Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

2月15日 

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=130412
医師不足の島に赴任した「親切な」病院長、覚醒剤所持で逮捕
(2016年2月15日 読売新聞)

 ◇「知人から預かった」と否認

 マンションで覚醒剤を所持していたとして、広島県警は12日、呉市広末広、公立下蒲刈しもかまがり病院院長、原田薫雄くんゆう容疑者(52)を覚醒剤取締法違反(所持)容疑で現行犯逮捕した。「知人から預かったもので覚醒剤とは思わなかった」と容疑を否認しているという。

 発表では、原田容疑者は12日午前5時55分頃、広島市中区上幟町にあるマンションで、小さなプラスチック袋入り覚醒剤を所持していた疑い。警察庁に匿名の情報提供があり、県警が捜索して覚醒剤を見つけたという。同病院を設置する呉市によると、原田容疑者は2011年9月に院長に就任した。

 ◇「信じられない」 島民らショック

 原田容疑者は、医師不足に悩む下蒲刈島に、呉市の依頼を受けて赴任し、高齢化が著しく進む過疎地の医療を支えてきた。お年寄りら患者への対応も親切だったといい、市や病院の関係者、島民らに驚きや戸惑いが広がった。

 「地域に根ざした医療活動に大変熱心に取り組み、職員や島の人の信頼も厚く、地域に大きな安心感をもたらしていた。驚きと悲しみを禁じ得ない」。12日に記者会見した小村和年市長はこう語り、「心から深くおわびします」と謝罪した。

 市は部長級以上の幹部会議を急きょ開き、各課長が全職員に面談して綱紀粛正を徹底するよう指示した。

 市立の同病院は、下蒲刈や上蒲刈など4島の中核的な医療機関に位置づけられるが、2011年に前院長が定年退職後、後任が約5か月不在に。広島大医学部の関係者らを通じて就任を依頼したのが、広大出身の原田容疑者だった。

 同病院では脳神経外科とリハビリテーション科で、脳卒中の後遺症や認知症を患う高齢者らを毎日診察していた。逮捕を受けて受付窓口には「都合により、原田院長の診療を休診させていただきます」との案内文が掲示された。

 4島の高齢化率は6割近くに達し、同病院の武林信二・病院事業課長は「専門性の高い脳神経外科やリハビリの医師を確保でき、ありがたかった。お年寄りらに親切に接し、上司としても信頼していた。逮捕は信じられない」とショックを受けた様子。

 診察に訪れた下蒲刈町内の無職女性(83)は「優しい先生で、逮捕されるなんてびっくりした。間違いならいいのに」と残念がった。



https://medical-tribune.co.jp/news/2016/0215038408/
非推奨勧告でPSA検査が全体的に減少
ただし減少率は泌尿器科医と一般医で異なる

臨床医学 | 2016.02.15 Medical Tribune

 早期前立腺がん検出における前立腺特異抗原(PSA)検査の有用性に関しては,賛否両論がある。反対の立場の代表は,米国予防医療サービス対策委員会(USPSTF)が2012年に発表した,ルーチンのPSA検査は年齢を問わず推奨されないとする勧告だが,米・Brigham and Women's HospitalのQuoc-Dien Trinh氏らは,この勧告後のPSA検査率の変化を,泌尿器科医とプライマリケア医の受診者で比較。その結果,両者の間に著明な差があることが分かったとJAMA Intern Med(2016年2月8日オンライン版)のLetterで報告した。
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全米の外来診療データで検討

 前立腺がんのスクリーニング検査であるPSA検査に関して,USPSTFは2012年に,便益に関するエビデンスが不足している一方で,生検や進行が緩慢ながんに対する過剰治療の害は明らかであるとして,ルーチンのPSA検査は年齢を問わず推奨されないとの勧告を出した。一方,これとは異なる見解を示している団体もあり,例えば,米国泌尿器科学会(AUA)は,年齢とリスクにより推奨するか否かを細かく分類している。

 今回の研究では,外来診療に関する全米調査であるNational Ambulatory Medical Care Survey(NAMCS)の2010年と2012年における医師の検査指示データから,50~74歳で検診などの予防医療のために泌尿器科医かプライマリケア医を受診した者全例を対象に,この期間にPSA検査率がどの程度変化したかを,泌尿器科医とプライマリケア医の受診者の比較で検討した。集計結果は,米国の人口を反映するように重み付けを行った。

泌尿器科ではわずか,プライマリケアでは半減

 前立腺がんを含む前立腺疾患患者を除外した後の解析対象受診件数は,2010年と2012年合わせて1,164件(重み付け後2,700万件)で,そのうち64件(同80万件)が泌尿器科医,1,100件(同2,620万件)がプライマリケア医の受診であった。

 PSA検査率は,プライマリケア医の受診者では,2010年に36.5%であったが,2012年には16.4%に半減していた。一方,泌尿器科医の受診者では38.7%から34.5%とわずかな低下にとどまっていた。

 Trinh氏らは今回の研究の限界として,外来受診データに依存しており,外来以外でのPSA検査については考慮していないことなどを挙げた上で,この低下率の差は,PSA検査の便益についての医師の受け止め方の違いや,ガイドラインにより勧告内容が異なることなどを反映しているとの考察を述べ,「今回の知見は,PSAスクリーニングの是非について広く合意を確立するために,引き続き集学的な話し合いが必要であることを強調している」と結論付けている。

PSA論争を今後の教訓に

 同誌編集者のDavid S. AaronsonとRita F. Redbergの両氏は付随論評(2016年2月8日オンライン版)で,泌尿器科医の受診者にはPSA検査を希望する者が多く,また泌尿器科医では予後不良な転移がんを診療する機会が多いため,プライマリケア医との間に意識の差があるのかもしれないと推察している。

 最近のデータでは,PSA検査率の低下を反映してか,前立腺がんの早期発見率も低下しており,おそらく勃起不全や尿失禁などの前立腺がん治療の害も減少すると思われる。ただし,両氏は「PSA検査減少の全体的な影響を理解するには,転移がんの発生率と前立腺がん死亡率の推移に関するデータを待たなければならない」と指摘。MRI/超音波フュージョン生検や,遺伝子検査などの新規の診断・リスク層別化ツールについても,PSA検査のてつを踏まぬよう,広く推奨する前にまず,便益が害に勝ること示す十分なデータを得る必要があると付け加えている。

(小路 浩史)



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/48093.html¬
患者の「パニック値」、連絡遅れで注意喚起- 医療機能評価機構
2016年02月15日 14時00分 キャリアブレイン

 日本医療機能評価機構は15日、医師に報告する必要がある患者の「パニック値」の緊急連絡が遅れた事例の報告が、2012年1月から15年12月までの間、計3件あったと発表した。血糖値が異常値の患者の報告を忘れた事例では、後で患者が倦怠感を訴えて入院したという。【新井哉】

 同機構によると、事例の1つでは、診察前に行った血液検査でヘモグロビン値が低下していたため、患者に鉄剤を処方。診察時に血糖値は「検査中」と表示されていたが、実際は異常値で再検査中だった。

 患者の血糖値は800㎎/dlであったことから、本来であればパニック値として検査部から医師に報告する必要があった。しかし、臨床検査技師は昼の休憩時間帯で人数が少なかったため、余裕がなく連絡を忘れた。10日後に患者から倦怠感があると連絡があり、医師が前回の検査結果を確認したところ異常値であったことが判明し、入院することになった。

 別の事例では、外来で採血後に患者が入院。臨床検査技師は血清カリウム値がパニック値であったため、病棟の看護師に報告したが、主治医が不在時の連絡方法を看護師が知らず、医師に伝わらなかった。

 こうした事例が発生した医療機関では、▽報告手順を院内に周知する▽検査部でパニック値の連絡を行った際、検査結果や連絡者、連絡先の医師名を記録に残す▽主治医不在時の連絡・対応体制を構築し、周知する―といった取り組みを行っているという。



http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=130408
離島医師を育む(上)「長崎方式」奨学金を貸与
(2016年2月15日 読売新聞)

 ◇10歳代から100歳代まで

 長崎県・五島列島の北部に位置する新上五島町。医師になって3年目の平光寿ひらみつひささん(27)は、町で唯一の病院である県上五島病院に昨年春から勤務している。

 5人いる内科医の1人として、週4日の外来で100人前後の患者を診る。10歳代から100歳以上まで、訴えの内容や病気はまちまちだ。夫婦や親子など家族でかかっている患者も多い。「患者さんとの距離も近い気がする」と平さん。

 週末を含めた月4回程度は1人で当直勤務にあたる。救急患者の症状によっては、先輩医師に連絡を取ってアドバイスを得たり、他科の医師を呼び出したりして対処する時もある。「大きな病院なら他の診療科に相談して終わり、というケースでも、ここでは相談したうえで実際の処置も自分でやることが多い。大変だが、幅広い勉強にもなっている」と話す。

 ◇奨学金期間の1.5倍

 平さんは、長崎県が実施している離島医師を養成するプログラムの医師の一人だ。医学部の奨学金と引き換えに、最大9年間(貸与期間の1.5倍)、同県内の医療機関で勤務する。うち半分以上の期間は離島勤務が義務づけられている。

 医学部生の頃から、毎年夏に離島などで開かれる地域医療のワークショップなどに参加していた。もともと五島列島・福江島出身の平さんにとって、島での暮らしに不安はなかった。

 国立病院機構長崎医療センター(長崎県大村市)で2年間の初期研修を終え、上五島病院に着任した。将来は消化器内科医を目指している平さん。4月からは再研修としていったん本土の病院に勤務する。内視鏡医療の腕を磨き、来年春には再び離島に戻る予定だ。

 ◇常勤医師のあっせんも

 面積の約4割、人口の約1割が離島という長崎県は全国でもいち早く、へき地の医師確保に取り組んできた。1970年に開始した県独自の奨学金修学生と、自治医大卒業生を同じように養成するシステムは、「長崎方式」として知られる。

 県医療人材対策室課長補佐の中山一成さんによると、毎年5人程度が離島医師を養成するプログラムに入り、連携しながらチームで離島の地域医療をカバーしている。

 このほか長崎県では、▽へき地の診療所などで働く常勤医師のあっせん▽代診医の派遣▽離島医療の応援医を登録しておく「しますけっと団」▽離島への応援医師をヘリコプターで搬送するシステム――など、あの手この手の対策を展開している。

 ◇キャリア支援の課題

 課題はなお多い。

 長崎県では現在、定員3人の奨学金制度と、自治医大派遣制度に加え、長崎大など3大学の医学部に計14人の「地域枠」を設けている。自治体が奨学金を出して地域医療の医師を養成する地域枠は、長崎方式が原型とされるが、医師不足に悩む全国の自治体に広まったこともあり、元からある長崎の奨学金制度の利用者は減少気味だ。

 また、大学病院などでの研修を軸とする新専門医制度が近く始まることで、離島で働く若手医師の確保への影響も懸念されている。

 中山さんは「離島勤務の義務年限を終えた医師の将来をどうサポートしていくかなど、キャリア支援が今後の重要な課題です」としている。(編集委員 田村良彦)



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/48096.html?src=topnewslink
“ボーダーライン”の医療機関は要注意- 次期改定セミナー迫る、20日と21日に
2016年02月15日 20時00分 キャリアブレイン

CBnewsでは、工藤代表取締役を講師に迎え、2月20日に東京、21日に大阪でセミナーを開催する  2016年度診療報酬改定で、最も影響を受ける医療機関はどこなのか。
 MMオフィスの工藤高代表取締役は、“ボーダーライン”にいる医療機関を「ピンポイント」で突いてくるような改定と言う。
 最大のポイントである7対1入院基本料の「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)は25%に線が引かれた。工藤代表取締役は「これまで何とかクリアしていたところは、かなり厳しいのではないか」と指摘する。
 そうなると、地域包括ケア病棟に移る、あるいは病棟群単位で届け出て、7対1と10対1を混成させるという選択肢も考えられる。ただ、後者はあくまで2年間の経過措置であり、工藤代表取締役は「下りのみのエレベーター」と言う。
 総合入院体制加算の実績要件も見直され、3段階の加算が設定されるが、看護必要度は同加算の1と2は30%以上、加算3は27%以上とかなりの水準だ。ただ、工藤代表取締役は、地域の中核病院で血液内科を持つような病院では、新基準でも30%以上をマークできると言い、ボーダーラインで厳しい状況に立つ病院とは、随分と状況も異なるようだ。
 このほかにも、回復期リハビリテーション病棟にアウトカム評価が導入され、評価を下回れば、1日6単位を超える場合は包括払いとなったり、障害者施設等入院基本料では、脳卒中の意識障害の患者の評価が見直されたりする。工藤代表取締役は、よほどのことがない限り、該当することはないとしつつも、厚生労働省が標準と考える姿から乖離した医療を提供している医療機関はふるい落とされるのではないかとみている。
 地域医療構想との関連も気になるところだ。療養病棟入院基本料2の「医療区分2と3の合計が5割以上」という要件は、地域医療構想策定ガイドラインにある「医療区分1の患者の70%を在宅医療等で対応する患者数として見込む」という説明と明らかにリンクしたものだという。
 工藤代表取締役は、18年度の診療・介護報酬同時改定に向け、地域医療構想も考慮しながら、自院の方向性を固めていくことが重要になると言う。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/53731/Default.aspx
16年度診療報酬改定 7対1要件厳格化で機能分化迫られる急性期病院
公開日時 2016/02/15  ミクスオンライン

「厚労省の資料に基づいて試算すると、最大でも1万床くらいしか影響を受けないのではないか」。中医協支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は危機感をあらわにした。2016年度診療報酬改定で焦点となったのが、7対1入院基本料の厳格化だ。重症度、医療看護必要度、在宅復帰率が見直され、重症患者割合25%以上、在宅復帰率を80%以上に引き上げられた。一方で、10対1入院基本料は重症患者が24%以上の場合は手厚い配分を行うほか、地域包括ケア病棟では、手術や麻酔を包括範囲から除外した。7対1病床から10対1病床への移行を推進するために、病棟群単位の届け出も認めた。7対1入院基本料算定要件の見直しで、特に200床未満の急性期病院にとっては、10対1や地域包括ケア病棟への転換を迫られることになりそうだ。一方で、すでに7対1堅持に走る医療機関も少なくないとの見方が広まっている。


7対1病棟の重症患者割合は、従来の15%から25%以上に引き上げられた。ただし、許可病床数200床未満の病院では2018年3月31日までの2年間、23%以上に緩和される。ただ、医療・看護必要度の基準そのものがより重症患者を反映する指標とするよう見直さている。A項目(モニタリングおよび処置等)、B項目(患者の状況等)に加え、C項目(手術等の医学的状況)を新設。基準も、「A項目2点以上、B項目3点以上」に「A項目3点以上またはC項目1点以上」が追加された。A項目には、無菌治療室での治療、救急搬送後の患者(2日間)を追加。B項目では、起き上がり、座位保持を削除し、新たに、「危険行動」、「診療・療養上の指示が通じる」を追加する。C項目(これまでM項目として議論)としては、開頭の手術、開腹の手術、救命等に係る内科的処置(2日間)などが含まれる。特定の診療科などで手術件数が多い医療機関ではクリアできるとの見方もあるが、比較的算定が容易だったB項目の項目が見直されたことで、クリアは難しいとの声があがっている。


7対1入院基本料から10対1入院基本料への移行を後押しするとみられていたのが病棟群単位の届け出だ。2016年4月から2年間、病棟群単位で持つことが可能になる。つまり、1つの病院に7対1病棟と10対1病棟が存在することを認めたわけだが、2017年4月1日以降は、7対1病床は60%以下にしなければならないと条件が付いた。そのため、当初予想されていたほど、10対1への移行が進まないとの見方もある。一方で、地域包括ケア病棟は手術・麻酔が包括範囲から除外されており、中小病院などでは7対1から地域包括ケア病棟への転換を進める医療機関も少なくないとみられている。


一方で、特定集中治療室とハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度も見直された。特定集中治療室等の重症度の見直しでは、A項目の「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」の3項目にのみ該当する場合は重症度の基準を満たさないこととした。一方で、B項目に「食事摂取」や「危険行為」などの項目を追加し、せん妄や認知症の患者などを評価する。基準を厳格化した一方で、患者の割合は引き下げた。ただ、特定集中治療室の中でもがんなどの術後の救急を受け入れている医療機関や、7対1の堅持が難しい医療機関では、ICUやHCUを廃止し、7対1を堅持する医療機関も出るとの声も出ている。



http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/021500632/?ST=ndh
厚労省、「先駆け審査指定制度」で5品目を指定
審査期間を半減へ、医療機器は2品目

2016/02/15 20:50
小谷 卓也=日経デジタルヘルス

 厚生労働省は、「先駆け指定制度」の対象となる5品目を発表した。通常の「新医療機器」の場合、12カ月を目標に審査を行うが、この制度の対象となることで審査期間は6カ月に短縮することが見込めるという。なお、選ばれた5品目のうち、医療機器は2品目含まれる(残り3品目は再生医療等製品)。

 先駆け審査指定制度は、対象疾患の重篤性など、一定の要件を満たす画期的な医療機器、再生医療等製品について、開発段階から対象品目に指定し、承認に関する相談・審査で優先的な取扱いをすることで、承認審査の期間を短縮することを目的としたもの。2014年6月に厚生労働省が取りまとめた「先駆けパッケージ戦略」の重点施策や、「日本再興戦略」改訂2014を踏まえて導入した制度である。

 今回は、2015年12月までに指定申請があった医療機器6品目、再生医療等製品13品目、体外診断用医薬品2品目の中から、5品目を指定した。選ばれた医療機器2品目は次の通り。

■チタンブリッジ(甲状軟骨形成術2型)
発声時に声帯が過剰に閉鎖することで声に障害の出る内転型痙攣性発声障害において、その閉鎖を防止する手術法(甲状軟骨形成術2型)で用いられるチタン製の蝶番型プレート。複数の国内大学と共同でノーベルファーマが開発を行っている。

■癒着防止吸収性バリア
トレハロースを腹腔内全体に注入し、腹腔内の細胞膜に結合(水素結合)させることで、臓器や腹膜の術後癒着を低減させるものであり、東京大学・大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻・鄭 雄一教授らのシーズをもと大塚製薬工場が開発を行っている。



http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03162_01
【対談】
科学的根拠が変える教育と医療政策

津川 友介氏(ハーバード公衆衛生大学院 リサーチアソシエイト)
中室 牧子氏(慶應義塾大学 総合政策学部准教授)
週刊医学界新聞 第3162号 2016年02月15日

 エビデンス・ベースト(EB)の思考が主流になっているのは,臨床医学に限らない。今,教育や医療政策の分野では経済学の手法を用いたEBによる政策立案が注目されている。

 「少人数学級に効果はあるのか」「良い先生とはどのような教師か」といった教育現場の疑問に対し,エビデンスを基に平易に解説し話題となっている『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者であり教育経済学者の中室氏は,教育の分野でEBによる政策立案を提言している。また,医療政策学者の津川氏は,医療政策にもEBの視点を取り入れるべく米国で研究に臨み,医療政策・医療経済学分野のエビデンスをブログ「医療政策学×医療経済学」で紹介している。本紙ではEBにいち早く注目している両氏による対談を企画。EBの思考が教育や医療政策に与えるインパクト,それをどのように政策へと反映させていけばよいかについて,日米の比較を交えながらお話しいただいた。

限られた資源で幸福度を最大化する

津川 中室先生の『「学力」の経済学』を拝読しました。自分の経験を元に皆が思い思いのことを言っている日本の教育界に,エビデンスの風を吹き込む素晴らしい著書だと思いました。

中室 ありがとうございます。

津川 特に興味深かったのは,「テストで良い点を取ればご褒美をあげる」よりも,「本を読んだらご褒美をあげる」ほうが学力を上げる効果があったという研究の話です。医療政策の世界でも,ペイ・フォー・パフォーマンス(P4P)といって,病院がガイドラインに則った治療法を提供する,または患者さんのアウトカムが良ければボーナスを与える支払い方式があるのですが,どちらも患者さんの予後を改善しないというエビデンスがあります。P4Pのボーナスの大きさが相対的に小さいからではないかとか言われていますが,ひょっとしたら子どもの学力と同じように,患者さんのアウトカムを良くしろと言われてもどうすればよいかわからない病院も多いのかもしれません。示唆に富む研究結果でした。

中室 医療政策と教育には共通する部分も意外とあるのかもしれませんね。津川先生は,なぜ医療政策の領域に関心を持ったのですか。

津川 臨床医として患者さんを診ていたころ,医療提供者と患者のニーズがどこかうまくかみ合わないことが多々あり,医療システムのゆがみに問題意識を抱いたからです。「医療政策にEBを持ち込むことが解決の道筋なのでは」と学びの場を求め渡米しました。

中室 私がEBに注目するようになったのは,世界銀行にエコノミストとして勤めていた2000年代です。ちょうどエビデンスという言葉が開発分野で一般的になり始めた時期で,特に教育や医療といった生活の「質」についての援助で強く意識されるようになっていました。財政赤字を抱えながらも発展途上国を援助する先進国が,援助の効果検証を自国民から求められるという背景があったからです。

津川 経済学はお金のことを研究する学問であるかのような誤解を受けることがありますが,実際は「限られた資源をどう分配し,人々の幸福度を最大化するか」を研究する学問ですよね。

中室 その通りです。教育や医療はお金の話を避けがちです。でもその発想は間違っていて,経済学の根底には,何かにお金や時間を使えば別のものには使えなくなるというトレードオフの原則があります。トレードオフがある以上は,根拠を持って費用対効果を示すことが必要になるのです。

津川 教育も医療も,限られた資源を有効活用する視点を持ち合わせることで,教育の達成度や健康を最大化する道が広がるでしょう。そのためにはEBによる政策立案が重要になります。

教育にエビデンスが必要とされるようになった理由

中室 エコノミストから大学教員となった私は,日本の教育政策が世界の潮流からあまりにもかけ離れていることに驚きました。政府のある有識者会議では,出席者個人の経験則のみによって意見が語られていたのです。

津川 その昔データがなかったころは,「行政は経験と勘と度胸」という“格言”があったと,私もある行政の関係者に聞いたことがあります。

中室 個人が自分の経験に基づき訴えることも重要ですが,今は科学的なエビデンスを用いて語ることが政策には求められているわけです。英国の経済学者,アルフレッド・マーシャルの言うWarm heartsとCool headsを持ち合わせなければなりません。

津川 教育では,どのような経緯でEBの必要性が生じたのでしょう。

中室 教育への政治的な介入を排すこと,財政難の中でも教育の質を高めることの2つの目的からです。1997年から貧困削減政策が始められたメキシコでは,セディージョ大統領が「政権によって教育への取り組みが変わるのはよくない」と大規模な「ランダム化比較試験(RCT)」を指揮し,EBによる教育政策を実行しました。

 また,2001年には米国ブッシュ政権下で「落ちこぼれ防止法(No Child Left Behind Act)」が可決されました。財政難を抱える中,政策にエビデンスがなければ予算をつけないと表明し,EBによる教育政策へと大きくかじを切りました。法律には「科学的な根拠に基づく」という文言がなんと111回も用いられたのが象徴的です。

津川 とことんエビデンスで議論していこうという潮流になったわけですね。

中室 そうです。ただし,私は全ての政策をエビデンスに基づいて決めるべきとは思っていません。障害のある子どもの教育にコストがかかるからといってそれをやめる理由はありません。

津川 「エビデンスは唯一の解ではない。あくまで政策立案のための判断材料」という位置付けは,医療政策でも同様に欠かせない視点ですね。

国民が納得できる政策なのか

中室 EBによる教育は近年日本においても注目されるようになりました。財政赤字を抱える日本では,限られた資源をどう効率的に使うかが問われているからです。しかし,教育政策の議論の中では「教育は数字では測れない」と発言する教育学者がいまだにいるのも事実です。間違いではないにせよ,それを言い訳にEBによる教育政策を進めないとしたら,納税者である国民に対して説明責任を果たせません。

津川 エビデンスは,どうお金を使うとどのような効果が出るかを,国民に納得できるように示せる有力な判断材料なわけですからね。

中室 昨秋出席した政府の行政改革推進会議・行政事業レビューでは,教育政策上の目標に「教員増」が掲げられたことに対し,「子どもの成果を教育政策上の目標にすべきで,教員の数を増やすことは目標にはならない」と反対の声が上がり,議論が紛糾しました。「人を増やす以外方法はない」と思考停止するのではなく,どうすれば効率的な資源配分ができるかをデータを基に考え,政策立案すべきなのです。

津川 政策の定量的な評価に当たっては,まず何を測定するかのアウトカムを決めなくてはいけません。医療なら健康やQOL,教育であれば学習成果でしょうか。全ての政策にはゴールがあるわけですから。

因果関係を明らかにすることを念頭に置いたデータ設計を

中室 その点,EBによる教育というのは,医学に比べ10年は遅れていると思います。

津川 確かに,ゴードン・ガイヤットらがEBMの考えを提唱し,北米で広まり始めたのは1990年代。今や,日本の臨床医学においてEBMを知らない医師はほとんどいないでしょう。RCTはゴールドスタンダードを超えてもはやデフォルトの世界です。

中室 それは素晴らしいことですね。

津川 ただ,臨床医学にEBが定着した一方,日本における医療政策となると,EBの理解は大きく遅れをとっているのが現状です。

中室 なぜ政策分野ではEBが浸透していないのでしょうか。

津川 臨床試験のデータが豊富にある臨床医学とは異なり,データがほとんどなかったからだと思います。あったとしても,使えるほど精緻なものはまずありませんでした。

中室 教育もデータの質の問題や不足の悩みは尽きません。最近では,データを用いて議論することも抵抗なく受け入れられるようになったものの,残念ながら単純な棒グラフや円グラフを提示して「エビデンスだ」と言う人が少なからずいるような状況です。

津川 単なるデータや数字を出してもエビデンスとは呼べませんね。ロバストな統計解析方法で解析されたものだけがエビデンスと呼んで良いものだと思います。

中室 誤解の原因として,「相関」と「因果」が混同して使われていることも問題です。「こうすればこうなるだろう」と想定された原因と結果が,必ずしもそうではないことは往々にしてあります。もっともらしい想定こそ検証すべきで,それには因果関係を明らかにすることを念頭に置いたデータ設計が不可欠になるのです。

津川 臨床医学のエビデンスレベルと同じような概念が,医療政策や教育政策にも使われるべきかもしれません。

中室 毎年,全国の小学6年生と中学3年生全員を対象に行う全国学力・学習状況調査は,「追跡調査」の概念がないために,毎年コホートの違う人を悉皆調査する形になってしまっています。因果関係を明らかにする目的が十分に意識されていれば,こうした調査はもっと効果的に活用でき,データ不足に泣かされることもなくなるのです。

ランド医療保険実験の成果

津川 医療政策のRCTは莫大な費用がかかります。例えば,医療保険に関する大規模RCTには1970年代に米国で行われたランド医療保険実験があります。これは私のアドバイザーであるジョセフ・ニューハウス教授が行った実験で,現在の貨幣価値で約300億円もの研究費が投じられ,米国6市に住む2750世帯を対象に実施されました。

中室 この研究のためだけに保険会社を設立し,検証が進められましたね。

津川 ええ。当時の米国では,医療費の自己負担割合が増えることで,患者の受療行動はどう変化するかの解明が課題でした。当初は,「自己負担割合が増えると病院に行かなくなり,健康状態が悪化する」という,極めてもっともらしいロジックが考えられていました。しかし実際に研究してみると,最も貧困で健康状態の悪い6%の人たちを除いて健康被害はほとんどなく,なおかつ医療需要を抑制できることがわかったのです。結果は今なお米国議会で「ランド医療保険実験では……」と国会議員にたびたび引用されるほど伝説的な研究になっています。

中室 ランド医療保険実験のような大規模なRCTは一見費用が巨額でも,将来にわたって無限に医療保険を払い,国の医療費が膨らみ続けることを考えれば,費用対効果は明らかに高いと言えます。また,新たにエビデンスが見いだされることで,さらに個別性に応える政策をオプションとして効果的に打てるわけですから,後々にまで効果を発揮する。こうした実験にこそお金をかけるべきだと思います。

データは国益,インフラという意識を持つべき

中室 翻って日本はどうかというと,エビデンスをつくり政策に反映させることに対し,政府は消極的で極端にお金をかけていません。

津川 それが顕著なのがデータの扱いです。米国ではデータクリーニングや研究のサポートは,国の予算がついた独立機関で常勤職員が行います。研究者は研究できる状態にされたデータを用いて研究を行い,タイムリーに発表します。そして,政策立案者はそれを参考に,エビデンスに基づいた政策をデザインするという好循環ができています。オバマケアのデザインの際にも数多くの医療政策,医療経済学のエビデンスが取り入れられました。その点日本では,教員や博士課程の学生が自らデータクリーニングを行っているため,政策に必要なエビデンスをタイムリーに提供することは難しい状況だと思います。

中室 社会科学分野も,大型研究を行う多くの研究者の“ボランティア精神”によってデータ収集とクリーニングに労力が割かれているため,一刻も早く改めなければなりません。

津川 正確なエビデンスを基に政策をデザインすることは国益につながります。そのため国がきちんと財源を投入し,データを整備して提供することが不可欠です。日本のように政府が研究者にデータだけを渡して「後はご自由に」では,データクリーニングの段階で万が一ミスが起きてもそれをチェックする方法がありません。

中室 税を納める国民も,合理的な使途が示されなければフラストレーションをためることになってしまうでしょう。政府には,データ整備は道路や電気と同じ「インフラ」という認識を持ってもらいたい。

PDCAの役割分担が急務

津川 日本ではエビデンスの構築と政策立案の役割が混在していることも,成果をわかりにくくしている要因だと思います。本来政策は,1階部分がエビデンス,2階部分は政治的判断と,2階建て構造になっているべきです。ところが,日本ではこれらがあいまいになっているため,どこまでが科学的にデータで証明された部分で,どこからが政治的に決まった部分かが国民にはわかりづらい。エビデンスが全てではないので,実現可能性が低ければ政治的に妥協点が模索されます。そのため,どこからどこまでがエビデンスなのかを示す透明性を保つことが重要になります。

 そこで,データ解析からエビデンスをつくるまでの作業はアカデミアに任せ,政策立案は行政が担うという役割分担をするのが良いと思います。

中室 私も同感です。日本の行政はPDCAサイクルの全てを自分たちで抱え込んでいる。それでは資源配分にゆがみが生じかねません。

 また,「有識者会議」の在り方についても見直しが必要です。現状は研究者のみならず,さまざまなステークホルダーが参加しているため,要望に応じて広く薄く予算を配分することを追認するような機会になってしまい,予算の「選択と集中」を妨げています。現場の声を丁寧に聞き,予算配分することは必要だと考えますが,資源に限りがある中では,同時に「選択と集中」も欠かせません。

 そこでPDCAのPlanとCheckに,もう少しエビデンスを取り入れられる仕組みが必要になるのではないかと思っています。

津川 そうですね。米国の良いところは,アカデミアによるエビデンス構築と,行政などによる政策立案を明確に分けながらも両者に人事交流があり,政策に応じてその分野に精通した人物をアカデミアから起用していることです。一流のトレーニングを積んだ人の参画が可能になるため,質の高い政策がつくられます。

将来のリターンを見越した戦略的な投資を行う

中室 その辺りは,米国政府は非常に戦略的ですよね。ランド医療保険実験に代表される大型研究には政府が積極的に出資し,研究者に検証させることで政策の空白を埋めていく。さらにはその研究者をノーベル賞候補へと押し上げることまで狙っているのです。

津川 米国は,研究する,知識をつくる,そしてイノベーションを起こすことに,戦略的に投資して発展してきました。公共工事のようなすぐにリターンが期待できる分野にのみ投資するのではなく,10年,20年先の国はどうあるべきかという大きなリターンを見通した投資がなされています。

中室 特に,社会共通資本である医療と教育はリターンの大きな領域ですね。今後,日本にも「データはインフラ」という共通認識が定着し,EBがより浸透することが望まれます。

津川 一つのテーマに複数のエビデンスが生まれ,政治の場でエビデンス同士のぶつかり合いが起こるようになれば,より質の高い政策が提言されます。それこそが「成熟した政治」の姿とも言えます。

中室 さらには,どのエビデンスが政策にふさわしいのか,それを判断する国民のリテラシーが向上していくことも大切になってくるでしょう。

(了)

なかむろ・まきこ氏
1998年慶大環境情報学部卒。コロンビア大で経済学博士号取得。日本銀行や世界銀行での勤務を経て,13年より現職。日本銀行では,調査統計局や金融市場局において実体経済や国際金融の調査・分析に携わり,世界銀行では,欧州・中央アジア局において労働市場や教育についての経済分析を担当した。専門は,教育を経済学的な手法で分析する教育経済学。15年10月からは政府の「教育再生実行会議」委員を務める。著書に『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン),今春には津川氏と共著の『「原因」と「結果」の経済学(仮)』(ダイヤモンド社)を刊行予定。

つがわ・ゆうすけ氏
2005年東北大医学部卒。聖路加国際病院にて研修後,10年に渡米。12年にハーバード公衆衛生大学院にて公衆衛生学修士号取得。ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センター/ハーバード大医学部の一般内科リサーチフェロー,世界銀行コンサルタントを経て,15年より現職。ハーバード大医療政策学博士課程にも在籍し,医療政策のインパクトの定量的評価方法を学んでいる。専門は医療政策学,医療経済学,統計学(計量経済学を含む)。ブログ「医療政策学×医療経済学」。



http://www.yomiuri.co.jp/local/iwate/feature/CO021651/
震災5年 医療はいま
(1)応援医師の負担 重く

2016年02月16日 05時00分 読売新聞

 昨年8月23日朝、岩泉町の国道で、乗用車が山の斜面に乗り上げて横転し、運転していた男性が死亡する事故があった。亡くなったのは、県立二戸病院付属九戸地域診療センターの医師高橋司さん(当時72歳)。東日本大震災の津波で被害を受けた陸前高田市の「高田診療所」に応援医師として向かう途中だった。

 「山田病院に以前勤務していたことがあり、『沿岸の人たちにはお世話になったから』って笑顔で話していたんです」。同センター事務長の中野栄司さん(60)は不幸な事故を悲しむ。高橋さんの当日の診察時間は午前11時~午後4時。翌日はセンターで診察があり、往復8時間以上の道のりを日帰りするつもりだったらしい。通常は県医師会が手配するタクシーを利用するが、午前5時台に九戸村の自宅を車で出て、7時頃に事故に遭ったとみられる。「当日は(体力的に)大変だったのかもしれない」。中野さんは推測する。

■常勤医なし

 病院と診療所計11か所のうち10か所が被災した陸前高田市の医療体制を支援するため、県医師会が2011年8月に開設したプレハブの高田診療所の診療体制は厳しい。常勤医は一人もおらず、県内外から派遣される応援医師に支えられている。昨年10月までに派遣された医師や看護師は延べ3866人に上った。

 開設時から約40回派遣された岩手医科大准教授の鈴木順さんは、心療内科の応援医師の日程調整も行う。飛行機を使う北海道の医師が悪天候で来られなかった際は、県内の医師に掛け合い、診療に空白が出ないようにした。鈴木さんは「県外の医師が応援に来る際は数日間抜ける穴を他の医師にカバーしてもらわなければならない。医師を派遣する病院の負担も大きい」と語る。

■患者1人に9分弱

 津波で全壊した県立大槌病院(大槌町)でも、応援医師への負担は重い。仮設の病院の常勤医は、外科1人、内科4人の計5人。週2日の皮膚科や、週1日の眼科、整形外科は、盛岡市や釜石市から来る医師が診察している。

 病院によると、整形外科の応援医師には、昼休みがないこともある。昨年12月のある日は、午前9時~午後6時の9時間、1人で61人を診察した。患者1人あたりの診察時間は平均9分弱。坂下伸夫院長は「整形外科などは再来が多く、予約患者でいっぱい。新患を受け付ける余裕はない」と打ち明ける。所属先の医療機関の都合で応援医師が来られず、整形外科の患者を専門外の外科医が診ることもある。

 大槌病院の眼科に通う町内の仮設住宅の女性(73)は、診察日が近づくとカレンダーに印を付ける。眼科の診察は週1回で、好きな時に受診できるわけではないからだ。女性は「診察日が増え、いつ行っても同じ先生がいてくれるのが理想だけど、仕方がない。不便はみんな承知している」と話す。



http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20160216-OYT1T50009.html
診療報酬改定 「かかりつけ」の普及進めたい
2016年02月16日 03時02分 読売新聞 社説

 医療費の膨張を抑えつつ、超高齢社会のニーズに合った質の高い医療を提供する。その体制作りを前進させたい。

 2年に1度の診療報酬改定の具体的な内容が、中央社会保険医療協議会で決まった。4月から適用される。

 重症者向けの急性期病床の要件は厳しくする一方で、退院支援に積極的な病院や在宅医療への報酬を手厚くする。「病院依存」からの転換を図った前回改定の流れを加速させる狙いは妥当である。

 人員を手厚く配置し、高度な機器を備えた急性期病床が過剰になり、リハビリ重視の回復期病床が足りないのが、目下の問題点だ。症状の安定した高齢者が、入院費の高い急性期病床に多数とどまり、医療費を押し上げている。

 前回の改定後に削減された急性期病床はわずかでしかない。回復期向けなどへの転換をさらに促す必要がある。退院後の受け皿作りは、介護施設の整備も含め、介護保険と一体的に検討すべきだ。

 持病があっても在宅で安心して暮らせるよう、「かかりつけ」機能を重視した点も、今回の特徴だ。身体疾患を併せ持つ認知症患者の主治医に対する報酬を新設する。在宅医療専門の診療所の開設も、新たに認める。

 大病院を紹介状なしで受診する患者には、初診5000円以上、再診2500円以上の定額負担を導入する。かかりつけ医との役割分担を明確にし、軽症者の大病院への受診を減らすのが目的だ。

 大病院の勤務医の負担軽減につながることも期待したい。

 患者の服薬情報を一元管理する「かかりつけ薬剤師」に対する報酬も新設する。医師と連携し、重複投薬の防止や残薬の解消に努める。必要に応じて、患者宅で訪問指導を実施する。

 複数の持病を持つ高齢者が多種類の薬を飲み、副作用でかえって体調を崩す例が目立つ。薬剤の適正な使用は、費用抑制だけでなく、患者のメリットも大きい。

 特定の病院の処方箋を主に扱う「大型門前薬局」については、かかりつけ機能が不十分だとして報酬を大幅に減額する。後発薬(ジェネリック)の普及を促すため、価格を下げる措置も講じる。

 課題は、かかりつけ医・薬剤師の量と質の確保である。

 患者にとって、信頼できる開業医らが身近にいなければ、実効性は上がるまい。地域の医師会や薬剤師会の姿勢が問われる。

 限りある財源と人材を有効活用していくことが大切だ。


  1. 2016/02/16(火) 07:08:05|
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