付いた。

・若い人は避難したまま戻らず、高齢者がどんどん孤独死しています。

・県外に避難する人が多いので当然患者数は減る。県外から来る除染関係や建築関係の人々は若く、患者にはならない。なるとしたらむしろ精神的な疾患。

・病院の機能シフトが顕著になってきています。

・活動している病院に一時患者増があったが、ここ2年は元に戻った。

・医療費無料の方もいるので、受診頻度が増えていると感じる。

・医師の辞職などにより、専門的に見られる診療科が減って、その分患者が減った。原発地域からの避難者の受診が今もかなりある。

・復興作業員のルール無視の受診、避難民の無駄な受診・検査の要求など。

・避難者の分が、震災前と比べて増えました。その上、医師数が減少の一途をたどっています。医師一人当たりの患者負担は半端ではありません。福島県の中枢であるべき医大病院が医師派遣の機能を果たすことができず、医師の囲い込みのみに走っているために、地方の病院は息切れ状態です。福島医大が医師の囲い込みを緩和しなければ、まもなく病院ドミノが始まりそうです。

・作業員など住民以外の新患が増えたが、遠方へ避難したり亡くなったりした方もいるので見かけ上は変化ない。

・高齢化の進行+健康問題を多く抱え、外傷のリスクも高い除染作業者の増加。

・人口減少・人口構成の変化のため患者減少して病院収益悪化する中、医療供給体制の貧弱化・人的資源の不足状態が進行する中で、政府の医療費削減政策のため、首を絞められ、呼吸困難状態。

・震災以前は医療圏の人口1400人で1カ月450人、2011年9月時点避難民のみの診療であるが月1400人、現在避難民の移動が大部あり、月1000人前後。

・いまだに地元の人間で自主避難している反面、避難区域からの避難住民の流入、原発作業員の流入により 患者数は震災前と同等だが 患者の質に変化があった。健康管理がされていない患者の飛び込み受診が増加。

・避難でしばらく減ったが、18歳まで医療費が無料となったおかげで患者数はむしろ増えた。



http://www.asahi.com/articles/ASJ387QZXJ38UBQU00F.html
シリーズ:震災5年
震災5年「透析施設を求めて」(2) 病院転々、故郷離れる

石川雅彦2016年3月9日07時00分 朝日新聞

 東日本大震災の発生から10日後、心筋梗塞(こうそく)の発作に襲われた宮城県南三陸町の三浦徳一さん(66)は、搬送先の仙台厚生病院(仙台市)で緊急の心臓手術を受けた。そこで思いがけず指摘された。「腎臓もかなり弱ってます」

 転院先の仙台社会保険病院(現・JCHO仙台病院)で、医師から詳細な説明を受けた。「腎不全が起きています。仮設住宅での不規則な生活やストレスがなければ、時間をかけて食事療法で治療することもできるのですが……もし、家族から腎臓がもらえるようなら、移植を勧めます」

 だが、徳一さんは「地震でみんなが生きるのに必死で苦労しているときに移植なんて考えられない」と思い、移植は受けないと決めた。残る選択肢は人工透析だ。

 準備として腕に、血液を円滑に体外循環させるための「シャント」と呼ばれる血管にバイパスを作る手術を受けた。心臓手術の直後ということもあり、入院しながら透析治療を受ける日々が始まった。だが、被災地では地震で透析施設が崩壊、透析に必要な清潔な水の確保も難しく、施設がどこも絶対的に不足していた。

 病院をさらに一度転院したが、症状が安定してくると転院を求められた。これから先、どこで透析を受けたらいいのか――。途方に暮れていたときに千葉市内に住む長男(37)が病院を手配してくれた。千葉市内にある千葉社会保険病院(現・JCHO千葉病院)だった。生まれ育った南三陸町から離れたくはないが、「震災を生き延びた命、大事にしないと」と思い直し、千葉へ向かった。

 千葉でも入院しながら透析治療を受けた。妻の栄子さん(65)は、長男の住む市内のアパートに寝泊まりしながら病院に通い、徳一さんの身の回りの世話をした。しかし、話し相手もいない慣れない都会生活は、栄子さんにとっては精神的にもつらいものだった。

 「地震で不自由な生活で、また地震が来るかもしれないけども、やっぱり海と山があるふるさとに帰りたい」。栄子さんの言葉を聴いた徳一さんも、もちろん、同じ気持ちだった。

 「苦労するとしても、故郷の南三陸町に戻って治療を受けよう」



http://mainichi.jp/articles/20160309/ddl/k04/040/078000c
東日本大震災5年
3県被災地の市町村職員 精神疾患で休職1.6倍 復興、原発事故対応で負担増 /宮城

毎日新聞2016年3月9日 地方版

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被災した岩手、宮城、福島3県の39市町村で、うつ病などの精神疾患を理由に休職した職員は2015年度に147人と、震災が起きた10年度の1・6倍に増加したことが各自治体への取材で分かった。背景には本格化する復興事業の負担増や原発事故対応のストレスがあるとみられ、慢性的な人手不足も追い打ちをかけた。被災者支援を担うはずの職員が疲弊し「復興の妨げになる」との懸念も出ている。

 地方公務員安全衛生推進協会(東京)の全国調査によると、職員10万人当たりの精神・行動障害による長期病休者は09年度に比べ、5年後の14年度は1・1倍に増加。単純比較はできないが、被災自治体での増加の程度が際立つ。健康相談など自治体ごとの対策に加え、応援職員の拡充といった支援強化も求められそうだ。

 共同通信が2月、津波被害に遭ったり原発事故の避難区域となったりした42市町村に取材した。15年度の数値は各市町村の最新値で、津波で10年度の資料を流失した岩手県大槌町と女川町、南三陸町の3町は集計から外した。

 39市町村の15年度の休職者数は216人で、うち147人が精神疾患だった。10年度は171人中88人。精神疾患による休職者数は震災直後の11年度に112人に増え、12〜14年度は120人台で推移していた。

 市町村別に見ると、山元町など21市町村で増加。精神疾患の原因を把握していない自治体も多いが、原発事故や震災からの避難や負担増を直接の理由に挙げた自治体もあった。

 大槌町など3町を含む42市町村のうち40市町村では、震災関連の激務に対応したカウンセリングの機会を設けるなど対策を実施。医療機関との連携や、職員向けの健康アンケートを実施している例もあった。

 被災3県では他自治体などからの応援職員を受け入れているが、恒常的に必要数が確保できず、職員の負担は重い。

 石巻市の岡道夫人事課長は「震災の混乱の中で神経を削って働いていた職員が、時間がたって緊張の糸が切れたかのように休んだことがあった。復興業務に携わる職員の残業は、依然多い状況だ」と話した。

 ■ことば
被災地の自治体職員
 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県では、高台移転や宅地造成など本格化する復興事業に正規職員だけでは足りず、他自治体などから応援職員を受け入れている。2月1日時点で2473人に上るが、想定よりも279人少なく、慢性的に人手不足の状態。特に技術系職場では半数以上が応援組であることも珍しくない。2014年の自治労調査では、被災地で働く組合員の約4割が、震災前に比べ残業など時間外労働が増えたと回答している。



http://biz-journal.jp/2016/03/post_14165.html
連載  上昌広「絶望の医療 希望の医療」
巨額税金投入の福島医大、被災地からの医師派遣要請に応じず…見返りに寄付金受領

文=上昌広/東京大学医科学研究所特任教授
2016.03.10  Business Journal

 昨年12月、本連載で福島県立医科大学の医師派遣が利権化していることを紹介して以降、同大学関係者からいくつかの情報をいただいた。「このままでは福島の医療は崩壊する」という問題意識を持っている方が少なくないようだ。彼らが危惧するのは、同大学のガバナンス。具体的には、「理事長が暴走している」ことだ。

 福島医大の理事長は菊地臣一氏だ。1971年に同大学を卒業した整形外科医で、2008年より理事長を務めている。11年3月に退任予定だったが、東日本大震災で任期延長された。菊地氏は、医局に君臨する古いタイプの教授のようだ。少し長くなるが、以前から菊地理事長の資質を問題視していた小松秀樹医師の文章を引用しよう。

「数年前、福島県立医大整形外科医局の忘年会旅行の余興の問題映像が外部に流出して大騒ぎになった。この事件当時の整形外科教授が現在の菊地臣一学長だった。破廉恥な余興を若い医師に強いる背景には、絶対服従の人事権があったと想像する」

 さらに小松氏は、菊地氏のコラム『学長からの手紙 医師としてのマナー』を引用する。以下は、菊地氏が公に述べた見解だ。

「先日の医局旅行で、出欠表になかなか記載をしないスタッフ達がいました。私はこの時、彼等に苦言を呈しました。医局旅行は、医局の行事として恒例のものです。やる以上は、その目的の達成にスタッフは努力すべきです。スタッフが努力せずに、誰に旅行の成否を賭けるのでしょうか」

 小松氏はこの文章に対し次のように述べている。

「達成すべき医局旅行の目的とは何なのか。複数の知人と、学長が学内に訴えかける文章として、合理的解釈が可能か考えてみたが、不可能だった。文面からは、医局旅行を嫌がる医局員、それでもやれと命ずる上司という構図が透けて見える。非合理を押し付ける蛮性が大学の統治に関連するとすれば問題が大きい」

 かつては菊地氏のような教授は珍しくなかった。人事権を盾に医局を支配し、部下である医局員に無理難題を押しつけた。ただ、時代は変わった。いまや、このようなタイプの教授はほとんど見当たらない。菊地氏は例外だ。

福島県民にしわ寄せ

 このような人物が理事長になると、大学は混乱する。近代的な組織運営ができないからだ。最終的に福島県民にしわ寄せがいく。

 たとえば、いわき市の整形外科医療だ。2015年12月4日付けの本連載記事で、東北大学がいわき市の福島労災病院から整形外科医を撤退させたのを契機に、いわき市から年間6000万円の寄附と引き替えに、磐城共立病院に3名の整形外科医を派遣したことを紹介した。残業代などは病院持ちであるため、福島医大には、人件費を差し引いて年間3000万円以上の「自由に使える金」が入ることになる。

 現在、福島医大には膨大な税金が投入されている。「行政サービス実施コスト計算書」によれば、14年度に福島医大の運営のために国民が負担した金額は約160億円だ。医学部を有する総合大学である横浜市大(約177億)と遜色ない。福島医大の総資産は724億円で、横浜市大(567億円)を上回る。ところが、総資産回転率は0.381で、自治体病院の平均値0.836(08年度)を大幅に下回る。税理士の上田和朗氏は「資産が大きいのに、それをうまくくいかしきれていない」という。

 このような事情を知ると、福島医大への見方も変わってくる。同大学にはすでにあり余るほどの金があり、設立の趣旨を考えれば、自治体から寄付金を取らずとも整形外科医を派遣すべきだ。

 浜通りこそ、東日本大震災で直接的に被害を受けた地域であり、その復興が最優先されるべきだ。もし派遣可能な医師がいれば、長年にわたり地域の整形外科医療を支えてきた福島労災病院と、磐城共立病院の両方にスタッフを出せばいい。

 幸い、福島医大には大勢の整形外科医がいる。整形外科とは無関係な医療人育成・支援センター、地域連携部、動物実験施設長などの教授には整形外科医局員が名を連ねている。いずれも「菊地氏が引き上げた」(同大学関係者)。彼らが赴任すればいいだろう。福島医大OBで東北地方の民間病院で働く医師は、「東日本大震災以降、福島医大は教授の肩書きを濫発し、収拾がつかなくなっている」という。さらに「教授人事がフェアでない」と感じている人が多い」と付け加える。

 福島医大の最大の使命が「東日本大震災からの福島の復興」であると考えれば、理事長のやり方は問題ではないか。

被災地支援は二の次

 菊地氏に期待されるのは、リーダーシップだ。目標を定め、実現するように全力をつくすことだ。もちろん、結果に対して責任を負わねばならない。菊地氏は12年3月7日、エムスリーという医師専用ネットメディアのインタビューで以下のように発言している。

「(県民健康調査の)基本調査票の回収率を20%から50%に上げる、子供たちについては今後、フォローを続ける。これが我々に求められる役割」
「地元の方々から大学に来ている要望は、100%以上満たしています。しかし、それだけでは問題解決にはならない」

「“医療崩壊”の原因、医師不足にあらず」

 筆者はこの発言を読んで開いた口が塞がらなかった。15年末現在、基本調査票の回収率は27.4%だ。福島県の地元から福島医大に寄せられている医師派遣の要望にはまったく応えられていない。福島労災病院のようなひどいケースもある。福島県の医師不足が深刻で、それが医療崩壊の主因であることは、いまさらいうまでもない。

 菊地氏は現状認識が甘いし、自らが公言した目標を達成できなければ、責任を負うべきだ。ところが、その気はまったくないようだ。リーダーとして相応しくない人材だ。

 筆者は、菊地氏は理事長に適切でないと思う。幸い、菊地氏は来年3月に退職予定だ。東日本大震災後、特例として任期を延長されたが、今回はそうはならないはずだ。

 ところが最近になって、菊地氏の任期延長を求める声が高まっている。教授会では「福島の危機を救えるのは菊地先生しかいない」(前出の福島医大関係者)と言う人までいる。8年にわたる理事長在任中に「独裁者」と化し、誰も反抗できなくなっているからだろう。

 福島医大を仕切るのは理事会と教授会だ。数こそ力である。菊地理事長は子飼いの教授を増やしてきた。筆者には、被災地支援など二の次に見える。果たして、こんなことでいいのだろうか。このままでは福島の医療は崩壊し、医療難民であふれかえることになる。

(文=上昌広/東京大学医科学研究所特任教授)


  1. 2016/03/10(木) 05:52:52|
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