Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

1月3日 

http://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%E5%92%8C%E7%94%B0%E7%A7%80%E6%A8%B9%E6%B0%8F%EF%BD%A2%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E7%95%8C%E3%81%AF%E5%AE%97%E6%95%99%E5%9B%A3%E4%BD%93%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%EF%BD%A3-%E8%96%AC%E3%81%AF%E6%8A%BC%E3%81%97%E5%A3%B2%E3%82%8A%E7%8A%B6%E6%85%8B%EF%BD%A4%E3%81%A0%E3%81%8B%E3%82%89%E5%8C%BB%E8%80%85%E3%81%AF%E9%A3%B2%E3%81%BE%E3%81%AA%E3%81%84/ar-BBo8Ynl
和田秀樹氏「日本の医学界は宗教団体のよう」 薬は押し売り状態、だから医者は飲まない
東洋経済オンライン 2016.1.3
塚田 紀史

 『だから医者は薬を飲まない』を書いた精神科医で、国際医療福祉大学大学院の和田秀樹教授によると、「薬漬け医療」の裏には、臨床・研究・教育をつかさどる医学界の“宿痾”があるという。その実像について聞いた。

 ──医学界は宗教団体なのですか。

 日本の医学界はいわば宗教団体なのだ。たとえば「血圧を下げればいい教」「血糖値を下げればいい教」「がんは切ったほうがいい教」という宗教が跋扈(ばっこ)している。宗教だから必ずしも間違っていることを言っているわけではない。問題は、私にはそれぞれエビデンス(科学的根拠)がほとんどないとしか思えないことだ。普通にいわれる根拠はほぼ二つ。一つは海外のデータ、もう一つは動物実験の結果だ。

 ──エビデンスがない?

 薬を飲んだときに血圧が下がる、血糖値も下がる、あるいはコレステロール値が下がる。これは化学反応だから、ある程度、薬理を知っていればその種の薬はできる。エビデンスとなるには、その薬により死亡率を下げた、あるいは脳卒中を減らしたといったエンドポイント(治療行為の評価項目)を5年後や10年後にきちんと実現しないとならない。日本ではその評価がなされず、外国のデータを流用していることが多い。

 外国人と日本人は体質も違えば食生活も違う。そもそも外国のデータが全部流用できるのであれば、日本で治験の必要はない。5年、10年せっせと薬を飲んでもいい根拠を外国のデータで説得する。同時に動物実験のデータも人間に使えると信じさせる。たとえば分子生物学的に見て、アディポネクチンという動脈硬化や糖尿病を防止する善玉ホルモンが出るようになるのだから、これは体にいいとされる。その薬を飲んで健康になったかどうかは本来ロングスパンで結果を見ないとわからない。

 ──高血圧治療薬のディオバン事件がありました。

 ディオバンという薬を日本で使ったら5年後、10年後に脳梗塞や心筋梗塞が減るというロングタームのエビデンスを作ろうとした。製薬会社のノバルティス ファーマには勝算があったのだろう。だけど、日本人は体質や食生活が違った。エビデンスが出なかった。データを改ざんした医者のモラルの問題に帰するところが大きいが、問題の本質は海外でいいといわれる薬でも日本人には当てはまらないこともあることだ。

 もともと人間の体の中で何が起こっているかわからないことは多い。脳梗塞や心筋梗塞は動脈硬化によって血液の通路が狭くなり起こるのだとしたら、血圧の低いほうが詰まりやすいかもしれない。それでも薬で血圧を下げたほうが動脈の壁が厚くなりにくいからいいとするかどうか。この種のことも実験してみないとわからない。長期の実験をしなければ、従来の説を宗教のように後生大事に信じてしまうことになる。

 ──ほとんど長期の調査には基づいていないのですか。

 長期の疫学調査によっていくつか有用なデータは出ている。たとえば小金井市総合健康調査は15年間高齢者を追いかけ、コレステロールは高めのほうがいいとの結果が出た。また仙台の郊外では太めの人が長生きしていたといった調査結果もある。ただし、その結果に対して医学の世界は積極的に応えようとしない。

 ──なぜ?

 自分たちのドグマを守ることのほうが大事なのだ。そして宗教と同じで異端の説を出した人を追放にかかる。新たな説を証明し、これまでの定説をひっくり返すことが科学の歴史のはずだが、医学界ではそうならない。守旧派の学会ボスに逆らったら大学医学部の教授にもなれないからだ。ただし、学会ボスが定年退職すると、しばしば新しい説が使われるようになる。

 ──新しい有力な説はまず「隠れキリシタン」になるのですか。

 日本は「正常値」主義に振り回されている。たとえばコレステロールがそう。まだ15年は今の教授たちのメンツを潰すからそうはできないが、彼らが引退したら、コレステロールも血糖値もむしろ高めでコントロールしたほうがいいとなるだろう。このことは世界的な医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』や『ランセット』にも出ていることだが、これについては学会ボスがインチキ視している。

 ──そうなると、自分の処方箋が大いに気になりますね。

 結局、医者は自分が正しいと思っているものを処方する。そこでは、専門分化が進みすぎているから、たとえば心臓にはいいかもしれないが、体全体ではいいとは保証できないものもあるかもしれない。

 日本では今、血圧の下がることが絶対善だと思われがちだが、脳卒中を減らす、血圧の幅についての日本人のエビデンスはあまりない。秋田県で減塩運動をして血圧を下げ、脳卒中は確かに少し減った。この結果も血圧を下げたから脳卒中が減ったのか、タンパク質を取ったから脳卒中が減ったのか、因果ははっきりしない。タンパク質を取る量が少ないと血管の壁は破れやすい。だから昔は血圧160ミリメートルエイチジーあたりで脳卒中になっていた。今は200ミリメートルエイチジーを超えても血管は破れないケースが多い。

 ──「正常値」主義ではダメなわけですね。

 誰もが薬を飲めば長生きできる、健康になれると信じて動いているが、これが正しいかはわからない。大学医学部教授と称する人たちが確かな実験をやってくれないからだ。この薬を飲むと何%の人に肝臓障害が出る、胃炎が起こる、あるいは下痢が起こるという副作用は調べられている。だが、はっきりした薬効のエビデンスは実質ほとんどない。

 ──効く証拠がない?

 一般論から言って、低血圧の人は朝起きづらい、頭がふらふらする。だから、血圧や血糖値は下げれば頭がぼんやりするといえる。

 たとえば今55歳の人が血圧の薬であと30年生きられる、飲まなければ25年しか生きられないと仮に証明されたとしよう。その薬を飲み血圧を下げたため30年頭がぼんやりして生きるのでいいのか、飲まずに25年頭がしゃきっとしているのがいいのか、選ぶとしたら。現実問題として、薬はそういう選択で飲むしかない。

 ──薬に関してもインフォームドコンセントが必要なのですね。

 手術だったら十分な説明がなされる。そのうえで同意書にサインしないかぎりは手術できない。ところが薬の場合は、異物を体内に入れるにもかかわらず、同意書もなしにどんどん押し売りされる。インフォームドコンセントが十分なされない。制度があれば、エビデンスデータがないのはなぜと聞くこともでき、データもそろうようになるのでないか。



http://ryutsuu.biz/commodity/i010214.html
厚労省/ネット販売の危険ドラッグ52製品、指定薬物・麻薬を検出
2016年01月02日 流通ニュース

厚生労働省は12月28日、2013年度「インターネット販売製品の買上調査」の結果を公表した。

ネット上で広告され販売されていたいわゆる健康食品及び危険ドラッグを購入し、国立医薬品食品衛生研究所で分析を行った。

購入したいわゆる健康食品81製品中、49製品から医薬品成分が検出され、危険ドラッグ52製品すべてから指定薬物又は麻薬が検出した。

強壮効果を目的として使用される製品(強壮用健康食品)50製品中33製品から、シルデナフィル等の12種の医薬品成分を検出した。

痩身効果を目的として使用される製品(痩身用健康食品)31製品中16製品から、シブトラミン等の7種の医薬品成分等を検出した。

危険ドラッグは、2014年1月~3月に購入し、52製品中52製品から、19種の指定薬物(うち1種は2014年8月から麻薬に指定されたもの)を検出した。

3製品から購入以前より指定薬物に指定されていた成分を3種検出。うち1製品に含有されていた1種は2014年8月から麻薬として規制。

51製品から購入以降に指定薬物として指定された成分を16種検出した。

同省では、医薬品成分等が検出された製品は、当該医薬品成分等に起因する頭痛、動悸、胸痛、ほてりなどの健康被害を起こす可能性があるので、個人輸入しないよう注意した。

これらの製品の使用を中止して、健康被害が疑われる場合には医療機関を受診するよう告知している。

インターネット等で、違法であることが疑われる医薬品のサイトを発見した場合には、直ちに、厚生労働省・地方公共団体の通報窓口、又は、「あやしいヤクブツ連絡ネット」に通報を呼びかけている。

なお、医薬品成分等が検出された製品の販売サイトに対しては、その所在地が国外や、所在地を明らかにしていないため、警告メールの送信や、対応するレジストラへの削除要請などを行い、製品の販売及び広告が中止するよう、指導・取締りを行っている。



http://medley.life/news/featured/567cb5e36ce8ed380219441c
自宅でできる血液検査「スマホdeドック」で生活習慣病のリスクがわかる!
簡単にできて高い信頼性

2016.01.03 Medley

健康診断は大事だと思っていても、忙しい中でなかなか病院に行く時間を作れない人もいるかもしれません。「スマホdeドック」は自宅に送られてくる検査セットを使って受けられる血液検査です。簡単に受けられる一方で、どれぐらい信頼できるのでしょうか。

◆スマホdeドックとは?

健康診断で使われる検査の中でも、血液検査は糖尿病、脂質異常症(高脂血症)をはじめ、アルコール性肝硬変や慢性腎臓病を診断するための重要な情報になります。

スマホdeドックは、自宅で血液検査が受けられる方法として作られました。郵送されてくる検査セットを使って指先から微量の血液を取り、検査会社に送ると、約1週間のうちに検査が行われ、結果をスマートフォンやPCで見られるようになります。

検査項目は、血糖、尿酸、中性脂肪、コレステロールなど14項目です。

◆信頼性は?

信頼性の実験として、検査セットを使って検査した結果が、一般的な腕からの採血による検査結果と一致するかどうかが調べられました。

その結果、14項目とも図のように高い精度で一致が見られ、一致の度合いを表す相関係数(相関なしで0、完全一致で1)が0.923から0.998となりました。 

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血糖(R=0.996)LDL-コレステロール(R=0.989)尿酸(R=0.990)

(横軸:原血漿[mg/dl]、縦軸:希釈血漿[mg/dl]、出典:大澤進,杉本晋哉,米久保功,川口正人.在宅医療革命.臨床検査 2015:59;397-404.)

高い信頼性をふまえて、スマホdeドックを使った全国20自治体との実証事業もすでに行われ、年代によっては受診した人の約8割に高度異常値が見られるという結果が得られています。

スマホdeドックの検査は、インターネットでいつでも申し込みができ、結果はイラストやグラフを使ってわかりやすい説明とともに提示されます。忙しい方や交通の便が悪い地域の方などにも便利に使えて、健康診断の必要性に気付くきっかけになるかもしれません。

また助成金事業により、神奈川県在住の方は2016年1月31日まで特別価格でスマホdeドックの検査を受けることができます。

スマホdeドックについて詳しく知りたい方や、利用申し込みをしたい方は、公式サイトの情報をご覧ください。

https://www.smartkensa.com?medid=mdl01



http://forbesjapan.com/articles/detail/10725
2016年のヘルスケア業界10大予想
2016/01/03 07:50 Forbes JAPAN

2015年も終わりに近づき、フロスト&サリバンの専門家、ソートリーダーたちが集まり、2016年のヘルスケア業界における10大トレンドを予想した。

1. 新世代端末、60億ドル(約7,279億円)規模のウエアラブル端末市場に登場
新たな世代の「医療用」または「臨床用」のウエアラブル端末には、より洗練された計測、取り込み、分析の諸機能が備わり、臨床上の有益性がより高まることになる。ヘルスケア関連のウエアラブル端末の売り上げは現在、Vital ConnectやProteus Digital Healthによって開発されたもののように、モニタリング技術に関わるものが大部分を占めている。今後は一歩前に進み、Neurometrixが手掛け、治療支援を提供するQuellのような技術が、拡大する市場のけん引役となるだろう。

ヘルスケア・民生技術会社はウエアラブル端末を手掛け、初期段階にある企業の戦略的買収に向けて積極的になると予想する。
デジタルヘルスに対する消費者行動についてのフロスト&サリバンによる最近の研究によると、消費者の約24%が現時点で健康・ウェルネスの記録のために携帯アプリを使用。16%がウエアラブルセンサー、29%が個人の電子健康記録を利用している。この傾向は続き、近い将来消費者の47%がウエアラブル端末の使用を検討すると予想している。

2. インストアクリニックの面積35%拡大、リテールケアが主流に
2015年は小売業者が多くの投資をクリニックの面積拡大や新たなツールの導入、ヘルスケア企業との独自パートナーシップ形成に振り向けた。小売業者はプライマリーケアサービスのフロントライナーになるための戦略を完全に実行し始めており、2016年も引き続きこれらの策動を目にすることになるだろう。

3. 「新開発銀行(NDB)」がヘルスケアに大規模投資、多くの国でダイナミクスを変える
総資産1,000億ドルのNDBは、欧米が支配する世界の金融機関における代替の選択肢として形成された。かつてのBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)銀行であるNDBは、新興国の国民生活を改善する上で注目されている。主要な取り組みには、サービスが行き届いていない人々にヘルスケア、ウェルネスのサービスを提供するための大規模なインフラ投資が含まれている。

4. インドにおける民間保険の急拡大、ついに未開拓市場を開く
2014年3月までに健康保険に加入しているインド国民はわずか17%で、自己負担額は高い(75%超)水準だった。新政府は無料の医薬品と検査の提供に加え、負担の少ない保険スキームへの個人加入を促進する「全国保健保証ミッション(NHAM)」を通じてヘルスケアを優先している。

5. 集団健康に関するオポチュニティー、ヘルスケア業界のM&A市場で500億ドル超を上積み
集団健康管理と結びついたオポチュニティーにつながる企業の長期戦略が、企業のリストラ、M&A、スピンオフ、R&D支出、ベンチャー部門への投資に関する意思決定をけん引するとみられる。業界関係者は、補償が成果に結び付くヘルスケア業界の新たなパラダイムの中で進化し、リスクを低減する必要がある。
集団健康ツールの要件は、買収戦略の再考を各企業に求めており、近隣または補完的な市場の企業に関係する取引増加につながってい
る。

6. 安価かつ迅速なポイントオブケア (POC)検査、新たな診断ケアモデルを可能に
分子POCや接続機能、バイオセンサー、ミクロ流体などの利用が可能な新しいPOC検査プラットホームの商用化は、報告までの時間をドラスティックに改善し(5〜15分)、これまで実行不可能だった環境での検査サービス提供も可能にする。

7. 無料の予防ケアサービス、米国内の90%で利用可能に
進行した慢性疾患について、コストと治療の負担を軽減するため、支払人や雇用主、政府は技術とウェルネスによる幅広い予防サービスを提供することになる。アクセスは既に可能になっており、関連顧客がどのようにそれらのサービスを活用するのかにかかっている。

8. ヘルスケアのIoTソリューション、新興企業へのベンチャーキャピタル投資を100億ドル増やす
他産業で培われたIoTの専門知識をヘルスケア業界に持ち込もうと考える新興企業が幅広く参入していることにより、ヘルスケア業界のスタートアップ環境は活力を与えられている。「破壊的」なビジネスモデルに焦点を当てることで、これらの企業は時代遅れの医療供給形式を打破し、新たなツールや技術に最適化したアプローチを 導入することを目指している。

9. 各病院、閉院の傾向を避けるために旧式設備の修理・入れ替えへ重点投資
病院の閉鎖や統合という継続中のトレンドにより、各病院はレイアウトからリソースの利用まで、全てについての再考を強いられている。各機関が効率性と患者の満足を重視した新たな形式の医療供給の採用を求める中、13億ドルを投じたダラスのParkland Hospitalの改修のような取り組みが米国内全域で始まっている。

9. 世界の再生医療市場、2016年には300億ドル規模に到達
Pharmacoは再生医療市場を切り札とみており、同事業の売上高が2015年から22.4%の成長を遂げると予想している。この領域での投資拡大と追い風となる法律の制定、細胞医療製品の増加により、再生医療事業には新たな競合企業が出現するだろう。
迫り来るこれらの変化と混乱を受け、各企業はデータや分析戦略、プラットホームが適切か否かといった重要な問題への問いかけを始めることが必要になる。
企業は将来的なバリューベースのケアモデルに沿った形で集団健康管理をマネタイズできるだろうか?
企業の視点ではなく患者や消費者の視点に立ち、介護の連続を越えた患者エンゲージメントプラットホームの構築プロセスをどのように始めることができるだろうか?
データ科学がブロックバスター薬・機器からヘルスケア界の支配者の座を奪うなか、各企業は2016年の成功に向けてある程度リスクを取り、コラボレーションの文化を築くことが必要だ。
編集 = Forbes JAPAN 編集部



http://mainichi.jp/articles/20160103/k00/00e/040/086000c
論文不正
告発に生データ見ず「適正」 岡山大調査委

毎日新聞2016年1月3日 08時30分(最終更新 1月3日 08時39分)

 岡山大(森田潔学長)の大学病院幹部が著者に含まれる医学論文について、研究不正の告発を受けて調査した学内の調査委員会が、実験画像の切り張りを確認したものの、本来必要な生データとの照合をしないまま「不正なし」と結論づけていたことが分かった。調査報告書は文部科学省や告発者に提出されたが、切り張りや生データについての記載はなく、別の論文でも実験条件を示した画像説明に食い違いがあったのに問題視しなかった。

 同大医歯薬学総合研究科の教授2人が複数の論文について告発し、調査委が昨年3月に結論を出した。研究不正についての国のガイドラインは、不正なしと判断された場合は調査結果を公表しないと定め、大学も公表しなかった。

 切り張りがあったのは、2006年に米国の内分泌学専門誌に掲載されたステロイドホルモンに関する論文。濃さが異なる横長の棒(バンド)が横に12個並び、実験条件を変えると特定のたんぱく質の量が変化することを示した。バンドの濃さを読み取ったグラフが下にあり、濃さを比較して結論を導くデータの一つとしている。告発は「同一条件で比較すべきデータが合成されている」と指摘した。

 大学によると、病院幹部から「1枚の連続的な写真ではない。代表的なバンドの写真を参考として添付した」と説明があったが、切り張り前の生データは「8年以上経過し、残っていない」として提出されなかった。

 切り張りは、別の画像の使用や画像処理が判明した場合、捏造(ねつぞう)や改ざんに当たる。元は連続した写真であると生データで確認できれば、不正とはならない。

 大学は「学外の委員も加え、きちんと検証した」と説明し、切り張りの事実や生データなどについて報告書で触れていないことに対しては「早く報告する必要があり、報告書を簡潔にしようともしたため、言葉足らずな点があったかもしれない」としている。

 一方、画像説明の食い違いは、08年に循環器関連の米医学誌で発表した論文と、10年に岡山医学会雑誌で発表した日本語の論文との間で生じている。高血圧に関係するたんぱく質の研究で、それぞれ複数の細胞の画像が示され、同一の画像の実験条件の説明が両論文で「Na+/K+ATPase」と「H+−ATPase」となり食い違う。

 調査委員長を務めた同大学の山本進一理事は「国のガイドラインや大学の規定で定める研究不正(捏造、改ざん、盗用)には当たらない。だから本調査はしなかった」と説明している。

 病院幹部は取材に「日本語の論文は岡山医学会賞の受賞紹介記事。掲載にあたり、一部のパネル(画像)を削除し、説明文を修正する際に誤りが生じた」と回答した。【根本毅】
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http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03156_01
【新春特集】
人口減少社会に挑む地域医療

2016年1月4日 週刊医学界新聞 第3156号 

宮田 裕章(慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 教授/東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座 教授)=監修

今後日本は,総人口に占める高齢者の割合を高めながら人口は減少していくと予測されている。都道府県ごとに見ると,2010年時点では大都市を中心に人口が増加傾向の地域もあったが,2035年には全都道府県が人口減少のステージに入る。人口減少社会の本格的な到来によって,日本の医療は新たな課題に直面する。地域で未来のビジョンを共有し,社会システムを再構築することが,これからの医療の課題を解決していくには不可欠である。本特集では,地域連携を糸口として,人口減少社会を乗り越える戦略を考える。
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http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03156_02
【グラフ解説】
「地域とともに歩む医療」の実現に向けて

宮田 裕章(慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 教授/東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座 教授)=執筆
迫井 正深(厚生労働省医政局地域医療計画課 課長)=執筆協力
2016年1月4日 週刊医学界新聞 第3156号 

 日本は医療・福祉を含む社会システムにおいて,大きな転換点を迎えている。かつて高度経済成長をもたらした,「多数の労働人口で少数の高齢者層を支える」人口構成を前提とした社会保障制度を基礎に,世界トップランクに位置する長寿国となった。しかし今後,世界でも経験のないスピードで高齢化が進み(図1,2),さらに人口減少と,産業成長の鈍化に伴い,社会システム自体が,従来の枠組みの延長線上でのマイナーチェンジだけでは,成立することが難しくなってくるだろう。

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図1 少子高齢化で大きく変わる人口構造
2035年:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2013年1月推計):出生中位・死亡中位推計」

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図2 将来推計に見る人口減少と高齢化

総人口は減少するものの,今後約30年間にわたり65歳以上人口は増え続ける。2045年前後には高齢者人口は減少に転じるが,高齢化率は上昇を続け2060年には40%近くに達する見込み。
 こうした課題への挑戦は,単にネガティブな側面ばかりではない。例えば「団塊の世代」が医療・福祉を必要とする超高齢社会の初期段階においては,公的・私的を問わず多くの資金が医療福祉分野に投入されるため,雇用の創出,人々の暮らしを支える技術やシステムのイノベーションなど,次の日本を支える新しい活力を生む可能性がある。

 一方で,医療・福祉のニーズが急激に高まる当面の間に無計画に資源を浪費してしまっては,その先の見通しは厳しいものになるだろう。10年後の医療・福祉の需要拡大のみを想定した制度設計では,将来世代が高齢層の社会保障負担に押しつぶされる20年後になってしまう可能性すらある。単に数年先だけを見越した改革ではなく,20年後,30年後も乗り越えられる政策を見いだすことが必要とされる。日本の医療や社会保障制度の長所を継承しつつ,変化を続ける人口構造の中でいかに新しい社会システムを新生させられるか。今まさに覚悟に基づく改革が不可欠となっている。

「量から質へ」2035年へのパラダイムシフト

 上記の背景を踏まえ,2015年6月,塩崎恭久厚労相の私的諮問機関「保健医療2035」策定懇談会(座長=東大・渋谷健司氏)から提案されたのが,目下の課題解決策と「2035年」に象徴される長期ビジョンを包含した「保健医療2035提言書」である。同書はウェブサイトで一般公開され1),サマリーは海外学術誌に寄稿された2)。また同年8月にはオール厚労省体制で推進本部が設置され,提言内容の具現化に向けた検討が継続的に行われている。

 「保健医療2035」が示すパラダイムシフトの一つに「量から質へ」の視点がある。今まで日本の医療は「多くの病床」「多数の従事者」と,提供する量をもって充足度を評価する側面があった。しかし今後は,限られた資源の中でいかに良質な医療サービスを提供し課題解決を行うかが必要となり,効率も重視しながらどのような質の医療を提供できるかを考えなければならない。

 さらに提言書では,行政が外側から規制するのみではなく,日本の職人文化に代表される誇るべきプロフェッショナリズムを背景とした,医療者集団の自律的なコントロールを広げていく視点も提示しており,医療者の主体的な取り組みが求められる。

個の連携により,地域全体の医療の質向上へ

 地域ごとの医療提供体制は,医療計画に基づき整備される。これを考える上で,基盤となるデータの収集や活用法など共通で検討すべき事項は多いが,実施については地域単位で考える必要がある。これは単に,地域における医療提供体制が現状において異なる,という理由だけでなく,地域の有する資源や人口構成の将来見通しについても相当な多様性があるという背景に起因する。

 全国的には高齢者人口が増加し,生産年齢人口は減少する傾向にあるが,例えば大都市部を有する都道府県では当面の人口は増加傾向にある一方,過疎地域の多い都道府県は,全ての年代が既に人口減少の局面に向かっているなど,高齢化と人口減少が加速している所も多い(参照)。つまり,ここ10年ほどは医療福祉のニーズが全体的に増大するが,需要減と資源縮小への対応を急ぐべき地域もあるということだ。そのため,地域ごとの対策が不可欠になる。

 では,医療において公益性を考慮しつつ,患者・国民に良質な医療サービスを持続的に提供するにはどうすればよいのだろうか。これまで日本は,病院や医師といった“個”の単位で医療の質を検討することが多かったが,これからは地域を加えた“面的”な視点でも医療の質を考えることが肝要になる。すなわち,病院や医師・コメディカルスタッフは医療の質を考える主体ではあるが,「地域全体の医療の質向上」という観点を踏まえて取り組むことがより重要になるということだ。

あるべき姿を共有し,地域の課題を解決する

 地域差は現状の資源配置だけでなく,将来の人口構造の変化を見通した先にも存在する。ただし現時点では,都道府県ごとの資源の多寡のみが,地域医療の質を左右するわけではない。

 図3は,専門医制度と連携した全国の病院4500か所の症例データが登録されているNCD(National Clinical Database)の分析結果で,4種類の手術について,地域を過疎化率別の3群に分けてリスク調整死亡率を示した分布である。大都市部であれば治療成績が良好というわけではない。膵頭十二指腸切除術や肝切除術のように,むしろ過疎地域のほうが全体として良好な成績を示す例もある。「限られた資源を生かしながら最大の成果を得る」という視点から見れば,複数病院が競合する都市部よりも,選択肢の限られた過疎地域のほうが病院同士の連携が効果的に機能し,役割分担や集約化によって良好な成績が得られている場合があるからだと考えられる。

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図3 過疎化率とOE比平均

棒グラフは左より,「過疎化の影響がない大都市」「過疎が中等度の地域」「過疎化が進行した地域」を示す。膵頭十二指腸切除術と肝切除術を見ると,「過疎が中等度の地域」は「過疎化の影響がない大都市」よりも良好な成績を挙げている。限られた資源を生かすことで,良質な医療を提供できる可能性がある。
註:過疎地域とは,総務省が過疎地域自立促進特別措置法に基づき指定する市町村区域を指す。本データの過疎化率は,総務省自治行政局『過疎対策の現況』(2009年度版)による。市町村数は2010年4月1日現在。※東京都特別区は市数に含まない。 都道府県ごとに,過疎地域人口と全体の人口から算出している。そのため,数値が大きいほど過疎化率(過疎地域に住む人口ベース)が高いことを示す。
 現時点では,施設の役割分担やネットワーク機能の改善で,地域全体としてより良質な医療サービスを提供できる可能性がある。一方で,各地域が努力を重ねた先には,医療需要や資源の量,必要とされるアクセス環境といった“伸びしろ”に影響を及ぼす場合が出てくる。したがって,地域の現状と課題を把握し,質・コスト・アクセスなどの観点から「自分たちの地域はこのような医療を実現させたい」というビジョンを共有することが重要になる。

 医療費が増大している現状では,特に行政は財政削減が目標になりがちである。しかし医療を提供する側は,患者・国民にどのような質の医療サービスを提供したいのかというビジョンを確認し,その実現に向けて持続可能性も含めた制度やシステムを設計・管理する必要がある。さらに,地域がめざすべき目標設定に基づき,継続的な改善を行っていかなければならない。

連携や分業で,医師の労働負荷も軽減できる可能性が

 公共的な側面が大きい日本の医療システムでは,医療提供者側の努力だけで良質な医療サービスを提供し続けることは困難だ。システムの在り方については,医療提供者,行政,保険者,企業,国民(患者)などの連携の中から発想されるべきものと考える。ところがこれまで医療提供者は,高い専門性を有するが故に大きな責任を背負いながら最前線に立ってきた。

 労働負荷の軽減は多くの臨床現場において解決すべき課題になる。そこで「保健医療2035」は,「医療現場主導」を明示し,医療提供者にさらなる責任を負わせるのではなく,優れた取り組みに敬意を払い,臨床現場の苦労が報われる仕組みづくりを提起している。

 ここで留意しなければならないのは,単純な人員増が必ずしも有効とは限らないことだ。図4の,心臓外科における年間症例数と死亡率の関係を見ていただきたい。多くの高難度手技において,安定した治療成績を収めるためには一定量の経験が必要とされ,心臓外科手術も同様の結果が確認された。日本の心臓外科の手術総数は,医師を増やしたからといって増加するわけでない。したがって,もし眼前の雑務を含めた労働負荷の軽減のために心臓外科医を増やした場合,十分な経験を積めない医師が増加することになり,若手医師のキャリアを構築できないだけでなく,習熟度不足の外科医の手術を患者が受けるという不利益を被ることにつながってしまう。こうした実情を踏まえ日本の心臓外科領域は,労働負荷軽減に向けては他職種との連携や分業,発散した労働環境を機能集約する方向で取り組みを始めている。

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図4 冠動脈バイパス術(CABG)における年間症例数と死亡率の関係

単純な人員増加は最終的なアウトカムの向上につながらない。安定した治療成績のためには一定量の経験が必要になる。日本の心臓外科領域は他職種との連携や分業,労働環境の発散から集約にシフトしている。
患者・国民は権利と責務のバランスの中で医療にかかわりを

 これまで患者・国民は,現状における価値の最大化の観点から,医療サービスを受ける立場としての権利がクローズアップされてきた。しかし,高度医療に特化して見ると,全ての人の身近な環境で,最高の質の医療を,それも少ない負担で実現するのは困難である。たとえそれが現状成立していても,多くは医療現場の極めて高い労働負荷や,赤字国債という将来世代が引き受ける負債によって機能していることになる。

 例えば「身近に高度医療を行う診療科があると安心」という住民のニーズをくみ,多くの需要は見込めない地域に高度医療を行う診療科を設立したとしよう。初期段階は熟練医師により安定した成績が収められても,その地域に配属された若手は十分な経験を積むことができず,診療科としての成績は不安定になる。その結果,次世代の住民の,死亡・合併症発生率が大幅に上昇し,さらに不採算の診療科として閉科を迫られることにもなるだろう。

 患者・国民にはサービスを受ける権利だけでなく,将来世代に対して持続可能なシステムを維持する責務も踏まえた理解が求められる。さらに地域包括ケア実現に貢献するという観点から,自身の健康作りや適切な受療行動,周囲の健康をサポートするまちづくりなど,権利と責務の両面を踏まえたかかわりが必要とされる。

地域医療連携のベストプラクティスに学ぶ

 「単に危機が間近に迫っただけでは,今まで解決できなかった課題を克服できるわけがない」。現状に悲観的な人はこう考えるかもしれない。確かに動機付けやものの見方だけで変革が可能なほど,日本の抱える課題は単純ではない。しかし他方では危機の度合いが刻々と変化し,課題解決に向けた環境や資源もさまざまな面で変化を続けている。そこで筆者は,今後の人口減少社会における日本の医療の課題解決の糸口を3点提示する。

 1つ目は情報基盤を活用し,地域で求められる医療の在り方を共有することである。近年,NDB(National Database)やDPC(診断群分類)データが整備されたことで,地域医療の実態が把握できるようになった。医療者が情報を活用し,地域における自施設の位置付けを把握することは,地域医療の在り方を考える第一歩となる。これに加え,専門医制度と連動したNCDをはじめとする,現場主導の医療の質のデータベースも整備されている。今後はNCDのアウトカム指標やNDB等のプロセス指標を用い,施設単位だけでなく地域における医療の質向上に向けた課題を考えることが重要になる。

 2015年7月に行われた日本消化器外科学会では,NCDの分析による,「胃切除術」「胃全摘術」「低位前方切除術」「右半結腸切除術」の年間症例数とリスク調整標準化死亡比の分布が発表された。いずれも死亡率の比較的低い手術であり,どの施設で手術しても治療成績はそれほど変わらないと考える医師も少なからずいた。しかし,症例数や施設の特性などさまざまな観点から治療成績に格差が示される結果となった。これは単に高難度手術だけでなく,さまざまな機能において地域連携を行う意義があることを示唆している。地域が実現すべきビジョンの下,何が過剰で何が不足しているかの現状と課題を共有し,連携を行っていかなければならない。地域のあるべき姿はそれぞれ異なるが,情報基盤の活用は全ての地域が共通して取り組むべき事項である。

 2つ目は,必要とされるアクセス環境をデザインすることである。日本が医療提供体制を整備した初期の段階(1960年代)に比べ,道路交通網や救急搬送体制は多くの地域で飛躍的に充実し,かつて求められた物理的距離と,現在必要とされる物理的距離の意味を異にしている。また医療機能の連携促進により,地域コミュニティにあるべき医療機能の定義も異なってきている。そこで,広島県のようにがん治療をフェーズ別に分け,検診や検査,術後治療やフォローアップは身近な地域で行い,診断・治療の機能は医療圏別に絞り込む形でネットワークを整備しアクセス環境を整えている例もある。

 今後はさらにICT技術の活用と大規模データの分析により,内科領域において遠隔診断を効果的に行うことが可能となる。ICTを介して専門チームが地域のかかりつけ医をサポートすることで,地域包括ケアにおける専門家の配置や連携体制も変容することになる。

 そして3つ目は,他の地域のベストプラクティスに学ぶことだ。近年,先進的な取り組みで成果を挙げる地域が現れ始めている。ベストプラクティスは地域特有の歴史や資源にばかり依存したものではなく,他の地域が参照可能な要素を数多く包含している。例えば熊本県では,経営母体が異なる病院間の役割分担と機能連携が10年以上にわたって行われており,参考になる。広島県の地域医療連携は,他の地方都市が共有可能な要素を多く含む(参照)。また山形県では市立病院と県立病院の経営統合・再編の事例が生まれており,急性期病床と療養病床を再構成し,急性期医療からかかりつけ医へと患者シフトが進むとともに,経営改善にも成功している。少数の特定施設の連携による地域医療への影響は限定的だが,実現可能性の点からは取り組みやすい手段である。これらの事例は,新しい地域医療連携の選択肢の一つとして,他地域に展望を示すもので,積極的に参考にしていきたい。

将来のグローバルな課題を世界に先駆け解決へ

 高齢化や人口減少,経済成長の鈍化などの課題に直面する日本が,持続可能な社会システムを構築できるかは,地域における取り組みが鍵を握っている。本稿で示したのは, ❶ 施設・個人という枠組みだけでなく,地域という枠組みで目標を共有し,課題解決を行うこと, ❷ 資源の調整や費用削減ありきではなく,地域で実現すべき医療サービスの質の観点からビジョンを構成すること, ❸ 関係者が連携し,現状の価値の最大化だけでなく,将来世代にわたる持続可能性を考慮した価値判断を行うことの3点である。現在展開されようとしている,地域医療構想の基本理念にも通じるものと考える。

 今後,先進国やアジア諸国も日本と同様の問題に直面することが予想されるため,日本の動向に大きな関心を寄せている。地域医療の課題は将来のグローバルな課題にもつながるため,日本が世界に先駆けて解決策を示す役割が期待される。

 日本は健康長寿の実現やインフラ整備など,公共的価値を有する多くの領域において,既に世界最高レベルの品質を実現してきた。もちろん医療も例外ではない。それはひとえに医療にかかわる人々の真摯な取り組みと誠実な姿勢があるからこそであり,筆者は日々尊敬の念を抱いている。こうした人々の目標を共有し,適切に連携することができれば,人口減少社会を乗り越え,世界をリードする新しい社会システムを構築することができると確信している。日本の医療にかかわる人々にあらためて敬意を表するとともに,「地域の挑戦」がより良い成果につながることを願い,新年の序としたい。

参考文献
1)保健医療2035.厚労省.2015.
2)Miyata H,et al.Japan’s vision for health care in 2035.Lancet.2015;385(9987):2549-50.[PMID:26122147]



http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03156_03
「ビジョンの共有」が地域を結ぶ
広島県4基幹病院を中心とした地域医療連携の取り組みから

浅原 利正氏(広島県病院事業管理者・広島県参与)
宮田 裕章氏(慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 教授/東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座 教授)=司会
門田 守人氏(がん研究会理事・がん研究会有明病院名誉院長)
迫井 正深氏(厚生労働省医政局地域医療計画課 課長)
2016年1月4日 週刊医学界新聞 第3156号 

 いち早く地域医療連携を進めている県がある。“日本の縮図”とも言われる広島県だ。広島市内の4基幹病院と大学,行政,医師会が連携し,10年,20年先の地域を見据えた取り組みを始めている。日本各地が抱える課題も共通して有する同県の連携の形には,他地域がモデルにできる要素もあるのではないだろうか。

 本座談会には,2015年から同県で始まった「基幹病院連携強化会議」で座長を務める浅原氏,有識者として参加する門田氏,アドバイザーを務める宮田氏,そして行政として地域医療を担当し,かつて広島県の医療行政にも携わった迫井氏の四氏が出席。同県の取り組みのこれまでの経緯と現在の到達点,そして,日本が人口減少社会の医療の課題を乗り越えていくために共有したい,地域医療連携実現のビジョンが議論された。


宮田 全ての「団塊の世代」が75歳以上になる2025年まで,いよいよ10年を切りました。医療者が留意しなければならないのは,「2025年」はあくまで課題の入口にしかすぎないということです。

迫井 そうですね。「2025年問題」が注目されますが,今後約20年は高齢者が増え続け,さらに2040年以降は高齢者を含む全ての世代で人口が減少するというように,10-30年の間に人口構造の大きな変容が予測されています(「グラフ解説」図2参照)。直近にある「高齢化」の問題と,その先にある「高齢化を伴った人口減少」という問題への対応を,われわれは考えていく必要があるわけです。

宮田 当然,人口構造の変化と連動して医療の需給状況も変動するわけで,医療提供体制についても一過性の対処ではなく,将来を見通した刷新が迫られることになります。

門田 2015年は「戦後70年」が話題になり,日本社会の一つの節目を迎えたように私は思います。ベビーブームで生まれた「団塊の世代」に象徴されるように,生産年齢人口の増加が,経済の発展や人々の生活水準の向上を下支えし,それとともに医療技術も飛躍的な進歩を遂げました。その中で専門分化や細分化がきわめて進んだ一方で,“マクロ”に見る視点が置き去りになっているようにも思うのです。つまり,医療制度そのものを大きく変化させてこなかったことから,社会のニーズとの間にひずみが生まれつつあるのではないでしょうか。今の医療制度を自動車に例えるなら,終戦後に新車で走り出し,その後はちょっと不具合が生じるたびに修理を加えることで,なんとか今日まで乗り続けてこられた,そのようにとらえています。ただ,本格的な人口減少社会を迎えるこの先も,同じ車でどこまでも走り続けられるわけではない。医療サービスの提供の在り方を含め,医療制度は大きな転換が必要になるでしょう。

浅原 まさにそうです。特に,高齢化率が高まり続ける今,高齢者を支える仕組みづくりが急がれます。社会のシステムを再構築する上では,「医療」と「教育」の2つが重要になる,私はかねてよりそう考えています。特に医療においても教育の観点は必須で,医師をはじめ医療者の人材育成が欠かせません。この2つを両輪とした地域ごとの政策が求められるのではないでしょうか。

宮田 浅原先生のおっしゃった地域の視点はこれからの議論において重要なポイントになりそうです。現在,厚労省において医療提供体制の整備に携わる迫井課長は,行政の立場から地域の在り方についてどのようにご覧になっていますか。

迫井 医療制度改革や医療費の問題を行政の立場から見ていると,最終的には地域の問題として解決策を考えなければならないように思います。なぜなら,日本全体の人口構造が変化していくとは言え,インフラの整備状況や人口密度などは当然地域によって異なり,医療も地域の実情に応じた個別の課題が幅広くあるからです。がんや感染症といった人間の生命予後に直結するような公共性の高い領域の対策について,霞が関が全国一律で対策を推進することはもちろん大切です。しかし一方で,20年,30年先を見据え,地域住民の立場に立った広い視野で医療を考え直す時期にも差し掛かっています。医療関係者も行政も,そのような共通認識を持った上で,「ご当地システム」によって地域の課題を解決していかなければなりません。

“日本の縮図”広島県の挑戦

宮田 医療のあるべき姿が地域単位で問われようとしている今,各地で地域医療連携の芽が出つつあります。2014年6月に医療介護総合確保推進法が成立したことにより,地域医療計画の一つとして地域医療構想が位置付けられ,都道府県ごとに策定作業が進められています。また,2015年9月に成立した改正医療法によって「地域医療連携推進法人」制度が創設されたことで,経営母体の異なる複数の病院や介護施設が,あたかも一つの病院のように経営機能を共有しパフォーマンスを向上させていくような動きも生まれてきそうです。

 こうした動向の中,全国でも先駆的な地域医療連携を既にスタートさせているのが広島県です。2015年からは医療機関の連携を広げるべく「基幹病院連携強化会議」(以下,会議)が始まっており,前身の「広島都市圏の医療に関する調査研究協議会」(2014年)から参加している私は,広島県の未来志向の取り組みに注目しています。

迫井 広島の事例は,日本のさまざまな地域が参考にできる凝縮性があると感じています。というのも,県を南北に見渡すと,ミカンやレモンが名産の温暖な瀬戸内海があれば,リンゴが取れ冬にはスキーができるほどの雪深い山間部もある。人口分布も,120万人大都市・広島市の印象から都会と思われがちですが,橋のない瀬戸内海の離島や中国山地の過疎集落といった,へき地での人々の暮らしもあります。このように広島県は人口や産業の構成,地理的な特徴から“日本の縮図”と言われ,商品のテスト市場としても有名です。

門田 日本各地に見られる風土が広島にはそろっているわけですか。なるほど,言われてみるとそうですね。

宮田 別の見方をすれば,都市の問題,へき地の問題など日本が抱える課題もセットで存在しているということですね。

迫井 その通りです。広島県で従来から取り組まれているへき地医療や医師確保の対策,そして地域医療連携をはじめとする新しい医療政策は,人口減少社会日本の医療政策を占う,いわば社会実験とも言える大きな挑戦が含まれていると言えます。

医療機能の集約化その狙いとは

宮田 会議の座長を務める浅原先生,まず発足の経緯と,そして広島県の現状をお話しいただけますか。

浅原 会議は,広島県の医療提供体制の効率化と,若手医師確保の2点を大きな目的に発足しました。さらにこの施策を県内全域に波及させ,広島県の地域医療構想の策定に反映させることをめざしています。現在,広島市中心部にある4基幹病院(広島大学病院,広島市立市民病院,県立広島病院,広島赤十字・原爆病院)と,大学,県,市,医師会の連携を核とした取り組みが動き出しており,会議ではこれからの医療連携の在り方が議論されています。

宮田 経営母体の異なる病院が手を取り合うことで,昨年は一つ大きな成果がありましたね。

浅原 ええ。2015年10月に,新たに「広島県立広島がん高精度放射線治療センター」が稼働しています。これは4基幹病院の放射線治療分野にかかわる機能を集約した新施設として,広島駅前に新設されました。厚労省の地域医療再生基金を元に県が事業者として設立,県医師会が運用主体となり,そして広島大学と4基幹病院などが連携する形で運用されています(図1)。
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図1 4基幹病院連携による広島県立広島がん高精度放射線治療センター事業(クリックで拡大)

広島都市圏に集中する4基幹病院の機能分担・連携の推進によって,高度な放射線治療を集約した施設を整備し,2015年10月に稼働開始。

高度医療の提供と,人材育成をめざす。

宮田 さまざまな組織が一施設の運営を担う。非常に画期的で全国的に見ても新しい取り組みだと思います。一連の計画に立案の段階からかかわった迫井課長,いつごろから練られていたのでしょう。

迫井 私が広島県庁に在籍していた2000年代後半です。当時から,広島市内の4基幹病院が連携して一つの高度医療機関として機能していけないものか,と4病院の院長を中心に相談を始めていました。その後2010年に,「広島県地域医療再生計画」で構想を具体化したプログラムの一つとしてスタートしました。

宮田 背景にはどのような危機感があったのですか。

浅原 一つは,高齢化による医療需要の急増です。高齢化の波は広島県にも例外なく押し寄せており,例えば,広島市を含む2市6町からなる広島医療圏は,2025年の高齢化率は28.9%,入院患者は3000人以上になり,その後も高齢者人口の増加が続くとの予想が出ています(図2,3)。

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【出典】石川ベンジャミン光一氏ウェブサイト.人口推計地図(2035年広島県)より作成
図2 2010年を100とした場合の2035年広島県の人口変化(全年齢)
2010年から比べると,2035年は広島県全体の人口は減少するが,広島市内の一部では維持・増加する区があるなど,都市部では医療需要は高まることが予測され,圏域内における医療資源のバランスをとる必要がある。
(広島医療圏とは広島市,安芸高田市,府中町,海田町,熊野町,坂町,安芸太田町,北広島町の2市6町から構成される二次医療圏)

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図3 広島医療圏の人口推計と入院患者数の将来推計
広島医療圏全体では人口の総数が減少するが,65歳以上は増加を続ける(左)。また,2025年には入院患者が2割(3000人)以上増え,以降も増加を続けるため,適切な医療資源の配置が必要になる。
門田 広島も高齢化対策,待ったなしの状況なわけですね。

浅原 ええ。将来の医療需要の増加に対応するためには,医療提供体制の効率化が欠かせません。実際4基幹病院には,救命救急センターやがん診療連携拠点病院など重複する医療機能もあるため,集約化により医療資源を必要とされる領域に最適に配置する余地が多くあります(表)。広島市中心部の5 km圏内に近接する4基幹病院の機能を1か所に集約したほうが,断然効率的ですね。そこでまずは,比較的集約しやすい単科の放射線治療分野の連携から着手したわけです。

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表 4基幹病院の概況(クリックで拡大)
広島市中心部の5 km圏内に立地する4基幹病院(広島大学病院,広島市立広島市民病院,県立広島病院,広島赤十字・原爆病院)には,重複する機能がいくつかあるため,集約化による医療機能の効率化の余地が十分にある。

宮田 集約化で,具体的にどのようなメリットが見込まれますか。

浅原 まず,高価な放射線治療機器を各病院が別々に購入する必要がなくなります。それから,専門の医師やコメディカルスタッフは各病院から必要な人数だけが集まるため,医療費の増大を抑制できる。こうした物的資源,人的資源の集約の結果,より高度な医療が提供できるようになります。

 患者は4基幹病院の他,県内のがん診療連携拠点病院などから紹介の形で来院してもらうため,高度な医療を一つの拠点で円滑に提供できるようになる。治療成績の向上も期待され,医療者と患者双方にとって大きな効果があると見込んでいます。

門田 集約化は,医療者の人材確保の他,育成という面にも大いに寄与するのではないでしょうか。

浅原 そうですね。集約化の二次的なメリットに,医療者の育成があります。広島県では,高齢化が進むにつれて入院患者数当たりの医師数が不足することがわかっており,対策が急務となっています。近年,他県に比べ若手医師の減少が大きく,2002年からの10年間で20-30歳代の医師が1割も減少しています。症例集積や高度医療機能の整備を行うことで,「多くの症例を経験したい」という若手医師にとって魅力のある医療資源が集う環境になると考えました。もちろん,医師に限らず,看護師,放射線技師,研究者も育つことでしょう。

宮田 その点,がん治療のハイボリュームセンターであるがん研有明病院は,実際に全国各地から医師が集まっていますね。

門田 ええ。それは,当院であればがん治療について多くのことを学べるからに他なりません。出身大学や医局の壁などはもはや関係なくなるわけですから,広島県も病院間の連携を深め,高度医療施設を地域に設けることで魅力を発信できれば,若手医師や医療者が集まり,県内の医療の活性化にもつながることでしょう。

長年かけて培われた「地域医療を守る」志と信頼関係

宮田 現在全国で進められている地域医療構想の策定では,構想区域ごとに関係者が集まり協議を行う場として「地域医療構想調整会議」の設置が求められています。地域における連携を実際に進める上で,広島県の姿は参考になるのではないでしょうか。そこでお聞きしたいのは,なぜ広島県では,経営母体の異なる病院や,大学,行政,医師会というさまざまな組織が,目標に向けてここまで連携してこられたのか,ということです。

浅原 それは,「地対協(広島県地域保健対策協議会)」の役割が大きいですね。1970年に設立した地対協は,広島大学と,県,市,県医師会の4者で構成され,以来,地域コミュニティにおける医療の協力関係を地道に築いてきました。長年時間をかけて培われた「地域の医療を守る」という高い志と厚い信頼関係が,将来の課題を議論し行政の施策に反映させるまでを可能にする素地をつくってきたのです。

迫井 これは実に優れた取り組みだと私も肌で感じました。地対協には,がん診療や健診,インフルエンザ対策などのさまざまな専門部会があり,日頃から侃々諤々の議論がなされています。

 行政の立場としては時に厳しい意見をいただくこともありますが,大前提として,皆地域のために解決して前に進もう,地域を大事にしようという強い気持ちが共有されていました。他県の関係者からも「広島県は普段から議論の場がしっかりできていて,すぐに実質的な検討に入っていける」とうらやましがられたものです。

浅原 昨年の高精度放射線治療センターの開設は,まさに地対協の議論の積み重ねが結実したものだと思います。今後広島県の地域医療連携を広げる第一歩であり,こういう事案を一つずつ積み重ねれば,4基幹病院の連携を一層深められる他,地域における医療連携の姿がだんだんと形作られていくものと私は信じています。

門田 今後さらに,役割分担や機能連携を進めるには少なからず険しい道もあるでしょう。しかし連携が進み,4基幹病院がより密接に束ねられれば,がん領域に限定してもがん研有明病院を超える規模になる。4基幹病院を中心にした新しい求心力を持つ日本一の医療圏が広島に生まれ,他の地域から医療者や患者を呼び込むだけの価値を創出できるはずです。ぜひ広島の地域医療連携の取り組みを「広島モデル」として全国各地で参考にしてほしいですね。

“地域の構想”なくして医療構想なし

宮田 広島県が地域医療連携をさらに深めていくためには,乗り越えるべき課題もあるのではないでしょうか。浅原先生,いかがですか。

浅原 次の大きな課題は,病院完結型医療から地域完結型医療へいかにシフトするかです。現状では,4基幹病院連携を中心とした水平連携が進められ,幸い放射線治療の領域は高精度放射線治療センターに集約されました。しかし一つのセンターに集まったとはいえ,まだ一領域にすぎません。しかも病院完結型の姿にとどまっているわけです。今後は,県内の中小規模病院や,かかりつけ医との垂直連携が課題で,それが深まらないと,地域住民に資する医療連携の成果があったとは言えませんし,最大の目標である地域包括ケアの実現には至りません(図4)。

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図4 垂直連携の実現で「かかりつけ医が支える地域コミュニティ」を構築
4基幹病院による水平連携の実現とともに,回復期病院,地域のかかりつけ医との垂直連携を構築することで,患者を適切な医療機関へ紹介(逆紹介)することが可能になる。

宮田 さらに連携を深めたい広島県,あるいはこれから連携を模索する他の地域では,いざ「連携」となると,お互いの利害関係などから「総論賛成,各論反対」になりがちなテーマでもあると思います。

迫井 確かに連携の意義は納得できても,「連携しよう」というスローガンだけでは動きにくいですね。そこでポイントとなるのが,連携の意義にエビデンスを持たせることです。すなわち,今進められている地域医療構想の大きな特徴でもある,NDBやDPCデータといったエビデンス,つまり客観的な診療実態に基づいた協議や連携が可能になったことです。

宮田 「ビッグデータ」という言葉が聞かれるようになった近年,情報集積の技術は世界的にも劇的な進歩を遂げ,今までは難しかった医療データも体系的に分析することや,よりマクロな視点での考察が可能になっています。

迫井 そうですね。従来は,同じ地域にある病院同士が,“競争”という名のもとに,時に過剰とも言える医療機器の整備や人材の獲得を行い,地域内の医療資源に偏りが生じていました。しかし,全国規模で整備されたデータ集積システムによって,隣の病院と競争する以前に地域単位や全国との比較にさらされることになる。そうなると,地域内の狭いエリアで不毛な競争をするよりも,医療機関同士が地域内で連携することのほうが,はるかにバリューが高いことに皆さんが気付かれるわけです。

宮田 病院経営や医師個人のキャリアなど切磋琢磨する面がある一方で,医療資源の偏在に対しては地域で考えなければならないわけですね。エビデンスを共有することで,地域の目標も共有することができそうです。先ほど浅原先生が課題とおっしゃった垂直連携に関しては,昨年9月の第2回基幹病院連携強化会議が印象的でした。出席した医師会の先生方が,「地域のかかりつけ医と,もっと連携を深めてほしい」と基幹病院の病院長に訴える場面があったのです。

門田 地域のかかりつけ医側にも「地域の医療を支えたい」という同じ思いがあることを共有できたのは収穫でした。その点,会議を昨年からオープンにし,垂直連携に重要な役割を持つ中小規模病院や診療所の医師らが傍聴できるようにしたのはよかった。垂直連携を進めるに当たっては,データの活用とともに,「開かれた議論の場」を設けることも重要な要素になるのだと再認識させられました。

宮田 施設間で地域の「ビジョン」を共有する,そこに価値があるわけですよね。

浅原 広島は地対協という組織が地域医療を議論する文化を醸成し,今の原動力になっています。他の地域も,議論の場をしっかりつくることが重要でしょう。

門田 もっと踏み込んだ議論をするには,地域住民の参画も必要だと私は思うのです。地域を巻き込んだ取り組みを医療者だけの発想で進めるのではなく,医療サービスを受ける住民の意見を反映させる。そうでなければ,こうした大きな改革は成し遂げられません。

浅原 私も同感です。地域医療構想は,文字通り“地域の構想”が起点になるわけですね。では,“地域の構想”とは何か。それは地域に住む人々が,自分たちの地域でどう暮らしていきたいのかという視点に他なりません。

迫井 地域連携の最終的な目的は,地域包括ケアの実現,すなわち住民が生活視点で必要なサービスを地域で受けることにある。そのためにも,「医療は地域とともに歩むもの」と,医療者・住民の両者が再確認することが不可欠になります。

門田 医療者と住民が一緒に地域医療を作り上げることができたとき,施設間の水平連携やかかりつけ医との垂直連携の意義も共有され,病院の再編・統合も成功へとつながっていくのだろうと思っています。

「医師は地域で育てる」人材育成もセットで構想を

浅原 関係組織・医療者・住民らで地域の医療の在り方を考える上で,私からは一つ強調しておきたいことがあります。それは,医療者の人材育成も,地域医療連携とセットでデザインしていかなければならないということです。人が育てば,自ずと組織は発展し,ひいては自分たちの地域の医療を守ることにつながるからです。

迫井 私が県庁にいたころ,浅原先生がよくおっしゃっていましたね。「大切なことは地域の患者さんに教えられた」と。これは今も私の心に残っています。最初から適切な診断,高度な治療ができる医師はいません。ともすれば患者さんは「最高の診断,最高の手術ができる医師を連れてきてほしい」という希望を抱きがちです。しかし,たとえそうした医師を一時的に配置できたとしても,その地域にとってのサスティナビリティ(持続性)はありません。人々の生活を見る,地域を見るという視点をあわせ持った医師を地域で育てる,そのようなシステムをデザインすることが大切になります。

宮田 その点,一病院では限界のあるローテーション研修も,4基幹病院のように施設が連携することで,短期間で高度な症例をいくつも経験することができる。さらに地域全体に連携が広がり研修施設群などが構成されることになっていけば,ある施設で10か月経験を積み,残りの2か月はへき地医療に貢献するといった育成モデルも現実に考えていけると思います。

浅原 新しい医療の在り方を構築していく上で人材育成がないと,持続可能な医療は築かれません。ぜひ地域医療連携に欠かさないでほしい視点です。

医療者と住民,関係者がともに歩む地域医療連携

宮田 本座談会では広島県の地域医療連携の取り組みを通して,他地域でも連携を深めるポイントまで確認することができたように思います。高齢化を伴う人口減少社会を本格的に迎える今後,医療サービスを提供する医療者は地域住民や患者,行政をはじめとした関係者の方々と「自分たちの地域をどうつくるべきか」という対話を行い,あるべき姿を念頭に置きながら医療の価値を再定義することが重要なのでしょう。先生方との議論を通じて,そう強く感じました。

浅原 医師は病気を治すことが重要な役割ですが,患者さんに安心感を与えることも忘れてはなりません。全国的に進められる地域医療連携や地域医療構想などは,システムの構築といったハード面の整備が主になります。それだけでなく,医療者一人ひとりが患者への安心感のある医療提供を意識しなければ,両者が望む地域医療は形づくられていかないと思います。

迫井 やはり医療者と住民がともに歩むことが大切です。人口減少社会の到来という課題を前に,医療が今置かれているこの状況をぜひ国民の皆さんにも理解していただきたい。そして医療者は,「地域の医療は自分たちで守り,支える」という気持ちを住民と共有しながら,地域づくりに参画していただきたいと思います。

門田 地域の医療と健康を守るという目標の実現に向け,広島県が全国の課題を先んじて乗り越える突破口になってくれることを大いに期待しています。日本の将来に悲観するのではなく,「夢を皆で追い掛け,実現させよう」と前向きに臨んでいきたいですね。

宮田 地域医療を支える連携の形は,さまざまな組織・個人の「ビジョンの共有」から始まっていきます。広島県の取り組みが,多くの地域の参考になり日本の医療の底上げにつながればと願っています。本日はありがとうございました。        

(了)

浅原利正 あさはら・としまさ
広島県双三郡作木村(現・三次市)出身。1971年広島大医学部卒。同大病院,県立広島病院等で臨床に従事。この間,広島県北部山間部にある西城町(現・庄原市)の国保直営西城病院でへき地医療も経験した。広島大医学部講師,助教授を経て99年教授に就任。2002-04年同大大学院医歯薬学総合研究科教授。04年同大病院長,07年から8年間にわたり広島大学長を務めた。15年からは広島県病院事業管理者・広島県参与(医療担当)として広島県の医療行政に携わり,「基幹病院連携強化会議」では座長を務める。

迫井正深 さこい・まさみ
広島県広島市出身。1989年東大医学部卒。東大病院,虎の門病院等での臨床研修・外科臨床を経て,92年厚生省入省。保険局医療課,大臣官房厚生科学課,大臣官房国際課などに配属。95-97年米ハーバード大公衆衛生大学院に留学し公衆衛生学修士号取得。2006-09年広島県健康福祉局長として,この間「広島県地域医療再生計画」の立ち上げに従事。その後,厚労省保険局医療課企画官,老健局老人保健課長を経て,15年10月より現職。

宮田裕章 みやた・ひろあき
2003年東大大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了,05年同分野博士課程中退(08年論文博士取得)。早大人間科学学術院助手,東大大学院医学系研究科医療品質評価学講座助教を経て,09年より准教授,14年より東大大学院医学系研究科医療品質評価学講座教授(15年5月より非常勤)。15年より慶大医学部医療政策・管理学教室教授。専門医制度と連携したデータベース事業NCD(National Clinical Database)の構築・運営の支援と,データ管理・分析を手掛けている。厚労省「保健医療2035」策定懇談会メンバーを務める。

門田守人 もんでん・もりと
広島県福山市出身。1970年阪大医学部卒。同大講師,助教授を経て99年教授に就任。2004年阪大病院副病院長,07年阪大理事・副学長に就任。11年がん研有明病院副院長,12年同院長,15年より現職。日本癌治療学会理事長,日本外科学会会長等を歴任。現在は,日本医学会副会長,厚労省・がん対策推進協議会会長を務める。「基幹病院連携強化会議」では有識者として,国内の動向を踏まえた観点から広島県の医療政策に助言する。



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【インタビュー】
健康と安心を守る地域医療構想

松田 晋哉氏(産業医科大学公衆衛生学教室 教授)
2016年1月4日 週刊医学界新聞 第3156号 

高齢化と人口減少が進む日本社会において人々の健康を守るには,地域の実情に応じた持続可能な医療サービスの提供が欠かせない。2015年3月公表の「地域医療構想策定ガイドライン」をもとに,質の高い持続可能な医療提供体制をどう整えていくべきか。今後,全国各地で地域単位での取り組みが本格化する。同ガイドラインの基盤となるデータ整備に中心的役割を果たした松田晋哉氏に,地域医療構想の目的と意義,今後地域の医療者に求められる役割や共有すべき理念について聞いた。

――地域医療構想の策定作業が本格化しています。初めに,この構想の目的をお聞かせください。

松田 地域医療構想は,「病床削減」が目的ではありません。超高齢社会にふさわしい質の高い医療を,地域のニーズも踏まえて適切に提供する。そのために,地域の医療を医療者と住民が自らの意思で作り上げることが,構想の大きな目的となります。

 超高齢社会を迎えた今,急性期の入院に偏重した医療資源の配分のままでは,これからの日本の医療ニーズに対応できなくなるでしょう。来たる2025年の傷病構造に備えるために医療施設の機能分化を進め,より効率的な医療提供体制の構築が必要なことから地域医療構想が進められているのです。

なぜ「地域」の構想が必要なのか

――地域医療構想が想定する「地域」とは,どの範囲を指すのでしょう。

松田 「地域」と言っても,とらえ方はさまざまですね。例えば急性期病院であれば二次医療圏ほどの範囲を想定し,診療所であれば中学校区ぐらいを考えるかもしれません。その中で地域医療構想は,回復期や慢性期の医療提供体制の整備を最大のテーマとしていることもあり,高齢者が車で15-30分以内に移動できる日常生活圏域,具体的には中学校区を2-3個組み合わせた範囲を「地域」としてイメージしています。

――医療者が地域医療を考える上で一つの基準になりそうです。こうした地域単位のもと,改革が求められるのにはどのような背景がありますか。

松田 それぞれの地域に特性の違いが顕著にあるからです。例えば一口に東京と言っても,人口減少が進む北区と多摩市では,一戸建ての占める割合が高い,大規模集合団地が多いなどの違いで,人口構造や将来の人口推移は異なります。一方,湾岸地区の江東区では高層マンションの建設が続き,急速な人口の増加が予想されています。

――限られた範囲でも大きな違いがあるわけですね。

松田 ええ。これが全国ともなれば地域の事情は千差万別です。さまざまな特性や現象がある以上,それに合わせた個別の医療提供体制を考えていかなければならないわけで,そのためには視点を地域ごとに絞った構想が必要になるのです。

医療者・地域住民が将来の地域像を民主的に協議

――地域医療構想の特徴はどのような点にありますか。

松田 DPC(診断群分類)やNDBを用いたデータにより,地域の傷病構造はどうなっているのか,医療提供体制はどうなのかなど,地域における医療の状況が客観的に把握できるようになったことです。高齢化による人口動態の変容で,すでに医療の需給状況にギャップが生じている地域もあります。10年後,20年後にはさらにどう変化するのかを予測し,医療提供者が自ら将来の地域を構想する枠組みができたと言えます。

――構想の具現化に向けて,重視したいポイントはどこにありますか。

松田 今後増加が予測される慢性期の患者を,いかに地域でみていくか。特に焦点となるのは,2025年の医療機能別必要病床数の推計結果から「一般病床・療養病床以外でも対応可能」とされている30万人前後の高齢者を,各地でどうみていくかということです。入院以外の患者を本当に地域で受け入れることができるのか,これは地域ごとに慎重に議論する必要があります。

――地域の実情に合った対策は,どのように検討すればよいでしょう。

松田 地域医療構想調整会議(以下,調整会議)に重要な役割が期待されます。調整会議とは,都道府県の二次医療圏に相当する「構想区域」ごとに,医療関係者,保険者,行政関係者,住民代表などが委員として参加し,各種データを踏まえその地域のニーズに応じた適切な病床機能別病床数を検討する場となります。

――さまざまな関係者が一堂に会する会議によって地域の医療を議論するというのは,画期的ではないでしょうか。

松田 そうですね。この場で,自分たちの地域の医療提供体制の課題を見つめ,10年,20年先の地域像を民主的に話し合うことになります。このような場の設定は,地域医療構想において最も意義のあることだと考えています。

地域医療構想は地域包括ケアと連動する関係にある

――地域医療構想で用いられるデータを利用する医療施設は,大規模病院から診療所までさまざまです。データを活用するに当たって医療者に求めることはありますか。

松田 まずはデータを分析する力を身につけていただきたい。なぜなら,それぞれの医療機関において,地域医療構想で使ったデータをどう解釈するかの理解が欠かせないからです。ただし,小規模施設や診療所の先生方にまでそれを求めるのは,マンパワーの課題も含め難しいと思います。そこで,医師会や日本病院会,われわれ研究者も責任を持って協力し,各種データをわかりやすい形で提示していくことが大切だと考えています。

――地域医療構想の策定は,地域包括ケアの実現にどのように作用するのでしょうか。

松田 地域医療構想は,あくまでも医療提供体制の保障を主たる目的としています。地域包括ケアの「地域でみる」という理念を達成するためには,「後ろ盾」としての病床をどう整備するかという地域医療構想の議論を抜きには考えられません。逆に地域医療構想の中でも,地域包括ケアにおける日常生活支援といった分野の充実化を意識して取り組まないと,患者を在宅・地域に戻すという地域包括ケアの目的は果たせない。つまり,地域医療構想は地域包括ケア実現のための基盤となるもので,両者の連動を意識した視点を持つことが重要になります。

「相互扶助」の精神をもう一度根付かせる

――医療サービスを受ける主体である住民には,これからの医療の在り方についてどう理解を求めていけばよいでしょう。

松田 医療は「アクセス」「質」「コスト」の3つの関係の中にあり,これら全てを最大限追求するというのは困難です。誰にとっても痛みのない改革というのはあり得ない。それを住民も理解しないといけないと思うのです。特に,限りある財源と医療資源の不足を補うのは,医療・介護職の長時間労働と,赤字国債を引き受ける今の若者世代です。労働者の3分の1が非正規雇用と言われる中,団塊の世代の高齢化が進んで80歳以上になったときに,今の構造でこの負担を支え切れるのかは切実な問題です。

 住民も,医療者らとともに自分たちの後の世代に対する責任をどう果たすべきか考える岐路に立っている。そこで調整会議は,現在の問題認識について住民を含め関係者間で意見交換し,将来を冷静に考える場にしていかなければなりません。また,調整会議を一つの機会とし,さらにタウンミーティングなど,住民に知らせる場を提供することも必要になるでしょう。

――地域医療構想を契機に,地域がどのような姿に変わってほしいとお考えですか。

松田 地域における「相互扶助」の関係を取り戻してほしいですね。高齢者が増えることで,相対的に貧しい人が増えるなど格差が広がることを危惧しています。地域の中でお互いに助け合う「相互扶助」の精神を根付かせ,コミュニティの中で相互に支え合う仕組みをどうつくりあげていくのか。これは地域包括ケアに課されたテーマでもあります。地域医療構想により,住民も医療者も地域の将来を見つめ直し,「自分たちの地域をもう一度好きになる」,そうした契機にしてほしいと願っています。

(了)

松田 晋哉 まつだ・しんや
1985年産業医大卒。92年フランス国立公衆衛生学校卒。99年3月より産業医大公衆衛生学教室教授。専門領域は公衆衛生学。フランス公衆衛生監督医(Diplôme de la Santé),英国王室医学会公衆衛生医学会フェロー。DPCの開発者としても知られる。『医療のなにが問題なのか――超高齢社会日本の医療モデル』(勁草書房),『地域医療構想をどう策定するか』(医学書院)など著書多数。



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地域医療連携実現に向けた提言
2016年1月4日 週刊医学界新聞 第3156号 

「切れ目のない医療・介護の提供」に
かかりつけ医中心の体制構築を

横倉 義武氏(日本医師会会長)

 社会保障と経済は相互作用の関係にあり,老後が不安であるという思いを持つ国民に安心を示すことは,強い経済を実現するための出発点です。

 わが国の長期債務残高が1000兆円を超え,今後労働力人口が減少するという苦しい上り坂の中で,社会保障制度を持続可能なものとするためには,改革を進めて行くことが必要です。

 真の国づくりとは,健康で安心して暮らせる「まちづくり」と,それを支える人を育てていくことであり,医療はまさにその根幹です。地域ごとの将来ニーズを踏まえ,それぞれの病院が効率よく機能を発揮し,地域の連携体制が働き,かつ病院の経営が安定するような体制構築が求められます。こうした体制構築に向け,各病院が機能構築を適切に判断できるための制度・財政両面にわたる支援が必要です。具体的には,医療法をはじめとする制度的枠組みの整備,医療機関に対する公的支援に加え,どのような機能を選択しても地域や患者ニーズに応えている限り,経営が安定して成り立つよう,地域医療を支える医療機関を公平に支えることが必要です。特に医療従事者の比率が高くなる地方では,経済の活性化により経済成長を促し,地方創生への多大な貢献へとつながります。

 また,人口の変化を踏まえた病床の機能分化は必要ですが,国や都道府県が目標値を定めて一律に推し進めることは適切ではありません。人口の集中や散在,在宅医療の基盤づくりの進み具合など,それぞれの地域の実情を反映させることが必要です。特に過疎地では,在宅医療の提供者が少ない上,面積が広大なため訪問看護・介護は困難です。例えば,ある地域では慢性期機能の必要病床数を多く算定し,また他の地域では在宅患者数を多くするようにすべきです。「施設も,在宅も」という考え方も重要になってきます。

これらの個々の政策は別々に考えるのではなく,その地域で,何が必要なのか,どのような方法なら利用できるのか,全体を通して考えるべきです。

 このようにわが国は,団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け,病床の機能分化と連携,在宅医療・介護の充実,医療従事者の確保と勤務環境の改善等により,地域の特性に応じた地域包括ケアシステムの構築が求められています。

 地域包括ケアは,高齢者が,可能な限り,住み慣れた地域で,自立した日常生活を営むことができることをめざすものであり,これからは,「切れ目のない医療・介護」を提供できるよう,かかりつけ医を中心した提供体制の構築が重要です。まずはかかりつけ医を受診することにより,患者さんがそれぞれの症状に合った,ふさわしい医療を受けられるようになり,適切な受療行動,重複受診の是正,薬の重複投与の防止等により医療費を適正化することが期待できます。

 このため日本医師会では,これまでかかりつけ医の普及・定着に努めてきましたが,さらにその機能を高めるため,「かかりつけ医機能」のあるべき姿を評価し,その能力を維持・向上するための研修を2016年4月から実施します。

 最後に,私が会長に就任してから「日本医師会綱領」を旗印として,「国民の安全な医療に資する政策か」「公的医療保険による国民皆保険は堅持できる政策か」を判断基準としてきました。超高齢社会を迎えた今,単なる寿命の延伸ではなく,平均寿命と健康寿命の差を縮める必要があり,われわれ医療提供側からも,健康寿命の延伸,ロコモティブシンドローム対策や糖尿病,COPD等の生活習慣病対策を提言していきます。

 今後も,非常に優れた「国民皆保険」という貴重な財産を,次の世代に継いでいけるよう,責務を果たしたいと思っています。



地域医療は地域住民主体の医療
地域密着型で“Health care”の実現へ

尾身 茂氏(独立行政法人地域医療機能推進機構 (JCHO)理事長)

 わが地域医療機能推進機構は,2回目の新年を迎えました。旧社保庁傘下にあった社会保険病院,厚生年金病院,船員保険病院の全国57病院を統合し,2014年4月,独立行政法人として発足しました。当機構は,「JCHO(ジェイコー)」という愛称で社会的に認知されることを願っています。なぜなら英訳名こそ,私たちの熱い思いが込められているからです。JCHOはJapan Community Health care Organizationの略称です。地域医療を掲げながら“Medical”を使わず“Health care” としました。

 私たちの病院群は以前から地域密着型の医療を展開しています。今後,少子高齢化というかつて経験したことのない社会構造の変化に対応すべく,単に急性期の医療にとどまらず,リハビリ,介護,健診,予防,看取りまで一貫したシームレスなヘルスケアを担う,時代の要請に応える組織をめざしています。地域医療を一言でいうなら「地域住民主体の医療」です。その推進役を担うJCHOが,病院内での活動に終始していてはその任は務まりません。地域の住民にとって治療から予防,福祉まで,どうしたら生活の質を保っていけるのかという複合的な視点で取り組まなければなりません。“Medical”ではくくりきれない,きめ細かい“Health care” の実現が必要なわけです。

 もとより国民にとって医療資源は,不可欠なインフラとして重要な公共財であります。ましてや公的医療機関として生まれ変わったJCHOには一層重い社会的使命が課せられています。役職員が新生組織の職務を担うべく,共有する価値観の証として次の「JCHO理念」を制定しています。

 「我ら全国ネットのJCHOは地域の住民,行政,関係機関と連携し地域医療の改革を進め安心して暮らせる地域づくりに貢献します」

 地域が求める医療サービスの提供を通して地域づくりにかかわる心意気を宣言しているのです。医療機関の理念としてユニークな内容だと思われませんか。

 もちろん立派な理念だけでは「絵に描いた餅」にすぎません。地域のニーズとは何か。地域の住民が期待する医療の在り方とはどういったものなのか。地元自治体,医師会,住民代表らに参加いただき,各病院主催の地域連絡協議会を年1回以上開催して,地域の生の声を聞く機会を設けています。特色も強みも異なる57のJCHO病院は,知恵と力を結集して地域のニーズに応えていかなくてはなりません。

 現在JCHOの使命として5疾病(がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病,精神疾患),5事業(救急医療,災害医療,へき地医療の支援,周産期医療,小児医療)に加え,次の4大ミッションに取り組んでいます。

医療過疎地域への支援 東日本大震災被災地の福島県浪江町に医師,看護師,理学療法士,管理栄養士の派遣,離島の伊豆諸島・新島,北海道根室市等への医師派遣を行っています。

総合診療医の育成 わが国の専門医育成は,これまで基本的に臓器別の専門医一辺倒でした。それはとても大切なことですが,超高齢社会において複数の疾患を持つ患者さんには,医療の質や効率の面で弊害もあります。2017年度には19番目の基本領域の専門医として総合診療専門医が確立されます。JCHOではベテラン指導医のもと総合診療医の育成とともに,専門医との連携システムやキャリアパスの明確化等で総合診療医のロールモデルを構築していきます。

医療情報のIT化 クラウド型の情報システムを導入するなど,医療・健診,福祉分野のIT共有化に先駆的に取り組んでいます。

地域包括ケアの推進 全ての病院に「地域包括ケア推進室」を設置して,地域の医療機関同士や自治体との顔の見える連携,訪問看護など在宅患者への対応強化に努めています。  

 このようにJCHOは全国ネットのスケールメリットを生かして,「安心の地域医療を支える」一翼になりたいと奮闘しています。


  1. 2016/01/04(月) 05:55:01|
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