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地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

12月21日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/385147?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MS151221&mc.l=136083239
シリーズ: 中央社会保険医療協議会
「2回連続のマイナス」、2016年度改定率決定
ネット1.03%減、本体0.49%増も過去3回より低く

2015年12月21日 (月)配信 橋本佳子(m3.com編集長)、成相道子、高橋直純(m3.com編集部)

 政府は12月21日、2016年度診療報酬改定について、ネットの改定率を1.03%のマイナスとすることを決めた。診療報酬本体は0.49%引き上げる一方、薬価(1.22%)と材料(0.11%)を通常改定で1.33%、加えて薬価の市場拡大再算定で0.19%、合計1.52%引き下げる。


 さらに別途、2016年度改定で新たに導入する薬価の「特例市場拡大再算定」、後発医薬品の使用促進、大型門前薬局の調剤報酬の適正化、湿布薬の使用制限などで、合計0.4%の引き下げを行う。厚生労働省はこれらの引き下げを「制度改正に伴うもの」という理由から、「外枠」として扱い、改定率の計算に入れない方針だが、これらを含めて改定率を試算すると1.43%のマイナス改定となる。

 ネットのマイナス改定は、2014年度改定に続き、2回連続。2014年度改定では消費増税対応分を除けば1.26%のマイナス改定だった(対応分を含めれば、0.1%)。日本医師会をはじめ、医療界は「ネットでプラス」を要求していたが実現せず(『「ネットプラス改定」を要望、総決起大会』を参照)、本体0.49%増も、過去3回の改定よりも低く抑えられている(下表参照)。

 塩崎恭久厚労相は21日に会見し、マイナスとなったネットの改定率よりも、今回0.49%のプラスになった「本体改定率が一番重要だ」と指摘し、「より良い医療を確保するという意味で、大きな成果があった」と強調した。


 日本医師会会長の横倉義武氏も同じく21日に会見、「少し厳しいが、財政全体を考えると医療崩壊が起きないような配慮はされた。安倍総理はじめ閣僚、自民党の方々には深く感謝する。ぎりぎり合格点と考える」と受け止めた。

 診療報酬本体の引き上げ率は、医科0.56%、歯科0.61%、調剤0.17%で、1:1.1:0.3の割合。当初、調剤については引き下げ圧力もあったが、結果的にはプラスを維持した。

 今改定では、「外枠」扱いとされた部分に注視する必要がある。薬価の「特例市場拡大再算定」は、売上年1000億円を超す医薬品の薬価を引き下げるルールとして2016年度改定から導入される(『年間1500億円超の薬、最大50%も薬価ダウン』を参照)。その額は約280億円。そのほか(1)後発医薬品への置き換えが進まない長期収載医薬品の特例的引き下げ(国費ベースで約20億円)、(2)大型門前薬局の調剤報酬の引き下げ(約40億円)、(3)経腸栄養用製品の給付の適正化(約40億円)、(4)湿布薬の1処方当たりの枚数制限など(約30億円)――を合わせ、約410億円、約0.4%相当の引き下げになる。

 厚生労働省は、2016年度予算概算要求の段階で、社会保障費の約6700億円の増額を要求。これに対し、財務省サイドは5000億円弱への抑制を求めていた(『財務相、社会保障費増「5000億円弱に抑制」と念押し』を参照)。これらの目標達成の一環として、「外枠」扱いの引き下げが実施された。

 「外枠」扱いの部分を勘案すれば、(2)は約0.04%に当たり、この分を調剤報酬の引き上げ率0.17%から差し引くと、約0.13%増にとどまる。

 薬価の通常改定では、薬価と市場実勢価格の乖離相当の引き下げが行われ、それにより浮いた財源を診療報酬本体の改定財源に充当することが、通例だった。しかし、2014年度改定ではこの充当が行われず、日医は問題視していた(『中川日医副会長、改定で「3つの苦言」』を参照)。

 塩崎厚労相は、「従来からその時々の課題に応じて、診療報酬本体に充当する場合もしない場合もあった。今改定では、厳しい財政状況の下、経済財政再生計画との調和と地域包括ケアシステムの構築といった医療の質の向上などを考え、必要な本体改定率を確保できた」と述べ、今回の改定でも本体への充当は十分にされているとの見方を示した。一方で、横倉会長は、「薬剤は診察と不可分。薬価改定の半分も本体に充当されず、非常に残念」と問題視している。
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 削減のターゲットは薬
 2016年度診療報酬改定の基本方針は、既に社会保障審議会で決定している(『「不適切な長期投薬」は是正、削減対象は薬』を参照)。

 2025年の医療提供体制の構築に向けて、「医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等」が重点課題だが、内容的には、地域包括ケア病棟や地域包括診療料など、新しい概念の点数が設定された2014年度改定と比べれば、算定要件や加算の見直しなど、従来路線の調整的な改定にとどまる見通しだ。次回の2018年度の診療報酬と介護報酬の同時改定が、2025年に向けた最大の焦点と言える。

 機能分化の関連では、7対1入院基本料の病床抑制に向け、算定要件をどこまで厳しくするかが焦点(『7対1厳格化に「やり過ぎ」の声も』を参照)。外来については、医療法改正を受け、特定機能病院と500床以上の地域医療支援病院の患者数抑制に向け、紹介状なしの患者等に定額負担徴収を導入する(『紹介状なし大病院受診、定額徴収義務化』を参照)。在宅に関しては、高齢者向けの集合住宅への訪問診療は締め付けが強化されそうだ(『「湿布薬、1回70枚」に制限する案も』、『分割調剤や残薬調整、診療側と支払側で意見対立』などを参照)。大型門前薬局についても、メスを入れる(『門前薬局から、かかりつけ薬局・薬剤師への転換迫る』を参照)。

 一方、引き上げ項目は、チーム医療の推進、退院支援をはじめ地域医療連携の取り組みのほか、認知症をはじめ高齢社会に向けて増加が想定される疾患の対応については、一定の評価がなされる見通し。評価の視点としては、施設や人員配置などのストラクチャー評価ではなく、診療行為の成果を見る「アウトカム評価」がどの程度、入ってくるかが注目点の一つだ(『リハビリ、「アウトカム評価」重視へ』を参照)。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/47674.html
診療報酬、実質2期連続マイナス改定- 本体は0.49%引き上げ
2015年12月21日 16時17分 キャリアブレイン

 政府は21日、2016年度の診療報酬改定について、医師の技術料などの「本体部分」を0.49%引き上げることを決めた。麻生太郎財務相と塩崎恭久厚生労働相が財務省内で会談し、最終合意した。薬価と材料費は1.52%引き下げるため、全体の改定率はマイナス1.03%となる。【敦賀陽平】

 14年度の改定は、消費税率の引き上げに伴う補てん分を除くと、改定率はマイナス1.26%となるため、実質2期連続のマイナス改定となる。
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http://www.cabrain.net/news/article/newsId/47672.html
診療報酬本体プラス「ぎりぎり合格点」- 16年度改定率受け日医が会見
2015年12月21日 19時30分 キャリアブレイン

 政府が2016年度診療報酬の改定率を決定したことを受け、日本医師会(日医、横倉義武会長)は21日に緊急記者会見を開き、本体改定率がプラス0.49%になったことについて、一定の評価ができるとのコメントを発表した。会見で、横倉会長は「薬価等改定の引き下げ分の半分程度となるプラス0.75%くらいの引き上げを期待していたので、それを100%とすると、ぎりぎり合格点」と述べた。【君塚靖】

 横倉会長は、日医として16年度改定で、本体がマイナスになると医療機関の経営が苦しくなり、国民が医療を受けられない事態になると主張してきたことから、「プラス改定になったのは、(マイナス改定になれば医療崩壊につながるとの)趣旨を国民に理解してもらえたからだろう」との見解を示した。

 一方、薬価等改定の引き下げ分の半分程度しか本体に充当されなかったことについては不満が残る結果だと強調した上で、「薬価差益は、本来評価すべき技術料を補完するものであり、財源を切り分けるのは適当ではなく、今後も薬価等改定財源は、本体財源に充当すべきだと主張を続ける」と述べた。



http://mainichi.jp/articles/20151222/k00/00m/010/115000c
診療報酬
実質1.03%減…人気医薬品、価格下げ

毎日新聞2015年12月21日 21時43分(最終更新 12月21日 22時11分)

診療報酬改定率の推移
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 塩崎恭久厚生労働相と麻生太郎財務相は21日、2016年度の医療の公定価格である診療報酬改定率について、全体でマイナス0.84%とすることで最終合意した。全体のマイナス改定は08年度改定以来、8年ぶり。ただ、これとは別に、想定以上に売れた医薬品の価格引き下げを含めると実質マイナス1.03%となる。

 診療報酬は0.1%で税金約150億円、保険料約190億円、患者の窓口負担約46億円に相当する。今回の結果を受け、患者負担は、診察料などは増えるが、薬代は軽くなる格好だ。

 今回の診療報酬改定は、「本体」と「薬価」を合わせた全体の改定率は早くからマイナスが固まっていた。社会保障費の自然増(概算要求で6700億円)を約5000億円に抑える政府方針が夏に決まり、「財布」の大きな診療報酬が標的になったからだ。日本医師会(日医)幹部も「これが効いた」と認める。

 このため、日医は狙いを本体プラスに絞った。前回14年度の改定は消費増税に伴う補填(ほてん)分を除けば実質0.1%増の厳しい結果だったが、今回は0.4ポイント近い増額に。日医の横倉義武会長は21日の記者会見で「少し厳しいが、医療崩壊を招かないようにしてくれたと理解している。ぎりぎり合格点だ」と評価した。

 本体増額の背景には来夏の参院選で、集票力のある日医への期待があるからだ。閣僚経験者は「(民主党政権時代から)自民支持だった横倉さんを大事にする」と早い段階から明らかにしていた。「首相官邸にも理解があった」(与党議員)といい、横倉氏は安倍晋三首相とも面会し、本体増額の必要性を直接訴えている。

 一方、薬や医療材料の公定価格「薬価」は市場価格の下落に合わせマイナス1.33%。しかも、想定以上に売れた医薬品の価格を下げる措置を含めるとマイナス1.52%で、国費1500億円を捻出。

 さらに、改定率には含まれないが、販売額1000億円超の医薬品の価格を引き下げる特例で280億円、特定の病院の処方箋を集中的に受け付ける大型「門前薬局」の調剤報酬引き下げで40億円を捻出するなど、経営に「余裕」があると見込める分野を対象に切り込むなどして削減額を700億円積み上げ、自然増の伸び抑制分と本体の引き上げ分をひねり出した。

 ただ、当初は医療費の窓口負担に上限を設けて負担を軽減する高額療養費の高齢者分の見直しも検討していたが、公明党が強く反発したため、「中身は今後議論する」(塩崎厚労相)として、明示しなかった。【堀井恵里子、阿部亮介】



http://www.iforex.jpn.com/news/%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81%E3%81%8C%E3%83%92%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%97%E3%81%9F%E6%96%B0%E8%96%AC%E3%81%AE%E5%80%A4%E4%B8%8B%E3%81%92%E3%82%92%E6%A4%9C%E8%A8%8E-3617
厚生労働省がヒットした新薬の値下げを検討
筆者 鳥羽賢

12/21/2015 - 20:39 iFOREX

厚労省が予想外にヒットした新薬の価格を下げられる政策を検討している。
 日本では医薬品の価格を政府が決めるという方式を採用している。価格の決定権は政府にあるのだが、医療費抑制のために予想外にヒットした新薬の価格を引き下げられる政策を導入することを検討しているという。

ヒット新薬は医療費負担に

 日本においては、医薬品の価格は製薬会社ではなく政府が決めるという方式が採られている。これは日本に国民皆保険制度があり、医薬品の代金の大半を政府などが払うことになるため、そのようになった。

 新薬が開発されると、製薬会社は製造費や市場規模などのデータを希望価格とともに厚生労働省に提出するが、最終的な決定は厚労省が行う。そして市場に出た後は、2年に1度改定が行われる。

 しかし最近になって、今後予想外にヒットした新薬の価格を引き下げる政策の検討をしているというニュースが流れた。予想外にヒットした新薬とは、具体的には年間の販売額が1500億円以上、かつ製薬会社の予想の3割以上となった薬が該当する。その場合、次回の価格改定で最大50%まで価格を引き下げられる。

 同様に年間の販売額が1000億円以上で、かつ製薬会社の予想の5割以上だった薬の場合、次回の価格改定で最大25%まで価格を引き下げられる。

 このような政策が検討されているのは、単純に言えば公的医療費削減のためだ。特に予想外にヒットした新薬について、かなりの医療費負担となる。その負担を緩和するために、次回の価格改定で最大半額まで価格を引き下げられるような制度を導入しようとしている。

 ただ当然ながら、製薬業界はこの政策に反対している。製薬業界の業界団体である日本製薬団体連合会は、「市場で評価される薬剤を価格下げの対象にするのは理にかなわず、 経営の予見性の観点からも大きな問題」と述べ、政策の撤回を求めた。

 今回のような政策が導入されれば、製薬会社の経営にとっては大きな打撃になるので、反発は当然と思われる。しかし日本の高齢化進行に伴う医療費の膨張への対策も不可欠で、そこのところの政府と製薬業界の綱引きがどのような決着になるかが問題でもある。

 最近では特許が切れた後、別の製薬会社によって製造される医薬品、ジェネリック医薬品の普及が急速に進んでいる。欧米ではもともと普及が日本より早かったが、日本でも最近は医療費抑制のためにジェネリックの使用を推奨するケースが増えてきた。

 いろいろな要因から、世界でも最大手クラスのファイザーも含めた製薬会社にとって、経営環境はますます厳しくなる。しかし医薬品は人の命を救うための重要な製品であり、他の業界とは違う。そのような意味で、製薬業界を必要以上に締めつけるような政策は控えめにした方がいいという声も増えるだろう。



http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=128297
ヒット新薬の値下げ検討、最大半額に…製薬業界は猛反発
(2015年12月21日 読売新聞)

 国内での売れ行きが予想外に伸び年1000億円を超えた医療用医薬品の値段(薬価)を引き下げるという新ルールを、厚生労働省が来年の診療報酬改定から導入する方針を固めた。保険適用された薬が対象。医療費が膨れあがるのを防ぐためだが、製薬業界は新薬開発を妨げると猛反発している。
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 新ルールでは、年間の販売額が1500億円を超え、製薬会社の予想の3割増以上となった薬について、2年に1度の診療報酬改定で公定価格を最大半額に下げる。1000億円超で予想の5割増以上となった薬も、最大25%落とす。

 新薬の値段は、製薬企業が開発コストや材料費などに加え、国内の市場規模を考慮して算定した価格を厚労省に提出するなどし、有識者会議での検討を踏まえた上で、同省が決定している。社会保障費の抑制が課題となる中、当初の予想を超す巨額の売り上げが生じた場合、公的保険財政からそのまま支出するのは難しいと判断した。

 調査会社IMSジャパンのまとめによると、近年、年間1000億円以上の売り上げがあった薬は、抗血小板薬の「プラビックス」、抗がん剤「アバスチン」(2014年)、高血圧治療薬「ブロプレス」(13年)と、同「ディオバン」、抗認知症薬「アリセプト」(12年)など。

 また、今年は米国で開発されたC型肝炎の画期的治療薬「ソバルディ」(1錠約6万円)と「ハーボニー」(同約8万円)も発売され、国内患者の多さもあり、薬剤費がかさむ見通しだ。同社によると、今年5月に発売された「ソバルディ」の7~9月の売り上げは433億円に上り、年間1000億円を超えるのはほぼ確実とされる。

 同省では、年内に開かれる有識者会議に諮った上で最終決定する方向だ。これに対し、「革新的で成功した新薬に対するペナルティーに他ならない」(米国研究製薬工業協会)、「市場で評価される薬剤を価格下げの対象にするのは理にかなわず、経営の予見性の観点からも大きな問題」(日本製薬団体連合会)など、国内外の製薬団体から撤回を求める声が上がっている。



http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20151221-OYT1T50153.html
診療報酬改定 地域医療を守る視点が重要だ
2015年12月22日 03時21分 読売新聞 社説

 高齢化で膨らむ医療費の抑制は、社会保障制度を維持する上で欠かせない。診療報酬のマイナス改定はやむを得まい。

 2016年度の診療報酬改定で、政府は全体として0・84%引き下げることを決めた。前回14年度改定はプラス0・1%だったが、消費増税の対応分を除けばマイナス1・26%だった。実質的に2回連続の引き下げだ。

 今回、医師らの技術料である「本体部分」を0・49%引き上げる一方、医薬品の価格である「薬価部分」は、実勢価格に合わせて1・33%引き下げる。

 政府は、財政健全化に向けて全体のマイナス改定を早々に決め、本体部分への切り込みも検討してきた。日本医師会などは、医療崩壊を招きかねないとして、プラス改定を強く求めてきた。

 来年夏の参院選を前に、政府・与党が医療機関側に配慮する形で決着したとの見方もある。

 前回の実質マイナス改定以降、病院経営は悪化傾向にある。地方の医師不足も依然として深刻だ。医療従事者の人件費となる本体部分の引き上げは、地域医療を守り、国民の不安を和らげるためには、必要な措置と言えよう。

 報酬改定と同時に、薬剤費抑制のための制度改革を実施する。国内での売り上げが年1000億円を超えたヒット新薬の値下げや、医師が処方する湿布の枚数制限などが見込まれている。

 安価なジェネリック医薬品(後発薬)の利用促進も急ぎたい。

 薬局に支払われる報酬も大幅に見直す。患者の服薬情報を一元管理する「かかりつけ薬局」の普及を促すため、大病院周辺に立ち並ぶ「門前薬局」の報酬は減額する。もうけ過ぎとの批判が強いことを受けたものだ。

 診療行為ごとの報酬の具体的な配分は、年明けに議論される。超高齢社会に適した医療提供体制を構築する。費用を抑えつつ、医療の質を向上させる。こうした方向性に沿ったメリハリのある配分にすることが重要である。

 都道府県では、将来の医療ニーズと必要な病床数を盛り込んだ地域医療構想の策定を進めている。高コストの急性期向け病床を減らし、退院支援や在宅診療などを充実させるのが狙いだ。

 急性期病床が増えすぎ、症状の安定した高齢患者が多数入院している現状は改める必要がある。

 高齢者が地域で安心して暮らせるよう、医療と介護の連携強化も大切だ。報酬配分で重点課題とすべきである。



http://www.nikkei.com/article/DGXKZO95412030S5A221C1EA1000/
医師の報酬引き上げは妥当なのか
2015/12/22付 日本経済新聞 社説・春秋

 健康保険で受ける医療の公定価格である診療報酬が2016年度は全体で1%程度引き下げられることが決まった。診療報酬のうち薬価部分が下がったことが寄与した。保険料や税金が財源である健康保険の財政は厳しく、引き下げは妥当だ。

 しかし医師、歯科医師、薬剤師の技術料部分、いわゆる診療報酬本体については約0.5%の引き上げとなった。国民の負担軽減や国家財政の健全化に役立てるためには引き下げてもおかしくはないはず。なのに、なぜこの部分をわずかでも優遇する必要があったのか明快な理由が見当たらない。

 診療報酬は原則2年に1度、社会情勢を踏まえて改定することになっている。16年度は改定年に当たるため、政府の来年度予算編成の中で改定率が議論されていた。

 薬については、実際の取引価格を基に新たな薬価が決まる。市場では以前に決めた薬価より安く取引されることが多いため、新薬価は改定のたびに下がるのが常だ。

 これに対し、いつも大きな議論となるのは本体部分の改定率だ。病院や診療所などの収入に直結する部分だけに、医師会など関係団体の引き上げ圧力は強い。

 今回、本体部分の中で、大病院の近くに密集する大型「門前薬局」の報酬を引き下げる方針は示された。「処方箋通りに薬を出しているだけ」といった批判や、それらの薬局の利益率が高いことを踏まえると、適切だろう。

 問題はその他の部分で目立った切り込みがないことだ。医療機関の経営は楽ではない、といわれるが、医療機関の機能や規模などを子細に見ると一様ではない。

 手術などを担う急性期病院では経営が厳しいところもあるが、診療所の収益などは安定的といえる。全体を抑えつつ、余裕のあるところから厳しいところへ財源を回す改定を考えるべきだ。

 にもかかわらず、本体部分は引き上げありきで検討が進んだ感が強い。来夏の参院選を見据え、日本医師会などの支持を得るための政治決着といわれても仕方ない。

 全体の改定率が決まったことで、次は個別の診療報酬の改定作業が始まる。少なくとも医療機関の経営実態に即した改定をしてもらいたい。できる限り費用を抑えて良好な医療体制をつくるための、医療機関や患者負担のあり方などについても、もっと議論を深めるべきだ。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/53512/Default.aspx
本誌試算 16年度薬価改定 薬剤費ベースで7100億円前後消失 7%強に相当
公開日時 2015/12/22 03:52 ミクスオンライン

塩崎厚労相と麻生財務相は12月21日、大臣折衝を行い、2016年度診療報酬改定を本体プラス0.49%(国費プラス500億円程度)とし、外枠改定分として610億円程度を改定財源とすることを決めた。医薬品関連では、特例再算定として280億円程度、通常の市場拡大再算定として200億円程度、経腸栄養用製品の給付適正化で40億円程度、湿布薬の枚数制限などで30億円程度、後発医薬品関連で20億円程度を追加財源とした。この結果、薬価に関しては、市場実勢価格に基づく薬価引き下げで1200億円、特例再算定など外枠改定分で500億円を確保した。これにより単純計算で国費ベース1700億円分が引き下げられることになる。本誌が試算したところによると、薬剤費ベースに換算すると7100億円前後で、7%強の市場が消える。

今改定における市場実勢価に基づく薬価の引き下げは国費ベースで1.22%引き下げ、薬価ベースに換算すると5.57%の引き下げとなる。今改定は市場拡大再算定を外枠改定とした。このため過去の薬価改定率と比較する場合は、今回の市場拡大再算定分として国費ベースで0.19%、薬価ベースで0.90%引き下げを加える必要があり、これらを合算した国費ベースで1.41%、薬価ベースで6.47%の引き下げを用いる。

後発医薬品関連では、初収載の後発医薬品の薬価0.5掛け(10品目超の内用薬では0.4掛け)、後発医薬品への置き換えが進まない長期収載品の特例的引下げ(いわゆるZ2)の置き換え率の引上げで、国費ベースで20億円を確保する。

◎巨額な医薬品「特例再算定」は国民皆保険堅持の観点から 田村前厚労相

塩崎厚労相は大臣折衝後の記者会見で、前回改定の0.10%の約5倍、さらには前自民党政権時代の2008年度改定の0.38%を上回るプラス0.49%を実現できたと説明。「医療機関の経営状況や医療従事者の賃金動向を踏まえて適切な財源を確保できた」と評価した。

一方で、国民皆保険堅持の観点から、巨額な売上をあげる製品については鋭い切込みがあった。田村憲久前厚労相は同日昼に行われた自民党厚生労働部会後に記 者団に対し、「製薬企業がどう思っているかわからないが、思ったよりも利益が上がっているのは確かだ。公的保険の持続性を考えるのであれば、一定のことをせざるを得ない」と語った。イノベーションを阻害するとの指摘が製薬業界側にあることに対しては、「公的保険がなくなったらイノベーションどころではない。公 的保険がパンクしたらその時点で全部自費でやってくれということになる」と述べ、理解を求めた。


◎7100億円前後消失 企業経営へのインパクト大 ビジネスモデルの転換も

今回の薬価改定に伴い薬剤費ベースで7100億円前後が消失する。製薬企業各社の業績にも大きなインパクトをもたらすことになるだろう。各社の業績を支えたブロックバスターが相次ぎ特許切れの時期を迎え、その一方で国は後発医薬品の80%目標の達成を閣議決定した。塩崎厚労相も大臣折衝後の記者会見で、16年度改定を契機に、今後3年間を重点改革期間と位置づけ、「改革工程表に沿った着実な実行」を求めたところ。ならば政府は後発医薬品80%の着実な達成に向け、まずは17年央の数量シェア目標70%をクリアするための施策を繰り出してくることは間違いない。長期収載品に依存するビジネスモデルからの脱却はもはや避けられないだろう。一方、今改定では巨額医薬品に対する「特例再算定」も導入された。17年度には消費税増税改定が、18年度には再び薬価通常改定が控えるだけに、製薬企業の経営は正念場を迎える。厚労省はこの改革を通じ、「地域包括ケアシステム」への転換を強固に推し進める方針だ。今改定を通じ厚労省は、新しい医療マーケットに見合うビジネスモデルの構築をメッセージとして製薬各社に突き付けられたともいえそうだ。

【2016年度診療報酬改定等】(国費▲1500億円程度/医療費(平年度ベース)▲6200億円程度)

(1)診療報酬本体 +0.49%(国費+500億円程度)
   各科改定率 医科 +0.56%
   歯科 +0.61%
   調剤 +0.17%

(2)薬価等
 ① 薬価▲1.22%(国費▲1200億円程度)
 ※上記のほか
 ・市場拡大再算定による薬価の見直し(国費▲200億円程度)
 ・年間販売額が極めて大きい品目に対する市場拡大再算定の特例の実施(国費▲280億円程度)
  等により国費▲500億円程度

 ② 材料価格▲0.11%(国費▲100億円程度)

(3)診療報酬・薬価等に関する制度改革事項
 ① 医薬品価格の適正化(国費▲500億円程度)
 ・新規収載された後発医薬品の価格引下げ
 ・後発医薬品の数量シェア目標の引上げを踏まえた長期収載品の特例的引下げの基準の見直し
 ・市場拡大再算定による薬価の見直し、年間販売額が極めて大きい品目に対する市場拡大再算定の特例の実施

 ② 大型門前薬局等に対する評価の適正化(国費▲40億円程度)
 ③ 経腸栄養用製品に係る給付の適正化(国費▲40億円程度)
 ④ その他(湿布薬の1処方当たりの枚数制限等)(国費▲30億円程度)

  【決定】16年度薬価・診療報酬改定 改定率や削減額
   http://www.mixonline.jp/download/detail/tabid/259/downid/8573/Default.aspx



https://www.m3.com/news/iryoishin/383307
シリーズ: 始動する“医療事故調”スペシャル座談会
「院内死亡を全例把握」は大きな成果◆Vol.5
制度が機能すれば紛争減少を期待

2015年12月21日 (月)配信 司会・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――医療事故調査制度では、遺族への説明の在り方も問題になります。医療安全が目的であって、ご遺族への説明責任を果たすための制度ではありませんが、一方ではご遺族への説明も必要です。この辺りは、どう切り離しつつも、対応していけばいいのでしょうか。

武田 今回の制度は、「学習志向型」の制度なので、ご遺族に説明をするかどうかは、必ずしも問われていないと捉えています。もちろん、ご遺族には説明しますが、調査報告書を手渡して、「このような経過を辿り、この結果になった」と説明するよりも、「これからこのようにして、医療を変えていきます」と伝えるのが、趣旨だと考えています。

 ただ、そうとは言え、ご遺族は「本当の原因が知りたい」と言われるわけです。そうしたご遺族に対し、今のような答え方では、多分通らないでしょう。ここに、制度本来の趣旨と、事故に遭われた方への思いやりをどうするかという問題があります。これは、ガイドラインで書くような話ではなく、患者・ご遺族とのリスクコミュニケーションの中で解決していくべき問題。調査報告書を渡しても、納得しない人もいるわけです。医療メディエータの関与も必要かもしれません。

 ご遺族に説明しても納得が得られないのであれば、中央(医療事故調査・支援センター)に調査を依頼する道があるわけです。それでもダメであれば、民事訴訟を起こす道も閉ざされてはいません。もっとも、今回の制度は、医療者の努力を「是」としているというのが、私の解釈。調査報告書を渡すかどうかなどを議論する前に、医療者側が紛争などのリスク軽減のために、いかに努力するかが、一方で問われています。

山本 私も論理的には、医療の安全と、患者・ご遺族の納得が直結するものではないと思っています。一方で、この制度に基づいて、きちんとした調査を行い、かつご遺族に対して、的確な説明がなされ、コミュニケーションを取ることができれば、むしろ紛争は減っていくのではないかと期待しています。もちろん、武田先生が言われたように、医療の分野に限らず、いくら説明しても分からない人がいることも、私も紛争を取り扱う専門家としてよく承知しています。

 医療の民事訴訟は、2004年がピークで、新規に提訴される訴訟件数は、1000件を超えましたが、その後は減少して、今は700~800件です。医療側の努力があり、コミュニケーションをうまく取れるようになってきた面が間違いなくあるでしょう。法律上は、院内調査の結果について、「遺族に説明しなければならない」となっています。どんな方法で説明するかは別として、この説明により、紛争の発生自体を予防できるようになっていけば、さらにより良い方向に向かうと思います。多くのご遺族は説明すれば、理解し合える部分が大きいと、個人的には考えています。

――紛争の減少のほか、今回の制度による影響をどうお考えでしょうか。

武田 医療事故調査制度が医療に与える影響ですが、「記録」の在り方を、もう一度、きちんと見直すことが必要になる点が挙げられます。ピアレビュー型の調査に当たっては、同僚に対して、科学的な検証に堪え得る材料を示さなければいけないからです。

 今は「忙しい」という理由などから、記録を重視していないかもしれませんが、説明した事実や実施した行為を記録として残すことこそが、唯一の証拠になります。医師や看護師をはじめ、あらゆる医療職に対し、この考え方を徹底的に鍛えなければいけません。特に、緊急時は皆が、バタバタしており、記録に残していないかもしれませんが、記録がなければ、調査は難しい。

 また、もし医療事故が起きた場合に、看護師さんなどは、「きれいにしなければいけない」と考え、すぐに片付けを始めますが、そうではなく現状を保全して、写真を撮ることが必要。現状保全をせずに、「あの時、こうだったよね」と言っても、検証は難しい。この辺りのことが書いているのは、日本看護協会の医療事故に関するガイドラインです。

長田 おっしゃる通りです。当院で、10月からの制度開始に当たって、医師や看護師をはじめ、職員向けの講習会を開催したのですが、一番驚かれたのは、「医療事故が起きた際に、最初に何をすべきか」ということで、記録や現場保全が必要だという点です。例えば、「救命処置を行う、家族に連絡する」ことなどはこれまでやってきたことですが、記録や現場保全ができない。

 私は麻酔科医です。手術室は常に事故が起き得る状況なので、麻酔科は、記録を取り、状況を把握することで、進歩してきた領域。心電図や血圧計をはじめ、今は人の手による記録ではなく、自動で記録できるようになりました。こうしたハードが、手術室だけではなく、全ての医療フィールドに広がっていけばいいと考えています。

 今年、米国を視察した際、非常に進んだ病院があり、「これだけ立派な施設を維持するのは、大変ですよね」と伺ったら、「よく聞いてくれたね。私たちの国は、あなた方の国の数倍の費用をかけている」との答えでした。医療安全のためのハード、ソフトの体制を充実させるなら、相応の費用がかかることも、理解してもらうことが必要でしょう。

――先生方のお話をお伺いしていると、医療安全文化やその体制を醸成していくことが、今回の制度の一番の目的であり、成果ではないかと考えられます。

長田 事故の報告件数はそう多くはないと思いますが、医療現場では、まず「事故が起きてはいけない」と考え、説明をきちんとし、記録を取るという意識が、今まで以上に高まってくるのではないでしょうか。

山本 そうであれば、制度を創設した意義があるということですね。

武田 「院内死亡」があっても、病院長が必ずしも把握していたとは言えません。しかし、今回の制度により、「院内死亡」の全てを、病院長がチェックするシステムの構築が、新たに求められるようになります。この点も大きな変化、成果でしょう。管理者に上がらなければ、センターに報告するかどうかを判断できないからです。

 従来、「この事例は、病気で死亡したのだから、病院長まで報告しなくてもいいだろう」と判断していたケースの中には、実は事故が隠れていたかもしれません。

 さらに今回の制度で、医療事故がセンターに報告されるようになれば、日本における悉皆データが蓄積されることになります。これは世界的に見ても大きなインパクトです。「報告の数が多いから、危険な医療をやっている」というわけではありません。学習志向型のピアレビューという今回の制度の趣旨から言えば、「少し疑わしいものも、報告する」形でもいいのでは、と私は思っています。実際に調査をして、「これは医療事故ではなかった」と後から分かっても、それは恥ずかしいことではありません。報告して、調査をし、再発防止につなげるというPDCAサイクルを回して、医療安全につなげるという制度の趣旨を、医療者が理解する必要があります。

 このような医療者の取り組みが世間に理解されれば、「このまま制度を継続しよう」となるでしょう。制度の見直しが2016年6月に予定されていますが、2年間くらいは状況を見ないと、統計的なデータも出せず、見直しの議論は難しいのではないでしょうか。

山本 先生が言われる通りだと思います。「報告することが恥ずかしい」とか、「報告の数が多いから、危ない病院だ」といった話ではありません。むしろ逆でしょう。一定の確率でどんな医療機関でも医療事故は必ず起きると思うので、異常に報告数が少ない場合は、むしろ「ガバナンスなどに問題があるのではないか」との推定すら働くように思います。

 制度が施行されてから、まだ2カ月足らず。最初の段階では、先ほどお話があったように、現場では「戸惑い」もあるのだと思います。年間1300~2000件といった報告数の予想は、どの程度、根拠があるのかという問題はありますが、もう少し様子を見なければいけないでしょう。「疑わしい」ものは、報告していただいて、しっかりと調査をして、「医療事故に当たらない」のであれば、それでもいいわけです。医療界として、こうしたカルチャー、姿勢で臨んでいただければとありがたいと思っています。



https://www.m3.com/news/general/385272
37年間、体内にガーゼ 新潟、手術で置き忘れ
2015年12月21日 (月)配信 共同通信社

 新潟県立坂町病院(新潟県村上市)は18日、37年前に十二指腸潰瘍の手術をした患者の体内にガーゼを置き忘れるミスがあり、今年11月に手術で摘出されたと発表した。患者は県内の60代男性で回復している。病院側は経緯を説明、謝罪した。

 病院によると、男性は30代だった1978年7月に十二指腸と胃の一部を切除する手術を受けた。今年6月、別の病院で尿管結石の治療のため検査した際、腹部に腫瘍が見つかり、さらに別の病院で11月に腫瘍を切除した結果、内部からガーゼの塊が見つかった。

 腫瘍は体を守るため異物の周囲に細胞が集まって形成される肉芽腫だった。ガーゼの塊は広げられないが、数センチ角の止血用とみられる。78年の執刀医は既に死亡。カルテも保存期間を過ぎて廃棄されており、置き忘れの詳しい原因は分からないという。

 鈴木薫(すずき・かおる)院長は記者会見し「患者さんにご迷惑をかけ申し訳ない」と述べた。手術時に使用したガーゼの数を確認するなどの対策を徹底するとしている。



http://www.chunichi.co.jp/s/article/2015122190205035.html
がんを3年見落とし、患者死亡 名古屋大病院
2015年12月21日 20時50分 (中日新聞)

 名古屋大病院(名古屋市昭和区)は21日、検査のために泌尿器科に通院していた患者の肺がんを、主治医や放射線科医が3年にわたって見落とし、治療が遅れて死亡したと発表した。石黒直樹病院長は「医療ミス」と認め、遺族に謝罪した。賠償する方針も明らかにした。

 亡くなったのは県内の40代男性で、2007年6月から名大病院に通い始めた。直前に別の病院で腎臓がんの手術を受け、将来の他の器官への転移の有無を調べるためだった。

 半年に一度、名大病院でコンピューター断層撮影(CT)検査を受けたが、主治医らは肺の異常に気付かなかった。男性が胸に痛みを感じ、12年5月に別の病院で診察を受け、肺がんが判明した。既に悪化しており、14年3月に死亡した。

 過去のCT画像にがんとみられる陰影が写っていたことが分かり、名大病院は男性の死後、検証のための調査委員会を設置。09年5月にはがんの可能性に気づくことができたと結論づけた。当時、手術していれば、5年後の生存率は82%だったという。

 男性はCT検査を10回受け、計13人の医師が診断に関わっていた。調査委は見落としの原因を「主治医がCT画像の診断を放射線科に委ね、自らチェックしなかった」と指摘した。また放射線科の医師は腎臓がんの転移にとらわれていたなどとして診断態勢の改善を求めた。

 男性は名大病院を信頼し、自らの希望で通院を始めたという。石黒病院長は会見で「重大な医療ミス。患者の期待を裏切り、遺族にご迷惑をかける結果になり、心からおわびする」と頭を下げた。



http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=128255
群大術後死、開腹5例「延命できた」…遺族側が執刀医らに説明要求
(2015年12月21日 読売新聞)

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 群馬大学病院(前橋市)で肝臓の手術後に患者が相次いで死亡した問題で、遺族とその弁護団(団長・安東宏三弁護士)が19日、群馬県内で記者会見し、独自調査した開腹手術5例の全てについて「手術しなければ延命できた」などとする中間報告書を公表した。

 遺族らは執刀医らに直接説明するよう改めて求め、十分な回答がなければ法的措置も辞さないと表明した。

 独自調査では、いずれも開腹で、肝臓の手術後に死亡した4人と、膵臓すいぞうの手術後に死亡した1人について、消化器外科の専門医に検証を依頼。カルテや画像を解析し、術前の説明、手術や術後の経過について検討した。

 専門医は「手術をしなければその時点で死ぬことはなく、少なくとも数か月は生きられた」「術前に必ず行うべき検査をしていない」などと指摘。手術でがんを取り切れない場合も中止せず、強引に進めた例もあり、患者の利益よりも難しい手術への挑戦を優先した可能性があることも問題視された。

 会見したのは開腹手術の患者3人の遺族。妹を亡くした男性が「怒りが込み上げて言葉にならない。手術ありきではなく、他の選択肢も示してほしかった」と訴えた。

 この日は、病院が設置した第三者の医療事故調査委員会による開腹手術の遺族に対する聞き取りも行われた。弁護団は、執刀医と診療科長の教授、病院に、遺族に直接説明するか、書面で質問に答えるよう改めて求める通知書を送ったことを明らかにした。1月13日までに回答がなければ、民事訴訟も検討する。

 この問題では、同一の男性医師が手がけた肝臓の腹腔ふくくう鏡手術後に8人、開腹手術後に10人が約3か月以内に死亡。その後の調査で、このほかにも、膵臓も含め、12人の術後死亡例があることが分かっている。



https://www.m3.com/news/general/385270?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD151221&dcf_doctor=true&mc.l=136044434&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
病院に5千万円賠償命令 虫刺され、治療後に死亡
2015年12月21日 (月)配信 共同通信社

 虫に刺された宮崎県の女性=当時(69)=が皮膚の深部で壊死(えし)が広がる「壊死性筋膜炎」で死亡したのは、病院の治療が不適切だったためとして、遺族が病院を経営する社会福祉法人愛泉会(宮崎県日南市)に計約6千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、宮崎地裁は18日、病院の過失を認め計約5100万円の支払いを命じた。

 藤田光代(ふじた・みつよ)裁判長は判決で「症状を見分けるための血液検査などを怠った。診察時に適切な治療がされていれば、死亡を回避できた可能性は高い」と判断した。

 判決によると、女性は2011年4月、右足を虫に刺され、痛みが強かったため同県日南市の愛泉会日南病院で診察を受け、帯状疱疹(ほうしん)の疑いがあると診断された。2日後に意識がもうろうとし、搬送先の病院で死亡が確認された。



https://www.m3.com/news/general/385127
虚偽記載 認知症本に 兵庫医科大教授
2015年12月21日 (月)配信 毎日新聞社

虚偽記載:認知症本に 兵庫医科大教授

 兵庫医科大(兵庫県西宮市)は18日、認知症研究が専門の主任教授(61)の著書に、虚偽記載があったと発表した。ある成分の効能を確かめるために患者らを対象に行った研究について、大学が設置する倫理委員会の審査を経ていないのに「承認を得た」と書いていた。大学は教授の処分を検討している。

 大学によると、虚偽記載が見つかったのは認知症を扱った本で、4月に出版された。この中で、卵黄や大豆由来の物質「ホスファチジルコリン」入りのカプセルを飲んだ認知症患者ら310人を調べたところ、症状が改善したと報告した。さらに「兵庫医大倫理委員会の承認を得た」と記載していた。ところが、大学側が倫理委の承認がないことに気づき、6月に教授から聞き取りを開始したという。

 大学側は9月に学内外の弁護士や研究者らで調査委員会を設立して調査を始め、11月に「虚偽記載にあたる」との報告書をまとめた。

 一方、教授は取材に対し「研究は別の医療機関で行った。兵庫医大の倫理委員会の承認を得たというのは誤記で、出版後すぐに気づいた。大学からの指摘前に増刷分以降は削除している」と話した。【吉田卓矢、畠山哲郎、柳楽未来】



https://www.m3.com/news/general/385317
認知症で免許取り消し、倍増…症状に関する「質問票」義務化が一因
2015年12月21日 (月)配信 読売新聞

 認知症と診断されて運転免許を取り消された鹿児島県内のドライバーが2010年以降、年々増え、今年は10月までに55人と、昨年1年間(32人)の2倍近くに達したことが、県警への取材で分かった。

 昨年6月施行の改正道交法で、免許の更新時に病状などに関する「質問票」の提出が義務化されたことが増加の一因となっている。

 県警によると、認知症に伴う免許取り消しは、2010年は2人だった。それ以降、増え続け、11年13人、12年18人、13年20人、14年32人。今年1~10月の55人のうち8割超は、75歳以上のドライバーだった。

 55人の取り消しのきっかけは、免許更新時などの「認知機能検査」(75歳以上は全員、75歳未満は必要と判断された人が受検)が30人と半数以上を占める。次いで、警察への相談が12人、質問票から認知症と疑われた事例が8人だった。交通事故を起こして、発覚したケースもあった。

 質問票は、過去5年以内に〈1〉病気で意識を失ったことがある〈2〉思い通りに体を動かせなくなったことがある〈3〉十分な睡眠をとったが週に3回以上、眠り込んだことがある――など5項目に回答。虚偽の記載をした場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。

 ただ、質問票の回答内容ですぐに免許取り消しとなるわけではなく、医師が問診するなどし、安全な運転に支障がないかどうか判断される。質問票の記入を本人でなく、同伴の家族が行っている事例も見られ、県警は「本人に正しく記入してほしい」と訴える。

 さらに県警は今秋、県医師会を通じて県内の各医療機関に対し、認知症やてんかん、睡眠障害などが疑われる人がいた場合、警察への相談を促すよう、協力要請した。「特に75歳未満については運転能力の有無を把握するのが難しい」(県警幹部)という実情もあるからだ。

 認知症を除く病気で免許取り消しとなったドライバーも今年1~10月に81人いる。県警交通企画課の西政樹理事官は「事故を起こしてからでは遅いので、少しでも不安があれば、警察に相談してほしい」と呼びかけている。(橋本龍二)


http://www.sankei.com/west/news/151221/wst1512210090-n1.html
名古屋大が60代教授を6カ月の出勤停止処分  診療所不正開設に関与
2015.12.21 20:48 産経ニュース

 名古屋大は21日、長野県松本市の診療所の不正開設に関与したとして、60代の男性教授を6カ月出勤停止の懲戒処分にした。

 大学によると、教授は大学院に所属。松本市に「松本駅前皮膚科」が開設された際、中京病院(名古屋市)の形成外科部長(当時)に知人の医師を紹介し、54万円の報酬を受け取ったとされる。

 教授は7月に医療法違反容疑で愛知県警に書類送検され、8月に罰金30万円の略式命令を受け、即日納付した。

 名古屋大は「服務規律の徹底と再発防止に取り組み、信頼の回復に努めたい」とのコメントを出した。



http://www.nishinippon.co.jp/feature/local_councilor/article/214325
小児急患3ヵ所廃止へ 専門医不足で現場にしわ寄せ、福岡市
2015年12月21日 15時56分 西日本新聞

 福岡市内には、夜間や休日に急病の子どもを受け付ける市立の急患診療施設が計6カ所ある。市はこのうち博多区、城南区、西区の3診療所の小児科を来年4月に廃止し、残り3施設に集約する条例改正案を市議会12月定例会に提出した。小児科医の不足が主な理由だが、不要不急の利用者がいることも、現場の負担になっているという。来春以降、患者が集中することが予想される市急患診療センター(早良区)を取材した。
 午後8時。「痛いよー、痛いよー」。女児(6)の泣き声がフロアに響いた。トイレで看護師にかん腸をしてもらい、痛みは治まった。当番の医師は、便秘が原因の腹痛と診断した。診療開始からわずか30分間に7人の子どもが受診した。「普段より少ないくらい」と女性看護師は言う。
 センターは、3区の急患診療所の廃止後、現在3~4人の看護師を増やして患者増に対応する予定だが、小児科医2人体制はそのままだという。
 条例改正案を審議した18日の市議会常任委員会。市側は、小児科も内科も診ることができる医師の確保が難しい現状を説明した。センターを除く5施設の担当医59人は平均年齢が67・3歳と高齢化。担当課長は「体力的な問題を抱える中で、最大限にやってもらっている」と理解を求めた。
 担当医の多くは開業しており、平日は自分の診療所で、休日は急患診療所に交代で詰めている。無理が過ぎれば、医療事故につながりかねない。中山郁美市議(共産)は「根本原因の小児科医の不足を何とかしないとだめだ」と強調した。
 市医師会によると、小児科医は女性が多く、結婚や出産を機に離職する人も多い。一部医師が過酷な勤務を強いられ、若い医師が小児科を敬遠する悪循環を生む。市内の小児科医の登録者は256人にとどまる。
 現場のさらなる負担となっているのは「コンビニ受診」だ。平日の日中は仕事で忙しい親が軽症の子どもを連れてきたり、待ち時間が短いとの理由で受診させたり、不適切な利用も目につくという。3診療所の廃止に伴い医師の負担が増す一方で、不要不急の受診が増えれば、ときに深刻な影響を与えかねない。
 午後8時すぎ、中央区の女性(38)が次女(1)を抱きかかえて診察室から出てきた。40度を超す熱性けいれん。医師の治療により症状は和らいだようだ。「死んじゃうんじゃないかと思った」。そう打ち明けた女性の表情が緩んだ。



http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=128239
東北大病院100年
第2部 転換点(3)研修制度改革へ「反乱」
インターン闘争(1968)

(2015年12月21日 読売新聞)

 1968年3月19日。東北大医学部(仙台市青葉区)の教室は熱気に包まれていた。翌日に控えた医師国家試験のボイコットを確認する決起集会には、実習生(インターン)や医学部生ら約130人が集まっていた。実習生だった坂総合病院名誉院長の村口至(75)は「我々が立派な医師になるため、しっかりとした研修が必要だ」と訴えた。

 実習生らが求めていたのは「インターン制度」の改革。当時は医学部を卒業すると、国が指定する病院で1年間、実習生として研修しなければ、国家試験を受けられない仕組みだった。戦後、米国から伝わった制度だが、米国と違い給料はなし。学生でも医師でもない不安定な身分で、指導カリキュラムもない。医療現場にとって都合のよい労働力として使われていた。

 60年の安保闘争の後、下火になった学生運動がベトナム反戦運動で再び盛り上がっていた時代。インターン制度の改革を求める動きは全国の医学部生らに広がっていた。

 当時、医学部があった東北地方の4大学の実習生は、医師国家試験のボイコットで足並みをそろえていたが、このうち1校は試験前日に受験を決めた。これに怒って阻止を企てたのが、別の大学の下級生グループ。「ヘルメットとこん棒で武装し、試験会場に殴り込んでくる」。情報を入手した村口らは、仙台市内の会場に早朝集合するようクラス全員に連絡した。意見は違えど、議論の末に受験を決めた仲間を会場に無事に入れるためだった。

 当日は警察の機動隊が出動し、物々しい雰囲気に。受験を拒否した村口ら東北大の実習生全員は、入り口で武装した学生とにらみ合ったが、こん棒は打ち下ろされることなく終わった。ボイコットは、全国30以上の大学で行われ、その年にインターン制度は廃止された。

  ◎

 「東北の医療を良くするため、どんな研修をするべきか」。村口らは深夜まで議論し、インターン制度に代わる新たな卒後研修を模索した。

 卒業後、そのまま医局へ入れば、教授の一存でまともな指導を受けられない病院に派遣される可能性もある。村口らは医局へ入る場合の条件を提示したり、地域の病院の院長らと直接交渉したりして、研修先を開拓した。学生らの「反乱」に大学側は慌てた。

 68年、学生らの発案で学生・研修医、研修病院、教授らが話し合いを行う「三者協議会」が設立された。東北大医学部生として設立に関わった玉橋信彰・日本病理研究所社長(70)は「医局の人事で地域に派遣される慣習が変わり、3者が対等の立場で、行き先や内容が話し合われるようになった」と語る。

 三者協は93年に「艮陵ごんりょう協議会」と名称変更され、今も研修先を探す学生向けに、説明会を開く。研修医のトレーニングや指導医の育成事業も展開している。協議会の事務局長で、東北大教授の江川新一(53)は「より良い研修制度を求めたインターン闘争が、三者協の設立につながった。その意義は大きい」と強調する。(敬称略)



http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=128268
血液製剤、不正を生む業界の「寡占」…製品の安定供給も危機に
(2015年12月21日 読売新聞)

 一般財団法人・化学及および血清療法研究所(化血研、熊本市)が国の承認を受けていない方法で血液製剤などを製造していた問題で、厚生労働省は、血液製剤とワクチンの製造業界のあり方を見直す作業部会の設置を決めた。業界の「寡占」状態が不正につながり、製品の安定供給も脅かしている実態を探った。(社会部 小田克朗、医療部 赤津良太)

化血研など3法人のみ

■薬害後

 「ワクチン、血液製剤産業のあり方を検討し、国民の不安を解消したい」。塩崎厚労相は15日の閣議後記者会見でそう述べた。

 血液製剤は、1980年代まで約15の事業者が販売競争を繰り広げ、その大半は外国の売血を原料に使用していた。ところが、80年代末から薬害エイズが社会問題化し、国は90年、原料を原則として国内の献血で賄う方針を決定。日本赤十字社が集めた血液を国内メーカーに配分する仕組みを作った。

 今月2日に公表された化血研の第三者委員会の調査報告は、この薬害エイズ後の時期に多くの不正が始まったと認定。製法変更の際に国の承認を得ようとすると製剤の発売が遅れるため、変更を隠蔽したと指摘した。

 化血研の元理事は「薬害エイズは化血研にとってシェア拡大のきっかけになった」と認め、別の元理事は「安全な血液製剤は我々が作るという自負が、手続きを無視しても構わないという考え方につながったのだろう」と振り返る。

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■国主導

 90年代中頃からは、人の血液を使用しない遺伝子組み換え製剤が、外国製を中心に普及し始めた。血友病患者のための一部の製剤では85%を占めるようになり、国は、国内メーカーが体力を失わないよう統合を推進。2012年には2法人の事業を統合した一般社団法人・日本血液製剤機構(東京)が誕生し、国内献血を原料とするメーカーは同機構と化血研、日本製薬(同)の3法人だけとなった。

 国は03年から需給計画を毎年作成し、13年度は献血の血液(血漿けっしょう)の49%を同機構、36%を化血研、15%を日本製薬に配分。メーカー側は同年度、1リットル当たり1万640円を日赤に支払ったが、収益は安定しており、血液製剤市場は1000億円を超すとされる。

 需給計画に守られているという「甘え」に加え、競争にさらされなかったことで小規模メーカーとしての体質が変わらなかったことが、化血研の長年にわたる不正の要因となった。

 ただ、血液事業に詳しい室井一男・自治医科大教授は、「製剤の安全性と国内自給を両立させるには、一定の寡占状態はやむを得ない」と指摘する。

 作業部会は来春をめどに結論を出すが、血液製剤業界の寡占解消にまで踏み込むのは難しい見通しで、当面は抜き打ち検査の導入に加え、各法人で大手製薬会社並みの内部統制の体制を作らせることが課題になる。室井教授は、「国策として善意の献血血液を配分している点からも、国の責任は大きい。各法人での法令順守や不正防止の取り組みを厳しく監視し続ける必要がある」と話している。

ワクチン国際化「遅れ」
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 化血研は、一部のワクチンも国の承認と異なる方法で製造していた。厚労省は今年9月、化血研製のすべてのワクチンの出荷を差し止めたが、供給不足を回避するため、安全性を確認し次第、解除せざるを得ない事態に追い込まれている。

 化血研製がシェア(占有率)の8割を占めるB型肝炎ワクチンは現在も差し止められたまま。「母子感染を防ぐには出産後すぐに打つ必要がある。在庫が切れると対応できない」と、東京都内の大学病院の小児科医は戸惑いを隠さない。一方、百日せきなどの4種混合ワクチンは、11月に出荷差し止めが解除されたが、保護者の不安が根強く、他社製に切り替える診療所も出てきている。

 予防接種法で定期接種に定められたワクチンのうち、感染力が強く、大流行の懸念がある麻疹、風疹、結核などのワクチンは、国内6法人のいずれかが製造する。化血研のほか、北里第一三共ワクチン、阪大微生物病研究会(阪大微研)など、主に大学の研究室から独立した中小メーカーだ。

 戦後間もない1948年に同法が制定されて以来、危機管理の観点から、国が「ワクチンは原則国産」の姿勢を貫いてきた。伝染病の流行を防ぐため、定期接種は国民の義務とされ、集団接種が行われてきた。ところが、予防接種後の健康被害が社会問題化。90年前後には、被害者による訴訟が相次ぎ、国内のワクチン開発は停滞期に入った。

 対照的に欧米では80年代以降、新たなワクチンが次々と開発された。企業の経営統合も進み、今や世界のワクチンの8割は、国際的な製薬大手が占有する。海外のワクチン事情に詳しい新潟大小児科の斎藤昭彦教授によると、海外の製薬大手は各国に製造拠点を持ち、1か所で問題が起きても国を超えてカバーする体制に進みつつある。日本は規模が小さく、融通が利かないうえに「国がメーカーに頼んで作ってもらっている構造がチェックを甘くしている」と指摘する。

 渋谷健司・東大教授(国際保健衛生学)は「危機管理の面から国内メーカーの役割は大切だが、国内外の大手製薬会社と提携するなど、国際競争の中で品質を高めることも必要だ」と話す。



http://biz-journal.jp/2015/12/post_12976.html
連載 新見正則「医療の極論、常識、非常識」
医者に行くと早く死ぬ?不必要な高額医療がかえって体に害?

文=新見正則/医学博士、医師
2015.12.22 Business Journal

 今日の極論君は、「医者に行くと早く死ぬ」と言っています。常識君は「それは極端な話ではないか」といつもの優等生的な返答です。極論君は大きな書店でたくさんの医療書籍を立ち読みして、「医者に行くと早く死ぬ」といった論調に共感したようです。
 本連載前回記事では、テレビは上手に観ないとダメだといったお話をしました。スポンサーと視聴率に多大な影響を受けることは致し方ないことです。同じように、医療もボランティアではありません。そうすると、確かに極論君が指摘するように、無用な検査や投薬、無意味な処置が施されることも皆無ではないでしょう。
 なぜなら、日本の医療保険は基本的に国民皆保険です。ですから、誰もが最大で3割負担です。その上、高額医療費制度というのがあり、暦月での支払いの上限がほぼ決まっています。標準報酬月額が83万円以上の人で、
  25万2600円+(総医療費 - 84万2000円)×1%
 です。つまり、1000万円の医療を受けても負担額は35万円弱です。そして、収入により負担額はどんどんと減ります。詳しくは全国健康保険協会のHPを参照してください。
 つまり、診断、治療、リハビリなどの医療がどんどんと進歩を遂げて、そして医療費が高額になっているにもかかわらず、国民が負担する額は極めて低額に抑えられています。日本の医療制度はとても素晴らしいのです。
 しかし、極論君が立ち読みした人たちのひとつの意見は、医療費の負担額が少ないからこそ、医療を受ける側も、提供する側も、つい自然と、あるときは作為的に高額な治療に誘導されかねないというストーリーです。そして、それが体にかえって害を及ぼすという警告です。
 確かに、レストランでどんなものを食べても少なくとも7割は補助金が出て、そして毎月の支払い額の上限がほぼ決まっていれば、お腹いっぱいで食欲がなくても、また特別高価なものを食べようという記念日でなくても、そして体に悪くてもたくさん注文しそうですね。

素晴らしい医療システムを維持するために

 せっかくそんな医療制度に恵まれている日本に住んでいるのですから、われわれは適切な、そして自分に本当に必要な医療を堂々と受ければ、それでいいのです。病院に行って、「できるかぎりのことをしてください」とお願いすれば、当然、病院は必要以上の検査や治療をするかもしれません。病院の収入も開業医の収入も出来高に比例します。つまりレストランの収入と同じです。たくさんのお客さんに入ってもらって、そしてできれば高額のメニューを注文してもらえれば、こんないいことはありません。

 そんな光景を目にすると、常識君あたりからは「イギリスのように、総量規制をしてはどうでしょうか」といった意見が出ます。つまり、保険医療として行える年間の使用額を決めるという方式です。確かにそうすれば、医療費の上限が設定できますので国の財政は安定するでしょう。医療費はわれわれの負担金のほか、国の税金で賄われているからです。
 しかし、医療が萎縮すれば、今度はどちらか迷う検査や治療は行わなくなります。少々の有益性があっても、費用対効果を考えて施行されないことも起こりえます。それでは不利益も多いように思えます。
 現状の素晴らしい医療システムを維持するためにも、適切な医療が行える環境が何より必要です。極論君と常識君の間で、うまい着地点を探すことが必要ですね。
(文=新見正則/医学博士、医師)

●新見正則(にいみ・まさのり)
1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務
幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

  1. 2015/12/22(火) 05:58:55|
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