Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

2月28日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/399567
シリーズ: 若手・中堅座談会:「2035年の医療を語る」
インセンティブが重要?「医師にも成果報酬を」◆Vol.7
「真のブレークスルーは起こらない」の声も

スペシャル企画 2016年2月28日 (日)配信聞き手:橋本佳子(m3.com編集長)、まとめ:成相通子(m3.com編集部)

司会の渋谷健司氏が達成感について尋ねた。

渋谷 今までの話では、先進医療は医療の進歩に必要だが、革新的なものに関われる医師は一部の人だけで、コモディティ化していく人もいる。今ある適正な医療技術で回していけば、それがアウトカムにも良いという意見が出た。それは正しいと思う。

ただ、医療はある程度、革新的なものに取り組み、進化させていくことが絶対必要。そのバランスが重要。そういう場合に、皆はどちらにいたいか。大学にいたいのか、一般病院にいたいのか。それは偉くなりたいとか、欲望の話ではない。自分の達成感、人がやっていないことにチャレンジしようというのが達成感になると思う。どう考えるか。

杉原 僕は教科書に載るような仕事がしたい。そういう夢がある。その意味では最先端の開発の方にいたい。

渋谷 でも、一般病院の泌尿器科部長でも良いと言っていたが。

杉原 大学で一旗揚げて、部長になりたいですね。面倒な仕事を押し付けられる前に……。

渋谷 調子良いですね(笑)。公平先生は?

公平 ジェネラリストとスペシャリストだったら、やはりスペシャリスト。あと、クオリティも保つためには、ある程度大きい施設にいないといけない。それで自分の安心感と達成感が得られる。

渋谷 お二人は、自分で開業したいとは思わない?

杉原 ないですね。

公平 ないですね。40歳ぐらいまでで、何となく方向性が見えてくるんだと思う。

杉原 私は、医療の進歩について、「もう真のブレークスルーはないのでは」と思っています。抗生剤、麻酔、予防接種、CTといったレベルのブレークスルーとなる発明は出尽くしてしまい、今後は高額だが効果は限定的な治療しか生まれない。再生医療も遺伝子治療もロボット手術も、発達すればするほど高額すぎて皆保険制度にはなじみません。

 頂上をぐっと持ち上げるような医療の進歩は限界に来ています。底を上げるのではなくて、中央値を上げるような方向に移るべきだと感じています。一発で皆のOS(全生存期間)が改善する治療はもう無いと思います。

渋谷 技術進歩が価格破壊を起こせば別ですが。それに、今までと違って、単体のどこかのパーツが壊れるというよりも、(高齢者の病気の多くは)生活習慣や加齢のプロセスだから、ますますそういうことになりますね。医療自体がより生活に近いところになる。

 では、達成感について。診療報酬は(誰がやっても)値段が同じです。成果による報酬があるとやる気になりますか?

公平 例えば、専門医を取得して、部長になったり、重症例を診たりとか、そういうインセンティブが確実に付いていないと。今の状況では5年目、10年目、15年目であっても、報酬は変わらない。インセンティブがほとんどない状況です。大学ではアルバイトに行かないと収入が減る、大学に残ることがデメリットにならないようすべきです。成果主義というか、取得した専門医資格試験などが必ず給料に反映されるように。

伊藤 外科医は自分の腕がいいと言うのが、一番のモチベーションだと思います。それを評価して認定してくれる、専門医、認定医があるといい。

杉原 専門医は専門に集中させてほしいです。特に日本のドクターは雑用が多い。医師免許がないとできないことに特化してやらせてほしい。

吉野 外科医は忙しいことが多いですが、他の暇そうで、いつも医局でお茶飲んでいる先生と給料が同じというのは、「どうかと思うよね」という話はあります。

公平 眼科や耳鼻科など、診療科の保険点数の差によっても、大きく違う。そのことが病院の中でも、やる気をだいぶ変えていると思う。ベースの給料は一緒でも、外来患者数など、何か給料に反映させるものが必要です。

吉野 忙しいことと儲かることは、また別の話ですよね。すごく働いていてとても大変な科なのに、病院経営で見ると良くない、となってしまうこともある。

渋谷 忙しさとは別に、何を見てほしいですか。仕事の割に給料が悪いなら辞めて他に移ればいい。でも、 本当に患者のためになっていて、結果が出ているならきちんと評価されるべきですよね。

吉野 外科では、「患者が元気になってくれればありがたい、それがやりがい」と言ってやっている人だけが残っている。若い先生は「自分の生活を大事にしたい、そんなコスパ(コストパフォーマンス)の悪い科は嫌だ」となって、外科医はどんどん減っていると思う。

森田 値段は自由化しないといけないと思う。今は診療報酬で、在宅医療に誘導したりしているが、それをやったために“悪徳業者”が出てきた。利益誘導しているのだから、利益を取ろうとする人が出るのは当然です。それならば、利益誘導しなければいいと思う。需要があるのなら、価格を自由にすれば、ある程度お金を払う人は絶対に出てくる。経営がそれで成り立つ。

渋谷 確かに一律の診療報酬と価値がマッチしていないのは問題 。でも全てが市場原理のみでは、医療は成り立たない。そういうコンセンサスはある。

岡崎 渋谷先生の生きがいは何ですか?

渋谷 僕は、生まれたからには世の中の役に立ちたい、と思う。そして、いつも、自分がわくわくすることをやっていたい。志を共にできる人との出会いが全てで、「この人と一緒に仕事がしたいな」「楽しいな」と思う。そこで自分の力が発揮できたら最高です。

渋谷 岡崎先生は?

岡崎 自分は自分の手で患者に診断をつけて、治療していければ...実家の父も医師ですが、実家には帰ってくるなと言われています。地元で医師をするなら、地元の大学卒でないと厳しいようです。自分が東京大学で勉強できたのは、家族の助けがあり、とても恵まれていると思います。社会に対して還元しないといけない。そう考えています。

将来的なことについては、進みたい科すら決まっておらず、具体的な将来が思い描きにくいのが正直なところです。最終的には、日本の医療・患者さんに最大限貢献したいので、幅広く世の中や医療のことを知らなければならないのは間違いないと思います。

【参加者プロフィール】(※所属は2015年11月末現在)
【司会】渋谷健司氏 東京大学大学院教授
公平順子氏(静岡市立静岡病院所属、2000年卒)、吉野美幸氏(新座志木中央病院、国境なき医師団に所属、2004年卒)、杉原亨氏(東京医科大学病院所属、2005年卒)、伊藤丈二氏(東京ベイ浦安市川医療センター所属、2006年卒)、森田知宏氏(相馬中央病院所属、2012年卒)、岡崎幸治氏(日本海総合病院所属、2015年卒)。



https://www.m3.com/news/general/403396
(フォーラム)最期の医療:2 何を望むか
2016年2月28日 (日)配信 朝日新聞

 人生の最終段階で医療を受ける場合、「苦痛の緩和」と「延命」のどちらを優先するか、患者や家族が悩む場面があります。患者が直面する苦痛に、どう向き合えばいいのでしょうか。東京都内のクリニックで長年、主に末期がん患者の在宅ホスピスケアに取り組んできた医師の川越厚(こう)さん(68)に聞きました。

 ■独居の在宅ケア、地域力で支える 在宅ホスピスケアに取り組む医師・川越厚さん

 がん患者の場合、8割以上の方が「痛み」と「呼吸のしづらさ」で苦しむと言われています。苦しみ方は、「歯が痛い」なんてものではありません。だから、モルヒネなどの麻薬を用いて苦しみをしっかり緩和する医療が最後まで絶対に必要です。緩和をきちんと行えば、がん患者でも家で普通に過ごせます。がん以外の病気では、緩和すべき症状があまりないので、介護支援が重要となります。

 最後まで自宅で過ごすためには、看護師を含めた緩和医療の専門チームが24時間きちんと対応するシステムが不可欠です。残念ながら、このようなチームは全国で見ればまだ十分とは言い難いです。

 一方、頼れる家族がなく、独居で末期がんとなる人は近年増えています。私のところでも、独居患者の割合は最近2割を超えています。また、高齢の夫婦2人暮らしは独居予備群です。家族の介護力を期待できない中で在宅ケアをどう推し進めるかが、深刻な問題となっています。

 一人暮らしの場合、医療保険と介護保険だけでは、どうしても支援の隙間ができてしまいます。国や自治体にできることは限られているのです。経済力がある人は自費でその隙間を埋められますが、多くの方はその余裕がありません。この問題はこれからの大きな課題です。

 私が考えている一つの答えは、「地域力」をうまく引き出すこと。我々のところではボランティアがいますが、独居の場合にはそれ以外に配食サービスの人など、日頃、患者さんの所へ顔を出す人たちにも協力してもらいます。持てる地域力をどういかしていくかを考えることは現実的な解決法です。地域力をうまく動員すれば、独居の方の在宅死も不可能ではありません。私の今までの経験から手ごたえを感じています。

 人生には「生老病死」の苦しみが必ずあります。「苦」とは思うようにならないこと。それにあらがう生き方もありますが、どこかで向き合わなければなりません。今、現場での患者さんたちの「苦」は深刻です。平均寿命が延びるのはよいのですが、当然来るべき「お迎え」がなかなか来ないことで多くのお年寄りや家族が苦しんでいます。生きるがゆえに苦しむ人がいる現実を直視し、そのために私たちは何ができるかを考えることも大事です。

 医療は今も昔も、人の死や病を否定しようとします。アンチエイジングの試みや再生医療などを頭から否定するものではありませんが、どういう人にそのような医療を適用すべきか、厳しく問われる時代になりました。たしかに命はみんな平等に貴いものです。しかし、やはり90代には90代の命があり、40代には40代の命があります。命に対する哲学、その哲学に基づいた医療が今ほど問われている時はないでしょう。(聞き手・中村靖三郎)

 

 ■緩和か延命か、悩む家族

 第1回のアンケートには、来たるべき「最期」にどう備えるか、不安やとまどいの声が寄せられました。医療の現場をよく知る人たちからの問いかけもあります。

     *

 ●「職業柄、老衰と思われる高齢者にも容赦ない延命治療が普通になされている現場にいます。血圧から呼吸から尿量の確保まで全て機械と投薬で管理され、結局全身浮腫(むく)んで最期を迎えているのです。あまりに痛々しい最期です。しかし、こういった延命治療を家族が望むケースが少なくありません。私たち日本人はもう少し老齢による生理的機能の衰えや、老いに対する根本的な学びをすべきではないでしょうか。私は年をとることが恐ろしく感じます。自分が延命治療を望んでいなくても家族が望めば、家族の意思が優先されますから…」(千葉県・30代女性)

 ●「母は看護師で、医療について理解があるため、『延命治療なんてやらなくていいからね』と言っていますが、果たしてその場になって本当にそんな判断ができるかどうか…」(神奈川県・10代女性)

 ●「延命治療を希望すると、それが逆に本人を苦しめると言って医師が推奨しないことがある。しかし、それが本当にそうである場合と、病床の特性上医師がうまく説明しているだけの場合があると思う。延命治療を望むことが悪いことであるかのような印象を与えられる。少しでも長く生きて欲しいと、家族は望んではいけないのか。早く追い出されるだけの急性期、延命治療出来ない療養病床。看(み)る人がいないのに推し進められる在宅。それ相当のお金がなければ入れない施設。終末期の精神的不安や苦痛を生み出しているのは、日本の制度そのものだ」(神奈川県・30代女性)

 ●「40代で小学生の息子がいます。私自身、延命は望みませんが、息子がママに生きていて欲しいと思うなら、私はどんなに苦しくて一縷(いちる)の望みしかなくても延命治療をして生きる努力をしなければと思います」(愛媛県・40代女性)

 ●「親が人生の最後を迎える際は緩和治療を望む。しかし、恋人となると延命治療を望む」(滋賀県・10代女性)

 ●「母は91歳で、『看取り』を考えるよう施設から促されています。母も私も『延命はしない』という意思を持っていますが、治療をしないで苦痛を十分取り除けるのか、自然に衰弱していく中での苦痛はどんなものなのか、全くわかりません。また、在宅や施設の『看取り』で、どの程度のケアができるのか、ということも具体的にわかりません。やはり具体的に考えることができる材料がほしいと思います」(大阪府・50代女性)

 ●「外科医をしております。日常がん末期の患者さん、ご家族さんと接しております。そこで感じることは緩和ケアへの移行が遅れることで、余計な抗がん剤治療を受ける方、余計ながん疼痛(とうつう)に悩まされる方が多いことです。担当医としてはがん医療の限界を説明しているつもりですがなかなか理解してもらえないのが現状です。国民の2人に1人ががんを罹患(りかん)する時代ですので一般の方への『がん教育』の必要性を感じております。がんになる前から知っておくことが大事だと思います」(群馬県・50代男性)

 ●「息子が2人おりますが、2人ともここに戻ってくることはないでしょう。仕事が有りませんから。最後を看取ってくれる人はいないつもりでいます」(茨城県・40代女性)

 ●「現在一人暮らしを選択しています。独りで死んでいきます、ということを意味しています。死期が近づいている場合どこで息が切れるのか予測されません。本当は独りで死ぬことはとても怖いのですが、仕方ないことと覚悟をするつもりです」(神奈川県・60代女性)

 ●「看取ってくれる人として連れ合いを想定していますが、先のことは分かりません。独身の子どもにも期待できないので、誰かにお世話になるかと思いますが、さて公か身近の他人か悩ましいところであります」(香川県・70歳以上男性)

 ■男女に微妙な差

 今回のアンケートには、中高年以上の方々が多く回答してくれました。女性の回答数が男性を上回り、多くの女性が実際に夫、親をみとった体験を書き込んでくれました。

 人生の最終段階について心配なことを尋ねた質問で、回答には男女で微妙な違いがありました=グラフ。年代別にみると、女性の60代以上、男性の70歳以上で「病気での体の痛み」を挙げる人が多くなりました。

 アンケートについて、年代を答える欄が「70歳以上」をひとくくりにしているのは、最期の医療というテーマから、そして高齢化社会の実情からも乱暴ではないかとの指摘がメールで寄せられました。いま実施中の第2回アンケートでは、70代、80代、90歳以上と、より細かく年代を尋ねるようにしました。



https://www.m3.com/news/general/403273
遺体の解剖率微増 都道府県別、大きな差 昨年
2016年2月28日 (日)配信 朝日新聞

 犯罪性がないか調べるため警察が昨年取り扱った遺体のうち、解剖した割合(解剖率)は12・4%で、前年の11・7%から微増にとどまった。解剖率は都道府県警によって大きな差があった。新たな解剖制度も3年前から始まったが、その実施状況もばらつきがある。

 警察庁が25日発表した。警察が取り扱った遺体は前年より約2%少ない16万2881体で、このうち2万121体を解剖した。犯罪の疑いが強いとして司法解剖したのが8424体(前年比260体減)▽死因・身元調査法に基づく署長の判断による解剖(新法解剖)が2395体(同474体増)▽監察医などによる解剖が9302体(同515体増)――だった。

 解剖率は都道府県警によって大きな差があり、高かったのは神奈川39・2% ▽兵庫33・4% ▽沖縄30・8%。低かったのは広島1・5% ▽岐阜2・7% ▽大分3・1%。

 犯罪性の有無を判断する検視官が現場に出向いた割合は76・0%で、前年の72・3%から増えた。

 新法は、暴行を受け死亡した大相撲の力士を警察が病死と判断していた問題などをふまえ、2013年4月に施行された。新法解剖は、神奈川558体 ▽兵庫382体 ▽警視庁350体などだったが、大分は0、13県警で1桁だった。警察庁によると、新法解剖で不審点が見つかり司法解剖に切り替えた例が13~15年に7件あったという。(編集委員・吉田伸八)



https://www.m3.com/news/general/403337
治療中断、鳥取県内医療機関40%経験 患者の経済的理由で /鳥取
2016年2月28日 (日)配信 毎日新聞社

 患者の経済的理由が原因の治療中断を経験した医療機関が県内で40%に上ることが県保険医協会(木村秀一朗理事長)のアンケートで分かった。5年前の前回調査の38%と比べやや増加しており、同協会は「患者の受診抑制は症状悪化につながりかねず深刻。患者の窓口負担の軽減が必要」と訴えている。

 全国調査の一環で昨年12月から今年1月にかけ、医科、歯科の県内協会員の約2割に当たる112機関が回答した。

 「この半年間に主に患者の経済的理由と思われる治療中断を経験」と回答した医療機関が40%で、「医療費負担を理由に検査・治療を断られた経験」も46%(前回38%)を占めた。医科では高血圧、糖尿病やコレステロールなど脂質異常が多く、歯科では入れ歯、虫歯、歯周病が目立った。

 具体的な事例では「薬が切れているのに来院しない」「受診回数や薬代を減らしてと言われた」「痛みが取れたら来院しない」「保険の範囲で治療してと言われた」などの回答が目立った。一方で患者負担の未収金が発生した医療機関は50%(前回65%)と改善した。

 国が検討している75歳以上の窓口負担2割(現行1割)への引き上げの影響については「受診抑制につながる」との回答が79%を占めたという。【小松原弘人】



https://community.m3.com/v2/app/messages/news/2494802?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD160228&dcf_doctor=true&mc.l=146245447
医師への退職勧奨「違法」 愛知・碧南市に賠償命令
共同通信社 16/02/24

 碧南市民病院(愛知県碧南市)の歯科口腔(こうくう)外科部長だった男性医師(61)が、パワーハラスメントがあったとの理由で退職を勧奨され、拒んだのに退職に追い込まれたとして、市に約4300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は23日、「自由な意思決定を妨げており違法」として市に約4100万円の支払いを命じた。
 倉田慎也(くらた・しんや)裁判長は判決理由で、病院側は退職勧奨を拒んだ医師が所属する大学医局の教授を通じて退職を求めたと指摘。「退職勧奨は自由意思で拒否できる。事実上の人事権を持つ医局に退職を勧めさせ、自由な決定を妨げた」とした。
 判決によると、2010〜11年、市役所や新聞社に医師がパワハラをしたとの投書が届いた。医師は否定し詳しい調査を求めたが、病院側は調査せず退職を勧めた。医師は12年3月末で退職した。
 碧南市は「判決文が届いておらず、詳細を把握していない」としている。



http://mainichi.jp/articles/20160228/ddl/k42/040/191000c
松浦市
佐賀県の総合病院移転、誘致目指す /長崎

毎日新聞2016年2月28日 地方版 長崎県

 佐賀県伊万里市の伊万里松浦病院が老朽化から移転することになり、隣接する松浦市が誘致を目指している。友広郁洋市長は26日の記者会見で「早く良い報告ができるよう精力的に取り組む」と述べた。庁内に伊万里松浦病院関係検討本部を設置し、県境を超えた誘致の実現を図る。

 伊万里松浦病院は独立行政法人地域医療機能推進機構(東京)の運営で、12診療科と112病床を備えている。機構は採算面から現地改築は困難として当初、伊万里市中心部の伊万里市民病院跡地への移転新築を考えたが、地元医師会の同意を得られなかった。

 機構は松浦市立中央診療所の指定管理者を引き受けている関係から昨年9月、松浦市に移転を打診した。市議会は今年1月、市内の医師不足を考慮して「移転を求める決議」を採択。市は市役所周辺の市有地の無償貸与を機構に提示した。

 県境を超える病院移転には、県医療審議会の承認が必要。松浦市を含めた佐世保県北医療圏の病床数が県の基準より931床上回ることから、市は県に「特例措置の適用」を求めている。機構の照会に、県医療政策課は「特例措置で不可能ではない」と回答した。一方、伊万里市では「病院がなくなると医療の空白地帯が生じる」として市区長会長会が署名活動を展開するなど、巻き返しに躍起となっている。【梅田啓祐】

〔長崎版〕



http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03164_01
【interview】
情報を共有し,周産期医療体制の再構築を
海野 信也氏(北里大学病院長/日本産科婦人科学会医療改革委員会委員長)に聞く

週刊医学界新聞   第3164号 2016年02月29日

 日本産婦人科医会の2015年の調査によると,分娩取扱施設に所属する産婦人科医の1か月当たりの平均当直回数は他科よりも多く,1か月当たりの推定平均在院時間は296時間と,平均値にもかかわらず過労死の認定基準を超える値となっている1)。こうした状況を受け,日本産科婦人科学会は周産期医療体制の再構築,勤務医の勤務環境改善に向けて,「産婦人科医療改革グランドデザイン2015(GD2015)」2)(表)を発表した。本紙では,同学会の医療改革委員会委員長としてGD2015の作成に携わった海野氏に,周産期医療をめぐる現状と課題,GD2015の狙いについて聞いた。

――先生は長年,周産期医療の問題に取り組んでいらっしゃいます。どのような点に問題意識を感じていますか。

海野 周産期医療を取り巻く状況は,日々変化しています。その中でも注目すべきなのは,産婦人科を専攻する女性医師の割合が増加している点です。2005年度と2015年度の日本産科婦人科学会員の年齢・性別分布を比較してみると,女性の割合が増えており(図1),新規専攻医の男女比は1:2でほぼ固定されている状況にあります。この状況がさらに進めば, 10年後20年後には周産期医療体制の維持は間違いなく困難になるでしょう。

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図1 日本産科婦人科学会員の年齢・性別分布(参考文献3より)(クリックで拡大)
 女性が仕事を続けていく上で,出産・育児の話は絶対に避けては通れません。その期間は当直・常勤勤務は難しくなりますし,現在のような厳しい勤務環境では出産後に復帰できず,そのまま現場を離れてしまう可能性も危惧されます。実際そうした事態は,以前から起きていました。もちろん産婦人科を専攻してくれる女性医師は,産婦人科の厳しい状況もよく理解していて非常に熱心に働いてくださる方ばかりです。しかし,このままでは現場を担いきれなくなるのでは,という懸念の声が上がるようになり,本格的に議論を始めたのが10年ほど前のことです。

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表 「産婦人科医療改革グランドデザイン2015」基本的方向性(参考文献2より抜粋)(クリックで拡大)

医療水準の維持・向上のために産婦人科医の確保が急務

海野 周産期救急の現場は主に30-40歳代の産婦人科医によって担われています。その年代で多数を占める女性医師は,ちょうど出産や育児といったライフイベントを迎える時期で,現場を離れる方も少なくありません。大量養成が可能であれば,それでも問題にはならないかもしれない。ですが,産婦人科の新規専攻医数は年々減少している上に,専門医の養成には時間を要します。ですから,新規専攻医を一定数確保し養成することと,全ての産婦人科医が継続的に就労可能な環境を整えることで現状を打破したいと考えています。

――具体的にはどのくらいの産婦人科医が必要でしょうか。

海野 学会では,安定した周産期医療体制の確保・維持に必要な新規産婦人科専攻医数として,年間500人という数値目標を掲げています。また,周産期母子医療センター等の基幹的施設については,無理なく当直体制を組める体制の整備を進めているところです。

 ところが,この数値は達成できていません。地域によっては産婦人科医の減少さえ認められている。医師の数が減れば,医療水準の低下が懸念されるようになります。産科の場合,医療水準の低下がまず現れるのは妊産婦死亡率です。実際,日本よりも産婦人科医数の減少が深刻な韓国では,妊産婦死亡の増加が問題となっています。

――日本は妊産婦死亡率が低く,国際的にもかなり高い医療水準にあると聞きました。

海野 年間の分娩約100万件のうち,妊産婦死亡は40-50件ほどで,2万件に1件程度の割合です。現在は妊産婦死亡をさらに減らせるよう,発生した妊産婦死亡を全例登録制とし,原因分析をした上で,その結果を全産婦人科施設に配付しています。日本は今日に至るまで妊産婦死亡率を下げることに成功しているので,事態はそこまで悪化していないとも言えるかもしれません。しかしながら,今の周産期医療体制はいつ破綻しても不思議ではない。今後もこの水準を維持し,さらに向上させていくためにも,適切な医療提供体制を再構築することが不可欠なのです。

――そのためにまず必要なのが,人材の確保というわけですか。

海野 はい。残念なことに,学会員の新規登録数は2010年度をピークに減少を続けています(図2)。2004-05年の新規入会者数の減少は,現行の医師臨床研修制度への変更で卒後2年間の初期臨床研修が義務化されたためです。一方,2010年度以降の減少に関しては,2010年度の医師臨床研修制度の見直しに伴い,産婦人科での研修が必修から選択必修へと変更になったことが一因として考えられます。2015年度の見直しの際,産婦人科の研修を必修に戻すよう厚労省に要望を出しましたが,実現しませんでした。私たちには,次回の見直しが行われる2020年度まで待つ猶予が残されていません。したがって,制度見直し以外の方法でも新規専攻医の確保を図っていくことが求められています。

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図2 日本産科婦人科学会新規入会者(産婦人科医)数の推移(参考文献3より一部改変)
※2015年度は2015年9月30日時点の人数。

基幹病院の“重点化”と,地域の分娩を担う開業医の育成を

――どのような方法が考えられますか。

海野 若手の医師が産婦人科を専攻した場合のキャリアパスを,より明確に示す必要があります。各都道府県で増加している医学部地域枠推薦の学生が,初期研修で産婦人科を経験するよう促すことも有効かもしれません。とはいえ,私たち産婦人科医だけでできることには限界があるということも感じています。

 そこで,学生や研修医をリクルートするためにも,十分な診療規模をもった研修施設を地域ごとに作っていかなくてはならないと考えています。なぜかと言うと,経験の浅い医師はそこで指導者の下,最終的なキャリア形成をしていくからです。産科だけでなく婦人科の診療も扱う施設でなければ,十分な経験を積むことができず,地域で研修が完結しないことになります。そうなると,より研修内容が充実した地域を求め,若い医師は県外に流出してしまう。そもそも,十分な診療規模がないと,必要な人員を確保するだけの投資ができない可能性だってあるのです。

――施設の集約化が人員確保の鍵になる,と。

海野 集約化ではなく,“大規模化・重点化”です。それも基幹的な役割を果たす病院の重点化であって,決して他の病院や診療所をなくすという意味ではありません。

 現在,病院と診療所の分娩取扱の割合はほぼ同程度です。ハイリスクな分娩は基幹病院,ローリスクな分娩は地域の開業医,と役割を分担したほうが産婦人科の医療提供体制はより安定します。

――今後は施設ごとの役割をより明確にしていく必要があるのですね。

海野 その通りです。ただ,ここにも問題があります。第一に,多くの病院や診療所は民間施設として運営されるため,一定数の分娩が確保できる地域でなければ新たな開業が難しいということ。そしてもう一つが,現在の開業医の年齢が比較的高いということです。産科を開業するにはある程度の実力が要求され,病院で多くの経験を積んだ後に開業するのが一般的です。したがって,現在一次分娩施設での分娩は主に40-60歳代の男性医師が担っています。20年後,彼らが全員現役であるということはあり得ません。ですから,開業医として地域の分娩を担っていく次世代の支援と育成も必要になるのです。それと同時に,緊急時に搬送が可能な高次医療施設を適切に配置し,各診療所と密接に連携をとっていくことが求められます。

地域に合った解決策をそれぞれの地域で考える

――昨年公表されたGD2015でも,一次分娩施設から三次分娩施設までの連携強化の重要性が指摘されていました。GD2015がめざす周産期医療体制の在り方とは,どのようなものでしょうか。

海野 基本的な方向性としては,2010年に作成されたGD2010とほとんど変わっていません。ただ,GD2010では目標を達成するための具体的な道筋を示せていなかったこと,各地域の現状を把握する体制が整備されていなかったことから,結果的には十分に機能せず,提案の域を出なかったという反省があります。そのため,GD2015はより具体的な行動指針となり得るものをめざしました。

 また,医療を受ける側の視点に立ち,何が本当に求められているのかという点についてもかなり議論を重ねました。患者さんからすれば,コスト,アクセス,質というのはどれも大切です。ところが,質を担保するためにはある程度の診療規模と人員が必要になるため,そうした施設をたくさんつくることは現実問題として困難なのです。

――当然アクセスは悪くなる。

海野 はい。質の担保とアクセスの利便性,両者のバランスをいかに取るかが非常に重要です。ただ,具体的な解決策は地域によって異なります。ローリスクな分娩は診療所などの一次分娩施設,ハイリスクな分娩は周産期センターや大学病院が担うという方法も一つですし,分娩施設と妊婦健診施設を分離するのも一つの手だと思います。人口稠密な地域であれば大規模施設への一本化でも対応できるかもしれない。産婦人科医や産科施設が十分でない地域であれば,総合診療医や家庭医に協力をお願いするといった方策も検討していく必要があります。実際に浜松医大や亀田総合病院などでは,家庭医にも産婦人科の研修を受けてもらい,地域の周産期医療を共に支えていくための取り組みが始まっています。

 医療資源や人口分布などは地域によって本当にさまざまなので,その地域に合った解決策は,それぞれの地域で考えていかなければならないのです。

――現在策定が進む地域医療構想では,基本的な構想圏域として「二次医療圏」が想定されています。GD2015の「地域」とはどの程度の範囲を想定しているのでしょうか。

海野 産婦人科に限って言えば,二次医療圏レベルでは患者数が少ないため,質の担保ができるような医療提供体制は成立しません。「周産期医療圏」とでも呼ぶべきもう少し大きな医療圏を,地域の実情に合わせて設定していくべきなのです。既に周産期高次医療を担う周産期センターは各都道府県に整備されているので,その配置を考慮した上で周産期医療圏を検討する必要があります。周産期医療は町や市のレベルでは完結できず,地域の枠組みを大きめにとらえる必要があることを患者さんにも理解してもらえるのであれば,安全で安心な地域分娩環境の確保は保証できると考えています。

正確な情報の共有が適切な医療提供体制構築の鍵

――周産期医療に限らず,医療提供体制構築の主体は自治体にあります。

海野 はい。ですから,適切な医療提供体制を各地域で構築していくには,自分の地域のどこに,何が,どのくらい足りていないのかを自治体側にも正しく知ってもらわなければならない。それがわかっていないと,見当違いな議論になりかねません。予算にも限りがある中で,適切なところに予算を回していくには,データとして現状を示すことが必要だと考え,昨年「地域基幹分娩取扱病院重点化プロジェクト」を立ち上げました。

 このプロジェクトは学会が中心となり,各医療機関に分娩状況や常勤の医療従事者数,産婦人科医の構成などに関する調査票に回答してもらい,その集計・分析を行うものです。この調査には,所属する産婦人科医の年齢・性別の構成,夜勤不可の医師や非常勤の医師がどの程度いるのかといった項目も含みます。そうした情報を自治体やその地域の産婦人科医に提供すると同時に,さまざまな提案を自治体に対して行っていく予定です。そして自治体と現場の医療者で協議を行い,地域の実情に即した解決策を地域ごとに検討してもらいたいと考えています。2015年度は,8つの道県で先行調査を行っており,2016年度は全都道府県で実施する予定で調整を進めています。最終的に全ての調査・分析結果が出れば他の地域との比較も可能になり,より検討を進めやすくなるのでは,と期待しています。

――自治体と医療者が情報を共有することが大切なのですね。

海野 “地域で安全・安心なお産を”という願いは,皆が共通して持つ思いです。ただ,これまでは情報の共有がうまくできておらず,皆で同じ方向を向くことができずにいました。立場が違うぶん,同じ情報を共有しても受け止め方は違うかもしれません。ですが,正確な情報を共有し,検討を重ねていくことが何よりも重要なのです。そのため学会では,広く情報共有を行うことを目的に,「周産期医療の広場」4)というウェブサイトでさまざまな情報発信も行っています。

 2016年度には「周産期医療体制整備計画」の策定,2018年度には「医療計画第七次改正」が控えています。それに間に合わないとまた次の改正まで待たなければいけなくなりますから,行政や自治体と密接に連携し,一丸となって周産期医療体制の再構築を進めていきたいと考えています。

(了)

◆参考文献・URL
1)日本産婦人科医会.産婦人科勤務医の待遇改善と女性医師の就労環境に関するアンケート調査報告.2015.
http://www.jaog.or.jp/all/document/94_160113_2.pdf
2)日本産科婦人科学会医療改革委員会.産婦人科医療改革グランドデザイン2015.2015.
http://www.jsog.or.jp/news/pdf/gl2015_20150620.pdf
3)日本産科婦人科学会医療改革委員会.過去10年間のわが国の産婦人科医の年齢・性別分布の変化.2015.
4)日本産科婦人科学会.周産期医療の広場.


うんの・のぶや氏
1982年東大医学部卒後,同大病院産科婦人科学教室入局。都立築地産院,焼津市立総合病院等を経て,94年米国コーネル大獣医学部生理学教室客員助教授。帰国後は東大病院産科婦人科医局長,長野県立こども病院産科部長,長野県総合周産期母子医療センター長等を歴任し,2004年北里大産婦人科主任教授,12年より現職。日本産科婦人科学会特任理事,同学会医療改革委員会委員長,日本周産期・新生児医学会理事長,日本産科麻酔学会会長など役職多数。


  1. 2016/02/29(月) 05:45:34|
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