Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

2月10日 

http://news.livedoor.com/article/detail/11164521/
日本の医師不足は深刻…現場の余裕のなさが招くもの
2016年2月10日 7時0分 NEWSポストセブン

 日本全国にある約8000の病院(ベッド数が20床以上の医療機関)のほとんどは、医師不足や、収入不足、経営難などに悩み、困窮状態にあるという。医師で、『本当の医療崩壊はこれからやってくる!』(洋泉社)などの著者である本田宏さんが言う。

「欧米では、キリスト教の影響などで病院への寄付は珍しくありません。しかし、日本の病院は、国や県による公立か、地元の名士や資産家などが設立してきた歴史があり、住民が寄付して、貧しい人のために役立てるというボランティア的な発想は育ちにくく、民医連のような考え方はなかなか浸透してきませんでした」

「民医連」とは全日本民主医療機関連合会のこと。「無差別平等」の医療を理念として、あらゆる患者に差別することなく適切な医療を提供することを目指している。全国150以上の医療機関が加盟している。したがって、民医連に加盟している医療機関では、他の病院で入院を拒否された認知症患者を受け入れたり、生活保護受給者に無料で医療を提供したりといったことも行われる。

 しかし、現在の日本では民医連のような理念を持つ医療機関は少数派なのだ。本田さんが続ける。

「今、医療の現場は、医師不足のうえに、医療費抑制のために診療報酬は切り下げられる一方です。そのため経営難で、特に地方では、病院がなくなってしまうところも珍しくありません。そうしたしわ寄せは確実に患者さんを直撃して、救急患者の受け入れが困難でたらい回しにあったり、長期入院ができずに病院を転々としなければならないなど、医療難民が出てきます」

 本田さんが指摘するように、日本の医師不足は深刻だ。1980年代に、医師過剰が問題視され、大学医学部の定員が大幅に削減されて以来、その問題は深刻化。2008年にようやく見直されたが、医師の養成には時間がかかるため、いまだ問題は解消されていない。また、診療報酬が下がることで、長期入院患者は点数が低く収入にならないからと、医療現場では倦厭(けんえん)され、結局在宅介護など、各家庭に負担が重くのしかかっている。

「埼玉県の久喜総合病院は、市から36億円近くの補助金を受けて5年前に300床の地域中核病院として設立されました。しかし、医師や看護師不足で、充分に稼働ができず、今年1月に経営困難を理由に売却が発表されました。医師不足、診療報酬削減に加えて、消費増税が大きな打撃となったのです。医療機関は薬剤や医療機器などの購入に多額のお金が必要ですが、もちろん消費税がかかります。でも、患者さんからいただく医療費に消費税はかけられません。結果として病院の負担ばかりが大きくなっているのです」(本田さん)

 にもかかわらず、そうした状況はあまり国民に実感として伝わっていない。むしろ、新聞などの見出しには、“医療費は過去最高”“医師不足解消”などの言葉が躍っている。

「たしかに、医療費は過去最高です。しかし、GDPあたり医療費はようやくOECD(経済協力開発機構)加盟国平均を少し上回っただけ。また、医師不足解消といってますが、それもとんでもない情報操作なのです。

 日本では国民1000人あたりの医師数が2.2人ですが、これはOECD加盟国平均の3.3人には遠く及ばず、先進国のなかでは最少。それに、医師数は年々増えているといいますが、日本では100才を超える高齢医師まで含めて水増ししてカウントされています。医療現場で実働している医師数が正確に把握されていないため本当に増加しているのかはなはだ疑問です」(本田さん)

 こうして聞くと、日本の医療現場が、いかに深刻な局面にあるかが見えてくる。

 医師不足と経営悪化で、医療現場は余裕を失い、結果として引き起こされる医療事故や医療ミス、また、忙殺された医師が発してしまった心ない言葉について、患者が裁判を起こす例も急増し、“モンスターペイシェント(患者)”が登場するなど、悪循環を招いているのだ。こうした問題が解消されない理由は、国の方針にあるという。

「厚労省は、以前から医療費亡国論を唱えて医療費削減を目標に掲げています。そのため、病院が潰れれば、医療費は削減できて、むしろラッキーくらいにしか思っていない。だから病院側は、国によってどんどん削減される医療費のなかで常に苦闘してきたのです。民医連のような取り組みは理想ですが、一般の病院で導入することは簡単ではありません。

 でも、患者さんからすればそんな事情はわからない。病院は儲かっていると思っている。厚労省の政策で疲弊している医療現場の対応について患者さんが、『○○病院でこんなひどい目にあった』と厚労省に相談すると、『それはひどい病院ですね』と自分たちの政策を棚に上げて答えるんです。すると、厚労省の責任はスルーされて、あの病院はひどい、とますます病院が悪者になる。国が医療費抑制策を変えない限り、医療現場は変わりません」(本田さん)

※女性セブン2016年2月18日号



http://www.yomiuri.co.jp/national/20160210-OYT1T50019.html
精神科閉鎖で減収見込み、市立病院の移転白紙に
2016年02月10日 11時40分 読売新聞 山形

 施設の老朽化が進む米沢市立病院(山形県米沢市相生町)の建て替え計画を巡り、これまで検討されてきたJR米沢駅前への移転が白紙に戻されたことが分かった。

 同病院が8日、市側に伝えた。関係者によると、医師不足で今年3月に精神科が閉鎖されることによって大幅な減収が見込まれ、財政的な負担が大きいことが主な要因という。同病院は今後、建設用地を含めて計画を練り直す方針だ。

 同病院は2012年11月、「市立病院の在り方に関する検討委員会」を設置し、建て替えの検討に入った。14年4月にまとめた基本構想案の骨子で、新病院について救急医療の強化やがん医療の充実、人材の確保・育成、健全運営などの基本方針を示した。

 同病院はこれまで、現在の場所での建て替えのほか、市南部や東部への移転の可能性を検討してきた。現在の場所での建て替えは建設作業の効率が悪く、移転する場合もバス路線の確保などが課題となっていた。

 こうした中、昨年初めに、米沢駅周辺の住民から駅前商店街活性化のため、市立病院を誘致する動きが出てきた。関係者によると、候補地は駅前の一角にある民有地で、面積も十分にある。「路線バスの発着点である駅前なら通院に便利」との考えも、誘致に名乗りを上げた理由の一つだという。住民側が昨年2月、土地を所有する会社に同病院の移転を打診したところ、「市民の役に立てるなら」と前向きな回答があり、病院側も駅前移転に向けた協議を進めてきた経緯がある。

 しかし、昨年12月に市議会の同病院建て替えを検討する特別委員会で、同病院は、精神科を3月末で閉鎖する方針であることを報告した。同病院は、3人いる医師のうち2人が退職し、人材確保のめどが立たないことを理由に挙げた。これまでの赤字の合計「累積欠損金」が88億円に上る同病院にとって、精神科閉鎖による診療報酬など約6億円の減収は大きな負担になるという。

 一方、市はまちづくり総合計画の中で「病院建て替え」を重点事業の一つに位置付け、厳しい財政事情の中でも10億円の予算を充てる方針を示しており、建て替えを積極的に進める姿勢を示している。精神科についても、中川勝市長は「休止」の方針を示し、再開の可能性を模索する。

 同病院事務局は、「精神科閉鎖による医業収益減少は大きな問題。建て替え計画がなくなるわけではないが、まず減収の影響を詳細に分析する必要がある」としている。(山井健史)

 ◆米沢市立病院=外来患者の診療などを担う外来棟と事務局がある管理棟は1965年に、入院患者の病棟が84年に完成し、いずれも老朽化が進んでいる。2014年度の決算では、歳入に当たる「収益的収入」は約69億6500万円、歳出に当たる「収益的支出」は約101億7000万円で、赤字である「純損失」は約32億円となった。14年度は退職金約25億9000万円を支出に計上したため、赤字が膨らんだという。



https://www.m3.com/news/iryoishin/397208
シリーズ: m3.com意識調査
「救急病院に丸投げするクリニック」「医の心が少ない経営」
「最期をどこで迎えたい?――在宅医療について」自由記述 4

レポート 2016年2月10日 (水)配信高橋直純(m3.com編集部)

 1月28 日から2月4日にかけて、m3.com意識調査で実施した「最期をどこで迎えたい?――在宅医療について」において、在宅医療に関するたくさんのご意見、体験談が寄せられました。

 貴重なご意見を、医療維新内で5回に分けてご紹介します。たくさんのご回答ありがとうございました。

【介護ビジネスの問題】
・金儲け目的の有料老人ホームは潰さないといけないでしょう。【開業医】 ・劣悪な介護ビジネスの利用者が、救急搬送を使い、高度医療を受けていることに、疑問を感じる。【勤務医】
・オムツ交換等のために介護士に夜間車を運転させて患者宅を回らせるなんて、馬鹿げているし危険。医者に夜間、患者宅に看取りに行かせるのも危険。労せずして儲けるのは雇用者だけなんて世界、誰もあえて就職したがらないだろう。在宅なんか推奨するより、大規模介護施設で集約的に世話する方向に持って行った方が、資源の無駄遣いも防げるし、家族の疲弊も防げると、ほとんどの人が思っている。【勤務医】
・介護保険が始まってから、医の心が少ないコマーシャルベースでの経営をする機関が多くなったように思われる。規制緩和の名の下で儲け優先主義の時代が進んでいる。【開業医】
・居宅サービス業者などの抱え込みでの在宅医療や訪問診療が目に付く。そういうケースでは営利目的で質の低い医療が行われていることが多い。【勤務医】

【都市部以外の意見】
・人口もリソースもある程度確保できる大都市圏では、今後一定期間提供可能であっても、人口が急速に減少している農村地域や過疎地域では、在宅医療は持続困難だと思います。20年後には我が国の各地で公共施設を1カ所に集中させたコンパクトな町づくりと現在の養護・特養や療養型病院を一体化した新たな仕組みが主流になると予想します。住めば都、施設や病院、診療所を自宅以上に住み心地のよい場に改善していくことの方が現実的ではないかと思います。【開業医】
・都会と違い、私が勤めている田舎では、患者本人に在宅希望があっても、その家族が介護が大変、面倒との理由で入院を要求してきます。さらに、最後の最後まで何らかの処置を行い、生き長らえさせることを強要してきます。在宅医療の話をしても、「見捨てる気か!」の一点張りで、聞く耳を持たない人が多いです。小生の説明が悪いからとか、家族と向き合っていないからといったご批判も受けますが、田舎では大概の患者家族が上記の状況です。うまく在宅医療に移行できた患者さんでも、小さなことでも家族が大騒ぎし、真夜中に救急車で当院へ直行し、時間に関係なく「主治医出てこい!!」です。【勤務医】
・在宅を担保する人材が田舎では圧倒的に不足しており、増えるメドもない。【開業医】

【現場の在り方について】
・時間を取って患者にインフォームドコンセントをするべきだと思う。往診が入っているにも関わらず救急搬送されてくる心停止患者が多すぎる。【勤務医】
・在宅での緩和医療としての強心薬の使用の必要性を感じる。【勤務医】
・都会の老衰の高齢者は、食欲低下等ですぐに病院に連れてこられる。今後は都会でも在宅医療を活用し、認知症や悪性腫瘍の終末期は在宅で看取ると良いと思う。病院がないような離島では終末期は枕元に水だけ置いておき、それも飲まなくなったら看取るようです。【勤務医】
・在宅で診療をしているのに、その患者の調子が悪くなった時に、救急車に丸投げする無責任なクリニックが結構ある。【勤務医】
・在宅医療に関わっている医師の意識が問題。真摯な方もおられる一方で、国の政策に導かれて在宅の特化している医師もいる。後者の場合は包括診療ということでほとんど検査をしないこともあり、病状が悪化して紹介された時に唖然とすることもしばしばです。【勤務医】
・急変時対応を在宅医療を契約する前に絶対に行っておくべきである。無駄に救急車を呼びすぎている印象があり、救急医としては、CPAの場合、挿管、心臓マッサージなどを蘇生フルコースでやらざるを得ない。本当に蘇生行為は必要か、考えさせられる場面が非常に多く悩ましい思いがしてならない。【勤務医】
・在宅を特別な医療と考えるのではなく、一般診療を行っている先生方には、御自分の患者さんが、何かあり病状や様態が悪くなったとき、ちょっと様態を見に往診に行くのと同じ考えで始めていただきたいと思います。たぶんそれは、どの先生も普段から行っていることと思いますし、同じことだと思います。その後、在宅の流れを見て知って連携をしていかれれば良いと思います。在宅は、特別なものではありませんし、普通の診療の中の一形態です。【開業医】
・在宅医療は、家族労働力を使って、そのスポットに医療従事者が関わるもの。いわば、家族が主役。しかし、医者のマインド(?)、訪問看護師の崇高な使命感が全面に出て、家族が彼ら彼女らに導かれている、一種独特の宗教すら感じる世界。もっと家族の日常に即した医療や看護ができないものかと思う。在宅医師が、患者宅に入るや否や、「やあああ!〇〇さん、元気?ん?どうだい、今日の調子は?!」。ぞっとする。友達にだって、あんな風な話しかけはしないよ。おまけに白衣を着て訪問って何?今の在宅医療は、病院医療を否定し、自分たちの領域の発展のために立場を誇示しようとして本来の姿を見失っていると思う。【勤務医】
・内科疾患で定期通院の患者が整形外科的な理由から通院できなくなる事案が多く、治療が通院可能になることにはつながらず内科的にはストレスがかかるようになる。医師が診療所を離れることは他の患者の診療にも大きく影響し、また移動中に事故に遭うリスクも背負う事になる。在宅(自宅)で死ぬという事は本人の希望があるのかもしれないが、家族には生活を大きく変えてしまう負担が発生すると同時に子孫が患者が亡くなった部屋で生活する気持ち悪さは否めないのではないか?【開業医】
・自分の家族での経験ですが、これに関わっている医師の技量をもう少し磨いてほしい。【勤務医】



https://www.m3.com/news/iryoishin/397209
シリーズ: m3.com意識調査
「1年間以上、風呂に入れず」「遠くの親戚が救急車要請」
「最期をどこで迎えたい?――在宅医療について」自由記述 5

2016年2月11日 (木)配信 高橋直純(m3.com編集部)

 1月28 日から2月4日にかけて、m3.com意識調査で実施した「最期をどこで迎えたい?――在宅医療について」において、在宅医療に関するたくさんのご意見、体験談が寄せられました。

 貴重なご意見を、医療維新内で5回に分けてご紹介します。たくさんのご回答ありがとうございました。

■体験談
・20年前、がん終末期患者の在宅を公立病院で始めましたが、当時は看護ステーションや医師会の支援もなく、夜間は家族の不安のため幾度も呼ばれて、結局自分自身が体調を崩したり、急変時の往診時にスピード取締につかまったりして、挫折した経験があります。都市部はともかく、地方では医療スタッフだけでなく社会全体で支援するくらいの体制でないと、診療報酬につられて始めた在宅医は挫折するでしょう。少なくとも、急変で往診に向かうのを嬉々として取り締まる交通警官の意識が変わらねば、免停程度で済まなくなります。【勤務医】
・理想と現実の狭間にあると思います。きれいごとを言えば在宅がベターでしょうが、現実は看ている人の負担が大きいのでそれを思うと病院なら仕事としてできると思います。実際に在宅で子供に当たる家族が看られていましたが、おむつは替えているもののふき取っておらず、大変な状態だったとお伺いしています。清拭だけで1年間以上お風呂に入っていない方もいらっしゃったし、在宅で看るってこういうことなんでしょうか。【薬剤師】
・肺がん終末期患者さん、全身状態が低下し寝たきりの状態で意欲の低下も見られ発語もなかったが、看護師の「家に帰りたい?」という問いに、涙を流しながら「帰りたい」と呟いた。家族や主治医、病棟看護師、在宅支援・調整看護師、医療相談員等と相談し自宅への外出を行った。病院では虚ろな目をしていたが、自宅に着いてからは目を開き周囲を見渡し、家族や看護師の問いにもうなずきや返事があった。病院での私たち看護師の見る姿、ご自宅での姿は明らかに違っていた。心が休まる場は患者さんによって異なるが、自宅療養あるいは看取り、どちらにせよ「家」という場所はその人らしく過ごすための大切な場所として重要なはず。患者さんやご家族が退院後安心して療養生活を送れるように、あるいは最後の時を自宅で過ごしたいという希望に寄り添えるように支えていきたい。【看護師】
・胃がんの末期状態の人が在宅医療を希望していたので訪問したが、家族が反対し、希望がかなえられなかったことがあった。【勤務医】
・現在、在宅療養専門のクリニックで非常勤(週4日)で働いています。訪問診療は在宅療養の心の支えになっているように見えます。【開業医】
・以前一人で老衰の患者を看取ったことがありますか、大変だったのでもうしたくありません。【開業医】
・看護師です。主治医から、入所されている方が終末期の状態であることを、看護師の私から家族へ伝えるように指示がありました。今後は、このような事例が多くなるのではないかと考えます。【看護師】
・正月やお盆休みに呼ばれた。【開業医】
・奥さんが在宅医療へ移行する前は、非常に不安がっておられたが、多職種のカンファレンスに参加いただき、さまざまな疑問について専門家に直接質問し不安が軽減し、スムーズに在宅医療へ移行でき、ご自宅で最期を看取られ、感謝された。【勤務医】
・末期癌の患者の希望に従って家族も同意して在宅で診ていたある日、訪問診療に訪れたら患者さん不在。家族に尋ねたら、めったに来ない親戚が数人訪れて救急車を要請して搬送されたとのことでした。【開業医】
・10数年前、ある市立病院に勤務していた。その病院の訪問看護は、当時としてはスタッフ人数が少ないにもかかわらずほぼ24時間緊急事態に対応しており、たいへん感動した。私の先輩(消化器外科)が、毎日夕方無報酬でしかも自分の車で全ての患者を往診していたことも印象深い。【勤務医】
・患者本人と家族との思いのギャップがあり、本人は自宅で、家族は病院で、という時に訪問に行くのは辛かった。【開業医】



https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/yakushiji/201602/545703.html
連載: 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
どうなる?JALの医師登録制度

薬師寺泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター)
2016/2/11 日経メディカル

JALと医師会がタッグを組んだ

 先日、日本航空(JAL)と日本医師会が、機内で発生した急病人の応急処置を医師が迅速に行えるよう、搭乗している医師を事前に登録しておく「JAL DOCTOR登録制度」を共同運用するとの発表がありました(記事)。事前に登録した医師に、客室乗務員が直接援助を依頼することで、より迅速な対応ができるというわけです。


 機内でドクターコールを掛ける時間も惜しく、直接医師に対応を依頼することで稼いだ時間が勝負の分け目になるのは、アナフィラキシーとか気道緊急の時くらいではないのかという疑問はありますが、もちろんそれで救われる人がいるかもしれません。航空機利用者にとって安全な旅行を目指すためのシステムであるので、日本旅行医学会認定医の救急医としては興味があります。

 みなさんは、飛行機の中で「この中に医師はおりませんか?」というアナウンスが流れる場面に居合わせたことがありますか?僕も高校の同級生などに尋ねられることがありますが、実は僕にはそんな経験がありません。いつでも対応できるような医師でありたいと思いますし、もちろん呼ばれたらできる限りのことはしたいです。ただ、突然起きたことに自らさっと手を上げて出て行くのは、勇気がいることであるのは確かだと思います。このシステムは機内急変対応の福音となるのでしょうか?

航空機での救急患者発生率は?

 さて、航空機内での救急患者はどの程度存在するのでしょう。少し昔のデータになりますが、1993年から1997年までの5年間で、国内線943例、国際線336例の計1279例の救急患者が発生しており、有償飛行1000便あたりの発生率は国内線1.05、国際線5.49であったという報告があります(出典:3万フィートの先進医療)。国内線なら1000便に1本、国際線なら200本に1本発生することになります。また、これに対してドクターコールを掛けたものが709件(国内線485、国際線224件)で、医師が援助を申し出た件数が438件(国内線297、国際線141件)、医師の援助申し出率は61.8%であったということです。意外に多い?

 現在では高齢化もあり、機内での急病発生はさらに増えているかもしれません。報道によれば、近年はJALだけでも国内・国際線あわせて年間350件程度ということなので、1日1件ペースで発生していることになります。

 運良く、現状そもそも医師の援助申し出率はわりと高いようですが、飛行機にいつもいつも医師が搭乗しているとは限りませんし、同じ医師という国家資格とはいえそれぞれ様々な専門分野に従事しています。たとえば喉に物を詰めたりした時、目の前の医師が普段研究を中心にしていて、しばらく臨床から遠のいていたらどうでしょう…。そんな時は医療を提供する側もされる側もお互いに躊躇してしまうかもしれませんよね。事前にどんな医師が搭乗しているか知っておき、急変時に対応してくれるかどうかが分かっていれば、航空会社としてはより乗客の安全管理に自信が持てると思います。

JALが提示した条件にもの申す

 JALはこのシステムを運用するにあたり、次のような条件を提示しています。

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 (1)登録された医師自身が飲酒や体調不良などで対応が困難な場合は、辞退することが可能
 (2)JALはドクターコールに応じた医療従事者の賠償責任はJALが負う
 (3)機内から提携先のメディカルコールセンターに連絡して、日本人救急専門医から医療助言を24時間365日いつでも得られる
 (4)機内備品のますますの充実化を図る
 (5)登録医師に空港のラウンジへの入室資格を用意する

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 それぞれにちょっと言いたいことがあるので、こっそりこの場で言っておきます(こっそりでもないか)。

(1)登録された医師自身が飲酒や体調不良などで対応が困難な場合は、辞退することが可能
 そりゃそうですよね…。絶対に対応しなくてはならないとなったら、全ての旅行がon call業務化します。登録したが最後、楽しいプライベートの旅行で酒も飲めなくなります。でも、「飲酒や体調不良などで対応が困難でない場合」は辞退できないんですかね?

(2)JALはドクターコールに応じた医療従事者の賠償責任はJALが負う
 失敗リスクを心配している医師は多いと思いますし、「良きサマリア人法」みたいに免責を法的に約束することを望む声は根強くあります。現在のところ、民法第698条に規定されている「緊急事務管理」が適応可能で、緊急時対応は応召とはみなされず事務管理とみなされるので賠償責任を負わないのではないか、という意見もあるようですが、本当に?絶対に?という疑念が拭えずにいる状況です。

それに今回の件で、JAL航空機に「医師として搭乗します」ということで急変対応を期待させたら、それは診療に従事していないとは言い切れないのではないかと思ってしまうのです。前述の通り、登録したら対応は義務っぽいし…。実際に訴訟になったという前例は日本ではないみたいですが(あったらすみません)、積極的に安心して救助に向かえた方がお互いのためです。僕自身、法律については後追いでもいいので整備されていくといいなぁと思います。

まぁJALでは民事の賠償責任は会社で負いますということなので、不安になりすぎることもないと思います。とかいいつつ、重過失の場合は賠償されないみたいなので要注意です。

(3)機内から提携先のメディカルコールセンターに連絡して、日本人救急専門医から医療助言を24時間365日いつでも得られる
 とてもありがたいことです。このシステムを維持しようというJALの意気込み(?)を感じます。急変患者を前にして冷静でいられる人は、よっぽど慣れているか、よっぽど鈍感な人ですよね。冷静に物を判断できる環境にある人と連絡を取れることは、重要なことだと思います。手を上げて急変対応に向かう気持ちを後押ししてくれると思います。

(4)機内備品のますますの充実化を図る
 そもそも飛行機の中には何があるのかということですが、JALの航空機には表のようなものが置かれています。

表 航空機内の搭載医療品・医薬品(日本航空のウェブサイトを基に編集部で作成)
02107.jpg

 新幹線では死亡確認しかできない感じ(過去コラム参照)でしたが、航空機だといろいろできそうです。アドレナリンもあるので、アナフィラキシーショックにも対応できます。そして国際線では気管挿管もできます。国内線だとBVM換気を頑張れってことですかね…。

 まぁそういうわけで、なんとか気道、呼吸、循環のサポートができるわけです。欲を言えば国内線で気道管理させていただけると救急医としてはありがたいなと思います。これがうまくいかないと数分で死んでしまうので…。

(5)登録医師に空港のラウンジへの入室資格を用意する
 医師に用意されたインセンティブです。お礼を用意された上で呼ばれたら、診療に赴く制度の中にいる限り民放698条の「義務なく他人のために事務の管理を始めた者」に当たらなくなるんじゃないかと思いますが…どんなもんなんでしょう。難しいところです。あとラウンジを利用できることに魅力を感じるかどうかがポイントです。もともとラウンジの利用ができる人にとってはもちろんインセンティブになりません。

まとめ
 なんかめちゃくちゃディスってるみたいな内容になってしまいましたが、こういった試みがあるということ事態は素晴らしいことだと思っています。始めなければ何も問題が見えてきませんし。徐々に問題点を埋めつつ、どんどんシステムを改善すれば良い話です。

 それにしても、これに登録するには医師会が発行する写真とICチップ付きの医師資格証がいるんですね…。日本医師会員なら年間5000円、非会員なら10000円の年会費が掛かります。現在2500枚発行されているということですが、これを機に自らお金を払ってでもいち早く航空機内の患者さんを助けたい医師がこぞって発行し、今後発行枚数が増加するのでしょうか。目の前の人をなんとかしたいという気持ちは共通のものだと思いますが、金を払ってでもやらせてくれとまで思う人は少数派だと思います。いろんな面で今後に期待したいシステムですね。



http://mainichi.jp/articles/20160210/ddl/k41/040/320000c
伊万里松浦病院移転問題
急ピッチ 松浦市、機構が最終判断か 伊万里市は議会が後押し /佐賀

毎日新聞2016年2月10日 地方版 佐賀県

 県境を越えた誘致合戦となっている伊万里市山代町の伊万里松浦病院の移転問題で、独立行政法人の地域医療機能推進機構(東京)は10日、長崎県医療政策課を訪れ、県の考えを確認する。一方、伊万里市長は12日に上京し、同推進機構に「市内存続」を訴える。【渡部正隆】

松浦市

 佐世保県北医療圏の病床数は長崎県の基準病床数を931オーバーしている。これが同県医療審議会の移転承認にとって最大の障害となりそう。市は県に「医療法の特例措置の適用」を求め、県も賛意を示したとされる。機構は県の意向を直接確かめ、医療審議会に移転を申請するかどうかの最終判断をする。

 審議会は3月と9月の開催。機構が決断しても3月審議には間に合わず、9月を照準に行政手続きを進めることになる。なお、松浦市は9日、市中心部の土地の無償貸与を機構側に正式伝達した。

伊万里市

 失地回復を目指して8日、市議会全員協議会を開催。病院の「市内存続」に議会の賛同を求め、了承された。市はこれを踏まえて機構に対する回答書を作成し、塚部芳和市長が12日、上京して提出するとみられる。

 全協では、機構が示した用地問題など3条件が、実は「機構が正式回答書を求めている4項目の質問」だったことを明らかにした。塚部市長は市民病院跡地の無償貸与など4項目の質問に対する回答を口頭で解説した。

 4項目中、最大の難問は地元医師会対策。機構は「市としてどう対応するか」と質問している。市長は医師会との交渉が物別れに終わった経緯は説明したが、対策の具体的な内容に言及しなかった。このため、議員から多く質問が出たという。

 執行部は「機構は『過去は水に流す』と言い、『現時点では伊万里市を移転問題から除外しない』と約束した。移転問題は逆転できる」と、強気の読みを披露したという。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/massie/201602/545729.html
コラム: 池田正行の「氾濫する思考停止のワナ」
ディオバン「事件」の誇大広告って?~その1~

池田 正行
2016/2/11 日経メディカル

 2012年某月某日、熱帯病治療薬・ワクチンの開発に携わる某大学医学部教授室にて。

秘書「先生、ノバルティスの方が『先日お留守の時にお届けした学術論文について、ぜひご紹介したいことがある』と見えているんですが、いつものようにお断りしましょうか?」

教授「いや、通していいよ」

秘書「えっ、いいんですか!?もうすぐ講義の時間ですけど……」

教授「なあに、そんなに時間はかからんさ。それに学生だけじゃなく、製薬企業の営業社員の教育も、時には必要だろうから」

秘書「(またまたかっこつけちゃって。大丈夫かしら……)承知しました」

 営業社員が教授室に入って来る。

営業社員「先生、ディオバンに『降圧を超えた効果』が証明されました!」

教授「ああ、あれね。あんな論文が出てたなんて、全然知らなかったよ」

営業社員「読んで頂けたんですね!!」

教授「(あんなもん、読むわけねえだろ)表紙見ただけだけどね」

営業社員「いやあ、お忙しいでしょうから表紙を見ていただければ十分です。Kyoto Heart Studyからまたもや素晴らしい結果が……」

教授「『素晴らしい』ってのは、どうかな。表紙を見ただけでゴミだと分かるからね」

営業社員「そんな……」

教授「この『Clinical and Experimental Hypertension』って雑誌ね。生まれて初めて聞く名前なんだよ。PubMedには載ってるけど、Impact Factorはずーっと1点台ね。まあ、Kyoto Heartの後付け解析の焼き直しじゃあ、そんなところがせいぜいだったんだろうよ。いずれにせよ、これ、ゴミね。でも、ここで捨てるとエコじゃないから、持って帰ってまとめて資源ゴミにしてね」

営業社員「はは、先生の見識には恐れ入りました。では、もう一方はいかがでしょうか?」

教授「こっちも同じ。『American Journal of Cardiology』は確かにある程度名の通った雑誌で、僕も以前総説を2、3読んだ記憶はあるよ。でも、雑誌の格やImpact Factor以前に、論文そのものの質が問題だよ。これもKyoto Heartの後付け解析の焼き直しだろ。やっぱりゴミなんだよ」

営業社員「僭越な言い方かもしれませんが、先生にはなぜ、Kyoto Heart Studyを評価して頂けないのでしょうか」

教授「(十分僭越だよ)だってKyoto Heartって、臨床試験じゃないよね。悪評紛々たるJikei Heartの弟分、GCPがかからない『大規模使用経験』に過ぎないだろ。ロサルタンのRENAAL試験みたいにGCP準拠でまともな試験をやっていれば、その効能効果で承認申請しているはずじゃないか!」

営業社員「れなうんしけん??ですか?」

教授「(こいつ、嫌がらせに来たのか)れ・な・あ・る!まあ、他の薬の試験なんてどうでもいいや。いいかい、Jikei Heartがランセットに出てから5年、Kyoto Heartが出てから3年も経つのに、バルサルタンは未だに効能追加の承認申請さえもしてないんだろ?『イカサマ試験でした』って、自白しているのも同然なんだよ」

営業社員「お言葉ですが、ランセットに載ったものをイカサマ試験とはいくら何でも……」

教授「(ふん、お決まりのトップジャーナル真理教かい)イカサマだって言っているのは、僕だけじゃないさ。Jikei HeartだってKyoto Heartだって、イカサマだってことは論文発表直後から桑島巌先生がWebで明言しているんだ。僕みたいな診療に関わっていない人間だって、とっくの昔にお見通しなんだよ。だからこんなもんが広告だなんて、臍が茶を沸かす!」

営業社員「お言葉ですが、これは広告ではなくてれっきとした学術論文です。その証拠に別刷一部につき数十ドル以上の料金がかかっています。表紙だけでなく、中身までお読みいただければ……」

教授「(もうこんな奴に遠慮することはない)確かに広告ではない。でも広告ではない理由は金がかかっているからじゃない。中身がゴミだから、広告の意味がないということだ。ランセットだろうとNew England Journal of Medicineだろうと、イカサマはイカサマだ。今やトップジャーナルそのものに日本の新聞同様の紙資源ゴミとしての価値しかないんだ。だからこいつも広告でも論文でもない。ただの紙クズだってさっきから言ってるだろ。僕は忙しいんだ。さっさとこのゴミを回収して帰ってくれ!」

***

秘書「お帰りになりました。『論文は広告じゃない。ましてや世界に誇る業績を紙クズだなんて、ひどい……』っておっしゃって、随分と憤慨した御様子でした。あれが先生の『教育』ですか?」

教授「いや……。でもあんまり頑固なもんだから……」

秘書「(どっちが頑固なのよ)先生は自分に反論する人間に全部『頑固』のラベルを貼るんですね」

教授「いや……。議論の時はだね……。柔軟性が……」

秘書「もう講義開始の時間もとっくに過ぎています.先生の話が分からない学生さんには,どうか『頑固』のラベルを貼らないでくださいね!」

 2015年12月に公判が始まったバルサルタン問題の裁判で、たった一人の被告人、つまり単独犯と断定された白橋伸雄氏は、かつてノバルティス社に所属していた生物統計家です。医師は誰一人として起訴されませんでした。その白橋氏が問われている罪は、医薬品医療機器等法(旧薬事法)66条違反の誇大広告です。その証拠とされているのは、ノバルティス社の宣伝チラシではなく、れっきとした2報の医学論文でした。Clin Exp Hypertens. 2012;34(2):153-9、Am J Cardiol. 2012;109(9):1308-14、いずれもKyoto Heart Studyの事後サブ解析論文です。

 気になる別刷の値段ですが、該当するウェブサイトによればClinical and Experimental Hypertensionの論文は54ドル、American Journal of Cardiologyの論文は31.5ドルです。合計で1万円近く(上記のやりとりが行われた2012年のレートを1ドル80円とすると当時で6800円)払わないと読めない論文が、件の大学教授の言う通りただの紙クズなのか、それとも東京地検の検察官の主張通り日本中の医師の処方行動を劇的に変えてしまった霊験あらたかな「誇大広告」なのか?その「真相」がどのように究明されるのか、今後の公判から目が離せません。


  1. 2016/02/11(木) 05:58:27|
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