Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

2月16日 

http://www.asahi.com/articles/ASJ2H4254J2HUHBI00Z.html
米病院がハッキング被害 ハッカー、復旧に4億円超要求
宮地ゆう=サンフランシスコ、須藤龍也
2016年2月15日20時01分 朝日新聞

 米ロサンゼルスの病院でコンピューターシステムがハッキング被害に遭い、患者を別の病院に移送させる騒ぎになっている。ハッカーは復旧に仮想通貨のビットコイン約360万ドル(約4億1千万円)分を要求しているといい、こうした手口の要求額としては過去最大規模の可能性がある。地元テレビ局などが14日までに伝えた。

 報道によると、ハッカーはすでに1週間以上システムを使えなくしており、復旧させる代わりにビットコインを要求。院長は取材に「ER(救命救急室)のシステムが被害を受け、一部の救急患者は別の病院に移送し、医療記録は紙に書いている」と答えた。ロス市警と米連邦捜査局(FBI)が捜査中だという。

 インターネットのセキュリティー会社トレンドマイクロによると、ウイルスがデータを暗号化してコンピューターを動作不能にする「ランサム(身代金)ウェア」と呼ばれる手口では「1度の攻撃で360万ドルの要求はかなりの高額」としており、過去最大規模の可能性がある。日本でも昨春以降、同様の被害が増加しているという。(宮地ゆう=サンフランシスコ、須藤龍也)



http://japanese.engadget.com/2016/02/16/4/
ハリウッドの病院がコンピュータウィルスに"院内感染"。全システムダウンで業務に支障、復旧の"身代金"は約4億円
BY MUNENORI TANIGUCHI 2016年02月16日 14時20分 Engadget 日本語版
 
米ハリウッドにあるHollywood Presbyterian医療センターが、ランサムウェア被害のため院内のコンピューターネットワークが使えなくなり、緊急を要する患者を別の病院へ移送する事態となっています。ハッカー側は医療センターに対し9000btc(ビットコイン9000枚:約360万ドル:約4億円)を要求しているとのこと。

Hollywood Presbyterian 医療センターのシステムダウンの原因は、ランサムウェアと呼ばれるトロイの木馬の一種。感染したコンピューターはHDDを暗号化されたりシステムの操作をロックされてしまい、画面にはロック解除のための"身代金"として金品の支払いを要求する文言が表示されます。
  
この医療センターでは、ランサムウェアの"院内感染"によって、メールはおろか電子カルテからレントゲンやCTマシン、各種検査分析、薬局の処方箋の処理にいたるまで一切の業務が機能不全を起こしました。すでに問題の発現から1週間以上が経過、職員は昔ながらの手作業・電話・ファックスでの運営を復活させて対応に当たってはいるものの、急を要する患者などは他の医療施設へと移送せざるを得ない状況に陥っています。

高額な要求に対して、医療センターはロス市警(LAPD)および FBI に対応を要請しました。ただ、現在捜査が進行中としているもののハッカーが最初から病院を標的としたかどうかも定かではなく、問題のランサムウェアがどのような型なのか、感染経路はどこからかといった詳細についても公表していません。

近年の病院は高度にネットワーク化が進んだ反面、そのセキュリティ意識は全体的に低いと言われています。院内ネットワークでは患者の個人情報から支払い能力、そして患者本人も知らない健康面での情報が大量に存在するため、悪質なハッカーにとっては魅力的な攻撃対象となり得るはずです。

一方、ランサムウェアは最初から感染しないことが大切です。「知らない相手からのメールは開かない」「普段からしっかりとウィルス対策」「こまめにバックアップをとる」といった基本的な予防策がここでも効果を発揮します。もし自分のPCがランサムウェアに感染し、高額な支払い要求メッセージが表示された場合は、言われるがままにお金を支払ってはいけません。お金を払ってもロック解除用のキーがもらえる保証はなく、逆に何度も金品を要求される可能性も考えられます。



http://www.yomiuri.co.jp/local/ibaraki/news/20160215-OYTNT50280.html
県の医師数14年末で5188人
2016年02月16日 読売新聞 茨城

 県の医師数は2014年12月現在で5188人だったことが、15日の県医療審議会で報告された。人口10万人あたりの医師数が全国46位の県は、17年度末までの目標値を5700人としているが、現状では目標には届かない見込みで、早急に対策を検討する。


 県医療対策課によると、医師数は5172人だった12年の前回調査からは微増した。ただ、総数の全国順位は前回と同じ15位で、人口10万人あたりの医師数も177・7人で全国46位のままだった。

 若手医師の研修制度充実や、医師不足地域で一定期間働くことを条件に、返済を免除する医学生向けの修学資金制度もあり20歳代が増加した。一方、30~50歳代の医師数は減少、首都圏の医師数が増えていることから、県外へ流出しているとみられる。

 県は今後、高校生を対象とした病院見学会を開くなどして医学部への進学者の増加を図るほか、中堅層の引き留め策も検討するとしている。



http://dot.asahi.com/wa/2016021200168.html
高収入の開業医1位は「眼科」 進む高齢化が追い風に
(更新 2016/2/16 16:00) 週刊朝日

 佳境に入った大学受験シーズン。医師になることを目指し、医学部を受験する高校生・浪人生も多いはずだ。ただ、医師と一口に言っても、診療科によって仕事内容はさまざま。厚生労働省の最新データなどから、医師の“実情”をひもといてみた。

 厚生労働省は2年ごとに全国の医師らにアンケートを行い、「医師・歯科医師・薬剤師調査」を発表している。昨年12月中旬、その最新データが公表された。

 それによると2014年末現在、医師総数は31万1205人で、前回12年より約8千人増加した。男女の比率はほぼ4対1。5人に1人が女性医師で、その割合は少しずつ増えている。

 診療科ごとの医師数を見てみると、最も多いのは内科で約11万人。2位外科は約4万5千人、3位整形外科は約2万1千人だ。

 内科医はおもに薬で治療をするイメージが強いが、近年は消化器のがんを内視鏡で切除したり、心臓のカテーテル治療をしたりと、仕事は外科的な領域へと広がっている。

 一方、医師数が少ないのは皮膚科や麻酔科で、ともに8千人台だ。放射線科医は約6千人、テレビドラマ「コード・ブルー」などで注目された救急医は約3千人にとどまっている。

 科に占める女性医師の割合が最も高いのは、その皮膚科で46%。同性の皮膚のコンプレックスを解消してあげたい、キレイにしてあげたいと思う女医が多いことが要因に挙げられる。2位は眼科と麻酔科で38%。

 この3診療科は長時間の手術や緊急の呼び出しがほとんどなく、結婚や出産をした後で働きやすいことも、数字を押し上げている。

 続いて収入面。一般的に医師は激務で、責任が重くのしかかるぶん、高給といわれている。発売中のアエラムック「医学部がわかる」では、厚労省が昨年11月に公表した「医療経済実態調査」をもとに、「開業医の平均報酬額」を探ってみた(報酬額は一部経費を含む場合がある)。

 1位は眼科で3273万円、2位は耳鼻咽喉科3005万円、3位は整形外科2942万円となっている。開業するときには多額の資金が必要となるが、患者が集まり、自由診療も積極的におこなっていけば、収入は勤務医時代より跳ね上がるという。

 1位の眼科は急速に進む高齢化で、白内障の手術件数が増加していることが要因に挙げられる。手術患者は年間約100万人。大半の人が日帰りですむため、回転率も上がり、利益が出やすいようだ。井上眼科病院(東京都千代田区)の井上賢治院長は言う。

「今後も白内障の手術件数は増えていくでしょう。数が多いと収入は安定します。眼科の仕事は、すぐに結果が表れるのが特徴。見えるのか、見えないのか。患者さんは医師をシビアに見ている。そのぶん責任は重いし、やりがいもあります」

 2位の耳鼻咽喉科は花粉症で悩む人や、鼻や喉に起因する風邪で同科に行く人が増えていることが大きい。

 3位の整形外科はからだを動かすのに重要な骨や筋肉、神経などの運動器を治療するのがおもな仕事。高齢化とともに、患者数や手術数が増えている。

※週刊朝日  2016年2月19日号より抜粋



http://www.qlifepro.com/news/20160216/key-person-for-the-community-medicine-is-successful-the-key-factor-is.html
日本の「地域医療」が成功するためのキーパーソン、キーファクターは? 全自協 邉見会長に聞く
2016年02月16日 PM01:30  QLifePro

「日本の医療は全治10年」

これは、全国約900の自治体病院を束ねる公益社団法人 全国自治体病院協議会会長 邉見公雄先生が2010年頃のインタビューで繰り返し述べていた言葉だ。以降、総務省による公立病院改革ガイドラインの策定に代表されるように、文字通り「メスを入れ」てきた一方で、消費税3%アップなど、さまざまな問題が医療を揺るがしてきた。そうしたなか、2016年の診療報酬を巡る論議でいよいよ、地域医療が大きな岐路に立とうとしている。ローカルセンターとして、自治体病院は今後どうあるべきか、そして、日本の医療はどこに向かうのか、診療報酬改定の議論が大詰めを迎えていた1月末、邉見先生のもとを訪ねた。

良い医療を提供する病院ほど損をする仕組みに


――「日本の医療は全治10年」から約5年が経過しました。日本の医療は回復に向かっていますか?

ちょっと危ないかもわかりませんね。診療報酬は下がる一方、またその配分も、まだまだ診療所での医療に重きを置かれ、病院は外れています。加えて、消費税の導入が“全治”を遅らせています。病院は患者さんのために良い手術設備や環境を整備しようとすればするほど、消費税がかかっていく。一方、診療所では1人でも多くの患者さんを診ることで報酬が上がっていく。このアンバランスを何とか是正しなければなりません。

評価できるのは、チーム医療の評価、それと麻酔医や放射線科医、病理医などのレセプトに出てこない“縁の下の力持ち”の医師たちが評価され始めたことですね。彼らは医療安全の基本を担う重要な役割でありながら、これまでキチンと評価されてきませんでした。臨床医の的確な診断・手技ができるのも彼らの働きがあってこそ。

医師の向上心と責任感が日本の医療を支えていた

私は常日頃から「我が国の国民皆保険制度は和食よりも先に世界文化遺産にすべき」と主張しています。「いつでも」「誰でも」「どこでも」「何回でも」高いレベルの医療が受けられる。これは世界に誇れることだと思います。ちょっと最後の「何回でも」は微妙なところですが(笑)。

それを支えているのは、勤務医の向上心と責任感です。それが今、危機を迎えています。国民皆保険制度が機能した背景は大きく3つあります。1つ目は財源を形成する経済が右肩上がりで成長を続けたこと。2つ目は日米安保のおかげで軍事費に回すお金を社会保障費に回すことができたこと。3つ目は「心」の問題です。医師を志す者は医療で儲けようとは思わなかった。また、患者も法外な要求はしなかった。「無茶は言わんで、仲良くやりましょう」という良識があった。ところが今、この3つが全て危なくなっていて、勤務医の向上心と責任感は限界に近づいています。

今回の改正で“なんちゃって7対1”があぶり出される

――そうしたなかで、次の診療報酬改定の議論が大詰めを迎えていますが

一番しんどいのは、7対1の急性期病床の削減でしょうね。私はもともと“なんちゃって7対1”が増えることを危惧していて、病院全体ではなく病棟ごとにしなさい、と提案していたのですが、厚労省などが反対して変更されなかった経緯がありました。ところが今になって、「財政がしんどいから削減する」と。これは医薬制度の混乱と消費税非課税導入と併せて、厚労省の“オウンゴール”だと思っています。

加えて、お題目のように唱えられている「地方創生」にも逆行しています。看護師がこれだけいないと点数つかないとか、栄養士がいないと減算するとか、どれだけ地方が人材確保に難儀しているのかが分かっていません。医療と教育が無かったら、その地方は滅びます。どちらかが欠けてもいけません。本当に地方を大切にしたいのなら、地方のことをもっと良く知って、医療が根付きやすい政策にして欲しい。

地域医療が成功するためのキーパーソンとは

――地域医療のあるべき姿とは

地域包括ケアの中心には、やはり地元の医師会が立つべきですね。予防注射などで地域医療の最前線に立っていた実績もありますからね。そして、金もうけ主義でない公共の中核病院と一緒になって進めるべきだと思います。

地域医療が成功するためのキーパーソンは4人。1人目は総合診療医です。お年寄りになると、さまざまな症状が併発します。そうした患者には、専門医ではなく何でもできる「なんでも屋さん」の総合診療医が適任です。2人目は特定行為のできる看護師です。医師が毎回訪問診療していたのでは、お金も時間もかかってしまいます。医師が包括指示を出した範囲で、フレキシブルに行動できる看護師が求められます。そして残りの2人は、在宅医療の中心を成す薬の専門家である薬剤師と、普段の生活の栄養状態を支える栄養士です。

薬剤師はチーム医療のキーパーソンとしての自覚を

なかでも薬剤師は「チーム医療のキーパーソン」です。医師に次いで専門知識があるうえ、患者さんに対して中立的に接することができる立場です。医師はどうしても我が強くなりがちで、看護師はどうしても控えめになりがちですから、その点、薬剤師はちょうど良い(笑)。ただ、これまでの薬剤師は患者よりも薬のことばかり見ていた節があります。

中世の薬剤師は、薬を作る作業にも時間をかけていました。現代はもう既に薬が製品化されていて、調剤もオートメーション化が進んでいるのですから、もっと患者を診てほしいですね。最近では、処方箋に患者の検査値を印字するところが増えてきましたが、それだけでは不十分で、院内で注射された薬の情報なども記載すべきだと思います。東京女子医大でハイリスク薬を院内処方に戻すなど、医薬分業を止めるところが増えてきているのは、そうした、医師と薬剤師のコミュニケーションロスが患者のためにならないとの判断も理由にあると思います。

製薬企業は「医療界の核」になるくらいの自負心を持て

――地域の時代に製薬企業は何をすべきか

まずは、本来の姿に戻って欲しいですね。「得になることをするのではなく、世の為になることをする」が製薬業のあるべき姿です。薬師(くすし)は職業としての医師よりも歴史が古いのですから。医療界の核となるような、自負心をもって取り組んでほしいですね。コンプライアンスも大事ですが、受け身の姿勢ではなく、進んで社会貢献に取り組んで欲しいです。

“恕”(おもいやり)の精神が重要

――これからの医療人に必要な「心」とは

私のいる赤穂市民病院のアイデンティティーでもあるのですが、“恕”(おもいやり)の精神が何より大事です。自分がしてもらいたいことを患者さんに対して行う、という気持ちですね。「収益増加のために、この注射をしておこう」なんて発想はもってのほかです。まずは患者さんをおもいやった“恕”の診療をし、そのような良い医療をした結果として、病院は経営が安定する、そんな医療政策を厚労省には進めてもらいたいですね。


■邉見公雄 先生
医学博士。1968年京都大学医学部卒業。大和高田市立病院、京都逓信病院などを経て、1978年 赤穂市民病院外科医長に着任。1987年~2009年 病院長。現在、全国自治体病院協議会会長のほか、赤穂市民病院名誉院長、厚生労働省社会保障審議会 医療部会委員並びに医療分科会委員、関西広域救急医療連携計画推進委員会 委員などを務める。また、地元赤穂の魅力を伝える赤穂観光大使としての顔も。
(QLifePro編集部)



http://mainichi.jp/articles/20160216/ddl/k41/040/301000c
伊万里松浦病院移転問題
区長会が存続要望看板 「なくなると医療空白地帯に」 /佐賀

毎日新聞2016年2月16日 地方版 佐賀県

 伊万里市の伊万里松浦病院の移転問題で地元の山代町区長会(松永勝美会長)は15日、市区長会長会と連名で「市内存続を要望します」と看板を立てた。長崎県松浦市との県境を越えた誘致合戦は劣勢だが、同会は「世論を盛り上げ、巻き返したい」と懸命だ。

 国道204号の病院入り口や公民館近くなど同町の7カ所に設置した。松永会長は「病院がなくなると医療の空白地帯になる。現在地での建て替えが一番いいが、松浦市は遠いので、せめて市内(市民病院跡地)に残してほしい」と訴えた。

 市区長会長会は25日までをめどに「病院の市内存続」を求める署名運動を展開中。山代を含む市内13町で集めた署名簿は、病院を運営する独立行政法人・地域医療機能推進機構(東京)や伊万里有田地区医師会などに提出するという。【渡部正隆】



http://www.huffingtonpost.jp/kenji-tsuda/clinic_b_9240172.html
日米コンビニクリニック:ナビタスクリニックは働くサラリーマンにとっての福音となるか
津田健司
帝京大学ちば総合医療センター血液・リウマチ内科医師
投稿日: 2016年02月16日 12時01分 JST 更新: 2016年02月16日 12時01分 JST ハフィントンポスト

The New England Journal of Medicineという総合医学雑誌がある。臨床医学界のNatureというと語弊があるが、医師なら誰でも知っている超一流誌だ。2015年の7月に面白い記事がでた。それによると、米国で「リテールクリニック(Retail Clinic)」と言われるコンビニクリニック(Convenient Care Clinic: CCC)が急激に増加しているらしい(N Engl J Med. 2015 Jul 23;373(4):382-8.)

Retailは日本語で「小売店」のことを指す。米国でのリテールクリニック第一号店は、2000年にミネソタ州ミネアポリス・セントポール都市圏にあるCub Foodsというスーパーマーケット内に出来た。リテールクリニックはこのように、食料品店や薬局の中に間借りして診療を行い、大手薬局チェーンのCVS、Walgreens、Targetや大手食料品店チェーンkroger、といった企業が運営母体となっている。

日本でも有名な食料品店、ウォルマートもリテールクリニック事業を始めている。メイヨークリニックという全米トップクラスの有名ブランド病院も、ウォルマートの中にリテールクリニックを設立した。リテールクリニックは2006年には全米で200店舗しかなかったが、2014年には1800店舗を超え、900%という驚異の増加を遂げている。

リテールクリニックの特徴はまず、上記のような特殊な立地が挙げられる。薬局や食料品店などの中にあり、日常生活の中で気軽にアクセスしやすいのだ。さらに、週末や夜遅くまで開いていて、予約不要で医療費も安いという特徴もある。虫垂炎の手術で数百万円もかかるなど、米国の医療費が高いことは悪名高く、医療費が支払えず破産者が出ることも問題になっている。

そんな中、リテールクリニックは、通常の医療機関への受診に比較し低価格で医療を提供しているのだ。例えば2009年の論文では、中耳炎又は咽頭炎、尿路感染症で受診した患者の1エピソードあたりの費用は、内科医オフィスで166ドル、救急では570ドルだったのに対し、リテールクリニックでは110ドルだったことが報告されている(Ann Intern Med. 2009 September 1; 151(5): 321-328.)

この価格差が生じる主な要因は、リテールクリニックの診療主体が医師ではなくナースプラクティショナー(NP)やフィジシャンアシスタント(PA)だからである。医師は複数のリテールクリニックを掛け持ちして、プロトコールを作成するが現場にはいない。NPやPAがプロトコールに従って、検査・診療・処方を行い、時に予防医療(予防接種や健診など)も提供する。

ここまで読んで不安に思った方もおられるかもしれない。「医者じゃなくて大丈夫なのか」、と。その議論は当然米国においても巻き起こった。しかし米国で声高に反対意見を叫んでいたのは患者ではなく、米国医師会や米国家庭医学会、米国小児学会など、リテールクリニックに既得権益を脅かされる団体であった。

「ケアの質が下がるのではないか」、「一回あたりの受診費用は減っても余計な受診を喚起したり、よくならなかった後の二重受診したりで、総費用は増えるのではないか」、「薬局の中にあるからたくさん薬を出すんじゃなかろうか」、「地域の内科医と患者のネットワークを分断するのではないか」などの懸念が指摘された。

これらのうち、ケアの質やコスト、抗生剤処方行動についてはすでに複数の研究がなされており、その懸念は否定されている。しかし、リテールクリニックの受診者と内科医オフィスや救急部門の受診者では、重症度が異なる可能性があることには留意する必要がある。すなわち、受診者自ら判断して、軽症の急性期疾患の際にリテールクリニックを受診している可能性がある。米国のリテールクリニック受診者の解析では、18-44歳の若い女性が多く、受診理由は以下10疾患で90%を占めると報告されている。

すなわち、上気道炎、副鼻腔炎、気管支炎、咽頭炎、予防接種、中耳炎、外耳炎、結膜炎、尿路感染症、スクリーニング採血もしくは血圧測定、である(Health Aff (Millwood). 2008 Sep-Oct;27(5):1272-82.)。 明日までは待てないけれど、救急に行くほど重症でない人が、リテールクリニックを利用しているのだ。

それでは日本の状況はどうだろうか。日本において医療のコンビニ化は否定的な文脈で語られることが多い。コンビニ受診とは、日中から体の不調を自覚しながら、「日中は約束があるから」、「夜の方が空いているから」等の自己都合で、緊急処置が必要ないにもかかわらず、本来重症者の受け入れを対象とする病院の救急外来を休日や夜間に受診する行為だ。コンビニ受診は当直医・救急医を疲弊させ、医療崩壊を加速させる原因として批判を浴び、医療現場では忌み嫌われている。

嫌われる理由の一つは、夜の病院にはコンビニエンスストアと違い日中と同じ人数が待機しているわけではなく、日中と同じ診療体制を維持するのは現実的には困難だからだ。コンビニ受診を抑制するために、自治体や医師会、病院は、ホームページを通じて患者の受診に関する意識変革を促したり、深夜受診や軽症受診に時間外加算を追加するなど金銭的なバリアーを設けたりしている。私も医師として働いていて、このコンビニ受診は非常に大きな問題と感じている。

しかしその一方で、満たされない患者ニーズが存在することも事実だ。現在、夜間の軽症者の受け皿として夜間休日診療所があるが、処方は原則1日で、翌日の日中に再度医療機関を受診することが求められる。しかし、この翌日受診が働くサラリーマンには困難で、最近は非正規雇用が増加し、「1日でも休んだらクビになってしまうから、日中には病院に行けない」、という話も聞いた。

しかし日本でも「コンビニ受診大歓迎」と言っている医師がいる。ナビタスクリニック理事長の久住英二医師だ。彼は「日中働いていて、医療機関に受診できない会社員こそ、医療難民だ」と考え、立川、東中野、川崎の駅ナカに週末や遅い時間も診療するクリニックを2006年から経営している。日米の医療制度の違いから、ナビタスクリニックの診療は医師のみが行い、もちろん国民皆保険の保険診療であることから、米国のような価格弾力性は存在しない。

ナビタスクリニックの最大の特徴は駅ナカに存在することだ。日本の鉄道網の発達は世界有数で、世界の乗降客数ランキングの上位はほとんど日本の駅が占めている。2014年JR東日本駅別乗降客数ランキングで、ナビタスクリニックが位置する駅を見てみると、立川駅は15位16万人/日、川崎駅は10位20万人/日であり、いずれも膨大な人数だ。

さらに2016年春にはナビタスクリニック新宿がオープンする。JR新宿駅は乗降客数75万人/日で池袋、渋谷、東京、横浜などを抑え、JR東日本の中で1999年以降一度も陥落することのない不動の首位だ。新宿駅のJR・私鉄を合わせた乗降客数は364万人を数え、2011年にギネスブックに世界一と認定された。

ナビタスクリニックのもう一つの特徴は、平日は21時まで、土曜日は17時まで、と会社員が終業後に受診しやすい時間まで診療していることだ。患者からみると、アクセスの良い場所に終業後も受診できるクリニックがあることは便利で心強いものだろう。経営面からみると、通常の診療体制を夜間も維持するとクリニックとしてはコストが増加するが、駅ナカの立地では終業後の通勤客が多くいるので、採算の取れる経営が可能になったのではないかと推測する。

実際、受診は若い勤め人の熱・咳・咽頭痛・鼻水など風邪症状が中心である。受診時間帯は仕事終わりの18-19時頃に多い。小児科が併設されているため、子連れの母親も多い。普段大学病院にいるとなかなか気づかないが、ナビタスクリニックで診療すると、世の中にいかに風邪の人が多いのか実感する。「会社の中でみんな風邪です。うつし合っています。」「熱があって辛いのですが、仕事は休めないから、すぐによくなる方法はありませんか。」と言うのは診察室ではよく聞く話だ。

さらに、ナビタスクリニックは予防接種にも力を注いでおり、フルーミスト(鼻からのインフルエンザ予防接種)、旅行医学(仕事や旅行で発展途上国へ行く際の狂犬病や腸チフスなど特殊な予防接種)、ストップ風疹プロジェクト(先天性風疹症候群を防ぐために、妊娠を希望する女性や妊婦の夫等への風疹予防接種普及活動)など、街のワクチン・ステーションとして存在感を増しつつある。働くサラリーマンの予防接種実施率は低く、例えばこんなデータがある。

米国において2007年度、65歳以上のインフルエンザ予防接種率は69%あったが、18-49歳ではわずか17%だった(NCHS, Early Release of Selected Estimates Based on Data from the January-June 2007 National Health Interview Survey (Hyattsville,Md.: NCHS, 10 December 2007).)。

日本でも同様の推計がなされており、高齢者のインフルエンザ予防接種率は58.5%、対して一般成人は28.6%だった(日本公衆衛生雑誌2014;61(7):354-359.)。若年者は確かに基礎疾患が増えてくる高齢者に比べて、予防接種の必然性は下がるだろう。しかし、読者の中にも受験の冬にはインフルエンザの予防接種を受けた者も多いのではないか。

インフルエンザにかかれば本人も辛いし、家族や友人など周囲に感染を拡げたり、会社としても労働力の損失につながる。働く彼ら彼女らの医療機関へのアクセスをよくすることは、少子高齢化社会の活力を高める上でも有用となるだろう。

本年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智先生は、顧みられない熱帯病(neglected tropical disease)オンコセルカ症の治療薬を発見した。Neglected diseaseとは多くの患者がいるにもかかわらず、その大部分が貧困層であるために市場価値が見出されず、治療薬の開発もなされていないような病気をいう。働くサラリーマンもその健康状態を顧みられてこなかった、という点では同じだ。医療機関は病気の多い老人が受診するものであったからだ。

ナビタスクリニックは働くサラリーマンにとっての福音となれるのか?今後のナビタスクリニックの展開に期待したい。なお、私はナビタスクリニックの診療を時折手伝っており、なおかつ個人的にも親しくしていただいているので、利益相反は甚大であることを最後に申し添えておく。

(「2015年2月12日「MRIC by 医療ガバナンス学会」より転載」)



http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/area/donan/1-0235318.html
ドクターヘリ活用浸透 2機体制、道南就航1年 出動率8割超す258件
02/16 16:00 北海道新聞


 【函館】医師と看護師を乗せて飛ぶ救急医療用ヘリコプター「道南ドクターヘリ」が昨年2月、全国初の2機体制で渡島、檜山管内で運航を始めて16日で1年になる。1月末までの出動は約260件と想定を3割ほど下回るが、出動要請をためらわない意識が徐々に救急現場に浸透し、2年目は件数が増える気配だ。ただ特に冬場について、患者を円滑に病院へ運ぶためのヘリと救急車の合流点の確保など、新たな課題も見えてきた。

 関係機関でつくる道南ドクターヘリ運航調整委員会によると、ヘリの出動要請は1月末までで315件あり、うち実際に出動したのは258件。調整委は1日1件程度の出動を想定していたが、その水準には達しなかった。出動率は82%と、道央ドクターヘリの61%(2014年度)、道北ドクターヘリの72%(同)よりも高い。

 自治体別の出動件数は図の通り。北斗市、松前町は30件を超すが、奥尻、せたな、今金各町は10件台前半。函館から遠い離島や北渡島・檜山よりは渡島東部、西部で力を発揮しているようだ。調整委は、人口規模や患者の発生状況の違いなどが要因とみている。

 昨年11月には、厚沢部町で農業機械に右胸をはさまれた男性を救助から38分後に市立函館病院へ運んだ。この事例をはじめ、消防には「当初はどの程度のけがでヘリを呼ぶか迷いがちだったが、結果は軽傷でも必要と感じればすぐに呼ぼうとの意識が根付き始めた」(松前消防署)という。就航2年目は他地域も出動要請が増える傾向にあり、道南でも件数増への対応が課題になる可能性もある。

 一方、出動しなかった「未出動」57件を要因別に見ると「天候不良」が32件と56%を占めた。このほか同一の案件について複数の要請が重なったケースが13件、日没で飛べなかったケースが5件あった。

 函館空港に配備した2機のうち1機が故障すれば別の1機が飛んで安定運航を確保する体制だが、この1年間、そうした例はなかったという。

 現在は道南の14医療機関と札幌医大の医師40人、看護師35人が搭乗の登録をしている。市立函館病院の武山佳洋・救命救急センター長は「他地域のヘリより搭乗登録者は多く、各病院でヘリに対する理解が深まって患者を受け入れてもらいやすかった。市立函館病院への搬送は全件数の約半分と過度な集中はなく、地域で役割分担できた」と話す。(石田礼)

 道南ドクターヘリ 渡島、檜山管内18市町や医療機関でつくる運航調整委員会が事業主体。鹿児島国際航空(鹿児島)が運航を受託し、重篤な患者が搬送される救命救急センターのある市立函館病院を基地病院に、ヘリ2機のうち日常的に1機を稼働させている。運航費の本年度予算は2億8900万円。国と道が年間各約1億円、残りを18市町が負担する。出動要請できるのは原則として消防機関に限られ、一般人には認められていない。



http://www.qlifepro.com/ishin/2016/02/16/the-message-about-the-future-of-home-care/
28年度診療報酬改定:メッセージを読み解く
2016年2月16日 QLifePro

今回の診療報酬改定は、メッセージが明確。
ちょっと複雑すぎるかなと思うところもあるけど、細かい数字の一つひとつに緻密な計算を感じる。

●在宅医療に特化したいなら「在宅」にしっかり取り組むべし。

在宅医療専門という医療機関が認められたのは画期的。地域医療における在宅医療の専門性を位置づける一つのマイルストーンになると思う。
しかし、在宅医療専門を謳うためには、いくつかのハードルがある。

①全患者数に占める在宅患者の割合が95%以上
②年間看取りが20人以上
③要介護3以上+別に定められた状態(医療依存度の高いケース)の患者が50%以上
④居宅患者が30%以上・・・・

逆に在宅患者の割合が95%以上なのに、②以下を満たせないクリニックは「在宅専門もどき」の烙印を押され、診療報酬も2割カットされる。施設診療に特化しているクリニック、緊急対応せずに救急搬送してしまうクリニックなどを狙い撃ちした感がある。
ここが今回の診療報酬改定の最大のポイントではないかと個人的には思う。

●在宅+外来ミックスのススメ。

在宅患者の割合が95%を超えると厳しいハードルが課されるが、逆に在宅患者の割合が95%未満だと、これらのハードルが消失する。
これは、まだ在宅医療に取り組んでいない地域の開業医に対するアドバンテージの提供ではないかと思う。少なくとも施設在宅医療は、在宅医療専門クリニックはやりにくくなる(施設患者の割合が70%を超えるとペナルティ)。逆に、在宅患者の割合が95%未満なら、施設患者の割合にしばりはない。
今後、施設への訪問診療は、近隣の開業医が担当すべき、ということになるかもしれない。
しかし、施設診療における診療報酬上の「うまみ」は少なくなっている。きちんとした連携体制を作ることができない施設は、訪問診療医を確保することが難しくなるかもしれない。

●診療の品質と効率を両立せよ。

施設に入居している患者さんの診療報酬は、その建物に何人の患者さんがいるかで決まる、というのが今回のルール。1人の場合、2~9人の場合、10人以上の場合で3通りの診療報酬が設定されている。
人数が多ければ多いほど、一人あたりの移動時間や交通費などの間接的な所要時間やコストが圧縮されることを反映したものと思われる。
居宅患者の訪問診療を考えると、診療効率という視点からは合理的な設定になっていると思う。
前回の改定では、施設診療の大幅減額を示す一方で、「1日1人診察だったら居宅並みの特別診療収入」という激変緩和措置があったが、これは2年の移行期間を経て今回は完全に廃止。

●月1回の訪問診療でも医学総合管理料を認める。

在宅医療の主たる収入源は医学総合管理料であるが、これは月2回以上の訪問診療が算定要件であった。したがって、比較的安定しているケースにおいても、月2回の診療を行われることが多かったと思うが、今回は月1回の訪問診療でも医学総合管理料の算定が認められた。
僕らのクリニックでも、安定していて月2回の訪問診療は過剰だなあ・・・というケースについては、月1回の訪問診療料のみ算定していたが(もちろん24時間対応込みで)、今後は医学総合管理料もきちんといただけることになった。
管理体制のよい老人ホームに入居されている患者さんたち、あるいは介護力の強いご家族のいる患者さんなどは、月1回でも十分な医学管理ができそう。
診療収入としては、月2回訪問診療に行った場合の半額プラスアルファくらいだが、これで新しい患者さんの受け入れ余力を増やすことができる。

●重症度に応じた診療報酬の設定。

在宅酸素、経管栄養、気管切開、人工呼吸器、末期がん、難病、エイズなどのケースは、それ以外のケースよりも診療に時間がかかったり、衛生材料の手配など、特別な準備が必要になったりする。
このようなケースにおいては、医学総合管理料がこれまでよりもかなり高く設定されている。
同じ診療収入なら軽症患者のほうが楽でいいよね・・という安易な流れがこれで少し変わるか。

●質の高い在宅緩和ケアに取り組め。

高度な緩和ケアが提供できる医師の配置、実際に高度な緩和医療を提供した実績があれば、「在宅緩和ケア充実診療所」として大幅な加算が新たに設定されている。
質の高い在宅緩和ケアの定義については議論があるが、がん患者さんの看取りなど、相応のスキルと経験が必要な領域について、その専門性を評価する方向性としては非常に妥当だと思う。

●多職種連携が進むといいなあ・・・

在宅医療は単独では結果が出せない。また在宅医が増えない中、高齢者や死亡者が増加していく現状においては、一人の在宅医が関われる在宅患者数を増やすことも考えなければならない。
いずれの観点からも、多職種や病院との連携が今後さらに重要になると考える。
在宅患者の将来のQOLを左右するのは予防医学的介入であり、在宅患者の再入院(緊急入院)のリスクを軽減することは在宅医の使命の1つである。訪問リハビリテーションの医療保険適応範囲の拡大は検討すべきと思うし、訪問管理栄養指導、訪問口腔衛生指導の普及を加速させるもうひと工夫があればさらによかった。
それでも、疾病管理において、問題となっているポリファーマシーに対し、薬剤師が薬物治療に一歩踏む込むことが評価されたのはとても大きいと思う。

ーーーーー

「利益ではなく理想を追求する」

これは悠翔会の基本理念の1つ。

・診療依頼は病状を理由に断らない。
・365日×24時間、確実に対応する。
・看取れる地域づくりに取り組む。
・施設診療は多職種連携しやすい集団診療を基本とする。
・安定している患者は月1回の訪問診療でも対応する。

これらの取り組みは、今回の診療報酬の改定とは関係なく、これまで実践してきたこと。もちろんまだまだ取り組みとして不十分なこともたくさんあるけど、診療報酬で評価されているかどうかは、私たちが行動する上での判断基準の1つに過ぎない。

“The needs of the patients come first.”

地域や患者さんから自分たちは何を求められているのか。
誰かに指示されるのではなく、自分たちの頭で考えて行動することが一番大切なこと。

医師としても、経営者としても、目的と手段を混同しないよう常に意識していきたいと思う。


佐々木淳
医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
筑波大学医学専門学群、東京大学大学院博士課程卒業。三井記念病院、医療法人社団 哲仁会 井口病院副院長等を経て、24時間対応の在宅総合診療を提供する医療法人社団 悠翔会を設立。



http://www.sankei.com/life/news/160216/lif1602160039-n1.html
医療事故調制度、第三者機関が初の調査へ
2016.2.16 18:47 産経ニュース

 昨年10月から始まった医療事故調査制度で、事故報告を受ける第三者機関「医療事故調査・支援センター」が初めて、事故調査を行うことになった。センターに指定された日本医療安全調査機構が16日、発表した。

 制度では医療に起因する予期せぬ死亡事故が起きた場合、医療機関はセンターに届け出るとともに院内調査を実施。院内調査とは別に、医療機関と遺族の双方がセンターに調査を依頼することができる。

 機構によると、遺族が今年1月、センターに調査を依頼。センターは今後、調査方法などを検討する。センターには1月末までに115件の医療事故が報告され、このうち15件で院内調査が終了した。



http://www.huffingtonpost.jp/mio-takano/community-medicine_b_9240572.html
地域医療はだれのもの? 福島県双葉郡広野町・高野病院奮戦記
高野己保
高野病院事務長
投稿日: 2016年02月16日 15時21分 JST 更新: 2016年02月16日 15時21分 JST ハフィントンポスト

 前回は、福島県広野町、高野病院における救急や死体検案の増加、除染作業員のモラルハザードなどの新たに起きた医療問題についてお伝えしました。当院は現在、双葉郡で稼働する唯一の病院です。今回は現在直面しているスタッフ不足問題や、私達の地域医療への思いについてお伝えしたいと思います。

現在、当院のスタッフ数は非常勤勤務者を含めて96名です。しかし、この中には以前から委託していた、清掃の人員も入っています。震災直後、委託関係の業者はすべて手をひいていなくなりました。そのため当初は、医療資格職だけではなく、厨房スタッフやお掃除スタッフも確保しなければなりませんでした。現在広野町のコンビニの時給は日中勤務でも1200円。居酒屋さんのパートも1000円以上出さなくては人が集まらない地域において、資格職以外の確保も難しいのです。

常勤医は院長1名になってしまいました。非常勤医師6名が週をつなぐように東京から来てくれていますが、院長も週3~4回の当直、精神科指定医なので、精神科輪番も月に5~6回、レントゲン技師がいないので院長が救急の際にもCT操作なども行っています。

看護職は現在非常勤も含めて41名です。この数だけみると十分だと思われるかもしれませんが、元からの職員が26%、県外からの勤務者が25%、残りが震災後新規採用した方達ですが、年齢的にはほとんど55~69歳に分布しており、長期の勤務が望めません。また県外からの職員が元の地域にお帰りになった場合は、現在の入院患者さんのケアが難しくなります。

またご家庭の事情で夜勤ができない、土日祝日はお休みをというスタッフも多いので、病棟で勤務を組むのがとても大変です。とにかく、人員を確保することが第一であるため、多少の条件には目をつぶらなくてはならないのが現状です。夜勤ができないからダメ、55歳を越えているからダメ、准看護師だからダメ、などなど言っていたらこの地の医療は成り立たないのです。

みなさんは、行政は?と思うかもしれません。しつこいようですが、高野病院は双葉郡でたった一つ残った民間病院です。この「たった一つ」、「民間」という言葉が、今現在においても、これほどまで私達の重荷になるとは思ってもみませんでした。二つ以上の病院の意見なら「みんなの意見」にもなるのでしょうが、一つだけだと、「高野病院の意見」になってしまいました。

私達の話を聞いて、それで助けてしまっては、「公平性の観点からも不都合がある」が行政の考えでした。双葉郡においては、公平性こそが不平等である、と私達は思っています。看護協会などの協会という名のつく組織などには、ことごとく「人がいないのはあなたたちだけではない」と言われました。

私達はずっとこの地で、震災後の地域医療の変遷を見てきました。地域医療の崩壊などと言われていますが、とっくに崩壊しています。だからこそ、今のうちに私達ができる対策を打たなければ、この地の医療は終わってしまうと危惧し、要望や陳情を行いましたが、すべては高野病院の利益のためととる方もいて、公平性の壁に何度もはね返されるのでした。

確かに病院は、職員にお給料を払わなければなりません。安定した医療を提供し続けるために、病院を決して赤字にしてはならないのです。それを金儲けのためと言われるならば、「はい。その通り、金儲けです」と言うしかないのでしょうか。それは、地域医療を守る最後の砦が高野病院だ!という気持ちを失わせるには十分なものです。

そんな日々を過ごし、いつしか行政のいう「地域医療」なんて、守る価値もない、私達は目の前の患者さんとご家族、広野町、双葉郡の人達、この地で医療を必要とする人達のために医療を提供し続けよう。そして私は、それを支えてくれるスタッフのために、どんなことでもしよう。そう思うようになりました。そのためには人の確保。国の制度も県の支援も、待っていられない。そして今も看護職だけではなく、他職種の人材探しの旅が続いています。

もともと当院の職員の勤務年数は長く、地元で若い人を育てながら、定年などで入れ替わるという流れでしたが、今回の事故で、すべて断ち切られ、外に人を探しに行かなくてはならなくなりました。初めての大学にも説明会にお邪魔しましたが、大学によっては、地元企業優先で、他県の病院は抽選というところもあります。うちのような小さいところは、ブースをいただけても、ほとんど人の来ない端っこであったり、別棟であったりと苦戦しています。

病院のT-シャツを着て、のぼりを立てて、路上キャッチのように、呼び込まないと、誰も来ないのです。また若い学生さんは、福島県で原発がどこにあるのかを知らずにいらっしゃるので、病院を気に入っていただけても、ご両親の反対を受けてしまうということもありました。他の病院は、人事担当者と看護部長や師長が一緒に動くことが多いのですが、うちの場合は、病院がそれどころじゃないので、勤務表から看護師を抜くことはできず、いつも私1人で動くしかありません。

幸いこの5年近くで、50名ほどの資格職の方達が、北は北海道、南は九州と全国各地から高野病院のことをホームページやテレビ、新聞などで知り、力を貸してくださいました。県外からの方達は、ご家族を置いての単身赴任など、どうしても期限を決めていらっしゃる方が多いので、この人が来月帰るから、その代わりの人を探さなくちゃ...と、綱渡りの毎日は今も続いています。

国は、福島県全体のデータしか見ていないので、医療従事者が前年より何パーセント増えて良かったね、順調に戻っているね、と言います。しかし、福島県全体で見れば数値的には戻っていても、双葉郡の原発の警戒区域にはだれもいないのです。今も震災直後も大して変わらない状況で、医療を継続している私達にとっては、医者が増えた、看護師が増えた...は、別の国の夢物語に聞こえます。確かに、双葉郡の現在のデータがとれないのだから仕方がないと言われるかもしれません。だから双葉郡に病床が、高野病院の118床しかなくても、震災前のデータが生きているから、現在もこの地域は、病床の過剰地域だと言われてしまうのです。

(2016年1月19日「MRIC by 医療ガバナンス」より転載)



https://www.m3.com/news/iryoishin/399841?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD160216&dcf_doctor=true&mc.l=144598400&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
シリーズ: 降圧剤論文問題と研究不正
KHS参加医師、「人事のため、医師として最低の行為した」
ノバ社・府立医大論文改ざん事件、第9回公判

2016年2月16日 (火)配信 高橋直純(m3.com編集部)

 ノバルティスファーマ社の降圧剤を巡る京都府立医科大学での医師主導臨床試験の論文データ改ざん事件で、薬事法(現医薬品医療機器法)違反(虚偽広告)に問われた元社員とノバ社に対する第9回公判が、2月15日に東京地裁(辻川靖夫裁判長)で開かれ、弁護側は、当時滋賀県内の病院に勤務していたKHS(Kyoto HEART Study)参加医師の供述調書を提出。参加医師は、人事上の優遇を得るために、自発的にバルサルタン有利になるように虚偽の報告をしたと証言。「医師として最低の行為を行った」と反省の弁を述べた。

 KHSの事務局を務めた男性医師への検察側証人尋問も第8回公判(『KHS主論文、白橋被告が「手法」「結論」「図表」を作成』を参照)に続いて行われ、KHS論文に疑義が示された時の対応について説明し、白橋伸雄被告や京都府立医大元教授の松原弘明氏の指示で、自身が解析やデータ管理を行ったとする虚偽の説明をしたと証言。「嫌で嫌でしかなかったが、絶対服従の教授命令や尊敬する白橋先生の指示なので行った」と語った。本事件の取り調べの過程で、「2014年から白橋被告が改ざんしたと思うようになった」とも述べた。

「群分け段階で非投与群に重症者が多かった」
 KHS参加医師の供述は検察官面前調書として作成されたもので、弁護側が証拠調べで提出した。供述調書によると、参加医師はKHSにおいて100症例以上を登録したが、そのうち、バルサルタン投与群で2例、非投与群で24例のイベント報告をした。バルサルタンにとって有利な結果を出すため、投与群のイベント報告数を少なくする一方、非投与群で実際にはないイベント報告をしたとしている。ただ、群分けの段階で「非投与群で重症者が多かった」とも説明し、「全てが完全の虚偽ではなく、非投与群の方がイベント数が多かったのが事実」と述べた。

 虚偽報告は「誰からの指示でもなく、自発的にやった 」として、人事上の優遇を得るためだったと説明。当時、京都市内に自宅を購入したが、医局人事で滋賀県内の病院勤務を命じられており、通勤に時間がかかるため不本意だったという。循環器内科の医師の数も少なく多忙だったため、次の異動では京都市内に戻ることや優秀な後輩をよこしてほしいという希望があった。KHSは松原氏にアピールする絶好の機会だと認識し、目標の3000症例を30の関連病院で集めるとなると、1病院当たり100症例になると試算。自身の病院では150症例を目標とし、個人でも100症例以上を登録した。登録数で上位に位置し、松原氏から表彰を受け、「とても誇らしかった」と供述していた。

「ある程度いい加減な試験と認識」
 ノバ社から多額の奨学寄付金を得た大規模臨床試験であることから、「差がなかったとなれば、何の価値もない試験になる。松原教授の面目が潰れ、ノバ社からの奨学寄付金が得られなくなる。KHSをやる以上、結果はバルサルタンにとって有利な結果しかなく、事務局も同様に考えていると思った」とし、自発的に虚偽報告をした動機を説明した。国から依頼された試験ではなく、「あくまで府立医大の自主的な試験であり、医師が臨床の片手間にやる、ある程度いい加減な試験だと認識しており、重大な違法行為だと思わず、軽い気持ちでやってしまった」とも証言した。

 ただ、KHSでバルサルタン有利な結果が出たにもかかわらず、病院や自身が評価されることはなかったとし、「松原教授からありがとう、よくやった、お疲れさまの一言もなかった。私は何のために虚偽報告をしたのか分からなくなり、とても情けなく思うとともに、松原教授を不快に思った」と述べた。 自身のした行為については「虚偽報告の結果、誤った結論が学会で発表され宣伝で使われることも理解していたが、その先に多くの医師や患者をだまし、医療業界に重大な悪影響を及ぼすとまでは思い至らなかった。本当に浅はかだった。医師として最低の行為をしたと思っている。深く反省している」と述べた。

調査に対して、事前に口裏合わせ
 この日の公判では、前回に引き続きKHSで事務局を務めた男性医師への検察側証人尋問も行われた。2012年ごろになると、KHSの各論文への疑義が呈されるようになったとし、特にノバ社の社員である白橋被告が統計処理を主導したことが利益相反の点から問題になると危惧した。松原氏、白橋被告の指示のもと、男性医師が統計解析を行ったと説明をするために、事実と異なるデータ管理体制などを事前に3人で確認。

 「嫌で嫌でしかなかったが、絶対服従の教授命令や尊敬する白橋先生の指示なので行った」などと語る一方、白橋被告がデータを改ざんしているという認識はなかったと強調。だからこそ、自身が統計解析を行ったという虚偽の説明をすることも受け入れたと述べた。

 男性医師は統計解析ソフトを持っておらず、さらに日常的に使っていたパソコンはMacであったことから、白橋被告がソフトとWindows用パソコンを用意するなど、口裏合わせを行った。男性医師が解説書を読んでもソフトの使い方が分からないと相談したところ、白橋被告はメールで例題を提示するなどの指導をしてくれたと説明した。

 解析結果への疑義が強まると、松原氏と男性医師は第三者にデータを提供し再検証してもらうことで、論文の正しさが証明できると考えたが、白橋被告が執拗に反対し、なかなかデータを提出しなかった。白橋被告と松原氏で口論になったこともあると言う。

 白橋被告が改ざんしたと思うようになったのは2014年に行われた検察官の取り調べの中で、エクセルデータを見せられた時だとし、2013年に出された京都府立医大の調査報告については「白橋氏の統計解析はゆるぎないと信じていた。大学の調査は全てのデータがなく、第三者機関も間違っているのではと心配していた」と述べた。

「多くの医師の人生が変わった。本当に残念」
 最後に、検察官から虚偽のイベント報告をしたか、データ改ざんをしたか、白橋被告に解析用データを渡したことがあるかなどと問われると「ありません」と繰り返した。データを改ざんした人物に言いたいことがあるかという質問に対しては「本当に残念なことをしてくれた。私を含めた多くの医師の人生が変わった。ノバ社の社員の人生も変わった。本当に残念なこと」と述べた。

 男性医師へは、今後、弁護側や裁判所からの尋問が行われる。



https://www.m3.com/news/general/399514
両足に障害、賠償求め提訴 40代女性、病院側争う姿勢
2016年2月15日 (月)配信 共同通信社

 北海道函館市立函館病院が適切な検査や処置を怠ったために両足を動かせなくなったとして、上ノ国町の40代女性が市に約1億9500万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が12日、函館地裁(浅岡千香子(あさおか・ちかこ)裁判長)であり、市側は請求棄却を求めた。

 訴状によると、女性は2006年7月、腰の痛みや両足の感覚障害に悩まされて函館病院で診察を受けたが、担当医師らは痛みの原因を「心因性のもの」と判断。詳しい検査や専門医への相談を怠ったため、女性の症状が悪化したとしている。



http://diamond.jp/articles/-/86424
医療・介護 大転換【第49回】
「安易に大病院に行かない」ことを推進する診療報酬改定の意味

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)
2016年2月17日 ダイヤモンドオンライン

 4月から病院や診療所など医療機関に支払う治療や薬代の値段が決まった。厚労省の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)は、2月10日、診療報酬を決めて厚労相に答申した。

 診療報酬は2年ごとに改定する。政府は2016年度の予算編成過程の昨年末に、全体で前回の2014年度改定より0.84%の引き下げを決めた。薬価はマイナス1.33%で、医師の技術料などの診療料は0.49%プラスとした。中医協はこの範囲に収まるように各単価を設定した。

 基本的な考え方は、病院での早期退院を促し、在宅での医療を充実させよういうことだ。介護保険のスローガンである「地域包括ケアシステム」を実現させる大きな要素である「医療と介護の連携」を推進する。

 団塊世代が7~8年後にはすべて後期高齢者となり、医療の需要が一段と膨らむのは必至。受診する患者の多数は高齢者という視点に立ち、「治す医療」から「生活を支える医療」へと医療機関の役割を根底から転換させる方向性を強めたのが今回の報酬改訂だろう。

「治す医療」とは徹底した治療一筋の考え方。これを縮小し、慢性病と共生しながら暮らす高齢者には、日々の「生活を支える医療」が重要であり、それを「医療機関の役割分担」と分かり難い表現で説明している。

 (1)病床削減を視野に入れた「脱病院」策、(2)在宅医療の浸透、(3)認知症ケアの推進――この3本の柱で医療の新しい形を目指そうとした。

高度医療を担う大病院は専門的な診療に特化させる

 まず、病院の位置づけであるが、「2025年までに20万床削減」という既定の方針に沿って、軽症の患者が高度医療を担う大病院になるべく来ないようなとても分かりやすい新制度を導入した。追加料金とも言うべき制度だ。

 近隣の診療所のなどの紹介状を持たないで患者が大病院で診察を受けると、診察料や初診料とは別に誰もが5000円以上の支払いを求められるようにした。歯科の場合は3000円以上だ。再診の際にも、2500円(歯科は1500円)を請求する。

 これまでも都心部の病院では、紹介状がないと3000~5000円を患者から請求していたが、これを全国で義務付けにした。対象となる病院は、高度医療を提供する「特定機能病院」と500床以上の大病院。全国で約240ヵ所である。

 国民に地域の診療所への診察を促し、大病院は専門的な診療に特化させ、結果として病床削減へつなげようという狙いである。

 看護師などが手厚く配置されている重度者向けの病棟の定義も変えた。従来は重度者が全入院者の15%以上としていたのを25%にハードルを上げた。これもベッド数の減少につながる。

 また、病院での長期入院は好ましくないという考えから、退院奨励策も加えた。退院支援の専従職員を確保し、地域の診療所や介護施設、ケアマネジャーなどと連携して在宅医療への態勢を作ると、退院時支援加算として6000円を新たな報酬として設けた。

 入院7日以内に患者や家族と面会するなど早期退院の姿勢を見せれば最大1万2000円の加算が付く。

 一方で、比較的軽症の入院患者が多い病院の報酬は減らしていく。

訪問診療に特化した診療所が陽の目を見る

 こうして、病院の「縮小」に拍車を駆けながら、退院してきた、あるいは病院に行かない患者の受け皿として在宅医療を前面に登場させた。その拡充を図ろうと、手厚い報酬を導入している。

 象徴的なのが、在宅専門診療所の容認である。患者を迎え入れる外来診療をしない。訪問診療に特化した診療所が初めて堂々と陽の目をみる。というのも、すでに、玄関周りの雰囲気から外来患者が入りづらい診療所はある。医師が多くの訪問診療患者を回っているため、外来に手が回らないためだ。だが、制度上は正面から外来を断ることはできない。

 そのため、「後ろめたさ」を感じていた訪問診療特化型の診療所にとっては今回の新基準は朗報である。

 ただし、いくつかの条件が付いた。その中に「外来診療が必要な患者が訪れた場合に対応できるよう、地域医師会(歯科医療機関にあっては地域歯科医師会)から協力の同意を得ている、又は地域内に協力医療機関を2ヵ所以上確保していること」とある。

 訪問診療にほぼ専念しているある診療所の医師は「医師会はあくまで単なる業界団体に過ぎない。入会するもしないも医師の自由な判断次第。それなのに医師会との連携を条件にするとは…」と疑問の声を挙げる。

 医師や医師会の多くは「外来を手掛けない医師は医療者として問題。地域住民の生活を支えるには、外来が欠かせない」という思いが強い。その一方で、高齢者施設には家族との縁を絶たれた孤独な入居者がおり、医療の手を差し伸べてくれるのは遠くかやってくる訪問医師だけという状況がある。その医師たちは「家族と一緒に外来に来られる高齢者は幸せ」と打ち明ける。

 外来に来る患者よりはるかに身体的に重度な、あるいは認知症の症状が重い高齢者が訪問医師を待ち受けている。在宅療養支援診療所の制度が訪問診療を支える。訪問診療医が16キロの制限距離内の孤独な高齢者の住まいを回っている。

 こうした新しい需要に応えている。「患者を待つだけ」の外来とは大きな違いがある。外来不要の訪問診療が制度で保障されたことで、在宅医療が勢いを増しそうだ。

 在宅医療の対象を増やす加算も行われた。「特定施設入居時等医学総合管理料」の対象を特別養護老人ホームと特定施設などから、グループホームやサービス付き高齢者向け住宅、それに有料老人ホームにも広げた。

 在宅医療には、ターミナルケア加算やがん医療など各種の看取り加算も設けて、在宅生活を最期まで見届ける医療を推進する。

認知症の人には新しい報酬体系が

 認知症の人には別格の新しい報酬体系が外来診療で始まることになった。「認知症地域包括診療料」である。前回の報酬改定時に設けた「地域包括診療料」をもう一段発展させたものだ。

 地域包括診療料は、高齢者に多い糖尿病と高血圧症、脂質異常症それに認知症の4つの慢性疾患のうち2つ以上の疾患がある患者に対して「主治医」となることが条件。さらに、ほかの医療機関での受信状況の把握を始め、療養指導、服薬管理、健康管理、介護保険対応などを行なえば、得られる報酬である。

 月間の包括報酬は1万5000円とかなりの高額。医師3人以上の在宅療養支援診療所か200床未満の在宅療養支援病院に所属していることが前提である。

 これによって、慢性疾患を抱える高齢者に日常的に接して、心身の状況を診ながら迅速に対応させようという狙いである。他の医療機関の受診状況を把握するのは、日本の医療の「常識」を超えた先駆的な試みである。症状が悪化する前の健康管理は通常、診療とはされないが、それも加えた。複数の医療機関からの薬のすべてを把握して一元管理するのも医療界では見られなかったこと。画期的な報酬制度と言えるだろう。

 こうして本人の全体を把握し、日常的に対応していくことこそが「地域包括ケア」の真意であり、成されるべきこと。それ故に、報酬の名称に「地域包括」が被された。

「地域包括」という言葉は、介護保険制度の中から生み出された「地域包括ケア」に由来する。それもあってか、この「地域包括診療料」創設に対して医療界からの抵抗は強かったと言われる。突破したのが当時の厚労省の担当課長。「老健局にも在籍したことがあり、介護の実態も知悉している」と語る「強者」だからできたこと、と評価された。

 この新制度を活用して今回は認知症ケアに組み入れた。上記の4疾患のうち認知症だけを抜き出して、もう一つの疾患があれば認知症者はすべて対象となるようにした。報酬は月一回で1万5150円。

 前の制度の条件に手を加え、医師は3人以上から2人以上と緩和した。せっかくの前向きな制度であるにもかかわらず、2014年7月までに112施設にしか活用されず不振のため、後押しを図ることにした。

 実は、この地域包括診療という考え方は、欧米で普及している「家庭医」に通じるものだ。特定の臓器にだけ特化して診療するのが日本の医療制度。それに対して、内科や外科、皮膚科、精神科などあらゆる科目に精通した家庭医が住民の症状を診るのが多くの欧米諸国。患者の全体像を把握でき、日常的な対応で予防まで手掛ける。

 日本でも、ほぼ同様な業務を期待される「総合診療専門医」のレールが敷かれつつあり、2020年度には表舞台に登場すると言われている。「総合」的な見地から特定の診療科目に捕らわれずに診療する専門医である。

 また、認知症については、認知症ケア加算を新設した。認知症に詳しい専任常勤医と看護師、社会福祉士などが「認知症ケアチーム」を作り、週一回のカンファレンスを開くことが条件だ。同チームは、在宅復帰に備えた介護サービスなどを話し合い退院後の支援を検討する。

参考にしたい英国、オランダのケース

 病院ではなく、自宅を含めた地域での療養生活へ誘導を図ろうとする厚労省の意図が鮮明に出てきたのが今回の報酬体系。ただ、目指す方向にある理想のプランが国民には見え難い。ニンジンを鼻先に吊るして特定の走路を巡らせようとしていることは了解できる。では、ゴールにはどのような仕組みが描かれているのだろうか。

 その一つの答えが欧州、それもオランダや英国の医療システムにありそうだ。英国はNHS(国民保健サービス)制度があり、医療費が全て税金でまかなわれるから論外かというと、そうでもない。医師と患者、住民との関わり方は注目していいだろう。医療と介護の連携という面では、英国の一歩先を行くのがオランダ。両国に共通するのは家庭医が主役として機能している点である。

 地域の家庭医が住民の日々の生活を見守り、支えている。とりわけオランダでは医師だけでなく看護師、薬剤師、栄養士、助産師、リハビリ職、介護職などの専門職の連携が意識され、多職種協働が実践されつつある。医療と福祉(介護)の連携でもある。これは、日本の地域包括ケアの担い手とそのまま重なる構造と言えるだろう。

 その意味では、新設の認知症地域包括医診療料や前回設けられた地域包括診療料、地域包括ケア病棟など一連の「地域包括」を取り込んだ診療科目が、その先兵の役割を担っても不思議ではない。
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 では、英国やオランダの医療の基本構造はというと、家庭医をベースにした三角形を描くとよく分かる。家庭医に登録する住民は3000人前後。国民はすべて近隣の診療所かその家庭医に登録しなければならない。急な事故などを除き、あらゆる病気は1次医療機関である登録先の家庭医でまず診てもらう。大病院に自由に赴いて診察を受けることはできない。

 家庭医が手術や入院が必要と判断すれば、患者は家庭医の紹介先の2次医療機関である病院に行く。そこでも対応が難しい難病などであれば、3次医療機関の大学病院などに通う。ほとんどの患者は1次医療で済んでしまう。その比率は90%近いと言われる。

 つまり、日本では当たり前のような「フリーアクセス」が認められていない。フリーアクセスとは、患者がどこの医療機関でも自由に勝手に診察を受けることができる制度。少ない財源で効率的な医療システムを希求すれば、フリーアクセスを制約せざるを得ないのは火を見るより明らか。

 3年前の「社会保障制度改革国民会議」でも同様の論議があり、「フリーアクセスから、必要な時に必要なアクセスができるように変えねば」と報告書に盛られた。「ゲートキーパー(門番)機能を備えたかかかりつけ医が必要」とも書き込まれた。

 同会議の論議の中では、フリーアクセスを制約させる手立てとして、診療所からの紹介状を持たない大病院患者に「罰金」として5000円を請求することが語られた。実は今回の5000円以上を大病院が徴収できることとした決定は、この論議を引き継いでいる。

 つまり、「病院から地域・在宅へ」という大命題を掲げた新診療報酬体系の目指す先には、「フリーアクセスの廃止」が描かれて当然だろう。地域医療を担う家庭医、日本版では「総合診療専門医」の全国的な浸透が欠かせないのは自明の理。だが、フリーアクセスを認めていては利用者(患者)の流れを変えることは難しい。病院の縮小均衡を目指すには、「病院信仰」を断ち切らねばならない。そのためには、自由に勝手に行くことのできるアクセスを遮断するのが近道だろう。

 こうして、登録制の家庭医が地域ごとに整えられれば、社会保障制度改革国民会議で強調された「ご当地医療」が実現し、それは即ち、地域包括ケアの「医療連携」そのものになるはずである。逆に言えば、フリーアクセスを野放しにしている限り、生活圏域内(中学校圏域)で完結させるはずの地域包括ケアは遠のくばかりである。



https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t239/201602/545827.html
シリーズ◎2016診療報酬改定
【外来】認知症・小児の主治医機能を手厚く評価
紹介状ない大病院受診では初診5000円以上、再診2500円以上を徴収

2016/2/16 土田絢子=日経ヘルスケア編集

 2月10日に答申された2016年度診療報酬改定において外来医療の目玉となったのは、「認知症地域包括診療料(加算)」と「小児かかりつけ診療料」が新設されたこと。認知症や小児の主治医機能を強化する狙いがある。また、患者が紹介状なしで大病院を受診した際、定額の負担を求める制度が導入される。これにより、大病院から診療所・中小病院への外来移行が促進すると見られる。そのほか、薬剤の多剤併用を是正した場合に算定できる点数の新設、ニコチン依存症管理料の算定要件の緩和――などが図られた。

「認知症以外に疾患があり多剤併用していない」などが要件
 「認知症地域包括診療料 1515点(月1回)」「認知症地域包括診療加算 30点(再診料に加算)」の算定要件は、認知症以外に1つ以上の疾患を持つ認知症患者であって、(1)1処方に5種類を超える内服薬がない、(2)1処方に抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬を合わせて3種類を超えて含まない、(3)疾患や投薬の種類数に関する要件を除いて、地域包括診療料(加算)の算定要件を満たす――など。患者または家族の同意を得て、療養上必要な指導や診療を行った場合に算定する。

 一方、「小児かかりつけ診療料」の点数は、処方箋を交付する場合は初診時602点、再診時413点、処方箋を交付しない場合は初診時712点、再診時523点。対象患者は継続的に受診している3歳未満の患者で、主治医として、緊急時や明らかに専門外の場合などを除いて最初に受診する医療機関であることについて患者の同意を得ている場合に算定できる。

 小児かかりつけ診療料の算定要件は、患者からの電話などによる問い合わせに原則常時対応する、急性疾患発症時の対応の仕方やアトピー性皮膚炎・喘息などの管理について必要な指導・診療を行う、健診歴や結果を把握して発達段階に応じた助言・指導を行う――など。一方、施設基準としては、(1)小児科外来診療料の届け出を行っている、(2)時間外対応加算1または2を届け出ている、(3)小児科または小児外科を専任する常勤の医師がいる、(4)以下のカッコ内の要件のうち3つ以上に該当する(初期小児救急への参加、自治体による集団または個別の乳幼児健診の実施、定期接種の実施、小児に対する在宅医療の提供、幼稚園の園医または保育所の嘱託医への就任)――などが設定された。

 「紹介状なしの大病院受診時の定額負担」については、特定機能病院や500床以上の地域医療支援病院は、現行の選定療養に加え、定額の徴収が責務となった。徴取する最低金額は初診時5000円、再診時2500円。紹介状なしの患者が大病院を受診すると、基本的に、初診時の5000円のみならず再診ごとに2500円を支払わなくてはならなくなるため、大病院から診療所・中小病院への外来患者の移行が促進すると考えられる。なお、救急患者、公費負担医療の対象患者など、やむを得ない事情がある場合は定額負担の対象外となる。

 その他、多剤を服薬する患者について減薬した際に算定できる点数として、「薬剤総合評価調整管理料 250点(月1回)」が新設された。6種類以上の内服薬を処方されていた外来・在宅患者に関して、処方内容を検討し、2種類以上減った場合に算定できる。また、処方内容の調整に当たって、別の医療機関や薬局との間で照会または情報提供を行った場合は、「連携管理加算」として50点を加算できる。

 ニコチン依存症管理料は算定要件を緩和。現制度における対象患者は「1日の喫煙本数に喫煙年数を乗じた数が200以上」とされているが、この要件を「35歳以上の者」に限定し、喫煙年数が短く「200以上」に達しない若年層でも治療を受けられるようにする。一方で、過去1年間のニコチン依存症管理料の平均継続回数が2回以上に達しない医療機関は、所定点数の7割を算定する減算規定が設けられた。


  1. 2016/02/17(水) 06:00:48|
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